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チラシの裏 3枚目

1むらま ◆vVmhS9Bdr2:2009/03/29(日) 19:47:59
ネタにするには微妙だけど、投下せずにはいられない。
そんなチラシの裏なヤツはこっちに

613俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 4話序盤:2009/08/20(木) 23:49:15 ID:wur.udbM0
唐突に始まりを告げた、『ラグナロク作戦』

8方向からの攻撃で、残された楽園エリアゼロを葬り去ろうというこの作戦に際し
優先順位をつけることとした。
「情報はすでに集まっているのか。」

オペレーターはエリアゼロ周辺地域から8つのエリアをホップアップ表示する。
「はい。
 人工太陽からの植物への被害、空中要塞からの攻撃、別レジスタンスベース跡からの侵食計画、
 灼熱粒子砲の攻撃、自然維持システムの破壊計画、巨大潜水艦の爆破計画、コールドスリープ施設からのイレギュラー発生」

8つのエリアに8人のアインヘルヤル。
「…どれも危険だが、最後のものが現時点ではもっとも危険に思える。」
1秒の猶予もない。
ゼロは早急に、最初のミッションへと向かっていった。


季節外れの雪の降るコールドスリープ施設。
妖精戦争時代のレプリロイドが、オメガによる大破壊により
目覚めることなく永遠の時を眠ることとなった墓地。

…しかし彼らが今復活しようとしている。バイルの手により。
「レプリロイドを悪に染めるのはバイルの十八番といったところか」
まずは入り口周辺を固めるバリアント兵が彼の相手となる。

吹雪の中、伝説の戦士は駆け出した。
体勢を低くし一直線に駆け、左わき腹から右肩にかけてを一閃。
突き抜けて多重に折り重なる連絡階段を昇る。

頭上の段の上にバリアントの反応を見つけ、飛び上がりセイバーを振るう。
段の上のバリアントを下にいながらにして破壊。
そして壁を蹴り、走り、バリアントを見つけチャージショットで一撃、続けて上った先で体重を乗せた一撃で一閃。

「雪がなければ1Fの入り口にもいけたんだけどね…」
二つある入り口のうち、今回は最上階9Fからの侵入となる。

まず4F下の5Fにまで降りるエレベーターが目に入る。
その瞬間にバスターショットでスイッチを作動させ、下のフロアへ。

1階毎に下に下りるためにエレベーター左右のスペースにスイッチがあり、そのスペースには敵が待ち構えている。

バリアント兵が構え撃つのとエレベーターが下りるのと。早いのは勿論敵の方である。
弾をセイバーで斬り、そのまま素早い移動でバリアントごときり付け、振り向きバスターショットを撃ち
反対側のバリアントも撃破。貫通した弾がスイッチへ届き、そのまま下へ。

スクラップまみれの5Fで兵を倒しながら進むと、凍りついた部屋へと出る。
「ここから更に下へと下っていって!」

滑る床に、振動でゼロを襲う氷柱、そして動かず待ち構えるバリアント兵。
最小限の動きでそれらを倒しながら下へ下へと落下、1Fへと到達する。
「サーペント・ギアの発射口よ!気をつけて!」

1Fの、上、前、奥の3方の扉の閉まった小さな部屋で現れたのは上下左右に4つの穴の開いた巨大装置。
サーペントギアと呼ばれるトラップとの戦いだった。

上下左右の穴から飛び出してきたのは、連なった巨大な歯車。名のとおり、蛇のように連なった歯車である。
それが何をするかといえば、部屋を高速で徘徊し進路上にあるものを切り刻むというもの。
要するにここは処刑部屋らしい。

「問題ないな」
ゼロの方へ向かってくるギアだが、対処は簡単。
連なっているそれを全てセイバーで斬り飛ばせばよいのだ。

そして小さなこの部屋の中心付近でセイバーを振るえば必ず発射装置に刃が届く。
次のギア発射までの間隔を使い後ろ、下、上の3つの発射口をセイバーで破壊。
最後の一つはゼロの剣の届かなかった奥の発射口。

これはゼロがたったままセイバーを振るえば届く位置。
その発射口からしか発射することがもはやできないサーペントギアも勿論ここから出てくる。
まとめて切り刻めば攻撃も防御も兼ねることが出来る。
あっさりとゼロはサーペントギア発射装置を破壊、先へと進んでいくのだった。
「物足りないな」

614俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 4話中盤:2009/08/20(木) 23:49:59 ID:wur.udbM0
1Fは氷で出来た針のむしろ。その中に突き立つ狭い狭い足場には敵が待ち構えている。
ならばその場をどかせるまで。

敵はおそらく針の上にあるパイプをつかませ、そこを撃ち落とすつもりだったのだろう。
だがゼロにはその発想がまずない。

大きく跳び、空中からバリアントを斬り飛ばし、その足場を強奪。
次の足場の敵が反応し撃つ前に飛び上がり、同じくバリアントを斬り足場を奪う。

針のむしろの最後にいたのは今となっては希少価値の高い、妖精戦争時代のメカニロイド・メットール。
「あ、可愛い」
シエルのつぶやきを無視するかのように飛び上がりそれを一刀両断。
壁を蹴りあがりエレベーターへ。
今度は昇りだ。またもや同じ工程を繰り返し上った先はベルトコンベア。

破壊の難しいメットールが勢いよく流れてくる。
これは防御形態に入る前にバスターで破壊、ベルトコンベアに逆らいながら上へ、また上へ。

「その電灯を一応持っておいて」
ゼロナックルで電灯を引き抜き、腕に装備。
「理由は?」
再びたどり着いた9F。そこは悲惨な場所だった。保存状態が悪く、コールドスリープ中にレプリロイドたちがカプセルから投げ出され
そのまま床に倒れ腐食した死体と化していていたのだ。
「戦争の影というものか」

そして中からは浮かばれないレプリロイドの精神が、半端な状態…未熟な状態で自我を失ったエルフとしてさまよっている。
これは…精霊などではなく、亡霊というべきだった。

「危険なエルフと言えるわ。
 クリエプリエやダークエルフは高すぎるエネルギーを持っていたためにあなたの剣も効いていたんだけど
 このエルフ達は弱いから…あなたのセイバーじゃ多分切ることは出来ない。
 反面、エルフ達からあなたの体に害を及ぼすことは考えられるから…」


「奥に天井から光が差し込んでいるでしょ?こういった亡霊エルフ、プアエルフは光に弱いの
 その電灯を嫌がるはずだから、それを使ってエルフ達を誘導させて、光に導いて成仏させてあげて」
「なるほど」

走り、飛び出し電灯の光を浴びせる。
「ミィィィイイイイイ」
「ギイイイイイイイ」
プアエルフ達は電灯の光から逃げるように奥へと押されていく。
「…そこにもいたか」

背後のカプセルが割れ、中からプアエルフが飛び出す。そのエルフは床に転がる死体に吸い込まれていき…
「まああああああああああああああああああああああああ!」

ゾンビとなってゼロを襲ってきた。
「ちっ」
だがゼロの敵ではない。一閃、プアエルフを外へ逃がすことに成功した。

また一匹、光へ導くプアエルフを増やし、電灯で誘導し続け…
「これでいいな」

太陽の熱によりその身を焼かれまとめて彼らは天国へと旅立っていった。


「…眩しくて見えなかったが…これが扉か」

615俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 4話終盤:2009/08/20(木) 23:50:34 ID:wur.udbM0
最深部に待ち受けるもの。アインヘルヤルとの第一戦、その相手は…


「待ちくたびれたぜぇ、英雄さんよぉ!!」
湿っぽい空気の漂うこの場所には不似合いな、青き狼型の、戦闘狂だった。

「俺の名はフェンリー・ルナエッジ。妖精戦争時代から眠らされて体がなまっててなぁ!」
「戦いたいなら早く始めろ。時間がないんだ」

ゼロは真っ先に駆け、戦いを始めた。
「おっと!」
ルナエッジは飛び上がった。
「物分りがいいなぁ、英雄さんよぉ!!」

そして尻尾から丸まり、体全体に刃を生やして転がり始める。
「だが俺についてこれるかなぁ!?」


跳ねながら部屋を駆け回るルナエッジのボディは硬い。
一通りよけ、ルナエッジが元の形態に戻ったところを見計らいチャージセイバー、そして飛びのき距離をとる。
「やるじゃねえか!!」

怯みもせずにルナエッジはそのまま飛び上がり、両腕についた刃から衝撃波を飛ばし始めた。
「ぅらああ!!」

斜めに飛び、壁へつくルナエッジはそのまま真横に飛び反対側の壁へ到達、そこからまた床へと三段飛びを繰り出した。

ゼロはそれに対し、交差するようにセイバーで斬りながら飛び越え、
衝撃波の死角を一瞬で見極め回避、戻ってきたルナエッジに払う、斬る、振り下ろす。三段斬りである。

「あぅうううううう!」
雄たけびとともに垂直に飛んだルナエッジはその息で自らの大きさの、自らの形をした氷像を3体生み出す。
「行くぜぇぇえ!!」

合計3体となったルナエッジは次々にゼロへと襲いかかってくる。
だがゼロは全くそれをものともせず、本物に一太刀浴びせ潜り抜ける。

「そろそろ俺にも一発浴びさせやがれ!!」

ルナエッジはそのまま垂直に飛び上がり巨大な衝撃波を走らせる。
そして着地してもう一発。

発生地点はルナエッジの腕。ならば腕より下や上の位置には発生しない。
一発目を天井付近で、二発目を体勢低くダッシュで回避したゼロは…

そのままルナエッジの懐に飛び込み、セイバーで一刀両断した。
「マジかよ……!?」


「…ラグナロク作戦の恐ろしさは…こんなものじゃあないぜ……せいぜいあがいてみるんだな!!」

ルナエッジは氷の中で100年の時を経て起き、今度は炎の中で眠りのときを迎えたのだった。

616俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 5話前半:2009/08/21(金) 02:40:55 ID:u5B6DsQs0
「…時間がないな 次は深海の潜水艦を破壊しに向かう」
ルナエッジからEXスキルを習得し、瞬時に脳内に叩き込んだゼロは
早々に次なる目的地へと駒を進めた。

レジスタンスベース所有の船にたどり着いたゼロは、すぐさまシエルから説明を受ける。
「この真下の海中に潜水艦があって、そこにたどり着くまでには迷路のような通路を潜り抜けなきゃならないの
 ゼロの今のボディだと深海の水圧にはそう耐えられないから…早く潜水艦の内部にたどり着かなきゃならない。」

ゼロはその説明を聞いても尚態度を一切変えない。
「急がなければならないのは変わらないことだ。最短ルートで内部に潜入する」

他の敵潜水艦をよそに、爆破予定のその潜水艦へと着地、
内部へ入るための迷路をまずは落下していくことになる。

「どうや… 深…のせ… 通信…出来な…みた…。」
シエルには頼らず、自力でたどり着く必要が出てくる。

落下する場合に人間型レプリロイドは隙がとても大きくなる。
そこを敵は待ち構えているのだ。

ハリセンボン型の、針を撒き散らすメカニロイドに、高圧電流を発生させるクリオネ型メカニロイド。
水中を落下しながらこれらを斬りつけ、深く、更に深くへと落ち…
「ここか」
回転を続ける潜水艦の本体へと到着。内部へと侵入していく。


「ど…侵……成…し…のね ……危…い!」
「解っている」

水中から一転して潜水艦内部。出迎えたのは巨大メカニロイドだった。
「ドラゴン型…か」
「ギャオオオオオオオオオ!」
氷のような翼をした青き龍。
尾からビームを放ったが、これはすぐさま回避、近づいて三段斬りを繰り出す。
「ギャヒイイイイ!!」
続けて放たれたのは氷のブレス。これは距離をとってバスターの雨で攻撃、
掴みかかるべく突進してきたドラゴンを三段斬りで撃破。
「ギャォオオオオオオオオオオン!」
螺旋構造の潜水艦を最上階へと向かって進み始める。

上段からの砲台や、メカニロイドを射出する装置を破壊しながら階段を昇り…
すぐさま最上階へたどり着いた。


「…ここか」
爆破される弾頭部分。ドリルのついた潜水艦の先端部…ここにアインヘルヤルが。


かつてゼロはバイルナンバーズ達と闘っていた。
そのとき、彼らはゼロが過去に倒したミュートスレプリロイドたちをチップ化して取り込み変身を行っていた。

ゼロに強い恨みを持つ彼らの中で一人、戦った覚えのない者が混じっていた。
忍者のような口調をした…彼は一体。
「この瞬間を待っておったぞ!!」
氷に閉ざされた水中で彼は再び現れた。
「某は『バイル』率いるアインヘルヤル八闘士に志願した…
 今は亡き、ファントム様率いる斬影軍団の生き残り…テック・クラーケン!」
「…!」
「バイルの支配という屈辱にも耐えこの作戦に参加したのも
 全ては貴様に倒された我が主、ファントム様の無念を晴らすため!」

かつてランチャー・オクトパルドを倒され、エックスに心の底で憎しみの感情を抱き続けていた
ボルト・クラーケン。

その子孫たる彼もまた…復讐者であった。同じく烏賊の形をした彼は、
刃のような手を震わせ戦闘態勢へと移行する。
「我が主の無念と某の怒り!この氷の刃でその身に刻みつけてくれよう!」

斬影軍団の最後の一人との戦いが今始まる。
「我、復讐の刃也!」

どうやら全力で相対するべき相手のようである。

617俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 5話後半:2009/08/21(金) 02:41:27 ID:u5B6DsQs0
「ゆくぞぉ!!」
クラーケンは戦闘開始の合図とするかのように、クナイを部屋の床に沿って投げ始めた。
これを跳躍で飛び越えたゼロは体重を乗せた一撃をクラーケンに見舞う。

「おのれぇぇ!!」
クラーケンは反射する氷のレーザーを目から放つ。

だが速度は遅い。ゼロはそれをよけ、クラーケンに対し重いチャージ斬りを浴びせる。
「これしき…!闇よ!!」
クラーケンはその攻撃を真っ向から受けた後、腕の先から墨の様な闇の空間を作り出し…
その中へと溶けていった。

「はぁ!!」
クラーケンは闇の中から刃と化した腕のみを出してゼロを攻撃してくる。

闇の穴から出てくるその腕の速度についていけぬものはこの技の餌食になるだろう。
だが…ゼロは違った。
「ふぅはははは…やるなゼロ!」

憎しみを滾らせての笑いを浮かべ、彼は再び攻撃へと移る。

「貴様の醜き姿…映し出してくれる!!」

氷の弾を発射、その氷の弾は周囲の水を集め、凍らせ、形を変え…
鏡の形となった。
「惑え!!」

だが鏡となればその特性はなんとなく理解できる。バスターショットを反射するのだろう。
セイバーでそれを破壊すると同時にクラーケンに一撃。
「んぐ!!」
いよいよクラーケンを追い詰める。
「貴様がやがて行くは地獄。その地獄名物針の山…この場に見せてくれようぞ!!」


クラーケンは水面上へと上昇…
二つの氷の塊を撃ちだした。
「…なるほどな」

左右の冷気の塊からは鋭い氷の柱が勢いよく飛び出す。
少しでも動けば体中がこの柱に貫かれることであろう。

1本、2本…様子を見たところで3本目のタイミングで大きく跳び、
真下に待ち構える針の山の隙間へと、体を微妙にずらして落下。

全ての回避に成功するのだった。
「な、ならば…!」

最後に残るのは、時間をかけてでも無敵の闇の中からゼロを刺し殺すのみ。
先ほどと同じように闇の中にクラーケンは消えていった。

「そこぉ!!」
1発。
「まだまだぁ!!」
2発。

…3発目のタイミングでゼロは決着をつける。
「どうだ!!」
腕を出したその瞬間。
「…」
ゼロナックルでクラーケンの腕を掴み…
「ぬぉおおおおおお!?」
引きずり出す。
「最後だ」

そして飛び上がり、真横へと斬りつけ…
「…!!」

クラーケンの両目を切り裂き、トドメを刺したのだった。
「み、見えぬ…!!!」

そして…代わりに見えたもの。
「…拙者は…見えていなかった ファントム様の仇を取るあまり…
 これほどまでに…醜くなっていたというのか…」

「ファントム様…拙者は………」

そして、その体は水中で爆発を起こし、黒き煙の中へと消えていったのだった。

618初の字:2009/08/21(金) 05:47:33 ID:fyDiaVV6O
それとなく引退考えたり

でもやっぱりやめようかと考える

やっぱやめようと思い続ける

やっぱりやめるかと考える

でもやめないと思っとく

ループ

619名無しさん:2009/08/21(金) 13:25:18 ID:r9V/gKk.O
>>610
時の皇族が皆殺しに遭って滅んだ設定作って、何年か、あるいは何万年も後に
誰によって、何故、殺されたか推理してみるってのはどう?

私の設定?私の設定はどうせルーカス公認じゃないから無視しても良いよ。
正直、厨房のルーカス設定無視の微生物のクソをかき集めた程度の価値しかない
SSにいい加減嫌気が刺してて(ry

>>618
引退と現役の境界弄って、本スレには出ず、晒しだけするってのは?

620乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/08/21(金) 23:10:47 ID:OCFCZcNc0
>>618
んー…もっかいだけスレに戻って考え直してみるのは?
>>619
そう言われてもですねぇ…
そもそもその提督設定の根底にある原作設定さえ理解していないのに(ry

621俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 六話 前半:2009/08/22(土) 01:39:14 ID:8UteCZqU0
クラーケンのEXスキルを脳内に染み込ませたゼロは、
潜水艦のコンパネを粉砕しオペレーターに次なるミッションへの転送を頼む。

「そろそろ休んだほうが…」
「俺は今回のミッションでいくつダメージを受けた」
「…それは…0だけど」

「へチマールの天候操作は完了しています」
「よし… 俺は傷の程度にもよるが俺は数週間は不休で戦える。…行くぞ」


次なるミッションは空中要塞。雲の上から酸性雨による攻撃を行うものである。
酸性雨とは言っても、人工のものであり…その有害性は自然発生のそれとは別格といっていいだろう。
「それでは、いいですねゼロさん
 この要塞には扉で仕切られた複数の区画に、計4箇所の酸性雨発生装置が存在します
 それらを全て破壊した後、指揮官であるアインヘルヤルを撃破して下さい」

「…了解した」
そして彼は走り出す。

要塞内はいくつかの棟に分かれ、更に大きな壁でエリアが仕切られている。
「その建物の中に発生装置が1つ存在します」
バリアント兵を片付け、そのまま飛び上がった所で酸性雨発生装置を発見。
着地と同時に斬り付け破壊。

立ちふさがるバリアント兵も倒して、1つめの仕切りの扉を開け、次なる区画へ。
次なる区画は柱を飛び渡りながら次なる棟へと移動することになる。

強風の中であるため、
柱の頂点にはバリアントがいたので、無論飛びながらそれらを切り刻み、次の棟へ。

これも破壊。
また柱を飛び移り、空中からも攻撃する敵を倒しながら…今度は巨大な室内に入る。
「ギャオオオオオオオオ!」

「…潜水艦で現れたのは青い氷属性。ならば…ここでは」
そう。現れたのは緑色をした、雷属性のドラゴン。翼の形は雷を模したデザイン。

そして攻撃も似通ったものだった。
「この様子だとゴーレムのようにあと1属性現れそうだな」
一直線に駆け、ドラゴンの懐で三段斬り。
突進してきたドラゴンに距離をとり…
「アイスジャベリン!!」

そのバスターショットから氷の長い針を発生させ、ドラゴンへと命中させる。
そのまま飛び掛りチャージセイバーを一太刀。
「ギャヒイイイイイイイ!!」
これで第二のドラゴンも沈め、ゼロは先へ進んでゆく。

ドラゴンのいた部屋を抜けた同じ棟内に3つめの発生装置を発見。これも破壊し
「メカニロイドの発生装置か…」
「非常に耐久力の高い装置です、一筋縄では行かないかと」

数回斬りつけて破壊、また柱を飛び移っていく。
「柱の上をこれが占拠しているとなると…」

飛び移り一撃で倒せる相手ではない。
隣の柱からバスターショットの雨を浴びせた後飛び、真っ二つにして上下移動するリフトに乗る。
「この発生装置は棟の屋上に存在します、リフトから飛び乗ってください」

ダブルジャンプのチップの効力で飛び乗り一閃。
落下し、メカニロイド発生装置が2,3置かれた階段を、それを破壊しつつ進んだ先に…
「アインヘルヤルとの戦闘準備をお願いします」
「…大方予想はついているがな」


降りしきる雨の中、要塞中央区画で待っていたのは、美しい金色の翼を持つ白馬。
「空を舞う神殿から薄汚い地上のムシケラに神の雷を落とす
 流石はバイル様 私にピッタリの実に美しい作戦だ」

現れたのは、己を神格化しているネオアルカディアのミュートスレプリロイドに多くみられる、ナルシスト。
「醜い虫けらどもは美しい私の前にひれ伏すが定め」
自己陶酔の間に攻撃を始める。

セイバーを振るうが
「寄るな…汚らわしい」
ペガソルタは回避。

「このペガソルタ・エクレールの雷で奈落の底へと落ちたまえ!」

戦闘が始まる。

622俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 六話 後半:2009/08/22(土) 01:39:55 ID:8UteCZqU0
「はあ!!」
彼の両腕は電流を帯びたレイピア。その腕全体から発した雷を槍のようにして地面に突き刺す。
左、続けて右。ゼロめがけて放った二つの槍は床へと突き刺さり、その間に電流を走らせる。

それを飛びこしつつペガソルタにチャージセイバーを一発。
「くっ…!?」

続けてバスターを放ち、ペガソルタがよけたところに飛び掛りもう一発。
「おのれえええ!」

怒りに震えたペガソルタはそのままチャージを開始。
体中に電流を帯び…

「天罰だ!!」
両腕の先端から電流を発生させ、レーザーのように壁を、床を焼く。
体勢を低くし電流を潜ったゼロはそのままペガソルタにけん制のバスターショットを一発、
これをよけたところをチャージセイバーで叩き落す。

「うぬっ…!!貴様!!」
両腕で掴みかかろうと急降下するペガソルタ。
回避しつつアイスジャベリンを放つ。

「おっと」
攻撃をよける。
「…全て見切った もう貴様のその単調な攻撃は効かんぞ」
「…」
「空で私に敵う者がいると思ったか。お前に出来るのはただ…そう、もがくことだけ…」

ペガソルタは意気揚々と複雑な軌道で飛行を始める。
「もがけもがけえええええ!!」

奇妙なその軌道を見切ることは容易ではない。
ひとまずペガソルタの下を潜る。

「さぁ、最後だ!!」
ペガソルタがまたもチャージを行う。
…電流を発するのか?いや…違う。

「てああああああああああ!」
電流をまとったまま、自らが雷の弾丸となりゼロに突進してきたのだ。

ならばとチャージショットを放つが…弾かれる。
「なるほどな」

強風の向きは…ゼロに対しては向かい風。
「はっ!」
ゼロはペガソルタを飛び越し、着地。風の影響で通常より近い位置での着地となった。

「ちょこまかと」
突進を終えたペガソルタが背後から急降下を始める。ゼロを掴みに。
避けるはずのペガソルタが何故そんな行動に出たか?

ペガソルタは確実に掴み、放り出せるものと思っていたからだ。
「…」
そのタイミングで攻撃などできるはずもないと。ましてや…
一撃で倒されることなど考えもせずに。


ゼロは降下してきたペガソルタに風向きを利用し高速で接近。
ペガソルタの腹部にバスターショットの銃口をポイントし…
「アイスジャベリン」

零距離発射。
銃口から最大出力で放たれた氷の槍は驚異的な貫通力でペガソルタの体内を串刺しにし、
内部からボディそのものを炸裂させ、瓦解させてゆく。
「虫けら…ごときに!?」


「…嘘だ 私よりお前の方が…優れているというのか…
 いや、それはあり得ない…私は、死に様すら美しいのだから…!」

ミュートスレプリロイドの大爆発は雲を遠くへと追いやっていった。

623いざます ◆AsumiJgBrc:2009/08/22(土) 08:22:04 ID:a2D5sUWQ0
Lunaアリスは鬼畜すぎる。勇儀姐さんが可愛く見えて仕方ない

Luna最難スペルとすら言われるオルレアン人形を筆頭に
どれをとっても取れる気がしないスペルばかり
唯一望めるのが蓬莱人形くらいか

624俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 七話前半:2009/08/22(土) 23:19:02 ID:8UteCZqU0
ペガソルタのEXスキルを手に入れ、地上へと戻る。

「そのまま磁場区域のミッションに移っていただきたいのですが」
「そのつもりだ」


雷の落ちる中の磁場区域。
鉄骨が無造作に転がっている採掘場跡からは強力な磁力が発生している。
「砂鉄が舞い上がっているな…」

上向きに…下向きに。レプリロイドもメカニロイドもボディを引き寄せられる。
とても戦いに適した場所とは思えない…が。

「ここから発せられる電磁波がエリアゼロの環境維持装置を破壊しているとみられます」
磁力との格闘がここに始まった。


まず採掘場内部に入る前に敵との対決となる。
「武雷突!!」
バリアントを突きのEXスキルで一撃。それに加えて発せられた電流が地を伝い、
地に足のつくメカニロイドを感電させる。

「氷月刃」
続いて氷を纏わせたゼットセイバーを地に走らせ、研ぎ澄まされた氷を刃として発する。
これにより、磁力で地面に縛り付けられた敵は即座に一掃することが可能。

「内部は大量のトラップが仕掛けられていると見られます」

内部はゼロの予想をも超えるトラップの数だった。
地面は極性を持った床で、磁界を発生させるポイントを潜らせることで引き寄せたり離したりするもの。
そしてそれは他のものも同じなのである。…爆弾でも。

「爆弾が自動的に近づいてくるというわけか…」
宙に浮いた、極性を持った爆弾が遠ざかったり近づいたり。
敵の攻撃もあることを考えると、回避は困難なものとなる。

磁極トラップの一部ともいえる、自らが発する強力な磁力により動きを変える敵の腕をゼロナックルでもぎ、
自分の腕に装着…磁石爆弾を弾き、または無効化するなどして先へ進む策を見出した。

「これで磁力を使えるのは相手だけではなくなったわけだな」
爆弾を

そして上の階へ向かうための足場には電流が流れ、
放電と放電の合間のタイミングを見計らって乗らなければ感電するというものが。

それらを全て、無傷で乗り超えたゼロにまた敵が現れる。
「…何だ」
採掘場の出口の部屋を自由自在に変化させることの出来る、巨大メカニロイドらしい。
「厄介事を起こされる前に倒すか」

動きは鈍く、行動といえば天井を吊り上げたり小型メカニロイドで攻撃をするばかり。
回転斬りも交え手早くこれを倒したゼロは、採掘場から出、アインヘルヤルのいるノイズの発生源へと向かう。

「上の電線には高圧電流が流れていますので、近づかぬよう…」
「電柱にはどうだ」
言うが早いか、ゼロは自身のチップを組み替えていた。
「…で、電柱ですか…?」

「ええ、電柱には触れても問題はないかと思われます…が」

ダブルジャンプのチップ。
宙に浮きながら、宙を蹴り更に跳躍することの可能なこのチップを使い、ゼロは
高い高い電柱の頂点へと上り詰めた。

「どうやら念のためか、破砕装置まで電柱に括り付けているようだが…」
電柱から電柱の間は非常に離れているが、ダブルジャンプをつけたゼロの跳躍で飛び越えることは容易。
全てを飛び越えてゼロは進み続け…

「器用な敵だな」
絶縁性能のある爪で電線に掴まっていたバリアントを真上から粉砕。
そのまま真下へ落下した後、近くの作業用削岩機も2機破壊。
アインヘルヤルのいるエリアの扉を潜った。

「ん”ん”ん”ん”も”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”」
その声は…低く、濃く、太く、強かった。
ゼロの3倍以上はあろうかという、重厚なウシ型の巨体の持ち主。

「おではー…ア、アイン…アインヘルヤルのー…」
「…」
「一人の”…ミノ…ミノ・マグナクスだぁ……」
「おではー…」
「…」
「おでは…つよいど…」
「…」
「おでに、かかれば…お前だど、あー…ああじで…ごうじで…」
「……」
「ギッタンギッタンのー…」
「………」
「ペッシャンコにー… あー… して、やるどー…」
「悪いがお前のおしゃべりに付き合っている暇はないんだ。こっちから行かせてもらうぞ」
「んも!?」

625俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 七話後半:2009/08/22(土) 23:20:48 ID:8UteCZqU0
戦闘を開始する。
一見、図体ばかりが大きく総合的な能力の低いタイプの典型に見える彼だが…

いや、或いはそのイメージも正しいのかもしれない。
「ん”ももおおおおおお!!」
「!?」

磁力の力が…なければ。
「…何!?」
大きな鉄塊がマグナクスに引き寄せられた鉄塊の末路を見て、ゼロは敵のやり方を理解した。

マグナクスは手に持った斧から発生させた強力な磁力で相手を引き寄せ…
「んもおおおおおおおおおおお!」
反する磁界を発生させ思い切り斬り飛ばし、壁に叩き付けるのだ。

持ち前のパワーの効果範囲を最大限に広げる戦い方と言える。

この厚い装甲には攻撃は思うように届かない。
…攻撃をよけるのは難しくなるだろう。こんな装甲の厚い相手ではあるが…

早めに戦いを終わらせる必要がある。
「ビームだどおおおおお!!」

鉄の塊がある一点に吸い込まれ始めた。
マグナクスは強力な磁力の塊を空中に発生させているのだ。

弾丸のごとき速さで集まる鉄屑たち。
巨大な鉄の大岩がゼロの真上に集まっている。これを降らせられては危険だ。

弾丸のような鉄をよけながらも、その前にマグナクスを潰すべくゼロはセイバーを振るい始めた。

チャージ…そして一発。またチャージ…二発。三発、四発。

そのタイミングで…
「!!」
鉄の巨岩が落下してきた。
マグナクスに5発目を当てながらとっさに避ける。
辺りを轟音が支配する。


「もおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
そして驚異的ジャンプ力で飛び立ったマグナクスが真上からその巨岩に向けて斧を振り下ろし粉砕。
元の破片へと戻す。辺り一帯にそれを激しく散らばらせて。


集まる鉄の破片に激突する、鉄の大岩に押しつぶされる、マグナクスに踏まれる、斧の斬撃を食らう、破片を叩きつけられる。
一つの技の中に、これほどまでに多くの危険が潜んでいた。

だがマグナクスはあと数発で倒せるレベルまで追い詰めた。
チャージし…マグナクスの比にならぬそのパワーで彼の頭を斬る。
その瞬間…


マグナクスの体がバラバラになった。
「!?」
倒した…のではない。

磁力で一つとなっていたマグナクスの体が分裂し、それぞれが身軽になりあたりを駆け回り始めたのだ。

「!!」
両腕からのパンチ。

「…くっ」
両脚が踏み潰しにかかる。


5つに別れた体は、それぞれが全く異なる動きでマグナクスの1つの意思によって動き、
ゼロを高速で追い続ける。


だが…本体は宙に残っている。
その攻撃をなんとかかい潜れば…

そこには無防備なままのマグナクスの本体がある。

「なかなか強かったぞ」
「だど!?」
意外なる強敵に最後の一太刀を浴びせ……


ゼロは5つの爆発をその耳に聞くのだった。

626俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 八話 前半:2009/08/23(日) 02:52:26 ID:jHlPbiXM0
「ゼロ!!…これは、命令よ もう休んで」
「…残りの部隊が作戦を中止するのならばな」

そんなはずはない。
「………でも」

と思われていたが。
「! 灼熱粒子砲、人工太陽、居住区跡、地下樹海が機能を停止しました」
「…何」

あり得ないことが…起こっていた。
一斉に…残りの4人のアインヘルヤルが動きを止めたのだ。

「…却って怪しく思われますが」
「怪しい、どころじゃないな」

そしてその行動の真相はすぐに明るみになる。
「!! …エリアゼロ近辺に膨大な数のエネルギー反応!
 バイル軍の総攻撃と見られます!その中での
 ミュートスレプリロイドと思われる反応数…8!」
「8!? そんな」

「オペレーター、早急にエリアゼロへ転送を頼む」
「わ、わかりました!!」
「ゼロ…!」


エリアゼロの川岸に降り立ったゼロは岩場を走りぬけ、バリアント兵との戦闘を開始する。
「数が多いな…」


「こきゃあああああ!!」
「アインヘルヤル…」

目の前にはミュートスレプリロイド反応1体目…
コロニー内部で出くわした最初のアインヘルヤルがいた。
「よくも半分も俺達の仲間を倒してくれたなゼロおおおおお!」
「すぐに黙らせてやろう」

セイバーを抜き鶏の駆除を始めようとする。
「溶けろぉ!!」
鶏は羽を舞わせると、酸の塊と思しき球を発射する。
早速それを始末し、アインヘルヤルへと斬りかかろうとするが…

「はぁあ!!」
ゼロの背を光の刃が多数駆け抜け…酸の塊をあっさり貫いたのだ。
「こけっ!?」

「…レヴィアタン!」
「久しぶりねゼロ」

バイル軍を追う者はゼロのほかにもいたのだ。
「あなたは人間を守りに来たんでしょ?
 この鶏チャンは私に任せて、早く行きなさい!」
「ああ」

流れるコロニーの残骸を飛び渡り、川を渡り森林地帯の入り口へさしかかる。

ヤドカリ型メカニロイドとバリアント兵を倒しながら森の上り坂を進んでいると…
「!?」
ゼロは反射的に飛びのいた。
うごめくものがあったから。
「ギェアアアアアアアアアアアアアアアアアウ!」「ギェエエエエエ!」「ミィイイイイイイ!!!」
枯れ葉の中に姿を隠していた食虫植物型メカニロイドの群生が、ゼロを捕食せんと姿を現したのだ。
「グジュルグジュル…」「ギチェアァァァア」「アアァァァァグ」
「アーーーーーーーーーーーーーーーー!」
中心から巨大な口が開ける。その中からは…
「あらあら…ごめんなさいね、この子達誰にでもなついちゃうものだから♪」
植物の姿をしたアインヘルヤル。
「強酸でじっくり料理してあげるわ、英雄さん…」

だがその瞬間
「きっしょく悪りぃいいいいいいいいいいいいいい!!」
食欲旺盛な植物メカニロイド達に放たれたのは轟々と燃える火球。

「く…」
やはり彼も生きていた。
「おう、ゼロ!」
「ここは頼めるか」
「お前に人間任せるのはシャクだけどまーここは仕方ねえ!」

627俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 八話 後半:2009/08/23(日) 02:53:45 ID:jHlPbiXM0
ファーブニルに任せ、進んだ崖から見えたのは
「…」
燃え盛る人間達の集落。

「あれをやったのは」
「お、俺じゃねえよ!?」
どの道今は消化作業に当たることが先決だろう。崖を下っていくこととした。

「うぐっ…ぬ!!」
「スパートをかけてもその程度のダメージか。その防御は伊達じゃないな」
集落ではすでにアインヘルヤルとハルピュイアが交戦中だった。
「結果はわかっているはずだ。引き下がれ」
「愚問であります!!」

亀の姿をした真面目なアインヘルヤルは、その身にソニックブレードの連撃を受けながらも
かろうじて立っていた。
「キャハハハハハハハ!ゲンブレムなにそれー、ダッサーーーい!」
燃え盛る炎のストローを口に含んだ、20世紀末の女性の喋りを流暢に話す、古風なミュートスレプリロイドも現れた。
おそらく、バリアントらを指揮しているのは真面目な彼であり、この集落を焼いたのは彼女であるらしい。

「お前も笑っていないでバイルさまに反逆した、あ奴を懲らしめてやるべきと思われる!」
「あぁー、ごっめーん忘れてたー!
 あのねーえ、タイチョーからの命令ー。もう帰っていいってー!」
「…しかしまだ森を焼き尽くしては…」
「ちょっとー、超メンドーじゃぁん!?あのオッサンが怒んのもこのままこんなトコいるのもー!」
「……本当に隊長の命令だというなら、仕方ないであります。 ここは一時撤退!」
「頭カタソーなエイユウさん達ー、まったねー!」
「待て!!」
ハルピュイアはプラズマサイクロンを繰り出すも、一瞬遅く彼らは姿を消した。


「…クラフトも来ているようだな」
「まずは何より人間達を救出するのが先だ
 この集落は広い。手分けして救出に当たるぞ」
消火ポンプをゼロナックルに装備し、彼はテントの群れを駆け始めた。

