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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

354:2004/05/17(月) 21:25

「―― モナーの愉快な冒険 ――   そして新たな夜・その5」



「『アルケルメス』ッ!!」
 スタンドで、相手の攻撃の瞬間をカットする局長。
「…!!」
 しかし、攻撃位置に男の姿は見えない。

 ――再び、背後。
 局長は、銃撃の瞬間をカットする。
 同時に、背後にいるはずの男を狙って、カットした銃撃をペーストした。
 しかし、その攻撃も空を切る。

「なるほど… お前の能力、守備一辺倒でもないようだな」
 真横から男の声がした。
 姿は全く見えない。
 銃撃しながら、素早く移動しているようだ。

 能力が悟られた――
 しかし、それは大した問題ではない。
 『アルケルメス』の能力は、遅かれ早かれ相手に悟られる類のものだ。
 バレたところで、戦い方はそう変わらない。

 今度は、正面からの銃撃。
 これもカット。
「…そこか!」
 局長は、懐から取り出した拳銃で正面に発砲した。
 だが、やはり手応えはない。
 向こうは持久戦を狙っているようだ。
 いかに局所的とはいえ、時間をカットするのはエネルギーの消費が激しい。
 このままいけば、倒れるのは自分だろう。

 ――僅かな殺気。
 局長は素早く飛び退いた。
 同時に、局長自身も発砲する。
 しかし、正面の壁に虚しく銃痕を残すのみ。

「弾丸の回避にスタンドを用いなくなってきたな… もう能力は打ち止めか…?」
 男の不敵な声がする。
「さあ、どうでしょうかね…」
 局長は身を翻すと、声の方向に発砲した。

 この男のスタンド能力は、おそらく肉体の透明化。
 殺気や気配も極端に薄いが、それは本体自身の技能と言っていい――
 ――と、普通なら断定するだろう。
 だが、早期の能力断定は危険だ。
 別の能力に見せておいて、油断した相手に止めを刺すという戦法もある。

 透明化など、いくつも方法はあるのだ。
 擬態、光の遮断や屈折、こちらの視覚の撹乱…
 スタンド能力を応用し、透明な状態を作り出す。
 そうしている可能性がある限り、早期の能力断定は視野狭窄に他ならない。

 壁を背にして背後をカバーし、拳銃を乱射する局長。
 だが、男にはかすりもしない。
「…!!」
 その瞬間、局長の肩から血が噴き出した。
 真っ赤な血がスーツを濡らし、ポタポタと床に垂れる。
 咄嗟に身を逸らさなかったら、心臓に直撃していただろう。

「銃撃の瞬間の殺気を感じ取るとは… お前も、相当の修羅場をくぐってきたようだな…」
 突然、目の前の空間が人型に歪んだ。
 男が局長の眼前に姿を現す。
「貴方ほどではありませんよ。伝説の傭兵、ソリッド・モナーク…」
 局長は、肩を押さえて男に言った。

 モナークと呼ばれた男は、僅かに驚きの表情を浮かべた。
「俺を知っているのか…」
 その問いに答えるように、局長は笑みを浮かべる。
 紺の潜入用スーツ、サイレンサー付きのUSP、長いバンダナ…
 その扮装は、闇に生きる者なら誰もが知っている『伝説の傭兵』のものだ。

「これでも、公安機関に就いている身。その名くらいは耳にしたことがありますよ。
 確か、シャドーなんとか事件で死んだと聞きましたがね…」
 そして、スタンド使いであるという記録もない。
 ここまで有名な男がスタンド使いならば、公安五課の局長である自分の耳には入るはずだが…

「そう。俺は確かに一度、命を落とした…」
 モナークは、表情を変えずに言った。
「それで、死んだはずの人間がここで何をしているんです? 要人暗殺ですか?」
 局長は訊ねる。
「…暗殺? …ああ、その通りだ」
 モナークはあっさりと頷いた。
「なるほど…」
 局長はため息をつく。
 やはり、この潜入者の目的は暗殺………か?

