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スタンド小説スレッド3ページ

655ブック:2004/06/22(火) 00:33
     〜おまけ〜

まあ、ブックの猫耳への思い入れは凄まじいものがあるからな。

連載休止してる間に、何となく暇だったから、近くの古本屋に嫌々行ってみたんだが、
まずそこで買った猫耳古本が凄い。キロ単位で山積みで買ってくる。
隣に陳列されてたグラビア写真集を見て、「それじゃ萌えないよ、一般人」という顔をする。
真っ当な人間はいつまでも二次元に慣れないらしい、みたいな。
絶対、その猫耳古本4キロより、一ヶ月の食費の方が安い。っつうかそれほぼ陵辱ものじゃねぇか。

で、それを家に持って帰る。やたら持って帰る。
たまたま遊びに来てた友人もこの時ばかりはブックを尊敬。
普段、ろくに飯も奢らない友人がブッククールとか言ってる。
目当ては猫耳古本だけか?畜生、氏ね。

他の本も凄い、まずマニアック。小学生とか題名についてる。
売れ。逮捕される前に売れ。つうか人生やり直せ。

で、やたら読む。読んで友人と共に悦に浸る。良い本から読む。譲り合いとかそんな概念一切ナシ。
ただただ、読む。キモオタが読んで、オタがオタに本を回す。俺には回ってこない。畜生。
あらかた読み終えた後、「どうした読んでないじゃないか?」などと、
あからさまなハズレ本を寄越す。畜生。

で、廃人オタク共、4キロくらい猫耳本を読んだ後に、みんなでアニメとゲームの主題歌を聞く。
「今日はプリキュアにしよう」とかオタ友達が言う。
お前、一番どころか絶対二番まで熱唱出来るだろ?
隣の奴も、「ああ、STORM聞いちゃった。影山ヒロノブって素敵ね」とか言う。こっち見んな、頃すぞ。
プリキュアの奴が「買いすぎちゃったな」とか言って、隣の奴が「どうせブックの金だから大丈夫さ」とか言う。
さんざん人の本勝手に読んでたくせに意味がわかんねぇ。
畜生、何がおかしいんだ、氏ね。

まあ、おまえら、現在『EVER BLUE』には猫耳成分が足りないので、要注意ってこった。


     注)このコピペ改変は、ある程度フィクションです。

656ブック:2004/06/22(火) 21:36
     EVER BLUE番外編
     ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 交際編


 やあ皆、また会ったね。
 僕の名前は『ゼルダ』、夢ばかり見て現実を見ない廃人ゲーマーさ。
 今日はまたもや新しい美少女ゲーを買って来たんだ。
 早速始めるとしよう!

「さて、と…」
 ハード機体を起動して、ソフトを差し込む。
 今日買って来たのは『トゥルルルルルルンラブストーリー』。
 二重人格で道端に落ちてるものを電話と勘違いしてしまう、
 ちょっと気弱な男の子が主人公のゲームさ。
 全く、この前は変な糞ゲー掴まされて酷い目に遭った…

「ときめきEVER BLUE〜〜〜〜〜〜!!」
 だが、テレビのステレオから流れてきたのは聞き覚えのある男の声だった。
 ニラ茶猫だ。

「!?」
 急いでゲームのパッケージを確認する。
 やっぱり、何度見ても『トゥルルルルルルンラブストーリー』だ。
 なのに何でこの男が!?

「誰だ?って顔してるんで自己紹介させて貰うぜ。
 俺の名前はニラ茶猫、このゲームの案内役さ。」
 ちょっと待て。
 何でゲームの中身が変わってるんだよ!!

「何でパッケージと中身が違うのかは単純明快。
 お前の行きそうなゲームショップのゲームソフトの中身を、
 全部『ときめきEVER BLUE』にすり替えておいたのさ。」
 それは営業妨害じゃねぇかよ!
 お前警察に捕まるぞ!?

「つーわけで、前回の感想にデートの描写も見たいって感想があったんで、
 再び登場させて頂きました。
 このエンドルフィン駄々漏れの番外編に、
 何でここまでの反響があったのか作者も戸惑ってますが、
 お呼びがあるならば例え火の中水の中…」

 …ブツッ―――

 即座にゲームの電源を切る。
 反響があったか何だかは知らんが、これ以上あんなゲームに付き合ってられるか。
 すぐにお払いをした後粗大ゴミに捨てて…

「勝手に電源を切るな〜〜〜…」
 テレビから這い出して来るニラ茶猫。
 お前は貞子か!?

「人助けと思ってゲームスタートしてくれや、な?
 あとこの番外編の題名が『ときエヴァ』と略されてますが、あれか?
 主人公が汎用人型決戦兵器に乗って
 『逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ』とか言ったりする訳か?
 そんで最後には皆からおめでとうとか言われて…」
「分かったよ!
 始めてやるからさっさと帰れ!!」
 強引にニラ茶猫をテレビ画面の中に押し返す。
 本当は嫌だが、このままゲームを始めなかったら呪われそうなので、
 渋々コントローラーを握る。
 前回同様、主人公の名前はオオミミにしておいた。

657ブック:2004/06/22(火) 21:36


 ジリリリリリリリリリリリリ!!

 テレビから聞こえてくる目覚まし時計の音。
 どうやら自宅からスタートするらしい。
 ベッドの横では矢張り天が全裸で寝ていた。
 もう驚かない。
 慣れた手つきで窓から放り投げる。
 「げくっ」という呻き声と共に、天が道路を血で染めた。
 清掃業者さんごめんなさい。

「オオミミ、起きるラギ!!」
 部屋に入ってくるトラギ子。
 こいつ、サブマシンガンで撃ち殺した筈なのに、何で生きてんだ。
 というか、妹キャラだったのに、何か雰囲気違ってないか?

「復ッ活!!」
 いきなりトラギ子が絶叫した。
 こいつ、ついに持病の水虫が脳まで回ったか?
「トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!
 トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!
 トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!トラギ子復活!」
 狂ったように『トラギ子復活!』を連呼する。
 人間、こうなったらおしまいだな。

「ラギは寂しいと死んじゃうラギよ!?
 にもかかわらず、今回更なるパワーアップを遂げて帰ってきたラギ!
 この前は単なる妹キャラでしかなかったけど、今は違うラギ!
 妹萌えの時代はもう古い、これからは姉萌えの時代ラギ!
 よって、ラギは今度は姉属性キャラとして復活したラギ!
 さあ、オオミミ。
 今こそおねーたまと恥ずかし合体を…」


  1・釘バットで殴り殺す。
  2・日本刀で刺し殺す。
 →3・サブマシンガンで撃ち殺す。


 次の瞬間、オオミミのサブマシンガンが火を吹いた。
「ラギニャーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」
 血飛沫をあげトラギ子が蜂の巣になった。
 念の為、ガソリンをかけて焼却しておく。

「さあ、今日はタカラギ子さんとのデートの約束の日だ。」
 ゲーム開始早々二人の人間を殺しておきながら、爽やかな顔でオオミミが言う。
 こいつ、絶対悪魔か何かだよ。

658ブック:2004/06/22(火) 21:37



 兎に角場所は移り、タカラギ子との待ち合わせの公園のベンチ。
「ちょっと早く来すぎちゃったかな。」
 待ち合わせの午前十時まであと五分。
 まあ、これ位が妥当だろう。

「……」
 しかし、五分経っても十分経ってもジャンヌは来なかった。
 あのアバズレ、なにやってやがる。

「ごっめーーん、待った?」
 三十分遅れでようやく現れるタカラギ子。
 時間厳守という言葉は脳内に存在しないらしい。


『どう答えようか?』
 1・ううん。こっちも今来たとこ。
 2・待ちくたびれたよ。
 3・遅ぇんだよこの売女!その臭ぇ穴に俺のマグナムぶち込むぞ!!

 現れる選択肢。
 相変わらず、三番目のものは人として間違っている。
 まあしょうがない。
 ここで目くじら立てても、好感度が下がりそうだから取り敢えず1、と…

「ううん。こっちも今来たとこ。」
 選択肢通りに答えるオオミミ。
 ここは、懐の深い所をアピールしとかないとね。

「うっわ最低!
 じゃあ、もし私が遅刻しなかったら、私を待ちぼうけさせるつもりだったのね。
 信じられなーい!!」
 ぶち殺すぞこの糞女ァ!!
 手前社交辞令とかそういうのも分からんのか!!!
 こっちは待ち合わせの五分前にはとっくに到着しとったわ!!!

「それじゃあ、早速遊びに行こう。」
 あれだけの暴言にも関わらず、さして気にしない様子でオオミミが答える。
 何て野郎だ。
 天とトラギ子は容赦無く殺したくせに。


『どこに遊びに行こう?』
 1・ラブホテル
 2・ビジネスホテル
 3・人気の無い廃工場

 どれもこれも下心丸出しじゃねぇか!!
 特に一番下!
 お前犯罪者にでもなる気か!?
 もっとまともな選択肢無いのかよ!!


『ちッ、仕方ねぇなぁ…』
 1・遊園地
 2・ゲームセンター
 3・カラオケ

 うわ。今舌打ちしたよ、舌打ち。
 ゲームのキャラがプレイヤーに向かって舌打ちしたよ。
 せっかく警察のご厄介にならないように注意してやったのに、
 舌打ちしやがったよ。
 畜生、氏ね。
 それじゃあ3のカラオケだ。

「よし、遊園地に行こう。」
 元気な声で、オオミミがタカラギコに促す。
「ちッ。」
 お前まで舌打ちかよ!
 もういい。
 無理矢理にでも連れて行く。

659ブック:2004/06/22(火) 21:37



 そしてオオミミ達は遊園地に到着した。
 さて、これからどうしようか。

『まず何から乗ろうか?』
 1・ジェットコースター
 2・観覧車
 3・コーヒーカップ

 そうだな…
 ジェットコースターに乗って、恐怖によって新密度を上げるのもいいし、
 まずはまったりとコーヒーカップで肩慣らしという手もある。
 でもここは、観覧車から乗る事にしようか。
 2を選択、っと。

「観覧車に乗ろう。」
 タカラギ子と共に観覧車に乗り込むオオミミ。
 二人を乗せた観覧車が、ゆっくりと動き出す。

「…こうやって二人きりになるのって初めてだね。」
 タカラギ子が急にしおらしくなる。
 おっ?
 何か普通の美少女ゲーみたいになってるじゃないか?

「そういえば、私達ってお互いの事あんまり知らないよね。
 オオミミ君、何か聞きたい事ってある?」
 うんうん。
 やっぱりこうじゃなくっちゃ。
 救いようの無い糞ゲーと思いきや、ちゃんとしたイベントもあるじゃないか。
 さて、ここではどんな選択肢が出てくるんだろう。


『何を質問しよう?』
 1・好きな体位は何ですか?
 2・一人エッチは週何回?
 3・乳首何色?

 全部セクハラじゃねぇか!!
 こんな質問したら、一発で嫌われるぞ!!

「好きな体位は松葉崩し。
 一人エッチは週五回。
 乳首は黒ずんだピンクです。」
 お前も何答えてんだよ!!
 つうか、エロゲーでもこんな展開ありえねぇよ!!!

「そうなんだ。
 俺知らなかったよ。」
 そうなんだじゃねぇよ!!
 んな事知ってる方が恐ぇよ!!
 何なんだよその満足そうな笑顔は!!
 変態か!?
 お前は生粋の変態か!!?

660ブック:2004/06/22(火) 21:37

「おっと、もう観覧車が一周したみたいだな。」
 再び乗降り場に戻ってくるオオミミ達の観覧車。
 二人は観覧車から降りる。

「それじゃあそろそろお昼ごはんにしましょうか。」
 観覧車から降りた所で、タカラギ子が弁当箱を差し出す。
 こんな所だけはしっかりと王道だな…

「いいね。
 それじゃあ、どっかの建物の中で食べようか。
 それとも外の芝生にする?」
 オオミミがタカラギ子に尋ねた。

「嫌ぁ!!
 中は駄目!!!
 中は駄目!!!
 中はやめてえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
 あからさまに誤解を招く表現してんじゃねぇよ!!
 お前オオミミを逮捕させる気か!?

「分かった。
 それじゃあ外で食べよう。」
 お前もタカラギ子に何とか言えよ!!
 何でそんなにケロッとしてるんだよ!!

 そんなこんなで、舞台は遊園地の芝生に移った。
 ビニールシートを引き、二人はその上にちょこんと座る。

「はい、た〜んと召し上がれ。」
 弁当箱の蓋を開けるタカラギ子。

 いや、タカラギ子さん。
 あなたがオオミミの為に弁当を作ってくれたのはよく分かる。
 非常によく分かる。
 だけど、おにぎりとか鮭とかに書かれてある『毒』の文字は何なのかな?
 僕、そこだけはちょっと分かんないや。

「つべこべ言わずに喰えオラァ!!」
 無理矢理タカラギ子がオオミミに弁当を食わせようとする。
 やめろ!
 誰か、助けて!!
 殺され…

「!!!!!!!!!!!!」
 と、突如飛来した剃刀がタカラギ子の弁当箱を弾き飛ばした。
 オオミミとタカラギ子の視線が、同時に剃刀の飛んできた方向へと向く。
 そこにいたのは、スケバンルックに身を包んだ絶滅危惧種の女、三月ウサ美だった。

「愛と正義の美少女戦士、ブルセーラームーン!
 月に代わって、折檻よ!!」
 アブドゥル〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
 わしゃあもう泣きそうじゃあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!