トラックのボンネットに飛び乗り、テントの屋根に飛び移り消火。
地面の火を消火。テントやトレーラーの内部でキャラバンを拘束していたバリアント兵を水月牙で切り裂いてキャラバンを救出。

「所詮、俺達人間じゃあんたらレプリロイドには敵わんのか…」
「誰も助けなんか呼んじゃあいねえよ、余計な真似しやがって」
「アンタたちのせいでここがかぎつけられたんだ、別にお前らに礼なんてする必要もねえ…」
「レプリロイドの実力なんざ認めてたまるかよ」

レジスタンスのメンバーは全て救出、
先に避難していた子供のところに集まる形となった。

「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!
 でも…リーダーのネージュさんがいないんだ、お願い、ネージュさんを探してくれないかな!?」
「…ということだ」
「解ったわ 別の場所を探してみて ゼロ」

森の中をくまなく捜索していた…そのときだった。
「ここにも彼女はいなかったか」

以前はマントを着ていた大柄の男がそこにいた。
迷彩服のようなアーマーに身を包んだ、重装の男…アインヘルヤル八闘士を束ねる隊長、クラフトだ。
「お前は」

「…俺は今人を探しているんだ。邪魔をしないでくれないか」
「お前達は何故…奴に従う お前達も人間を守っていたレプリロイドだろう。」

返ってきた答えは…。
「そうだ われわれは人間を守るために闘っている。」
「村を焼くことがか。」

「ネオアルカディアは姿を変えた。人間もレプリロイドも
 世界の全てのエネルギーを手にしたバイル様なくてはもはや生きることすら叶わないのだ。
 それが解らぬ人間達に、正しい生きる術を与えに俺はここへ来たのだ。
 それを邪魔するというのならば… ここでお前を始末させてもらう」

『バイル様』に仕えるアインヘルヤルたちの隊長のその言葉は
バイルが正しいというようには到底聞こえなかった。

身をかがめ、戦闘態勢に入る。
「手短に済ませよう」

そしてその手馴れた手つきからゼロは感じ取る。クラフトの戦闘能力の高さを。

628俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 九話前半:2009/08/23(日) 04:08:25 ID:jHlPbiXM0
クラフトとの戦いが始まる。

「行くぞ」
ゼロは始まってすぐにクラフトの元へと駆け、そのまま三段斬りを食らわせる。

その素早さ、一撃の重み、そして自らに向かってくる一寸の迷いも恐怖もない闘争心。
これほどの相手との戦いは…

クラフトにとって、そう。
「祭りだ!!」
高ぶった闘争心のままに、手に持ったチェーンソーをゼロへ突き出す。
ゼロはそれを飛び越えて背後から零距離チャージショット。
「ちぃ!」
クラフトは素早く地を転げ周り、受身を取り一瞬で攻撃へ転ずる。
「下がりな!!」

膝の付け根に備えられた発射口から手榴弾を発射。
「…」
ゼロはゼットセイバーを振るいそれを間合いの中で爆発させ下がり通常バスターショットを連射。
「悪いな」
だがクラフトはそれを高く飛び上がり避け、そのまま腕から巨大な爆弾を地へ向かい投げつける。
これ自体も強力な爆弾なのであるが、
だがこれは地面に着弾することで破裂し、大量の小型爆弾となって辺りを火の海に変えるものである。
「水月刃」
地に二重に氷の刃を走らせ、爆弾を貫通しクラフトの脚を刻む。

「痛いな!」
そしてまた負傷した膝から手榴弾。
バスターショットで叩き落とし、チャージセイバーでクラフトへ斬りかかる。
「近すぎだ!!」
そしてクラフトはまたチェーンソーを突き出す。

ゼロと互角なほどにハイペースで繰り出される攻撃の数々。
相手は四天王級の強さを備えていると見える。

いや、攻撃力、耐久力、機動力らで比べればアインヘルヤルと大して変わらないように思える。
むしろ、突出した部分がない分、彼らより劣っているとさえ言えるかもしれない。

だが…身のこなしが別次元のものなのだ。
攻撃それぞれの癖、それぞれの間合い、範囲、威力など諸々のものを体で覚えた上での無駄のない動き。
高性能レプリロイドにとどまる彼の能力を、尋常でないまでの戦闘経験が培った技術が、
彼の戦闘能力を四天王クラスにまで高めていた。

「オーバーオールだ!!」
チェーンソーとして使われていた肩の道具は多機能型のようで、今度はミサイルを発射してきた。
これを叩き落としたところで待ち構えているのは…
「下がりな!!」
手榴弾だ。

バスターショットで間合いを取るが…
「かかったな!!」
後方へ回ったクラフトは今度は武器をバズーカへと変形させゼロへ照準を合わせてきた。
「そこだあ!!」
無駄に撃ち続けることはしない。一瞬だけバズーカを放ち、
「おっとぉ!」
素早く次の行動へと転じるのだ。

「…」
ゼロはといえば、バズーカの攻撃を避けるべくダッシュで身を低くし斬りかかっていた。
クラフトはそれを避けて背後へ。

「はっ!」
今まで隙のなかったクラフトが、大きく飛びあがった。
武器はバズーカのまま。することは…そう。

「これならどうだぁ!!」
バズーカを地へ向けて発射、バズーカの反動一つで空を飛び、地上を焼き払う大技に出たのだ。
バズーカはクラフトの腕一つで自由自在に火を吹く。
ゼロはクラフトの下にいる限りそれから避けられはしない。

だがそうそう飛行できるはずはない。
バズーカの出力に強弱のメリハリをつけることで己が吹き飛ばされぬよう微調整する必要があるのだ。

ゼロはその「弱」を突く。クラフトが勢いを弱めたそのタイミングを見計らい、高く飛びクラフトを飛び越えるのだ。
「何!?」

そして背後からセイバーを一振り。
「うっ!」

またもチェーンソーを突き出すクラフトを飛び越えて
「はっ!!」
チャージセイバーをクラフトの左腕に叩き付けた。


「ぐうっ…!!」

装甲が硬かろうとレプリロイド自身としてのクラフトの耐久力はたかが知れている。
これが決着だった。

629俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 九話後半:2009/08/23(日) 04:09:05 ID:jHlPbiXM0
「何を迷っているクラフト。」
確かにクラフトは強く、速かった。だが…その攻撃はどこか「キレ」に欠けたものだった。

「お前には俺を本気で殺す気が感じられないな
 何かまだ理由があるんじゃないのか。」

「…何を馬鹿な。俺はこの集落を焼き払いに来た!
 この集落にはバイル様の生贄となってもらう!
 バイル様に逆らう者がどうなるか、世界に知らしめてくれるのだ!」
「……」

「やめて!!」
そこで茂みから一人の女性が姿を現す。ネージュだ。
「ネージュ…君はそこにいたのか!」
どうやらクラフトが探していたのはネージュらしい。

「何が世界のため!? 何が人間のため!?
 …あなた達がしていることは、ただの戦争じゃない!」
「ネージュ…」
「…。」

もっともであった。
「クラフト…何でバイルなんかの言いなりになっているの!?
 私が初めて取材した時のあなたは立派な誇り高いネオアルカディアの戦士だった!」
「…くっ」
「ちゃんと人間のために戦う戦士だった!
 でも今は…」

クラフトはうなだれるだけだった…が。
「…いや、今も俺は人間のために戦っている
 ネージュ、君だけは俺が守る!さらばだ!」
「く、クラフト!」
「待てクラフト!!」
そういうと、クラフトはネージュの肩を掴み、共に転送装置でワープしていった。

「…エネルギー反応が消えた  集落を守れたのね、ゼロ!」

「…だが…クラフトがネージュを連れて逃げた」
「ええっ!?」

「反応をサーチできるか。奴を倒すためにも、ネージュを救出するためにもだ」
「…ちょ、ちょっと待っていて」


だがそのとき…背後から声が聞こえてきた。
「あいつ…あの女、ネオアルカディアのレプリロイドと通じてたのかよ…」
キャラバンの人間達だ。

「しかもこいつもあの、ネオアルカディアのエックス様を殺したゼロだって話じゃねえか…!?
 …本当に冗談じゃないぜ…何しにきやがったんだ」

「ネージュさんを助けなくていいのぉ…?」
「…いいんだよ、あいつはスパイみたいなもんだぜ?じゃなかったとしても、当然の報いだ」

「………」
ゼロは向き直る。

「な、何だよ」
「…本当にネージュを助けなくていいのか。」


「お前達にああだこうだ言われる筋合いはねえな!
 全部お前達レプリロイドの仕業だろうが!
 俺達はこうやってこの集落でこれまでも暮らしてきたんだ!もう面倒事なんて御免なんだよ!」
「…」

「…俺についてはいいだろう
 だがネージュは体を張って俺と奴の戦いを止めに来たんだ 見捨てるのか」
「悪いかよ!」



「…自分達では何もしようとしない か
 それではネオアルカディアの中にいる人間達と大して変わらないように俺には思えるがな」
「!?」

森の奥から歩いてくる2人の影。
「ゼロ…聞いたわよ キャラバンのリーダーがアインヘルヤルの隊長に攫われたそうじゃない」
レヴィアタンとファーブニルだ。
「ここへ来る途中に、ハルピュイアの奴が空から怪しい施設を見つけたらしくてな
 もうあいつはそこへ向かってるぜ」

「……教えてもらおう。だがまずここを離れるのが先決だ」



「…お兄ちゃんおねがい、ネージュさんを助けてあげて…」

630いざます ◆AsumiJgBrc:2009/08/23(日) 11:32:23 ID:nLVpfrdE0
妖Lunaみょんにて沈没
俗諦常住の赤玉が思ったより速く飛んでくるなぁ
4面道中ももう少しパターンを組まないとダメそうだ

631俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十話前半:2009/08/26(水) 15:47:06 ID:riEKi5s.0
監獄をアインヘルヤルの基地として再利用したバイル軍基地。
時刻は深夜。月明かりの強い夜空の下、クラフトとハルピュイアは戦いを続けていた。

クラフトはゼロにつけられた傷を修復し、格上の相手であるハルピュイアに対し
持てるその技術を最大限に発揮しかれこれ3時間。

「驚いたな。妖精戦争時代に作られた一レプリロイドに過ぎぬお前がここまでやるとは」
「……今彼女を取り戻されるわけにはいかぬのだ」
長い時間をかけた戦いは両者の体力を消耗させ…もうじき決着というところまでこぎつけていた。

月をバックに、ハルピュイアはクラフトを見下ろす。
「現バイル軍最強のお前が、今こうして俺に敗北する…。
 その上もうじき別の入り口からファーブニルにレヴィアタン、ゼロも来るだろう…諦めるんだな」

クラフトは手を地につけ、強くその爪を床にめり込ませていた。
「これが力の差だ」

「大方、徒歩で来るゼロたちを迎撃するために8割を割いたのだろう?
 そしてお前は一人で俺を倒せる計算だった。」
頭の上で両腕を交差させ…雷のエネルギーを集中させる。
初期状態のオメガに一撃を食らわせたハルピュイア最強の必殺技…サンダーボルトの体勢。
「…力量差を見誤ったな」

しかし。
「…!」
その瞬間、上空から大量の弾丸の雨が降り注いだ。
「!?」
「これだけの時間があればいくらでも指令など送れると解らなかったか!?
 そして俺にはサブタンクがある…まだ回復は可能だ!」

一瞬にして傷を塞ぎ立ち上がったクラフトは拳を突き上げ、
ソニックブレードで弾を斬るのがやっとなハルピュイアに投げつけた。
そしてバズーカを構え
「さらばだ!!」
その脚で激しく床をへこませ最大出力の一撃を見舞った。
「!!!」
ソニックブレードで即座にガードするものの、直撃は免れない。
彼の身長分はあろうかという極太の光柱に押され、ハルピュイアは夜空を貫き、打ち上げられていった。



「何だあれァ!?」
夜空を、北北西の方向に向かい青白い線が断った。
「…クラフトのバズーカか…!」
「ハルピュイアがやられたかしら…ちょっとまずいことになってきたわね」

ゼロとファーブニル、レヴィアタンの3人は無数のバリアントたちを蹴散らしながら荒野を駆けていた。

「おうゼロ、お前随分弱くなったみたいじゃねえか。戦い応えがないとつまんねえぜ」
「後遺症らしいが…今のバイル軍やお前達に勝てるだけの力はあると思っているがな
 …む」
突如通信がゼロの耳に届く。
シエルからだった。
「ゼロ、集落から通信が入っているの。今繋ぐわね」
「頼む」

集落の人間の若者の声に変わる。
「…急いでいる中すまない、あんた…本当にあのゼロなんだよな?」
「……そうであってもそうでなくても、俺は俺のするべきことをするまでだ」

「そうか。…俺達がこんなことを言える立場じゃねえって解ってるんだが
 …リーダーを、ネージュを助けてやってくれないか」
「…」
「俺は、考えてみたらあいつがいなきゃ今頃ずっとネオアルカディアに居続けてたかもしれない
 俺達は、俺達の力で生きていくってネージュの言葉で決めたんだ、だから集落を作った。
 …ここで俺達がネージュを見捨てちまったら、集落を作る意味も何もなくなってしまう」

「…………そうか」
「だから頼む…! ネージュを、助け出してやってくれ」
「…ゼロ…!」
シエルの声が、嬉しそうなものに変わっていた。

「…言われなくてもそのつもりだ… 心配するな」
「! …恩に着る。有難う!」

ゼロの言葉が、人間の心を動かしたのだ。

「…そろそろ着く。あとは俺達に任せろ」
通信を切り、彼は戦闘態勢に突入する。
「…ここみたいね」

ザッ。整列した何千ものバリアントが一斉に足踏みと共に銃を構える音はいっそ心地よくさえ聞こえる。

「暴れてやるぜえええええええええ!」
駆ける。
「これだけいると倒し甲斐がありそうね」
振り回す。
「行くぞ…!」
跳躍し刃を軍勢の中心を割る。


戦いの始まりだ。

632俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十話後半:2009/08/26(水) 16:57:28 ID:riEKi5s.0
「らああああああ!!」
火炎弾が兵の山に次々と線を引いていく。
「参っちゃうわね」
彼女の周囲のバリアントが吹き飛ばされ、叩きつけられていく。
「はぁっ!!」
刃が叩いた地が周囲にエネルギーを撒き散らし、黒きアーマーたちを一掃する。

基地を取り囲んでいた5000の軍勢は15分で全滅、巨大な監獄に手分けして突入することとなる。
ゼロは屋上から、ファーブニルは1Fから、レヴィアタンは上層部から侵入することになった。

「ぉおおおおおおおおおおお!!」
「…何だこいつは」
ゼロを倒すべく屋上に咆哮を轟かせたのはイレギオン23.
かつてレプリフォース大戦の発端となったスカイラグーン事件でゼロが戦った相手を今世紀によみがえらせたものだ。

「本体は空中に浮いてやがるのか… ははーん、確かこいつは…」
ファーブニルの前に現れたのはD-2000。
ナイトメア事件でエックスがハイマックスと遭遇する直前に戦ったイレギュラーの改良版だ。

「さて。プロペラが邪魔ね」
ファンを切り落とし突入するはレヴィアタン。隅々までバリアントの警備が行き届いているこの基地の中で、数少ない警備が手薄な場所だ。
それでも直角屈折レーザー砲なども完備されている。手早く砲台を破壊、ファンもバリアントもなぎ払い扉の奥へ。
「…あら?」
どうやら正解だったようだ。巨大な吹き抜けにかけられた一本の橋を渡った先に囚人の捕らえられた牢屋の入り口が見える。

「………。」
だが、勿論そうは行かない。ガチャリと音がし、重い重い声が響きわたる。
「オンナァ…!?ハナシガチガウナ…オマエ、ダレダ…」
「………ネオアルカディアに所属していたなら、私の名前くらい覚えておくことね
 私でもあなたの名前くらい知っているわよ ヘル・ザ・ジャイアント」

かつてドップラー博士の事件でイレギュラーハンター本部を襲撃したイレギュラー、マオー・ザ・ジャイアントの後継機だ。
「濡れ衣を着せられてここに投獄されたと聞いているけど…私の邪魔をするなら戦うしかないわね」
「ゼロ、ゼロハドコダアアアアア!!!」
「ゼロ?」
「オレハ ココヲ マモッテイル…。バイルカラ、ゼロカラココヲ マモリトオシタラ シャバニ デラレルト キイタ!」
「成る程…」
両腕にはレヴィアタンの背より大きな直径の鉄球。超巨大レプリロイドとの戦いが始まった。

「イクゾオオオオオオオ!」
腕を合わせ、床へ勢いよく叩き付けると高い衝撃の波が発生する。

「相手がファーブニルならこれも受けてくれていたでしょうけど」
壁を蹴り、ジャベリンを一振り。
「私は四天王1身のこなしが軽いのよ」
反対の壁も蹴り、ジャベリンを下に構え頭を突く。
「…硬いわねえ」
チャージの構えに入る。

「スピリットオブジオーシャン!」
氷の竜は勢いよく飛んでいき、ヘル・ザ・ジャイアントの頭を一撃。
「まだまだ!!」
槍先を飛ばし攻撃を続ける。
「ウォオオオオ…」
「これでどう!」
飛び上がり、ジャベリンを高速回転。ヘル・ザ・ジャイアントの頭を何度も削った。
「巨大メカニロイドなんてものは大体これで倒せるはずなんだけど… 随分強化してくれたもんね」
息をついていると…
「はぁ!!」
「ヌォオオオオオオオオオオ!」
上の階から飛び降り、ヘル・ザ・ジャイアントの頭に強烈な一撃を浴びせゼロが現れた。

「…これを食らってもまだ倒れない。大したものね
 …それはそうと。ゼロ、こいつはあなたを待ってたみたいよ」
「オマエカ…! オマエガゼロカアアアアア!」
「…そうだ」
相手をゼロに変え、ヘル・ザ・ジャイアントの戦いは続く。

「ツブシテクレルワアアアアアアアア!」
両腕でゼロを挟み込むように叩き付ける。
ダッシュでこれを潜ったゼロは壁を蹴り頭にアイスジャベリンを一撃。
「ヌウウウウウ!」
左腕でゼロを殴りつけようとするも…
「そこまでだ」
セイバーで超硬質の腕を破壊。もう片方の腕も切り落とし…
「沈め!」
上からチャージセイバーを浴びせる。

その激しい衝撃はヘル・ザ・ジャイアントの巨体に激しいひび割れを生じさせ…粉々に砕け散らせた。
「ヒカリヲ!!! ヒカリヲクレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」


「上の階で見た通りなら この奥がネージュのいる部屋のようだ」
「クラフトとの戦闘もあり得るわ。私は脱出経路の確保に向かうから…あなただけで行ってきて」
ゼロは扉を開けた。

633俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十一話前半:2009/08/26(水) 22:31:55 ID:riEKi5s.0
「…!」
扉の開いた音に気づいたネージュは振り返る。
「どうしてここに。」
「お前を助けに来た 集落の人間に言われてな」

後は彼女を連れて脱出するのみ。
「話したいことはあるだろうがそれは後だ 出るぞ」
「…ええ」
しかし。
「そうはさせん!!」
クラフトだ。
「ここは妨害電波が発してある。転送は不可能だ
 そして今この部屋にも鍵をかけた 俺とここで戦ってもらうぞ」

ネージュを守りきりながら戦えるか?ゼロはそれを心配していた。
「彼は多分私を攻撃できないわ」
「…そういえばお前を守るためだと言っていたな」
「どうせ脱出は不可能だし、これから戦うのなら…その前に聞いて」

「私はかつて、ジャーナリストとして、ネオアルカディアにおいて、エックスの血も引かない、ミュートスレプリロイドでもない
 それでも強い、ある戦士を取材した。」

「取材を重ねるうち、私はその真っ直ぐな姿勢の、人間を守ろうとする誇り高き戦士に
 …惹かれて行った」

「…私も、他の人間とは違う活きた目をし、自らあらゆることを知ろうと積極的な彼女に
 惹かれて行った」
「変な話よね。レプリロイドと人間が好きあうなんて」

「…君は変わらないな こんな状況に置かれても」
「あなたは変わってしまったわね 自分の信じる正義のために何にも屈せず戦っていたあなたが
 今ではバイルなんかの言いなり?」


「…違う …俺は君のことを考えて…
 バイル様は…この地上の支配者だ この作戦でエリアゼロに棲む者たちを皆殺しにするつもりだ」
「…人間の、命まで奪う気なのね」
「だからネージュ、君にだけは生きて欲しくて俺はこの作戦に参加した!」

「さて、茶番はここまでにしてもらえないかね」
枯れた声が辺りに響き渡る。

光の柱が降り、人の形を取る。
オメガとの戦いにより滅んだと思われた恐怖の科学者レプリロイド。
彼は生きて…ここに姿を現した。
「ドクターバイル…!」
「そう、貴方が…!」

バイルはニヤリと笑い、口を歪ませる。
「…くくくっ、そうだ その目だ
 死を間近に私を憎み、生を諦めぬその虫けらの目こそが、私にとって何よりの糧になる
 これこそが支配者たる私にのみ許された幸福なのだ。」

「これで…これで解ったろう!今この世界に正義などないということが!」
「さぁ、どうするかねジャーナリスト 私に付き従うアインヘルヤルたちによりこのままこのちっぽけな地で死ぬか。
 それとも生き、『私のようなもの』に従いいき続けるか。
 まぁ、私としてはどちらでもよいのだがね?クヒャーハッハッハッハ!」
「…ゼロ。バイルやクラフトに気づかれないようにエネルギーをチャージできる?」
「やってみよう」

ネージュは、答えを出したのだ。
「私は死んだように生きるくらいならば  精一杯、今を生きて!笑って死んでみせるわ!」

ネージュはそう言って、拳大の丸い弾を投げる。
「今よ!!」
それは閃光弾。辺りは真っ白な光で覆われる。

「ハァ!!」
チャージセイバーを床に叩き付ける。
床が崩壊を起こし、4人ともが投げ出される。

まずは宙を蹴りバイルに一撃。
「小癪な…」
だがバイルは攻撃を受けるより早くワープ。手ごたえなく消えていったのだった。

そして落下。
「ふんっ!!」
目を塞がれたままのクラフトに奇襲攻撃。
「ぬぐうう…!!!」
大きな隙が出来た。もう一発。
「う!!!」
そして最後にチャージセイバー。
「くおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
壁を何枚も貫き、クラフトは吹き飛ばされていった。

「…ふぅ」
着地すると…先ほどとは全く違う場所だった。
最新設備の整った真新しい基地。
「参ったわね…」

634俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十一話後半:2009/08/26(水) 22:33:25 ID:riEKi5s.0
ここを脱出するのは容易だ。
だが…ネージュを守りながらであることが痛い。

苦しいがやれるだけのことをする他ないか…?
そう思っていると。

「おーう!!ゼロじゃねえか!!」
ファーブニルが背後から現れた。


「大分下の階まで落ちてきたようだな……」
「ここは危険な場所みてぇだから、ゼロ、お前は後ろを見張ってろ!
 俺が先に進むからよ!」

「いいだろう」

重厚な機械音と共にせり上がって来た足場にはバリアント兵。
「どっきやがれえええええ!!」

チャージショットで粉砕。
「またかよ!」
それは2回3回と続いた。

「…こりゃ参ったな」
エレベーターの巨大な縦穴。
手で取っ手を掴むと自動で上昇していく機能を持っているが、
この機能で上がれるのは一度に1人。
早く脱出しなければならないファーブニルにそれは出来ない。

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「!」
肩にネージュを乗せて飛び上がる。
「おおお!!!」
「きゃ!」
激突を免れるため天井にパンチ。
ゼロはゼロナックルで上へと昇り3人とも上のフロアへと到達した。

進むとすぐに槍にふさがれた通路とスイッチ。
「これはスイッチを押したりチェーンを引っ張ったりすると槍をどかせるタイプだ
 ただ1人通れるかどうかの時間しかどいてくれねえぜ」
「なるほど…そうなれば」
「下がってなぁ!」

ファーブニルは勢いよく槍を殴りつけ始めた。
「おらららららららぁあああ…!!」
背後から来るバリアント兵をバスターショットで撃ち殺しながらゼロは背後の音を聞く。
「随分…硬いようだな セラミカルチタン製か」

4本の槍を破壊するのに30秒。随分かかってしまったがこれで先へ進むことが出来る。

「くっ…ぜぇ、ぜぇ…」
「次は俺に代われ」

場所を交代。
ゼロは次の槍の扉をゼットセイバーで目にも止まらぬ速さで斬りつけ続ける。
「グランドブレイクぅ!!」
ファーブニルは床を叩き、衝撃でバリアント達を一掃する。

「開いたぞ」
10秒でそれを開けたゼロを先頭に再び進み…更に上のフロアへ進み、また2回槍の扉を破壊し通る。

「…坂道か」
天井にところどころ穴が開き、ずっとずっと下まで下り坂が続いている。
「敵がやりたいことは…わかるな」
「…アレね」

「っしゃ、走るぞおおおおおおおおお!!」

メカニロイドが降り注ぐ坂道を強行突破。
「やっぱ来やがったぜえええええ!!」
「ネージュを担いで逃げられるか…」
そう。重い重い巨大な球。坂道を転がり落ち、ゼロたちを踏み潰すつもりだ。

「世話が焼けるわね!」
鉄球を一刀両断して彼女が現れる。
「遅せーぞレヴィ!」
「レヴィアタンか。お前の基地は坂道が多かったな」

「それと同じ方法で突破するのよ」
レヴィアタンはジャベリンで床を叩き、反動で大ジャンプ。
ゼロもダブルジャンプのチップで飛び上がり、ファーブニルも持ち前の跳躍力で鉄球を飛び越す。
「後はこれを追いかけていれば坂道上の、死ぬ覚悟のバリアント達は皆ペッチャンコよ」
危険はひとまずは回避。彼らは鉄球を追いかけていくのだった。


「…3人とも、有難う。ネオアルカディア四天王に伝説の英雄が協力するところを見れるなんてね…助かったわ」
「今回のことが終わったらゼロの奴は俺らが倒すつもりだけどな!」
「もっと言えば、あなたの救出に来たメンバーにはハルピュイアもいたんだけど…どこに行ったのかしらね」


基地から見えるは海のほとり。
「ゼロ、ご苦労様…妨害電波もここなら大丈夫みたい
 キャラバンの人達も感謝してるみたいよ… みんな、転送するわ!」

その海を照らすはきらめく朝日。
夜明けの澄んだ空気の中…レジスタンス、キャラバン、ネオアルカディア四天王の三者は一丸となったことを確認しあうのだった。

635俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十二話 前半:2009/08/29(土) 00:24:39 ID:eC8OMZb.0
そうして再び、アインヘルヤル達が動き出した。
ゼロ達もミッションを開始する。


「ここが灼熱粒子砲か」

バイル軍が構えた巨大砲台。
これを用い、エリアゼロを焼き払うつもりだという。

「発射時刻が迫っています。安全に侵入できるルートをスキャンしていますが…」
「いや、スキャンはいい 俺が発射口から侵入してみせる」
「!? ゼロさん、それは危険すぎます!」

粒子砲の砲身の上には2層のシールドがかぶせられており、
ゼロはその外側のシールド上にいることになる。

ここにも敵はいる。ランチャー砲を構えたバリアント兵が撃ちだした弾を斬り即座にバリアント自身も斬る。
空中砲台も倒しながら内部シールドへと落下、

なぜかいる削岩機やドリルメカニロイド、引き続き空中砲台などを破壊しながら進んでいると…

「…む」

クラーケンのいた潜水艦に氷属性の青いドラゴン。
ペガソルタのいた要塞には雷属性の緑のドラゴン。
3度目のこの粒子砲では、火属性の赤きドラゴンが現れた。


「…炎のドラゴンか」

共通する攻撃は2つ、1つの攻撃だけがドラゴンごとに異なるのだ。

尾からのレーザーと、爪を使っての掴みかかり。
これはもう食らうのは3度目だ。
だが…


「ギャオオオオオオオオオオオオ!」
敵が吐いてきたのは炎の息。

「!!」
床に着弾するなり、炎の柱となり急激に燃え始める。その上…
「…何」

翼に当たる部分が他の2体とは違い…ファンになっていたのだ。
巻き起こされるは強風。
吹き飛ばしも引き込みも自由自在。
敵は炎の柱でゼロを燃やすつもりらしい。

「…」
だが大した風の強さではない。風に耐えきると同時に炎が消えた後、チャージセイバーで一撃。

問題はどこに着弾するかだろう。
遠くか、近くか、あるいはゼロを狙うか。そして炎が発生した後には風を巻き起こす。

ゼロはその攻撃を見極めて倒さなければならない。
掴みかかる攻撃のときや、攻撃と攻撃の合間に攻撃を行い続けた結果…
「少し長引いたが…」
やっと最後の一撃を加えようと…思っていたときだ。

「プラズマサイクロン!」
突如ドラゴンを激しい高圧電流を伴った竜巻が包み込み、
ドラゴンの全身を感電させると同時にその気流の刃で切り刻んだ。

そしてこの技の使い手といえば勿論…

「ハルピュイア!」
「崩れるぞ」
全身のアーマーをひび割れさせた、空の王者がそこにいた。

言葉とほぼ同時に、ゼロの足元は崩れ…落下。
二人は足元から、高熱の空間へと漬かることになった。

636俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十二話 後半:2009/08/29(土) 00:29:17 ID:eC8OMZb.0
「…内部シールドの内部…これが粒子砲の砲身というわけか」
「…来る」

着地してすぐに二人の頭上を轟音と共に灼熱のエネルギー塊が通り抜けていく。
「…アレか」
「ここで今のエネルギーを加速し、あの後ろの銃口に溜めるんだ
 そしてたまったエネルギーがエリア・ゼロの人間達を襲う。」

「生憎この先は一人分が進めるスペースすらまともに確保されていない
 粒子砲のエネルギーを避けながらどちらが進むかだが……」
「俺が行こう。お前はクラフトにやられた傷がまだ癒えていないのだろう」
ゼロは次の粒子砲のエネルギーが来ないうちにと走り出すのだった。
「しかし…奴も強いわけだ。随分と無茶なミッションを遂行していたのだな」

「小さなスペースを塞がれると困るものでな」
壁の向こうのバリアントを武雷突で刺し殺し破裂させる。
粒子砲内部には避難スペースは僅かしか設けられておらずそれぞれの間が空いていることもある。
…粒子砲が来ないうちになるべく進み、次のスペースへ身を隠さなければならないのだ。
だからこうして前のスペースの敵を破壊しておく。粒子砲が来る間際になって敵に邪魔されては遅いのだ。

耳を劈くような音を発して直径8mはあろうかというエネルギー塊が砲身を突き抜けていく。
「これを人間に浴びせるつもりか…正気の沙汰ではないな」
そして砲身からまた落下、その奥…エネルギー炉へ繋がる通路を進む。

そして、すぐにアインヘルヤルの待ち構えるエネルギー炉へとたどり着いた。

扉を潜ると…そこには。
「来たでありますね!?私は!アインヘルヤル八闘士が一人!ヒート・ゲンブレムであります!」
硬い硬いアーマーを背負った生粋の軍人がいた。

「私が!当作戦に身を置いたのは!バイルさまの人間を管理するという高き理想の実現のためであり!
 そしてそれ以上に!私が尊敬するクラフト隊長の指揮なされる大々的な作戦であるからであります!」

アインヘルヤル達はどれも、戦闘力は高くも性格面に難のある者たちばかり。
その中で、協調性に欠けるまでに真面目でありながらも、最もまともなのが彼だった。
「ラグナロク作戦の邪魔をする者は排除するのみ! 行動、開始!」
軍仕込みの偉く整った態勢でゲンブレムは戦闘態勢に入る。

「前進!」
慎重に一歩一歩前進してゆく。

「行くぞ」
まずは飛び掛り一太刀。
「回避!」
勿論ゲンブレムはそれをガード。
その次に何を繰り出すか?
「チェストチェストーーーーーー!」

いきなりゲンブレムは大技を仕掛けてきた。
ガードの態勢で腕に高熱をチャージし、炎として噴射しながら強烈なアッパーを繰り出すのだ。

ゼロは先の踏み込む斬撃と同時に地を蹴って元の距離をとり回避。
「いい攻撃だ」
落下してきたゲンブレムにチャージセイバーを一撃。
「うっ… …掃射!!」
頭をアーマーの中へもぐらせ、首の穴から火炎放射を繰り出してきた。
距離をとって回避した後、これも攻撃の後を狙い攻撃。

「突貫!」
四肢、尻尾、頭の全てをアーマーの中へと押し込み…穴から一斉に火炎放射。その勢いで空を飛び始めた。

「クラフトの部下だけはあるか…」
壁にゴツリゴツリと激突し、部屋全体を揺るがしながら上昇していく。

高い高い天井まで上昇したかと思えば…
噴射を止めた。このまま落下してくるか?…いや。

「撃ち方、はじめ!!」
脚の位置から炎を噴射し、頭からはチャージビームを発してきた。
あまりに高熱のその真っ直ぐで真っ赤なビーム。それは…粒子砲のそれと似ていた。
ゲンブレム自体が恐らく小型の灼熱粒子砲としての機能を持っているのだろう。

ぐるりぐるりと空中回転しながらビーム照射。
ゲンブレムは少ない動きで済むがそれを回避する側は大きく回って、ゲンブレムの火炎放射に当たらないようにして
ビームからも逃げなければならない。
…それは不可能なこととされる。一定以上の性能を持つレプリロイドを除いては。

早くもなく遅くもなく、ゲンブレムの動きにあわせて周囲を旋回…
「ここで終わりだ」
そして目にも止まらぬ勢いで、回転だけを続け止まったままのゲンブレムを斬り続ける。
1発、2発、3発、4発、5発…
全てを撃ち終わる頃には、ゲンブレムの体は満身創痍。
溜めたエネルギーを空にし、落下したところに最後の一撃が叩き込まれる。

「て、撤退いいいいいいいいいいいい………!!」
それは敵わず。ゲンブレムはその強固なアーマーを真っ二つに叩き割られ、吹き飛んでゆくのだった。

637俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十三話 前半:2009/09/03(木) 03:29:14 ID:8UvxggZY0
またも新たなEXスキルを入手するゼロ。
残党の始末をハルピュイアに任せ、息つく暇も持たず次なるミッションへと進んでいく。

「ゼロ…本当にいいのね」
「ああ。ここで休みを取るほうが俺としても不利になる筈だからな」

「…そう。それじゃ頼みたいんだけど」

今度のミッションは正に火急であった。
「エリアゼロに近づいている人工太陽を破壊してほしいの!」

見上げた砂漠の空には縮尺の違う二つの白き球。

一つは太陽…もう一つの空の上に赤々と燃える高熱の球、それはバイル軍が人工的に作り上げた
人工太陽だったのだ。

「…表面から破壊するのか」
「………ううん、内部から破壊してほしいの 本物の太陽と違って、内部の温度はさほど高くない。
 勿論人間である私達なんかは入れないけど、一般レプリロイドが出入りできるレベルの温度ではあると思う」
ゼロの強度は一般レプリロイドとは比較にならないものだ。
そして、深海と同じく、その防御力も無敵とは行かないことも承知。

「熱を帯びた一帯に長くいるとゼロでも無事ではすまないと思うの…」
「日陰を探して素早く移動しろと…そういうことか」
眩い熱の塊の中で、彼は戦いを始める。

バリアント兵も耐久力は無限とは行かない。
彼らもまた日陰にいて、人工太陽の死の日光から逃れつつ迎撃態勢を整えているのだ。

「すまないな」
死の光に焼かれるのとどちらがいいか。
バリアント兵を一刀両断して日陰を奪い、
「翔炎牙!」
続けて食虫植物型メカニロイドを新たに手に入れた能力で焼き殺す。
人工太陽表面とは比較にならない炎の刃は、
一瞬にしてそれの表面を溶かし切断、バターのように溶かし滑らかな断面を作っていく。


「上に向かうときに2つの扉があるけど、途中の方の扉には必ず入って!そこに人工太陽の動力装置があるから」
扉の中に入り、シールドと一体化した火炎放射器メカニロイドを発見。
「邪魔だ」
強固なそのシールドをゼロナックルでむしりとり、もう片方の手で本体を潰す。

