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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

375:2004/05/21(金) 23:28

「―― モナーの愉快な冒険 ――   吹き荒れる死と十字架の夜・その1」



 ASA第14艦隊、旗艦『フィッツジェラルド』。
 しぃ助教授は、その艦のブリッジから窓の外を眺めていた。
 眼下には真っ暗な海がどこまでも広がっている。
 遥か前方に、ありすが艦長のイージス艦『ヴァンガード』の姿がうっすらと見えた。

「…モナー君の様子は?」
 しぃ助教授は、外に視線をやったまま丸耳に訊ねる。
 後ろに控えていた彼は、素早く口を開いた。
「ねここの報告では、大人しく部屋で眠っているようです。
 どうやら、1日か2日でこの任務が終わると思い込んでいたとか…」

 しぃ助教授は微笑んだ。
「…モナー君らしいですね。で、帰るとか言い出しませんでしたか?」
 丸耳は首を振る。
「いえ。そのような事は無いようです。リナーさんを同乗させた事が功を奏していますね…」

「彼には、働いてもらわないといけませんからねぇ…」
 しぃ助教授は、腕を組んでため息をついた。
 ここから見える海は、無限に広がっている。
 そして、この海のどこかに確実に敵がいるのだ。

 丸耳は時計を見た。
 現在、午前5時。
 もうそろそろ、夜も明ける頃だ。
 彼は地図に視線をやった。
「横須賀から第1護衛隊群、佐世保からは第2護衛隊群の出港が確認されています。
 明日の夜には、危険海域に入るでしょう」
 丸耳は、海を眺めるしぃ助教授の背中に告げた。

「両艦隊共に、イージス艦が配備されていますね…」
 しぃ助教授は、艦長用の椅子に座りながら呟いた。
 丸耳は静かに頷く。
「…はい。そして、敵は海上自衛隊の艦隊のみとは限りません。
 本部ビルに海上からミサイル攻撃を仕掛けてきたのは、ロシアのバルチック艦隊でしたし」

「米海軍の第7艦隊に遭遇するのだけは避けたいですね…」
 しぃ助教授は大きく背伸びをして、そのまま頭上で腕を組む。
 丸耳は、地図をチェックしながら言った。
「そういう事態を避ける為、モナー君に乗ってもらったんでしょう?
 彼の探知能力は、用途によってはイージス艦搭載のフェーズド・アレイ・レーダーをも上回りますから」

「監視衛星が使えないのは、痛いですね…」
 しぃ助教授はため息をつく。
 ASAの所有する監視衛星は、米軍の電子戦部隊によってハッキングされたままなのだ。
「戦略衛星兵器『SOL−Ⅱ』はハッキングを逃れました。それだけでも幸いですよ…」
 丸耳は慰めるような口調で告げる。


 ブリッジに、職員の1人が駆け込んできた。
「各監視班から連絡が入りました。しぃとモララー、レモナ、つーの家を米兵が包囲しているようです!」
 職員は、報告書に目を通しながら告げる。

 しぃ助教授と丸耳は、同時に顔を上げた。
「米兵が…?」
 しぃ助教授は顎に手を当てる。
 丸耳は、しぃ助教授に視線をやった。
「米軍内だけで処理する気なんでしょう。なにせ、官邸に侵入した賊の1人は統幕長の息子ですからね。
 自衛隊の方には、そこらの報告は行かない可能性が高いと思われます」

「統幕長の息子が加担している事が自衛隊側に漏れれば、いろいろと面倒な事態になる…ってとこですか。
 とにかく、彼等がノコノコと家に戻るわけがないでしょうに…」
 しぃ助教授は艦長席から立ち上がると、再び窓の外を眺めた。
 考え事を抱えている時、彼女には遠くを眺めるというクセがあるようだ。

「しぃとモララーは家族と同居しています。その家族は現在も在宅中で、迅速な保護が必要です。
 監視班だけでは、家を包囲している米兵に太刀打ちできないと思われますが…」
 職員は続けて報告した。
 しぃ助教授は、表情を曇らせて顎に手を当てる。
「しかし、そっちに回せる兵員は…」

 丸耳が顔を上げ、無言でしぃ助教授を見た。
 まるで、何かを訴えるように。
 しぃ助教授は微笑んで言った。
「…許可します。貴方1人だけなら、ここからでも行けるでしょう?」