     TO BE CONTINUED…

661ブック:2004/06/24(木) 01:16
     EVER BLUE番外編
     ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 死闘編


〜前回までのあらすじ〜

「さあ、今日はタカラギ子さんとのデートの約束の日だ。」
「好きな体位は松葉崩し。
 一人エッチは週五回。
 乳首は黒ずんだピンクです。」
「嫌ぁ!!
 中は駄目!!!
 中は駄目!!!
 中はやめてえええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
「愛と正義の美少女戦士、ブルセーラームーン!
 月に代わって、折檻よ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さあ覚悟しなこの薄汚い雌犬め。
 抜け駆けしてオオミミを寝取ろうなんざ、いい度胸だな。」
 剃刀を指に挟んで構え、三月ウサ美が見得を切る。

「くっ…!
 あなたは東洋の紅蠍、三月ウサ美!
 まさかこんな所で出会うなんてね…!」
 パニッシャーを肩に担ぐタカラギ子。

「ふふふふふ。
 ここが貴様の墓場となる。
 死ねーーーーーーーー!!!」
 使い古された脅し文句と共に三月ウサ美が剃刀を投げつけた。
 パニッシャーでそれを受けるタカラギ子。
「ほう。
 よく今のを受け止めたな。
 ならばこれならどうだ。
 超絶無限覇王雷神青竜滅砕派ーーーーーーーー!!」
 何かいかにも小学生が考えたような名前の必殺技来た―――――!

「ぐあああ!!」
 エネルギー派を食らい、タカラギ子が吹っ飛ばされる。
「ふっふっふ…
 どうした、まだ十分の一の力も出してはいないぞ?」
 笑う三月ウサ美。
 お前その台詞…
 一体いつの時代の人間だよ。

「うう…
 大丈夫子、猫ちゃん。」
 見ると、タカラギ子はその胸に子猫を抱え、先程の攻撃から庇っていた。
 いや、その猫絶対さっきまで居なかったじゃん。
 それにしても何だこの展開は。
 黄金期のジャンプ漫画の世界にでもトリップしているのか?

「遊びはこれまでだ!
 今度こそくたばれ、超絶無限爆炎風神暗剣殺ーーーーー!!
 この技は核爆発を防ぐ金属すら破壊する!!!」
 名前変わってるじゃねぇかよ!!
 つうか、核爆発すら防ぐって、最強厨かお前は!?

「絶対無敵バリアー!!」
 しかし、タカラギ子の展開したバリアーがその一撃を受け止めた。
「何だと!?
 ありえない、富士山すら消し飛ばすこの技が!!」
 驚愕する三月ウサ美。

「あなたは強い…
 だけど、決定的なものが欠けているわ。
 それは人の愛よ!!」
 愛って…
 そんなの今日び週間少年マガジンの漫画でも言わねぇよ。

「これが人の愛の力というものよ!
 受けなさい、
 スーパーウルトラミラクルスペシャルハイパーゴールデンゴージャスワンダーマッハ
 ドラゴンタイガーフェニックスゴッドパワークラッシュブラストソードブレイドネオ
 カイザーキングスラッシュボンバーメテオラストファイナルアタック零式!!!!!」
 三月ウサ美以上に厨臭い必殺技だーーーーーーー!!
 ていうか愛全然関係無いじゃねぇかよ!!

「馬鹿な!
 この人を超えた私がーーーーーーーーー!!!」
 お約束過ぎる断末魔の台詞と共に、三月ウサ美は倒れた。
 しかし、どうやらまだ辛うじて生きてはいるようだ。

662ブック:2004/06/24(木) 01:16

「…どうした。
 止めを刺さないのか…?」
 息も絶え絶えに呻く三月ウサ美。

「…急所は外してあるわ。
 これからは今迄犯してきた罪を償いながら生きなさい。」
 お前は最近少年漫画で流行の、ろくに信念も無い不殺主人公か!!
 殺せ!!
 この世の為にきっちり殺しとけ!!

「!!!!!!!!」
 その時、三月ウサ美の頭を銃弾が打ち抜いた。

「全く…使えない奴だったわねぇ…」
 硝煙の昇る狙撃銃を片手に現れる女。
 また病人が現れやがった。
 誰か医者呼んで来い、医者。

「私の名前はサカー奈。
 魔王様に仕える四天王の一人。
 三月ウサ美を倒した位でいい気にならないでね。
 そいつは、四天王の中でも一番弱かったのよ。」
 うわすっげ。
 二十一世紀にもなって、こんなカビが生えたような台詞を聞くとは思わなかった。

「何で仲間を殺したの!?」
 タカラギ子が叫ぶ。
「仲間?
 くくく、とんだ勘違いだ。
 負けるような役立たずなど、仲間の価値などないわ!!」
 銃をタカラギ子に向けて構えるサカー奈。

「許さない!!」
 さっきあわよくば三月ウサ美を殺そうとしていた事など棚に上げて、
 タカラギ子が飛び掛かる。

「甘い!
0.2536秒遅いわ!!」
 だが、サカー奈は苦も無くタカラギ子の胸に銃弾を放った。
 心臓の位置で、タカラギ子の服が爆ぜる。
 つーか、もうこのゲームギャルゲーじゃねぇよ。

「!!!!!」
 しかし、タカラギ子が何事も無かったかのように立ち上がってきた。
 何故だ?
 今ので死ななかったのかよ?

「…!
 これはオオミミ君が渡してくれたワッペン。
 オオミミ君が守ってくれたのね…」
 渡してねぇよそんなもん!!
 いつそんな描写があったよ!?
 ていうかワッペンなんぞで銃弾が防げるか!!

「くっ…!
 これが愛の力か…!!」
 サカー奈が怯む。
 だから愛なんか関係ないだろうが!
 お前ら揃いも揃って痴呆か!?

「ならばその力の源を消し去る!
 死ね!!」
「!!!!!!!!!」
 次の瞬間、オオミミの胸部がサカー奈によって撃ち抜かれた。

「…!
 オオミミ君!!」
 駆け寄ってくるタカラギ子。
「うう…俺はもう駄目だ……
 せめてお前だけは幸せになってくれ、ぐふっ。」
 死んだ!
 主人公死んだ!!
 おい、死んだぞ!?
 死んだぞ主人公!!
 主人公殺しちまっ、一体どうすんだよ!!

663ブック:2004/06/24(木) 01:17

「オオミミ君…!
 許さない…あなただけは絶対に許さない!!」
 タカラギ子の周りにオーラが漂い、髪が逆立つ。

「何ぃ!?
 あいつのどこにこんな力が…!」
 何の脈絡も無く、怒りの力でパワーアップ来たーーーーー!!

「人は一人では生きていけない…
 だけど、だからこそ手と手を取り合って生きていける。
 それが人間の力!!」
 死ぬ!
 死ぬ死ぬ!!
 臭過ぎて死ぬ!!!
 頼むからもう助けてくれ!!!!
 お前どこのRPGのキャラクターだ!?

「受けなさい!
 スーパー(中略)零式!!!」
 大幅に必殺技の名前はしょったーーーーーーー!!

「うっぎゃああああああああああああああああああああ!!!」
 光の奔流に吹き飛ばされるサカー奈。
「うぐぐ…!
 見事ね!
 だが、本当に恐ろしいのはこれからよ!!
 残りの四天王は、私の百倍は強い!!
 あなたなど、一秒で殺されるわ!!」
 血を吐きながらサカー奈が口を開く。

「今日の所はこの辺で退いてあげる。
 だけど、次に会った時は覚悟していなさい!
 ギルガメッシュナイトと、馬鹿殿様のおっぱい神経衰弱の復活、
 果たしてあなたに止められるかしら!?」
 そう言い残し、サカー奈はワープでその場から消え去った。
 で、これって何のゲームだったけ?


「オオミミ君…!」
 絶命したオオミミに、タカラギ子が縋りついた。
「ごめんなさい、私が弱い所為で…」
 いや、お前、
 前回毒入りの弁当食わせようとしてたじゃん。
 いまさら何言ってんの?

「う…うう……」
 その時、オオミミの身体が僅かに動いた。
「!?」
 タカラギ子が目を見開く。

「タカラギ子さんの涙で生き返ったよ。
 これが愛の力さ。」
 生き返るかよ!!
 お前心臓打ち抜かれてただろ!!
 涙なんかで復活するか!!

「さあ、すぐに旅に出よう。
 俺達の闘いは、今始まったばかりだ!」

  〜第一部・完〜
  ブック先生の次回作にご期待下さい。

664ブック:2004/06/24(木) 01:20
:.,' . : : ; .::i'メ、,_  i.::l ';:.: l '、:.:::! l::! : :'、:i'、: : !, : : : : : :l:.'、: :
'! ,' . : i .;'l;' _,,ニ';、,iソ  '; :l ,';.::! i:.!  : '、!:';:. :!:. : : : :.; i : :'、:
i:.i、: :。:!.i.:',r'゙,rf"`'iミ,`'' ゙ ';.i `N,_i;i___,,_,'、-';‐l'i'':':':':‐!: i : : '、
i:.!:'、: :.:!l :'゙ i゙:;i{igil};:;l'   ヾ!  'i : l',r',テr'‐ミ;‐ミ';i:'i::. : i i i : : :i どっから見ても
:!!゚:i.'、o:'、 ゙、::゙''".::ノ        i゙:;:li,__,ノ;:'.、'、 :'i:::. i. !! : : !:  打ち切り漫画の終わり方じゃねぇか!
.' :,'. :゙>;::'、⊂‐ニ;;'´          '、';{|llll!: :;ノ ! : !::i. : : : : i :   あやまれ!!
: :,' /. :iヾ、   `        、._. ミ;;--‐'´.  /.:i;!o: : : :i :   読者の皆さんにあやまれ!!
: ; : ,' : : i.:      <_       ` ' ' ``'‐⊃./. :,: : : O: i. :
: i ,'. . : :',      、,,_            ,.:': ,r'. : , : : !: :
:,'/. : : . :;::'、     ゙|llllllllllllF':-.、       ,r';、r': . : :,i. : ;i : :
i,': : : :.::;.'.:::;`、    |llllH". : : : :`、    ,rシイ...: : ; : :/:i : i:!::i:
;'. : :..:::;':::::;':::::`.、  |ソ/. : : : : : : ;,! ,/'゙. /.:::: :,:': :./',:!: j:;:i;!;
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もう本当に好き勝手電波を垂れ流してごめんなさい。
というか生まれてきてすみません。
次からは本編に戻ります。

665 ( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:45
「魅せてやろう。ひれ伏せよジャップどもッ!『トットリ・サキュー』ッ!

―巨耳モナーの奇妙な事件簿―『トットリ・サキュー』

・・・?
今アイツなんていった・・?
『鳥取・・砂丘』・・?
「・・ネーミングセンスが無いな、貴様。」
殺ちゃんがため息をついて言う
「な・・貴様ッ!この極東の小島ごときに存在する唯一の名所『鳥取砂丘』をバカにするのかッ!」
・・コイツ日本大好きなんじゃないか?

「・・・・ブフッ。」
後ろで必死で笑いをこらえていたムックが耐えられず吹き出す
「キ・・サッマ・・ラァAHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!こンの種無しピーマン野郎がァァァァッ!」
流石のハートマンもブチ切れすっ飛んでくる
しかしハートマンの体はムックには全く届かない地面に落ちる
そしてその体はズブズブと地面に溶け込まれていった。

「・・ッ!これは・・」
俺の脳裏に病院での闘いのビジョンが蘇る。
あの恐ろしい能力がまたか・・ッ!
「『トットリ・サキュー』ッ!」
ハートマンが恥ずかしいスタンド名を叫ぶ

そしてムックの後方に巨大な手が現れる
ソレを紙一重で避けるムック
「・・・・?」
俺はその光景を見て疑問を覚えた。
「あの手・・・右腕・・?」
頭に病院戦の様子が思い出される

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんだこれは・・右腕が・・戻せんッ!」
ハートマンの右腕はブレ、砂になった
「あああああああああッ!ク・・ソ・・ッ!貴様・・何をォーッ!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

666( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:46
!!
そうだ!確かアイツの右腕は俺がジェノサイアで砂にしてやったはずじゃ・・ッ!
でも・・どうみてもあの腕は・・右腕にしか・・

そんな事を考えていると俺の後方にも腕が現れる
「――ッそ!」
ギリギリで避ける俺
しかし、これで奴の両手が揃ってしまった。
一体何故・・・ッ!?

