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持ち帰ったキャラで雑談 その二
77
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 01:05:38
>>76
装備、ですか。
ちなみにターレットの上というのは…ってあれ?
つまり天井を凍らせたという事だから、普通に歩いていけたんじゃん…僕のバカw
ただし床とかつるつる滑りますが。
78
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/06/24(日) 01:17:15
>>77
では、普通に通路を通ったと解釈しますね。
防御区画は予定通り射出され、ピエットが祝杯を挙げようとしたその時である。
モニターにしっかりと一行が通路を通る姿が映し出されたのである。
ウルスラ「やはり駄目でしたか…」
ウルスラがさぞかし失望しているであろうと予想し、横のピエットを伺う。ところが、
彼はいつになく、冷静であった。
では、総員退艦だ。こんな旧型のヴェネター級など惜しくは無い。それよりも、奴等
を抹殺する事が重要だ。
そう言うと、艦内の全ての無人兵器を起動させた。更に艦をオートパイロットに切り
替え、ピエットや将校達、マリーンもハンガーから次々に輸送機で脱出したのである。
旧共和国時代から戦ってきたこの艦に最期の時が近づいていた…
79
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 01:24:52
>>78
…なんだか、おかしいぞ…?
ロイ「うん、なんかこう…人気がないというか。」
エレノア「嫌な予感がするよ…」
コレット「私もだよ…」
ラウ「おい、翼!何をやってるんだ、脱出しろ!」
ラウ、いきなりそんなに怒鳴らなくても…
ラウ「この艦の主要なメンバーは退艦してる!四人とも早く退避しろ!」
わ、わかった!
(テレポートを使い、瞬時に艦外へと脱出する)
てか、もしかしてヴェネター級がいるの宇宙ですか?それとも大気圏内?
もし宇宙であればヴェサリウスに、大気圏内なら近くの降りられる場所という事で。
80
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/06/24(日) 01:29:14
>>79
大気圏内です。…が、
>>74
をよ〜くご覧下さい(・∀・)ニヤニヤ
81
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 01:35:26
>>80
うおおおおい!太平洋ど真ん中ですかw
ロイ「…はぁ!?」
エレノア「ここって…」
コレット「海!?」
翼「…ちょwやばいw日本海軍は見あたらない?」
コレット「…見えないよ?」
翼「テラヤバスwとりあえず僕の家に戻るしか(ry」
(テレポートを再度発動し、翼の家に戻る)
というわけで四人とも自宅(翼の家)に帰宅ですー(死
82
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/06/24(日) 01:40:08
>>81
いやいやいやwアッシュ達は別行動ですよ。
…インターディクターが居るんだけどな〜
83
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 01:42:18
>>82
えええw
…じゃあディストーションフィールド展開装置を利用したボソンジャンプで脱出した事にしておいて下さい。
というか…僕達が降り立つのは東京?
84
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/06/24(日) 01:53:47
>>83
降りても構いませんが、東京は既に…(・∀・)ニヤニヤ
85
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 01:56:56
>>84
まぁいいや、とりあえず自宅に戻ったって事で。
って何にやにやしてるんですか?帝国の支配下だろうとってまさか…!?
…(´・ω・`)
86
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/06/24(日) 02:09:11
>>85
ヴェネター級スターデストロイヤー『コレリア』は『エグゼキューター』の砲撃により、
その生涯を閉じた。艦内で今度こそやったと、祝杯を挙げるピエット達であった。
――東京
東京はそれまでの昭和の街から一転して、近未来都市に変貌していた。皇居周辺
を除いて、すっかり区画を改められ、長屋や低層ビルは高層ビルやコンドミニアムに
変化していた。交通も、蒸気機関車や木炭自動車から、リニアやスピーダーに改めら
れていた。が、戦争に負け、異星の軍隊に占領されている事から、市民達の顔は決し
て明るいものでは無かった…
87
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 02:14:13
>>86
四人はすでにヴェネター級から脱出していたものの、頼る当てもなく彷徨っていた。
それは、東京が近未来都市であったからだった。
仕方なく、翼のテレポートでZ.A.F.T.のヴェサリウスへと向かう事になったのだった…
88
:
ブルーニャはフィンブル美しい
:2007/06/24(日) 02:46:30
>>87
ピエット達は艦隊を集結させ、地球周辺の勢力も屈服させようと企んでいた。そして、
その矛先はZ.A.F.T.へと向けられ、彼らの政府がある宙域へと彼は艦隊を進めたの
である。スーパー級3隻とそれに付随するスターデストロイヤーやヘヴィ・クルーザー、
クルーザー、フリゲート等が進撃する様は月や太陽ですら青ざめるほどの威容であった。
89
:
コレットたんは天使カワイイ
:2007/06/24(日) 06:43:07
>>88
プラントの存在するL5宙域…
ここには首都アプリリウスを含めたたくさんのプラント群があり、コレットやロイ達も一応はこのプラント出身であった。
それは彼らが異世界から現れた存在であり、その出生や元いた世界の事が知られるといろいろとまずかったのだ。
そこでラウと親交の深いギルバート・デュランダル最高評議会議長がそのように取りはからってくれたからだった。
そして、ラウと一緒に住んでいる少女達…彼女らはMSパイロットであり、また翼達のよき友人でもあった。
今ヴェサリウスはそのL5宙域の防衛についていたが巨大な熱源反応を感知し、
また翼達がテレポートでこの艦にやってきて熱源反応の正体と先程地球で起こった事態の説明をした事からZ.A.F.T宇宙軍が
集合し、一大決戦となる様子だった…
そして…隠された力が目覚める兆候も少しずつ出始めていた…
90
:
オセロットは山猫カッコイイ
:2007/06/24(日) 08:34:29
>>74
トルーマン「ジャップがあっけなく降伏したか・・・」
議院A「我が国も降伏したほうがいいと思います」
マッカーサー「ふん!腰抜けめが」
議院C「それでは裁決をとろうではないか」
降伏するかしないか 参加議院数 320名
賛成 214名 反対 102名 棄権 2名
トルーマン「くっ・・・降伏せねばならんのか・・・」
マッカーサー「な、なんと・・・」
>>86
ここは東京 かつての昭和の街は消え、新銀河の第二の首都となっていた。
市民A「わしらの良き昭和の街はどこへ消えていったのだ・・・」
市民B「んなこと言われても日本は降伏しちまったんだ・・・」
市民A「うう、これなら米帝に降伏したほうがマシじゃ・・・」
一方その頃・・・
オセロット「ここは・・・硫黄島か・・・」
オセロットは硫黄島に来ていた。
そのとき、シギントから無線が入る。
シギント「おい、聞こえるか?オセロット」
オセロット「なんだ!?」
シギント「アメリカは・・・ニューミルキーウェイに降伏したらしい・・・」
オセロット「な、なんだと・・・!」
オセロットは失意のあまり、そこから動けなくなってしまった・・・。
91
:
名無しさん
:2007/06/24(日) 09:04:20
>>70
トカレフなんて、ある意味物騒な軍用拳銃持ってますな。
>>71
だって「やんごとなきお方たち」ですから。
首相とかなら…。
92
:
オセロットは山猫カッコイイ
:2007/06/24(日) 09:17:06
>>91
しゅ、東條首相がいたのを忘れていたーッ!
