レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
チラシの裏 3枚目
-
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに
-
「『DSC』が……!?」
「あなたの動きは私は手に取るようにわかりますよ、真ちゃん」
金の翼をはためかせ、マスターリングとなったあずさは微笑します。
「『超風』」
あずさが手をかざした真上に小型の太陽…超高熱の熱源。
それがあずさの手の一振りで投げつけられ、大爆発。
「うあああああああああああああああああああああああ!!!」
「『剣』」
他の術士とは比べ物にならない速度で、巨大な剣3本がやよいを貫きます。
「あ、あああああ…!!」
「やよい!」
「やよいちゃん… 傷は浅いわね」
「………その程度ですか?もっと全力を出せるではないですか」
長期戦になるのは目に見えている。現に随分戦っている。
……消耗の少ない技だけを集めて攻撃していても、あずさの前には手も足も出ない。
ルージュが言います。
「…もう、このまま抑えて戦っていては勝ち目はない…全力でいく…!」
「…やってごらんなさい」
この一発であずさを倒す。全員で連携を繰り出します。
「『グリフィス』
『ロザリオ』
『無月』
『羅刹』
『塔』!!」
現在考えられる、最強の連携攻撃をあずさに繰り出します。
-
まずはやよいの『グリフィススクラッチ』。
モンスターの最強の攻撃の一つである、巨大な爪での攻撃。
魔力で刃を形作り、やよいは大きくあずさに切りかかり
次に春香の『ロザリオインペール』
あずさの体の四肢それぞれに剣を持った分身を降らせ打ちつけ、最
後に本体が頭上から剣を振り下ろし
次にピヨさんの『無月散水』
4人の分身で激しく滅多切りを続け闘気を相手に打ち込み続け
最後に頭上に集まり一撃を見舞い
次に真の『羅刹掌』
一撃必殺の気合の元に、精神を極限まで集中させて放つ一打。
そして…ルージュの『塔』。
ルージュが全魔力全てを投げうった、最強最大の術。
あずさの頭上に、リージョンすら軽く破壊するほどの威力の雷を注ぎ込みます。
秘術の、いや…全・術中最強の術。
考えうる最強の攻撃。
封じていた力全てを放ったこの連携。
全員…全ての力を使い果たしました。
「………はぁ、はぁ………」
…しかしそこには…
あずさの姿がありました。
あずさは…不敵な笑みを浮かべています。
「全力を出すに値するようです。」
「…これで、漸く本気が出せます …ちょうど、皆指輪の化身を倒したようね………ふふ、ふふふ…」
9つの光があずさに集まります。
「まさか…!!」
そう
9人のモンスターと同時に戦わせたのは失策でした。
…全ての力はあずさの力。
倒されたことで形を失った9つの指輪の力が……あずさに注がれます。
「ふふ、ふふふふ うふふ……!!」
真っ黒な闇の中から…………巨大な指輪の幻影が一つ。
それは彼女にもたらされた究極の力。
…完全体となったあずさがここに現れました。
「さぁ、ガツーンといきましょう♪」
-
…とうとうあずさが、完全な指輪の力を手にしてしまいました。
「あらあら…皆さんまさか、これで全ての力を出し尽くしたわけではありませんよねー…」
…返す言葉が、ありません。
「…まだ!!」
全ての魔力を使い果たしたルージュは持っていたリーサルドラグーンを発砲。
「私だって、負けてはいられません…」
ピヨさんはあずさに向かって二連斬り『切り返し』。
「……わ、わたしも!」
やよいに出来ることはもうありません…『パンチ』。
「ボクだって戦える…!!」
真は『スライディング』であずさの足元を狙います。
「う……!!」
春香は片腕を片腕で支えながら『スマッシュ』。
最早、技を出す気力すら残されていません。
…今のあずさには大したダメージになるはずもなく。
「…………」
「…悪徳さんの工場で戦っていた頃ではないんですから」
あずさの反撃が始まります。
「その程度ですか」
やよいに『強打』。
基本技とはいえ、その威力は桁違い。
辺りに轟音が轟き、やよいは声なき叫びと共に、血をはきぐったりと倒れ
「あなた達はもう力を使い切ったというのですか」
振動波がピヨさん、春香、真、ルージュを吹き飛ばします。
「面白くないですね…」
ピヨさんに向けて追撃。翼から『衝撃波』を発し、切り刻みます。
「ああぁあああ…!!」
ピヨさんの腕が…だらりと落ちました。
「…それなら…こうしてしまいましょうか」
9人の魔物を再び召喚。
「行きますよ」
ティディの『針』の嵐が春香を貫通
「っきゃああああ…!!」
リッチの『デスグリップ』が真の心臓を停止させ
「……う…!!」
マリーチの『石化凝視』がピヨさんを石にし
「あああ…!?」
ユニコーンの角がそれを砕き破壊。
「……連携の力というのは素晴らしいもの…
それは、妖魔の君すら倒してしまうほどに。
…さあ、あなたには連携攻撃で最期を迎えていただきますよ」
「…!」
ルージュが手からフタを外した傷薬のビンをやよいに投げつけた瞬間……
一斉に攻撃が始まりました。
リビングアーマーの重厚なボディでの、見ることすら適わぬ勢いでの突進。
「う!!」
体が激しく叩きつけられ、グシャリと。この時点で既に致死ダメージ…
その上にタイタニアが激しく噛み付き『吸血』
「……!!」
薄れゆく意識の中でキマイラの『高温ガス』に焼かれ
「……。」
完全に意識が毟り取られた後でグレムリンの『落雷』に体を貫かれ
最後にティディの『針』で全身を串刺しに。
…ルージュの体は見るも無残な形に。
「…仕方がありません。真ちゃんを除き全員完全に塵も残さず消してしまいましょうか
最も…もうあの子も意識すらありませんが」
-
あずさが、全員を消し炭にする最強の陽術『超風』を唱え始めたその時でした。
「ああああああああああああああ!!」
羽の抜けたやよいが猛スピードであずさに突進、パンチを仕掛けます。
「…」
激しい音と共に命中。
………ですが最早その程度の攻撃は少しのダメージも与えはしません。
「…目障りです」
あずさの手がやよいの小さな体を貫きます。
…しかし。
それと同時に、もう片方の手であずさの手を掴むことに成功しました。
「……『キラメキラリ』!!」
力むことすら出来る体でのありったけの声。…指輪の力が……発動しました。
それは緑の指輪…生命の指輪。
「……!!」
緑の光に包まれ、全員の傷がみるみるうちに回復。
「やよいちゃん…!?」
「やよい……」
「危険だ…下がって!!」
「もう、打つ手はないんだ…!」
あずさの誤算。しかし、表情は変わりません。
「流した血は元には戻りませんよ」
やよいに零距離で『超風』。
超高熱源から発せられる炎で、復活した全員が焼かれます。
「ああああああああああああああ!!」
4人とも吹き飛ばされます。
「…………!!!」
やよいだけは手を掴み…吹き飛ばされる直前に何か叫んでいました。
「………もう一つ指輪を使ったようね」
貴音から手に入れた『神秘の指輪』
金色の光が全員を覆うと……
「魔力が……満ちてくる!?」
「…戦える…力が湧いてくるわ」
「……………最後の指輪の力…なの?」
「…でも、やよいはもう……!」
「高槻さん!!」
そこに千早が駆けつけます。
…超風から逃れることは出来ず、皆瀕死のようですが。
「『生命の雨』…!」
命を削っての最大の回復術。
やよいが、真が、春香が、ピヨさんが、ルージュが…皆一瞬にして傷が塞がり、立ち上がります。
乳飲み子に栄養を与える母乳の原料が血であるが如く…
生命の雨は…血を、涙を、汗を…生命の源たる命をすり減らせ他者に与える美しい雨を降らせるもの。
…千早は一人、枯れ糸が切れた人形のように尽きてしまいました。
「…………みん…な…」
立ち上がったやよいは皆を見回します。
息すらせぬ千早を除き13人。
再び戦う準備が整いました。
「生命力の回復を二度…仲間も揃い、技や術もまた放てるようになった…。
いい流れですね…一瞬でその望み、崩して差し上げます」
…真っ黒な指輪の力が……9つの指輪の力を一つにまとめ、
あずさの体に9色の力を蓄え始めました。
「…この術は、最強の術です。」
あずさの内部に…膨大な力は集まり続けます。
「防ぐことはおろか、凌ぐことさえも不可能な術。」
-
集められた力が放たれるまでに何としてでも倒さなければなりません。
「『無月散水』!!」
攻撃はピヨさんから。
体が一瞬にして消えると、あずさを囲うように4人に分身。
「はぁぁぁああああ!!」
狂おしいまでの剣幕を以って剣撃の嵐を四方から叩き込みます。
その傷の数は数秒で100をゆうに超えるとも。
「…たっ!!」
そして上へ向けあずさを四方から一斉に斬りあげ…
「最後!!」
一つになった体で一閃、叩き落します。
…凄まじい熱を生じるこの攻撃は斬るだけでなく、体全てを焼く攻撃。
……本来、これに耐えられる者はいないはずなのです。
「……ふふ…」
あずさはこの技を何度食らっても倒れる気配を見せません。…ダメージとなっているのは確かなのですが。
「DSC!」
真の攻撃。
一直線に滑り込み、あずさの足元を掬う『スライディング』
浮き上がったあずさを掴み、頭から叩き付ける『スープレックス』
そこからもう一度飛び上がり、勢いよく叩き付ける『バベルクランブル』
足を掴み高速回転、空中へ放り出す『ジャイアントスイング』
そこへ掴みかかり、地面へと激しく叩き付ける『スウィングDDT』
これら5つの技を一人で連携する『デンジャラス・スープレックス・コンボ』をあずさに決めます。
「…ど、どうだ…」
…まだまだ倒れる気配すらも見せません。
「『ロザリオインペール』!」
春香が飛びあがります。
そして前後左右から落下、あずさを斬りつけ…最後に本人があずさの脳天に向かい剣撃。
「…残念ながら…時間切れのようです」
……あずさの術合成が完了したようです。
指輪の力を極限まで使った最強最悪の術が…ここに発動されます。
「全て…消し飛んでしまいなさい」
「『レヴォリューション9』」
黒き指輪の元に集められた指輪の力が暴走…爆発。
「……あ……」
口を開けたまま……目を閉じることすら適わず。
全てを巻き込み破壊する魔力の渦に巻き込まれ…全てが破壊され…飲み込まれてゆきます。
やよいも、春香も、ピヨさんも、ルージュも、真も……それ以外の全員が。
「………………う」
圧倒的な力の前に倒れたやよいが…起き上がります。
「…耐えた…」
「…超風以上にキツいけど…何とかなりましたね」
「次にこの術が来るまでに…あずささんを止めるんだ!!」
「まだ…負けたわけじゃない!!」
「………おかしい。この程度の威力なはずが……完全に9つの指輪の連携が取れていれば…」
不発。
ガスを充満させた巨大風船による爆発が……それを起こすためのライターの炎程度で終わったかのような。
「……」
力を発生させるための因子が足りない。
「……やよいちゃん…やってくれたわね」
-
指輪の力を発動したために、一時的に指輪の力に均衡が保たれなかった。
…先ほどの例で言うならば……そう、巨大風船に穴が開いていた。
…しかしそのライターの炎に過ぎぬものもあまりに強力。
二度食らえば、その時は……
「ならばもう一度放つまでですよ」
9つの力を集めるあずさ。
今度こそ…あずさを倒さなければ。
「『塔』!!」
全ての魔力を叩き付ける究極の秘術。
あずさを中心として、巨大な塔の幻影が現れ……巨大な雷によって粉々に粉砕されます。
「………う…」
その威力はピヨさんの最強剣技『無月散水』の10倍以上。
あずさには流石に大きなダメージだったようです。
「連携で畳み掛けるぞみんな!!」
残りの4人が息を揃えます。
「『三龍』
『乱れ』
『スクラッチ』!!」
真から。あずさの側面を、正三角形を描くように3度に渡り蹴り…
それに沿うように闘気で形作った3頭の龍が天へ駆け巡りあずさの体を締め付けます。
そしてピヨさんの乱れ雪月花。
周りの大気の熱を体に集中させ…凍えるような空気の中で一瞬の跳躍であずさの懐に踏み込み振り下ろす。
そこから一糸乱れぬ凄まじい勢いで斬りあげ三日月をかたどり
最後に、血で花を咲かせるような渾身の一撃を高く高く上昇しながら繰り出す。
最後にやよいのグリフィススクラッチ。激しい勢いで斬りつけます。
「……………!!」
あずさの表情が歪みます。…指輪による守りをダメージが超えてきたようです。
しかしまだ…。
「『覚醒』!!」
そんな中、春香は心術により己の力を倍化。
…次はないというのに。
「…そんなことをしていても、次の攻撃で私達負けるのよ…!?」
いえ…春香には秘策がありました。
「…大丈夫ですよ。
だってルージュさん」
-
「…?」
「レヴォリューション9は…『術』ですよね!」
雪歩が後ろで口に指を当てて考えると…
「……あ、そうだね!」
ルージュがはっとしています。
「…私としたことが、これじゃ術士失格だな」
「双海さん、雪歩、美希!! お願い!!」
「うん!」
「頼まれた」
「解ったの!!」
「『ダークスフィア』!!」
闇には闇を…というわけではないのですが。
暗黒のエネルギー弾を三方向からあずさに向かって撃ち込みます。
「…!!……ま、まさか」
雪歩が説明。
「その術合成が『術効果』なら…私達打ち消すことが出来るんです ましてやそれが不完全なものなら。
ルージュさんの覚えてる魔術最終奥義『サイキックプリズン』や『ヴォーテクス』
そしてあずささんが今装備してる指輪の一つ『隠者の指輪』の効果は『効果の打ち消し』
でもそれももう出来ない。けれど、同じ力を付加する術がもう一つだけあるんです!!」
「『ダークスフィア』…!! 陰術の中でも使い道の少ないその術を………」
3発の重ねがけ。
レヴォリューション9が…完全に闇の中に消えてゆきます。
「愛してるよ雪歩ー!!」
美希や双海の協力もあったのですが何故雪歩なのでしょう。春香は精神を集中させ…
「……『無月散水』!!」
最後の技を放ちます。
「…そ、それ私の!?」
「見てるうちに覚えちゃいました!!ロザリオインペールと近い技ですから!!」
「……ショックなくらいの才能ね…」
ピヨさんの後継者は決まったようです。攻撃力を倍化した春香による最強の剣術…
「そしてダークスフィアを使うメリットはもう一つ!!」
4つに分身した春香が、手にした剣は…
「『光の剣』…!!」
雪歩から託された陽術の最強術、『光の剣』。この剣自体がまたレヴォリューション9と同じ、魔法効果。
ヴォーテクスや隠者の指輪では、この術の効果すらかき消されてしまいます。
ダークスフィアなら…あずさの効果だけを打ち消すことが可能。
「行きますよ!!」
激しい勢いで、光の加減で輝く剣を振りかざし、狂ったように斬りつけます。
闇に染まった10色の指輪から、色を奪い取るが如く。
彼女の愛する色でもある光の色…白から始まり…黄色、青…黄色、緑、明るい緑、桃、橙。
そして1人になり、あずさの頭上から振り上げるとあずさの髪を映し出し紫。
「はぁあああああああああ!!!!」
最後の一打が振り下ろされます。
「…!!!」
あずさはそれを手でガード。
…光の剣が…………指輪の力で『黒』に染まります。
そして………
「わあああああああああああああああああ!!」
「……!!!」
春香の悲鳴。
あずさの手から指輪がはじけ飛びます。
その瞬間、何もかもが真っ白に。春香がそのまま吹き飛び……
全員が弾け飛んだ指輪のエネルギーにより…………倒れてしまいました。
やよいを除いて。
「……う、……あずささん… …あずささん…!!」
何も知らぬ自分をここまで導いてくれた最初の仲間。
…一番、彼女に協力してくれた人の名を呼びながら。
真っ白な光の中…やよいは走り出します。
そして、指輪を持たない手を握るのでした。
「……」
-
そして光が収まるとやよいの頭にはあずさの手……
「………!!」
…に握られた拳銃。指には…たった一つ残された、黒き指輪。
「あなたはどうやら… この世界の仕組みがまだ、わかっていないようね」
拳銃『ブリューナク』。意味は『貫くもの』
対してやよいの体は瀕死の状態…
戦うことすらまともに出来ぬ最初の形態、『ラモックス』に戻っていました。
「…………私を殺すには…まだ足りない」
やよいは…否定します。
「…違います…私はあずささんが心配で」
「嘘のつき方もまだまだ下手ねえ……」
マーグメルは再び滅びた元の状態に。
…指輪の魔力は解かれていました。
「………」
あずさの精神を除いて。
「あなたも見てきたはずよ
この世界がどんなものかを…力により統制された…歪んだこの世界」
もう、他の誰も戦う力すら残っていません。…手足一つ動かすことも出来ず。
「……私が生まれた場所は、このマーグメルとは正反対の場所でした…
土地は確かに、豊かだったのかもしれないわね……ルーンの力で栄えていました
しかしそこに住む人たちは決してそうとは言えない。
荒み、犯罪の絶えないクーロンの街。…正直、あなたを見たときは羨ましかったわ」
「売られることも、殺されることも、盗まれることも日常茶飯事なそんな町の中でした。
…けど、私は信じていたんです …いつか幸せになれると。」
「…うんめい、ですか?」
「…そう。運命
…長い月日を経て私は力をつけ、何とか表の社会に出ることが出来たわ
……頼りになる人が一緒に居たおかげで。」
力なく倒れる真をちらりと見ます。
「けどあの日…京へ行く最中のリージョンシップがブラッククロスの『ブラックレイ』により破壊された…
一撃目でシップが破壊。シップの欠片にしがみついていた乗客全員が二撃目で焼かれ死亡。
私は棺の中を見て…それを確認しました」
-
「………私は、そこで思ったんです 幸せになるべき人なんてこの世には存在しない
幸せになる運命の人と、幸せになれない運命の人がいるんだって。
…町の坂道を登るたびに、あの人が傍にいる錯覚を何度覚えたことでしょう。」
目をきつく細め、シリンダーを回転させます。
「それが運命なんです。創造神話の話を聞いたのはその後だったわ。回転する斧で切られた神様の話。
…神様は、もうずっとずっと前からいなかったのね」
「………私は 強くなりました。
利用できるものは利用する それが例え何であっても。
その行いが常識から見た善でも…悪でも。いえ、常識なんて誰かが決めたこと。
…強いて言えば、この世界を形作ってきた『行動すること』が善。『行動しないこと』こそが…悪。
この世界で最後に頼れるのは自分。…行動することで、人は進化し、世界を形作ってきたのですから」
「…私は行動しました。運命を変える術があることを知って。
…マジックキングダムの情報を聞きつけ、学院に侵入し、暗部の秘密と指輪を握り。
それが世間は悪いことだとも言うでしょう …自らの運命から逃げたと言うでしょう」
「…いいえ…逃げは何もしないこと。…或いは何かを行っても、それが絶対に何にもならないこと。
………私は、行動し…その結果、運命を勝ち取りました
真ちゃんの運命を書き換え、やよいちゃんを利用し…全ての指輪を手に入れました」
「………人は誰かの力じゃなく、自分で幸せになれる。 その幸せになるのを、…非難することは出来ません」
「やよいちゃん…あなたは行動した者。けれど他の者たちはマーグメルに残っていたわね…
全て、それが…証明しているんじゃないかしら」
銃を突きつけます。
「……さようなら」
…しかし。
「…………」
一向に引き金を引きません。
「……躊躇っているわね、私としたら情けない」
…それはあずさの内部での、葛藤だったのかもしれません。
「…でも」
異なる環境で育ったやよいは…見上げます。
「でも…私は旅をしました。こうやって、ずっと戦ってきました。みんなといて、凄く楽しかったです」
…真っ白な環境で生まれ育った彼女が…最期の言葉として、あずさに投げかけられます。
「…みんなに幸せになってもらいたいんです!!」
「…そんな言葉は聞き飽きました!!」
その瞬間…あずさの背後に気配。
「!!」
あずさは振り向き発砲。
ブリューナクはその人影を、真っ直ぐに貫通していきました。 …まるで、間に何もないかのように。
「……高槻さん…」
千早のハイドビハインド。陰術の…ダークスフィア以上に価値の無い術でした。
「…!!」
ブリューナクの装弾数は1発。
あずさは腰元のリーサルドラグーンを片手で引き抜きやよいに向けようとしますが……
「あずささん!!」
やよいの最弱の攻撃手段『尾撃』。
やよいの尻尾は、あずさの手を直撃…
「……!!」
リーサルドラグーンの弾丸はやよいの頬をかすめ外れ…
あずさの手からは、ブリューナクが吹き飛びました。
…指輪と、共に。
「…………」
指輪を失ったあずさは、瞳孔が開いたまま倒れます。
「……あずささん」
そして、ゆっくりと瞼が閉じられました。
…その顔は……どこか、何かに疲れきったように見えました。
-
辺りに流れる静寂。
…10秒ほどしてから、あずさが目を覚ましました。
「…やよいちゃん、ごめんなさい
…あなたを騙してたわ」
全ての指輪が手元を離れ…漸くあずさは自分を取り戻しました。
「……全部、黒い指輪のせいです。
…あずささんは悪くないですよ」
しかし…吐露されたのはあずさ自身の根底にある心そのものであったことも
彼女が黒い指輪に助けられたのも事実。
「…あずささん。ごめん
ボクが傍にいたら、あんな指輪に手を出すことは…」
真も漸く立ち上がれるようになったようです。
双海も自分の白衣の能力で傷を塞ぎ立ち上がります。
「…肉体的には問題ありませんね …会ったときから感じていたあの感じも
もう見られません」
…けれど。
「……しかし、マーグメルはおしまいだね」
長老の表情は暗く。
そこに、モモちゃんというラモックスが。
「…長老、元気出してください!私達、どこででも生きていけます!」
続いてカスミ。
「そうそう。わたしたちあかるいのがとりえだもん!」
あずさの言葉にも、一理あります。
…長老は、やよいが旅に出たことの理由を皆に黙っていました。
…きっと、知れば皆動いていたことでしょう。やよいでなくとも、みんな。
そして…今、皆が行動する時がやってきました。
「…いい仲間を持ったね、やよい」
「はい!!」
マーグメルではなく…外の世界へ。
-
「名残惜しいが…いくとするかね」
長老は重い腰をあげます。
「……長老、ちょっと私もう少し旅していいですか?
…指輪を、誰にも手の届かないところに捨てて行きたいんです」
長老は……頷きます。
「うん。いいねぇ…どんどんやってくれたまえ!」
…その時、異論を唱える者が。
「ちょっと!!黒い指輪はまだしも、戦士の指輪は私から預かったものでしょ!?
勝手に捨てられたら困っちゃうわ!」
…続けて千早。
「私も指輪が少し欲しいわ高槻さん…私のいた海に似た、青の」
そしてあずさ。
「やよいちゃん、一応黒井の所に指輪返した方がいいかもしれないわねー」
まだ続きます。律子が。
「後、あの変態なディスペア所長の所にも返した方がいいかもね」
「あ、私律子さんとの婚約指輪に欲しいです」
「ピヨ、ハニーはミキのものだよ!?」
「いつの間にか私新ハニーなの!?」
「ダーリンって呼んでもいいよ律子さんハニー」
響。
「いぬ美もああ見えて女の子だから、指輪を渡して少しは女の子らしくしてあげて欲しいさ」
春香が。
「あとやよい、返すと言えば貴音さん…は怖いから…
ムスペルニブルの山の中に捨てておけば貰ってくれるんじゃない?」
「あのぅ、私と春香ちゃんが使えば…」
双海が。
「私達夫婦にもくれないかな」
そして真。
「……じゃ、じゃあボクとあずささんにも…いや、ボクは男じゃないけど」
「で、やよいちゃん。後残った指輪はどれがあるのかしら?」
「黒い指輪だけです。これは……」
「………」
ルージュが見つめています。
「…この黒い指輪を使って、マジックキングダムの地下を封じていたんだよね」
「…は、はい…」
「………この指輪を戻せば、マジックキングダムも安泰かな」
やよいはぽんと手を叩きます。
「あ!」
「…けど、こんな指輪によって平和が守られていたと思うと…怖くなってきちゃった。
平和は、私達で守らなきゃ。 …マジックキングダムの様子を見てくるよ」
「はい!それがいいと思います!!」
そして、指輪は次々に返されてゆきました。
マーグメルにおける、指輪の騒動。
この出来事を前後して、様々な事件が世に起こることとなります。
-
グラディウス軍の主な士官や将校等第四版
空軍
アルヴァ・ユンカース大将 23歳
ヴィンチェンツォ・ルガース大将 55歳
ディアス・ユンカース中将 21歳
アドリアナ・ベチン中将 51歳
ハスキー・ハルバート中将 50歳
ゴーチェ・ベルトラン中将 49歳
ジェルヴェ・ブラシェール中将 57歳
エヴラール・ダルコ少将 51歳
ジョニー・ガーランド少将 45歳
エドワード・オレステス少将 59歳
フリッツ・パーペン少将 56歳
クラウス・ケッセル少将 41歳
エマニュエル・コロー少将 38歳
ノーナ・ラフマニナ大尉 25歳
リューシャ・ブチェンコワ大尉 24歳
セバスティアン・ハルバーゲン中尉 27歳
スタファン・ヘンネル中尉 28歳
ラミ・ニュメリン少尉 21歳
陸軍
ブラン・ホルテン元帥 23歳
ハロルド・ワイルディング大将 49歳
グリフィン・レインウォーター大将 50歳
フレデリック・レーガン大将 47歳
トーマス・バーシティ中将 51歳
アルベルト・アダンティ中将 50歳
アルバート・シュライヒャー中将 33歳
アーチボルド・バルフ中将 39歳
ジェフ・バッセル少将 38歳
モーゼス・バートン特別少将 22歳
マーカス・キャビンディッシュ少将 26歳
チャールズ・トーチ少将 30歳
ウォーラス・モス少将 48歳
エメリナ・レインウォーター大尉 21歳
エレノエーレ・ベレスフォード少佐 24歳
アンネローズ・ビッグコア=ニーベルング上等兵 17歳
宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将 59歳
クラナス・ランフォード大将 23歳
ナルヴィック・ルフラン大将 25歳
クロン・ベイル中将 61歳
オーラフ・ヴァーノン中将 41歳
ライオネル・アッカースン中将 52歳
ジャック・トンプソン中将 55歳
ヤコブ・フルシチョフ少将 67歳
ルーベン・イングラム少将 38歳
エメライン・ベンジャミン少将 47歳
マンフレッド・ボールドウィン少将 46歳
アリセ・ベンジャミン大尉 21歳
ヴィットーリオ・レッティエーリ中佐 32歳
アドリアノ・カンパーノ少佐 30歳
ニノ・インフォミュラ少佐 35歳
トンマーゾ・ガットー大尉 27歳
アルステーデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
クーニグンデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
マルグリート・ビッグコア=ニーベルング特務少尉 17歳
-
「待ってくれ、美希。…俺だ、…信じてくれ」
「……ハニー………そんな」
「ああ。そうだよ ごめんよ美希。…また、一緒に暮らそう…おいで、」
謎の男『ジョーカー』が、忘れられし聖堂で確保されました。
燃え盛る教会を背に、美しい草花が生い茂る中で。
それは…美希の恋人では、ありません。
…美希の恋人なる者は、とっくとのとうにいなかったのですから。
倒れていた男は…他ならぬ、『ジョーカー』でした。
「…ミキ、一体何をしていたんだろう。
何も知らずにいれば、ただの不幸な女で済んだのにな。」
見渡すは山麓。彼女の悲しい背中を…空に舞う花びらが隠していました。
「…私には、美希にかける言葉なんてない。…未来を予測できる者なんて、いないんだから。」
「…泣いてジョーカーの仮面を銃で割って、プロレス技かけたら、何だかスッキリしちゃった。
ね、律子さん。次のお仕事いこ!」
「私はあんたのプロデューサーかっていうの…
…その顔で、まだ戦うつもり? メイクも取れて、せっかくの顔が台無しよ
…もうあんたは何も背負う必要なんてないの」
「……そう。…ミキ、律子さんのこと、絶対忘れないの!」
「忘れていいわよ?
