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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

331:2004/05/12(水) 22:19

「―― モナーの愉快な冒険 ――   そして新たな夜・その4」



「あ、この階段見たことあるー!!」
 レモナは、赤絨毯が敷かれた大きい階段を指差した。
 組閣の時に並んで記念写真を撮る、例の階段だ。
「アッヒャー!!」
 赤色を見て興奮したのか、つーが階段を駆け上がった。
 階段の中程から、中庭の綺麗な風景が見える。

「立派な庭園ねぇ、池まで作っちゃって」
 レモナは中庭を見て言った。
「全く、誰が払った税金だと思ってるんだか…」
 いつの間にか、階段の中程に来ていたモララーが不平を垂れる。
 ロクに払ってもいないクセに…、とギコは思った。

「モララー、ナニカ イッテヤレ!」
 つーは手摺にもたれて言った。
 モララーが、不敵な笑みを浮かべて池をビシッと指差す。
「飲んでやるッ!!」

「ほら、馬鹿3人、とっとと行くぞ…」
 ギコは呆れて言った。
 彼としぃ、局長、リル子はとっくに階段を上がっている。

「妙ですね…」
 局長は言った。リル子がそれに頷く。
「…何がですか?」
 しぃは2人に訊ねた。
 局長がそれに答える。
「迎撃部隊が全く現れません。上から押し寄せてきてもおかしくないのに、全く気配がない」

 そう。ギコも不審に思っていたのだ。
 外の厳重な警戒に比べ、中の人数はどう考えても少ない。
 会った兵はエントランスホールで倒した連中だけだ。
「…考えられる可能性は?」
 局長は、リル子に視線を送った。
 リル子は静かに口を開く。
「第1に、警備人数そのものが少ない場合」
「それはありえませんね。外には多くの警備を割いています。そんな偏った布陣はない」
 局長は即座に否定した。

 リル子は言葉を続ける。
「第2に、指揮官が無能である場合」
 局長が肩をすくめた。
「フサギコも、ここの重要性は理解しているはず。彼の采配である以上、その可能性はありませんよ」

「第3に、私たちには敵わないと判断し、撤退してしまった場合」
「ありえないとは言いませんが… いささか楽観的な見方でしょうね…」
 局長は否定する。
 リル子は少し間を置いた。まるで、今までは前座だといった風に。
「第4に、防衛拠点に兵力を集め、待ち伏せ策を実行している場合」
「…」
 局長は黙っている。否定材料がないのだ。

「第5に、こちらからは窺い知れない事情がある場合。考えられる可能性は以上です」
 リル子は意見を述べ終える。
「第4か第5… おそらく、第4の待ち伏せ策でしょうね」
 局長は言った。
 リル子も同意したように頷く。

「…待ち伏せか」
 ギコは呟いた。
 自分のスタンドがいかに近距離パワー型とは言え、四方八方から自動小銃の弾丸を浴びせられれば辛い。
「待ち伏せだとすれば、4階の大会議室しかありません」
 リル子は断言した。
 今度は局長が頷く。
「…ええ。要人達が囚われているであろう部屋ですから、こちらは思う存分暴れられないでしょうしね」

「そういう訳だから、お前達も気をつけろよ」
 ギコは、建物ごと破壊する可能性が高いレモナとつーに釘を刺した。
 要人奪還という任務には、とてつもなく不適な2人かもしれない。

332:2004/05/12(水) 22:21

「とにかく、やる事は1つでしょう」
 リル子はアタッシュケースに手を掛ける。
「…そうですね」
 局長が腰を上げようとしたその時、階上から銃声が鳴り響いた。
 タタタタタ…という、タイプを打つような軽い音が。

 階段の前の兵達が顔を見合わせ、無線機を手に取る。
「――――!?」
 何かを告げ、顔を歪ませる米兵。
 そして、5人揃って階段を駆け上がっていった。

 先程の米兵達のように、今度はギコ達が顔を見合わせた。
「何だ、今の銃声は… 何かあったのか?」
 ギコは、階段を見上げて言った。
「警備兵達、随分慌ててたいようだね…」
 モララーが呟く。
「行ってみましょうか…」
 局長が腰を上げる。

「しぃ、大丈夫か?」
 ギコは、しぃに声を掛けた。
 しぃは冷や汗を掻いている。
「あ、うん。大丈夫… でも、やっぱり怖いかも…」
「これだけの人数がいるし、みんな強いんだ。怖がる必要はねぇよ…」
 ギコは、しぃに優しい声をかける。
 しぃは頷いた。

 一同は、警戒しながら4階に上がった。
 ある意味、眼前の光景は予想できたといえるだろう。
 先程の銃声。
 そして自分の守る場所を放ったらかし、慌てて駆け上がっていった警備兵。
 向こうにとって、何かが起きたのは明白なのだ。

 4階は、兵の死体の山だった。
 赤い絨毯は、さらなる朱で染まっている。
「…」
 しぃが、口元を押さえて絶句した。
 よろける体を素早く支えるギコ。

 同士討ち…?
 いや、そんなはずはない。
 他にも侵入者がいるのだ。
 俺達以外の侵入者が…!!