そして動力装置を破壊、また上へと進んでいく。


「人工太陽の頂点にアインヘルヤルはいると思うわ」
「…まだ登るようだな」

「内部に入って 暑さをしのぐためにも、人工太陽を止めるためにも、アインヘルヤルの元へ向かうためにも」
「敵が密集しているんだろうな」

予想したとおりだった。
鉄球を撃ち出す砲台に、エネルギー弾を発射する砲台、ランチャーを構えたバリアント。
それら全てを破壊し、動力炉も破壊し更なる上層へ。

「…む?」
現れたのは9つの物体。
いずれも直方体の装置の中央にクリスタルが収まっている。

侵入者を見つけるや否や、中央の一つは周囲の8つを展開させ始める。
「エネルギー弾を撃ち出すビットといったところか」
一斉乱射が開始される。
火炎放射器メカニロイドから剥ぎ取ったシールドでエネルギー弾を反射していく。

「行くぞ」
攻撃を防ぎきったタイミングでそして攻撃へ転ずる。
振り下ろされた刃によってエネルギー弾を撃ち出すビットの半数を粉砕し、本体にも重大なダメージを。

それにあわせ、今度は中央の本体はビットを集めエネルギーを増幅…巨大エネルギー弾として撃ちだして来た。

「便利な盾だ」
これもシールドの前には無力…回避するまでもない。
ビットの数分を撃ち出したところでゼロはまたも本体を斬りつけ…今度こそビットを全て破壊。
…そのときだった。

「暴走か!」


全てのビットを失ったエネルギー砲本体が、大型エネルギー砲を辺りに撒き散らし始めたのだ。
「そのエネルギーはどこから来ている……?」
「人工太陽自体から吸収しているとでもいうのかしら…」

先ほどよりも速い速度の弾。破壊力も数段上。
これはシールドでは避けられない…素直にゼロは敵の周囲を回転し斬る方法を取った。

「ゲンブレムのような攻撃だったな」
対処法も同じ。あらゆる角度から連続で斬り続けるというもの。
あっさりとエネルギー砲を切り伏せゼロは上層へと向かっていった。

638名無しさん:2009/09/03(木) 03:29:47 ID:8UvxggZY0
「…よくこんなところで土木作業などできるものだな」
上層では侵入者撃退用にか、ブルドーザーのようなメカニロイドが灼熱の土砂を下界へと落としていた。
トラップとしての食虫植物型メカニロイドも今まで以上に多く配置されている。

明らかにこちらに手間を取らせようという意図が見えている。
それはこの移動に時間をかけられない空間の中では有効な手段といえるだろう。

「…どの道残された時間は少ない。エリアゼロまでこの人工太陽が到達する前にこの太陽の中枢に剣を立てなければ」
「もうすぐよ、熱も収まってきたし…今なら!」


扉を潜った先に…昨日エリアゼロを焼いたミュートスレプリロイドがいた。
アインヘルヤル8人の中で数少ない女性メンバー。

古風な喋りをする彼女の名は…
「チョットー 何でティターニャンの邪魔するワケー?あり得ないんだケドー」

ソル・ティターニャン。
彼女も炎の使い手で、以前は炎のストローを口に咥えていた…蜂型レプリロイドだ。


「この人工太陽でウザい人間達を焼いちゃうつもりだから邪魔しないでくれない?」
「人工太陽の中核はここか」
「無視とかありえなーい!!」
20世紀末の喋りのレプリロイドとの戦いが始まる。

「みたいなー!!」
羽のようなパーツを回転させ始めた。

「大方それを飛ばすつもりだろう」
飛びあがりチャージセイバーでティターニャンごと攻撃、破壊。

「いったーい!!」

ティターニャンは仰け反ると攻撃パターンを変化させる。
「流石にたくさん地雷を配置されたら何もできないっしょ!」
上下に浮遊しながら部屋を往復、地面に地雷を設置していく。

「厄介なものだな…」
「ばぁぁぁぁん!」
少し時間差を置いて一斉に起爆する地雷たち。
弾けた炎が部屋を埋め尽くす。

「もーいっかい行くよー!」
もう1往復。だが…

「させるか!」
ゼロは低空まで降りてきたティターニャンに向かって駆け、素早く…
「武雷突!」
「ゃああああああああああ!!」
必殺の一撃を繰り出す。

「な、何するワケ!?」
腹の奥までを、雷を纏った鋭いゼットセイバーで突きぬかれたティターニャンは
大きな傷を負い、激昂する。

「ウザいウザーい!!」
そして…口を開く。
「アンタから栄養吸い取ってやんだから!!」

ストローと思われたものは長い長いティターニャンの舌。
触手のようにしなり、燃え盛るそれで相手を串刺しにし、そこから蚊の口のようにエネルギーを吸い尽くすのだ。
「ギャハハハハハハハ!!」
伸縮する舌を潜り、背後から一撃。

追い詰められたティターニャンは、人工太陽管理者である彼女が持つ
最大の攻撃をぶつけにかかる。

「いっくよおおお!!」
両腕を頭の上にかざし、エネルギーチャージ。

巨大な、エネルギー球が出来上がっていた。
「燃えちゃええええええええええ!!」
腕を振り下ろし、それを投げつける。

床に衝突した塊は弾け、辺りに破片を撒き散らす。
すさまじい勢いで。

「………ど、どーよ!」
その膨大な熱量と範囲の広さでゼロを焼けるものと思っていた…だが。
「オペレーター、転送を頼むぞ!」
「了解しました」

炎の中から、火傷一つせずに彼は飛びあがってきたのだ。
そのエネルギーを刃に満たしながら。

「ありえないーーーーーーーーーー!」

床へと激しく叩きつけられ、叩き斬られるティターニャンの体。
それと同時に、人工太陽の床そのものを大きく裂き……



…空の上で全て大爆発を起こしたのだった。
「……早めに指示を出したが、危機一髪といったところか」

燃え盛る2連戦を駆け抜け、ゼロは一息つくのだった。

639俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十四話 前半:2009/09/06(日) 03:02:06 ID:OjTMeN7U0
残るアインヘルヤルとその部隊は2つ。
その内容を確認してみる。

「今までの作戦はどれも至急止めなければならなかったものばかり…
 コールドスリープ施設からの軍隊、ドリル型潜水艦爆破による大規模地震
 磁場区域からのコンピュータ破壊、空中要塞からの酸性雨攻撃
 灼熱粒子砲で人間を集落ごと抹消、人工太陽によるエリアゼロ焼き払い。
 …どれも危険なものばかりだったけど」

「残りは別レジスタンスベース跡からのナノマシン侵食と
 都市跡の異常動作。
どちらも目の前に迫った危機ではないわ。…少しだけでも休んで、ゼロ」

「…なら3時間だけ休むとしよう 今日中に戦いを終わらせる」


「おお、来てくれたか」
「ああ。メンテナンスを頼む」


「…ふむ。少しでも疲れが癒えるといいのだが…
 ああ、そうだ…ゼロ。君も大分敵のパーツを収集してくれたことと思う
 少し見せてもらう、よ…っと」
ゼロが持ち帰ったパックの中に収納されていた敵のパーツを取り出すセルヴォ。
「…ふむ。…うむ」
何か作れはしないかと、思索を巡らせる。
「……………少しゼロのボディとの相性も考えなければならんな」


3時間後。
ゼロが選んだのはナノマシン侵食を食い止めるミッション。
「…あの木がレジスタンスベースか」
「ええ。別レジスタンスのものだけど」

鬱蒼とした森の中に一本の大木。
その根元がドアになっていて、その扉の中が旧レジスタンスベース、
今では地下樹海となった呼ばれた場所になっている。

「…梯子がないな」
地下へと通じる梯子がない。そのためゼロは
一気に地下深くまで落下することとなる。


「砲台の出迎えか!」
右から左から撃ち出されるレーザー。壁を左右に蹴りながらセイバーでそれらを破壊し落下。

太い植物の茎の上へ足をおろす。
「ベース内全体が木で溢れていると…なるほどな」

壁、天井、通路…全てが植物で覆われた空間。
ゼロは植物の茎をゼロナックルで毟りつつ、
現れる植物型メカニロイドやバリアントらを斬り倒しながら進んでいく。

「ここから一度登るようだな」

通路を登っていくとそこには芋虫型メカニロイド。
狭い通路を回りながらの戦いを制した後にまた落下。

「…上を進むか…それともこの分厚い蔦の壁を毟るか」

ゼロの場合は後者の方が早い。
通路全体が蔦でぎっしり詰まった通路をどんどん突き進んでゆく。


「…不安定な足場に出たな…下は……見えないな」
蔦の向こうの通路に出たところでさらに奥へ飛び移り…

幼虫メカニロイドが俳諧する縦穴を登った先に敵はいた。


「あら?いらしていたのね」

640俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十四話 後半:2009/09/06(日) 03:03:37 ID:OjTMeN7U0
絡ませた両脚をドリルのようにして天井の穴から落下してきたのは女性の植物レプリロイド。
ティターニャンに続き、ここにいたのも女性のアインヘルヤルだったようだ。
「私はノービル・マンドラゴ この前は品のないやり方だったわ…ごめんなさいね」

「そうそう。…あなたがそんなにいきなり来るものだから少ししかおもてなしできないのだけど…」

そういってマンドラゴは潜り…
「ご馳走するわ!」

地中から上半身だけを出し、オイルの蜜を撒き始めた。
「!!」

その、甘い香りのする大量の蜜はゼロのボディにかかり…

「あらあら♪」
それを蜂メカニロイドの標的とする。


「…そういうやり方か」
蜜で滑りつつ大量の蜂メカニロイドを倒してゆく。

「ごきげんよう!」
上半身を現したところに三段斬り。

「元気なことね…」
再び潜り…
「ごきげんよう。」
現れた所に斬りかかるが…

「はぁぁ…」
再び全身を現し、蜜を自らに振りまき回復を図るマンドラゴ。
「何!?」
その蜜はチャージセイバーすらかき消す謎の力を持っている。
防御技としては優秀なものだろう。


「さぁ、みんなにもご飯をあげないといけないわ」
種を撒くとそこから食虫植物型メカニロイドと種のように弾丸を吐くメカニロイドを生成。

「ナノマシンの力を見せてあげなさい」
彼女はトラップのスペシャリストと言えた。


「邪魔だ」
セイバーで一刀両断、すぐにマンドラゴへバーニングショットを叩き込む。

「うっ…!」
銃口から撃ち出された形なき爆弾はマンドラゴのボディに着弾、炸裂。
マンドラゴのボディを吹き飛ばす。

「キィイイイイイイイイイイ!熱い、…熱いわあああああ!!」
マンドラゴはボディを高速回転させ辺りを破壊して回る。
それを飛び越えて昇炎牙で斬り上げる。
「はぁぁあ…!!」


上空へ飛びあがったマンドラゴはゼロの真上へ飛びあがり…
「これならどう!!」

脚をドリルにして一直線に落下してきた。
ゼロはそれを避けてチャージセイバー、そしてもう宙を蹴り飛び上がり、
震撃を回避する。

「…なら仕方がない
 あなたはもうこのまま、あの子達に食われてしまいなさい…!」

追い詰められたマンドラゴは地に潜る。
「さぁ、坊やたち!!」
前の蜜はとうに効果を失っている。
なので蜜をゼロへ向けて放る。

…そこをゼロは逃さなかった。

「待て」
「あがぁっ…!?」
ゼロナックルでマンドラゴの首を持ち上げ、
「ぎやあああああああああああああ!」
引っこ抜き…
「うっぐ!!」
投げつけ、
「う…!!」
壁へ叩きつける。

「悪いがお前達の食事には付き合っていられないんだ」
大量の水月刃を走らせマンドラゴを攻撃…

「なんてことを…っ!?」
その植物のような体をぶつ切りにしたのだった。

「いやぁぁぁああああああああ!!!」
金切り声をあげ燃え上がるマンドラゴの体。
それは地下樹海全体へ燃え広がり、炎の海へと変えていった。


そして残るアインヘルヤルは後一人。
あの、鶏だけである。

641俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十五話 序盤:2009/09/09(水) 01:26:39 ID:l8v3tu5w0
最後のアインヘルヤルは都市跡のビル最上階に待ち構えている。

『生きた都市』シエルはそう呼んだ。
聞いただけだったその意味を、ゼロは身をもって体感することになる。

町の中は異様な雰囲気に包まれていた。
人の気配を感じないのに…ガシャリガシャリとあらゆる機械が作動しているのだ。

人間では解らないだろう。
だが…レプリロイドには解る。びりびりとした電磁波が…。
セキュリティプログラムの誤作動…
それを引き起こしているのは恐らくバイル軍。
機械から機械へと伝播し続けるウイルスはやがて、町全体を基地へと変えることだろう。

「この巨大な建物がそうか」
「はい。1Fの入り口から侵入して、中庭部分に立つ一本の塔の機能を停止させてください
 その塔、コントロールタワーがこの都市のセキュリティを狂わせるウイルスを発している根源と思われます」

シャッターが開く音。中から一直線に走り抜けてくるはメカニロイド。
交差しながらその車体を両断し、走る。

シャッターの中へ突入、内部で跳ねる砲台メカニロイドを続けざまに斬り飛ばし、
ベルトコンベアフロアへ。

「これも動いているか。むしろ好都合ともいえるが」

動く装置にゼロナックルで掴まり、飛び移りながら上階へと移動。
待ち構えていた敵を倒すと…

「…」
今度は壁や床がブロックとなり、部屋の中を動き回っている。
しかしながらその動きは規則的で、ゼロほどの速さを持てば潜り抜けるのは可能なようだった。

「だ、大丈夫ゼロ!?」
「問題ないな」

上へ、下へ、後ろは振り返らずに前へ。
軽やかな動きで全てをかわし、シャッターを開けると外気が吹き抜ける。


「コントロールタワーか」
建物内の壁に囲まれた吹き抜けのスペースの中に、赤褐色の2階建ての塔が一つ。
「はい。非常時にのみ作動し立つもので、都市全体に電波を送り込む役目を担っています」

「タワー内の8つ全てのキーディスクを抜き取ってください、それでタワーが機能を停止するはずです」
タワーにはメカニロイドが群がっている。
1体倒して1つめ。2体倒して2つめ、3つめ、3体倒して4つめ。

上の階へと移動し5,6つめを続けて抜き、光弾を発射するメカニロイドを倒して7つめ。
虫型メカニロイドを無視して最後の8つめを抜いた瞬間…

「!」
「やり……し…ゼ…さ…!」
「ゼ…ロ………!?」
バチッ、という大きな音を立て、タワーから電波が激しい乱れを起こし、通信をシャットアウトする。
そしてタワーの機能が停止…ゼロを乗せたまま落下する。


「……聞こえるか」
「ええ…成功したみたいね」
「有難うございます、ゼロさん。…次はメインコンピュータです
 そこでも制御は行われていて、恐らくはアインヘルヤルが指揮を執っているものと思われます」
「…相変わらず機械の動く音が聞こえるようだが」

「ええ。メインコンピュータの直接の影響下にあるものと思われます
 アインヘルヤル打倒を最優先事項としてください」

タワーは地下へ潜り、タワー上部から脱出したゼロはメインコンピュータ制御室へ向けて走り始める。


その先にはメットールたち。
顔を出したところを叩き、飛び移りながら先へと進んでいく。

ブロックは相変わらず作動している。
だがタワーに来るまでに遭遇したものと比べるといささか規則的に動いているようにも思える。
目指すはアインヘルヤル。一直線に登っていく。

「…またか」
ワープする針のトラップ、クロスバインが出入りするベルトコンベアの広い空間。
クロスバインを始末しながら手すりに掴まり、流れながら飛び移りながら進んでいくと…


最上階だ。
「システム制御室です 強力なエネルギー反応を感知!気をつけてください」
「解っている」

最後に残るは鶏型のアインヘルヤル。酸の弾を羽から撃ち出すその攻撃は素早かったが
実際戦うといかなる敵であるのか。

642俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十五話 中盤:2009/09/09(水) 01:27:23 ID:l8v3tu5w0
「…」
潜った先には…小さな鶏型ミュートスレプリロイド。やはり彼だ。

「コキャーーー!!お前、またきやがったな!今度こそ俺様がガッチガチにしてやる!」
ゼロを恐怖で凍らせる?それは無理な話であろう。
ゼロはセイバーを引き抜く。
「このフープラ・コカペトリ様を馬鹿にするやつはみんな、止まっちまえばいいんだ!!」
彼には己へのコンプレックスが見えるようにも思える。
小さな己を大きく見せたいという気持ちか。

追い詰められたこのような人物はどういう手で来るのか?油断は禁物。

最後のアインヘルヤルとの戦闘が始まる。
「こきゃあああああ!」

部屋の段差が作動し始める中、コカペトリは素早く突進。
ゼロはそれを飛び越えて、その背中に三段斬りを叩き込もうとするが…
「きゃあ"!!」
コカペトリはそのまま尻をゼロの方へ向け、そこからカプセルを発射してきた。
「た、卵!?オスなのに!」
シエルは驚愕する。
ゼロは発射された卵により三段斬りを中止せざるをえなく、後ろへ飛び
卵に脚が生え、メカニロイドとして動き回るそれを破壊。

アイスジャベリンでコカペトリを撃つ。
「ちめてっ!!」
ダメージはあるようだ。
だが…コカペトリは一切ひるむ様子を見せない。
「溶けろ!!」

あのときの技だ。酸の塊を弾として、複数一気に羽の下から撃ち出す攻撃。
「させるか!」
クイックチャージチップで倍の早さで溜まったその力をコカペトリにぶつける。
「動くなっ!!」

だがコカペトリはその一撃を見舞われても動くことをやめず、
そればかりかこちらに動くなと言い、羽をガンのように飛ばしてきた。
「ぬ!?」

先端には針、羽は刃。空をひらりひらりと舞う羽毛の刃の合間からバスターを浴びせる。
「黙れ!!」

コカペトリはそれでもなお速く動く。
体の中心からくすんだ色のエネルギー弾を発射し、ゼロめがけて飛ばしてきた。
「何…!?」
速すぎる。
ゼロはそれに被弾…ダメージこそないものの
ゼロのボディを一時的にAIから切り離した…止めてしまったのだ。
「もらったぜえええええええええええ!!」
「動け…動け!!!」
それは電波ウイルスによるボディハッキング。

早く体との通信を再開すること。体と心を繋ぎなおすこと。
「きえああああ!!」
「はっ!!」

一瞬ゼロの方が速かった。
ゼロはボディに巣くうウイルスを自らの力で排除し、
体を再び自分の精神の管理下へ置いたのだ。


「行くぞ!!」
飛びあがり…
「墜磐撃!」

空中で柄を両手で握り締め、刃を床に対し垂直にし突き立てる。
「ごぎゃあああああああああああ!!」

チャージセイバーを凌ぐ威力を持つこの技。
弱体化した今があるとはいえ、ひとたび食らえばアインヘルヤルも無事ではすまない。


「貴様ぁぁぁぁあ!!」
力任せに突進するがゼロの速さには追いつけない。
素早く刃を引き抜き、コカペトリから遠ざかりバーニングショットを一撃。
「ぎぇあ!!」

あと残るは一撃といったところか。
…だが。

643俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十五話 終盤:2009/09/09(水) 01:30:29 ID:l8v3tu5w0
「…やったな、やったな、やったなああああああああああああああ!!!」

バチッ!!!!
バチチチチチ!

コカペトリが地団太を踏む。
辺りの空気が軋み、計器が狂い、通信が乱れる。

…そこかしこから火花が散る。
コカペトリは羽を広げ、閉じを荒々しく繰り返し、ばさばさと刃の羽をばら撒く。

「俺を涼しい顔で見下しやがって!! 見下しやがって!!!」

最後のアインヘルヤルの力はボディハッキング…レプリロイドの機能停止。

だが…強力なものは、もはや動きを止めるだけにとどまらない。

「タイムショーーーーック!!」
天井へ舞い上がったコカペトリは最強の攻撃を始める。
辺りの時間を止めたのだ。


強力過ぎる光、それによって止められるゼロの機能。
それはもはやボディだけでは済まない。ゼロの精神すらも機能を停止…
全ての機械を静止させる脅威の能力だ。


強力な発光と電磁波の発生。
それにより、一瞬にしてレプリロイドの体にショックを起こす。

体が固まり、何も考えられず、何も喋れず、反応もなく、
体に一切の機能が働かず、再起動もままならなくなる。


時間停止と呼ばれた力の実態。石化能力とも呼ばれている。
だが考えてみて欲しい。それは…

「ショケイ ノ ジカン ダ!」

それは死と何が違うのだろうか。
秒ごとの心臓の音や動力炉の稼動音。刻まれる秒針の音。それらはまるで同じ…
生命の時計が止まることは…それは死になんら変わりないのだ。


そしてコカペトリはその死の時間停止に加え、
酸の雨を降らし、一瞬でその死体を腐食させるつもりなのだ。

「有能な俺を馬鹿にしたバーカな人間の味方め!よかったなぁ!
 これで馬鹿な人間みたいな死に方ができるぜえ!!!!」

酸の固まりが天井に打ち付けられ…天井を破壊。
飛び散った酸は…雨へ変わり…

ゼロへと降り注ぐ。


…彼は、優れたレプリロイドだ。
英雄と呼ばれ、シグマやネオアルカディアと戦った最強の戦士だ。

「!!」

…そして、自らに打ち勝った戦士だ。
自らのボディを御することにおいて…


彼は何より強かった。
「ぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

精神が怒号をあげる。
体を取り戻す。


「う…」
酸の雨がゼロの体に到達するその前に…。
ゼロは体勢を低くし走りぬけ…

「そ…」
両腕でセイバーを握り…

「だ…!!!」
その光の刃を走らせ、床との摩擦で高熱を発し…

「あああああああああああ!!!」
斬り上げる十八番 翔炎牙。


「うそっ……!?」
度肝を抜かれたとはこのことか。
石より硬く、鋼鉄より硬いその技と、体と、意思の前に…
体を石のようにして、彼は散っていったのだった。
「うご…かな……い…!?コキャーーーーーー!」


こうして最後のアインヘルヤルを撃破。
「…ゼロ、お疲れ様!」

ひとまずはラグナロク作戦を止めることは出来たよう。
ゼロは…レジスタンストレーラーへ帰還、体を休めるのだった。

644俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十六話 前半:2009/09/09(水) 02:53:04 ID:l8v3tu5w0
「よく頑張ったね ゼロ。」
「…当然のことをしたまでだ。…チップの開発は出来たか」
医務室にてメンテナンスを受けるゼロ。
8人のアインヘルヤルと、クラフトをも退けてもその表情は少しも緩みはしない。

「いや…もう大方のチップは手元にあったようでね……」
「そうか」
「…一つだけ出来たのだが…その前に聞きたい」


「何だ」
「…バイルを倒すつもりなのかい」

何故今更聞くのか?
…セルヴォはそれが自分のことながら解らなかった。
チップのことを聞くということは、戦うつもりであることは明白だというのに。

「…ああ」
「クラフトはそう君にとって壁となる存在ではないと思う」
「過信は禁物だ」


「…だが。私にはバイルのあの余裕が何を意味しているのか解らなくてね」
「……」
「クラフトなど今残る四天王の残り3人のうち1人がいれば勝率は五分五分。
 2人が力を合わせればおおよそ勝てる。3人なら確実に倒せるはずだ」

「バイルは何かを隠していると見るべきだ… 何であるのかは、わからないがね」
「…セルヴォ。あんたが開発したチップを見せてくれないか」

ゼロは、セルヴォの握った拳を見つめる。
「…そうだな これが最後の戦いとなるならば、
 これを見せておこう」

それは真っ黒なチップ。
「…バイルチップにも似ているが」
「それをヒントに作ったものではあるね」

「…不純物を大幅に混ぜて、ボディに激しい拒絶反応を起こす これは…『毒』といっていいチップだ」
「敵への罠か…?」
「いや、君が自分自身でこれを体に仕込むんだ。君の体の構造を考えた末開発したものでね」
「…説明してもらおう」


「君の体は、逆境をチャンスに変える…
 ピンチに置かれることで、より強くなろうという性質を持っている。
 無論、デメリットは大きいけどもね」
「…」
「このチップを体に組み込むことで君は内なる力のその全てを発揮できるようになるだろう
 大きな体への負担と、引き換えにね。
 君にこの後の全ての戦いに無傷で勝つ自信があるならこれをもっていくといい
 圧倒的な戦力差で戦いを収めることが出来るはずだ」

「…貰っておこう」
「これを使うときは相当に追い詰められたときにしておくんだ…
 そんなときが来ないことを祈るがね…」


その翌日。
…その祈りはすぐに破れることになる。


「…バイル軍の動きがない。一体何が…?」
そのときだった。
「シエルさ…!ゼ…さん!」
「コルボー!?」

通信先はレジスタンスベース。
「一体どうしたの?」
「…」

「今べ…スのコ…ピュ…タが捉え…ので…が
 遥…上空…巨大…エ……ギー反…が!」

「…遥か上空に巨大なエネルギー反応…といったところか?」
「…い!場…は… 衛星…道上!危…です!シエ…さん!退避…!」

「…衛星軌道上の…巨大エネルギー!?」
「あ…りにも…大で…信が… …!!」

そのとき。
轟音がこだました。

高まった強烈なエネルギーがエリアゼロ近辺に注ぎ込まれ…
地を抉り、大地震を引き起こしたのだ。
聴覚に強引に割り込む衝撃。
体が大きく揺れ、ゼロ以外はたちまちに吹き飛ばされてしまう。

「クヒャーーーーハッハッハッハ!!」
そして続いて聴覚へ叩きこまれたのはその張本人の声。

645俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十六話 後半:2009/09/09(水) 02:53:37 ID:l8v3tu5w0
レジスタンストレーラーとレジスタンスベースの通信に割り込まれたのだ。
「ドクターバイル!」
「気づくのが少しばかり遅かったようだな、レジスタンスの豚どもよ!」
ネオアルカディアの頂点に君臨する狂気の科学者は…
今回の、小規模すぎると思われた作戦の全貌を明らかにする。


「見るがいい!この衛星砲『ラグナロク』の姿を!!
 これの力で地上を無差別攻撃、灰燼と変えてゆく…これこそが本当のラグナロク作戦だ!」
地上にいながらにしてラグナロク砲を遠隔操作。
バイルには…もはや、敵はいなかったのだ。

「…バイルの奴、そんなものを…!」
「ネオアルカディアに殴りこもうぜ!!」
「馬鹿ねぇ…相手はネオアルカディアの人間全てをいわば人質にしているのよ!?」
三天王も到着していた。
だが…これほどのメンバーが揃ってもなお、なすすべがないのが現状だった。
「今まで貴様らが潰してきたのはラグナロクが完成するまでの時間稼ぎに過ぎん!
 さぁ無能な、哀れな虫けらどもよ!泣き叫ぶがいい、足掻くなら足掻くがいい!
 そして最後に絶望に塗れて死に絶えるがいい!!」
どうすれば…?
あまりの事態に思考が停止しかけていた、そのときだった。

「それはどうかな!」
「…!?」


誰もが…耳を疑った。
そのタイミングで割り込んできた声は…
「貴様、クラフト!? …何をしている!」
「…バイル、俺はもう貴様の思い通りには動かん!!」
「な、何…!?」

「俺たちは一体何のために戦っている!
 俺たちは一体何を信じている!!
 …今のこんな人間達のためでも、お前の掲げるような世界のためでもない!
 そこを動くなバイル… ラグナロクの標的はエリアゼロではない…。
 …ネオアルカディアにいる、お前だ!!」

発射の準備は出来なくとも、発射のターゲットは精密に追尾が可能。
「く、貴様…あの女に唆されたかぁぁぁぁ!!」
「一度そのネオアルカディアを破壊しつくし!新たな世界を築くんだ…
 もはやそれしか道はない!!」


ドスンと叩きつけられた音。
クラフトの拳が、コントロールパネルの発射スイッチを押したのだ。
「おのれええええええええええええええ!!!」


「な…何てことを…!!」
発射までは時間がある。
このままではネオアルカディアの全人間が死に至ることになる。
逃げようのないラグナロク砲の恐怖…

シエルは真っ先に行動した。
「レジスタンスベース!!レジスタンスベース!!
 応答して!お願いだから、今から全メンバーをネオアルカディアに突入させて!
 一人でも多くの人々を助け出すの!強引でもいい!」

「わ、わかりましたあああ!」
「もう、私達の戦いで傷つく人たちが増えて欲しくない…!」

「…ラグナロクの正確な座標は割り出せませんでした…
 ですが、クラフトの反応を元にラグナロク制御室周辺へ転送出来るようになりました!
 如何いたしましょう!」
「決まっている…」


「俺がクラフトを止めに行く。
 …最後まで諦めるな、シエル 俺は行くぞ…」
「要するに人間を助け出して、バイルの野郎をぶっ倒せばいいんだろう!?」
「私達もやるわ …必ず、皆を助け出してみせる」
「全ては、人間達のため… それがエックス様から我らが受け継いだ志!」


「…するべきことは、決まったな」
こうして、ゼロはラグナロクへと突入していく。
三天王は、ネオアルカディアへと向かっていく。

「転送!!」
「無理しないでね、ゼロ!」

限られた世界を守るために。

646俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十七話 序盤:2009/09/10(木) 03:16:06 ID:yCw74SzQ0
「制御室までは一本道となっているようです
 ゼロさん、お気をつけて!」
「ああ」

「ファーブニル、あんた力あるでしょ!?
 ここで私と一緒に人間達を避難させましょう!」
「よっしゃ、任せておけぇレヴィアタン!!」


「バイルは一体どこにいる…!?」
そしてそれぞれの戦いが始まっていた。


ラグナロク内部にもバリアントの大群。
「…動かなければお前達に危害は加えない」
しかし…バリアント達は聞く耳すら持たずにランチャーを構え撃ち始める。
ゼロは撃ちだされたミサイルを斬り、バリアントを切り捨てて進む。
「……どういうことだ」
クラフトはもはやバイルを敵に回した。それでも尚彼らはゼロに襲い掛かってくる。
彼らはクラフトに従っていたというのか?それとも…
「…先を急ぐか」
心の無い兵を切り刻みながら進んでいく。


「バイル…!」
ハルピュイアはネオアルカディア最上層、聖域の玉座でバイルを発見する。
「クヒャーハッハッハ!…何だ、お前も死にたいのか?」

「死ぬのはお前一人だ…!
 ここでお前を殺せばラグナロク砲は撃たれない…!
 覚悟をしろ、ドクターバイル!」
もはや彼は全てを諦めていたのだろうか。
一歩も動かずに、ラグナロク砲の格好の的となるつもりであるらしい。



「…その道はメインルートではありませんので…」
「解っている。だがこれが最短ルートなのだろう?」

天井にぶら下がる装置を伝って、先へ先へと進む。
その道は道と呼べる形をしておらず、
監視用のテリーボムや、侵入者を焼き殺すレーザー砲も配備されていて
こんな状況でなければ絶対に使うことのない、危険な場所といえた。


だがもうじき…クラフトのいる制御室へたどり着く。
最後の扉を潜り…制御室への一本道の通路へ。
そして扉を開けようとしたそのときである。



空に一筋の、赤紫の光が降り立ち…
ネオアルカディアの高い高い塔を一直線に刺し貫いた。

「クヒャーッハッハッハ!! アーーーーハッハッハッハアアアアアアアアア!!!!!!」
彼に注ぎ込まれる膨大なエネルギー。
地を割き、町を粉砕し、吹き飛ばす圧倒的パワー。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

100年の狂気の持ち主は…笑い続けていた。
…跡に残ったのは、機械の破片のみ。


「…放たれた!?」
シエルが。
「…間に合わなかったか!」
ゼロが。
「危ない!!」
レヴィアタンが。
「なんてこった!!?」
ファーブニルが。
「……」
そしてクラフトが、その様子を見つめていた。


「…………クラフト」
地球のよく見える、星の海を臨む部屋で彼は無言の男にたどり着く。
「…」

「何故ここに来た、ゼロ。」
「お前を止めるために来た」
クラフトは目的は果たしたと思われた…だが。
「これから第二発を発射するつもりだ
 …ネオアルカディアを全て破壊しつくさなければ、人間達の目は覚めない」
「! …これ以上ラグナロクは撃たせん!」


「…今のこの世界は目覚めなければならない。
 イレギュラーと呼ぶことはもう覚悟してのことだ だがな…
 この世界には、人もレプリロイドも裁く何者かが必要なんだ」

蒼き星の絶望に身を投じた、一人の男がそこにいた。
「…始めるか」

クラフトとの二度目の戦い。
ゼロはセルヴォから渡されたチップを体に装着し、戦いを挑む。
ゼロの体が…漆黒に染まってゆく。

647俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十七話 中盤:2009/09/10(木) 03:16:43 ID:yCw74SzQ0
「「ゆくぞ!!」」

両者の声が重なる。
クラフトは以前の戦いでの切り札を最初から使用してきた。

飛びあがり、バズーカの噴射の反動で空を飛び、地上を焼き払うものだ。

「始めに出された所でその技はすでに効かん!」
噴射が弱まった所を飛び越えて一撃。

「効く効かぬの問題ではない!!」
飛びあがり、今度は巨大爆弾を投げつける。
「俺は戦わなくてはならないのだ!!」
地上で炸裂し、小型爆弾となったその合間を縫いチャージショット。

「退けないのはお互い様だろう、ゼロ!!」
膝から爆弾を射出。

「させるか!」
空中でそれを破壊。
クラフトに三段斬りを浴びせる。
「ぬ、お、おっああああ!!」
最大限まで力を引き出してのその一撃は重く、強い。

「…何だ…」
傷口を庇いながらクラフトは前転。
「以前とは次元の違う重みだ…これは…!?」

黒き体のゼロはそのまま近づき、武雷突を仕掛ける。
「ぐ……っつおぉぉぉぉ!!!」

腹の奥まで刺し貫かれる痛み、そしてあまりに強烈なその一撃は
切り口を抉り、電撃でマヒさせ、焼くのだ。
「ぉ、…お……!!」
それでも。
「…近すぎだ!!」
バズーカを振り回してゼロに距離をとらせる。
「…がはっ、くっ……」
「諦めろクラフト」

前回より戦いは早く決着がつきそうだ。
そう思われたが…
「まだ…この技を見ずして…」
クラフトは手に持ったバズーカを床に突き、立ち上がった。

「俺に勝ったと思うな…!」
と思ったら、その床へ向けた銃口を思い切り放ち始めた。
「これなら、どうだ…」
多機能バズーカの左右に、収納された大量の何かが飛び出てくる。
「…!」
ミサイルの列だ。それも左右に3セット、計6セットがぎっしりと詰まっていた。


「エンドオブザワールド!!!」
クラフト最強最大の技。
真上へのジェット噴射で空を飛びながら、ミサイルの雨を降らせて地上全てを完全に破壊する力技。

第一波は飛び越え、第二波も飛び越える。

第三波は飛び越えられない。
チャージセイバーでミサイル全てを空中で誘爆させて足場を確保。

「…ぬ、……何ぃ!?」
落下してきたクラフトは驚きの色を隠せない。
自分の切り札さえもゼロの前には通用しなかったのだから。

「…まだだ……」
クラフトにはそれでも戦意が残っている。
ゼロはセイバーを眼前に構える。
「まだだあああああああああ!!!」
レーザーポインタがゼロの顔を示す。
バズーカ砲を直接ゼロの顔面にぶつけにかかるつもりなのだ。

引き金を引く。

だがそのときすでに…
「墜磐撃!」
ゼロはクラフトの真上にいた。


柄を両手で掴み、最大限の力を乗せて一気に刺し貫く最大出力の技。
クラフトの首元から脚先まで、その巨体に刃が一気に埋まる。

「ぁ……………………っか…………!!!!」
声なき叫びと共に全身を震わせ…膝をつく。
「これが…英雄の力……!!!」

ゼロは…ただ、爆発していくその体を見ていた。

648俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十七話 終盤:2009/09/10(木) 03:17:25 ID:yCw74SzQ0
「…………」
焦げ付いた体はもはや動かない。クラフトの敗北だった。
口だけを辛うじて動かす。

「…何でこんなマネをした」
「…こんなマネ…だと?」
ハッ、と乾いた笑いを一つ。


「…お前は、何を信じてここまで戦っているんだ
 人間達は自分のことしか考えず、レプリロイドを命とも思わずこき使い…
 また一方では戦うことしか出来ない、単なる道具と化したレプリロイドの姿がある…
 …何を信じればよかったんだ。お前は何を信じている」
クラフトは…どこへ向かうことも出来なかったのだろう。
道しるべを失い、あてもなく走った所で…空しかったのだ。

「…俺には、友との約束がある」
「友…だと?」

「エックスに任された人間とレプリロイドがこの世界にはいる。
 …エックスに任された世界がある。
 あいつの言葉を裏切らないためにも…俺が信じた友の信じた世界を俺は信じる。
 だから…俺は戦う」
その言葉に偽りはなかった。
果てなき自らの闇を切り裂いたあのときから…いや、
友の闇を打ち破ったそのときから彼はロックマンの任を任されていたのだ。

「……友か。 …俺は……ネージュの言葉すら信じてやれなかった」
空の上の上で…天を仰ぎ彼は呟く。

「…俺のことはもうここに捨て置いてくれ」
「…何を言っている」

「…俺はもう、ネージュに会わせる顔もない。
 もう…いいんだ」

或いはこの場にいたのが他の者なら彼を助けたのかもしれない。
だが…ゼロは自らで助けないというそのことを、決めた。
その死に方が…一つの生き方であるから。
「……解った」


「…ゼロ、ゼロ! …聞こえる?」
「シエルか」
しばらくして、通信が入った。
「…クラフトは?」
「…」


「…俺が、倒した」
「…! …そう。 …え? …うん
 ゼロ。ちょっとネージュさんに代わるわね」

「…ゼロ。クラフトは…死んだのね」
「ああ。…あんたの言うとおりだ 俺たちは結局戦うことしか出来なかったな
 クラフトは…あんたに謝って最期を迎えていった。」
「そう。…クラフトを止めてくれて、有難う。
 私の好きなクラフトに戻ってくれていたのよね…」
「…そうだろうな」

その場に残された鉄の塊から
ゼロは静かに、青い星に目をやった。




「こちら、コルボーチーム!
 …ネオアルカディア跡地にて、住人達を避難させました!」
「…そっちはどんな状況?」
「まるで地獄です
 あちらこちらで煙があがり、溶けた瓦礫の山があるだけ…
 逃げ遅れた人たちは…多分もう」
「…そう」


もう、そこにはネオアルカディアなる場所は、影も形もなかった。
「…よくやってくれたわ、有難う。
 ひとまずこれで…全て、終わったことになるわ。…本当に、有難う。」

649乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/09/10(木) 21:55:32 ID:dO7HFBz60
特攻野郎Nチーム!

