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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

187:2004/05/03(月) 22:29

「―― モナーの愉快な冒険 ――   夜の終わり・その4」



          @          @          @



「ふむ…」
 白衣を着た男は、ビデオの一時停止ボタンを押した。
 TV画面に映っている、ありすと呼ばれる少女の動きがぴたりと止まる。
 輸送ヘリの残骸や、兵の死体が宙に舞っていた。
 ASA本部ビルに投入した空挺部隊は、この少女一人に壊滅させられたのだ。

「E-8C(地上管制警戒機)が捉えた、ASA本部屋上の映像だ」
 フサギコは、腕を組んで言った。
「先程の、廊下での映像をもう一度見せてもらえるかね…?」
 白衣の男は、机の上に積み重なっている書類を脇にのけた。
 そのまま、椅子に座り込む。

 TV画面に、再びありすの姿が映った。
 兵士のヘルメットに備え付けられたカメラからの映像だ。
 ゆっくりと近付いてくるありす。
 彼女に向けて一斉に放たれた銃弾は、空中で静止しバラバラと床に落ちた。

「ふむ… 断定は出来んが、物理的な静止だな。
 能力ではなく、スタンドのヴィジョンによって防いだ可能性が高い」
 白衣の男は、顎を撫でながら言った。
 フサギコが口を開く。
「弾丸の散らばり具合からして、拳で弾いた訳ではないようだけどな。
 彼女のスタンドが、盾のように立ち塞がったのか…?」
「…」
 白衣の男は、その質問には答えない。

 映像は続く。
 小隊長が、ありすに向けてグレネード弾を放った。
 しかし、それすらありすは微動だにしない。

 フサギコは腕を組んだ。
「向こうの衣服に損傷はない。ヴィジョンのみで、弾体破片や爆風を完全にシャットアウトできるものか?」
「この少女のスタンドヴィジョンは、従来の人型ではないと思うね…」
 白衣の男が、TV画面を見つめたまま言った。

 画面に映っているのは、一方的な殺戮である。
 7人の兵の肉体が無惨に捻り潰される映像が、淡々と無慈悲に流れていた。

「…これも通常の破壊だ。加害側の姿が見えない点を除き、超物理的な現象は無い。
 また、同時に多数の箇所を攻撃している。相当に大きいヴィジョンであることが類推できるな」
 白衣の男は、ビデオの停止ボタンを押して言った。
「ここまでパワーがあれば、固有の能力は持っていないのかもしれん」

「…なるほど。ヴィジョン自身の射程が広い、パワー型スタンドか」
 フサギコは、本棚にもたれて言った。
 部屋は、書類や本で足の踏み場も無い。ある意味、研究者らしき部屋ともいえる。
 男は、フサギコの旧知の知り合いである研究者であった。
 この部屋の主である、白衣の男は頷いた。
「あくまで類推だがな。それにしても、さすが三幹部と言ったところか。
 携行火器で彼女を殺すのは不可能だろう。あの距離からのHE弾を無効化したんだからな。
 屋上での輸送ヘリ破壊の映像を見る限り、射程は最低でも20mはあるぞ」

「対戦車ミサイルではどうだ…?」
 フサギコは訊ねる。
 白衣の男は額に手を当てた。
「HEAT弾か。モンロー効果による貫通力ならば、効果があるかもしれんが…
 あれだけの射程を持つ相手が、みすみす当たってくれるものか?」

「敵スタンドの射程が20mならば、ヘルファイアで問題は無いはずだ。
 それを搭載していたアパッチが、早々に落とされたのが災いしたな…」
 フサギコが悔しげに呟く。
「それにしても、アパッチがあそこまで簡単に落とされるとは… これでは、納税者に申し訳が立たん」

 白衣の男は、フサギコが持ってきたテープの一つをデッキに入れた。
 例の、しぃ助教授によるアパッチ撃墜の映像だ。
 男は再生ボタンを押した。
「その映像だけは、何度見ても腹が立つな…」
 フサギコは、憎々しげに呟く。