「米兵15人…、相当の手練でしょうね」
 リル子は、冷静な目で死体を観察した。
 頸部が折れている死体が5体。残り10人は、全て頭部を撃ち抜かれている。

「聞こえてきた銃声は極端に少ない…
 先程3階にいた警備兵も、異常があったと認識していたにもかかわらず発砲せずに殺されています。
 侵入者は、ゲリラ戦に長けたスタンド使いの可能性が高いと思われますが…」
 そう言って、局長は顎に手をやった。
「自衛隊と敵対しているASAの刺客という可能性は… 低いですね。
 ASAは、海上自衛隊との激突に戦力を割いているはずですし」
 そう言って、ギコに視線を送る局長。

「テメェ… そこも盗聴してやがったのか」
 ギコは局長を睨みつけた。
 局長は薄い笑みを見せる。
「…ええ。モナー君とリナー君の行き先を、必死で誤魔化すギコ君の姿は傑作でしたね。
 それにしても、『逢引き』って何ですか。貴方、ひょっとして大正時代の生まれですか…?」

「…ここは敵地のど真ん中、まして異常事態の最中です。あまり日和らないようお願いします」
 リル子は厳しい顔で局長に告げた。
「おっと、そうでしたね…」
 そう言って、局長は足元の死体に視線をやった。
 ほとんどの人間は、目を見開いて死んでいる。
 まるで、自分の死を全く予期しなかったような死に顔だ。

「敵の敵だから、味方なんて事はないかな…?」
 暗い顔を無理に明るくして、モララーは言った。
「そんな、美味い話があるわけないだろ…」
 呆れたように言いながら、ギコは死体… いや、死体の手にしている小銃の脇に屈み込んだ。

「レバーがセーフティーに入ったままじゃねぇか… 安全装置を解除する間もなかったんだな…」
 そう言って、ギコはM4カービンを手にする。
 流石に、懐に仕舞うには大きすぎるようだ。そのまま携行するしかないか。
「いや、何どさくさに紛れて銃をくすねてるのさ…」
 モララーはすかさず突っ込んだ。

「…とにかく、これをやった相手と敵対しないとも限りません。覚悟はいいですね?」
 局長の言葉に、全員が頷いた。
「あと、この中に人を殺した事がある者は?」
 そう言って、全員を見回す局長。
 手を上げたのはリル子だけだ。
 それを見て、局長は口を開いた。
「命を奪うことには色々抵抗もあるでしょうが… ここから先、殺すことを躊躇してはいけません。
 まあ、戦場で軍服を着てる者は人じゃないんで、特に気にする必要もありませんがね」

「こっちだって、殺さなきゃ殺されるんだ。今さら躊躇はしねぇよ」
 ギコは、米兵達の死体から弾丸を回収しながら言った。
 その様子を少し呆れた目で見つめるしぃ。
「そういう事。自分だけ手を汚さないなんて、言ってられないしね…」
 モララーは言った。
 しぃの隣には、いつの間にか『アルカディア』が立っている。
「まあ女の子に人殺しを要求するのは酷ってもんだし、その分はオレがカバーするぜ」
 『アルカディア』は腕を組んで言った。

333:2004/05/12(水) 22:22


「ハハハ… まあ、まっとうなレディは人など殺めませんよねぇ」
 局長は笑って言いながら、リル子の方に視線を送った。
「そうですね、フフ…」
 つられたように笑うリル子。
 ギコは、その様子を怯えながら見ていた。
 …怖い。
 絶対何かを心に秘めている。

 ギコはリル子から『アルカディア』に視線を移した。
 そして、『アルカディア』に告げる。
「俺も、おそらく自分の身を守るだけで精一杯だ。だから、お前がしぃを守ってやってくれ。 …頼む」

