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新・戦場スレ Part1

49 ◆h9Hr5c.eFE:2016/05/31(火) 01:29:39 ID:PXO8659Q
「はぁ……」
ツバサは緑茶の注がれた紙コップを手に、基地内の食堂でため息をついた。
服装は正常に修復されたT-スキンの上から、国防軍の制服のジャケットをつっかけたのみであり、それは彼女が再出撃を求められていることを意味していた。
現在、シルキーは損傷した膝関節の修復と電気系統の破損箇所の割り出しが急ぎ行われている。駆動部にパッケージ分割された人工筋肉を採用しているフェアリー・フレームは、その交換によって早急に修理が行える強みを持つが、神経接続の再テストの必要もあり、次なる作戦に開幕から参加することは難しいだろう。
それよりも……
「私、これからどうなるんでしょう……」
思わず独り言が口をついた。
実戦は想像以上に過酷であり、オーダーの救いの手が無ければどうなっていただろうと考えると、怖じ気づくなと言う方が無理であった。
自分の能力面についての不安はもちろん、あの緑色の皮膚をした怪物のような敵パイロットが何者だったのかも気がかりだった。何故あんなにも激しい恐怖心が込み上げてきたのだろう。
スパイダーネットを幾重にも浴びせられ、電撃責めを受けていた最中の仔細についてはほとんど記憶がない。何か未知の、途方もない激感に我を忘れてしまったことは覚えているのだが……
「ツバ〜サちゃんっ♪」
「ひゃあっ!?」
不意に後ろから誰かが肩に抱きついてきて、お茶をこぼしそうになる。突然のことで驚いたが、その鈴を転がしたような愛らしい声には聞き覚えがあった。
「あ、アニーシャさん!?」
「ふふ〜ん…」
にっこりと笑みを浮かべながら、頬擦りするようにツバサに顔を寄せる少女はアニーシャ・チェレンコフ。若干14歳にして、卓越した適性を見込まれてフェアリー・フォースに抜擢されたパイロットであり、ツバサにとって唯一の同期と言える存在だった。
「なんでここに…? ケット・シーはオービタル・ハイヴの模擬戦に出るはずじゃ……」
「そんなもの、とっくに延期の判断をさせていてよ」
振り返れば、そこにはフェアリー・フォースのリーダーたる国防大臣令嬢、ミレニアの姿までもがあった。
ツバサは思わずアニーシャを抱きつかせたまま立ち上がり、共和国式の敬礼の体勢を取った。
「ミレニアお嬢様、ご無沙汰しています…!」
「すでに作戦中よ。隊長とお呼びなさい」
「はっ、はい、隊長!」
ミレニアは腕組みをしたまま、敬礼に対してふん、と息一つで答えた。
「あの…お二人ともT-スキンに着替えているということは、次の戦いに出撃なさるんですか?」
「当然でしょう。こんな格好で観光に来たりなどすると思って?」
「で、でも、どうしてサイラス1や2じゃなくて、あんな遠くの基地から、それもまだ調整段階の私たちの隊が増援に…?」
「それはね〜、フェアリー・フォースの看板にぃ」
にこにこしながらツバサに抱きついていたアニーシャが腕にきゅっと力を込め、ツバサの耳元に唇を寄せる。
「誰かさんが早速塗ってくれた泥を、注ぎ落とすためだよっ」
ツバサがさっと青ざめる。アニーシャは笑みを浮かべたままだが、その表情は先程までとは打って変わった、嗜虐的な失笑の色を帯びていた。
「記録映像バッチリ見せてもらった、けどぉ、なにアレ? ネットの中でつぶれたカエルみたいになって、ヒィヒィ喘いじゃってさぁ」
「不様もいいところね、ツバサ・ウィークリッド。まさか記念すべき初陣であんな醜態を晒してくれるとは……」
「あの……あ、あの……」
言葉が出なかった。実際、自分でも途中からどうかしていたと思う。ウェーバーの指示を無視して恐慌状態に陥り、無謀な突撃をしたことには弁明の余地もない。
「フェアリー・フォースはこれからなんだからさぁ、ああいうのやめてほしいんだよねぇ?」
「次の戦いにあなたの出る幕は無いわ。せいぜいここで学習することね。戦場の妖精たるフラッグシップ部隊の、華麗なる戦いの何たるかを…」
ツバサはこの二人が苦手だった。決して嫌いとまでは思っていないが、自信が彼女たちから歓迎されていないことは重々理解していた。


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