…ううん、忘れなさい… 全部。 星井美希は、アイドルの仕事だけをしていた。
グラディウスなんて組織に属していたこともないし…これからは、自由。」
「自由、なの?それじゃあ…」
「美希?一体何を………ナイフ?え、あんた何を……
あ、あー…髪を短く………いや、だから一体それは何で… …え?」
「次の仕事ならまだあるって思うな やよい達のこと、忘れてるわけじゃないでしょ?
こんな泣き崩れた顔は、アイドルの方こそ向いてないの。暫く他のことしてたいな」
「…あーいや……アンタも行くの…?ピヨさんに怒られちゃうところだった」
「律子さん、ピヨさんのこと随分気にかけてるね…何か変な感じー…」
「なワケないでしょ!! …まぁともかく。んじゃムスペルニブル行ってみる? はいおにぎり」
「ありがとうなの!」
「…でその後は」
「やよいの手助けしながら考えればいいかなって思うな♪」
「…春香……よくぞ私を倒しました …やはりあなたも私の血を分けた…娘」
「………どこから声を出しているんですか …歌田音!」
「あなたには権利がある。永遠に世界を支配する力を手に入れる権利が。
孤独でしょう、悲しいでしょう …その身の不幸を、地の果てまで振りまきなさい」
「そして、全ての者をその力で支配しなさい 魅力でも、魔力でも。
同性も異性も全てあなたの元にひれ伏すのですから」
「……」
「残り70年の命と、永遠なる幸福。…選択の余地など」
「…いやです。私はあなたのコピーじゃない
私は… …私は、雪歩が愛してくれた私でい続ける!!」
ファシナトゥールを支配する妖魔の君、歌田音が春香により倒されました。
一方的に与え、奪い続ける永遠の時間の愛より、
愛した者が愛してくれた者で居続ける有限の時間の愛を…彼女は選んだのです。
-
「……春香…さま」
「私はもうただの人間だよ …雪歩。…いつかおばあさんになって死んじゃうけど、ごめんね」
「…私は、可愛く歳を取っていくあなたを見ていられれば、それで幸せですよ……
……春香ちゃん」
「雪歩…!!」
「春香ちゃんっ!!」
「ゆ、雪歩、激しいって落ち、落ち…この下ムスペルニブルだか…あーーーー!!熱い、服溶けるーーー!!」
「四条さんに回復させてもらえば問題ありません♪ …あの、それより春香ちゃ…は、はだ」
「雪歩も……あれ、雪歩って結構」
「ピンクパンチ殿…どうしました? なんと。館の前に血まみれの全裸の女子達…? …面妖な」
この後にムスペルニブルの一戦、続いてマーグメルでの出来事と続き…
そしてその後のニュース。
「メタルアルカイザー…お前は強かったよ
…でも、間違った強さだった」
リージョン界の奥、深く蠢く悪の組織ブラッククロスの壊滅。
それを成し遂げたのは、正義のヒーローアルカイザー。
「…啓介のお母さんと妹さん!?」
「あらー」
「あ。ほんとだー!」
「あら真ちゃんにあずさちゃん、ご無沙汰ねー
…って、…あなたまさか、春香ちゃんじゃない!?」
シュライクで死を遂げた小此木母子が何故か発見されたりと。
そんな母子が元気に動いていたにも関わらず、それから彼らの息子である
真の親友、啓介は数日間休暇をとり寝込んでいたそうな。理由は、定かではありません。
そして、アルカイザーの噂はそれ以降ぱったりと消えてゆきました。
「世界を統べるのは『力』だ、それがまだ解らないかね
リージョン界を統治する絶対的な力、見せてやろう!」
リージョン界支配を企てていたトリニティ第七執政官モンド討伐。
ネルソン艦隊と、ワカツ出身の剣豪小鳥、
元ネルソン艦隊幹部の娘響、そのペットいぬ美によって。
ブラッククロスとの協力により作られた対トリニティ用の最終兵器、
グレートモンドとの激しい戦いの末の出来事でした。
時代の英雄、響は今
トリニティ上層部のスカウトに追われる生活を送っているそうな。
「やよい達、今どうしてるかなー…ちょっと匿ってもらおうかな」
「あずささんとの対決の後にはモンドとの戦い。
それが終わったと思ったら、今度は古代兵器と戦うことになるなんてねー…
私もう機械嫌いになりそう…… P765ちゃん、…起きてるのー?」
「眠らせてあげてください。…彼女は数千年か数万年かけてすべての任務を…
終わらせたんデスヨ」
謎のロボットP765とサイネリア博士、疲労困憊のピヨさんらにより、
古代戦争でトリニティの前身となった国が対立していた国が開発し、混沌の狭間に放置されていた
最終兵器、リージョンバスタータイプ3、RB3が機能を停止。
「…まだ、やらなきゃいけない任務が一つ、あるでしょ…
…おきなさい!!」
なお…このRB3が動き出したのは、
古代戦争の司令部HQのコンピュータがP765のアクセスにより
動き出したからであることは伏せられている。
「…ピヨ様、おはようございます」
「HQでのデータ修復時に任務処理優先ファイルがマスクされ、不正な動作を行っていました」
「? …とにかく。忘れていないでしょうね、最後の任務」
「はい。」
「認識ID9172−6253−2012
亜美探検隊所属 直属指揮官亜美隊長 総指揮官真美様
これより、原隊駐留地ボロへ帰還します」
…そして、彼女は最後の任務を終えるのでした。
「姉…ちゃん!!」
「遅すぎだよーーー!!」
「おお。帰ったかねP765君。ウサさんも待ってるよ」
「申し訳ありません」
小さな直属指揮官と、総指揮官の手荒い歓迎の中で。
-
「偽りの、女神め…」
マジックキングダムの崩壊。地下から、モンスターがあふれ出してきたのです。
学院でのコードネーム『ルージュ』…亜美が目にした…かつてあずさも目にした光景。
「……そういうことだったのか…
この、魔術的装置で私と真美を二つに分けて……!!
…どうして!! どうして私達を殺し合わせたの!! 何も知らなかった私達を!!
…何があったの、どうして外のみんなが死んでいるの」
両学院の中間施設…赤ん坊達が何も知らずに眠る、白と黒の培養槽。運命が始まった場所。
「かつて、リージョンバスターと呼ばれた兵器が台頭した古代戦争にあった
マジックキングダムは、誰にも支配されない、楽園を作るため…
戦争に苦しむ人々を救うため、強大な指輪の力で一つのリージョンを作り上げた
きれいな蓮の花が咲き乱れ、天使達が舞い踊り、
光が常に差し込む… 夢の世界。
誰にも侵すことのできない、力を持たぬ者… 欲無き者たちが生きられる天国。
けれど…願いは、異なった形で叶えられた。
真に力の無いものなど、欲望の無いものなどこの世にはいなかった。
その場所は、天使により力を持つ、欲望すべての命が刈り取られ、
その場所を汚そうとする者すべて天使により圧倒的な武力で根絶やしにする地
誰にも望まれぬ美しき地 そこは、『地獄』と呼ばれた。
その『地獄』が復活した時、再び封じる術士を生み出すため…あなた達は生まれてきた。
世界最強最後の、術士よ」
「そんなことは知らない!! ……こんな施設は破壊する!」
けど、そうも言っていられませんでした。
モンスターが現れ、学院を襲っていきます。
「…この赤ん坊を …未来を守るためには、どうしたらいいの」
「地獄へ行きなさい …『地獄の君主』と戦い、 …そして…
………………」
赤ん坊達の悲鳴がこだまします。
「…真美…」
…その悲鳴は、ルージュの中の、ブルーの記憶を呼び覚まします。
ブルー…真美が空間を操る空術の使い手を殺したときに奪われていった命の悲鳴。
…身寄りの無い子供達のための世界が、子供達ごと消えていったあの時のことを。
いつの間にか自分達も…
こうして自分達を騙し続けてきた大人と変わらない者になっていた。
「…………おお、…亜美………お前が、行ってくれるのか」
「…子供達を、お願いします」
自分の年齢など、とうに忘れていました。
「お前達は… 本当の」
…こうして、世界は変わってゆきました。
それぞれが、それぞれの足で世界を踏みしめ、そしてそれぞれの戦いに打ち勝つことで。
ラモックスたちも、新たなる世界へ足を踏み入れます。
どこでだって生きていける。
そこには新しい出会いがあり、新しい発見があり、新しい自分が待つのだから。
変わらない自分の心根を持ち続け…彼らは、行きます。
さながらそれは、新天地…フロンティアに足を踏み入れるが如く。
やよいは誰もいなくなったマーグメルに、黒い指輪を捨て…
最後に、お別れの挨拶をクレヨンで。
…少し、下手ではあるけれど
それは、力いっぱいの文字で。
「さよなら マーグメル」
-
グラディウス軍の主な士官や将校等第四版
空軍
アルヴァ・ユンカース大将 23歳
ヴィンチェンツォ・ルガース大将 55歳
ディアス・ユンカース中将 21歳
アドリアナ・ベチン中将 51歳
ハスキー・ハルバート中将 50歳
ゴーチェ・ベルトラン中将 49歳
ジェルヴェ・ブラシェール中将 57歳
エヴラール・ダルコ少将 51歳
ジョニー・ガーランド少将 45歳
エドワード・オレステス少将 59歳
フリッツ・パーペン少将 56歳
クラウス・ケッセル少将 41歳
エマニュエル・コロー少将 38歳
ノーナ・ラフマニナ大尉 25歳
リューシャ・ブチェンコワ大尉 24歳
セバスティアン・ハルバーゲン中尉 27歳
スタファン・ヘンネル中尉 28歳
ラミ・ニュメリン少尉 21歳
陸軍
ブラン・ホルテン元帥 23歳
ハロルド・ワイルディング大将 49歳
グリフィン・レインウォーター大将 50歳
フレデリック・レーガン大将 47歳
トーマス・バーシティ中将 51歳
アルベルト・アダンティ中将 50歳
アルバート・シュライヒャー中将 33歳
アーチボルド・バルフ中将 39歳
ジェフ・バッセル少将 38歳
モーゼス・バートン特別少将 22歳
マーカス・キャビンディッシュ少将 26歳
チャールズ・トーチ少将 30歳
ウォーラス・モス少将 48歳
エメリナ・レインウォーター大尉 21歳
エレノエーレ・ベレスフォード少佐 24歳
アンネローズ・ビッグコア=ニーベルング上等兵 17歳
ベルナルド・パオローニ一等兵 18歳
ルゼロ・アゴロッティ一等兵 18歳
テオドロ・トッティ一等兵 21歳
サンティノ・カッポネッラ曹長 32歳
シモーネ・ガンベリニ伍長 28歳
アルフォンス・ベリーニ一等兵 20歳
ルチアーノ・チッコリーニ上等兵 27歳
ステファノ・ボナッツェーリ伍長 28歳
テオドリコ・カッポネッラ上等兵 30歳
ミケーレ・カッポネッラ軍曹 27歳
ヴァレンティーナ・カッポネッラ二等兵 22歳
宙軍
マンフリッド・ベレスフォード大将 59歳
クラナス・ランフォード大将 23歳
ナルヴィック・ルフラン大将 25歳
クロン・ベイル中将 61歳
オーラフ・ヴァーノン中将 41歳
ライオネル・アッカースン中将 52歳
ジャック・トンプソン中将 55歳
ヤコブ・フルシチョフ少将 67歳
ルーベン・イングラム少将 38歳
エメライン・ベンジャミン少将 47歳
マンフレッド・ボールドウィン少将 46歳
アリセ・ベンジャミン大尉 21歳
ヴィットーリオ・レッティエーリ中佐 32歳
アドリアノ・カンパーノ少佐 30歳
ニノ・インフォミュラ少佐 35歳
トンマーゾ・ガットー大尉 27歳
アルステーデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
クーニグンデ・ビッグコア=ニーベルング特務大尉 18歳
マルグリート・ビッグコア=ニーベルング特務少尉 17歳
-
超兵器一覧
(ウォーシップガンナー2以外にのみ登場している超兵器もあり)
―水上艦―
超高速巡洋艦ヴィルベルヴィント
超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター
超巨大双胴戦艦ハリマ
超巨大航空戦艦ムスペルヘイム
超巨大氷山空母ハボクック
超巨大レーザー戦艦グロースシュトラール
超巨大ドリル戦艦一番艦アラハバキ
超巨大ドリル戦艦二番艦アマテラス
超巨大ドリル戦艦三番艦あら、葉巻?
超巨大戦艦ヴォルケンクラッツァー
超巨大レーザー航空戦艦リヴァイアサン
究極超兵器フィンブルヴィンテル
1/144ゔぉるけんくらっつぁー
―旧作―
超高速巡洋艦ヴィントシュトース
巨大空母アルウス
ステルス戦艦マレ・ブラッタ
巨大戦艦ナハト・シュトラール
超巨大航空戦艦テュランヌス
―水中艦―
超巨大潜水戦艦一番艦ドレッドノート
超巨大潜水戦艦二番艦ノーチラス
―旧作―
巨大潜水艦レムレース
―航空機―
超巨大爆撃機アルケオプテリクス
超巨大攻撃機フォーゲル・シュメーラ
―その他―
超巨大列車砲ドール・ドラヒ
超巨大水上要塞ヘル・アーチェ
究極ナマモノ兵器キョウフノダイオウイカ
-
バクテリアンの新体制
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
首相 ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(デス151)
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
-
バクテリアンの新体制
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
首相 ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(デス151)
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
-
つーちゃんがクーデターを起こして私が一旦逃げ出して再起した時の
『コレリアン=タイムズ』誌の一面記事のタイトル
(5/11)「凶悪な食人鬼、未知領域より出現」
↓
(5/12)「アクシリアの鬼、バスティオンに降下」
↓
(5/13)「怪物、ヤガ=マイナーに到着」
↓
(5/14)「アスモデウスはダントゥイーンに進出」
↓
(5/15)「虎、テロスで一泊」
↓
(5/16)「僭主は今トプラワに居る」
↓
(5/17)「簒奪者、トプラワを通過」
↓
(5/18)「暴君、首都に6セクターに迫る」
↓
(5/19)「ファーマスは艦隊を率い前進」
↓
(5/20)「ピエットは明日アルカニアに」
↓
(5/21)「皇帝ファーマス、ルーアンに」
↓
(5/22)「皇帝陛下、昨日フロスヒルデ宮にご帰還。臣民、歓呼で迎える」
-
バクテリアンの新体制
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
副大統領 シュヴェルトラウテ・クリスタルコア=ニーベルング
首相(形式のみ) ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ベランジェール・クリスタルコア=ニーベルング
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
文部科学大臣 ラティフェ・ビーコン=ニーベルング
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館ラティス支部担当者 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(151)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
国防議会議長 シルヴェーヌ・クリスタルコア=ニーベルング
国防議会副議長 エルトルル・ビーコン=ニーベルング
裁判所長官 ハイリュンニサ・ビーコン=ニーベルング
陸軍司令長官 ミュリエル・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍副司令官長 ロスヴァイセ・ビーコン=ニーベルング
宙海空軍司令長官 クロティルデ・クリスタルコア=ニーベルング
宙海空軍副司令長官 グートルーネ・ビーコン=ニーベルング
バイパー「まだ予定だし、こうなるとは決まってないよ!」
それにしても暇だぜ!
-
バクテリアンの新体制
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
副大統領 シュヴェルトラウテ・クリスタルコア=ニーベルング
首相(形式のみ) ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ベランジェール・クリスタルコア=ニーベルング
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
文部科学大臣 ラティフェ・ビーコン=ニーベルング
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館ラティス支部担当者 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(151)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
国防議会議長 シルヴェーヌ・クリスタルコア=ニーベルング
国防議会副議長 エルトルル・ビーコン=ニーベルング
裁判所長官 ハイリュンニサ・ビーコン=ニーベルング
銀河帝国元老院バクテリアン代表議員 ターヒア・ビーコン=ニーベルング
陸軍司令長官 ミュリエル・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍副司令官長 ロスヴァイセ・ビーコン=ニーベルング
宙海空軍司令長官 クロティルデ・クリスタルコア=ニーベルング
宙海空軍副司令長官 グートルーネ・ビーコン=ニーベルング
今日の合言葉はー?
天城「ナセルはアラブの大統領!」
ブラウン「意味がわかりません、天城大佐」
-
グラディウス・タイムズ(11/17)
宇宙海賊現る?
ここ数日グラディウスと銀河帝国を結ぶワープトンネルにて
グラディウス国籍の物資輸送船が相次いで失踪する事件が発生。
グラディウスはこれを宇宙海賊の仕業とし、
宙軍と空軍を当該宙域へ派遣することを決定した。
なおバクテリアン国籍、銀河帝国国籍の輸送船は襲われることがなく、
この宇宙海賊が抱くグラディウスへの憎悪の念は尋常でないことが分かると言えよう。
もし、本当に宇宙海賊なら、の話だが。
-
バクテリアンの新体制 最終版(になるといいな!)
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
副大統領 シュヴェルトラウテ・クリスタルコア=ニーベルング
首相(形式のみ) ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ベランジェール・クリスタルコア=ニーベルング
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
文部科学大臣 ラティフェ・ビーコン=ニーベルング
運輸大臣 ヴェルグンデ・クリスタルコア=ニーベルング
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館ラティス支部担当者 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(151)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
バクテリアン帝国情報局副長官 ヴォークリンデ・デス=ニーベルング
国防議会議長 シルヴェーヌ・クリスタルコア=ニーベルング
国防議会副議長 エルトルル・ビーコン=ニーベルング
裁判所長官 ハイリュンニサ・ビーコン=ニーベルング
銀河帝国元老院バクテリアン代表議員 ターヒア・ビーコン=ニーベルング
陸軍司令長官 ミュリエル・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍副司令官長 ロスヴァイセ・ビーコン=ニーベルング
宙海空軍司令長官 クロティルデ・クリスタルコア=ニーベルング
宙海空軍副司令長官 グートルーネ・ビーコン=ニーベルング
-
―ジャジャーロッド家のデス5―
デス1:アルテア・デス=バクテリアン
デス2:ビアンカ・デス=バクテリアン
デス3:クラウディア・デス=バクテリアン
デス4:ダリア・デス=バクテリアン
デス5:エルシリア・デス=バクテリアン
―デスダブル―
デス6:フラヴィア・デス=バクテリアン
デス7:ジョルジャ・デス=バクテリアン
―デス20―
デス31:ヴァネッサ=デス=コア=バクテリアン
デス32:テレーザ=デス=コア=バクテリアン
デス33:セレナ=デス=コア=バクテリアン
デス34:ローザ=デス=コア=バクテリアン
デス35:パオラ=デス=コア=バクテリアン
デス36:オルネラ=デス=コア=バクテリアン
デス37:ナタリア=デス=コア=バクテリアン
デス38:ミカエラ=デス=コア=バクテリアン
デス39:ロレーナ=デス=コア=バクテリアン
デス40:カレン=デス=コア=バクテリアン
デス41:ジェシカ=デス=コア=バクテリアン
デス42:イラリア=デス=コア=バクテリアン
デス43:エレナ=デス=コア=バクテリアン
デス44:ジゼラ=デス=コア=バクテリアン
デス45:フランチェスカ=デス=コア=バクテリアン
デス46:エディト=デス=コア=バクテリアン
デス47:デーボラ=デス=コア=バクテリアン
デス48:カーラ=デス=コア=バクテリアン
デス49:ベレニーチェ=デス=コア=バクテリアン
デス50:アレグラ=デス=コア=バクテリアン
-
バクテリアンの新体制 第二最終版(になるといいな!)
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
副大統領 シュヴェルトラウテ・クリスタルコア=ニーベルング
首相(形式のみ) ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務・法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ベランジェール・クリスタルコア=ニーベルング
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
文部科学大臣 ラティフェ・ビーコン=ニーベルング
運輸大臣 ヴェルグンデ・クリスタルコア=ニーベルング
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 ルキ・スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館ラティス支部担当者 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(151)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
バクテリアン帝国情報局副長官 ヴォークリンデ・デス=ニーベルング
国防議会議長 シルヴェーヌ・クリスタルコア=ニーベルング
国防議会副議長 エルトルル・ビーコン=ニーベルング
裁判所長官 ハイリュンニサ・ビーコン=ニーベルング
銀河帝国元老院バクテリアン代表議員 ターヒア・ビーコン=ニーベルング
陸軍司令長官 ミュリエル・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍副司令官長 ロスヴァイセ・ビーコン=ニーベルング
宙海空軍司令長官 クロティルデ・クリスタルコア=ニーベルング
宙海空軍副司令長官 グートルーネ・ビーコン=ニーベルング
-
エリカ「家賃15万…もっと安い部屋無いんですか?」
たてじん「あ、それでしたら最近流行のワンルームハウスって言うのどうでしょう?」
エリカ「ワンルームの一軒家?そんなのあるんですか?」
たてじん「はい、この部屋は一応管理者がおりますので
アパートとほとんど同じ扱いになっております。」
エリカ「へぇーいいですね…どんな感じなんですか?」
たてじん「あ、こちらがその写真になります」
ttp://www.purehabu.com/jpg/souko2.jpg
エリカ「いやこれプレハブじゃん!風呂とかトイレとかどうするのよ!」
たてじん「あ、風呂でしたら近くに銭湯がございますし
トイレも家のすぐ近くにございます」
ttp://image.blog.livedoor.jp/yt2425/imgs/0/4/04448db9.JPG
エリカ「いやいやいや…」
-
バクテリアン体制 最終第三版
大統領 ブリュンヒルデ・ラブ・ビッグコア=ニーベルング
副大統領 シュヴェルトラウテ・クリスタルコア=ニーベルング
首相(形式のみ) ヴァルトラウテ・デス=ニーベルング
外務大臣 スルーズ・ビッグコア=ニーベルング
内務大臣 フィフィ・ピンネース・カバードコア=ニーベルング
法務大臣 アルヴィト・ビッグコア=ニーベルング
厚生労働大臣 アンネリース・ビッグコア=ニーベルング
軍務大臣 ベランジェール・クリスタルコア=ニーベルング
農林水産大臣 エルルーン・デス=ニーベルング(デス300)
文部大臣 グェイルヴィルム・カバードコア=ニーベルング
科学大臣 ラティフェ・ビーコン=ニーベルング
運輸大臣 ヴェルグンデ・クリスタルコア=ニーベルング
バクテリアン大使館グラディウス支部担当者 ルキ・スクルド・デス=ニーベルング(デス500)
バクテリアン大使館ラティス支部担当者 ヘルフィヨトル・デス=ニーベルング(151)
バクテリアン大使館銀河帝国支部担当者(予定) ヒルド・デス=ニーベルング(デス499)
バクテリアン帝国情報局長官 ニュクス・デス=ニーベルング(デス498)
バクテリアン帝国情報局副長官 ヴォークリンデ・デス=ニーベルング
国防議会議長 シルヴェーヌ・クリスタルコア=ニーベルング
国防議会副議長 エルトルル・ビーコン=ニーベルング
裁判所長官 ハイリュンニサ・ビーコン=ニーベルング
銀河帝国元老院バクテリアン代表議員 ターヒア・ビーコン=ニーベルング
バクテリアン科学庁長官 フラスコヴィヤ・カバードコア=ニーベルング
国営軍事工場工場長 ビルギッタ・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍司令長官 ミュリエル・クリスタルコア=ニーベルング
陸軍副司令官長 ロスヴァイセ・ビーコン=ニーベルング
宙海空軍司令長官 クロティルデ・クリスタルコア=ニーベルング
宙海空軍副司令長官 グートルーネ・ビーコン=ニーベルング
-
水平線の上半分を覆い尽くす、灰色の雲。
弾丸のように降り注ぐ雨に、その無数の雨粒を受けて沸き立つように波打つ…激しい激しい波間。
何時壊れてもおかしくない、小さな船に…一人の女性と、一人の子供が乗っていました。
…ひしと抱き合う女性と子供。
声すらもかき消される中、決して離れぬように。
波により、雷により…雨により…船が壊れぬよう、沈まぬよう。
空に浮かぶ、巨大な赤き目を見ないように。
「…ふぁ……っ」
最高級のカーペットの上の、化粧用の椅子で彼女は目を覚ます。
銀のティアラを頭にし、白いドレスに身を包んだ彼女は…今日で16歳。
何かの音を感じ、雪の降る空を見上げる。
「……あれは…」
金の飾りを施した窓を開けると……空を飛ぶ、ユーモラスな建物を乗っけた船。
「…劇場艇…………」
「失礼致します 雪歩様、そろそろ劇場の方へ…」
「何してるの雪歩、追いてっちゃうよ?」
黄金の冠とリボンを着けた、赤いドレスの少女…
その前には、青い髪の豊かな胸をした女性。
「…姉様、千早ちゃん。はい…直ちに」
白いドレスの彼女は、アレクサンドリア王女雪歩。
そして赤いドレスの彼女は若くしてアレクサンドリア女王となったその姉…春香だった。
彼女達の母親…先代ブラネ女王は二人が幼い頃に逝去していたのだ。
一説によると、当時不治の難病に侵されていた春香を治す為、命を削る禁呪を用いたと言われているが。
「雪歩、お芝居好きでしょ?
今年は雪歩の大好きなお芝居を頼んでおいたから、期待してて」
「…はい。」
そう。今日は雪歩王女の誕生日を祝して、王宮に招いた劇団による演劇の日。
町は皆、お祭りムード。
演劇は皆が見ることが出来るわけではない。客席には限りがあるのだから。
…チケットは、国民皆の憧れの的。
そんなチケットを手にして、喜びの絶頂に有るはずの一人の男の子が…
受付で愕然としていた。
「お前、四本腕のギルガメッシュにスられた上、偽のチケット掴まされちゃったのか?
ついてねぇ奴だなー」
ネズミのような顔をした小さな男の子の声が、
三角帽子を被った顔の見えない男の子の背中にかかる。
「…え?聞いてたの…?」
「見てたし、あの落ち込みようなら声が聞こえなくても解るよ
…それでお前、どうするんだ?」
一人ぼっちで王都にやってきた幼い少年は、
ネズミ族のその少年の言葉の意味が解らない。
「どうする、って…?」
「演劇、見たくないのか?」
「え!?方法を知ってるの?」
「ここじゃバレるだろうが。…俺の子分になるっていうなら、教えてやってもいいぜ」
三角帽子の男の子が頷くと
ネズミ族の男の子と共に裏通りへ向かいます。
「…お前、名前は?」
「ビビ! お願い、ボク演劇を見たいんだ!」
「よし、ビビだな …俺はパック。よし、それじゃやり方を教えるぞ?