188:2004/05/03(月) 22:30

 対戦車ヘリ・アパッチが、三幹部の執務室に30mm機関砲弾の掃射を浴びせていた。
 通常なら、部屋にいたものは全て肉塊である。
 だが、アパッチは直後のしぃ助教授による反撃で墜落した。
 最強の攻撃ヘリであるアパッチが、いとも簡単に。

「まず、メインローターが何らかの力で曲げられている」
 墜落時の映像を見て、白衣の男は口を開いた。
「続いて、その負荷に耐えられなくなったようにメインシャフトが折れている。
 これは、明らかにスタンド能力によるものだ。ヴィジョンそのものによる攻撃ではない」

 捻じ曲がったメインローターが空中に吹き飛び、アパッチの機体が大きく傾く。
 そして、そのまま高度を下げていった。
 映像はそこで途切れている。
 そのまま、ビルの壁面に激突したのだ。

 白衣の男は、フサギコを慰めるように言った。
「まあ、何だ… 損傷による誘爆を防ぐ機構の有効性が実証されたと言える。
 スキッド・ランナーで、墜落時の70%の衝撃を吸収するという謳い文句は嘘ではなかった。
 アパッチのダメージ・コントロールはかなりのものではないか…」

「…いや、慰めになってないぞ」
 フサギコは大きなため息をつく。
「それより、メインローターの損傷だけで墜落したのは腑に落ちんな。
 DAFSS(デジタル自動飛行安定装置)は作動しなかったのか…」

 白衣の男は椅子にもたれて言った。
「メインローターの破壊と同時に、DAFSS機構が無効化されたのだろう。それしか考えられん」
「…そんな馬鹿な。兵器マニアでもなければ、アパッチのDAFSSの位置なんて知らんだろう。
 三幹部の一人とは言え、相手は仮にも女性だぞ?」
 フサギコは軽く笑う。

 白衣の男は、つられて笑った後に口を開いた。
「まあ、それは置いておくとして…
 交戦の様子から見るに、しぃ助教授のスタンド能力は動体の移動方向を変える事だな。
 無論、弾道も例外ではない」
 白衣の男は断言した。
「クレイモア(指向性対人地雷)を無効化したのを見る限り、かなり精度は高いようだ。
 銃弾はもちろん、ミサイル類ですら破壊力に関わらず無効だろう。
 サンバーン対艦ミサイルのほとんどを撃墜した事から見て、マッハ2.5までは確実に対応できる。
 下手をすれば、航空機の類は能力射程内には近寄れんぞ」

189:2004/05/03(月) 22:31

「ふむ、厄介だな…」
 フサギコは腕を組んで視線を落とした。
「…で、最後にこいつはどうだ?」
 デッキにテープを入れ、再生ボタンを押すフサギコ。
 クックルが画面に映る。
 その鶏は戦車を殴り、主砲を喰らい、戦車に踏まれ、戦車を投げ飛ばしていた。
「…素手で戦車に損傷を与えた。さらに、120mm滑腔砲の直撃でも大したダメージはない」
 フサギコは腕を組んで呟いた。
「これは、どういう能力なんだ…?」

「ふむ…」
 白衣の男はビデオを止めると、フサギコが持参してきた何枚もの写真を見た。
 前部装甲の破壊状況を様々な角度で移した写真だ。

「90式MBTの複合装甲をここまで破壊するとはな…
 だが… 映像を解析する限り、スタンドの関与はないように思える」
 白衣の男は、無造作に机の上に写真を放り投げた。
「…スタンドの関与がない、だと?」
 フサギコが視線を上げる。

「破壊部位の超微粒子超硬ファインセラミックスが、どう劣化したか見てみたいところだが…
 とにかく、これは拳で破壊したものだよ。それは間違いない。
 自分自身の肉体を増強させる類の能力か、もしくはただの馬鹿力か…
 何にせよ、詳しいところは分からん」
 白衣の男は呆れたように言った。
 匙を投げたようにも見える。

「…たまらんな」
 フサギコはため息をついた。
「APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)でダメージがないとなれば、
 デイジー・カッターか、FAE(燃料気化爆弾)か、もしくは…」
「BC兵器かね…?」
 白衣の男は、視線を上げた。
「…」
 フサギコは黙り込む。