「了解しました。10分ほど席を外します」
 丸耳の背後に、彼のスタンド『メタル・マスター』のヴィジョンが浮かび上がる。
 その直後、丸耳の姿はスタンドと共に虚空に消え去った。
 ブリッジから、丸耳の気配が完全に消える。

「監視班は撤退してもらって結構です。彼が保護しに行きましたから」
 しぃ助教授は、報告に来た職員に告げた。
「はっ!」
 職員は一礼すると、ブリッジから出ていった。

「ギコ君達は、公安五課と結託しましたか。まあ、正面から敵対しないだけマシですかねぇ…」
 しぃ助教授は、誰もいなくなったブリッジで1人ため息をついた。

376:2004/05/21(金) 23:29



          @          @          @



 俺は、机から顔を上げた。
 荒廃した夜の教室。
 いい加減、見慣れた風景だ。

「今度は、何の用モナ?」
 俺は、教卓にもたれている男に訊ねた。
「…今度は、とは心外だな。私が意図して君を呼んだのは、まだ2回目だ」
 『殺人鬼』は、ぬけぬけと口を開く。
 つまり、前回は俺の方から勝手に来たと言いたいのだろう。
「それで、何の用モナ? 手短に頼むモナ」
 俺は、奴を見据えて言った。

「君の体の事で、伝えなければいけない事柄がある」
 『殺人鬼』は、珍しく即座に本題に入ったようだ。
 奴はそのまま言葉を続けた。
「…まず、君は吸血鬼にもかかわらず痛覚を持っている」

「え…?」
 俺は困惑した。
 そういえば、皮膚感覚は人間だった頃と変わりはない。
 『殺人鬼』は、当惑する俺を尻目に言った。
「それは、私がそういう風に君の回路を繋いだからだ。
 君のような緊張感のない人間が痛覚を失えば、戦闘において不利な面が多いからな。
 痛みというのは重要なシグナルだ。その感覚を大切にするがいい」

 緊張感のない、というフレーズに文句を言おうと思ったが、押し留まる。
 日中にカーテンを開け、危うく塵になりかけた事もあったのだ。
 確かに、我ながら緊張感がないとも言える。
 『殺人鬼』はさらに言った。
「それと、もう一つ。食事に関する感覚も、人間時のものに戻した。
 空腹感や満腹感、味覚等、人間だった頃と変わらないはずだ。
 血に関する過剰な欲求も、君の精神回路から排除してある。
 何故そうしたかは… あの娘を見ていれば分かるな?」

「…」
 俺は無言で頷いた。
 ここは、礼を言うところだろうか。
 しかし精神回路を他人にいじくられるのは、これっぽっちもいい気はしない。
「無論、私が手を伸ばせるのは君の感覚だけだ。
 血の摂取が不要になった訳ではないから、その点を誤るな」
 『殺人鬼』はそう補足した。
 昼食や夕食の時の疑問が、これで解けたようだ。

 …ともかく。
 俺は、こいつに謝らなければならない事がある。
 いかに『殺人鬼』がいけ好かない奴とは言え、この体は奴のものなのだ。
 しかし、その事に奴は触れてこない。

「…怒ってないのか?」
 俺は、『殺人鬼』に訊ねた。
「何をだ?」
 『殺人鬼』は聞き返す。
「お前、代行者だったんだろ? なのに、俺がこの肉体を吸血鬼にして…」
 俺は、躊躇しながら言った。

「…そんな事を気にするような感情は、とっくに削ぎ落とした」
 そう言って、『殺人鬼』は口の端を歪ませる。
「自身を存続させる為に、私自身の『殺す』という属性をより強化する必要があった。
 『蒐集者』が、愚鈍にも『最強』を追求し続けたようにな」

 俺は、無言で『殺人鬼』を見据えた。
 その表情は変わらない。
「――故に、今の私はこのザマだ。
 もはや、私はただの『殺人鬼』。殺す事のみを目的とした単一目的生物。
 『破壊者』としての理念や誇りなど、すでに私には無い」