この町の広場に、鐘を鳴らす時計台があって、そこに梯子をかけて、屋根を伝っていくんだ。
結構危険だから注意しろよ?」
「う、うん…」
-
人々の期待を一身に背負った、空の上を行く特製飛空艇『劇場艇プリマビスタ』
梯子を降りた一人の金髪の少女は、扉を叩く。
「ミキだよー …いないの?」
ミキと呼ばれた少女は部屋の中へ入り、手に持っていたカンテラの火を中心のテーブルに置かれたランプに移すと…
「遅いわよ美希、やっとこれで揃ったわけね」
奥からぞろぞろと仲間が現れる。
「伊織、ウサちゃん、涼。何だ、みんな来てたの」
劇場艇のメンバーのよう。
「菜緒やゼネロやペデロはまだ来てないよ。…で、ボスも来てないんだけど…」
と言った瞬間。
ガチャリと、階段になった脇の扉を開けて、何者かが飛び降りて剣を振り回してきた。
「!!」
謎の女…その頭は龍だった。
「とうっ!!」
龍のような頭をした男の剣をウサちゃんはガード。
伊織が男から手馴れた手つきで男のポケットから高級ナイフ、メイジマッシャーを盗むと…
「てや!!」
美希は両手のダガーで男の頭を挟み込むように左右から斬る…と
「こらあああああああああああああ!!」
龍の頭は真っ二つ。…中から、眼鏡の女が姿を現した。
「いきなり襲っておいて何言ってるのよ、律子」
「ボスの自業自得だよね」
「…あいったた…ちょっと脅かしただけじゃないの」
律子と呼ばれた、ボスは思い切りぶつけた頭を押さえながら、扉を開ける。
「ま、とにかく結構腕をあげたようで私としては嬉しいわ
さてさて!作戦会議始めるわよー、ちゃっちゃとする!」
「アイアイサー!」
美希、伊織以下6人が集合。小さな部屋のテーブルに置かれた模型で、作戦の説明を行う。
「さて、今回の作戦だけど…」
作戦…そう、演劇の段取りではない。
彼女らは別のことも行うつもりでいるのだ。
…いや、むしろそれが彼女らの本業。
「我らが目指すはアレクサンドリア王国。
そして、私達『盗賊タンタラス』の目的は、この国の元第二王女、現王女の『雪歩』姫を浚うことである!!」
「その先からは私が説明するね」
そう。演劇は囮…彼女らは、国民から人気の高い王女を浚うことにあったのだ。
続いて涼と呼ばれた女のような男。
「もうすぐ、私たちの乗ってる船がアレクサンドリアに到着するの。
で、予定通り演劇の『君の小鳥になりたい』を上演し…
頼むわよ、主役のウサちゃん!」
「頑張る! けど誘拐作戦の主役は、美希ちゃんと伊織ちゃんだ!」
「幕間の間に私がこれで城中の奴らを混乱させる…」
伊織が手につまんでいるのは皆が嫌がる恐怖の害虫『ブリ虫』
「…けど、どうにもブリ虫ってのは苦手ね」
「そうじゃないと効果ないと思うよデコちゃん」
「で、その後はアンタの出番よ美希」
「よし、わかったの!!
その隙に、春香女王を誘拐すればいいんだね!!」
「そうよ美希!私達が誘拐するはこのリボン2つの、ののワった春香ーーーーー」
律子はどうして用意していたのか春香人形を取り出し…
「なんでよ!!」
放り投げノリツッコミ。
「…ごめんなの。
えっと、それじゃあミキはその隙に、春香女王を誘拐すればいいんだね!!」
「そうよ美希!私達が誘拐するはこのお菓子作りが得意で、ドジな春香ーーーー
違うっ!!」
「ごめんごめん、えっと、じゃあミキはその隙に、春香女王を誘拐すればいいんだね!!」
以後50回ほど繰り返し…
「美希!あんたちょっとしつこいんじゃない!?」
その間に化粧を済ませた菜緒に乱入されたりしながら。
「…その隙に、雪歩姫を誘拐すればいいんだね」
「だから春香じゃ… やっと正解したのか。
そ、私達が誘拐するは、王国始まって以来の可愛さと名高い萌え萌え王女『雪歩』!!」
そして、それ以降会議は順調に進み…
劇場艇プリマビスタは、アレクサンドリア城へ到着したのだった。
-
城の外側にある…満席の城内劇場。
その中心に停泊し、ステージに変化する劇場艇。
こっそりとビビとパックが移動する中…
団長である律子は衣装を着用、ステージの中心で前説 そして…
「それでは、『君の小鳥になりたい』開演!」
割れんばかりの拍手の中…ステージが競りあがる。
「わっほい!!」
待ってましたとばかりに扇子をばたばたさせる春香女王。
しかし…
「………」
雪歩王女の顔は俯いたまま。
「………!」
それをいち早く察知したのは、王宮男性兵の部隊プルート隊の隊長。
「はじめ!!」
剣をかざすと、それを合図として花火が次々に撃ち上がり、紙ふぶきが舞い…
華々しい王国最大級の演劇の開幕を告げた。
演劇は、一人の平民の男マーカスと国の王女コーネリアの恋物語。
主役マーカスはウサちゃんが演じ…コーネリアは奈緒。
美希、涼、伊織の役は、コーネリアの父たる律子演じる暴君に立ち向かう仲間の役。
「ポーリー!」
「ファイダ!」
「メデオ!」
演劇用装置を用いた魔法演出や剣撃での迫真の演技。
裏切った伊織演じるブランクと美希の一対一の殺陣を経て
その素晴らしい演技に高額のおひねりをもらいながら退場。
「ぐえ!!」
「ぐはっ!!」
…コーネリア誘拐の演劇から一転、本物の雪歩王女誘拐作戦が開始される。
だらしのない男性兵プルート隊員を殴り倒し、鎧を奪い変装することに成功。
「事前調査によると、この階段の上に王室の貴賓席があるらしいわ」
「よし、じゃ行こう!」
と思ったとき。
「…美希、隠れろ!!」
セクハラ紛いな装備の女性兵が見回りに来た様子…隠れてやり過ごす。
「…危ない危ない」
王室の趣味なのかは不明だがアレクサンドリアは男性兵より女性兵の割合がとても多く…
警備、真面目さ、戦闘能力どれをとっても、軽装な女性兵は重装の男性兵の比ではなく……
男性兵を一対一で難なくタコ殴りに出来た彼女らでも、女性兵を相手にするには少々辛い。
「美希、知ってる?女性兵をまとめてる如月千早将軍って
かなり巨乳だけど…あれ、実はパッドらしいのよね …って美希!?」
などと言っている間に、美希は階段を登っていってしまった。
「……何か気配がしたの」
すると、扉の奥から白のフードを被った細身の少女が走り去ってきた。
「…!」
「…あ、す、すみません〜」
よろよろしながら階段を下りようとする少女だが…
「あれ? …ねえ、どっかで見たことあるような顔だけど……気のせいかなぁ」
美希は引き止めます。
「え?そ、そんな…人違いですよぅ…」
「可愛い子には目がなくて、招待客の一人一人までチェックしてたミキが
こーんな可愛い子見逃すわけがないんだけどなー…」
じろじろと少女を嘗め回すように覗くと…
「あ、その、あの… すみませんっ!!」
少女は一目散に逃げ出した。
「ちょ、今の子誰よ!?」
「追うよデコちゃん!」
「え?」
「今のが雪歩王女なの!!」
ひょろひょろと走る雪歩を追いかける美希と伊織。
-
…その後に、謎の二人が現れる。
「大変ですヨー」
「大変デスよー」
「そっちにはいないですヨー」
「わかってマスよー」
小さな体をした双子の宮廷魔術師「のの」と「ワー」。
「怪しいですヨー」
「本当デスよー」
「「…とにかく今は怪しんでいる場合じゃないデス(です)よー(ヨー)」」
「とにかく今は春香様の下へ!」
彼らは…すでに、雪歩失踪に気づいていた。
「春香様ー、大変ですヨ、大変!」
二人合わせてののワーが春香の元へ行くと、彼らの前には彼女を守る二人の隊長が。
「今は誰も通すなと言われている また後で来てくれ」
プルート隊隊長。
「火急の用件ですか」
「そうですヨー」
「火急も火急、大至急も大至急デスよー」
「私が用件を取り次ぎましょう」
「雪歩姫がー」
「かくかくしかじかでー」
「「大変なのデス(です)よー(ヨー)」」
「…何、千早ちゃん。今演劇の最中だから後にしてくれない?」
「それが春香様。…実は、雪歩様が先ほど…」
「ああ。そういえば雪歩見かけないね?どうしたの」
「雪歩様が、国宝のペンダントを持ちどこかへ去られた模様です…」
「…あの子、何考えてるんだろ…こんなときにー…
千早ちゃん! あと、そこのプルート隊隊長の…」
隊長がガシャリガシャリと甲冑を鳴らし春香の元に。
「菊地真隊長!急いで雪歩を探してきなさい!」
「はっ!」
「わかりました!」
「かしこまりました」
千早と真、二人の隊長が雪歩の捜索に城内を奔走。
雪歩王女を巡る戦いは、白熱するのだった。
「オホン。プルート隊…集合!!」
真は床を踏み鳴らし一声。
「…………」
しかし隊員は集まらず。
「…ダメ、か…」
真は、千早の部下達に9393されながら、ため息をつき…
ふがいない部下達を集める作業に移るのだった。
-
体は鍛えているため、女兵1人や2人には負けぬ力を持つ真だが…
千早隊長との差はまさに大人を前にした赤子。
隊としての働きで負けるわけにはいかないのである。…負けているが。
千早の部下達に聞き込み、自身の部下達を集めたりしながら
塔の螺旋階段を登った先で…
「げぇええっ!?雪歩様ーーー!?」
隣の塔で美希に追い回されている探し人を発見するのだった。
「………」
雪歩は塔の縁に立ち…不敵な笑みを浮かべ美希を見ている。
「ちょっ、お姫様!?危ないよ、こっちに来て!!」
美希は安全のためにも雪歩王女を捕まえるタイミングを見計らっていると…
「うわあああああああああああ!?」
「ああああああああああ!!」
「やっほー♪」
雪歩はなんと塔から飛び降りてしまった。
「…!?」
真と美希が下に目をやると、旗を掲げるロープを使いターザンのように夜空を飛ぶ雪歩の姿が。
「あぁ、結構こういうのも楽しいかも…」
「雪歩さまーーーー!!」
「なんて無茶するの…」
美希も負けじとロープに捕まり、雪歩と空中の追いかけっこをスタート。
真隊長も負けじとロープに掴まるが…
「わあああああああ!!?」
見事に反対側の塔に激突。
雪歩は劇場艇のテント屋根にぼよんと着地、劇場艇内に落下。
美希もそれを追って劇場艇内へ。
「…ここに追い込めば後は美希たちの勝ちだね」
「きゃ!」
「わあ!」
「ほへ!?」
「どわぁ!!」
「あぁん…」
「ごめんなさいぃ…」
楽団員たちと、化粧中の菜緒を突き飛ばして劇場艇の下のフロアへ逃げていった。
「美希!今の子何!?めちゃくちゃじゃない…」
「ああ、お姉ちゃん、今の子が雪歩王女なの!」
「ええ!?」
階段を下りると、そこは仮面を被った律子と戦った部屋。
律子が出てきた階段から降りると…そこには逃げるのをやめた雪歩が。
「……やっと観念する気になったね、雪歩様」
「…あなたはもしかして劇場艇の方でしょうか」
雪歩は美希の方を向き直る。
「ご存知かもしれませんが…」
フードを取ると、さらふわの髪の毛。
「アレクサンドリア王女の雪歩です」
「あなたを見込んでの、頼みがあります」
すると…雪歩は美希の手を取り、その一言を。
その一言が…世界の命運を決めることになるとは、美希も知らずに。
「私を誘拐してください!! いま、すぐ!」
-
「誘拐してくれ、って…そんなあべこべなの…」
「お願いします…」
その目つきは至って真剣であり…
国始まって以来の美姫に手を握られたこともあり、美希はしどろもどろ。
「姫様ー!こちらですかー!」
聞こえてきた声はプルート隊隊長、真のもの。
「…追っ手が来たようです」
「何か訳アリみたいだね、それじゃ…… よし、ここは一つミキに任せて」
膝を突き、美希はお姫様を見上げると…
「それでは王女様…
これより、私めがあなたを誘拐させて頂きます」
照れ隠しに顔を10度傾けウインク。
丁寧な口調で、両者合意の下の誘拐を始めるのだった。
…長い長い、運命が…ここに始まりを告げる。
「こっちに来て、美希ちゃん!」
「ひゃああああああ!?」
現れた涼に怯える雪歩。
「…一瞬で涼の性別がバレるなんて…何てお姫様なの」
涼に招かれるままに作戦会議室へ。
テーブルをどかすとそこには下階への穴。
「こんなこともあろうかと、こういう抜け道を作っておいたの」
3人が落下。
「こっちです、隊長!」
それから数秒の後にプルート隊隊長と隊員が到着。
「うむ、君から先に行ってくれ!」
真隊長が部下を先に穴へ向かわせると…
「あ」
穴に突っかかり通れなくなってしまい。
「…す、すみませぇーん、通れないみたいですー!」
「何やってんだよ!! …仕方ない、ボクはあっちから回る、君は何とか通ってみろ!」
結果、大きなタイムロスに。
「…ククック…」
しかし到着は意外に早く、
地下動力室へ向かおうとする彼らの前からは隊長、後ろから隊員…はさみ打ちに。
「いい連携プレイだ!プルート隊始まって以来の活躍だぞ!」
しかし、傍目に寂しいことを言っている真の感動は一瞬のことだった。
「おっと、隊長さん、この先には行かせられないわね」
「な!?」
隊長に剣を向ける隊員…そう。
隊員は伊織の変装。
「お、お前ら…!!」
「お姫様をお守りするのはミキたちなの!」
美希、涼、伊織。
3人がかりでの戦いが始まるが…
-
「…あまり大したことないわね」
「うん。打たれ強くはあるけど、これは…」
「楽勝だね!」
疲労している真に、律子から手に入れたメイジマッシャーで切り裂くと
「う…… なかなかやるな悪漢ども…それなら!!」
追い詰められた真は剣を両手で握ると
剣が途端に青白いオーラを纏い…
「…何かまずいよこれ」
「本気を出してるようにしか見えなかったけど…手加減してたっていうの!?」
目を見開き、
「たりゃああああああああああ!!」
剣を振り下ろすと伊織の鎧が一瞬にして大破。
「な…!」
伊織の隠し持っていた大量のブリ虫が爆発するが如く散らばり始めたのだった。
「わああああああああああああ!? や、やめろ、ブリ虫はやめてくれええええええ!!」
「…お、思いつきで必殺技なんか出すもんじゃなかった…!!」
伊織の着ていたプルート隊の鎧だけが壊れ、中のブリ虫も伊織も全くの無傷。
謎の技の特性に救われ、美希達は雪歩を連れて動力室へ移動するのだった。
そして演劇はクライマックス。
「さあ、シュナイダー王子との祝言だ これで二つの国は私の意のままだ!!
いかにそなたがコーネリアのことを愛していたとしても…
そしていかにコーネリアがそなたを愛していたとしても…身分の低いそなたとの結婚を認めるわけにはいかんのだ!
あと鐘が3つ鳴ったとき、それがお前の最期だ!
1つ…2つ…みっ…」
…そのとき。
「…!」
舞台装置により、2箇所の舞台下ハッチから現れるは
一方からは美希と雪歩…もう一方からは真。
「…………」
「…姫様、さぁこちらへ!!」
超展開、芝居の崩壊など律子は気に留めず…いや、それをむしろ芝居の流れに組み込む気でいた。
「…そう、姫と結婚するはそなただ、のう!シュナイダー王子!」
「え? …いや、ボクが?」
「いやですお父様、私はマーカスと結婚したいのです!
…私、このお芝居は大好きで台詞も覚えていますの」
「流石だねお姫様…
そういうわけだ!王様よ、二人の仲を認めてやってくれないか!」
美希はすぐに順応、雪歩がノる中、一人取り残される真。
「………もう、これしか方法がないんだ、コーネリア!」
演劇は続行。
ウサちゃん演じるマーカスは剣を手にし、王へと向かい突撃。
「…何!?」
律子演じる王が構えたその時…
「…!!」
雪歩演じるコーネリアがマーカスの剣の前に飛び出し、父たる王を庇い芝居用の剣を受け…
「…ごめん、なさい…」
なんとその場で絶命。
-
「…あ、あわわわ、あわわわわわわ!?」
真が凄まじい表情で固まる中。
「お父様、わがままばかりで申し訳ありませんでした…こんな娘を、どうかお許しください…」
「おお、コーネリア!私は…私はお前のことをわかってやれなかった!許してくれええええ…!」
衝撃の結末。貴賓席で大泣きする春香は、倒れる演技をする妹と頭が真っ白になっている部下には一切気づかず。
「ああああ…!今年の劇は泣かせるわああああ!!」
ぶん投げられたまま、終わりよければすべてよしで劇は幕を閉じ…ようとした時。
「待てーーー!!」
「わぁぁぁあ…!」
三角帽子の子供ビビとネズミ族の少年パックが男性兵に追われ舞台に上がりこんで…
「ふぁ、ファイア!」
「…!」
雪歩の頭を隠していたフードを燃やしてしまった。
パックは…舞台から逃げ、またどこかへ。…いや、それより。
「あ、熱い、あつつ…!!」
あらわになる、姫の顔。
「…あ」
「あ」
「あ…!!」
その場の空気が、一瞬にして変わった。
「おお、生きておられましたか!」
ひとりはしゃぐ真隊長だけが浮かぶ中…
「美希!私は船を飛ばす準備をしてるから、あんた達こいつを倒しちゃいなさい!」
「了解なの!!」
「…はっ!?」
再び、真隊長との戦闘が開始される。
「今度は部下もいる!負けはしないぞ」
と自信たっぷりな隊長だが…
「熱血もここまででありますー!」
「デートの約束に遅れちゃうー!!」
それぞれ一発の攻撃で退避。
「やっちゃえ!!」
「とう!」
「てや!!」
すぐに同じ展開を踏み…
「う、…キツい……」
息を切らすのだった。
-
「さ、今よ!脱出するわ!」
律子のアナウンスと共に劇場艇は発進…
「うぉ、お…おあ!?」
真は発進のショックで倒れてしまう。
これで後は真一人を縛るなりなんなりして引き摺り下ろすのみ…と思われたが…
「全然事態が理解できてないけどともかくあいつらはそういう目的だったってことかな!?」
「…なにやらカオスですが…大砲の準備、出来ております」
「よぉし千早ちゃんよくやった!!」
漸く気づいた春香の指令で大砲がキリキリと角度を調整…
「3…2…1…」
劇場艇へ向けられ。
「ヴァイ!!」
発射の合図と共に黒き砲弾が発射される。
ひゅるりひゅるりと劇場艇の真上に到達した砲弾は…熱で真っ赤に染まり、爆発。
いや…正体を現した。
「!?」
それは炎のモンスター、ボムの特別製だったのだ。
「ま、まだまだあああ!!」
空飛ぶ劇場艇の上で立ち上がり、抵抗を続ける真。そんな場合ではないのだが、戦闘が開始される。
「そこの人!どいて!!」
美希が力づくで真に攻撃するも、鎧と鍛え上げられた体の前では大して効果を成さず。
「お願い、後ろを見て真ちゃん!!」
雪歩が杖で真を叩くも言葉を信じようとせず。
「ぼ、ボムがぁぁ…」
ファイアを使うことなど絶対に出来ないため、ビビも杖で叩くが全く効果がなく…
「後ろを見なさいよ!!」
伊織が剣でガツリと真の兜を横から叩く。
これでくるくると真が回転、気づくかと思いきや、目を閉じてしまい気づかず。
「なんの!!姫様をたぶらかす悪漢は…」
背中にちょん。
「ええい、うるさい!!」
ちょんちょん。
「…ええい、奴らの仲間か…?」
と振り向いた所で…
大きく肥大化した、爆発寸前のボムの笑顔とご対面。
「…グフフフフフフ」
「あ、ああああ…!?」
かくして劇場艇の真上で、ボムは大爆発を起こしたのだった。
-
ボムが爆発したとはいえ、劇場艇はその後暫く飛行を続け…
アレクサンドリア都市部を抜け、周辺の台地から下の大地へ…そこで墜落。
たどり着いたのは鬱蒼とした暗い暗い森の中だった。
「…この森に落ちて生きて帰ってきた奴はいない…大変なところに落ちたものね」
そこは『霧の大陸』最大の危険区域
アレクサンドリアの遥か下に生い茂る…『魔の森』だった。
「……ここは…」
美希は劇場艇から間一髪飛び降り、且つ無傷。
辺りの探索を始めているのだった。
「…?」
遠くから叫び声が聞こえたような気がして、大きな水溜りを超えて行くと…
「!」
そこには腰を抜かしたビビ…と、剣を構えた真
そして…
巨大植物『プリゾンケージ』。
たまねぎのようなまんまるとした体に、大きな口が開き…
二本の長い触手を持ち、頭の上に厚い皮のようなものが丸くなり…
雪歩を閉じ込めている。
「…雪歩!?」
「姫様ー!!」
「おねえちゃん…」
雪歩は気を失っていて反応も出来ない。
「…く、くそぅ…」
「離せえええええええええ!!」
「!?」
真が驚くほどの気迫を発し、美希はメイジマッシャーでプリゾンケージに斬りかかると…
「キャォウウウ!」
「はぁぁあああ!!」
突然体が発光…
たちまち、大きな大きな光に包まれ…
「…!?」
髪が茶色に変化、服が一気に脱げ、代わりに体毛が体を覆う獣人へと変化した。
「…な、なんだよそれは…!?」
「何か力が沸いてくるみたいなの 凄く頭も冴えてるし…
魔法も使える気がする! コイツを倒すよ!」
すると美希は突然頭に浮かんだ言葉を発する。
「『フリーエナジー』!!」
その瞬間、手をかざした対象…プリゾンケージの体が妙な文字を浮かべ爆発。
「今なの!」
「あ、ああ!!」
真は剣を振りかぶり、怯んだプリゾンケージに一撃。
「キ、キュイイイイイ!!!」
…しかし、プリゾンケージはそのまま逃げていってしまった。
「待て…!!」
「雪歩様を返せ!!」
しかし美希の体はいつの間にか元に戻り…
追いかけられない距離まで逃げられていた。
-
「…ああ……賊を止められなかった挙句モンスターに捕まり逃げられてしまうとは…」
「…仕方ないよ。助け出す手段を探そう 一旦体勢を立て直すの」
激しい怒りをあらわにした割に、美希は冷静だった。
「…お前に言われたくはない…」
「ボクもごめん、魔法が怖くて使えなかった…
…そうだ フリーエナジーって言ったね?」
ビビが美希に言う。
「…うん」
「僕たちが使ってる魔法の名前と全然違うんだ…
名前の形式が全然違うし、動作も別。…多分、魔法とは別の力だと思うよ」
「…激しい感情により体が変化し、特殊な能力を扱えるようになる
……もしかすると、『選ばれし者』のみが使える『トランス』かもしれないな」
「…」
美希は自分の中に眠る力より、雪歩のこと。…先へ進み、雪歩奪還へ動き出そうとした時…
…背後に大きな影。
「わぁっ!!」
芝居中に巻き込まれてやってきた子供、ビビがプリゾンケージに捕らわれてしまった。
「…さっきのとは別個体みたいだ!」
「とにかく倒さなきゃ!」
2体目のプリゾンケージとの対決。
しかし…幸運にも、雪歩と違いビビの意識ははっきりしている。
「ね、何か抵抗できる!?」
「え!?」
「…そういえば舞台の上で見せたファイア!アレを使えば…!」
「う、うん!やってみる!」
相手は植物。
「はぁあああああ!」
真は垂直に剣を構え、一直線に駆け飛びあがり…
「ふん!!」
鎧の重みも加わった重さを乗せた強烈な一撃。
「はっ!!」
美希は一瞬のうちに懐に飛び込みメイジマッシャーで横に一直線の斬撃。
「ファイア!!」
ビビは内部から、厚い皮で出来た壁を魔法で燃やし攻撃。
「う!!」
美希への、右からの蔦攻撃。
「く…」
真への、左からの蔦攻撃。
腕のような蔦を鞭のように使った攻撃…リーチが長く避けづらい。
しかし…攻撃はそう痛くはない。
「怯むな、行くぞおおおお!」
真はもう一度飛びあがり、剣を振り下ろす。
「もう少し!」
美希はメイジマッシャーで攻撃
「ファイア!!」
ビビの2度目のファイアがプリゾンケージを焼いた時…
「ギィィィィィイイイイ…」
プリゾンケージが倒れた。
「うおぉ…!?」
強力なガスを発生させて。
「危ない…!!」
美希は素早い脚で離れて回避するも、他2人はそうはいかず…
「あ…!!!」
真はガスによって全身の動きを麻痺させられた上、催眠作用で気絶、
ビビは謎の激痛でそのまま気絶…
「二人とも!!」
幸い、真は命に関わるものではなかったため、問題はなかったが…
ビビはただごとではない。
「………」
二人を放って雪歩を助けに行くわけにはいかず。
美希はビビを担ぎ、真を引きずり…プリマビスタへ戻るのだった。
-
「…美希の奴に感謝することね
あのまま行ってたら、あんた…死んでたわよ」
ビビが目覚めたのはベッドの上。
伊織の顔がありました。
「あんたは毒ガスじゃない…アイツに種を植え付けられてたみたいよ
…全く魔の森の植物と来たら…
で、あんた名前は?」
その頃。
「…雪歩王女を助け出したい…って?」
ボス、律子の部屋に美希はいた。
「…………ま、あんたの性格ならそうしたい気持ちも解る。けどね」
「けど…?けど何だっていうの、律子ボス」
律子は窓の外を眺めていた。
「…まだ…動くには早すぎるのよね 劇場艇から持ち出すべき物も多いし…
休息が必要な者だっている。…王女のことはその後からでも」
「それじゃ遅いよ!」
「じゃ諦めること」
一見、律子の言葉。
「…フン、そんなに可愛い子だったっていうの?またいつものあんたの癖でしょ」
「そりゃ可愛かったけど…違う!助け出せるかもしれない命を放っておけないだけ」
…しかし律子は変わらず。
「…でもダメ」
「律子!!」
「単独行動は許さない。仲間が最優先。
あんただってこのタンタラスの一員なんだから 解ってるでしょ!」
「…なら!!」
美希は背を向けた。
「それならタンタラスを抜ける!ミキがいなくてもみんなの面倒は見れるでしょ
これから、今閉じ込められてるあの隊長を連れて行く!」
「へぇ…抜ける。軽々しく言うじゃない」
「もう、決めたことなの」
「……うん…なら、解ってるでしょうね …タンタラスの掟
…1Fのホールで待ってるわよ」
律子は、バンと美希の肩をその厚手の手袋をした手で叩くと…階段をそのまま降りていった。
「覚悟しときなさい!」
タンタラスの掟…ボスとの決闘。しかしその声はどこか…
「…」
嬉しそうにも聞こえた。
-
「で、君ビビって言うんだって?」
戦いの前に、容態を見るべくビビの元へ。
「あ、助けてくれてありがとう…」
「いやいや。巻き込んだのはこっちだし、ビビの魔法がなかったら危なかったと思うな」
黒魔法といえば、モンスターが使うのはままあることでも、
人間が完全に使いこなすとなれば威力は桁の違うもの…
完全に使いこなすことが出来るは兵でも難しいとされている。
ビビは帽子を直しベッドから起き上がる。
「…黒魔法を使える子供なんて凄いね」
「そ、そんなことないよ…」
「…小さいの、気にしてるの?
