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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

302ブック:2004/05/09(日) 23:22
     EVER BLUE
     第九話・RUMBLE FISH 〜疾風怒濤〜 その二


 『フリーバード』のカーゴケイジのハッチが開き、
 その中から一つの機体がせり出てくる。
 透き通るような青色をベースにしたカラーリングの、
 両翼がやや長めの小型プロペラ戦闘機。
 前部の運転席と後部の砲撃席とに座席が分かれており、
 機体前方に加えて、後部座席にも機銃が備え付けられている。
 その形状から、『フリーバード』の面々はこの機体の事を『トンボ』と呼んでいた。

「カウガール、高島美和、行っきまーーす!」
 カウガールが無線を通して、ブリッジに向けてそう叫ぶ。
「おう、思う存分掻きまわして来い!」
 サカーナの野太い声が、無線越しに伝わってきた。

 エンジン起動。
 プロペラがどんどん回転速度を増し、
 車輪が甲板上に設けられた滑走路を流れるように滑り―――

 ―――飛翔。

 高島美和とカウガールの体が、重力という名の鎖から解き放たれる。

「…いつもの事ですけど、離陸する度に死ぬかと思っちゃいますね。」
 運転席にカウガールがほっと胸を撫で下ろした。
 この『フリーバード』は、予算の都合上あらゆる面において極限まで切り詰めている。
 無論それは滑走路とて例外ではなく、
 離着陸の為の最低限のスペースしか有していないのだった。

「全く、これだからこの船は…」
 高島美和がうんざりした顔で呟いた。

「高島美和さん、『シムシティ』での索敵、お願いできますか?」
 カウガールが顔だけを後ろに向ける。
「ええ、分かったわ。」
 高島美和の体から、テニスボール大の目玉に蝙蝠のような羽がくっついた
 四体の謎の生物のスタンドのビジョンと、
 画面が四つに分かれた26インチテレビ程度の大きさのディスプレイ型の
 スタンドビジョンが浮かび上がった。

「行きなさい、『シムシティ』。」
 三体の目玉蝙蝠が、一匹だけを機体の中に残して『トンボ』の中から外へと飛び立った。
 それに合わせて、ディスプレイの三つの画面が目まぐるしく変化していく。
 『シムシティ』の目玉が、そこに映ったものを記号化・数値化して
 高島美和のディスプレイへと転送する。
 それ故、ディスプレイに映るのは数字や記号ばかりであり、
 一見しただけでは何が何だか分からないものであった。

「…敵の数、十四機。」
 高島美和はそのディスプレイを数秒覗き、呟いた。

「もしも〜し、あなた達は何者ですか〜。
 何か反応してくれないと、敵意有りと見なして攻撃しますよ〜。」
 カウガールが無線で敵プロペラ戦闘機に呼びかける。

「!!!!!!」
 しかし、返って来たのは言葉ではなく、機銃による弾丸掃射であった。
 間一髪、カウガールは機体を傾けて銃弾をかわす。
 飛来した弾丸は直撃こそしなかったものの、
 『トンボ』の表面の着色料を少しこそぎ落とした。

「…敵意まんまんですね。
 そしてあの赤い鮫のロゴマーク、矢張り『紅血の悪賊』(クリムゾンシャーク)。」
 高島美和が溜息をついた。
「酷い!いきなり撃ってくるなんて!
 そっちがそう来るなら、こっちも本気で行かせて貰います!!」
 カウガールが操縦桿を強く握った。
 そのまま『トンボ』を雲の中へと突っ込ませ、
 編隊を組んで飛行する敵機から身を隠した。
 当然それはこちらからも敵の姿が見えなくなるということであるが、
 そのデメリットは高島美和によって解消される。

「カウガール、この方向のまま直進すれば、
 計算上十五秒後に敵編隊の右側面に出る筈です。
 横っ腹からありったけ喰らわせてやりなさい。」
 ディスプレイを見ながら、高島美和がカウガールに伝えた。
「了解(ヤー)。」
 高島美和の言葉通り、雲を割って『トンボ』が敵編隊の右側面から現れる。