「・・『一体何故』そんな事を思っているな?巨耳モナー・・。」
ハートマンの口がニヤける
・・?何故だかわからんが相当不気味だ。
「教えてやろう。ソレはな・・。」

「すまぬ。特に興味は無い。――死ぬが良い。」
いつのまにかハートマンの死角にいた殺ちゃんの体から無数の重火器が現れ、
大きな音と閃光が走った。

何とかよけようとしたハートマンだったが、そのスピードは間に合わず、
半身が完全に砕ける。
そして横に倒れた。
「ふん・・・あっけない。」
殺ちゃんは銃に息を吹き、キメポーズをする

だが次の瞬間殺ちゃんの体は遥か彼方の道路に落ちた。
何だ?一体何が――?
「殺ちゃ・・っ」
俺が殺ちゃんのもとへと駆け寄ろうとすると巨大な手が現れる。
コレは・・『トットリ・サキュー』・・?

俺は即座にハートマンの死体へと目を向ける
――無い。
馬鹿な。
確かにアソコに――

考える暇も無く、俺の体は宙を舞い、地面に叩きつけられた
「ッグァッ!?」
マズい。背骨がイっちまったかもしれない。

そんな激痛が襲う俺の背中に更にパンチがくる
「『ソウル・フラワー』ッ!!」
無数のパンチと共に、花が咲き、養分が送られ、背中が元に戻る。
痛い。ぶっちゃけありがた迷惑だ。

意識が朦朧としながらも立ち上がると、ピンピンしたハートマンが目に入る。
馬鹿な。どうやっていやがる?幻覚?能力?残像?魂?
だがその時、俺の脳裏にある単語がよぎる
「―『吸血鬼』・・?」

ハートマンが微笑んだ。間違いない。コイツはそうだ。あの『狂いのバレンタイン』事件で見た
『吸血鬼』だ・・・。
馬鹿な・・。コイツはあの悪夢を・・また・・?
あの・・『悪夢』を・・?

「・・・YESYESYES・・。私こそ『吸血鬼』だよ・・。巨耳モナー・・。」
「『吸血鬼』・・『石仮面』と呼ばれる仮面によって生み出される悪魔・・。『骨針』により脳を刺激し・・
人間では出す事の出来ない領域の力を生み出す・・。日の光に当てるか、頭部を完全に破壊するまで再生し続けるバケモノ・・。」
俺はハートマンを睨みつける
「・・・『狂いのバレンタイン』を起こした忌むべき存在・・っ」
そして、低くつぶやいた。
「ほぅ。貴様。国によって掻き消され、うやむやにされた事件・・『狂いのバレンタイン』を知っているのか・・。」
「・・・『狂いのバレンタイン』・・とは?」
体をひきずり、殺ちゃんがやってきた。

「『狂いのバレンタイン』・・。日本で起きた最凶で最悪な事件だったよ・・。」
「ある人物・・今となっては誰かもわからんが、その者が吸血鬼になり、一人の女に最高の花火をプレゼントした。」
俺は拳を握り締めた
「そう・・あの女に・・あの・・女にッ―――!!」

「確か女の名は『ドキュソちゃん』・・。彼女の美貌に惚れた男が彼女に『花火が見たい。最高の花火が』。そういわれて・・。」
ハートマンの顔は少し笑っていた。
「吸血鬼の跳躍力で・・飛んでいる旅客機を・・・。」
「墜落させた。」
俺とハートマンは同時につぶやいた。
「それでHANABI・・。」
ムックはあっけにとられた顔をする。

「生存者は無し。犯人ですらドキュソの手によって太陽光で葬られてる・・。しかもドキュソの刑は証拠不十分で執行猶予がついた。」
嘲笑混じりで言うハートマン
「・・・そのドキュソも何者かの手によって葬られてる。」
俺は怒りを込めた声でつぶやいた。
「・・・しかもあの旅客機の中に・・俺の彼女が乗っていた。」
「ほぅ・・?」
ハートマン以外は驚愕の表情をする。

「・・・アイツに殺されたんだ・・『吸血鬼』に・・。」
俺は小さく、打ち震えつぶやいた。
「・・何故そんな大きな事件が消されて?」
「当時の情勢が複雑だったのでな。上の方のバカどもは人命より国が大事だったらしい。
そんな事件が起こったと知ったら観光客も減る、国民も恐れる、そしてその虚を狙いテロもあるかもしれん。」
「ヒドいですNA・・。」

667( (´∀` )  ):2004/06/24(木) 19:46
「・・そうだ。面白い事を思いついたぞ。――貴様の『処刑』についてだ。巨耳モナー。」
ハートマンは物凄い笑みをみせつける。
「あの『悪夢』を再来させてやろうッッ!!」
ハートマンは思いっきりしゃがむとかなりの跳躍をし、夜空に消えた。
「馬鹿な・・やめろ・・・やめろォォォ―――ッッ!!!」
俺は空に向かって叫んだ

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ィッ!
もう・・止められんよォォォォォォォォォッ!HYAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
とてつもないスピードでハートマンと旅客機が垂直に落ちてきた。
まるで、ミサイルの如く。
俺はその場にへたり込み、震えた。
後ろからジェノサイアが出てくる。

「巨耳くんッ!立ってっ!たたないと・・死んじゃうッ!立ってッ!早く・・立って―――ッ!」
しかし俺にはもう何の声も聞こえない。
無理だ。俺はもう・・
今すぐそっちへ行くよ・・――マリア。

「ムック・・死ぬ覚悟は?」
「出来てませんZO。」
「よし。それでよい。神に祈るのは・・死んだ後で良いッ!!」
殺ちゃんは叫び、仁王立ちをした。

だが、その叫びはむなしくも、旅客機がついらくする轟音に掻き消され
その姿は閃光に飲み込まれるのであった。

←To Be Continued

668:2004/06/24(木) 21:58
ちょっと今日中に貼らないといけないので、新スレ立つまで待てませんよ…

669:2004/06/24(木) 21:59

かって、1人の神父がいた。
『覚悟する事が、人類の幸福に繋がる――』
そう結論付けた神父は、世界を1巡させたという話がある。
そうならば…
これから語られる話は、一体何巡した世界なのか分からない。
だが、ただ1つ言える事は…

この番外編は、モナ冒本編と関連性はありません。





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      「モナーの愉快な冒険」
       番外・モナヤの空、キバヤシの夏(前編)

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「――6月24日はUFOの日なんだよ!!」

 受話器の向こうで、キバヤシは告げた。

「…そ、そうモナか」
 俺は、呆れながら言った。
 早朝から電話がかかってきたと思ったら、いきなりこれだ。

 キバヤシは熱に浮かされたように話を続ける。
「1947年6月24日、ケネス・アーノ○ドという実業家は、飛行機の窓から信じられないものを見たんだよ!!」

「…ちょっといいモナか?」
 俺は口を挟んだ。
「なんで伏字を使ってるモナ?」

「…一応、実在の人物だからな。とにかく、彼は信じられないものを見た。
 編隊を組んで飛んでいた、9機の飛行物体をな。
 彼はこれを、マスコミのインタビューで『フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)』と呼んだんだよ!!」
 受話器の向こうで、キバヤシの顔がアップになる気配。
 だが、まだだ。
 『なんだってー!』にはまだ早い。

「物体との距離から判断して、それはマッハ1.5で動いていたと彼は証言した。
 これが… 世界初のUFOの目撃例なんだよ!!」
 キバヤシは大声を張り上げた。

「異議あり!!」
 俺は負けずに大声を上げる。
「最初の目撃例と言うが、火球やフー・ファイター(幽霊戦闘機)の目撃例は以前からあったモナ!!
 さらに彼は、『フライング・ソーサー』とは言っていないモナ!!
 彼は『ソーサー(皿)のような動きをしていた』と言っただけ…
 つまり水切りの要領で水面を跳ねる皿を想定していたわけで、形状ではなく動きについて語られたものモナ!」

「…!!」
 キバヤシが息を呑むのが、受話器越しに伝わってくる。
 俺は続けた。
「そして、彼が用いた『ソーサー』という言葉が独り歩きしてしまったモナ。
 『フライング・ソーサー』と言い出したのは彼ではなく新聞記者であり、そもそも誤謬があった言葉モナ!!
 さらに、彼が述べたマッハ1.5という表現も怪しいモナ。
 ベテランのパイロットでさえ、離れた距離にある物体の距離を判断するのは難しい…
 物体がもっと近かった可能性もあり、そうだと速度は遅くなるモナ!
 何より彼は… 自分が目撃したものを、ソ連の最新軍用機と思っていたモナ!!」

「…」
 キバヤシは黙っている。
 すかさず俺は畳み掛けた。
「このア○ノルド事件、現在伝わっているのは歪曲された姿モナ。
 再現フィルムなど、ジグザグに飛んでいたり、凄まじい光を放ったり…
 でも実際は、太陽光を反射して軽く光った程度モナよ。
 彼が見た物は今となっては分からないけど、観測気球の可能性が高いモナ。
 当時は、複数の気球をロープで繋いで打ち上げる方式があったモナ。
 それが気流に乗ってしまうと、かなり速いスピードで飛ぶモナ。
 ちょうど、彼が目撃した飛行物体のように…」

「くっ、モナヤ… やるようになった!」
 キバヤシは吐き捨てた。
「まあ、今のは話の触りだ。さっき、MMR宛に読者から手紙が届いたんだよ…」
 何やら、ガサガサという音が聞こえる。
 手紙とやらを取り出しているのだろう。
 と言うか、読者って何だ?

670:2004/06/24(木) 22:00

 少しの間の後、キバヤシは口を開いた。
「…読み上げよう。
 『拝啓。こんにちわ、ミステル・キバヤシさん。毎週、楽しみに見ております。
  私は、何の変哲もないドイツ人です。
  先日私は裏弐茶県の首吊り島にUFO基地があるという情報を掴み、潜入しました。
  ですが即座に発覚し、襲い来るエイリアンを5体までは撃退したのですが…
  流石に敵は大勢、涙を呑んで逃走しました。
  今にして思えば、撃退したエイリアンの数は10体だったかもしれません。
  ですが敵の追撃は厳しく、メガ粒子砲の直撃を受けてしまい怪我をしました。
  偶然、エイリアン達と交戦していたアメリカ宇宙軍に救助されましたが…
  その際にUFOの写真を撮影しましたので同封しておきます。
  おそらく、あの島には秘密があるに違いありません。
  そこでMMRの皆さんには、その首吊り島の調査をお願いしたいのです。
  どうか、よろしくお願いします。            Mr.Z』
 …という事だ。あと、詳細な住所が記されている。モナヤ、どう思う?」

「…拝啓で始まってるのに、敬具が抜けてるモナね」
 俺はとりあえず言った。
 どうやら、俺の知らないところで宇宙戦争は始まっていたらしい。
 かってない壮大なスケールだ。
「それで、UFOの写真っていうのは…?」

「かなり粗いが… 確かにUFOだな。下部には砲台もついてる」
 キバヤシは言った。
「そこでだ、モナヤ。MMRは、裏弐茶県に調査に向かう事になった」
「ええっ! モナも行くモナか?」
 返事を聞くまでもない。
 MMRには、俺とキバヤシしかいないのだから。
「…いつからモナ?」

「無論、今からだ。ちゃんと、首吊り島にあるペンションに予約を入れてある。
 安心しろ、費用は全てこちらで持つ」
 キバヤシは当然の事のように告げた。
 相変わらず、俺の予定など何も考えていない。
 俺は、少し考えて言った。
「…リナーを連れて行ってもいいモナ?」
「別に、何人随伴しようが構わんさ。じゃあ、午前10時に駅前で」
 そう言って、キバヤシからの電話は切れた。

「リナー!! 一緒に、島にバカンスに行かないモナ?」
 俺は受話器を置くなり、リナーの部屋に呼びかけた。
「…バカンス?」
 リナーが、部屋から目をこすりながら出てきた。
「別に構わんが… 何でいきなり?」

「6月24日はUFOの日だからモナよ…」
 俺はニヤリと笑って言った。
 まあ、リナーと2人っきりで休日を潰すのも悪くはない。
 …あれ、なんで今日は休日なんだ?