一同「あんたどんだけやねん」
93
:
確執編十五章:再動の荒野 1/7
:2007/06/24(日) 22:33:17
・三日目 サイド:リディア
その時が来ても、私はもう驚かなかった。
いきなりドアが吹っ飛んだ。極限まで凝縮された紅い炎が部屋を一直線に貫く。
昨日は気がつかなかったけれど、あの娘の使う炎はとても綺麗だった。
それは大気に存在するあらゆる生きる糧を根こそぎ蒸発させる破滅の炎であり。
一片の淀みも残さずすべてを終わらせる浄化の炎でもある。
生まれついての資質なのかはわからないけれど、私は回復や防御といった支援系
――いわゆる白魔法が苦手だった。
幼い頃はまだ多少は扱えたのだけれど、今ではもうまったくだ。
だから、身を守りたければ力に力をぶつけるか、あるいは退却するしかない。
躊躇いなく後者を選ぶ。窓を開け、飛び降りた。
次の瞬間、背中に届く爆音と熱風。
一方で私は翠の髪を宙に躍らせながら落下。
ちなみにさっきの部屋は4階。地面に激突するまで、数秒もかからない。
けど、たった一言を紡ぐのには十分な時間だ。
「偶然《ラプラス》の祝福よ。意思通ずるなら、応えて!」
直後、私の体は地表と重なる。
まず足が地面に触れた。これが顔からだと、どうやっても致命傷という悲しい結末が待っている。
激痛がつま先から脊髄、そして頭まで突き抜けた。目にはうっすらと涙が浮かぶ。
そして、それだけだ。
「ありがと、アスラ」
私が唯一喚び出せる支援系の幻獣――アスラににこりと笑顔を返す。
そして、上を見上げた。
窓から覗くのは少女の顔。
いつもとまったく変わらない――『悪魔』の笑みをたたえる少女。
戦いが――始まった。
94
:
確執編十五章:再動の荒野 2/7
:2007/06/24(日) 22:34:21
あ、と思った時にはアスミは窓から飛び降りていた。
くるくると宙で2回転ほどした後、足から地面に着地。ほとんど音がしなかった。
猫みたいだ。風をはらむスカートでやるんだから尋常じゃない。
「目が回るー」
口調の割に足はまったくふらついていない。
物理障壁を張って着地した私でさえ、軽く膝が笑っているのに。
「ねぇアスミ、聞いて。私は……」
「とりゃー」
説得の言葉に返ってきたのは火球だった。
やっぱり無理か、と思う。
一度動き出したら止まらない性格なのは私もよく知っている。
テレビを見出したらひとつの番組が終わるまで身じろぎしない。
お菓子を食べだしたら横で戦争が始まっても無視して頬張り続けるだろう。
彼女を突き動かすものは『関心』と『情動』だけ。
そして今、彼女の情動は私を滅ぼすことにのみ向いている。
これは罰だ。
私は私のために彼女を裏切った。
確かに意図してそうしたわけじゃない。けど、そんなのアスミにはそれこそどうでもいいことだ。
言葉じゃアスミは決して止まらない。
なら、どうすればいいんだろう。どうすれば償えるんだろう。
ここでアスミに殺される? もちろん却下だ。
じゃあアスミを殺す? ありえない。それも二重の意味で。
一体、どうすれば――
「もえろー」
言葉通りのものが来た。
「くっ!」
とっさに冷気系の魔法で壁を張り、その場から全力で飛びのく。
一瞬で気化した氷壁は軽い水蒸気爆発すら起こして消滅。
力の違いがどれほどあるかは明白だ。
95
:
確執編十五章:再動の荒野 3/7
:2007/06/24(日) 22:35:23
逃げるしか選択肢がなかった。
正面からやりあえるほど力の差は小さくないし、そもアスミに攻撃すること自体が躊躇われる。
建物の影に隠れるようにして、極力アスミとの線上に何かを配置する。
けれど――
「おにごっこだー、おにを捕まえよー」
すぐ背後から聞こえてくる声をこんなにうすら寒く感じたことはない。
私も体力がある方ではないけど、それでも人並み以上に走れる自信はある。
異常なのはアスミの速さだった。
さっきの飛び降りといい、普段の彼女とは明らかに違う。
そう。私は勘違いしていた。
あの娘は、アスミは、私のような人間とは違う。
あの娘、なんて表現をしているけれど、私より何十倍も長く生きているらしい。
けどアスミは決してそんな素振りを見せない。
魔法使いを自称しているのに、魔法を使うところを見たこともなかった。
その意味について深く考えたことはなかった。
自身で言うほど魔法が使えないのか、単に争いが嫌いなんだろう――その程度にしか。
『数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの戦闘の果てに正悪を決める心の秤を捨て、
争いをやめない愚か者に等しく「焦滅」を与える「現象」と化した』
アスミは魔法を使えないんじゃない。使わないんだと『彼』は言った。
理由は、何となくだけどわかる。
強すぎる力を持つと理性が破壊されてしまう。その危険性は私も知っている。
アスミはああ見えて、きっと誰よりも強い。
自分の力に殺されないよう、これまでずっと戦い続けてきたんだから。
彼女が力を振るうのは、自分の力に負けた者だけ。
自分の力で人を傷つけようとする者だけ。
つまり――私だ。
96
:
確執編十五章:再動の荒野 4/7
:2007/06/24(日) 22:36:05
「ストップ」
その言葉を聞いた時は、かなり息が切れてたこともあって心臓が止まるかと思った。
てっきり『ここ』には自分達以外誰もいないと思っていたからだ。
けど、暗闇の中目をこらしてみれば、それは見知った顔だった。
「……プリシス?」
何故こんなところに、なんて質問は無意味だと途中で気づく。
「あなたも…今の私を否定する?」
プリシスはわずかに驚いたような顔をして、それから笑う。
「あたしは最初からアンタもアーチェも否定する気はないよ。
ケンカなんて少しでも仲良くなったらして当然じゃん」
「……ありがとう。優しいね、プリシスは」
「別にいーって、友達でしょ?」
何の気なしに言ってくれる彼女の言葉が、何より心にしみてくる。
「で、リディアはどうするの? このままじゃアスミに追いつかれるのは時間の問題だよ」
「あっ……!」
現状を思い出して慌てて背後を振り返る。
「あー、大丈夫。少しだけ時間を寄越せって言ってあるから」
「……そう」
あの状態のアスミをどうやって留めているんだろう。
何かがひっかかる。
「私は…どうしたら、許してもらえるのかな」
「アスミに? それとも、アーチェに?」
「……アスミに」
プリシスの目が、ほんの少しだけ悲しそうに歪んだ、気がした。
「あの娘に関してはあたしよりリディアのが詳しいと思うけど……」
プリシスは小さく一度かぶりを振って、
「今のままじゃ絶対に止まらない、らしい」
こくりとうなずく。伝言形であることも含めて。
「彼女を止めたかったら、一度『リセット』するしかない」
「リセット?」
「アスミの純粋さは機械のそれだからって。あたしが聞いたのはそれだけ」
機械の純粋さ。私には意味がわからない。
「プリシスは、それでわかったんだね」
応えの代わりに、プリシスは何かをこちらに投げてきた。
受け取って眺める。それは飴玉だった。
「あたしが気づけたんだから、リディアだってわかるよ」
97
:
確執編十五章:再動の荒野 5/7
:2007/06/24(日) 22:37:13
私はすべてから目を背けることで信頼を失った。
私の怒りや苛立ちは、すべて私自身のものでしかない。
けれどそれによってもたらされるものは、私の周りにも被害を及ぼす。
誰にも迷惑をかけないなんて無理だ。
人は生きてる限り、誰かに迷惑をかけるしかない。
『彼』が何を求めているのか、何となくわかってきた。
そうして、私は彼女と対峙した。
「アスミ」
私は車が横に4台は通れる大きな通りの真ん中に立っていた。
普通ならこんなことをしたら数秒で怒られるだろうけど、この世界では何の気兼ねも必要ない。
「アスミ、私の声が聞こえるかな?」
アスミはのんびりとした顔で、右手をかざす。
胸がどうしようもなく痛い。強く噛み締めた唇の痛みが気にならないほどに。
「今から私は、あなたを止めるよ」
そして、私も右手をかざす。思考を即座にシフト。
アスミは――敵だ。
「――神よ。意思通ずるなら、応えて!」
耳をつんざく神竜の咆哮。
「すごくおっきー」
さしものアスミも、その巨体に目を丸くしている。
「アスミ」
そう彼女を呼んだのは、しかし私じゃなかった。
声の方に視線を遣れば、そこには飄々とした風貌が立っている。
「構いません。『全力』でどうぞ」
その声は、焼け付くようなこの空間でなお、ひどく冷たく響いた。
アスミの目つきが――わずかに、変わる。
可愛らしい声だけはいつもと同じまま、おそろしい早さで詠唱を紡ぐ。
「おしごとー」
……なるほど、と思う。
昨日の彼女が全力じゃなかったという話は、虚勢でも脅しでもなかった。
魔界から召喚されたもう一体の竜は、神の御前で世界を割る咆哮を発した。
98
:
確執編十五章:再動の荒野 6/7
:2007/06/24(日) 22:38:36
召喚魔法というと他者の力頼みという印象を受けるかもしれない。
けど、そうじゃない。
完全な『顕現』とは異なり、召喚士の開く道を介してしか存在出来ない『召喚』では
その力を100%発揮することは適わない。
結局、術士の力に依存することになる。
「いけー」
相対する火竜の危険性を悟ったか、バハムートはその場から大きく退いた。
その火竜はおもむろに口を開くと、周囲の酸素を食い散らかして火柱を吐き出した。
ビルに直撃しては粉砕し、山に直撃しては豆腐のように貫いて、地平線の向こうに消えていく。
ここまですさまじいともう笑うしかない。
――もちろん、退くつもりはなかった。
「お願い。私と一緒にあの娘を止めて」
こういうのも神に祈るって言うんだろうか。
私の全力はアスミに遠く及ばないけれど。
覚悟なら、今の彼女にだって負ける気がしなかった。
神竜が大きく息を吸った、気がする。
それは初動。月に降り注ぐ、星をもまたいで輝く美しき御柱。
大気が、啼いた。
私の魔力に依存したメガフレアじゃ、アスミの火竜には敵わない。
ならば――足りない力は数でカバーするしかない。
「彩れ――フレア」
魔法と召喚のダブルタスク。
初めて試すけど、魔法はちゃんと発動した。
空間爆砕系の魔法を回避するのは容易じゃない。
二重のフレアは火竜に直撃した。アスミの魔力がどれだけ膨大でも、この威力を殺すことは出来ない。
火竜の存在は私にとっても都合がよかった。アスミを相手にするよりもはるかにやりやすい。
再び火竜が口を開いた。狙いは――バハムート。
レーザーのような炎が一直線に神竜を貫く――直前、私は召喚を解いた。
膨大な力量に大気が乱れ、風が吹き荒れる。
さらわれそうになる髪も無視して呪を紡ぐ。
火竜の次の一撃より早く唱え終わらなければ、その時点で敗北が確定する。
一撃にありったけの全力を込める。
小さく祈る――どうか、アスミに当たりませんように。
「堕ちろ――メテオ!」
99
:
確執編十五章:再動の荒野 7/7
:2007/06/24(日) 22:39:42
頭が真っ白になった。
酔っ払うって、こういう感覚なんだろうか。
目が回る。気持ちが悪い。
自分が地面に倒れたことにさえ、最初は気づかなかった。
メテオを使った経験は片手で数えられる程度しかない。
さっきのダブルタスクが想像以上に無理があったのかもしれない。
それにしても気絶するとは思わなかった。
頭を振って、立ち上がる。
あぁ――わかっていたこととはいえ、直視するのが憚られる。
あたりは荒野と化していた。
綺麗だったたくさんの歴史的建造物も、すべて消えてしまっただろう。
――アスミ、は?
