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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

511:2004/06/01(火) 16:58

「―― モナーの愉快な冒険 ――   吹き荒れる死と十字架の夜・その5」



          @          @          @



「これは…!」
 ギコはブラックホークから身を乗り出して、眼下の光景を見据えた。
 横列に並んだ2艦が、ミサイルの集中砲火を受けている。

「退屈な毎日って言ってたが… モナーの奴、これで退屈なのか?」
 ギコは汗をぬぐって言った。
「…そんなわけなぃょぅ。右側の艦、後部甲板が破損して、長くは持たなぃょぅ」
 ぃょぅが告げる。

「参ったな… これなら、レモナかモララーを連れてくるべきだったぜ…」
 ギコはそう言って、操縦席のぃょぅに視線をやった。
「モナー達の乗ってる艦に着艦できるか!?」

「…昔の血が騒ぐぃょぅ」
 ぃょぅはそう呟くと、急速に機体の高度を下げた。
 ヘリ内が大きく揺れる。
「うおっ!! 大丈夫なのか!?」
 ギコは叫んだ。
「何かに掴まらないと危なぃょぅ!!」
 そう言ったぃょぅの目には、炎が灯っている。
 2人の乗ったヘリは、『ヴァンガード』に向けて急速下降を始めた。

「久々に燃えてきたぃょぅ!!」
「うおぁぁぁぁぁ――ッ!!」
 自由落下と変わらないほどの加速に、ギコは大声で悲鳴を上げた。



          @          @          @



 リナーは、海上自衛隊護衛艦『くらま』の艦内を駆けていた。
 CICさえ制圧してしまえば、この艦は無力になる。

「CICに踏み込ませるな!!」
 正面から、ショットガンを持った艦員達が姿を現した。
「撃てッ!!」
 艦員たちは素早く横列に並ぶと、一斉にショットガンを構える。

「セミオートショットガン…? ベネリM4か。
 いいのか、自衛隊が装備年鑑に載っていない銃器を使っても…?」
 ショットガンの銃声が通路に響く。
 だが狙いをつけられた少女の姿は、すでに正面にない。
 リナーは通路の角に飛び込むと、拳銃を連射して艦員達の足先を撃ち抜いた。

「うわぁッ!!」
 艦員達は次々に足を押さえて倒れていく。
 足の小指の負傷だけで、事実上人間は戦闘不能となるのだ。
 リナーは通路に横たわる無数の身体を飛び越えると、CICへ向かって突き進んだ。
 正面の通路から、さらに艦員達が押し寄せてくる。
 ショットガンによる銃撃を避けながら、リナーは艦員達の足先を撃ち続けた。

512:2004/06/01(火) 16:59

「くそッ! 挟み撃ちかッ!!」
 ショットガンを構えて、正面の艦員が叫ぶ。
 その足先に、リナーは素早く銃弾を撃ち込んだ。
「ぐあッ!!」
 艦員はショットガンを取り落とし、床に転がる。

「挟み撃ち…?」
 確かに、内部の警備は若干薄い。
 艦後部からも誰か入り込んだのだろうか。
 ASAがスタンド使いを派遣して、サポートでもしているのか…?

「いたぞ! 第1通路だッ!!」
 多くの足音が近付いてくる。
 リナーは銃を構えた。
 向かいは曲がり角だ。
 姿が見えた瞬間、銃撃を…

 まるでミシンのような音が、曲がり角の向こうから響いた。
 間違いなく、フルオート射撃での銃声。
 そして、ドサドサと人が倒れる音。

「…?」
 リナーは異常を察知した。
 先程、フルオートで発射された弾丸は7発。決して聞き逃しはしない。
 艦員の倒れる音も、ちょうど7人分。
 フルオートの弾丸を、1人に1発ずつ当てた…?
 それも、艦員に悲鳴すら上げさせることなく。
 戦闘技能に特化した代行者の中でも、そこまでの精密射撃ができるのは自分か師匠くらいだ。