 そして、俺達は駅前に立っていた。
 予想通り、多くのオマケを連れて…
「で、ちゃんとしたペンションなんだろうなゴルァ!」
 大きなリュックを背負ったギコは言った。
 その脇には、しっかりとしぃもいる。
 しぃも例外なく、大きな荷物を抱えていた。
「…知らないモナよ。予約したのはキバヤシモナ」
 俺は憮然として答える。
 全く、リナーと楽しい2人旅だったはずが…

「清潔なところがいーなー!」
「あと、風呂が大きいところだね。20畳以上はないと、僕は風呂とは認めないよ?」
「アッヒャー!!」
 そして、当然のように喚き立てる三馬鹿。
 奴等の山のような荷物。
 モララーなど、自分の身長ほどもあるスポーツバックを背負っている。
 どう見ても、泊まる気マンマンだ。
 もういい、どうせこうなるんだ…

「オマエラ、俺の事を忘れてはいないかッ!!」
 きなり、大声で叫ぶ三角頭。
「随分と久し振りモナね…」
 俺は彼に視線をやって呟いた。
「…俺はいつまでも…、俺はッ…ううっ!!」
 突然、泣き出す三角頭。
 ウザい事この上ない。

 …あれ、おかしいな。
 確か、毎日学校で顔を合わせていたはずが…
 ってか、日中歩いて大丈夫なのか、俺?
 まあいい。
 UVクリームとかでOKだ。
 なお、この設定はモナ冒本編では適用されないぞ。

「待たせたな、モナヤ」
 背後からキバヤシの声。
 『MMR』と書かれたシャツを着込んだキバヤシが、5分遅れで到着したようだ。
 そして、彼は俺達を見回した。
「随分沢山いるな… まあいい、MMR出動だ!!」
 キバヤシは、背を向けて改札口を進んでいった。
 俺達も後に続く。
 首吊り島とやらの近くまでは、電車で行くようだ。

671:2004/06/24(木) 22:01



 電車の中で、俺は今回の調査の目的について説明した。
 本来はキバヤシの役割なのだろうが、奴が電車に酔って使い物にならなかったからである。
「…じゃあ、ここでこいつを窓から投げ落とせば、訳の分からん調査とやらはバカンスに早変わりか…」
 ギコは、目を細めてぐったりしているキバヤシを見た。
 いくら相手がキバヤシでも、その扱いはひどすぎる。

「いいじゃない? ミステリーの調査なんて、ロマンチックで…」
 レモナは目を輝かせて言った。
「モナーくん、私が宇宙人にさらわれたら助けに来てね!」

「お前を連れ去れる宇宙人なんかいたら、人類じゃ太刀打ちできないモナ」
 俺はため息をついて言った。
 つーは、どうでも良さそうに窓の外の景色を眺めている。
「UFOか… でも、そういうのってワクワクするね」
 モララーは、割と乗り気のようだ。
「ギコ君は、本当に宇宙人がいると思う?」
 しぃは興味深そうに訊ねた。
 ギコは腕を組む。
「俺達がここに存在している以上、結局は確率論だからな…
 広い宇宙のどっかにゃいるかもしれないが、わざわざ地球に来てる可能性はないと思うなぁ…」

「リナーはどう思うモナ?」
 俺は、リナーに訊ねた。
「定番の返答だが、UFOは異星人の乗り物を示す用語ではない。単に未確認飛行物体の英略だ。
 観測した本人が対象を定義できないなら、例え気球でもUFOになる」
 そう言って、リナーは顔を上げた。
「…だから、特に感想はない」

 しぃやレモナ、モララー達は、宇宙人の存在について議論していた。
 いつもなら真っ先に炸裂するキバヤシは、電車酔いで完璧にダウンしている。
「でも、私はUFO見た事があるんだよ!?」
 そう主張するしぃ。
「金星か何かの見間違いだろ? 普通は星なんかと見間違えないと思うだろうが、金星だけは特殊で…」
 ギコはしぃの意見を否定している。
 どうやら、わりと議論は白熱しているようだ。
 調査はこいつらにでも任せて、俺はリナーとペンションでのんびりしとこう…



「…凄い田舎モナね」
 駅から出た途端、俺は呆れて言った。
 目の前に広がる海。
 そして、かろうじて人が住んでいると分かる微かな建築物。
 まるでさびれた漁村だ。
 ここから、首吊り島への船に乗るらしいが…

「無人駅なんて、10年振りだよ…」
 モララーは、駅の方へ振り返って言った。
 そもそも、こんな所に船なんて来るのか?

「現地の人が、ボートで迎えに来るはずだ… ウップ」
 そう言って、キバヤシは気分が悪そうに錆びたベンチに腰を下ろした。
 ボートか…
 低予算だが、全てはキバヤシに委ねている以上、仕方ないのかもしれない。
 だが…
 あんまり妙なペンションは困るな。

「予約入れてるってのは、どんなペンションなんだ? 変なところじゃないだろうな?」
 俺と同じく不安に思ったのか、ギコは訊ねた。
「やけにこだわるモナね。ペンションに悪い思い出でもあるモナか?」

 ギコはため息をつく。
「それが大アリなんだよ。去年の冬に行ったとこなんか、風呂が滅茶苦茶汚くてなぁ…」
「 で 、 誰 と 行 っ た の ? 」
 ギコの言葉をしぃが遮った。

「…で、どんなペンションモナ?」
 俺は、ぐったりとしているキバヤシに訊ねた。
「…ん?」
 キバヤシは視線を上げる。

「…『砕ける』」
「ギコハニャーン!!」
 背後から妙な声が聞こえてくるが、気にしないでおこう。

「『マサクゥル』という名の、ナウいペンションだよ」
 力無く呟くキバヤシ。
「…『マサクゥル』か。名前は強そうだね」
 モララーは口を開いた。
 キバヤシは続ける。
「首吊り島にある唯一の建物で、屋敷と言ってもいいほど立派なペンションだ。
 もっとも、写真でしか見た事がないけどな…」
 キバヤシはそう言って、ため息をついた。
 顔色は、先程より良くなってきている。

「あんたら、都会から来なすったのかね?」
 ベンチの周囲に固まる俺達に、老婆が声をかけてきた。
 いかにも、古老といった感じだ。

「…はい。首吊り島っていうところに行くんですよ」
 しぃは頷いて答える。
「な…! 首吊り島となッ!」
 老婆は驚きの声を上げた後、顔を引き攣らせて固まってしまった。

「…?」
 その様子を見たキバヤシが、腰を上げて老婆に訊ねる。
 どうやら全快したようだ。
「…首吊り島に、何かあるんですか?」

672:2004/06/24(木) 22:01

「知らん! あんな呪われた島の事など、ワシは何も知らんぞッ!!」
 そう言って、老婆は背を向けた。
 そのまま、ちらりとこちらへ視線を向ける。
「あんたら、命が惜しかったらあの島に近付くでないぞッ!!」
 そう言い残して、老婆はそそくさと去っていった。
 まるで、関わり合いになりたくないといった具合に。

「…判で押したような反応だな」
 ギコは呆れたように言った。
 そして、おそらくボートで迎えに来た現地の人とやらが、この島の因縁について語ってくれるのだろう。

「…そう言えば、Mr.Zとやらが手紙に同封したUFOの写真ってのは?」
 俺は、キバヤシに訊ねた。
「おっと、忘れるところだった…」
 キバヤシはポケットから1枚の写真を出すと、俺に渡す。

 俺は、その写真を見た。
「どれどれ…?」
 ギコ達が、俺の背後から写真を覗き込む。
 不鮮明だが、妙な物体がかなり大きく写っていた。
 まさに、円盤型。
 キバヤシの言った通り、その下部には砲台のような物がついていた。
 まるで、戦車の砲塔を逆さにしてくっつけたみたいな…

「何だこれ、パンターじゃねぇか」
 ギコは言った。
「…パンター?」
 俺は振り返って訊ねる。
「ドイツが、ナチス時代に開発した戦車だよ」
 ギコは告げた。
 何だ、本当に戦車の砲塔だったのか…

「じゃあ、合成したトリック写真って事?」
 しぃは訊ねる。
「ああ、本当にこんなモンを作ったんじゃない限りはな…」
 ギコは馬鹿馬鹿しそうに言った。
 それも当然だ。
 未知の飛行物体を製造しておきながら、パンターの砲塔を逆さにしてくっつける馬鹿が存在するとは思えない。

「じゃあ、無駄足だったって訳?」
 モララーは不服そうに言う。
 俺は、そっちの方が有難いんだがな。
「あきらめない…」
 キバヤシは呟きながら顔を上げた。
「『あきらめない』というのが、俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ!!」
 …つまり、調査を止める気はないらしい。

「つーか、Mr.Zとかいうヤツ、怪しすぎないか…?」
 ギコは言った。
 何を今さら。その名前で怪しまない奴は失格だ。
「手紙の方も見せてくれないか?」
 ギコは、キバヤシに手を出した。
「ああ… どこに仕舞ったかな」
 カバンをごそごそするキバヤシ。
「あった、これだこれだ…」
 キバヤシは封筒から手紙を出すと、ギコに渡した。

「うおっ!! 怪しッ!!」
 それを見て、俺は思わず叫んだ。
 まるで一昔前の脅迫状のように、手紙の文字は切り抜いた活字の貼り付けだったのだ。
「…今どき、こんなことするヤツいるんだね…」
 モララーは呆れたように言った。
 字の大きさもマチマチで、所々ずれている
 もう、怪しさ大爆発だ。

「…ん、迎えが来たようだ」
 キバヤシは腰を上げた。
 海面に古臭いボートが浮いている。
 俺達全員+荷物が乗ったら、沈んでしまいそうな…

 現地の人と思われる筋肉質のニワトリが、キバヤシと視線を絡めた。
 ゆっくりと頷くニワトリ。
「じゃあみんな、ボートに乗ってくれ」
 そう言いつつ、キバヤシがボートに乗り移った。
 その衝撃だけでボートは大きく揺れる。

「オイオイ、こんなボロで大丈夫なのか? みんな乗ったら沈んじまうんじゃねーか?」
 三角頭は言った。
 ってか、いたのか。

「…」
 ニワトリが、三角頭を睨んだ。
 そして地上に飛び移ると、腕をクイクイさせる。

「左側の海苔頭! きさまの頭の形が気にくわん! 今から痛メツケテヤル!! …だそうだ」
 キバヤシはボートに腰を下ろして言った。

「はァ〜〜〜〜? おれのことか? なんだてめー! いきなり何いいだすのん? 頭パープリンなのか?」
 ニワトリを挑発する三角頭。
 パープリンなのは、間違いなくお前だ…

673:2004/06/24(木) 22:02



「じゃあ、出発だ!」
 キバヤシは言った。
 ニワトリはおもむろに海に飛び込むと、ボートの背面に回る。
 そしてボートを押しながら、激しくバタ足を始めた。
 その勢いで、ボートはゆっくりと進み出す。
 オールは、三角頭を叩き潰した時に折れてしまったのだ。

「…まあ、全員乗ってたら沈んでたかもしれないモナね。1人足りないくらいがちょうどいいモナ」
 俺は、ポジティブに物事を考える事にした。
「つーか、こんな重要な事を今まで聞かないのもアレだけど…」
 ギコはおもむろに口を開いた。
「何泊する予定なんだ?」

「この船が出るのは1週間に1回だ。つまり、次にこの船が来るのは1週間後だな…」
 キバヤシは澄まして言った。
 どうやら、海の上だと酔わないらしい…って、それどころじゃねー!!

「じゃあ、1週間は本土から帰れないのかい!?」
 モララーは叫んだ。
「その通りだが、心配する事はない。食料や生活用品は、1週間分以上は備蓄されてあるからな…」
 そう言って爽やかなスマイルを見せるキバヤシ。
 何と言うか、最もタチが悪いシュミレーションだ。

「まあ、大丈夫なんじゃないか?
 いざとなったら、モララーの『アナザー・ワールド・エキストラ』もあるし…」
 ギコは腕を組んで言った。
 確かにそうだな。
 仮にも俺達はスタンド使いだ。

「…ほら、島が見えてきたぞ!」
 しばらくして、キバヤシが水平線を指差した。
 うっすらと、首吊り島がその姿をあらわす。

「なかなか大きい島だな…」
 ギコは呟いた。
 つーが島を見てはしゃぐ。
 確かに大きい。人里離れている事といい、秘密基地を作るなら絶好の場所だろう。

 俺達は、この時は思いもしなかったのである。
 ペンション『マサクゥル』が、忌まわしい殺人事件の舞台となる事を…



 ボートが砂浜に乗り上がる。
 ここには、港はないらしい。

「よっと…」
 俺は、島に上がった。
 海の傍にもかかわらず、うっそうと茂った森が視界に広がる。
 獣道が、森の中を真っ直ぐに走っていた。

「…まさか、歩いていくの?」
 しぃはうんざりしたように言った。
 その気持ちは良く分かる。

「そう、ここから真っ直ぐに30分ほど歩けば『マサクゥル』に到着だ」
 キバヤシは言った。
 その背後で、ニワトリはボートを発進させた。
 ボートを押しながらバタ足で水面を蹴るニワトリの姿が、みるみる遠くなっていく。

「たかだか30分だろう、大した距離じゃない」
 リナーは言った。
 確かにそうだ。
 現在4時半。5時には『マサクゥル』に着く計算だ。
 俺達は、『マサクゥル』に向かって歩き出した。



 ――午後5時。

 俺の眼前に、大きな門がそびえ立っていた。
 …デカい。
 とにかくデカい。
 これはもはや洋館だ。ペンションとは言わんだろう。
 外観からして、3階建て。
 中世の貴族が舞踏会とか始めそうな雰囲気だ。
 キバヤシは立派な扉に歩み寄ると、無造作に呼び鈴を鳴らした。

 しばらくの間の後、ゆっくりと扉が開く。
 その間から、にこやかな笑みを浮かべた男が顔を出した。
 良く言えば立派な体躯、悪く言えば肥満した肉体。
 彼はゆっくりと扉から出てくると、キバヤシと握手をした。

「『マサクゥル』へようこそ。MMRの皆さんですネ。
 ワタシはこのペンションのオーナー、曙と言いマス」
 第一犠牲者… じゃない、曙はどこか英語めいた発音で言った。
「さあ、中へドーゾドーゾ…」