いた。月の表面みたいにクレーターが続く中、彼女はぽつんと一人立っていた。
火竜の姿はない。あの巨体に隕石が直撃したならひとたまりもなかっただろう。
アスミは放心したようにその場に立ち尽くしていた。
彼女を支配するものは極めてシンプルだ――気に入らないものは、滅ぼす。
圧倒的な力はそれを可能とし続けてきたはずだ。
今だって、別にアスミは負けたわけじゃない。
ほんの一瞬、私の覚悟が彼女を上回っただけ。
まだ余裕がある彼女に対して、私にはもうマッチの火くらいの炎を出す魔力も残ってない。
――けど、これで、終わり。
「アスミ」
呼びかける。目が霞んで、アスミがこちらに反応したかどうかはわからない。
「いいもの、あげよっか」
言う私の手に握られているのは、たった一個の飴玉。
さっきプリシスからもらったものだ。
私にアスミの信念を破壊することは出来ない。
出来ることがあるとしたら、それは――
「食べない?」
何かがこちらに駆け寄ってくる。
私は残されたわずかな意識でそれを感じ取る。
「たべるー」
私の手を握ってくる、温かい感触。
――それが、最後に認識できたものだった。
100
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/03(火) 19:21:42
遠い昔、遥か彼方のエレブ大陸で…
戦争だ!イリア地方は無慈悲な残存帝国軍参謀総長ジェリルクス中将による攻撃によって、焦土と化していた。
英雄達は両陣営におり、邪悪はいたるところに存在する。この激動の最中、残忍な機動艦隊の指揮官ニーダ大佐
はイリアの中心都市エデッサを急襲し、エデッサ城と天馬騎士団の団員の捕縛に成功する。残存帝国軍が価値あ
る人質と共に祝杯を挙げる中、十条軍は暗黒支配から人々を解放すべく、行動を起こしていた…
101
:
翼
:2007/07/03(火) 19:54:03
>>100
プラント首都・アプリリウス 十条 翼宅
ロイ「…ティト、気が乗らないなら…アプリリウスで待っててもいいんだよ?」
ティト「ロイ、生まれ故郷を取り返すんだから…私も一緒に行かせて」
ロイ「いいのかな…?もしかしたら知り合いが人質に取られてるかもしれないし…」
ティト「それはありえるけど、それを理由にあの人達をやっつけないのはもっと嫌だ」
翼「2人とも…そろそろ、行くよ?」
ロイ「ああ、わかってる…」
ミヒロ「今回は私も一緒に行く!」
コレット・エレノア「私達も行きます」
今回のパーティー編成
翼(賢者)・ロイ(ロード)・エレノア(ヴァルキリー)
コレット(神子)・ミヒロ(マージファイター)・ティト(ペガサスナイト)
102
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/03(火) 20:12:35
>>101
ジェリルクス「ニーダ大佐、よくやってくれた。この度の大戦果に大提督もお喜びである」
ニーダ「はっ!」
ジェリルクス「では諸君!祝杯を挙げようではないか!ウラー!」
将校達「ウラー!」
帝国軍はイリア占領という快挙を成し遂げた。既にイリア各地ではストームトルーパーが
配備され、治安維持、徴税等を行っていた。税金は今までよりも軽くなったことで、帝国を
支持する者も居たが、異世界からの侵略軍に対する目は懐疑的なものであった。
帝国軍イリア"鎮圧"部隊
ジェリルクス参謀総長(帝国軍中将)、ニーダ艦長(帝国軍大佐)、レノックス艦長(帝国軍大佐)
フィオーラ(ファルコンナイト)、ファリナ(ペガサスナイト)、フロリーナ(ペガサスナイト)
参加兵力
SSD『インティミディター(恫喝者)』、ISD『アヴェンジャー』、『タイラント』、IDHC24隻
ストームトルーパー4個師団:38800人
103
:
翼
:2007/07/03(火) 20:22:55
>>102
イリア 南方
ロイ「しかし…寒いなぁ…」
翼「うん、でも相手に行軍を悟られないようにするには、こうするのが一番だって言うじゃない?」
ミヒロ「ティトさんはペガサスに乗れて良いなぁ…」
ティト「そんなことないよ、私だって寒いもん…」
エレノア「はっくしょん!うう…寒い…」
コレット「エレノアさん、大丈夫?」
エレノア「ううん、大丈夫。気にしなくて良いよ」
【夏でも寒いイリアを六人で行軍中】
104
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/03(火) 20:41:01
>>103
――イリア南方・レーミー
イリアの入り口であるレーミー城は既にピエットの甥であるサークリィ中佐が占領軍司令官として
第230大隊を率いて統治にあたっていた。この世界独特の中世ヨーロッパ的な景観の都市にスト
ームトルーパーが居るのは奇妙な感じがした。彼らは分隊で市内を巡回し、帝国の支配を隅々に
まで行き渡らせていた。
市民A「な、なんて恐ろしい風貌の兵士だ…」
市民B「税金は軽くなったが…一々監視されるのはなぁ」
そんな中、この街に6人の男女がやってきた。
105
:
翼
:2007/07/03(火) 20:53:54
>>104
――イリア南方・レーミー城
ティト「ここは、レーミーって言う所なんだよ」
翼「そうなんだ…」
コレット「寒い…どこかで休みたい…」
ミヒロ「コレットお姉ちゃん、無理しないでね?」
エレノア「…あ、トルーパー達がいる…」
翼「私やミヒロちゃん、ティトはともかくとしてロイ達は私達の後ろを歩いて」
ロイ「なんで?」
翼「相手方にあなた達の顔が割れてるかもしれない、そうなれば捕まってしまうかもしれないし」
ロイ「なるほど」
翼「もしいざとなったらその時は…これを」
(ロイにワープリングを手渡す)
ロイ「これは…よし、わかった」
【レーミー城に到着、ひとまずは宿を探す予定】
106
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/03(火) 21:59:55
>>105
レーミー市内の一部は近代化と区画整理が既に始まっており、一行はその区画に入り
込んだ。大型機材が運び込まれ、帝国のエンジニアが現地労働者を指揮している姿が
見られた。多くは淡々と仕事をこなしていたが、中には反抗する者もおり、そういった者
はすぐにストームトルーパーがどこかへ連行していった。
労働者「俺達の街をどうする気だ!こんな建物は悪魔の所業だ!」
エンジニア「君、現場に戻りたまえ。新秩序を受け入れるのだ」
労働者「真っ平だ!」
そう言って労働者は石をエンジニアに投げつけた。石はエンジニアの頬を掠め、わずかに
血が滲む。そして、痛みで顔を歪め、彼は叫んだ。
エンジニア「何をする!これは反乱だ!」
するとすぐに巡回中のトルーパー達がやってきて、抵抗する労働者を取り押さえるが、反骨
心旺盛な彼は中々従わなかった。
トルーパー「来い、逮捕だ」
労働者「離せ!この白ずくめの化け物め!」
トルーパー「黙れ!」
そう言ってトルーパーは出力を落としたブラスターで彼を気絶させた。
労働者「がっ…」
トルーパー「よし、連行しろ」
その光景を一行は呆然と眺めていた。
107
:
翼
:2007/07/03(火) 22:10:14
>>106
その光景を見てしまった彼らは…
ロイ「…確かに生活はよくなったかもしれないが、これではあまりにも可哀想すぎる…」
ティト「そうだね…」
翼「かならず、この地を帝国の支配から解放しよう…」
そういって、一軒の宿屋を見つけ一行はその日はそこで休むことにした…
【ちょっと、雪お姉さまとのロール+本スレのレスに集中したいので今日はここまでとさせて頂きますねノシ】
108
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/04(水) 00:04:22
>>107
一行は高さ120m.の最も最初に完成した近代施設であるギャラクティックホテル…の隣にある
この世界に多くある普通の宿に決めた。どうやら、隣のホテルに客を取られたせいか、誰も居
なかった。それだけに、主人の歓待は大変なものであった。
宿の主「おお!いらっしゃいませ!6名様ですか!?ささ、こちらへどうぞ!」
一行には三部屋があてがわれ、二人ずつ分宿することとなった。
宿の主「お風呂は一番奥となっております。お食事はお好きな時にお申し付け下さい。それでは
ごゆっくり…」
109
:
翼
:2007/07/04(水) 20:51:54
>>108
いたって普通の宿に泊まり、2部屋に分かれる6人。
本来なら近代施設に泊まりたい、とでも翼が言い出すと思っていたロイだが
「顔が割れるのを避けたい」という翼の意思から結局普通の宿に泊まることにしたのだった。
(部屋わけはロイ・ティト・翼、エレノア・コレット・ミヒロ)
ロイ「…さて、どうやってレーミー城に潜入するか…?」
ティト「ペガサスじゃ目立つだろうし…ねぇ…」
翼「ワープリングも封じられてた場合は…どうする…?」
ロイ「その時は…………の……を………………するしかないね…」
110
:
ピエット提督
◆ltk3xwOrlM
:2007/07/04(水) 23:20:46
>>109
――レーミー城・占領軍司令部
海の側に立つこの古城は今や帝国軍の手で近代化改修が行われていた。シールド
やレーダー基地、通信設備などが設置され、一部は既に機能していた。それらを窓
から眺めているのが、この城とレーミー市の支配者である。サークリィ=ピエット中佐
である。
サークリィ「まずまずだな」
帝国軍将校「ええ、設備も整い、統治も軌道に乗り始めました」
サークリィ「その事じゃないさ、ここに配備されたことだ」
帝国軍将校「は、はぁ?」
サークリィ「伯父上は私にエトルリア侵攻軍の司令官をやらせるつもりなんだ」
帝国軍将校「な、なるほど…」
サークリィ「という訳で、面倒があっては伯父上の考えが変わるかもしれない。そうならぬ
為にも、統治は慎重にやらねばならん」
帝国軍将校「はっ!」
111
:
埋葬、1
:2007/07/08(日) 16:05:32
「幽霊?」
受話器の向こうから伝わってきた言葉に、知らず声のトーンが上がった。
「今アンタあたしをバカだと思ったでしょ!」
「いえいえそんな――いつものことですし」
切られた。
その数秒後。
「――で、話は戻るけど」
「何事もなかったかのように再開することには、はい、触れないことにしましょう」
「なけなしの良心で、あ・り・が・と!
