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スタンド小説スレッド3ページ
1
:
新手のスタンド使い
:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●
このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。
◆このスレでのお約束。
○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。
○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。
○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
望ましくない。
○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
発動させるのも自由。
★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。
595
:
さ
:2004/06/13(日) 19:12
「―― モナーの愉快な冒険 ―― 吹き荒れる死と十字架の夜・その8」
@ @ @
『フィッツジェラルド』のヘリ整備員は、空を見上げていた。
空を埋め尽くす程の航空機、そして降下してくる吸血鬼。
その中で、1機の黒いヘリが縦横無尽に駆けていた。
あれは、『ブラックホーク』。
多くの国の軍隊で採用されている、優良な汎用ヘリコプターだ。
どれだけ性能のいいヘリでも、戦闘機を敵に回せばひとたまりもないはず。
だが、そのブラックホークは違った。
海面スレスレの超低空飛行で、巧みに敵ミサイルのホーミングを逃れている。
戦闘機の死角を熟知し、低空に占位している。
そして、対地ミサイルであるヘルファイアを降下中の吸血鬼に命中させている。
あのヘリは一体…
我がASAのヘリではないし、自衛隊のものでもないようだが。
しかしそれだけの神業でも、敵数の多さには抗えなかった。
囲い込むように発射されたサイドワインダーの直撃を受け、たちまちのうちに炎上したのだ。
いかに耐弾性が重視されたヘリといえども、ミサイル相手ではひとたまりもない。
そのままブラックホークは海面に突っ込むと、水没していった。
「…」
ヘリ整備員は、海面を眺める。
だが、他人の事を心配している余裕はない。
この艦が沈むのも時間の問題なのだ。
がっしりと甲板の柵を掴む手。
「!?」
それを直視して、ヘリ整備員は驚愕した。
海から、何かが這い上がってきたのだ。
あれは… ぃょぅ族の男?
そのまま、ズブ濡れのぃょぅは甲板に上がってきた。
口から水をピューと噴き出す。
そして、ヘリ整備員の方に視線をやった。
「ぃょぅ!」
シュタッと片手を上げるぃょぅ。
「…ぃょぅ」
ヘリ整備員は、困惑しながら挨拶を返す。
ぃょぅは甲板に置いてあるV−22・オスプレイに目をやった。
ヘリと航空機の性能を合わせ持った、ASAの誇る機体だ。
スタスタと歩くと、オスプレイの操縦席のドアに手を掛けるぃょぅ。
「あっ、ちょっと…」
ヘリ整備員は、慌ててぃょぅに声を掛ける。
「この機体、武装はされてるのかょぅ?」
ぃょぅは、ヘリ整備員に視線をやって訊ねた。
「あ、はい。しぃ助教授が、アパッチと同程度の武装は備え付けろとおっしゃったので…
って、あの… ちょっと!!」
ぃょぅはヘリ整備員の制止にも耳を貸さず、オスプレイに乗り込んだ。
このオスプレイは、ASAにも1機しかない機体だ。
そして、しぃ助教授のお気に入りでもある。
この機に何かあれば、責任者である自分はどんな目に合わされるか…
「ちょ、ちょっとッ!!」
ヘリ整備員は、オスプレイに飛び乗った。
「…整備員が同乗してくれると助かるょぅ」
操縦席に座って、ぃょぅが言う。
「そういう事ではなくてですねぇ…!」
「離陸するょぅ」
ぃょぅは、操縦席に並ぶパネルを操作した。
オスプレイの機体が、ゆっくりと浮かび上がる。
「操縦性も優良、良い機体だょぅ」
ぃょぅは満足そうに言った。
「…それはどうも」
ヘリ整備員は肩を落とすと、副操縦席に力無く腰を下ろした。
596
:
さ
:2004/06/13(日) 19:14