「…」
 奴を真っ直ぐに見据える俺。
 知ってしまったのだ。
 こいつが何者なのか。
 そして、『蒐集者』との関わりを。

 『殺人鬼』は、俺の視線を振り払うように言った。
「それに、『アウト・オブ・エデン』は人間だった頃の君にはオーバースキルだった。
 吸血鬼の強靭な肉体と精神力があれば、以前より使えるようになるだろう」
「使えるようにって… 前からお前は言ってるけど、良く分からない。
 『アウト・オブ・エデン』は、視えるものを破壊できるスタンドじゃないのか?」
 俺は訊ねた。
 このやり取りは、今までに何度なされたのだろう。

 『殺人鬼』は口を開いた。
「私は、『蒐集者』を殺す為に存在する。
 故に『アウト・オブ・エデン』が『アヴェ・マリア』に劣るという事は絶対にない。
 何度も言うが、『アウト・オブ・エデン』は『視たものに干渉できる』スタンドだ」
「だから、それが…!!」
 俺は口を挟む。
 こいつの謎かけには、もう付き合っていられない。

「視たものを『破壊』できる以上、その逆も可能なのだ」
 『殺人鬼』は、俺の文句を封じるように告げた。

 ――その逆?
 『破壊』の反対は…

「『創造』だ」
 奴にしては珍しく、あっさりと答えを口にした。
 『創造』…?
 『アウト・オブ・エデン』で、一体何を造り出すというんだ?

377:2004/05/21(金) 23:30

 『殺人鬼』は、俺の疑問に答えるように言った。
「以前も言ったが、君は無意識にそれをやっている。
 君は『異端者』の戦闘技術を自身の肉体に『創造』し、それを自然に活用している。
 学校の屋上で『蒐集者』と戦った時には、『私』の戦闘技術を『創造』し奴を解体した」

 それも…『アウト・オブ・エデン』の能力?
 それが、視たものを『創造』するという事なのか?

「『異端者』と言えば…」
 『殺人鬼』は話を変えた。
「あの娘が助からないのは、君自身『アウト・オブ・エデン』でもう分かっているだろう?」
「…」
 俺は口篭る。
 そう。
 そんな事は分かってる。
 今さら、こいつに言われるまでも無い。

「だから、もうあの娘には構うな。どうせ抱こうともしない女だろう?
 君があの娘と最後の距離を置くのは… それ以上近寄れば、消えて無くなる予感があるからだ」
 『殺人鬼』は告げた。
 いつもの顔で。
 そのままの無表情で。
 俺は、奴を睨みつける。
 そんな事で、奴の言葉が止まるはずがない事は分かっていた。

「その予感はある意味正しい。思い残す事が無くなった人間など、脆いものだ。
 だが、結局は同じ事だぞ? 君がどう思おうが、結果は変わらない。それなら――」
「それなら、諦めてリナーを放っぽり出せって事か…!?」
 俺は机を叩いて立ち上がる。

 『殺人鬼』は言葉を続けた。
「殺した方がいいと言っている。あの娘自身、それを望んでいるはずだ。
 ならば、君自身の手でそれを――」
「黙れッ!!」
 俺は『殺人鬼』に駆け寄ると、その襟首を掴んだ。
 腕に力が込もる。
 『殺人鬼』の身体が、教卓にぶつかった。
 大きな音を立てて倒れる教卓。
 それでも、奴は涼しい顔を崩さない。
「お前には、殺す事しかないのかッ! リナーの事を知ってるくせに…!
 リナーがどんな生き方を強いられたか知っているくせに、お前はッ…!!」

「殺せないなら、君が守れ。最期の瞬間まで、命を賭けてな――」
 そんな事を、『殺人鬼』は言った。
 憤慨する俺を見、どこか安心したような表情を浮かべて。

 俺は、腕の力を緩めた。
 そして、奴の襟首から手を離す。
 『殺人鬼』は、襟元に手をやりながら言った。
「あの娘を闇に引き込んだのは、他ならない私だ。
 私が、あの娘を『教会』という闇に導いた。
 己の才覚… スタンドという異能ゆえに捨て子となっていた身。
 その忌み嫌われた異能を、少しでも活かせる場所を与えてやりたかったのだが… それも適わなかった。
 与える振りをして、私は彼女から奪ったのだよ。人並みの人生と、幸福な生活をな」