 見た目はいかついが、どうやら曙はいい人のようだ。
 俺達はペンションに入った。
 高級そうな内装。
 廊下には、高そうな調度品が並んでいる。
 落ちてくれば数人は命を落とすであろうシャンデリアも見逃せない。
 何か、リュックを背負っている俺達が気後れするほどに豪華だ。
 周囲を見回して、キバヤシは口を開いた。
「…いいペンションだ。ナウなヤングにバカウケだな」
「そうでショう? ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 キバヤシの言葉を聞いて、曙は豪快に笑った。

674:2004/06/24(木) 22:03

「さて、客室は2階になりマス」
 曙は、ロビーの正面にある階段を上った。
 俺達はぞろぞろと後に続く。
 立派な階段を上ったら、広い廊下が目の前に続いていた。
 両側には、客室のドアが延々と連なっている。

「8名様ですから… 205〜212室をご利用下さい」
 ドアを指して、曙は言った。
「朝食は午前8時。昼食は正午、夕食は午後7時です。間取り図が各部屋にあるので、見ておいて下サイ」
「…ああ、分かった」
 キバヤシは頷く。

「では…」
「あっ、ちょっと!」
 背を向ける曙を、俺は慌てて呼び止めた。
「…誰か、あなたを憎んでいる人間はいるモナ?」
 俺は訊ねる。
「…いきなり何を言っている?」
 リナーが眉を寄せる。
「いや、死人に口無しになる前に、重要な事は聞いておこうかと思って…」
 俺はポケットからメモを取り出して言った。

「…別に心当たりはないですネ。ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 曙は笑う。
「…分かったモナ」
 俺は『敵なし』とだけ書いて、メモを仕舞った。
 曙は軽く頭を下げると、階段を降りていった。

「さて、部屋だが…」
 ギコは口を開く。
「私はモナーくんの隣ねー!!」
「アアン! 僕も、モナー君の隣にするんだからな!!」
「じゃあ、モナはリナーと同じ部屋で!!」
「ノストラダムス…!」
 俺達は、口々に喚き立てた。

 ギコは両手をかざしてそれを制する。
「どうせ穏便にゃ決まらんだろうし、事件発生の前に無駄な犠牲を出すのもアレだからな…
 ここは潔く、ジャンケンでどうだ?
 いったん決まったら、後は誰と同室しようが個人の自由って事で…(俺は最初からそうするつもりだけどな)」
 …ギコの心の声が聞こえた。

 まあ、揉めずに決めるにはジャンケンが一番問題が無いだろう。
「…それもいいかもね」
 モララーは承諾する。
 レモナも黙って頷いた。

「じゃあ、ジャーンケーン……ホイ!!」
 ギコの音頭と共に、全員が手を出した。
 普通8人の大人数ともなると、あいこが連続するものだ。
 しかし、1発で勝負がついた。
 キバヤシだけがチョキ、残り全員がパーだったのだ。

「別にどこでもいいんだけどな… じゃあ、211号室にしようか。素数だしな…」
 そう言って、キバヤシは211号室へ入っていった。
 まさか、何かやったんじゃないだろうな…

「じゃあ行くぞ! ジャーンケーン……ホイ!!」
 続くギコの掛け声。
 何回かあいこを繰り返した後、俺、つー、しぃ、リナーがパーを出し、ギコ、レモナ、モララーがグーを出した。
「くそ――ッ!!」
 モララーが絶叫する。

 俺、つー、しぃ、リナーでジャンケンを繰り返し、リナー、つー、俺、しぃの順に部屋を選べる事になった。
「別に私はどこでもいいんだが… じゃあ、一番手前の部屋で」
 リナーは205室を指差した。
「アッヒャー! オレハ、212シツダ!!」
 つーは、一番奥の部屋に走っていった。
 そのまま、ドアを開けて室内に飛び込む。
 どうやら、端っこ狙いだったみたいだ。

「じゃあ、モナはリナーの隣で…」
 俺は206号室を指定する。
 残りは、207〜210号室。両脇2つずつが埋まり、ちょうど真ん中が空いてしまった。
「ん〜 どれにしようかな?」
 しぃが部屋を見回す。
 レモナとモララーの、『207号室は行くな…』という思念を背に受けながら。
「…じゃあ、210号室で」
 しぃは無難に選択した。

 後は、ギコ、モララー、レモナの3人だ。
「事実上、207号室の争奪戦って訳ね…」
 レモナはモララーを見据えた。
「ああ。容赦はしないよ…」
 それを睨み返すモララー
「…俺、残った部屋でいいわ。下手に恨みを買うのも御免だし」
 そう言って、ギコとしいは素早く210号室に入っていった。
 もう、特に言う事はない。

 一方、睨み合うモララーとレモナ。
 今にも浮遊しながらジャンケンを始めそうな雰囲気だ。

「…リナー、ペンションの探検に行かないモナ?」
 俺は、リナーに声をかける。
「そうだな。いざという時の避難経路も確かめておく必要がある」
 そういう事で、俺とリナーはその場から離れた。

675:2004/06/24(木) 22:03


「2階には、客室しかないっぽいモナね…」
 廊下に延々と続く客室を見て、俺は呟いた。
 部屋数はかなりの数になる。
 おそらく、50人は宿泊できるだろう。

 次に、1階に降りる俺達。
 ロビーにある大きな休憩用のテーブルに、見覚えのある4人がいた。
 しぃ助教授、丸耳、ありす、ねここ…
 なんと、ASAの面々だ!!

「おや、モナー君じゃないですか」
 ティーカップを手にしていたしぃ助教授は、リナーを意図的に無視して言った。
「モナーさ〜ん! リナーさ〜ん!」
 俺達にねここが手を振る。
「しぃ助教授…? どうしてここへ…」
 それに応えながら、俺は呟いた。
 もしや、もう事件が発生したのか?

「休暇ですよ。1週間ほど、羽根を広げようかと思って」
 しぃ助教授は紅茶をすすりながら言った。
「…首吊り島なんていう不気味な名前のところに、好き好んでやってきたモナか…?」
 その悪趣味振りは、流石しぃ助教授だ。

「放っといて下さい。それより、モナー君達は何しに来たんですか?」
 しぃ助教授は、ティーカップをテーブルに置いて訊ねた。
「それが…」
 俺は、事情を説明する。
 その間、リナーは調度品を見回っていた。
 話を終えて、しぃ助教授は腕を組む。
「うーん、UFOの秘密基地ですか… 楽しそうな話ですね」

「私達も探しに行きましょうか!?」
 ねここは楽しそうに言った。
「止めはしませんよ、私は…」
 しぃ助教授は再び紅茶をすする。
 つまり、自分は行く気はないという事だろう。

「リナーさん、かなりヒマそうですよ…」
 ねここが、こっそりと告げた。
 見ると、確かに暇そうだ。
 心なしか機嫌が悪そうにも見える。

「そうモナね… じゃあ…」
 俺は、慌ててリナーに駆け寄った。
「待たせたモナね…」
 リナーもしぃ助教授も、互いを存在しないものとして扱っていた。
 両者とも、最大限の譲歩をしていたのだろう。
 大人になったものだ…
 腕を組んで、俺は大きく頷いた。

 ロビーを真っ直ぐに進むと、食堂の扉に突き当たる。
 扉は開いていた。
 かなり大きいテーブル。
 食堂と言っても、大衆食堂などでは断じてない。
 まるで中世ヨーロッパの大邸宅における食卓だ。
 食堂内では、メイド服を着たピエロとクマがハンバーガーを盛った皿を並べていた。
 何か、見てはいけないものを見てしまったような気が…

 俺は慌てて視線を逸らした。
 食堂の扉の左右にも通路がある。
 そこから、風呂や従業員達の部屋などに繋がっているのだろう。
「…って言うか、他の従業員はいるモナ?」
 俺はいぶかしんで言った。
「もちろんいるだろう。そうでなければ、ここまで大きいペンションなど維持できるはずがない」
 リナーはそう言うが、ここはペンションの定義から外れているような気がしてならないんだが…

 俺とリナーは通路を進んだ。
 壁に張られた案内プレートに視線をやる。
「で、こっちが大浴場モナね…」

 『ゆ』と書かれた大きなのれん。
 どう見ても、大きな純和風大衆浴場。
 洋館仕立てが台無し… と言うか、ミスマッチにも程がある。

「おや、お二人サン…」
 曙が後ろから声をかけてきた。
「フロはいつでも入れマスよ。30分も歩いてきたんですから、汗を流してみてハ?」

「風呂…」
 そう呟いて、ニヤリと笑う俺。
「そうモナね。たまにはみんなで銭湯気分も悪くないモナ…」

 ふと、俺は曙に訊ねた。
「他にも客は来るモナか…?」
 曙は腰に手を当てる。
「ASなんとかいう役所の人達が4人と… 上院議員さんが1人。
 釣り客の方が3人、警察の人が2人来る予定デス。それと、Mr.Zとか言う方も…」

「Mr.Zだって!?」
 俺は思わず大声を上げた。
 そいつは、確かMMRに手紙を送ってきたヤツだ。
 そもそも、俺達がここへ来た発端とも言える。
「…妙な話だな。調査して下さいと言っておいて、自分も出向くとは…」
 リナーは腕を組んで言った。

「これは、みんなに知らせる必要があるモナね…」
 俺は、リナーに告げた。
 ついでに、みんなを風呂に誘いにいこう。

676:2004/06/24(木) 22:04


 ロビーには、すでにASAの人達の姿は無かった。
 部屋に戻ったのだろうか。
 不意に、玄関の扉が開いた。

「へぇ… なかなかいいペンションじゃないですか」
 内装を見回して、そう口を開く男。
「ペンションと言うには、いささか大きすぎると思いますが…」
 そう言いかけた女の言葉が、俺と目が合った瞬間に止まった。
「…モナーさん!?」

 なんと… 女はリル子さん、男は局長だった。
 すると、曙の言っていた警察の人と言うのは…

「また、珍しいところで顔を合わせますね」
 局長はため息をついて言った。
 全くその通りだ。
「未成年が2人でこんな所に泊まるとは感心しませんねぇ…」
 しかも、誤解爆発である。

「あと6人来てるモナよ。ちゃんと引率もいるモナ…」
 そう言った後、俺は思った。
 キバヤシって何歳?
 若そうに見えるが、結構年食ってるのかもしれない。
 20は越えているのだろうが…
 でも、あれで30超えているのも何か嫌だ。
 …まあ、ムーミンみたい生物と同じようなものだと思おう。

「なるほど… それは、失礼しました」
 そう言いながら、局長はずかずかとロビーに踏み込む。
 食堂の方から、曙が走ってきた。
 そして、曙、局長、リル子の3人は階段を上がっていく。

「…あの人達、何しに来たモナ?」
 俺はリナーに言った。
「休暇か、それとも何かあったのか…」
 呟くリナー。
 まあ、リナーに聞いても仕方がない。
 俺達は、2階に上がった。


「…という訳で、みんなで風呂に行くモナ」
 一番奥のつーの扉を叩いて、俺は言った。
「ワカッタ。チョット マテ!」
 中から、つーの声。
 これで全員に告げた事になる。
 俺は、風呂セットを取りに自分の部屋に戻った。


 入浴セットを手に部屋から出ると、ねここに鉢合わせた。
「あれ? お風呂の準備ですか?」
 ねここは俺の抱えている風呂セットに視線をやる。
 どうやら、ねここの部屋は向かいの219号室のようだ。
「ちなみに、みんなの部屋番号とかは全く覚える必要がないモナよ」
 俺はおもむろに告げる。
「…誰に言ってるんですか?」
 首を傾げて訊ねるねここ。
「……さあ? 誰にだろ…」
 俺は呟いた。
 そうだ、それより…

「大浴場の風呂は、いつでも入れるみたいモナ。
 モナ達も、みんなで入りに行くモナ。ASAのみんなもどうモナ?」
 俺はねここに告げた。
「お風呂ですか… みんなで入るのは楽しそうですね!」
 ねここは両手を上げて、頭上で軽く叩く。
「じゃあ、こっちのみんなも誘ってきます!」
 そう言って、ねここは他の部屋をノックしだした。
 ククク… ククククク…

「じゃあ、行くか!」
 ギコは言った。
 俺達の方は全員揃ったようだ。
 こうして、俺達8人は大浴場へ向かった。


 『ゆ』と書かれたのれんの前で、俺達は2グループに分かれた。
 男湯組の俺、ギコ、モララー、キバヤシ。
 女湯組のリナー、しぃ、レモナ、つー。
 性別不詳のつーは、女湯で問題ないようだ。
 まあぶっちゃけ、つーのAAの構成要素の96%はしぃだしな。

 脱衣所で、俺達は即座に服を脱ぐ。
「…先客がいるようだな」
 カゴに入った服を見て、ギコは言った。

 服を脱ぐ俺を見て、ニヤニヤしているモララー。
 ホモと銭湯に行くのは、なかなかスリリングだ。
 視線の角度や向こうの動きを『アウト・オブ・エデン』で解析し、最適な位置に占位する俺。

「おや、みなさん…」
 脱衣所に、風呂セットを抱えた丸耳が入ってきた。
 ASAの一団も来たのだろう。
 思えば、向こうは4人中3人が女性である。
 言わばハーレム状態だが、銭湯などでは寂しいだろう。
「ご一緒させてもらうとしますか…」
 そう言って、丸耳は服を脱いだ。

 戸をガラガラと開けて、丸耳を含む俺達5人は浴室に入る。
 予想通り、かなり広い。
 大きい湯船に、広い洗い場。
 そして、壁で隔てられた向こうには…
 ククク、ククククク…!

