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新・戦場スレ Part1

1 ◆tb48vtZPvI:2016/05/07(土) 11:08:38 ID:MYeZc9GQ
ということで心機一転立てました

2 ◆tb48vtZPvI:2016/05/08(日) 13:30:39 ID:BEARmQQ.
 第一話 ファースト・バトルズ


 ノイズまみれの通信がコロニー「サイラス3」の通信室へ届いた。
「……こちら共和国国防軍第9遊撃部隊。帝国軍の一部隊と交戦し、ここまで撤退した。受け入れを要求する」
 サイラス3は前線へ戦力を供給する補給網の中継地点であり、帝国には未だ知られていない基地が存在している。本来ここに救援を求めることすら適切とはいえない。
 しかし敗残兵たちは既にサイラス3の防衛圏内に入っており、この通信を無視するという常套手段は不可能となっていた。
 当然遊撃部隊の指揮官もそれを理解しており、ワープ時にジャミング措置は必要以上に施していた。
 敵は撒いた。そのはずだった。

「……来ました来ました、来ましたよっと」
 ダミー隕石に偽装していた偵察装備サイクロプスのパイロットがじっと望遠カメラに目をやりながら呟く。自戦隊とオンラインにし、無線を入れた。
「負け犬が従兄弟の巣に入りました。周辺警戒は手薄。俺らだけでも行けますぜ」
 帝国軍も決して愚かではない。この付近の宙域に共和国の基地が存在することは予想がついており、監視の目は絶えず張り付かせていたのだ。
 国防軍を追い詰め、あえて逃し、基地に追いやる。その基地がサイラス3だったのは、帝国側の僥倖といえる。あるいは執念の勝利と言うべきか。
「……先行せず味方の到着を待て? はいはいわかりましたよっと」
 コクピットの中にすっかり辟易していた偵察兵の予想よりずっと早く、味方はやってきた。攻撃が開始された。

 間もなくコロニー駐在部隊と帝国軍部隊の交戦が始まった。
 国防軍は数で押すが、練度では帝国軍が上回る。次々と撃破されてゆくスチュパリデスMK-2。
 伸び切った防御網は安々と食い破られ、戦闘はコロニー内部へと移っていった……

3 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 19:45:32 ID:H3ynXwSI
「敵襲だと!? バカな、サイラス3の秘匿は完璧ではなかったのか!?」
回線越しに聞こえてくるのは、怒気を帯びた野太い男の声だった。
「どうも、敗走してきた部隊がヘマをやらかしたみたいですねぇ。情報戦の甲斐もなく、バレちゃったものかと」
モニターに大写しにされているのはガナルド・ドナール准将。近年国防軍の、引いては共和国全体の注目を集めている「フェアリー・フォース・プロジェクト」の統括責任者である。
恰幅のいい体格に白髪混じりの角刈り、色黒の髭面という風体は、およそプロジェクトの華やかさに似合うものとはいえず、多分に威圧的である。
「第5艦隊の無能どもめ…! これじゃ何のために辺鄙な民生コロニーでちまちまテストをしてきたのかわかりゃしない! 設備投資だけでいくら掛けたと思っとるんだ!」
そんな男の怒鳴り声にも眉ひとつ動かさず、ウェインライト・ウェーバー博士はほとんどモニターに背を向けるようにして、キーボードを叩き続けていた。
「ウェーバー! 今すぐシルキーを運び出せ! ワープ経路は手配してやる! あの小娘と貴様も、ぐずぐずしていないで脱出しろ!」
「無茶でしょ。帝国は港側から攻め込んできてるんですから。防衛ラインが持ちこたえてくれるのを信じて待つのが関の山かと」
「待つ? そんな僻地にすぐに救援は…」
「『オーダー』ですよ。さっき向こうから、加勢に来てくれるとの打診があったそうです」
『オーダー』。その名を耳にした途端、ドナールは目を剥いて、言葉に詰まるあまりにモゴモゴと口を動かした。
「き…貴様…! あんな連中を頼りにするなど…それでも誇り高き国防軍の科学者か!?」
「客観的に見て、我々だけじゃど〜やっても押し返せそうにないんですよ。市街地の方も荒らされ放題で、非常通路からコソコソ逃げるわけにもいかないみたいですし、ここは『正義の味方』の皆さんのご厚意に甘えましょうよ?」
深々と溜め息をつき、額を押さえて項垂れるドナール。
「何てことだ…これではますます騎士どもをつけ上がらせる結果に…!」
と、そんな彼を押し退けるようにして、モニターに横から別の人影が割り込んできた。
「市街地が襲われてるんですの?」
豊かな金髪をなびかせる、軍隊には不釣り合いともいえる妙齢の美少女だった。ドナールはぞんざいな扱いを受けたにも関わらず、恭しく自ら身を引いて、彼女にカメラの正面を開け渡す。
「そうなんですよ。どうやら民間のドックからも、何機かの機動兵器が忍び込んでるらしくて。退路を断とうって魂胆なんでしょうかねぇ」
「ふうん……」
人差し指を頬に沿えて、何やら思案し始める少女。ドナールは口を挟みこそしないが、気が気でないと言った様子でチラチラと彼女の顔色を伺っていた。
「シルキーは? 戦えて?」
「は…!?」
「まあ、機体の調整はほぼ万全ですし、有事に備えてツバサくんも搭乗させてます。でも、今現在彼女がどういう段階かは、お嬢様もご存知ですよね?」
「構わないわ、出撃準備をなさい」
「ちょちょ、ちょっ…ミレニアお嬢様、さすがにそのようなお考えは…!」
ドナールが狼狽のあまりに裏返った声を上げる。ミレニアと呼ばれた少女は目を細め、ふん、とそれを一笑に伏した。
「お節介なオーダー達には好きにさせてあげましょう。でも、今回のヒーローは決して彼らではないの」
「……! な…なるほど!」
わざとらしくポンと手を鳴らし、ドナールが頷いてみせる。
「戦禍の只中、逃げ惑う民の前に舞い降りる美しき妖精、フェアリー・フレーム……鮮烈なるデビューステージには、お誂え向きのシチュエーションでしょう?」
ウェーバーはそんな二人のやり取りを、丸眼鏡の位置を正しながら黙って見つめていた。
「…どうなっても知りませんよ、僕は」

4 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 21:14:00 ID:faAz5A6E
 交戦より少し前!

 林立するビル街を光とするならば、路地裏は闇の部分であろう。
 新興宗教カルト。反共和国セクト。マフィア。電子物理を問わぬ違法ドラッグバイヤー、あるいはただのゴロツキ。陽の光を嫌う者たちはいつもそこにいた。
 少々スケールに関して見劣りはするが、サイラス3も例外ではない。
「ちょっとよォ、お嬢ちゃん、オチャしない?」モヒカンタテガミの馬パンクスが言った。彼が一番大柄だった。
「俺たちこう見えてもさ、ナカモチ・クランのメンバーなんだよ。ワカル?」タンクトップの豹パンクスが言った。一番暴力的アトモスフィアを発散していた。
「いいからさァ、ちょっと直結しようよォ」人工ドレッドヘアパンクスが言った。彼はヒューマンだったが明らかな違法電子ドラッグのオーバードーズであった。
 3人のパンクスの勢いに少女は困惑の表情を浮かべている。落ち着いた色のロングヘアーは、いかにも荒事に慣れていない様子だ。彼女の胸は豊満であった。
「ねェ〜、だからさァ〜、いいお店知ってるよォ? 俺たち」馬パンクスが少女に詰め寄った。顔が近い!
「ちょっとだけでいいンだよ、ちょっとだけでさァ」豹パンクスの目は充血していた。ひょっとしたら食人嗜好でもあったかも知れない。
「直結しようよォ、お願いだよォ」人工ドレッドヘアパンクスが首の後ろから生やしたケーブルを振り回した。
 清楚ロングヘアー少女のなんかが危ない! その時!
「チョットスミマセン」3人のパンクスの背後から逆光を背負った陰が声をかけた。
「アァン?俺たちはこの子と友好関係を築きたいだけなンですけど」馬パンクスは意外なボキャブラリーを披露した。
「スッゾテメッコラー!」豹パンクスが牙を剥いて凄んだ。ヤクザスラングだ、コワイ!
「何アンタ? ひょっとしてアンタもこの子と直結したいの? …横取りは良くないよねェ」人工ドレッドヘアパンクスは威圧めいてケーブルの回転数を早めた。
 陰が路地裏へ入ってきた。ハンチング帽にトレンチコート。背は高くないが、声は渋い。
「その娘、あまりお前たちに好感を抱いてはいないようだ。これ以上はやめた方がいいのでは?」
「ザッケンナコラー!」
 豹パンクスが殴りかかった。彼は宇宙ボクシングのハイスクール選手権で6位、素人を容易に殴り殺す自信がある! 彼は拳を握り締めて肉迫し「イヤーッ!」
 鋭いシャウト! その場にいる誰もが反応出来なかった。次の瞬間、豹パンクスは地面に叩きつけられたまま、完全に失神していた。
「ア…ア?」「何? 何があったの?」
「次にこうなりたいのはどちらだ? あるいは二人共か?」ハンチング帽の下で青い瞳が二人のパンクスを射抜いた。パンクスたちはしめやかに失禁した。
「「ア、アイエエエエ…」」「さっさと友達を連れて帰るがいい」「「ヨ、ヨロコンデー!」」
 パンクスが撤退したのを見送り、彼は少女の方を見た。少女の背中は既に遠ざかっていた。彼は意に介さず、再び雑踏へと消えた。

5 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/09(月) 21:59:28 ID:H3ynXwSI
帝国軍・飢狼軍団の手によって、サイラス3の居住区は炎に包まれていた。
多くの建造物が倒壊し、ひび割れた路面には無惨にも力尽きた人々の亡骸が転がっている。
住民たちはコロニー内に4ヵ所存在する非常シェルターへと急ぎながらも、その多くは寸断された交通網に行く手を塞がれ、避難を完了した住民は未だ全体の20%にさえ達していなかった。
中でも、工業エリアに隣接する第4シェルター近辺は最悪の状況にあった。シェルターへの入口の一つが、避難を試みていた100名以上の住民達の目の前で破壊されたのである。
彼らは複数機のサイクロプスが繰り広げる破壊活動の中、散り散りに逃げ惑う恐慌状態にあった。
「逃げろ! 逃げるんだよ! 早く!!」
「おい、道を開けろよ!!」
「どこに逃げるっていうの! 最寄りの入口だって3kmも先なのよ!? 」
「もう駄目だぁ…おしまいだぁ…!」
そして、密集した人々の頭上高く、ビルの壁面へとヒートクロスボウの矢が深々と突き刺さった。
「ひぃっ!?」
降り注ぐ瓦礫から一瞬遅れて、衝撃で屋上に据え付けられていた大型の貯水タンクが脱落。無情にも一同を目掛けて落下を始める。
「…うわあああああーっ!?」
「ぎゃああああああああ!!」
巨大な影に覆われた、その誰もが死を確信した、その時であった。

「危なーいっ!!」

不意に横合いから飛び込んできた大きな『掌』が、タンクを思いきり払い除けた。
一瞬の後、タンクは数m離れた地面に激突、恐ろしい轟音と共に破裂し、大量の水を噴き上げていた。

「……なっ……?」
「あ、あれって…!?」
「あの時…あの時式典にいたロボットだ…!」
「フェ、フェアリー・フォースが来てくれたんだ!!」

絶望的なムードから一転し、人々の間で歓声が上がる。
「ま…間に合ったぁ……」
勢い余ってビルに突っ伏しているのは、桜色に彩られた水鳥の羽根のごとき装甲に身を包んだ、可憐な少女型の機動兵器。
近頃国防軍が大々的にお披露目したフラッグシップ部隊、フェアリー・フォースの所属機『シルキー』だった。
その華美ともいえる美しいフォルムと、高らかに唱われる最新鋭機としての卓越したスペック、そして何よりパイロットが民間人からの選抜メンバーを含む美少女達であることから、共和国内で物議を醸しつつも、大いに注目を集めていた。
「…み、みなさん! お怪我はありませんか!?」
スピーカーを通して呼び掛ける。人々の返答の声はコックピットまでは届かなかったが、足下の人々の元気そうな姿に、パイロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あちらの通りに、国防軍の方々が救助ビークルを用意してくださってます! みなさん、避難を急いでください!」
そして、シルキーは踵を返し、矢を放ったであろうサイクロプスを正面に捉えた。

間もなく、シルキーを取り巻く飢狼軍全機へと、共通回線を通じて映像通信が送られてきた。
「え…えぇっと……」
まるで決闘を所望するオーダーの戦士のごとき行いだが、そこに映っていたのは騎士でも何でもなく、艶やかな青緑色の長髪をポニーテールに纏めた、年端もいかない少女の姿だった。
「て……帝国の方々! そこまでにしてください!」
モニターの中の少女がビシッと正面を指差すポーズを取ると、シルキーも全く同時に同じ姿勢を取ってみせる。宣伝に違わない、きわめて高精度のモーショントレースシステムの賜物である。
「ここは、民間人のみなさんが平和に暮らしている場所です! こういう場所を攻撃することは、条約で禁じられてるはずなんです!」
眉を吊り上げ、険しい表情を作って必死に呼び掛ける少女だったが、垂れ目がちのつぶらな瞳とあどけない顔つき、可愛らしい声質と要領を得ない発言のために悲しいぐらい迫力がない。むしろ、飢狼たちの視線は別の場所に向かっただろう。
少女の服装は国防軍の一般的なパイロットスーツではなく、光沢のあるゴム質のハイレグレオタードのような特異なものだった。肩口から二の腕、太股から鼠径部にかけてが大胆に露出している。純白のスーツそのものもへそのラインが浮き出るほど身体にぴっちりとフィットし、顔立ちの幼さとは不釣り合いの肉感的なボディラインを顕にしていた。
加えて、目に留まる特徴は出で立ちだけではない。
「こ、ここから立ち去らずに攻撃を続けるのなら、この私が……国防軍特殊遊撃部隊フェアリー・フォース所属、シルキーのツバサ・ウィークリッドが、あなたたちを成敗しますっ!!」
彼女の耳は、横長の錘形をしていた。
それは美しい容姿共々、彼女が銀河系の希少種であり、ある分野において非常に高い価値を有する『セレニアン』である証左であった。

6 ◆tb48vtZPvI:2016/05/09(月) 22:36:31 ID:faAz5A6E
 戦場から遠く離れて、半壊したハイウェイに一つの影があった。
 ハンチング帽とトレンチコートを身につけた白ネズミ獣人だ。彼は戦火の地を見ていた。機械化なしの裸眼で、双眼鏡もなく。
 彼は懐の端末を取り出し、通信をオンにする。
「ドーモ、エミリー=サン。ジン・ミックです。常駐部隊から出撃許可が降りた。ユウセイ=サンとライオ=サンは? …そうか。では、個別に行動することとしよう。私は先行する」
 通信相手からの応答。
「そうだ。今私の手元には人型兵器はない。だが問題もない」
 ミックはコートを翻した。なんと……彼は一瞬にして蒼いイクサ装束をまとっていた!
 何故なら……ジン・ミックはニンジャ、シバラク・ニンジャの異名を持つニンジャだからだ!
 やがて背後から一台の大型バイクが走ってきた。流線型のボディに目に鮮やかな青と赤のペイントが施され、その上に意匠化された「天狗凄」の金エンブレムが輝く。シートは無人、オートジャイロだ。
「オミヤ・ファクトリー」謹製インテリジェント・アームドバイク「テングスゴイ」。
 そのスタイルは共和国国防軍制式バイクである「シュゲンザ」と共通シルエットを持っている。それも当然だ。「シュゲンザ」はこの「テングスゴイ」をコストカット&デチューンすることで作られた。
「イヤーッ!」シャウト一つ、ミックはテングスゴイに飛び乗り、今や不整路と化したハイウェイを疾走開始した。戦地へ向かって。

7 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/09(月) 23:45:52 ID:NpbI6GtI
遡ること一刻半


「おー、ようやく着いたなぁ」
宇宙港の発着場からスーツケースを片手に一人の男性が両手を上に伸ばし固まった身体を解しつつ独り言ちた。
生まれの惑星から民間船での長い長い移動が一度終わり、このコロニーから出る共和国本星へのシャトル便に乗るべく一度一泊し、明日この港から出る最初の便を目指していたが。
「宿に行くにはまだ早いなぁ…」
腕の時計を確認するとまだ予定のチェックイン時間には早く、然りとて観光するにはちと時間が足りない。そして、問題が一つ。
「腹、減ったなぁ」
ポンと掌を腹の虫が鳴る上に重ね、到着直前から御機嫌ナナメな様子で鳴り響くそれを落ち着かせると足を嗅覚が誘う方向へ進ませる。
「(さて、こういう場合は先ずは一当てといきたい所だが…)」
普段であれば適当な露天で買い食いをしつつ、腹の虫の御機嫌を伺いながらラーメンでも…と思っていたが…。
「(困ったな、土産の菓子ばかりで…いや、焦るんじゃない。私は腹が減っているだけなんだ。今、此処で小腹を満たしてもまだ後があるんだぞ…)」
どうやら、この通りは土産品が主な商品らしい。確かに、土産にするには良い商品が多いが、腹を満たすにはチト物足りないのだ。悪くは無いが腹にドスンと来ない。
「(ン?あの店…)」
足を奥に向け進んで行くと段々土産品を販売する店が少なくなり、八百屋や薬屋、本屋など生活に関わりが多い店が段々と増えてきた。やがて、一軒の精肉店にたどり着く。
「(この店…手前は精肉店だけど、裏側は食事処になっているのか…面白いな…良し、此処にしてみよう)」
店の裏側に回り、入口の扉を開き店内に入る。扉を開くとカランコロンと扉に付いている鈴が鳴り響き、店員さんがパタパタと足音を鳴らし奥からやって来た。どうやら、一段落した時間帯なのか客は自分しか見当たらない。「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ!」ニコニコと愛想の良い女性のスタッフが声をかけてくれた。お言葉に甘えてカウンターの右端へと座る、同時におしぼりとコップに入った冷えた麦茶をテーブルの上に置いてくれた。メニューを手に取り、もう片手にコップを持ち麦茶を一口…
「(うん?麦茶と少し違うな…)」
口にした味わいの違いに僅かに眉を寄せると先ほどのスタッフさんが笑顔で教えてくれた。「此方はとうきびを使ったお茶です!」…聞いた話によると時期限定で提供しているそうな。
「(とうきび茶、そういうものもあるのか!)」
麦茶とはまた違う香ばしい風味に舌鼓を打ちつつメニューに視線を走らせる。しょうが焼き定食、ロースカツ定食も悪くは無いが、此処は丼ものの定番で腹を満たそう。
「すみません、カツ丼を大盛りで。」
そして、片手を上げてスタッフさんに声をかけて注文をすると、気を使って暇潰しにスイッチを入れてくれたテレビをぼうっと見始めた。

8 ◆tb48vtZPvI:2016/05/11(水) 01:49:47 ID:afgechQo
»5
「むっ!」
「むっ!」
「むっ!」
「レオタードいいねェ…」
モニタに映し出された美少女の姿に、サイクロプス飢狼兵がにわかにいきり立った。オンラインになっていた隊長格が呆れた声で叱責する。
「私語は慎め!」
「でも隊長…あんなハクいスケ、色街のオイランでもちょっと見かけませんぜ」
「あの耳、どうやらセレニアンらしい。美女揃いで知られた種族だ。尤も数が減りすぎて銀河中で保護対象だがな」
「何その都合良さげな生き物。闇に売り飛ばしゃアいい値が付きそうだな」
「自分専用のオイランにしちまうのもよさそうだ」
「そいつはいいな!」
「だから戦闘中に発情しとる場合か貴様ら!」
「じゃあよォ、さっさとあのお嬢ちゃんを捕まえちまえばいいんだろォ?」
「グッドアイディアだぜ!」
「そうだ。戦闘後の貴様らまでは軍規も縛らん」
「隊長はどうなの?」
「浮気がバレれば妻に殺されかねんのでな」
「うわぁ、結婚怖い!」
「世知辛いねェ」
「無駄口を叩くな。さっさとやれ!」
 フォーメーションを組んで四機編隊サイクロプスがシルキーに襲いかかった!

9 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/11(水) 21:12:06 ID:4Fkn0jKY
(は、博士ぇ…仰られた通りにしましたけど、これからどうすれば…)
ツバサは声を殺して、ほとんど涙声で基地に控えるウェーバーに指示を仰ぐ。
人一倍プレッシャーに弱い自分が、ぶっつけ本番でここまでの段取りを行えたこと自体奇跡のように思えた。
それはひとえに、目の前で民間人が貯水タンクに潰されそうになる事故が発生したおかげかもしれない。
出撃を命じられて以降震え続けていた身体が弾かれるように動き、それを機に嘘のように震えが収まった。あとは名乗りを上げる所まで勢いで行えてしまった。
が、やはりいざ敵から注目を浴びてしまうと、ぶり返すように恐怖が込み上げてくる。
「大したもんだよツバサくん。これで奴らの注意は君へと集中した。あのサイクロプスは重装甲格闘戦仕様のDタイプだ。F装備の機動性を活かして逃げ回れば捕まりはしないよ」
(に、逃げればいいんですね! わかりました!)
「そうそう、君はオーダーが来るまで粘るだけで…って、ん…?」
ウェーバーはモニターしている各種の数値をざっと一瞥し、眉をひそめた。
「ツバサくん、まさかとは思うが、映像付きで通信をしていないかね?」
「えっ…? あ、あっ!?」
思いがけない過失に気が付き、通信モードを切り替えようとT-スキンのネックユニットに手を伸ばすツバサ。
「あのっ、どうすれば音声だけに切り替えられ…」
が、その行動はサイクロプスの急襲によって遮られてしまう。
「ひぁっ…!」
慌てて後方に跳びすさると、腰部に纏うスカートアーマーのスラスターが作動し、シルキーを素早く後退させる助けとなった。
DRESSシステム――パイロットの脳波と神経電気によって制御され、本体と高度に連携するオプション兵装。中でもF(フェンサー)装備を纏ったシルキーは、モーショントレースシステムによる鋭敏な反応と併せ、高い機動力と柔軟な動作性を発揮することができる。
もっとも、これらのシステムには致命的な弱点も存在するのだが……
「通信モードを切り替えてるような余裕はないね。適度に応戦したまえ」
「そんなぁ……」
結果的に自分の姿を敵機に中継しながら戦う事態となってしまい、多少T-スキンの露出度の高さに馴れたツバサであっても羞恥心が込み上げてくる。
しかし、今はウェーバーの言うとおり、形振り構っていられるような状況ではなかった。
「……と、とにかく、牽制しなきゃ! レーザー・ダガー!」
腰部両サイドに2本ずつマウントされた短剣の柄を、指の股に挟むようにして計4本抜き放つシルキー。美しいグリーンのビーム刃が発振する。
「行って下さいっ!」
ツバサが舞うように全身を躍動させると、シルキーは同様に水平回転しつつ、左右の手から続けざまにダガーを投擲する。
4本のダガーは風に乗るや、突如内蔵されたスラスターによって三次元的に曲がりくねる複雑な軌道を見せ、サイクロプスらを撹乱するように襲いかかる!

10 ◆tb48vtZPvI:2016/05/12(木) 23:17:52 ID:tzwpC37.
>>9
シルキーのダガー投射モーションを見てサイクロプス4機はただちに散開した。
ここまでは正しい。反応も悪く無い。だがダガーの軌道変化までは読みきれず、2本が右側の1機に突き立った。
「グワーッ!」
「ファッキン、やられた!」
「チクショウ!」
「余所見するんじゃねえ、撃ちまくれ!」
急所直撃により爆発四散する僚機を尻目に、サイクロプス残り3機はシルキーへハンドガンとグレネードによる攻撃を行った。

11 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/13(金) 00:32:35 ID:./Vjc0sw
>>10
「や、やった…!?」
爆散するサイクロプスを目の当たりにし、驚嘆するツバサ。
予想を超える敵機とシルキーの性能差にある種の安堵を覚えるが、数の上ではあちらの優勢は変わっておらず、手放しに喜ぶことはできない。
「囲まれないように。それだけは注意して動きたまえ」
「はいっ!」
攻撃マニューバを終えて返ってきたダガーを腰部にマウントし、シルキーは敵弾をかわしながら、背にしていたビルの奥へと回り込む。
「建物の持ち主さんには、申し訳ないけど…!」
そのままビルを盾にして射撃をやり過ごしつつ、ツバサはT-スキンのグローブに設けられた感圧コンソールを操作する。
シルキーの左前腕部に折り畳まれていたレーザー・クロスボウユニットが展開される。見た目は弩のそれを模しているが、実態は連写速度に優れたレーザーガンである。
そして、高精度の射撃管制システムにより、建物の逆側にいる敵の一機にマーカーを設定する。
「…せーのっ!」
敵の斉射が止んだ瞬間を見計らい、シルキーはビルの影から半身を乗り出し、クロスボウを連射した。
狙いを付けずとも、瞬時にFCSが射角を補正し、敵機を捉えるはずである。

12 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 00:53:38 ID:rX7lnsXM
>>11
柔軟で軽快な機動に、サイクロプスらは一瞬シルキーを見失った。
「そこへ行った!?」
「イディオットめ! ビルの陰に隠れたんだよ!」
「グレネードで炙り出せ!」
一機がグレネードを投じようとする。そこへ飛来するレーザーの矢の雨。慌てて躱すが、レーザーの一本が手元のグレネードを貫いた。
KABOOM! 爆発が巻き起こり、サイクロプスは右腕を大破、頭部にも無視できないダメージを食らう。
「グワーッ!」
僚機の大ダメージに気づいたサイクロプスが大破機体へ駆け寄った。レーザー射界外へ大破機体を引きずりつつ、ハンドガンでシルキーへ牽制を行う。

13 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/13(金) 19:19:32 ID:./Vjc0sw
>>12
「よし…これなら、シミュレーション通りに…!」
再びビルの影へと身を潜めるシルキー。
再度4本のレーザー・ダガーを抜き放ち、遮蔽物の向こうでひと固まりになった敵郡に狙いを定める。
「お願いします! エリアル・ダガー!」
そして、ビルを背にしたまま前方、虚空に向かってダガーを投げ放つ。
ダガーはスラスターによって瞬時に反転し、高速で舞い飛びながら、自動追尾によって三機のサイクロプスを切り刻みに向かう。

14 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 21:10:58 ID:rX7lnsXM
>>13
「こりゃダメだ」「えっ」「えっ」
高速飛来ダガーを見て一機は大破機体とそれを引きずる僚機を見捨てる選択をした。それは実際正解だった。ダガーの自動追尾プログラムが、行動の制限されている機体に狙いを定めたためである。
SLASHSLASHSLASH!!「「グワーッ!!」」ダガーが致命部位にヒットしサイクロプス二機は爆発四散!

更に追撃をしかけんと踏み出したシルキーの前へ新たなサイクロプス部隊が割り込んだ。
映像付き通信がシルキーのスクリーンへ強制表示される。
大写しにされたそれは見るも醜怪な生物である。
その名はガバノイド、かつて惑星セレニアを侵略し、以降長きに渡って美しきセレニアンを文字通り蹂躙し続けた忌まわしき知性体だ!
性質は獰猛にして邪悪、共和国の急進的人権派が彼らの人権保護に動いたこともあったが、結果は彼らがケバブにされた事実で十分理解できよう。
「フーンク! フーンク!」
鼻息も荒く唸りを上げるガバノイド。彼らは蛮種そのものの見た目に反して高い知性を有していた。
「お、おら、たたかいすきだ。けど、セレニアンのメスはもっとすきだ」
小さい目に明らかな好色の光を宿して告げる。「セレニアンはエサによしオイランによしっていうだ」

15 ◆tb48vtZPvI:2016/05/13(金) 21:13:31 ID:rX7lnsXM
訂正

性質は獰猛にして邪悪。共和国の急進的人権派がガバノイドの人権保護に動いたこともあったが、結果は人権派の出向者がケバブにされた事実で十分理解できよう。

16 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/14(土) 04:56:52 ID:epdkmxiE
>>14
「あとは最後の一機だけ…! これなら、勝てる!」
「こらこら、ツバサ君! 積極的な攻撃はなるべく控えたまえ…!」
「やっつけてしまえば、これ以上街を壊されなくて済むかもしれません! やらせてください!」
シルキーは残存する敵機目掛けて駆け出しながら、腰に帯びたレーザー・レイピアを抜刀。一目散に突撃していく。
が、その時だった。
「!?」
レーダーに感の無かったサイクロプスの部隊が、突如として両機の胃と割り込むように現れた。
「伏兵だ! さすがは『飢狼』、噂に聞こえる通りのお手並みだね……ツバサ君、囲まれると危険だ。後退して立て直したまえ!」
さすがのウェーバーも焦りを隠せず、やや声を張り上げ気味に指示する。
しかし、ツバサからは応答が得られない。
「……ツバサ君? どうした、応答したまえ!」
「……あ……」
足を止めたシルキーの機体は、カクカクと小刻みに震えていた。
ホロスクリーンに映された敵パイロットの姿を見た途端、ツバサは心臓が跳ね上がるような衝撃と、それまで感じたこともないような、得体の知れない嫌悪感を覚えた。
(なに……? なんなの、この人……!?)
先程までの攻勢はどこへやら、シルキーは内股に立ちすくみ、震える両手でどうにかレイピアを構えたような状態となる。
T-スキンに包まれた豊満な肢体に冷や汗が伝う。その様子も、怯えに凍りついた表情も、映像通信が筒抜け状態の今は全て見られている。見られてしまっている――。
そう考えると、ツバサの胸中にぞわぞわと未知の感情が沸き上がってくる。その正体は遺伝子に刻まれた冥い被征服感であり、支配者への屈服と嘆願の衝動であった。
そして、ガバノイドのサイクロプスが一歩、シルキーへ向けて踏み込んでくる。
「……っぁ …う、うあああぁーーっ!!」
気がつけば、ツバサは自分でも信じられないような行動を取っていた。自ら突撃し、レーザー・レイピアを大降りに振るう。
それはセレニアンの本能による咄嗟の防衛行動に他ならなかったが、結果として圧倒的パワーを誇るサイクロプスに対して正面から突撃するという愚行を犯すこととなった。

17 ◆tb48vtZPvI:2016/05/14(土) 09:52:17 ID:BE0qhMBY

>>16
サイクロプスのコクピットの中でガバノイドはほくそ笑んだ。歴史が示すように、セレニアンの遺伝子には本能的にガバノイドへの憎悪と恐怖が刻まれている。極端な攻撃行動に出るのはその裏返しだ。彼が知る中で、それを克服できたセレニアンはいない。
「ほれ!」
ガバノイドサイクロプスは飢狼隊の装備であるスラストハンマーのギミックを使わなかった。大振りなフックを止めるショートジャブめいて、ただハンマーを突き入れたのだ。それだけでシルキーの斬撃が止まる!
「あんまりかたさはねえみてえだなぁ!」
サイクロプスは後退。もちろんこれは誘いだ。普通ならつられはしないだろう。しかし…ツバサは今冷静さを欠いている!

18 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/16(月) 21:47:32 ID:IoAeNcy6
明日には返レスできると思います。
流れを止めてしまって申し訳ありませんが、もうしばしお待ちを……

19 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/17(火) 23:57:04 ID:.NhJpepQ
>>17
「あ、ぐぅっ…!?」
飛び掛かった所へカウンターでハンマーを腹部に突き込まれ、シルキーは空中で機体をくの時に曲げられて制止した。
ツバサの体を包むT-スキンの同一箇所にビシッ! と電流が走る。
「っひ……!」
搭乗者にダメージ情報を伝えるためのフィードバックシステムだった。
一瞬ビクッと身を震わせながらも、この程度の刺激であれば訓練でも体験済みであり、我慢できないレベルではなかった。
「うっ……く、あぁぁぁぁーっ!!」
ツバサは落着と同時に膝のバネを使い、さらにサイクロプスへと突撃していく。
「ツバサ君、何をしてるんだ! ツバサ君!?」
後退するサイクロプスへと真正面から追いすがり、レーザー・レイピアを突き出すシルキー。またしても、いや、先の一撃以上に不用意な大振りの攻撃だった。

20 ◆tb48vtZPvI:2016/05/18(水) 00:17:01 ID:EyfBIRR2
>>19
案の定、ガバノイドはレイピアを悠々と躱してのけた。
「いまだがや!」
発光信号で僚機に合図を出す。待機していたサイクロプス隊はボウガンを構え、この時とばかりにシルキーへ向け連射した。

21 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/18(水) 01:40:41 ID:i9MpSCHw
>>20
「!?」
襲い来るボウガンの矢の一本が、前のめりに体勢を崩したシルキーの右膝関節へと突き刺さった。
「あ゛ぁぁぁぁぁッ!?」
膝に走る猛烈なダメージ電流に声を上げるツバサ。シルキーは前方に投げ出され、倒れ伏す。
と、同時にモニターの中で、ツバサの脚を包んでいたニーブーツの生地が、じゅびじゅび! と音を立てながらストローで空気を吹き込まれたように膨らみ、たちまち弾ぜた。
正確には「飛び散った」という方が近かった。ぶちゅっ! という異音と共に、スーツが白い液体となって吹き飛んだ結果、倒れ伏したツバサのニーブーツには溶けたように穴が空き、膝小僧の肌が露になっている。
「う、あ……ぇっ……!?」
激感で正気に引き戻されたツバサは、弱々しい声を絞り出した。
右からも、左からも、ビルの谷間からボウガンの一斉射を終えたサイクロプスが迫ってくる。
「……そ、そんな……やだ、囲まれ……っ!?」
体を起こそうとしても、膝に矢を受けてしまったためにままならない。
「い、いや! いや…ッ!」
怯えの色も明らかな、身動ぎするような仕草と共に、前方のサイクロプスへとクロスボウを構えるシルキー。しかし、照準を付ける猶予は与えてもらえそうになかった。

22 ◆tb48vtZPvI:2016/05/18(水) 02:32:14 ID:EyfBIRR2
>>21
ツバサは囲んで棒で殴る類の暴行を想像した。しかしサイクロプスたちはそうしなかった。
「スパイダーネットだ!」
多目的ランチャーから発射される小型弾から、電磁ネットが弾け出る! 絡め取られるシルキー!
「セレニアンのヒトガタにゃあこれがいっちばんきくっちゅうはなしだ」
電撃がシルキーを、そしてツバサを襲った。
「やっただ! やっただ! フホホホホホ!!」
作戦的中の喜びに歓喜の笑いを上げるガバノイド。しばし笑ってから、ふと冷静になった。
「……おら、もうがまんできねえだ。さ、いいこだからおらのオイランさなるだ……!」
ガバノイドサイクロプスがその手をシルキーのコクピットに伸ばす…!