「堕ちろ蚊蜻蛉!!」
 『トンボ』の前方の機銃が火を吹いた。
 鉛の死神が不運にも銃口の直線状にいた機体に喰らいつき、
 その翼を食い破って地の底へと堕とす。
 敵機が横からの奇襲を受けて、隊列を崩して散り散りに飛び去る。

「!!!!!」
 『トンボ』がその内の一機と近くをすれ違った。
 その時の風圧が、『トンボ』の機体を強く揺らす。

「危ない危ない…もう少しでぶつかる所でした。」
 カウガールが冷や汗を拭った。
「『チャレンジャー』は送り込んでおいたの?カウガール。」
 高島美和がカウガールに尋ねる。
「ええ、ばっちり。」
 カウガールがガッツポーズをしながら微笑んだ。

303ブック:2004/05/09(日) 23:23



 と、先程『トンボ』とすれ違った敵機が大きく傾いた。
「……!!」
 中のパイロットが必死に機体を立て直そうとするも、
 機体はさらに大きく揺れる。
「……!!!」
 パイロットがパニックを起こす。
 彼の目の前には、手乗りサイズの毛むくじゃらの子鬼の姿の生物達が、
 計器類に取り付いているのだが、
 パイロットにはその姿が見えてはいなかった。

「キャモーーーーーーーン!!」
 子鬼達が叫びながら小躍りを始める。
 それに合わせて、さらに機体が激しく上下する。

「OOAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
 パイロットが絶叫した。
 機体は完全に制御不能に陥り、そのまま見方の機体に向かって突っ込んでいく。

「AAAAAAAAHHHHHHAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!」
 必死の抵抗も虚しく、両者は空中で激突し、
 そのまま爆破、炎上しながら墜落していった。



「…ありがとう、『チャレンジャー』。」
 自分の手元に戻って来た子鬼達の頭を、カウガールが優しく撫でた。
 そして、子鬼達はカウガールの体へと戻っていく。

「…敵機、後方より三機接近中、ですか。」
 ディスプレイを眺めながら高島美和が呟いた。
 同時に、後ろから『トンボ』に向かって機銃が連発される。
「うひゃあ!?」
 機体を旋回させながら、カウガールが何とか銃弾を回避した。

「仕方がありません。露払いといきますか。」
 高島美和が後部座席に取り付けられている機銃を握った。

 ディスプレイを、見る。
 四つに分かれた画面に映る数字数字数字。
 そこから、読み取る。
 敵機との距離を、風速を、風向を、自機の機銃の銃口の角度を、
 自分の移動速度を、敵機の移動速度を、
 それら全てを読み取り、
 それら全てを考慮に入れ、
 それら全てを活用して、
 作式、演算、解式、そして―――


「―――Q.E.D」
 証明終了。
 弾き出した回答の通りに銃口を向け、
 弾き出した回答のタイミングで発射。
 そして、弾き出した回答の通りに撃墜される敵機。
 この間、僅か数秒。

「ふむ、まずまずといった所ですね。」
 高島美和が堕ちていく三つの機体を眺めながら、満足げに呟いた。


「―――!敵機三機、『フリーバード』に接近してます!!」
 カウガールが、外の景色を見て叫んだ。
 三つの機体が、『フリーバード』に向かって一直線に向かっていく。

「抜けられましたか…!」
 高島美和が忌々しげに呟いた。
 そして、すぐに無線を取り、『フリーバード』にチャンネルを合わせる。
「こちら高島美和。
 敵機が三機程そちらに向かっています。
 そちらで迎撃して下さい。」
 高島美和が無線機に言葉を吹き込んだ。

304ブック:2004/05/09(日) 23:23



     ・     ・     ・



 高島美和からの無線を受け、サカーナの親方が大きく息をついた。
「…ってー事だ。
 野郎共、覚悟はいいか!?」
 サカーナの親方が僕達を見回す。
 やれやれ。
 やっぱりこうなったか。