@ @ @
『教会』の新鋭原子力空母『グラーフ・ツェッペリンⅡ』。
その甲板上に、枢機卿は立っていた。
周囲を護衛するように、機関銃・MG42を手にした軍服の吸血鬼5人が控えている。
そして、その眼前にメガネを掛けた男が片膝をついていた。
「…『解読者』、報告は受け取った」
ほとんど乾いたSS制服の襟を正して、枢機卿は言った。
「はっ。『Monar』より、奪い返した『矢』はここに…」
『解読者』は丁寧な口調で告げると、古めかしい『矢』を差し出す。
「ふむ…」
枢機卿は『矢』を受け取ると、懐に仕舞った。
「残る『矢』は、『アルカディア』によるコピーか。確か『異端者』が所持しているという事だが…」
『解読者』は片膝をついたまま視線を上げた。
「『異端者』や『Monar』及びその仲間の反撃は激しく、我々といえど無傷で殲滅は不可能と判断しました。
こちらに死者がでる可能性がある以上、私の判断で事態を展開させる訳にもいかず…」
「お前が丁寧な口調を使っていると、何かを取り繕っているような感じがしてならんな…」
枢機卿は冷薄な笑みを浮かべると、『解読者』の言葉を遮った。
「…御冗談を。それほど不遜ではありませんよ」
『解読者』は静かにメガネの位置を直す。
「とにかく、『異端者』側の勢力も無視してはおけません」
「…そういう訳らしいな、山田殿」
枢機卿は、背後に控えている山田に話を振った。
彼の手にしている青龍刀は、今までとは異なる形だ。
普段愛用している『青龍鉤鎌刀』は、どうやら破壊されてしまったらしい。
「…私が相対した少年は、類稀なる武芸を誇っていた」
山田は静かに告げた。
「あれを討ち取るのは、そこらの吸血鬼では困難であろう」
それを聞いて、枢機卿は顎に手をやる。
「ふむ… 山田殿がそうまで言うのなら、『異端者』側も相当にやるのだろうな」
「はい。 …そういう訳で、『異端者』追討はなりませんでした」
言いながら、『解読者』はゆっくりと周囲を見回した。
『ロストメモリー』の面々は、艦上で思い思いの行動を取っている。
こちらを注視している者、風景を眺めている者、横たわって眠っている者…
「…では、次の任務は後ほど言い渡す。しばらく休むがいい」
枢機卿はSS制服の裾を翻すと、背を向けて告げた。
「はっ…!」
『解読者』はうやうやしく頭を下げる。
「…ですが、1つ伺いたい事があります」
「…何だ?」
枢機卿は背後を向いたまま、『解読者』の方に視線をやった。
『解読者』は少し間を置いた後に口を開く。
「我等が『教会』は、吸血鬼を殲滅することを目的とした機関。
何ゆえ、その『教会』が吸血鬼を製造するのです? 納得できる回答を伺いたい」
枢機卿は僅かに笑みを見せた。
呆れたようにも受け取れる。
「『解読者』ともあろう者が、愚かな事を…
元より吸血鬼を悪魔的、異端的なものとして捉えたのは、『教会』が絶対正義を行使する為であろう?
神の楽園を守る為、汚れた者は排除する。分かりやすい物語こそ、大衆は必要とするのだ」
『解読者』は視線を上げた。
枢機卿の目をまっすぐに見る。
「千何百年もの間、人心を支配する為の… 方便に過ぎなかったとおっしゃられるのですか?
そこに信仰心など欠片もないと?」
597
:
さ
:2004/06/13(日) 19:14
「フフ…」
笑い声を漏らしながら振り返る枢機卿。
胸の前で組んでいた両腕が、ゆっくりと下がる。
「…知れた事。信仰とは、統治の為の手段に過ぎん。
己を十字架から降ろす事すら出来なかった男に、一体何が出来ると言うのだ…?」
「だから、自身も吸血鬼になられたという訳ですか…」
『解読者』は、懐から何かを取り出した。
あれは… 何の変哲もないワイングラスだ。
「ならばその御身、塵に還させて頂く――!」
『解読者』は、そのままワイングラスを甲板に落とした。
ガラスの破壊音が周囲に響く。
その瞬間、5人の護衛が一斉に動いた。
素早い動きで、枢機卿の頭部に機関銃の銃口を突きつける。
「…!!」
枢機卿は即座に拳銃を抜くと、瞬時に護衛吸血鬼達の頭部を撃ち抜いた。
頭を失った5人の吸血鬼が、ドサドサと力無く甲板に転がる。
「裏切るかッ! キバヤシッ!!」
枢機卿の両耳からは、血が流れ出ていた。
ワイングラスが割れる瞬間、自ら鼓膜を破ったのだ。