あれだけの凄い魔法を使えるなら、もっと自信持っていいと思うよ
男の価値は見た目じゃない!夢とハートの大きさで勝負するものだと思うの」
「…うん、有難う美希さん…… でも僕のせいであの人が……」
ビビは、雪歩が連れ去られたことを気に病んでいた。
「ミキ達で何とかするから、そこら辺は気にしないでいいかな
あ。それとさん付けとか堅苦しいから呼び捨てでいいよ?」
「あ…うん。」
そして美希はそのまま真を監禁部屋から連れ出し、律子の元へ。
「…律子」
「大層な理由なんて、要らない。
あんたが助けたいだけ。あの子が凄く可愛かったから。そんだけで十分じゃない」
律子はすでに、大剣を手にして待ち構えていた。
「全力でかかってきなさい!!」
入口前の長細いホールで、対決が始まる。
「とぁ!!」
律子が独特の掛け声を発し突進、剣を振るうが…
美希は天井のランプに尻尾を引っ掛け移動、律子の真上からメイジマッシャーで一撃。
「尻尾人間を相手にするとやっぱりこうなるわけね…でも」
そう。美希には生まれつき尻尾が存在する。
アクセサリーなどではない。…生まれたときから、自らの意思で動かせる体の一部。
最も、人間離れした体を持つ亜人はタンタラスのみならず、世界中に広く分布しており
美希は極めて普通の人間に近い体といえた。
「それは予想してた!」
防御され、弾かれたところに
「はぁ!!」
メイジマッシャーのもう片方を投げ律子の頭に直撃。
ヘルメットに突き刺さったメイジマッシャーの柄を持ちそのままぐるりと持ち上げ投げ飛ばす。
「あいたたた…」
「降参?」
「冗談でしょ!」
剣を地面に突き刺すとそこから衝撃波。
「!!」
「どうせもうすぐ出て行く劇場艇なんだし…思い切り暴れてやろうじゃない!」
衝撃波に当てられ、美希は脚を怪我。
「だらしないじゃない!?」
体を回転させ、体を捻り攻撃…しようとしたが
「あ!?」
床に転がっていた壁の破片につまずき、こけてしまい…
「えい!!」
美希のメイジマッシャーでの一撃で、律子は倒された。
「…くううう…!!」
起き上がると律子は美希の頭を手でバスンと1発。
「いい腕してるじゃない!」
2発。
「姫様のことは」
3発。
「あんたに任せた!はーーっはっはっは!」
床に体がめり込みながら、頭を押さえ美希は勝利を喜ぶのだった。
-
「助けに行く前からこの有様って…」
「いざというときに戦力になってもらわねば困るぞ」
「うるさいの」
真と共に出ようとした時…
「美希さん!ボクも連れてって!」
ビビが現れた。
「…もう怪我はいいの?」
「うん!ボクも役に立てるなら一緒に戦いたいんだ!」
「…」
顔を見合わせる美希と真。
「…それなら、ビビ殿にもかたじけないが協力してもらいましょう。
宜しく頼みますぞ」
「はい!」
「あとそれと、ちょっと話が…」
「え?何お兄さん」
「ボクは女だよ…プルート隊だからって…」
改めて美希が外に出ようとした時…
「ったくカッコつけて。」
壁によりかかり声をかけてきたのは輝くオデコ。…伊織だ。
「あんたそんなにあの子が気に入ったの?」
「そりゃ困ってる子を助けないわけにはいかないし…」
「そういうアンタのストレートな性格、ほんっと腹立つわ」
「…デコちゃん、シットしてるの?」
「バカ言うんじゃないわよ!!」
そう言うと伊織はポーションのビンを美希に投げつける。
「…んでこれは忘れ物よ」
今度は普通に投げる。
「…ほれ薬?そんなものなくたってミキは雪歩王女とラブラブになってみせるから心配しなくていいよ?」
「何言ってんのよ!!!
…これは解毒剤。多分、あの雪歩ってお姫様もプリゾンケージの攻撃を食らってるだろうし」
「あ!!」
「ったく気づきなさいよね、それくらい…」
「デコちゃん、色々有難う!行って来るね!」
「二度と顔見せんじゃないわよもうっ!!」
こうして、美希はタンタラスを飛び出し…
雪歩を助けに魔の森の奥地へ向かうのだった。
しかしそこは緑の地獄…
モンスター化した魔の植物に、木々から飛び出すモンスター。
「…どうしてこんなになったんだ?ただごとじゃない…」
「おじさん知らないの?これは霧が影響してるんだよ」
「おじさんじゃない!男ですらない!!」
現れるモンスターにはビビのファイアが活躍。
美希のメイジマッシャーや真の剣が冴え渡り…
案外近い道のりで森の最深部へとたどり着いた。
-
「……な、何なんだよこれ…」
「美希さん、見て!!」
「あれは…!!雪歩王女!」
そこには、胴体だけで体長5mはあろうかという巨大な花のモンスター。
中央部には小さな口が開け、幹が太い胴体を構成、プリゾンケージとは比べ物にならぬ太さの腕…枝が、針のように4本。
「植物達のボス…さしずめ、『プラントブレイン』って所かな」
根は広く広く、どこまでも繋がり……
森全体を覆っているかのようにさえ思われた。
「ギョォオオオオオオオオオオオオオ!」
うねりだす体。
「来るぞ!!」
真が構える。
だがその時、すでに美希の体は動いていた。
「はぁ!!」
近づき、枝を次々に切りつける。
「さぁ、事前の作戦通りに行きましょう、ビビ殿!」
「は、はいっ!!」
「え!?何か秘策が?」
「今こそ、敵の目に物見せてくれてやる!『魔法け…」
そう。真の秘策はビビとの連携攻撃『魔法剣』
真の腕力から繰り出される剣のダメージを、植物の相手に対し
ビビのファイアで強化され、二倍の効力で与えようと言うもの。
しかし。
「ギャウウウ!」
突然、雷がビビを直撃…ビビはばたりとその場に倒れてしまった。
「…ビビ殿ー!?」
魔法剣は失敗。
美希は再び動き、メイジマッシャーで本体根元に傷をつけるも…
「……ダメみたい」
大した傷にはならず。
「キュリリリリリリリ」
左の枝で真を串刺しに。
「…うぬ……!!」
鎧を貫通…真の体から一気に力が抜ける。
「まこっさん!!」
「変な名前で呼ぶなよ!! …仕方、ない」
美希が枝を攻撃、枝を真の体から抜かせ、回復しようとするが…
「お前の助けなんて要らないよ!!」
真は強がり…
「この状態だからこそ、コイツに大ダメージを与える手段がボクにはある!」
剣を振り上げた。
「我が必殺!受けてみろ『サガク剣』!」
己の力を最大限に発揮。鎧が血の赤に滲みつつも敵に向かい…
「ああああああああああああああ!!!」
グサリと一刺し。
「…ダメか…」
プラントブレインはまだ体力が残っていた。
「キュウウ!」
右の枝で真を攻撃…
「させない!!」
しかし、そこに美希が真を突き飛ばし、代わりに貫かれる。
「う…」
「何をしてる…それで罪が償えるとでも…」
「まこっさん、女なんでしょ!?だから…かばっ…」
美希はそのまま、その場にうずくまり…全員がピンチ。
そんな時だった。
「ったく、見てらんないわね!!」
鬱蒼とした森の中…一筋に輝く額の光。
-
セリカ「ハァ、ハァ…」
エリカ「た、ただいま…」
たてじん「お?どうした?」
セリカ「ゲーセンから帰ってくる途中で雨が降ってきてさ…」
エリカ「それで急いで帰ってきたのよ…」
たてじん「なるほど、辛かったろうな。酸素やるよ」(ボンベを渡す
エリカ「あ、気が利くわねたてじん。ありがとう…
スースー…!?ゴボボボボ!」
セリカ「どうしたのエリカ?」
エリカ「ぷはー…ちょっとたてじん!これ酸素じゃなくて二酸化炭素じゃない!」
たてじん「ドッキリ大成功バンザーイ!わー!」
エリカ「ちょいちょいちょい!死ぬかと思ったわよ!」
たてじん「マアマア、水素か窒素でも吸って落ち着きたまえ」
エリカ「吸わないわよ!」
セリカ「…危険だからみんなは真似しちゃ駄目だよ…」
-
「デコ…ちゃん」
プラントブレインとの戦闘で傷ついた美希たちの背後に現れたのは伊織。
「今回だけは手を貸してあげるから、有難く思いなさいね」
「だ、誰が…お前の手など…う…」
「まこっさん、そんなこと言ってる場合じゃないと思うよ?」
伊織に飛んできた枝の腕攻撃を伊織は回避。
ポーションを使い伊織は美希を回復、真は自身を回復。
「まこっさん!サガク剣っていうの、もう一度!」
「ボクに指図するな!
あのサガク剣は傷を負っていればいるほど威力の上がる剣…
回復した今のボクにはあの技は使えない ビビ殿に協力してもらう!」
フェニックスの尾でビビを蘇生。
プラントブレインの攻撃をまたも伊織が引き受け、かわした後に反撃。
「さ、やってしまいなさい!」
「は、はい!」
「言われずとも!!」
「魔法剣…」
ビビが魔力の塊を真に投げつけると…
「ファイア!!」
煙をあげ、剣が真っ赤に変化……
プラントブレインに高熱を帯びた剣を振り下ろす。
「キュリリリリリイイイイイ!!!!」
切り口から高熱が染み渡り、プラントブレインは即座に発火、炎上。
森の主との対決は、終わりを告げた。
「雪歩王女!」
真はプラントブレインの根元に倒れていた雪歩を抱えるも意識は戻らず。
「この解毒剤を…!」
伊織からプリマビスタを出る時に渡されたビンを取り出すが…
「な、何!?」
大きな地震…
いや、揺れているのは森の中心たるこの場所のみ。
「…わ、あ、あ…あ…」
プラントブレインの根元が陥没…穴の中には真っ赤な群れ…
「これ、って…まさか…」
一気に飛び出してきた。
赤いのは花…その下に、真緑の蜘蛛のような体。
わさわさとした産毛に、ガリガリと尖った尻部分。
3対6本の脚に、蟷螂のような腕…
「植物と虫の中間体ってどういう生き物よ!!」
伊織の叫び声と共に、皆が一斉に逃げ出した。
-
そこは道なき道。
木々の間をすり抜け、坂を下り、どんどん外へと向かっていく。
たどり着いたのは崖…悩んではいられない。
小さな崖程度ならば飛び降りる。
しかしプラントスパイダーは美希たちより体が軽い。
飛び降りることにかけては美希たちより遠くに飛び…
「あ!!」
前から現れることも出来る。
2体のプラントスパイダーとの戦闘。
「プラントブレインの小型版…と考えればいいかな」
正にその通りだった。
一方は腕で美希を攻撃、
「う」
もう一方はサンダーでビビを狙う。
「わぁ…」
伊織がうち1体を切り伏せ、ビビがなんとかファイアで焼き払いその場を切り抜けた。
「プラントスパイダーが…増えてきてる!?」
後ろを振り返ると、赤い洪水が押し寄せている。
それだけじゃない……緑のつるも大量に押し寄せている。
「…これ逃げ切れるかしらね」
…森自体が、殺しにかかっていた。
「それだけじゃない…森自体に何か変化が起こってるよ!!」
全速力で逃げる中、もう一度振り返ると…
徐々に灰色に染まっていく森の景色。
赤色の大群もどんどん灰色に変わっていく。
…だが間一髪というべきかもうじき、森の出口。
しかし。
「…ま、まさか…ああ!!」
そんな時。伊織がプラントスパイダーに捕らえられた。
「デコちゃん!!」
「早く逃げなさい!!」
「でも…」
「いいから!」
他の皆はもう、森の外。
「……ごめん!!」
「早くしなさいよ!!あとこれ!」
プラントスパイダーに捕まった伊織は何かを投げてよこす。
「…?」
「大事に持ってなさいよ!」
「…うん!!」
それは丸められた紙。
森の出口。…しかし、そこにはすでに蔦が先回りしていた。
木と木の間をぐるぐると周り…扉をしようとしている。
「…たぁあ!!」
ヘッドダイビング。
何とか地面に手をつき、空中でぐるりと回転…
蔦と蔦の間を潜り抜け、なんとか脱出。
その数秒後、蔦は森を覆い尽くし…完全に密閉空間としてしまう。
…灰色になって。
「…でこ…ちゃん」
森の最終手段、石化。
…森が、全くもって灰色になったのだ。
木々も、泉も、川も、土も、プラントスパイダーも、蔦も
「デコちゃあああああん!!」
…伊織も。
-
「………ん、ううー……こ、ここは…」
雪歩が目を覚ますと…
そこは魔の森の出口で張ったテントの前。
「姫様!お気づきになられましたね!」
真は喜びますが…
美希は浮かない顔。
「デコちゃん……。
………せめてみんなは脱出できたのかな…」
伊織から投げよこされた紙を開くと…
「…地図…… …そっか。デコちゃんはこれを渡すために…」
タンタラスを抜けた以上、歩くのは自分の足。
…地図がなくては、成り立たない。
「…美希さん、でしたね
ビビ君も、ありがとうございました…」
「姫様、ビビ殿はともかくこやつなどに礼なんて要りませんよ
こいつらのせいで姫様はこうした目に…」
「……いえ。私が望んで、美希ちゃんに浚って貰うように命令したのです
…全部、私の責任です …私がモンスターに浚われたのも、
ビビ君や美希ちゃんを危険に晒したのも…真ちゃんに迷惑をかけたことも」
「………」
責めるに責められない空気が辺りを包み込む。
そこに美希も加わる。
「…雪歩王女、とにかく無事でよかった。
……これからのことを話したいんだけど、いいかな」
「はい」
「うん!」
「これからのことなど決まっている
アレクサンドリアへ帰るんだ。そしてお前達は裁きを受ける…
覚悟を決めておくんだね」
「……なら、アレクサンドリアへ行くための道順を説明する
というか、ここからどこへ行くにも一つの道しかないよ」
美希たちが暮らすは『霧の大陸』には大陸全土にまたがる巨大な山脈地形があり
モンスターを生み出し、生物の心身を狂わせる魔の大気『霧』から逃れるべく
その上に人々は国を形成している。
霧の大陸の三国。アレクサンドリア、リンドブルム、ブルメシア。
低地にあるのは、山を壁として使い霧を遮ったブルメシアのみ…
そして、この土地はブルメシアへは繋がっていない、霧に満たされた地。
町などは存在しない。
すぐそばにもモンスターが駆ける危険地域である。
美希たちに出来るのは、高地へ戻ることだけ。
…しかし、高地もまた山の上…アレクサンドリアへ続くとは限らず、
現にここからアレクサンドリアへ登る道は存在しない。
「…となると、だよ」
飛行する乗り物を使いアレクサンドリアへ向かわなければならない。
「カーゴシップが『ダリ』っていう町にあるの そのために『ここ』に行くことになる。
…というより、何をするにも霧から逃れるためには『ここ』を通らなきゃいけないね」
夜が明けるのを待ち…次なる目的地へ。
「雪歩、ミキのことはさん付けなんて要らないよ 美希で大丈夫」
「じゃあ…宜しくお願い致しますね、美希ちゃん」
-
可愛らしい陸上モンスター『ムー』、ゴブリンなどと数回戦闘になりながら
壁の如くそそり立つに山に差し掛かる。
これが目的地。
「さ。これを使って高地まで行くの」
きらきらと光が反射する…色とりどりの氷の塊が水晶のように顔を覗かせる美しい洞窟。
「『氷の洞窟』…聞いたことがあります」
「ボクも聞いたよ。ここを通ると霧の上に出られるっておじいちゃんから」
「おおー、ビビ殿のおじいちゃんは博識ですね」
「…もう、この世界にはいないんだけどね…」
「……申し訳ない」
「…何だか暗くなっちゃったね。せっかくキレイな場所だし、
さ。一緒に行こうか雪歩王女♪」
さりげなく肩に手を回し、美希は雪歩と共に洞窟の中へ。
「こらああああ!!!」
真も、ビビを担いでそれを追う。
「真さん、確かそこから漏れ出してる煙に触れるのは危ないんだ。
…『霧』だから。モンスターがかぎつけるんだ…」
「承知いたしました …お前、聞いていたか?」
「お前じゃないよミキなの。 …霧に触れるのはダメ、ね。わかったのー」
氷の洞窟には黄色いゼリー状モンスター『プリン』や
モンスターの盗賊『ケーブインプ』との対決。
それに加えビビの話によれば霧に触れると凶悪なモンスター、
『ワイアード』が現れるという。
所々、氷の柱や氷の壁をビビのファイアで溶かしたり倒したりしながら進むことに。
長い洞窟の道のりの末、氷漬けのモーグリを救出したりなどしながら…
いよいよ最深部が近づいてきた。
「…な、なんだか更に寒くなってきました…」
「ここに住んでいるモーグリが氷漬けになるくらいだからね…
……何か風も強いし…う……う…」
「あふぅ」
なんと真っ先に美希がダウン…倒れ、眠ってしまった。
「…何か美希ちゃんの髪の毛あったかそう…」
その傍らで雪歩もダウン。
「ひ、姫様…奴に…近づいては…」
真もダウン。
「…ボクもなんだか…」
ビビも。
全員が眠ってしまい…このまま、吹雪の餌食に…
そう思われた時。
チリン、チリン…
「…?」
ベルの音。
「…ん…う…あったかい… ……わ!?」
雪歩の隣で美希は目を覚ます。
「……みんな、起きて!……起きてーーー!!」
…しかし…皆目を覚ますことはなく。
「…体はまだ…あったかい…
…ミキだけでも、先を見てこなきゃ」
前から吹く風も多少弱まった様子。
美希は氷の道を更に奥へ進むと…
「………わぁぁ…」
大きく開けた空間…そして、滝。
遥か上部からは光が漏れ出している…出口のようだ。
しかし滝は凍っている。…明らかに異常事態と見える。
…一体何が…そう思っていると。
「!」
『突然』上から大きな氷の塊が落下。
ぐるりと側転、回避…
もう一度滝に目をやるとそこには…
赤い魔道衣に身を包んだ…三角帽子の男。
不自然な氷の落下。これは恐らく…
「『ブリザド』… …黒魔法の使い手!」
-
「クックク…黙っていれば眠ったまま死ねたものを…」
魔道衣の色は赤。
前屈みの体勢で、手に鐘を持っている。
「邪魔者は排除させてもらうぞ…ククク…」
けらけらと笑うと、美希の背にウォータの魔法を発動。
水の塊が弾け、一瞬にして氷結…氷の壁を作り出す。
「我が名は氷属性特化の『黒のワルツ1号』
氷漬けにして殺してくれよう…」
「この洞窟に満たされた氷の力を我が魔力とあわせれば…こんなことも出来る
氷の魔人『シリオン』を呼び出すことがな!
『ブリザガ』!!」
そう言うと巨大な氷の柱が黒のワルツ1号の隣に出現。
辺り一面を絶対零度に氷漬かせ…
その内部から、巨大なモンスターが現れ、氷柱を粉砕し飛び出した。
「『シリオン』…!?」
見た目はウロコに覆われた氷の龍。
大きなヒレのような翼と、尾びれを持ち…コアが青色に輝いている。
「…」
味方はいない。美希一人でシリオンと黒のワルツを相手することとなる。
「…オオウ!」
シリオンは翼で大きく美希をはたき攻撃。
「うぁ…」
「ブリザド!」
1号は氷を落下させ追撃。
「……どうした?攻撃してこないのか」
「はぁぁ!!」
黒のワルツ1号を攻撃。
恐らく…大した体力ではない。
「力押しでなんとか出来ると踏んでいるか
…まぁそれも間違いではない。…こんな場所で、なければな」
「コォォォォ」
シリオンもブリザドを詠唱。
「…ぁ…!!」
「………う」
「どうした、その程度か!?」
1号は詠唱へ。
ブリザドと踏み、美希は上を見上げ、素早く避けようとするが…
「バカめ!!」
地面から吹き上がる灼熱の炎。
「ウソ!?」
溶ける足元から、火がつきながら飛びあがり…身についた火を払うべく地面を転がる。
「無様じゃないか…
私がどうやってこの氷の洞窟のモンスター達と渡り合ったと思っている?」
冷たい場所に住むモンスターには炎の魔法…当然の理屈。
というより、ここに来るまでに美希たちも行った戦法。
「はぁっ!!」
跳ね起き、シリオンに向かい一撃。
「コォオオオオオオオオ!」
シリオンのコアの色が青から黄へ。
「ははははは!!」
1号はシリオンがダメージを受けたにも関わらず、笑っている。
その意味は数秒後に解ることとなる。
-
「バカめええええええ!!」
「コォッコココ!」
氷魔法、ブリザドの上級魔法…上位の魔道士のみが用いる『ブリザラ』。
「っきゃあああああああああ!!!」
美希の体の中心に現れた冷気の塊から、氷の結晶の形に、氷がグサリグサリと飛び出る。
「う…!!」
「…驚いたな、まさか……これを凌ぐとは!?」
「やぁぁあ!!」
シリオンにもう一度攻撃。今度はコアを狙い。
「コッコアァァァァア!!」
メイジマッシャーを刺すとコアの色は赤に…
「とうとうシリオンを怒らせたようだな!?
こうなってはシリオンを止めることは出来ん!!」
魔道衣の背についた羽を広げ、空へ浮かび上がる1号。
氷の洞窟の気温が一気に上がる。
氷属性の力が失われているからだ。
その力はすべて…シリオンへ。
力が…満たされる。
「さぁ、すべて押し流してしまえシリオン!!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオ!」
シリオンが体を大きく振るい、地面に翼を叩き付けると…
「!?」
どこからか現れた氷水の壁が、一気に押し寄せてきた。
「…間に合うかな…」
美希は壁を蹴り、登る。
「何!?」
「冬道はスパイクつけないとね!!」
壁を大きく蹴り、ぐるり回転…
黒のワルツの頭上へ。
「『スイフトアタック』!!」
黒のワルツに激しくメイジマッシャーでの打撃を連発…
「たぁぁあああああああああ!!!」
両手を交差させ、強烈な一撃。
ドスッという重い音と共に1号を弾き飛ばす。
「うおおおおお…!!??」
そのまま激しい水流の中にいるシリオンへと1号をぶつけ…
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「コオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
コアにヒビが…そして崩壊。
大爆発と共に、魔法により引き起こされていた水も収まる。
着地した瞬間には膝上の高さの水だけ…それもすぐに消え…
戦闘は終わりを告げたのだった。
-
凍てつく洞窟の戦いを終えた美希は、
開いた出口から雪歩らの下へ。
「…お前、一体今まで何処に行っていた!」
戻った時にはすでに、一同は起き上がっていた。
「ああ。ごめんごめん…
ちょっと先の方を見てきただけなの」
「姫様に何か無礼は働かなかっただろうな!?」
「寒い中だからそれも一つだったかもしれないね」
「何だって!?」
「……」
雪歩はポーションでは治せなかった美希の肌についた傷が気にかかっていた。
「出口はすぐそこだよ、みんな行こう!」
さらさらと流れる滝のわき道を登り、氷の洞窟の外へ。
「…わ!!」
目の中に飛び込んでくる真っ白な光。
数秒して、光の中から青空が姿を現す。
「…霧の上だ!!」
くすんだ視界や、その視界のどこから現れるとも知れないモンスターとはおさらば。
突き抜けるような青空の素晴らしさを彼女達は知るのだった。
「……あ。美希姉ちゃん、あっちに村があるよ!」
「あれがダリですね」
「あそこに着いたらちょっと休もうよ」
「…お前、あれだけ寝ておいてまだ寝るつもりだというのか!」
「まぁまぁ真ちゃん… あんな場所じゃゆっくり眠れなかったでしょう
宿でぐっすり休みましょう」
美希は雪歩の顔を見ると…
「…ねぇ、雪歩王女」
「はい」
「…この先、村に行くというなら身分を隠した方がいいと思うの」
「待て!何で雪歩様がそんなコソコソとした真似をしなければ」
「…そうですね 私の命を狙う者がいたりしたら、皆さんにご迷惑が」
「うっ…しかし…」
真は毎度毎度反対され半ば拗ねてしまいそうだった。
「……そのために、偽名があった方がいいと思うの
…何か、いい考えはない?」
ビビに振って見る。
「ボクからは何もないよ…」
真に。
「一般的な名前ならいくらでもあるが…」
雪歩に。
「………何かそこら辺のものからつけてみましょうか」
そこらを見渡すと…
「花の名前とか可愛いと思うな」
しかし雪歩は花をスルー。
「…ソラちゃんとか?」
キーブレードを使うわけでもない。青空もスルー。
「…むー…… …あれ?」
洞窟の出口を覗くと、謎の小人のような少女がそろりそろりと、何故か慎重に歩いている。
「バレちゃまずい…まずいデスよ……」
ぼそぼそと言っている言葉は聞こえず。雪歩は小人に話しかける。
「あのぅ…」
「!」
言われた瞬間、2つリボンをつけた小人は全速力で走っていった。
「どこかで見たことがあるような…気のせいか。」
真には見覚えがある様子。
-
「あ、あの!わたしたちになにかごようですか?」
続いて出てきたのは謎の人形のような小人。
先ほどの少女にどこか似ていて、白いワンピースに黒くまん丸い2つの瞳と、三角の口、さらさらとした茶色の髪…
そして何より手に持ったらせん状の武器が目を引く。
「あの、お名前は…?」
「雪歩王女、硬い硬い…普通の女の子みたく」
「そうおっしゃられてもどうすれば…」
「もー…」
ここは美希が代わらずに、雪歩に練習がてら。
耳打ちで台詞を吹き込む。
「ねえ、君はなんていう名前なのかな?」
「いい感じいい感じ!」
雪歩はぎゅっとした。
「『ユキポちゃん』!