「とにかく、再開といきましょうか…!」
 局長は、眼前に立っているモナークに銃口を向けた。
 しかし、モナークに反応はない。
 避けようという動きすらなかった。

「俺が、攻撃手段を残している相手の前に姿をさらすと思ったか…?」
 モナークは局長を見据えて言った。
 そして、手にしているUSPのマガジンを交換する。
「残弾数を正確に数えておくのは、兵としては基礎の基礎だ。自分の銃だけじゃなく、相手のもな…」

「!!」
 局長は何度も引き金を引いた。
 しかし、銃弾は出ない。
 弾切れ…!!

355:2004/05/17(月) 21:28

 局長は身を翻した。
 そのまま、一点を目指して駆け出す。
 あの場所だ。あの場所へ行きさえすれば…!!
「スタンド使いとしては一流かもしれんが、戦場における兵士としては三流だったな」
 モナークは、背を向けた局長に発砲した。 

「くっ、『アルケルメス』――!!」
 スタンドを発動させる局長。
 しかし、タイミングがずれた。
 弾丸が脇腹を貫通する。

「くっ…!!」
 大きくよろけたが、なんとか体勢を立て直す。
「…まだ、私は死ぬ訳にはいかないんですよ。
 私の事を想っているくせに、冷たい態度ばかり取る天邪鬼な部下がいますからね。
 彼女を泣かす気はありませんので…」
 そう言いながら、局長は足を進めた。

「それは羨ましい話だな。俺の周囲の女は、どうも棘が多い…」
 背後からモナークの声。
 彼の姿は既にない。再び姿を消して…

「!!」
 右足を弾丸が貫通した。
 大きく体勢が崩れる。
 だが、何とかあの場所へ…

 右足を引き摺って、局長は廊下を進んだ。
 背後に『アルケルメス』を待機させ、時間をいつでもカットできるようにする。
 これで、向こうも迂闊には近付いてこないだろう。
 …この短期間に、何度も時間をカットした。
 残されたスタンドパワーだと、せいぜいあと1回か2回…!

 ようやく見えてきた。
 モナークに討たれた、米兵15人の死体。
 あそこへ行けば…!!

「やっと着きましたね…」
 局長は、死んだ米兵が持っているM4カービンを手に取った。
 そして、モナークが追ってきているはずの背後に銃口を向ける。
「カービンライフルなら、向かってくる方向さえ分かれば…!!」
 局長は銃のセーフティーを解除すると、そのまま引き金を引いた。

 ――しかし、何も起こらない。
 銃弾は発射されなかった。
 それもそのはず、マガジンが装着されていない…

「忘れたのか? お前の仲間の少年が、銃弾を回収していただろう…」
 背後から声がした。

 ――その通りだ。
 確か、ギコが銃弾を回収して――

 局長の思考は、首に巻きついた衝撃により中断する。
 いつの間にか、背後のモナークは姿を現していた。
 その強靭な腕が、局長の首に食い込む。
 このまま、首の骨をヘシ折る気だ――

「さすが、『伝説の傭兵』…」
 局長は呟いた。
 喉が圧迫されて、しっかりとした声にならない。
「褒めても無駄だ。命乞いは――」
 モナークの言葉を、局長は遮った。
「…そう来ると思ってましたよ」
 局長のスーツから、何かが大量に落ちる。

 30個以上ある『それ』は、床に落ちて乾いた音を立てた。
 他にも、まだ懐に残っているようだ。
 米兵の死体から手に入れる必要があったのは、M4カービンなどではない。
 回収する時間は、『アルケルメス』でカットした――

「手榴弾か…ッ!!」
 モナークは大声を上げた。

「『伝説の傭兵』と称される程の男なら、弾薬は節約するはず。
 銃弾を使わずに倒せる相手なら、当然銃弾は使わないでしょう?」
 局長は少し咳き込みながら言った。
 先程まで自分を追い詰めていた戦い方は、戦場におけるスナイパーの戦法である。
 首を折られていた米兵の死体からも、この男の傭兵としての実力は明らかだ。
 そう、この男はあくまで傭兵の戦法で戦っている。