「…職務を実行しているに過ぎません。代行者は、吸血鬼を滅ぼすために存在していますので。
強いて言うなら、裏切ったのはあなたの方かと…」
『解読者』・キバヤシは、身を翻して立ち上がった。
肥満した男が、素早くキバヤシに走り寄る。
この男も『ロストメモリー』の1人であろう。
「ガァァァァァァァァッ!! この曙の前で…!」
キバヤシは、甲板に自らの靴を強く擦り付けた。
高い音が周囲に響く。
「なッ!!」
曙と名乗った男の背後に、がっしりとしたスタンドのヴィジョンが浮かぶ。
そのスタンドは、本体である曙の頭部に強烈な張り手を食らわした。
「…」
曙の頭部は粉々に吹き飛び、その巨体は甲板の上に横たわった。
吸血鬼といえど、ここまで頭部を破壊されては再生は不可能である。
「俺と相対した時から、既に勝負は決まっていたんだよ…!」
キバヤシは、不様に転がった曙の亡骸を見下ろして言った。
「覚悟――ッ!!」
山田の青龍刀が、隙だらけのキバヤシに迫る。
「させんよッ!!」
その瞬間、キバヤシの影から1人の男の姿が浮き上がった。
手にしている狙撃銃・ドラグノフで、青龍刀での一撃を受け止める。
「…ッ!」
男は、その余りの勢いによろけて1歩退がった。
「大した威力だ。全ての影を一点に集めて、なお受け切れんとはね…」
素早く体勢を立て直す男。
「…すまんな、ムスカ」
キバヤシは男に告げた。
「礼は後にしろ! 来るぞ!!」
ムスカは叫ぶ。
「キモーイ!」
「キモーイ!」
酷似した2人の女学生が、キバヤシとムスカを囲むように立った。
さらに、山田の第二撃が迫る。
キバヤシは、懐から拳銃を取り出した。
「そのようなもので、我が斬撃が止められるかァッ!!」
山田が咆哮する。
ムスカの反応は間に合わない。
その青龍刀が、キバヤシの頭部に振り下ろされる…
「退け、山田殿ッ!! ヤツの『イゴールナク』は、音に暗示を重ねる能力だッ!!」
枢機卿が怒鳴る。
「…!?」
だが山田が退くより、キバヤシが銃を撃つ方が僅かに早かった。
銃声が響き、その銃弾は甲板にめり込む。
元より誰かを狙ったわけではない。
山田は、その銃声を至近距離で耳にしてしまった。
「…!」
山田は素早く転進すると、女学生の1人に斬りかかる。
「…キモーイ!!」
女学生がスタンドを発動させる間もなく、山田は女学生を斬り伏せた。
返す刃で、もう1人の女学生の身体を両断する。
「…もらったよ、お嬢さん」
ムスカはドラグノフを軽く回転させると、2人の女学生の頭部を撃ち抜いた。
法儀式が施され、波紋の威力を帯びた弾丸だ。
女学生2人の体はたちまち塵と化した。
「うぉぉぉぉぉッ!!」
そのまま、山田は枢機卿に斬りかかる。
「くッ!!」
枢機卿は、懐から指の間に挟んで4本のバヨネットを取り出した。
そして、山田の攻撃を受け止める。
青龍刀とバヨネットがぶつかり合い、激しい音を立てた。
「…さすが山田殿。我が剣術では、及ぶべくもないか…」
枢機卿のバヨネットが4本とも砕け落ちる。
その右腕は根元から断ち切られ、甲板の上に落ちた。
すかさず、山田が斬りかかる。
598
:
さ
:2004/06/13(日) 19:15
「歯車王!!」
枢機卿は、飛び退きながら叫んだ。
彼の背後から、山田目掛けバルカン砲が発射される。
完全に攻撃態勢に入っていた山田は、その弾丸を不意討ちに近い形で受けた。
「ぐゥッ!!」
胴部にバルカン砲の掃射を食らい、山田は甲板の上に崩れ落ちる。
「行け、歯車王!!」
枢機卿は自らの右腕を拾うと、背後に立つ円筒状の機械人形に命令した。
「…私/我々ハ排除スル。オマエ達、『教会』ニ仇ナス異端者ヲ…」
歯車王は、ローラー移動でキバヤシとムスカに高速接近する。
そして、胴部に備え付けられたバルカン砲を掃射した。
「機械…? あれも『ロストメモリー』かね? 過去に命を落としたスタンド使いには見えないが…
ラピュタ王である私の前で、王を名乗るとは何事だッ!! 『アルハンブラ・ロイヤル』!!」
ムスカは、影の盾を眼前に展開した。
バルカン砲の弾丸は、影の盾によって叩き落される。
その瞬間に、歯車王はムスカとキバヤシの目前まで接近していた。
ボディーから突き出した腕部の先に、高出力のレーザーで構成された剣が突き出る。
「『デウスエクスマキナ』… 破壊/解体/殲滅ヲ実行スル…」
「機械には暗示が効かないとでも…?