23 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/18(水) 03:11:23 ID:i9MpSCHw
「ひゃあッ!?」
想像していたのとは全く違う衝撃。シルキーはサイクロプス達から次々にネットを浴びせかけられ、仰向けに地面に縫い止められてしまった
「なッ……何、これッ……網……!?」
「ツバサ君、まずいぞ! それはスパイダーネットだ! 早急に離脱しないと……!」
が、その時であった。
ビビビビビビビビビビッ!!
「あ……あ゛はぁああああぁぁぁッ!?」
四方八方からの高圧電流がネットを走り抜け、シルキーを一瞬にして電撃地獄へと引きずり込む。
「はあ゛ぁぁぁぁッ!! ……ッ!! うぁッはぁあはひッ、ひッ!? ひぃィィィィィィッ!?」
全身を突き抜けるダメージ電流の嵐に、ツバサは翻弄されるがまま身をくねらせ、逃れようとするが、固く何重にも及ぶネットの戒めは到底解けるものではなく、両膝を曲げて腰を浮かせたブリッジのような体勢から身動きできなくなってしまう。
「フェアリー・フレームにとって高圧電流は天敵だ! 早く接続をセーフモードに! 万が一スキンが帯電したら……」
「やぁッ!! やぁッ!? やらッ!? これいやぁぁぁッ!! やめてくだひゃい!! やめてくだッ……」
パリッ……パヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!
「ひッ……? あッひぃぃぃィィインッッ!?」
ツバサの体を更なる激感が襲った。
首筋から背中に伝い、股下を通っているT-スキンの紐状のフレームが、青白い電光を伴いながら激しく振動しだした。
「あッぁッやッゃッやッ!? やぁッ!? ゃひぃぃぃィィィィィィィィィィ〜ッ!?」
想像を絶する激感に襲われ、ツバサがガクンと背を反り返らせると、シルキーは生々しくその挙動をトレースした。
「こッ、らッ、らにこれッ!? ひィンッ!! ひィンッ!? ひィンッ!? あッひぃぃぃぃィィィィン!?」
「言わんこっちゃない、帯電現象だ! ツバサ君、今から言うとおりに対処するんだ! まずネックユニットの……」
「ひゃらっ!? とめてッ!! とまってえぇ゛!!」
辛うじて動く右手から、ツバサは思わずレイピアをかなぐり捨てると、Y字に分岐して鼠径部を回り込み、尾てい骨の上へと走るフレームを掴み、体から引き剥がそうと力任せに引っ張ってしまう。が、それは紐状のフレームをかえって肉体に食い込ませ、責め苦をより激烈なものにするだけだった。
ヂヂヂヂヂィィッ!
「い゛ィィイィィィ゛イン!? ンはぁひィンああぁああぁぃひィひィィィィ〜〜ッ!?」
フレームの間に張り巡らされた白色のスーツにも異変が生じ始めた。肌にピッタリと吸い付いていた生地のあちこちが、空気を入れられたかのように不規則に変形・膨張し、じゅびびびびび! と不快な音を立てて泡立ち、沸騰し始める。
じゅびびびじゅびびびび……ぶちゃあっ!!
「あひゃぁ゛ぁッ!?」
胸元を覆っていたスーツの一部が完全にゲルへと還元され、勢いよく弾け飛んだ。該当箇所に耐えがたい激感を走らせると共に、その飛沫がツバサの顔に勢いよく叩きつけられる。
「ィやぁ゛ンッ!? あづッ、あ、あ゛ッ!? ひッ!? ひぃあぁぁあぁぁぁぁぁッ!?」
同様の現象が、一気に全身に伝播していく。所構わずT-スキンが沸騰、破断、ゲル化し、猛烈な刺激を伴って弾ける。その度に体の芯に食い込んだフレームの帯電と振動が弱まったり強まったりを不規則に繰り返し、ツバサに悪夢ような激感を与え続けた。
パヂヂヂ、ぐぢっ、パヂヂッ! ぐちゅっ、ぶちゃあっ! パチ、パチ、チ……ヂヂヂヂヂヂヂィッッぶぢゃあっ!
「ンゃあああ゛ぁぁぁ〜ッ!? ひゃィィンッ!? ひッ、ひッ、ひッ、ひ……ひひゃぁあ゛ぁあ゛ぁ〜〜ッッ!?」
全身をガクガクと痙攣させ、ブリッジ状態のまま悶絶するシルキー。モニターを通して中継されるツバサも、必然的に全く同じ醜態を晒し続ける。
スーツが粘液となって飛び散ると同時に、首輪からジェルが流れ落ち、破損箇所を補おうとする。だが、硬化に必要な時間を遥かに上回る速度でスーツが自壊し、注ぎ足されたジェル諸共に盛大に飛び散ってしまう。
「ここッ、こんらッ、こんらのッ、こんらのッ……!!」
ぶちゃっ! びぢゃっ! びゅぐっ!
「んひぃぃッ!? あひぃィィィィィィィィィィィィッ!!?」

24 ◆tb48vtZPvI:2016/05/18(水) 20:05:34 ID:EyfBIRR2
>>23
 スパイダーネットの内蔵バッテリーがようやく切れたようだ。シルキーは奇妙なダンスをやめ、糸の切れたマリオネットめいて地に横たわっている。
「へっ、なかなか悪くねえ腕だったぜ、お嬢ちゃん」
「だがここまでだったな。次はパイロットよりオイランになりな」
「そだそだ! オイランがいちばんええだ!」
 サイクロプスがネットを剥がしにかかった。
 …全知全能たるクロノ神よ! 今一人の少女が哀れにも悪党の手にかかろうとしている! その汚れた魔手は市民へ向くだろう。 
 光景を見ていた全員が絶望しかけた、まさにその時!

「WASSHOI!!」

 一台のバイクが戦闘区域にエントリー! 時速666kmの色付きの風と見えたのは、赤青の大型軍用バイクだ!
 疾走しつつバイクの両ランチャーからミサイル射出! 「ぐえーっ!」全弾被弾したガバノイド苦悶!
「な、何だコイツは!?」敵機は各々機銃射撃を行うがバイクは見事なスラローム蛇行機動で尽く回避!
「これはどうだ!」BOWBOWBOW! 今度はミサイルが襲いかかる!「イヤーッ!」ライダーはシャウトと共に右手を翻した。スリケン連続投擲によるミサイル迎撃だ!
 KABOOM!! 余さず撃ち落とされたミサイルの爆発が束の間バイクの姿を覆い隠す。
 煙が晴れた…バイクは無傷! シートは無人だ。ではライダーはどこへ?
「イヤーッ!」ライダーは…ジン・ミックは空中にいる! バイクの速度を加算しての大跳躍だ!
 ジン・ミックは左腕を手近な一機に向けた。左腕ギミックガントレットのスリットからフックロープが射出、敵機の肩部装甲上部に鉤爪がかかった。巻き戻し機構が作動し、一気にジン・ミックは距離を詰める!
「イヤーッ!」ミックのニンジャシャウト! 肉迫の勢いを借りて…右ストレートが敵機の頭部を打つ!
「グワーッ!?」パイロットは悲鳴を上げた。瞬時に信じられないことが二つ起こったからだ。一つ目は機動兵器に乗った状態でナチュラルに殴りかかられたこと。二つ目は…その衝撃がコクピットまで及んだことだ!

 ギミックガントレットは本来装甲擲弾兵の標準兵装として、パワードスーツやアームスーツに立ち向かうべく作られている。しかし大型機動兵器への攻撃は全く想定されていない。歩兵の火器では大型機動兵器の装甲には太刀打ち出来ない。
 言語化されずとも軍事を少しでも知る者には暗黙の了解であった前提だ。それが、覆された。

 無論、ジン・ミックとて分厚い正面を貫くことは骨の折れる仕事だ。機動兵器の頭部は精密機器の塊に近い。そこをブルズアイめいて突撃することで、敵機にダメージを与え得たのである。
 これでサイクロプスのCPUや各種センサにノイズが生じるのは何度も実践済み。だが致命ダメージには程遠い。
 ミックは懐から一掴みの金属凶器を取り出した。非人道兵器マキビシの発展型ニンジャテックアームズ、マキビシ・マインだ! 彼は頭部と胴部の接続部…ケーブルが剥き出しに近い状態で晒された頸部周囲にマキビシ・マインをニンジャ素早さで配置し、即座に離脱した。
 KRATTOOOOOOOM!! サイクロプスの頭部が罪人のカイシャクめいて宙を飛んだ。頭部を失った機体は前方へ傾ぎ、アスファルトに倒れ伏した。

「ゴウランガ……ゴウランガ!」帝国兵の一人が悲鳴めいて叫びを上げた。「俺は詳しいんだ…俺のじいさんはエイジア生まれでな、エイジア人にはそいつを生む遺伝子を必ず持っているっていう」
 彼らは過ぎし宇宙戦国時代、各地のウォーロードやサムライと共に銀河を暴れ回った。最早神話に近い時代である。時は流れ、いつしか彼らは歴史の闇に姿を消していた。それでもなお、数少ない人々は彼らの存在を伝えていた。
「奴は…ニンジャだ!!」

 ジン・ミックはシートに着地を決め、敵手に向けて両手を胸の前で合わせて決断的にオジギした。ニンジャのイクサにはアイサツが必要だ。「コジキ・バイブル」にも書いてある。
「ドーモ、シバラク・ニンジャです。愛を知らぬ哀しき帝国兵よ、コズミック・オーダーの名を畏れぬならば……来い!」合掌を解き、ニンジャは挑発的に手招きした。

25エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/18(水) 20:48:22 ID:ZB/0ggCI
>>23-24
「ミック少佐!!」
援軍としてサイラス3に到着し、愛機“スノウローズ”と共にその地を踏む。
だけど宣言通り、ミック少佐が先に到着していたようだ。
しかもバイク一つで…
市民の救助活動ならまだしも、戦ってるし…
とは言え…

「遅かった…」
ひどい状況だ…
既にあのフェアリーフォースの機体…名前はシルキーだったっけ…既にボロボロだ。
しかもあのパイロット…セレニアンか…帝国軍に辱められている…許せない…!!

「女の敵!このエミリー・ホワイト!コズミックオーダー、白薔薇の騎士が直々に成敗してくれる!」
私は愛機“スノウローズ”の拡声器を使いながら叫ぶ。
白薔薇の騎士は私の呼び名だ。
戦場で戦ってるうち、いつの間にかコズミックオーダーを支持する市民や同じ騎士仲間は私の事をそう呼ぶようになった。
気に入ってるから、私もそう名乗るんだけどね。
そして私の機体、スノウローズは白を基調とした二足歩行の人型兵器だが、白馬の機体に跨っている。

26 ◆tb48vtZPvI:2016/05/20(金) 00:38:36 ID:r.RQbXlQ
ミックとエミリーの名乗り上げはサイラス3のネットワーク上を超音速で駆け巡った。まだ生きていた街頭プロジェクターを見上げて市民が呟く。
「『コズミック・オーダー』…ですって…!?」
「もう解体されたとばかり思ってたけど…」
そう…コズミック・オーダーはかつては銀河の正義の象徴として悪を挫き善を敷いていた。しかし帝国との激戦の末、中核となる騎士たちをごっそりと失ったのだ。
未だにそのダメージは癒えず、後遺症を引きずった状態だ。軍上層部や元老の一部が口にする「やはりハリコ・タイガーなのでは?」という声もむべなるかな。

「ザッケンナコラー…何ぬかしてやがるこのネズミ野郎!」
「騎士団? 騎士団だと? そんなものはハリコ・タイガーに決まってるぜ!」
「文字通りのラット・イナ・バッグだ、コジキ・バイブルにも書いてあるコトワザだ!」
「ぐぬぬぬぬぬぬうううううう、おらのオイランをワヤにしやがっでええええええええ!!」
いきり立つ帝国兵の怒声が拡声モード外部スピーカーで響き渡る!
それらを聞き流しながら、ミックが騎士団独自回線でエミリーに語りかけた。
「エミリー=サン、思ったより早かったな。まぁ私は見ての通りだ。臨機応変に行こう」ミックが陣容を撹乱・寸断し、エミリーが各個撃破する。訓練でもよくやった基礎戦術の提案だ。バイクによる派手な乱入は、自身に敵の目を集中させるためでもある。
そしてコズミック・オーダー健在なりという盛大なる狼煙にして鬨の声でもある。

「立てるか、そこのパイロットの娘よ」
ミックはシルキーのパイロットへ強制割り込み通信を入れた。倒れたサイクロプスのアックスの刃によってスパイダーネットが切り裂かれている。偶然か、それとも狙ってのことか……
「正直に言って手が足りぬのだ。オヌシが戦ってくれるならば、大分楽になる…いや、立てぬというのならばそれもよし。いくらでも屠り尽くすのみ」
冷徹な声で蒼いニンジャは告げた。

27 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/23(月) 20:20:36 ID:NA8BeE6c
>>26
「はひっ…っぇあ…ひっ……っ……?」
ビクビクと断続的に痙攣を繰り返していたシルキーだったが、ツバサはミックの呼び掛けを耳にしたことで、ようやく拘束と電流から解放されたことに気が付いたようだった。
(……この人達が、助けてくれたの…?)
攻撃の余波で頭がぼーっとしており、問いかけられた言葉の内容を理解するのに更に数秒を要しそうだったが、ウェーバーの通信がそれをフォローする。
「ツバサ君、どうやらそちらにいるのが救援を打診してくれたオーダーのお二人のようだ。いやはや、間一髪だったね」
「はっ…えっ!?」
慌てて跳ね起きるツバサ。全身各所で液化破断したスーツがねとねと糸を引いて垂れ落ち、気持ちが悪かったが、それを気にしている場合ではなかった。
「あっ、えと…ひ、膝に矢を受けてしまって動けないのですが、援護程度のことでしたらできると思います…させていただきます!」
緊張した面持ちと声でそう答える。
まだレーザー・クロスボウとダガーが使用できることは間違いなかった。

28エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/23(月) 21:16:12 ID:zXBjvDc6
>>26-27
「了解です。それでは、ミック少佐の動きに合わせ、私は…いえ…私達はサイクロプスの各個撃破に…!!」
私に送られた独自無線はミック少佐からだ。
流石だ…バイクで派手に現れた事で、敵の目はミック少佐に集中している。
そして、私が“私達”と言い直した理由…

「良く耐えたね!それに、反撃に出る勇気…流石はフェアリーフォースのパイロットだね!
私はエミリー…エミリー・ホワイト。名前を聞かせて!」
あれ程の辱めを受けたんだ。
並のパイロットなら、耐えられない筈。
それにあのコは、民間人から選抜されたパイロットだった筈…
今は未だ、パイロットとしては未熟かもしれないけど…あのコは未だ延びる気がする!

29 ◆tb48vtZPvI:2016/05/23(月) 21:25:03 ID:33ecvf26
>>27
ミックはシルキーをじっと見たのち、すぐ前方に視線を据えた。
「ならば十分だ」
ゴウン! 獣めいたエンジンの唸りを残し、テングスゴイを疾走させた。

「踏み潰してやらァ!」
アスファルトを踏みしだいて接近するサイクロプス! 100t近い質量が迫る!
「イヤーッ!」スリケン投射!サイクロプスのカメラアイにヒット!「グワーッ!」命中率低下!
その間にヘッドライトによる全共和国圏共通の発光信号で「イ・マ・ダ」のサインを行う。エミリーのみならず、ツバサへの指示も含まれている。

30 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/23(月) 23:44:46 ID:NA8BeE6c
>>28
「わ、私は…ツバサ・ウィークリッドです! よろしくお願いします、ホワイト様!」
まさか騎士と直々に話をする機会が訪れるなど、数ヵ月前までは夢にも思っていなかった。国防軍の熱烈なシンパでもない限り、コズミック・オーダーへの憧憬は、共和国の民ならば等しく持っている感情である。

>>29
テングスゴイのスリケンがサイクロプスの単眼に突き刺さり、大きく体勢を崩される。
すかさず発せられたライトによる信号を、ツバサは直感的に攻撃を促す合図だと悟った。
「い、今ならっ!」
レーザー・クロスボウを構え、無防備になった胴体、動力部へ向けて光の矢を連射する!

31 ◆tb48vtZPvI:2016/05/24(火) 03:38:59 ID:5oQeRxKc
>>31
「グワーッ!」
光の矢がエンジン貫通! サイクロプス爆発四散!
「あの小娘の機体、まだ生きていやがった!」
一機のサイクロプスの視線がシルキーへ向く。その脚部の間をすり抜けながら、マキビシ・マインを踝部関節部に放り込んだ。
BABABABABAAAAAANNNG!! ギアの一つに亀裂が入り、関節に異常発生!「何ッ!?」動きに停滞が生じる! テングスゴイは離脱!

32 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/24(火) 22:29:55 ID:lQUKu6Ow

爆音、轟く悲鳴、此処は地獄の一丁目。白薔薇の騎士と忍者、手負いの妖精は鋼鉄の餓狼達と相対するが人々を護るためには手は足りず、吹き上げる炎は街を飲み込み、罪もない人々の命を奪っていく。込み上げる怒りは己が身を焦がし、既に肉体は走り出していた。
「確か……此方に吹き飛ばされていた筈…あった!」
目的は先程頭部を破壊された一つ目の巨人、サブカメラが生きていれば問題は無いが…あった。地面に倒れて沈黙し、コックピットは既に無人、パイロットは脱出済み。なれば、後は実行に移すのみ。
「よぉし…コイツ、動くぞ。」
コックピットに乗り込みコンソールを叩き、強制起動。カメラをサブに切り替えるとノイズ混じりではあるがモニターに周囲の映像が映しだされた。次いでに武装も確認、どうやら弾数は残っており自衛くらいは問題は無さそうである。操作用のレバーを握り締め、一呼吸。
「さて……どう生き残るか。」
実戦は初ではないが、現状は芳しくない。機体をゆっくりと動かし、その場に立ち上がらせる。ズシンと身体に衝撃が走り、改めて鋼鉄の巨人を動かしたのだと実感する。故郷に居た時は仲間達と野盗や害獣相手に大立回りしたが、今は居ない。焦らず、気負わず、冷静に状況を把握しなければ死あるのみ。再度、一呼吸。そして、心の内から湧き出る怒りが燃料となり、身体を暖めてくれる。倒れた拍子で手放していたハンマーを右手で掴み拾い上げ、両手で構えると軽く振り回し具合を確認する…良し。
「フンッ!」
近くの市民の避難経路の邪魔になっていた瓦礫をハンマーをゴルフのドライバーを振るう要領でフルスイング。轟音と共に瓦礫は吹き飛び、吹き飛んだ瓦礫は遠く離れていたサイクロプスの頭部を直撃。
「アーッ!!」
汚い悲鳴と共に撃沈し、行動不能にしたことを確認。幸か不幸か、少なくとも周囲には敵か味方かの識別にはなっただろうか。拡声器のスイッチを入れて、呼吸を整え呼び掛ける。
「市民の皆さん!此方から避難が出来ます、焦らず近くの誘導員の指示に従って避難してください。」
……どうやら、市民も落ち着きを取り戻して誘導に従い避難を継続している。自分に出来ることは、護るだけだ。

33エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/26(木) 19:49:41 ID:wi0SQWIM
>>29-30
「ミック少佐…流石だ…」
サイクロプスを相手にバイク一台で全く怯まない。
しかも、私は勿論…あのツバサってコにも伝わるサインを送っている。

「唸れ!ヒートランス!」
馬型の機体に載せたスノウローズはサイクロプスへ突進…槍型の武器を構えて…!
槍型の武器…このヒートランスでサイクロプスを貫いてみせる!

34 ◆tb48vtZPvI:2016/05/26(木) 21:41:27 ID:1nMDf7Kw
>>31>>33
よろめいたサイクロプスの脇腹へスノウローズのヒートランスが突き刺さる!
「グワーッ!」爆発四散! スノウローズは突進の勢いもそのままに駆け去る!
「ぐぬぬぬぬぬぬうううううう!!」呻くガバノイド!
「瞬く間に2機食われちまったぞ、なんて奴らだ」
「3機だ。伏兵もいたらしいぜ」
「何がハリコ・タイガーだ! マジモンじゃねえか!」
サイクロプス部隊が怯懦に襲われた。その時、彼らのコクピットに撤退指示通信。渡りに船とばかりに一目散に逃げ帰る。
「オラさっさと帰るぞ」「おらのオイランがあああ…」駄々っ子めいて僚機に引きずられるサイクロプス。
破壊の痕跡を残し、帝国軍は撤退した。

35エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/27(金) 20:30:15 ID:/IPkSxB2
>>34
「敵機、撤退しました。
あのサイクロプスは飢狼軍のモノですね…
敵があの程度で助かりましたが、もし“剣滅”が現れていたら…
一応、ユウセイ特務三尉に機体データを送信しておきますね。
ですが戦いの記録は…」
私はミック少佐に通信を送りつつ、今回戦ったサイクロプスのデータをユウセイに送信する。
だけど戦闘記録は送れない。
ツバサってコは帝国軍に辱めを受けているからね…
同じ女性として、これを送信する事は出来ない。
そしてあのサイクロプスは機体からして飢狼軍のモノだ…
飢狼軍…あそこの主…名前は確か、ソルサクスだっけ…
その拳で幾多の騎士の剣を受け止め、“剣滅”と称されたと聞く…
しかも剣滅は各地の戦場に現れては兵器全てを破壊するって話だ。
もしココに現れていたら、私達が駆け付けても…

「ところで、サイラス3の市民達は…」
共和国の補給基地が帝国にばれた以上、
もう一度来ない筈が無い。
移住する必要があるかも…

「ミック少佐…ユウセイの解析によれば、サイラス3にはフェアリー・フォースプロジェクトが進んでいたと聞きます。責任者が居る筈です。
移住の為の護衛、私達と共に行うようにコンタクトを…」
移住の為には護衛が当然必要だ。
市民達を護るのは私達コズミックオーダーの使命…
それにフェアリー・フォース…あのツバサってコには興味がある。
だけど、フェアリー・フォースプロジェクトが私達に協力してくれるか…

「念の為、私達が到着する前の記録…ユウセイが解析しております。使えるかどうかは解りませんが…」
ユウセイに解析させた記録…
撤退して来た共和国軍がサイクロプスを連れて来た記録もバッチリ完了している。
これは共和国軍が帝国に補給基地をバラした証拠だ。

36 ◆tb48vtZPvI:2016/05/28(土) 00:15:16 ID:lVgiPw92
>>35
ミックはエミリーからのデータを確認しながら答えた。
「データの件は了解した。これはユウセイ=サンには少々刺激が強すぎるだろう」
意図的に編集された箇所については、冗談めかして言った。

「住民の護送については考えている。実際FFPの責任者とは知らぬ仲ではないから、君が送ってくれたデータを使うまでもないだろう。ともあれエミリー=サン、オツカレサマだ」
エミリーを労いながら、ミックは次に打つべき手を思案した。…FFP責任者であるガナルド・ドナール准将は騎士団に出向経験があり、ミックと彼は顔見知りであった。到底友人と呼べる仲ではないが、話くらいなら聞いてくれるだろう。久闊を叙しにゆくのも悪くはなさそうだった。

37 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/28(土) 12:26:59 ID:OX76yAqI
>>35
>>36
「あー、もしもし?」
唐突に、オーダーの2機に対して通信が入った。
「いやあ、不甲斐ない国防軍が毎度お世話になってます。僕はその傘下でFFPの技術主任を務めております、ウェインライト・ウェーバーです。以後お見知り置きを」
モニターに映ったのは、細面の端整な顔に野暮ったい丸眼鏡をかけた長髪の男だった。自己紹介の通り、科学者らしく白衣を身に付けている。
「今上層部に指示を仰いでるんですけどね、指揮系統がだいぶ混乱してるみたいで、皆さんの処遇の決定についてはもうちょっと時間がかかるんじゃないかなーと思います。
助けていただいた所へ何のおもてなしもできなくて申し訳ないけど、その機体…シルキーは早々にこっちで回収するよう命令があったので、今回収用の車両を向かわせてるところです。
僕としてはここに皆さんを迎え入れて、自慢のコーヒーでも振る舞いたいとこなんですけどねぇ。もうしばらくすれば基地にお迎えできると思うんで、その場で待機しててくださいな」
人を食ったような態度で、よく喋る男だった。
間もなくシルキーを回収するための輸送車両が到着し、ツバサは急かされるまま、片足を引いて荷台にシルキーを積載させた。
「あの……!」
ツバサからの通信だった。
「騎士の皆様と一緒に戦えたこと、私、とっても光栄に思います。今日は本当にありがとうございました!」
深々とお辞儀をする姿を最後に、通信は終了し、輸送車両は基地へと繋がる搬入口へと消えていった。

同じ頃、遥か遠くの基地衛星「オービタル・ハイヴ」では、ガナルド・ドナール准将が戦闘の記録データと報告書を、憤慨も露に睨んでいた。
「セレニアンの小娘が、なんてザマだ! 初陣がこれではフェアリー・フォースの商品価値は大暴落だ! 所詮はオーダーの引き立て役と取られかねん!」
「ならば、早急なケアが必要でしょう?」
背後からの声にドナールが振り返ると、そこにはT-スキンに身を包んだ国防大臣令嬢ミレニアと、もう一人、ピンクに近い金髪のツインテールを揺らす小柄な少女が立っていた。
「お、お嬢様!? それにアニーシャまで、なぜパイロットスーツを……?」
「お嬢はね、もうとっくにサイラス行きのワープゲートを手配してたんだって。どっかのカリカリしてばっかりのヒゲおじさんと違って、ちゃーんと先が読めるんだよね♪」
顔をしかめ、言葉を詰まらせるドナールにミレニアが続ける。
「基地の情報が漏洩したことを鑑みれば、サイラス3は必ず再度の襲撃に晒されますわ。住民を最寄りの拠点に避難させるにせよ、防衛戦を張るにせよ、近いうちに戦闘が発生するのは明確ではなくて?」
自信満々と言った表情でミレニアが肩にかかった後ろ髪を払う。後ろではツインテールの少女、アニーシャが口許に手を当て、嘲るような顔でクスクスと笑っている。
扇情的なコスチュームと蠱惑的な仕草は世の大半の男性を魅了して余りあるものだったが、ドナールにとってはそんな感情に浸る余裕の無い状況だった。
「つまり、お嬢様直々に出撃なさると…!? お、お待ちください! 飢狼だの無限城だの、不貞の輩が侵攻してくることがわかっている以上、危険であります! お嬢様の身に万が一のことがあればお父上に示しが…」
「フェアリー・フォースの動向に関して、決定権を持つのは私よ、ドナール」
「ま、そこで書類とにらめっこしながら待っててよね。アニーたちが、ツバサちゃんが早速塗ってくれた泥を綺麗に注ぎ落としてあげるからさっ」
唖然とするドナールをよそに、二人は司令室を出ていった。
「……ったく、小娘どもが! 実戦を知らん分際で、どうなっても知らんぞ!」
デスクの傍らのゴミ箱に足で八つ当たりしながら、ドナールはワガママ放題の令嬢に振り回され、日々胃に穴が開きそうな自らの立場を心底呪った。
そして、漠然とオーダーによる手助けを期待している自分に気が付き、さらに嫌気が差した。

38エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/28(土) 18:31:35 ID:A3mY4rM.
>>37
「FFPの…貴方が…」
技術主任…あの人がメカニックか…
よく喋る男だ…

「エミリー・ホワイトです。
お会い出来て光栄です。ウェーバー博士。」
私はウェインライトを博士と呼び、自己紹介をする。
フェアリー・フォースには興味がある。
会えて光栄なのは確かだ。
だけど…

「回収ですか…ツバサちゃんとコンタクトを取りたかったのですが、仕方ないですね」
恐らくは初陣、あんな目に遭ったんだ…やはりパイロットのケアが必要か…
と思ったけど…

「ツバサちゃん!さっき私の事をホワイト様って呼んでたけど、私の事はエミリーで良いからね。」
私はツバサに通信を返す。
礼儀が出来ている。
それに、あれだけの辱めを受けて怯えている様子も無くモニター付で通信を送っている。

「そのまま待機か…」
基地に迎える為の準備か…
基地内は今後の対応に追われているのだろう…
仕方ない…私は機体の中に持ち込んでいた缶ビールを開け、それを飲みながら待つ事にした。

【エミリーは何故かモニター通信を切り忘れており、ジン=ミックにはエミリーがコクピット内でビールを飲んでるのが丸分かりである。】

【因みにミッション終了後の飲酒はエミリーの常習犯である】

39 ◆tb48vtZPvI:2016/05/28(土) 23:05:02 ID:lVgiPw92
>>37>>38
「ドーモ、ウェインライト・ウェーバー=サン。私はコズミック・オーダー所属騎士ジン・ミック少佐です」
ミックは丁寧にアイサツを返し、語を接いだ。
「ウェーバー=サン、コーヒータイムの前に責任者のガナルド・ドナール准将との接見を要求する。一刻を争う事態だと伝えてほしい」

『あの……! 騎士の皆様と一緒に戦えたこと、私、とっても光栄に思います。今日は本当にありがとうございました!』

少女の声が朗々と響く。名前はツバサ・ウィークリッド。エミリーからの情報で確認済みだ。搬入口へと消えるツバサの姿をミックは我知らず見送った。
「あの娘……いや、なんでもない。それより准将は……サイラスにはいない? 居場所は? ならばそちらへ向かおう。場所を教えていただけるかな、ウェーバー=サン?」
モニタリングされてなおコクピットの中で酒盛りを始めるエミリーのことは、この際無視することにした。

40 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/29(日) 22:57:36 ID:9NwGR7eM
撤退していくサイクロプス達を見送り、更に撤退するシルキーをノイズ混じりのモニターから見送り、ようやく闘いが終わったと感じ一人大きな息を吐く。見渡すと目に映る街の残骸に小さな土地と言えど領地を持つ身分としては溜め息しか出ず、頭を左右に振り気分を変えて自機のブースターを吹かし上空に飛び上がると騎士団の二人の近くまで移動し、二人の近辺に近付くと地面に着地しコックピットを開き、敵意が無いことを示すために両手を上げてコックピットから身を乗りだし口を開く。
「あー…すいません、コイツを返したいんですが…」

41 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/29(日) 23:06:49 ID:ZjDyiN7Q
>>38
>>39
「これはどうも、ご丁寧に」
ミックのアイサツの所作に合わせて、両手を合わせて会釈するウェーバー。
「お互い仲良くやってきましょう。敵さんがこれっきりで引き下がるわきゃないし、むしろここからが長丁場になりそうですからね」
彼の振る舞いだけを見れば、オーダーと国防軍の間にある軋轢など取るに足らないもののように思える。
が、こうした友好的なやり取りは、ウェーバーが国防軍の中でも一際の「変わり者」であるがゆえに成立しているものだった。
「ドナール准将ですかぁ。たぶん、基地への迎え入れが済み次第、嫌でもこの状況への釈明だか言い訳だかの通信が来ると思いますよ。
気を付けてくださいね。あの人深刻な騎士アレルギーなんで」

間もなく、基地司令部はミックとエミリーを基地内へと迎え入れた。
当然、そこには二人を次なる作戦に続投させようという魂胆があった。

42 ◆tb48vtZPvI:2016/05/30(月) 00:31:39 ID:31mQY98c
>>40>>41
青年の顔には、ミックのニンジャ記憶力を呼び起こすものがあった。先だって彼のデータを見ていたからだ。
「ドーモ、初めまして、ディラン・アルケイン=サン。コズミック・オーダーのジン・ミック少佐です。騎士命令だ、その機体から降りた後、我らと同行せよ。説明は追ってする。以上だ」
ミックの応答は手短にして直截である。何しろ時間も戦力も足りないのだ。「立っているものはオトノサマでも使え」とは、実際銀河戦国時代に流行したリベリオン・ハイクである。
普段、ミックはアディランの推挙は騎士であった彼の父が行い、現騎士団長セルゲイナス・バイル准将が許可の捺印をしたものだ。先代のアルケインと面識はないが、バイルが認めたならば多少の役には立つだろうとミックは踏んだ。

基地司令部に足を踏み入れるなり、ミックは先手を取ってアイサツをした。こういう場合、先にアイサツを仕掛けた方がイニシアチブの所有権を持つ。
「ドーモ、お久しぶりです、ガナルド・ドナール准将。ジン・ミック少佐、罷り越しました」

43 ◆tb48vtZPvI:2016/05/30(月) 00:40:36 ID:31mQY98c
修正
>>40
青年の顔には、ミックのニンジャ記憶力を呼び起こすものがあった。先だって彼のデータを見ていたからだ。
「ドーモ、初めまして、ディラン・アルケイン=サン。コズミック・オーダーのジン・ミック少佐です。騎士命令だ、その機体から降りた後、我らと同行せよ。説明は追ってする。以上だ」
ミックの応答は手短にして直截である。何しろ時間も戦力も足りないのだ。「立っているものはオトノサマでも使え」とは、実際銀河戦国時代に流行したリベリオン・ハイクである。
ディランの推挙は騎士であった彼の父が行い、現騎士団長セルゲイナス・バイル准将が許可の捺印をしたものだ。先代のアルケインと面識はないが、バイルが認めたならば多少の役には立つだろうとミックは踏んだ。

>>41
基地司令部に足を踏み入れるなり、ミックは先手を取ってアイサツをした。こういう場合、先にアイサツを仕掛けた方がイニシアチブの所有権を持つ。
「ドーモ、お久しぶりです、ガナルド・ドナール准将。ジン・ミック少佐、罷り越しました」

44エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/30(月) 19:14:25 ID:b28Hzdr2
>>40
「貴方は…?」
突如現れたサイクロプス…
敵意は無いようだ。
投降とは思えないし…
そもそも敵にも見えない。
と思ったが…
「ディラン…ディラン・アルケイン。
初めまして、エミリー・ホワイトです。」
思い出した…アルケイン家の田舎騎士か…
領地の民の信頼が厚く、反乱も無いと聞く。
信頼が厚いのは彼が優秀な騎士である証拠だ!