「――ミステイクですね。戦法のロジック化は、時に判断を甘くする」
 局長は、背後のモナークに告げた。
「馬鹿な、自分もろとも…!!」
 モナークは咄嗟に局長から離れる。
 だが、もう遅い。

「それもミステイク。男と心中する趣味はありませんよ…」
 局長の背後に、『アルケルメス』が浮かぶ。
「…吹き飛ぶのは、貴方1人です」

356:2004/05/17(月) 21:28



 首相官邸4階に、爆音が響いた。
 30個以上の手榴弾の誘爆は、周囲の悉くを吹き飛ばした。
 その瞬間をカットし、爆風を逃れた局長を除いて。


「ふう、やれやれ…」
 局長は、スーツの埃を払った。
「ああ、血止めにしか使われない紳士の嗜み…」
 そう呟きながら、局長はかがみこんで足にネクタイを巻きつける。
 どうやら、歩くのに支障はないようだ。

「これは… 食が進まなくなりますねぇ…」
 局長は、足元に転がるモナークの右腕部をちらりと見た。
 モナークの体は爆砕し、周囲に四散していたのだ。
 廊下の向こうには、生首のようなものまで見える。

 …この男の目的は何だったのだろうか。
 モナーク自身が言っていた、要人暗殺とはとても思えない。
 彼は、いともあっさりと認めたのだ。
 モナークほどの男が、そんなに簡単に口を割るはずがないだろう。
 それに、暗殺ならばいくらでも機会はあったはずである。

「ASAのスタンド使いとも気色が違う… まさか、『教会』!?」
 局長は呟いた。
 もっとも、こうなった以上は聞き出しようもない。
「まあ、手加減できる相手でも無かったですしね…」
 そう言って、ため息をつく局長。

 階下から銃声が聞こえてきた。
 どうやら、脱出に手間取っているようだ。
「さて、急がなければ…」
 局長は腰を上げると、急いで階段を降りていった。





 千切れ飛んだモナークの右手が、ピクピクと蠢いた。
 そのまま、ズルズルと床を這う。
 四散した肉片が、次々と繋がっていった。
 そして、それは人型をなす。
 モナークは、ゆっくりと立ち上がった。

「…これが吸血鬼の肉体。頭さえ無事なら、死ぬ事はない…か」
 モナークは呟きながら両手を動かした。
 特に違和感はない。どうやら、完全に再生したようだ。

「スタンドを用いた戦闘は初めてだが… なかなか勉強させてもらった」
 潜入用のスーツは完全に吹き飛んでしまっている。
 モナークは、荷物から替えのスーツを取り出した。
 それを素早く身に纏う。 
 荷物は再び『隠した』。
 最後に、バンダナを締める。

「さて、そろそろ任務を開始するか…」
 モナークは、無人になった4階会議室のドアを開けた。

357:2004/05/17(月) 21:29



          @          @          @



「うおおおおお!!」
 ギコは、階段を上がってくる兵達にM4カービンを乱射した。
 向こうからの銃弾は、全て『レイラ』で弾き返す。
 兵の1人が、素早く階段を上がってきた。
「…ちッ!!」
 ギコは右手でM4カービンを連射したまま、懐に左手を突っ込んだ。
 そして局長から渡された拳銃、ザウエルP230を取り出す。

「このッ!!」
 ギコは、兵の足に狙いをつけて拳銃の引き金を引いた。
 足を撃ち抜かれた兵士が、バランスを崩して階段を落ちていく。
「この階段を上がってくる奴は、容赦しねぇぜゴルァ!!」
 ギコはそのまま両手に銃を構え、階下目掛けて撃ちまくった。