随分と俺の『イゴールナク』を過小評価しているな、枢機卿!!」
キバヤシは懐から硬貨を取り出すと、歯車王に向けて弾いた。
硬貨は歯車王のボディに当たり、軽い金属質の音が響く。
「…? 我ハ我ハ/我々我々ハ我々々々々々々々/々々々々々…」
突如、歯車王は暴走を始めた。
キバヤシとムスカをすり抜け、そのまま直進していく。
歯車王は甲板から飛び出し、そのまま海中に没した。
「プログラムの基幹部に、何箇所かヌルポを埋め込んだ。デバッグでもしてやるんだな…」
キバヤシは、枢機卿を見据えて言った。
その瞬間、遥か彼方から銃声が響く。
――狙撃。
「…!!」
ムスカは、頭部目掛けて放たれた弾丸をドラグノフのストックで弾き飛ばす。
「チッ! 気取られたかッ!!」
艦橋に立って狙撃銃PSG1を構えていた男が、大きく舌打ちした。
軍装からして、おそらく米海兵隊だ。
「ムスカ、何か言ってやれ」
キバヤシは軽い笑みを浮かべて、ムスカに視線を送る。
「…『暗殺者』の私を暗殺しようなど、10年は早いんじゃないかね?」
狙撃銃の男を見据え、ムスカは言い放った。
「油断するなよ、ハートマン軍曹… 『暗殺者』の異名、伊達ではないぞ」
枢機卿は、艦橋に立つ狙撃銃の男に告げる。
「キサマ、この俺の前でソ連の銃など持ちおって…
この、アカ野郎がッ!! クソでできた心根を叩き直してやるわぁぁぁッ!!」
ハートマンは、艦橋から飛び降りた。
「すまんな、キバヤシ… 少し離れるぞ…!」
ムスカはドラグノフの銃身下部にバヨネットを嵌めると、突進してくるハートマンの方向に駆け出した。
「さて…」
キバヤシは、枢機卿に視線をやる。
バルカン砲を食らい、倒れていた山田がゆっくりと起き上がった。
「…私は、何を…?」
困惑した様子で周囲を見回す山田。
「…ヤツの放つ音に注意しろ。我々ならば音に暗示が含まれているかどうかを、届く前に何とか察知できる」
枢機卿は、山田に警告する。
「了解した。もう、その術は通じんぞ…!」
山田はキバヤシを見据えると、青龍刀を下段に構えた。
「ここで我々全員を討ち取るつもりか…?」
枢機卿は両袖から拳銃を抜くと、キバヤシに訊ねた。
その右腕は元通り再生している。
599
:
さ
:2004/06/13(日) 19:15
「そんな面倒な事はしない。…ただ、この空母を沈めるだけなんだよッ!!」
キバヤシは指を鳴らした。
彼の影から、ヌケドときれいなジャイアンが飛び出す。
「影の中に息を潜めていたか…!」
枢機卿と山田は素早く飛び退いた。
奇抜な衣装とメイクで身を固めた男が、ゆっくりと前に出る。
「頼んだぞ、ヌケド…!」
黄色い背中に声を掛けるキバヤシ。
ヌケドは軽く頷くと、大きく両腕を広げた。
「『カナディアン・サンセット』… 表へ出ろ」
ヌケドの声と共に、海面が大きく隆起する。
海は波立ち、空母が大きく揺れた。
ゆっくりと、海中から何かが…
「クマ――――!!」
咆哮とともに、海中から80mはある大きさのクマが姿を現した。
そのクマは甲板に並んでいた飛行機を掴み上げると、無造作に枢機卿の方向に放り投げる。
機体は甲板に激突し、小規模な爆発が起きた。
「くッ…!!」
枢機卿は素早く飛び退き、爆発から逃れる。
「クマ――――!!」
さらに、クマは甲板に爪を叩きつけた。
破壊音が響き、甲板に爪跡が刻まれる。
その衝撃で、空母の艦体が大きく傾いた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁッ!!」
ヌケドは甲板を転がり柵に激突する。
そのまま柵を乗り越え、海中に没するヌケド。
「クマクマクマ――――!!」
さらに、クマは爪を何回も艦体に叩きつけた。
甲板が無惨に凹み、さらに激しく空母が揺れる。
「相変わらず、こっちの被害もお構いなしだな…」
揺れる艦体によろけながら、キバヤシは呟いた。
「…『ビスマルクⅡ』、あのクマを潰せ」
枢機卿は無線機で指示する。