「…ああ、任せときな。オマエの愛しの彼女には、指一本触れさせねぇぜ」
 『アルカディア』は腕を組んだ。
 そして、ニヤニヤした笑みを浮かべる。
「だから、浮気はそこそこにしてやるんだな…」
 それを聞いて、ギコの表情が強張った。

「へ〜 性懲りも無く浮気してるんだ。前みたいなお仕置きじゃ足りなかったみたいだね…」
 しぃは口の端を吊り上げる。
「…!!」
 ギコは一歩後ずさった。
「また何かあったら知らせてね」
 しぃは、自らのスタンドに語りかける。
「…おおよ!」
 『アルカディア』は胸を張って言った。


「さて、そちらの問題も片付いたようですね…」
 局長は、そう言いながらも壁の一点をじっと見つめている。
「ん…? どうかしたのかい?」
 モララーは局長に訊ねた。
「いえ、別に…」
 局長は、全員に向き直る。
「さて、行きましょうか…」
 廊下に散乱した死体を避けつつ、一向は廊下を進んでいった。


 廊下の突き当たりに、立派な扉が見える。
「あれが、大会議室の扉ですね」
 局長は言った。
 おそらく、あの中に政府要人達が監禁されているのだ。
 一同は扉の前に立った。
 中の様子は分からない。
 罠があるのかもしれないし、兵士達が息を潜めて銃口を向けているのかもしれない。
 何もない、と考えるのは楽観的に過ぎるだろう。

「…さて、ここはレディー・ファーストです。リル子君、お先にどうぞ」
 局長は、リル子に先を促した。
「局長がレディー・ファーストを実践されていたとは初耳ですが… お断りします。
 女性という事で、特別な扱いを受ける気は毛頭ありませんので。
 局長が先に踏み込んで下さい。骨は拾いますので、御安心を」
 リル子は冷たく告げる。

「まったく…」
 局長はため息をついた。
「やれやれ、指揮官を先頭にしてどうするんですか…」
 文句を言いつつも、自分が適任である事は理解しているようだ。
 扉の取っ手に手を掛ける局長。
 そのまま、一気に扉を開いた。

 銃声が響く。
 部屋の中に伏せていた兵達が、一斉に発砲したのだ。
 その数、約40人…!

「『アルケルメス』!!」
 局長のスタンドは、被弾する瞬間の時間を切り取った。
 その刹那、レモナとつーが会議室に飛び込む。
「バルバルバルバルッ!!」
「行くわよ――っ!!」
 2人は銃弾を弾きながら、兵達に襲い掛かった。

「『レイラ』ッ!!」
 ギコはスタンドを発動させ、先程手に入れたM4カービンを構える。
 銃のレバーを、素早く3発バーストモードに切り替えた。
 そして、会議室の中に駆け込むギコ。

「どけや、ゴルァ――ッ!!」
 ギコは、部屋内を駆けながら自動小銃を乱射した。
 自分に向けられた弾丸は、『レイラ』の刀で弾き飛ばす。
 5.56mm弾の直撃を喰らい、次々に倒れていく兵士達。

 要人らしき人達は、部屋の隅に集められていた。
 首相をはじめ、TVで目にした事のある顔がいくつもある。
 手足の拘束はされていないようだ。
 そして、1人の兵が要人達に銃を向けている。
 スタンドを発動していないリル子が、要人達に駆け寄った。

「Freeze!!(止まれ!!)」
 兵がリル子に銃口を向けた。
 しかし、リル子は走る速度を緩めない。

          TeilAnfang
「『Altitude57』、限定起動…!」
 リル子は、そう言いながらアタッシュケースを空中に放り投げた。
 そこから飛び出した黒い影が、瞬時にリル子の足を覆う。

「Set… code21:『RandBeschleunigung(限界加速)』」
 リル子の動きが、瞬間的に加速した。
 素早く銃を構える兵士… その眼前に一瞬で接近する。
 そのまま、リル子は掌底で銃をさばいた。
 そして、姿勢を屈めて相手の右手の下をくぐり、懐に入り込む。
「…!!」
 兵士が反応する間もなく、リル子は無防備な胴に体当たりを決めた。