シャーリィ「アタシはリーダーのシャーリィ、通称ソルジャー(女)、
       早撃ちと二丁拳銃の達人
       アタシのような天才ソルジャーじゃなきゃ、
       百戦錬磨のツワモノ共のリーダーは務まらん!」

ロジーナ「私はロジーナ、通称戦車ヤンデレ
      自慢の大砲に戦車好きともはイチコロさ
      爆乳かましてブラジャーから
      (核)ミサイルまで何でもそろえて見せるぜ」

エリ「お待ちどう、笠本英里、通称クレイジー緑スカーフ
    工作員としての腕は天下一品!地味?広島?だから何」

あかぎ「正規航空母艦赤城、通称あかぎ
     司令官だって撃ってみせるわ
     でも攻撃機だけは勘弁ね!」

俺達は道理の通らぬ世の中にあえて挑戦する特攻野郎Nチーム!
助けを借りたいときはいつでも言ってくれ

(注:受け付けてません)

650俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十八話 前半:2009/09/10(木) 22:30:34 ID:yCw74SzQ0
「…ハァ……全く、何てこった。」
「嫌なにおいが風に乗ってくるわ… 機械が焼ける匂いではないわね。」

ラグナロクによって引き起こされた大災害。
助かった人間達をひとまず避難させ、彼ら二人は生存者の確認に移る。
「誰かー!!生きていたら返事をしろおおおお!」


そして、バイルが最期を迎えた中心部へ。
「………蒸発しているわね、辺りのもの全て。ドロドロに溶けてる…」
「…………」
オレンジ色の破片を手に取る。
「!! …バイルか…!?こりゃ…」
近くには指、焦げ付いた人工皮膚。
惨劇の中心人物だった「もの」が、そこにあった。


「!! …いたわよファーブニル!」
「おう、ちょっと待ってろ!」

そして瓦礫の中から、ハルピュイアの体が掘り起こされる。
「う……ぐ…」
「私達より3度も多く死にかけて、それでも生きているなんてね…」
「オラ、しっかりしろ!今運んでやるからな!!」

ファーブニルはハルピュイアを軽々背負い、転送ポイントまで歩いていく。
…そのときだった。
「あん…?」

何かの気配を感じた。巨大なエネルギーを。

「…!!! 最大出力!」
「お、おおう!!!」
「っるぁぁああああああああああああああああああああああ!!」
大地をグランドブレイクの要領で大きく叩きつけ、反動で遠くへ、遠くへと飛んでいく。
元々素早いレヴィアタンは自前の脚力で逃げる。
「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「きゃああああああああああああああああ!!!」

再び、ネオアルカディアは巨大な光の柱に焼かれた。


「ゼロさん!!」
「…ラグナロクの副砲…だと!?」
「…間違いありません!
 何者かが、ラグナロクを操作しています!」

「…どういうことだ」
「バリアント兵達かしら…?」

バイルもクラフトも、もういない。
主なきラグナロクを何者かが動かしている。


「ラグナロクに再び赴く、転送の準備を頼む!」
「はい!!」

オペレーターは再度ラグナロクの座標をセットする…しかし。


「ダメです!ラグナロク自体が強固なプロテクトに守られて、侵入ができません!」
「プロテクトの破壊は出来ないのか」
「アクセスするだけの力がこのサーバーにはないんです…」
「…くっ」
「…………打つ手はないのかしら…」

そこに、ネージュからの通信が入る。
「話は聞かせてもらったわ
 …ラグナロクへの侵入経路…
 要するに、強力なサーバーを使ってラグナロクの転送回線にアクセスし…
 プロテクトを解除すればラグナロクへ行けるのね」
「ネージュ…?」

「それは…?」
そこに、もう一人女性の声がかかる。
「ネオアルカディア軍の転送装置よ」
「レヴィアタン!!」
傷だらけのボディで、重体のファーブニルとハルピュイアを引きずった彼女がそこにいた。


戦いが終わっても、世界に平和はもう戻らない。
だが、希望を残すことは出来る。

その希望のための最後のミッションの手順はシエル、ネージュ、レヴィアタン…
そしてゼロを交えて話し合われた。

651俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十八話 後半:2009/09/10(木) 22:31:12 ID:yCw74SzQ0
「…意外と早くまとまったな」


「時間がないからね。」

「こうしている間にもラグナロクの副砲は地上を焼き続けている…」

「あなたにミッション手順を正確に頭に叩き込んでもらう必要があるのよ」

「そうか。…では確認する」


「まず、レジスタンストレーラーから大型転送装置へ飛ぶ。」

「転送装置の転送回線を確保するには前後左右4つのスイッチを抜く必要がある」

「左と下は俺が…右と上はレヴィアタンが担当する。」

「その後に転送回線を伝い、データ化された俺たちは回線内部を視覚化し…
 サイバー空間のようなその通路の最深部の、ラグナロクのプロテクトを破壊する」

「そしてラグナロク中枢へ侵入…内部の者たちを一人残らず破壊し」

「ラグナロクを停止させる…   それでいいな」
「よかった、伝わったみたいねゼロ。
 …準備が出来たらすぐに声をかけるわ。これが最後の戦いよ …絶対に、勝って!」
「…ああ」


世界の命運をかけた…これが最後の戦い。
砂漠の空の上の、上…さらに上、宇宙から見下ろす『敵』をきつく睨み付ける。


そして…この戦いを終えた後は?
…それは、ゼロには考えられない。

戦うことしか、出来ないことは彼が何より解っているから。

世界を破滅へ導く、血に飢えた破壊神  それが何者かがゼロを生んだ意味だろう。
だが…こうして生まれてきたことには…異なる意味がある。

ゼロは…信じていた。
「………」
青い空は、薄紫色に染まっていた。


「ゼロ」

最後の戦いのときが、やってきた。



「…どうやらラグナロクは、墜落を始めているようです
 それだけならばよかったのですが…その落下地点は…エリアゼロのようです」
「ラグナロクの軌道を変えるということだな。」
「…はい」
レヴィアタンとゼロの体は、光に包まれて消え…



戦いの火蓋が、切って落とされた。

652Free ◆Free525l1Y:2009/09/12(土) 09:28:51 ID:DHVOgY1Q0
アンサイクロペディアの北条鉄平

村の守り神であり、色々な所に生息している現東北楽天ゴールデンイーグルスのプロ野球選手。二つ名は「コ・てっぺい☆」
北条というのは仮名で、本当の名字は土谷。虐待で中日を追い出された。

やっぱりあそこの事だからwwwwwwww

653俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十九話 前半:2009/09/14(月) 00:17:54 ID:3dZFs5rE0
始まりを告げた、ラストミッション。

たどり着いた先は複数の六角形パネルが壁になっている転送装置。
上下左右に分岐した通路から4つのスイッチへと繋がっている。


そのスイッチ全てを引き抜いた時、転送回線が開かれるとされている。
「全てのスイッチを引き抜くとセキュリティシステムが作動するから、戦闘の用意はしておいて頂戴」

レヴィアタンはまず真上の通路を行く。
「ここには何もなかったはずだけど…流石にそうはいかないわね」
この通路にはバリアントが大量配備。
大量のバリアント達全てを倒したその先にスイッチがある。
「そこをどきなさい!!」


ゼロは左の道を進む。
「熱気が伝わってくるな…」
その道は溶鉱炉。ダストシュートから落とされた鉄屑が真っ赤な炉に落下し、灼熱の飛沫をあげ
侵入者を阻むべく、破壊した床の破片を撒き散らす削岩機も置かれている。
「そのドリルは…後で使えそうだな」
墜磐撃を食らわせてそれらを粉砕しながら、溶鉱炉を1つずつ飛び越えていく。
飛沫に当たらないように。落下してくる鉄に当たらないように。


「…ここか」
溶鉱炉を渡った先はスイッチの部屋。
ワープして針をばら撒く装置クロスバインが部屋に踏み入るものを襲う部屋だ。
「ふんっ!」
だがゼロにかかれば造作ない。クロスバインが出現した時点ですでに部屋の奥のスイッチを
その力で引っ張り、機能を停止させていたからだ。



「やっぱり下から攻撃されるとなると不利ね…」
レヴィアタンは上の通路を落下して戻る。
だが彼女の下にはバリアント兵達が待ち構え、相手の有利な体勢で迎撃してくる。
弾をかわして下突きで破壊、腕をなぎ払い吹き飛ばしたりなどしながら…
彼女は落下していくが…僅かに傷を負ってしまった。
「ここが終わったら次は右の通路ね」



一方ゼロは左の通路から脱出、下の通路へと移動していた。
下の通路は強固なブロックにより塞がれた通路…
スイッチの部屋に行くのは不可能と思われる。
それこそ、爆弾を置いたり、削岩機を取り付けるなどしなくては。
「ゆくぞ」
ゼロは垂直に飛びあがり、左手のドリルを真下へ向け突き出す。
「はぁぁぁ!!!」

ゼロは左通路の削岩機からドリルをもぎ取っていた。
破壊力の高いドリルの性能と、その回転力、それにゼロの圧倒的なパワーが加わることで
ブロックは少しの抵抗も見せずに、あたかも水にナイフを突き入れるがごとくするりするりとゼロに道を開けていく。
「あの扉だな」
勢いよく弾け飛ぶ破片を物ともせず、ゼロは床の扉に目をつけた。
これがスイッチの部屋へと繋がる扉だ。



「さて…今度は私の得意分野というわけね」
右の通路は水路。
水中を自在に泳ぎまわるメカニロイドが侵入者を待ち受ける。

だが…ここにレヴィアタンが現れることは全く予想してなかっただろう。
ここは彼らネオアルカディアの施設として作られたのだから。
「一遊びさせてもらいましょうか」
ストンと着水、勢いよく水を蹴り、ジャベリンを振り回し立ちふさがろうとする敵を跳ね飛ばしたり
さっぱりと切り裂いたり突き刺したり…さまざまな方法で調理していく。
「ここでターン、と」
スイッチを引き、10秒もかからずにまたプールの中へ。

「レヴィアタンさん、今のが4つめのスイッチでした
 これで転送装置が作動するはずです」
「そう…ゼロの方がやっぱり早かったのね」

そして水から上がり、扉の前で待つ。
「後はゼロがこいつに勝つのを待つだけか…」




「アラート!アラート!エリュミネートプログラム スタート!」
「…こいつか」
下の道から戻ってきたゼロは、
レヴィアタンが右の道でスイッチを引き抜いた瞬間戦闘に突入していた。
相手は六角形のパネルで出来た壁から現れたセキュリティシステム。

まずは軽く飛び一撃、距離をとる。

654俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 十九話 後半:2009/09/14(月) 00:18:25 ID:3dZFs5rE0
「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ」

敵は天井、壁、床を縦横無尽に跳ね回りゼロを押しつぶしにかかる。
だがこちらの位置を察知して行うものではない。

敵を追いかけつつチャージセイバーで叩き落す。
「ゼロ!!」
ここでレヴィアタンが追いついた。
だが戦闘の邪魔にならないようにか、部屋の外から話しかけている。

「ランダムバンダムについて何かアドバイスすることはある!?」
「何もない。所詮メカニロイドだ パターンに乏しい単純な戦闘パターンだ」

ランダムバンダムと呼ばれたその敵は、壁の奥へ身を隠し一方的な攻撃モーションへと移る。


パ、パ、パ、パ、パ、パ…
六角形のパネルが1つ1つ素早く点灯し始める。
停止した箇所から6発のエネルギー弾。
パパパパパパパパパパパ…
速度を上げてまた停止、またも。
「…これくらいなら」

パパパパパパパパパパパパパパ…
さらに速まるパネルの明滅。
停止した瞬間、ゼロは素早くセイバーを抜きパネルを破壊。
敵の攻撃を止める。

また現れたランダムバンダム本体に翔炎牙。
おおよそ耐久力の半分は削ったと見える。

そしてそれからの攻撃も特にこれといってゼロの障害となるものではなかった。
部屋の端から端まで、ランダムバンダムが角度を変えて射撃を行うものや、
分裂弾を下へ、上へ、左右へと撒き散らすもの。
だがどれも動きが遅いものであり…ゼロには通用するものではなかった。


「決め手に欠けるか…」

そしてランダムバンダムは最強の攻撃パターンを繰り出す。

自らは奥へ引っ込み、壁中のパネルを次々に回転させ、追尾エネルギー弾を乱射して
部屋内のターゲットを蜂の巣にする攻撃。
「私たちでもその攻撃はかわしきれるかどうか…」
レヴィアタンは懸念する。


…だが。
「ゼロが動く音も、声もしない…? ゼロ。どうしたの?」

「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ!」
ランダムバンダムは全ての攻撃を終えて壁から姿を現す。


そしてそれがこの小さなコアの巨大システムの最期であった。
「こんな攻撃も、こんなところでは役に立つものだな」


ゼロは飛びあがる。バスターショットを構えて。
その銃口の先端には…電流を帯びた巨大なエネルギー弾。
「いくぞ…」


壁から放たれる無数の弾丸を、ゼロは全てそのバスターショット内に吸収していたのだ。
吸収されたエネルギーは一つになり、濃縮されて絶大な威力の弾へ変える。
だが、そのためには敵のエネルギー弾が絶えず必要となり、
その間ゼロは他の攻撃すらままならない。
黙ってエネルギーを溜めるほかない。そうするくらいなら全てを避け、
敵に向かいセイバーを振るうほうがよほど効率がいいというもの。使われる機会はないとされていた。

だが…この場合は防御と攻撃を兼ねた、無駄のない戦い方と言える。
全てのエネルギー弾をその銃口に受け、全てを吹き飛ばす爆弾がここに出来上がる。

あまりに絶大なその威力…
恐らくは、同じ攻撃をもしゼロが食らったとしたら…まず生きてはいまい。
最強最大の威力を持つ、一撃が零距離で放たれる。


「『トラクターショット』!」

辺りが光に包まれ……大爆発を起こす。
部屋全体が爆炎で弾け飛ぶ。
大激震が起き、レヴィアタンもジャベリンで立っているのが精一杯。


「…どうしたの、ゼロ!?」
「少々やりすぎたようだ …ラグナロクへ向かう」

ゼロの体は光に包まれ…最終ミッションは次なる段階へ進む。

655俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十話:2009/09/14(月) 01:59:03 ID:3dZFs5rE0
「ここが転送回線の中か…」


光の粒子の渦の中からゼロは現れる。
自分の体はいつもと変わっているようには見えない。
だが…周囲の風景が全く違う。光の粒子が漂う空間、輝く板で構成された床、
レーザーのようなものが行き交い、何かを伝達しているように見える。
輝く道がどこまでも繋がり続け、
遠い遠い果ての果てまで、光の支配するどこまでも蒼い空間。
宙に浮くヘキサゴンパネルに描かれた文字はX、Z、Ω…。何かを意味しているように思える。
「確かにサイバー空間に似ているな」
転送回線内部。地上とラグナロクとを繋ぐ道…広大な広大な…情報の海だ。


メットールたちを氷月刃で蹴散らして潜ると、ネオアルカディアに以前あったようなトラップを発見する。
電撃の棒を出して回転するというものだ。だがネオアルカディアにあったものと違うのは、
こちらは棒を出したまま回るのではなく、一定角度ごとに停止して電撃の棒を出すということ。

厄介ではあるがタイミングを掴めばなんということはない。
ダブルジャンプで飛び越えたり素早く通り抜けたりして先へ進むと…
「…!」

現れたのは光の街。どこまでもびっしりと、輝くビルのようなものが立ち並んでいる。
どこまでも、どこまでも…明滅を繰り返し、立体と平面の二つの状態を行き来した、騙し絵のような街。
そこに一体何があるのか?誰かが住んでいるのか?
…考える暇もない。彼は芋虫を破壊して進んでいく。
水晶のようなものがちりばめられた通路を潜ると…


大分先までやってきたことになるのだろうか?最早、そこには物体らしきものはない。
大小さまざまな光の粒が螺旋のようなうねりとなりゼロの向かう先へと続いてゆく世界。
そこにまとまった情報はなく、こまごまとした光がある程度の規則にしたがって続いているだけ。
だんだんと単純な模様へと分解されていっているのだ。

渦、都市、結晶、螺旋。
それが示すのは一体…何か。
足場も少なくなってくる。
メカニロイドたちのデータを破壊しながら
僅かに存在するデータを伝って、何とか進んでいくのがせいぜい。
どうにかして宇宙のラグナロクまでたどり着けるか…?


最深部には何もなかった。
細く短い二本の棒が上下に別れ宙に浮くのみ。

背後には真っ暗なブラックホール。情報の海の終着点…ラグナロクなのだろうか。
それとも、ラグナロクへ着けないものが放り込まれる、宇宙の抱える無限の闇なのだろうか。


「ラグナロクのプロテクトよ!それを破壊して!」
よく見るとそこには真ん丸い光の固まりが存在していた。
ラグナロクの強固なプロテクト、サイボール。
頼りない二本の棒だけを頼りに、情報の闇の中で戦いを始める。

サイボールは二本の棒の周りを8の字に動く。触れれば恐らく分解されるのだろう。
ゼロはゼロナックルで棒を掴み、登り、また降りてと素早く行動しその攻撃を回避する。

「次は何で来る…?」
斜め四方にビットを出現させ、それらが電撃でゼロを取り囲む。
だが…特にこれといって何をするわけでもない。

…だが本当の攻撃はその次だった。敵は4つのビットから、棒に対し平行にビームを放ってきたのだ。
上下のビットの中央に位置する場所からはサイボール自身がビームを放つ。
短い間隔で3つの高さから放たれるビームを器用に回避していかなくてはならない。

「…面倒な攻撃だ」
攻撃の隙は少ない。バスターショットを一撃一撃当てながら上へ下へと昇降を繰り返し回避。
次なる攻撃へ備える。


今度はまた8の字浮遊。だが先ほどとは比べ物にならないスピードでのものだ。
どうやらプロテクトが警戒レベルを上げたようだ。
「…あともう少しだな」

サイボールは突然4つに分解し、ぐるりぐるりと回り始めた。
ゼロを分解し取り込む攻撃なのだろう。
ゼロを4つに分かれたボディで追う。
だが高いところに入ればどうということはない。とっさに上の棒へ登り、飛び越える。

再構成した所へ…バーニングショットを挟み込み最後の一撃。
内部に撃ち込まれた炸裂弾により再合成に失敗、内部から勢いよく破裂し
ラグナロクのプロテクトは解除された。

そしてゼロは…棒から飛び降りる。
光の流れに身を任せる。

…そして、自然と…自然と、彼の体は最終決戦の場所へと流れ着いた。

656俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十一話 序盤:2009/09/15(火) 01:04:45 ID:y4ImMe0g0
「………おかしいんだ」

ゼロのオペレート中のシエルの元へ、セルヴォは駆け込んできた。

「…え?」
「ハルピュイアの傷跡がおかしいんだ
 …ラグナロクの砲撃で受けたものだけとは思えない
 『斬り傷』があるんだ」
「…途中で兵に食らったとかそんなことは考えられない?」


「…それだけならまだ納得がいくんだが…あまりに深い。
 それに…鮮やかなんだ 武器としてよほど優れたものでない限りこうは…」
「…どういうことなのかしら」




そして、金色に輝くラグナロク心臓部へとゼロは『着地』する。
「ラグナロクの落下スピードが速まっているの!」
「ラグナロク・コアと呼ばれるものが恐らく最上部に存在するわ。
 とても硬い物質で出来ているから…それを停止させて」

「でも破壊は絶対にやめて!
 …それを破壊したら、どうなるか全く予想がつかないの。」
どうやら最後の敵はラグナロクコアになりそうである。
「分かった。まずはラグナロクコアへ向かう」

最後の戦い。
急速に落下しつつあるラグナロクの内部にもたくさんの敵が存在している。
それ全てを破壊して登り、また下り…扉を潜るとそこには8つのカプセル。

「二度目は…ない」
ペガソルタ・エクレール。再びアイスジャベリンで貫く。
「馬鹿な…そんな!!」
「しつこいわよ!」
ノービル・マンドラゴ。彼女から得た技、墜磐撃で刺し貫く。
「いや、いやよ…!!」
「マジウザ過ぎー!」
ソル・ティターニャン。武雷突で胴から破裂させる。
「ありえなーーーい!!」
「切り裂け牙よ!!」
フェンリー・ルナエッジ。バーニングショットで氷像の上から吹き飛ばす。
「や、やるな…!!」
「お命頂戴!」
テック・クラーケン。翔炎牙で長細い体を再び一刀両断。
「…流石だ!」
「トサカニクルゼ!」
フープル・コカペトリ。タイムストッパーで時間停止を返したところにチャージセイバーを叩き込む。
「うそ…!?」
「行きます!」
ヒート・ゲンブレム。トラクターショットで痺れさせたところを一撃。
「隊長ーーーーー!!!」
「ぶもおおおおおおおおおおおおおお!」
ミノ・マグナクス。落下してきた僅かな瞬間を氷月刃で二重に切り裂く。
「ぶも…!?」

8人のアインヘルヤル達を毒のチップ、ガラクタチップの力で破壊したゼロは
いよいよ最後、ラグナロクコアへと向け上り詰めるだけとなった。

斧を振り回すメカニロイド、ミサイルを放つバリアント、雷を落とす避雷針メカニロイド、
壁からエネルギー弾を放つ小型砲台。全ての敵を残さず倒し、上り続けた先…

戦いの果てにたどり着いたのは広い広い…宇宙を見渡す一つの部屋だった。
「これが…」
宙にたたずむ巨大な一つの剣。白と金のカラーリングのその剣が…
「ラグナロクコアか…!」
セイバーを抜いたその瞬間…辺りに声が響き渡った。
「クヒャーーーーーーーーハッハッハッハッハ!!!」


「地獄のショーの特等席へ、ようこそ!!」


「その声は…ドクターバイル!!」
生きているはずのない者の声がそこにあった。
オメガとの戦いで1度、ラグナロクの砲撃で2度
死んだはずの彼が…狂気のレプリロイド科学者は生きていたのだ。

「グーーーフッフッフッフッフ!!!」
そして光の柱から現れるバイル。
「…!」
剥がれ落ちた皮膚と頭蓋の一部、内部機械と眼球がむき出しになり、
ばさばさとした、長い白髪をだらりと垂らした…見るものを恐怖させるバイルの真の姿。
「生きていたのか…!」

「生きていた…!?違うな…
 死ねなかったのだよ!! そして、残念がてらもう一つ教えておこうか…」

「ワシはそう この機械の体でも、こんな姿でも ワシは……」
「人間なのだよ!!」

657俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十一話 中盤:2009/09/15(火) 01:05:52 ID:y4ImMe0g0
「人間…だと!?」
全身が機械になったその姿。
彼自身、そんな姿になるとは思いはしなかっただろう。あの頃は。



100年以上前、ハンターベースにて…
一人の少年があのとき、蒼き英雄と初めて顔をあわせた。

緑の生い茂る、リフレッシュフロア。
僅かな自然を愛する彼は一人の少年だった。
『……レプリロイドだからいいけど、
 人間にこんなことしたら危険だよ、覚えておいてくれ。』
『やだなぁ。ここにレプリロイド以外がいるわけないでしょ。…僕以外。』

『………人間?』
『ああ、そうだとも 僕は』



「そう!ワシは人間だ!!
 お前達レプリロイドを作った創造主、人間さまなのだよ!」

彼の得意分野はレプリロイドの再生、改造、操作。
それらを自在にこなす彼にとって、機械の命は…

『…まぁ。機械人形の頭では理解できないんだろうね』
それらの効かぬ人間と比するまでもなく、軽いものでもあった。

「…どういうことだ」

『………ハンターはこの子には頭が上がらないよ。
 この子はユーラシア事件で祖母や祖父を失い、
 …後遺症で、家族をみんな失った。けど…協力をしてくれるって言うんだ』


そう、彼は結果を急いだのだ。手段を選ばなかったのだ。
「ダークエルフによる支配と、イレギュラーの抹殺…」


『仕方ないよ人間も人間だから。
 君達レプリロイドは確かに優秀だよ。でもそのレプリロイドに全てを任せ
 今や地下に篭って出てこない…。』


「後に妖精戦争と呼ばれる戦争を起こしたワシは、当時の人間どもの手で、
 戦争の後にある『改造』を施された…」

『こうやって、言ってるばかりじゃ何も始まらない。
 だからさ。僕も出来ることがあれば何でもやるつもりだ。方法なんて選んでられないだろ?』


彼はそう…結果を急ぎすぎたのだ。
長く長く時間をかけることなど、最早時代は許さなかったのかもしれない。
しかし失ったものはあまりに大きすぎた。
「奴らはワシの体を、この驚異的な再生能力を持ったこのアーマーに閉じ込め…」

『それで、この計画が無事に終わったら今度は僕ら人間を宇宙に放り出す? ハッ…なーにを考えておるのやら。』

「歴史の暗部を示す不都合な資料とともに、ワシを宇宙に追放したのだよ!!!」
宇宙開発の末の宇宙進出などではない。最早そんな技術も残されてはいなかったのだ。

そう、皮肉にも宇宙に放り出されたのは彼だけだった。
「これが何を意味するか、分かるかね…!?
 ワシの体が老いて朽ちるとこのアーマーがすぐに再生させる…」


『僕ら人間は、今まで誰かさんのおかげで、ずっと地下に避難していて…
 どこかくすんだ明るさの中、太陽光も、川も、海も、森もまともにない暗い地下世界で生きてきたんだ
 どんどん死者が増えて、腐って土に同化していくのを見守りながらね。』
『こうして極少数の人間がこうやって地上にやっと、やってこられたんだ。どういう気持ちだと思う…?』

待っていたのは孤独を加えたその苦しみだった。
「戦争の後の…自然も、光も、何もない世界で……
 奴らはワシに、永遠に生き続ける呪いをかけたのだよ!!」


バイルは腐り果てた人間と、能のないレプリロイドたちに飽き飽きしていた。
「正義だとぉ!?自由だとぉ!?下らんっ…、じぃぃっつに下らん!!!」

658俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十一話 終盤:2009/09/15(火) 01:06:24 ID:y4ImMe0g0

『もっと歯がゆいのは何もそれに不自由を感じないという無能な人間の存在だ。
 自分の脳みそでものを考える気がないのだろうね』
「奴ら人間がこのワシに何をした!?
 正義などという言葉を吐き、何一つせぬクセにワシを追放したのは奴らだろう!!」

『ロボットからレプリロイドになったことが、僕は失敗と考える』
「貴様らレプリロイドがこのワシに何をした!?
 機械人形の分際で自由を掲げ、遥か昔に戦争を始めたのは貴様らだろう!!」

100年以上にも及ぶ、底知れぬ憎しみは最早尽きない。

朽ちた右手を掲げる。
「レプリロイドの支配など生ぬるい!」
続いて左手を振り上げ握り締める。
「人間の抹殺など一瞬の苦しみでしかない!!」

指がもげる。
「生かさず…!」
脚が腐り落ちる。
「殺さず!!」


顔面が破裂、崩れ落ちる。
「ワシとともに永遠の苦しみの中を…!!
 歩き続けさせてやるのだ!」
「!!」
バイルが放つ激しい憎しみのオーラが放たれる。
それと同時にラグナロクコアが剣の形を失い、分裂…

バイルの元へ集まり、そのボディへと結合…
ラグナロクコアはバイルと一体化する。

再生した体全てがコアと融合、カプセルも元どおりに戻る。
「それがお前の復讐というわけか…?」
「復讐などではない…このワシが教えてやるのだ!!」


「愚か者どもに逃げ場所などないということを!!
 豚どもの居場所はこのワシの元にしかないということを!!

 この、ラグナロクを使ってなぁああああああああああああああ!!!」


「それが…お前の理想か…!!」

高らかにバイルは叫ぶ。
「理想だと!? 戯言だ!!」

659俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十二話 前半:2009/09/15(火) 01:06:54 ID:y4ImMe0g0
こうして最後の戦いは幕を開ける。
「ふははははは!!!」

始まるや否や、斬りかかったゼロをゆらりゆらりとワープし翻弄するバイル。
ゼロの背後に回ったところで第一撃を放つ。
「食らええぇいい!!」
掌から青いエネルギー弾を放ち、分裂させてくる。

「!!」
弾と弾の狭い間隔を、弾にあわせて体をずらして避ける。そしてゼロからの最初の一撃はチャージセイバー。
「うぬっ…!」
だがラグナロクコアは超硬質物体。ただでは破壊できはしない。
「ぬはははは…!!」

今度は突然岩の塊を天井近くにずらりと並べ…
「粛清だ!!」
それらを真下ではなく、斜めの軌道で落下させてきた。

「ハァ!!」
チャージセイバーでそれを破壊、バイルに向かい飛びあがり翔炎牙を放つ。
「ぬ…!!小癪な…」

第二波は互い違いに、違う色の岩が混ざっている。…灰色。
「誘導機能をつけておいた!」

ゼロめがけて降り注ぐ岩。それは破壊できないので茶の岩を破壊して再びバイルへ切りかかろうとする…が
これも避けられた。


「小賢しい!!」
手元に巨大な水晶を出現させ、分裂させて飛ばす。
「まるで魔法使いかのような攻撃ね…」
「…奴は……奴は深追いしてはならない…」
戦いの様子を、やっと意識を取り戻したハルピュイアが見つめつぶやく。
「奴は…」

だが所詮は格下。
その後も続けざまにゼロの攻撃をくらい、大分ダメージを与えているようだ。
「力をよこせ!!」

そこでバイルは緑色のエネルギーを周囲から吸収する。
ラグナロク全体から、コアであるバイルへ向かい再生能力の強化を図っているのだ。
だがゼロは構わず、バイルに様々な攻撃を浴びせ続ける。
…その回復量を上回るペースで。

「クヒャーハッハッハ…!! …やはり小手先の手段では通用せんか…
 ならば、仕方あるまい!」


バイルは両手を広げ、そこにエネルギーをため始めた。
それは虹色の光の球になり…

「蘇れ!我が僕達よ!!」


恐るべき技を放った。
死したレプリロイドたちを復活させることや、改造、洗脳などを得意とするバイルの最強の技。
バイルナンバーズを、虹の球体を卵とし次々孵らせるのだ。


「ギチチチチチチ!!!」
マンティスクの鎌。
「シャハハハハ!燃えちまえぇぇぇ!!」
フリザードのバーナー。
「バイル様の御前です、身分をわきまえなさい!!」
ヘルバットの電撃球。
「ノロマはいつまで経ってもノロマなのさ!!」
イナラビッタの急降下。
「ヒヒヒヒヒヒイ!!ごわ”れ”ろ”おおおおお!!」
ビブリーオの電撃。
「裁くであーる!!」
カクタンクの落下。
「燃え尽きなさい!」
フォクスターの炎の雨。
「ゴルルルァァ!!しつっけぇ野郎だ!」
最後にケルベリアンのプレス。


その全てをゼロは記憶のままに回避し、
「…何!?」
現れたバイルに一撃を見舞った。

660俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十二話 後半:2009/09/15(火) 01:07:27 ID:y4ImMe0g0
「気をつけろ…!バイルはまだ最強の技を繰り出していない…!!」

「そうとも、この技はゼロ、貴様とて避けられるものではない!!」
「!」

バイルはワープし…4人の姿に分裂した。
「さぁ、貴様が死の時だゼロ!!」


ハルピュイアを気絶させた、最強の技がここに放たれる。
「絶望せよっ!!!」

突如として空間を跳躍して、天井から紫色の雨が降ってきた。
雨ではない…これは…光の刃だった。


「!!」

世界最強の武器はゼットセイバー。それは間違いないだろう。
あれほどの、トップクラスの攻撃力を…無尽蔵に繰り出し続けられるのだから。


だが…攻撃力一つを見れば、オメガのゼットセイバーが存在しない今、
ゼロのゼットセイバーを超えるものが一種のみ存在する。


デスピアス。
バイルが長年の研究で作り出した、ゼットセイバーすら凌ぐ、歴史上最強の近接兵器。
欠点としては、極端に脆いということ。
恐らくは、一度使ったが最後、その極限の攻撃力を見せ付けてすぐに壊れることだろう。

それが…大量に生産され、今… ゼロの頭上に雨となって降り注ぐ!