 白衣の男は、椅子から立ち上がった。
「まあ、私に言えるのはここまでだな。
 スタンドの研究は歴史が浅い。まして、映像のみで能力を割り出すのは至難の業だ。
 私の意見も、参考程度に留めてもらいたい。
 それを元に作戦を立て、多くの死傷者を出したら… 私の首程度では責任が取れんからな」

「…ああ、分かってるさ」
 フサギコは腰を上げた。
 白衣の男はフサギコに視線を向ける。
「それと、少しは家に帰れ。ひどい顔をしてるぞ。息子も放ったらかしだろう」

「あいつは、意外にしっかりしてる奴だ。放っておいても大丈夫だろ」
 フサギコは言いながらコートを羽織った。
「…ここまで来たんだ。スタンド使い共を全員片付けるまでは、俺ものんびりできん」

190:2004/05/03(月) 22:31


          @          @          @



 俺とリナーは、並んでソファーに腰を下ろした。
 以前、しぃ助教授と面会した部屋とは異なる。
 部屋の奥には流し台があった。
 どうやら、台所として使用されている部屋にソファーとテーブルを運び込んだだけのようだ。
 部屋のカーテンは閉まっている。当然、俺達の事を考慮したのだろう。

 テーブルの向こうには、どことなく疲れた顔をしたしぃ助教授が座っていた。
 部屋の端には、忠実な執事のように丸耳が控えている。
 ふと、リナーの方に目をやった。
 彼女は、右腕を服の中に突っ込んでいる。

「…すみませんね、こんな部屋で。日光を遮断できる部屋は、ここしかなかったんですよ。
 幹部執務室は、今ちょっと天井がないもんで…」
 しぃ助教授は、うんざりしたような顔で言った。
 どうやらリナーと揉める気はないようだ。
 丸耳が、テーブルの上に三人分の飲み物を置く。

「麦茶です。良かったらどうぞ…」
 しぃ助教授が、グラスに口を付けながら言った。
 なぜコーヒーではなく麦茶なのだろうか。

「…」
 リナーは、しぃ助教授を無言で睨んでいる。
 流石に殴りかかったりはしないだろうが、こちらとしては気が気ではない。

「…単刀直入に言いましょう。私達の戦闘に同伴してください」
 しぃ助教授は、グラスをテーブルに置いて言った。
「どういう事だ…?」
 不審げな目で、リナーが訊ねる。
 しぃ助教授はため息をついた。
 やはり、相当に疲れているようだ。
「知っての通り、私達ASAは自衛隊と交戦しています。
 この場所は戦略・戦術両面において不利なんで、海に出ようと思ってるんですよ」

 自衛隊に攻撃されたのはTVで知っていたが、海に出るとは…?
「…なるほど。拠点を海上に移そうという事か」
 リナーが納得したように腕を組んだ。
「ええ。こんな場所に本拠地を構えていては、ICBMで狙い撃ちですからね。一刻も早く居を変えないと…」
 しぃ助教授は視線を落とす。

 リナーが口を開いた。
「それで、軍艦か何かを仮本拠地にすると言う訳か。だが、向こうが黙っているはずがないな」
 この会話に、俺が介入する余地は無いようだ。俺は麦茶に口を付けた。
 しぃ助教授が大きなため息をつく。
「その通りですよ。海上封鎖は当然の事、護衛艦隊を投入してでも阻止してくるでしょう。
 そこでいっその事、艦隊決戦に持ち込もうと思ってるんですよね…」

「艦隊決戦?」
 俺は訊ねる。
「…『艦隊決戦』とは、海軍の戦略構想の1つだ」
 リナーが俺の疑問を補足した。
「1回の海戦で相手の主力艦艇を壊滅させ、一気に制海権を確保しようという作戦構想だ。
 そして相手の通商を遮断し、一気に有利な講和を進める事も可能となる」

 しぃ助教授は頷いた。
「そう。向こうのアドバンテージを一転、こちらの波にしてしまおうという事ですよ。
 この国から撤退するように見せて、敵艦隊の総駆逐に臨みます。
 島国である以上、通商遮断の効果は覿面でしょうしね」