「たまらんな…」
 三月ウサギが肩をすくめる。
 僕も三月ウサギと同じ気持ちだ。

「砲撃手、準備は出来てるか!来るぞ!!」
 親方が全砲撃室の乗り組み員向けて怒鳴り散らした。
 内線から、次々と『了解!』という声が聞こえてくる。

「オオミミ、お前は念の為嬢ちゃんを部屋の中に入れとけ。
 ちーとばっかし揺れるかもしれねぇからな。」
 サカーナの親方がオオミミの方を向く。

「分かった。」
 オオミミが答え、天の手を引いた。
「ちょっ、あんな狭苦しい所に閉じ込めて…!」
 雨が何か言いたげだったが、オオミミは構わず天を引っ張って行った。



     ・     ・     ・



「妙だな…」
 オオミミが出て行った少し後、サカーナが呟いた。
「妙?」
 ニラ茶猫が聞き返す。
「奴らもうとっくに射程距離に入って来ている筈なのに、
 全然この船に攻撃して来ねぇ。」
 砲撃音とそれに伴う振動が船内に響き渡った。
 敵機がその砲撃を掻い潜りながら、『フリーバード』に接近してくる。

「攻撃を避ける事に専念しているのか…?」
 ニラ茶猫が腕を組みながら言った。

「それにしたって、機銃を一発も撃たねぇ、撃つつもりもねぇってのは変だろう。」
 サカーナが口元に手を当てる。
「野郎、何が目的だ…?」
 サカーナが、低い声で呟いた。

305ブック:2004/05/09(日) 23:24



     ・     ・     ・



「糞っ、的が小さ過ぎて当たりゃしねえ!!」
 甲板に取り付けられた対空用機銃を連射しながら、砲手が舌打ちする。
 そうしている間にも、どんどん敵機は『フリーバード』の上空から飛来してくる。

「!!!!!!」
 と、三機のうちの一機が銃弾の餌食となって空中で飛散した。
「BINGO!!」
 砲手が歓声を上げる。
 しかし、次の瞬間砲手の目には信じられない光景が飛び込んできた。

「―――!?」
 砲手は我が目を疑った。
 かなり近くまで接近してきた別の敵機の中から、人が飛び出してきたのだ。

 馬鹿な。
 この船に飛び移るつもりなのか?
 砲手は絶句した。

 飛行中の飛行機から、同じく飛行する飛行船に飛び移るなど、
 およそ狂気の沙汰である。
 そんな事をすれば、間違い無く雲の下へとまっ逆さまだ。
 よしんばこの船の甲板に飛び移れたとしても、あの高さ。
 着地と同時に落下の衝撃で重症は免れない。
 そんな事、人間に―――


「!!!!!!」
 しかし、砲手のその予想は脆くも覆された。
 甲板に、戦闘服に身を包んだ男が大きな音を立てて着地したかと思うと、
 何事も無かったかのようにゆっくりと立ち上がった。

「……!!!」
 絶句する砲手。
 それはまさに、悪夢のような光景だった。

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
 男が砲手目掛けて飛び掛かる。
 砲手が慌てて逃げようとするも、もう遅い。
 そのまま男の腕が砲手の心臓めがけて―――


「GUAAAAAAAAAAAAA!!!」
 しかしその直前で、上段の回し蹴りを喰らって、男の体が大きく吹き飛ばされた。
 男が尻餅をつき、すぐに体勢を立て直す。

「やれやれ、開いた口が塞がりませんね…」
 砲手を庇うように、タカラギコが男の前に立った。
 その服には、所々にガラス片がくっついている。
 男が『フリーバード』の上に降り立つのを見てすぐに、
 ブリッジの窓を突き破って直接甲板まで飛び出して来たからだ。