 カツカツという足音が近付いてくる。
 間違いなく、先程の芸当を行った当人。
 足音に水気が混じった。血を踏んだのだろう。
 歩き方、歩幅などで男と分かる。
 こいつは…!!
 リナーは、銃を構えて背後に飛び退いた。

 曲がり角から、その男が姿を現した。
 見間違えるはずはない。
 グレーのSS制服。
 髑髏が刺繍された制帽。
 襟には、42年型SS大将タイプの襟章。
 右袖にアルテケンプファー章。
 左袖にSS本部長級プリオンカフ。
 胸にハーケンクロイツを抱いた鷲のパイロット兼観測員章と、昼間戦闘徽章銀章。
 そして、両手に携えた2挺の拳銃…

「ほう。妙な所で会うな、『異端者』よ」
 男は、リナーの姿を見て言った。
「それはこちらの台詞です、師匠…」
 リナーは、正面に立つ男を見据えた。
 枢機卿…
 『教会』の最高権力者。
 そして、自分に戦闘技術や兵器の扱いを叩き込んだ男。
 その衣服は、なぜか水で濡れている。

「随分とお若くなられて。ですがSS正装で寒中水泳とは… 奇行癖は変わらない御様子ですね」
 リナーは言った。
 その軽口と裏腹に、掌に汗が滲む。

「母艦に戻る途中、ふとこの艦を見つけてな。
 ついでに制圧しておこうと思えば… よもや、君と鉢合わすとはな」
 枢機卿は事もなげに言った。
 その姿を、リナーは真っ直ぐに見据える。
「お教え願いたい。貴方がここにいる真意。私をこの国へ寄越した理由。他の代行者への、私に対する追討命令…」
 両手を下ろす仕草で、スカートの中に収納している2挺のベレッタM93Rに手を添えた。
 枢機卿との距離は、約10m。

 その質問に、軽い笑みを浮かべる枢機卿。
「1つ目の質問の答えは先程言ったはず。2つ目、『monar』への干渉。
 3つ目、君自身が一番よく知っているだろう、『異端者』よ…?」

「そんな表面的な事が聞きたいのではありません。何を企んでいるのか… 
 一体、どんな図を大局的に描いているのか聞いているのです!」
 リナーは、殺気を込めて枢機卿を睨んだ。

「答えると思うかね、この私が…」
 枢機卿はP09の片方を軽く回転させた。
 そして、銃口をリナーの方へ向ける。
「君には、私の持てる技術の全てを仕込んだ。久々に実戦演習といこうか。我が弟子よ」

 リナーは目の前の枢機卿を見据えた。
「貴方に教わった技能で、私は幾度の戦場を生き延びる事ができました。
 …まずは、その事に礼が言いたい」
「誰にでも習得できる戦い方ではない。私と同じ次元にまで到達できたのは、後にも先にも君だけだ。
 まさに、誇るべき私の唯一の弟子だよ。君の余生がもっと長ければ、捨て石のような扱いはしなかった」
 枢機卿は名残惜しげに言う。

 リナーは言葉を続けた。
「先程、貴方に教わった技能で生き延びれたと言いましたが… 正直、私はいつ死んでも構わなかったんです。
 無為な人生、早く終わった方が良かった。ですが…
 生還を望んではいなかったのにもかかわらず、この戦闘技能と吸血鬼の肉体が邪魔をした。
 私は、嫌いだったんです。吸血鬼も、スタンドも、この戦闘技能も、私の生も、全て…」
 そう言って、視線を落とすリナー。
 枢機卿はその物憂げな瞳を見る。
「…そうだろうな。君の吸血鬼に対する憎悪は、自己否定の裏返しだ」

513:2004/06/01(火) 17:01


 リナーは再び枢機卿に視線をやると、柔らかな笑みを浮かべた。
「…ですが、事情が変わったんです。嫌いだったものも、幾つかは好きになれました。
 今まで私を生かしてきた、貴方から教わった技能に感謝しています。
 ならばこの技能… これからも生き延びる事に使わせて頂く!!」
 スカートから2挺のM93Rを抜くと、その銃口を真っ直ぐ枢機卿に向けた。