「恐怖せよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
デスピアスの雨はバイルの実体の真下には降らない。
かろうじて避けたゼロの前で電撃球を連射し、デスピアスを伝って地面を電撃の海へと変えようとする。

だがデスピアスの力がなくてはそれは意味を成さない。
ゼロは氷月刃でデスピアスを一掃。
電撃の球の緩慢な動きをさらりと避け…


「最後だ!!!」
バイルに切りかかる。

その手に持った…一本だけ残し、ゼロナックルで引き抜いた最後の一本のデスピアスの力で。
「!!!!!!」

極限の破壊力を持つ一撃をバイルへ返す。

それは2回。

ゼロはガラクタチップを一度外し…
ウェポンプラスと呼ばれる、武器の強度を強化するチップを使い、
1度しか使えぬデスピアスを二度使える刃へと変えていたのだ。

そして一発、ガラクタチップの最強の力を以って…もう一発。

紫の刃がラグナロクコアを…斬る。いや…激突した。
「あ……!!!」
そして…打ち砕いた。
「ぐああああああ!!!」

その…デスピアスの刃ごと。
「流石だなぁ…!!! 英雄…!」


勢いよく輝き散る紫の刃とともに…ラグナロクコアは爆発を起こした。

661俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十三話 前半:2009/09/15(火) 02:16:47 ID:y4ImMe0g0
その激しい爆発は、ラグナロク最上階全てを吹き飛ばした。
全てのチップがその衝撃で破壊され…彼は元の紅色のボディへと戻っていた。


バイルのいた場所には巨大な穴。
吹きさらしのその場所に…ゼロは一人居た。
しかし…
「!! …どういう、ことだ… 落下が止まらない…!?」

ラグナロクはいよいよ地球へ近づいていた。
世界の破滅がカウントダウンを始める。
ラグナロクは停止しない。それはつまり…
「クヒャーーーハッハッハ!!ラグナロクはもう誰にも止められん!」
ラグナロクコアの破壊が不完全だということ。

「死ねん… この程度では死ねんのだぁぁ!!」
再生の利き、優れた性能を持ち、自由を掲げる機械人形が憎かった。
何も自分から動きもせず、正義を振りかざす無能な人間が憎かった。

「……バイル!」
崩れ、だんだんと地球の重力に引かれつつあるラグナロクの中で…
ゼロは決断の時を迫られる…

…否。彼はもう、
「ゼロ、もう無理よ!! これ以上は、転送が効かない…戻れなくなってしまうわ!!」

決断していた。
「…まだ、手はある …バイルを…ラグナロクコアを完全に破壊すれば、
 ラグナロクは分解され、大気圏で燃え尽きるはずだ」

大気圏で燃え尽きる。そうなれば万々歳であろう。
だが…それがラグナロクだけならばの話だ。
…そんなわけは、なかった。
「でもゼロ!そんなことしたら、あなたは!!」
それを行って尚帰還する時間などもはやない。

バイルは狂気に顔を歪ませ、啖呵をきる。
「ほう…!? ゼロ、貴様に出来るのかね!?」


『もう許さないぞ、ワイリー!』

同じく、一人の少年ロボットがかつて、一人の科学者を追い詰めたとき。
彼は一つの言葉で、思いとどまらざるをえなかった。
『う、撃つのか…? 人間のワシを… ロボットの…お前が…!』
そして歴史は巡る。

人間と、ロボット。
「レプリロイドの英雄であるお前が!!」

二つの命の間を隔てていた一つの壁。
「人間達にとっての正義の味方であるお前が!!」

それが今…世界を破壊するために生まれてきたロボットにより…
「守るべきこの、人間であるワシを!!」

破壊されようとしていた。
「殺せるというのかああああああああああああああ!!」


バイルの咆哮を合図に、無数のチューブが伸び、バイルの『人体』に『接続』されてゆく。
血飛沫をあげて刺さり、それを上回る速度で再生…結合のプロセスを踏む。
グサリ、グチャリ、ドスリ。痛み、苦しみ、憎しみ、怒り。
音が音と混じり合い、一つのおぞましい音楽を奏でてゆく。
そんな音の塊の中で……一つの存在が完成する。


「俺は正義の味方でもなければ…」
無限に広がる星空の元、蒼き星を背にし…

「自分を英雄と名乗った覚えもない」
戦士は、最後の攻撃の時を迎えていた。

「俺はただ、信じる者のために戦ってきた。」
合間見えるは、人間と機械の業を一身に受けた一人の生命の成れの果て…
巨大な機械にコードの触手と硬質化した角を持ち、核に老人の頭をすえつけた怪物。

「俺は悩まない」
目を閉じ、精神を統一する。友から『ロックマン』の任を任された時の言葉とともに。


「目の前に敵が現れたのならば…」
そして顔をあげ、刃を構え…



克目し振り上げる。
「叩き斬る、までだ!!」

662俺的アレンジの入ったロックマンゼロ4 二十三話 後半:2009/09/15(火) 02:17:35 ID:y4ImMe0g0
「ゼロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
少女は胸の奥底を叫ぶ。

だが…時はもう戻らない。
「俺を信じろ…シエル!」


「終わらぬ悪夢だ!」

ゼロは斬りかかるが阻まれる。
ラグナロクと一体化したバイルは変身前のように青い球を放つ。
ゼロはそれを避けてバーニングショットを一撃。
「猪口才な!」


バイルはコアであるその頭にエネルギーをチャージ…
「消えうせろ!!」
ラグナロクの主砲を放つ。

吹き飛ばされるわけにはいかない。ゼロは体勢を低くしそれを潜り…
「ぁぁぁあ!!」
バイルに一閃。

「邪魔だ!!」
そしてもう一発。
今度はゼロはバイルの上から突き出る巨大な角のようなものに掴まりそれを回避。



「遊んでやれい!!」
虫型メカニロイドを呼び出すがゼロにより一瞬で破壊される。
そのままバーニングショットで、バイルの防御を少しでも突き抜ける攻撃を与える。
時間がないのだ。

「さぁ…逃げろ逃げろ!!」
チャージし、今度は追尾エネルギー弾を放つ。
ゼロは多段斬りでその弾を破壊、バイルに重い一撃を食らわせる。

「小賢しい…」
バイルはサイバーエルフと同じ原理で作られた、
対象を捉える追尾ターゲットをゼロの周辺に飛ばす。
「!!」
ゼロはそれに掴まり、何も出来ぬままバイルの眼前へ持ち上げられる。
「無様だなぁ!!」
そしてチャージ…

「消えうせろ!!」
主砲発射。
ゼロは力尽くで振りほどきバイルの元へ走りチャージセイバー。
「おのれぇえ…!!」
地球が近づいてくる。


「離れろおおお!!」
今度は下の方に位置する角を動かし、ゼロを貫こうとする。
ゼロはそれに対し距離をとる。


「ぉぉおおおおおお…!!!」
そして最後の一撃。


バイルは主砲を発射…ゼロはそれをまた潜る。
だが…今度は避けない。バイルへと近づいているのだ。



そのまま…バイルはゼロを吹き飛ばす主砲を放とうと力を溜める。
ゼロは最大限の力で……飛びあがり、


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
最後の一撃が振り下ろされる。



「この、ワシが…!!?」
ゼロの力は、窮地に陥れば陥るほど高まる。



ラグナロクの全てのエネルギーを受けながら、ゼロはその力の限りに、断ち切るまで力を込め続ける。
「はぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「人形ごときに…!!」

憎しみと破壊は激しき戦いの火の中で最期を迎える。
愛と創造を地上に残して。
「滅べぇぇえええ!!! 滅んでしまえええええええええええええええええええええええええ!!!」


真っ白になった宇宙で何もかもがシルエットになる。
粉々に…何もかもが砕け…消えていった。

663俺的アレンジの入ったロックマンシリーズ ED 前半:2009/09/15(火) 02:43:33 ID:y4ImMe0g0
「…ラグナロクの空中分解を確認。
 ……細かな破片になり…」


「地球への被害はないものと見られます。
 ……任務、成功です」


リザルトが示すポイントは100.
…シエルの設定した、むちゃくちゃなはずのミッションリザルトが…全て100で満たされた瞬間。

…もう、それを見せる相手はいないのだが。


「…ゼロ… そんな
 ゼロ!! 応答して、ゼロ!! …ゼロ!!!」

シエルは呼びかけ続ける。
信じろと残した彼に対し。

「…………!!」
そして走り出した。

「し、シエルさん!!」
「シエル!」
「お姉ちゃん!」
「あ、あああ、おねえちゃんどーしたのおお」

オペレーターもセルヴォもヘチマールも
彼女を止めることは出来なかった。





「………………」

全ての力を使い果たし、ラグナロクは根本から砕け散った。
細切れも破壊され…地上には何も残らず、全てが粉になって消えてゆくことだろう。


ゼロは……投げ出された体を、ゆっくりと休めていた。
…次の戦いに備えない休息は… 彼が記憶する中では始めてだ。


「………」

体が剥がれてゆく。
黒く炭化し散り散りになり…空に舞ってゆく、自分のかけら。
「…。」


それらが…ひとつの形を結ぶ。
「…そこにいたのか」

その姿はゼロそのもの。
……永遠に血を求め続ける破壊神が最後にとった形は破壊そのものだった。
…いや、それはそれでもなく、永遠にこの世界に残り続ける『破壊』なのかもしれない。

それは手を伸ばすが…その手の先から消えてゆく。

「………お前が行く先も、俺と同じだ」
手を下すより早く… それは、何も出来ずに空のかなたへ消えていった。



「………」
最期の瞬間。
己の、動力炉の稼動音が…ドクリドクリと、ゆっくりゆっくり…体に刻まれるのを感じる。


「…」
黒き宇宙を目に落ちていた彼の体はふと振り返る。…そこには。


「…………」
…青い星があった。


…そして、彼は静かに…目を、閉じた―――

664俺的アレンジの入ったロックマンシリーズ ED 後半:2009/09/15(火) 02:44:08 ID:y4ImMe0g0
「…あ、ながれぼし!」
キャラバンの少年は指を指す。
夜空に、まばゆい一つの光が生じ…
きらりと、一筋に流れ消えていった。


「…あれは…!!」

最初の一つから…2つ、3つ…
せきを切ったようにそれからたくさんの星が流れ、落ちていく。


それは、降り注ぐラグナロクの破片。
人と機械の、戦いの終わりだった。



「……ゼロ、…ゼロ…!!」
走り続ける。


…どこまでも、どこまでも。


…けれど、崖の上で…彼女は力尽き、その場に崩れてしまう。
「はぁ…はぁ…」


「………」

結局自分には、ゼロを見送ることしか出来なかったのだろうか?
…いや。 ゼロは最後に、自分達に向けて、希望を残してくれた。


「…あなたが私達を信じたように、今度は私達があなたを信じる…!
 …待っていて、見ていて
 絶対に、人と機械が手を取り合っていける未来を作るから…!」



切り立った崖で彼女は空から地を見つめ…
金の髪をなびかせる。


これから築くこととなる………
かつて人間と機械がいた、 みんなの暮らしの跡を遠くに見つめていた。


22XX年。…昔、人とロボット、レプリロイドが暮らしていた場所も
もう今は何も残っていない。…あるのは、瓦礫だけ。
彼らは全てを失った。…全てを、零に帰した。
だが…そこからまた、何かが始まるのだろう。



流星雨が降り注いだその日
人と機械は… 戦うことを、やめた。


小さな拳は今、歴史を刻む。

665そらます ◆ft9LHJWRU.:2009/09/20(日) 10:35:09 ID:u6SLzI.I0
スポア クリーチャーズで残りパーツがあと4つ程。
今はわく星ゼンクリーの最後のパーツを手に入れるのに悪戦苦闘。
スタースペックとブルーガス、それとコス。一体どいつの巣から残りのパーツが採れるんだ?

666乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/09/20(日) 15:58:03 ID:EYP4XvX60
男は皆、おっぱい星人なんだ。

                 by王貞治

667Free ◆Free525l1Y:2009/09/23(水) 16:17:34 ID:/rq2z8ok0
栞「今日は私を含めてこれから受験に打ち込むマスターに
  メッセージを送ります。
  マスター、…えーと、んーと、
  ん…なんだったかな…とりあえず…受験頑張って下さい^^」
一同「w」
危険ですので絶対に真似しないで下さい

セリカ「マスター!受験頑張ってね!」
エリカ「受験に頑張るマスターのためにこんなもの作っちゃいました!
    もし受験に落ちたらこのボタンを押すと…
    ほら!谷から人形が出てくるの!だから受験に落ちても…」
エリカ、セリカ「どん底に落ちちゃ駄目だよ!」
一同「え?ww」
絶対に真似しないで下さい

シャドウ「…………まあせいぜい頑張るんだな。」
舞「…………頑張って下さい」
一同「他に言う事無いのかよw」
絶対に真似しないで下さい

リョウ「今からこの耐久ガラスをプレッシャーに見立てる!
    マスターのプレッシャーを壊す為なら覇王翔吼拳を使わざるを得ない!
    覇 王 翔 吼 拳!」
ずどーん
リョウ「…スマン、外してしまった」
一同「フハハハハwwwwww」
絶対に真似しないで下さい

668乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/09/23(水) 19:34:24 ID:7o7ljH5c0
ロジーナ「明日はボルシチでも作ろうかしら…」
エリ「もう明日の準備かい」

669Free ◆Free525l1Y:2009/09/23(水) 22:13:34 ID:/rq2z8ok0
でっていう(それならボクはこの食べ物をプレッシャーに見立てます!
       マスターのプレッシャーをボクが食べてしまいマス!)
〜五分後〜
でっていう「〜♪」(夢中で食べている
〜十分後〜
でっていう「フーッ…ゲップ」(満腹
一同「フハハハハwwwwwwww」
絶対に真似しないで下さい

トミー「僕も思えば受験経験したね…前々からちゃんと勉強しておいたから
    そこそこ上手くいったけどね。つまり前々からの…」
沙都子「…」
ブシュリ
トミー「う…ヴォアアア!」(喉を掻きむしって倒れる
沙都子「…と言う訳で頑張って下さいねマスター!」
一同「( ゚д゚)」
絶対に真似しないで下さい

ルカリオ(よしっ!私はマスターを応援すべくFantasistaを歌うっ!)
FREE「えー…歌えるのかよ…」
ルカリオ(Shak-a-…着火Micr…Kick off da fest……bomb)
FREE「出来ていないじゃねーかw」
クド「私がやります!」
FREE「く…クドが…?」
クド「わふわーふふわふわふわふわっふ!(わふ!)」
FREE「全部わふーでリズム取るなっつのw」

FREE「…まあ皆の言葉が通じたかどうかは分からないけど
    …とりあえず頑張る」

670名無しさん:2009/09/28(月) 23:26:53 ID:13Ejg5y6O
椛かわいいよ椛
椛のもふもふしっぽをもふもふしたいよ
椛のかわいい犬耳に悪戯したいよ
椛の服の隙間に手を突っ込んで椛のまんじうをもみもみしたいよもみじもみもみ
もう椛をぎゅっとして椛の匂いを堪能したいよ
椛は仕事柄よく動くから身も無駄なく引き締まってるんだろうなぁ
もういっそ椛になりたい椛かわいいよ椛
●もみじもふもふ

文「…で、これはどういうことですかねぇ?」
「ごめんなさい椛への愛が暴走した結果です」
文「幻想風靡」
ピチューン

671俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 序盤:2009/09/30(水) 02:46:39 ID:vsQNnAsc0
戦いの炎の中で散り、流れ星として燃え尽きた一人の戦士。

…彼が流れ着いた場所は情報が駆け巡る、現実世界と常に平行して存在しているもうひとつの世界、サイバー空間。
死したレプリロイドやメカニロイドは皆、そこへ行き着くあの世。

「………む…」
岸辺のような場所で身を起こす。辺りを見回しても、誰も居ない…

…いや、何かが近づいてくる音がする。

程なくして声も聞こえた。
「随分と早く流れ着いたね」

それは友と異なる色をした同じ声。
2度にわたり戦いを繰り広げた…偽りの蒼き英雄だった。
「…お前が迎えか、何をしに来た」
「不満かな …まぁ、不満だろうね
 それと…僕は何も君を迎えに来たわけじゃない 追い返しに来たつもりだよ」


「…まずお前達のいるこの世界が今どうなっているか教えてもらおう」
「土産話程度にもならないだろうが…話しておこうか。
 妖精戦争から大分時が経って、また近年死亡者が大幅に増加し…この世界の治安は正直、乱れ続けている
 誰かがこの世界を統治する必要があると思わないか」
目が笑うのを見過ごしはしなかった。
「何度言われても解らないか」
コピーエックスの眼前にセイバーを突きつける。
だが相手は刃先を指で払いのけた。

「君に敗れて僕が諦めるとでも思ったかな
 偽者だと解って、君はオメガに抗うことを諦めたかな …違うだろう」
ゼロはセイバーを握り締めたまま。

「この世界には、膨大な知識が詰まっている。
 歴史が凝縮された…この世界に出来れば持ち帰りたいくらいの、世界の記憶さ
 …僕はその世界の中にいて、様々なことを学んだ。自分がしたことの愚かさもね」


「…これまでの自分は否定された。だが、これからの自分は否定させないよ
 僕は今度こそ、自分の力で登りつめこの世界に僕という存在を認めさせてやるつもりさ」


「不可能な訳はない。僕には…世界で最高の頭脳と体が備わっているのだから。」
完全なコピーだから、とは最早言わなかった。


「…随分と自信があるようだな。…試してみるか」
構える。

672俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 中盤:2009/09/30(水) 02:47:21 ID:vsQNnAsc0
無限に広がる電脳の世界の端には
気がつけば、二人の戦いの様子を見届けるたくさんのギャラリーが集まっていた。
「望む所さ。早くしようよ 時間ももうないようだしね」
「どういうことだ」


先手を打ったのはコピーエックスのチャージショットだった。
「誰かのことを忘れているんじゃないかな、君は」

セイバーで払いのけると今度はノヴァストライクが飛んでくる。
「…何」

飛び越えて背後からバスターショットを乱射。
エックスはノヴァストライクの激しいエネルギーを一瞬にして消し去り、背後のゼロの弾へ自分のショットをぶつける。
相殺…いや、突き抜けて弾はゼロめがけて飛んでいく。
「オメガをその剣で断ち切ったあの時…」

ゼロは弾を飛び越えてセイバーを振り下ろす。
エックスはそれを避ける…だけでなく、宙を蹴り勢いを増しゼロの背後へと飛び…
至近距離からチャージショット。

「君の名を呼んだのは3人いたはずだ」
明らかにコピーエックスの能力が前回、前々回とは大違いだった。

「ドクターシエル」
光の散弾銃レイスプラッシャーを放つエックス。
「オリジナルエックス」
ストームトルネードがゼロを貫くべく真っ直ぐに放たれる。

「そして…まだいるはずだよ、君を呼んでいた、
 いや…最早君の名を呼ぶことしか出来なくなった、一人の女性がね」
ソニックスライサーが上空からゼロに襲い掛かる。

ゼロはその全てを、飛び越える、潜り抜ける、間に潜ると続けざまに回避。
「……まさか!」




「…話はここまでだ」
ノヴァストライクでゼロの元へ飛び込んだエックスは、ゼロの手前で地上へ激突。
「…!」
そのまま地を蹴りゼロを上空へ突き上げる。


「君はもうじきこの世界から去ることになるだろう だから」
そして真紅のエネルギーを溜めて飛びあがる。

「せめて僕の手で送りだしてやろうとね!!」
スパイラルクラッシュショットと、
チャージセイバーのぶつかり合い。

…その瞬間、両者が加速した。
「存分に戦うがいいさ!この世界には物理法則は通用しない!!」

赤の光と青の光。天も地もなく、激しく衝突を繰り返しながら、
追いつつ、追われつつ、離れて、寄って…
勢いを増しながら縦横無尽に飛びまわり続けた光はやがて、
宙の一点で衝突の時を迎える。

「今度は外さない」
「やってみろ」

ゼロが刃先を。
エックスが銃口を。

673俺的アレンジの入ったロックマンゼロ 後日談 終盤:2009/09/30(水) 02:49:56 ID:vsQNnAsc0
「シエルおねえちゃーん、こんな感じでどうかなー!」


エリアゼロを中心としたキャラバンは拡大、
ネオアルカディアの人々を中心に新たな街を作るべく、苦しい日々を生きていた。

最早、セキュリティの行き届いたビルも
無限に支給される食料もそこにはない。


彼らが当面の目標としているのは、ロストテクノロジーの復活。
途方も無いものを掲げたものだ。


…目先にあるのは、何をするにも必要となる作業用機械の調達。

部品を集め、それぞれを点検、整備し繋ぎ合わせて一つの機械にしていく。

その作業にも慣れ…今日やっと、
シエルたちの元で最初の機械が完成しようとしていた。



「ライドアーマー…もう少しで完成ね」

「僕たちでも簡単に乗りこなせるんだよね!」
「そうねぇ…じゃあ、試験運転が終わったら
 そのアーマーでの作業はあなた達に任せちゃおうかな」

「よーし!!」

…だが…
人間もレプリロイドも失敗をする。
間違えることもある。

「…!? …あれ、何かおかしいよ!?あ、アームが…!!」
「きゃあああああ!!」

「シエルお姉ちゃん!!」

「オイ、あれ大丈夫かよ…!ライドアーマーの握力は半端なものじゃないぞ…!?」
「かといって俺たちだけでアレを止められるかっていうと… おーーい、誰かーーー!!協力してくれ!!」
「た、たす…け…!」


「…下がっていろ」
…そのときだった。


「…きゃっ!!」
突如として鋭いエネルギー弾がライドアーマーの腕を攻撃、破壊。
腕からシエルが投げ出される。


…気がつけば、花畑の中だった。
彼は、世界を見守り続ける大いなる命によって助け出されたのだ。


「……!」
「………帰還した」


…助けを待つ者の前に……… 彼はまた、現れる。

674Aria:2009/10/03(土) 09:51:17 ID:a1UkFMNoO
七竜クリアー
メンバーは鬱姫、緑騎士、白魔、桃戦士
ちょっとLV上げすぎたせいかラスボスすら楽勝だった感(だいたい71)

あと(ラスボスといわず通常ボスも)ファングブレイドで麻痺るのやめてくださいwww

675乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/04(日) 20:50:30 ID:E6oVP0fI0
声優一覧(ただし声優なしのキャラは記述なし)

ロジーナ-富山あかり
あかぎ-富山あかり
アイラ・ブランネージュ・ガルディニアス-林原めぐみ(川澄綾子)
カリス・フィリアス-白石涼子
ディシャナ-小清水亜美
ポックル-白石涼子
ピピロ-今野宏美
イツ花-吉田古奈美
一条あかり-おみむらまゆこ

676メルヘンメイズ やよいの大冒険 第0節:2009/10/08(木) 23:36:27 ID:YLgnloBw0
メルヘンメイズ やよいの大冒険

「先生こんにちはー、今日も本を借りに来ましたー!」
「お、今日も元気ですね、でもここは図書館ですから、もう少し抑え目にしてくれたほうがいいですよ」
「…えへへー」

書架の先生と向かい合った女の子、高槻やよいはそう言って、ちょっと恥ずかしそうに俯きました。
いつも元気なのは良いのですが、図書館で大きな声を出してはいけません。
ツインテールの髪の毛がぴょこっと揺れて、やよいと一緒にお辞儀をしました。
「そうだ高槻さん、今日はこんな本があるんですよ」
言いながら先生は後ろの本棚から一冊の本を取り出します。
「『不思議の国のアリス』…ですか?」
「とあるお金持ちの人が寄贈してくれたんです。妹さんに読んであげるにはちょうど良いでしょう」
表紙にはちょうどやよいと同じような髪型に、エプロンドレスを着た女の子、そしてタキシードのウサギ。
手に取るとずっしりと重たくて、そして紙の匂いがふわりと漂います。
「あ、ありがとうございます」
早速やよいは貸し出しの手続きを。そして元気そうに帰っていきました。
「あ、高槻さん、廊下は走らないようにお願いしますよ」
先生の言葉はちゃんと聞こえていたでしょうか…。

「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんお帰りー」
やよいが帰ってくると、早速妹のカスミがお出迎えです。大きな家ではないので玄関を開けるとすぐに
分かるみたい、でもそんな我が家が、そして家族のみんながやよいは大好きでした。

そして今日もお布団でやよいはカスミに本を読んであげます、そのまま同じ布団で一緒に眠るのが、
ここ最近のやよいの日課になっていたのでした…。





「やよい」
「…」
「やよい」
どこからともなく声がします。
今までに聞いたことがあるような、無いような。誰が呼んでいるのかと思って、やよいは外に出てみます。
でも誰もいないみたい… そう思ってやよいが部屋に戻ろうとすると、
「やよい」
…私は寝ぼけているのかなと思って、やよいは目をこすってみました。目の前に、まさに今日借りてきた
本で見たようなタキシードを着たウサギの人形が立っていたのですから。
「…カスミのおもちゃ…?」
そう言いながらやよいがその人形を持ち上げると、
「助けてくださいー」
その人形はじたばたしながらやよいに助けを求めて来るではありませんか。
「…どうかしたの?」
とりあえず返事をします。
「私の国が悪い女王に侵略されてしまったのです」
…そうだ、これはきっと夢なんだ。それだったら納得もいきます。夜に読んでいた本の夢を私は見てる…
と言う事は、この後…
「お願いです、私達の国を救ってください」
と、こうなるのです。
やよいが素直に付いていくと、そこは居間の鏡の前。ウサギはその前に立つと、やよいの手を取って…
「行きますよ!」
そのまま鏡の中に飛び込んでいきます、当然、手を取られたやよいも一緒に鏡の中へ…
「きゃぁぁぁぁぁぁ…!」

…ここはどこでしょう?
やよいの目の前は部屋の中ではなく、とても広々とした場所。しかしタイルを張ったような床はそれほど
広くは無く、足を踏み外すとまっさかさまに落ちてしまいそうなところでした。
「気をつけてください、落とされると大変ですから」
さっきのウサギが目の前にいました。そしてやよいにストローを差し出します。
「これは?」
「このストローでシャボン玉を出して、女王の手先をやっつけるのです」
???
「うっうー、よく分かりませんー」
やよいはそう言って頭を抱えてしまいました。読んでいた本の中にもそんな話は無いのですから…。
それに女王の手先ってなんでしょう…。
混乱しているやよいがふと前を見ると、そこにはおいしそうなケーキがたくさん。ショートケーキに
チーズケーキ、やよいが見たこともないようなお菓子もたくさんあります。
ちょうどおなかが減ってたやよいは、早速その中の一つを取って食べてみます。
「いただきまーす!」
が。
ガキィィィィン…
「ううー、食べられません〜」
ケーキは石のように固くなっていて、やよいの歯がビリビリと痛くなってしまいました。
「女王の力によって、私達の世界はこのようなことになってしまったのです…」
ウサギはそう言いながら、悲しそうに前のほうを見ました。
「分かりました、女王さんをやっつけに行きましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうな顔のウサギは、そう言って飛び跳ねています。
「それに、食べ物を粗末にする人は許せません!」
「そ、そうですね…」
やよいとウサギは固く握手を。

こうしてやよいの冒険は始まったのです。

677メルヘンメイズ やよいの大冒険 第1節:2009/10/09(金) 23:20:22 ID:.t8phchE0
 第1話 おかしの国  〜やよいと不思議なシャボン玉〜

やよいが辺りを見回すと、そこはお菓子… の形をしたオブジェがいっぱいの空間でした。
床の遥か下にも同じような世界が広がっていて、自分のいる所がかなりの高さであることが分かります。
それに… やよいの服もいつものものではなくて、オレンジと白の上着にスカート、そして前にはフリルの
付いた小さなエプロンが。
とても可愛らしいものでした。
しばらくそれに見とれていたやよいですが、ハッと気が付いてウサギに尋ねました。
「…それで、さっき言ってた女王の手下って… どうやって戦うの?」
「その渡したストローでシャボン玉を出して…」
「こう?」
やよいがストローを吹くと、そこから虹色のシャボン玉が。
続けざまにいくつものシャボン玉が飛んで行っては、同じところで弾けて虹を描きます。
「これは悪い者たちが大嫌いなシャボン玉なんです、これを使えばきっと女王にも勝てるはずです。
残念なことに、これを使えるのは純粋な人間の女の子だけなんです…」
そういう理由で、やよいは呼ばれたのか。そう言われると悪い気はしません。
「それじゃぁ、これからよろしくね、…えっと」
「ウサギでいいですよ」
そう言って胸を張ってみせるウサギ。
「じゃぁ女王さんのところまで案内してくださーい」

やよいたちが先に進むと、目の前には足の生えたキノコやら爆弾やらが。
道は狭くなっているので、どいてもらわないと先には進めそうにありません。
「シャボン玉を当てて吹き飛ばすのです」
「こう?」
やよいのシャボン玉が当たると、キノコたちは床の外に飛んでいき、爆弾は破裂してしまいます。
「すごいですー」
「でも気をつけてください、床から落ちるときっと助かりませんから」
さっき落としたキノコがまだ落ちていくのが見えます。
「特に転がってくるボールに弾かれるとやっかいです、気を付けて下さい」
「分かりましたー」

678メルヘンメイズ やよいの大冒険 第2節:2009/10/09(金) 23:21:33 ID:.t8phchE0
途中、転がってくる大きなロールケーキを飛び越えたり、太った兵隊達をやっつけたりしながら、どんどん
歩いていきます。
そうして進んでいくと、やがて行き止まりに来ました。でもここから飛び移って向こうまで行けそうです。
「いち、にの、さーん!」
元気なやよいはウサギを抱えたまま向こうまでジャンプで飛び移りました。
そこは広くなっている床で、見渡す限り何もありませんでした。
「ここに次の世界へ続く鏡があるはずなのですが…」
「それは、これのことかい?」
突然、どこかからか声がしました。見回してみてもやよいたち以外には誰もいないようです…。
「こっちじゃよ、こっち」
声と共に目の前が暗くなったかと思うと、やよいの頭に何かがコツンと当たりました。
「いたっ… 上!?」
頭から床に転がってきたのはキャンディーでした。それと気付くまでに、上から何十個ものキャンディーが
ばらばらと降ってくるではありませんか。
「痛いです〜」
上を見上げると、そこにはほうきに乗ったおばあさんでしょうか、愉快そうに笑いながら腰に付けた袋から
キャンディーを放り投げてきます。片方の手にはきらきら光る鏡が見えます。
「せっかくのプレゼントなのに、もっと喜んでくれてもいいのにのぅ」
「何がプレゼントだミヤーシャ、中身はただの石ころのくせに」
ミヤーシャと呼ばれた、その魔法使いのおばあさんにウサギは首をもたげながら怒鳴りつけます。
しかし言っている間にも上からキャンディーが、このままではたまりません。
「やよい、シャボン玉を」
「わかった!」
やよいはキャンディーを避けながらシャボン玉を吹き付けます、しかし空を飛んでいるミヤーシャには
あと少しのところで届きません。
「人間なんぞ連れてきおって、どんなものかと思えば大した事ないのぉ」
得意そうにミヤーシャは高笑いをして見せます。
「もっとシャボン玉を大きくするのです!」
「大きく?」
「そうすればきっと届くはずです」
やよいは大きく息を吸い込んで、大きなシャボン玉を作ろうとします。でも大きくなりすぎて破裂して
しまいました。
「ふぇっふぇっふぇ」
「もう一回頑張ります!」
息を吸い込んで、シャボン玉を大きく、そして…
「そこです!」
ウサギの声と共に、大きなシャボン玉が飛んでいき、ミヤーシャの顔面に炸裂しました。
「お、おのれぇぇぇ」
ミヤーシャはキャンディーを地面に投げつけました。するとそれは小さな魔女の姿に変わり、
そしてやよいたちめがけて飛んできます。
「きゃぁっ!」
飛んできた魔女に当たったやよいはそのまま引きずられて、見る見るうちに床の端まで。
このままでは奈落の底にまっ逆さまです!
「ジャンプです!」
とっさにジャンプして床のあるほうへ。ぎりぎりのところで止まることが出来ました。
その間にも小さな魔女たちは次々と飛んできます。でも、まっすぐ飛んでくるだけの魔女たちは、
2,3回見ているうちに簡単に避けられるようになっていきました。
「すー…」
やよいはまたシャボン玉を膨らまし、ミヤーシャの方にどんどん飛ばします。
何回かシャボン玉が当たると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
ミヤーシャの体が光に包まれ、次々と泡が弾けるようになりながら落ちてきました。
「お、おのれぇぇぇ!」
そして見ているうちに、ミヤーシャはぶくぶくと泡になって消えてしまいました。
後には乗っていたほうきと、そして鏡が残っていました。

「これで女王は倒せたの?」
「いえ、これはあくまで女王の手先… 本物の女王はもっと向こうの世界にいるはずです」
そう言ってウサギは鏡の中を見つめました。そこにはさっき通ってきたような通路が見えます。
「ウサギさん、行こう!他に助けてくれる人が誰かいるかも知れないし」
やよいは元気付けるかのように、そう言ってウサギの手を取りました。
そういうやよいだって、本当はちょっぴり怖いのです。でも勇気を出せば、きっと…。
ふたりは一緒に鏡の中に飛び込んでいきました。
次はどんな世界が待っているのでしょうか。

679メルヘンメイズ やよいの大冒険 解説:2009/10/09(金) 23:43:48 ID:.t8phchE0
本来これを最初に書くべきだったのですが;

これは’90年にPCエンジンでリリースされたゲーム『メルヘンメイズ』を元にしたSSです
主人公のアリスが9つの世界を廻っていき、最後に鏡の国を支配している女王を倒すことを目的とした
アクションゲームです
Wiiのバーチャルコンソールでも最近リリースされたようですので、興味のある方は遊んでみてはいかがでしょうか

このSSでは主人公のアリスを『アイドルマスター』のやよいに置き換え、各ステージで他のアイドル達と出合って
協力して戦うスタイルをメインにしています
『アイドルマスター』をご存知の方は、ここまでの段階で、ひょっとしたら最後のオチまで予想が付いてしまうかも
知れません…

しばらくお付き合いいただけたら幸いです

680メルヘンメイズ やよいの大冒険 第3節:2009/10/11(日) 02:00:39 ID:H6itFIAA0
 第2話 きかいの国  〜スーパーヒーロー真ちゃん?〜

「…っていう夢を見たんだよ、伊織ちゃん」
「変なの」
やよいと話をしているのは、長い髪を後ろに回した可愛らしい女の子、伊織ちゃん。
かわいくてやさしくてうたがうまくて、やよいも彼女のことが大好きでした。でも…
「まぁ、やよいにはお似合いかしらね、まだまだお子様って感じだし」
「うっうー…」
…ちょっと意地悪なところがあるのが、玉に傷でしょうか。

さてやよいは今日も鏡の国へ。
やよいとウサギが鏡を抜けると、そこは一面灰色の床で埋め尽くされた世界。
ところどころにロボットが歩き回っていました。
「ここは?」
「機械の国ですね… ここも女王の手によって作り変えられてるようです」
見ると、ただの床だと思っていた、ところどころにはベルトコンベアが流れています。上に乗ると
あっという間に流されて下に落ちてしまうことでしょう。
「とりあえず気をつけて進みましょう、ロボット達はそんなに反応も良くないはずですし」

しばらく進むと、いくつかの浮島が見えてきました。先のほうにはたくさんのロボット達が。
「ここからシャボン玉でロボットを追い払いましょう、床の切れ目を越えて攻撃はしてきませんから」
やよいが次々とロボット達を吹き飛ばしていきます。しかし向こうからは次から次へと…
キリがありません。
「うっうー、これじゃぁ先に進めません〜」
疲れてしまったやよいはその場にしゃがみこんでしまいました、すると…
「…その声は、やよい?」
聞き覚えのある声がしました。
「真さん?」
前を見ると、浮島の向こうにロボットとは違う姿が見えました。ちょうどロボット達の中に髪の短い
男の子が混ざっていて、戦っている様子でした。
「やよい、助けてあげましょう」
「うん!」
さっきのようにシャボン玉を大きくして、そしてジャンプと同時に発射!
シャボン玉はまっすぐに飛んでいき…
スパパパパーーン!
次から次へとロボット達を吹き飛ばしていきました。やよいはそれと同時に向こう側へ。
何体かロボットは残りましたが、それは真さんが、
「ぱーんち!」
かっこよくパンチで攻撃して壊してしまいました。

あらためて3人は集まって挨拶をします。
「でも私はやよいしか呼んでないはずなのに、どうして男の子が?」
「ボクは女の子だよっ!」
真さんはそういってウサギに不満をぶつけました。髪が短くてパンチでロボットを壊してしまう…
確かに男の子に見えても不思議は無いのでしょうが、ちょっと失礼ですよね。
「…コホン。それで、真、頼りになりそうですし、一緒に戦ってもらえたら、と…」

「つまり、この向こうに悪い奴がいて、それをやっつけないと帰れない、ってこと?」
「はい…」
やよいは真さんに事情を説明しました。
「うん、分かった。一緒に頑張ろう!」
「ありがとうございます」
こうして心強い仲間が来てくれました、やよいたちは無事に機械の国を抜け出せるでしょうか?