 俺は『殺人鬼』の顔を見た。
 奴も、俺の顔を見据えている。
 俺の目に、先程までの怒りはないだろう。

「あの娘は、自分が君を闇に引きずり込んだと自責しているが―― 最初に引きずり込んだのは私なのだ」
 『殺人鬼』は告げた。

 それは――
 それは違う。
 こいつのやった事は、間違ってはいない。
 こいつは… 人と異なる能力が、持ち主の人生を破壊する事があるという事を知っていた。
 その力が大きければ、大きすぎる程に。
 こいつが捨てられていたリナーを見つけた時、何を重ねたのか。
 『蒐集者』の姿か、それとも自分自身か。

 こいつは、教えたかっただけだ。
 世の中には、暗い事ばかりじゃないという事を。

「私が拾わなければ、あの娘は幸せに生きる事ができたのか――?」
 『殺人鬼』は自問するように言った。

「悪いのはお前じゃなく、『蒐集者』が…」
 俺の言葉は、言い終える間もなく否定される。
「あいつの変調に寸前まで気付かなかったのも、この私だ。
 『教会』の腐敗、『蒐集者』の崩壊、枢機卿の暗躍。それを見過ごした私の罪。
 あいつをあそこまで追い込んだのも、おそらく私だろう」
 そう言って、窓の方に歩み寄る『殺人鬼』。

 そんな救えない話があるか?
 リナーは『蒐集者』の手に落ち、こいつは『殺人鬼』に身を落とした。
 『蒐集者』を殺す為だけに――
 そのように自らを定義したのだ。
 そう、誰も救われない。

378:2004/05/21(金) 23:31

「あいつは、もう死んだ方がいい。無論、私もな…」
 窓枠に手を添え、外を見ながら『殺人鬼』は言った。
 まるで、闇に包まれた夜空に何かが見えているかのように。
 俺は、その背中に何も言えなかった。

 そして、『殺人鬼』は俺の方を向く。
「君とあの娘との出会い。これは『教会』の長、枢機卿に仕組まれたものだ。
 以前の私と関わりのあった娘を送り込む事で、『私』の覚醒を促したのだろう」

 やはり、偶然じゃなかったのか。
 仕組まれた出会い。
 それも、薄々気付いていた事だ。

 『殺人鬼』は言葉を続けた。
「そして、それは『教会』の目論見通りとなった。
 君は『私』の強さを徐々に取り戻し、『私』自身も存在がより明確化した。
 だが… ただ1つだけ、向こうが意図していなかったことが起きた」

「…?」
 『殺人鬼』の顔を見る俺。
 奴は、俺の目をしっかりと見据えて言った。
「それは、君と『異端者』が愛し合ってしまったことだ」

 …!!
 真面目な顔をして、こいつは何を…!!

「そ、それは関係ないモナ!!」
 俺は思わず叫んだ。
「何を照れている? 戦闘において、色恋沙汰は多いに有効だ。
 惚れた女を守る際、男は不相応な力を発揮するものだと相場は決まっている」
 少しだけ、ニヤついているようにも見える。
 明らかに俺をからかっているのだ。
 こいつ、格好つけて何が『感情を削ぎ落とした…』だ!
「モ、モナは、そんなんじゃなくて…!」
 俺はとにかく否定する。

 『殺人鬼』は、一転して真剣な表情を浮かべた。
「私は、周囲を不幸にすることしかできなかった。
 『蒐集者』も、あの娘も、その妹も、誰1人救えなかった。だから――」
 確かな目線で俺の顔を見る『殺人鬼』。
 その目には、確固たる意思が宿っていた。
「――君が救え。せめて、あの娘だけは君が救うんだ」

「…ああ、約束する」
 俺は頷いた。
 確か、しぃ助教授とも同じような約束したはずだ。
 まさか、こいつが同じ事を口にするとは…


 突然、地面が大きく揺れた。
「地震…!?」
 俺は、教室の床に視線を落とす。

『朝だよー!!』

 どこからか素っ頓狂な声が響いてきた。
 女の子の声だ。
 どこかで聞いた事があるような…

「現実世界の君は、ASAの艦内で就寝中だ。賑やかな事だな…」
 『殺人鬼』は、呆れたように言った。

『朝――ッ!!』

 教室が崩壊する。
 天井が、窓が、床が、机が、椅子が、ガラガラと崩れ…

「―――――――−−…」
 そして、『殺人鬼』は俺に何かを訊ねた。
 奴は何と言ったのか――

379:2004/05/21(金) 23:31



          *          *          *



「起きろ――!!」
 腹に衝撃。
 俺は、ベッドで眠っていたはず。
 一体何事だ…!?