>>41
「ご協力、感謝いたします。」
ウェーバー博士…変わった男だ。
国防軍には騎士団を嫌う人が多いけど、この人は協力的に見える。
だけど…

「騎士アレルギー…ですか…」
やはり騎士嫌いは居るらしい。
しかも深刻と来たか…
まあ、私は国防軍から嫌な目で見られる事には慣れている。
私はただ、堂々とした態度で基地内へと入って行く。

45 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/30(月) 20:41:20 ID:Oaxp.eaY
>>43
モニターの向こう、遥かサイラス本星の衛星軌道上に存在するオービタル・ハイヴの司令室で、ドナールは口を大袈裟にへの字に曲げたまま、ミックのアイサツを故意に無視して見せた。
「基地施設の防衛はこの通り、我々国防軍の独力で完遂した。市街地ではフェアリー・フレームの早期投入による若干のトラブルはあったようだが、現地の基地司令からも、貴様らの到着は市街地防衛に戦力を回す手配が整った直後だったと報告がある。
つまりは貴様らの助力など全く必要なかった。貴様らオーダーは今回もいけしゃあしゃあと我々の勝ち戦に乗っかって、衆目をかっ浚っていったに過ぎないのだ。わかるな?」
ドナールはあからさまに苛立っていた。それは先の戦いにおける国防軍の失態、オーダーの活躍のみならず、このままもつれ込むであろう次なる戦いに対しても悩みの種を抱えていたからだ。
「サイラス3の避難民は一時的にこのオービタル・ハイヴに退避させることが決まった。間もなくワープ航行によって輸送艇と補充戦力がそちらに到着するだろう。
その筆頭はフェアリー・フォース隊長
ミレニア=ハウ=ファルネーズ・ド・ノルヴァ特務一尉だ。同部隊の隊員一名もいる。くれぐれも丁重に扱え」
横柄な態度に拍車をかけるがごとく、葉巻を取り出してくわえ、火をつけるドナール。しかし、その所作には威厳どころか、明らかな焦燥の色が滲み出ていた。
ミックほどのタツジンの目を持ってすれば、輸送艇はともかく、ミレニアの出向が彼の本意でないことは明らかだったろう。
「市街地防衛についてはとんだ無駄足だったようだが、わざわざご足労いただいたんだ。輸送艇のワープによる帰還準備が整うまで、サイラス3への帝国軍の再襲撃に備えていてもらう。
これは国防軍からの要請であり、戦闘が発生すれば正式な報酬の発生する仕事だ。しくじるんじゃあないぞ」

46 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/30(月) 21:20:29 ID:PyPcuA96
「ドーモ、ジン・ミック=サン。ディラン・アルケインです。ええと…エミリー・ホワイトさんか、宜しく頼みます。」
ディランは機体から降りて二人に簡潔な挨拶で応えると、基地の中へ進む二人の後を数歩離れた距離を保ちつつ追いかける。故郷では見慣れない基地の中を物珍しげにキョロキョロと視線をさ迷わせながらも二人からは離れる事はなく、基地の司令部に入るとモニターから映る男の言葉には僅かに顔をしかめるも黙って二人の言葉を待ち。

47 ◆tb48vtZPvI:2016/05/30(月) 21:45:16 ID:31mQY98c
>>45
ミックは直立不動姿勢とオメーンめいた無表情を貫きながら、欺瞞だらけのドナールの説明を聞いていた。
だったら何故都市部にまで侵攻してきた敵部隊への防衛が虎の子であるはずのFFPの新型一機だけだったのか、という根本的な疑問はニューロンに留め、こう返答した。
「ハッ、了解であります。閣下の御英断に甚だ感服いたしました」インギン・ブレイ! 意図せずスルリと出た言葉だが、今更訂正する気はなかった。
それにしてもノルヴァか! ノルヴァ家は共和国を牛耳るという大貴族の一つである。ミレニアなる特務一尉がフェアリー・フォースの隊長に就けたのも、ノルヴァ家の後押しがあったからに相違あるまい。
とするとドナールが組んでいる相手、FFPのスポンサーはノルヴァ家ということになる。有名無実の雇われ責任者。ドナールの立場が見えてきた。
不機嫌極まりないドナールの様子にも得心がいったが、だからといって同情する気には一切なれなかった。

48エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/30(月) 22:28:32 ID:b28Hzdr2
>>45
「これはこれは、失礼致しました…」
私達が到着したのは国防軍が戦力を回す直後と来たか…
言い訳は兎に角、苛立ちが剥き出している。
それより…

「ミレニア特務一尉…ですか…」
ノルヴァ家って言えば共和国の貴族で、かなりの権力を持っていたはずだ。
そのパイロットがフェアリー・フォースの隊長か…
そしてもう一人…どんなパイロットか…
にしても…

>>46
「ディラン。私達は騎士として、国防軍の基地内に居ます。私達と共にする以上、騎士らしき振る舞いを!キョロキョロしないで!」
田舎騎士め…
こう言った施設は彼の故郷には無いのだろう…
気持ちは解らないでも無い。
と言うか、私が言ってみた騎士らしい振る舞いって言うのも良く解らない。だけど、田舎者丸出しの行動は止めて欲しい。
私達までそう見られたく無いからね。

49 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/31(火) 01:29:39 ID:PXO8659Q
「はぁ……」
ツバサは緑茶の注がれた紙コップを手に、基地内の食堂でため息をついた。
服装は正常に修復されたT-スキンの上から、国防軍の制服のジャケットをつっかけたのみであり、それは彼女が再出撃を求められていることを意味していた。
現在、シルキーは損傷した膝関節の修復と電気系統の破損箇所の割り出しが急ぎ行われている。駆動部にパッケージ分割された人工筋肉を採用しているフェアリー・フレームは、その交換によって早急に修理が行える強みを持つが、神経接続の再テストの必要もあり、次なる作戦に開幕から参加することは難しいだろう。
それよりも……
「私、これからどうなるんでしょう……」
思わず独り言が口をついた。
実戦は想像以上に過酷であり、オーダーの救いの手が無ければどうなっていただろうと考えると、怖じ気づくなと言う方が無理であった。
自分の能力面についての不安はもちろん、あの緑色の皮膚をした怪物のような敵パイロットが何者だったのかも気がかりだった。何故あんなにも激しい恐怖心が込み上げてきたのだろう。
スパイダーネットを幾重にも浴びせられ、電撃責めを受けていた最中の仔細についてはほとんど記憶がない。何か未知の、途方もない激感に我を忘れてしまったことは覚えているのだが……
「ツバ〜サちゃんっ♪」
「ひゃあっ!?」
不意に後ろから誰かが肩に抱きついてきて、お茶をこぼしそうになる。突然のことで驚いたが、その鈴を転がしたような愛らしい声には聞き覚えがあった。
「あ、アニーシャさん!?」
「ふふ〜ん…」
にっこりと笑みを浮かべながら、頬擦りするようにツバサに顔を寄せる少女はアニーシャ・チェレンコフ。若干14歳にして、卓越した適性を見込まれてフェアリー・フォースに抜擢されたパイロットであり、ツバサにとって唯一の同期と言える存在だった。
「なんでここに…? ケット・シーはオービタル・ハイヴの模擬戦に出るはずじゃ……」
「そんなもの、とっくに延期の判断をさせていてよ」
振り返れば、そこにはフェアリー・フォースのリーダーたる国防大臣令嬢、ミレニアの姿までもがあった。
ツバサは思わずアニーシャを抱きつかせたまま立ち上がり、共和国式の敬礼の体勢を取った。
「ミレニアお嬢様、ご無沙汰しています…!」
「すでに作戦中よ。隊長とお呼びなさい」
「はっ、はい、隊長!」
ミレニアは腕組みをしたまま、敬礼に対してふん、と息一つで答えた。
「あの…お二人ともT-スキンに着替えているということは、次の戦いに出撃なさるんですか?」
「当然でしょう。こんな格好で観光に来たりなどすると思って?」
「で、でも、どうしてサイラス1や2じゃなくて、あんな遠くの基地から、それもまだ調整段階の私たちの隊が増援に…?」
「それはね〜、フェアリー・フォースの看板にぃ」
にこにこしながらツバサに抱きついていたアニーシャが腕にきゅっと力を込め、ツバサの耳元に唇を寄せる。
「誰かさんが早速塗ってくれた泥を、注ぎ落とすためだよっ」
ツバサがさっと青ざめる。アニーシャは笑みを浮かべたままだが、その表情は先程までとは打って変わった、嗜虐的な失笑の色を帯びていた。
「記録映像バッチリ見せてもらった、けどぉ、なにアレ? ネットの中でつぶれたカエルみたいになって、ヒィヒィ喘いじゃってさぁ」
「不様もいいところね、ツバサ・ウィークリッド。まさか記念すべき初陣であんな醜態を晒してくれるとは……」
「あの……あ、あの……」
言葉が出なかった。実際、自分でも途中からどうかしていたと思う。ウェーバーの指示を無視して恐慌状態に陥り、無謀な突撃をしたことには弁明の余地もない。
「フェアリー・フォースはこれからなんだからさぁ、ああいうのやめてほしいんだよねぇ?」
「次の戦いにあなたの出る幕は無いわ。せいぜいここで学習することね。戦場の妖精たるフラッグシップ部隊の、華麗なる戦いの何たるかを…」
ツバサはこの二人が苦手だった。決して嫌いとまでは思っていないが、自信が彼女たちから歓迎されていないことは重々理解していた。

50 ◆tb48vtZPvI:2016/05/31(火) 01:56:20 ID:Tr2UJzQY
>>49
「オヌシ達、随分と仲がいいようだな?」
ハンチングにトレンチコートスタイルのネズミ男が渋い声で言った。少し離れたところで合成トロスシ・レーションのパックを食べ終えた彼は、少女たちに近づき、両手を合わせてツバサにオジギする。
「改めてドーモ、はじめまして、ツバサ・ウィークリッド=サン。ジン・ミック少佐です。君にアイサツをしたかった。隣の女学生は? …君の同僚? フム、どこぞのアイドルかと見えたが」
アイサツを終えたミックは、ミレニアとアニーシャを一瞥して言った。

51エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/05/31(火) 05:59:50 ID:ip3i9esc
>>49
「はじめましてツバサちゃん。
私がエミリーよ。」
あのコがツバサか…
私はあのコに対して笑顔で挨拶する。

「エミリー・ホワイトです。」
そしてあの二人にも軽く挨拶をする…会話からして、あれがフェアリー・フォースのパイロットか。
だけど…

>>50
「ミック少佐、少々席を外します。」
私はミック少佐に挨拶をして食堂を出る。
そして…

「何よアイツ等!!」
私は食堂から出るなり、壁に拳を当てる。
フェアリー・フォースは少数精鋭と聞いている。
少数精鋭は連携が必須の筈。
三人しか居ないチームであの仲の悪さ。
国防軍の新しいチームが聞いて呆れる。
しかも、初陣で…しかも単騎で前線を買って出たツバサにあの態度…!
私はあの二人が気に入らない!!

52 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/31(火) 18:31:26 ID:PXO8659Q
>>50
>>51
「やーん! ネズミさんが喋ってるー! かっわい〜!」
ツバサの首もとから離れるや、年齢の割に丸みを帯びた豊満な胸の前で両手の指を組み、キラキラと目を輝かせてみせるアニーシャ。トッポジー星人の人口対比率は確かに低いものの、そのネズミのような姿については一般に認知され、今さらそんなオーバーにリアクションするものでもないはずなのだが。
「はじめまして! フェアリー・フォースのアニーシャ・チェレンコフ、14歳ですっ! アニーって呼んでくれると嬉しいなっ♪」
敬礼して首を傾け、可愛らしくウィンクなどしてみせる。
その変わり身の速さに、緊張していたツバサは拍子抜けしてしまったのか、ぽかんと呆けた顔をしている。
「…不躾なトッポジーね。このわたくしを指して女学生ですって? 新聞のひとつもチェックできない無教養な賤民かしら?」
「でもでも、アイドルみたいだって! うれしいねぇお嬢! (イメージ戦略大成功だよ…!)」
実際、彼女らの容姿は並みのアイドルを凌ぐレベルであったし、ましてやこの扇情的な服装ではパイロットとは到底思われないだろう。
T-スキンは露出度も密着度も高く、臀部に到っては構造上紐状のフレームが縦に一本走っているだけで、ほぼ丸出しのような状態となっている。コズミック・ドラッグレースのレースクイーン達でさえ、もう少し慎ましい衣装を選ぶことだろう。
「あっあっ…ど、どうも、改めましてツバサ・ウィークリッドです。先程はありがとうございました。ミック様…それに、エミリーさんも」
見よう見まねで手を合わせアイサツを返すツバサ。その光景から、ミレニアたちはミックとエミリーが先の戦いに介入したオーダーであると悟った。
「…なーんだ、騎士さんかぁ。アニー達から見れば、いわゆるショーバイガタキの人達だよねぇ」
アニーシャがあからさまに挑発的な表情になる。ツインテールを束ねるネコミミのようなリボンも合間って、その表情の変化は気まぐれな気性と、ある種の腹黒さを感じさせる。
「先の戦いの労はねぎらって差し上げますけど、わたくし達が来たからには、正直あなた方に残された仕事は……そうね、せいぜいそのスシ・レーションの容器の片付けぐらいかしら?」
ミレニアが肩にかかった後ろ髪を大仰な身ぶりで払う。彼女の癖のようだ。
「フェアリー・フォースは国防軍の威信そのもの。そこの不甲斐ない小娘が晒したような醜態は金輪際あり得ないと宣言しますわ。現に、すでにあなた方に頼らずして、最善の作戦が動き出していますもの」
ぐっと言葉を飲み込んでうつむくツバサをよそに、アニーシャが続ける。
「あのねっ、敵の本隊のワープアウト・ポイントと、機動兵器のコロニーへの侵攻ルートの割り出しはもうバッチリなの! そこにお嬢とアニーで先回りしてぇ、敵機を動けなくしちゃうEMPトラップで……」
「…アニーシャ、喋りすぎよ?」
「そぉ? でも作戦宙域の具体的な座標はぜーったい教えてあげないからね。問題ないないっ♪」
「あ、あの…」
ツバサが弱々しく挙手し、声を上げる。
「そんな、手柄を巡って競争するみたいな考え方よりも、ちゃんと守りを固めて、サイラス3の人達のワープアウトを無事に完了させてあげることの方が重要なんじゃ…」
その言葉を制するように、ミレニアがキッと睨みを効かせた。
「そのために、こちらから先手を打つと言っているのでしょう。侵入を許してからでは戦況は泥沼になるわ」
「だ、だったらオーダーの方々にも情報を共有して、協力を…」
「…そこまでしてオーダーの庇護を受けたい? 権威ある騎士様たちに守られたい?」
「そうじゃなくて…」
「ツバサ。あなたには呆れさせられるばかりだわ。何度教示を与えても、国防軍の軍人としての誇りも、自覚も、覚悟も備わらない……所詮は奴隷種族の末裔ということかしら」
場を凍りつかせる一言だった。ツバサはそのまま沈黙してうつ向くと、椅子に腰を下ろしてしまった。
「……」
嫌らしいほど饒舌だったアニーシャも、何か思うところがあるのか、複雑な表情で二人から目を反らし、口を閉ざしている。
「…格納庫に行くわよアニーシャ。神経接続とDRESSの稼働チェック。いいわね」
「…っとと…は〜い、了解っ」
悠々と歩くミレニアを追い、アニーシャもぱたぱたと走って食堂を後にした。

53 ◆tb48vtZPvI:2016/05/31(火) 19:56:53 ID:Tr2UJzQY
>>52
(…………)
少佐という階級が示すように、ミックはヒューマンに換算するとそれなりにいい歳である。
騎士団がまだ実効を失っていなかった時代はアプレンティス(騎士研修生)にも関わらず女性や子供たちの間でブロマイドが売れていたそうだが(当時はそういうものがあったのだ)、ロイヤリティーは全て寄付してしまっているのでよくわかっていない。
(このアニーシャという娘、見た目ほどには素直なパーソナリティでもない、か)
むしろそれで安心したミックである。

(このミレニアという娘…)
実際物心ついた頃から戦災難民であったミックである。賤民には違いないし、獣人でもあるから差別にはすっかり慣れたものである。尤も大貴族ノルヴァ直系の血を引くミレニアからすれば、この世の99%は賤民になってしまうだろう。
しかし、やはりノルヴァの令嬢か。ミックは軽い失望を覚えた。この年齢にもなると、無意識のうちに若い連中には自分たちの代では不可能だったことを期待してしまう。彼女の祖父や父にあたる人物は、穏健ではあっても貴族根性がすっかりしみついたような男たちだった。
ミレニアという少女には才気こそ感じるが、
(これはダメだ)
こう思わせるものも確実にあった。生まれた時からの気位の高さは増長や慢心に繋がり、いつしかクリティカルなインシデント事態を引き起こしかねない。
アニーシャもミレニアも、どうやら余程甘やかされて育ったらしい。

ツバサは、彼女たちほどには甘やかされてはいないようだった。二人の背中と尻に軽い一瞥を投げただけで興味を失ったミックは、しょげかえるツバサに声をかけた。
「ツバサ=サン、うつむくな。君の勇気は誰もが知っている」
そう……初陣、単身で多数の敵に立ちはだかった勇気。恐怖を前に退くことのなかった勇気。強制されたものであっても、ミジメでブザマな姿を晒したとしても、挑んだ勇気は否定されない。されてなるものか。
賞賛を与える一方、ミックはツバサに対して思っていたことを口にした。
「しかし……君には戦いは向いていないのでは?」

54 ◆HU7XfvOYA2:2016/05/31(火) 21:28:17 ID:ednJiiJE
「いやー、ごめんね。見慣れない物が多くてさ。」
エミリーの叱咤を笑って受け流しつつ相も変わらずキョロキョロと周りを見回し、カルガモの雛のように二人の後を追いかける。



「うん、美味い。」
少女達の剣呑な雰囲気を断ち切るようにいつの間にか隣のテーブルに座り掛け蕎麦を啜る男が一人。場に不似合いな蕎麦を啜る音が周囲に響き、感想を一人ごちる。
器の中を空にした所で箸を置き、掌を合わせて御馳走様と小さく呟き、ツバサと呼ばれた少女へ人の当たりの良い笑顔を浮かべ声を掛けて。
「先程の戦いを見ていたけど……私は君の誰かを護ろうとする「勇気」に敬意を表したいな。」
熱い茶が注がれた湯呑みを片手に持ち、ふぅふぅと息を掛けて冷ましつつ一口啜ると口を開き。
「奴隷種族とか、私は知らない。君は君、ツバサちゃんなんだからさ。気にすることはないよ。ああ、ごめんね。何も知らない男が言っても迷惑かな…」
言い終わりすまなさそうに頭を下げる、あくまでこれは部外者たるディランだから言えた言葉であり、その心は彼女しか知らないのだ。

55 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/31(火) 22:23:23 ID:98ftbjP6
>>53
「それは、その……はい」
ツバサはミレニアへの敬礼の際テーブルの上に置いたカップを、また両手で包み込むようにして持っていた。中の緑茶は口を付けられないまま、とっくに冷めてしまっている。
「私なんかでいいのかなと、今でも思います。気も弱いし、度胸もないし、ましてや人を相手に戦争するなんて…」
カップの中の水面に映った自分の表情はいつも通り弱々しく、情けない気持ちになる。しかし、ツバサは顔を上げ、ミックの目を真っ向から見据えた。
「でも、フェアリー・フォースの一員に選んでいただいた以上、私にできることはちゃんと頑張りたいと思います。
さっきの戦いで、建物の下敷きになりそうだった人たちを助けたとき、何だか勇気が沸いてきて、思ったんです。『私にもできることがあるんだ』って…」
やや熱っぽくそこまで話すと、ツバサははっとして、視線を再び手の内のコップに落とした。
「そ、そのあとは御存知のとおり、ぜんぜんダメでしたけど…ちょっと思い上がったことをいってしまいました。すみません…」

56 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/31(火) 22:30:14 ID:98ftbjP6
>>54
「勇気…」
今しがた自分が、思い上がりの上でかもしれないが、口にしたばかりの言葉だった。
「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると、救われます……」
会釈するように、小さく頭を下げる。
「それとお嬢様の、その…私の生まれについてのお言葉なんですけど…」
少し切り出しにくそうに言葉を濁しながらも、ツバサは穏やかに笑みを浮かべて続けた。
「私、気にしてません。大丈夫です。ですからお嬢様のことも、あんまり悪いようには受け取らないでください。厳しいけど、とっても真面目で仕事熱心な方ですから」

57 ◆tb48vtZPvI:2016/05/31(火) 22:57:44 ID:Tr2UJzQY
>>55-56
「いや、弱者に対する思いやりは普遍的な感情だ。その思いやりを忘れないのだな」
ツバサが戦う理由を見出したことは悪くないことだ。だが、それだけではまだ足りない。ミレニアをお嬢様と呼び続けていることからもそれはわかった。
「…やはり君に戦いは向いていないように思える。このような状況下でなければ、すぐにでも機体から降りて普通の女学生に戻ることを推奨するところだ」
ミックはツバサがシルキーから降りないだろうと承知の上でそう言った。

58 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/01(水) 14:19:26 ID:q.VV920Q
「そっか、ツバサちゃんがそう言うなら良いけどな。…あ、多分名前教えてなかったよね?私はディラン、ディラン・アルケイン。ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張ってそれでも助けが欲しい時は何時でも呼んでくれるかな?」
穏やかな笑みを浮かべたツバサが述べた言葉にディランは納得し頷いて見せると名を名乗り、右拳を軽く握り親指を立てる所謂サムズアップをツバサに見せて。椅子から立ち上がりテーブルの上の食器を返却するとミックに呼び掛け。
「それじゃあ、ミック少佐、私は先程のサイクロプスを修理して使えるようにしてもらうよう格納庫の整備員に言ってきますね。…ツバサちゃんも、ファイト!」
ディランはニッと明るく笑ってツバサに一声掛けると、食堂を出て格納庫への道を歩き出した。

59エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/01(水) 21:28:10 ID:NpEqM4zI
>>52
「ミレニアお嬢様…いえ、此処では特務一尉でしたか…」
食堂の外で、私はそこから出てきたミレニアとアニーシャに声を掛ける。
二人には言っておきたい事があった。

「フェアリー・フォースの…あれは初陣でしたか。
ツバサ・ウィークリッドは民間人による抜擢だったと聞きます。それにも関わらず、単騎で出撃する勇気。感服致しました。
ツバサには未だ、未知なる力…と言いますか。今後の活躍が期待出来ます。
その上官であるミレニア特務一尉の活躍、楽しみにしております。」
私は彼女に期待している様な言葉を言っているが、イライラが隠し切れない。
恐らく、表情にも出ていることだろう。
ツバサへの態度、あれがどうしても許せないからだ。
そして言っておきたい事がもう一つ…

「次の演習では、フェアリー・フォースが国防軍として参加すると予想しています。
このエミリー・ホワイト。白薔薇の騎士も楽しみにしております。」
年に一度だけ行われる演習…騎士団と国防軍の模擬戦だけど、毎回騎士団が圧倒している。
私も、その演習には参加している。
そして白薔薇の騎士と言う私の呼び名…
国防軍や帝国が私の事をそう呼ぶ。
ミレニアお嬢様も聞いた事がある筈だ。

60 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/02(木) 18:39:08 ID:DwdIeo7g
>>57
「……」
ぐうの音も出ないといった風に口元を結んでしまうツバサだったが、最後にこれだけは告げた。
「……せめて、このコロニーの人達を無事送り届けるまでは、私も頑張ります。お役に立てるかはわかりませんけど、こうしてここにいる以上、責任がありますから」

>>58
「あっ…はい。ありがとうございます。えっと…ディランさん!」
彼の背中を見送った後で気付く。ミックと上下関係にあるということは、彼も騎士ではないのか?
とてもそんな雰囲気に見えないおおらかな青年だったが、「様」をつけて呼ぶべきだったかと少し迷いを覚えた。

>>59
ミレニアとアニーシャが足を止め、振り向いた。
腕組みしてエミリーをいかにも「下に見ています」といった目で見据えながら、ミレニアは答える。
「わたくしがドナールを通して、出ろと命令したのよ。民間上がりだろうと何だろうと、出撃するのは当然でしょう?」
彼女はエミリーの主張の意味するところを理解していないようだった。
「未知なる力? そうね。シミュレーションでは勝率ゼロ、フォーメーション演習でも足を引っ張ってばかりのあの子にそんなものが備わっていれば、わたくしもこの先大助かりね」
「お嬢〜、アニーこの騎士サマこわーい。なんかカリカリしてるっていうかぁ、アニー達のことキライみたーい」
わざとらしく眉を潜めてしなだれてみせるアニーシャ。こちらも完全に舐めきった態度である。
「演習はわたくしも目下最大の楽しみにしているの。民草が我が国防軍への畏敬と恭順を取り戻す、記念すべき出来事になるでしょうから」
「やだー、そしたらアニーもっと騎士サマから目の敵にされちゃうかも〜」
売り言葉に買い言葉ということか、両者ともエミリーの敵意を察し、喧嘩を売り返すような姿勢を崩さなかった。

61 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/02(木) 18:54:17 ID:FUXi1n2.
「はいはい、喧嘩しないの。三人ともそんなに眼を尖らせて、可愛い顔が台無しだよ?」
一触即発と言うべき雰囲気を発する三人の少女達の間にディランが手を叩き注意を逸らさせ割って入り、おどけるように左右の人差し指を使って目尻を上げてわざとらしく眼を尖らせたふりをして。指を離し口端を上げて笑顔を作り、ミレニアとアニーシャに握手を求め右手を差し出し。
「仲良くするには、まず最初に拳を握らずに、手を開いて笑顔で挨拶しなければ始まらないんだよ?…という事で私はディラン・アルケイン、宜しく。」

62 ◆tb48vtZPvI:2016/06/02(木) 21:02:32 ID:GQ2na1BA
>>57-58
「そうか。ディラン=サン、サイクロプスを借りるぞ。私もそちらへ行くとしよう」

ツバサの言葉に頷き返す。目を覗き込むと、恐怖の中に確かな意志を感じる。強くも脆い、宝石めいた意志だ。
「では、オタッシャデー」とだけ言い残し、ミックは格納庫へ向かった。

>>59-60
エミリーとミレニアたちが対峙しているのが目についた。
ここで自分が介入しても良かったが、下手にクチバシを容れれば余計こじれるだけだろう。
エミリーは将来有望なアプレンティスだが、直情径行がいささか過ぎるように思える。…それでも若い頃の自分に比べればずっとマシだろう、とミックは考えた。
最良の結果は……彼女たちが好敵手として認め合い、切磋琢磨する関係になってくれることなのだが……そこまで要求するのは贅沢というものか。

63エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/02(木) 21:05:35 ID:3b9HgoCk
>>60
「畏敬と恭順ですか…」
この言葉には色々な意味を感じる…
このお嬢様は市民を見下し、富と権力で市民を従わせるつもりなのか…
市民を守るのが騎士の在り方。
国防軍は違うのか…?
ミレニアお嬢様…やっぱり共和国の貴族か…
そしてあのアニーシャとか言う女のコも、中々生意気な…

>>61
「ディラン…」
田舎から出たばかりのディランには、この二人が何者か解らないのか…
それとも興味が無いのか…
何れにせよ助かった。
今は未だブチギレずに我慢してる方だと思うけど…
もしディランが止めに入ってなかったら、何時かは…

「それでは、私は機体の調整を行って来ます。失礼…」
私はディランに免じ、イライラを抑えながら格納庫へと向かう。
修理と調整を終わらせる。
私の愛機は騎士が使っていた物を回収したものですだが、私が独学で身につけた技術で改造している。
調整を終わらせた後、コクピット内に入り、通信機器を起動させる。
通信を送った先は…

「ちょっとユウセイ!!アイツ等何なのよ!!
フェアリー・フォースのアニーシャとミレニアお嬢様…
勇気を振り絞って戦ったツバサに対して!!」
ユウセイ…同じ騎士団の仲間だ。
私はコクピット内でそのイライラを解消する為に叫ぶ。
通信を送った理由は只の八つ当たりだ。

64 ◆tb48vtZPvI:2016/06/02(木) 23:32:55 ID:GQ2na1BA
>>62>>60
ミックは去り際に足を止め、振り向いてツバサに言った。
「…言い忘れていたが、私に『様』は無用だ。少佐でいい」
今度は彼が振り返ることはなかった。

65 ◆JryQG.Os1Y:2016/06/03(金) 15:53:06 ID:7zykYyvI
>>63 「ちょっとユウセイ!!アイツ等何なのよ!!
フェアリー・フォースのアニーシャとミレニアお嬢様…
勇気を振り絞って戦ったツバサに対して!!」

サイラス3へと飛ぶ準備を済ませ後は承認だけというところでこの通信だ
やれやれまた、エミリーかと思いつつ
「落ち着けよ、エミリー、その発言からしてミレニアとアニーシャがツバサに対して、罵倒したんだろ。」
罵倒の内容を知らないユウセイはそう返すしかない
「まぁツバサちゃんに関しては、相手が悪かったとしか言いようがない、なんせガバノイドだからな」
ガバノイド、かつてセレニアンを潰したとかいう種族。今は帝国でペットになってるようだが
「DNAに刻み込まれた畏怖はそう消えるもんじゃないしな、だが、隊長さんはそれをしってて罵倒したのか?」
「まぁ、ミレニアとかいうのは相当いらだってるんだろうなどっかの騎士アレルギーの奴みたいに」
普通に考えて初陣というものは小隊にとって大事なもの、
だが、結果は惨敗しかも、騎士に手を借りるという最悪な展開になった
「ま、向こうのことは正直どうでもいいけど・・・だが、ツバサちゃんに関しては初戦にしてはまぁまぁだな。
ガバノイドさえいなければな。
正直その子が嫌になったらこっちにぜひ来てほしいぐらいだ」
ガバノイド会敵前のデータを見たが、適合率も悪くなく落ち着いた動きをしているのがデータだけでもわかる。
「まぁ、こちらがあまり口出すあれじゃないしな…後エミリー、機体で飲酒はさすがにまずいからやめろ…どうせ俺らの出番があるんだろ?」
そういい、こちらから一方的に通信を切る
理由は、エミリーに逆切れされるのが怖いから…とは言えない

66 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/03(金) 19:23:39 ID:uMGrP3BI
>>61-63
二人ともディランの声に振り返る。その穏健な雰囲気に飲まれてか、ピリピリした空気はだいぶ和らいだ。
「フェアリー・フォースのアニーシャ・チェレンコフ、14歳でぇす! こっちの騎士サマは優しそうで、アニー好きかも♪」
両手でディランの片手を包んで握手して見せるアニーシャに対し、ミレニアはふん、とばかりにそっぽを向いた。
そして、エミリーから格納庫に向かう旨を告げられる。
「そ。わたくし達も暇ではないの。無意味なお喋りはここまでにしましょう」
「じゃあねー! エミリーさんにディランさーん!」
フェアリー・フレームが格納されているブロックは、エミリーらの機体とは異なっている。ミレニア、そして笑顔で手を振るアニーシャの姿は曲がり角へと消えていった。

67 ◆tb48vtZPvI:2016/06/03(金) 21:09:54 ID:NVt/EAzk
「コズミック・オーダー騎士である少佐の機体を調整できるとは、光栄であります」
「オセジは要らぬ。実際貴官らはよくやってくれた。感謝する」
バランス確認を終え、サイクロプスのコクピットから降りながらミックが整備長の腕を賞賛した。ベースがサイクロプスの急造品と考えれば十二分の出来だろう。
ミックはこれにシバラク・カスタムの認証コードを与え、胸部と肩部の装甲を青くペイントした。
「こちらこそ過分なお言葉ありがとうございます!」
「ウム。では後は貴官に任せた。整備長殿、オツカレサマだ」
「オツカレサマであります!」
ミックが去って後、若い整備士が整備長に尋ねた。
「随分緊張してましたね。おやっさんらしくない」
「うるせえやい。大昔別の騎士のヒトガタを整備したんだが、その御仁がまぁ礼儀やらにおうるさい方でな。
ネズミの御仁はあそこまで横柄じゃなかったが…ああ、肩こってしまう」
「で、おやっさん。どんな調整をしたんです?」
「うん、まず装甲削減」
「まぁ、エースならよくやりますよね」
「で、関節・出力系リミッター解除」
「え、ええ」
「かつ、四肢同期プログラムカットのオールマニュアル化」
「ア、アイエエエ……!?」
「パラメータを見てみろよ。このバランスで動かせる奴なんて国防軍のエースでもそうそういねえよ。それをシミュレータでギュンギュン動かしてさ。
OSにバグが出て手持ち火器が使用不可になっちまったが、まるで気にしてねえ。これでもまだ物足りないって顔してたぜ、あの御仁……」

68 ◆tb48vtZPvI:2016/06/03(金) 21:23:03 ID:NVt/EAzk
「ディラン=サン、君の機体はどうした?」
ミックは再度格納庫にあるヒトガタを確認した。事前に確認した書類によれば彼は特機を一機持ち込んでいるはずである。皆既知の機体ばかりで、ディランのものらしいヒトガタは見当たらない。
ディランが応える前に、「じ、ジン・ミック少佐殿! 報告があります!」という慌てた声がミックの注意を引いた。
「どうした?」
お耳を、と言って士官は囁いた。その内容はミックを愕然とさせるに足るものだった。
彼は急いで司令室へ向かい、オービタル・ハイヴのドナール准将に連絡した。
「ドーモ、ジン・ミックです。…サイラス3の基地防衛隊が脱走しました」
ニガムシ・バイティング! 口調に乗せるべき感情のコントロールはニンジャの修行にも入っているが、今のミックにはそれは必要なさそうだった。

69 ◆tb48vtZPvI:2016/06/03(金) 21:35:06 ID:NVt/EAzk
ちょっと修正

ちょうどディランの姿を見かけたのでミックは話しかけた。
「ディラン=サン、君の機体はどうした?」
再度格納庫にあるヒトガタを見回す。事前に確認した書類によれば彼は特機を一機持ち込んでいるはずである。皆既知の機体ばかりで、ディランのものらしいヒトガタは見当たらない。
ディランが応える前に、「じ、ジン・ミック少佐殿! 報告があります!」という慌てた声がミックの注意を引いた。
恐る恐るといった声にミックは訝しんだ。「どうした?」
お耳を、と言って士官は囁いた。その内容はミックを愕然とさせるに足るものだった。
彼は急いで司令室へ向かい、オービタル・ハイヴのドナール准将に連絡した。
「ドーモ、ジン・ミックです。…サイラス3の基地防衛隊が脱走しました」
ニガムシ・バイティング! 口調に乗せるべき感情のコントロールはニンジャの修行にも入っているが、今のミックにはそれは必要なさそうだった。

70 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/04(土) 09:45:13 ID:iZqUzObM
「それじゃあ、また。」
ディランは笑顔で手を振るアニーシャに笑顔で手を振り返し、素っ気ない態度のミレニアには苦笑しつつも呆れること無く同様に手を振って。


「えーと、それは……」
此方が応える前にミックが急いで司令室へ向かってしまった。困ったように眉を寄せ、どう説明すれば良いか思案するディラン。自身の右腕に装着されたブレスレットを左手で撫でる。自分自身未だにあの存在が何なのか理解出来てはいない、ただ自分に力を貸してくれているのは分かるが…。

71 ◆tb48vtZPvI:2016/06/07(火) 23:26:41 ID:tut4b/Fc
…ドナールの反応は大方の予想通りだった。殆ど悲鳴と化した怒声を聞き流しながら、ミックは状況打開の術を思案し続けていた。
脱走の報告を聞いた時はまず憤怒が腹の底から突き上げて来た。それをかろうじて自制した後、襲ってきたのは焦燥や憂慮より虚しさだった。
白紙に戻った脱出計画。それ抜きでも到底足りない戦力。物資も十分ではなく、100万を超す市民の移送を行うなど、どう考えても不可能なミッションだ。
先達たちは「コズミック・オーダーに不可能はない」と言う。不可能と見られたミッションを多くこなしてきた。だがそれは針の穴へバスケットボールを通すのにブラックホールを用いるような無茶も
しかしここまで国防軍上層部が腐敗していようとは……
その時ミックのニューロンに電流が走る。
「…いいえ、准将。私の見識不足でした。司令官閣下は、サイラス3を守護るために自ら犠牲になろうとお考えになられたのです」
唖然としてドナールがミックを見つめ返してきた。ミックは最大限のニンジャ演技力を発揮しなければならなかった。
「難民と共和国国防軍の高官…帝国軍にとってどちらがキンボシ・オオキイとなるかは自明の理でしょう。しかも防衛艦隊はご丁寧にステルスまで使っている。大切なものほど隠したくなるものですから」
もちろん咄嗟に口から衝いて出たデマカセ・エクスキューズである。しかし状況を好転させたければ、ドナールもこの嘘…この判断に乗るしかない。
最悪のシナリオは、ドナールが「知るかバカ! そんなことより司令官救出だ!」などと言い出すことだ……彼が国防軍への忠誠が盲目的なものではないことを、ミックは祈った。ここでフェアリー・フォースまで削られては、新規の脱出作戦が立ち行かなくなるのは明らかだったからだ。

こうして2時間に渡る協議の末、当初の予定より24時間繰り上げで脱出作戦が決行された。

72 ◆tb48vtZPvI:2016/06/07(火) 23:28:55 ID:tut4b/Fc
ちょっと訂正

先達たちは「コズミック・オーダーに不可能はない」と言う。不可能と見られたミッションを多くこなしてきた。だがそれは針の穴へバスケットボールを通すのにブラックホールを用いるようなシコミを念入りに行なってきたからに過ぎない。奇跡には担保や代償を必要とするものだ。

73 ◆tb48vtZPvI:2016/06/07(火) 23:50:57 ID:tut4b/Fc
「…防衛艦隊はAルートを採ってくれた。デブリの少なくワープゲートに近いルートだ。一方今回我らが採るBルートはデブリが多くゲートからは遠い。さて、敵はどちらを優先して道を塞ぐ?」
サイクロプスのカスタム機…シバラク・カスタムに乗って、ジン・ミックが輸送艇の前につく。
「運が良かった、と思うべきか。なお、輸送艇の脱出が最優先の任務だ。味方の援護や救助などは考えず、敵機の足止めに務めよ」
ミックやドナールは、脱走した艦隊を囮に使ったことを味方には伝えなかった。士気の低下を懸念したためである。
あるいは勘のいい者たちは気づいているかもしれないが…疑問があれば後で答えるとは言っておいている。
いずれにせよ、今は生き延びることだ。