681メルヘンメイズ やよいの大冒険 第4節:2009/10/11(日) 02:01:53 ID:H6itFIAA0
「シャボン玉ー!」
やよいが大きなシャボン玉で次々とロボット達を吹き飛ばし、
「うりゃー!」
真さんは次々と他のロボット達を壊していきます。
「でも懐かしいなぁ、こういうロボットたち」
「懐かしい、ですか?」
やよいがそう真さんに尋ねました。
「うん、小さい頃人形が欲しくてさ、お父さんにおねだりしたんだ」
「でも買ってきてくれるのはこういうロボットとか戦隊ヒーローとかばっかりで、ううう…」
真さんはそう言って涙目になってしまいました…。
「はわっ、でも今の真さんはかっこいいですし、それにそれに…」
必死にやよいが慰めます。なんとか背中を押して、ようやく真さんも先に進んでくれました。
真さんってそういう育てられ方をしてたんですね…。

長いこと歩いて、ようやく次の世界への入り口があると思われる場所まで来ました。
「…!」
みんなの前にいたのは、今までの何十倍もあるかのような大きなロボット。
足が無いのに、ふわふわと地面から少し浮かんでこちらを見ています。
ウサギが歩いていって声をかけました。
「やぁ、アールメイコン。この辺に鏡があったはずなんだけど」
「…」
返事はありません。
代わりに両方の腕が上がったかと思うと、握った手のひらがくるくると動き、そして…
やよいたちに向かって飛んできました!
「危ない!」
真さんがやよいを抱えて横っ飛び。そのすぐ上を大きなげんこつが、ビュン!と通り過ぎていきました。
げんこつはそのまま飛んでいき、しばらくするとアールメイコンのもとに戻って来ます。
「…どうやらこれも女王の仕業…」
「やっつけるしかないの?」
「いえ、多分操られているのでしょう、何とかして止めることが出来れば…」
止める?
でも足はありません、だとすると…
「頭!」
真さんがそう言いました。
「それです! なんとかして頭にシャボン玉を…」
「うん!」
やよいは返事をしながら、アールメイコンの頭を見上げます。
ちょっと離れていないと体に邪魔されて頭には当てられそうもありません。
「ボクも手伝う!」
「真は離れていてください、なるべく壊さないで止めたいんです」
ウサギにそう言われて真さんは床の端のほうへ。
やよいとアールメイコンの一騎打ちです。
なるべく距離を取って、そして大きなシャボン玉を上のほうにある頭に。
「やよい、パンチが来る!」
真さんは走り回るやよいにアドバイスを。それを聞きながらやよいは飛んでくるパンチを避けます。
しばらくそうやっているうちに、だんだんやよいもタイミングが分かってきました。
1発目、2発目、そしてもう一回。
何回かシャボン玉を当てると、アールメイコンの動きがピタリと止まりました。と思うと…
そのまま前に倒れこむかのようにして、

バターーーーン!

…と突っ伏してしまいました。
地震かと思うような地響きがしばらく続いた後、周りはぴったりと静かになっていきました…。
「やっつけたの?」
「ええ、もう大丈夫でしょう、あとは何とか話を聞ければ…」
「しっかりして!」
「…ココハドコデショウカ?」
アールメイコンの声です、でももう襲ってくることは無いようです。
「ハッ、ワタシハイッタイナニヲ…」
ウサギが状況を説明すると、
「ソウデスカ、ワタシハアヤツラレテイタノデスネ」
そう言って申し訳無さそうにします。
「良かった…」
「ところでアールメイコン、鏡はこの辺に無かったかい?」
「ソレハコレノコトデショウカ」
胸からポロリと鏡が出てきました。ミヤージャが持っていたのと同じものです。
「ジョオウニモッテイルヨウニイワレテイマシタ」
「じゃぁこれでまた次の世界に行けるわけだね」
やよいが鏡を手に取ります。幸い割れたりひびが入ってるようなこともありません。
「あ、やよい、そういえば…」
「真さん?」
「ボクの他にも一緒にここに来た子達がいるみたいなんだ、何とか助けてあげよう」
「他にも…?」
多分みんなやよいの仲間達なのでしょう。真さんと一緒に来た、ということは…
「次の世界にも誰かいるってことですね!」
「そうですか… じゃぁ真はこの鏡から帰ってください。後は私たちに任せて」
「うん… ふたりとも頑張って!」
やよいと真さんはお互いこぶしを合わせて、そしてお別れをしました。

こうしてやよいはまた次の世界へ。
今度はどんなところ、そして誰がいるのでしょうか。

682メルヘンメイズ やよいの大冒険 第5節:2009/10/12(月) 00:48:56 ID:/buGS2jQ0
第3話 みどりの国  〜千早とやよいは名コンビ?〜

「真さん無事に帰れたかな…?」
「それは心配ありません。できれば一緒に戦ってもらいたかったのですが…」
「無理なの?」
「ええ、ストローは一つしかありませんし、それにそのドレス無しではこの世界の邪悪な瘴気によって
あっという間に体力を奪われてしまうことでしょう」
ウサギはそう言ってやよいのエプロンドレスを見ました。普通の服のように見えるのに、とってもすごい
ものだったのですね。

鏡の中は通路になっていて、そこを通ると向こうに光が見えてきました。
そして出てきたのは…

「きゃぁぁぁぁっ!」
やよいたちを出迎えてくれたのは、甲高い悲鳴でした。それもやよいには聞き覚えのあるものです。
「千早さん」
「あ、高槻さん…? いきなり何か出てきたかと思ったら…」
千早さんとやよいの出てきたところは、そうですね、30cmぐらい、すぐ近くです。
そんなところから人がいきなり出てきたら誰でも驚くでしょう。
「千早さんもここに連れてこられたんですか?」
「ええ… 私は確かにパジャマに着替えて、それでベッドに入ったはずなのに…」
千早さんはそう言って、目の前のやよいを珍しそうに眺めます。
いつもの服とは違って、オレンジと白のドレス、そしてエプロン。とても可愛らしいです。
「…」
千早さんは何も言いません。ただじっとやよいを見ているだけです。どうしてしまったのでしょうか?
「千早さん?」
「あ、ご、ごめんなさい…」
「きっとこの先に出口があるはずですから、一緒に行きましょう?」
やよいはそう言って、千早さんの手を取りました。さっきからぽーっとしてる感じの千早さんが心配に
なったのかも知れません。
千早さんはそのまま引っ張られてやよいと一緒に歩いていきます。なんだか仲が良さそうですね…。

見回すとそこは一面緑が広がっている世界。
いろんな昆虫やぷよぷよとした生き物、そして何故か銀色の四角い板がくるくると回りながら飛んできます。
「何だか嫌な風景ね…」
千早さんが銀色の板の方を見ながら、そうポツリと呟きました。よっぽど気に入らないみたいです。
「これもみんな女王に操られてるのかな…」
ちょっと寂しそうなやよい。生き物をいじめるみたいで何となく気が進まないのかもしれません。
なるべく落とさないようにして進むことにしましょう。

くるくる回りながら飛んでいるトンボや、たくさん足の生えた毛虫などを避けながら、やよいたちは
歩いていきます。
途中にボールを吐き出してくる穴みたいなものがありましたが、
「高槻さん、右に回りながら」
千早さんのアドバイスで上手くボールを避けながら穴をふさいでしまいました。
「そうよ、いい感じね」
「えへへー」
そんなことで褒めてもらって、やよいもなんだか嬉しそう。
そうしてどんどん進むと、また広い床が向こうに見えてきました。ここにも何かいるのでしょうか?

683メルヘンメイズ やよいの大冒険 第6節:2009/10/12(月) 00:50:56 ID:/buGS2jQ0
「やぁやぁ久しぶりだねぇ」
「待っていたよウサギくん」
そこにいたのは、まんまるい緑と赤のまだら模様をした二つの… 生き物でしょうか?
両方とも大きな目と口を持っていて、なんだかにこやかな感じです。そしてその周りにはいくつもの
顔の描かれたボールが…。
「これも女王の作った魔物でしょうか…」
ウサギの顔が緊張でゆがんだように見えました。
「魔物だなんて失礼な」
「このアラティーズに向かってそんなことを言うなんて」
目の前にはそっくりの顔が二つ。大きな口を横にめいっぱい広げて、けたけたと笑っています…。
「不気味…」
思わず千早さんがそう呟いた、次の瞬間。
「不気味ですって?」
「私たちの気にしていることを…」
「「…ゆ、ゆるせなーい!!」」
言ったかと思うと、アラティーズたちはぐるぐると床の端っこを回り始めました。
ちょうど床の真ん中にいたやよいたちは取り囲まれる形になってしまいます。
ギュウン… ギュウン…
それを見ていたやよいの目が段々不安定に、そしてふらふらと歩き始めてしまいます。
「目が回ります〜」
そして回転するアラティーズの横を抜けて、ついに床の切れ目まで…!
千早さんが我に帰ると、目の前には今にも床から落ちそうなやよいが。
「高槻さん!」
千早さんは叫びながら走っていき、そしてやよいの手をつかもうとします、が…
目の前でやよいの姿は、ふわっ、と消えてしまいました。
「!!!」
思わずそのまま体を宙に躍らせた千早さん、このまま二人とも…?

684メルヘンメイズ やよいの大冒険 第7節:2009/10/12(月) 00:51:28 ID:/buGS2jQ0
いいえ。
やよいの体は、ぎりぎりのところで千早さんが手を掴んで宙ぶらりんになっていました。
そのまま千早さんは力を込めてやよいを引っ張り上げます。
「高槻さん!」
「あ、千早さん…」
気が付いたやよいは千早さんの両手を掴んで、そのまま引き上げられるがままに。
必死に千早さんが頑張って、なんとかやよいを床まで持ち上げることが出来ました。
そして抱き上げるような格好で、一緒にごろんと床に転がり込みました。
「はぁっ、はぁっ…」
千早さんの息が荒くなってます。きっとやよいを持ち上げるのは大変だったからでしょう。
顔も赤くなっていて、とても疲れているみたいです。
「…そうだ!」
やよいは起き上がって床の真ん中を見ます。そこにはアラティーズたちが背中を向けて、何やら話を
してるようです。
「人間なんて大した事ないねぇ」
「私達が強すぎるんだよ」
…どうやらすっかり油断してるようです。そこにやよいはそーっと近づいていき、大きな大きな
シャボン玉を…

パチーーーーーーン!

「「うわぁぁぁぁぁぁ」」
不意打ち成功です。でもまだアラティーズは動けそうです。
「ふふふ、やってくれるわねぇ」
「さぁ戻ってらっしゃい、今度こそ叩き落してあげるわ」
しかしやよいはそのまま動きません。床の端に立ったまま、また大きなシャボン玉を作って、
待ち構えています。
「…なるほど、真ん中にいるのと違って、そこにいれば目が回ることはないわね」
「でも突き落とす手間が省けるじゃない、今度こそまっさかさまだわよ」
またアラティーズは回り始めます。今度は端っこのほうにいるやよいに集中して弾が飛んできます。
「高槻さん、縄跳びよ!」
離れたところにいる千早さんは、そうやよいに向かって大きな声で言いました。
縄跳び?
どういうことでしょう?
考えている間に、千早さんが両手をパンッ!と叩きます。
とっさにやよいはジャンプ。するとその下をアラティーズが通り過ぎていき、吐き出してきた玉は全部
やよいの下を通り過ぎていくではありませんか。
「縄跳びってこういうことですか〜〜」
「リズミカルに飛んでいれば当たりそうに無いわ、縄跳びと同じよ」
また手を打つ千早さんと、ジャンプするやよい。
それを何回か繰り返しながらシャボン玉をぶつけ、最後は大きなシャボン玉を。
すると、ついにアラティーズの動きが止まり、そして両方とも爆発して消えていきました。
「「うひゃぁぁぁぁ」」
爆発したところから何かが飛んできました。それは地面にぶつかってやよいたちの方へころころと。
…何でしょう、人形でしょうか。

「助かったわ〜」
「女王のせいでぐるぐると回り続ける呪いを掛けられていたのですよ〜」
人形に見えたのは、二人の小人でした。
「レプラコーンですね、普段は楽しく踊っているのが趣味なのですが」
ウサギさんが説明してくれました。いろいろありましたけど、助けることが出来てよかったですね。
「他のみんなも助けてあげてください」
そう言って小人たちはどこからともなく鏡を持ってきました。これでまた次の世界に行けそうです。

「迷惑をかけましたね、千早」
「いえ、結構楽しかったですよ、高槻さんとの冒険は、フフッ」
千早さんを先に元の世界に帰して、残る二人も鏡の中へと飛び込みます。
手を振りながら、やよいたちは小人さんたちとお別れしました。
先に進むと、何やらひんやりした空気が感じられます。今度は寒いところでしょうか…?

685またしてもパクリネタ ◆Free525l1Y:2009/10/12(月) 10:03:21 ID:rDdKzF8s0
迷探偵栞
リョウ「ぬ…これは酷いな…」
ルカリオ「死因は後頭部を銃で撃たれた事による失血死です」
セリカ「誰がエリカを…許せないわ…」(涙目
たてじん「そういえば川澄さん、あなただけアリバイが無いんですよね…」
川澄「…それは…」
たてじん「まあ話は後でじっくり聞かせてもらいましょう」
栞(違います!犯人は川澄さんではありません!このままだと…
  よし!シャドウさんが作ってくれたこの麻酔銃で…
  建山さん…ごめんなさい!)
::::::::::::::::::::::::......   ........::::::::::::::::::::::::::: ;;;;;;;::::::::::::::::::
           γ ⌒ ⌒ `ヘ
          イ ""  ⌒  ヾ ヾ    ドガァァァァァァァァン
        / (   ⌒    ヽ  )ヽ
        (      、 ,     ヾ )
 ................... .......ゞ (.    .  ノ. .ノ .ノ........... ........
 :::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ、、ゝ.....|  |..., , ノソ::::::::::::::.......::::::
  _ _i=n_ ._ [l_ .._....,,. .-ー;''!  i;;;〜−ヽ_ii_i=n_ [l h__
  /==H=ロロ-.γ ,〜ー'''l ! |'''ーヾ  ヾ 「!=FH=ロロ
  ¶:::-幵-冂::( (    |l  |    )  )=HロΠ=_Π
  Π=_Π「Ⅱヾ、 ⌒〜"""''''''⌒〜'"´ ノ;;'':::日lTΠl:::....
 Д日lTl,,..:''''"   ""'''ー-┬ーr--〜''""   :::Д日lT::::
 FH=n.:::::'            |   |         :::FL日l」:::::
 ロΠ=:::::.:.        ノ 从 ゝ        .::田:/==Д::
 口=Π田:::.                   .::::Γ| ‡∩:::::
 Γ| ‡∩Π::....                ...:::Eヨ::日lTlロ::::
 Д日lTlロ_Π::::.......            ...::::::::田:凵Π_=H:::
 =Hロ凵Π=_Πロ=HロΠ:::.................:::::::::::口ロロH「l.FFl
栞「シャドウさん…これって…」             尾張

686メルヘンメイズ やよいの大冒険 第8節:2009/10/14(水) 23:32:36 ID:LeEgOVwM0
 第4話 氷の国  〜雪歩の大事なお友達〜

「段々寒くなってきたね…」
やよいがそうウサギに言いました。
「ええ、今度は氷の国なんです。やよいは大丈夫ですか?」
「うん、でも待ってる人はきっと寒くて大変だから、早く助けてあげないと」
やよいはやっぱり優しいですね。

出てきたのは一面氷の床、そしてとても冷たそうな水が流れているところ。
さすがに寒くてたまりません。こういうときは運動をして体を温めることにします。
やよいが走ろうとして構えを取ると…

べしょ。

そのままやよいは見事に転んでしまいました。
「うう〜」
うつぶせに倒れたやよいはなんとか起き上がろうと頑張って、何回かの後にようやく立ち上がれました。
でもこれでは到底先に進むことは出来ません…。
それを繰り返すうちにやよいは床の端っこまで。滑って落ちてしまいそうになって、やよいはとっさに
床の端を掴みました。すると…

その端っこだけは床が少し盛り上がっていて、やよいはそこにぶつかって止まることが出来ました。
盛り上がりを掴んで立ち上がると、なんと滑らずに立つことが。
「そうか、それなら端っこを歩けば!」
「普通に歩けますー!」
ちょっと危ないですけど、滑らずに歩けることを考えれば安いものです。気をつけて歩いていきましょう。

走ってくるピンクや水色のペンギンを横目に、ゆっくりとやよいたちは進んでいます。
普通にしていればそんなに危なくは無さそうですが、ここにも女王の手先はいるはずです。
何とかしないと… そう思っていると、氷の床に穴が開いているところを見つけました。
遠目に見て人が2、3人ぐらいは入れる大きさでしょうか、誰かが穴を開けたのに違いありません。
「こ、これは…」
ウサギが驚いています。とにかく行ってみましょう。

穴の側に行くと、そこだけは下の土が見えていて、結構深い穴が掘られていることが見て取れます。
やよいがその側まで行って、
「誰かいますかー?」
と、呼んでみました。すると下のほうで何かが動いて、そして見慣れた人影が姿を現しました。
「雪歩」
「雪歩さん」
二人が同時にそう言います。
「や… やよいちゃん?」
そこにはノースリーブの白い花柄の服、そして何故かスコップを背負った女の子が座っていました。
この子が氷を掘って、そしてこんなに大きな穴を開けたのでしょうか?
「あ… ここだけ大きなひびが入っていたの… ここにいると寒くてたまらないから、こうやって穴を
掘って誰か来るのを待ってたの…」
そういうことでしたか。やよいとウサギもちょっと納得です。
「でも雪歩、ここだけ大きなひびが入っていたということですか?」
ウサギが訊くと、
「うん、まるで何かが落ちてきたかのような感じで…」
そう雪歩さんは言いました…。 何が落ちてきたというのでしょう?
「とりあえず一緒に帰りましょう、ここだとおなかも空きますし!」
「そ、そうだね… やよいちゃんは元気でうらやましいな…」
なんだか落ち込んだ様子の雪歩さんを連れて、やよいたちは出口を探しに行くことにしました。

しばらくすると少しは氷の上を歩くのにも慣れてきました。
雪歩さんが時折バランスを崩したりしてちょっと驚いたり、やよいがジャンプした拍子に転んだり。
そんなことを繰り返しているうちに…
「やよいちゃん! あそこに誰か倒れてる!」
雪歩さんの声に、やよいたちもその方向を向きます。すると…
そこにライトグリーンの服を着た… 女の子でしょうか? 青い髪飾りを付けたその姿を良く見ると…
「真美ちゃん!」
やよいたちの大事なお友達の姿でした。雪歩さんが走って行って、隙間を飛び越え、あっという間に
真美ちゃんのところにたどり着きました。勢いが付いたまま滑っていきますが、それは背負っていた
スコップで上手く勢いを緩めて、落ちる手前のところで止まることが出来ました。
「しっかりして!」
服を着ているとはいえ、真美ちゃんの体は冷たく、顔はすっかり青ざめてしまっています。
このままでは大変なことに…。
「氷の上に倒れていたのでは体も冷え切っているでしょう… 何とかしないと」
でも雪歩さんに出来るのは、ひたすら呼びかけて、そして体を暖めてあげるだけ。
雪歩さんがきゅっと真美ちゃんの体を抱きしめてあげました。こうすれば少しは…
「真美ちゃん、真美ちゃん…!」
返事はありません。
それでも何回も雪歩さんは呼びかけ、体をさすり、抱きしめ…
いつのまにかぽろぽろと涙が流れて、真美ちゃんの顔にぽたり、ぽたり、と。でもそれを止めることもせず、
ずっとそのまま雪歩さんはそうして真美ちゃんを抱きしめていました…。

687メルヘンメイズ やよいの大冒険 第9節:2009/10/14(水) 23:34:29 ID:LeEgOVwM0
「…」
「…」
みんなが疲れて眠ってしまいそうになった、その時。
「ん…」
「…え?」
雪歩さんが驚いて声をあげます。ずっと動かなかった真美ちゃんがかすかに動いたような気がしたのです。
「真美!」
「しっかり!」
やよいたちも一緒に呼びかけます。すると真美ちゃんの冷たかった手が少し動いて、まぶたが開いて、
「…ここ、どこ…」
声を出してくれました!
みんな思わず声を出して喜びます。雪歩さんはまた涙を流しながら、
「真美ちゃん… よかった… よかった…」
と、真美ちゃんの手を取りながら…。
「…ゆ、ゆきぴょん!?」
ようやく我に帰った真美ちゃんも、自分がどうしているのかをようやく理解すると、
「わ、うわぁぁぁぁぁぁ!?」
顔を真っ赤にしながら立ち上がります。元気になったみたいで良かったですね。

「…それで、真美ちゃんはあそこに落ちてきて」
「うん、とりあえず歩いたんだけどさ、すっごく頭が痛くて」
「それで行き倒れになったというわけですか…」
「行き倒れなんてひどいよー」
みんなは集まって、お互いの情報を交換しました。
でも、氷に穴を開けるほどの勢いで落ちてきて無事だったなんて凄いですね…。それはさておき。
「そういえばやよいっち、亜美はいなかった?」
「ううん、ここまでにはいなかったよ」
「そっか… 途中までは一緒に落ちてきたのは覚えてるんだけど」
やよいたちはもう大分歩きました。それでも見つからないのなら、また別の世界にいるということで
間違いないでしょう。
「とりあえずこの先に出口があるはずから、そこに行けば何か分かるかも」
「…うん! あ、そういえば」
真美はなにやらポケットから黒いボールを取り出しました。
「これ持ってると氷の上で滑らないみたいなんだ、名付けて『スベラーズ』!」
「…」
「…と、とりあえず持ってて、たくさんあるから」
みんなが黒いボールを持つと、本当に氷の上でも滑らなくなったみたいです。ちゃんと立つこともできます。
これで女王の手下にも何とかなりそうです。

目の前には何やら大きな柱が立っていました。
よく見ると、それは横に縞模様が入っていて、そして一番上には顔が描かれています。
「これが… ここのボスでしょうか?」
ウサギはそう言って、遠巻きに眺めています。
「とりあえず真美ちゃんはそこで待ってて、まだ体も万全じゃないはずだし」
真美ちゃんにそう言って、雪歩さんがその柱のほうへと少しずつ近づいていきました。
「これだるま落としだよ、やよいちゃん」
「だるま落とし… ですか?」
「うん、こうやって下の土台を叩くと…」
雪歩さんは背負っていたスコップを両手に持って、一番下の赤い部分を叩いてみました。すると…。
その赤い部分が少し動いたような気がしました。そして、その上にある青や黄色の部分も…。
見ているうちに、柱はばらばらになってやよいと雪歩さんの方にぐるぐると廻りながら向かってきました!
「きゃぁぁぁぁぁ…」
「うわぁぁぁぁぁ…」
なんとか二人は走り回ってそれをかわします。雪歩さんはスコップを引きずったままで。
走ったところにスコップで線が描かれていきます。
ひとしきり回ると、それらの部品は一つのところに集まってきて、また元の柱に戻りました。
「おではタンブラーだど、だど、だど…」
「いたいじゃないかー、かー、かー…」
柱の上の方から声がします。どうやら一番上のだるまみたいなものがしゃべっているようです。
そうしている間にもまた柱がばらばらになって部品がぐるぐると。
「やよい、なんとかシャボン玉を」
「でもどうやって?」
「柱の形に戻ったところを狙うのです!」
やよいは大きくあちこちに逃げ回りながらチャンスを待ちます。回転が遅くなってきたところでシャボン玉を
大きくして、そして部品が集まってきたところにぶつけます。
何回かそれを繰り返して、ついにだるまの部分だけになりました… しかし。
今度はそのだるま… タンブラーが氷の上を自在に滑って、やよいたちを突き落とそうとしてくるでは
ありませんか。
必死に走り回りますが、タンブラーも大したもの。ますますスピードを上げて二人を追いかけます。
「ちょこまかと足の速いやつめー、めー」
「足の無いあなたに言われたくありませんー!」
そうしているうちに、とうとう疲れてやよいと雪歩さんはその場にへたり込んでしまいました。
「はぁっ、はぁっ…」
寒いところなのでいい運動にはなるかもしれませんが、このままでは…!

688メルヘンメイズ やよいの大冒険 第10節:2009/10/14(水) 23:35:31 ID:LeEgOVwM0
と、その時。
「ううっ… 私何の役にも立ってない…」
雪歩さんでした。
俯いているので表情は分かりませんが、何だかとても悲しそうです。背中までふるふると…
「…こ、こんなダメな私は… 穴掘って埋まってますー!」
「穴!?」
その場の全員が唖然として見ているうちに、雪歩さんはスコップを振り上げ、そして氷の上に思いっきり
突き立てました。
氷に金属が当たる、カキィィィン、という音が空しく響きます…。

その音と入れ替わりに、今度は低い音が響いてきます。まるで地響きのような…。
やよいがふと雪歩さんのほうを見ると、ちょうどそこにはさっき雪歩さんがスコップを引きずった跡が。
そこからかすかに聞こえた音、それは
「氷にひびが入った音…!?」
言っている間に、それはどんどん広がっていき、やよいやタンブラーの重みのせいであっという間に足場の
そこらじゅうを覆うほどに。
「ど、どういうこと!?」
「雪歩さんのパワーってすごいんですね!」
「そんなわけないよー!」
でもどうしましょう、このままではみんな海に沈んでしまいます。
「さっきゆきぴょんがスコップを引きずったせいだよー」
真美ちゃんでした。言いながら、大きなアクションで手招きを。
みんなが走って真美ちゃんのいるほうに何とか飛び移り、そして…
「ぬぉぉぉぉ、落ちるーーー!」
正に手も足も出ないタンブラーは、みんなの見ている前で氷と一緒に沈んでいってしまいました…。
「氷に傷を付けると、それに沿って割れやすくなるんだよ」
真美ちゃんがそう言って氷の割れる様を眺めています。
「そうなんだー、真美ちゃんは物知りだね」
「ふふーん、これは漫画に載ってたんだよ、真美は物知りだね〜」
ちょっと得意そうな真美ちゃんを横目に、
「でも… 鏡をどうやって探しましょうか」
ウサギがそう言ってると、割れた氷の間にキラリと光るものが…。
それはそのままやよいたちのほうに流れてきて、そして氷に混じって浮かんだままになっています。
「なんとかこれで次の世界に行けそうですね」
みんなほっと一息です。

「やだ!」
「真美ちゃんは疲れてるんだし、一緒に帰ろう?」
「亜美は真美が助けるの!!」
まだ鏡は浮かんだままでした。
さっきから、雪歩さんと真美ちゃんがこうして言い争いをしていた為でした。
喧嘩?
そうではありません。
雪歩さんは疲れ切った真美ちゃんをこれ以上ここにいさせたくないから。
真美ちゃんは双子の妹の亜美ちゃんを助けに行きたいから。
二人とも一歩も譲りませんでした。
「困りましたね…」
「ねぇ真美、亜美は私達で助けるから」
「真美が助けなくちゃいけないの!」
雪歩さんが真美ちゃんの手を取って引っ張ろうとしますが、真美ちゃんも足を踏ん張ってその場に残ろうと
します。これではキリがありません。
いつしか、その真美ちゃんの目から涙がこぼれて氷の上に…。

「…分かったよ… やよいちゃん、お願いできるかな…?」
ついに雪歩さんも真美ちゃんの熱意に負けて、その握っていた手を離してくれました。
「ゆきぴょん… ありがとう…」
真美ちゃんはそのまま雪歩さんに抱き付いて泣き出してしまいます。頭をそっと雪歩さんがなでてあげます。
「真美ちゃん…」

「さ、そろそろ行かないと」
ウサギの声に促されて、みんなは鏡のほうに向かいました。
「みんな頑張ってね…。私は手伝ってあげられないけど、応援はしてるから」
雪歩さんがそう言いながら鏡の中へ。
そしてやよいたちもその後、次の世界へ向かって進んでいきました。
「亜美… 待ってて、きっと真美が助けてあげるからね」

689メルヘンメイズ やよいの大冒険 第11節:2009/10/16(金) 01:52:43 ID:I5UL5k9s0
 第5話 じかんの国  〜双子パワーVSトリプルヘッズ〜

さて…。
鏡の国にも大分慣れてきたやよい。今日は時間の国にやってきました。
「ここはどんな所なの?」
「正直なところ、ここは私にも良く分からないところなんです」
ウサギの頼りなさそうな言葉。
「ただ言えるのは… ここは純粋に女王の魔力によって作り出された空間で、ここでは時間の流れが他とは
違うということ… それぐらいでしょうか…」
なんだかよく分かりません。
でも、ここは女王にとって大事な場所ではないのか… そうやよいたちは直感していました。
ひょっとしたらここに女王がいるのかも…。

歩くたびに周りの風景がくるくると変わっていく、そんな空間をしばらく進んできました。
やよいの後ろには真美ちゃんが。どうしても妹の亜美ちゃんを助けたくて、結局付いてきてしまいました。
辺りを見回して見ますが、いるのは口の大きなネコとか、玉を吐き出してくる怪物とかばかり。
ここにも亜美ちゃんはいないのでしょうか…。

やがて、みんなは大きな谷間のようなところにやってきました。
向こうのほうに渡りたいのですが、そのためには間にある小さな動く床を飛び移っていかなくてはいけません。
しかもそれはたくさんある上に、どちらに進んだら良いかも分からない有様です。
「私が先に行って調べてきましょう、そこで待っていて下さい」
ウサギがそう言って、軽やかなジャンプであっという間に向こうのほうへと飛び移って行きました。

それでもウサギが戻ってくるにはしばらく時間がかかりそうです。
やよいと真美ちゃんは手近にあった大きな箱の上に座って休むことにしました。
「ねぇ、やよいっち」
「何、真美?」
「真美、結局付いて来ちゃったけど、役に立ってないのかな…」
ポツリと真美ちゃんが言いました。
「そんなこと…」
何か言おうとして、そこでやよいも一緒に黙り込んでしまいます。

真美はものすごく落ち込んでいる…。
こんな時、あの事務員のお姉さんならどんなことを言うのかな…?
真さんなら、千早さんなら、そして雪歩さんなら…

考えても分かるわけがありません。
やよいはやよいでしか無いのですから。
こんなとき自分に出来ること、それは何でしょう?

「そうだ、こんなときは、あれやろう!」
「あれ?」
「そう、ハイ、ターッチ!」
やよいは大きく右手を上げるポーズを取ります。いつもやよいはいろんな人とこれをやって、みんなで元気に
なって来たのでした。
「ねぇ…、真美がそんな顔してたら、せっかく亜美を見つけても亜美ががっかりすると思うんだ」
やよいは真美ちゃんを見つめたまま。
「だから、ね?」
しばらくやよいの手を見ていた真美ちゃんでしたが、おもむろに立ち上がって、
「タッチ」
自分の右手のひらを勢い良くやよいの右手に合わせます。パチンッ、という音が辺りに響きました。
「どう、ちょっとは元気になった?」
「うん… ありがとう、やよいっち」
真美ちゃんに心なしか笑顔が戻ったように見えました。

それからしばらくして、ウサギが戻って来ました。どうやらどちらへ行くべきかは分かったようです。
「さ、それじゃ行きましょう… ん、真美、なんかさっきより元気になったような…?」
ウサギの言葉に、
「魔法のおまじないをかけてもらったんだー」
そう答える真美ちゃんでした。

床を飛び移って進んでいくと、今度は複雑な通路。それをふさいでいるネコの魔物たちを倒しながら
進んでいきます。あちこちから現れるので、倒すのにも時間がかかってしまいます…。
「もう少しですよ、ここを抜ければ出口があるはずです」
「そう、だね… ふぅ、ふぅ…」
さっきから真美ちゃんはとても疲れた様子です。氷の国と時間の国を長いこと歩いていましたし、それに…。

 『そのドレス無しではあっという間に体力を奪われてしまうことでしょう』

そうです。
やよいと違って、真美ちゃんは今もどんどん体力を失っていっているのです。早く亜美ちゃんを助けて、
一緒に元の世界に帰してあげないと…。
自然とみんなは駆け足に。真美ちゃんもやよいに手を引いてもらいながら、なんとか付いて行きます。
そうしてようやくいつものような広い床が見えてきた、その時。

690メルヘンメイズ やよいの大冒険 第12節:2009/10/16(金) 01:53:34 ID:I5UL5k9s0
…足音でしょうか。
とっ、とっ、とっ、という規則的な音が小さく聞こえます。
こんな音で歩く魔物はここには今までいませんでした。その音がするほうに目を向けると…

何か走ってくるものが見えることに、やよいは気が付きました。
ひょっとして女王の手先でしょうか。やよいはストローを構えて、その走ってくるものの方にシャボン玉を
膨らませ始めました…。
タイミングを計って、真美ちゃんたちの後ろに隠れて、そして…。

「えーい!」
シャボン玉は見事に走ってきたものに当たり、盛大に破裂して虹を描きました。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「え?」
真美ちゃんと同じような声を出して倒れこんだ、それは…。
「「「亜美!」」」
亜美ちゃんでした。
尻餅をついてしまったのか、その場にへたり込んでお尻をさすっています。
「ひどいよやよいっちー、いきなりシャボン玉をぶつけ… あれ、真美?」
「やっと見つけたよ〜」
真美ちゃんはそう言って亜美ちゃんの手を取って、そしてその場にいっしょに崩れ落ちてしまいます。
「ど、どうしたの真美!?」

事情を説明すると、
「そっか… ごめんね、真美」
「ううん、亜美が無事ならおっけーだよ…」
さっきやよいにシャボン玉をぶつけられたのは何とも無いようです。他に怪我をしてるところもありません。
「この先に出口があるはずだから、早く帰らないと…」
そういえば、さっきよりも心なしか真美ちゃんの顔色が悪くなっているように見えます。
「行こう!」
みんなは一緒に広い床のほうへと飛び移っていきました。

「よく来たな子供たちよ」
その声はどこからとも無く、しかしあらゆる方向から聞こえてきます。
「だがここまでだ。お前達も、このクイーンズヘッドの手下となるが良い」
目の前の空間が急速にゆがんだかと思うと、そこに何か黒いものが集まってくるように見えました。
それは段々ひとところに固まってきて、そして人の頭のような形を作っていきます。
吊り上った目に大きな口、髪を後ろに回した額には大きな宝石が光っています。
「やっかいな相手ですよ、これは… 女王の精神を象ったもの、とでも言いましょうか」
「真美は後ろで待ってて、ここは私達でなんとかするから」
真美ちゃんを気遣って、やよいはそう言いました。そして、亜美ちゃんと一緒に前に進み出ます。
「んっふっふー、亜美たちは負けないもんね、それに二人もいるんだし」
やよいと亜美ちゃんの二人で、クイーンズヘッドの両脇に回り込みます。そして…
「くらえー、ヤキニクマンキーック!」
亜美ちゃんがすかさす飛び蹴りを当てようとします。しかし、その体はそのままクイーンズヘッドを
ものの見事に通り過ぎて行きました。
「あ、あれ?」
「ふはははは、その程度か」
今度はやよいのシャボン玉攻撃。しかしこれも何も無いかのように…。
「ど、どうなってるの!?」
「お前達は二人いると言っておったな、しかしこれならどうだ?」
そう声がすると、クイーンズヘッドは消えてしまい、また別のところに現れました。
すかさずそちらを向いてやよいと亜美ちゃんが攻撃。でもやはりまったく手応えがありません。
そして今度は三体一度に現れて、それぞれが玉をばらまいて来ました。
「わー、三人なんてそんなの卑怯だよー!」
「卑怯だと?そのような言葉は聞こえんのぉ」
三体の頭はそれぞれが現れたり消えたりを繰り返しながら、やよいたちのほうに玉をばらまいてきます。
「これが三体の頭…、トリプルヘッズの恐ろしさなんです…」
端に押し出されそうになりながらも何とか攻撃を当てようとしますが、それも効果が無く、とうとう二人が
落とされようとした、そのとき…。

691メルヘンメイズ やよいの大冒険 第13節:2009/10/16(金) 01:55:16 ID:I5UL5k9s0
「分かったよ」
そう声がしたかと思うと、真美ちゃんが後ろから歩いてくるのに気が付きました。
「真美!」
「危ないから下がってて」
やよいと亜美ちゃんはそう言いますが、
「…真美だって、黙って見ていられないもん…」
半ばふらつきながらも、真美ちゃんはやよいたちのほうに歩いてきました。
「それって、本物はどれか一つで、あとは幻、って言うか、うそっぱちなんだよね、おばちゃん」
真美ちゃんの言葉に、一瞬トリプルヘッズの顔がゆがんだ気がしました。 …一体だけ。
「どうやら図星のようだねー、真ん中の人」
それを真美ちゃんが言い終わるや否や、亜美ちゃんとやよいは真ん中のトリプルヘッズにすかさず攻撃を。
トリプルヘッズは姿を消そうとしますが間に合わず、二人の攻撃をまともに受けてしまいます。
「くっ…」
再び別の場所に姿を現した三体。
「子供騙しな手に引っ掛かってしまったが、次はそうはいかんぞ」
自信たっぷりにトリプルヘッズは言いますが、

「今度は左だよ」
「ヤキニクマンチョーップ!」
「真ん中」
「シャボン玉ー!」
後ろから真美ちゃんの的確な指示が次から次へと。
亜美ちゃんとやよいの攻撃が見事に当たっていきます。