「鉄山靠か…!」
 ギコは、見事な技の入り方に感嘆して呟いた。
 鉄山靠を決められた兵は吹っ飛んで、壁に激突する。

334:2004/05/12(水) 22:24

「ふう、こんなものですかね…」
 『アルケルメス』が、その腕で吊り下げていた兵の体を床に落とした。
 大会議室の床は一瞬のうちに、倒れた兵で埋まってしまう。

「僕、何もしてないんだけどな…」
 ドアの前に突っ立って、モララーが呟いた。
 その隣にはしぃもいる。

 局長は、部屋の隅に集まっている要人達に歩み寄った。
「どうも、皆さんを救出に来た公安五課です」
 そう言って、スーツ姿で固まっている老人達に名刺を配る局長。
「公安五課をよろしく。再来年度予算には、ぜひ一考の程を…」
「…根回しは後にして下さい」
 リル子は、厳しい口調で言った。

 首相が、局長の顔をまじまじと眺める。
「…今日一日の動向は、TVで見て知っている。公安五課は自衛隊に与しなかったのかな?」
 局長は軽く肩をすくめた。
「私がフサギコ…統幕長と対立していたところは見たでしょう?
 公安五課は、スタンドの犯罪を取り締まる組織。スタンドそのものを犯罪と見なす訳ではありません。
 …ゆっくり話をする余裕もないようですね」

 足音と共に、5人の米兵が会議室に駆け込んできた。
 そして、銃口を部屋内に向ける。

「…『崩れる』」
 『アルカディア』は呟いた。
 兵達の足元の床に幾つもの亀裂が走る。
「…!?」
 兵士達が反応する間もなく床が崩れ、彼等の体は階下に落下していった。

「脱出か… モララー、『アナザー・ワールド・エキストラ』の瞬間移動が使えないか?」
 ギコはモララーに訊ねる。
「…無理だね。座標の調整に時間がかかる上に、これだけの人数が通れる『穴』を開けるのも無理だよ」
 モララーは壁にもたれたまま首を振った。
「全く、使えねぇな…」
 ギコが吐き捨てる。

 局長は、20人近くいる要人達の顔を見回した。
「今から、皆さんを連れてここから脱出します。
 人数が多いので、3×7の列を組んで駆け抜けます。
 列から離れると間違いなく死にますので、そのつもりで」

 要人達の顔に不満と緊張が走った。
 だが、命をかけてまで愚痴る覚悟のある人間などそうはいない。
 彼等は素早く3×7の列を形成した。

 それを見て、局長は頷く。
「国会でも、今のように文句を言わず速やかに協力すれば、審議は十分の一の時間で済みますね。
 さて、行きますよ…!」
 リル子が列の先頭に立ち、早歩きで進み出した。
 先程『アルカディア』が空けた床の穴を大きく迂回する。
「俺達は、列の両脇を固めた方がいいな…?」
 ギコは局長に言った。
「そうですね。最後尾の守りは私が務めましょう」
 局長は頷く。
 ギコ、モララー、しぃ、レモナ、つーは素早く列の周囲に展開した。
 そのまま、一団は会議室を出た。

 そして、素早く廊下を通過する。
 局長は要人達に語りかけた。
「ここから少し行ったところに、多くの死体が転がっています。
 心臓の弱い方は気をつけて下さいね。
 まあ、政治家の皆さんともなれば死体の1つや2つ見慣れているかと思いますが」

 一同は、死体で埋まった廊下に差し掛かった。
 靴が血で濡れるのも厭わず、要人達は列を組んで走り抜ける。
「…おっと、急用を思い出しました」
 急に局長は立ち止まった。
「リル子君、先に行って下さい」

「は?」
 怪訝そうに振り返るリル子。
 その目に、真剣な局長の表情が映る。
「…了解しました。早めに合流して下さい」
 再び、リル子は駆け出す。
「えっ、いいの…!?」
 モララーは、リル子の後姿と局長の顔を見比べた。
「いいんだよ、行くぞ!!」
 ギコが先を促す。
 一団は、局長を残してそのまま3階に降りていった。

335:2004/05/12(水) 22:25



「さて… もう息を潜めるのにも飽きたでしょう?」
 局長は壁の一点を見つめて言った。
 不意に、その空間に人間の輪郭が浮かぶ。

「…よく気付いたな。対スタンド機関の人間か?」
 その男は、一瞬にして実体化したように見えた。
 鍛え抜かれた筋肉質な体。紺を基調とした潜入用と思われるスーツ。
 そして、紺色の長いバンダナ。
 彼は、H&K社の特殊部隊用拳銃、USPを手にしていた。
 米兵15人を瞬殺した事からして、間違いなく強い。