74 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/08(水) 01:23:40 ID:HXxziBQ.
>>73
「オーダー、聞こえていて? こちらフェアリー・リーダー、ミレニアよ」
シバラクカスタムが受信したのは、先刻聞いたばかりの高飛車な少女の声だった。
「我々フェアリー・フォースは陽動部隊の援護に向かうわ。案の定ワープゲート手前で敵の本隊が食い付いてきたようね」
「わ〜、こっちはデブリの中をコソコソ逃げ出せばいいだけの輸送艇の護衛と違って、大仕事だねっ♪」
茶々を入れてくるのはアニーシャの声だ。どうやらミックに入れ知恵されたドナールの詭弁を信じて行動に移ったらしい。
本当にコソコソ逃げようとしているのは、彼女らがこれから加勢しようとしている『陽動部隊』なのだが……
「フフッ、違いないわ。作戦決行の前倒しには驚いたけれど、これも基地司令部の迅速な判断の賜物。
輸送艇の民草共々、安全な航海ができることにせいぜい感謝なさい」
一方的な挑発としか取れない発言を最後に、通信は途切れた。
「いやぁ、すいませんねえ。ミレニアお嬢さんは国防軍贔屓が過ぎるというか、まだまだ自分の頭で考える力が備わっていないようで。アニーシャ君もそれにくっついていけば、食いっぱぐれないと思ってるらしい」
フォローするように通信を入れてきたのはウェーバーだ。彼はミレニアらに進言の上、修理中のシルキーとパイロットのツバサ共々、輸送艇に乗艦していた。
シルキーを万が一のことがないよう、「安全に逃げられる」公算の輸送艇に載せるという提案はドナールにとっても助け船になったようだが、相手はあの『飢狼』だ。こちらの部隊も楽に逃げ仰せられるはずはなかった。
「僕ぁオーダーの皆さんの力を疑ってませんが、何かあればシルキーを出せるよう修理を急がせます。ツバサ君には真相を説明済みなので、いつでも指示してください」

75 ◆tb48vtZPvI:2016/06/08(水) 02:15:55 ID:dvgbqPVA
>>74
何たる堂々とした命令違背宣言か! 唖然としたミックはミレニアを叱責するタイミングを失った。
一方的にミレニアが通信を切ってのち、入ってきたのはウェーバーからだ。彼もミレニアとアニーシャにはほとほと手を焼いているらしい…が、どうにもその状況を楽しんでいるようにも思える。食えない男だ。
「ウム…スノウローズ、フェアリーのフォローに回れ。私は『荷物』からはどうしても離れられぬ。荷物をポストへ投函した後、そちらへすぐに向かう。撃破ではなく生存を優先しろ」
ミックは符丁を交えて命令した。
彼としても味方の援護や救助を考えるなと言った側からそれを破るのははなはだ不本意だったが、たった2機で多数の敵へイノシシ・チャージを敢行する蛮勇は捨て置けない。スノウローズの機動性ならフェアリーに追従出来るはずだ。

作戦決行よりわずかに前、脱出した防衛艦隊が飢狼艦隊と接触した。
結果がどうなったかは語るまでもあるまい。逃げ腰の弱兵は百戦錬磨の強兵に散々に追い散らされ、粉砕された。
司令官は白旗を掲げたものの、飢狼のその部隊は慣習として捕虜の存在を認めていなかった。
間もなく艦隊は撃滅された。

その報はまだ国防軍には届いていない。

76エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/08(水) 22:35:37 ID:cO9aKqRE
>>75
「了解です。ミック少佐。」
私に任されたのはフェアリーフォースのフォローか。
私がミレニアお嬢様に喧嘩を売った時、少佐が通り掛かった気がするけど…
通り掛かって、あれに気付かない少佐では無い。
私があのお嬢様を嫌ってるのに気付かない訳が無い。
それを敢えてフォローに向かわせるのは、スノウローズの機動性を考えての事か。

「エミリー・ホワイト。愛機と共に!」
私は愛機であるスノウローズを使い、フェアリー・フォースの二人の下へと急ぐ。

77 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/09(木) 20:52:53 ID:FikiMqC.
>>75
エミリーより大幅に先んじて、フェアリー・フォースは作戦予定宙域に到着した。が――
「本隊、応答なさい。……本隊、聞こえませんの!?」
「お嬢、あれさぁ…」
アニーシャの愛機、ケット・シーが指差した先には、20m大のデブリが漂っていた。
「なっ…!?」
その表面に刻印されているのは紛れもなく国防軍のエンブレム。デブリの正体が撃沈された艦船の残骸であることは明らかだった。
「…作戦開始から10分と持たずに主力部隊が全滅…!? あ、ありえない、こんな状況…! 誰か、応答を…」
「お嬢! センサーに反応!」
「!?」
どうやら、獲物を仕留め終えた飢狼部隊はステルスを行使してこの場に留まっていたらしい。
フェアリー・フォースの増援の情報までもお見通し、あるいは筒抜けということなのか。
「囲まれちゃってる…! けっこう数がいるよ!」
「そんな!? さ、誘い込まれたということ…!?」
ケット・シーが腰の後、特徴的な尻尾の上に重ねてマウントされていたツイン・レーザー・マシンガンを抜き放つ。
「こうなりゃやるっきゃないよね…! フェアリー・フォースの力を見せつけちゃおう、お嬢!」
「え? あっ…」
ミレニアの乗機メイヴは、その厳かな装飾とは裏腹の所在無げな仕草を取っていたが、アニーシャの言葉に我に返ったか、レーザー・フルーレを抜刀し、左腕のロングボウを展開する。
(はーっ…ふぅぅ…)
ミレニアは大きく深呼吸をした。初めての実戦をこんな孤立無援の状況で行うことになるとは夢にも思わなかったが、この程度の布陣ならばシミュレータ上でアニーシャと共に何度となく蹴散らしてやった経験がある。
「…ふっ…そうね。アニーシャ。サイラス3の防衛戦力など所詮末端の雑兵。
わたくしたちフェアリー・フォースは格が違うということを、増長した帝国軍に思い知らせてあげましょう!」

78 ◆tb48vtZPvI:2016/06/09(木) 23:27:58 ID:R2tFg/zM
>>77
「ヒャッハー! どこの誰かは知らんが情報感謝だぜェ!」
「おっ! あのセレニアンお嬢ちゃんかい!?」
「いや、似てるが違う。お仲間かね?」
「どっちだっていい! 中身を見りゃあわかんだろ!」
「ヒャッハー! キルマークになりなァ!」
フェアリーたちを視認するや、飢狼サイクロプス小隊は戦闘のアドレナリンを分泌させて襲いかかった!

…同刻!
「…ディラン=サン、まだ出られないのか?」
多少の苛立ちを交えてミックは格納庫にいるはずのニュービーの名を呼んだ。特機のサイズを当て込み、輸送艇の盾になってもらうつもりだったのだが…エミリーをフェアリー側に向かわせたのを今更悔やんだ。
予想外の事態などイクサではよくあることだ。実際古のコトワザでも「サイコロは悪い目に転がる」と言うではないか。問題は、悪い目が出た際にどう対処するかだ。
ミックは思い切って輸送艇より離れて先行した。
やがて、いた。キルマークを増やし損ねて憮然とするサイクロプス偵察部隊。無人偵察機ラプトルもついている。
鉢合わせした。
慌ててハンドガンを構えるサイクロプス。しかし…遅い!
シバラク・カスタムはブースター噴射、更にデブリを蹴る、蹴る、蹴るトライリープ! そうすることでパルクールめいた3次元機動を宇宙空間に再現! サイクロプスのFCSでは追従し切れない!
「イヤーッ!」背後を取ったシバラク・カスタムは両腰のシースから大振りのアサルトナイフを抜刀! サイクロプスの脇腹相当部位からコクピットへ抜けるキドニー・ダガー!「アバーッ!」コクピットを貫かれパイロット即死! タツジン!
「アンブッシュ!? どうやって!?」「知るか! 野郎が!」僚機のバイタル消失サインを受け取った他のサイクロプスが気づきハンドガンで牽制してきた。一機はアックスを振りかざし突撃を敢行!
「イヤーッ!」シバラク・カスタムはカンオケと化した機体を蹴り飛ばし反作用で移動! 突撃機体へ向けてスラッシュ・リッパー射出!「グワーッ!」まともに突っ込んで切り刻まれる突撃機体!
シバラク・カスタムは更にブースター噴射! 右腕のプラズマステークにエネルギー充填!
「イヤーッ!」BANG! 叩き込まれる雷撃杭! 致命部位を抉られサイクロプス爆発四散!
「なんなんだ!? こいつなんなんだ!?」「こんなん入団テストにだって出ねえぞ!?」「どういうエースだ!? まさか…あのニンジャか!?」
たちまちのうちに2機を失い恐慌に陥る偵察部隊! それを尻目に、ミックは不満気であった。
「反応が遅い…やはりこんなものか」関節部の発熱もひどい。どうやら戦災難民の獣人は贅沢に慣れ過ぎていたらしい。初心を取り戻す必要があった。
ならば、単機で敵を殲滅させ、ゲートへ輸送艇を送り届ける。しかる後、フェアリー乃至エミリーの救援に向かう。単純明快なプランをニューロンで立案し、それを実現すべくミックはアイサツの形に機体を動かした。
「ドーモ、シバラク・ニンジャです。帝国では、オーダーの首にはバカバカしい額のインセンティヴがついているらしいな」
事実だった。サイクロプスの間でアトモスフィアが変わった。それこそがミックの目的だと気づきながら。「…来い!」シバラク・カスタムは挑発的に手招きした。

79 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/10(金) 00:20:14 ID:pXet/62g
「今、出ますよ…コイツ、借りてきます!」
現状、あの巨人は呼び出しに応じてくれない。ならば今の自分だけが頼りなのだ。ディランはミックの通信に短く応えると格納庫の隅にひっそりと置かれた機体…試作型支援戦闘機、その名もガン・ビートルを指差しし整備員の制止を無視してコックピットへ慌ただしく乗り込み、エンジンに火を入れる。
轟!と爆音を上げてエンジンが唸りを上げて始動するとコックピットの中に光が灯り、コンソールを叩いて発進のシークエンスを整える。
カタパルトへ誘導されて配置に付くと発進のカウントがコックピットに響く。GO!の言葉が響くと同時にフルスロットルで発進したガン・ビートルは殺人的な加速で一筋の光となり、ミックが護衛する輸送機達へ飛び立った。


「………ただいま、到着しました。これより援護に回ります。」
発進から時を置かずミックの元へディランを乗せた銀色の流星がたどり着き、減速し一度通信を送るとそのまま戦闘へ介入する。回避運動を行いつつミックと対峙しているサイクロプス達の背後に回るように移動すると挨拶代わりにレーザー砲を連射し、射撃後はキッチリと回避運動に移り一度サイクロプス達とは距離を離して。

80 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/10(金) 00:44:51 ID:C2C3qtyE
>>78
「キルマークになるのは…」
「そっちの方なんだよねっ!!」
メイヴとケット・シーがスラスターを噴射し、攻撃を掻い潜りつつサイクロプスに迫る。
2機とも彼らが先程殲滅したスチュパリデスとは比較にならない機動性だが、特に猫耳フードつきのパーカーを羽織ったような黄色の機体――ケット・シーの敏捷さには目を見張るものがあった。
「あははっ、当たるわけないない!」
スラスターによる姿勢制御のみならず、散乱したデブリを蹴りつけたり、「尻尾」で叩いたりしつつ、縦横無尽のアクロバティックな機動で瞬く間にサイクロプスに肉薄する。
「つっかまーえたっ♪ と! アニーの勝ちだねっ!」
そして、手にした二挺のマシンガンをサイクロプスのアゴと動力部に突き付ける。
「…じゃあ、バイバイ?」
媚び媚びの声音から一転、アニーシャは冷酷にそういい放つやトリガーを引き、ゼロレンジでレーザーの斉射をサイクロプスに叩き込んだ。

「お行きなさい、ショック・ハーケン!」
戦乙女のごとき豪奢な外装を持つミレニア機、メイヴの両手甲から何かが射出される。それはワイヤーを尾のように引きながら、サイクロプスに高速で襲いかかる放電アンカーだった。
高圧電流によって電気系統を破壊された(もしくは、ハーケンに追いたてられた)サイクロプスに、ミレニアはレーザー・ロングボウの狙いを定める。
「ふふ…他愛もないこと」
高収束率の緑色に輝くレーザーが一閃し、サイクロプスの胴体へと疾る。

81 ◆tb48vtZPvI:2016/06/10(金) 20:35:42 ID:rh.b.qwg
>>79
「遅いぞディラン=サン! 次からは俸給査定マイナス重点だ!」
ミックの叱咤が飛ぶ。機体のシグナルは試作戦闘機だ。特機ではないのかと思いつつ、実際来ないよりは遥かにいい。
サイクロプス隊の背後を取ったガン・ビートルのレーザーが虚空を走る! サイクロプス隊は散開し攻撃を回避。ガン・ビートルは鮮やかな機動でターンを決める。
「それが嫌ならイクサで実力を証明してみせろ。イヤーッ!」ミックは再びデブリを蹴って加速接近! 容赦のないステーク打撃!「グワーッ!」サイクロプスにダメージ! しかし腕を一本犠牲にして胴体へのダメージを防いだ!
「こいつ、本当にサイクロプスか!?」「同じサイクロプスベースなのに、なんでこんなに速いんだ!」
並んで悲鳴を上げるだけでは能がないと考えたか、2機のサイクロプスはナパームグレネードを投射! KBAMKBAM!! 宇宙空間を光熱が目映く照らす!

>>80
「グワーッ!」至近距離より光の弾丸を浴びたサイクロプスは爆発四散!
「グワーッ!」緑色のレーザーにより鮮やかにエンジンを貫かれたサイクロプスは爆発四散!
鮮やかな機動だ! しかし飢狼は臆することなくソーサーガン攻撃!

82 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/10(金) 21:33:31 ID:C2C3qtyE
>>81
「!」
思わぬ反撃に身構えるメイヴだったが、横合いからのレーザー・マシンガンの連射がソーサーの軌道を狂わせ、命中を許さなかった。
「お嬢ったら、だらしな〜い!」
「お、お黙りなさい! 次こそ動力部を…射抜く!」
メイヴは即座に反撃の体勢に移り、レーザーの矢をもう一射、サイクロプスの機体中心目掛けて放つ。
「丸ノコだったらぁ、こっちにはもっとすごいのがあるんだよねっ!」
ケット・シーはパーカーの裾裏に隠されていた大型の戦輪をアンロックし、器用にも尻尾の先端で振り回すことで遠心力を加えていく。
「チャクラム・ソーサー! まとめて殺っちゃえ!」
バック宙の動作と共に勢いよく投擲されたソーサーは、橙色のエネルギー刃を帯び、居並ぶサイクロプスの間を不規則な機動で飛び回りながら、次々に攻撃を加えていく。

83 ◆tb48vtZPvI:2016/06/10(金) 22:53:25 ID:rh.b.qwg
>>82
機体中央を貫かれたサイクロプス散華!「グワーッ!」
更にばらまかれるソーサー! 縦横無尽にランダム軌道を描くソーダーの動きは、サイクロプスのパイロットはもちろんのこと機体のCPUにも読めない!
「チクショウ!」一機のサイクロプスがソーサーを撃ち落とそうとするが…SLASHSLASHSLASH!四肢切断の憂き目を見て撃破!「アバーッ!」
「クソッ、案外やるぞこいつら!」「奴らを呼べ!」
サイクロプス一機がボウガンに信号弾を装填し発射した。幾つかの光の球がそれぞれの色で宇宙に咲いた

「オイ、新手が来たそうだぞ」
防衛艦隊を掃討中だったモーターオニのパイロットが、スチュパリデスMk-2の残骸を弄るジ・オーガのパイロットに告げた。
「ちょうどええ、おらもムシをプチプチするのはあきてきたところだァ。…なんと、あのむすめっこのヒトガタににとるだなァ!」
ジ・オーガのパイロット…ブグ・ラドブグは醜い顔に貪欲そのものの笑みを浮かべた。2機は揃って苦戦する自軍の方へ向かった。

84 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/10(金) 23:09:42 ID:pXet/62g
>>81

「困ったな、それじゃあ貧乏暇なしにならないように気張りますよ!」
ミックの言葉にディランがへらりと気楽に笑って応えると操縦桿を巧みに操作してナパームの爆炎を最小限の動きで回避すると、続けざまに一体のサイクロプスをロックオンしミサイルのボタンを押して。コンテナから解き放たれたミサイル群は白い軌跡を残しながらサイクロプス目掛けて突撃し。

85 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/10(金) 23:55:01 ID:C2C3qtyE
>>83
「あっははは! シミュレーションの通りだね! どれだけいたってワケないない♪」
軽やかな身のこなしで四肢を失ったサイクロプスにトドメの一撃を加え、マシンガンのカートリッジをリロードするケット・シー。
「フッ…このフェアリー・フレームこそまさに国防軍の威信。騎士どもと逃避行中の民草に、この勇戦ぶりを拝ませてあげられないことが口惜しいわ」
メイヴもエリアル・ダガーを投擲し、怯んだサイクロプスにすかさずロングボウを撃ち込む。その動きには先刻までのような淀みはなく、冴え渡っていた。
「拝ませてあげる……あっ、そうだ! んふふふ♪」
初の実戦が滞りなく優勢に進行し、彼女らには余裕が生まれていた。そしてそれは同時に、大きな油断が生まれつつあることも意味する。

「はぁ…お嬢様とアニーシャちゃん、うまくやれてるでしょうか…」
ツバサはシルキーのコクピット内で、膝を揃えて行儀よく座っていた。
本来ならばすぐ間近で起こっているオーダーと帝国軍の戦いを憂慮すべきなのだろうが、ミックやディラン達の強さ、頼もしさは短い顔合わせの中でも本物と思えた。希望的観測をするなら、自分が出撃するまでもなく決着が着いてしまうかもしれない。
そうなると、むしろ心配なのは二人の同僚だった。脱走を試みた兵たちとはいえ、曲がりなりにも本隊と共同戦線を張っているのだから、万が一ということは無いと思いたいのだが…
「…あれ? アニーシャちゃんから…?」
ツバサはふと見たモニターから、ケット・シーから輸送機に向け、フリー帯域で通信が発せられていることに気付いた。
反射的に、シルキーでもその通信を受け取れるようネックユニットに指を走らせ、チューニングする。
『……やっほー! 共和国のみんなぁ! アニーの声が聞こえるかなー?』
「!?」
瞠目してモニターを見れば、どうやら戦闘中らしい、T-スキンに身を包み、うっすらと汗をかいたアニーシャの姿が映されている。攻撃と回避運動を目まぐるしく行い、ツインテールと年令不相応の大きな胸を揺らしながらアクロバティックに舞う傍らで、左手を伸ばしてカメラの位置調整を試みており、相当な余裕があることが伺える。
恐らく避難ブロックのモニターの人々も、この映像を見ているのだろう。
『じゃじゃ〜ん! ご覧下さい、この戦果! ミレニアお嬢様のメイヴとアニーのケット・シー、フェアリー・フォースはみんなのために、帝国軍の本隊を絶賛ちぎ投げ中だよっ!』
ワイプで戦闘の様子が映し出される。
宇宙空間を漂う多数のサイクロプスの残骸と、メイヴが更なる敵機をロングボウで葬る瞬間。プロパガンダとしてはこれ以上ないベストショットだ。
「ちょ、ちょっとアニーシャちゃん、まずいですよ…!?」
思わずモニターにかじりつき、話しかけてしまうが、通信はあちらからの一方的な動画配信の形で行われており、当然彼女の耳には届かない。

「アニーシャ、何をしてるの!?」
(アピールだよアピール! イメージ前略っ!)
小声でミレニアに口答えしながら、アニーシャは続ける。
「今頃そっちでもちっちゃな戦いが起こってると思うけど、大部隊はアニーたちが足止めするから大丈夫! 大船に乗ったつもりでいてねっ♪」
そう言ってあざとくカメラに向けてウィンクすらしてみせる。
「まったく……」
ミレニアは呆れたような素振りを見せこそすれ、止めなかった。
これはこれで、フェアリー・フォースと国防軍の威光を示すいい機会だと、そんな風に考えているのかもしれない。

レーダーに二つの機影が現れたのはそんな時だった。
「新手…? 指揮官クラスが一機と、あれは特機…?」
「あらら、ここにきて大ボスのお出ましかな?」
ジ・オーガとの交戦シミュレーションは何度か試行していた。問題はない。
しかしもう一機は未確認の大型機だ。本来ならばフェアリー・フレームの不得手な部類の相手として、交戦は避けるべきなのかもしれない。
「ふふっ。格好の噛ませ犬が現れたわ、アニーシャ…!」
「よーっし、フェアリー・フレームのスゴいところを大公開! 華麗なるジャイアント・キリングをお見せしちゃうよっ☆」
しかし、経験に乏しく、かつ優勢に酔い知れている彼女らにその判断は不可能であった。
二機はスラスターを噴かし、敵の増援へと突っ込んでいく。

86 ◆tb48vtZPvI:2016/06/11(土) 00:26:31 ID:Z/6yui9w
>>84
ガン・ビートルから狙われたサイクロプスはミサイルを撃ち落としにかかる! しかし、直撃数発!「グワーッ!」爆発四散!
盛大な爆発がサイクロプスの視界を塞ぐ! その距離を詰めるのは…シバラク・カスタムだ!「ファック…!」ハンマーを振りかぶるサイクロプス! しかし…間に合わない!
「イヤーッ!」ヤリめいたサイドキックが水月部位を撃ち抜く!「グワーッ!」大型デブリ片に叩きつけられるサイクロプス! 行動不能!
ミックはさらなる接近を仕掛けようとしてやめた。少し距離が離れ過ぎている。だから代わりにこう叫んだ。「今だ、ディラン=サン!」

87 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/11(土) 15:32:09 ID:Duuew1q6
>>86
「悪いが……もらった!」
ミック機の痛烈な一撃とデブリ片への衝突で行動不能になったサイクロプスのコックピット付近目掛けてレーザー砲を発射、そのまま旋回すると無人戦闘機ラプトルへ誘導ミサイルを放ち。
モニターから流れるフェアリー・フォースの映像に舌打ちを隠さず、一人ごちる。
「クソッ……焦りすぎだ、援軍が出たなら一時撤退すべきなのに…」

88エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/11(土) 18:40:57 ID:a5kawZl6
「ちょっと何あれ…」
フェアリーフォースからの映像通信は私が乗って居る機体にも映し出された。
送ってるのは、ミレニアお嬢様じゃ無い。
もう一人、確かあのコの名前はアニーシャだっけ…
市民を安心させる為の通信じゃ無い。
あれはパフォーマンスだ。
戦場を何だと思ってるんだ…
見ていて不愉快になる。
だけど、映像には帝国の新手も映ってる。
それを相手にフェアリーフォースは撤退する気配が無い…

「見ましたか?ミック少佐…」
あの映像は少佐も見ている筈だ。

「不愉快ですが、少し急ぎます。
このままでは…」
私に任されたのは私を不愉快にさせた二人のフォロー。
とは言え、生存を優先する以上、援軍に間に合わせる必要がある。
間に合わせないと、フォローすら不可能になるからね。

89 ◆tb48vtZPvI:2016/06/11(土) 20:34:25 ID:Z/6yui9w
>>87
サイクロプスはデブリごと撃ち抜かれて爆発四散! ラプトルもミサイルにまとめて飲み込まれ、全滅! 敵残機ゼロだ!
「悪くないワザマエだ、ディラン=サン」
ミックはディランの技量に感心しつつ、亀の歩みで進む輸送艇に「進路啓開な」のシグナルを送る。推進剤の消費を5倍にする輸送艇。これで範囲内の敵は掃討した。あとは心配事はない…

>>86
『……やっほー! 共和国のみんなぁ! アニーの声が聞こえるかなー?』

ミックのニューロンに極太ミンチョ・フォントで浮かぶ「!?」の文字!
素晴らしい肢体のラインもアラワなスーツ! 堂々と胸を反らすアニーシャ! 余裕と自信に満ちた表情! ジン・ミックは通夜の如き面持ちで動画を見つめた。
少なくとも、アニーシャという娘はアイドルになりたいようだ。実際戦場で不必要に目立つ真似は、国防学校のカリキュラムでさえ教えない。例えそれがプロパガンダ的な性質を帯びた部隊の喧伝であっても…
更にフェアリーの元へ、援軍が近づきつつある!
『見ましたか? ミック少佐…』
エミリーからの通信だ。サウンドオンリーだが、苦り切った顔をしているのが見えるようだ。
「ああ。……スノウローズ、メガ・ビートル、一刻も早くフォローに向かえ」
ワープゲートに着々と近づきつつある輸送艇を横目に見ながらミックは言った。これが通り抜けるのを確認しない限り、ミックは離れられない。
彼女たちは傲慢と増長のツケを払うことになるだろう。自業自得として切り捨てることも出来たが、しなかった。彼はコズミックオーダーの騎士であるからだ。
そして、もう一人。
「シルキー、出撃可能か? 私のニンジャ第六感が告げている。オヌシの『仲間』が危険だ」

90 ◆tb48vtZPvI:2016/06/11(土) 20:52:45 ID:Z/6yui9w
>>86
無論、アニーシャ機が発したフリー帯域通信動画をジ・オーガとモーターオニもキャッチしていた。
「元気のいいお嬢ちゃんだ…俺はこういう年頃のオイランが大好きなんだ! クソ生意気ロリータ! 金髪! ロリータ! しかも! 豊満! フィヒヒヒヒヒ!!」
突如として興奮するモーターオニのパイロットに対し、ジ・オーガを駆るブグは不満気だった。
「あのセレニアンがおらんなぁ……やりすぎただなぁ…」
逃がした獲物の残滓を未練がましくニューロンで追う。
「オイ、ガバ野郎。ロリータは俺がもらった。お前にはもう一方をくれてやる。好きにしろッ!」
本来特機級はその行軍速度故に後ろからついていく形になるはずだが、アドレナリン分泌過多状況のモーターオニパイロットは定石無視で突撃。
「そういうモンダイじゃねえのだがの…ま、ええやな」
不承不承追従するブグ。暇潰しになれば、まぁいいだろう。ガバノイドの常として、彼らはあらゆる知的生命体から蔑まれていたが、同時に自分たち以外の全てを蔑んでいた。

91 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/11(土) 22:22:29 ID:PLxZeUTY
>>89
「はっ、はい! すぐ出られます! 私もアニーシャちゃん達が危ないって、何となく感じてました!」
ウェーバーからもミックに返答があった。
「膝の損傷をカバーする意味も含めて、シルキーのDRESSを空間戦闘用の『メイジ』に換装してあります。機体データを送るんで、エスコートしてやってください」
ミック、ディラン機に提供された機体情報を見る限り、メイジ装備は火力と攻撃範囲に優れた装備のようだった。これならば、敵の更なる増援の殲滅に当たることも、特機級相手の火力支援もこなせるかもしれない。
アニーシャが見せびらかしている戦闘の情景やT-スキンはともかく、かなり機密性の高いデータであろうに、ファイル名に「ご内密に」と添えただけでウェーバーはそれをオーダーに与えた。
「ツバサくん、僕ぁ輸送機の皆さんと一緒に、一足先にヒゲのおじさんに絞られに行くから。君はミック少佐の言うことをよく聞いて、お嬢様とアニー君を無事連れて帰ってきてくれたまえ」
「わ、わかりました、頑張ります! 博士もお気をつけて!」
輸送機のカタパルトに、まさしく魔法使いといった三角帽子とローブ姿に杖を手にしたシルキーが現れる。
「シルキー/M、ツバサ・ウィークリッド! 発進します!」

>>90
「まずはあのデカブツにハーケンを叩き込むわ。アニーシャは追撃!」
「りょーかいっ! 指揮官機は適当に牽制するよっ!」
メイヴがモーターオニの前に出る。ケット・シーは攪乱するように身を翻しつつ、ジ・オーガと一定の距離を保ってマシンガンで足止めを試みる。
「どれだけ装甲が厚かろうと、この電撃からは逃れられなくってよ!」
両前腕からショック・ハーケンが放たれ、モーターオニの首元を目掛けて疾る。

92エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/11(土) 22:44:50 ID:a5kawZl6
>>89
「了解です。ミック少佐」
音声通信だけど、ミック少佐はアニーシャの行動に呆れている様に感じる。
だけど、私と一緒にガンビートルにも通信を送って居る。
ガンビートルって言えば、共和国の支援用戦闘機だ。
だけど、国防軍の兵士が載ってるとは思えない。
あの髭面司令官がオーダーの下に兵士を寄越すとは思えないからね。
だとしたら考えられるのはただ一人…


「ガンビートル応答せよ。流石ね、ディラン。」
ディラン…サイラス3に居た騎士は少佐と私とディランだけだ。
だとしたら、載ってるのはディランしか考えられない。あんな戦闘機で、凄いセンスだ…

93 ◆tb48vtZPvI:2016/06/11(土) 22:45:07 ID:Z/6yui9w
>>91

モーターオニは手にしたモーターマチェーテでハーケンを打ち払う。
「てめえじゃねえすっこんでろファッキンビッチ!」
目を血走らせ口角泡を飛ばし問答無用の広域通信で怒号するパイロット。彼の守備範囲は15歳までであった。ヤンナルネ!
「俺の目の前から消えろクソが! XXにXXXXでXXされてえかッ!!」
ミレニアが決して理解出来ないワードを合図として大口径バルカン連射! 撃破よりは追い払うための攻撃だ!

マシンガンの光弾が宙を貫く。それを見かけとは裏腹な機動性でひらりひらりと嘲弄するように回避するジ・オーガ。
「つっまんねえコウゲキだあなぁ。ハナクソほじってでもかわせっぞ、おめえ。ファ〜…」
わざとらしいアクビ! 明らかな挑発! その証拠に、見よ、広域通信ではないか!
「おらのアイテしたきゃよ…あのセレニアンのほうでもつれてきンしゃい!」
ビームランチャー攻撃!

94 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/11(土) 22:58:42 ID:PLxZeUTY
>>93
「!? …あぅ、っく…!」
ハーケンを切り払われたことで重心が崩れ、回避運動が遅れる。脇腹をバルカンが霞めた。大口径の弾丸は一発でもそれなりの威力を誇り、ミレニアはダメージ電流に端正な顔を歪ませる。
この程度の衝撃ならば事前にT-スキンの着用テストの一環として体験済みだったが、どちらかと言えばそれ以上に、敵パイロットの投げ掛ける意味不明な暴言とその剣幕がミレニアをぞっとさせた。
「な…なんて下品で粗野なの! 帝国軍の雑兵風情に、このわたくしに罵声を浴びせる権利なんて…」
一時後退するメイヴ。歴戦の兵から見れば、彼女が『びびっている』ことは一目瞭然であった。

「ふ〜んだ! つまんなくて結構だよっ! アニーが遊んであげるのは…」
ビームランチャーを華麗な側宙で回避すると共に、トリッキーにスラスターを使い、一機にモーターオニ目掛けて距離を詰める。
「こっちの、おっきくて硬そうな方っ!」
両手のマシンガンを正面に向けて水平に構え、連射する。照準はモーターオニの頭部に合わせられていた。

95 ◆tb48vtZPvI:2016/06/11(土) 23:29:04 ID:Z/6yui9w
>>94
「!!」
モーターオニのパイロットは何故かケット・シーの照準に気づいた。左腕を掲げ、装甲で防御!
「ロリコンの嗅覚舐めんなロリータ!」
そのままメイヴを無視してケット・へシーアサルトキャノンの牽制砲撃、のちマチェーテを引っさげブースト!

「あのむすめっこ、びびっちまっただかぁ?」
ガバノイドはメイヴの怯えに敏感に気づいた。そういう種族だった!
兜角を上げ、機体をメイヴの前に出るように速度上昇させるブグ!「ばあ!」メイヴ、そしてケット・シーのスクリーンに大写しになるガバノイドの顔!

96 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/12(日) 00:00:59 ID:YK9KirRg
>>95
「あーん、なんで防ぐかなぁっ!」
焦れったげに呟き、素早くマガジンをリロードするケット・シー。
牽制の砲撃を掻い潜る。突撃してくるようだが、元々こちらも至近距離で銃撃をしこたま撃ち込んでやる予定だったのだ。手間が省けたと舌舐めずりをする。

「くっ、あっちの方に狙いを付けられた…!」
ケット・シーに見切りを付けたかのように素早く接近してくるジ・オーガ。
怯みつつもレーザー・フルーレを構え、応戦しようとした、その時だった。

『ばぁ!』
「!?」

モニターにブグの醜悪な顔が映し出されるや、二機の動きが同時に、凍りついたように止まった。

「……っ、なっ、な…っ…」
ミレニアが絞り出すように声を発する。
「なんですのぉ!? この醜い生き物はッ!!?」
先程までの高飛車な声音とは全く違う、ほとんど涙声に近い叫びだった。
「ガバノイド……」
アニーシャが呆然としたように呟く。眩いばかりの明るさとコケティッシュな魅力に溢れていた笑顔は消え失せ、その顔は蒼白に成り果てていた。
ミレニアはその名について俊順する。あまりにも悪辣な性質から、共和国領への居住を認可されていない亜人種、ガバノイド。
中等学校時代にその存在に興味を持ち、父や祖父にあれやこれや問うてみたものの、頑なにその姿や生体については教えてくれなかった。
よもやこれほど醜い姿をしていようとは。いや、それ以上に、視覚的な嫌悪感だけでは説明のつかない、このおぞましい感覚は何なのだろうか。
ミレニアは震え上がった。その怯えはメイヴの挙動にも現れ、戦乙女のごとき機体からたちまち威厳が剥がれ落ちたかのように見えた。

「…っ、あ…」
アニーシャはその恐怖の正体を知っていた。幼い日、母と共に味わったある悪夢の記憶が蘇り、アニーシャの体を硬く縛り付ける。
モーターオニの巨体はケット・シーの目前に迫っていた。平常ならば攻撃のチャンス! と直感が告げるタイミングにありながら、全く追従することができなかった。
それどころか、モーターオニの巨体が自らを脅かす、とても恐ろしい存在のように思え、アニーシャをおののかせる。
「ひっ…いやああぁぁぁっ!!」
ケット・シーは両手のマシンガンを乱射した。精細の欠片もない反撃が、モーターオニの怒涛のごとき勢いを削げるはずもなかった。

97 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 00:09:19 ID:yakZ1zPs
魔法使いめいた装備を施されたシルキーがスラスター炎を曳きながら仲間の元へ向かってゆく。
輸送艇の船体は半ば以上までゲートへ沈んでいる。そこからシバラク・カスタムへ、のみならず戦闘区域の全機へテキストオンリー通信。

『協力感謝する。騎士と妖精に武運と勇気を』

ここまでくれば問題はあるまい。ミックはブースターを噴射させ、シルキーを追った。

98 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 01:38:17 ID:yakZ1zPs
>>96
「おんやぁ? こしぬかしただかぁ?」
ブグは自分の顔が大変醜悪であることを理解している。それがスクリーンに突如大写しになれば、大の男でも一瞬は怯む。その隙に沈めた敵は一機や二機ではない。
だがここまで過剰な反応を見せたのは初めてだ。そう、セレニアン以外には…ブグは深くは考えず、好機とのみ捉えた。
「うりゃあッ!」メイヴに接近し、力任せのバトルアックス!

一方モーターオニは幅広の刀身を縦に、パワー任せのチャージを仕掛ける! マシンガンは大したダメージを与えられていない!
「イエス! ロリータァッ!」
マチェーテの平で殴りつける!