「な、なぜだ…」
すでに額の宝石が割れて無くなってしまったトリプルヘッズが、苦しそうな声でそう言います。
「幽霊とかって、写真に写らないんだよね…」
そう言って真美ちゃんがみんなに見せたのは…
「携帯電話!?」
「な、何だそれは?」
「これを使うと、本物だけが画面に写るってわけ。前にテレビでやってたんだ、シンデレラ写真だっけ?」
真美ちゃんは得意げにそう言いました。
「心霊写真ですね…」
ウサギがボソッと一言。
「そう、それ。幻とか幽霊とかは写真にも普通は写らないんだ、もちろん携帯の画面にも」
「ば、馬鹿な…」
すでに消えることも出来なくなったトリプルヘッズの、それが最後の一言でした。
「とどめは…」
「「これだー!!」」
やよいと亜美ちゃんと、そして真美ちゃんの三人の攻撃の前に、トリプルヘッズは泡となって消えて
いきました。
しかし… そのまま真美ちゃんは床にばったりと倒れ込んでしまいます。

「真美!」
「しっかり!」
やよいたちが真美ちゃんのところに駆け寄りました。
「んっふー、真美も役に立ったよね…」
息も絶え絶えの真美ちゃんは、それでもそんなことを言って笑顔を作って見せます。
「うん、だから…」
しゃべらないで、そう言おうとしたその時。
どこからとも無く光が差し込んで来るのに、みんなは気が付きました。
「これって…」
「女王の魔力が無くなったおかげでしょう…」
真っ暗な空から差し込んでくる光は見ているうちにその範囲を広げ、やがてこの世界全体を覆うほどに。
魔物たちが消えていき、代わりにここの世界にもともと住んでいた人たちの姿が次から次へと…。
そして真美ちゃんも…。
「ん… あ、あれ、なんかどんどんパワーが溜まっていく感じ…」
みるみるうちに顔色が良くなっていきます。
「すっごーい!」
「真美、もう大丈夫ですね」
「うん!」
立ち上がって大きくジャンプをして見せました。

「亜美、真美、本当にありがとうございました」
ウサギは改めてお礼を二人に言います。
「んっふっふー、どういたしましてだよ」
「スーパーヒロインには愛が無くちゃいけないんだよ、もちろんやよいっちもそうだけどね」
「てへっ… そうかな」
ちょっと恥ずかしそうなやよい。
手を振りながら、亜美ちゃんたちとやよいはお別れをしました。
そして、またウサギと一緒にやよいも鏡の中へ飛び込んでいきます。

「でもさぁ亜美、あのトリプルヘッズってどっかで見たような気がするよね」
「真美もそう思う? うん、誰かは思い出せないんだけどなー…」

692メルヘンメイズ やよいの大冒険 第14節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:23:42 ID:fHeuEg360
 第6話 みずの国  〜律子さんは水がお嫌い!?〜

「おはよー伊織ちゃん」
「あ、やよい… おはよう」
やよいが伊織ちゃんに今日も挨拶を。でも伊織ちゃんのほうはあんまり元気ではなさそうです。
「大丈夫…? 何か顔色が良くないみたいだけど」
「あ… ちょっと寝不足なだけよ… まぁあたしにだってこういう日ぐらいあるわ」
そう言って、伊織ちゃんはぬいぐるみを抱いたまま歩いて行ってしまいました。ぬいぐるみの長い耳を
ぴょこぴょこと揺らしながら…。
「伊織ちゃん、何だかいつもと違う…」
そう思ってみても、やよいにはただ見守ることしか出来ませんでした。

「次は水の国ですね」
「どんなところなの?」
「んー… まぁ見てもらったほうが早いでしょうか」
そんな会話をしながら鏡の中を進んできて、出てきたのは…

…一面水で埋め尽くされた世界でした。
正確に言うと、ポツリポツリと浮島がある他は、ほとんどが水、それも流れの早い水というところです。
「これは… 川?」
やよいがそう訊いてみます。
「ええ、以前はもっと穏やかな川だったのですが、ここも女王の魔力でこんなことになってしまいました」
ウサギが答えました。水の流れるほうを見てみると、そこは滝壷になっていました。
下の様子は分かりませんが、恐らく危険なことになっているのでしょう。
「でもこれじゃぁ前に進めません〜」
そうです。やよいたちが今いる所も浮島。
どこを見ても、橋も無ければ通路になるようなところもありません。戻ろうにも鏡の通路は跡形も無く、
ふたりが困り果てていた、その時…。

「誰かいるのかしら〜?」
向こう岸でしょうか、遠くのほうから声が聞こえます。
「はーい、誰かいますよー!」
とりあえず返事をしてみます。川の流れる音にかき消されない、やよいの大きな声(これはやよいの自慢
だったりします)が響き渡りました。
「誰かいるのは間違いないようですが」
「でもどうやって向こうに行こうかな…?」

川の向こうから何かが流れてくるのが見えました。
それはいくつも連なって、流れと同じ方向にどんどん進んできます。
「あれは…」
「いかだ!?」
上流からたくさんのいかだが流れてきます。これに飛び移っていけば…!
考える間もなく、やよいはそのいかだに飛び移って、次々と進んでいきました。

いくつかのいかだを飛び渡って、やよいたちは向こう岸らしきところに着きました、そこにいたのは、
ゆったりした薄緑の服を着た、軽くウェーブのかかった長い目の髪の女の子でした。
「こ、こんにちは」
やよいがとりあえず挨拶をします。
「え… やよい?」
「…? あの、私のこと知ってるんですか?」
そう言われた女の子は、軽く頭を抱えるポーズをした後、
「私よ、律子」
返事をします。
「えーーーーーーー!?」
今度は本格的に女の子が頭を抱えてしまいました。
「…そりゃ確かに、普段は眼鏡におさげの格好だけどさ」
「だからと言って、いつもいつもそんな格好をしてる訳無いでしょう?」
律子さんは不満そうに言いました。
「でもとてもそうは見えませんよ、そんなにお美しいのに」
「…あー、そのウサギのぬいぐるみといい、この状況を説明してくれないかしら、やよい?」

「なるほど、私は鏡の国にいつの間にか来てしまって、そこから帰るにはこの川を昇らないと、ってこと?」
「そうなりますね、出口はこの向こうです」
「…だんだんこの奇天烈な状況にも慣れてきたわね…」
律子さんはそう言って、目の前の川を眺めました。
「で、どうやって向こうまで行くの?」
「流れてくるいかだに飛び移っていくのです、ちょっと疲れますけれど」
ウサギが流れてくるいかだを指差しながら言います。
「…分かったわ、足を滑らせたらおしまいよね、うんそうだわ」
律子さんが言いました。顔が妙に引き締まった気がします。
「それじゃぁ行きましょー!」

岸は程なく途切れてしまい、やよいたちはまたいかだと浮島を飛び移って進んでいくことになりました。
途中、くるくる回りながら飛んでくるトンボ、そしてまっすぐ向かってくるトランプのカードの魔物を
吹き飛ばしつつ、慎重に慎重に…。

693メルヘンメイズ やよいの大冒険 第15節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:24:56 ID:fHeuEg360
そうして何とか進んでいくと、いつものような広い床が見えてきました。しかし…。
やよいたちは目の前の光景に呆然と立ちすくんでいました。

どう見ても3mぐらいはあろうかという隙間。
そしてその下は激しく水が流れて、大きな音をたてていました。
「さすがに上流まで来ると水の勢いも凄いわね…」
律子さんが表情を変えずに一言。
しかし、出口に向かうにはどうしてもここを飛び越えなくてはなりません。
「落ちたらひとたまりもありませんからね… 一気に助走をつけて飛び越えましょう」

まずはウサギから。
少し後ろに下がったかと思うと、猛ダッシュからのジャンプで見事隙間を飛び越えました。さすがですね。
「高槻やよい、いきまーす!」
やよいも同じように、こちらはぎりぎりまで後ろに下がった後、走りながら両手を揃えてのジャンプ。
ウサギほどではありませんが、見事に向こう岸に着地できました。
「次は律子さんですよー!」
…しかし律子さんはピクリとも動きません。ただじっと水の流れを見つめたまま…。
「どうしたんですかー?」
やよいの呼びかけも全く聞こえてない様子。

「…無理よ…」

「え?」
やよいの問いかけに、
「私やよいたちみたいに運動神経良くないし、それに…」
「…私、ここから落ちたら… 泳げないのよ…?」
消え入りそうな声で、そう律子さんは答えました。
「そんな!」
「律子さん!!」
やよいたちの呼びかけにも答えず、律子さんは体を震わせ、そしてその場にしゃがみこんでしまいました。
「どうしましょう…」
ウサギの言葉に、
「どうしましょうって、律子さんを助けに来たんだよ、私達!」
やよいはそう叫びながら、岸の端まで駆け寄ります。そして…

「届かないなら、私の手に捕まってください!」
律子さんのほうに両手を差し出しました。
「やよい…」
「さぁ!」
「でもそんなことして失敗したら、やよいまで一緒に…」
「私なら平気です、律子さんが勇気を出せば絶対大丈夫です!」
やよいのその目には一点の曇りもありません。ただじっと、律子さんが動いてくれるのを待っています。
「…分かった。やよいに私の命預けるわよ…」
「律子さん…!」
「さぁ、そうと決まったら」
律子さんはやよいたちと同じように後ろまで下がって、そうして目の前のやよいをじっと見ました。

(いつもと違って眼鏡が無いから、目測とかあてにならないわね…)
(…ううん、私は目の前のやよいの所に全力でジャンプすればいいのよ、がんばれ私)

走り始めました。
やよいたちに比べるとそれほど足は速くありませんが、それでも懸命に走り、そして…
少し手前のところからジャンプを!

片手をやよいのほうに伸ばしてのジャンプ。
やよいも律子さんの手を掴もうと必死に手を前に出します。
そしてその二つの手のひらが触れたかと思った瞬間…!

バシャーーーーーーン!
大きな水音がしました。

「律子さん!!」
どうにかやよいは律子さんの右手を掴みました。
しかし律子さんの体は半分以上が水の中に。何とかして引き上げないと、このまま沈んでしまいます。
自分も律子さんの重みで一緒に落ちてしまうのを懸命にこらえつつ、やよいは小さな体で必死に律子さんを
引っ張りました。
「やよ… い…」
「律子さん、しっかり!」
やよいのその言葉で元気が出たのか、律子さんも助かろうと残る左手を懸命に動かし、そして岸の端を
なんとか掴みました。
「んっ…!」
そのままやよいに引き上げられて律子さんは見事岸まで上がり、そしてその場に倒れこみます。
「や、やよい…」
「…やりました、やりましたよ律子さん!」
「うん… 良かった… あ、ありがとう、やよい…」
律子さんは見事に川を渡りきったのです!

694メルヘンメイズ やよいの大冒険 第16節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:26:32 ID:fHeuEg360
「やぁやぁお見事」
突然前のほうから声がしました。
見ると、そこには耳のとがった小男が、やたら大きな魚のようなものと一緒にたたずんでいました。
「こんな時になんだけど、何か買っていかないかい? そっちのお姉さんには水着もあるよ」
「み、水着!?」
律子さんは露骨に嫌そうな顔をして見せます。
「こんなところまで来て商売かパップン? 盗品故買屋なんてやめろと何回言ったら…」
ウサギも不快そうな顔でそう言いました。
「何だか分からないけど、この人は悪い人なの?」
「ええ、盗んだものを人に売りさばくケチなコソドロですよ」
「コソドロとは失礼だなぁ、今日はこんなものを持って来てあげたのに」
パップンと呼ばれた、その小男が見せたものとは…
「「鏡!!」」
「ほう、やっぱりこれは凄い価値があるものなんだねぇ」
ケタケタ笑いながら、パップンはその手にした鏡をひらひらと見せびらかしています。
「その鏡渡してもらうぞ!」
「やだね、100万ゴールド出すなら考えてもいいけどな」
「どうせどれもこれも盗んだものだろう、渡さないなら殺してでも奪い取る!」
珍しく怒気を含んだウサギの言葉に、
「おーこわいこわい、だったらこっちも本気でいくからねー」
そばにあった魚のようなものにパップンが乗り込むと、それは大きな音を立てて振動し始め、やがて少し
浮き上がりました。
そして後ろに下がったかと思うと、そのままやよいたちの方に突撃して来るではありませんか。
「わぁぁぁぁっ!?」
「はっはっは、レイドックとか言ったっけ、コイツはいいぜー」
魚の頭の部分… ちょうど飛行機で言うとコクピットでしょうか、そこに乗り込んだパップンの高笑い。
一方のやよいたちは逃げ回るばかり…

…ではありませんでした。
「なんだ、けっこう単純な動きしかしないのね、それって」
律子さんが冷静に、パップンに向かってそう言いました。
「な、なんだと?」
「どうせそれも盗品なもんだから、自分では満足に操縦もできないと見た」
「う、うるさい!」
そう、それは見事なまでに正解でした。
律子の言葉に腹を立てたパップンはますますスピードを上げてやよいたちに向かってきます。
しかしすでに怒りで冷静さを失った操縦士のこと、その動きはますますワンパターンになるばかり。
ウサギにもやよいにも、そして律子にも楽々と避けることが出来ました。
「へっへー、こっちですよ〜」
「こ、このやろー!!」
「やよい、あの尾びれの部分とかどうにかできない?」
「しっぽですね、分かりました!」
やよいはレイドックの突撃を横にひょいとかわし、尾びれにシャボン玉をぶつけました。
数回繰り返すとあっさり尾びれは壊れて外れてしまい、レイドックの動きが段々遅くなって行きます。
「今度は背びれ」
バランスを崩してまっすぐ飛べなくなり、
「最後は頭ね」
前につんのめって、そのままひっくり返って大破してしまいました。

695メルヘンメイズ やよいの大冒険 第17節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/17(土) 22:27:21 ID:fHeuEg360

 ちゅどーーーーーーん…

頭を中心として、盛大な爆発が起こると共に、
「ちくしょー!!」
コクピットから勢いでパップンが飛び出してきます。
「残念だったわね、コソドロさん」
その前に仁王立ちになる律子さん。
「さぁ覚悟するです」
「鏡を渡してもらいましょうか」
ボロボロになった上、三人に囲まれてしまってはどうしようもありません。
「お、覚えてろー!!」
持っていた荷物などをそのままに、パップンはジャンプしながら逃げていってしまいました。
「逃げられちゃいました…」
「でも鏡は無事なようですよ」
荷物からウサギが鏡を取り出しました。
「これで律子さんも帰れますね」
「ええ、一時はどうなるかと思っ… くしゅん!」
律子さんのくしゃみがあたりに響きます。それもそのはず、律子さんはさっきからずぶぬれになったまま
だったのですから。
「あ、水着もありますね… 濡れたままだと風邪引きますから、これに着替えてはどうです?」
しかし、ウサギの親切心(…だと思います)による提案にも、
「…結構です」
律子さんはあくまで冷静にそう言うのでした。

「やよい、ありがとう」
「えへへー」
律子さんも元の世界へ帰っていきます。
「こうやって帰れるのも、やよいに勇気をもらったおかげかしら。その勇気があればきっと何でもできるわ」
「ありがとうございますー」
両手を広げたままやよいは律子さんにお辞儀を。
それを満足げに見た後、律子さんは鏡の中へと入っていきました。
「さぁ、それじゃぁ私達も」
「そうだね、気合入れていきましょー」
「ええ、いよいよ手下達も本気を出してくるでしょう、でもやよいなら出来ると確信しましたよ」
そんな話をしたあと、やよいたちも鏡の中に。

「…でも、帰るまでに服乾くといいね、律子さん」
「ええ、目が覚めたときに体がべしょべしょなんて洒落になりませんし…」

696メルヘンメイズ やよいの大冒険 第18節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:26:25 ID:9MBHA9rQ0
 第7話 そらの国  〜あずささんと迷子のひよこ〜

「うぬぬ、ウサギの奴め…」
水晶玉を眺めながら、恐ろしい形相で何やら呟いている人影。厚いコートを身にまとったまま、いらいらと
歩き回っていました。
…これこそが、鏡の国を支配しようとしている女王でした。
その視線の先には、水晶玉に映ったウサギ、そしてやよいの姿が。
「ただでさえこのような体になって窮屈しておるのに、人間を連れてこの私に立ち向かうとは…」
女王のいらいらは、周りにいたトランプの兵隊達にもはっきりと伝わってきます。
「お前達、何としてもあの二人を捕らえて、首を刎ねてしまうのだ、よいな!」
「へ、へへー」


少し冷たい風が吹いています。
下を見ると、そこには図鑑でしか見たことのないような高い山がいくつも、そして雲すらも足元を悠然と
流れていました。
「ここは空の国… 鏡の国の中心部に向かう通路みたいなところですね」
「じゃぁ女王にも…」
「ええ、まだもう少し道はありますけどね」
見渡す限り青い空、まぶしい太陽、そしてどこまでも続く床。
普段だったら、こんなところでお弁当でも広げておしゃべりとかしたくなるようなところです。
でも、やよいは遊びに来たわけではありません。ここにも誰か助けを待っている人がいるはずです。
「誰かいれば、すぐに見つかるよね?」
「ええ、見通しもいいですし、間違ってもここで迷子になるようなことは無いでしょう」


その頃…。
「え〜と、ここはどこなんでしょう…」
「私は寝る前にコンビニに行って、お買い物をしてきたはずなのに…」
背の高い女の人が、なにやら言いながら歩いていました。
とは言っても、同じところを右往左往しているばかりで、気が付くとまた同じ所に戻ってきている始末。
「はぁ… 私にもやよいちゃんみたいに元気があったら…」
そう言いながら、近くにあった大きな箱に座って空を眺め始めました。
「どこまでも青い空ね〜、さっきまでは綺麗な星空だったのに」


さて、やよいたちのほうは、くるくる回って飛んでいるトンボやトランプの兵隊たちを吹き飛ばしつつ順調に
進んでいました。
シルクハットを頭にかぶった小人たちがたくさん道をふさぎつつ、やよいたちに向かってきました。
やよいはシャボン玉をぶつけてどいてもらおうとしますが、小人たちはその度にシルクハットをすっぽり
かぶって飛んできたシャボン玉を防いでしまいます。
「まったく、ハッタのやつもあいかわらずキチガイじみた物を作るものだ」
ウサギがシルクハットを見ながら言いました。
「こういう相手には普通に挑んでも意味がありませんから」
「どうするの?」
「一度向こうを向いてください」
やよいが言われたとおりにすると、小人はやよいの背中を突き飛ばしてやろうとして、シルクハットを…
「そこです」
振り向いてシャボン玉をぶつけると、小人たちはまとめてシャボン玉と一緒に飛んでいってしまいました。
「やったぁ!」
「こういうタイプはどこの世界でもこうやって倒すものですよ」


一方。
「三浦あずさの青空レポート〜」
さっきの背の高い女性… あずささんは、まだのんびりと歩いていました。
でも、さっきと違って同じところばかり歩いていたわけではありません。
「ぴよぴよ」
あずささんの足元にはひよこが歩いていました。
不思議なことに、そのひよこは黄色の毛の中に一房だけ緑色が混ざっていて、どこからともなくあずささんの
側にやってきたのでした。
そしてまるであずささんを案内するかのように先へ先へと歩いていきます。
「かわいいですね〜」
やがて大きな広間までやってくると、ひよこは懸命に羽をばたつかせて飛ぼうとしました。でも悲しいかな、
ひよこは空を飛べません。
「あらあら、この先に行きたいのかしら?」
あずささんはひよこを両手に持つと、そのままジャンプして向こう側に。
そしてひよこを降ろしてあげます。
「ピヨォ」
ひよこはそう鳴くと、嬉しそうにその先へと向かって走っていきました。
「ひよこさん、良かったわね〜」


「やよい、もうすぐですよ」
「うん、でもここには誰もいなかったね」
あちこちを歩いてきましたが、結局誰かがいる様子はありませんでした。
もうすぐ出口も見えてくるはずです。
「見通しのいいところですし、誰かいればすぐに見つかりそうなものなのに」

697メルヘンメイズ やよいの大冒険 第19節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:27:21 ID:9MBHA9rQ0
「ひよこさん、無事におうちに帰れたかしら?」
あずささんはひよこと別れた後も、その去っていったほうに向かって歩いていました。
「でも、どうやって私は帰ろうかしら〜」
いつの間にか、あずささんは広々とした床があるところまで来ていました。
見る限りここで行き止まりになっていて、これ以上行くところは無さそうです。
「ふぅ…」
ここまで歩いた疲れもあったのでしょう、いつしか、あずささんは暖かい日差しの中でうとうととお昼寝を
始めてしまいました。
「zzz…」


「さぁもうすぐ出口があるはずです」
「うん、それじゃぁジャンプして…」
やよいたちはいつもの広い床までやってきました、そこで見たもの、それは…

「あずささん!」
「こんなところに倒れているとは… きっと魔物に襲われたのでしょう」
二人が辺りを見回すと、ちょうど空中から大きな鳥が降りてきて、ギャァギャァと不快な鳴き声を上げて
いるところでした。
「デッドルースターか…」
「でっかい鳥…」
「いや、あれも機械仕掛けです、さっきのレイドックみたいなものですね」
近くで見ると、それはニワトリのような格好こそしていますが、アヒルのような大きな嘴に茶色い翼、
青や白の派手な体。そして首の下には鏡が…。
「これは女王の魔力で操られているだけ… 何とか止めなくては」
「うん!あずささんのかたき、覚悟ー!」
やよいがシャボン玉を用意してデッドルースターと向き合った、正にその時。

「ピピィ」
突然、1羽のひよこが二人の目の前に現れました。
それはシャボン玉を構えているやよいの方を見ると猛然と走って来て、そしてやよいの足をひっきりなしに
つついたりしています。
「痛いです〜」
「これは… ただのひよこのようですが…」
ウサギがひよこを抱き上げると、今度はウサギの顔をつついたり手の中で暴れたり。
緑色の毛が一房ある以外、どうみても普通のひよこのようですが…。


「あらあらまぁまぁ」
あずささんが目を覚ますと、大きな鳥とウサギのぬいぐるみ、そして見知った女の子が目の前にいます。
「…これは…」
そしてもう一度前を見てみると、さっき助けてあげた小さなひよこもいました。

「ひよこさん、無事に帰れたのね」

突然後ろから声が。
振り向くと、魔物に襲われたはずのあずささんが元気にこちらに向かって歩いてくるではありませんか。
「あずささん」
「無事だったんですか?」
「ええ、ここに来るまでにちょっと迷子になっちゃったけど、そこのひよこさんに連れてきてもらったのよ」
「それで歩き疲れたから、ここで休ませてもらってたの」
事も無げに、あずささんは言いました。
「え゛…」
やよいたちの額に汗が。
それにも気が付かずに、あずささんはひよこの方に言いました。
「そちらはお母さんかしら〜」
大きな鳥を見ながら、のんびりとした口調であずささんが。
「お母さん…?」
やよいはひよことデッドルースターを交互に見ますが、もちろん似ても似つきません。
この2羽が親子だなんて…。

「そうか、インプリンティング!」
突然ウサギがそう叫びました。
「それって、雛が最初に見たものを親だと思い込むという、あれかしら?」
これはあずささん。
「そっか、だからこのひよこさんはお母さんをいじめていると思って私に…」
「もともとここに置かれていたおもちゃを、偶然このひよこが見つけたのですね」
みんな納得した様子。でも、デッドルースターを止めないことには先に進めません。
どうしようかと、やよいが思っていると…。

「ひよこさん、いらっしゃい」
あずささんがひよこの前まで来て、手をひよこのほうに伸ばしました。
「みんな優しい人だから大丈夫よ、ね?」
「…」
「…」

言葉が通じたかどうかは分かりませんが、しばらくしてひよこはあずささんのほうに歩み寄ってきます。
そして、しゃがんでいるあずささんの胸のふくらみに、ぽふっ、と飛び込みました。
「もう大丈夫よ〜」
そう言いながら、あずささんはやよいたちから離れて、そしてやよいたちにうなずいて見せました。
これで安心して戦えそうです。

698メルヘンメイズ やよいの大冒険 第20節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 00:28:03 ID:9MBHA9rQ0
程なくデッドルースターはその動きを止め、やよいたちはその首にかかっていた鏡を手に入れました。
「これでまた次の世界に…」
と言いかけて、やよいはハッと気が付きました。
「あずささん、ひよこさんは…!」
「…気絶しちゃったわ…」
悲しそうにあずささんが首を横に振ります。目の前で自分のお母さん(と信じているもの)がこのような
ことになってしまっては…。
「ひよこさん… ごめんね…」
やよいの目からも涙がこぼれます。
「…連れて帰るのも無理ですし、残念ですがこのまま…」
とウサギが言いかけた、その時でした。

「…何かしら?」
向こうのほうの空から、何か飛んでくるのが見えました。
「鳥の群れ… ですね。恐らくはこの辺に住んでいたものでしょう」
「みんな帰ってきたですー」
その中から何羽かの鳥が出てきました。それらは全体をライトグリーンの羽に覆われた、やよいが見たことも
ないような美しい鳥でした。ところどころの羽が、太陽の光を反射してきらきらと輝いています。
「ひょっとして、このひよこのお母さんかも知れませんよ」
あずささんがひよこを地面に降ろすと、鳥達が近寄ってきます。
そして目の前の小さなひよこを羽で包んで、しばらくコロコロと揺らして…。

そうしているうちに、ひよこも目が覚めた様子。しばらくは目の前にいる大きな鳥におびえた様子でしたが、
「…ピピィ」
やがて、そっと鳥のほうに体を摺り寄せていきました。
「これで安心ですね」
「良かったね、ひよこさん」


「ひよこさん、さようなら〜」
あずささんは鳥達のほうに手を振りながら、鏡の中へと入っていきます。ちょうどひよこはさっきの鳥と
一緒に飛ぶ練習をしているところでした。
「ピィッ!」
ひよこも返事をして見せます。

「さぁ、では私達も。いよいよこれからが本番ですから」
ウサギの真剣な表情に、やよいも緊張の面持ち。でも、ここまで来たら後には引けません。
やよいは目の前の鏡をじっと見つめて、しばらくそのまま風に吹かれたままになっていました。

女王とはどんな人なのでしょう? そして、そこに待っているのは…。

699メルヘンメイズ やよいの大冒険 第21節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/20(火) 23:57:34 ID:9MBHA9rQ0
 第8話 かがみの国  〜春香さんがいっぱい!?〜

「…これが、鏡の国?」
「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、『へいたいの国』と言う感じに
なってしまってますけど…」
やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆然と眺めていました。
そこは鏡の国というにはあまりにも暗くて、うにょんうにょんしていて、ついでに楽しそうな雰囲気の
欠片もないようなところでした。
鏡の国なんて生まれてこの方見たことも無かったやよいでしたが、これが鏡の国だといわれても絶対に納得
できない、そんな自信さえあります。
見てるだけで憂鬱になってきそう、でもここを進まなくては鏡の国に平和を取り戻せません。


ウサギの言葉どおり、ここでは少し歩くとすぐにいろんな魔物に出くわします。
特にこのトランプに足が生えたような魔物は頻繁に出てきては、やよいを追い掛け回してきます。

床を飛び移っていくと、二人は大きな広間にたどり着きました。
不思議なことに、そこには大きな鏡のようなものがいくつも並べられています。
やよいがその中の一つにそっと近づいていきます。しかし、その鏡にはやよいはおろか、何も映ってません。
「…?」
と、その時。
鏡の中の景色が動いたような気がしました。
それはゆらゆらと動きながら、やがて一つの形を作っていきます。
「春香さん…?」
それはやよいの良く見知った女の子でした。でも、いつもと違う点が一つ、それは服でした。
青と白のドレスに水色のエプロン、色だけ変えればやよいの着ているドレスにそっくりのものです。
「こんばんは、やよ… あ、わぁぁぁぁ!?」
見ているうちに、春香さんは鏡から出て来て挨拶を… しようとして転んでしまいます。
うつぶせに倒れてる春香さんを助け起こそうと、やよいが駆け寄りました。
「あいたた…」
「はわっ、大丈夫ですか… ?」
そこで、やよいは妙なことに気が付きました。

「あの… 痛くないんですか?」

その春香さんは転んで『痛い』とか言ってるはずなのに、顔の表情が全く変わることがありません。
まるでお面でもかぶっているかのような…。

その様に、やよいは思わずビクンッと肩を震わせます。本能的、とでも言うのでしょうか。
そうしている間にも、他の鏡からも次々と春香さんが出てきては、やよいの周りにわらわらと集まって…。

「やよいちゃんだいじょうぶ」
「おかしつくってきたんだよ」
「いっしょにれっすんいかない?」
いろいろなことを言っています、どれもこれも同じ顔の表情をしたまま。

「うう〜…」
恐怖のあまり、じりじりとやよいは後ずさりを。しかしすぐに床の切れ目まで追い詰められてしまいます。
それでもやよいの方に寄ってくるたくさんの春香さん。
「こ、こんなの春香さんじゃありません!」
叫びながら、やよいは向こうの動く床に素早く飛び移り、そしてシャボン玉を構えます。
めいっぱいシャボン玉を膨らませて、春香さんたちを吹き飛ばそうとした、その時。

「え…!?」
なんと春香さんたちもストローを取り出し、そこからシャボン玉を出してくるではありませんか!
そこかしこから飛んでくるグレーの小さなシャボン玉。
それぞれが逃げ場の無いやよいにぶつかって、嫌な痛みと共に体中で弾け、頭がくらくらと…。

「やよい、逃げるのです!」
そんな声がします、しかし、全てが遅すぎました。
やよいの体は、床が動いた拍子に崩れ落ち、そしてそのまま奈落のかなたへと消えていきました…。
「や…」

「やよいーーーーーーーー!!」
ウサギの声だけが、いつまでもその場に響いていました。

「…」
床から落ちて、くるくると回りながらやよいは空中をどんどん落ちていきます。
やよいにも、高いところから落ちて地面にぶつかったらどうなるかぐらい分かっていました。

遠くからはウサギが自分を呼ぶ声。
ぼんやりとした頭で、ウサギさんもあんなに大きな声で叫んだりするのか、とか考えてみます。
「ごめんね… 私、もう帰れそうに無い…」
妙にゆっくり流れている景色を眺めながら、やよいはそう言いました。家にいる家族たちはどう思うかな、
せっかく助けた雪歩さんや真美ちゃん、そしてまだ会えてない伊織ちゃんは…。

700メルヘンメイズ やよいの大冒険 第22節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:36:09 ID:JDkoToc20
やよいはまだ空中を落ち続けていました。

 派手で綺麗な色の洋服…
 おいしそうなお菓子…
 『100%オレンジジュース』と書かれた大きな瓶…
 テレビでしか見たことのない外国の風景…

流れていくそれらがはっきりと見えている、不思議な空間。
けれど下を見ても真っ暗で、これからどんなところに行くのかさえ分かりません。
「…」

どれぐらい経ったでしょうか、やがて下のほうにかすかな光が見えてきました。
それが何なのか分かる前に、

ぼふっ…

やよいは自分の体に衝撃が走るのを感じました。
しかし、不思議とそれはすぐに治まり、そしてもうそれ以上体が落ちることもありませんでした。
とりあえず無事に着地できたことは間違いありません、でもここはいったい…。

体の下には小枝と枯葉の山。
クッションになってくれたその上から飛び降りて見ます。しかし辺りを見ても何もありません。
空も見えず、辺りも真っ暗に近い空間…。
「ここも… 鏡の国?」
もう真っ暗とかそういうのには慣れたつもりなのに、こうも何も無いところだとさすがに寂しくなります。
それを振り払うかのように、やよいは元気良く歩き始めました。もちろん当てがあるわけではありませんが、
ここでじっとしているよりはよっぽど良いと思ったのでしょう。
「♪な〜やんでも、しっかたない、まそうさ、きっと明日は違うさ…」

そうしてしばらく歩いていると、
「その声… やよい?」
突然、暗闇から声がしました。
さっき沢山聞いた声、それは春香さんの声でした。
いつもならすぐに駆け寄って挨拶とかするのでしょうが、さっきひどい目にあったせいか、やよいは体を
震わせながら、
「こ、来ないで!」
と大きな声で叫びました。
「ど、どうしたのやよい?」
「春香さんは黒くありません、黒いのは中の人だけです!」
もはや何を言ってるのかさえ分かりません。それでも、
「やよい、私だよ」
「落ち着いて、ね?」
と、春香さんは呼びかけます。そこから春香さんが近付いてこないのは、やよいが余計パニックになると
見たからでしょうか。

「…ほんとに、春香さんですか?」
ようやく落ち着いたのか、やよいも春香さんの声に答えます。
「うん… やよいも何かひどい目にあったみたいね…」
ようやく姿を現した春香さんは、青と白のドレスではなくピンクと白の上着、水色のスカート、そして髪には
可愛らしいピンクのリボン…
「…はうぅぅぅ…」
それを見て、やっとやよいも安心できたようです。

しかし…
そこにいたのは春香さんだけではありませんでした。
ふと前を見ると、春香さんの向かいには、おばあさん… でしょうか…。
妙に大きな鼻に紫色の服、そして杖を持ったおばあさんがいつの間にか立っていました。
思わず身構えてしまうやよいたち。そんな二人におばあさんは優しく、しかし力のある声で言いました。
「お前たちは何者じゃ」
「わ、私たちは…」
そう言いかけたところに、さらに言葉が被さりました。

「こんなところに人間が来るとは、珍しいこともあるものだ」

おばあさんの言葉に、
「め… 珍しいんですか?」
と、やよいが尋ねます。
「ああ、珍しいともさ。最近は夢を持った子供なんてものはとんと見かけなくなったからの…
この鏡の国… いや、夢の国に来られるのは、夢を持った純粋な人間だけなんだよ」
「あ、じゃぁ私も…?」
「そうかも知れんの」
春香さんの言葉にも、おばあさんはあっさりと答えました。
「まぁゆっくりしていけ、どうせここは夢の国、時間などたっぷりとある。訊きたいこともあるし、うちで
休んでいかんか?」
どうやら悪い人ではなさそうです。
やよいたちはおばあさんの厚意に応えることにしました。

たどり着いたのは、ゆうに数百年は経っているかのような古めかしい家でした。
しかし中は綺麗に整った家具や調度品、部屋の隅には黒い子猫がのんびりと寝転がっています。
まるで、ここだけ時間の流れが止まっているかのようでした。
「すごく古いお家なんですね…」
やよいは正直な感想をおばあさんに言いました。
「さっきも言ったろう、ここは時間なぞたっぷりあるのだ、と。その辺の椅子に座って待っておれ」
言われたとおりに、二人は椅子に腰掛けます。不思議と、そこに座っていると自分たちまで時間の流れが
遅く感じられるようでした。

701メルヘンメイズ やよいの大冒険 第23節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:37:21 ID:JDkoToc20

「そうだ」
お茶を飲んでしばらく休んだ後、おもむろにやよいはおばあさんに言いました。
「あの… 私鏡の国の女王を倒しに行かないと…」

「女王だと…?」
「はい、鏡の国の女王を倒すために、ウサギさんと一緒にやってきたんです、私」
「そうか… それでこんなところに人間が…」
おばあさんはそう言って、しばらく黙り込みます。
「ふむ… ウサギというのは知らんが、そのドレスにストロー… もしかして…」
「知ってるんですか、これのこと?」
「ああ、そいつは女王、そして守護者と一緒に封じ込められていたものだ。もっとも、誰でも使いこなせる
ものでは無いから、実質意味の無いものとなっておったのだがな」
「私、これを使っていろんなところを廻ってきたんです、シャボン玉で敵を倒したりして…」
やよいはそう言って、ストローからシャボン玉を出して見せました。
「ほう… 見事だな」
おばあさんの顔が少し緩んだように見えました。
「お前さん… やよいとか言ったか… やよいが今まで通ってきたのは通路だな」
「通路… ですか?」
「昔守護者が女王を封印しに行くときに使った通路、そして敵をおびき寄せるための罠だよ」
おばあさんが説明してくれます。
「鏡の国にいる魔物をまとめて一網打尽にするためにわざわざああいう通路を作ったのだろう、女王への
最短距離、しかも守護者がそこを通るとあらば、そこを魔物で塞いでしまおうとするのは当然のこと」
「その通路が今でも残ってる…」
「左様」
「でも、封じ込められてたって、どういうことですか?」
そこに春香さんが口を挟みました。
「そいつはさっき言ってたウサギとやらに訊いてみるがいいじゃろ。わしの考えが合ってるなら、きっと
答えてくれる… っと、ウサギのところに帰れんことには訊くことも出来んか」
そんなことを言いながら、おばあさんはどこからともなく何やら持って来ます。
「…これを使ってみるがいい」
「これは… 風船?」
やよいたち二人に一つずつ手渡されたそれは、小さな赤い風船でした。
「それを膨らませて、捕まれば上の世界に戻れるはずだ、お前さんたちが本当に夢を持った人間ならな…」
それを聞いて、知らないうちに二人はうなずきあいました。
「「…やってみよう!」」


二人は早速外に出てみます。
もらった風船を膨らませると、何もしないのにふわふわと空中に浮かんで、ちょうど目の高さで止まり
ました。その下にはちょうど両手でつかめるぐらいの紐がぶらさがっています。
「これが…?」
不思議そうに、二人はその風船を眺めていました。
「紐を掴んで地面を蹴ってみぃ」
おばあさんの言うようにすると、風船がふわふわと昇って行きます、そしてやよいと春香さんも…。
「飛べた!」
「すごいですー!」
二人の体がどんどん空中を駆け上がっていきます。
「そのまま上まで戻ったら風船を離せばいい。もうこのような所に落ちて来るでないぞ」
おばあさんが声をかけてくれました。
既に小さく見えているおばあさんに、
「ありがとうございましたー!」
頭だけでお辞儀をするやよい、そして春香さん。
そして… やよいたちはまた、不思議な風景の中を戻っていきました。

 泡だらけで、良い匂いのする空間。
 たくさんの人に囲まれて、楽しそうに歌う女の子の姿。
 そして、やよいが可愛らしい服を着て楽しそうに歩いている姿…。

702メルヘンメイズ やよいの大冒険 第24節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/22(木) 22:38:00 ID:JDkoToc20
「くっ…」
まだウサギは下を眺めています。
たくさんの春香さんからは逃げてきたものの、この姿のままで出来ることは知れています。
「もはや鏡の国は…」
そう言いかけ、ウサギが着ているタキシードの中に手を入れかけた、その時…!