この国のお姫様にあやかってつけられたの!」
「……」
通りで。
…この名前をつけるとなるとやはり名前として捻りがない。
「…じゃ、じゃあこの手に持っているのは何ていうの?」
「こ、これはね…『ドリル』!」
「『ドリル』…っていうんだ…」
そのらせん状の物体をまじまじと見つめる。
「ありがとうねユキポちゃんちゃん。
引き止めてごめん」
「あっちにともだちがいるからわたしいくね!」
こうして小人の少女はとてとてと走っていった。
「全く!変装しないとすぐにバレるヨー!」
「だってまさか1号が敗れるとは思わなかったデスよー!」
遥か彼方で聞こえる黒幕たちの言葉が聞こえるはずもなく。
「決めました!! 私、これから『ドリル』と名乗ることにします!」
「!?」
決まった珍妙な名前と共に、美希、ドリル、真、ビビの4人はダリを目指すのだった。
たどり着いたダリは風車がシンボルマークの、のどかな農村。やや狭く過疎ではあるが。
「ああー、案外かかったね!」
「霧のない地域のモンスターも侮れないものだね」
「霧の大陸最強のモンスターは霧のない場所に生息していると聞きます
…霧がないからと安心は出来ませんよ真ちゃん」
「…ドリル」
「あっ!! …えっと、それでは…それじゃあ…宿屋を、探しましょう、よ?」
「うんうん♪」
この町でドリルは普通の少女の言葉を練習することに。
まずは宿屋へ。
「…お。旅のご一行さんかい 当宿へ。 一泊40ギルになりますが…
……!?」
宿の主は一向をまじまじと見つめる。
「…ご主人、ミキの彼女が可愛いからって見つめられても困るなー」
「美希ちゃん!?」
「貴様!?」
「…あ、ああ…いや申し訳ない …ささ。こちらのお部屋へ 占いなんかもありますのでご都合がよければ」
「…雪歩のこと、バレたのかな」
「だ、だったらどうしよう…」
「まずないと思うんだけど…ミキ達でドリルを守ればいいよ、ビビ」
何も知らない彼女達は…宿のベッドにひとまずの休息を取るのだった。
「…おい、何だありゃ…何時の間に逃げ出したんだよ」
「ええ!?ウソだろう、そんな報告は…」
-
各自単独行動中。
「…みんな、どこにいるかな」
美希は目覚め、宿屋から出てみる。
「…ちょっと装備でも買ってみようかな」
雑貨、武具屋へ。
「あのね、この村はその…どういうものが名産品なの、かな?」
「そうねぇ、この村となると野菜くらいしかないのだけど…最近大人たちが何かやってるみたいなのよ
この町今はおじいちゃんおばあちゃんと子供しかいないのよ…大人は宿屋のおじさん一人だけ…」
店番をしている少女と、対等に少女として話そうと頑張っているドリルの姿が。
「へぇー、がんばってるねドリル」
肩に顎を乗っけて至近距離で耳うち。
「ひゃああ!?」
「その調子その調子、頑張って!」
「あ…はい!…じゃなくって、うん!」
「あ。これとこれとこれ、買っといてね」
微笑ましいやり取りを後に、次の場所へ。
「えーっと…次は…あ!」
石垣に身を乗り出しているビビ。
「…どーしたの?ビビ。…好みの子は見つかった?」
「ええ!?美希姉ちゃん、ボクそういうつもりじゃ…」
「ビビくらいの子がここには沢山いるのになー。勿体無いよ」
「…ねえ美希姉ちゃん、何か声が聞こえない?」
「声って…? ……」
耳を済ましてみる。
…クェー、という鳴き声。
「…ビビ、知らないの?これはチョコボっていうんだよ」
「チョコボ?」
「ミキみたいな毛並みの鳥なの。けど……姿が全く見えないね どこにいるのかな」
「…うーん……」
謎のチョコボの声をかすかに聞きながら…今度は酒場に。
「何だい?うちは準備で忙しいんだよ」
「失礼致す、この町のカーゴシップのことについて…」
「カーゴシップのことなら見張り山の爺さんに聞いとくれ」
「………ご協力感謝する」
真が半ば邪魔にされながら、店から出て行くところだった。
「…カーゴシップについて聞くの?」
「どうやら今は運行してないみたいだ。ボクは見張り山へ向かうが…美希。お前は姫様に変な真似をするなよ」
「はいはい…」
真が畑から村の外へ出て行くのを見届けると…
…また何かが聞こえてきた。チョコボの声…いや、もっと美しい音色。
「…歌…?」
「らーーらららー らららららら ららららららー らーら ららら…♪」
宿屋の方へ戻ると……
「…雪……ドリル」
宿屋の前で涼やかな歌声を響かせるドリルの姿があった。
-
「……きれいな歌だね」
「そう、かな……」
「…! 結構普通の喋り方も板についてきてる!思った以上だね!」
「……二重に褒められちゃった…」
舌を出して恥ずかしがる雪歩に…
「雪歩ー!」
思わず美希は飛びかかるが…
「きゃ!?」
避けられて柵に激突。
「あいたたた…」
「も、申し訳ありません…。」
「…いや、いーよ …それで
今まこっさんがカーゴシップの話をしに行ってるからもうすぐ出発だね
ビビを呼びにいこ?」
「うん」
先ほどの場所にいるはず。
そう思い、チョコボの声が聞こえた場所へ向かうが…
「……いないね」
「さっきはここにいたんだけどなぁ…」
他の場所に当たろうかと思った時。
「美希お姉ちゃーん…ドリル姉ちゃーん…」
「ビビ!?」
どこからかビビの声。
きょろきょろと見回すと……
チョコボの声も。…そこで気づいた。
地面から突き出す、パイプの中からであると。
「ビビ!そこにいるの!?」
拳程度の狭さのパイプに向かって声を。
「うん…何か、男の人達に突然捕まっちゃって狭い場所に入れられて、運ばれて…ここがどこなのかもわからないんだ」
「そこは多分村の土の下…地下だよ!!
ミキとドリルで行くから待ってて、ビビ!」
「ビビ君、今行くからねー!」
地面を掘る道具はない。
「風車小屋に、大人たちが入っていく地下通路を見たの!
そこから地下にいけるかも知れない…」
ドリルと共に、美希は風車小屋の地下へ。
-
…するとそこは……
「……!?」
モンスターが警備する地下通路。村全体を覆っているかのよう。
暗い中をランプが一定距離ごとにかけられた、土壁の人工施設。
狭く、また長く続く通路を見つからないよう、誰もいないタイミングで通り抜けるとそこには…
巨大な沢山の箱。
「…何なの、これ…」
「美希ちゃん、多分ここ…何かを作ってるよ…何なのかな」
…すると箱の中の一つから声が。
「美希おねえちゃーん!ドリルおねえちゃーん…!」
ビビだ。
「えっと……てい!」
こんこんと箱を叩き、ビビの体が入っていない箇所を探るとそこをメイジマッシャーで切断。
箱からビビを出すことに成功。
「ありがとう…」
「…ビビ、心当たりある?」
「ううん…ないよ……何でこうなったんだろう」
「三角帽子で顔が見えないから怪しい人だとか思われたのかな…
…考えてても仕方ない。いこ」
箱まみれの部屋を後にまた通路へ。
どんどん進んでいくと…そこには…
「…え…」
巨大なベルトコンベアの機械。
「これは、一体…?」
人が丸まれば入れそうな丸い卵のようなカプセルが次々と。
「美希姉ちゃん、これってチョコボの卵かな」
「これは人工物だよ…鳥の卵なんかじゃない…」
「…一体何が…」
ベルトコンベアをさかのぼっていくと…
そこにはモンスターを生み出し、飛空艇を飛ばし、人を狂わせる凶悪ガス。
「………霧…」
霧を、あの卵のようなカプセルにいれ、何かをしているのだろう。
…何が作られている?
今度はコンベアを辿る。
卵が機械の中に入るのをみる。
その先だ。その先に…何かこの施設の秘密が。
…知りたくなかった事実。
…だが、知らなくてはならなかったことだった。
「…人………」
三角帽子。
黒く見えない顔。
魔道衣。
…その特徴は、洞窟で戦った黒のワルツ1号にも合致する。…あれほど、特異なデザインではないが。
人が、人形のようなものが、アームに捕まれ装置の上をグイングインと運ばれている。
その光景は……見ていて気持ちいいものでは、到底なかった。
そして、箱詰め。
「ボクは、この人達と間違えられたのかな」
「人?違うよ、これは多分人形か何かで…」
「霧を使う人形って何なの…美希姉ちゃん…この…ボクに似た人形は……」
「………いや。ビビには…全然似てないよ? うん。ホント!」
のどかな田舎町の下に隠されていたのは…
機械により人工生物を生み出す工場だった。
-
「……」
言葉が出ない。
チョコボ動力で動かした機械で
人形に命を吹き込み、大量にどこかへと運ばれるその光景には。
「それにしてもだなー」
「!!」
奥から話し声が近づいてくる。
この工場を動かすダリの大人達なのだろう。
「えっと何処かに…隠れることは… あ!」
ちょうど、空いた箱を発見…美希とドリルが中に入る。
「ボクは…えっと…えっと……」
小さな箱の中に入る。
「いつまでこんなことを続けていればいいんだろ?」
「国の命令だし止める訳にもいかないだろうよ
それにほら、この仕事結構カネ貰えるし」
「……とはいっても…」
「見てて気持ちいいものじゃない、か?…まぁ、そういうもんだよな」
「…国の………そんな…」
ドリルは…王女雪歩は、アレクサンドリアの事実に喉が詰まる。
「……後で聞いたことはミキが教えるから」
「!!!! あ、当た…」
狭い箱の中でドリルの口を塞ぎ、体を密着させる美希。
ドリルの顔がどんどん熱くなって行くのが解る。
「さて。それじゃ運ぶぞー」
「おう…」
「!?」
箱が持ち上げられ…
「……!」
二人の男に担がれ、どこかへ運ばれていく。
ビビの箱も。
「あ。コーヒーおいしい…ってだから!!
次にカーゴシップが来る時刻を教えてくれないか!
さもなくばこの村を一時的に国が接収することになる!」
「ほほう…そしてどうする気じゃ」
遡ること10分。
真は、見張り山の爺さん相手に粘り強くカーゴシップの時間を聞いていた。
「それは… …次の時刻を言うように命令する!」
…ゆったりとした時間の中で暮らす彼と、命令、規則の中で生きてきた真。
両者の間には、確たる差があった。
…見ている世界が、違うほどの。
「そんな一本調子では、ままならぬことも多かろう」
「ままなろうとなかろうと、それが正しいことだろう!?」
「…ならば、お前さんは正しいかどうか、判断できるというのだね」
「正しいことかどうか位誰にだってわかる!」
「ふぉっふぉっふぉ…青臭く真っ直ぐ…全く少年そのものじゃな」
「いやボクは…ってだから!!そんなことより時刻を」
「…ああ。そうさの、もうとっくに来ておる
積み込みも始まっておる時間じゃ」
「何故もっと早く言わないんだ!! …ってああ、有難うお爺さん!」
重い鎧は早いペースでガシャリガシャリと音を立てながら去っていった。
-
「うわぁ!?剣を携えた鎧の男が近づいてくる!」
「逃げろーーー!!」
カーゴシップに積み込みを行う男達は真の剣幕に一目散に逃げ出してしまい…
「ぜぇ、ぜぇ…何とか間に合った…」
真が止まったのは箱の前。
その中には、雪歩と美希が入っている。
「…ん?今この箱が動いたような…」
「おーい!まこっさん!」
「何か声がするぞ…てやぁぁあ!!!」
「何でそうなるのーーーー!」
飛びあがり剣を振り下ろす真。
「真さん!それには美希姉ちゃんと雪歩姉ちゃんが!!」
「え…」
小さい箱から飛び出したビビの叫びはもう遅く。その一太刀で二人の箱は真っ二つ…
「………あっぶないの…」
靴のつま先すれすれに剣。
…危うく、二人は斬られるところだった。
「…申し訳ありません姫様!!」
「全くもうーーー!!」
その1分後には土下座し、雪歩に怒られる真の姿があった。
…そんな、油断しきっていたとき。
突然、大気が、揺らめいた。
「……! …何か、変な気配 …!!」
と美希が言い終わるより早く気配の主は美希を突き飛ばしていた。
「あっ…!!」
腕を交差し、防御するも5mほど吹き飛ばされる。
「…1号を倒したのはこの中の誰だ?
まぁ、どうでもいい。姫様…お姉様がお待ちですよ?クックック…」
ゆっくりと上下する大きな翼、
腹の辺りまで止まり下は放たれ
脚の下まで大きく大きく裾の伸びたローブ
隠れた顔に光る目…
三角帽子。
「私は『黒のワルツ2号』 1号に代わり王女の奪還の命を受けたもの。
さあ、姫様 私と共に来てもらおうか」
「2号…!?」
「…!!! …いや、です」
「お前のような者は知らないぞ! 姫様に何をするつもりだ!」
「お前には聞いていない、アレクサンドリアの裏切り者め」
「……ねえ、君は一体…」
「こんな小さなタイプもいたのか。面白い奴らだ…まとめて相手をしてやろう…!」
雪歩を連れ去りに来た第二の刺客。
美希、ドリル、ビビ、真…メンバーは揃っている。
今度は全力で相手が出来る。
「ふふふ…私を1号と同じと思わぬことだな」
-
空中浮遊する黒のワルツ2号。
「くくくくく…」
カーゴシップ発着場での戦いが今始まる。
美希はシリオンを倒して見つけたミスリルダガーでスイフトアタック。
飛びあがりラッシュを発動しようとするが…
「活きのいいことだな…」
出現した時のように、一瞬の移動で回避…
「え!? ああああああ!!」
真を手から発した力で吹き飛ばす。
「う!!」
剣を地に刺し何とか止まった真も一撃を繰り出すが…
「フフ…」
真の背後に移動して波動を浴びせる。
「おおおお…!!」
「ちっ」
吹き飛ぶ間際に体を回転、何とか2号に一撃を与えることには成功する。
「………そんなに早く動いても全くブレーキをかける必要がないんだね」
「今頃気づいたか?」
「とてつもなく速く移動してるんじゃない…瞬間移動!!」
「解ったところでお前達に勝ち目などない!」
「ファイア!!」
ターゲットを2号に絞り、こちらも一瞬での攻撃…魔法を繰り出す。
「うぉ…」
2号の背が焼ける。しかし…
「…通常モデルより出来がいいようだな、
だが…未熟だな!!ファイアとはこうやって使うものだ!!」
2号が魔法を唱えた。
それは…ファイア。
「うああああああああああ!!!」
「うっ…!」
「きゃああ!!」
辺り一面から炎の渦が吹き荒れる。
美希、ビビ、真が炎に飲まれて膝をついてしまう。
「…え!?」
ドリルはその中心。…にも関わらず、魔法の被害を受けていない。
ドリルの周囲だけが、穴の開いたように魔法の範囲外になっているのだ。
「みんな…!!」
ドリルはケアルを全体化し3人を回復。
「…ドリルも!? どうやったの、今」
「敵と同じだよ…『魔法の広範囲化』…威力は弱まるけどね。
ビビ君が出来るかどうかは解らないけど一部の魔道士は出来るの。」
「全体攻撃に全体回復…これは勝負が長引くな!!」
そう言うと…
2号は瞬間移動、ドリルの眼前に。
「!! ひめさ」
「やめるのおおおおおおおおおおおおおおお!!」
美希は2号に向かってミスリルダガーを投げる技『テンペスト』
「な…!!」
そして2号の胴を斬り戻ってきたダガーを手に、
ぐるりと縦回転し上昇、連続で2号を斬りつける『ヴォルテックス』へ連携。
「おおお…!!」
2号を空中へ吹き飛ばした。
-
「…おのれ…おの、れ…」
2号がいよいよ本気になった。
「貴様らをまとめて焼き殺してくれる!!炎属性特化のこの2号の火力でな!!」
魔力を両手の間に集めると…地上に投げる。
「『ファイラ』!!」
先ほどとは比にならない、煮え立つマグマのような灼熱が辺りを覆う。
「回復できまい!!さぁ攻撃してみろ、もう一度撃ってやるぞ!!」
ビビが倒れ、美希が重症。
真がピンチに陥った時…
「…私を誘拐したいんですよね!?」
ドリルが言い出した。
「諦める気になったか王女」
「まだ諦めません…降りてきて私と戦いなさい!」
「はっはっは…私と戦うつもりか!とんだ常識はずれなお姫様だ…
抵抗すらできない己の無力さ、思い知るがいい!!」
ドリルは広場の中心で倒れている真の辺りに移動。
2号を真上にし眺める。
「やめ、ろ…」
「ドリルに、手を出すな…なの…」
「お姉ちゃん…」
「浅はかだなぁ!!」
瞬間移動もせず、急降下する2号。
その大きな、鷲の如き手がドリルの細い体を捕らえようとしたそのとき…
「はぁあああああああああ!!!」
ドリルは何と真の剣を引き抜き、飛びあがり2号の胴に突き刺した。
「!?」
手を激しくぐるりと捻り、螺旋の力を持ってねじ込む。ドリルのように。
「…おおおおおおおおおおおおお…!!!」
貫通。
「こうすれば非力な私でもピンチのあなたを倒せるほどの破壊力を出せる…!!」
そして剣を一振り、2号を串刺しにした剣から放ち地へ落とす。
「ばか…な………」
呻きながら、2号の体は霧になり消滅していった。
「…」
美希と真は口をあんぐりと開けていた。
-
アレクサンドリアからの第二の刺客も退け
一行はカーゴシップに乗り込む。
…最も真は信じていないようだが。
「しかしあいつらは一体…」
「考えてても仕方ないよ…さ。カーゴシップに乗ろ?」
カーゴシップの入口へ続く梯子。
ビビが最初に船内に入り…続いて真。
「じゃあ次は私が乗りますね…」
ドリルが梯子を登った瞬間に…
「あ!!」
カーゴシップが走り出し、離陸。
「ああああ…あ!!」
美希は全速力で走り…梯子に飛びつく。
「ひゃあ!?」
「あっ♪」
と思いきや、手がついた先はドリルの胸。
「ふむふむ…」
「もう!!」
感触を確かめていると、ドリルは怒って登っていってしまった。
「…えっと、あの…ごめんねドリル」
「別に私怒ってなんかないけど…」
「…暫く話しかけないほうがいいかな」
膨れっ面のドリルはさておき、ひとまず船内へ。
「…ビビ、どうしたの?」
中で働いているのは、ダリで作られていたのと同じ三角帽子の人形達。
「……ボク、嫌われてるのかなぁ…」
「嫌われてる、って…」
無言で作業を続ける三角帽子たち。表情も余計な動作も感じられない。
「何を話しかけても、何回話しかけてみても、ダメなんだ…」
「……でも、ミキにはこの人達が心を持ってないようには見えない。
…話しかけ続ければ解ってくれると思うよ」
「そう、かなぁ…」
「…うん。そうだよ
…じゃ、これからまこっさんの様子を見てくるね
このままだとミキ処刑だし」
そう。カーゴシップがゆく先は高台の王都アレクサンドリア。
…あんな方法を使ってきた国が、王女雪歩を戻してただで済ますとは考えづらい。
「長かった道のりだが、漸くアレクサンドリアに着けるな…
外の世界に憧れていた姫様も、これで満足なされただろう。
…それにしてもとんでもない奴だった、タンタラス一味め…
美希の奴は、帰ったら必ず…!!」
甲板の上で、真は何やらぶつぶつ独り言を話していた。
「…いや、奴はこの旅の最中は協力的だった。
奴がいなければアレクサンドリアには着けなかったかもしれない…
……元凶とはいえ、刑を軽くして頂くよう進言するのが騎士としての務めだな!」
その時。
「まこっさーん、どうー?空は気持ちいい?」
「美希!覚悟していろ、帰ったらお前は死刑だからね!」
得意気な顔で真は入れ替わるように船内に戻っていった。
-
「……全く何も聞いてないんだから」
そう言うと美希は甲板後方の、操縦室へ入り…
「はいはい、ちょっとどいて欲しいな」
舵を取る三角帽子をどかせるのだった。
「…何か、動く方向がおかしい気がするな…
美希、何か変な…ああああああああああああああああああ!!!」
「ふんふふんふーん、なの」
真が再び上がると、そこには舵輪を握る美希の姿が。
三角帽子の船員は無言で美希を見つめている。やっぱり航路が変わると困るのだろう。
「…お、お前!!み、美希!!何をしている!どこに向かってるーーー!!」
「気にしないで欲しいな」
「このっ!!」
真は美希を捕まえようとするが…
「ほい」
くるりと回転、操縦室の外へ。
「こら!!」
「よっと」
追いかけてきた真とクロスするように飛び、また操縦室へ。
「えい!!」
「ほっ」
尻尾を引っ掛け天井にぶら下がり
「こっのー!!」
「あふぅ」
突撃してきたところをささっと避けると真は激突、倒れてしまった。
「さてー、これより当飛空艇はー、『リンドブルム』へとー参りまーす」
「リンドブルム!?
そういえばお前達、リンドブルムの劇団員だったな…
ええい、姫様をお前達の母国に連れ帰る気かぁ!!」
そう言って真が起き上がった時。
「……カカカ」
甲板の先端に、何者かが出現。
「このままリンドブルムへは行かせぬぞ…」
長身の体に纏われた、全身が青き、鳥のような羽で覆われたローブ。
三日月形の頭をした杖。
2号より更に大きな、青黒い翼。
三角帽子。
「…あれは」
「…さっき倒した奴の仲間か!?」
真が言うと、
次々に、船員の三角帽子が甲板へ飛び出してくる。
「何があったの!?」
ドリルとビビも。
「…!?」
そして、三角帽子に囲まれた。まさかすべて罠だったというのか…?
「プログラミングが行き届いているようだな
そうだ!姫をこちらへ連れて来い」
…しかし。
「…」
ドリルとビビを美希と真の元へ行かせると…
向き直り、船員達は全員、青黒羽の三角帽子の方を。
「…何」
全員が詠唱……
「まさか!!」
魔法を全員で一斉に唱える。
ファイア、サンダー、ブリザド。
魔法が次々に放たれ、大きな三角帽子を攻撃していく。
「…ほう。私に逆らうというのか 所詮、量産型に過ぎぬお前達が…」
そう言うと杖を振り上げ…
「この、雷属性特化の、黒のワルツ最強『3号』に!!」
魔法を唱えた。
-
どこからともなく、突如として白き柱が落ちた。
それは巨大な雷『サンダラ』。
カーゴシップを貫き、這う電撃。
その衝撃で、集まった三角帽子たちは皆吹き飛ばされ…
…カーゴシップから落ちていく。
次々に。
カーゴシップに積まれた積荷も…また。
箱が空中で壊れ中身を…まだ体が出来たばかりで、生まれてもいない彼らが。
次々に、命がバラバラと空へ落ちていく。その先に待つものは…。
「………あ…」
ビビは操縦室の窓から、その様子を目にした。
同じ形の、話しかけたかった、動いている同じ三角帽子の人々が……
雨あられと、まるで…虫ケラのように。
「カカカカカ、カーカカカカカカ!!」
落ちていくのを見届けるしか出来ないビビの顔は…割れた硝子によりさえぎられた。
「………」
あまりの光景。
…もう、ビビはその場に崩れてしまう。
「……ビビ君」
「ビビ殿…」
「………ビビ」
高笑いを続ける3号。
そして……
彼の怒りは、頂点に達した。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
感情のままに、駆け出していた。
「ビビ!!…ドリル、舵輪を頼んだの!!」
「えっ、でも…」
「ドリルなら出来るよ! さ、まこっさんも!…王女を守るのが仕事なんでしょ!!」
「…く、…ああ!!」
「…気をつけて!」
-
>>303
そうそう。
ああ。そうかw
投下ー
-
個人的に好きな敵の組織や犯罪組織、犯罪集団
(原作がゲーム外のも含む ただしゲーム化した作品のみに限る
また、やっていない作品も含まれている)
1 コルレオーネ・ファミリー ゴッドファーザー
ドン・ヴィト・コルレオーネ
分類:犯罪組織
2 カスタルディー・ファミリー Driver 潜入!!カーチェイス大作戦
ドン・カスタルディー&ジャン・ポール
分類:犯罪組織
3 サリエリ・ファミリー MAFIA:The City of Lost Heaven
ドン・サリエリ
分類:犯罪組織
4 タッタリア・ファミリー ゴッドファーザー
ドン・フィリップ・タッタリア&バジル・ソロッツォ
分類:犯罪組織
5 ベルセッティ・ファミリー Grand Theft Auto Vicecity
トミー・ベルセッティ&ケン・ローゼンバーグ
分類:犯罪集団
6 テュランヌス世界統一軍 鋼鉄の咆哮
テュランヌス(のちクルーガー)
分類:独裁国家(?)
7 ウィルキア帝国 ウォーシップガンナー2 鋼鉄の咆哮
フリードリヒ・ヴァイセンベルガー
分類:独裁国家
8 Qシュタイン帝国 コンバットチョロQ(PS版)
T-35
分類:独裁国家
9 レオーネ・ファミリー Grand Theft Auto3
ドン・サルヴァトーレ・レオーネ&ジョーイ・レオーネ
分類:犯罪組織
10 ロケット団 ポケットモンスターシリーズ
サカキ
分類:犯罪組織
11 ロシア超国家主義派テロ組織『The Four Horsemen』
イムラン=ザカエフ(&カレド=アル=アサド)&ウラジーミル・R・カマロフ
分類:テロ組織
-
「どうして!!どうして仲間なのにこんな酷いことをするの!?」
「仲間だと!? カーッカッカ!!
これだから何も解らぬ出来損ないは困るのだ!!
私は奴ら1000体を作るコストを上回るコストで作られた…」
「そういうことを聞いてるんじゃないよ!!」
「うるさい小型タイプめ、私の力の前に絶望するがいい!!」
黒のワルツ3号との対決。
ビビは…戦闘が始まると同時に突然光に包まれ…
「何…?」
「まさか!!」
トランスは何も美希だけのものではなかった。
青白い光を発し、ぺたりと倒れた三角帽子は尖り、魔道衣は見たこともない造形へ変化。
「面白い、1号と2号を倒したお前達の力、見せてもらおう!!」
3号は初めにサンダラを発動。
先ほどと同じ、カーゴシップを破壊しかねない強力な雷がビビを襲うが…
「う…」
「…何!?」
効果が薄い。
「サンダー!」
雷の魔法で返す。
「う…!?」
炸裂するは、3号のサンダラと同格ほどにまで強くなった強力な電流。
そのダメージは通常時の比較にはならない。
「ブリザド!!」
巨大な氷の塊が3号に落下。3号の頭を直撃する。
「何だその詠唱速度は…!!」
「ボクも負けていられない!!」
真は突進、飛びあがり体重を乗せ3号に一撃。
「…邪魔をするな!!」
3号が飛びあがり、魔力を集中させ始める。
「味わえ!これが本当の『サンダラ』だ!!」
-
より強力になったサンダラが全員を襲う。
雷が雨あられと降り注ぎ、高圧電流が網のようにカーゴシップを駆け巡る。
「うあああああああ!!」
「きゃああああ!!」
「う…」
何とか耐えることには成功するものの…
この戦いにドリルはいない。回復役が存在しないのだ。
「……あ…」
激しい痛みと、痺れ。
「さぁもう一度だ!!」
杖を空に掲げ、雷のエネルギーを凝縮させ始めた。
だが。
「はぁぁああああ!!」
ここで美希もトランス。
「…何!」
「『タイダルフレイム』!!」
またも、己の脳裏によぎった言葉を叫ぶ。
すると、美希の周囲を巨大な炎が回り始め……
「行けぇぇえええ!!」
ミスリルダガーを自分の向いている方向…3号のいる方向へ向けると、
炎は巨大化……一列に、巨大な炎の壁となって3号を襲った。
「…『ブリザド』!!」
しかし雷特化の彼ではこれを消すほどの冷気を発することは出来なかった…
「くぁぁああああ!!」
高く飛んだその高度まで炎に焼かれ、甲板に落下してしまう。
「『サンダー』!」
「『ブリザド』!!」
そこに再びビビの追撃。
二連族の魔法により、全身に電流が走り、氷の刃が食い込む。
「貴様ら…………!?」
3号が膝をつく。
これでもまだ倒すには早かったようだ。
「………私が…手加減していれば……いい気になりおって」
「…まだ戦うつもりなの」
3号のローブの各所から火花。
体勢を直すと…
「当然だ…
我の存在価値は勝ち続けることのみ!!」
3号が強力なオーラに包まれ始めた。
「我の存在理由ハ勝ち続けルコトのミ!!