10Km離れた位置で航行していた『ビスマルクⅡ』から、トマホーク巡航ミサイルが発射された。
その数、30発。
時速900Kmで、『グラーフ・ツェッペリンⅡ』を攻撃しているクマに向かって飛来してきた。
「ボクは『音界の支配者』…」
きれいなジャイアンが、ギターケースからギターを取り出す。
「…『クロマニヨン』!!」
周囲に奇妙な高音が響き渡った。
クマ目掛けて飛来してきたミサイルが、次々に空中爆発する。
一瞬の間に、30発のトマホークは全て空の塵となった。
きれいなジャイアンは口を開く。
「ミサイルの起爆について勉強しよう。
ミサイル先端の信管から放った電波は、目標物に当たって反射するんだ。
この時、ドップラー効果によって周波数が変わるんだよ。
この急激な振動数の違いを探知し、信管が作動するんだ…」
きれいなジャイアンは、目を輝かせて涼やかな微笑を浮かべた。
「このドップラー効果を、同周波数で擬似的に発生させてやれば…
ミサイルは目標物に当たったと錯覚するんだよ。ボクが今やった通りさ」
「なら、お主を斬れば済む話だ…!」
山田は青龍刀を下段に構えると、大きく踏み込んだ。
「無理だよ。ボクの超広帯域空気振動は、絶対に避けられない…」
ギター型のスタンド、『クロマニヨン』から強力な振動波を放つきれいなジャイアン。
「…!!」
山田は、素早く青龍刀を甲板に突き立てる。
「――『極光』、壱拾番『月妖』!」
一瞬の光の後、その手には華美に装飾された大型の横笛があった。
それを素早く口許に当てる山田。
『月妖』から放たれた美しい旋律が、『クロマニヨン』の超広帯域空気振動を掻き消す。
「避けれなくとも、中和することは出来たようだな…」
『月妖』を手許で回転させ、山田は言った。
「…すごいなぁ。ボクのスタンド能力を防ぐなんて」
きれいなジャイアンの爽やかな笑みが、少しだけ崩れる。
「武人とて、雅楽を解さないという訳でもないのでな」
山田は、きれいなジャイアンを見据えた。
空母が再び大きく揺れる。
クマが空母に膝蹴りを見舞ったのだ。
「さて、この空母… 『カナディアン・サンセット』の前でいつまで持つかな…?」
キバヤシは揺れる艦に立って言った。
それに対し、枢機卿は冷たい笑みを見せる。
「特に問題はない。私が呼んだのは、トマホークだけではないのでな…」
600
:
さ
:2004/06/13(日) 19:16
遥か彼方から高速で飛来する影。
「あはははははははははハハハハハハハハハァァァァァッ!!」
それは、笑い声を上げながらクマにぶち当たった。
「クマァ――――ッ!!」
飛翔物の直撃を腹に食らったクマは、大きく吹っ飛んだ。
轟音を立てて海面に激突するクマの巨体。
水飛沫が巻き上がり、大きな津波が発生する。
「やれやれ、今度は怪獣退治か…」
美しい蝶の羽を翻し、空母の上に浮遊するウララー。
「…クマッ!!」
クマが起き上がろうとする。
「今は冬だッ!! クマは大人しく冬眠してなァッ!!」
ウララーの『ナイアーラトテップ』から、虹色の光が幾重にも迸る。
その直撃を受け、さらに吹き飛ぶクマ。
「ハハッ…! どうだどうだどうだァッ!!」
狂声を上げながら、鮮やかな光を周囲に照射するウララー。
「ク、クマ――――ッ!!」
光を浴びてよろけながらも、クマはウララーに突進する。
「な…ッ!」
そのまま、クマはウララーの身体を掴んだ。
「クマ――――ッ!!」
そして、渾身の力を込めてウララーをブン投げる。
「うおおおおおおォォォォォォッ!!」
ウララーの体は、凄まじい勢いで海面に叩きつけられた。
「…戦いに巻き込まれては敵わん。ただちに、この場から離れろ。
進路は… そうだな、ASAの艦艇の方向だ」
枢機卿は、無線機でCICに指示を出す。
「そうはさせないんだよ!!」
キバヤシは、携帯電話を取り出した。
「これが、俺の切り札だ…!」
キバヤシは携帯に向かって何かを喋ると、無造作に甲板上に投げ捨てた。
「…!!」
山田が音に警戒して、素早く背後に飛び退く。