けどマジなのよ。夜中に目が覚めると、なんかこうひどくかすれた声が聞こえてくんの、どこからともなく。
で、おまけにそれがどっかで聞いたことのある声なワケ。ね? 何かおっかなくない?」
「ありがちですね。誰の寝言です?」
「寝言と幽霊の声を聞き間違えるわけないでしょーが!」
「俺はそっちに6年ほど住んでましたが、幽霊に出くわしたことなんてありませんよ?」
「嫌われてたんでしょ」
「…今のは不意打ちのストレートでした。
で、真面目に返すと。きっと寝ぼけてたんですよ、それで寝言か風の音を聞き間違えた、と」
「絶対違うんだってばー!」
「それより明日は…何でしたっけ、ハイキング? に行くんじゃなかったんですか?」
「それが今の話とどう関係すんのよ?」
「早く寝ましょう」
「よっけいなお世話よっ!」
切られた。
112
:
埋葬、2
:2007/07/08(日) 21:32:18
「行方不明?」
受話器の向こうから伝わってきた言葉に、知らず声のトーンが上がった。
「今度のは大マジなんだから! バカにしたら承知しないわよっ!」
「最初からする気なんてありません」
「それはそれで何か腹が立つ…」
「理不尽なこと言ってないで状況説明をお願いします」
要約するとこういうことらしい。
曰く。ハイキングと称してちょっと山奥の方まで数人で出かけた。
曰く。最初は全員一緒で行動していたが、途中から個人で散策することにした。
曰く。その十分後アスミが消えた。
曰く。それを探しに行ったリディアも消えた。
「3つ目は必然ですね。アスミなら数日後にジャングル奥地で発見されても不思議じゃない」
「それはあたしもそう思うけど、リディアがいたもの」
「えぇ、リディア様がいればアスミの場所はわかりますね」
リディアは魔力の流れを『視る』ことが出来る。
この世界で魔力を持つ存在は特異なため、さほど離れていなければ見つけることは容易なはずだ。
「にも関わらず、そのリディア様まで行方がわからなくなった、と…」
「そ。ね、あたし達どーすればいいと思う?」
「いや俺に聞かれても、何とも……」
「役立たず!」
「うわ理不尽」
さりとて今に始まったことでもないので、互いに恣意を含めることもない。
「あーもうどうすりゃいいのよ。箒で空飛んでも森の中は見えないし……あっ!」
切られた。
「……ここで切るってどんだけ」
空しくツッコみつつ、とりあえずかけ直す。
「あ、良かった……」
と言ってきた声はしかし先ほどまでの甲高いものではない。
「あれ、リディア様?」
「ねぇ……しよう。…………ない、の」
「すいません、なんて言ってるか聞こえません。泣いてるんですか? アーチェは行方不明って……」
「アスミが……動か、ないの」
113
:
彼女にとっての幸せ
:2007/07/10(火) 18:05:07
いつものようにぼんやりしていると、不意に誰かに頬をつねられ、
コピーエックスは慌てて顔を上げた。
見れば、何時から居たのか、フヨウがむっとしながら彼の頬を摘んでいた。
「ふほう?」
「また難しそうな顔してる」
そう言うとぱっと手を離し、つねられた部分をさするコピーエックスのに鼻先に
指を突きつけた。
「エックスは人の事ばっかり考えすぎなんだよ、だからそんな顔ばっかり」
その言葉に彼が小さく笑うのにフヨウは指を引っ込めた。
「・・・エックスが居た世界のこと?」
「うん・・・、いまになってみるとぼくは本当に楽園を築いていたのか、自信がもてなくてさ」
隣でフヨウが立ち上がる気配を感じながらも、コピーエックスはそのまま続けた。
「オリジナルがどう考えたかは知らないけど、人もレプリロイドも幸せに暮らせる理想郷なんて
無理なんだよ。第一どう考えたってエネルギー不足になるし」
「それは違うんじゃないかな?」
えっと彼は庭に降り立ったフヨウを見つめた。
彼女は眩しそうに空を見上げながら、歌うように言った。
「その、エックスのお父さんがどんな人か僕は知らないよ?
でも、きっとその人が作りたかった楽園はさ、
皆が誰かに必要とされるって感じることが出来て安心できる場所なんじゃないかと思うんだ」
だってさ、といったん言葉を切ると彼女は振り返り
そのまま言葉の続きを待っていた彼に抱きついた。
「ふふふふふフヨウ!?」
「えへへへへ」
顔を真っ赤にして慌てる少年の腕の中で少女は
幸せそうに笑いながら、言うのであった。
「だってさ、誰かに愛してもらうこと以上に幸せなことなんてないもん」
おまけ
「うー・・・・・」
「お?どうしたんだ?」
「なんていうか・・・水飲みにきたのに物凄い胸焼けがさ」
「???」
114
:
君が居なくなるその時まで 1/2
:2007/07/15(日) 14:29:01
「フランドール」
声に振り替えれば、日傘を差したレミリアが立っていた。
フランドールは手にしていた花を置くと傍らに置いておいた日傘を手に立ち上がった。
「少し歩かない?」
小さく頷いて、二人で歩き出す。
あれから、こうした晴れた日に姉妹で散歩するのが日課になっていた。
本心を言えば、フランドールはこれが嫌いだった。二人だけで歩く事が嫌応なく居た筈の存在を意識してしまったから。
いつも変わらない門番の横を通り抜け、湖の近くまで歩く。
「あ、蝶々」
二人の目の前を一匹の蝶が横切る。
「見たことない蝶ね、なんていうのかしらね?」
「私知ってるよ、あれはねアサヒヒョウモンって言うんだよ」
どこか寂しそうに、懐かしそうに言うフランドールにレミリアはただ無言で舞い踊る蝶を見つめていた。
「アサヒが、言ってたもん、俺の名前はあれから貰ったんだって、紅が、そう付けて、くれたんだって」
ぽたり、とフランドールの頬を雫が伝う。
「ずっと、ずっと、一緒に、居てくれっ、るって、言ったのに!」
視界の端で傘が落ちる。同時にフランドールをレミリアが抱き締めていた。
「フラン、私達と人間では寿命が違い過ぎるの。それは悲しい事だけど、仕方ない事なの」
気付けば、レミリアもフランドールを抱き締めたまま静かに涙を流していた。
大切な存在を失ったのは何もフランドールだけではなかった。
彼女の姉も、同じ様に大切な存在を失っていた。
何処かでひぐらしが鳴いている。
もうすぐ、夜になる。
115
:
君が居なくなるその時まで 2/2
:2007/07/15(日) 14:41:24
縁起でもない夢を見たフランドールはぶすっとしたまま、テーブルに突っ伏していた。
「今日は随分とご機嫌斜めだな」
くくっと笑うゼロツーを見つめ―ふと、思い付いた疑問を投げ掛けてみた。
「ゼロツー、もし紫が死んだらどうする?」
「…いきなりだな。まあ、そうなったら、また前の生活に戻るだけさ」
新聞を畳みながら、なんでもない風に言うゼロツー。
「でも多分そんな事無理だろうな。あの頃と今じゃ違いすぎる。
となるとあれだ、あいつをダークマターに…は拒絶されるな」
「じゃあどうするの?」
「そうだな…」
天井を見上げ、しばし考え込むように目をつむり、思い付いた様に頷く。
「あいつの最後をみとってやる」
「なにそれ」
「いやいや、あいつの最後の時まで一緒に居てやるって事だ。
一緒にいられないなら居られる所まで居ようってな」
寿命が違えば、必ずどっちかが先に逝ってしまう
そんな未来の、必ず来るお話
116
:
確執編十六章:同志の見極め 1/6
:2007/07/17(火) 21:26:39
・二日目 サイド:アーチェ PM8:30
「人を好きになるって、どういうものなのかしら?」
面と向かって言われたあたしは、その突然の質問に呆然とするしかなかった。
・二日目 サイド:アーチェ PM7:30
『………………』
鉛のように重苦しい沈黙。
息を吸うのさえ罪の意識を覚える停滞した空間に、あたし達は腰までどっぷり浸かってた。
黙々と動かす箸に、だけど人の意思が介在してる素振りは見られない。
水飲み鳥のように、あがっては、おりる。機械仕掛けのように単調な動作。
――あたしは今、何をしてるんだっけ?