「もし、あなた。怪我はありませんか?」
 タカラギコが砲手を脇目に見ながら尋ねる。
 しかし、それから飛来した男には決して隙を見せない。


「……!!」
 砲手が射撃を中断した隙を突いて、もう一つの敵機から今度は女が飛び降りて来た。
 着地した栗色の髪のその女が、タカラギコの方を見やる。

「やれやれ、まさかこんな方法でこの船に乗り込んで来るとは…
 どこぞの市長になったハリウッドスターや、
 拳法使いのスタントマンでもそんな事やりませんよ。」
 タカラギコが呆れ顔で呟く。

「……」
「……」
 男と女が、何も言わずに顔を見合わせたかと思うと、
 いきなり女が素手で床に大穴を開けた。
 そして、女はその穴に入って船の中へと侵入する。

「待ちなさい!」
 それを追おうとするタカラギコの前に、男が立ちはだかる。

「…成る程、『この先に進みたければ俺を倒して行け』、というシチュエーションですか。
 燃えますね〜、そういうの…」
 タカラギコは懐に手をやると、そこから大刃のナイフを一振り取り出した。

「…下がっていた方がいいですよ。」
 タカラギコが今度は砲手の顔を見ずに言う。
 それに従い、砲手は一目散に対空用機銃の影に隠れた。

「さて、では―――」
 タカラギコはナイフを手の中でクルクルと回転させ、男に向けて構えた。
「死合いを始めるとしましょうか。」

306ブック:2004/05/09(日) 23:25



     ・     ・     ・



「ちょっと、引っ張らないでよ!自分で歩けるわ!」
 天がオオミミの手を振り払った。
「ご、ごめん。」
 だから一々謝るな、オオミミ。

「…ごめん。こんな事に、巻き込んで……」
 オオミミが、天に深く頭を下げた。
「別に気にしてないわよ。」
 以外にも、謙虚な返答をする天。

「…それに多分、あいつらはアタ―――」
 そう言いかけて、天はハッと口を押さえた。
 何だ。
 何か心当たりでもあるのか?

「…?どうかしたの?」
 不思議そうに尋ねるオオミミ。
「な、何でもな…」
 天が慌ててそう答えようとした時―――


「!!!!!!!!!」
 突然、廊下の向こうの通路の天井が崩れた。
 そこから、栗色の髪をした女が降り立つ。
 何だあいつは。
 一体どうやってここに…

「…あらあら、いきなり目当てのものを見つけられるなんて運がいいわ。」
 女が僕達を舐め回すような目で見つめた。
 目当てのもの?
 こいつ、何を言ってるんだ?

「お前は、誰だ…!」
 オオミミが女に対して身構える。
 僕も、オオミミの外へとビジョンを実体化させた。

「あら、かわいい坊やとスタンドね。
 どう、さっきあなた達がぶち殺してくれやがった私の部下の穴埋めに、
 あなた私の奴隷にならないかしら?」
 僕の姿が見えている!?
 まさか、こいつもスタンド使いなのか?

「嫌だ。」
 即答するオオミミ。
 どうだ、舐めるなよおばさん。
 オオミミにそんな色仕掛けなど通用するか。

「…仕方無いわね。
 それじゃあちゃっちゃと血を吸って縊り殺させてもらおうかしら。
 あなたの血は、さぞや舌の上でしゃっきりぽん!と踊るでしょうね。」
 女の口元から、二本の牙が覗く。
 この女、吸血鬼か…!

「!!!!!!!」
 一気に、距離が詰まった。
 気がついた時にはもう、女は僕とオオミミの目の前まで迫っている。
 人間の瞬発力じゃ、無い。

「SSSSSIIIIIIEEEEEEEEEEEAAAAAAAA!!!!!!!」
 女は手の爪を鋭く伸ばし、オオミミに向かって横から腕を抉り込んで来る。

「『ゼルダ』!!」
 オオミミが、叫ぶ。
(無敵ィ!!)
 僕の腕で、女の腕を受けた。

 重い…!
 何て力だ。

「『ベアナックル』!!」
 女の背後に、大きな鉈を両手に持ったボロ布を纏った大男のビジョンが浮かび上がった。

「SYAGYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
 女のスタンドがオオミミに向かって鉈を振り下ろす。
(オオミミ!!)
 女の腕を弾き、すぐに女のスタンドの攻撃を食い止める。
 こいつのスタンド、近距離パワー型―――