「孫氏曰く、『兵は詭道なり!』ってとこモナね」
 俺は、何となく胸を張って言った。
「孫氏曰く、『百戦百勝は善の善なるものにあらず』。
 戦い以外の選択肢を失ってしまった時点で、ASAは既に戦略的敗北を喫していますよ…」
 しぃ助教授は呟く。
「で、『艦隊決戦』と銘打つ以上、大海戦が予想されます。そこで、非常に有効なスタンドがあるんですよね…」
 ニヤリと笑って俺の方を見るしぃ助教授。

「それで、『アウト・オブ・エデン』か…」
 やっと話が繋がったという風に、リナーは呟いた。
 しぃ助教授は大きく頷く。
「そういう訳で、私達の船に乗りませんか? 戦闘は私達がやるんで、そちらは船旅気分で結構ですよ」

「…そんな話に、私達が乗るとでも思ったのか?」
 そう言いながら、リナーが不機嫌そうに立ち上がった。
「まあ、最後まで聞くモナよ」
 俺は慌ててリナーを諌める。
 まだ話は終わっていないのだ。最も重要な部分を聞いていない。

191:2004/05/03(月) 22:32

 しぃ助教授は笑みを浮かべる。
 まるで、こちらの反応など最初から予想していたといった風に。
「丸耳は取引だと言ったでしょう? 当然、そちらにも見返りがありますよ。
 おそらく、貴方達が切望しているものがね…」
 そう言って、指を鳴らすしぃ助教授。
 丸耳が、赤い液体の入ったパックをゆっくりとテーブルに置いた。
 これは…!!

「輸血用の血液パックです」
 しぃ助教授が言った。
「貴方達は、これが入り用なんでしょう…?」

 俺は、その赤い液体が詰まった袋を見つめた。
 そして、リナーに視線をやる。
 だが、彼女の不機嫌そうな表情は消えてはいなかった。
「私の体は、すでに通常の吸血鬼とは異なっている。生気の残った血液でなければ、身体の衰弱は防げない。
 まあ、どちらにしても時間稼ぎには変わりないがな…」
 リナーは、しぃ助教授を見据えて言った。
 彼女は人工(それも、まだ技術が確立していない時代)の吸血鬼である。
 さらに、スタンドでの抑圧によって吸血鬼の血が変成しているのだ。

 表情を曇らせるしぃ助教授。
「うーん。思ったより喜んではもらえないようですね。
 とにかく、貴方達の食事量に換算して2ヶ月分を差し上げましょう。
 その代わり、私達の船に乗ってもらいます。そういう取引ですが…?」

「断る。ASAに貸しを作る気はない。輸血用血液など、調達は他からでも可能だ」
 リナーは取り付く縞もなく言った。
 そして、話は終わったとばかりに立ち上がる。

「貴方達に乗ってもらう船は、タイコンデロガ級イージス艦なんですがね…」
 しぃ助教授はゆっくりと視線を上げて言った。
 部屋から出て行こうとするリナーの動きがピタリと止まる。

「トマホーク巡航ミサイルの一発くらい、撃たせてやってもいいかな?なんて思ってたんですが…」
 しぃ助教授は、残念そうに呟いた。
「乗りたくないのなら、仕方がないですねぇ…」

 リナーは再びソファーに座った。
「詳しい話を聞こうか…」
 麦茶のグラスを傾けて、リナーは呟く。

 しぃ助教授は、にっこりと笑みを浮かべた。
「今晩の9時に、近海に停泊しているASA所属イージス艦『ヴァンガード』に乗り込んでもらいます。
 艦長はありす。副艦長にはねここが付きます。実質、艦を指揮するのはねここでしょうけどね」
「えっ、しぃ助教授が艦長じゃないモナ?」
 てっきり、しぃ助教授が艦長をだと思っていた。
 だが、今のはしぃ助教授自身は艦に乗らないような言い方だ。

「私がいないと寂しいですか?」
 しぃ助教授がニヤリと微笑って言った。
 何故か、リナーが俺を睨みつける。
「…誤解を招く表現はやめてほしいモナ」
 俺は汗を拭きながら言った。