しかし、携帯が甲板に落ちる音に暗示は含まれていないようだ。
「…どこに連絡した?」
枢機卿は口を開いた。
キバヤシは静かに腕を組む。
「すぐに分かるさ。それより、いいのか? 俺達にいつまでも構っていて…」
「…!! 時間稼ぎか!!」
枢機卿は大声を上げた。
キバヤシは笑みを浮かべる。
「言ったはずだ。この空母を沈めるのが目的だってな。
そろそろ、スミスと阿部高和がCICを制圧している頃合だ…」
「山田殿ッ!!」
枢機卿が叫ぶ。
「承知!!」
山田が、艦橋に向かって駆け出した。
その瞬間、山田の足が逆方向に曲がる。
「…!?」
バランスを崩し、山田は甲板に倒れた。
だが、すぐに再生できる程度の負傷だ。
「…すでに仕込んでいたか。たった1人で、我々2人を足止めするとはな…」
枢機卿は、腕を組んで立ちはだかるキバヤシを見据えた。
「くッ…!」
山田は立ち上がると、素早く青龍刀を構える。
「止めておけ。奴への直接攻撃は、スィッチになっている可能性が高い…!」
枢機卿は山田を諌めた。
「下手に動かない方がいい。俺の暗示は、言葉の呪縛だ…」
枢機卿と山田を正面に見据え、キバヤシは告げた。
「人間は、火とともに言葉を武器にした。
言語を解する生物である限り、『言葉』と言う呪縛からは逃れられないんだよ…!」
601
:
さ
:2004/06/13(日) 19:16
@ @ @
スミスと阿部高和が、艦内通路を駆ける。
「Uryyyyyyyyy!!」
軍服に身を包んだ吸血鬼の集団が、正面に展開して機関銃を構えた。
「…お前達は、人海戦術しか能がないのか?」
通路に、瞬時にして沢山のドアが並ぶ。
そして一斉にドアが開き、大勢のスミスが出現した。
スミス達は皆、大型拳銃・デザートイーグルを手にしている。
「疲れたろう。もう眠りたまえ」
集団で、一斉にデザートイーグルを掃射するスミス。
専用の50AE弾は、頭部に当たれば吸血鬼ですら殺せる威力を持つ。
まして法儀式済みなので、吸血鬼などひとたまりもない。
たちまち、弾丸を浴びた吸血鬼達の体は塵と化した。
「さて…」
スミスが一歩踏み出した瞬間、爆音が響いた。
先頭にいたスミス3人が吹き飛び、背後に並ぶスミス達に激突する。
「…クレイモア(指向性対人地雷)か」
阿部高和は呟いた。
その瞬間、部屋の隅から気配を察知する。
「おっと、誰だい…!?」
「俺も以前、大型のタンカーに潜入した事がある…」
通路に男の声が響く。
しかし、姿は見えない。
突如、スミスの1人が頭を撃ち抜かれて倒れた。
「どこだ…?」
スミス達は周囲を見回す。
その瞬間、また1人スミスが倒れた。
だが、どこにも狙撃手の姿はない。
「こういう場所での戦闘は、慣れなければ難しい。
室内戦のセオリーがそのままでは通じないからな…」
別の方向から、男の声。
次々にスミスは倒れていく。
「仕方ないな…」
スミスはデザートイーグルの銃口を自らの額に当てると、その引き金を引いた。
彼の頭がスイカのように割れ、噴き出した血がシャワーのように周囲に散る。
通路は、たちまちのうちに血塗れになった。
「…俺に色でも付けようと言うのか? それとも、血の池に浮かぶ足跡で動きを察知しようと?」
再び、至近距離より男の声。
銃声と共に、スミスの頭部が撃ち抜かれた。
血塗れの廊下にびちゃりと横たわるスミスの亡骸。
「…ウホッ! 単に、透明になれるスタンド能力って訳じゃないみたいだな…」
阿部高和は、表情を歪めて言った。
「こりゃ、頭の中がパンパンだぜ…」
「構う事はない。吸血鬼なら、葬るだけだ…」
スミスは、減った人数を補充するかのように数を増やした。
「お前と違って、俺は1人しかいないんだよな…」
阿部高和は呟く。
「まあ元々が強い奴ほど、『メルト・イン・ハニー』で強力なスタンドに変換できる。
アンタがどんなスタンドになるか、楽しみだぜ…!」
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