我ノ存在理由ハ勝ち続けるコトノミ!!
我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!!」
そしてカーゴシップから飛び立っていった。
「…?」
-
その様子を遠くから眺めていたある二人。
「のの、3号の戦いはどうですカー」
1人乗りの小型艇に、小柄すぎる2人で乗っている。
「ワー、どうやら勝ったようデスよ こちらに戻っ…」
「我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!!」
恐ろしい形相で向かってくるではないか。
「…ののワーん…?」
「魔力を高めすぎたデス(です)よー(ヨー)!!!」
ののとワーの二人はそのままダイビング、撤退。
そんなことをして無事で済むのかはともかく…
「我ノ存在理由ハ勝チ続ケルコトノミ!!」
3号は小型艇を奪い、ハンドルを握る。
「…何とか倒した、かな…」
「美希ちゃん!!リンドブルムの南ゲートが見えてきた!!」
「よっし、もう少し!」
「…」
ビビが見つめるは甲板の端にかかった三角帽子…。
もう、空へ投げ出されていった船員達は戻ってこない。
「待て!!後ろから何か来ているぞ…!!」
「…さっきの奴!?どうしよう…!」
前方にはリンドブルム領への門、
後方には猛スピードで追跡してくる3号の小型艇。
「よっし、いけーーーー!!」
「思イ知レ……『サンダー』『サンダー』『サンダー』『サンダー』!!」
雷の使い手である3号にとってサンダーの乱射など朝飯前。
カーゴシップの周囲を旋回し、魔法を乱射。
しかし精度は低く…
「きゃ!!」
「危ない!」
「何てしつこい…」
いずれもカーゴシップを沈める決定打にはならない。
「『サンダラ』!!」
カーゴシップの屋根を吹き飛ばす。
そして魔力は更に高まり…
カーゴシップの前方に回りこみ…目標を捕捉…
-
「『サンダガ』!!!」
存在さえ一部の者しか知らない、この世に存在する最強の雷魔法。
しかし…
それと相対し、あわせた両手から…
「……『ファイア』!!!」
ビビの怒りの黒魔法。
凄まじい威力の炎が3号を焼き…
「ヒギュッ!?」
3号の小型艇は岩山にたたきつけられる。
ゲート寸前。
「我ノ存在理由ハ戦イ続ケルコトノミ!我ノ存在理由ハ戦イ続ケルコトノミ!!!」
3号はまだ諦めない。
危険を察知し、閉じられようとしているゲートに向かうカーゴシップを追う。
後はこのカーブを曲がるのみ。
「…間に合うかな!?」
「……ドリル、貸して…!!」
二人で全力で舵をきり…
曲がりきる。そして
「通れ……通って!!」
閉じようとしているゲートを…
一瞬の差で通過に成功。
「我ノ存在理由」
最早何も見えていない。3号はゲートへと突っ走り……
「ハ!!!!」
閉じきったゲートに激突。
南ゲートは大爆発したのだった。
-
「…黒のワルツめ…アレクサンドリアの名を騙るとは何という…!!
一体何人いるんだ…!!」
「今ので終わりだって思うな」
リンドブルム領に入ったカーゴシップの中で、美希は真に。
「…」
雪歩はあの言葉の真偽がわかっていた。
「何!? …何でそうと言い切れる!…さては美希、お前!」
「違うよ! ミキが氷の洞窟で倒したのが1号
カーゴシップ発着場で一緒に戦ったのが2号
今カーゴシップ上で戦ったのが3号…だよね
3人倒したからおしまい。だって『ワルツ』だもん」
「…?」
「まこっさんダンス得意そうだと思ったんだけどなー…」
「………な、何だここは…」
そこは巨大な建造物の塊。
視界の下から上まで、びっしりと建物が一つのあまりにも巨大な塔のように連なっている。
そこを行き交うは大小様々な沢山の飛空艇。
真は呆然と口を開けていることしか出来ない。
ビビも初めてだが、それどころではない。
「…何って…リンドブルムだよ、来たことないの…?」
「美希ちゃん、リンドブルムの景観には一度来た人も絶対驚くと思う…」
飛空艇大国リンドブルム。
高い山の上に更に大きな町を、塔のように連ねた国。
国の中心リンドブルム城はそんな巨大な都市の、高い高い頂点から霧の下の海に面した最下層までをぎっちりと貫いていることになる。
「さてと…それじゃ城につけるよ」
「お前、自分の立場が…そうか、自首するつもりか!」
巨大なリンドブルム城内の整備用ドック。
橋につけ、カーゴシップを降りると兵士が取り囲んだ。
槍を手にし、三角の兜とダボっとした鎧に身を包んだリンドブルム兵達だ。
「お前達!何者だ!!無断でこの城に侵入する者は…」
「ぶ、無礼な!我々は…」
「待ってください」
言葉をさえぎったのは、ドリル…いや、アレクサンドリア王女雪歩だった。
「………私は、アレクサンドリア王女の雪歩と申します」
「な、何!?でたらめを言うな!こんな服装をした…」
「証拠ならここに。」
胸元の、アレクサンドリアの国宝『銀のペンダント』を見せる雪歩。
「!? …しっ、失礼致しました!! …少々お待ちください」
暫くして現れたのはリンドブルムの大臣オルベルタ。
「…おお、これはこれは…雪歩様…
兵達のこのような振る舞い、申し訳ありませんでした」
「いえ…今のこの状況で私と気づけと言う方が無茶なものですから…」
「王への面会をお願いしたいのですが…」
「…畏まりました。こちらへ」
-
飛空挺ドックから直進、噴水のある広間を更に真っ直ぐ…昇降機へ。
「……」
真はまたもきょろきょろ。
広い昇降機の、装飾の施された柵と扉が閉まると一気に上階へと登ってゆく。
中層から最上層へと登った昇降機は扉を開ける。
赤いカーペットの上層を進むと上と下に扉。上の扉を進むと…
大国リンドブルム最高権力者の部屋…王の間。
「…あれ?」
しかしそこには誰もいない。
「………陛下…?」
呼んでも帰ってこない。
「…」
その代わりに玉座の後ろから真っ黒い何かが現れた。
雪歩の反応。
「!?」
同じく美希。
「!!!!」
ビビ。
「わぁぁ…」
真。
「なっ…」
文臣オルベルタ。
「…」
「お、おお……!!」
ガサゴソと真っ黒い何かは蠢く。…『虫』だ。
『ブリ虫』だ。
「何といい面構えだ……」
何故か人語を話す黒き虫は…
玉座から降りると…
「『ブリ』っと来た!!!」
雪歩に向かい飛びかかってきた。
「でやああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
真は剣で斬り飛ばす。
「うぉおおお!?」
玉座背後の大きな窓に激突、ひび割れを生じさせる。
オルベルタは黒い虫に向かい叫ぶ。
「へ、陛下ーーーーーーーーーー!!」
「「「「!?」」」」
-
「…申し訳ありませぬ!!ほんっとうに申し訳ありませぬ!!!」
「真ちゃん、これ」
「有難き幸せ」
雪歩にスコップを手渡され、穴を掘り出す真。
そう、黒きブリ虫こそがこの国の王… 高木その人なのだ。
「……いや、いいんだよ…もう慣れてる『ブリ』ものだからね…」
「以前お会いした時は人間だったような…」
「これには訳があってね『ブリ』…」
ぷりぷりと変な音を出しながら歩く黒き虫…王。
「まぁ、話したが最後、とても情けない理由なので後で雪歩君にだけ話しておくとする『ブリ』よ……」
「おお、そうだった…こんな辛い任務を押し付けてすまなかったね…
依頼主がこんな姿ではさぞびっくりした『ブリ』ことだろう」
「いや、そこはいいんだけど…」
その会話に真は耳を疑う。
「何!?」
「あれ?言ってなかったっけ。ミキ達タンタラスの任務、『雪歩王女の誘拐』は
あの高木王から頼まれたことだったんだよ」
「ははは…君達のボスである律子君には昔から世話になっているんだよ。」
「それで、私の方から高木王に文を送ってお願いしていたんです」
…全てはこちら側の計画通りだった。…魔の森に落ちるなどは勿論想定外だろうが。
「初めから合意の上かー…知らなかったのはミキ達タンタラスの下っ端だけだったんだね…」
「ボクはお前達のしたことがリンドブルム王からの依頼だってことすらも今知ったよ!!
…しかし高木王、姫様…何故このような事を」
「……そのことについてですが…今回の旅の間で、高木王にお伝えしなくてはならないことが増えました」
「…うむ。聞こう
……おお、すまなかった。君達は客間で休んでいてくれたまえ」
「はーい!」
「………ではボクも」
「じゃあボクは…町を見てこようかな」
ひとまず全員解散。
雪歩は王の間に残り、高木王に話をすることとなる。
「…………さて。……春香君のこと『ブリ』ね」
「はい。 …私の姉・アレクサンドリア女王春香は……… 戦争を始めようとしています」
雪歩は、ストレートに切り出した。
「…うむ。私もそれには気づいていたんだ。 まさか春香君がとはな……『ブリ』」
「そして…見てしまったんです。カーゴシップを出してくれた、ダリという村の地下で…
…霧により作られた、魔法を操るゴーレムが作られるのを。」
「…噂には聞いているよ 『黒魔道士』というそうだ『ブリ』…
ちょうど、先ほど君の仲間にいたビビ君『ブリ』のような…」
「そのような言い方はお止し下さい。
……深く被った三角帽子に、魔道衣をつけたもので、私達もその特殊製と思われる者に3回ほど…
…私達を庇い、その特別製の『黒魔道士』に殺された者も沢山いて…」
「……そうか。すまなかった『ブリ』ね
まぁ、この国にいる間は安全だ…安心したまえ『ブリ』
娘のいない我らにとっては娘のようなものだ『ブリ』…君も… ……春香君もな」
「…私、姉様を止めるにはどうすればいいか……解らないんです」
「…今は、出方を見るしかないだろう。
………防衛の準備はしておかねばな『ブリ』 …春香君は…雪歩君を狙うだろうからな」
「もしリンドブルムを危機に晒すようなことになれば私はいつでも戻ります」
「…」
高木王は『戻る』という言葉に難色を示したが…
「…高木王?」
雪歩はそれに深い意味に取らなかった。
「ああ。何でもない『ブリ』よ。…まぁ、君も休んでいなさい 展望台に行ってみるなどどうだ
ついでだし、後で愚痴話でも聞いてもらおうかと思ってる『ブリ』ハハハ… 休むなら今のうちだぞ?」
「ええ。それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」
こうして雪歩は、一礼し部屋から去っていった。
「………『妹を』取り返すだけだといいが…」
-
ひとまず、『雪歩王女誘拐』の任務は完了。
美希は客間で休んでいた。
「…ん…
……ドリル、今何してるかな」
客間を離れ昇降機で上層へ。
「…あ」
歌が聞こえてくる。
階段を登り、更に登ると…金色の鐘が吊るされた真っ白な展望台。
「……」
何も言わずに近づくと…。
「…あ」
流石に気づかれてしまった。
「…ごめん。うるさかった、かな…」
「ううん。そんなことないの ドリルが歌うと可愛い感じに聞こえるね …ね、その歌…何の歌なの?」
「…え? うん……
…実は、私自分でもこの歌をどこで知ったかよく解らなくて…」
「よく、解らない…?」
「…うん。物心ついたときには歌ってて…姉様によく歌ってたの」
「春香女王に…?」
ドリルの顔に花が咲く。
「うん。当時はまだ私と同じ王女だったけどね?
お姉ちゃん、って呼んでたんだ
この歌を歌うとね…笑ってくれたんだよー、お姉ちゃん」
「…ドリル」
「…………。」
その姉に自分が心配かけていること、
その姉が自分を取り戻すために残虐な手段に出ていること、
その姉が戦争を起こそうとしていること…。
ドリルの顔の花は…瞬く間に萎れた。
「……ごめんね、話してもどうしようもない話しちゃって…」
美希はとっさに、話をそらす。
「あ、いいよいいよ。それよりさドリル、ちょっと目の下にクマできてるよ?」
「ふぇ?」
ドリルの目についた、黒ずみを指先でちょんとして舐める。
「せっかくの可愛さが台無しなの。 そーだ…
…よく眠れないなら…ミキが添い寝してあげよっか〜…?」
手をわきわきとし、ファイティングポーズに似たポーズで嬉々としてドリルに迫る。
「ええ!?…い、いいよ…私一人でも寝れるし…
美希ちゃん、私そんなに子供じゃないよ!?」
手を頬にやり、ふるふると首を横に振るドリル。
「……子供じゃないから言ってるんだけどなー…」
「?」
-
「いや、それはそれで可愛いからいいのいいの♪
…そうだ。ドリル、あのね リンドブルムにはちょうど明日
『狩猟祭』ってお祭りがあるんだよ」
「あ。うんっ、聞いたことある!」
「それでねードリル。
明日の狩猟祭でもしミキが一位取ったら、ミキのデートしてくれないかな!」
「で、でででででででででデート!?」
「いい反応なの♪
そうなの。リンドブルムの町には行ったこと多分ないでしょ?ドリルに教えてあげたいなーって。
い・ろ・い・ろ・と♪」
「わ、私なんかでいいの…?
何か…怖いけど……う、うんわかった…」
「それじゃ明日を首を洗って待ってて欲しいな!」
「何か言葉の使い方がおかしいよー、美希ちゃん」
一方その頃。
「ジョウキキカン?何ですか、それ」
「蒸気機関とは、有害な今までの霧を使った『霧』に代わり
霧のない場所でも、安全に環境に優しく飛ぶことが出来るようになる新動力です
高木陛下は飛空挺技師でもあられ、この蒸気機関を用いた飛空挺の開発に着手していたのです」
「して…いた?」
真は飛空艇の整備場に…
「あの、お姉さん…これ何ですか?」
「あら。知らないの?モーグリが喜ぶ『クポの実』っていうんだけど」
「へぇー…」
「よかったら一つあげるわ。坊や可愛いからサービスしちゃう」
「あ、ありがとう!」
ビビは町で買い物をしていた。
…美希は、リンドブルム城を出ると久々のホームタウン・リンドブルムを散策。
「…律子ボスは、まだ戻らないみたいだね…」
劇場街でタンタラスのアジトに立ち寄り
「武器合成…そういえばまだしたことなかったかも。やってみよっかな」
工業街で武器を強化。
「まこっさーん、何やってるの?」
「いい食いっぷりだねぇ坊っちゃん!」
「うわー、おいしい!!おばさん、おいしいよこのギサールの野菜ピクル…んぐ!?ごほ、ごほ、ごほっ…」
「あ…」
商業街でむせる真を発見したりしながら…
「んふふー…同性だから問題ないよね♪」
最後に行きつけの酒場で女の子にセクハラしていた。
-
「ったく、あなたはまたそんなことをして…。だらしがないですねぇ」
赤い鎧に身を包んだ長身の女性が現れる。
アホ毛が見事に飛び出したこの女性は美希の知り合い。
「!! ……生きてたの…?」
「ええ。当然です。あの方を見つけるまでは、死ねませんから…」
「ネズ美ー!!自分が悪かった!!帰ってきてくれたかー!」
「美希ちゃん。誰の真似なの?それ」
「ミキでも解らないの。何となくだから…えっと」
「本気で忘れかけてたのね?」
「昔の女を忘れるほどミキはバカじゃないの、でも今ミキにはドリルっていう…」
「いつ私があなたの女になったと」
手馴れた様子でのツッコミ。アホ毛がグサリと音を立てて美希に刺さる。
「…うん。ごめんねあずさ」
「解ってくれればそれでいいですよ」
「……恋人の手がかり、見つかった?」
「…死んだとしか聞いていませんね……私はまだ、ブルメシアに戻れそうにはありません」
「そっかー…。 …あ。もしかしてここに来たのって、狩猟祭に出るため?」
「ええ…優勝した私の姿をあの方が見てくだされば、きっとあの方も私を見つけてくれるはずですから」
「………過去ばかり振り返るのはって言いたいけど…まぁ、頑張ってなの。
…さて。それじゃ明日に備えてミキは寝ようかな… お互い優勝を争うことになりそうだし、ライバルは増えたし」
「ライバル?伊織ちゃんかしら」
「伊織は…今いないの。律子さんも。でも、ちょっと争ってみたい仲間がいるから声かけてみるの。ビビっていう黒魔法の使い手だよ」
「…そう。それじゃおやすみなさい、美希ちゃん」
「おやすみなのー」
「…まだお昼ですけど」
「…それでだな。私は昼田君の、彼女の心を射止めるためにこの飛空艇『ヒルダガルデ』を作った『ブリ』んだ
私にとって彼女以外の女性はいなかったんだ『ブリ』 …まぁ、君もここまでは知ってるね『ブリ』」
「ええ。知ってます 結婚までしたのも知っていますが…どうして上の名前を使ったんですか?」
「それは聞かないでおくれ…
それで『ブリ』だね、幸せだった生活だったんだがちょっと飛空艇の操縦士の女の子にうつつを抜かしていたのを見られてしまってね『ブリ』…
私は妻に怒られて、離婚されてしまったのだよ…姿を、このブリ虫に変えられて『ブリ』ね」
「…よりによってブリ虫だなんて」
「頭脳の減退も著しかったよ 私は今ではロクに飛空艇を作れず、お詫びの『ヒルダガルデ2号』を完成させようとしてもこの通『ブリ』……」
その夜ドリルは、ただひたすら高木の絡み酒に付き合わされていた。
「あの、私そろそろ明日の狩猟祭に備えて…」
「待ってくれ雪歩君、こんな話律子君に話したら斬られてるし
君んちの音無君に話したら多分ファイガ撃たれているところだよ、話せるのは君くらいなのだよ…!」
-
インペリアル=コア
グランド・モフ・ジャジャーロッド
ハイ・モフ・ジークルーネ.N.P(インペリアル優先セクター)、ハイ・モフ・リヴィエ.P(オルデラン優先セクター)
(統合参謀本部)
バスト大元帥、スローン大元帥
(地上軍)
ブラシン大将軍、カス大将軍、ヴィアーズ大将軍、エーシェン大将軍、オドスク大将軍
(宇宙軍)
グラント大提督、ペレオン大提督、オキンス大提督、ギエル大提督、キラヌー大提督
(空軍)
カーゲロック大空将、アルノシアン大空将、フェル大空将、V.アッシュ大空将、マク大空将
(ストーム・トルーパー軍)
フレジャ大将軍、ウェア大将軍、アルボー大将軍、バラデュール大将軍、コシュ大将軍
ディープ=コア
グランド・モフ・ギャン
ハイ・モフ・セアティ(ベシュケック優先セクター)
ズィアリング大将軍、オイカン大提督、モガーク大空将、デラボルド大将軍
スライス
グランド・モフ・シェーンフィルダー
ハイ・モフ・バンドール(ジョスプロ優先セクター)
ゲイフ大将軍、ニーダ大提督、アール大空将、エキューデ大将軍
コロニー界
グランド・モフ・ネリアス
ハイ・モフ・フォレット.P(タパニ優先セクター)、ハイ・モフ・ファーガン(バーマ優先セクター)
ベレガヴォーイ大将軍、レノックス大提督、フェニア大空将、グラシャン大将軍
インナー=リム
グランド・モフ・ニヴァース
ハイ・モフ・アドリール(ビルブリンギ優先セクター)
ロット大将軍、スクリード大提督、ラムナー大空将、ユンブロ大将軍
ミッド=リム
グランド・モフ・ディズラ
ハイ・モフ・スタヴェールド(シェルシャ優先セクター)、ハイ・モフ・パナカ(チョーメル優先セクター)
ハイ・モフ・カーベラク(ゴルディアン=リーチ優先セクター)
レーキス大将軍、サークリィ.P大提督、ローリアー大空将、イスマエル大将軍
エキスパンション=リージョン
グランド・モフ・サレティ
ハイ・モフ・トゥリエル(ブラク優先セクター)、ハイ・モフ・タスクル(フェールゥイ優先セクター)
ヒスティヴ大将軍、カーギー大提督、テルノー大空将、クシュネル大将軍
アウター=リム
グランド・モフ・ケイン
ハイ・モフ・ターキン(セスウェナ優先セクター)、ハイ・モフ・ブリンカン(ブライト=ジュエル優先セクター)
ハイ・モフ・ヴェンセール(エスートラン優先セクター)、ハイ・モフ・ジェルマン.P(キュートリック=ヘゲモニー優先セクター)
アイガー大将軍、ダーラ大提督、ロアット大空将、ラゴルス大将軍
リシ=メイズ
グランド・モフ・ノエリア
ハイ・モフ・グラシアーヌ.P(アブリオン優先セクター)、ハイ・モフ・ブリール(ティングル=アーム優先セクター)
コヴェル大将軍、クレヴ大提督、エアルドレッド大空将、プラージ大将軍
ワイルド・スペース
グランド・モフ・フェラウライテーロロ
ハイ・モフ・ケイン(ブラクサント優先セクター)、ハイ・モフ・カグリオ(至グラディウス優先セクター)
アルダックス大将軍、パーク大提督、バルフ大空将、ミュルヴィル大将軍
未知領域
ハイ・モフ・ジェラール.P(セカンド・バスティオン優先セクター)
セーリッド大将軍、翼.J.P大提督、エルスバーグ大空将、ジャー大将軍
-
・優先セクター
皇帝が特に強い関心を抱いているセクターに与えられる称号。
ハイ・モフが配置され、通常のモフよりも多くの軍隊や資金が与えられる。
主に紛争が勃発していたり、反帝国感情が強かったり、軍事上重要だったり、外敵の侵入ルートだったり、
シスの古代遺跡が存在するセクターが指定されている。
・ハイ・モフ
グランド・モフと並んで皇帝が直接任命する優先セクター総督。問題があったり、重要な地域が
優先セクターに指定されている為、皇族や極めて有能なモフや軍人がこの地位に任命される。
・中央の元帥とその他の元帥の役割の共通点と違い
元帥達に共通する点として、宙界規模の軍司令官であることが挙げられる。但し、幕僚長と参謀総長に
関しては直属の軍を持たない。
中央の元帥達の役割は主に皇帝の軍事顧問である。経験豊富で老練な元帥達が皇帝の補佐にあたっている。
地方の元帥達の役割はその宙界に展開している帝国軍の総司令官である。
その意味で彼らの実質的な権限は中央の元帥達よりも大きく、比較的若くて野心的な元帥が配置される。
また、グランド・モフの軍事顧問も仕事の一つである。
-
こうしてやってきた狩猟祭当日。
門の上にスタンバイするはドリルと真。
「ここからだとよく見えますね、姫様!」
「そうだね…美希ちゃんはどこかな」
「アイツなんかより、ビビ殿を応援しましょうよ、ビビ殿を!」
「もう疑いは晴れたでしょ…?美希ちゃんにも優しくしてあげてね」
「いえ!それでも姫様を危険に晒したことも事実!ここはボクはビビ殿の応援に回らせていただきます!!」
飛びあがり、拳を振り上げ応援を始める真。
ドリルは美希の方を向き、声援を送る。
「美希ちゃーん、頑張って!!」
開始。
狩猟祭の間は街中にモンスターが一斉に駆け回っており…
それを倒すと、種族ごとに決められたポイントが加算される。
そのポイントを選手ごとに競うというのがルール。
モンスターが駆け回るのは、商業街、工業街、劇場街。
なるべく無駄なくすべてを回り、短時間でそれらを倒し点を稼ぐのだ。
「さて…行こっかな」
街中の公的移動手段、エアキャブを降り
美希は商業街からスタート。
「いた…ファング!」
魔の森でも戦った、狼のような茶色のモンスター。
脚の速さでは決して負けることはない。
追いかけっこをするまでもなく追いつき…
新武器『エクスプローダ』を両手で、ぐるりぐるりと頭上で回転させ…
一撃。
「やっぱり盗賊刀は違うねー!」
盗賊刀は持ち手部分を中心として前後に刃のついた、カヌーのオールのような形をした上下対称の剣。
その長さは美希の身長を軽々と超える。
「あ、トリックスパロー!!」
空を悠々と飛びまわるはこの辺ではよく見られる
青い鳥のモンスター、トリックスパロー。
回転を速め…
「はぁあ!!!」
ブーメランのように回し、トリックスパローを3体まとめて両断。
手元に戻ってきたそれを
「いやああああああああああ!!」
見物席のドリルが目を伏せ叫ぶ中、中心の持ち手部分をごく普通にキャッチ。
「心配させちゃったー?」
「もうっ、美希ちゃんたら何であんな危なっかしい武器…」
「あ…」
立ち上がれば小児ほどの大きさになる、リスのようでふさふさと可愛らしいモンスターのムーが3匹。
「『ランブルラッシュ』!!」
跳躍し、エクスプローダで次々に切り裂き、飛んでトリックスパローを一撃。
「ううう…!美希の奴!!」
「真ちゃんも見てるんじゃない」
「商業街はこれくらいかなー?」
エアキャブ発着場へ戻り、劇場街へ。
-
「いた!」
広場のファングに飛びかかりオーガニクスを突き刺す。
「でい!!」
そこから電灯の上のトリックスパローに投げて一撃。
「わぁ、強いね美希姉ちゃん…」
ファングに追われながらビビが現れた。
「ボクはこの通り、追われて、ばかりで…」
「助けないけどポイントは貰うよ」
こつんとエクスプローダで頭を小突きファングを撃破。
「さあーって、次次! …ん?」
ビビがいつの間にか、大量のモンスターに取り囲まれている。
20体はいるだろうか。
建物の壁に追い込まれ…
「…これは……」
「さ、サンダー!!」
「!!」
広範囲化した魔法を放ち、それらを全滅させてしまう。一挙大量得点。
「やっぱり強い…これはウカウカしちゃいられないの」
ドリルとのデートのためにも。
階段を下りてまたファングを撃破。
「今回はこの3種だけなのかな」
大きくジャンプ、エアキャブ発着場に戻り工業街へ。
「ムー」
走り回ってきたそれを撃破。
「トリックスパロー」
飛びあがり一閃。
「ファング」
空中からオーガニクスを投げ、突き刺し一撃。
「…正直、ちょっとつまんないなー」
そう思った時。
「う…!!!」
赤い何かが吹っ飛んできた。
「ドタプン撃破91ポイントやったぁ!!」
「こら!!」
槍の柄で頭を叩かれる。
「いいもん私どうせひんそーだし…」
おまけにドリルも拗ねてしまった。
「ああ、ドリちゃんポイントが…」
「…さて。冗談はいいとして、あずさ、そっちに何かいるの?」
壁が…崩れる。家と家の間にかけられた旗を目隠しにして突進してくる巨大なオレンジの物体。
「!」
「美希ちゃんは知らなかったかしらね…『スペシャルモンスター』」
体高4m、体長7mはあろうかという巨大なサイやウシのようなモンスター。
口から飛び出るは、2mはあろうかという黒く反った、巨大な牙。
「『ザグナル』!?」
「『ピナックルロックス』産のモンスターをリンドブルムの富豪が飼育したもの…野生のものより数倍強いわ
…トドメを刺したものがポイントをもらえる。お互い頑張りましょう?トドメの一撃前のその時まで」
あずさは真っ直ぐに、天高く飛びあがる。
「…こういうとっさの回避が出来るから『龍騎士』はいいよねぇ…」
-
「はぁあああ!!」
槍を投げつけ、ザグナルの背に突き刺す。
自らも落下、槍を手にしてジャンプ、元の場所へくるりと回転、戻る。
「んもおおおおおおおお!!」
ザグナルは突進…
「う!!」
美希の服に牙を引っ掛け空へ放り上げてしまう。
「どんな力だっていうのーーー…!」
美希が宙に放り投げられている間、
あずさは槍でザグナルを真正面から突き刺す。
「…流石にこの鋼鉄の皮膚は貫けないみたいですね …きゃ!!」
反撃を受け、鎧の上から巨大な角の衝撃を受けてしまう。
「たぁぁぁあああああああああ!!!」
美希は着地、ザグナルの首に向かってエクスプローダの回転から強烈な一発を叩き込む。
「偶然にも私みたいな戦い方になりましたね」
「考えてみれば、敵を利用する必要もないの」
美希は壁にジャンプ、たたたと走り込み…
「は!!」
背後から『スイフトアタック』。
エクスプローダでの連続攻撃、そして弾き飛ばす強力な一打。
「…」
しかし相手が重く…弾き飛ばされるのはこちら側。
「やりますね…」
槍での連続攻撃をあずさも行う。
「ぶももも!!」
体を震わせ…
「もーーーーーー!!」
ザグナルは体に蓄えた電流を魔法として放った。『サンダー』だ。
「あうっ…」
美希にダメージ。
-
「…ザグナルはこちらから見ると弱っているように見えます
この一撃で決まるかもしれませんよ!!」
あずさはもう一度飛び上がる。
「それじゃターゲット変更なの!!」
ザグナルの背を斬りながら乗り、美希は地上からあずさを迎え撃つ。
「選手同士の対決ですか…殺しさえしなければそれもいいかもしれませんね!