「…ならば見せてもらおうか。君の、生きようとする力とやらを…!!」
「お相手させて頂きます、師匠…!」
 2人は、同時に前方に向って駆けた。
 走りながら、互いの銃を互いに向かって連射する。
 正確な射撃、そして正確な回避。
 それは、左右が逆にならない鏡に映したように同一だった。

「…腕は衰えておらんな」
「そちらこそ、全盛期の強さを手にしておられるようで…!」
 両腕の銃を連射し、相手の射線を避けながら突進する。
 両者の距離は、2mまで縮まった。
 2人ともそれぞれ右方に飛び退くと、同時に壁を蹴る。
 空中で接近する2人。
 互いの体に銃口を突きつけようとした右腕の手の甲が、空中で激突する。

 そして、同時に発射される銃弾。
 2人とも、同じタイミングで身体を逸らして避けた。
 なおも同時に着地する2人。

「互いに確率・統計的に最適な行動パターンを行使すれば、同じ動きにしかならんか…」
「そのようですね。効果的な占位、効果的な射撃… 全てが同じ」
 着地と同時に、両者は身を翻す。
 リナーは、右腕のM93Rを枢機卿の頭部に突きつけた。
 同時に、枢機卿は右腕のP09を突きつけてくる。

「…!」
 リナーは右手の銃を枢機卿に突きつけたまま、左手の銃を無造作に落とす。
 そのまま、目の前のP09に左手を伸ばした。
 素早くマガジン・キャッチを押し、リアサイト前部を引く。
 そのままスライドを後退させ、スライド・ストップを引き抜く。
 1/10秒にも満たない時間でのフィールド・ストリッピング。
 突きつけられていた枢機卿のP09は、一瞬の間にバラバラになった。
 同様に、枢機卿の頭部に突きつけていたM93Rも分解されている。
 分解の速度も、それに至る思考も全て同じ。

 リナーは残ったグリップを投げ捨てると、懐に手を入れた。
 各指の間に挟んだ4本のバヨネットを、爪のように相手の身体に振るう。
 枢機卿は、全く同様に4本のバヨネットで相殺した。
 両者とも一歩退くと、バヨネットを1本ずつ投げつける。
 上段に2本。下段に2本。
 枢機卿が同じ軌道で投げたバヨネットと空中衝突し、8本全てが床に転がった。

 その投擲は、相手に隙を作る為のフェイント。
 最後のバヨネットが手を離れると同時に、リナーの腕は背に回っていた。
 その手で、素早く日本刀の柄を掴んだ。
 枢機卿の腕も、自らの背後に回っている。

 リナーは日本刀を抜くと、大きく踏み込んだ。
 同時に、枢機卿が大きく踏み込む。
 その手には、カッツバルゲル。
 刺突より斬撃に特化した15〜17世紀の刀剣だ。
 長さ、ウェイトともに日本刀と同等。

 全く同じタイミングで、同じ角度で両者は打ち合った。
 違うのは、立ち位置のみ。
 激しく互いの武器をぶつけ合わせると、両者は飛び退いて大きく距離を開けた。

 同時に刀剣を投げ捨てる2人。
 リナーはP90を、枢機卿はMP40を懐から取り出した。
 そして、同時に互いの短機関銃の銃口を向ける。

「ふむ。さすが我が弟子。全て互角か…」
「そちらこそ。さすが我が師匠…!」
 2人は言葉を交わすと、同時に引き金を引いた。

514:2004/06/01(火) 17:01



          @          @          @



「あれは、一体…?」
 『フィッツジェラルド』の艦橋のてっぺんに立つしぃ助教授。
 その目は、『ヴァンガード』の後部に激突した戦艦を見据えていた。

『ビスマルク級戦艦… なぜ、あんな骨董品が?』
 無線機から丸耳の声が聞こえる。
 彼のいるCICにも画像が届いているようだ。
 しぃ助教授は、その戦艦の武装を注意深く観察した。
「…主砲をよく見てみなさい。あれが、60年も前の艦装ですか?
 砲口制退器や排煙器、水冷式砲身に垂直鎖栓式砲尾…
 発射速度や反応時間は、このイージス艦に搭載されている127mm単装艦載砲と変わらないはず。
 威力だけが38cm砲クラスです。あの連装高角砲も、おそらく30mmクラスのCIWS…!」