「…!?」
目の錯覚でしょうか。
何も無いはずの奈落のかなたに赤い点が二つ。
それはウサギの見ている前で見る見る大きくなり、やがてウサギの頭上高くまで昇っていきました。
何事かと思って、ウサギは空を見上げます。そこにいた姿、それは…。
「やよい… それに、春香!」
二人の女の子たちは、ここに戻ってきました。
「もう同じ失敗はしません!」
やよいは声高らかに、ウサギにそう言うのでした。


たくさんの春香さんは鏡ごと大きなシャボン玉で吹き飛ばし、
「いえい♪」
「私の真似をするなんて、みんな私のことが大好きなんですね?」

途中の魔物たちは冷静に倒していき、
「もう怖くありません!」

そして、最後に待ち受けるボス、ビッグトータスも、
「相手が着地するときだけ注意して!」
「ジャンプしてれば、私だって転びませんね♪」

そうして、やよいたちは鏡の国の魔物をほとんど消し去ってしまうことに成功したのでした。
「やったぁ!」
「これで… 終わりなの?」
みんなの目の前にはいつもの鏡。
そうです、まだ終わりではありませんでした。
この先に待ち受ける女王、それを倒さない限り、本当に鏡の国に平和を取り戻したことにはならないのです。


「じゃぁ春香、気を付けて帰るのですよ」
ウサギたちに見送られて、春香は鏡の中に入っていきます。
「うん、ありがとう。 …あ、やよい、一つ訊いていいかな?」
「え、何ですか」
「やよいの夢って… 何?」
その質問に、思わずやよいの顔が真っ赤になってしまいました。
「はわっ… そ、そういう春香さんは…?」
「私? 私はもう少ししたら、ゆ… って、何を言わせるのよー!」
今度は春香さんが真っ赤に。
「ま、また今度話しようね、それじゃぁ!」
春香さんは慌てて鏡の中に入っていってしまいました。
「変な春香さん」
「そういうことはあえて訊かないほうがいいんですよ」
ウサギはそう言って、鏡のほうを見ました。

ここから先に進めば、さっきのおばあさんの言ってたことの意味が分かるのかな…?

でも、今のやよいには、それを訊く気は不思議と起こりませんでした。

「さぁ行きましょう。いよいよラストですよ」

703メルヘンメイズ やよいの大冒険 第25節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/23(金) 22:54:33 ID:x4lWW43E0
 第9話 女王の国  〜女王とウサギ、そして鏡の国〜

遠目に見える、広い岩肌の上に聳え立つ城。
もともとは立派な城だったのでしょうが、今ではところどころ壊れ、その姿に見るものはありません。
こんなところに… 女王がほんとにいるというのでしょうか?

「さぁ、行きましょう。あずさや律子たちも無事に帰れたでしょうし、これで最後です」
「…」
やよいはしばらく、その城のほうを見ていました。
これが、女王の住んでいる城…。

それを見て、やよいは少し悩んだような表情をしていました。
が、やがて意を決したようにウサギに尋ねます。
「ねぇ… 女王って… 誰なの?」

 誰なの。

「…どうして、そういう訊き方をするんですか?」
「私の知ってる人ばっかりが、こんなに鏡の国で見つかるなんておかしいです。だから、ひょっとして、
その女王というのも…」
やよいにも、何となくその答えが分かっていたのかも知れません。

「…分かりました。どうせ女王に会えばすぐに分かることですし、お話します」

長い沈黙の後、ウサギはようやっと口を開きました。
その一言がとても重いものである、と言わんばかりに…。

「あれは… 伊織なんです」

え?
伊織って、あのやよいのお友達で、かわいくてやさしくてうたがうまくて、そしてちょっと意地悪な…?

「そうです… やよいの友達の伊織です」
ウサギはポツリポツリと、しかし力のこもった声で話し始めます。まるで重い扉を開くかのように…。

「やよい、あの本のこと覚えていますか?『不思議の国のアリス』」
「うん、結構重たくて持って帰るのに苦労したかな…」
「あれはもともと伊織の家にあったもの、そしてあの女王を封じ込めてあった書物なのです…」
ウサギはそこで一度言葉を切って、
「考えてもみてください、子供向けの童話が、そんな重たい書物として作られると思いますか?」
「…」

ウサギの目は遠くを見つめながら、
「あれはその昔、女王と守護者、そしてその魔法のドレスやストローを封じ込めてあったものです。
そして、それは長らく開かれることはありませんでした。伊織の家に来るまでは…」
「伊織ちゃんか誰かがその本を開いたせいで…?」
「はい、もともと女王を解き放ったのは伊織です。女王はそのまま伊織を乗っ取って、鏡の国を支配
しようと動き始めたのです」
そこで、ウサギはやよいのほうに向き直って言葉を続けます。
「それがどう巡り巡ったのか、まさかやよいの学校の図書館に来るとは思いませんでした」
「それじゃぁ、私があの本を開いたときに…?」
「ええ、そのドレスとストロー、そして同時に鏡の国の守護者も解き放たれて、女王を止めるべく…」
「じゃぁ、今本物の伊織ちゃんは…?」
「女王と完全に一体化する手前、というところでしょう。女王をもし止めることが出来なければ、本物の
伊織もそのまま鏡の国… 夢の世界から永久に帰れなくなってしまいます」
「そんな…!」
やよいの顔が見る見る青ざめていきます。

「だから… お願いです、伊織を、鏡の国を何としてでも救ってください…!」
是も非もありません。
返事をすることも無く、やよいは城のあるほうへと駆け出していきました。
「…ウサギさん、お願い。最後まで私に力を貸して!」
振り返りながら、大きな声でやよいはウサギに向かって言いました。
「…ありがとうございます」
ウサギの目に、知らず知らずに涙がこぼれてきました。ウサギにとって、それは初めてのことでしたが、
不思議とそれを自分で訝しがることはありませんでした。そう、まるで普通のことであるかのように…。

704メルヘンメイズ やよいの大冒険 第26節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/23(金) 22:56:31 ID:x4lWW43E0
岩肌は近づいてみるとところどころ崩れていて、溶岩が剥き出しになっていました。
足場としては決して良くありませんでしたが、それを上手に飛び越え、やよいたちは進んでいきます。
鏡の国にもいたトランプの兵隊たち、空を飛んでくるトランプのカード。
さすがに魔物たちも必死です。
しかし、やよいもここで負けるわけには行きません。
地形を上手く利用し、兵隊たちが来られないようにしながら倒していき、少しずつ進んでいきます。

城の門までにはまだ結構な距離が。
進むごとに足場は悪く、そして敵の数は多くなっていきます。
床の向こう側からシャボン玉で敵を倒し、いなくなったところで飛び移り、また次の足場を目指す…。

途中、いくつか分かれ道みたいなところはありましたが、ウサギは迷うことなく一つの道を選んで進んで
行きました。
恐らく、ウサギは正しい道を完全に知っているのでしょう。あのおばあさんの思っていたことというのが、
あるいは本当なら…。

 このウサギというのは、一体何者なんでしょう?

坂道を登り、細い道を通り、入ってくるものを拒むかのようなトラップをくぐりぬけ…
ついにやよいたちは城門の前までやってきました。ここまで来るものはいないと見たのか、城の周りには
兵たちの姿も無く、あたりは無気味なまでに静かでした。
ただ聞こえるのは、天を覆う黒い雲から時折聞こえる雷鳴の音のみ…。

「さぁ」
ウサギの声に促されて、やよいは城門を押してみます。不思議なことに、高さ10mはあろうかという
城門は、小さなやよいの力でも簡単に音も無く開き、そして少し開いたところで止まりました。
そこから吹く風がやよいのツインテールを軽く押し流します。
「…」
やよいの緊張はまさに頂点に達していました。けれど、進まなくてはなりません。
ここで負けてしまったら、鏡の国は、そして伊織ちゃんは…!

中に進むと、すぐにやよいは見つけました。
とても高い天井、外の景色がそのまま続いているかのような岩肌と溶岩…
その奥にあるとても大きな椅子に座っている、やよいの大事なお友達の姿を。

「伊織ちゃん!!」

大きく、そして大人っぽい感じの体つきにはなっていたものの、その雰囲気はまさに伊織ちゃんそのもの。
髪を後ろに回したスタイル、広いおでこ、そして上品な顔立ち。
しかし、それを感じたのもつかの間のこと…。

「とうとうここまで来たか…」
その言葉と共に立ち上がった伊織ちゃん… いいえ、女王は、もはややよいの知る伊織ちゃんとは全く違う
ものに変わっていったのでした。
髪は逆立ち、目は釣り上がり、顔のところどころには傷跡らしきものも。
思わず目を背けたくなるような、その光景。

「…!」
「せっかく私のところまで来てくれたのだ、せめて私の目の前で殺してやろう、そこのウサギ共々な…」
「伊織ちゃんを返して!」
あまりのことに体をぷるぷると震わせながらも、やよいは女王に向かってそう叫びました。
「…なんだ、その『伊織』というのは?」
「私の… 大好きなお友達…!」
やよいの言葉に、
「…ふん、なるほど、お前はこの体の持ち主を助けるためにここまで来た、というわけか。それで、その
名前が『伊織』だと」
「そうです」
「そうしたところで、お前に何の得があるという?たかだか一人の人間を助けたところで」
事も無げに女王は言いました。
「…あ、あなたには、友達っていないんですか!?」
「おらんわ。生まれたときから私は一人だった。そして、それはこれからも変わることは無い。第一、この
私を上回る者なぞ存在せぬのに…」

「やめましょう、この女王には愛とか夢とか、そんな言葉は通用しません」
そう言いながら、ウサギが女王とやよいの間に立ちました。
「ウサギ… 貴様までこの私を…」
「人間はな、お前のように利益のためだけに動くものばかりではないんだ。まだ分からないのか」
「く… くだらんわ!」
ウサギの言葉に、今まで眉一つ動かなかった女王が、初めて怒りの表情を見せたのでした。

「やよい… シャボン玉を。女王を消し去らなければ…」
諭すようにウサギがやよいに言います。
「でも… そんなことをしたら伊織ちゃんは…!」
「大丈夫です。シャボン玉が消し去るのは悪の心を持ったもののみ。アールメイコンやレイドック、そして
やよいがシャボン玉を間違ってぶつけた亜美が消え去ったりしましたか?」

705メルヘンメイズ やよいの大冒険 第27節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/24(土) 03:03:43 ID:GgKEwm2Q0
「あ…!」
そうでした。ミヤーシャやトリプルヘッズが泡となって消えていったのも、持っていたのが悪の心そのもの
だったから…!

迷いがなくなったわけではありません。それでもやよいは一歩ずつ歩き始めます。
ウサギの横を通り、女王の前に立ちはだかりました。
そして、それが二人の間の宣戦布告となったのでした。


「出でよ、トランプ兵たちよ!」
女王の指先から光が放たれ、地面に当たってはじけます。そこからトランプの兵隊たちが出て来てやよいを
追い掛け回してきます。
やよいはそれをジャンプでかわし、シャボン玉を当てていきます。小さいトランプ兵たちにはシャボン玉を
ある程度は大きくしないと当てにくいので、その分倒すのに時間がかかってしまいます。
女王がいるのは広々とした部屋でした。
しかし、その周りを溶岩が取り囲んでいるので、トランプ兵たちにぶつかるわけには行きません。
「ええい、ちょこまかと動きおって」
女王の声がします。
その声のほうには当然女王が。しかし、これは伊織ちゃんでもあるのです。それに、まだ完全に女王に
乗っ取られたわけではないらしく、顔立ちにはまだ伊織ちゃんの面影が…。

「やよい!女王を狙うのです!」

やよいには出来ませんでした。伊織ちゃんの顔をしたものを攻撃するだなんて…。
しかしそれでもトランプ兵たちの攻撃は止まりません。
逃げ回っているうちに、いつの間にかやよいは女王のすぐ側まで来ていたのでした。

「…?」
その時、ウサギは女王の様子に、ある違和感を感じました。
すぐ横に来ているやよいに対して、女王は何の反応もしないのです。
いいえ、近づいては来るのですが、やよいの方を見ることが、向くことが、全く無いのです。

やよいもそのことに気が付いたのでしょうか。
知らず知らずのうちに女王の横に、そして後ろに回りこむような動きをしていたのでした。
おそらくは無意識に女王の、伊織ちゃんの顔を見ることを拒否していたせいでしょうか。
「後ろを取ったつもりなのだろうが、そんなものは振り向いてしまえば…」
と女王が言いかけた、その時。

「やよい!」
突然、やよいの脳裏に声が響きました。
「え… 伊織ちゃん!?」
間違えることも無い、それは伊織ちゃんの声でした。でも、どこに…?

『女王だかなんだか知らないけど、アンタみたいなのに私を好き勝手はさせないわよ!』
「き、貴様… 完全に体は乗っ取ったはずなのに…!」
『やよい、私はまだこの女王とやらの中にいるわ、こんな奴さっさとやっつけてしまいなさい』
「か、体が… 動かん…」
『やよい、何やってるのよ、こんな体勢で長くいられないんだから、早く!』

女王と伊織ちゃんの会話が、やよいにははっきりと聞き取れました。
そうです、伊織ちゃんは今まさに女王と一体化する手前だったのです。

やよいには分かりました。
伊織ちゃんも必死に戦っているんだな、と…!

後ろを振り向くことも出来ないまま、女王はそれでもトランプ兵を呼び出してきます。
しかし女王の体が邪魔になって、トランプ兵はやよいの前と後ろからしか襲ってこられません。
それらを吹き飛ばしつつ、やよいはシャボン玉を女王に当てていきます。
当たったところは少しずつ服が溶けていき、体からも煙が。
「や、やめろ…!」
女王の苦しげな声。しかしもう止まりませんでした。
背中を向けたままの女王に、最後は特大のシャボン玉を。
それは見事に女王の背中で弾け、大きく女王を吹き飛ばしました。
その体制のまま、女王はしばらく動きを止め、そして…。

女王を中心として、数条の光が放たれました。
やよいとウサギが思わず目をそむけるほどのまぶしい光の中、女王の体がだんだん小さくなっていきます。
その光がようやく無くなった頃…

706メルヘンメイズ やよいの大冒険 第28節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/24(土) 03:04:51 ID:GgKEwm2Q0
そこには、元に戻ったやよいの一番の友達、伊織ちゃんが倒れていました。

やよいが駆け寄って体をそっと揺さぶってみます、しかし返事はありません。
「伊織ちゃん、しっかり!」
そこにウサギもやってきました。
「…大丈夫、気絶しているだけです」
「そっか… 良かった…」
やよいは知らず知らずに、倒れている伊織ちゃんの体を抱き上げていました。
体はちゃんと暖かく、大きな怪我をしている様子もありません。
「とりあえず連れて帰りましょう、この城も女王の魔力が無くなっては長く持たないでしょうから」
「分かった… じゃぁ行こっか、伊織ちゃん…」
誰にとも無くそう言い、やよいは伊織ちゃんを背中に背負って、そのまま歩き始めました。
「よいしょ、っと」
「大丈夫ですか、やよい」
「うん、こういうのは弟とかで慣れてるから」
伊織ちゃんの足を地面に引きずったまま、やよいは城を出ます。
その後ろで、城が崩れていく大きな音が響き渡り始めました。もうこれで、女王はいなくなったのです。
やよいとウサギ、そして伊織ちゃんの大冒険は終わったのです…。


黒雲が覆っていた空も、今はすっかり晴れ渡り、小鳥たちもたくさん空を舞っていました。
城に入って行くときには全く感じられなかった、暖かい風。
野山にある、たくさんの木々や草花。
そして、何よりも背中には大好きな友達が。

やよいは今、初めて心から、鏡の国での幸せをいっぱいに味わうことが出来たのでした。

707メルヘンメイズ やよいの大冒険 第29節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/25(日) 03:16:48 ID:oEmU3Qrs0
 エンディング  〜たいせつなもの〜

やよいたちは女王の国を抜け、長いこと歩いて鏡の国まで戻ってきました。

あれから伊織ちゃんはすぐに目を覚まし、やよいの背中にいることが分かるとすぐに、
「早く降ろしなさいよ、恥ずかしいから」
「私だってもうこんな歳なんだし」
と言って、残念そうにしているやよいの背中から飛び降りてしまいました。
しかしやよいも、
「じゃぁ、疲れてるだろうから手を引っ張ってあげるね」
手を繋いだまま、なかなか離そうとはしませんでした。
「…ま、まぁ、アンタがそれでいいなら…」
「えへへー」

鏡の国の中心部まで戻ってくる頃には、すでに夜になっていました。
しかし前のように真っ暗ではありません。
すでに女王が滅びたことを知った鏡の国の人たちが、そのことを祝って盛大にお祝いのカーニバルを催して
いたのでした。
空には花火まで上がり、人々の賑わいもこれでもかと言わんばかり。
そして、やよいたちが町に一歩入るや否や、その盛り上がりは頂点に達したのでした。

「みんな喜びたまえ、たった今女王は死んだ! 鏡の国は元の平和な世界に戻った!
                     この小さな勇者達に、惜しみなき賛美と祝福を!!」

ウサギが高らかにそう宣言しました。
その声に応えるかのような、地をも揺るがすかのような歓声、そして押し寄せる人たち。
やよいは、そして伊織ちゃんは、自分達の成し遂げたことの意味をようやく実感できたのでした。


「みんな本当に嬉しそうです… これもやよいたちのおかげですね」
「そ、そうかな… なんか照れるなぁ」
「バカねやよい、そういうときはもっと堂々としているものよ」
「でもー」
カーニバルの中心には、すでにやよいたちが招かれていました。
やよいも、そして伊織ちゃんですら見たこともない食べ物や飲み物、そして様々な人たち。
鏡の国の人たちの楽しさが、そのまま伝わってくるかのようです。
「伊織ちゃん、ほんとに良かったね、さぁいっぱい食べて」
「何言ってるのよ、アンタが作ったわけでもないのに… でもおいしいわねこれ」
「まぁまぁ、楽しいのはいいことですよ」
そうして、鏡の国の夜はふけていきました…。


カーニバルも一段落し、鏡の国に静かな夜が戻って来ます。
その時を待っていたかのように、ウサギは改めて二人にお礼を言います。
「ありがとう、平和になったのもやよい、そして伊織のおかげです」
「えへっ」

「ところでやよい、どうして女王を倒せたのか、分かりますか?」
ふと、ウサギがそんなことを訊きました。
「えっ… シャボン玉でやっつけたから、でしょ?」
やよいが答えると、
「そうです、でも、シャボン玉の力だけでは、あの女王は倒せなかったのです」
「じゃぁ… どうして?」
「そこに、愛と、勇気と、夢が詰まっていたからなんです」

 愛と、勇気と、夢…。

そうです。
やよいの持っていた、その三つは、今までの冒険でみんなが教えてくれたことでもあるのです。

 真美ちゃん…
 律子さん…
 そして、春香さん…

「ふーん、なんだか分からないけど、アンタはすごいのね、やよい」
伊織ちゃんも素直にやよいのことを褒めてくれました。

「いいですかやよい、そして伊織。その三つは、お二人が元の世界に帰っても、そしてお二人が大人に
なっても、ずっと忘れないでいてください。どんなことがあっても、それさえあればきっと乗り越えられる
はずです」
ウサギはそう言って、やよいと伊織ちゃんの目をしっかりと見据えました。
しっかりと見開かれた、そしてとても優しい視線でした。
「うん、きっと忘れない。それに、ウサギさんのことも」
「そうよ、私にもそれがあるんだから、まさに無敵よね」
やよいと伊織ちゃんも、そう言ってウサギに微笑んで見せました。

708メルヘンメイズ やよいの大冒険 第30節 ◆NbzgKxMl4M:2009/10/25(日) 03:17:55 ID:oEmU3Qrs0
「さぁ、もうお別れです、お二人ともお元気で」
「待って、ウサギさん。最後に一つ訊きたいことがあるの」
やよいはそう言って、ウサギに視線を合わせるかのようにしゃがみこみました。
「…何でしょう?」
「ウサギさんはどうして私や伊織ちゃん、それに… みんなのことを知ってたの?」
そう、それはやよいも、そして伊織ちゃんも一番疑問に思ってたこと…

「…女王が伊織に乗り移ったのと同時に、私もあるものに乗り移ったのです、私はそれを最初ただの無機物
としか思ってなかったのです」
「でも… それには記憶らしきものが感じられたのです。そして、私の中にもその記憶が入ってきて…」
「最初に雪歩や亜美を、そしてやよいを見たときに、すぐに名前が出てきたのも、恐らくはその記憶に
よるものなんでしょう」
そこまで聞いて、伊織ちゃんはハッとした表情をしました。
「じゃ、じゃぁアンタまさか…」
「さぁ、それでは本当にお別れです。いつまでもお幸せに」
伊織ちゃんの言葉をさえぎるようにウサギはそう言い、天に向かって手を差し出しました。

ウサギの体がだんだん光に包まれていきます。
完全に色が分からなくなったところで、それはさらにまばゆい光を放ち、天高く昇って行きました。
そして、空に浮かぶ月の方へと光の筋を放ちながら飛んでいき、やがて見えなくなってしまいました。
それと入れ替わりに、今度はその月から何かがきらきら光りながら飛んできます。
「な、何?」
それは見ているうちに伊織ちゃんの方にぐんぐん近づいてきたかと思うと、ゆっくりと伊織ちゃんの手元に
降りてきました。そして、ふたりの良く知っている姿に…

「うさちゃん!」
伊織ちゃんの胸にゆっくりと納まった、それは伊織ちゃんの親友のうさちゃんでした。
「そうだったんだ…」
やよいもようやく納得が行った様子。
「…」
伊織ちゃんはうさちゃんを抱きしめながら、
「そっか… うさちゃんも私のこと助けてくれたのね… ありがと…」
その言葉と共に、伊織ちゃんは優しくうさちゃんを撫でてあげていたのでした…。


その様子をじっと眺めていたやよいに、
「…ちょ、そんなに見たって何も出ないわよ?」
照れくさそうに伊織ちゃんが声をかけました。
「ううん、もうそろそろ帰ろうかなって」
やよいは空を見上げながら言いました。
そして、また伊織ちゃんの手を取ります。まるでそれが当然であるかのように…
「ん…」
伊織ちゃんも、そっと手を握り返してくれました。そして、一緒に空を見上げます。

 さようなら、ウサギさん。そして、鏡の国のみんな…

ふたりは心の中で、いつまでもその言葉を繰り返していました。






「おねーちゃーん、もう朝だよー」
「やよい、早く起きなさい」

「…ん」
やよいが目を覚ますと、そこはいつもの寝室でした。もうすっかり朝になっています。
すでに家族のみんなは目を覚まして、忙しそうに、楽しそうに動き回っていました。
「…あれ、私どうやって戻って来たのかな…」
見ると、服もいつものものに戻っていました。手に握っていたストローも、今はもうありません。

「全部、夢だったのかな…?」

やよいは誰もいない空間に、思わずそう問いかけていたのでした。
でも、ウサギと旅をした鏡の国、そして伊織ちゃんと楽しい思い出を作った夢の国。
その思い出を、やよいは決して忘れることはないでしょう。


今日は祝日、学校はお休みです。
でも、やよいは今日も着替えて元気に出かけていくのでした。
いつも大好きな友達、伊織ちゃんと出会える、あの場所へ…!

「おはよー伊織ちゃん!」
「はいはい、アンタはいつも元気ね」
「えへへ、あ、そうだ昨日こんな夢見たんだよー」
「またその話?でも私も昨日は変な夢見たのよね、なんか女王様みたいなカッコしてさ」
「え?それって私が出て来たりとか?」

伊織ちゃんの横には今日もうさちゃんが。
うさちゃんは何も語ってくれません。でも、やよいには何となくうさちゃんが今までとは違った、まるで
自分の友達でもあるかのように見えてくるのでした。

 『ありがとう、やよい』

え?
そんな声が聞こえたような気がして、思わずやよいはうさちゃんの方を見ました。
でも、そこにはうさちゃんのいつもの姿があるだけでした。

 「うん、ありがとう… とても楽しかったよ」


 メルヘンメイズ やよいの大冒険 Fin.

709乃木平八郎 ◆sRu4/gQPQo:2009/10/26(月) 23:30:28 ID:aelehgD20
グラディウス軍の将校一覧(将官のみ) 第一版

空軍
アルヴァ・ユンカース大将
ディアス・ユンカース中将
ハスキー・ハルバート中将
エドワード・オレステス少将
フリッツ・パーペン少将
クラウス・ケッセル少将

陸軍
ブラン・ホルテン元帥
トーマス・バーシティ中将
アルベルト・アダンティ中将
アルバート・シュライヒャー中将
チャールズ・トーチ少将


宙軍
クラナス・ランフォード大将
ナルヴィック・ルフラン大将
クロン・ベイル中将
ヤコブ・フルシチョフ少将

バイパー「少なすぎだけど第一版ってことは…」
うむ、これから増やしていくつもり、ではある
銀河帝国編でしか出せないのがネックだなぁ…
バイパー「まあ、オリジナル設定だしねー」

710サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第一話前半:2009/10/27(火) 00:12:49 ID:Dfa0qyWc0
世界はかつて、一つの塔だったと言われます。
塔を中心としてあらゆる世界が形成され、全ては一人の創造主の思うがままでした。

…長い長い歴史の末、悪しき者が創造主を封じ込め…世界を支配しようとしました。

しかし、人々の中にはそれに抗う者がいました。冒険者達です。
彼らは行く先々で悪魔達の企みを阻止し、世界に平和を与えていきました。

そして最後の悪魔の王をも打ち倒した冒険者達は英雄となり…
創造主からの褒美を受け、楽園へと旅立っていったのです

…いや。そんな筋書きには、冒険者達は乗りませんでした。
何故か?
…それは悪魔の出現も含めた全てが創造主の思うがままであったから。
自らの、自らの創造した命への行いを何とも思わぬ創造主の姿…

冒険者達は怒りました。怒りのままに、ただただ剣を振るいました。
悪魔により犠牲になった人々、運命に翻弄され続けた全ての人々を見てきたその心のままに。

そして…創造主、神は打ち倒されたのです。
冒険者は一介の冒険者のまま…元の世界へと、戻っていきました。



…しかし、それだけでは終わることはありませんでした。
神の死により、塔が崩れたのです。

柱を失いバラバラに世界は散り…長い長い、途方もなく長い時間が流れていきました。
ある数々の世界ではその冒険者の中の一人が旅の中で得た力により束ねられ
ある世界では、邪なる新しい神々と善き神々との戦いがあり
ある世界では、7人の英雄と人々との戦いの歴史が続き
ある世界では、死の星との命の定めに苦しみ
ある世界では、魔法を巡る長い長い血塗られた歴史が築かれていました。

だが、どの世界でも戦いは終わることはありません。
戦いを求める意思に、運命に抗おうとする意思。それが人のさがなのでしょう。


…そしてここに、散り散りになった多くの世界が独自の成長を遂げた…世界の集まりが。

そこではたくさんの世界一つ一つは『リージョン』と呼ばれ…
武器の扱いに長けた人間は『ヒューマン』と
魔法の扱いに長けたエスパーは『妖魔』と名を変え
肉を食らい姿を変える『モンスター』機械の種族、『メカ』の4種族とが混ざり合う世界が形成されていました。

文明が隆盛の末の戦争で滅んだ…それからずっとずっと後、そのことすらも忘れ去られた頃のこと。




干からびた大地に、干からびた植物。
淀んだ空を見渡す大きな高台に…
ふさふさとした、ある一匹の小さなモンスターが。

「はわっ!!!」
轟音を発する大きな揺れと共に投げ出された、
ラモックスという小さなモンスターの体は…
揺れが収まると同時に起きあがり、高台の先に立ちます。



 私はやよいです。
 ずっと、このマーグメルで暮らしています
 おばあちゃんが昔…マーグメルは美しい世界だった、っていっつも言ってました
 でも、私は生まれたときからずっとこのマーグメルしか見たことがありません。

 マーグメルは、死にかけているんです。

 『全ての物には終わりがある』 おばあちゃんは言っていました
 だから、悲しむことはないんだ、って。
 私はまだ小さかったから…おばあちゃんが何を言っているのか解りませんでした。
 それでも、おばあちゃんが死んじゃったときには、涙が止まりませんでした…

 マーグメルが死ぬとき…私は、やっぱり泣くのかなぁ…

711サガフロンティア×アイマス クーンやよい編 第一話後半:2009/10/27(火) 00:13:38 ID:Dfa0qyWc0
高台から降りたやよいは、みんなの所へ。

池は干からび、溶岩の池と化し…地面は乾き、ボロボロ。
そんな中でも…その世界に住む皆は、楽しく生きていました。

「おねえちゃーん、私たちとバトルしよーよ!」
「うっうー!後でね!」

「毎日元気だねー、ちょっとはじっとしていればいいのに。」
「体が勝手に動いちゃって!」

「おーいやよい、お爺さんが呼んでたぞー!」
「え、ほんと!?行かなくっちゃ!」


…そんな風に言葉をかわしながら、やよいは長老と呼ばれるお爺さんの部屋の前へ。
「長老ー!やよいですっ!」
「おお…入りたまえ」
「失礼しまーっす!」


とことこと入っていくと…

そこには真っ黒な体のラモックスが一匹。彼が、長老です。
(うわぁ…いつもどおり長老真っ黒だなー…いくつになったらあんなに真っ黒になるのかな…)

そんなことを思いながらも…
(あ!挨拶しなきゃ!)

やよいは挨拶を欠かしません。
「おはよございまーっす、長老!」
「あいさつはいいよ、やよい君」

ガルウィング式挨拶のまま、長老はそそくさと本題に入ります。
「時は尽きようとしているのだよ」




「君も知っての通り…マーグメルはもう長くは持たない。
 いや…本来ならすでに崩壊している所だろうね。
 この指輪を見てごらん」

長老の指には…白く眩い光が。…それに照らされても尚、長老は真っ黒なままです。
「強い魔力のこもった指輪でね…今はなき種族の遺産と言われているね。
 この指輪に念を込め、マーグメルを支えてきたんだが…もう限界なんだ。
 さぁ、こっちへ来なさい」
「は、はいっ!!」


ぽてぽてと長老の傍へ。
すると、長老は指輪を外し…やよいに手渡しました。

「……あれ?内側に何か彫ってあります!
 あつめれぅ…わたしのおとうと…つくる、あなたのねがい?」

たどたどしく、首を捻りながら指輪の文字を読むやよい。
「我が兄弟を集め願いを叶えよ」
見かねた長老は正しい訳を一言。

「この指輪に、兄弟があるならば…その力を集めてマーグメルを支えられるかと思ってね。
 この指輪を君に託すよ 兄弟を集めるのだ!」


そう言った瞬間……長老の足元にまん丸な穴が。リージョンとリージョンを繋ぐ穴のようです。
「幸い、リージョンの近くに来ている。ここから旅を始めなさい」

たった一人の子ラモックスから始まる、指輪を集めてマーグメルを救う旅が…今ここに、始まろうとしていました。
けれど…やよいにはよく解らないことが一つだけ。
「どうして私を選んだんですか?」

それに対し長老は一言で返します。
「ティンと来た! なぁに、それだけだよ。 …さぁ、行きたまえ!」


「はーーーい!」
白い光を放つ『護りの指輪』を指にはめたとたん…なんと。

やよいの姿は、見る見るうちに人間の女の子のような姿へと変わっていったではありませんか。
耳と尻尾はそのままだけど。


「いってきまーーす!」
「がんばってきたまえ!」

ぴょんと穴の中へ飛び込む、元気一杯のやよい。
マーグメルを救う、一筋の希望が今…旅立ちました。

「…しかし本当にやよい君で大丈夫かね…」
…不安は隠し切れません。

712サガフロンティア×アイマス T260GP編 第一話1/3:2009/10/27(火) 01:44:38 ID:Dfa0qyWc0
真っ赤なアラートが照らす艦内。
「機関部被弾、機関部被弾、戦闘続行不能。」

リージョン間を泳ぐ巨大戦艦に響くは他ならぬ戦艦の声。
「むぅ…リージョンには再突入できるかね!?」
「コントロールします、しかし着陸は不可能です」

「…わかった」

この戦艦の艦長として、彼は最後の指令を命じる時が来ました。
「再突入後、総員退艦。
 …お別れだな」
「お元気で、艦長」

アーマーのボタンを押すと、即座に艦長の背には翼が展開。


「総員退艦を確認…有機体保護機能解除。
 全エネルギーを推力に転換
 条件変更により任務続行可能 回頭120」

そして…全てが光に包まれていった。





「…ん?何だろー、これ!」

視界に入ってきたのは、幼い女の子の顔。
…けど、それだけだった。また意識が途切れる。


「えー!?カッコ悪いよー、せっかくコアを見つけてきたのにー!」

ごちゃごちゃと様々な部品や道具の数々が並べられた小さな家。
その中心にある作業台の上に、古ぼけたパーツを組み立てて作られたロボットが横たわっている。
女の子はクレーターの中で拾ったコアにロボットのボディをつけて蘇らせようとしたのだ。

彼女に頼まれて発見したコアの再生を行うのは、知識が豊富な近所のうさぎ。
「仕方ないよ、有り合わせで組み立てたんだから。」
古ぼけたパーツとは言え、その一つ一つはうさぎにより綺麗に磨かれていた。
磨くのは昔から得意だった、らしく。


…女の子は、もう一人いた。
「わ…!本当に生きてたんだ、そのコア!」
拾ってきた女の子と同じ姿ながら、やや大人びた雰囲気のその女の子は言う。

「まあ、やってみればわかるよ。…動かすよ!」
うさぎさんがスイッチをぽちっと押すと…

バチバチと電流が流れ、ロボットのボディへと注がれていく。
「だ、大丈夫かな…」
「…いや、死んじゃってたっぽいね。でもよかったよ
 生きているコアって妙な癖があるから売れないって聞くし…」
「真美!このロボちん売るつもりだったの!?」
「仕方ないでしょ亜美。コアだったらたくさんのお金が手に入るらしいし」

ああだこうだと言い合う二人。しかし、一瞬で二人の口は塞がった。
ロボットが…起き上がったのだ。


「やったぁ!生きてたーー!うさちゃんありがとー!」
「ふふ、あの伊織ちゃんの世話をしてたぼくだからね」

辺りを見回すロボット。状況確認だろうか。
メカといえど、ほとんど人間と変わらず会話したりするものが多いが…
その精密な動作は道具としての頃のメカの風というか。…生真面目な性格を思わせた。
「…何か、癖が強いっぽいね…」
真美の顔色は難色を示したまま。

亜美がわくわくして見つめる中、ロボットは立ち上がり…
動作確認。作業台の上を右に左に規則正しく歩く。

そして速度を変えてキュキュッと走り回った後にとうとう言葉を発する。




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