自問する。答えは意外にも明白だ。
箸を動かし、お皿に盛り付けられた料理を掴み、口に運ぶ。
ただし、どこまでも機械的に。
栄養を摂取するだけの物体と化したあたしに、もちろん味を感じる器官なんてあるはずもなく。
つまりは味気のない夕食を味わってるわけだった。
「…………ごちそうさま」
ビクリと。
突如崩壊した静寂に、その場にいた全員が身をすくませた。
声の主はそれにさほどの感慨を抱いた様子もなく、「ちょっと風を浴びてくる」と言って部屋を出て行った。
「………………ふぅ」
誰かが息をつく音。それはあるいはあたしだったかもしれない。
「何でこんなに緊張してんだろ」
杏の言葉に、あたしは曖昧な表情を浮かべることしか出来ない。
たった一人、部屋から人数が減った。
それだけで空気はいつもと同じに戻っていた。
「なんかアイツの雰囲気って、あたし達を拒絶してる気がするのよねー」
――そう。
たった今部屋から出て行ったアイツ――セリスは、ここに来てもいつもと同じだった。
セリスは家にいてもあたし達と積極的に言葉を交わそうとしない。
何というか、周りを近づけないのが自然って感じだ。
けど、拒絶してるってほどでもない。距離を置いて会話するのは可能で、無闇に近づけば避けられる。
だから彼女に特別な印象は持ってない。良くも悪くも、彼女は空気みたいな存在だ。
――違う。正確には、存在だった。
『迷うべき時は、必死に迷って。けど、決断すべき時には躊躇わないで』
セリスはいいヤツだ。
どうしてあたしを助けてくれたのか。
どうしてあんなに本気の目でいられるのか。
――どうすればあたしはあたしにとっての正しさを見つけられるのか。
あたしは、彼女と話がしたい。
117
:
確執編十六章:同志の見極め 2/6
:2007/07/17(火) 21:28:31
「セーリス」
驚かそうと思って背後から声をかけたけど、彼女は少しも動じた様子がない。
きっと気配か何かで気づいたんだろう。
「…………何?」
ひどく平坦な声。彼女は滅多なことじゃ声に感情を含めない。
「いや、一人で何してんのかなーって」
「特に何も。木々を見てたの」
言うとおり、セリスはさっきから視線を同じ方向に向けたままだ。
相手にされてないと腹を立てるよりも、あたしは彼女のまなざしの色が気になった。
「何でそんな眩しいものでも見るような目をしてんの?」
その様子は、一言で言えば、憧憬だった。
「……この世界にも、美しいものはあるのね」
セリスの視線がこちらを向いた。
潤むように濡れた瞳があたしの双眸を射抜く。
同性のあたしでさえ胸が高鳴る艶っぽい姿だった。
「自然が、好きとか?」
「えぇ、とても。私の周りにはなかったものだから」
――キンッ
震えるような金属音。
そうして、セリスは『初めて右手から剣を離した』。
どんな状況下でも戦場を想定するのは、もと軍属としての性だろうか。
「……ねぇ、アーチェ。少し話をしましょうか」
願ってもない提案だった。
そうしていきなりぶつけられた質問がそれだ。
正直な話、あたしの方から何を聞こうとしてたかなんて全部吹っ飛んだ。
「人を好きになる、ねー……」
思わず空を見上げる。残念ながら星は見えない。
「んー、まずどうしていきなりそんなことを聞くワケ?」
「大した理由はないわ。単純に興味があるだけよ」
一番厄介な返し方をされてしまった。これではごまかしようがない。
「けど聞かれてもあたしには特に好きなヤツなんていないしえぇいないし」
自爆ってこういうことを言うんだろう。あー空しい。
セリスはそんなあたしの様子をきょとんとした顔で見た後、ふいに苦笑した。
「別に男女の事に限ってはいないの。親子愛とか、友情とかも『好き』って呼称するでしょう?」
うわ壮絶な自爆。
「私はあまりそういう感情を抱いた経験がないの。物心ついた時には独りだったから」
熱く火照った頬に思いっきり冷水を浴びせられる。
118
:
確執編十六章:同志の見極め 3/6
:2007/07/17(火) 21:30:32
「正直、私はあなた達が羨ましい」
セリスの独白にも似た言葉は、ひどく透き通っていて。
「親の記憶も、友達との想い出も、私にはないもの」
それだけにどうしようもなく重かった。
「あ、勘違いしないで。別に不幸自慢をしてあなた達の諍いを批判する気はないの」
「……十分、批判された気分だけどね」
「批判できるほど他人を知らない。私はただひたすらに強くなることを求められた――機械だから」
ふと、半年くらい前まで一緒にいた幼い忍の姿が重なる。
あの娘と違うところがあるとすれば、それは――
「友達ってのはね、けっこう面倒なもんよ」
意外そうな顔をするセリス。
「批判できるほど云々なんてアンタは言うけど、そんなのアタシだっておんなじ。
相手が何考えてるかなんてわかるわけないじゃん。エスパーじゃないんだから」
そう、わかりあえるはずがない。自分と相手は違う存在なんだから。
わかりあえなくて、当然。
「それをわかった気になって付き合えて、なお不快に感じない相手を『友達』ってゆーのよ、多分ね」
――なんだ、わかってんじゃん、アタシ。
「……っても、こんなのしょせん口だけの話だけど」
苦笑する。わかってるはずなのに、あたしは何にもわかってない。
「仲良くなればなるほど、わかってるって思っちゃう。わかってほしいと思っちゃうもん」
わかってると自惚れてた。
わかってくれてると錯覚してた。
「そうして、いつの間にかあたし達はお互いを『本当に』わかった気になってた。
だからうまくいかなくなったのよ、あたしとリディアは」
これが憎しみじゃないことには、本当はとっくの昔に気づいてた。
ただ、そう思い込みたかっただけだ。
彼女を恨むことが出来れば、あたしはきっとあたしを許せる。
そんなバカみたいな幻想を抱いてた。
だからあの時のあたしはリディアに躊躇なく魔法を使おうとしたんだろう。
恨みたかった。恨んでほしかった。
壊れかけた砂の城は、無様な形で作り直すより壊した方が楽だから。
119
:
確執編十六章:同志の見極め 4/6
:2007/07/17(火) 21:33:16
「私には…よく、わからないけれど」
今のセリスの顔はさっきまでの大人びたものと対照的に、ひどく幼く見えた。
「わかりたいと思うことは、そんなに罪深いことなの?」
「………………」
「誰だって、知らないものは知りたいと思う。知の探求は人として当然持ってるものよ。
人が当然持ちうるものが、人が当然抱く感情の妨げになるものかしら」
「それはつまり…あたしが間違ってるって言いたいワケ?」
「そうね。私が思うに、だけれど」
はっきり言ってくれる。好き嫌いの分かれるタイプだ。
「本当はあなただって気づいてるんじゃない?
ただ、あなたはリディアを肯定できないから、都合のいいように理屈を捻じ曲げてる」
「…全部わかったような言い方しないでよ」
「ごめん。私は『好き』を知らないから、わかった気になって語ることしか出来ない。
けど、あなたは違うよね、アーチェ?」
・二日目 サイド:アーチェ PM10:00
あたしはリディアの何を知ってたのか――か。
湯船から生える自分の手を何とはなしに眺めながら、物思いの海に沈みこむ。
友達だったのは、間違いない。
彼女があたしを理解してるくらいは、あたしも彼女を理解してた。
――そう感じてたのは、やっぱり幻想だったんだろう。
だからあたしはあの時のリディアの言葉に耐えられなかった。
裏切られた――そう思ってしまった。
「どしたの、アーチェ?」
「んー。色々ねー」
「悩んでるあんたって、ものすごく違和感あるわ」
「どーゆー意味よそれ」
「セリスと何かあった?」
「…………」
間違いじゃないけど、正しくもない。
一瞬答えに窮したあたしを、杏は肯定と受け取ったらしい。
「悪いヤツには見えないけどね。近づかないけど、突き放しもしないみたいな?」
「そんなことない、セリスはヤな奴よ……って言ったらどうする?」
「もちろん、セリスと話に行くわ」
言って、口元を笑みに歪める。
やっぱり杏もいい奴だった。
120
:
確執編十六章:同志の見極め 5/6
:2007/07/17(火) 21:35:23
ガラリと。
音のした方を振り向くと、唖然とするほど綺麗な肢体が視界に留まった。
「…………神様は不公平だわ」
頬を引きつらせる杏に、あたしは無言で同意。
セリスは一度すくったお湯で体を流した後、あたし達から少し離れたところに腰を下ろした。
ちなみに、セリスの分の宿泊料金は当然ながら支払われてる。
これもアイツの手引きらしい。準備のいいことだ。
セリスはあたし達とはちょうど反対方向――庇の向こう側に見える木々を眺めてた。
あたし達を避けてるのか、単に木々を見るのが好きなだけか。難しいところだ。
そんな彼女を杏はしばらく歯噛みするような目で見てたけど、急にその顔が変わった。
思わずあたしは二人から視線をそらす。経験上、杏があの顔になって穏便に事が済んだ例がない。
杏の姿が消える。湯船に沈んだようだ。
即座に彼女の狙いが読めた。同時に、それが失敗することも。
たとえこちらを見てなくても、セリスにはこちらが視えてるに決まってる。
「あの……アーチェ」
「へ……へ?」
その彼女にいきなり声をかけられあたしは面食らう。
「さっきは、ごめんなさい」
「さっき?」
「昼間のこと」
少し悩んでから理由に思い至った。
「ひょっとして、アクマの時の?」
こくりとうなずく。
「…何でアンタが謝んの?」
セリスの言葉に間違いはなかったし、あたしが原因で『死んだ』以上責められてもおかしくない。
「戦闘時は昔の記憶が蘇って感情が昂ぶるの。それを理由にするつもりはないけど、やっぱり言い方が悪かひゃあっ!?」
「悪か……ひゃあ?」
ずいぶん新しい謝罪の仕方だ。
「ち、違っ!? ……んっ」
セリスがおもむろに湯船の中に手を伸ばす。
杏が釣れた。
「…………………………何してるの?」
セリスの顔は真っ赤だった。のぼせたのか、怒りのためか、恥ずかしさのためか。これも難しいところ。