 しぃ助教授が話を元に戻す。
「船は1艦だけじゃありませんよ。私は艦隊を指揮しなければいけないので、旗艦に乗り込みます。
 イージス艦は、言わば艦隊の『眼』ですからね。それに貴方のスタンドが加われば心強いですよ。
 …まあ、『異端者』はおまけですがね」

「暴れちゃ駄目モナよ…」
 殺気を放つおまけ… いや、リナーに釘を差す俺。
 丸耳が少し慌てたような表情を見せる。

 しぃ助教授は思いついたように言った。
「そう言えば、貴方達とありすはあんまり面識がありませんでしたね。丸耳、ありすを呼んできてください」
「…はい」
 丸耳は、無駄のない動きで部屋から出て行った。

「ねここはいいけど、ありすはちょっと怖いモナね…」
 俺は呟いた。
 あの、ありすの感情のない瞳を思い起こす。

「…ねここはイイ!!ですか。モナー君は、よっぽどねここがお気に入りのようですね」
 しぃ助教授が深く頷いて言った。
「ちなみに、ねこことはありすの補佐で、モナー君と同年代の女の子です」
 そして、不必要な補足を加えるしぃ助教授。
 リナーが無言で俺を睨みつけている。
「誤解を招くような表現は勘弁してほしいモナ…」
 なんで俺がさっきからいじめられているのか、さっぱり理解できない。

192:2004/05/03(月) 22:33

「ありすをお連れしました…」
 丸耳の声と共に、ドアが開く。
 その後ろには、かって見たことのある少女が立っていた。

 何の感情も宿さない瞳。
 フリルに覆われた衣服。
 そして、周囲を覆うような圧迫感。

「彼が、船に乗ってくれるモナー君と『異端者』です」
 しぃ助教授は、ありすに俺達を紹介した。
 感情のない瞳で、俺達を眺めるありす。
 リナーは、ありすを凝視して緊張した表情を浮かべている。
 やはり、この圧迫感は普通ではないようだ。

 俺は、『アウト・オブ・エデン』を発動させた。
 ありすの感情の波は非常に緩い。
 だからこそ、圧迫感が突出するのだ。
 同じ艦に乗る以上、これにも慣れないといけない。

 …それにしても、この衣服は素晴らしい。
 メイド服をアレンジしたような独特の装飾。
 特に、レトロなペチコートはSクラスだ。
 ぜひ、一着我が家にほしい。
 そして、リナーに着せてみたい…!!

「…まあ、そう睨まないであげて下さい。敵意さえ持たなければ、ありすは大人しいですよ。
 彼女のスタンド、『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』も強力ですので、貴方達に苦労はかけませんしね」
 ありすを凝視している俺に、しぃ助教授が告げた。

 ――『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』。
 それが、彼女のスタンドの名。

「無愛想ですが、可愛いところもありますよ。そう思いませんか、モナー君?」
 しぃ助教授は笑顔で言った。

 …何で俺に振るんだ?
 リナーの目も光っている。
 肯定すればリナーに、否定すればありすに屠られるかもしれない。
 …さて、どう答えたものか。

「…サムイ?」
 俺の苦悩をよそに、ありすが言った。
「え? 別に寒くはないモナよ」
 俺は困惑しつつ答える。
 ありすは無言でこくりと頷くと、背を向けて部屋から出ていってしまった。
 俺達は、しぃ助教授に視線を戻す。

「まあ、挨拶も済んだようですし… 取引は成立でいいですね?」
 しぃ助教授は微笑んで言った。
 …あれは、挨拶だったのか?

 とにかく、2ヶ月分の血液パックは是非必要だ。
 俺自身は、これさえあれば生きていける。
 リナーに関しても、ないよりはマシだろう。
「じゃあ、取引は成立という事で…」
 俺はそう言おうとした。
「…何か忘れてないか?」
 リナーが口を挟む。

 …あっ!!
 公安五課の要人救出とブッキングしてる!!