「朝――!!」
 この声は… ねここだ。
 ねここが、俺のベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねている。
 大きな声で、朝の到来を訴えながら。
 たまに腹や足を踏んづけるので、かなりのダメージだ。

「お、起きてるモナ…! 止めるモナ…!」
 俺は動転して言った。
 何だこれは。
 ASAでは、これが普通の起こし方なのか…?

「いたた…」
 俺は呻きながら体を起こした。
 保健室に似た、窓のない部屋。
 ここは、ASAが所有するイージス艦『ヴァンガード』。
 ゲストである俺に与えられた部屋だ。

「おはよう! 今日もいい天気だよ」
 ベッドに乗っかったまま、ねここは元気良く言った。
「ああ… おはようモナ」
 俺は、ねここに挨拶を返す。


「…朝から何を騒いでいる?」
 リナーの声。
 同時に、俺の部屋のドアが開く。

 これはヤバイ。
 そう。
 俺のベッドの上には、ねここが乗っかっているのだ。
 宇宙ヤバイ――

 ドアが完全に開いた。
 そこには、リナーが立っている。
「こここ、これは違うモナ!!」
 何が違うのかは分からないが、俺はとにかく叫んだ。
 同時に『アウト・オブ・エデン』を発動して、猛攻に備える。

「…Va te faire foutre」
 リナーは俺とねここを見てそう呟くと、ドアを閉めてしまった。
 その残響音が部屋中に冷たく響く。


「…さすがモナーさん。朝からラブコメ爆発ですね」
 ねここは他人事のように言った。
「…誰のせいだと思ってるモナ」
 俺は嘆息する。
 なんで、朝の早くからこんな目に…

「さっきのリナーさんの言葉の日本語訳、聞きたいですか?」
 ねここは、ようやくベッドから降りて言った。
「頭痛がしそうだからいいモナ…」
 やれやれ。
 何とか誤解を解かなければならない。
 まあ… ギコと違って、こちらにやましい事はないのだ。
 説明すればきっと分かってくれるだろう。

「朝食は、食堂で適当に済ませて下さいね」
 ねここは言った。
 食堂の場所は、昨日の夜に案内されている。
「…で、モナはいつ働けばいいモナ?」
 俺はねここに訊ねた。
 それに対し、少しだけ真剣な表情を浮かべるねここ。
「まだ、この艦隊は安全域にいます。今日の夜には危険域に入るでしょう。
 モナーさんの出番はその時ですね…」

「それまでは、適当に過ごしていいモナか?」
 俺は訊ねた。
 ねここは頷く。
「…じゃあ、私は朝の配達人から副艦長に戻ります。
 リナーさんに塵に還されるのはイヤなので、今朝の誤解は解いといて下さいね」
 そう言い残して、ねここは素早く部屋を出ていった。

 …だったらやるなよ!
 と、ねここの出ていったドアに向かって呟いたのは言うまでもない。
 さて、夜までは自由と言っていたな。
 …と言っても、特にする事はない。
 ねここの仕事の邪魔をするのも悪いし、ありすは怖いし、他に知り合いもいないし…
 やはり、リナーと仲直りするのが先決のようだ。

 ふと、鏡の中の自分と目が合った。
 何も変わらない普段の俺の顔。
 そして、『殺人鬼』として存在を特化させた『私』の顔。
 『殺人鬼』は、さっきの夢の中で最後にこう言ったのだ。

「彼女にとって『死』が救いとなるならば、君は本当にそれが出来るのか――?」と。


 俺は大きく首を振った。
 くすぶっていた眠気が、俺の体から離れていく。
「やれやれ、朝からリナーのご機嫌取りモナか…」
 俺は呟きながら、ベッドから腰を上げた。
「さ〜て、どうするモナ…?」
 どうしたら機嫌を直してくれるのだろう。
 武器庫から銃器を失敬して、プレゼントするとか…

 俺は、欠伸をしながら部屋を出た。
 日光は浴びれないが、今日もいい天気だ。



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