「スキンシップ」
言って、手をわきわきと動かす。
「杏……アンタ、完全に変態オヤジと化してるわよ」
「女同士のスキンシップなんて普通でしょ」
「その手つきと顔はスキンシップの域を軽々と越えてる気がするけど」
それよりもあたしにはセリスが杏にしてやられたことの方が驚きだった。
何か他に気がかりなことでもあったんだろうか。
思ってから、気づく。
――さっきは、ごめんなさい。
121
:
確執編十六章:同志の見極め 6/6
:2007/07/17(火) 21:38:05
結局、杏はセリスの傍らに寄るというミッションに成功した。
「ねぇ何でそんなにデカいの?」
「…いや、自然と」
というか、セリスが少しずつ距離を開くたびに杏が同じ分だけ縮めてるんだけど。
基本的にセリスは明確な拒絶を示さない。態度で避けてることを表すだけだ。
今、杏はそれをわざと無視してる。
「もっかい触っていい?」
「……ダメ」
「わかった。じゃあ揉むわ」
「ひぅっ!?」
抱きついた。同性じゃなかったら犯罪以外の何物でもない。
――と、昨日四葉に対して同じことをしたのは棚にあげつつ。
小さく震えるセリスの肢体。
それが――わずかに、動いた。
「…………へ?」
そばで見てたあたしでさえわからなかったんだから、杏には何が起きたかさえ把握出来なかっただろう。
セリスが杏の後頭部を掴んで嗤っていた。
速い。お湯の中という制約すら無視して、まばたきする間に杏を組み伏せていた。
「…頭を湯の中に漬けてもいい?」
「いいわけないでしょ!」
「わかった。じゃあ沈めるわ」
沈めた。杏のもがきなんてものともしない腕力で。
「楽しいね」
「へ?」
「こういうのも、うん。そんなに悪くない」
言って無邪気な子供のように笑う。
何だ、こんな風にも笑えるんじゃん。
「ならさ、もっとあたし達に寄ってもいいんじゃない?」
「……私はよくわからないから」
「人はわかりあえるって言ったのは誰だっけ」
「! ……そうだね、そうだった」
笑みが翳る。何となく何を考えてるか想像がついた。
「ね? 言葉で言うのは簡単でも、行動にするのは大変でしょ?」
「そうかもしれない――
――けど、不可能だとも思わない」
つられて笑う。
そう、それが正しいんだ、きっと。
「それとさ…杏、そろそろ離してあげたほうがいんでない?」
慌ててセリスが後頭部から手を離しても、杏はしばらく浮いてこなかった。
122
:
ギャラクティック・コンクエスト:序章・工業惑星マイギートー
:2007/07/20(金) 11:58:12
――残存帝国艦隊旗艦SSDエグゼキューター
『執行者』の名を冠するこの白い巨艦はかつて、デス・スターと並んで、帝国の威信を示すものであった。
が、今では一戦闘艦として『新銀河共和国』を僭称する反乱同盟軍や裏切り者の総督や軍人達の軍隊
と惑星や宙域の覇権を巡って戦いに明け暮れる毎日である。しかし今は反乱軍の手から奪回したばか
りの工業惑星マイギートーの軌道上に浮かび、束の間の平和を得ていた。そして、艦隊を束ねるピエット
は司令官にのみ使用が許される瞑想室で瞑想に耽っていた。
ピエット「…」
一方、ブリッジから瞑想室へと通じる白く長い廊下を背筋を伸ばして歩く黒髪の女性が居た。彼女はこの
近代的な戦艦には似つかわしくない、中世的な…帯剣をし、まるで剣士のような装束に身を包んでいた。
しかし、いつもは傲慢な態度の帝国の将校やストームトルーパー達が敬礼しているところを見ると、相当
高位の人物なのだろう。彼女は瞑想室のドアの前に止まると、慣れた動作でロックを解除し、中に入った。
本来、司令官が瞑想中にこの部屋に入るのは御法度である。この事からも彼女の地位が分かる。
――SSDエグゼキューター・瞑想室
薄暗い部屋の中央には巨大な貝のような機械が置かれていた。この機械こそが、瞑想室である。これは
かつてダース=ヴェイダーが使用していたものと同じ仕様のものであり、ピエット曰く、「暗黒面の力が身
につくような気がする」とのことだ。そして彼女が横にあるコンパネを操作すると、すぐに瞑想室の屋根が
上に持ち上がり、白い大提督の制服を着た男が姿を現した。
ピエット「やあ、アッシュ」
男はこの女剣士のことをアッシュと呼んだ。これかもし彼女でなく、将校やストームトルーパーだったら、
その者は良くて叱責、悪ければ軍法会議にかけられているだろう。そうではなく、機嫌よく挨拶したところ
から、関係も大体分かってくる。
アッシュ「またここに居たのか」
ピエット「うむ、深遠なる知恵の完成について考えていた」
アッシュ「また、訳の分からないことを…で、何か分かったのか?」
ピエット「今夜のおかずはほうれん草のソテーとみた」
次の瞬間、ブラスターよりも早いアッシュの斬撃がピエットを襲い、断末魔が瞑想室内に響き渡ると同時
に、白い瞑想室と制服を深紅に染め上げた。だが、そこは戦闘機に特攻されようが、デス・スターに特攻
しようが死ななかったピエットである。彼の魂は直ちにフォースの冥界から帰還し、抗議の声をあげた。
ピエット「何をするんだ!この神聖なる瞑想室を血で染め上げるとは!」
アッシュ「この忙しい時に何を考えているのだ貴様は!何が深遠なる知恵の完成だ!おかずくらい主計
将校にでも尋ねれば良いだろうが」
まさに正論である。戦闘が終われば、占領統治の方針の決定や、兵員や物資の補給、敵産の接収、論
功行賞など、すべき事は山ほどあるのにもかかわらず、彼は夕食の献立を数時間に渡って予知しようと
いう時間の浪費を行っていたのだ。もっとも、確かに献立はその通りであったが。
ピエット「それはそうだけどさ。で、戦後処理は誰が担当している?」
アッシュ「ヴィアーズ将軍とフリーマン博士を中心に委員会を設置した」
そうかと言って、彼はがっしりした体格の戦友と髭面の物理学博士をの顔を頭に浮かべた。どちらも信用
のおける優秀な人物なので、間違いは無いと彼は判断した。彼女はピエットの代理人という地位にあり、
この人選も恐らくはアッシュが行ったものだろう。ピエットは彼女の的確な人材の配置に満足していた。
123
:
ギャラクティック・コンクエスト:序章・工業惑星マイギートー
:2007/07/20(金) 12:11:46
まさに正論である。戦闘が終われば、占領統治の方針の決定や、兵員や物資の補給、敵産の接収、論
功行賞など、すべき事はいくらでもあるのだ。それにもかかわらず、彼は夕食の献立を数時間に渡って
予知しようという時間の浪費を行っていたのだ。もっとも、確かに献立はその通りであったが。
ピエット「それはそうだけどさ。で、戦後処理は誰が担当している?」
アッシュ「ヴィアーズ将軍とフリーマン博士を中心に委員会を設置した」
そうかと言って、彼はがっしりした体格の戦友と髭面の物理学博士の顔を頭に浮かべた。どちらも信用
のおける優秀な人物であり、人民の支持を失うような真似をしでかすことは無いだろう。この人選は恐
らくはアッシュが行ったものである。彼女はピエットの代理人という地位にあり、彼女の的確な人材の配
置は彼を満足させた。
最初はほとんどの者が彼女に批判的だった。帝国には女性蔑視の風潮があった上に、代理人という立
場がかつての皇帝の代理人であるダース=ヴェイダーに重った為、彼女を忌み嫌った。更にピエットに
も色狂いしたかという陰口を叩く者も居た。だが、的確な判断力を随所に示したり、時にはピエットを超え
る見事な差配をする内に、頑迷な帝国の将校達も彼女を認めるようになった。勿論、彼女の容姿による
ところも大きいが。ただ、兵士達には当初から人気があった。かつて皇帝が使っていた赤い光刃のライト
セイバーを振るい、先陣を切る姿はトルーパー達にとって非常に頼もしいものだったのである。
ピエット「で、用件は何かな?」
ピエットが本題を聞く。アッシュも忘れていた、と言った顔をして用件を伝えた。
アッシュ「ああ、それなんだが…少々、問題が発生した。会議室に来てくれないか?提督や将軍達はもう、
集めてある」
それを聞いて何が起こったか、問題の規模の見当がついた。少々の問題なら現場で、やや大きいものな
ら彼女と司令官達で対処できる。自分の所まで来るのは余程の問題だ。すぐさまアッシュを伴い、瞑想室
を出て、作戦室へと彼は向かった。
124
:
ギャラクティック・コンクエスト:序章・工業惑星マイギートー
:2007/07/21(土) 14:56:11
――SSDエグゼキューター・作戦室
作戦室では既に麾下の将官や佐官が長い帝国軍ホロテーブルに腰掛けている。一番奥と、二番目の左
側の席が空いており、座るべき者を待っていた。彼らは二人を見ると立ち上がって一礼し、二人が座った
後に再び腰をかけると、開口一番にピエットのすぐ脇に座る将軍がプロジェクターに惑星のホロを映しなが
ら、状況の説明を開始した。
冷静に状況を説明する彼はマキシミリア=ヴィアーズ将軍。首都惑星コルサント出身の人間である。彼は
上司の策謀で常に危険な戦場や、脆弱な部隊を預けられたが、彼にはそれも自分の有能さを見せ付ける
手段でしかなかった。戦局を引っくり返し、脆弱な部隊も精鋭に鍛え上げ、常に前線で武功を立てたのだ。
面白くないのは上官達である。そこで彼らは死刑宣告にも等しい人事を行った。あの邪悪なダース=ヴェ
イダーの下に送ったのだ。しかし、彼はヴェイダーの要求することをソツなくこなし、自慢のAT-AT部隊を率
いて、氷雪の惑星に籠った反乱軍を踏み潰し、人々は『ホスの英雄』と彼を称えた。
ヴィアーズ「問題が発生しました。惑星マイギートーの主要都市『ルーンニウム』で反乱軍の残党が決起し、
市民を人質に取り、帝国軍の撤退を要求しております」
かつての帝国なら、市民もろとも反乱軍の上にスターデストロイヤーの砲撃を浴びせて滅ぼしていただろ
う。が、ピエットはそのような手荒な真似を好まなかった。それに、差別主義や圧制を廃止することで、反乱
軍の大義を失わせ、他の軍閥との違いを明らかにするという戦略がある。また、財政の逼迫も占領地の必