 それでも、怯まずに押し寄せてくる兵士達。
 階段に足をかけた瞬間、兵士の膝から下が消失した。
「おっと、そこら辺は危ないよ。『空間の亀裂』が仕掛けてあるからね…」
 モララーはそう言って笑みを見せる。
「まあ、次元ごと裂いてもいいんだけど…」
 そう言って、指を鳴らすモララー。
 階段の手摺から横一文字に『次元の亀裂』が走る。
 何人もの兵士が、それに呑み込まれた。

「派手にやってるねぇ…」
 『アルカディア』は階段に座り込んでため息をついた。
 その横では、要人達が姿勢をかがめて震えている。
 流れ弾が、列の先頭目掛けて飛来した。

「…『外れる』」
 『アルカディア』は呟く。
 弾丸は大きく軌道を変え、天井にめり込んだ。
「ねぇ、こんなところでのんびりしてていいの…?」
 しぃは『アルカディア』に訊ねる。
「いいんだよ。流れ弾を処理するってのは重要な役割だし、何より楽だ…」
 『アルカディア』は腕を組んで言った。

「レモナ、つー、リル子、早くしてくれよ…!」
 ギコは階下に銃を乱射する。
 エントランスホールでは、3人が大人数を片付けているはずだ。
 早くしないと、こちらの弾数にも限りが…

 兵の1人が、素早く階段を上がってきた。
 かなり距離が近い…!!
「このッ… 『レイラ』ッ!!」
 スタンドの刃が一閃する。
 兵士の上半身と下半身が分かれ、血を撒き散らしながら階段に転がった。

「…!!」
 思わず、ギコは息を呑んだ。
 銃器では感じなかった、人の命を奪った生身の感覚。
 胴の切断面からどろりと垂れる血。
 咄嗟に視線を逸らすギコ。
 その隙に、多くの兵士が階段を駆け上がって…

「ギコ、何してるのさ!!」
 『次元の亀裂』が、階段上に幾重にも走った。
 兵士達が次々と巻き込まれていく。
「目を逸らしてたら、僕達だって殺られるんだからな!!」

 …そう。
 これは、命のやり取りだ。
 躊躇するのは、相手に対しても侮辱になる。
「これくらいで、負けるかよッ!!」
 ギコは両手の銃を階下に乱射した。
 それをかいくぐって近距離まで近付いてきた敵に、『レイラ』の斬撃を見舞う。

 兵士の1人が、自動小銃の下部に取り付けられた筒状の銃器を向けた。
「グレネードだと!? 味方も密集してるんだぞッ!!」
 ギコが叫んだ。
 黒い榴弾が、空中に向けて放たれる。
「モララー!! 頼むッ!!」
 ギコは振り返って叫んだ。

「…爆発物処理は、僕の仕事だね」
 モララーは指を鳴らした。
 榴弾が、空中に溶け込むように消滅する。
「エントロピーは、常に減少するもんだよ…」
 モララーは笑みを浮かべて呟いた。

358:2004/05/17(月) 21:30

 戦いの流れが変わった。
 押し寄せてくるだけだった敵の動きが、明らかに変化している。
 兵の数は徐々に少なくなり、ついには姿が見えなくなった。
「撤退した…のか?」
 ギコは銃を下ろして呟く。
「これだけやっちゃったからね。敵わないと悟ったのか…」
 モララーが息をついて言った。

 ギコはしぃと要人達を見る。
 どうやら怪我はないようだ。
「オレにも、ちっとは感謝しなよ…」
 『アルカディア』は腕を組んで威張っている。

 階下から足音が近付いてきた。
「敵か…?」
 ギコが再び銃口を向けた。

「…そちらはどうです?」
 階下からリル子の声。
 ギコは安堵のため息をついて銃を下ろした。
 どうやら、下もカタがついたようだ。

「こっちは大丈夫だぜ! 1人の怪我人も出してねぇ!」
 ギコは階下に呼びかけた。
「こちらも片付きました。脱出しましょう」
 階下のリル子は言った。
 ギコは、要人達やモララー、しぃの方に振り向いた。
「よし、下も安全みたいだ。行くぜ!」