『最新装備で身を固めた戦艦… もしかして、『教会』の艦…?』
 丸耳は、信じられないように呟いた。
「…」
 しぃ助教授は答えない。
 おそらく、その可能性が一番高いからだ。
 正面を見据えるしぃ助教授。
 その空は、先程までとは打って変わって静かである。
「ミサイル攻撃が止んだ… 向こうにも、何かあったのか…」

 『フィッツジェラルド』が大きく揺れた。
 艦体に、ミサイルを3発ほど喰らっているのだ。
 『セブンス・ヘブン』で直撃は避けたとはいえ、決して軽いダメージではない。
「丸耳、被害状況は…?」
 しぃ助教授は訊ねる。
『後部甲板への一撃が効いていますが… まだ何とか』
 丸耳は、暗い声で言った。
 この艦も、余り長くは持たないようだ。

「退艦命令は、丸耳の判断で出しなさい。無駄な犠牲は避けるように」
 しぃ助教授は告げる。
『しぃ助教授はどうする気です…? まさか、艦と共に…!』
 丸耳は慌てたように言った。
 ため息をつくしぃ助教授。
「艦と運命を共にする気はありませんよ。ですが、ギリギリまでは…」
 突然、丸耳は声を上げた。
『…ちょっと待って下さい! 南西方向から接近物あり! 速度は… マッハ7だって…?』

「馬鹿な! 極超音速飛行を可能とする航空機は、まだ実用化されていないはず…!」
 しぃ助教授が叫ぶ。
『航空機じゃありません…! 人間大の大きさです!!』
 丸耳は興奮した口調で言った。
『凄まじく速いです! この艦に到達するまで、あと10秒…!!』

「一体、何が…!!」
 しぃ助教授は、南西の方向に視線をやった。
 風を切るような音。
 音速域での轟音が響く。

 『それ』は、凄まじい速度で飛来してきた。
 間違いなく、このまま突っ込んでくる…!!

「『セブンス・ヘブン』!!」
 しぃ助教授はスタンドを発動させた。
 マッハ7で激突されては、艦が危うい。

「逸れろォッ!!」
 しぃ助教授は叫んだ。
 そして、飛翔物の移動方向に修正を加える。
 艦から20mほど離れた位置で、『それ』の動きが止まった。
 まるで、見えない力に抑えつけられるように。
 凄まじい風圧が周囲に吹き荒れ、海は大きく波立った。
 艦がグラグラと揺れる。

「くッ…!!」
 しぃ助教授は唇を噛んだ。
 『セブンス・ヘブン』による指向性の操作でも、その勢いは殺しきれない。
 その余りの圧力に、しぃ助教授の腕が震える。

「ASA三幹部を… 舐めるなァッ!!」
 しぃ助教授は、両腕を思いっきり上げた。
 飛翔物は大きく上に逸れる。
 そのまま、『それ』は天高くすっ飛んでいった。

 しぃ助教授は確認した。
 『それ』は、確かに人型をしていたのを…
 すかさず、『それ』が吹っ飛んでいった方向に視線を向ける。

「…凄いなァ。僕の突進を止めるなんて…」
 ゆっくりと。
 それは降臨する天使のように、天からゆっくりと降りてきた。
 その背には、大きな羽根。
 しかし、しぃ助教授が思わず連想した『天使のように』という表現は誤っている。
 その背中に生えているのは、天使の羽根などではない。

 確かに、月光が透け虹色に輝く羽は美しい。
 だが、それは蝶の凶々しい羽だった。
 羽の男は、艦橋に立つしぃ助教授を見下ろす。
 ニヤニヤとした、下卑た笑みを浮かべて。