99 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/12(日) 02:05:25 ID:YK9KirRg
>>98
「え…? あ、ああああああぁぁぁッ!!」
降り下ろされたバトルアックスが、メイヴの胸部装甲、美しいエングレーブの施されたビスチェに勢いよく食い込む。。
「はあ゛ああ゛ぅ、ッ…ッ!?」
ダメージフィードバックの電流を受けるミレニア。しかしその強度は彼女が訓練の過程で味わったものを遥かに越えていた。
(なに、これぇ……っ!?)
がくん、と背を反り返らせたミレニアの胸元で、T-スキンにがじゅびび! と泡立つや、生々しい音を立ててゲル化して飛び散り、顔に降りかかった。
スーツには機体と同じ傷を受けたかのような裂傷が残っている。
「あ、あ、あ、ぁ……!!」
錯乱したミレニアは、あろうことかフルーレを放り捨て、胸に食い込んだバトルアックスを両手で押し返そうと試みる。馬力で劣るフェアリー・フレームには当然そんな芸当は無理だった。

モーターオニのマチェーテの平が、ケット・シーの脇腹を無慈悲に打ち据えるや、リアルタイム中継されているアニーシャの姿に異変が起こった。
「っぁ!!」
衝撃に大振りの胸がぶるんと揺れたと思うや、殴打を受けた箇所から、T-スキンを纏った彼女の全身を青白い電光が放射状に走り抜ける。
「ッひィィィィィィィィ゛ンッ!?」
ミレニアに起きたよりも激しい勢いで、スーツの被撃箇所が粘液化し、ぶちゃ、ぱぁん!! と音を立てて飛び散った。
打撃のダメージ電流のみならず、そのその電光もまた彼女に責め苦を味わわせているようだった。衝撃に全身ががくがくと戦慄いている。
ケット・シーの超高機動の秘密は、アニーシャの帯びる生体電気の強さにあった。彼女の体質がT-スキンのモーショントレース性能を増幅し、機体に鋭敏な反応と追従を可能としているのだが、それは反面、彼女に逆流するダメージ電流も大幅に強めてしまう危険性を伴ってもいた。現に今、特機クラスの攻撃とはいえ、ただ「叩かれた」だけでこれだけの敏感な反応を示してしまっている。
「…ンあ゛…ッ、こ、のぉぉぉッ!!」
ツインマシンガンにより、辛くも反撃を試みるケット・シー。しかし打撃によって機体が後ろに流れてしまい、照準も威力も満足とはいかない!

100 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/12(日) 02:34:41 ID:vpVs35Ps
「言わんこっちゃない……間に合えよ!」
モニターから聞こえるミレニアとアニーシャの悲鳴に眼を伏せスロットルレバーを思い切り引き、機体を最大限まで加速させると二人が戦う空域まで再び銀色の流星が駆け抜け、装いを新たにしたツバサの機体の後を追い。

101 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/12(日) 03:00:39 ID:vpVs35Ps
>>92
「それほどでも、此方は後から追い掛けるから…先にあの二人の支援をお願いします。」
身体に掛かるGの負荷でひきつった表情になりながらもエミリーに応えるディラン、先程の基地内のやり取りで印象は最悪であろう二人を助けに行くエミリーの心境は良くないものの筈、故にディランは頭を下げてエミリーにお願いをする、先程の事は水に流して助けて上げて欲しいと。

102 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 17:34:13 ID:yakZ1zPs
>>99
「そのヒトガタのしゅつりょくじゃあジ・オーガにはかなわんでよ!」
ブグは更にアックスを押し込もうとして、やめた。機体ごとアックスを引いたのだ。つんのめるメイヴ。がら空きになるボディ!
「フホホホホホホ! そいやぁ!」
空いている方の腕でパンチ! パンチ! パンチ! 更にパンチ! なぶるような連打!


マシンガン射撃を物ともせずモーターオニ肉迫! 更にマチェーテを揮う! ヒットかミスか、射程内か射程外か無関係に何度も揮う!
「いい子にしてろよ、すぐに終わるからよ…」
場末の未成年オイランにするような猫撫で声でパイロットはアニーシャの神経を逆撫でした。
逃げるケット・シー! 追うモーターオニ!

103 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/12(日) 18:27:00 ID:2K47SSCI
>>102
「ひっ……あお゛ぅッ!?」
ジ・オーガの拳が、軟質カバーに覆われたメイヴの腹部に叩き込まれる。
「お゛ぅッ!! あぉ゛ッ!? う゛んッ、 あぇ゛ッ…!?」
繰り返し撃ち込まれる拳打が、ミレニアに圧感と電流の責め苦を与える。
T-スキンの自壊現象が発生しないギリギリのレベルのダメージが幾度となく彼女の腹部を突き抜ける。
「…ちょ、調子にッ……あん゛ッ!?」
腰から辛うじて引き抜いたレーザー・ダガーを取り落とし、更にはその腕を拘束され、なおも殴打を受ける。
無様に身をくずおれさせ、目に涙を浮かべたミレニアの口腔からは舌が突き出し、唾液が糸を引いて伝い落ちている。
「おやめ、なさっ、あ゛ぅッ!! ぅッ、や、やぁッ…やめ゛ぇッ…!! かんにんしてぇ゛ッ…!」
メイヴは大した損傷を受けていないが、パイロットの戦意はあと一歩で容易く折れてしまうだろう。

「ひゃあぅッ!? ひにゃあ゛ぁぁぅッ!?」
マチェーテの刃はケット・シーの機体を幾度となく掠め、美しい機体表面をなます切りにしていった。
「ひッ、ひィンッ、ひィンッ!? 」
その度に過剰なダメージフィードバックがアニーシャの体を走り抜け、ぱちぃん! ぶちゃっ! と、切り刻まれた箇所のスキンが液化して飛び散る。
モニター内のアニーシャは撃感とマチェーテの衝撃に翻弄され、滑稽にくるくると舞い踊りながら着衣を切り刻まれ、粘液にまみれていく。
「こッ、こんな、ヤツにッ…! いいように、されるもんかぁッ!」
ボロボロになったパーカーの裾から最後のチャクラム・ソーサーを射出、尻尾の先端にひっかけ、眉間目掛けて前宙で叩きつけるようにして必死の反撃に出る。
「うあぁあぁぁぁーーッ!!」

104 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 19:24:28 ID:yakZ1zPs
>>103
「フホ! いいはんのうでねえか! あのセレニアンっこみてえだ!」
先程までの退屈もどこへ行ったものやら、ブグはすっかり目の前の獲物を甚振ることに夢中だ!
「セレニアンっこもええが、ふつうのヒューマンもオイランによしエサによしだ! フホホホ!」

チャクラム射出直前に一気に距離を詰めるモーターオニ! 密着状態! これでは十分な威力を出せない!
「いい子だ…いい子だ…フィヒヒヒヒヒヒ!!」
抱擁する形になって興奮するモーターオニパイロット! もう少しでなんかが達しそうだ!
「決して離さねえぞ俺の理想のロリータアアアアアアアア!!」

105 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/12(日) 21:09:21 ID:vpVs35Ps
>>104
「クッ……まだ着かないのか…ッ!?」
モニター越しに響く二人の悲鳴に焦りを見せるディランのコックピットに鳴り響くアラート、エンジンが加速の負荷に耐えきれず破損し航行不能になった事を知らせ歯軋りをする。
「ふざけるな!……あの娘達が泣いているんだ!諦めてたまるか!」
必死にコンソールを叩き手を打とうとするが無情にもアラートは鳴り続け、やがてエンジンが停止し行動不能に陥るガン・ビートル。憎々しげにコンソールに拳を叩きつけ、呻くディラン。その右腕に装着されたブレスレットのクリスタルが青く光輝き出す。
「私に力が有るなら……あの二人を護る力が有るなら!」
段々と光が強さを増し、輝きが激しくなりコックピットを光が満たす!
「巨人よッ!力を貸してくれッ!!」

ディランが叫ぶとガン・ビートルは光に包まれ、光が消えるとガン・ビートルは宇宙空間に停止したままで中のコックピットは無人となっていた。
瞬間、突如戦闘空域に巨大な赤い光の球体が現れ、ミレニアに襲い掛かるジ・オーガ目掛けて突撃!一撃で弾き飛ばし距離を取らせると、そのままアニーシャに襲い掛かるモーターオニへ突進!ジ・オーガ同様に吹き飛ばし距離を取らせると丁度ミレニアとアニーシャの前に光の球体が留まり、やがて球体が消えると其処に現れたのは白色の眼を光らせた赤色の巨人。二人の前に巨木のように静かに佇み、ジ・オーガとモーターオニに向き直ると二人を護るように両手を握りファイティングポーズを構え、少女達に執拗な攻撃を加えた悪漢達に立ち塞がった。
「……デュア!」

106 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/12(日) 21:27:51 ID:YK9KirRg
>>104
「ひぃ゛ッ!? あぅ゛ッ、あう゛ッ…!!」
執拗に殴打を受け続けるメイヴ。顔を真っ赤に上気させ、息も絶え絶えといった様子で悶え苦しむミレニア。
「た、たひゅ、け…!」
瞳孔の縮まりきった瞳が、今にも白目を剥こうとしている。

「ぃやああぁぁぁぁぁぁッ!!」
モーターオニの抱擁に包まれ、アニーシャは泣き叫んだ。小悪魔風の雰囲気作りを意識している彼女だが、大の男が特機を伴って情欲をぶつけてくるのは恐ろしくてたまらないようだった。
「やぁだぁぁっ!? 離してぇぇぇぇッ!!」

>>105
その時だった。
二人を責め立てていた二機が、不意に何者かによって蹴散らされた。
「…え…?」
「へっ…?」
涙を溜めた二人の目に写ったのは、特機クラスの巨体を誇るロボット――いや、ロボットと認識するより先に、二人の脳裏には同じ単語が浮かんでいた。
「きょ、巨人…?」
そう形容するのが最適な姿だった。
まるで自分達を守るかのごとく佇む赤き巨人を、二人は放り出されたままの体勢でぽかんと眺めている。
当然、その巨人はアニーシャのセッティングした中継映像のにも、ワイプの枠内に朧げに映り込んでいた。

107エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/12(日) 21:44:32 ID:Ir0u9RYc
>>101
「解ってるよ、ディラン。
モニターで見たけど、あの帝国兵…アイツは女の敵!もう許さない!」
あの嬲る様な戦い方…ツバサの初陣に現れた奴と同じ奴…
恐らくユウセイが言ってたガバノイドだ。
セレニアンの敵なんて云われてたけど、年頃の女のコ相手に…!

>>103
「聞こえてる?遅くなったわね。よく頑張ったね。」
私はあの機体に通信を送って居るけど、あんな状態で返ってくるかどうか…
だけど、あの二人の事だ。強がって通信を返す筈だ。
あんな二人でも、助けないと…!
コズミックオーダーとして…!
同じ女性として…!

>>104
「このガバ野郎!女の敵!もう許さない!
このエミリー・ホワイトが成敗してあげる!」
私は現地に到着するなり、敵機に通信を送る。
そして、機体に装備されたライフルを撃ち放つ。

>>105
「ディラン!?」
ガンビートルの反応が消えた!?
コクピットは無人状態…
機体を破棄したのか…
燃料切れか…仕方無い…
だけど、ディランは一体何処へ…!

「あれは…!?」
現れたのは見たことの無い…あれは特機…
いや、あれは機体と言うより巨人…!
コズミックオーダーには様々な神話が語り継がれている。
恐らくあれも…
だけど、あの巨人は突然現れたのか、誰かが召喚したのか…それが解らない…
召喚したとしたら、一体誰が…!

108 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/12(日) 22:14:37 ID:YK9KirRg
「お願いします! ホロニック・スフィア!!」
フェアリー両機のスピーカーを通して聞こえてきたのは、ミレニアとアニーシャが散々に扱き下ろしたセレニアンの少女の声だった。
「なっ!? つ、ツバサ…!」
直後、二機の脇をすり抜けるようにして、緑色の光球が3つ、モーターオニ目掛けて飛翔し、その巨体を取り囲む。
「サンダー・クラウド・フォーメーションです! そこっ!!」
どこかで聞いたような、それでいて少なくともDRESS/Mのマニュアルではお目にかかったことのない謎のフォーメーション名が発されるや、光球は眩く光り、破裂すると共に三基の間に高圧電流を迸らせ、モーターオニを攻撃する。
ミレニアとアニーシャが振り返ると、そこにはロッドをぶんぶん元気に振り回しているシルキー/Mの姿があった。
「あ、あなた、何をやっているの!?」
色々な意味で困惑したミレニアが叫びをあげる。
「スフィアの皆さんに攻撃指示です!」
「そうじゃなくて…! シルキーは輸送機共々、オービタルに直行のはずでは…」
そこまで言いかけて、ミレニアはぐっと口をつぐんだ。
シルキーと共に戦列を為すオーダーの機体が目に入ったからだ。

>>107
「…よ、余計なお世話です! …あ…あそこから、巻き返す所だったというのに…!」
「た…たすかったぁぁ…」
虚勢を張るミレニアと、目に涙を溜めたまま粘液まみれでへなへなと脱力するアニーシャ。当然その情けない姿も、オーダーの勇姿共々避難民に筒抜けである。
「アニーシャ! もう結構よ! 映像配信を止めなさい!」
ミレニアが口煩く命令する。正しく顔真っ赤という状態である。

109 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 22:20:25 ID:yakZ1zPs
>>105-106
おお、ブッダ! 寝ているのですか! 欲望の猛りをぶつけるが如く暴れ狂う二頭の人喰い鬼!
確かに彼女らには慢心があった。増長があった。しかし…ここまでされる言われはない!
このまま少女たちは妖精の羽をむしりとられオイランとされてしまうのか!? …その時!
「グワーッ!」「グワーッ奇襲!?」
吹き飛ばされる人喰い鬼たち! パイロットは位置情報を確認…自機は弾き飛ばされ、フェアリーは掻っ攫われ、彼我の距離は相当に離れてしまっている!
怒りを込めて睨み据える方向、そこに堂々とファイティングポーズを構えるのは赤い特機…否、巨人! おお、巨人だ!!

『デュア!』

怒りに燃える超自然の声はエテルを震わせ、飢狼たちの耳にも届いた。
無論、遅れて戦域に到達せんとするミックにも。
「あれがガイア・セイヴァー…ディラン=サンの特機…」
ミックは事前に情報を得ていたが、あらゆる項目にUNKNOWNが記されたデータを鵜呑みにすることはできなかった。
しかし今ニンジャ感覚が告げるところでは、ガイアのパワーはアーチ・ニンジャが駆るニンジャ・フレームにも匹敵しよう。いや、それ以上でも何らおかしくはない。
「まさかあれは…コジキ・バイブルにも記された光の巨人なのでは…?」
そんなバカな。ミックは自らの思いつきを強引に振り払い、目の前のイクサに再び集中した。

110 ◆tb48vtZPvI:2016/06/12(日) 23:31:11 ID:yakZ1zPs
「ぐぬぬぬぬぬううううう…!」
ガバノイドは唸りを上げた。目の前の巨人は明らかに憎悪すべき敵だ。一方、ニューロン内部で本能が全力で警告を叫んでいる。逃走せよと。
(こいつはマジでクッソやべえ奴だ…)
ガバ語で思考するとともに、改めて冷や汗が湧き出る。
こいつの存在自体が不快だ。しかし、戦力的に…ジ・オーガのスペックで敵う相手では…
「てめえクソデカブツがあああああああああああああああああああああああああああ!!」
モーターオニパイロットが絶叫した。ノイズ混じりの叫びがコクピットに反響し、ブグは閉口した。

>>107
ブグが状況を打開せんと努めていると銃撃!「グワーッ!」肩部装甲被弾! 被害中度!
「おんどりゃあ!」敵機…スノウローズを発見するとともにガトリング・スマッシャーで反撃!

>>109
「クソカスファッキン共が…グワーッ!?」ホロニック・スフィア直撃! 胸部装甲被害中度!

ダメージの大きいメイヴとケット・シーを後方に控え、ライフルを掲げるスノウローズ、ロッドを振り回すシルキー、油断なくファイティングポーズを構えたままのガイア・セイヴァー、そこに到着するシバラク・カスタム。明らかな形勢逆転構図だ!

「…おめえ、じょうきょうがわかってねえな」砂を噛むようにブグが言った。
兵力は質・数共に不利。撤退して然るべき状況だろうが、モーターオニパイロットは血が巡りすぎて判断出来ないのだ。
「知るかクソガバ。俺の飢えがてめえにわかるかよ」味方の悪態にまた並行するブグ。
そこへちょうど帝国援軍到着! 二隻の艦艇からヒトガタが次々と吐き出される!
…それでもブグは、嫌な感覚が拭えなかった。

「フム、まだオカワリがあったか」
泰然たる態度でミックは腕組みした。そこには一切の油断慢心、衒いの陰もない。
「だが諸君。今更敵が数の優位を誇ろうとしても、士気横溢した今の我らに太刀打ちすべくもない。キルマークを増やす機会だ、各自奮励努力を期待する」
ミックは告げる。コズミック・オーダー部隊指揮官のみに許された力ある言葉を。

「――コズミック・オーダー、アッセンブル!!」

111 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/13(月) 00:05:24 ID:groot4tE
「ダァッ!」
ミックの言葉にガイアは頷く仕草を見せて、艦艇から現れるサイクロプス達に気付くと右手を伸ばし指先からスラッシュショットを連射、そしてエミリーにジ・オーガを任せ自らはモーターオニへとファイティングポーズを構え、デブリを足場に跳躍し巨体には不釣り合いなほど軽やかな動きで宇宙空間を駆け抜けモーターオニへ体重を乗せた急降下キックをボディ目掛けて放ち。

112エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/13(月) 19:53:15 ID:W7Q.T/1A
>>108
「あの機体は…ツバサ!?」
増援に現れた機体…
特徴は前に見た時と少し違うけど、あれは間違い無くツバサの愛機だ。
恐らくはパーツの組み換え…
ツバサは難なくそれを使いこなしている。
あのコ…セレニアンはガバノイドに強烈なトラウマを植え付けられている。長年に渡って…
セレニアンの呪われた歴史…もしかすると、ツバサなら…!

「これは失礼…ミレニアお嬢様。」
返して来たか…
思った通り、ミレニアお嬢様は強がったセリフを返して来た。思った通りだ…
それに引き換え、アニーシャは意外と素直だ。

>>110
「チッ…」
敵機、あの指揮官用の機体に載ってるのがガバ野郎か…
ダメージこそは与えたけど、流石は帝国の戦闘民族。
私の機体を直ぐに探して当てて来たか…
だけど、そこで棒立ちする私じゃ無い。
横に移動し、回避行動を取る事で被害を最小限に抑える。

「一点集中!」
私はスノウローズに装備させたランスを構え、槍の先をガバ野郎の機体に向ける。
そしてランスの先にエネルギーを溜め込み…

「フォトンランチャー!」
ランスに溜め込んだエネルギーを放出。
放出されたエネルギーはビームとなり、あのガバ野郎の機体へと走る!

113 ◆tb48vtZPvI:2016/06/13(月) 22:43:39 ID:7jtml50c

>>111
出鼻をくじくスラッシュショット掃射! 襲われたサイクロプス隊被弾!「「「グワーッ!!」」」うち一機大破!
「アイエエエ! 巨人!? 巨人ナンデ!?」「巨人の…騎士!?」「なんか俺ら…タイガー・テイルでも踏んでねえか!?」
共和国軍を蹂躙し、満足していた彼らにとってこの展開はサンダー・イン・ブルースカイだったに違いない。楽な仕事が一転、生きていれば儲け物というハードモードに!

「何をしている! 増えたからといって敵はまだまだ少数だぞ! ヤッチ・マイナー!」
ジ・オーガに乗った指揮官が叱咤! 流石に歴戦の戦士である飢狼隊はフォーメーションを組む!
…そこに、色付きの風が吹いた。死をもたらす蒼き鉄の風、シバラク・カスタムが両手にアサルトナイフを握って切り込む!
「イヤーッ!」2本の刃が翻り、肩口からX字に切り裂かれるサイクロプス! 致命的ではないものダメージ甚大!「グワーッ!」

>>112
白い騎士ヒトガタ…スノウローズから睨みつけるようなアトモスフィアを感じブグは自機に回避運動を取らせたが「…グワーッ!」ボディへの直撃は避けたものの左脚部にフォトンランチャーがヒット消滅!
「おどれぁ! しねやぁい!」ブグの頭に流石に血が上る! 肉薄するスノウローズへアックスを振りかざし肉迫!
…それでもブグは常に心の何処かで逃走するチャンスを測っていた。

114 ◆tb48vtZPvI:2016/06/13(月) 22:54:40 ID:7jtml50c
>>111
「目障りなんだよてめえらあああああああああああ!!」
日頃の鬱憤を晴らすのを妨げられ、モーターオニパイロットは完全に逆上! カラテ戦士めいて構えるガイアへ大口径バルカンとアサルトキャノンの弾丸をばら撒きつつ接近!
「クソッタレがああああああああああああああああ!!」
モーターマチェーテを大上段より振りかぶり、射程に入ったと見るやフルブーストの勢いを借りてガイアへ叩きつける!

115 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/13(月) 23:19:18 ID:groot4tE
>>114「デュア!」
後ろのフェアリー・フォースの機体達に届かないように掌から円形のバリアを発生させ大口径バルカンとアサルトキャノンモーターの弾幕を全て受け止めると、オニの大上段の構えから解き放たれたモーターマチェーテが唸りを上げてガイアに襲い掛かる!次の瞬間!見よ!モーターマチェーテを真剣白羽取りで受け止める光の巨人の姿を!そのまま左右の掌からから力を込めてマチェーテを破壊しに掛かるガイアの瞳には気迫が滾っていた。

116 ◆tb48vtZPvI:2016/06/13(月) 23:40:17 ID:7jtml50c
>>115
ガイアの規格外のパワーの前に耐えかね、折れ砕けるマチェーテ!
しかし敵も然る者、大刀がガイアに受け止められた時には既にグリップから手を離している。
「くたばれッ!」至近距離よりアサルトキャノン発射! しかも一度や二度ではない! 砲身が焼き付くまで撃つ構えあり!

117 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/13(月) 23:57:03 ID:groot4tE
>>116
「グゥアッ!?」
然しものガイアもキャノンの一撃ならば耐え凌ぐが、二度三度、否それ以上の連撃には耐え切れず大きく後退、然し射撃を受けながらも腕を×字に構え防御の姿勢を取るとそのままアサルトキャノンの弾幕を全て受け切り、尚も巨体は揺るがず再びファイティングポーズを取り。
「デュア!」
掛け声と共にモーターオニまで宇宙空間を真っ直ぐに進み、そのまま右腕を後ろに引き絞り渾身の力を込めたストレートパンチをモーターオニの胸部へ放つ!更にそのまま左ストレート!続けて右ストレート!

118 ◆tb48vtZPvI:2016/06/14(火) 01:41:36 ID:f/WT8B4c
>>117
「グワーッ! グワーッ! グワーッ!」3発のストレートを喰らい胸部装甲が大きく陥没!更に衝撃によりパイロットもグロッキー状態に近い!
「クソ…クソ…クソ…」ブラックアウトしかける視界と意識。悔しいが、こいつに通用する武器はもはやない。
「クソ…クソクソクソ…!」故に、彼はガイアに組み付かんと再度フルブースト。自爆スイッチに手を伸ばして。

119 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/14(火) 08:15:24 ID:oOyoebdo
「……デュア!」
破れかぶれかフルブーストで此方に突貫するモーターオニの挙動にガイアは威風堂々と見据え右腕をゆっくりと後ろに引き絞るとガイアブレスからエネルギーが生まれ光輝き、正拳突きを放つようにモーターオニへ右腕を突き出すと拳から巨大なエネルギーの奔流がモーターオニ目掛けて一直線に伸び襲い掛かる!

120エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/14(火) 20:05:35 ID:daqNXbrg
>>113
「外した…!?」
当たりはしたけど、ヒットしたのはボディでは無く左脚部。
私の気配を察知したのか、咄嗟に回避行動を取っている。
かなりの経験を積んでると見える。
それに…

「チッ…!」
あのガバ野郎…突っ込んで来た。
避けられない…さっきのフォトンランチャーで隙が出来た。
私はスノウローズの右腕部分を使い、アックスを受け止める。
ダメージが大きい、千切れはしなかったけどコクピット内の警告表示が鬱陶しい。
そして…

「汚らわしい!」
私は逆の手に持っていたランスを振り、打撃と熱によるダメージを狙う。
小振りだから大きなダメージは期待できないけど、出来ればコイツを振り払いたい…!

121 ◆tb48vtZPvI:2016/06/14(火) 23:16:12 ID:f/WT8B4c
>>119
朦朧とするモーターオニパイロットがこの世で最後に見た光景、それは眩い光の奔流だった。「グワーッ!」彼の物理肉体は機体共々光に呑まれ、原子の塵に還った。

>>120
ガキンッ! ランスとアックスがぶつかり合って火花を散らす!
コロニー内での戦闘といい、この白いヒトガタはしつこくブグを狙ってくる。またややこしい時にややこしい相手に睨まれたものだ。逃げたとしても執念深く追ってくるだろう。さて、こいつをどうやって撒くか…

122エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/15(水) 18:58:13 ID:lwreGp.c
>>121
「ガバ野郎め…」
手強い…
アックスを辛うじて受け止めているけど…
相手は状況的に不利。撤退のチャンスを伺っている筈だ。
女の敵として、コイツだけはと思っていたが…
え?女の敵…!?
そうだ…

「………!!」
私は後方に下がり、相手との間合いを取る。
コイツを倒すのは私で良いのか?
私が倒せば、コイツから辱めを受けたフェアリー・フォースの立場はどうなる。
それに…

「少佐…私の相手、ガバノイドはセレニアンの天敵です。
ユウセイの話では、セレニアンであるツバサはガバノイドの恐怖に耐えられなかったそうです。
あのガバノイドは執拗にツバサを狙うでしょう。
ですが、我々が守った事でツバサの成長はあるでしょうか。
セレニアンはガバノイドの呪われた歴史から解放されるでしょうか。
彼女に英雄になれとは言いません。
ですが、ツバサがガバノイドの恐怖を克服する事で、セレニアンがガバノイドの恐怖から解放される第一歩になるかも知れません。
私情を挟む様ですが、此処は敢えて、ガバノイドを撤退させるべきかと。」
私は敢えてガバノイドに撤退の機会を与える事を、通信で少佐に伝える。

123 ◆tb48vtZPvI:2016/06/18(土) 23:37:19 ID:Eldohxuc
「おのれ!」ジ・オーガはアサルトライフルを交代しつつ射撃。それをデブリに隠れ、あるいは盾にして距離を縮めるミック。シバラク・カスタムの装甲は最低限のものしかなく、小口径弾でさえ当たれば致命傷になり得る。ウカツな接近は出来ない。
しかしミックは追い詰めているという確信を深めていた。あるポイントに差し掛かった隊長機の動きが、完全に止まった。「…アババババーッ!」機体に、そしてコクピットにまで流れる電流! 
そこは放置されていたEMPトラップを張り巡らせてあるポイントだ! ナムサン! しかし機体のヒューズを焼き切るまでには至らない!
トラップにハリツケ状態のジ・オーガを照準し、ミックは未射出のスラッシュ・リッパーを手で取り出し、手で展開した。それを握るとシバラク・カスタムはカメラアイをジ・オーガに向けたまま、可動域ギリギリまで腰を後ろに回す。
読者の中にニンジャ戦闘術について知識のある方もおられよう。そう、これこそ「ニンジャCQC」13の超S級ヒサツ・ワザ「メガ・スリケン」のムーブだ!
無論、サイクロプスはニンジャが駆るニンジャ・フレームではない。これは熟練サイクロプス乗りの間で伝わる裏技…リミッター解除関節による「超電導スイング」を用いた、言わば擬似メガ・スリケンである。
シバラク・カスタムは大型スリケンめいてスラッシュ・リッパーを電磁投射! 超高速回転飛来殺戮ギロチンめいて通常の三倍を大きく上回る速度のリッパーが、ジ・オーガの胴体を真っ二つに切り裂く!
「……アバーッ!」爆発四散!
直後、間欠泉めいて右腕関節部から噴き出るオイル。内部診断をするまでもなく、右腕のギアの一つが砕け、内部機構の一部から蛇の舌めいて電弧が踊る。どうやらこのあたりが限界らしい。

124 ◆tb48vtZPvI:2016/06/18(土) 23:55:30 ID:Eldohxuc
>>122
そしてエミリーからの通信。
「その判断を許可しない。いいかエミリー=サン、オヌシはガバノイドを侮り過ぎている」
ミックはそう断じた。
共和国でのガバノイドは一切の区別なく死刑相当以上の重犯罪者の扱いであり、その人権はないに等しい。それだけ彼らが好き勝手のロウゼキを繰り返したからでもある。
騎士団は惑星セレニア解放作戦に参戦し大きく貢献したが、その一連の記録はガバノイドの悪辣さについて余すことなく書き記している。
その一部に曰く、「ガバノイドを見逃してはいけない。彼らは報復の際、より一層邪悪に、より一層凶暴になるからだ」と書いてあることもミックは記憶している。

一方、ブグは敵機の動きがおかしいことにうっすらと気づいた
(ようやくチャンスが見えてきたぜ…)
死を覚悟していたブグだが、こうなれば生存可能性に賭けてみたくもある。虎の子のフラッシュグレネードとチャフ・マインを同時点火する。
…ザリザリザリザザザッ! オーダーのレーダーに一瞬激しいノイズが走る! ブグはジ・オーガの背部スラスターにありったけの推進剤を突っ込み、一目散に逃走!
(逃げるが勝ちってコトワザもあるもんな…あばよセレニアン娘、縁があったら俺専用のオイランにしてやるぜ)

125 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/19(日) 07:37:48 ID:fOZMPQTk
「グゥアッ!?」
ブグ機から放たれるフラッシュグレネードとチャフに視界が阻まれ、動きを止めるガイア。その間に逃走するブグ機、直ぐ様追いかけようとするが胸のクリスタルが赤く点滅し、動きを止めてしまう。先程の戦闘のダメージと大技を放った為にエネルギーを消費し過ぎたようだ。

126エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/20(月) 20:02:58 ID:.qa31f52
>>124
「ですが少佐!!」
頑固者め…
確かにガバノイドは重犯罪者だ…
此処で逃せばアイツは凶暴になって帰ってくるだろう。
だけど…セレニアンであるツバサがアイツを倒す事が出来れば…!!

「………」
ガバノイド、やはり逃げたか…
問題無い…私はフェアリーフォースが…ツバサがアイツを倒すと信じてるからね…!

127 ◆tb48vtZPvI:2016/06/20(月) 22:31:26 ID:KPPxyduQ
猛烈な勢いで逃走するジ・オーガをミックは追おうとした。が、脚部関節各所に異常検出。舌打ちしつつ、追撃を断念する。
「…悪運の強い奴め」
ミックはレーダーで反応を検索した。残存敵数は少ない。
内一機が背後から斬りかかってきたのでミックは後ろ回し蹴りで反撃。「イヤーッ!」「グワーッ!」そのままサイクロプスは機能停止。
「各位に通達。敵機に降伏の意志はなし。掃討に移る。フェアリーも行けるな? それとディラン=サン、応答せよ」
損傷は激しいがまだ作戦続行可能と見られるフェアリーと、胸部のクリスタルを点滅させたまま動かないガイア・セイヴァーへ応答を求める。

128 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/21(火) 00:00:42 ID:ma8H665.
>>127
「はいっ! いけます!」
シルキーは掌から新たなスフィアをアウトプットし、敵群目掛けて投射する。
「くっ、誰にモノを言って……」
ロングボウを引き絞るモーションを取り、敵機に狙いを付けるメイヴ。が――
(…照準が…定まらない…?)
フェアリー・フレームの高度な射撃管制システムをもってさえ、ロックオンが不能なほどに照準がブレる。原因は単純、ミレニアの手がガタガタと震えているからだ。
「…っ…! アニーシャ!! なにを呆けているの!!」
「ふぇっ…? ご、ごめん! アニーもやる!」
ツインマシンガンで援護射撃を行うケット・シー。イニシアチブがオーダーにあることを認めたかのような、控えめなアクションだった。
「お嬢さ……隊長! お怪我はありませんか?」
ツバサからの通信だ。余裕さえ感じさせる穏やかな声音は、ミレニアに後ろめたさと苛立ちを喚起させた。
「…ふん…見ればわかるでしょう。私語を挟む余裕があるなら、すみやかに敵を掃討なさい」
「はいっ、隊長!」
ミレニアは痺れを切らした化のように、震える手でロングボウを放った。レーザーの矢は標的のサイクロプスを捉えることなく、宇宙の闇に消えていった。

129エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/21(火) 20:50:20 ID:fg6xjx3Y
>>127
「了解です、ミック少佐。」
ガバノイドが載ってる指揮官機は消えた。
だけど、残りの敵は降伏する気は無いようだ。
ミック少佐に追撃を仕掛けて返り討ちにあってる奴がいる。
ミック少佐相手にそんな攻撃が通用するはずが無い…

「これより、残存敵の帰討に入ります。」
指揮官機は逃したが、残りの敵を逃がすつもりは無い。
私はスノウローズに装備されたライフルを構え、残った敵に撃ち放つ。

>>128
「フェアリー・フォースのミレニアお嬢様。
その程度だったのですか?」
やっぱりお嬢様か…
放った矢が標的と全く違う場所に飛んでいる。
ミレニアお嬢様の機体は金持ちチームの機体。
その機体が照準性に欠けるとは思えない。
外した理由は恐らく、パイロット。
手ブレが激しいのだろう。
シミュレーションと実戦の違いを知ったのか…
あのガバノイドへの恐怖心か…
私は敢えて挑発とも思える通信を送ったが、お嬢様の事だ…
私からの励ましで効果があるとは思えない…

「ツバサちゃんはフェアリー・フォースのエースだね!期待してるよ!」
ツバサはミック少佐の通信に対して、直ぐに行動を取っている。
あのコはあのコロニー内での戦闘が初陣だった筈。
あのコ…ツバサはもう、民間人パイロットとしての域を超えて居るのかも知れない!
あのコを軍人と見て良いだろう…!
因みに、ツバサに送った通信はミレニアお嬢様とアニーシャにも同時に送っている。
基地内でツバサをバカにした態度に対する仕返しをして無かったからね…

130 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/22(水) 12:01:46 ID:XPm1zBQo
「ミック少佐……」
僅かに残ったエネルギーを振り絞りハンドスラッシュを放ち残敵を処理しつつミックの呼び掛けに巨人は応じるように向き直り、巨人は言葉をミックに返し。

131 ◆tb48vtZPvI:2016/06/22(水) 22:29:04 ID:O7VKIXE6
>>128
強敵にサンドバッグ同様の扱いを受けたミレニアとアニーシャはすっかり怖気づいてしまったらしい。
一方、彼女らが撃ち漏らした敵機をツバサのシルキーが確実に仕留めていく。
エミリーもフォローに回ったことだし、もう自分が前に出ずとも問題無いだろう。

>>130
ガタが来た機体を庇い後方へ下がろうとしたとき、ガイア・セイヴァーからの通信。
「どうした、ディラン=サン? あとで訊きたいことはいくらでもあるのだがな」
例えば、胸部赤色クリスタルが点滅する意味などだ。ミックはディランからの返答を待った。

132 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/23(木) 20:46:24 ID:WvTSOiXU
「ええ、此方も伝えたい事が有ります。」
ミックの返答に応えるディラン、まだ不明な点も多い為に出来る限り相手の疑問に応えるつもりだが、応えれないものも有る。そう付け加え、ミックに返答して。