今1位はあなた…2位は私!!ザグナルを倒せば点差をひっくり返すことは可能!」
「このまま逃げ切るもん!!」
上と下から、盗賊刀と槍とがぶつかりあう。
「う!!」
「く…」
激突。
あずさは弾き飛ばされ、民家の連歌壁に槍を突き刺し止まる。
美希はそのまま地上へ叩きつけられそうになったところを三回転し着地。
「…今なの!ザグナルにトド…」
「…あれ?」
「うっうー♪ごちそうさまでしたー!!」
そこには、ザグナルの頭蓋骨をばりぼりと食べる何者かが。
「…え?ポイントですかぁ? えっと、さっき3位でしたけどこれで…
えっ!?私一位なんですか!?よく解らないけど嬉しいですー!!」
「…」
「…」
あずさと美希は顔を見合わせる。
「ビビ、殿……ダメだったかー」
「美希ちゃん……」
真とドリルも頭を抱えていた。
「終了ーーーーーー!! 選手の皆さん、お疲れ様でした!!
優勝は『ク族の沼』からやってきたやよい選手! ザグナルをトドメを刺すどころか平らげてしまったぁ!!」
-
「…誰?」
「私も全選手を把握してるわけではないのよー」
城に戻り表彰式。
ク族の一族に育てられた少女やよいがハンターの称号と、トロフィー…
そして副賞として大量の食べ物を貰って帰っていった。
「うっうー!この大陸の皆さんって親切なんですね!
ありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀し、カエルを財布にした少女は思わずおおはしゃぎ。
「…落ち込むことないよ美希ちゃんも、ビビ君も」
「じゃあデートはしてくれるんだね?」
「……」
ドリルは何か、浮かない表情のまま黙っていた。
「…ドリル?」
「あ…何…?」
「デートだけど…」
「ダメっ!!」
「…おお、そうだ。狩猟祭も終わったこと『ブリ』だし、
これからパーティを行おうと思う『ブリ』。下の会議室で食べることにしようではないか『ブリ』」
下の会議室のテーブルには山盛りの料理。
「いっただっきまーすなの!」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす!!」
「それじゃ召し上がりましょうか」
「うっうー!」
肉に野菜、魚にパスタにデザートのフルーツにゼリーにプリンにイチゴババロアにキャラメルマキアート、
そしておにぎり。
沢山の食べ物を食べたり注文したりしながら、とにかく飲んで食べて騒いだ。
「皆さん、私からはお茶を振舞わせていただきます」
「おお、霧の大陸に轟く雪歩君のお茶か!!飲まない手はないな」
雪歩のお茶はおいしいと有名。おかげでアレクサンドリアは春香女王とあわせ
お菓子とお茶の国になってしまった。
「あふぅ…何か眠くなってきちゃった…」
よく眠る美希はいつもの通り一番手で眠る。
「大丈夫?美希ちゃん…」
「何か私も眠くなってきたよ…あふぅ『ブリ』」
「高木王が真似しても気持ち悪いの……Zzz…」
「私も眠くなってきてしまいましたー…」
「おやすみなさーい…」
「ボクも…何だか眠くなっちゃった…」
-
…後に残ったのは雪歩と真のみ。
「うわー、みんなだらしないなー…それでは、ボクも失礼して…」
「飲んだら寝ちゃうよ真ちゃん!!」
「!?」
緑茶を喉に詰まらせる真。
「まさか、姫様…」
「うん。皆には寝てもらったの」
「…一体何を…」
「…表彰式の前ね、高木王は黙っていたんだけど…
兵士の人達が話しているの聞いてしまったの」
「…聞いたって…何をです」
「…姉様が、アレクサンドリア軍がブルメシアに侵攻したらしいの」
「…春香様が!?」
「千早ちゃんの軍隊だけじゃなく、あの黒魔道士たちも一緒にいるみたい
私を狙うなら、リンドブルムに来るはず。
…けど、狙ったのはブルメシア。……姉様は、霧の大陸を支配するつもりなのかもしれない」
「…まさか、春香様がそのようなことを…」
「ブルメシアの兵士が城の前で血まみれで倒れてた、って言ってたもの…もう、認めるしかないよ」
「では、姫様は…」
「姉様を止めるんです!私達で… アレクサンドリアに戻りましょう
今まで、ありがとうビビ君 …美希ちゃん。」
「お、お待ちください姫様ーーーー!!」
全員が目を覚ましたとき…すでに二人の姿はなかった。
「…美希ちゃん、起きなさい…いつまで寝ているの…?」
「あふぅ…あ、あずさ…
…!!! …ドリルは…まこっさんは?」
「…部下から、話を聞いている。…これから、君達に話そうと思う」
高木王の、重い虫の口から…言葉が発せられる。
「……アレクサンドリアとブルメシアの戦争…」
あずさは眉を寄せ、拳を握る。
「いずれ我がリンドブルムにも飛び火するだろう『ブリ』…
…こちらからアレクサンドリアを攻撃するような真似は出来ない『ブリ』
我らに出来ることはブルメシアの援護だけ『ブリ』。」
「…狩猟祭優勝者に行ってもらいたいと思っていたが
やよい君はもう行ってしまったようだ『ブリ』」
「ならミキに頼めばいいの!ミキが今大会の事実上の優勝者だもん!!
…ドリルを危険な目に遭わせたくないの!」
テーブルを叩く美希の目は真っ直ぐ。
…すると高木王はテーブルに、霧の大陸の地図を広げる。
「…うむ。そう言ってくれると思っていた『ブリ』よ
君達には、危険だろうがブルメシアへ向かってもらいたい『ブリ』。
アレクサンドリアの…春香君の暴走を止めてくれ『ブリ』」
リンドブルムから広がる大平原…その先に山。
「うんっ!絶対にドリルを取り返して、ドリルの悩みの種も解消して、誰も死なせないの!」
「簡単に言うわねー美希ちゃんも…」
そしてその山の向こうに広大な砂漠…そして、ブルメシア。
「ボクも止めたい。黒魔道士の人達は、喋れなくて大人しいのに戦争に利用されてるなんて、
可哀想だよ!」
「…こんな姿でも私は国の主だ『ブリ』。国に残らなければならない
君達、ブルメシアを頼むよ!」
「はいなの!!」
高木王から、美希本人への、国家レベルの大きな依頼。
美希はオーガニクスを振り回し…
颯爽と昇降機に乗るのだった。
-
「いいかね、この国の門は3箇所…カーゴシップで君達が潜ってきた『天竜の門』
主に船が往来する『水龍の門』とあるが、君達が行くのはその水龍の門の反対側、
『地龍の門』だ! 頑張って行って来てくれたまえよ!!」
「絶対、止めてきます!」
ビビの決意も固い。
「ブルメシアをアレクサンドリアの好きにはさせません」
あずさも闘志を燃やす。
昇降機で最下層へ。そこから、移動用トロッコで線路を進み地龍の門へ。
「…この先が……!」
大きな扉を開け放ち、ブルメシアへの道…広大な平野へ。
「…ドリル、待っててね!」
平原を進む。
「チョコボがあると便利なのだけど…」
「チョコボを使おうとするとちょっと遠回りになるよ それなら少しでも早く、ブルメシアへ!」
途中、やよいがいたというク族の沼を発見するがやよいの姿は見当たらず。
3人は平原を真っ直ぐに真っ直ぐに何日も進み……
「…お、大きな山だね……」
「洞窟の結界が、破られています…!」
「え?」
近づくと、血まみれで倒れているのは鎧を纏ったネズミ族…ブルメシア兵だ。
「…しっかり!」
「あずささんか…戻って、きてくれたんですね…」
「今手当てします、じっとしていて!」
「もう、遅いです… 三角帽子の一団が…この奥に…。
……これ、を………」
あずさは、倒れた兵からベルを渡される。
小さく、青い色をしたそのベルは…
「それ、何なの…」
「『ギザマルークのベル』 この洞窟の最深部にいらっしゃる
ブルメシアの守り神『ギザマルーク』様のところへと導くベルよ
…ギザマルーク様が危ない。…先へ進まないと」
-
ブルメシアの聖なる洞窟、『ギザマルークの洞窟』
青いギザマルークのベルを鳴らし、鐘つきの扉を共鳴させ開けた先には
アレクサンドリアの放った虫がすでにいた。
「その大きな羽虫は『スティンギー』
羽音でモンスターを暴走させる力を持ってますから、気をつけなさい!」
あずさが槍を厚い皮膚に突き刺し、貫通。
「この骸骨はどっち側だ!?」
「『スケルトン』はギザマルーク様を守護するため、ブルメシアに仕えてくださったヒト族の僧兵…
死して尚守護してくださっている方です。…恐らく、アレクサンドリアの黒魔道士が魔法で…」
「…ごめん、悩んでる暇ない!!」
美希はオーガニクスでスケルトンを岩壁へ叩き付ける。
「? どこかで見た顔デスねー」
「? そうですカー 気のせいだと思いますケド」
ある程度進んだ所で、複雑に立体交差した洞窟の、橋のようになった上階から見下ろす二人の小人が現れた。
黒魔道士を従えた二人は、黒のワルツを差し向けた、ののとワー。
「…アレクサンドリアの魔術士…!?」
「何か見たことある気がするの」
「まぁ、気にすることはないデス ヴァイ!!」
片手を振り上げたことを合図に、2人の黒魔道士が落下。
「わっほい!」
女王から刷り込まれたワードを掛け声に、戦闘態勢に入る。
「…黒魔道士が相手…戦える?ビビ」
「……」
黒魔道士は容赦なくファイアとブリザドを唱え始める。
ファイアは美希へ
「熱い…!」
ブリザドはあずさへ。
「冷たいわね」
「悪いけど、私には悩んでいる暇はないんです。殺させてもらいますよ!」
あずさは前進、槍を前へ突き出し黒魔道士の体を貫通。
そのまま横へなぎ払い、隣の黒魔道士を壁へぶつける。
「わっほい」
黒魔道士はサンダーを放つ。
「あ…!!」
ビビの頭に雷が落下。
「ごめん、ビビ!!」
美希は壁にめり込みながら次の魔法を撃とうとしている黒魔道士をオーガニクスで斬り、
2人の黒魔道士との戦闘を終わらせる。
「…」
ビビは、2人の死体を見て黙ったまま。
-
だが敵はどんどん現れる。
「…ビビちゃんにはここらに残ってもらうしかないわね」
現れたスケルトンの頭蓋を砕き
「それって、お荷物ってこと!?それ酷いよあずさ。」
スティンギーの羽をオーガニクスで斬り落とし
「ビビだって黒魔道士以外が相手なら戦えるもん!」
黒魔道士の胴をオーガニクスで真っ二つに。
「…それなら聞くわ。どうして黒魔道士なら戦えないの?」
スティンギーへ槍を投げ、落とし引き抜く。
「…それくらいわかってよ!自分と同じ形をしていて、操られてるんだよ!?ビビは戦うの辛いと思うよ!」
スティンギー3体へオーガニクスを投げ、散らす。
「ここにいるスケルトンも操られたモンスターだし、それならもし操られたブルメシア兵と戦うことになった時
ビビちゃんはブルメシア兵は殺せるわけね?」
スケルトンへ向け、槍に刺さったスティンギーを振り払い、投げてぶつける。
「…それは」
美希も黙る。
「命は命で…敵は敵です。操られていても、それがどんな形をしていても」
そんな美希の背後に飛んできたスティンギーを槍で串刺しに。
「……でも、ビビは子供だよ!?」
「そう、子供ね。戦場はそんな子供が来るところじゃないわ。引き返すこと
あなたにそんな辛い戦いは無理でしょうからね…」
「次にモーグリがいたら結界でも張ってもらって、そこに避難させましょう」
黒魔道士3体に対し素早い動作で突く、引くを繰り返す。
「これでも大甘の措置だと思いますよ?戦場ではね」
だが4体目があずさの真上に降り、両拳を合わせあずさの頭に振り下ろしてきた。
「!」
ファイア。
「……ううん、ボクも…戦うよ。 …ごめんね、あずさ姉ちゃん」
黒魔道士のローブが焼け…苦しみ悶えながら最期を迎える。
「…ビビちゃん」
「一番今するべきことは、みんなを助けるためブルメシアへ向かうことだよね
…ボクもやれるだけやってみるよ」
「やれるだけやる、ではなく…やることです。いいわね」
…あずさは先へと進む。
「…いこ…?ビビ」
「…うん!」
奥で通路を横切っていたのは、赤い髪をした蛇の下半身を持つ、扇子と剣を持った可愛らしい女性。
「…あれは『ラミア』 ギザマルーク様を守護する巫女!! …彼女達も操られていたようですね」
「なかなかキレイだけど……」
「そう言っていられるのは戦闘前だけよ美希ちゃん!!」
「!!」
顔が美希たちを向き、真っ赤な瞳が美希たちを見据えると…
「来ますよ!!」
-
魔法を唱える。
すると、ラミアの体がみるみる内に巨大化…
光と共に蛇のような形をした面と鎧をつけ…まさに全身蛇のモンスターのようになってしまった。
「わぁ!?お約束破り!!」
「そんなお約束は知りません、おばさんだったこともあるんだから若いだけまだマシ!!」
「期待していたのにいいいいいいいいいい!!」
ラミアを美希は怒りの一撃。
ラミアは攻撃魔法『フェイス』を発動。
「その魔法は…?」
「『フェイス』は攻撃力を上げる魔法!これを使われたから、剣を使われると危険だよ!!」
ビビがブリザドでラミアを攻撃。
「ギザマルーク様を汚す者に死を!!」
「うわぁあっ!!」
ラミアが突進…魔力の込められたナイフを美希に突き刺す。
「う…」
「こうして非力なラミアは巨大化して攻撃力を倍化し、フェイスで更に上げて敵を倒すのです。
美希ちゃんが引いた動作をしなければ、無害な誘惑で済んでいたかもしれないわ」
ジャンプし、頭上から首へ向かい槍を突き刺し、ラミアを撃破。
「ああ。貴重なお色気モンスターが」
「もう…あなたこそ置いていきましょうか…」
「クポー…出れなくなっちゃったクポー」
「あなたー!!あなたーーー!!まぁ、どうすればいいのかしら」
……途中、鐘にはまっているモーグリの夫と、困り果てた妻がいたため、
ビビのクポの実を近づけて見ると…
「クポ!?…その匂いは、クポの実…?食べたい…食べたいクポーーー!!」
鐘を超パワーで跳ね除ける…自力で困難を突破。
自分達の住処に戻っていってしまった。
「…あ。さっきはありがとうございましたー
ウチの主人ったらドジでー… …あ。この先に行かれるのですか?」
「そうなの」
「それなら、これをお持ちください」
渡されたのは白い鐘。
「これは『ホーリーベル』 ギザマルーク様の居場所を開くための鍵です、どうぞお持ちください」
「ありがとうなの!!」
真っ白な鐘を鳴らし、またも鐘のついた扉を開けると…そこは、一本道の脇の壁から池に向かい流れ出す滝。
「…何か、嫌な予感がするな……」
「…た、大変だ!!ギザマルーク様が…!!」
黒魔道士3人が3混乱魔法『コンフュ』を唱えると……
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
巨大な翼を持った蛇のような…部屋を覆う巨大な巨大なモンスターが。
「まさか…これが『ギザマルーク』様!?」
「つ、強そう…」
「…おいたわしい」
戦闘が始まる。
-
「この場所から想像できる通り、ギザマルーク様は
水の力を用いることに長けているの 気をつけて、美希ちゃん、ビビちゃん!」
「うん!」
「はいなの」
あずさは最初に飛び上がる。
「行くの!!」
オーガニクスを投げ、ギザマルークの腹に一筋の傷を。
キャッチし、そのまま飛びあがりスイフトアタック。
「はぁぁぁ…」
次々に攻撃を浴びせるが…
「キシャォオオオオオ!!」
ギザマルークは尾を振り回し、美希を吹き飛ばす。
「きゃあ!!」
「『サンダー』!!」
ビビがサンダーを唱え、あずさの槍と同時に雷をギザマルークの頭に突き刺す。
「シュウウウウウ!」
ギザマルークは魔法を唱える。
「…『ウォータ』よ!!」
魔力を含んだ巨大な水の塊が落下…
薄い薄い、水の刃となって弾け、全員の体を切り裂く。
「うぁぁ…!!!」
「…………!!」
ギザマルークが口を開けると大気が振動し…
「!」
何も聞こえなくなる。
「…」
人間の耳では聞こえない超音波。
これにより、聴覚と喉を攻撃、聞かせた相手の口を封じ魔法を唱えさせることが出来なくなる。
「……」
ビビはこれで戦えなくなる。
「………!!」
ギザマルークの攻撃は続く。
ウォータが再び3人を襲う。
美希はそれに耐え、ビビにポーションを投げられながらギザマルークの尾に向かいオーガニクスを振り下ろす。
あずさは再び飛び上がり…槍を突き刺す。
「…もう少し!!」
ビビが沈黙を治すやまびこ草を使用。
ギザマルークに魔法を唱える。
「サンダー!!」
頭上に雷。
「!」
そしてあずさが槍をギザマルークの胸部に刺した時…
「キシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ブルメシアの守護神は泡となって消滅。
ブルメシア地域への扉は開かれたのだった。
「…やっと耳と喉が治ったね」
「ブルメシアは砂漠を横断した先。半日で着きます 行きますよ」
洞窟を抜けた先は霧のない砂漠地帯。盗賊と戦いながら歩み続けると…豪雨。
「…ブルメシアは今日は雨のようね」
大きな大きな門が見えてきた。
…曇り空の元、雨の降りしきる、ネズミ族の青の都ブルメシア。
「…みんな、死んでる……」
踏み荒らされた草花、崩れ落ちた家々。
「……アレクサンドリア…!!!」
-
体を切断されたもの、体を焼かれたもの、氷の塊で頭を潰されたもの、
全身を雷で内部からボロボロにされたもの…
様々な死体が存在する。
「…女兵の姿が見えないね」
「不謹慎な言葉は慎みなさい、美希ちゃん。」
「そうじゃないよ。
…見てきたけど、アレクサンドリアは大多数が女性兵で構成された珍しい国だよ
一般兵が全くいないなんて、何かおかしいよ」
黒魔道士が彼女らを察知しそこかしこから現れる。
「わっほ」
「サンダー!!」
先手を打ち、広範囲化したサンダーで黒魔道士を倒すビビ。
「きへへへへへ…!!」
トカゲのような亜人盗賊・マジックヴァイスも現れる。
「…盗賊!?この事態の中、盗みを働こうというの」
「違うよあずさ…これはアレクサンドリアが雇ってるんだよ!
ダリに似たようなモンスターがいたよ」
ポーションを盗もうとするマジックヴァイスをオーガニクスで一撃。
「ギュルルルル」
続いて現れるのは大きなトカゲのモンスター、『バジリスク』
「アレクサンドリアが放ったものね…」
敵を見据えたときには、すでにあずさの足元は変化していた。
「!?」
「石化だよ!! …早く倒さないと!」
バジリスク自体を倒さなければ術は解けない。
ビビがブリザドを唱え、バジリスクを倒す。
「…一通り倒したけど…まだまだいるよ」
「大人しくアイテムを置いていきな…」
民家の窓から。
「ブルメシア兵にも活きのいいのがいたもんだ」
路地裏から。
「アレクサンドリアの裏切り者がこんなところにいるとはね」
噴水の影から。
マジックヴァイスたちが現れ、黒魔道士を呼び寄せ美希たちの周囲を取り囲む。
「…ビビの魔法でも全員は倒せないね…」
「俺達は魔法を封じるために雇われたのさ やっちまえ!!」
マジックヴァイスが魔法を唱えると、ビビの頭上に巨大なハンマーが。
「逃げてビビちゃん!」
「わ…」
ハンマーから逃げるが…
もう一つ現れたハンマーがビビに当たる。
「……う…」
痛くはないが…魔力を吸い取られる。
「『マジックハンマー』! あれに当たると魔力を吸われるよ、『とんずら』するよ!!」
美希は爆薬を撒き散らし、強行突破。
民家の中へ進む。
「あ。宝箱!」
しかし…
「ケタケタケタケタ!!」
宝箱が突然、ガバッと口を開け襲ってきた。
「ミミック…アレクサンドリアは略奪した上にこんなものを!」
ミミックの口に槍を突き刺し、窓から投げ捨てて撃退。
-
「細かいところまで随分ないやがらせね…」
窓から投げられたミミックを目にした黒魔道士が扉を焼き、中へ入ってきた。
「こっち行こう!!」
階段を登り…崩れ落ちた床を飛び階段を登り上の階へ。
寝室から窓へ向かい、バルコニーを渡って隣の窓へ。
別の家屋の寝室で…子供を匿う母親を発見。
「お、お願いです、この子だけは……」
「大丈夫ですよ、私はブルメシアを救うためにやってきた者です。」
「! あずささん…お帰りになられていたのですね」
「…敵将は一体どこへ」
「アレクサンドリア軍は王宮に到達しています。
…この国はどうなってしまうのでしょうか…」
「みんなが死んだわけではないでしょう
ここで私達が敵を追い返せば、まだ希望はあります」
「…これが夫から預かった王宮への鍵です。どうか…ブルメシアを…!」
淡い黄色のベル、『プロテガベル』を渡される。
そして、美希は女性に聞いて見る。
「…ねぇ。可愛い女の子とか、鎧をつけた男の子がここを通らなかった?