 エントランスホールには、多くの兵士が倒れていた。
 明らかに息がないと思われる者も多い。
 そんな中で、2人の女と1人の性別不詳が立っていた。
 その身は、多くの返り血を浴びている。
「さすがリル子さん、頼りになる女性だなぁ…!」
 モララーが瞳を輝かせた。

「後は、局長と合流だな…」
 ギコはモララーを無視して、リル子に言った。
「…あと20秒ほどで、ここに来ると思われます」
 リル子は告げる。
 彼女の言葉通り、局長はすぐに階段を下りてきた。
 そのスーツは破れ、血だらけだ。
 銃で撃たれたと思われる傷も幾つかある。

「そちらは… 特に負傷はなさそうですね」
 局長の姿を見て、リル子は言った。
「…どうやったら、そう見えるんですか」
 そう言って、局長は倒れた米兵で埋まっているホールを見回す。
「それにしても、ますます嫁の貰い手がなくなりますねぇ…」

「私1人でやった訳じゃありませんよ、フフ…」
 リル子は僅かに笑った。
 ギコは直感する。
 リル子が微笑を見せたとき、その心に鬼が棲んでいる…

「…それと局長、天邪鬼で申し訳ないですね。
 誰かにやられて局長が死のうが、私が局長を殺そうが、泣きはしないので安心なさって下さい」
 リル子は百万ドルの笑顔で言った。
「…」
 局長は、無言でスーツのポケットに手を突っ込む。
 そして、偽造した身分証明書を取り出した。
 救急車で移動した時に用いたものだ。
 最近リル子から受け取ったものと言えば、これしかない。

 身分証明書のケースを軽く振る局長。
 黒く小さい機械のようなものが、その中から落ちる。
「…まったく、内部監査でもしてるんですか?」
 局長はリル子に言った。
「フフ… いかなる者にも気を許すな、とおっしゃったのは局長でしょう…?」
 リル子は笑みを見せる。

「なにかわからんが止めろゴルァ!」
 ギコは、ただならぬ雰囲気の2人を静止した。
「おっと、こんな事をしている場合ではありませんでしたね…」
 局長は言った。
「とにかく、脱出しましょうか」

 局長の言葉に頷く一同。
 エントランスホールの中央に転がっている救急車は、完全にスクラップと化している。
 徒歩でヘリの待機地点まで行くしかない。
 こうして、一同と要人達は首相官邸を出た。


 首相官邸玄関から門、その前の車道にかけて、道は倒れた兵士で埋まっていた。
 周囲に人気はない。
「脱出の邪魔になりそうな存在は、全て片付けておきました」
 リル子は平然と告げた。
「うわ… すげぇなぁ…」
 ギコは周囲を見回して、感嘆の声を上げる。
 あれだけの時間で、一体何人倒したんだ?

「…急ぎましょう。応援が来るかもしれません」
 先頭のリル子は、少しスピードを上げた。
 その後ろに、列になった要人達が続く。
 そして、列を守るように左右を固めるギコ達。
 最後尾には局長。
 このフォーメーションで、夜の車道を駆ける。
 周囲の道路を完全に封鎖しているらしく、通りかかる車は1台もない。

 ヘリの合流地点は、そう遠くはない。
 特に問題はないはずだが…
 それでも、不安が局長の脳裏から離れない。

「君なら、いつを狙う…?」
 局長は、先頭のリル子に訊ねた。
「…ヘリに乗り込む瞬間を狙うでしょうね」
 リル子は前を向いたまま答える。
「やはり、そうでしょうね…」
 局長は同意して頷いた。
 ヘリが離陸した瞬間に狙われるのも危ない。