133 ◆tb48vtZPvI:2016/06/23(木) 21:12:41 ID:4czz632k
「了解したディラン=サン」

撃破報告が止んだ。ミックは念の為にレーダーを最大反応にして走査。反応無し。
「こちらジン・ミック。敵機完全沈黙を確認」
通信の直後、シバラク・カスタムのレーダーに共和国共通信号が新たに映る。ドナール准将が用意してくれた艦艇だ。
「ちょうどお迎えが来てくれた。総員、オツカレサマだ。帰投後24時間は自由時間とするが、その間にレポートを私に提出せよ」
ミックは断固として言い足した。「なお、フェアリー・フォースも例外ではない。いいな?」
これに関しては一切の反論は許さないつもりだ。本来彼にミレニアたちに対して何の権限もないが、堂々と命令違反をされればミックとて立場がなくなる。ミックの感覚としては譲歩に譲歩を重ねた末の、罰とも言えぬ罰だった。

134エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/24(金) 21:47:54 ID:UC3YuEME
>>133
「了解です。お疲れ様でした。」
艦艇が迎えに来たようだ。
ミック少佐は帰投後の24時間をフリーとしているが、その間にレポートを提出しろと言っている。
レポート…私が書くべきはやはり、ガバノイドが載っていた指揮官機を逃した事だろう。
私はこの事に関して、いつかフェアリー・フォースがあのガバノイドを倒す事、セレニアンであるツバサがアイツを倒して、セレニアンがガバノイドの恐怖から解放される第一歩になると信じている事、これを書いてミック少佐に提出するつもりだ。
これだけは譲れない。
それにしても…

「ミック少佐…ディランは一体何処へ…
それに、あの巨人の様な特機…あれは一体…」
ディランが載っていた支援機が燃料切れを起こした時、コクピットにはディランの姿は無かった。
一体何処へ消えたんだ…
そして、急に現れた謎の巨人…
恐らく神話に伝わる巨人か何かだろう…
だとしたら一体何故…
何かに反応したのか…一体何に…?
それとも誰かが呼んだのか…それなら一体誰が…?
まるで解らない…

135 ◆h9Hr5c.eFE:2016/06/25(土) 00:54:38 ID:I.Wb8E6E
>>129
「おっ…お黙りなさい! …センサーの不調…いいえ、手が滑っただけよ!」
ミレニアが吐き捨てるように返事をする。国防軍最新鋭機の威信と自身のプライドを天秤にかけ、前者を取ったらしい。
「え、エースだなんてそんな…とんでもないです! オーダーのみなさんのおかげですし、私なんかより二人きりで戦ったお嬢様とアニーシャちゃんの方が立派ですし……」
両掌を振って狼狽するシルキーの姿からは、謙遜するツバサの表情が容易く想像できた。照れ隠しというよりは、単純にびっくりして、困惑している様子である。

>>133
「お、終わった…けど…うぅ…」
アニーシャは肩を落としながらも、悔しげだった。絶好のプロモーションの機会が台無しになったばかりか、むしろ恥とフェアリー・フォースへの不審を拡散するような結果になってしまった。
しかし、彼女はまだそれを深刻な過失とは考えていなかった。醜態を晒したのはたかが100人足らずの避難民に対してのみ。今回は失敗したが、あわよくばいずれまた、もっと大きな舞台で――そんな風に考えているようだった。
「くっ……まあいいでしょう。今回は特別にあなた方の流儀に従ってあげるわ」
ミレニアはミックの命令に露骨に不服な表情を浮かべた。ドナールからも失態を追求される恐れがあったが、それは強気に出てしまえば丸め込めることだ。
ミレニアは苛立っていた。こんな惨めな結果など認められるはずがない。
震える手で固く拳を作り、小声で呟く。
(次はこうはいかないわ。次こそは…覚えていなさい…)
憎悪の矛先はあのガバノイドと同時に、オーダーにも向けられているようだった。

136 ◆HU7XfvOYA2:2016/06/25(土) 09:50:17 ID:RDLAZgHg
「デュワッ!」
巨人は一声発すると光の玉となり、一瞬の瞬きの後に宇宙空間から消え失せ、新たに現れた艦艇の格納庫にディランが出現し、床に大の字になって倒れ伏せて。
「……疲れた」

137エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/06/25(土) 19:57:07 ID:MD7dqg6E
>>136
「ディラン!!」
格納庫に戻ると、そこにはディランの姿があった。
私は急いでディランの下へ駆けつけ…

「何処行ってたのよ!!心配したじゃない!!」
ディランが支援機から消えて、何処に行ったのかも解らなかった。
でも…疲れたって事は、何かやってたんだ。
こんな所に倒れ伏せて…

「ごめん…私がフェアリー・フォースへの援護にもっと早く到着していれば…」
ディランは支援機を使い、急いでフェアリー・フォースの下へ向かっていた。
飛ばした分、燃費も悪くなる筈。
私がもっと早く到着してれば、もう少し余裕が出来たかもしれない…

138 ◆tb48vtZPvI:2016/07/01(金) 23:32:03 ID:1gUPJj7s
輸送艇。艦長と副長。そしてミック。航路図を見ながら会話。
ミック「救難信号?」
副長「ええ。船籍はサイラス3防衛艦隊旗艦のそれと一致します。それが、廃コロニーに避難中ということで」
艦長「どう考えても怪しすぎるだろうそれは」
ミック「私も艦長と同意見だ。現状、割ける戦力もない。部下たちは疲れ切っている」
副長「無視する、ということでよろしいでしょうか?」
首肯二つ。話はそれで終わり…そのはずだった。

139 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/02(土) 04:07:49 ID:HbS1t6aE
>>138
「こちらフェアリー・リーダー。聞こえて? オーダー」
騎士団が機体と共に半ば隔離・軟禁されているブロックへと通信が入る。声の主は先の戦闘で醜態を晒したばかりのミレニアだった。
「近隣の廃コロニーより発せられている救難信号をキャッチしました。我々は識別コードよりこの発信源を防衛艦隊旗艦、ハルマッタンと推定。事実確認および救助のために出撃するわ」
ミック達にしてみれば頭の痛くなる話だったろう。地面から顔を出している地雷をむざむざ踏みに行くようなものだ。
ミレニアはただでさえ思慮が浅い所へ加え、焦っているのだ。晴れ舞台となるはずだった初陣で失態を演じ、嫌悪しているオーダーに救われる形となった。このまま本拠地に帰還したとあっては国防軍復権の象徴、フェアリー・フォースとして名折れもいいところである。
「なお、本ミッションに対してオーダーの介入は一切許可しません。ハルマッタンとの通信も全て機密回線にて行います…我々が本艦を誘導するまで、そこで大人しくしていなさい」
つまるところ、彼女は実績という手土産を欲しているのだ。あわよくば基地指令に恩を売り、この活躍を大々的に取り沙汰してもらえる。そんな青写真も描いているのかもしれない。
「あ、あの……」
新たにウィンドウがワイプし、ツバサが会話に加わる。
「万が一に備えて、ちゃんとした装備で臨みますので、皆さんご心配はなさらないでください。
何事もなく救助対象の方々を保護できればいいなって、思ってますけど……」
ミレニアも彼女もT-スキンに着替えていた。すでに出撃の準備が整っているということになる。
ツバサはどうやら嫌な予感を覚えているらしかったが、口にしている言葉は紛れもなく本心なのだろう。善意は美徳であると同時に危うくもあるということか、ミックの評した「戦いに向いていない」という人物表は実際に的を射ていた。
「ね、ねぇお嬢…ほんとに行くの…?」
アニーシャの声だ。明らかに気の進まない様子が伺える。
「ならあなたは、有りもしないリスクに怯えて基地指令をむざむざ見捨てて帰るというの? 救難信号は暗号化パターンまで含めて間違いなくハルマッタンのもの。何を不安がることがあるの?」
「そ、それはそうだけどさぁ…」
「…フェアリー・フォースは共和国の救世主になる部隊よ。怯えや戸惑いは恥と知りなさい、アニーシャ」
ミックが制止の声をかけても、もはや聞き入れる耳は持たないだろう。
無能極まりない指揮官に率いられた少女らは、どのみちそう遠くない未来、オーダーの預かり知らぬ場所でひっそりと全滅の運命を辿るだろう。
ここで見捨てたところで、さしたる影響はないのかもしれない。

140 ◆HU7XfvOYA2:2016/07/02(土) 20:32:16 ID:SyaqPWwQ
>>137
「ゴメン…ちょっと色々あってね。」
エミリーから怒りと心配が入り交じった声にディランは弾かれるように上体を起こして反応し、すまなさそうに頭を下げて謝罪すると謝る相手に疲れた表情を笑顔に変えてサムズアップして見せて。
「大丈夫、それに彼女達を守れたんだからさ。謝る事はないさ。」

141 ◆tb48vtZPvI:2016/07/03(日) 01:38:01 ID:IE8T1x.Y
>>139
ミレニアの通信に無表情・無言を貫いたミックは、何事もなかったかのように中断していた作業に戻った。即ち、シバラク・カスタムの修復及び再調整である。
幸いというべきかサイクロプスの予備パーツは腐るほど回収してある。保存しておいたパラメータを適用すればいいだけだった。
ミレニアという娘が簡単に反省したりしないことは予想通りだった。
彼女たちにかけられた期待と、それによる重責。そこにミレニアの自意識が掛け合わされれば、功績に逸るのは自然な感情だろう。まさか喉元も過ぎない内に抜け駆けを繰り返そうなどとは流石に思っていなかったが…
要するに、ミックにも言いたいことや思うことはあった。

142 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/03(日) 03:20:15 ID:D8KDvF.6
出撃から20分の後、フェアリー・フォースは朽ち果てたコロニーへと足を踏み入れた。
救難信号の発信源はこの居住エリアで間違いないようだが、据え付けられた太陽灯は当然機能しておらず、真っ暗闇の廃墟の中を進んでいく形になる。
「な…なんかさぁ…敵とかよりも、もっと出ちゃいけないのが出てきそうじゃない…?」
フェンサー装備に換装したケット・シーがおずおずと周囲を見渡す。赤外線センサーを通して見る街並みは荒涼としており、目につく高層ビルの大半は崩れ落ちて瓦礫の山に変わり果てている。
「で、出てきちゃいけないものって…た、たとえば…何のことでしょう…?」
「そ、それはほら、言っちゃえばオバ…」
「お、お、おやめなさい! 何を非科学的な!」
フェアリーは三機ともヴァルキリー、フェンサーからなる近接戦闘仕様の装備であった。万が一施設内で戦闘が発生した場合、メイジは過剰な火力が危惧されるし、ガンナーは前衛あってこその後方支援タイプであるため、用途に適さない。
唯一近接射撃戦に特化したケット・シーのガンナー装備は、モーターオニから受けた損傷を修復中である。あと一時間も猶予があれば扱いなれたDRESSで出撃できたことをと思うと、アニーシャはいっそうブルーな心境になった。
「指定ポイントに到達。機密暗号通信を開始します。フェアリー2、フェアリー3は周囲警戒・厳。いいわね」
「りょ、了解っ!」
「了解です!」
メイヴが機密通信用の帯域を使い、暗号化されたメッセージを送信する。

<フェアリー・フォース、救援に到着せり。応答を求む>

143 ◆tb48vtZPvI:2016/07/03(日) 18:15:24 ID:IE8T1x.Y
>>142
ハルマッタンは暗号通信で応答。所在ポイントとその経路をフェアリーへ伝える。

ところでこの廃コロニーの元の名はHLM-5500。共和国の造船コロニーであったが、帝国軍の大規模攻勢時にやむなく放棄された。
取り残された資材は宇宙海賊やジャンク屋、スカヴェンジャーなどに荒らし尽くされ、今やガランドウの無数の区画が名残として見受けられるのみである。
それでもオニールタイプの巨体は0.8G程度の重力を途切れることなく生み出しており、恐らく半永久的に自転し続けるだろう。

フェアリーたちが歩を進めると、ノイズ混じりの動画がスクリーンへ大写しになった。年の頃は12、3歳、金髪紅顔の美少年だ。恐らく司令官の侍従だろう。国防軍では幼年学校で優秀な生徒を研修生として側に置く風習がある。
本来艷やかであろう金髪は油染みており、顔面は蒼白。大きな目は涙目に揺れている。余程恐ろしい目を見たのだろう…
『こ、こちらハルマッタン。司令官閣下以下、僕も含めて生存者10名です』
フェアリーのカメラに横たわるハルマッタンの巨体が映る。あちこち装甲板が大きくえぐれ、砲塔の殆どがもぎ取られ、至る箇所に弾痕が穿たれている。まさに満身創痍、キールブロックが損傷していないのが奇跡だ…
『救援を要請します。早く、助けてください…お願いします…』
少年の目に涙が浮かぶ。これを見れば、冷徹極まりないあのネズミのニンジャ騎士でさえ哀れを催しただろう…

144 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/03(日) 21:02:24 ID:D8KDvF.6
>>143
「隊長!」
生存者の姿を目にして、真っ先に目を輝かせたのはツバサだった。
「ほら、ご覧なさい。あなたの杞憂だったのよ、アニーシャ」
「……」
得意満面といった顔で髪をかき上げるミレニアに対して、アニーシャは怪訝な表情を崩さなかった。
「年端もいかない子が、あんなに心細そうにして……すぐに助けにいってあげましょう」
「もちろんよ。指定座標まで直ちに移動。いいわね?」
スラスターをホバーモードで点火し、移動速度を上げるメイヴ。続くシルキー。
「ね、ねぇ、待ってよ二人とも!」
それを追いかけながら、アニーシャは彼女には珍しい真剣な様子で呼び掛ける。
「どうしたんですか、アニーシャちゃん?」
「この期に及んで、見苦しくてよ? アニーシャ」
「あ、あの…アニー、戦艦のこととかよくわからないけど、ハルマッタンって、ものすごく大きな艦なんでしょ? たぶんパイロットやブリッジの人達以外にも大勢が乗ってたよね? その中に10人だけ人が残るなんてこと、有り得るのかな…?」
不安げな声を受けて、ツバサもふと考えを巡らせる。このコロニーへの不時着自体は、たとえ生存者が僅かであったとしてもオートナビゲーションで行えないことはない。
しかし、3桁台のクルーに加え、基地の要人、軍関係者を多数乗せて逃走を図ったはずのハルマッタンが、乗員10名の状態にまで追いやられる状況とはいかなるものだろうか?
「……隊長、さっきの通信…脱出艇のひとつとかじゃなく、ハルマッタンそのものから送られてきた映像でしたよね?」
「そうね。それが何か?」
「私もアニーシャちゃんの言葉を聞いて、変じゃないかなって思いました。あの戦いから離脱に成功して、ここに不時着できるぐらいの損傷レベルなのに、10人しか生き残っていないなんてやっぱりおかしいんじゃ…」
「ハルマッタンには脱出艇が多数搭載されていたわ。おそらく司令官閣下がご自身を省みず、優先的に他のクルーを逃がしたのでしょう」
「じゃ、じゃあその司令官さんはどうして自分で通信をよこさないの? どうして大人の人じゃなくて、あんな男の子が応答してるの?」
「それは…きっと閣下が通信に応じられないほどのお怪我を…」
「お嬢、おかしいよ! さっきから言ってることに全然根拠が無いじゃんっ!」
ケット・シーがミレニアへの不信を訴えるかのように急停止する。
慌ててツバサのシルキーも、忌々しげにメイヴも足を止める。
「…あなた、さっきから何様のつもりなの? わたくしがまんまと罠に嵌められているとでも言いたいの?」
そしてメイヴは振り返るや、つかつかとケット・シーの目前まで歩み寄り、威圧するように見下ろす。
「…取り立ててやった恩を忘れたのかしら? 賎民の分際で」
その声音にぞっとするような感覚を覚えて、ツバサはアニーシャのウィンドウに視線を送った。
アニーシャはショックに目を潤ませながら、口をぐっと硬く結んでミレニアを睨み付けている。
「これはフェアリー・フォースの面目躍如のための大切なミッションなの。降りたければ一人で降りなさい。メンバーの座が惜しくないのならね。特異体質だか何だか知らないけれど、あなたの代わりなんて探せばいくらでも出てくるのよ?」
「お、お嬢様、そんな言い方は……」
「名を上げて、母親の居所を突き止めたいのでしょう? せっかくそのための好機を与えてあげているというのに、どうしてそうも反抗的に噛みついてくるのかしら。可愛くないわね」
「……前々から思ってたけど…サイッテーの性格してるよね、お嬢って…」
一触即発といった空気に、ツバサは狼狽えるばかりだった。
事ここに至って内部分裂を起こしかけるフェアリー・フォース。周囲の変化に気を配る余裕のある者は誰もいなかった。

145 ◆tb48vtZPvI:2016/07/03(日) 22:02:11 ID:IE8T1x.Y
>>144
ハルマッタンがフェアリーたちの目鼻の先に迫った、その時だった。『…皆さん! 僕達に構わず逃げてください! ここは…罠です!』少年が絶叫した。
舌打ち一つ。『…困るんですよ、そういうアドリブは』
ブシュブシュブシュブシュ! フェアリーの進路と退路が塞がれた!
それは鉄のフェンスめいて見えた。しかし金属ではない。樹脂だ。高速噴出されたジェル状樹脂が瞬時にして硬化し、ヒトガタの装甲にも匹敵する強度のフェンスと化したのだ! その数は100や200では効かず、中には樹脂の粘性を保ったものも存在する…
そして、ラプトルやサイクロプス! 数は50機、およそ大隊規模のヒトガタがわらわらと暗がりから姿を現す!


そして、フェアリー・フォースのレーダーに単機ヒトガタ感あり。Mサイズ、つまり全高20M前後、それがハルマッタンの上方…天井にコウモリめいて逆さに立っていた。
『ドーモ、はじめまして、フェアリー・フォース=サン。オニロク・バシタキです。このニンジャ・フレームはデイドリーム』
パイロットがガスマスク型メンポ(面頬)ならば、機体もガスマスク型フェイス。とんだ道化じみた組み合わせは、しかし異常な威圧アトモスフィアでフェアリーたちを呑み込んだ。
『要件はわかりますね?  あなた方をイチモ・ダジーン(一網打尽)しにきました』』

146 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/04(月) 01:21:13 ID:IJrmb6Uw
>>145
ツバサにとって、ミレニアが口にしたアニーシャの事情は意外だった。出逢ってまだ日は浅いが、もっと華やかな、明るい世界を生きている少女だと思っていた。
それだけに、ミレニアの辛辣な言葉がいっそう酷薄なものに思えて、これ以上二人が言い争う様は見ていられなかった。
「お、お二人とも、今は作戦中ですし、喧嘩してはダメ……」

そう言いかけた時、周囲の状況が一変した。
液体の飛沫のようなものが方々から大量に吹き上がったと思うや、それは林立する分厚い障壁へと姿を変え、フェアリーフォースを取り囲んでいた。
「なっ……何!?」
メイヴが驚愕も顕に辺りを見渡す。対するアニーシャは無言でレーザー・ツインダガーを抜き放ち、構える。
「…引き返すにはもう遅いみたいだよ、お嬢」
「そんな…な、なんで…? 格好のチャンスのはずだったのに…」
レーダーに突如現れた機影は、まさに無数だった。相次いで罠に陥れられたことで、フェアリー・フレームのセンサーが帝国飢狼部隊の前に無力であることは、これではっきりと証明されたといえる。
「お嬢様…いえ、隊長! 応戦しましょう! 指示をお願いします!」
レーザー・レイピアを手にシルキーがメイヴの右後ろに付く。隣にはケット・シーが並ぶ。演習で繰り返しシミュレートした陣形だ。
「えっ? え…あ…」
メイヴが震える手でフルーレを抜く。ミレニアの脳裏には失意と同時に、先の戦いで受けた苦痛がフラッシュバックしており、半ば頭が真っ白という状態だった。
「ど…」
「はい!」
「どうすれば…いいんですの…?」
「え…えぇっ?」
その憔悴ぶりには、さすがのツバサも失望を感じずにいられなかった。
「もういい。そんなやつ、そこで震えさせておけばいいのよ…ツバサちゃん、やるよ! 生き残るために、あいつをやっつける!」
ケット・シーが指差したのは、頭上高くに逆さまに立つ得体の知れない機動兵器。
アニーシャのバッサリとした物言いと、『あたし』という一人称に戸惑いながらも、ツバサは「はい!」と返事を返した。周辺を取り囲む機体は無人機。それに対して、頭上の機体が何かしらの干渉を行っているという情報が、センサーの測定値からはっきりわかったからだ。
「お嬢様は無理をなさらず、身を守ることに専念してください! 私とアニーシャちゃんで何とかして見せます!」
「で、でも……」
間もなく、ターゲットから奇妙な通信が送られてくる。ジン・ミック少佐の発したアイサツと似た調子だが、彼の縁者か同類なのだろうか?
「一網打尽? 嘗めないでよね! と、飛んで火に入る夏の虫なんだからっ!」
発言は強気だが、アニーシャも手の震えを抑えきれていなかった。先の戦いで恐怖を植え付けられたのは彼女も同じなのだ。
「いっくぞぉぉぉっ!」
その迷いを振りきるかのように、ケット・シーが弾丸の如く疾走し、最寄りの無人機複数機の首元へと、次々にツインダガーを走らせる。
「援護します! レーザー・クロスボウ、ラピッドモード!」
デイドリームなる機体へ至る道を切り開くべく、シルキーがその後ろを追いながら援護射撃を加える。
勇猛果敢に攻勢に出たフェアリー・フォースだが、すでにそれが意味を為さない抵抗であることを、じきに彼女らは思い知ることになる。

147 ◆tb48vtZPvI:2016/07/04(月) 03:01:07 ID:7.ZUvi4o
KBAMKBAMKBAM! 光の矢が無人機を穿ち、ダガーが切り裂く! フルーレが貫く! 一呼吸に3機撃破!

『あなた方のフェアリー・フレームと我らのニンジャ・フレームは共通点が多い。モーションリンクシステム…これなどは最たる例でしょう。まあ、パイロットのスーツにまでダメージが及ぶのは趣味的ではありますが』
バシタキの声が広域通信でフェアリーに届く。その声は耳障り、数を減らしてゆく無人機を横目に声音は平静そのもので微塵の焦りも窺えない。
『しかしあなたがたは実に教本通り、面白みのないカラテです。これでは人質の意味が無い』
デイドリームは樹脂のロープを以ってさかしまのまま天井から地表方向へ降りて行った。
『ここまで来てみなさい。来れるものならば』
デイドリームは挑発的にその身を反らしてみせた。
もちろん、そこまで届くには無人機が立ちはだかっていることも忘れてはならない。露骨な愚弄だ!

148 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/04(月) 04:17:48 ID:IJrmb6Uw
>>147
「言われなくたってぇっ!」
ケット・シーがラプトルの頭部に垂直にダガーを突き立てつつ、その両肩を踏み台にして跳躍する。
「殺っちゃえ! チャクラム・ソーサー!」
ひねり前宙で無人機らの頭上に躍り出たケット・シーの尻尾の基部から3基のチャクラムが射出され、猛スピードで飛び交いながら眼下の敵群を切り刻んでいく。
「エリアルダガー、お願いします!」
シルキーが交差させた両手を振り払い、両の手から計4基のレーザーダガーが投擲され、縦横無尽に宙を舞う。それらはチャクラムで損傷を被った敵機を着実に仕留めると共に、ミレニアに襲いかかろうとしていたサイクロプスの胸部を貫き、動きを止めさせた。
「つ、ツバサ…」
「勝てますよ、お嬢様! この無人機さんたち、大した強さじゃありません!」
「そ、そう…そうよね…! フェアリー・フレームの性能に比べれば、こんな連中…!」
メイヴがフルーレを振るい、サイクロプスを切り裂く。無人機の動作は実際緩慢であり、その手応えを得たことでメイヴも徐々に動きを良くしていく。
「やれる…わたくしならやれる…!」
「ふん…ま、お嬢もせいぜい、殺されないよう頑張るといーよ」
「だっ…誰が殺されるものですか! あなた、なんて口の効き方を…きゃあっ!?」
死角から不意に飛びかかってきたラプトル。しかしその機体はシルキーのレイピアに横合いから貫かれ、メイヴに触れることはなかった。
「アニーシャちゃん! こっちは任せてください!」
「オッケー! 本命はいただいちゃうよっ!」
八艘跳びの如く無人機を踏みしだいて跳躍を繰り返した末、ケット・シーは落下の勢いに乗せ、デイドリームの間近に位置するサイクロプスの頭部を右手のダガーで刺し貫く。更に左腕部に固定されたレーザー・ショートボウを損傷部に向けて零距離で連射。爆散する機体から華麗に離脱し、着陸。見事デイドリームと相対する。
「アニーシャちゃん、すごい…!」
「ふふーん、これくらいどーってことないない!」
実際、アニーシャとケット・シーの運動能力、速攻能力はフェアリー・フォースの中でも郡を抜いていた。こうした乱戦においてこそ、その力は最大限に発揮されるのかもしれない。
「どぉ、オジサン? これでもアニーの戦いがつまんないとか言っちゃうわけ?」
「ていうか、こんなザコキャラを寄せ集めてけしかけるしか能のないオジサンの方が、よっぽどつまんないんじゃないのかなっ?」
アニーシャも戦闘の中で自信を取り戻してきたのだろう。いつもの不適かつ小悪魔的な口調で、オニロクを挑発しつつダガーを突きつける。
「あーあ、こういう時こそカメラが欲しかったなー。これからオジサンをギッタギタのメッタメタにやっつけるかっこいいケット・シーとアニーの姿を、みんなに見てもらえないのがとーっても残念っ」

149 ◆tb48vtZPvI:2016/07/04(月) 20:39:14 ID:7.ZUvi4o
>>148
「カメラならば私の手元にもありますよ…並のTV局では及びのつかない解像度のものがね…」
突きつけられたダガーを意にも介さず、バシタキはほくそ笑んだ。
「そうそう、アニーシャ=サン、あなたのあの…イメージヴィデオ…拝見させていただきましたよ。もちろんツバサ=サンもね…なかなか良き物をお持ちでいらっしゃる。ミレニア=サンもかなりの美貌です」
デイドリームは後方跳躍、右腕部のギミックガントレットからスリケン連続射出!
「軍人でおられるより、転身なされてはどうです?」
主語を不明瞭にした、しかし明らかな嘲弄だ! 賛意もこもっているからなおのこと腹立たしい!

150 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/04(月) 22:09:38 ID:IJrmb6Uw
>>149
シルキーとメイヴは順調に敵の数を減らしている。うまくすれば無人機の攻撃が途絶えた隙をつき、3対1に持ち込めるかもしれない。
「!」
バシタキの言葉に、一瞬肩をびくっと反応させるツバサ。いくら彼女でも、侮辱されているとはっきりわかる物言いだった。
アニーシャも、ふんっ、と軽蔑するような笑いをこぼす。
「誉められちゃったぁ〜。アニーうれしいなっ☆…って言いたいとこだけどっ!」
放たれたスリケンを、至近距離にも関わらず側宙で回避するケット・シー。着地までの一瞬の間に、左腕のショートボウからレーザーを連射し、牽制する
「こないだのヘンタイやオジサンみたいなファンは、ちょっとNGなんだよねっ!」
すかさず懐に踏み込みながら、左右のダガーを振るってデイドリームに攻撃を加える。

151 ◆tb48vtZPvI:2016/07/04(月) 23:11:49 ID:7.ZUvi4o
「これは心外なり!」
デイドリームはケット・シーの連続攻撃をブリッジ回避!
更に下から上へのケリ・モーションから倒立に繋げ、後退しながら体勢を立て直してみせた! なんたる柔軟な機体関節か!
「オニロク・ニンジャクランはアーティストのクラン! オチャノマでオイラン・ポルノを見て悦に入る程度の次元の低い変態どもと同じにしないで頂きたいッ!!」
突如興奮するシバタキ!
同時に左腕部が卑猥に蠕動したと見るや、「お受けなさい! イヤーッ!」
おお、これはまさしくニンジャ・シャウト! 触手の…ニンジャ!
「マシンテンタクラー!」ニンジャ・フレームの左腕樹脂状人工筋肉が軟鞭めいてフェアリーたちを一斉に薙ぎ払う!

152 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/04(月) 23:26:40 ID:IJrmb6Uw
>>151
「!?」
デイドリームの反応速度と柔軟性はケット・シーを凌駕していた。中身からしてニンジャと戦闘訓練を多少施された少女であり、実力差はアニーシャが思う以上に埋めがたいレベルであった。
「くぁぅんっ!!」
蹴り上げをまともにくらい、吹き飛ばされるケット・シー。帯電体質の代償としてアニーシャの体をダメージ電流が走り抜け、硬直させる。
「あぅっ、ひ…!!」
「アニーシャちゃん!」
シルキーがそれに駆け寄る。アシストに加わる気なのだ。
「お嬢様も、援護をお願いします!」
「え、ええ! わかっ……」
その時だった。
デイドリームの左腕が生々しく蠢いたかと思うや、それはたちどころに鞭状に伸び、3機をまとめて薙ぎ払った!
「ひゃあ゛ぁぁぁッ!?」
「きゃああぁッ!?」
「ぅはぁぅッ!?」
3機のフェアリーは軽々と弾き飛ばされ、散り散りにされた。

153 ◆tb48vtZPvI:2016/07/04(月) 23:40:09 ID:7.ZUvi4o
>>152
「フムゥーン…意外や意外、フェアリー・フォースとは国防軍の新たなハタガシラたる部隊と聞いて、実際今日の日を楽しみにしていたのですが…」
ニンジャは程度の差こそあれ、本能で強者とのイクサを求める。バシタキはあらゆるテレーン・テクダ、あらゆるフーリン・カザーンを尽くし、敵の強みを封じた上で勝利を収めるタイプだが、それでも失望を隠さなかった。
「正直、国防軍一般兵よりオケケの生えた程度だとは思いませんでしたよ」溜息をつく。
その間にも無人機の誘導は忘れない。ラプトルが、サイクロプスが、得物の銃口をフェアリーたちに向ける。
「フェアリー=サン、まだ立てますよね?」

154 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/05(火) 00:05:51 ID:zxDOphsw
>>153
「あぅ、うう…!」
シルキーが立ち上がる。
「ま、まだです…諦めません!」
次いでケット・シーがヨロヨロと起き上がるが、アニーシャの息は荒い。
「っ…嘗めない、でよね…こんなの痛くも痒くもないんだからっ…」
メイヴは尻餅をついたまま、呆然とデイドリームを凝視していた。
「あ、あり得ない…物理的にあり得ない…なんなんですの、あの機体…!?」
「お嬢様、しっかり!」
「お嬢のヘタレ! もうこうなったら、フェアリー・フォーメーションでいくっきゃないんだから、しっかりしなさいよ!」
二機に促されるようにして、ようやくメイヴが立つ。
散り散りに弾き飛ばされたことで、奇しくも3機はデイドリームを包囲する配置となっていた。
「ふぉ、フォーメーション…そ、そうね、あれなら…! やるわよ! 二人とも…!」
「いつでもいけます!」
「散々言ってくれちゃって…アニーたちがそこらのボンクラとは一味も二味も違うってとこ、見せてあげるんだから!」
3機がそれぞれの射撃武器で無人機を牽制しつつ、スターティングポジションに着く。
「フェアリー・フォーメーションB! レディ!」
ミレニアの声に応じて、シルキーとケットシーが火器をリロード。メイヴは両腕部の電撃アンカー、ショック・ハーケンを起動させる。
「せーぜーご自慢のカメラにでも焼き付けることねっ!」
「……ゴーッ!!」
シルキーとケット・シーがそれぞれのレーザーボウを猛連射し、デイドリームを挟撃。回避運動を誘う。
「お嬢様!」
「ショック・ハーケン!! いきなさいっ!!」
追い立てられたかに見えるデイドリームへと、両前腕からハーケンを放つメイヴ。同時にシルキーとケット・シー
が抜刀し、左右からデイドリームへと急接近。ショック・ハーケンの電撃により動きを止めた所へ、レーザー刀剣による追撃を加える手はずだ。
「くらえぇぇぇーーっ!!」
ケット・シーが勢いよく跳躍し、レーザー・ツインダガーを振りかぶる!

155 ◆tb48vtZPvI:2016/07/05(火) 00:50:00 ID:1Gobrs5Q
>>154
「ムムッ…そのフォーメーション、データにはなかったか」
バシタキのニューロンが高速で思考を巡らせる!
2機のレーザーボウによる猛射はブラフ。本命はメイヴの攻撃、使うとすれば恐らくショックハーケン。そこから繋がるのはフィニッシュムーブ、まともに受ければ爆発四散は免れないだろう…
「しかし…そうはトンヤが卸さない!」
ブシュブシュブシュ! 足元から吹き出す樹脂フェンス! 更に壁になるように無人機を動員! 無人機を盾にしたバリケードだ!
「スパイダートラップ発動!」
ブシュブシュブシュブシュ!!樹脂フェンスから枝めいて噴き出す樹脂!
木というよりはアミダクジに近い様相だ! 接触してしまえば粘性で捕らえられてしまうぞ!

156 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/05(火) 01:08:42 ID:zxDOphsw
>>155
射撃による牽制と崩しは万全だった。ショック・ハーケン命中、そしてダガーとレイピアによる斬撃。それによって勝負を決することができると、敵機に肉薄したアニーシャは確信した。しかし……
「なっ…? うああっ!?」
突如として噴出したスパイダー・トラップ。ケット・シーはその粘着性ネットに頭から突っ込んでしまい、勢い余って逆さまに貼り付けにされてしまう。
「なっ、なにこれっ!? ネバネバして…っ! くぅぅっ!」
辛うじて動く手首で、ネットにレーザー・ツインダガーの刃を押し付けるが、その程度では切断できそうにない頑強さだった。
「きゃああっ!」
シルキーはネットに足を取られ、デイドリームの目前で転倒。
「アニーシャちゃん! 大丈夫ですか!?」
レーザー・ロングボウでケット・シーを捕らえる樹脂フェンスを破壊するべく、何発かの射撃を見舞ったが、焼け石に水だった。
「くっ…お嬢様! アニーシャちゃんを!」
「わ…わかったわ!」
無人機のバリケードにショック・ハーケンを弾かれ、狼狽えていたメイヴがケット・シーの救助に向かう。
レーザー・フルーレをフェンスに突き立てるが、容易く切り裂くことはできそうにない。
フォーメーションが崩壊し、デイドリームへの攻撃の手は完全に止まってしまった。

157 ◆tb48vtZPvI:2016/07/05(火) 02:21:15 ID:1Gobrs5Q
>>155
ピシリ! ピシリ! デイドリームは左腕鞭で床を叩く!
「ホホホッ…では、オニロク・ニンジャクランのオニロク・ニンジャクランたる所以をお見せしましょう!」
ローパーハンドを掲げると一本のロープに縒り合わさる! 意思を持つように蠢く! 走る! 狙うは…シルキーだ!
「シバリ・ジツ奥義! タートル・バインド!」
おお…おお…ゴウランガ! 人工筋肉縄は複雑な軌道を描いたと見るや、シルキーを絡め取る! その複雑な縛りは魔術文様めいて美しくも妖しくシルキーを彩る、まさにアーティストのワザマエだ!

ニンジャ暗黒史の泰斗トダギ・ザイゼン氏の名著「ブラックヒストリー・オブ・ニンジャ」ではかなりのページを割いて暗黒街に潜ったニンジャへの言及がなされている。
それによればロープ一本を以ってオイランを飾り立てることに血道を上げたニンジャクランが存在したという。まさしくそれがオニロク・ニンジャクラン!

「ミレニア=サン、あなたもだ!」もう一本ロープが蛇めいて走った!