「――『アウト・オブ・エデン』」
 俺は、スタンドを発動させた。
 その、全てを見通す目を。

「ギャー!!」
 その刹那、頭部に鋭い衝撃。
 俺がスタンドを発動させた瞬間に、ギコと丸耳が同時に後頭部を殴ったのだ。
 …なんで丸耳まで。

「次にやったら、『レイラ』でぶった切るからな」
「ASAの一員として、スタンド能力を悪用する者を見逃してはおけません」
 ギコと丸耳は同時に言った。

677:2004/06/24(木) 22:05

 洗い場に人影がある。
 先に来ていたらしい局長が、頭を洗っているのだ。
「風呂ぐらい静かに入れませんか?
 私達は知り合いだからいいようなものの、第三者に迷惑をかけるのは頂けませんね」
 局長は呆れたように言った。
 彼の眼鏡は、湯気で真っ白になっている。

「…眼鏡、外さないモナか?」
「後ろの彼もそうでしょう?」
 局長は言った。
 確かに、キバヤシも眼鏡を掛けたままだ。
「俺がメガネを外すと、死の線が見えたりオプティックブラストが暴発したりするからな…」
 キバヤシは視線を落として呟いた。

「って事は、リル子さんもあっちにいるの?」
 モララーは、女湯の方を指差して局長に訊ねた。
「ええ。ですが、劣情に走るのはお勧めしませんよ…」
 局長は頭を泡立てながら言った。
 確かに、覗きなどしようものなら恐ろしい事になりそうだ。

「ふ〜〜〜〜極楽極楽…」
 肩まで湯船に浸かる俺達。
 これに勝る快楽などない。

「モナ〜く〜ん! 聞こえる〜!?」
 不意に、女湯の方から声がした。
 レモナの声だ。
「聞こえるモナよ〜!」
 俺は返事をした。

「うわ〜 広いですね!!」
 ねここの声が響く。
「では、お待ちかねの… ねここチェーック1!!
 リナーさん、意外と胸大きく… ありませんね。がっかり」
「…悪かったな」
 こちらはリナーの声。
 そして、ザバーというお湯を流す音。

「ねここチェーック2!! しぃさんは… マル!! 合格!! ちゃんと揉んでもらってるんですね!!」
 ねここは大きな声を上げている。
「まあ、当然だな…」
 何故かふんぞり返るギコ。

「あっ! リナーさんが僅かに自らの胸元に視線をやったーッ! 気にしているッ! 確かに気にしてガバゴベブボ」
 ねここの声に水音が混ざる。
 恐らく、湯船に沈められたのだろう。

 その何だ、女湯のこういうのって、わざとやってんじゃないかって思うな。
 多分、わざとやってるんだろうけど。
「…対抗する?」
 シャンプーハットを被ったモララーが言った。
「男がやると、とんでもない事になるモナ」
 俺は突っぱねる。

「じゃあ、俺の出番だな…」
 突然、湯船の中から海坊主のように男が顔を出した。
 あれは… 阿部高和だ!!

「ホ、ホモだッ!! 変態がいるッ!!」
 モララーは、自分の事を棚に上げて叫ぶ。
 あんまりそういう言い方は、ゲイの方に失礼だぞ。

「行こうか、モララー君。たっぷりよろこばせてやるからな…」
 阿部高和は、モララーの足を掴んだようだ。
「イ、イヤアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ…」
 モララーは、そのまま湯の中に引きずり込まれていった。
「…」
 俺達は湯船から上がると、体を洗い始めた。

 再び、ねここの声が響く。
「話がまとまったところで、ねここチェーック3!! レモナさん…」
「私は、ある程度なら自由に可変できるわよ。モナーくんの好みに合わせてね…キャッ!!」
 レモナは大声でこちらに聞こえるように言った。
「恋する乙女のパワーだッ!! いやぁモナーさん、男冥利につきますね…!」
 ねここの嬉しそうな声。
 ギコが俺の肩にポンと手を置く。
 他人事だと思って…
「いや、つきないつきない…」
 俺は右手をヒラヒラと振った。

「ねここチェーック4!! つーちゃん………!? !!!!?」
 絶句するねここ。
 な、なんだ!?
 何を見たんだ!?

「さて、ねここチェーック5!! リル子さん… おぉッ!!」
 その刹那、凄まじい打撃音がした。
 静まり返る女湯。

678:2004/06/24(木) 22:06

「やれやれ…」
 湯船に浸かって局長が呟いた。
 その眼鏡は完全に湯気で真っ白で、前は見えていないだろう。
 体を洗い終えた俺達は、再び湯船に浸かる。

「いたた… ねここチェーック5!! しぃ助教授… は止めて、ありす!!
 うーん、年齢を考えれば、こんなもんですかねー」
 ねここチェックはまだまだ続く。
 胸編を終えた後は、全体の総括と今後の課題へと…

「結論から言えば、スタンドを使用すればあの程度の壁を登る事は可能だ」
 ギコは、おもむろに言った。
「そこまでは問題ありません。その後ですね。こちらはほぼ無防備、向こうの攻撃を回避できるとは思えません」
 丸耳が真面目な顔で呟く。

「いやお前ら、さっきモナを殴ったのは何だったモナ…?」
 俺は呆れて言った。
「あなたが利益の独占を狙ったからです。
 スタンドの能力でみんなが幸せになるのなら、ASAの理念には抵触しません」
 丸耳は悪びれずに告げる。

 ギコは話を元に戻した。
「俺の『レイラ』とモナーの『アウト・オブ・エデン』、そしてお前のスタンドで、向こうとどの程度戦える?」
 そう言って、ギコは丸耳に視線をやる。
「どの程度も何もありません。しぃ助教授1人にすら太刀打ちできませんよ」
 丸耳はさらりと言った。
 ギコはため息をついて腕を組む。
「そもそも、戦力に偏りがありすぎるな…
 リナー、しぃの『アルカディア』、レモナ、つー、しぃ助教授、ありす、リル子の『アルティチュード57』…」

 丸耳が捕捉した。
「ねここの『ドクター・ジョーンズ』も侮れませんよ。
 近距離パワー型ほどではありませんが、バランスの取れた遠距離型で厄介です」
 …確か、あの死神みたいなヤツか。
 こっちに比べて、女性陣が強力過ぎる。
 『ロストメモリー』が加われば、こちらにも勝機が見えてくるんだが…

「あんたはその気はないのか?」
 ギコは局長に視線をやった。
 局長は肩をすくめる。
「学生時代ならそういうノリも悪くはありませんが、この年になってしまうとねぇ…」

「…」
 丸耳は視線を落とした。
 彼も、年齢はよく分からない。
「…そろそろ出るか」
 ギコの声に頷くと、俺達は風呂を出た。

 ペンション備え付けのステッキーな浴衣を着用する。
「ヴァ〜〜〜〜〜〜〜」
 モララーが、回転する扇風機に向かって奇声を上げていた。

「おっ、自動販売機じゃねぇか… 牛乳でも飲むか」
 ギコが、洗い場の隅の方に歩いていった。
 本当に、ここだけ銭湯そのものだな…

「おやおや、皆さんは上がったところデスカ…」
 のれんをくぐって、曙が脱衣所に入ってくる。
「オーナーも風呂ですか?」
 眼鏡の湯気を拭きながら、局長は訊ねた。
「エエ。食事の前にはひとっ風呂浴びないとネ。ドゥォッホッホッホォッホォホォッ!!」
 豪快に笑う曙。
 そして服を脱ぐと、浴室へ入っていった。

「おいッ!! 大変だ!!」
 突如、ギコが大声を上げた。
「この自販機、コインが入らねぇんだよ!!」

 ギコは、必死で円筒状の物体にコインを投下しようとしている。
「…それは、歯車王モナ」
 俺は告げた。

679:2004/06/24(木) 22:08


 局長を含む6人で、俺達は男湯を出た。
 女性グループも同時に出てきたようだ。
 何となく灰色な俺達に比べて、向こうは異様に華やいでいる。
 …浴衣! 
 …半乾きの髪!!!
 …身体からホコホコと沸き立つ湯気!! 
 もう、ハァハァものだ。

 合流した俺達は、2階の部屋へ向かった。
「…もうすぐ、夕食ですね」
 しぃ助教授は言った。
「部屋に戻って荷物を置いたら、すぐに再集合しましょうか」

 みんな揃って食堂へ行こうという事か。
 どうでもいいが、先程からリナーとしぃ助教授は一切目を合わせていない。
 まあ諍いを起こさないだけマシだろう。
 俺達はしぃ助教授の誘いに乗って、荷物を置くとみんなで食堂に向かった。


 食堂には、3人の異様な男が座っていた。
 あれが、曙の言っていた3人の釣り客だろう。
 だが、どう控え目に見ても釣り客には見えない。
 それより、軍人とか兵士とか戦士とか傭兵とか、そういう種族に見える。
 釣竿より、武器が似合う人種だ。
 まあ、所詮はバナナとダンボールとオッサンだが。

 …と言うか、どうやって来たんだ?
 船は週に1回しか来ないはず。
 既に設定が破綻してないか?
 取り合えず、思い思いの席に座る俺達。

「私は山田、ダンボールの彼がモナーク、あっちがハートマン軍曹だ。よろしく」
 山田と名乗ったバナナは、俺達に言った。
 あくまで最低限の自己紹介である。
 黙っているのも不自然だから名乗っただけで、こちらとコミュニケートするつもりはないのだろう。
 現にモナークとハートマンとやらは、視線を上げようとすらしない。
 あれ? そう言えば、風呂場で『ロストメモリー』がどうとか思ってた気が…
 まあいい、彼等とはあくまで初対面だ。

「…随分と、皆さんお集まりですな」
 立派な身なりをした紳士が、食堂に姿を現した。
 こいつが、間違いなく曙の言っていた上院議員とやらだ。

「…誰か、貴方を憎んでいる人はいませんか?」
 俺は、上院議員に訊ねる。
「意外と、こういうキャラが最後の方まで生き残ったりするもんだけどな…」
 そんな俺を見て、ギコは呟いた。

「憎んでいる人? こんな職をやっている限り、数え切れんほどいますのう。フォフォフォ…」
 上院議員は柔和な笑みを見せて言った。
 そして、テーブルに腰を下ろす。
「そう言えばこの食堂に来る時、通路でオーナーと会いましたぞ。6時40分ですな」
 唐突に、やけに正確な時間を口にする上院議員。
 
「6時40分までは生きていた、と… ただし、上院議員が偽証していない場合」
 ギコは手帳に素早くメモを取った。
 俺は時計を見る。現在、6時45分。
 それから俺達は他愛ない会話を交わした。


 7時の鐘が鳴る。
 曙は現れない。
 俺達の前には夕食のハンバーガーが並んでいるのだが、オーナーを差し置いて食事を始める訳にもいかないだろう。

「…寝てるのかな?」
 しぃは言った。
「さぁなぁ… このままだと、冷めちまうぞ」
 ギコは、食卓に並ぶハンバーガーに視線をやる。

「仕方ない、モナが様子を見に行くモナよ…」
 俺は、椅子から身体を起こした。
「私も行こう」
 リナーが立ち上がる。
 俺は、みんなを見渡して言った。
「念の為に、もう何人か来て欲しいモナ。出来れば、死亡時間の割り出しとかできる人が…」

「じゃあ、私とリル子君がご一緒しましょう」
 公安五課の2人が腰を上げた。
「丸耳、貴方も行きなさい」
 しぃ助教授は、隣の丸耳に視線をやった。
「了解しました」
 丸耳が立ち上がる。

「じゃあ、行くモナ…」
 俺を先頭に、リナー、局長、リル子、丸耳の5人がオーナーの部屋に向かった。

680:2004/06/24(木) 22:09


「すごく和風な扉モナね…」
 オーナーの部屋の前に立って、俺は呟いた。
 そして扉に手をやる。
 ノブが回らない。
「…鍵が掛かってるモナ」

「どれどれ… 本当ですね」
 局長がノブをガチャガチャと捻った。
「…どいてろ」
 リナーは拳銃を取り出すと、ドアの取っ手に発砲する。
 たちまち、ノブは弾け飛んだ。
 俺は、ゆっくりとドアを開けた。

 中は、立派な和室だった。
 そして、予想通りの風景。

 |    |         .|           そこには、曙さんがうつ伏せに倒れていた。
 |    |   @ソ  │           その弛緩した肉体、和室に伸びた体躯。
 |    |  (ゞl,ノ@   │             とうとう、事が起こってしまった。
 |    |   ヾl/)    |            彼は、死んでいるのだ。
 |    |/ [____]  ̄.|            背後から、皆の息を呑む気配が伝わってきた。
 |      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄           僕は…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         __,,,,,,               |> A:慌てて曙さんに駆け寄った。
     ,.-'''":::::::::::`ー--─'''''''''''''-、,,
  ,.-::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\     B:「誰もこの部屋に入れるな! 
  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ ヽ-、::::::''ー'''"7  食堂にいるメンバーを確認するんだ!!」そう叫んだ。
  `''|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}      ``ー''"
    !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i          C:「この中に犯人がいます!!」
    '、:::::::::::::::::::'ー''ヽ、:::::::::::::ヽ、-─-、,,-::::ヽ   振り返って言った。
     \::::::/     ヽ--ヽ::::::::::::::::-----、::ヽ
                  ``"       \D:「イシャはどこだ! 先生! シリツをして下さい!」
                              取り乱して叫んだ。

「…Bモナね」
 俺は呟いた。
 とりあえず、現場保持だ。
 こういう局面では、誰が犯人で証拠隠滅を図るか分からない。
 誰も部屋に入れない事が重要だ。
 なおかつ、全員の状況を把握する。
 食堂にいるメンバーの確認が第一だ。
 殺害状況の把握など、その後でいい。

「誰もこの部屋に入れては駄目モナ! 食堂にいるメンバーを確認するモナ!」
 俺は叫ぶ。

「では、ここは私が見張っていよう」
 リナーはそう言って扉を閉めた。
 これで、証拠隠滅は不可能だ。
 まさか、リナーが犯人なんて事はないだろうし… 多分。
 俺、局長、リル子、丸耳は食堂に向かって走り出した。

「確かに、食堂には全員いたモナ!?」
 俺は走りながら言った。
「宿泊客は全員いたでしょうが… このペンションの従業員までは確認していませんねぇ」
 局長が告げる。
「従業員…?」
 俺は局長に視線をやった。
「ペンション備え付けの施設が、いくつかあるそうです。教会とか、BARとか…」
 リル子が答えた。
 なんでペンションにそんなものがあるんだ…?