「…凄い凄い。良く頑張ったよアハハハハハハハハハハハハ…………………じゃあ死ね」

 その羽から、虹色の光が放たれる。
 鮮やかな光が周囲に照散した。

515:2004/06/01(火) 17:02

 この光は、ヤバイ…!!
 しぃ助教授は、そう直感した。
「『セブンス・ヘブン』!!」
 自身のスタンドで、全ての『力』を押し返すしぃ助教授。
 鮮やかな光は、艦を大きく逸れた。
 そのまま、光は海面に当たる。
 大きな水飛沫が幾重にも上がった。
 凄まじい風圧に、艦が大きく揺れる。

「…何だって? オマエ、一体何なんだ? 何をやったんだ?」
 羽の男から、ヘラヘラした表情が消える。

 …何者かだって?
 それは、こちらの台詞だ。
 今の鮮やかな光は、とてつもなく重い。
 まともに艦に当たれば、それだけで撃沈していただろう。
 こいつのスタンド能力は、一体…

「こんなのがいるなんて、聞いてなかったなァ…
 まあいいや。スタンドの力比べなんて、今までやった事なかったからね」
 男は再び笑みを浮かべる。
「名前を聞かせな、覚えといてやるよ。僕はウララー。こいつは、『ナイアーラトテップ』だ」
 ウララーと名乗った男は、背の羽を示して言った。

 『ナイアーラトテップ』…!
 あの報告書にあったスタンド名だ。
 確か、『教会』が保有しているというスタンド使いの死体…
「吸血鬼化による死者の蘇生、完成していたという訳ですか…」
 しぃ助教授は、ウララーを見据えて呟いた。

「へぇ。なかなか知ってるんだね。でも、蘇生技術は完成なんかしちゃいないさ。欠陥だらけだ。
 まあいいか。僕も名乗ったんだぜ? そっちも名乗りなよ、レディ…」

「全く… 普段は人外みたいに思われて、レディ扱いされたかと思ったら、貴方みたいな化物からとは…
 ホント、嫌になりますね」
 そう言って大きなため息をつくと、しぃ助教授はハンマーをウララーに向けた。
「私はASA三幹部の1人、しぃ助教授。私に挑むなら、死を賭しなさい…!」



          @          @          @



 俺は、よろけながら再び立ち上がった。
 バヨネットは… 離れた位置に転がっている。

「止めておけ。お主の技量では、あと100年続けたところで勝てはせぬ」
 山田は、背を向けたまま言った。

 …その通りだ。
 こいつには、今の俺の技量では決して敵いはしない。
 その凄絶なまでに緻密な斬撃。
 それは、血の滲む鍛錬と度重なる実戦で身につけたものだろう。
 俺の野良な戦闘技術では、どれだけ頑張ったところでこいつに傷一つ付ける事はできない。
 そう。
 今の俺の技量ならば――

 視たものを『破壊』できる以上、その逆も可能。
 『殺人鬼』は、夢の中で俺に告げた。

 『創造』すること。
 視たものを…
 視た技術を、俺の身体に再現すること。

 『アウト・オブ・エデン』――!!
 俺は、眼前の山田の背中を視た。
 こいつの技術を『創造』したところで、オリジナルに勝てるはずがない。
 何より、山田の技量をほとんど視ていない。
 それなら…
 山田の、洗練された武芸に打ち勝つならば…

 ――『アウ■・オブ・エ■ン』起動。
 ――創造、■始。
 ――対象1:『Giko』。
 ――対■2:スタンド『LAYLA』。
 ――構成要素、抽出中………

 脳内にノイズが混ざる。
 俺の脳に、幾多もの記憶が錯綜した。
 思い出せ。
 思い出せ。
 あの型。
 あの技。
 あの構え。
 あの気迫。
 あの殺気。
 あの呼吸。
 あの踏み込み。
 あの剣撃。
 思い出せ。
 思い出せ。

 ――そして、俺の体で。

516:2004/06/01(火) 17:03


「…」
 俺は懐から短剣を取り出すと、正眼に構えた。

「…?」
 山田が、ゆっくりとこちらを振り向く。
「肉体を強化する類のスタンド…? それにしては、闘気の質が先程までとはまるで違う…」

「スタンド能力をいちいち説明する義理があるのか…?」
 山田を真っ直ぐに見据えて、俺は言った。

「…ふむ、それも道理」
 山田は完全に身体をこちらに向けると、両腕で青龍刀を構えた。
「ならばこの山田、全力を持って相手をしよう…」

 俺は驚愕した。
 2度まで俺を倒した刃は、まるで本気ではなかったのだ。
 その構えから漏れる殺気。
 歴戦の戦士のみに許された必殺の気迫。

 俺は、山田の構えを視た。
 それは、まるで強固な陣。
 踏み込めば、倒れるのは俺。
 あれを破る方法は、全く視えない。
 ああなってしまえば、どのような攻撃も通用しないのではないか?