「何か先約でも?」
 しぃ助教授は、俺達の様子を見て言った。
 その通りだが、公安五課が隠密行動をしている以上、迂闊に口に出す訳にもいかない。
「…まあ、そんなところモナ」
 俺はそう言って、リナーの顔を見た。
 …どうしようか?
 あっちの方は、行きたい奴のみが行くという結論が出たはずだが…

193:2004/05/03(月) 22:33

「…私個人の意見を言わせて貰うならば、ASAに協力すべきだと思うが」
 リナーは偉そうに腕を組んで言った。
 虚勢とは裏腹に、すがるような視線。
 どうやら、イージス艦とやらに乗りたくてたまらないようだ。
 ならば、腹は決まった。

「…じゃあ、その船とやらに乗るモナ」
 俺は、しぃ助教授に言った。
 満足そうに頷くしぃ助教授。
「それでは、血液パックは貴方の家に届けておきます。特別に専用の冷蔵庫もサービスしましょう」

 …これで、話は決まった。
 今夜は、ギコ達とは別行動になるようだ。
「9時モナね。ヘリで迎えに来てくれるモナ?」
 俺は、時刻と交通手段を確認した。
「…ええ。武器類の持参は自由です。おやつは300円まで。バナナはおやつに入りません」
 まるで遠足のようにしぃ助教授は言った。
「…了解モナ」
 俺はグラスを手に取ると、麦茶を喉に流し込む。

「ところで『異端者』…」
 しぃ助教授は、不意に真剣な表情を浮かべた。
 そして、リナーを真っ直ぐに見据える。
「貴方、モナー君と寝ました?」

 ……………!?!?!?
 俺は、飲んでいた麦茶を吹き出した。
 床が麦茶まみれになる。
 一方、リナーが持っていたグラスは粉々になっていた。
 思わず握り潰したようだ。

 しぃ助教授は頭をポリポリと掻いて言った。
「あらあら。貴方達の間柄が、前に見た時より落ち着いていたから…
 てっきり何かあったんだと思ったんですがね」
 丸耳が慌てて雑巾を持ち出した。
 そして、俺が吹き出した麦茶を拭く。

「モ、モナ達はゴホッ、そんなガフッ、ゴフッ!!」
 麦茶が気管に詰まり、まともにしゃべれない。
 リナーは露骨に視線を逸らして、掌に刺さったグラスの破片を払っている。
「…失礼します」
 丸耳がグラスをお盆の上に載せた。
 そのまま、背後にある流し台に運んでいく。

「ふーむ。まだまだ恋愛に潔癖な年頃みたいですね」
 しぃ助教授は、ニヤけながらソファーにもたれた。
 そして、何かを思い返すように胸の前で腕を組む。
「…学生時代を思い出しますね。私もハイティーンの時は、まだまだ純情な乙女でした…」

 突然、背後からグラスの割れる音がした。
 丸耳がお盆を引っくり返してしまったようだ。
「…失礼、不注意でした」
 丸耳が恐縮した声で詫びる。

「あら? 何か驚く事でもあったんでしょうかね…」
 しぃ助教授は微笑んで言った。

 …もう、話は終わったのだ。
 これ以上ここにいると、無駄な騒動に巻き込まれかねない。 

「…では、モナ達はここらでお暇するモナ」
 俺はソファーから腰を上げた。
 リナーも続いて立ち上がる。

「丸耳。後片付けはいいですから、モナー君達を家まで送ってあげなさい」
 しぃ助教授は、グラスの破片を集めている丸耳に言った。
「…はい、分かりました」
 そう言って、丸耳が腰を上げる。

「…最後に忠告です」
 しぃ助教授は、真剣な目で俺の方を見た。
「モナー君、ヨーロッパの格言にこんなのがあります。
 『フランスの女性は、裏切られたらライバルの方を殺す。イタリアの女性は、騙した男の方を殺す。
  イギリスの女性は、黙って関係を絶つ。 …だが、結局はみんな別の男に慰めを見い出す』
 『異端者』は確かフランス系でしたっけねぇ…?」

「じゃあ、また夜に会うモナッ!!」
 俺は、何かを言いかけるリナーの手を引いて部屋から出た。
 …これ以上、火に油を注ぐのは止めてもらいたいものだ。
 俺達は、こうしてASA本部ビルを後にした。



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. <   To Be Continued... | |
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