……じゃなかったら、捕まったっていう噂聞かなかった?ヒト族の!」
ドリルと真のことを。
「……いえ、アレクサンドリア以外に国外から出入りしたヒト族は
恐らくあなた方だけではないかと…」
「…そう。 …ここにいないってことは…」
「迷子かしら」
「あずさじゃないんだから。 …何処に行ったんだろう、ドリルに真…」
「ねえ美希姉ちゃん。戦争を止めるために、戦地へ行くのも考えられるけど
真さんなら、アレクサンドリアに戻ることも考えられるんじゃないかなぁ
その方が多分安全でしょ?」
ビビが一言。
「……!!」
「悪いけどもう引き返せないわ。このまま、私達はブルメシアで戦争を止めることを考えましょう」
「…無事だよね。あの二人なら…」
プロテガベルを鳴らし、王宮敷地内へ。
「…今度は嫌味でも何でもなく。
ビビちゃん、この先に行ったらあなた、命を落とすことになるかもしれないのよ
…私達が死んで、辛いことになるかもしれない。…あなた、ついてこれる…?」
「…ボクは、見過ごすことは出来ないよ。…お願い、あずさ姉ちゃん、美希姉ちゃん」
「………あずさ。…行こう。この先に…」
「…そうね」
階段を登り、広場へ。
その中の建物の一つへ向かうと…
「…! 危ない!!」
避難していた兵士と、身重のその妻が、崩れ落ちる、建物の上から下までを覆う巨大石像の下敷きになろうとしていた。
「……はぁっ!!」
美希は両手で担ぎ、二人とも助けることに成功。
「大丈夫?二人とも」
「あ。あずささん…!ありがとうございます…」
「あなた達は何としてでも生き延びて。おなかの中の子供を殺しちゃダメ…
おなかの中の子供のお父さんやお母さんがいなくなるのもダメ…」
「…はい…何とお礼を申し上げればいいか…」
反対側の建物は武器庫。
「これは使えるかしら」
強力な槍、『ミスリルスピア』を手に入れる。
「こんにちはー…って…何ですか、この惨状」
…謎のモーグリが現れる。
アホ毛が2本立っているリュックサックを背負ったモーグリ。
「あなたは…?」
「私は愛!!旅をしているモーグリです!何があったんだか私には解んないけど…
アイテムのセット販売をしてるんです!何か買いませんか!」
金の針、ハイポーション、エーテルを購入。
「毎度っ!!」
謎のモーグリ、愛はご機嫌な様子でまたどこかへ旅立っていった。
モーグリはどこか、人間社会とは密接なようでいて、かけ離れたところにいるような気がする。
「……これで、戦闘の準備は整ったね」
「万全と言えるものがあるのか解らないけど…いよいよ王城内部よ。準備はいい…?」
「………うん!」
「うん!」
-
広場から階段を登り王城入口へ。
…しかし、崩れた柱で入口がふさがれている。
「………王、無事でいてください!!」
あずさはジャンプ。2人を置いて先へ進んでしまう。
「…登れそうだね ビビは裏から回ってみて」
「えぇ!?…ボクじゃ無理だよ」
「やれば出来るって!」
美希は石像を登り、王城内部へ。
「…」
「……誰かいるよ」
柱の影に隠れる。
天井の崩れた王の間…その中で扇を仰ぐは赤いドレスを着たリボンの少女。
そしてその隣に青い髪の剣を携えた女性。
「あれは……………アレクサンドリア女王春香…!!」
「うん、見たことある…その隣の巨乳は誰?」
「…」
「…ブルメシアも、大したことはありませんでしたね春香様
ブルメシアには大層な実力者がいると聞いていたのに…
まぁ、何でも、いいですけど。」
「まさかここまでうまく行くとはね…」
奥からもう一人、長身の女性が現れる。
「………それにしても心地の良い雨ですね、春香様。
まるで私達の勝利を祝福しているかのよう。」
「ふふ。あなたが提供してくれた黒魔道士のおかげで
これほどまでに勝利できたんだよ。いやぁ、ありがとね ……さん
で?王達は一体どこに逃げたの」
「…どうやら、舞踊る砂の中の模様です…正に鼠そのもの。」
「舞い踊る砂…『クレイラ』?…厄介ねー」
「ダメなの、クレイラって町に王が行ったこと以外解らないよ…誰なの、あれ」
「あの青い髪の人は…確か。」
あずさは思い出していた。…過去のことを。
あずさと同じデザインの、色違い…薄黄色の鎧をつけた男性と、まだ10代の少女であった頃のあずさ。
「…どうしても、行ってしまわれるのですか」
「ああ。すまないあずささん。
…俺は、この国を守る力としてはまだ不十分だ。強くなって帰って来るよ」
「では私もご一緒に…!」
「……あなたには、この国を守って欲しいんです
…長い旅になるかもしれないけど」
「………あなたがいればこの国は必ず守れます!!ですから」
「いや。まだ無理ですよあずささん。
………世界には、まだ強い人が沢山いるんですよ。
例えばそう アレクサンドリアの女将軍『如月千早』」
「…聞いているわ。恐るべき力を持つ、アレクサンドリアの将軍…泣く子も黙る冷血女。
『七千二百人斬りの如月千早』」
「………あれが…!?」
「忘れもしません。別れの時の言葉ですから。
私に千早のことを教えてくれたのは…あの人。
…もし、こんなときに…あの人がいてくれたら…」
「…フラットレイ様…」
その時だった。
「フラットとか言ったのは誰!?」
凄まじい衝撃波が美希たちめがけ飛び…大人が両腕を伸ばしたような太さの柱を木っ端微塵に、4本まとめて破壊した。
目を細め、春香は笑みを浮かべる。
「………へぇ、まだ生き残っていたの」
傍らに現れた3人目の女性も。
「鼠はやはり隅に隠れるもの…」
長い長い銀の髪、長身の体、露出の激しい派手なドレス。
「フフ…それは流石に酷いと思うよー?『貴音』ちゃん」
-
ばれてしまっては仕方がない。
王の間へ、2人は駆けてゆく。
「このアレクサンドリアの将軍千早を前にあのような暴言を吐けた度胸は褒めてあげるわ。」
いつの間にか裏から回ったビビも合流。
千早は余裕の表情を崩さない。
「けど、あなた達程度の力では私を倒すことは出来ない」
「やってみなきゃわからないの!!」
「私はあなた達を許せません!!」
「やってみれば解ることです。さぁ、かかって来なさい」
降りしきる雨の中、世界有数の実力者…千早との戦闘が始まる。
「はぁぁああああ!!」
あずさはジャンプ。
「ファイア!!」
ビビは千早に向かい魔法を放つが…
「…」
全く効果をなさず。
「ふんっ!!」
素早い動きで背後に回り、千早に『ランブルラッシュ』。
しかし…
「全く」
剣を背に回し、微動だにせずに美希のオーガニクスを受け止め…
「これだから困るわ」
振り向き美希を突き刺し…
降って来たあずさの槍を払いのけ、続いて降って来たあずさを串刺しにした美希もろとも振り払う。
「う…」
千早は追撃。
倒れたあずさの喉を斬り
「……!!!」
倒す。
「美希姉ちゃん!!」
フェニックスの尾で美希を回復させるが
「…」
起き上がることすら出来ず美希の胸を一閃。
血しぶきをあげて美希は倒れた。
続いてフェニックスの尾であずさを起き上がらせ、
あずさもまたハイポーションで回復するが…
「『雷鳴剣』!」
千早があずさに近づき、斬ると
空から3号のサンダラに相当する巨大な…それも鋭い針のような雷が突き刺さり、
辺りは大爆発…あずさはそのまま倒れる。
「……あ、ああ…」
「そこまでよ…」
千早は続いて剣に力を込めると…
「えい…!!!」
「秘剣『ショック』」
剣から発した衝撃波で床に巨大な穴が開くほどの衝撃が発せられ、
ビビの体は王城の壁に激突…城の壁を完全に木っ端微塵に破壊してしまう。
-
「……はぁ、ああ……」
美希はビビが倒れ際に投げたフェニックスの尾で立ち上がる。
「……あずさ!!」
フェニックスの尾であずさを蘇らせるが…
「はっ!!!」
千早の剣がかすり腕から激しい出血。
それでも死には至らずに済む。
「………!!」
「わざと避けさせたけど…何もしないの?」
そのまま払い、美希の体を一刀両断。
「ビビちゃん…!!」
最早持ちこたえるしかない。リレーのように、またあずさも走り、ビビにフェニックスの尾を投げるが…
「追いつけないとでも思いましたか」
千早はまたも『ショック』を使用。
あずさをブルメシアの空高くへ打ち上げてしまう。
「………」
倒れてからまだほどない。フェニックスの尾で美希を回復…
「…」
千早が黙っている隙に倒すしかない。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
トランス。
「『フリーエナジー』!!」
謎の文字と共に千早の体を大きな爆発が襲う。
「『タイダルフレイム』!!」
対3号時より更に強化された技。
床が盛り上がり、炎の津波があたりを包み込み、襲う。
「『スクープアウト』!」
更なる力。
どこからか現れたビットが千早を取り囲み、レーザーを一斉照射。
「………」
…千早はそれでも、少しも表情も変えていない。
「………」
力を使い果たし、トランスが解除される。
「ま、まだ!!!」
オーガニクスで千早を斬るが…
「…」
全く効果はなし。
「…私に刃を向けたことを、後悔することね!!」
千早が飛び…必殺の一撃を見舞う。
『ストックブレイク』。
ブルメシアの王城が横から上から、一気に崩壊。
柱が崩れ、壁が吹き飛び街に飛散。
床は大きな穴を開け跡形もなく消滅。
全滅。
-
「…うわー、いつ見ても千早ちゃんの剣は怖いよ」
春香は後ろで扇を仰いでいた。
「…でもちょっとやりすぎかな。
千早ちゃん、話したいことがあるから『レイズ』かけてやって」
「はい」
美希にレイズをかけ…回復。
「はぁああああああ!!」
美希は千早に詰め寄る。
「ねえそこの子。ちょっと聞きたいんだけどさ」
もう戦いなど成り立っては居ない。
だが美希は何も言わずにオーガニクスを千早にぶつけ続ける。渾身の力で。
「…」
しかし1発、2発、3発と振るうが全く千早には当たらず。
「あなた、確か雪歩を誘拐した子達よね?リーダーは律子さんって言ったっけ」
オーガニクスを投げ、春香を狙うが千早に打ち落とされ、そこから流れるように千早の剣で脚を切られる。
「雪歩をどこにやったか教えてくれないかな?
今言えば命だけは助けてあげるけど」
「知らない!!」
「きゃあああああああ!!」
千早は剣で美希の胴を一刀両断。
すぐさま斬られた足ともどもレイズで蘇らせる。
「…本当に知らない?」
「知らない!!ミキ達だって見てないもん!まこっさんと一緒にどこかに行ったんだよ
この戦争を…春香を止めに!!」
また攻撃を繰り返すが千早に避けられる。
「………真も一緒のようですね」
「…それは本当?」
「…嘘をつくように見える?」
千早は美希の両手持ちのオーガニクスを片手で受け止め…
「いかがいたしましょう」
「その言葉に偽りはなさそうですよ、如月千早
彼女の言葉が本当なら、ここで会っていないとなるとアレクサンドリアでしょう
クレイラ侵略は千早将軍に任せ、春香陛下はアレクサンドリアであの娘をお待ちになられては」
「そうね…」
「それじゃあの子を待ちましょうか。千早ちゃん」
千早は美希の体を一刺し。その場に投げ捨てる。
薄れ行く意識の中で、美希は聞く。
「それじゃ、雪歩を待ちましょう
…戻ったらののとワーに任せて、『銀のペンダント』を取り返して
『召喚獣の取り出し』を行うのよ、あの子の体から。
千早ちゃんはさっき言ったとおりクレイラに行き『宝珠』…4国の『クリスタル』の1つを手に入れること」
「…クリスタル…? …ドリルの体に、召喚獣?」
春香と千早はそのまま、どこかへ去っていった。
「…晴れましたね」
残ったのは貴音。
「……フフ…」
倒れる美希を見下ろすと…
ビビに目をやる。
指を鳴らすと、巨大な影がブルメシア城跡に現れ…地に降りる。
白銀の龍。
「………このお芝居の中での、誠に楽しい余興になりそうです」
そのまま、貴音は銀の龍にまたがると…
翼を大きくはためかせ、巻き起こる風。
跳ねた雨水があずさにかかる中…
貴音は悠々と、銀の龍にまたがり、雨上がりの夕空へ飛び去っていったのだった。
-
草木生い茂る山間に築かれた二つの門
一つは彼女達がカーゴシップで強行突破してきた、今尚煙をあげる空の門
もう一つは、これから彼女らが行く山道の門。
時間を少し遡り、ここは国境の南ゲート。
「待たれよ、その荷物の中身は何だ」
大きな布袋を背負った真は門番の前へ。
「…妙な匂いがするぞ」
「ああ。リンドブルム土産の、ギサールの野菜ピクルスですよ
強烈な匂いだけどボクこれが大好きで。…本当ですよ?見てみます?」
「い、いや…いい…通っていいぞ 俺、これだけは食えないんだ…」
「おいしいのにー」
けらけらと笑い、門を通る真。
これより先はアレクサンドリア領。
人目につかぬ場所を探し…もぐりこむ。
「ここなら平気ですよー」
個室シャワールームの中に布袋を下ろすと…
袋に手をかける。
そう、袋の中身はピクルスだけではない。
見つかれば大事の、雪歩王女…ドリルも入っていたのだ。
「さて。それじゃ袋から今お出ししま」
「いや、自分で出られるから!扉閉めてね!」
「え、えええ…いやそんなボクは…はぁ、解りました」
服をシャワーの上にかけ、扉を閉める。
「…ねえ姫様、最近ボクの扱い悪くありません?」
袋から出てピクルスまみれの体を洗い流す雪歩。
「お着替えの時もいっつも千早が担当じゃないですかー
信頼されてないのか男と思われてるのか…
…いえ。言いすぎでしたね」
そんなこんな言っている間に、雪歩のシャワーが終了、服を着て扉から出てくる。
「ううん、ごめんね真ちゃん。
えと、次は列車だっけ?」
「はい。列車を使って山を越えます。
山頂駅で一度乗り換えることとなりますよ
その後はダリと『トレノ』の分岐点に差し掛かるんでトレノ側に。」
「うん。解った」
列車に乗り、目指すは山頂駅。
「…………」
座席に座り、窓にもたれかかりすーすーと眠るドリル。
「そろそろ山頂駅に到着のようですよ?姫様ー…」
しかしドリルは眠ったまま。
「……春香様が戦争なんてするはずないのになぁ…」
「けどそうなるとブルメシア兵の話は……
そういえば黒のワルツっていうヤツは我が国を騙ってたな…
…アイツらみたいなのがブルメシアを攻撃してるとか、そんな所か。
どの道…姫様がアレクサンドリアで春香様にお会いになれれば解ることだよね…」
真は思索を巡らせる。…結局、春香のことを全く疑いもせず。
「まもなくー山頂駅ー、山頂駅ー!」
一行は山頂駅へ到着するのだった。
「……ふぇ?」
きれいに整備されたお洒落な駅。
石作りの床の待合室で、ドリルが発見したのは…
「!?」
ウサギの亜人。そう、あの演劇でマーカスを主演したうさちゃんと…
涼だ。
「あ、お姫様」
「お久しぶりですね、うささんに……涼君でしたっけ」
「どうしてバレてるんだろう…」
「あーーーっ、お前達ー!!」
-
「お久しぶりです、実は僕達タンタラスはあの後、魔の森を抜けて…」
「性懲りもなく姫様を浚いにきたかああああ!!」
「真ちゃん!!やっと再会できた知人とくらい話させてよ…!」
真は引き下がらない。
「いやしかし、知人などとそのような!奴らは姫様を…」
「菊地真っ!!」
「ごめんなさい」
ドリル…いや、アレクサンドリア王女の一喝。真はしゅんとなってしまう。
「…ごめんなさい。
もしかして、魔の森で石になってしまわれた方を助けに?」
「そう!伊織ちゃんを助けるためにここにいるってわけなんです」
「通常の金の針では治らなかったそうですけど…
何か、方法が見つかったんですか?」
「アレクサンドリア行きー!アレクサンドリア行き列車がまもなく到着いたします!」
「…どうせだし。列車の中で話しませんか?」
列車のホームへ向かう。
「気をつけてねー!絶対トレノに行って伊織ちゃんを助けてあげてねー!」
涼と別れ、うさちゃんはドリル、真と共に列車へ。
「…うささんの目的もトレノなんですか?」
「ええ。伊織ちゃんを助けるために。
『白金の針』を手に入れるためなんですよ それがあれば、通常の金の針では治せない
伊織ちゃんの石化を治すことが出来る。
…で、今度はこちらから聞きたいんですけど、美希ちゃんは一体どちらへ?」
「…リンドブルムで別れて、私達だけで来ました」
「あー…随分あっさりしたもんだね。
誘拐の用が済んだらさよならって…」
「違う…!私は、美希ちゃん達に頼らずに自分達の力で…」
その時。
「!?」
列車が急ブレーキ…そして、停止。
「……何だ!?」
運転手の声が聞こえる。
「おーーーーい!そこにいたら危ないぞーーーー!!!」
「…どうしたんですか?」
「列車の前に、飛び出してきた人がいるんですよ、あぶないなぁ…」
「私、見てきます!」
ドリルが列車の外へ。
「お、お待ちを!」
「…」
真とうさちゃんも列車を降りる。
そして、線路の先で見たものは……
「…!!」
ボロボロになった、片方だけの青黒い羽。
引きずられた足。
折れた三角帽子。
「…黒のワルツ3号!?」
「…な、何ですかアレ」
ノイズ混じりの声で、三日月の杖をつきこちらへ向かってくる。
「ヒギュッ…にんム…おウじょ…ユウかイ」
…まだ彼は誘拐を諦めていなかった。
「……お、お前…!!」
「じゃマスルものワ……しょウキョ!」
-
黒のワルツ3号との2度目の戦闘。
「…哀れなヤツだ…!!」
走り、3号に向かい剣撃を見舞う真。
「ヒギュ…!!ふぁイあ!!」
まだ戦闘能力は残っているようだ。
3号はファイアで真に反撃。
「う…」
「ぶリザど!」
続いて杖の先から放つブリザドでうさちゃんを攻撃。
「うあぁあ…!!」
「……ぶ、ブ……『ぶレいズ』!!」
杖に魔力を集中させるとその杖を地に突き刺す。
すると…
「うわ…!!」
強烈な冷気が放たれ……
真を氷漬けにしてしまう。
「ヒぎゅ……!」
そしてそのまま杖で氷漬けになった真を攻撃。
「…!!」
氷を粉砕すると同時に、真はそのまま倒れてしまう。
「真ちゃん!!」
うさちゃんは次にブレイズが来る前にと攻撃。
「ギュオ…」
そして、3号の懐から赤い杖を盗む。
「…かエセ…!!」
杖で殴りかかってくるが、うさちゃんは防御。
「はぁぁああああ!!」
ドリルは手にしていたラケットで魔力を飛ばし、3号の動きを止める。
「グォオオオオオオオ!!!」
「今だ!!」
そこにうさちゃんは3号が持っていた杖を盗むことに成功。
「これを!!中にどんな魔法が込められているか解らないけど!」
修復しなければ十分な威力が出せそうにない杖でなく、
赤い杖を渡す。
「ううん!その杖のことは城の文献に載っていました!」
赤い杖を手にしたドリルは…
「『ファイラ』!!」
杖を3号へ向ける。
「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
3号の周囲に炎の嵐が吹き荒れ…
「オオオオオオオオ……オうジょ……だッかン…お…う…じョ…ニン…む……」
灼熱の火の中へと溶かしていったのだった。
「……どうして、そんなにまでして…」
「…ブルメシアを襲ったの、こんな感じの風貌の魔道士だったって聞くよ」
「一体どんなヤツがブルメシアを襲ったっていうんだ…!!」
「…本気で言ってるの!?」
「どういう意味だよ!」
「…やめて。…もう、解ってる。…解ってるから」
そして一行は列車の中へ。
うさちゃんは言葉を切り出す。
「……アレクサンドリアがブルメシアに侵攻していたこと、知ってたんだね」
「うん。…真ちゃんとは違うもん」
「…何だか、変わったね姫様」
「…それは私がかな?それとも…言葉遣い?」
「色々かなー」
「…そう。」
「変わったといえば、私少しは強くなったでしょ?
もう戦いでも足手まといにはならないから…白金の針、私にも探させて?
トレノに一緒に行こうよ!!」
「…仕方ないですね。」
そして3人は分岐でダリの反対側を選び…眠らない都、トレノへ。
-
「はいはい、何の御用でしょうセンパイ!」
魔の森で、モーグリ族との親交の証にと渡されていた笛を吹くと
地平線の彼方から走ってきたのは愛。
「これを美希ちゃんたちに届けてくれないかな」
3号から奪った、『炎の杖』と『雷の杖』を渡す。
「はーい!」
また地平線の彼方へ。全くもって謎のモーグリである。
彼女に届けてもらえばすぐにでもアレクサンドリアにいけるのでは?
…そんな疑問はともかく、一行は夜にトレノに到着する。
「ここが…トレノ」
ガシャリと重々しい扉が開かれた先は噴水の広場。
町の明かりが煌く、夜景の美しい町トレノ。
高級なスーツやドレスを身に纏った紳士淑女が
オークションやカードや買い物や食事を楽しむ華やかな貴族の町であるが…
一方では、貧しい人々が水際に追い込まれ、子供までもが盗みを働く貧民街が生まれる格差の街。
「ひとまず情報収集が必要だね お姫様も隊長さんも町を回ってみてください」
3人はそれぞれの場所に散っていく。
「……こ、この街は一体…」
「うぇっぷ、うぃっく…」
酔っ払いや…
「…あれ?お財布が…」
スリなどに会いながら…
「…この建物は何かな」
トレノで一際大きな建物…クイーン家の屋敷に入っていくと…
「50000ギル!」
「51000ギル!」
「52000ギル!」
「70000ギル!!」
「おお…70000ギル!どなたかおられませんか? ……おられませんね?
では、この商品60000ギルで落札とさせて頂きます!」
巨大な建物の中は広い広い…オークション会場だった。
「……」
辺りを見回すと煌びやかな服を纏った親子や、主人に内緒でといった様子の夫人など、
様々なトレノ中の貴族が集まり目当ての品を手に入れようと躍起になっていた。
「…………ここでは、情報は見つかりそうにないかな…」
出ようとしたその時。
ピチョン。
「?」
何かが床に落ちる音がしたが、気にせずにオークション会場、クイーン邸を後にする。
「………これにて、本日のオークションは終了とさせて頂きます!
ご来場の皆様、本日は誠に有難うございました!」
「…あら。何かしらこれ…血…!?」
「どなたかお怪我なされたのだろうかな」
客のいなくなったオークション会場で
クイーンと名乗る女性と、その執事と見られる男が会話していた。
「ブルメシアの方は…如何でしたかな」
「悪くないですよ、臭気を撒き散らすネズミどもと
あの没個性な春香さえ視界に入らなければ、ですが。 …私の美意識を今にも破壊しそうですよ…彼らは」
その正体は…春香女王や千早将軍と共にいた女性、貴音だった。
「次は砂ネズミ狩り…もう少しこのトレノで彼女らの臭いを落としたいところですが …ところで」
「はい」
「今日はとても可愛らしいお客様がお越しになられていましたね」
「……キング様。お気に召したご婦人の方がおられましたか」
「ええ、とても気に入りました
何せ追いかけていた小鳥が自分から飛び込んできたのですから」
うわまた始まったよ、という目で見られているとも知らず、貴音は自分の世界に入る。
「まさかこんなところであなたにお会いできるとは。
…今日ばかりはこの私も運命と言うものを信じようという気になってしまいました……」
両手を上げると鼻血がぽたり。
「でも、まだ今はまだ羽を休める時ではありません
あなたの帰るべき巣はここではない…あなたの母上がお待ちの家へお帰りなさい」
「そうしたら私も、優しく迎えてさしあげますよ…」
-
「!?」
何か物凄い百合の香りを感じた気がしながら、
ドリルがうさちゃん、真との待ち合わせ場所、酒場に戻ると情報収集を終えていた。
「お姫様ー、こっちこっち」
100000ギルの懸賞金をかけられた女の張り紙を見ていると背中に声。
「…トレノの店っていうのは相当なものみたいだよ どうやら、カードショップ近くの雑貨屋が非売品として白金の針を置いているだとか」
「それで、どうするんだ」
「いや、自分達で行きますんで兵士やお姫様は関わらない方が」
「? どういう…」
「直接交渉すれば済む話じゃないの?」
「おーいうさちゃん!白金の針を盗む用意できたわよーーー!!」
「…ぼ、ボス……」
トレノに先回りしていた律子がそこにいた。
「あ、やば」
ドリルや真がいたとは知らず青ざめる律子。
「……じゃ、じゃあそういうことで!」
「待って、ついてきたからには私も行くよ!」
「ええええ!?いやお姫様が盗みとか」
「ちょっと待てお前らあああああああああ!!」
酒場の裏口から桟橋へと走る4人。
「…いいの、お姫様がこんなことしちゃって」
眼鏡を直しながら、カヌーの前に。
「…ええ。律子さんたちが余計なものまで盗まないように見張らなくっちゃ!」
「…ボクも同行しよう お前達が姫様を悪の道へ引きずり込まないように監視するのがボクの役目だ」
「あー…もう勝手にして」
「全くお勤めご苦労なものねー… けど。 あなた、一体自分が何をしたいか…考えたことある?」
「当然だ!ボクは姫様をアレクサンドリアにお連れして…」
「…はぁ。美希達と一緒に行動して少しは変わるかと思ったけど、そうでもないみたいね
ボク、ボクと言いながら自分のないやつね」
「何!?」
「…まぁ、行こうよ……」
湖に面した雑貨屋裏口までの道のり。襲撃用カヌーの上で、真は考える。
「一体ボクは何やってんだ…盗賊に組するような真似して…」
「いや!耐えるんだ…姫様をアレクサンドリアにお連れすることがボクの任務だ
春香様が非道な真似なんてする筈が…何か理由がある。」
「…浅はかな自分などでは解らない、女王陛下の…お考えが。
そう、何も考えるな真。自分の任務は、姫様をお連れすること。女王陛下に従うことだ
…もう、アイツに…美希に会うこともないんだ。」
-
そして反対側でも思いを巡らす者。
「…美希ちゃんが悪いんだよ。私のこと子ども扱いするから…
…だから、今白金の針を探すなんてことを…」
「……何で、私こんなことしてるんだろ
…うん。助けてくれた伊織ちゃんを助けるのは当たり前だよね。 でも…」
「…さ、3人とも… ついたわよ。」
律子は待機。裏口から侵入…在庫の棚の中を探し回って見る。
「こんなところに白金の針なんてあるのかな」
律子は待機。がさごそと辺りを探る3人。
だが…
こつん、こつん、こつ、こつ、こつ…
「…! 誰か来たよ」
上階から階段を下りる足音。うさちゃんは隠れる。真も、ドリルも隠れる。
「………バレたらただ事じゃすまないよ」
「…あああ…ボクは一体何やってんだああああ…」
…そして、寝ぼけ眼の一人の女性が現れる。
「さっきの妙な寒気は一体何だったのかしらねー…
今日こそいい観測時だって言うのに。 えっと、インクインク…」
「!!!」
その女性の顔を見て、ドリルは飛び出した。
「!? な、何やってんのお姫様ーーー!」
「…ピヨ? あ!! …あなた、は…!!」
思わずしりもちをつく。
「まさか…雪歩ちゃ…雪歩様!!」
「お久しぶりです、音無先生!」
「えっ……小鳥さん!?」
真も。
「…あら、真ちゃんじゃない」
「…誰?」
「小鳥さんは、以前春香様と雪歩様の家庭教師をなさっていた、 それはそれは高名な学者さんなんだ!」
「いやぁーそれほどでもー… あ。けど静かにしてくださいね、お店の人達が目を覚ましちゃいますから
…けど、雪歩様、どうしてこんなところに?」
「話せば長くなるんですが…白金の針を探しているんです」
「白金の針…」
「…誰かいるのー!?」
今度はお店の人の声。
「…ここは一旦逃げて。この地図の塔が私の家になってます。
鍵を開けておきますので後ほどお越しくださいね」
とてとてと小鳥は階段を登っていった。
-
「で?うさちゃん。それで、その…カーカーって人が白金の針をくれるのね」
「ピヨちゃんです」
大急ぎで酒場に戻り、律子に報告。
「ピヨピヨだかチュンチュンだか知らないけど。
このタンタラスがお情けをかけられるとはねぇ」
「ま、いいや…つまり、お姫様のお守りはまだ終わってないってことね」
「…うん、そうなるね」
「じゃ、とにかくお姫様。白金の針のためにそのカッコウのところまで頼むわよ」
「ピヨちゃんです」
「…はい」
「ひとまず一休みしてから行きなさい そのポッポって人もそうすぐには準備出来ないでしょうし」
休憩の後、トレノの門近くにある巨大な塔…ピヨちゃん先生こと小鳥の家へ。
喜び勇み猛スピードで駆け上がり、塔の最上階へいち早く到達したのはドリル。
「おお、雪歩様。
すみませんね、こんなむさ苦しい所までご足労頂いて」
そこは、ごちゃごちゃと物が置かれた…
巨大な球体が支配する部屋。
「昔の喋り方でいいですよ、音無先生…
こちらにお住まいなんですか?」
「いいんですか?…えっと。それじゃお言葉に甘えまして。
ええ。アレクサンドリアを離れ、研究費用を出してくれる人を探して転々としてたのよ
で、行き着いた先はやっぱりというか何というか、この富豪の町トレノってわけね。」
「けど、可愛く育ったわねー雪歩ちゃん。
また会うことが出来て、先生嬉しいピヨ」
真も到着。
「小鳥さん!元気そうで何よりです!」
「あ。そういえばさっきは真ちゃんも一緒だったかしら」
「騎士としてあるまじき行為だったと、反省してます…」
「千早ちゃんもだけど、真面目な子よねー全く…止むに止まれぬ事情があったんでしょ?
あ。それより。白金の針は用意しておいたから、持ってっていいわよ」
「それじゃ頂きますね」
「この無礼者!お礼くらいきちっと言うんだ!」
「まぁまぁ真ちゃん。そんなことはどうでもいいから…」
そして、ドリルは最上階の部屋一杯に広がる、巨大な球体について聞いてみる。
「小鳥先生、これは…ガイア儀ですか?」
「?」
真には言葉を言われても全く理解できない様子。
「そうよ。私達が暮らすこの星…『ガイア』を模して作ったものです」
「それを教えてもらったのは、小鳥先生にですから」
「え?いや、これが世界となるとボクら落っこちちゃいますよね…」
「覚えててくれたんですね。私の拙い話など…」
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板