158 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/05(火) 03:11:14 ID:zxDOphsw
>>157
「う、うぁぁっ!?」
ローパーハンドがまるで生き物のように、シルキーの機体を這いずり回り絡み付いていく。
「な、何ですかこれ!? 何が起こって…あぐぅンッ!!」
ギチィッ! と音を立てて、縄がシルキーを圧迫し、『縛り』を完成させる。亀の甲羅の紋様のごとく縦横に走るローパーハンドの圧力は、ツバサのT-スキンにもトレースされ、彼女の体に幾何学的な紋様となって食い込み、肉感的な肢体を飾り立てると共に一切の自由を奪ってしまう。
「くっ…くる、しっ…んあぁぁぁ…!」
「ツバサちゃん!!」
粘着糸に拘束されたままのケット・シーに続きシルキーも、そして更にメイヴまでもがローパー・ハンドの餌食となる。
「ひっ…!? 嫌ぁぁぁぁぁっ!?」
瞬く間に絡め取られ、豊満な肢体をギチギチと締め上げられながら地に転がされるミレニア。
「しっ…縛り上げるだなんて…こんな辱しめを…こ、こ、このわたくしにっ!?」
憤慨と恐怖が入り交じり、裏返った悲鳴を上げるミレニア。シルキーと共にのた打つようにして抵抗するが、戒めは緩むばかりかますます深く食い込んでいく。
「はぁッ…ぁ、あぁンッ…!」
「ほどきなさいッ! くぅン…うぅッ!」
その光景を見て、アニーシャは悟った。この男は自分達を殺すより先に、徹底的に辱しめるつもりなのだと。
「こ、こいつっ…! チャクラム・ソーサー! いけぇぇっ!」
逆さ吊りの態勢からできる唯一の抵抗、自由を保っていた尻尾を使い、3基のチャクラムを投擲する。狙いはローパーハンドの切断である。

159 ◆tb48vtZPvI:2016/07/05(火) 23:48:09 ID:1Gobrs5Q
「ホホホッ! やはり私の眼に狂いはなかった!! あなた方はシバリ・ジツにおいて実際素晴らしい素質をお持ちだッ! ホホホホホホッ!」
デイドリームのモニタには吊り上げられる機体と仮想の縄目を刻まれ横たわるフェアリーたちの姿が映されている。自らの手で生み出した「作品」の見事さにバシタキの口から思わず哄笑が溢れた。
「ホホホッ…女体は花束、美しく飾って差し上げる必要があります。あなた方の身柄は、フェアリー・フレームと共に我らが御大将の元へ送り届けます。生命については保証しましょう」
ニンジャが傲慢に告げる。そこには人権や人格は考慮されない、無慈悲で身勝手な論理だけが存在していた。どうやらブッダは昼寝でもしているらしい。
そこへアニーシャがソーサー投射! 不意を突かれた形の反撃に、対応するのはニンジャ反射神経! 
KILLING! KILLING! ソーサーの直撃を防いだのは…メイヴのフルーレだ!
(今のはちょっとアブナイでした…)
ニューロンの奥底でバシタキは呟く。シバリ・ジツは束縛のためのジツ、身体操作は本来能力の範囲ではない。操作はかなりアバウトになる。
(これでアニーシャ=サンを捕縛し、御大将に差し出せばミッションコンプリート…フムゥーン…)
バシタキはしばし考慮する。非戦闘系ニンジャとして、彼は今まで御大将のために功績を上げてきた。
御大将は真に美しい物を愛でる。バシタキはその優れた感性に敬服していたし、御大将の感性に叶うニンジャでありたいと思い続けてきた。
御大将はお褒めの言葉を頂けるだろう。だが…
(バシタキ=サン、日々進歩あれ、だ。常に良き敵を求めよ。かくしてニンジャは成長する)
御大将の言葉がニューロンをよぎる。そう…斯様な生ぬるいミッションではニンジャとして進歩も成長もは望めない!
「アニーシャ=サン、あなたをメッセンジャーにしましょう」
バシタキは決めた。
「フェアリー・フレームの全データを持ってコズミック・オーダーをここへ連れて戻っておいでなさい。来なければ…それでも構いません。12時間後にはここを発つまでです」
成功…メイヴとシルキー…ミレニアとツバサを持ち帰れれば御大将の不興も買うまい。
大成功…フェアリー・フレーム3機とパイロット3名に全データ、そしてコズミック・オーダーの首。それはとてつもない大戦果に違いない!
では失敗は? 己の命一つで贖えばいいだけのこと…シバタキはソロバン勘定を即座に行い、どう転んでも自分の絶対的不利益には成り得ないと踏んだ。

160 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/06(水) 00:48:33 ID:Mg1ilEHk
>>159
「あうっ!」
バシタキがジツを解いたのか、ケット・シーは粘着樹脂の拘束から解放され、地表に落下した。
そしてアニーシャへと突きつけられる勧告。
「なっ…なにいってるの…!? そんなことできるわけ…!」
地に這いつくばったままでデイドリームを見上げて、アニーシャは困窮極まった声を上げた。
「…っく…ダメです! アニーシャちゃん!」
無様に宙吊りにされた態勢ながら、ツバサは毅然と彼女を叱咤する。
「こんなヒモ、私たち自身で解いて…ッ…んあッ、はひッ…!!」
そんな反抗的な態度を嗜めるかのように、ローパー・ハンドがぎゅうっとシルキーに食い込む。
「あ、アニーシャぁ…!」
ミレニアの声は殆んど涙声に近かった。
「お嬢…!」
実際、彼女は恥辱と苦悶、更には進退極まった状況の只中で、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。
「ダメよ…! オーダーなんかに頼ってはダメ…! こッ、こんな醜態を見られた上に助けられるなんてッ…!!」
「じゃ、じゃあ、どうしたら…!?」
「国防軍に…国防軍に応援を要請するのよ! わ、わたくしの名前を出せば、オービタルから救援部隊が…」
「……」
アニーシャは力なく首を横に振った。もはや自分達は生殺与奪を目の前のニンジャに握られているというのに、そんな真似をすれば只では済まされないだろう。
「うっ…ぅっ…」
死にたくない。ツバサとミレニアも見殺しになんかしたくない。
気が付けばアニーシャは絶望に震え上がりながら、ぽろぽろと大粒の涙を溢していた。
「アニーシャ…アニーシャ…! …っひッ…早くッ…応援を…ッ!」
「アニーシャちゃん…」
ツバサはその姿を沈痛な面持ちで見詰めると、数秒の間目を伏せ――そして大きく息を吸い込んだ。
「……いやぁぁぁぁっ!! 死にたくないよぉぉっ!!」
「!?」
突然の大声に、アニーシャとミレニアが驚愕の表情を浮かべる。
「ミレニアお嬢様には耐えられても、私はこんな仕打ち耐えられないっ!! 助けて、アニーシャちゃん! 今すぐオーダーの皆さんを呼んできてぇっ!!」
「…ツバサ…あ、あなた…」
「…つ…ツバサちゃん…!」
ミレニアもアニーシャも、彼女の意図は十分に理解できた。
ツバサは一人で汚名を被ろうとしている。こうして無様に捕らえられたことも、オーダーにすがりつくことも、全て自らの招いた醜態とすることで、ミレニアの誇りと名誉、アニーシャの悲願達成への道のりを守ろうとしているのだ。
「…く…っ…!」
ミレニアはそれっきり何も言わなかった。
アニーシャは涙を拭うと、デイドリームをキッと睨み付け、それからツバサへと、真摯な顔つきで言葉を残す。
「ぜったい…ぜったい助ける! ツバサちゃんを助けに、ぜったい戻ってくるから!」
ケット・シーはデイドリームに背を向け、脱出口へ向けて走り出した。
アニーシャは悔し涙を何度も拭いながらコロニー外へ出ると、すぐさま母艦へと通信を入れる。

そして、ドナールよりオーダーに下記の旨が伝えられた。

ツバサ・ウィークリッドの失態により、メイヴ・シルキーは拘留。身柄の返還のため、敵はフェアリー・フォースのデータ引き渡し、ならびにオーダーとの対決を要求している。
国防軍に支援を要請することも可能だが、ツバサが危険な状態であり、これ以上持ちそうにない。
遺憾ながら敵の要求を飲み、オーダーの出撃を要請する。

「なお、これは国防軍による公的な要請ではなく…私個人からの依頼という形を取らせてもらう。…くれぐれも、内密に事を運ぶように…」
ドナールは訝しげに口元をもごもごさせた後、ミックに対して会釈程度だが、初めて頭を下げた。
「…そのように、お願いする…」

(あいつ…あのヘンタイニンジャだけは…)
接近してくる母艦の照灯を目にしながら、アニーシャは決意を固めていた。
(やっつけてやる…! あたしと、ツバサちゃんで!)

161 ◆tb48vtZPvI:2016/07/06(水) 02:33:40 ID:B5gc5UY6
>>160
ブリーフィング中のミックの端末がノーティス音を鳴らす。リードオンリーのテキストによる呼び出し。室内から中座し、通信室へ。そこにはニガムシを1000匹ほど噛み潰して飲み下したような表情のガナルド・ドナールの顔が大写しになっていた。
ドナールの命令…否、依頼は敵に捕縛されたフェアリー・フォース隊員の救出であった。ドナールからすれば苦渋の決断なのは明らかだ。自らの好悪感情と、機体及び隊員の奪取を秤にかけて常識的な判断を下しただけという話ではあったが……。
「了解しました。フェアリーフォース隊員二名は必ずや大事なく救出して見せます」
ミックはもう一人、ミッションに加えるべき人員を伴ってブリーフィングルームに戻った。アニーシャである。彼は追加ミッション発生と概要をオーダー・アプレンティスに告げた。
「第一目的はシルキーとメイヴ、乃至そのパイロット両名の救出。第二目的は敵脅威の排除。…敵はニンジャだ、くれぐれも油断するな」
ミックは語気強く告げ、話を続けた。
「なお今回はアニーシャ=サンおよびケット・シーも作戦実行時の人員に加える。…大丈夫だな?」
アニーシャが頷いた。それを確認してから、ミックは電子パネルボードに眼を落とす。
「アニーシャ=サンが持ち帰ったデータには目を通してある。ハルマッタンのクルーは…恐らく全て殺されていよう」そういう言い方をした。
アニーシャには(またツバサとミレニアには)残酷だが告げねばならぬことだった。そしてミック自身も直視せねばならぬ現実だった。
ハルマッタンのクルーを直接手に掛けたのは帝国軍であり、オニロク・バシタキというニンジャである。しかし彼らの死に対して、結果的に手を貸してしまっていることには違いない。

「ところで、奴との戦闘で気づいたことはあったか?」
自然に教官が教え子へ問いかける口調になる。
ミックはアニーシャを慰めるような言葉はかけなかった。部下や教え子に対してそのような言葉はかけた覚えもないし、これからもないだろう。
代わりに与えるのは問いである。ニンジャは強力ではあるが、無敵ではない。攻略の糸口はどこかにあるはずなのだ。

162エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/07/06(水) 20:36:17 ID:PHGz5WNQ
「ツバサちゃん…」
ドナール准将の通達を見て、私は一気に酔いが醒めた。
ユウセイの宣言した通り、オーダーに出撃要請が出た。
オーダーを指名して来るとは…
そしてもう一つ…フェアリーフォースの機体データ…?
何故だ…?フェアリーフォースは結成後、二度出撃を経験しているが、お世辞にも大した実績があるとは言い難い。
私と同じ、パイロットの未知なる可能性を見たのか…?
それじゃあ、どうしてパイロットのデータでは無く、機体データを…?
あの機体に何か秘密が…?

「ミック少佐…」
通達を見て、ブリーフィングルームから出て行った少佐が戻って来た。
ドナール准将と通信を行ってたのだろう。
私達にミッションを告げてきた。
シルキーとメイヴ…そしてそのパイロットの救出。
ツバサとミレニアお嬢様…
それにしても敵はニンジャか…
ミック少佐と同じ技を使うのか…

「ところで、アニーシャちゃん。
聞きたい事があるの…」
通達についてだ。通達の内容…

「正直に答えて…ツバサちゃんの失態って本当?」
私達はツバサの失態でメイヴとシルキーが捕まってるって通達を受けている。
確かに、ツバサもパイロットとしてはまだまだ未熟だ…
だけど、初陣と比べれば大きく成長している。
それに、フェアリーフォースは3機全て出撃している。
通達の内容でパイロットの名前が出ているのはツバサ個人の名前だけだ。
単にツバサがミスったって思えば自然なのかもしれない。
だけど、ツバサには優しさがある。
通達に関して虚偽があったからって、私はアニーシャに何かをするつもりは無い。
だけど、アニーシャには聞いておきたかった。
私はその質問をする際に、真剣な表情でアニーシャの目を見て話してみせる。

163 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/06(水) 22:36:33 ID:Mg1ilEHk
>>161
「……うん。何となく、そうだと思ってた。あんな大きな艦で生存者が10人なんて、本当だとしたら乗り込まれて、制圧されたんじゃないかって思ったんだ」
アニーシャは固形の携帯食料をかじりながらブリーフィングに臨んでいた。人前でこんな姿を見せるような子ではなかったはずだが、どうやら彼女も腰を据えて作戦にあたる覚悟を決めているらしい。
ミックからの問いかけに、アニーシャは少し思案してから答えた。
「…あいつ、動きや反応はすごく速かったけど、あたしたちの攻撃の全てを捌けるわけじゃなさそうだった。挟み撃ちにされた時とかは、トラップや無人機を盾にして何とか凌いでるって感じだったよ」

>>162
「…それは…」
思わず目を泳がせるアニーシャ。返答がどうあれ、すでにその態度が真相を物語っていた。
きょろきょろと周囲を見渡し、国防軍の人間がいないことを確認すると、小声で打ち明ける。
「…嘘なの。あたしたちは全員で罠に引っ掛かって、正面から戦って負けただけ。
ツバサちゃんがお嬢とあたしを庇って、そういう形を装ってくれてるだけ…」
アニーシャの表情は悔しげだった。彼女の真剣さの理由はここにあると見て間違いないだろう。
「だからあたしはぜったい、ツバサちゃんを助け出して…あのニンジャをやっつける!」
T-スキンの手首に取り付けられた端末にメッセージが届く。それはケット・シーがガンナー装備への換装を終えたという報告だった。
アニーシャは携帯食料の残りを一気に口に放り込むと、噛み砕いて嚥下した。

164ユウセイ ◆JryQG.Os1Y:2016/07/06(水) 23:39:25 ID:dBN4Ziws
「やはりか...」
通達と、ミッションを聞いて指名したことに少し驚いたが、ユウセイの想定内だった
「オーダーを潰すことと、同時にフェアリーシリーズを回収するか…いささか強欲だな舐めているのか?」
自身の所属している処に態々喧嘩をひっかけてきたのだ
あの廃コロニーは帝国の機体が何度か目撃されていた
だが、何故サイラス3の戦闘時に参戦しなかったか…
やはりフェアリーシリーズを無傷で回収したかっただろうか
(まさかとは思うが、少佐はこれを解った上で、出撃させアニーシャを囮にする気じゃ)
そのことは少しだけ留意しておこうとそう考えた
>>163
「つまり、相手は前線に出るタイプじゃないってことか…攻略は楽そうだが、戦艦と数が厄介だな」
帝国様はよほどフェアリーシリーズにご執着のようだ
態々戦艦を制圧そして圧倒的に数で優っている
そして何よりも、セレニアンの怨敵ガバノイドを持ってきた次はニンジャか
よほど、フェアリーシリーズに関心があるようだ或いは…

165 ◆tb48vtZPvI:2016/07/07(木) 00:30:59 ID:nVEds.ZM
>>163>>164
アニーシャの解答にミックはうなずいた。
「そうだ。戦闘ログを見る限り、奴はカラテ…即ち近接白兵戦闘術を重点していない。恐らくさほど自信がないのだろう。
だからと言って奴が弱敵であるということを意味するわけではない。むしろ自分の強みや弱みをわきまえた難敵と言える」
自分に有利な状況を生み出し、そこに敵を待ち構え、あるいは引きずり込む。通称「フーリン・カザーン」のメソッドはニンジャにとっては基礎的なものだ。
「奴のフーリン・カザーンを支えるのが樹脂触手だ」
ニンジャの異能…「ジツ」にはいくつかの系統譜が存在する。
体質。技術。あるいはサイキックめいた異能力…オニロク・ニンジャクランのシバリ・ジツは技能由来のジツ。それをハイ・テックを用いてニンジャ・フレームで再現しているのなら、どこかに技術的限界があるはずだ。
「…ユウセイ=サンの言うように、奴はヨクバリで自信過剰だ。そこにこそ付け入る隙はある」

(それはそうと…)
アニーシャがつい先刻までコンビめいて行動していたミレニアの名を口にしていないことに、ミックは気づいた。既にして彼女に見切りをつけている様子だ。そういった部隊長の今後は決して明るいものではない。
(生き延びてからが大変だぞ、ミレニア=サン…)

166 ◆HU7XfvOYA2:2016/07/07(木) 16:15:49 ID:ivOgydD.
「まぁまぁ、先ずは肩の力を抜いて。落ち着きましょう?」
いつの間に淹れてきたのか、両手に暖かい緑茶が入った湯飲みを手にしてアニーシャの隣に移動すると、にっこりと笑って湯飲みを差し出して。

「ふぅむ……困りましたね。」
今回のミッションは中々面倒である、人質の救出及び敵機の殲滅。言葉にすれば簡単だが、人質に手を出されないようにしつつ奪還、尚且つ殲滅となると手札が厳しい。湯飲みの茶を啜りつつアニーシャの表情を伺うディラン、アニーシャの瞳には決意の灯火が宿るのが見えるが技量が伴うかは不明だ。
敵のニンジャは手ぐすねを引いて待っているだろう、自ら火中の栗を拾うのは吝かではないが、人質に対する危険が大きい。

167エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/07/07(木) 21:29:29 ID:kO.ha3Bw
>>163
「そう…話してくれてありがとう…!」
通達にはやはり虚偽があった。
罠に掛かったのはフェアリー・フォース全員。
しかも、押し付けられたんじゃ無い…
ツバサはお嬢様とアニーシャを庇って…!

「アニーシャちゃんも、ツバサちゃんと同じで未だ未だ強くなる様な気がするよ!
一緒にツバサちゃんを助け出して、ニンジャを倒しに行こうね!」
アニーシャ…アイドルを気取っただけのパイロットだと思ってたけど…
アニーシャの言葉に嘘は無い…!
ツバサを助け出したいと言う気持ちと、
ニンジャを倒しに行くと言う決意が心で感じ取れる。
彼女は真剣だ…
だけどそれ故に気になる事が…
助けに行くと言って、アニーシャの言葉から出て来たのがツバサの名前だけだ。
“お嬢”って言葉が出ていない…
思い過ごしなら良いけど…

168 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/08(金) 02:43:46 ID:PrEKbA8M
>>166
「あ、ありがと…」
ちょうどボソボソしたレーションを詰め込んで、水分が欲しかったところだった。
猫舌を自覚しているアニーシャは、湯飲みの中のお茶をふーふー冷ましながら少しずつ飲んだ。心なしか、自然と気持ちが落ち着いていく気がした。

>>167
「もちろん! あたしもツバサちゃんも、まだまだこんな所で終わらないんだから!」
ツバサには大きな借りがある。そしてアニーシャには目的がある。
何となく角のある態度で接しあっていたエミリーだが、結果的に打ち解けることができたようだった。
(ま、お嬢はいつまで持つかわかんないけどね…)
言わぬが花、と言葉を飲み込むと、アニーシャは作戦の準備についた。

169 ◆tb48vtZPvI:2016/07/08(金) 22:19:48 ID:JLkPci9o
作戦概要は次のようになる。
目的は第一にツバサとミレニアの救出。第二にシルキーとメイヴの確保。第三にオニロク・バシタキの撃破。特に第一目的は実行部隊を犠牲にしても遂行せよ。
正面から本隊、即ちミック、エミリー、アニーシャがバシタキ駆るデイドリームと多数の無人機を相手に取る。
その間、ユウセイとディランの別働隊が同タイプコロニーから推測される別のルートから潜入し、第一・第二目的を遂行する。
「オニロク・バシタキは切り札を持っていると睨むべきだろう。別働隊の付随目的として、それを見つけ出せ。合流はそれからで構わん。質問は?」

170エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/07/11(月) 21:32:45 ID:m63c6uPI
>>169
「相手はニンジャか…」
本隊に選ばれたのは私と少佐と…アニーシャか…
私達に課せられたのはニンジャの撃破…
ニンジャはコズミック・オーダーに喧嘩を売って来ている。
私が直々にぶっ飛ばしてやりたいけど…
その気持ちはアニーシャだって同じの筈。
ニンジャの相手はアニーシャに任せたい…
だけど、少佐と同じ技や戦術を使ってくる以上は油断は出来ない。
アニーシャにニンジャの相手を任せるのは…
いや…!

「無人機…!」
そうだ…アニーシャ曰く、フェアリー・フォースの挟撃を多数の無人機を駆使して凌いでいたらしい。
あれの数を少しでも減らす事が出来れば…!
それだけじゃ無い…!

「少佐…このエミリー・ホワイト、アニーシャと“共闘”させて頂きます。」
相手は対した自信を持っているらしい。
私達に喧嘩を売って来たって事は私達に勝てる確証があるんだろう…
私達の事を調べたのかも知れない。
だとしたら、国防軍が私達を嫌ってる事も…!
だったら逆手に取って私とアニーシャが連携を取る…
フェアリー・フォースとコズミック・オーダーの“共闘”は予測してない筈…!
ちょっと前まで喧嘩寸前だったし、必ず取れると言った根拠はない…
だけど、今の私とアニーシャだったら…!

171 ◆HU7XfvOYA2:2016/07/12(火) 20:32:37 ID:1MQxH/c.
「特に、質問はありませんね。」
ミックの言葉にディランは気負った様子もなく普段と変わらぬ態度で応じて、その場で軽い屈伸を行い身体を解し、隠密任務用にポケットの中を確認して準備を行い。

172ユウセイ ◆JryQG.Os1Y:2016/07/12(火) 21:15:01 ID:/PohfC6Q
「こちらもありません。」
ミックの言葉に冷静さを保ちながら、ミックには溢れる殺気というものが見えただろう
護身用の刀と投げナイフを持ち、指示を待つ

173 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/13(水) 01:35:19 ID:ByYeS50.
>>169
「あたしも無いよ。大丈夫」
ケット・シーが二挺のマシンガンを抜き、臨戦態勢を取る。
「相当悪知恵とカラテに自信のある奴みたいだから、ディランとユウセイも気を付けて」
念のため、バシタキが生身で別動隊の元へ現れる懸念も頭に入れつつ、アニーシャは行動を開始する。
ミックやエミリーら大人に囲まれても彼女が萎縮しないのは、馴れているからである。
母親と離れ離れになって以降、アニーシャは児童擁護施設に入れられ、奨学金を受け取りながら勉学に励みつつも、多数のアルバイトを掛け持ちして収入を得ていた。
それはいつでも施設を離れられるように、そして母の居場所を突き止め、最悪の場合「買い戻せるように」という、彼女なりの考えあってのことだった。
(…今は回想に浸ってる場合じゃないよね。ツバサちゃんを早く見つけ出さないと……)

174 ◆tb48vtZPvI:2016/07/14(木) 23:33:54 ID:mY5D2rEw
「随分とお早いお着きで」
廃コロニー内。デイドリームに乗ったオニロク・バシタキは、戦艦ハルマッタンの甲板上から3機のヒトガタを見下ろした。
即ちミックのシバラク・カスタム。エミリーのスノウローズ。アニーシャのケット・シー。
その背後には無人機。半分がスクラップとして横たわり、半分が稼働可能を示して動いている。
「ドーモ、はじめまして。コズミック・オーダーの皆さん。オニロク・バシタキです」
「ドーモ、はじめまして。シバラク・ニンジャです」
バシタキのアイサツにニンジャネームを名乗って応えるミック。「オヌシに逃げられては困るからな」
「信用しては頂けませんでしたか?」
「あの二人の資産的価値は文字通り桁が違う。常識的に判断を下すならば、確保した時点で逃走を考えるものだ」
ミックが見るに、ツバサは純血のセレニアン。闇ではその身柄は文字通り惑星一個分の価値がある
ミレニアはノルヴァの子女。父親と祖父の愛情の多寡はともかく、人質としての需要は帝国・共和国共に計り知れない。
彼女ら二人の持つプラスアルファに比べれば、アニーシャの価値など将来有望というだけに過ぎない。バシタキがツバサとミレニアを手元に残したのも、いざという時の保険だ。
「私もあなた方オーダーが現れなければそうするつもりでしたよ、二重の意味でね」
「では、飢狼軍のサイラス3攻撃もオヌシが糸を引いたのか?」
「流石にそこまでは出来ません。ただそこに居合わせることが出来たのは幸運でしたよ」
「…その戦艦の搭乗員は、あの少年含めて全員殺したのだな?」
「ええ。あの少年、台本通りやれと言ったのに」
バシタキはそう言って心底残念そうな顔をし、あるVTRを流した。ハルマッタン内部だ。
血みどろの死体がそこかしこに散らばっていた。この時点で大部分が殺されているらしい。
そのうち逃げ回っている士官が見えた。銃を持って追っているのは…司令官だった。
銃火が閃いた。後ろから頭を撃ち抜かれ、士官が倒れこんだ。
「…貴様がやらせたのか?」
「あの司令官ですか? ええそうです。彼ったら部下が殺されようとも平然たるものでしたが、侍童の天使みたいな少年が人質にされたら、それはそれは血相を変えましたよ。
自分であの忠実なる部下たちを率先して殺していったのですからね。私が思うに、恋仲だったのでしょう。まぁ今頃はアノヨでチンチン・カモカモ・パッション重点とでも…」
「もう黙れ」
ミックはバシタキの言葉を打ち切った。
「部下も待ちくたびれていることだし、質疑応答はこのあたりにしておこう」シバラク・カスタムがゆるりとヤワラの構えを取る。
「オヌシをコクピットから引きずり下ろし、痛めつけてのインタビュー。しかるのち貴様は殺す」
「おやおや、あなたは夢見がちで大層な自信家のようですな。そんなニンジャ・フレームもどきでこのデイドリームを倒そうなどとはね!」
ブシュブシュブシュ! ヤリめいて足元から生える樹脂触手をミックは回避!
そこへ群がり来る無人機! まずは連中をどうにかすべきだ!

175エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/07/15(金) 21:53:59 ID:1QfmqCx.
>>174
「あれが…ニンジャの機体…!」
デイドリーム…ニンジャが操る機体…
ニンジャ・フレームって言うのか。
あのパイロット…ミック少佐の機体をニンジャ・フレームもどきと呼んでいた。
確かにミック少佐の機体は元々あったサイクロプスをカスタマイズした物…
対してバシタキって奴が載ってる機体はニンジャ用に造られた機体…!

「無人機…!」
やはり来たか…しかも背後から…!
先ずはそれをどうするか…!

「喰らえ!フォトンバスター!」
私の機体はランスと呼ばれる槍を構え、
槍の先を無人機の群れに向ける。
そして槍の先から放たれるのは広範囲の粒子砲。
アニーシャやミック少佐なら巻き込まれずに回避してくれるだろう…!
ミック少佐は勿論…私はアニーシャを信じる…!
それに、無人機を全滅させられなくても良い…
少しでも数を減らす事が出来れば…!

176 ◆HU7XfvOYA2:2016/07/18(月) 20:30:27 ID:zvlcZahw
「さて、囚われのお姫様達はどちらかな?」
一方その頃、手に入れた情報から正面の部隊とは違うルートからコロニーに潜入し、とある通路の一つにディランが何事もなく現れて。蛇のように物音を立てずにするりと先へ先へと進み、警備の兵士達を1人また1人と背後からヘッドロックで頸動脈を絞めて昏倒させつつ、ツバサとミレニアが捕らえられていると思われる場所に静かに歩みを進めて。

177 ◆JryQG.Os1Y:2016/07/18(月) 22:08:43 ID:sycNmfRc
「少し厄介だが、美人の顔を拝めるならえんやこらってね」
本隊とは別ルートで行きなおかつ、ディランとは別れとある道
「…監視室はどこかなっと…」
適当にドアを開け、見つけた敵は報告する前に昏倒させるか、首にナイフを突き刺す。
「さて、そろそろ当たりを引きたい所だが」
開くと、そこには幾つものモニターとサボっている監視員
【ガバガバじゃねーか】
そう思い、いつもの通りに鞘ありの刀で殴り、昏倒させ拘束する
【さて、いるかな…】
幾つかのモニターと手に入れた情報を参照し、機体のありかと2人の場所を特定する。
そして、またユウセイも姫君が捕らえられている場に足を進める

178 ◆h9Hr5c.eFE:2016/07/18(月) 23:25:58 ID:gllDkSRE
>>174
「…直々に出向いてきてくれるなんて、気前いいじゃない、変態ニンジャさん」
デイドリームの姿を目にしただけでも、抑えがたい怒りと屈辱感が込み上げてくるが、アニーシャは冷静を装い、ミックの手筈通りに動くよう努める。
ツバサとミレニアには、バシタキの一存では容易に手に掛けられないだけの値打ちがある。
残虐極まりない男だが、要求されたデータの引き渡しに応じなかったとしても、見せしめに殺害されるなどということは無いはずだ。
彼が引き連れている無人機の群れは、オーダーと雌雄を決するための軍勢であろう。本来ならばアニーシャに期待されているのはデータを渡し、両雄激突の場からそそくさと逃げ帰ることなのだろうが、そのつもりは毛頭なかった。
「今度は負けない…! ツバサちゃん達の居場所はすぐに吐かせてやる!」

>>175
スノウローズのフォトンバスターが開戦の狼煙となった。
アニーシャは呼吸を合わせて跳躍し、上空に逃れてそれを回避する。
「雑魚メカが、どれだけいたってっ!!」
尻尾のスタビライザーで巧みに姿勢を制御し、ケット・シーが上空から弾丸の雨を降らせつつ、無人機の群れへと飛び込んでいく。

179 ◆tb48vtZPvI:2016/07/22(金) 18:50:31 ID:RcYqH/rk
ビームが迸る! 群れが散開、6機がまとめて機能停止に追い込まれるが、散開することで大部分は直撃を免れた。
そこに降り注ぐのはケット・シーの弾幕! 当たりどころの悪かった5機が機能停止!
「イヤーッ!」デイドリーム跳躍! 落下速度の勢いも借りたマシンテンタクラーを振り下ろす! 狙いは空中のケット・シーだ!
「WASSHOI!!」シバラク・カスタムもまた跳躍! 片手にラプトルの残骸を掴み、サイクロプスを足場にして跳ぶ!
「イヤーッ!」残骸を投げる! マシンテンタクラーが残骸を捉え、打ち据えられたラプトルはそのまま破壊されるが攻撃がケット・シーから紙一重で逸らされた!
「ヌウーッ!」着地するバシタキ。柔軟な新型人工筋肉関節が衝撃を分散吸収するのをミックは見て取る。
敵の着地位置は遠い。シバラク・ニンジャは駆け出すも、無人機の壁がそれを阻む。
「イヤーッ!」ミックはアサルトナイフを抜き放ち、突きつけられた機銃を切断! 返す刃でラプトルの細い胴を切り払い真っ二つ!
更に転がった上半身をラグビーボールめいて群れに蹴りこみ、誘爆で4機撃破!
ブシュブシュブシュ! アンブッシュめいて噴き出す樹脂のタケヤリ! 辛うじて跳びのくも、シバラク・カスタムの爪先が破損! アブナイ!
(このトラップは絶対ではない)被撃しながらもミックは確信を深めていた。
バシタキはこのコロニーに事前に入り込み、トラップを仕掛けていたのだ。相当に大がかりなシコミだったに違いない。
(ならば、そのための設備があるはずだ)
それが奴の切り札だろう。通信傍受可能性によりオフラインにしてあるが、彼らならば気づくだろう。
無人機を蹴散らしながら確実にデイドリームへと近づいてゆく。
その時、レーダーが反応! 出現した機影がフルブーストでチャージアタックを仕掛けてきた! 特機級、モーターオニだ!
「チィーッ!」ミックは後退! 右手から左手へ通り過ぎる機影が大刀を揮う!
これを避けるも、今度は左手からの時間差チャージ! もちろんこれもモーターオニ!
更なる後退は…出来ない! 壁際に追い込まれた! 近づく巨体!
ミックは即座に決断、壁蹴りのトライリープ・ジャンプ回避!
「イヤーッ!」落下速度を借りてのアサルトナイフ斬撃! モーターオニの頭部損傷! しかし行動に支障なし!
モーターオニの肩を蹴って衝撃を殺し、着地するシバラク・カスタム。今のは実際アブナイなところではあった。
「フムゥーン…流石はシバラク・ニンジャの名跡を継ぐ御仁だけありますね」
感心するようにバシタキが言う。
「貴様の手札はこれで終わりか? だとすれば拍子抜けだぞ」
ミックは余裕の無さを隠すように挑発する。ニンジャ・フレームがあれば、という思いはニューロンの奥底に封印していた。
実戦に身を投じている以上、敗北すればどんな言い訳も無意味であることをミックは知っている。
ましてやジン・ミックはコズミック・オーダーの正騎士なのだ。

180エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/07/23(土) 23:38:28 ID:2jLBEdfA
>>179
「チッ…!」
ある程度の無人機は撃退したけど、散開されて大部分が直撃を間逃れてる。
撃墜したのは6機か…
だけど問題は無い…

「上手い…!」
アニーシャが5機の撃墜に成功している。
しかも私の放ったビームを回避して…!
私はアニーシャに通信指示を送っていない。
期待通り…アニーシャはパイロットとして確実に成長している。

「トラップ…!?」
飛び出してきたのは槍…あれは樹脂か…
読んでいたが、反応しきれず機体の肩に当たる。
幸い、大きなダメージは受けていないが…
だけど…

「あれは…!」
現れたのは帝国の特機…
あれは確か、モーターオニ…!
ゴールドモンキー・エンタープライズとか言う企業の機体だ…
あの企業の総帥は帝国の軍団である“ブッダハンド・シンジゲート”の軍団長だった筈だ…
だとしたら、あのニンジャ…バシタキとか言う奴は飢狼軍とは無関係なのか…?
飢狼軍以外の軍団が動いていると言う事か?
考えるのは後だ…今はあのモーターオニを…!
私はランスを構え、モーターオニの動きを伺う。

181 ◆HU7XfvOYA2:2016/08/03(水) 08:29:55 ID:lDJyG8NE
「ふぅ…然し、面倒な仕掛けが多かったなぁ。」
道中、幾多のトラップに防衛用ドロイドが多数配置されており、時には破壊し、時にはすり抜け ルートをひたすら辿って行くディラン。ただ、引っ掛かるのは人間が配置されて居なかった事に不審を覚えつつも漸く人質が捕らえられていると思われる工作艇の前までたどり着き。

182 ◆JryQG.Os1Y:2016/08/03(水) 21:35:43 ID:Pdm7Nqa2
「人とタレット多すぎだろ…」
道中、赤外線式のタレットと重装兵の監視網をくぐり抜けたり、食い破ったりしてひたすらに、進んできた。
…(おそらくこの先に…だが)
想定されるトラップを警戒しつつユウセイも工作艇の前にスタンバイする

183 ◆h9Hr5c.eFE:2016/08/09(火) 00:18:12 ID:BTBtFydY
>>179
「……っ!?」
突如頭上から振り下ろされるマシン・テンタクラー。やはりニンジャ・フレームの機動性は尋常ならぬものがあった。
本来ならばこの一撃でアニーシャは敗北していたかもしれない。しかしそこへミックのシバラク・カスタムが割って入り、壮絶な攻防を展開する。
(すごい……!)
ミックが迎え撃った無人機の中には、前回アニーシャが惨敗を喫したモーター・オニ2体も含まれていた。反応速度に劣る無人機とはいえ、その挟撃をかいくぐるミックの戦いぶりにはアニーシャも舌を巻いた。
だが、乗機のスペックが十分でないのだろう。ミックにこの布陣を単独で相手取る余裕が無いことはアニーシャにも直感的に理解できた。
「ミック! エミリー! デカブツの一体はこっちで引き受けるわ!」
エミリーがランスを構える様を目にし、もう一方の、頭部にナイフ傷を受けたモーター・オニに向けて飛び込んでいくケット・シー。
「行けっ、チャクラム!!」
前宙と共にオニの胸部目掛けてチャクラム・ソーサーを投擲。派手なアクションだが、これは牽制だ。
「本命は…こっちっ!!」
着地の勢いのまま、前方へとスライディングするケット・シー。巨大な敵機の股下をくぐり抜けながら、仰角をつけて構えたツイン・マシンガンを連射し、下方からの股関節の破壊を試みる。

184 ◆tb48vtZPvI:2016/08/11(木) 00:49:29 ID:8qedLsgc
工作艇の一劃に、手錠を後ろ手にかけられた少女たちが放り込まれていた。言うまでもなくツバサとミレニアだ。
ユウセイとディランは解放するために室内へ入り込もうとしたが、すんでのところで足を止めた。生身の視線!
「イヤーッ!」ニンジャ・シャウト! トビゲリを二人は危うげなく回避!
「ドーモ、はじめまして。オニロク・ヨジロです」アンブッシュに失敗しながらも二人に向き直り、鼠色ニンジャ装束のニンジャがアイサツした。
「やはりコズミック・オーダーもモスキート・イントゥ・ベイルファイアの例えめいてここへやってきたか。好都合、好都合。ヒトガタ戦には参戦出来なんだが、俺も一稼ぎ出来るというもの」
ヨジロはガントレットのスリットからクローを音立てて飛び出させ、舌なめずりめいた素振りを見せた。「さあ、楽しませてくれよ…!」

185 ◆tb48vtZPvI:2016/08/11(木) 01:12:14 ID:8qedLsgc
>>180>>183
「プガーッ!」ケットシーへ殺到する無人機の群れ! そこへモーターオニを動向を観察していたスノウローズがインターセプト!
ランスに薙ぎ払われる無人機! 合わせて股関節へマシンガン射撃!
「ピガーッ!」完全破壊には至らない! そこそこ頑丈なのだ! だがモーターオニの歩みが遅滞する!