 あらゆる可能性を脳内でシミュレートした。
 上段からの斬りも、中段斬りも、下段も防がれる。
 突きも払いも薙ぎも通用しない。
 短刀を投げて殴りかかっても、甲板の破片を利用して攻撃しても、CICに砲撃するよう依頼しても、
 背後を飛んでいるヘリを落として巻き込んでも、艦ごと沈めても…
 何をしても、この構えは決して破れないのではないか…?

「相手の強さを理解する。それも、強さのうちだ」
 山田は、構えたまま言った。
「もう一度言う。背を向けるなら、斬りはせぬぞ…」

「誰が逃げるかッ…!!」
 俺は、大きく踏み込んだ。
 ギコと『レイラ』の神速の踏み込み。
 それを全身で再現する。

 その勢いを殺さず、山田の頭部に渾身の力を込めた斬り下ろしを放った。
 ――もらった。これならば!

 その攻撃を、容易く青龍刀の柄で弾く山田。
「…その一撃、見事」
 そう言いながら、山田は青龍刀を軽く回転させた。
 ――袈裟切り。
 俺の攻撃を弾いた動きから、一分の無駄もなく。
 その刃は俺の右肩口から入り、股下に抜けた。

「…!!」
 俺の上半身と下半身… いや、右半身と左半身に一筋のラインが走る。
 そこから、俺の体は真っ二つに裂けた。
 痛みはすでに麻痺している。
 『殺人鬼』の話では、痛覚を残してくれたらしいが…
 精神が耐えられる許容を超えたのだろう。
 俺の体は2つに分断され、甲板に転がった。

「…捨て置けるほどの凡夫ではなかったようだな。止めを刺させてもらう」
 山田が、俺の左半身に歩み寄った。
 まずい。
 頭部を完全に潰されれば、吸血鬼の肉体でも…!

 しかし、直後に来るはずの頭部への斬撃はなかった。
 山田は、俺を無視して前方を凝視している。
 何を見ている…?

「また、ひどいやられようだな。ゴルァ…」
 聞き覚えのある声がした。
 ヘリのローター音と、こちらへ歩み寄る足音。
 その腕には日本刀。
 背後には、これも日本刀を携えた着物の女性のヴィジョン。

「遅れて悪いな、着艦に手間取っちまった」
 そう言って、ギコは頭上のヘリを見上げた。
 そのヘリの操縦席から、ぃょぅ族の男が顔を出している。

「山田… そいつの刀は、さっきの俺の3倍は速いぞ…」
 俺は、山田を見上げて言った。
「…なるほど。お主の戦友か」
 山田はギコを見据える。

 ギコは、俺の左半身の脇に屈み込んだ。
「こりゃまた、随分と派手にやられたな。まさか真っ二つたぁ… 大丈夫なのか?」
「頭さえ潰されなかったら、再生はできるモナ…」
 俺は力無く言った。
 山田は、そんな俺達の様子を無言で見ている。
 隙を突いて斬りかかるような男ではないようだ。

「そりゃ便利な体だ。さて…」
 ギコは腰を上げると、山田を見据えた。
「そいつ、とんでもなく強いモナよ…」
 俺はギコに忠告する。

「ああ。そんなのは、物腰一つ見りゃ分かる…」
 そう言って、ギコは日本刀を抜いた。
 『レイラ』も、本体の挙動をなぞるような動きで刀を抜く。
「あいつは多分、俺の相手だ…!」

 ギコと『レイラ』、そして山田が、同時に互いの得物を構えた。



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