要以上の損害を許さなかった。
ピエット「まずいな…しかし、反乱軍の要求を呑むことはできん。そこで、精鋭部隊にルーンニウム解放の
任務を与える」
アッシュ「第501大隊か?」
第501大隊…共和国末期のクローン大戦の時に編成された大隊である。兵員や小隊長まで全員がクロー
ンの部隊であり、中隊長も半分がクローンという編制だ。これは数々の戦闘で武功を挙げ、ダース=ヴェ
イダーの直属部隊という名誉と『ヴェイダーの拳』の異名を与えられた、エリート部隊である。帝国崩壊後
は、ピエットの軍に所属し、常に困難な戦局を打破してきた。
ピエット「その通りだ。ジェリルクス大佐、直ちに麾下の兵力を以て、一週間以内に反乱軍を沈黙させるの
だ。使用する兵器に制限は設けないが、市民や施設の損害を最小限に抑えるように」
ジェリルクス「はっ!」
ジェリルクス大佐は工業惑星エリアドゥの出身で、カリダ軍事アカデミーを首席で卒業したエリート将校で
ある。アウター・リムで数々の内乱を鎮圧し、30代にならない内に中佐に昇進。そしてそれがヴェイダーの
目に留まり、第501大隊の司令官に任命され、同時に大佐に昇進した。ヴェイダーの部下になった者は大
抵、暗黒面の教義を与えられることになるが、彼はピエット、ヴィアーズのような少数の成功者に名を連ね
ることに成功したのである。
125
:
非日常なる日常 1/2
:2007/07/22(日) 08:57:18
(465人目594目欄から、469人目の状況も追加で。)
緑:「学習しないとな…。」
カワサキ:「あなたが一番学習しないとならないでしょうに…。」
久遠:「まさしく正論ですね。」
緑:「否定できないのが悔しい。」
日向:「まあ、気付いてるだけでもいいんじゃない?」
静馬:「そうとは言い切れないと思うけど…。」
菜月:「こっちに飛び火させないでね、忙しいんだし。」
七瀬:「またお部屋にこもるの?」
菜月:「ん〜、ちょっとね…。」
日向:「お店手伝って貰おうと思ったけど無理みたいね…。」
小春:「じゃあ私が手伝うよ。」
静馬:「僕も手伝いますよ。」
日向:「いいの、二人とも?」
小春:「あの制服可愛いし、お手伝いするよっ☆」
静馬:「いつも忙しそうですしね。」
日向:「じゃあお願いね。」
緑:(君も制服着れるだろうに…。髪伸ばしてるんだから。)
静馬:「緑も手伝ってくれるだろう?。」
緑:「ちょ、なんで俺まで?」
静馬:「ちょうどいいじゃないか、そんな格好なんだし。」
緑:「勘弁してくれ…。二度とお天道様の下を歩けなくなるから。」
菜月:「にへへ〜、おねーさんがお化粧してあげるわ〜。」
緑:「ま、待ってください(汗。なんでそんな…」
菜月:「決まってるじゃない、面白そうだからよ。」
緑:「だ、誰か助けて〜!」
氷:「面白そうだから私も手伝っちゃおっと。」
菜月・静馬・氷・七瀬:「覚悟しなさ〜い!!」
緑:「増えてるしー!」
20分後…。
緑:「ううぅ…。もうお婿にいけないOTL」
氷:「ちょっと無理そうかも…。」
静馬:「でもリボンか頭の飾りのやつ着ければ結構いけそうだね。」
菜月:「やっぱり厚手の黒タイツじゃなきゃダメみたいね。」
七瀬:「お兄ちゃんの足の毛を剃らなきゃね。」
静馬:「でも見えないから大丈夫ですよ。」
リース:「変…。」
涼乃:「兄様(にいさま)…。」
水:「ああううぅ…。」(←オロオロしてる娘)
菜月:「さっ、よろしくお願いね。」
小春:「は〜い!」
静馬:「じゃあ行こうか。」
緑:「モウドウトデモシヤガレ…。」
久遠:「緑さん、これを。」
緑:「ん?ってこれは変声機!?なんでこんな物が?」
久遠:「お気になさらずに。ではいってらっしゃい。」
126
:
非日常なる日常 2/2
:2007/07/22(日) 08:57:50
〜喫茶店店内〜
日向:「緑さん、これ奥のテーブルにお願い。」
緑:「は〜い。」
静馬:「コーヒー2つと紅茶1つ、トースト3つお願いします。」
小春:「スパゲッティ茹で上がったよ〜。」
(裏口から覗く人影)
氷:「ちゃんとやってるみたいね。」(←ファミレスでバイトしてる人)
涼乃:「兄様、楽しんでらっしゃいませんか?」
久遠:「開き直ってるのでしょうね、あれは。」
花穂:「お兄ちゃま…。」
久遠:「さあ、戻りましょうか。」
氷:「そうですね、行きましょう。」
〜閉店後の店内〜
静馬:「なんとかできたじゃない。」
緑:「……。」(無言で睨む)
小春:「あはは、そんなに睨まない…。(苦笑」
日向:「お疲れ様、緑君。」
緑:「お疲れ様です、日向さん。」
静馬:「どう、これからm…」
緑:「二度とごめんだい。」
菜月:「やっぱりか…。」
日向:「あら菜月ちゃん。そっちは終わったの?」
菜月:「なんとかね〜。緑君もお疲れ様。」
緑:「精神的に疲れますたorz先に上がりたいっす、メイク落したいですし。」
日向:「じゃあいいわよ、菜月ちゃんお願いできる?」
菜月:「おっけ〜。じゃあついてきてね。」
緑:「はい…。お疲れ様でした〜。」
日向:「静馬君もいいわよ。もう全部終わったから。」
静馬:「では僕も上がらせて貰います。お疲れ様でした。」
日向:「お疲れ様。さて、緑君の様子を見ておかないと。」
〜菜月さんの部屋〜
菜月:「っと、これで終わり。」
緑:「ありがとうございました。」
菜月:「似合ってたのに残念ね。」
緑:「もう勘弁してください…。」
日向:「菜月ちゃん、入っていい?」
菜月:「あ、姉さん。いいわよ。」
日向:「どう?お化粧落ちてる?」
緑:「おかげさまで。」
日向:「ごめんなさいね。静馬君や菜月ちゃんたちのせいで大変な目に合わせちゃって。」
緑:「まさか4人がかりで来るとは…。」
日向:「でしょうね。あ、これ借りてた緑君の服。」
緑:「あ、ありがとうございます。もういい加減これも脱ぎたかったんです。」
菜月:「もうちょっと着ててもいいのに…。」
緑:「いろいろと嫌です、大変だったんですから。」
菜月:「どんな風に?」
緑:「カンベンシテクダサイ、イヤマジデorz」
日向:「女性用の下着をしてること?」
緑:「ちょ、日向さん、言わないでくださいよ。」
菜月:「え〜、本当?見せて見せて。」
緑:「やめ、待って、嫌〜(泣」
(無理矢理終了。)
半ば勢いだけで書き上げた。反省は山ほどしているOTL
続きません、続きませんったら。
127
:
いつものイツ花の一日
:2007/07/22(日) 16:06:14
AM05:00 起床
イツ花「う〜ん・・・今日もバーンとォ!いい朝ですね!」
AM05:30-05:50 朝食の支度
イツ花「今日は何にしよっかな〜?」
AM06:00-06:35 朝食
一同「いっただきまーす!」
イツ花「召し上がれ〜♪」
AM06:40-06:55 片付け開始
イツ花「♪〜」
エルウィン「食器洗い機買おうか?」
AM07:00-08:00 猫とたわむれる(休憩)
イツ花「たま、おいでー」
南雲「い、一時間も・・・」
AM08:00-09:40 洗濯(手洗い)
イツ花「♪〜」
ななこ「せ、洗濯機使えばええやん・・・」
AM09:50-AM11:00 お掃除(ほうき&ぞうきん)
イツ花「♪〜」
ムウ「そ、掃除機使えば?」
AM11:10-AM11:40 休憩
イツ花「Zzz...」
AM11:50-PM00:10 昼食の支度開始
イツ花「昼は・・・何にしようかしら?」
山本「コンビニの弁当ですませてもいいんだぞ?」
PM00:15-00:50 昼食
一同「いっただっきまーす!(きょ、今日も手作り・・・冷凍でもいいのに」
イツ花「召し上がれ〜♪」
PM00:55-01:10 片付け
イツ花「我が庵は都のたつみしかぞ住む〜」
カリス「た、短歌!?」
PM01:30-02:30 町内会へ
イツ花「じゃ、バーンとォ!行ってきますネ!」
ブランネージュ「た、たまには私が行くわよ?」
PM02:35-03:40 買い物
イツ花「今日はどれを買っていこうかな?」
井上「す、すまんのぅ・・・」
PM03:45-04:00 風呂の掃除
イツ花「五月雨に集めて早し最上川〜」
クララクラン「私も手伝いますわイツ花さん・・・」
イツ花「大 丈 夫 で す !(キラーン」
PM04:20-05:20 食事の勉強
イツ花「なるほど・・・ふむふむ」
マオ「い、いつもありがとにゃん!」
PM05:30-05:50 夕食の準備
イツ花「今日は腕によりをかけて!」
一同「いつもかけさせていただいていますorz」
PM06:00-06:40 夕食
一同「いっただっきまーす!」
イツ花「召し上がれ〜♪」
PM06:45-07:00 片付け
イツ花「♪〜」
パラメディック「て、手伝うわよ!?」
PM07:15-07:30 猫と戯れる
イツ花「ごめんね、たま・・・」
シギント「か、飼ってもいいんだぜ?」
PM07:35-09:00 読書
イツ花「やはり徒然草はいつ読んでもいいですねぇ」
井上「な、なにげにすごいことを・・・!」
PM09:10-PM09:55 風呂
イツ花「つれづれなるままに〜」
エルウィン「・・・なにそれ?」
PM10:05-10:50 町内会の一員として付近見回り
イツ花「それではバーンとォ!行ってきますネ!」
元親「す、すまねぇ・・・」
PM11:00-11:10 日記をつける
イツ花「今日も特に変わらない一日でした。っと」
PM11:15 就寝
イツ花「おやすみなさい・・・」
129
:
ギャラクティック・コンクエスト:序章・工業惑星マイギートー
:2007/07/27(金) 11:59:31
――SSDエグゼキューター・ハンガー02
何十機もの惑星降下用シャトルをバックに、ジェリルクスが数名の中隊長や小隊長とブリーフィングを行
っていた。
ジェリルクス「以上が本作戦の概要である。質問がある者はいないか?」
クローンの指揮官であるバレイポット大尉が質問を行う。彼は第501大隊の最古参であり、隊内で最も信
頼のある人物で、ジェリルクス大佐の重要な片腕である。