無防備にも見えるケット・シーへ足を向けていたデイドリームを、シバラク・カスタムが遮る。
「この状況下で、しかもそんな機体で、私に一対一を挑もうと? 意味深なコメディだ」
「何、貴様はカラテ殺す。それだけだ」
「あなたはやはりユーモアがおありのようだ。ブラックユーモアの類ではありますが」
ミックの周囲は無人機が幾重にも取り巻いている。ドヒョー・リングめいて二人は外界と隔離されてはいるが、そこで行われるのはスモトリの神聖かつ公正な決闘ではない。ニンジャの殺し合いだ。
正攻法でデイドリームを突破することは、この機体では恐らく不可能に近いだろう。カラテを仕掛けるにせよ、関節が先に焼け付いてしまう。
今出来るのは時間稼ぎ。
「イヤーッ!」ミックがニンジャ・シャウトと共に疾走、シバラク・カスタムはデイドリームとの間合いを詰める!

186エミリー ◆jclrQ5ykSY:2016/08/13(土) 20:38:34 ID:lWIKst46
>>185
「逃がさない!!」
モーターオニの動きが鈍くなった。
アニーシャの攻撃のおかげだ!
私はそれを見逃さず、ランスで追撃を狙う!

187ユウセイ ◆JryQG.Os1Y:2016/08/22(月) 00:40:39 ID:MVINvfB6
>>184
「伏兵…少しは頭がいいかと思ったが、獲物に対しその舌なめずりただの三流か」
挨拶を完全にスルーし、むしろ挑発する。
最初から術を使ってこない以上ジツよりはカラテに頼っているらしい
だが、その方が寧ろ居合を得意とするユウセイには好都合だ。
相手としてはスゴクシツレイというものに値するのではあろうが、ユウセイにとっては知ったことではない
「ニンジャといえどその程度であれば!」
自分が持っている居合刀から刀を抜き出し念を収束させる
「発式…飛円椿」
相手の方向に、発剣を投擲する
その刃は緑色に輝きながら、高速回転しヨジロに襲い掛かる!!!

188 ◆HU7XfvOYA2:2016/08/25(木) 19:42:27 ID:z9vUzazA
>>184
「悪いが、楽しませる義理は無いんだ。すまない、最初から加減はしない。…ガイア!」

アンブッシュを危なげ無く回避して、腕に装着されたブレスに手を掛け、一言叫ぶ。その瞬間、身体は光に包まれ眩い光が辺りを覆う、光が収まるとディランの身体はガイアに変わり、人と同じサイズのままのガイアは静かに構えて、気合いを発する。

「デュア!」

189 ◆tb48vtZPvI:2016/08/25(木) 19:54:35 ID:71xY5q/o
>>187>>188
「何ッ!?」
驚愕に眼を剥きながらヨジロは左にジャンプ、念動刃を回避する。
「オーダーにニンジャは1人だけじゃなかったのか!?」
ヨジロは声を上ずらせる。ニンジャと生身で戦えるノーマルなどいない、いるとすればそれはニンジャ。それがヨジロの常識だった。
「クソッ、イヤーッ!」ヨジロはシャウトと共にハンディ・スリケンシューターでスリケンをファニング射出した。

190ユウセイ ◆JryQG.Os1Y:2016/08/25(木) 21:53:06 ID:mFBlPlIw
>>188
「なんだ、変身できるじゃん変に危機的じゃなくても」
情報とは違い、通常状態でも変身できるらしい
(だが、サイズが違うな…やはり、ディランと密接に)
ガイアというものにさらに疑問点が増えたユウセイだった。
>>189
「あら、ご存じない?念動力者」
ファニング射出されたスリケンを余裕そうにキャッチするそれも、指と指の間にだ。
そして、
「まぁ、もうお前は死ぬから…知る必要もないがな!」
先ほどはなった抜刀がツバサとエレミアが捉えられている檻の扉を薙ぎながら
再度ヨシロの背後に襲い掛かる

191 ◆HU7XfvOYA2:2016/08/30(火) 16:27:06 ID:OE26.Tx6
>>189
「デュアッ!」
此方目掛けて放たれたスリケンをガイアはガイアブレスから発生させたエネルギーの刃、フォトン・ソードで足元へ払い落とし、そのまま真正面からヨジロに向かって走りだし、ヨジロの背後から斬りかかるユウセイに合わせてフォトン・ソードを振りかざし、ヨジロ目掛けて×字にソードを振るい。

>>190
「今は『覚悟』が出来たんだ、だから…変身に問題は無い。」
ユウセイの言葉に、自らの心をハッキリと決めた事により変身を行う事は出来ると言葉を返して。

192 ◆tb48vtZPvI:2016/09/24(土) 03:23:40 ID:fEXmyKPw
>>190>>191
「グワーッ!!」
前後から斬撃を受けたヨジロは致命ダメージに絶叫! その場で奇妙なステップを踏み、
「…サヨナラ!!」爆発四散!

捉えられない。バシタキは次第に苛立ちと焦りを覚えて始めてきた。
幾度となく攻撃を重ねた。打撃は何度も装甲を掠めた。しかし、有効打が一向に与えられない。
機体性能はこちらが上。フーリン・カザーンも手の内にある。それなのに、何故このサイクロプスの改善機を捉えられない?
「チョコマカと…うるさいですね…む?」
バシタキはヨジロのバイタルサインが消失していることに気づいた。
「まさか? ありえないこと…」
そのありえないことが起こっている。バシタキは、今己が敵している相手がコズミック・オーダーであったことを思い出した。

193 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:26:33 ID:H2L3TqcI
けたたましい警報と階下の騒音に、ジードは予てより醜い顔をさらに大仰に歪めた。
「おい、何だァ? 何の騒ぎだァ…」
ここはアステロイドベルトの中に隠された、人身売買組織『ソドム』の支部基地の一つ。今日も一時間後に、拘留している質のいいセレニアンを2人、帝国領へとワープ搬送する予定だった。
「か、頭ぁ!」
「このザマはどうした? オーダーの連中にでも尾行されやがったのか!」
「違うんだぁ、『あいつ』がとうとう、ウチにも来やがっただぁ…!」
ジードは納得したのか、豚のような鼻を鳴らしてうなった。
「ヘッ…この前グドンの野郎の所に出たばかりと聞いたが、忙しいこった。人騒がせな小娘だよなァ…」
面倒そうに吐き捨てながらも、その顔には邪悪な、嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
「おい、予定より少し早ェが『アレ』を始めるぞ。記録・通信系のチェック! 暗号化万全にしとけ!」

194 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:27:12 ID:H2L3TqcI
「ぐげぁぁ!?」
安物のサブマシンガンを手にしたサイクロプスが、横一文字に真っ二つにされて爆散した。格納庫は大型機動兵器の運用に十分な広さと強度を有していたが、さすがに内部でのドンパチまでは想定されておらず、辺りには設備とサイクロプス3機の残骸が混ざりあって散乱し、雑然とした様相を呈していた。
「こんのォ、くそガキャあばばばばっ!?」
躍りかかろうとしたサイクロプスの顔面をバルカン・ファランクスの斉射が襲い、単眼のセンサーを粉砕する。
「でぇぇやぁぁぁっ!!」
よろめく機体に大上段から降り下ろされる、刃渡り12mの巨剣。それはけたたましい金属音と共に、重装型サイクロプスを脳天からいとも容易く両断した。
炸裂する爆炎をマントを翻してかわすと、襲撃者は足元に転がってきた頭部の残骸を、ハイヒール型の客部でぞんざいに踏みつけた。
「 ハッ…雑魚が何匹沸いてこようが同じってこと」
迎撃に現れたソドムの構成員を次々に葬った剛剣の主は、得物とは不釣り合いの少女のような可憐なシルエットを持っていた。しかし、黒いマントに覆い隠された装甲には無数の傷跡を思わせる修復跡があり、満身創痍のような痛々しい雰囲気と、くぐりぬけてきた戦歴の熾烈さを感じさせた。
「…この区画でもない…ったく、どこにいんのよ、拉致られた子達は…」
「このジード様に可愛がられに来たかァ! セレニアンの小娘ェ!」
基地内に聞き苦しいダミ声が木霊する。
「!」
大剣を背負った華奢な機体の中で、ブロンドのツインテールを揺らしながら、パイロットの少女がチッと舌打ちする。
「…生憎、汚ならしいブタを可愛がったり可愛がられたりするような趣味はないのよね。屠殺してあげるから、さっさと出てきなさいよ」

195 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:28:01 ID:H2L3TqcI
「ぐへへへ…」
格納庫の奥の闇から、巨大な影がぬっと姿を現す。黒ずんだ合金の地が剥き出しの重装甲の隙間から、有機的な筋繊維が覗く異様な風体の機動兵器。
暗黒惑星ガバに生息する、冒涜的生態を持つ巨獣を素体とする半生体ロボット『ギガント』だった。
コックピットに鎮座するジードは自らの顔を大映しにした映像通信を送りつけ、見せつけるように舌なめずりをする。
少女の一挙手一投足をトレースしていた機体が、びくっと小さく肩を跳ねさせたのを見ると、ジードはあからさまに上機嫌になった。
「ひひひ…どうだ、俺様のご尊顔を拝んだ気分は? 自慢じゃねえがグドンの奴より余程ひでえツラだろう?」
「…揃いも揃ってグロ画像みたいな顔した連中相手に、見分けなんか付くわけないでしょ? 気色悪いもん見せびらかしてんじゃないわよ」
「それにしても、見ろよ、俺様の『ベヘモット』をよ。恐ろしい姿だよなぁギガントってのは。特にお前らセレニアンにとっては尚更だよなぁ?」
かつて惑星セレニアへの侵略に投入され、星と住人、そして主力兵器たる『マシンディーヴァ』を蹂躙し尽くした悪魔の機動兵器。
その巨体は見るものに戦慄を、殊更セレニアンには生理的嫌悪と絶望すら覚えさせるだろう。
「恐ろしいのはこの巨体よりもむしろ…っと…こいつだろォ?」
ギガントの顔が落花生の殻のように左右に割れ、その中から現れたぬめりを帯びた触手がうじゃうじゃと蠢く。
「スンゴかったらしいよなぁ、グドンの奴がコレで嬲ってやった時にはよォ」
ジードの身体は無数の針とチューブでコクピットの内壁――脳死状態の『蟲』の体組織へと有機的に繋がれており、それはギガントもまた、マシンディーヴァのような神経接続コントロールを採用した兵器であることの証左である。
顔面から溢れだした触手の一本一本までも自在に操ることができるばかりか、ガバノイドの肉体には存在しない部位にも関わらず、特殊なチューンによって感覚のフィードバックさえ万全である。
「……」
少女は殺意も露な表情で、歯ぎしりしながらその言葉を聞いている。
斬り込む隙を伺いながらも、挑発に心乱されているのは明白だった。
「…能書きタレてんじゃないわよ、ブタ野郎。このあたしがあんたらごときクソブタに辱しめられた? 冗談も大概に……」
『え゛ひぃィィィィ〜〜ッ!!』
「…!!?」

196 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:29:52 ID:H2L3TqcI
モニターに送り付けられてきたのは、コクピット内で破裂した「ホーリークロス」の粘液にまみれ、豊満な肉体をくねらせて悶える、金髪ツインテールの美少女――1ヶ月前に別の基地への襲撃を図った際の、他ならぬ彼女自身の姿を記録した映像だった。
『 ぇぃい゛ィィィィンッ!! あンッ!! あ゛ンッ!! ゃあ゛ンッ!? そん、らぁぁぁ゛ッ!? だめッ、だうぇッ!! やッ、にゅるにゅる、しないれッ…ひ、ぁ、ぁ゛あ゛あぁああぁぁあ゛あぁ〜〜ッッ!!!』
「…〜〜っ!!? な、なっ!? なんで、なんでこんなもん記録してんのッ!!?」
少女の顔が、尖った耳の先までかぁっと赤く染まった。
『オラッ! どうしたァ!? 余裕で耐えてみせてくれんじゃなかったのかよォ!? ガバノイドハンターのマヤ・ランベリーちゃんよォォ!!』
『こんらッ、むッむりッ、無理ィィィィッ!! たえ゛られるわげない゛ィィィィィィィィッ!? やめぇぇ゛…!!』
『アホが! まだ始まったばかりなんだよォ!! 一本ずつ追加してってやるぜェ!! オラ! オラッ!!』
『やらッ!! やぁらッ!! んあひィ゛ィィィッ!? ゆるひッ、ゆるッ、ゆるひひぇェェェェェ〜ッ!!』
「…けっ…消せっ!!消せ!! すぐに消せ!! この腐れブタ野郎ッ!!」
足元のサイクロプスの頭部をサッカーボールの如く蹴り飛ばす。
ゴンッ、と鈍い音を立ててガバニウム鋼に弾かれ、地面に転がったそれを、ベヘモットは生卵のように容易く踏み砕きながら前進した。
「もう遅ェよォ。グドンの野郎がコピーしてあちこちにバラ撒いちまってんだ」
「バラ撒いた!? なっ、何のために…!」
「いわゆるプレゼンテーションって奴よ。お前を『商品』として売り込むためのなァ」
その言葉を受けて、赤らんでいた少女の顔にカッと怒りの相が浮かんだ。
「くぅぅ…ッ!! ブッ殺してやるッ!! お前も、グドンの奴もッ!!」
ガバノイドハンターのマヤ・ランベリー……そう呼ばれた少女は、コクピット内で剣を振りかぶるモーションを取る。
愛機ヴェスタが同様の体勢をトレースするや、身の丈を超える大剣の嶺から、5基のスラスターが一挙に火を吹いた。
「でぇぇぇぇやあああああああーーーーッ!!」

197 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:30:44 ID:H2L3TqcI
超高速の踏み込みによる真っ正面からの袈裟斬り。しかしそれは、ジードが挑発によって狙い、誘った通りの行動だった。
「甘ェんだよォ!! セレニアンのメスガキ風情がッ!!」
ギガントは上体を傾けるや、巨大な左手で剣の根元、それを支える両腕を掌握し、ガッチリと動きを止める。共に神経接続コントロールによって操られる機体ゆえに、錬度の違いが明暗を分かった。
「っ!?」
そして次の瞬間、フックパンチの軌道で、右腕の巨大質量が容赦なくヴェスタの脇腹に叩き込まれていた。
「ぁはあ゛ぁぁぁぁぁッ!?」
ヴェスタは錐揉み回転しながら吹き飛び、無惨にも基地の内壁に叩き付けられた。安価なカーボナイト装甲の大半はその衝撃でひび割れ、関節部が火花を散らす。
次の瞬間、ベヘモットは背部のスラスターで機体を転換させつつ、巨体に見合わぬ突進力で、更なる追撃のショルダータックルを見舞っていた。
「オォラァァッ!!」
「うあ゛あぁあ゛ンッ!!?」
基地の内壁がけたたましい金属音を上げて陥没し、ヴェスタは猛烈な衝撃に襲われると共に機体の背面を壁へと押し付けられる。砕けた装甲の破片がマントの下からボロボロとこぼれ落ち、大剣が床に転がる。
「ッく、ぅぅッ、あ゛うッ、こ、のっ…」
「ヒャッハハッ、!! オラ、オラ、オラオラオラオラオラァッ!!」
怒濤のごとき拳打のラッシュが開始された。壁に縫い止められたまま、ヴェスタはその全身の装甲を余すところなく砕かれていく。
「うああはぁあ゛ぁあッ!? んあ゛ぁはあ゛ッ!? あ゛ぅあ゛ぅあ゛ぅあ゛はぅあ゛ぅあ゛ぅあ゛ぅンあ゛ぅンッ!? あ゛ンあ゛んあ゛ンあ゛ンあ゛ンあ゛ンあ゛ンッ!! 」
猛り狂う両の拳がマヤを容赦なく攻め立てる。打撃に晒されるがままガクガクと彼女の全身が揺れ、Gカップのバストが無茶苦茶に跳ね回って目まぐるしく変形する。その度にダメージ電流がホーリークロスを駆け巡り、やがてそのフレームが帯電・振動し始める。
パヂヂ、ヂヂヂヂッ!!
「あひィ゛ンッ!? やッ! だッ!! め、ぇ゛ッ…!?」
拳打を受け続けるにつれ、臨界点を超えたダメージがクロスを粘液と化し、びちゃびちゃと八方に飛び散らせ始める。
その衝撃とフレームを走る電流とが筆舌しがたい激感となり、マヤの肉体を鞭打つ。
ドガガガガッ!! びちゃ、ぶちゅっ! パヂヂヂヂヂッ!!
「うあ゛ッあ゛ッ、ひ!! あひぃィ゛ィィィ〜ッ!? ひィ゛ンひィ゛ンひィ゛ィィィンッ!? ひひィィ゛ィィ〜〜ッ!!」
「ひひひひ! そォらトドメだ!!」
ベヘモットの顔面がバクンと開くや、槍のような極太の突起物が飛び出し、ヴェスタの鳩尾へと突き立てられた。
「ひはあ゛ぁぁぁぁぁッ!?」
それは頭部に内蔵された触手状器官が螺旋状に束を為した肉のドリルであった。
ぎゅるぎゅるとそれが回転を始めるや、激しい放電が開始され、ヴェスタに高圧電流が注ぎ込まれる。
「あはぁ゛あああぁ゛ンッ!? あ゛ぁン!! はぁあ゛あぁぁあンッ!! ぁひあ゛ぁ、あ゛、あ゛ッ……!? えひゅぁあ゛ぁぁあああああぁ〜ッ!!?」
ヴェスタは昆虫標本のごとく壁に固定されたまま、手足を狂ったようにバタつかせて悶絶する。
そうして十数秒にも及んだ責め苦が終わり、ドリル触手が引き抜かれると、陥没した壁面から力なくずり落ち、うつ伏せに倒れ伏す。
「ん、ぁん゛ッ…ぁ゛…ふぅ゛うん…ふぁあ゛ぁ…」
帯電したフレームのまたがる尻を突き出したような体勢で震えるマヤ。その顔は真っ赤に上気し、目元からは涙が溢れだしている。体表からは衝撃の余韻で液化したスーツがびゅっ、びゅっと断続的に飛び散る。ヴェスタの外装はすでにボロボロに砕け、か細い内部フレームがあちこちから顔を覗かせていた。

198 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:31:23 ID:H2L3TqcI
ガバノイドハンターを名乗る少女は、一瞬で標的のはずのガバノイドに返り討ちにされてしまった。何かの間違いのような光景だが、彼女が無謀な戦いを始めて以来これが常なのだ。
「ひゅゥー…まだ失神しちゃいねぇよな? ここからが本番なんだ。お寝んねしてもらっちゃ困るぜェ?」
ヴェスタの頭部をつまみ上げるようにして、機体を顔の前へと運ぶギガント。触手がみちみちと音を立ててうねっている。
「っ…本…番…?」
「『オークション』だよォ」
「!?」
驚愕に眼を見張るマヤをよそに、ベヘモットはヴェスタを掌で軽々と弄び、羽交い締めの体勢を取った。
「おい! バイヤーへの配信始めるぞ! 準備できてんだろうな!?」
「へぇ! 頭! 入札希望者数も5000超えてますぜ!」
「ぐへへ…こりゃあいい競りになるだなぁ」
これから彼らの行おうとしていることを漠然と察し、マヤは一瞬頭が真っ白になった。
彼女自身も純血のセレニアンである。敗北し、捕らわれればどんな末路を辿るかは火を見るより明らかである。常に覚悟は持っていたつもりだが、しかし、よもやこんなにも唐突に『商品』として扱われるなどとは思っても見なかった。
『やめでッ!! やめでェェェェ〜ッ!! おかひぐなるゥッ!! ひゃひィィひひィィ゛ィィィィ!?』
モニターの中の惨劇もまた、一層苛烈な展開を迎えていた。心身へのダメージで朦朧とする視界で、マヤはモニターに映る、涙と涎と粘液にまみれ、恍惚と絶望、相反する狂乱に侵された自らの無様な顔を見た。
「言っとくが俺様の『ベヘモット』はAクラスだ。グドンなんぞのカスギガントとは『素体』からして比べ物にならねぇからなァ…」
ぺたぺたとヴェスタの頬を叩くベヘモットの触手の感触を受け、マヤは自らの顔が絶望に強張っていることに気付いた。そしてそれを否定すべく、歯を食い縛って懸命に怒りの炎を燃やした。
『もぉゆるひでェェェェ!! ゆるひでッ!! ゆるひでッ!! ゆるひでくだひゃッ…ひィィィィィィィィッ!!! ひぎゅううううううゥゥゥゥゥ〜〜ッ!!!』
羞恥心など軽く通り越し、モニターの中の惨めな己に対して焼け焦げるような憎悪がこみ上げる。
忘れてはならない。ガバノイドは親友たちを奪った仇だ。同族を弄ぶ悪魔だ。不倶戴天の敵だ。こんな無様な嬌声など二度と上げるものか。どんな辱しめを受けても絶対に耐え抜いてやる!
マヤはそう心に硬く誓いを立てる。
「やってみろ、ブタ野郎…!! あたしは…あたしはもう…絶対に負けない…ッ!!」
「へへ、いいツラだ。今のうちに気丈にしといてくれた方が、商品価値が吊り上がるってもんよォ…」
「入札開始だあ! クローズドで始めっぞお!!」
ベヘモットの触手がボロボロのマントを首元から引きちぎり、剥ぎ取ると、痛々しくも艷かしい、ヴェスタの曲線的なフォルムが露となる。
「…!!」
「フーンク!!」「フーンク!!」
ガバ達の号令と共に、拘束されたヴェスタを目掛け、ギガントの口吻から無数の触手が伸び……

199 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:32:18 ID:H2L3TqcI
3分後、アーマーとスカート型のクロス・ユニットをむしり取られたヴェスタは、全身に無数の触手を這わされ、さらに背・腰双方のターミナルへとその先端を突き込まれながら、猛烈な電流を流し込まれていた。
「あう゛ぁ゛ぅあ゛ゅ゛ぅあう゛ひゃふぁあああああ゛ぁぁああ゛〜ッ!! ふゃ゛ああ゛あああ゛ぁ〜ッ!?」
両腕を頭上に触手で縛り上げられた上、ベヘモットの両掌を膝裏に回されて拘束され、放尿を促される子供のような体勢で、ヴェスタは損傷だらけの上体を激しく波打たせていた。
(こッ!? こんらッ!? こんらの、ありえにゃ゛ッ!? ひィィィッ!!?)
「ヒヒッ! どうしたァ!絶対負けねえんだろォ!? そら頑張れ頑張れ!! ヒャハハハッ!!」
「ひあぅぅぐ、ぐんぅくッ、くんんんんッ…!!」
愛機と同じ姿勢で全身を強張らせ、必死で激感に耐えんとするマヤ。その努力の程は、全身からにじみ出ている汗の量を見れば明らかだった。
「くぅンッ、まっ、まけなッ…ま゛けなひッ…こんら、ものぉぉぉ゛〜…ッ…!」
言葉とは裏腹に、今にも白眼を剥きそうな両目からは止めどなく涙が流れ落ち、震える唇からはだらしなく唾液が滴っている。
「こんなモノ…? こんなものだァ?」
「そッ、ッ、そぉよッ…ぁんッ…! こ、こんらのッ、ぜんぜん、大したことなぃんらからぁぁあ゛…ぁ゛ぁンッ…!」
「ほォ?」
「…え、Aランクだか何だかいうくせに、ンッ!! み、み、惨めッたら、なぃわね…ッ! しょせんガバなんて、ンんッ! ぶ、ブタ、以下の…」
「ったく贅沢な小娘だぜ…ならもう1段階上にシフトアップだなァ」
「はぇ…ッ!?」
バチバチバリィッ!!
「んあ゛ぁぁぁあ゛ぁああ゛あぁッ!!?」
ヴェスタを拘束する触手の一本が根本から帯電し、機体内に電流を注ぎ込んだ。
「やあ゛ぁぁあッ!? や゛ッ!? んぃィィィィィィィイ゛ッ!!?」
「なんだ、まァだ足りねェのかァ? 強欲なメスガキだぜ! オラ、オラ、オラッ!」
ジードの声に応じて、触手が更に一本、また一本と激しい放電を開始する。
「違ぁッ!? いぎぅぎッ、イィぎィィィィィィッ!? ひぎィィィィィィいいいッ!!?」
口元を必死に食い縛り、マヤは身をよじって激感に抗おうとする。
(たッ、たえッ、たえるのッ!! はんげき、はンげきッ! はンッ……)
グリッッ!!
「くお゛ォォォ〜〜ンッッ!!?」
しかし、その責めは到底耐え凌げるものではなかった。頓狂な声と共にヴェスタの細い腰が折れんばかりの海老反りになる。
「くォ゛ォうンッ!? くほォ゛ォォォォお…!!?」
「ギャハハハハハ!!」

200 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:33:27 ID:H2L3TqcI
「おっ!? おいおい、すげェことになってんぞマヤァ…ほれ見ろォ!」
「…!!?」
ヴェスタのモニターに二つのウィンドウが投影される『7,598』。『93,659,850,000』。何かのカウンターと思われる数値。特に後者の異様な桁数の値が、尋常でない勢いで跳ね上がるように更新されていく様を――
「っぁ…あ゛…!?」
そしてその横に並ぶ文字が『通貨記号』であることを、マヤは認識してしまった。
「これだけ出してでもお前が欲しいとさァ! 喜べ! 今お前が見せてんのはメスセレニアンの中でも上の上の媚態ってことだからなァ!」
ゴズン! と電撃触手が思いきりヴェスタの深奥を衝いた。その衝撃と共に、マヤの胸中で何かがポッキリと折れてしまった。
「あ゛ひいィイやぁぁあ゛あぁぁぁッ!!? だああ゛めぇ゛えええ゛ぇぇ〜〜ッ!!!!??」
「あァ!? この額でもまだダメだってぇのか? ええ?」
「ちがぁうッ!! らめえ゛ぇえぇぇ゛ッ!? も゛ッ、もぉ゛らめなのッ!! らえ゛ッ!? やめてえええ゛ぇぇぇッ!!?」
「こォんないいとこで止められっかよォ!! オラ負けんな! 絶対負けんな!! 吊り上げんだよォォ!!」
「まけぢゃっ、負けぢゃう゛からッ!! まけちゃ゛ゅのぉッ!! もぉ、これッ! やめでぇぇええッ! ゃあ゛あぁああああッ!?」
緩急をつけて送り込まれる刺激が、マヤの体の芯に食い込んだ紐状フレームを帯電させ、スーツを沸騰させては破裂させる。
パヂヂヂヂヂヂ!! びゅぐるぶびゅぶぢゅっ!!
「あ゛ーッ!! あィ゛ッ!! あィ゛ッ!! あィ゛ッ!! あィ゛ッ!!あィ゛ィィィィ゛ィィィィ〜ッ!! 」
喉元を仰け反らせたマヤの顔は上気しきり、口腔から舌を突き出した、先刻再生された映像と寸分違わぬものになっていた。
「やめてほしけりゃ負け犬らしく請えよォ!! 惨めな奴隷種族がッ!!」
「そっ、そッ、そんらッ! そんらッ…!?」
挿入されている以外の触手が、高圧電流を帯びたまま鞭のようにヴェスタを打ち据える。バシィッ!
「ひィ゛ンッ!?」
ホーリークロスのフレームにビリィッ! と電流が駆け抜けるたび、コクピットに白濁した液体が飛び散る。
ビシッ! ぶぢゅっ! バシッ、ビシィッ!
「オラッ! オラッ!」
「はひィッ!? きゃひきゃひきゃひきゃひィィィンッ!? きゃィィンッ!? 」
右に、左に、鞭打たれるたびに悪霊に憑かれたかのようにガクガクと踊るヴェスタ。
「請うんだよォ! 許しをォ!! 売り物風情が偉そうにしやがってッ!! あァ!?」
ビシッ! ビシィッ! ズバビシィッ! ぶちゅるる!!
「きゃ゛ィィンッ!? ゃひ、あお゛ッお゛ッ!? …ゆッ……ゆるひッ!? ゆるひでッ、ゆるひッ、ゆるひィ゛ィィィィッ!?」
「お許しください、だろォがッ!!」
バシィィィンッ!! ぶっぢゅるるっ!!
「きゃィィィィイ゛ンッ!?」
顔面に叩きつけられる多量の粘液が被虐者の本能を否応なく燃え上がらせる。マヤは震える唇と呂律の回らない舌で、反射的に服従の言葉を紡いでしまう。
「 お゛ッ、おゆるひくだひゃィ゛ッ!! お゛ゆるひくだひゃィ゛ィィィィッ!! ひィ゛ィィッ!? じーどひゃまぁあ゛ぁぁぁぁぁ〜ッッ!!」
「グヒャヒャーッ!!嫌だねッ! 許すわけねぇだろォ〜ッ!!」
「そッ、そんらあ゛ぁぁぁぁぁああッ!? そんらぁあぁぁああ゛ッ!!?」
無慈悲な宣告の直後、ターミナル内を放電しながらかき回していた触手の束が、突如として螺旋状に絡まりあい、ドリルのように回転し始める。
ギュルルルルルルルゥッ!! ギュイイイイイイインッ!!
「ぇひィ゛ィィィーーーッ!!? あひぇひあひあ゛ひィィィィゅ゛ゥ゛ゥゥゥ〜ッ!!らにこれ゛えぇェッ!? これらめえ゛ェェェェェッ!? えひゃああ゛ぁああぁあ〜ッ!? ひえぇぇあ゛ぁぁああ゛ぁぁあ〜〜ッ!!?」

201 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:34:01 ID:H2L3TqcI
天井知らずに高まっていく激感。心をへし折られたマヤの眼前で、目まぐるしい勢いで上昇していく見たこともない桁の金額。混濁する意識の中でそれら二つが熱烈にリンクし、セレニアンの少女に破滅的な倒錯を叩きつける。
「はぁ゛ッ!? はあ゛ッ!! はーッ、はッ!!? はひぇ゛!!? はひぃぃぃぃぃィィィィンッッ!!?」
「そォらフィニッシュだァ!! バッチリプレゼンしてやる! お前を宇宙一の人気者にしてやるからなァ! 盛大に果てろよなァァァ!! マヤぁぁぁぁぁ!!」
激しく螺旋回転しながら機体内を容赦なく蹂躙し続ける触手の束に、最大電圧の電撃が注ぎ込まれた。
ギュルルルルルルルッ!! バリバリバリィィィィッ!!
「いあ゛ぁあ゛ぁぁぁあッ!! あ゛ぇえ゛イぇぇえッ!!? じぃどひゃまッ、じぃどひゃまッ!!! え゛ぉッ!? ぉ゛お゛ゆるひぐだひゃ゛イ゛ッ、おゆるひ、おゆるひぐだひゃぁぁあ゛、えひゃ゛あ゛ァァァッ!? あひィィィィィィィィィ゛ぎゅゥゥウウウウウーーーーーッッ!!!!」
バヂヂヂヂィ゛ッ!!ぶぢゅるぶぢゅる……ぼっっ!! どぶッぢゃあああああああッ!!!!!
マヤの体を包んでいたホーリークロスが、たちまち沸騰する粘液のカタマリとなり、然るのち無残に爆裂した。
「あ゛ひゃああぁあぁあ゛ッ!!? きゃぃ゛イィ゛ィィィィィィィいい゛ンッッッ!!????」
背骨を仰け反らせたヴェスタの関節という関節から、噴水のように火花が吹き上がる。カメラシールドが砕け散り、光が消え失せる。両の脚を爪先までピンと張り詰めさせ、その全身はガクン! ガクン! と悪霊にでも取り憑かれたかのようにのたうち回り、数十秒を経た後、ようやくぐったりと弛緩し、M字に脚を開いたままギガントにもたれて崩れ落ちた。

202 ◆h9Hr5c.eFE:2019/04/01(月) 20:34:31 ID:H2L3TqcI
「……ぁッ……ぁッ、ぁ゛ッ、ぁッ、ぁ゛ッ……」
ジードの見るモニターには、粘液風呂に漬け込まれたかのような姿のマヤが、機体と同様の体勢で痙攣を繰り返す様が写し出されていた。その瞳にはもはや意思の光はなく、倒錯と被虐によって焦点の定まらなくなった瞳孔が虚ろに虚空を見据えている。
「ゅる、ひでッ…おゆるひくだひゃぃ…ッひィィ…ィッ、ぃじめ…なぃれぇぇぇ゛…」
「グヒャヒャ……いい画だぜェ、マヤァ…ここから先もアジワイてぇところだが……」
突如として、ヴェスタの機体が青白い光を放ち始めた。前回の際と同じく、パイロットが意識を失ったことで、空間転位脱出システムが作動し始めたのだ。
「これなんだよなァ…ったく、本当に面倒くせぇ機体だぜ…でもなァ!」
M字開脚したまま震え続けているヴェスタの尻たぶを、ベヘモットの巨大な掌がバチン! と打ち据えた。
「あ゛ッひィ゛ィ゛ンッ!?」
ヴェスタは背筋を弓なりに反り返らせた。
「ッ…ッッ!! …きゃひィ゛ィィ〜ンッ!! あぅ゛ッ!? あぅ゛ンッ! ぁ゛ンッ!? ィッ、ィぎィィィ……!!」
衝撃だけでダメージ電流の責め苦が再開されてしまったようだが、その絶叫を最後に、ヴェスタは閃光に包まれてジードの視界から消えた。
『ソドム』の各拠点においてすでに幾度か繰り返されている光景。いつもと違うのは、その尻にワープ先を特定するための「トレーサーデバイス」が貼り付けられているということだった。
「ひひひ…こういう遊びも愉しいもんだが、隠れ家を何度も何度も荒らされるのはいい加減シャクなんでな…」
ジードはデバイスからの情報が正常に受信できていることを確認し、一際邪悪な笑みを浮かべた。
「今回の画でコマーシャルは充分だろう。いい加減『売り物』になってもらうぜ。ガバノイドハンターちゃんよォ……」


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