307ブック:2004/05/09(日) 23:26


「―――!!」
 次の瞬間、オオミミの右腕と左脚が宙を舞った。
 いや、正確には女の爪で切り落とされた。

「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
 天の絶叫が周囲に響き渡る。
 しくじった…!
 気をつけるのは、奴のスタンドだけじゃない。
 奴自身も、並外れた身体能力を持つ吸血鬼だったんだ。
 奴のスタンドでの攻撃を受けて、
 ガードが疎かになった所を狙われた…!

「……!……が…あ……!!」
 片腕と片脚を失い、地面に倒れたオオミミが呻き声を上げる。
 それと共に、彼の生命力、精神力が支えである僕の力も失われていく。
 完全に、してやられた。
 僕のミスだ…!

「んん〜。いい声、いい表情。
 一撃で殺さなかった甲斐があるわ。」
 女が邪悪な笑みを浮かべながら爪についたオオミミの血を舐めた。
「しゃっきりぽん!」
 訳の分からない単語を女がのたまう。

「それじゃあ、そろそろ死んでもらいましょうか。」
 女がオオミミへと歩み寄る。

 どうする…!
 使うか!?『力』を。
 駄目だ。
 あまりにもオオミミが消耗し過ぎている。
 だけど、このままじゃどっちみち…

「さよなら。死んで私の究極のメニューになりなさい。」
 女がその爪をオオミミへと伸ばし―――



「!!!!!!!!!」
 その瞬間、無数の刀剣が女の体を貫いた。

「――――――!?」
 女がその衝撃で叩きつけられる様に床に倒れる。
「くっ…!」
 すぐさま起き上がろうとする女。
 しかしそこに、更なる刀剣が女の体へと突き刺さった。

「何をしている…」
 低い声が、オオミミの後ろから聞こえてくる。
 あれは…三月ウサギ!
 来てくれたのか…!
「オオミミ、大丈夫か!?」
 そこに、ニラ茶猫も駆けつけて来る。

「……三月ウサギ…ニラ茶猫…どうし、て……」
 オオミミが行きも絶え絶えに二人に告げる。

「こいつが甲板に降りて、船に大穴開けて中に入ってくるのをブリッジから見たんでな。
 で、来てみれば案の定この様だ。」
 三月ウサギが、再び起き上がろうとした女に向かって、
 マントから取り出した刃物を投擲する。
 彼の手から放たれたショートソードが、正確に女の眉間へと突き立てられた。

「ニラ茶、オオミミの腕と足を『ネクロマンサー』でくっつけておいてやれ。
 そこで痛い痛いと喚かれては、気が散る。」
 三月ウサギがニラ茶猫に顔を向けた。
「ああ。」
 ニラ茶猫が、オオミミの腕と足を拾ってオオミミの傍にしゃがみこんだ。

「う……」
 またもや地面に倒された女が、よろよろと立ち上がろうとする。
 三月ウサギが、何も言わないまま女に向かって刃物を投げつけた。
 三度目の正直とばかりに、今度こそ女はそれを自身のスタンドで防御する。

「…たまらんな。
 頭を完全に破壊するまで死なないというのは。」
 三月ウサギがやれやれと肩をすくめた。

「…酷い人ね。肌は女の命なのに……」
 女がよろよろと立ち上がり、体に刺さった刀剣を引き抜き始めた。
 凄絶な光景である。
 常人なら既に十回以上死んでいるというのに。
 これが、吸血鬼の再生能力か。

「なに…肌の心配をする必要など、もうお前には無い。」
 三月ウサギのマントから、数多の刀剣が出現しては地面に刺さる。
 長いもの短いもの細いもの太いもの…
 ありあらゆる形状の刀剣がどんどん床に突き刺さっていった。
「どの道お前は、ここで死ぬ。」
 三月ウサギがそのうちの一本を手に取り、女に向かって突きつけた。



     TO BE CONTINUED…


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