681:2004/06/24(木) 22:10


 俺達は食堂になだれこんだ。
「大変モナ!! オーナーが殺されてるモナ!!」
 それを聞いて、ギコ、モララー、レモナ、キバヤシ、しぃ助教授、ねここ、そしてモナークが腰を上げた。
「お前はここにいろ、いいな!!」
 ギコはしぃに告げた。
「いよいよ事件発生って訳ね!!」
 どこか嬉しそうにレモナが口走る。
「(つーちゃん、ここに残るメンバーを見張っていてほしいモナ…)」
 俺は、こっそりとつーに耳打ちした。
「アッヒャー! マカセロ!」
 つーは右手を振り上げる。
 人数を増やした俺達は、再びオーナーの部屋に向かった。


「私が見張っている間、ここには誰も来なかった」
 リナーは言った。
 俺は、こっそりとドアに唾でくっつけた髪の毛に目をやる。
 ドアが開けば、この髪の毛が落ちる仕組みだ。
 別にリナーを疑っていた訳ではないが、念の為だ。
 いつの間にこんなものをくっつけたとか、そもそもモナーに髪の毛があるのかとか言ってはいけない。
 とにかく、髪の毛はちゃんとくっついていた。
 つまり、中は殺害時そのままに保たれている。

 俺は、中に踏み込んだ。
 次に局長が続く。
 後ろの連中は人数が多いので、列になってドアをくぐっていった。

 うつ伏せに倒れている曙は、完全に息絶えていた。
 頭に大きな傷がある。
 凹んでいると言っても良い。
 明らかに、これが致命傷だろう。

 よし、ここは『アウト・オブ・エデン』で過去のヴィジョンを…
 その瞬間、俺の目からモクモクと煙が出てきた。
 しまった! オーバーヒートだ!!
 これでは、あと1週間は『アウト・オブ・エデン』を使えない!
 もう他人の心も視えないぞッ!!
 何て御都合主義なんだッ!!

「窓の鍵が閉まってるな…」
 混乱する俺を尻目に、ギコは窓付近を確認して言った。
「私達が最初にここへ来た時、入り口の鍵も閉まっていましたよね…」
 丸耳が呟く。
「…ええ。確かにかかっていましたよ」
 局長は頷いた。

「密室殺人って訳ね! 面白くなってきたわぁ!」
 レモナは不謹慎な事を言った。
 まあギコもキバヤシも、どう見ても探偵気分な訳だが。

 机の上には、半分ほど水の入ったグラスが置かれている。
 風呂上りに、冷やした水を飲んだのだろう。
 まさか、毒じゃないよな…
 俺は、曙の死体に視線をやった。
 しかし、どう見ても撲殺だ。

 ノートが閉じた状態で机の上に投げ出されていた。
 もしや、これに何か秘密が…
 俺はノートを開いた。
 『春はあけぼの』で始まる文章が続いている。
 どうやら、何の変哲も無い日記のようだ。

 『ぬるぽ』と書かれた掛け軸が下がっている。
 まさか、これのせいで頭を殴られたのか…?
 掛け軸の後ろを確かめてみたが、別に秘密の通路も何もない。

 他には、花瓶に入った花。妙な形の壷。
 何かトリックが…
 調べてみたが、ごく普通。
 怪しいと思えば全てが怪しい。
 そもそも、これはそういう類のトリックなのか?

「呼吸音は… 聞こえませんね。呼吸はしていません」
 局長はそう言ってかがみこむと、耳を畳につけた。
「心音も聞こえませんね…」
 そして懐から拳銃を取り出すと、曙に向けて発砲した。
 弾丸が背中に当たり、一筋の血が流れ出す。
「どうやら、完全に死んでいるようですね…
 『死んだように見せかけて、実は生きてました』なんてトリックは却下です」
 そう言って、局長は曙の死体に歩み寄る。
「こうなっちゃうと、私のスタンドでもどうしようもないですね…」
 ねここはため息をついた。

682:2004/06/24(木) 22:11

「外傷は頭と… ちょっと、そっち持って下さい」
 局長は俺に言った。
 うつ伏せに倒れている曙を、仰向けにしようと言うのだ。
「いいのか? 勝手に動かしても…」
 モナークが訊ねる。
「私がOKを出します。問題ありませんよ」
 局長は言った。

「よっと…」
 俺と曙は、その巨体を引っくり返す。
 そして彼の死に顔を見た瞬間、俺は吐き気に見舞われた。
 周囲の人間も、思わず息を呑んでいる。
 それもそのはず、彼の体はところどころが切り取られているのだ。
 片目、両耳…
 そして、腹にも大きな傷がある。
 おそらく、内臓も…

「これは、思った以上の猟奇殺人モナね…」
 俺は、口元を押さえて呟いた。
「随分と綺麗に抉り取られてるな。まるで、鋭利な刃物で切り取ったみたいだ…」
 ギコが、切り口を観察する。
「…しぃを連れて来なくて良かったぜ」

「キャトルミューティレーション…!!」
 キバヤシが、思い詰めた顔で呟いた。
「それは何モナ?」
 俺は訊ねる。

 キバヤシは、まるで探偵のように全員を見回した。
「…キャトルミューティレーションとは、1970年代にアメリカで相次いだ牛の虐殺事件の事なんだよ。
 その特徴は、鋭いメスのようなもので内臓や眼球などが抉り取られている事。
 その報告は全米各地で1万件を越えていて、個人の悪戯などではありえない。
 一説では、これは宇宙人による生体実験だと言われているんだよ!!」

「な、なんだって――!!」
 俺は叫んだ。
 そして、曙の亡骸に視線をやる。
 確かに、キバヤシが告げた特長と酷似しているのだ。

「宇宙人による生体実験か… そもそもこの島にはUFOの秘密基地があると言う噂があります。
 この奇妙な符合、少し引っかかりますねぇ…」
 局長は、曙の亡骸の横にかがみこんで言った。
「馬鹿な事を言わないで下さい。これは、れっきとした人間による犯行です。
 全くの偶然か、もしくはキャトルミューティレーションを模しただけとも考えられます」
 リル子はため息をついて言った。

「見立て殺人か…!」
 モララーが呟く。
「何ですか、それ」
 ねここは、首を傾げてモララーに視線をやった。

「童謡とか俳句になぞらえて、死体を装飾したりする殺人だ。犯罪用語ではなく、推理小説用語だな…」
 答えたのは、モララーではなくモナークだった。
「例えば、アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』という小説では、
 『10人のインディアンが食事に出かけた。1人が喉を詰まらせて9人になった。
  9人のインディアンが夜遅くまで起きていた。1人が寝過ごして8人になった。
  8人のインディアンがデヴァンを旅してた。1人が残ると言い出して7人になった。
  7人のインディアンが薪を割っていた。1人が自分をかち割って6人になった。
  6人のインディアンが蜂の巣いじって遊んでた。蜂が1人を刺し殺し5人になった。
  5人のインディアンが法律学んでた。大法院に1人が残り4人になった。
  4人のインディアンが海に出かけた。燻製ニシンに1人が呑まれ3人になった。
  3人のインディアンが動物園を歩いてた。熊が1人を抱きしめ2人になった。
  2人のインディアンが日向に座った。1人が焼けて1人になった。
  1人のインディアンが残された。彼は首を吊り、そして誰もいなくなった』
 というマザーグースの歌が最初に提示される。
 そして、登場人物が歌と同じ死因で殺されていくという話だ」

「で、最後はどうなるモナか?」
 俺はモナークに訊ねた。
「生きて帰れたら… 答えを教えてやる!」
 モナークはそう言って背を向ける。

「見立て殺人…! 犯人は、キャトルミューティレーションに見立てて殺人を…」
 丸耳は呟いた。
「まだ断定はできませんよ。さらなる事件が起きない限りはね…」
 今まで黙って周囲を調べていたしぃ助教授が、首を振る。

683:2004/06/24(木) 22:12

「まあ殺人である以上、私達ではどうしようもないですね。ここは警察を呼ぶのが賢明でしょう」
 局長は全員に告げた。
「いや、アンタが警察モナ!!」
 俺はすかさず突っ込む。
「管轄が違いますよ。あくまで私達は、公安五課ですから…」
 そう言いつつ、局長は腰を上げた。
「ちなみに、死因は頭を殴られた事でしょうね。耳や目を切り取ったのは、出血量からして死後でしょう。
 そして、今から1時間以内の犯行です。6時40分に上院議員と会ったんですから、まあ当然なんですが。
 …これ以上は鑑識待ちですね」

「とは言え、このままにしてはおけんな… いつ発見されるか分からん」
 モナークは曙の亡骸の足を掴んでずるずると引き摺ると、押入れの中に詰め込んだ。
 職業病みたいなものだろう。

 俺達はぞろぞろとオーナーの部屋を出ると、電話があるロビーに向かった。
 局長は、ロビーの電話の受話器を手に取る。
「おや…?」
 受話器に耳を当て、局長は呟いた。

「どうした?」
 ギコが訊ねる。
 局長はギコに視線をやって言った。
「何の音も聞こえない… 電話線が切られたようですね」

「な、何だって!!」
 俺は思わず叫んだ。
「まあ、ここは文明の利器という事で。そう容易く推理小説のようには行きませんよ」
 局長は携帯電話を取り出した。
 そして、それを耳に当てる。
「…繋がらない。どういう事でしょうね。圏外でもあるまいし…」

「何かあったんじゃないのか…?」
 ギコはロビーのTVをつけた。
 ちょうどニュースをやっているようだ。
 アナウンサーが口を開く。
『繰り返します。裏弐茶県を震源とした地震が発生し、電話局が壊滅。
 さらにアンテナに雷が落ち、もう携帯電話は使えません。
 そして大火事が発生し、港は壊滅状態。
 とどめに自衛隊が出動し県内の重要拠点を攻撃、復旧は最低でも1週間以上はかかる見込みです…』

「地震雷火事オヤジ、全部揃っちまったな…」
 ギコは呟いた。
 さらにアナウンサーは続ける。
『また大規模な電波障害、空間歪曲が発生しています。
 これにより高速飛行での脱出や、スタンド能力での移動はいっさい不可能となっております』

「もう、意地でもこの島から出さないつもりモナね…」
 俺はため息をついて言った。
 まあ、予想は出来ていたことだ。

「仕方ありませんね。食堂に戻って、これからについて話し合いましょう」
 しぃ助教授の提案に、異論を挟む者はいなかった。
 俺達は、食堂に向かった。


「…という訳です」
 局長は、説明を終えた。
「…」
 しぃが絶句しているが、無理もない。
 俺はハンバーガーの包みを開けると、口に放り込んだ。

「例によって、この中に犯人がいると思われます」
 リル子は当然のように言った。
「…いや、最初は外部の人間による犯行を疑って、その後に内部に疑いを向けない?
 こういう場合のセオリーとしては…」
 モララーは口を挟む。

「そのものが鈍器になるくらい分厚い推理小説と比べないで下さい。
 各人の感情の変化や心情の機微までいちいち書いてたら、行数がいくらあっても足りません」
 リル子は、感情を害したように言った。

684:2004/06/24(木) 22:13

「…もしかして、お前の中の人じゃないのか?」
 ギコは、俺に視線を送る。
「モナの中の人は、番外には顔を出すタイプじゃないと思うけど…」
 完全には否定しきれない。
 中の人なら、もっと綺麗にバラせるような気もするが。

 キバヤシが黙っているのが不気味だ。
 キバヤシスパイラルは炸裂しないのか…
 と言うか、キバヤシが犯人だったら何でも出来るんじゃないか?
 犯人でなかったとしても、犯人当てなど容易いはず…

「俺の能力は、御都合主義なんで使えないんだよ!!」
 キバヤシは突然言った。
 そういうのが逆に御都合主義だと思うが…

「そもそも、スタンド使いが大多数なのに推理モノをやろうなんて時点で無茶なんだよ!!」
 キバヤシは立ち上がって大声を上げる。
 さっきから、地の文を読むな!!