359:2004/05/17(月) 21:31


「やられた…」
 突然、レモナが呟いた。
「ステルス機ね… この私が、ここまで接近を感知できないなんて…」

「どうした?」
 ギコは振り返って、レモナに訊ねる。
 レモナはそれを無視し、局長に呼びかけた。
「今からきっかり4秒後の時間をカットして!!」

「え…!?」
 困惑する局長。
「参りましたねぇ。官邸内で能力を多用したから、余力があるかどうか…」

 ―――3

「いいから! やらなかったら、全員ハチの巣じゃ済まないわよ!!」
 レモナが叫ぶ。
「ナンダ、コノ ニオイ… スゲェ テキイダ…」
 つーが、背後の夜空を見上げた。
 つられてギコも夜空に視線を向ける

 遥か彼方から、空を切る音が聞こえてきた。
 やけに耳に響く。
 何だこれは…?

 ―――2

 局長の背後に、『アルケルメス』が浮かんだ。
 後ろから、何かが来る。
 無機質な殺気。
 空を切る音。
 それは一直線に近付いて――

 ―――1

 耳をつんざくような轟音。
 風を切る音は徐々に大きくなっている。
 そして、周囲に轟くエンジン音。
 間違いない、これは――!!


「『アルケルメス』!!」
 局長はスタンドを発動した。
 先頭のリル子から最後尾の局長までの範囲で、2秒ほど時間をカットする。
 周囲から響く、形容しがたい炸裂音。
 同時に、頭上から強烈な轟音が突き抜けていった。
 そして、凄まじいまでの風圧。
 何かが、超音速で頭上を通過していったのだ。

「これは…!!」
 ギコは周囲を見回した。
 コンクリートの道路はボロボロに砕けている。
 その凄まじい破壊力。
 『アルケルメス』で時間をカットしていなければ、全員まとめて肉塊だった。

「…やってくれる。戦闘機からの機銃掃射か…!!」
 局長は空を見上げた。
「…」
 ギコは唾を呑み込む。
 『レイラ』の視覚は、闇夜に飛来した巨大な鋼鉄の翼を捉えていた。
 あれは間違いなく世界最強の戦闘機、F−22・ラプター。

「なんて奴等だ! あんなものまで持ち出してくるなんて…!!」
 ギコは夜空に向かって叫んだ。
「2機確認しました。旋回して、再び攻撃を仕掛けてくると思われますが…」
 リル子は、戦闘機の飛び去った方向に視線をやる。

「…あれは、私が相手をするわ」
 突然、レモナは言った。
「おい! いくらお前でも、相手は戦闘機だぞ!?」
 ギコは口を挟む。
「忘れたの? 私は兵器なのよ。ああいうのと戦う為に造られたの」
 そう言って、レモナは微笑む。
「…だから、先に行って」

「任せていいですね?」
 局長は、レモナを見据えて言った。
 頷くレモナ。
「ヘリなら追いつけるから、離陸しても構わないわ」

「お前、死ぬ気じゃないだろうな…」
 ギコは、レモナの瞳を真っ直ぐに見る。
「いやねぇ。アメリカの威信をかけた飛行機だかなんだか知らないけど…
 最終兵器の私が、たかだか米軍の戦闘機にやられるとでも思ってるの…?」
 レモナは、いつものように笑みを浮かべて言った。
 ギコもつられて笑う。
 自分が心配した相手は、バラバラになっても平気で生きているようなヤツだ。
「…そうだな。とっとと片付けて、早く合流しろよゴルァ!!」

「じゃあ、そっちも頑張ってね〜」
 レモナはそう言うと、襲来する戦闘機を迎え撃つようにその場に立った。

「…急ぎますよ。のんびりしていては、戦闘に巻き込まれかねません」
 局長が前進を促す。
 リル子は頷くと、再び進み出した。
 それに従い、列が動き出す。
 ギコ達は、列を守るように周囲に散開した。
 ヘリの待機場所までかなり近いようだ。
 …ここからが正念場だ。
 ギコは、大きく息を吸った。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
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