「『BAOH』の嗅覚ですら反応はなかったのに、人間に見つかるとは…」
 男は低い声で言った。
 『BAOH』… こいつ、つーを知っている…!
 しかし、動揺は局長の顔に出ない。
「『BAOH』の嗅覚は敵意を感じ取る嗅覚であって、一般の意味での嗅覚ではありませんからね。
 私は職業柄、硝煙の匂いには敏感なんですよ…」
 局長は、煙草を咥えて言った。
 そのまま、煙草に火をつける。
「敵意が無ければ感知されない、か…」
 男は感心したように呟いた。

「さて、貴方はどこのスタンド使いです? ASAとは思えませんがねぇ…」
 局長の背後に『アルケルメス』のヴィジョンが浮かぶ。
「…俺に国はない」
 男は吐き捨てると、素早く横転した。
 そのまま、USPの引き金を引く。
「『アルケルメス』…!!」
 着弾の瞬間をカットし、同時に接近する。
 しかし、その対象の姿は既に無かった。

 先程撃ったUSPが廊下に転がっている。
 その銃口からは、硝煙が上がっていた。
「…」
 素早く周囲を見回す局長。
 しかし、男の姿は見当たらない。

 …僅かな物音が、背後から響いた。
「『アルケルメス』ッ!!」
 咄嗟にスタンドを発動させる局長。
 ピッタリのタイミングで、真後ろから狙撃された瞬間をカットする。

「…チッ」
 僅かな舌打ちが背後から聞こえた。
 素早く振り向く局長。
 しかし、既に男の姿はない。
「全く…、面倒な相手ですねぇ…」
 『アルケルメス』を背後に待機させたまま、懐から拳銃を取り出して局長は呟いた。

336:2004/05/12(水) 22:26



          @          @          @



 ギコ達と要人一同は、1階への階段を駆け下りていた。
「外に待機させている脱出用ヘリってのは、どのくらいの距離だ?」
 ギコは先頭のリル子に訊ねる。
「合図があり次第、200mほど離れた空き地に着陸する手はずになっています」
 リル子は、歩調を落とさずに答えた。
「でも、局長は…?」
 しぃは呟く。
 ギコは口を開いた。
「あいつは、最後尾を担当すると言っただろう? その最後尾が、あの場に残ったんだ…」
「追撃者がいた、って事か…」
 ギコが言いたい事を理解するモララー。
「じゃあ、たった1人で…!」
 しぃは言った。

「…ヒトノ コトヲ キニシテル バアイ ジャナイゼ…!」
 つーが、敵意の匂いを感じ取ったようだ。
「1カイ ホールニ スゲェ カズダ…」

「…!!」
 しぃが息を呑む。
「何人ほどです…?」
 リル子は訊ねた。
「ホールには3個中隊…約280人ってとこね。外には… とにかくいっぱい」
 つーの代わりに、レモナが口を開く。

 リル子は階段の途中で立ち止まった。
 要人達の列の進行も会談の真ん中で止まる。
 そして、リル子は要人達の方に振り返った。
「聞いての通り、1階のエントランスホールは敵で埋まっています。
 私達で片付けるので、ここで待機していてください」

 首相は緊張した面持ちで頷いた。
 次に、ギコ達の方を向くリル子。
「私とレモナさん、そしてつーさんは、敵に突貫して道を空けます。
 おそらく、相当の数の敵兵がここにも向かってくるでしょう。
 ギコさん、しぃさん、モララーさんは要人の方々を護衛して下さい」

「おうよ!」
 ギコは頷くと、階段の下に視線をやった。
 上がってくる奴を片っ端から撃退すればいい。
 上方に陣取ったこちらが有利だ。

「レモナさん、つーさん、準備はいいですか…?」
 リル子はアタッシュケースを手繰り寄せて言った。
「久々に、気合が入るわね〜」
 レモナが軽く髪を掻き上げる。
「アヒャ! マカセトキナ!」
 つーが両手の爪を剥き出しにした。

 リル子は2人の様子を確認すると、アタッシュケースを開いた。
 ケースから飛び出した『アルティチュード57』が、一瞬にしてリル子の体を覆う。
         Anfang   System All Green
「『Altitude57』、起動…  システム異常無し」

 コードに覆われた漆黒のスタンドを身に纏い、リル子は階下に視線をやった。
 ここからは見えないが、1階には大量の敵兵が待ち伏せている…
 リル子は、次に一同を振り返った。
 敵兵から奪った小銃を構えているギコ。
 少し不安げなしぃ。
 よし、やるぞッ!!と気合を入れているモララー。

 レモナとつーは、リル子と視線を合わせて頷いた。

「――では、行きますよ」



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
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