 だが… 確かにスタンド能力を使えば、大抵の犯行は可能となる。
 『アナザー・ワールド・エキストラ』の瞬間移動を使えば、密室殺人など意味がないに等しい。
 『アルカディア』なんて何でもありだ。
 そもそも、スタンド能力が判明していない奴まで混じっているのである。

「現場には凶器は残されていませんが、パワー型のスタンドならば充分に可能です。
 位置関係を考えて、背後からぶん殴ってたと思われます」
 全員が黙るのを見計らって、リル子は告げる。

「まあ、他にもこのペンションには従業員がいるみたいですしね…」
 しぃ助教授はハンバーガーを頬張りながら言った。
 …そうだ。
 ペンション内に、教会やBARといった施設があると聞いている。
 BARはともかく、教会か… やだなぁ。
 そして、俺達をこの島に呼んだMr.Zとやらも無関係とは思えない。
 俺は5個目のハンバーガーを口に放り込むと、大きくため息をついた。
 こうして、悪夢の7日間は幕を開けたのである…

            __,,,,,,
       ,.-'''"-─ `ー,--─'''''''''''i-、,,
    ,.-,/        /::::::::::::::::::::::!,,  \
   (  ,'          i:::::::::::::::::::::;ノ ヽ-、,,/''ー'''"7
  /└────────┬┐:}     ``ー''"
. <   To Be Continued... | |::::i
  \┌────────┴┘/ヽ、-─-、,,-'''ヽ
       \_/     ヽ--く   _,,,..--┴-、 ヽ
※曙からのお願い        ``"      \>
 もし、犯人が分かっても… どうか、心に秘めておいて下さいね。
 もっとも、今の時点での特定は不可能ですが…

685:2004/06/24(木) 22:22
**お詫びと訂正**

曙が死んでいるにもかかわらず動いているシーンがありますが、
伏線でもなんでもなくただのミスです。申し訳ありません。

686N2:2004/06/25(金) 01:15

□『スタンド小説スレッド3ページ』作品紹介


◎完全番外編

.  ∧_,,,.
  (#゚;;-゚)
救い無き世界(完結)  (作者:ブック)
☆第二部
◇目的はただ一つ。愛する女を護るため。
降臨した『神』を、そして自身に宿る『悪魔』を抹殺すべく、でぃは最終決戦の地・東を目指す。
しかしその身体は着実に『デビルワールド』に支配されつつあった!
果たして彼はその身に渦巻く因縁を全て断ち切ることが出来るのか!?
ハイスピード連載で繰り広げられる壮大なストーリー、堂々の完結!!

 第六十二話・常闇 〜その一〜──>>3-7
 第六十三話・常闇 〜その二〜──>>11-14
 第六十四話・常闇 〜その三〜──>>32-35
 第六十五話・迷宮組曲 〜その一〜──>>43-45
 第六十六話・迷宮組曲 〜その二〜──>>46-48
 第六十七話・迷宮組曲 〜その三〜──>>49-53
 第六十八話・空高くフライ・ハイ! 〜その一〜──>>54-56
 第六十九話・空高くフライ・ハイ! 〜その二〜──>>57-59
 第七十話・空高くフライ・ハイ! 〜その三〜──>>70-74
 第七十一話・決死──>>75-77
 第七十二話・泥死合 〜その一〜──>>78-80
 第七十三話・泥死合 〜その二〜──>>86-89
 第七十四話・斗縛 〜その一〜──>>90-93
 第七十五話・斗縛 〜その二〜──>>94-99
 第七十六話・終結 〜その一〜──>>108-111
 第七十七話・終結 〜その二〜──>>112-116
 第七十八話・終結 〜その三〜──>>123-126
 最終話・祈り──>>127-133
 エピローグ・陽の当たる場所で──>>134-136

 人物紹介──>>366

687N2:2004/06/25(金) 01:16

               /!
          !\ ,-ー'-'、
  (\_/)  `ー/,ノノノハヽ
  ( ´∀`)   ./|iハ ゚ -゚ノ!
EVER BLUE  (作者:ブック)
☆序章
◇馬鹿が付くほどお人よしの青年オオミミと、彼のスタンド『ゼルダ』。
何でも屋のサカーナ商会に所属する彼らは
襲撃してきた空賊・『紅血の悪賊』(クリムゾンシャーク)の船内から謎の少女・天を救い出す。
だがその出会いから、彼らの運命は少しずつ大いなる流れへと巻き込まれてゆく…。
天空を駆ける船で繰り広げられる航空冒険ロマン!!

 第零話・VORTEX 〜始まりはいつも雨〜──>>148-151

 第一話・BOY MEETS GIRL 〜出会いはいつも雨〜──>>164-168
 第二話・ESCAPE 〜土砂降りの逃避行〜──>>180-186
 第三話・FATE REPEATER 〜黄泉還りし者〜 その一──>>194-201
 第四話・FATE REPEATER 〜黄泉還りし者〜 その二──>>217-220
 第五話・GUN=HALBERD 〜血塗れの鋼〜 その一──>>246-250
 第六話・GUN=HALBERD 〜血塗れの鋼〜 その二──>>251-254
 第七話・SMILE 〜貌(かお)〜──>>255-258
 第八話・RUMBLE FISH 〜疾風怒濤〜 その一──>>279-281
 第九話・RUMBLE FISH 〜疾風怒濤〜 その二──>>302-307
 第十話・NIGHT FENCER 〜夜刀(やと)〜──>>308-311
 第十一話・PUNISHER 〜裁きの十字架〜──>>322-326
 第十二話・FORCE FIELD 〜固有結界〜──>>327-330
 第十三話・BATTLE FORCE 〜力の矛先〜──>>337-340
 第十四話・WHO ARE YOU? 〜タカラギコ〜──>>341-348

 番外・されどもう戻れない場所 〜その一〜──>>349-352
                         〜その二〜──>>360-365

 第十五話・CLOUD 〜暗雲〜──>>388-390
 第十六話・TALK 〜探り合い〜──>>436-439
 第十七話・TROUBLE MAKER 〜歩く避雷針〜──>>447-449
 第十八話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その一──>>457-461
 第十九話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その二──>>462-466
 第二十話・BREAK 〜水入り〜──>>479-482
 第二十一話・ONE=WAY TRAFFIC 〜それでも進むしか〜──>>495-498
 第二十二話・REINCARNATION 〜生まれ還りし者〜 その一──>>499-501
 第二十三話・REINCARNATION 〜生まれ還りし者〜 その二──>>502-510
 第二十四話・BEFORE BATTLE 〜嵐の前の静けさ〜──>>517-522
 第二十五話・GUN&BLADE HIGH−TENSION 〜試し合い〜 その一──>>523-526
 第二十六話・GUN&BLADE HIGH−TENSION 〜試し合い〜 その二──>>527-530

 番外・ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜
    出会い編──>>531-533
    告白編──>>539-543

 第二十七話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その一──>>544-546

 番外
 ちびしぃの宿題の作文 〜私の家族について〜──>>547

 第二十八話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その二──>>553-555
 第二十九話・LUCK DROP 〜急転直下〜 その三──>>556-558
 第三十話・LUCK DROP ~急転直下〜 その四──>>580-583
 第三十一話・MIGHT 〜超力招来〜──>>602-606
 第三十二話・SIDEWINDER 〜魔弾〜──>>607-612
 第三十三話・MADMAX 〜悪鬼再臨〜──>>627-635

 人物紹介・おまけ──>>651-655

 ときめきEVER BLUE 〜伝説の樹の下で〜 交際編──>>656-660
                                  死闘編──>>661-664

688N2:2004/06/25(金) 01:16

    /´ ̄(†)ヽ
   ,゙-ノノノ)))))
   ノノ)ル,,゚ -゚ノi
モナーの愉快な冒険  (作者:さ)
◇ASAとの交戦、そして政府要人拉致・監禁。
フサギコ率いる自衛隊によって引き起こされた事態に、
モナー達は二手に分かれてASAと公安五課に協力することとなる。
だがその戦闘が激化した時、遂に『教会』が動き出した!!
三つ巴の壮絶なる大混戦が今、幕を開ける!!

 灰と生者と聖餐の夜・その6──>>8-10

 人物紹介・その3――>>15-21

 夜の終わり・その1──>>22-31
.          その2──>>60-67
.          その3──>>142-147
.          その4──>>187-193

 そして新たな夜・その1──>>259-268
           その2──>>293-301
           その3──>>312-315
           その4──>>331-336
           その5──>>354-359
           その6──>>367-374

 吹き荒れる死と十字架の夜・その1──>>375-379
                         その2──>>422-435
                         その3──>>440-446
                         その4──>>467-478
                         その5──>>511-516
                         その6──>>559-569
                         その7──>>577-579
                         その8──>>595-601

 番外・モナヤの空、キバヤシの夏(前編)──>>668-685

689N2:2004/06/25(金) 01:17

◎番外編(茂名王町内)

   ∩_∩    ∩_∩
  (´ー`)  ( ´∀`)
丸耳達のビート  (作者:丸餅)
☆丸耳達のビート Another One
◇マルミミの両親、二郎とシャマード。
アメリカ・ニューヨークでの二人の運命の出会いが
B・T・Bの記憶の中で鮮明に蘇る…。

 第一話──>>36-42
 第二話──>>100-107
 第三話──>>117-122
 第四話──>>169-179
 第五話──>>221-234

☆丸耳達のビート・本編
◇傷付き、弱った身体の中で徐々に抑えられなくなってゆく
マルミミに流れる『吸血鬼の血』。
理性と本能の葛藤の前に現れたしぃに、彼の取った行動は…。
そして、そのマルミミを狙う集団『ディス』が彼を得るべくその牙を剥く!!

 第12話──>>239-244
 第13話──>>282-291
 第14話──>>316-321
 第15話──>>380-387
 第16話──>>450-456
 第17話──>>534-538
 第18話──>>570-576
 第19話──>>587-594
 第20話──>>636-643
 第21話──>>644-650


   / ̄ ) ( ̄\
  (  ( ´∀`)  )
―巨耳モナーの奇妙な事件簿―  (作者:( (´∀` )  ) )
◇かつて自分を見捨て、一人『キャンパス』に下ったムックに
多大なる殺意を抱く『緑色の男』ことガチャピン。
恐るべき凶悪性を誇る彼のスタンド『ジミー・イート・ワールド』に
巨耳モナーは絶体絶命の危機に追い詰められてしまう…。
しかしその時、彼のスタンド『ジェノサイア』は新たなる次元へと到達する!!

 ディスプレイの奥に潜む恐怖──>>81-85
 『奪う力』と『与える力』──>>139-141
 『生まれし力』ジェノサイアact2──>>202-204
 『ピッチャーデニー』──>>483-494
 『トットリ・サキュー』──>>665-667


   ∧_∧
  (  ゚∀゚ )
合言葉はWe'll kill them!  (作者:アヒャ作者)
◇茂名王町内で実しやかに噂されている「吸血鬼殺人」。
しかしそれは紛れも無い真実であった!
偶然吸血鬼に遭遇してしまったアヒャは、脅威の運動能力を誇る吸血鬼達に
絶体絶命の危機に追い詰められてしまう!
死を覚悟したアヒャだったが、そんな彼の前に現れたのは…?

 初めての吸血鬼戦──>>236-238
 初めての吸血鬼戦その②──>>548-551

690N2:2004/06/25(金) 01:17

◎番外編(茂名王町外)

   ∩_∩
 G|___|   ∧∧   |;;::|∧::::...
  ( ・∀・)  (,,゚Д゚)   |:;;:|Д゚;):::::::...
逝きのいいギコ屋編  (作者:N2)
◇あのですね、女性が強いのはまあ良いと思うのですよ。
ですがね、その…今スレでのギコ屋編駄目じゃないかと思うのですよ。
だって、今回主人公目立ってないもん。リル子さんが主役みたいなんだもん。
そんな不条理が通るのもギコ屋編、嗚呼。

 リル子さんの奇妙な見合い その③──>>205-216
                    その④──>>391-420

 椎名先生の華麗なる教員生活 第3話 〜運命の出会い〜──>>613-626

◎本編(連載)

.      /
   、/
  /`
モナ本モ蔵編  (作者:N2)
◇『矢の男』の存在を知らされたひろゆき家臣団。
ひろゆきの勅令を受けた4人は『矢の男』抹殺に向け動き出すが、
彼らの間に生じた歪みは少しずつ拡大しつつあった…。

 2ちゃんねる運営委員会 ―始動― ──>>152-160


※敬称略


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