バレイポット「交戦規定は?」
ジェリルクス「特に定めていない。必要な時に攻撃してよろしい…他には?」
それに頷き、他の者達を見回した。誰も質問があるような素振りを見せている者は居ない。
バレイポット「ありません」
ジェリルクス「では、我々の職場へと向かうとしよう」
バレイポット「イエッサー!」
そして指揮官達は敵に恐怖を与え、自分を守ってくれるフルフェイスのヘルメットを被り、センティネル級
シャトルに搭乗して、雪の降る惑星へと降りて行った。
――惑星マイギートー・ルーンニウム市郊外
雪が降り、結晶化した氷河や雪原が広がるマイギートー。文明はこの上に築かれており、地表は荒れ放
題である。しかし、ムーンの建設した都市は美しく、氷河は壮大な眺めであった。だが、彼らは観光に来た
のではない。反乱の代償を支払わせる為に来たのだ。
バレイポット「これより我ら第501大隊は人質とされた罪の無い帝国市民を救い、卑怯な反乱軍に鉄槌を
下す為に向かう。…お前達はなんだ?」
バレイポットは兵員達を眺め回す。すると彼らが一斉に大声を張り上げる。だが、バレイポットはやり直し
を何度も要求する。
トルーパー「第501大隊だ!」
バレイポット「ふざけるな!聞こえんぞ!」
トルーパー「精鋭第501大隊だ!」
バレイポット「最近のクローンはタマを落とされているのか!?」
トルーパー「無敵の精鋭第501大隊だ!!」
バレイポット「良し!我々第501大隊は無敵だ!行くぞ豚娘共!」
喚声をあげながら突進していく兵士達。しかし、数分後にはこの高揚を止めねばならない。接近が知られ
ては攻撃を受けるばかりではなく、市民が処刑されるかもしれないからだ。あくまで隠密作戦なのである。
131
:
埋葬、4
:2007/08/11(土) 20:27:44
「……あのさ、ずっと考えてたんだけど」
と彼女が言い出したのは、降りしきる暗黒という名の雨に全身を包まれた頃。
携帯の画面を唯一の灯りにして歩いていた四肢を止め、彼女を見る。
「ひょっとしたら、これは幽霊の仕業なんじゃないかな?」
「……はい?」
予想外の単語だった。
「あ、別に気が変になったとかじゃなくて。
今私たちが住んでる部屋にね、最近幽霊が出るの」
「幽霊……」
つい最近そんなことを別の誰かから聞いた気がする。
「よく知ってる気がするのに、誰だかわからない声。それがね、どこからともなく聞こえてくるの。
アーチェやプリシスも聞いたんだから間違いない」
「まぁ確かに怪談話としてはセオリーすぎる展開ですけど」
「信じてないって声」
見透かされた。隠すつもりもなかったが。
足を止め、軽く肩をすくめる。無論、暗がりの中彼女の目には入らないのを見越した上で。
「信じられません。自分の目で見ない限りはね」
「あなたの目はこの世界でそんなに偉いの?」
非難ではない。どこか、試すような響きを感じた。
思わず苦笑が漏れた。
その言葉の意味を伝えるのに「偉い」という表現を用いる彼女の発想に対して。
「確かに、俺の目はこの世界のすべてを見通せるほど大層な代物じゃありません」
それに――
「天使や悪魔がいる『世界』で、幽霊の存在を嗤うのもナンセンスか」
ふと気付いて、再び足を動かす。
相変わらずだが、体力で目の前の少女に劣る自分の体が恨めしい。
「けどですね、それを踏まえてもリディア様の発想は飛躍しすぎてます」
「……わかってる。そう思いたいだけ」
――あぁ、そうか。
自分の浅薄な回路を呪う。
彼女は明確な敵がほしかったのだ。
懊悩や焦燥は問題が解決されない限り消えない。
敵は倒せば解決する。
――これほど安易かつ平穏な解答はない。
そして、平穏とは大概現実から最も離れた場所に存在するものだ。
132
:
埋葬、5
:2007/08/11(土) 20:30:40
ここは一体なんだろうか。
森の中を、歩いてきたはずだった。
しかしそこに現れたのは、明らかに人間の手によって作られたとしか思えない建造物。
周囲には何もない。
正確には、人工的なにおいを感じさせるものは、何も。
道さえなかったのだ。当然ながら、人が住んでいる気配はない。
森の中にぽつんと立つ、忘れられた廃墟――
「アスミは、この中ですか?」
こくりとうなずく。
足もとに気をつけながら、とりあえず一歩踏み入れる。
そして――自分の認識が間違っていたことに気づいた。
ここは忘れられたのではない。
棄てられたのだ。
「……聞こえる」
何が、と問うより早くその声は自分の耳にも届いた。
格子の外された窓枠から、まるで無粋な侵入者を咎めるように大気を揺らす緑の喧噪――
その中にあって、かすかだがはっきりと鼓膜を震わせる意味ある韻律、あるいはその羅列。
「これ……あの声だ」
「その指示代名詞に該当する具体的名称を共有してください」
「本当に好きだよね、わざわざ回りくどい言い方するの。
だから、幽霊。時々聞こえるあの声とおんなじ」
リディア様の声はわずかだが震えを帯びている。
耳を澄まして聞いてみる。
その声は、廃墟の奥から聞こえてくるようだ。
もともと大きな建物ではない。届く声がおぼろげなのは遠いからではなく、声量が乏しいのだろう。
しかし何より関心を覚えたのは、
「……なるほど」
正直、アーチェやリディア様の言葉には半信半疑だった。
聞いたことがあるような気がするのに、聞き覚えのない――そんな形容で飾られる声など経験がない。
だが――それ以外にどう形容のしようがあるというのか。
二人と同じ表現しか思いつかない自分が、そこにいた。
133
:
埋葬、6
:2007/08/11(土) 21:13:02
静止するより早く、リディア様は一人廃墟の奥へと駆け出した。
彼女が何を考えたのかは想像に難くない。
幽霊にアスミが憑かれた――そんな可能性を一笑に付すことが、何故出来る?
慌てて彼女を追いかける。自分がいたところで足手まといにしかならないことは自覚しつつ。
近づくほどに届く声もはっきりとしたものになった。
眉を潜める。
――The place changes and goes. Like a wind, like clouds
――Like the traces the heart, no halt at the places
耳に届く歌詞は英語のもの。さらに言えばその曲を自分は知っている。
だがそんなことよりも、
――この声で、この曲を知っている人物……?
リディア様はすぐに見つかった。
そして、彼女も。
気のせいか、彼女は暗闇の中でぼんやりと光っているように見えた。
「アス、ミ……?」
そう呼びかけたのは自分か、リディア様か。両方だったかもしれない。
疑問を帯びた口調であることは自覚していた。
何故か?
別に彼女が普段とまったく異なる姿をしていたわけではない。
さすがにいつもの花のように広がったスカートではなく、歩きやすいパンツルックではあったが。
まして空を飛んでいるわけでも、奇行を繰り広げているわけでも。
あるいは彼女を知る人物にしてみれば、奇行と表現してもおかしくはないかもしれない。
――さて、彼女とは誰か。
言うまでもない、アスミだ。
正確には、アスミの姿をした、『誰か』。
それが、歌っていた。
――The place is so far away, be far apart
――People's hand does not reach, so merely has the worship
アスミの声で。
――The place is a profound load, and wear the vain faint light
――But we will find it in the place. The hut at which it stands still
あるいは、幽霊の声で。
134
:
埋葬、7
:2007/08/11(土) 22:16:14
「つまりアスミが幽霊にとりつかれて歌ってたってゆーこと?」
アスミの失踪から一夜明けた、朝。
「そうですね。俺も最初はそうかと思いました」
昨日自分が見た出来事を、そのままアーチェに話す。
スパイスとして己の主観を織り交ぜながら。
何だかんだとあって、結局昨日は話す機会を逸してしまったのだ。
「過去形? そうじゃなかったの?」
「考えてください。そもそも幽霊って単語はどこから出てきました?」
「それは、だから聞いたことがあるようでない声が、どこからともなく……」
「その声の正体はアスミだったんですよ?」
「ん? アスミの声が幽霊で、つまり幽霊はアスミだったわけだから……えっと、死亡フラグ?」
「リディア様が聞いたら斬鉄剣が唸りますよ」
つまりですね、と、
「幽霊という概念。その根源とも言えるものの正体が、アスミだったんです」
聞き覚えのあるようでない。
闇の中を踊る声に、何故そんな印象を覚えたのか、理解した。
声は紛れもなくアスミのものだ。そう認識して聞けば、それ以外の何物でもない。
だがその音を紡ぐテンポが、普段の彼女からは想像できないほどにかけ離れていた。
四車線の公道をジャンボジェットが滑走していくようなものだ。
誰もそんなことがありえるとは思わない。
それはアスミのことをよく知る者にのみ起こる、認識の穴だった。
しかしそれでは即座に次の疑問が生じる。
何故アスミは歌っているのか。
そもそもアスミが倒れたと聞いて自分はここに来たのだ。
その彼女が今、こんな場所で一人歌っている。
135
:
埋葬、8
:2007/08/11(土) 22:18:06
結局、その声が途切れるまで自分もリディア様も動けなかった。
アスミは虚空を見据えて立っている。
その体をリディア様が無言で抱きしめる。
「あついー、はなれろー」
ふいにバタバタと暴れだすアスミ。
そう、アスミだ。こんな間延びした響きを彼女以外の人格が出せるとは思えない。
ぱっとリディア様が手を離す。アスミは猫のように体を軽く震わせ、満面の笑みを浮かべた。
「体は大丈夫? おなかとか痛かったりしない?」
「たくさん元気ー」
ぱたぱたと手を上下に動かす仕草が、彼女なりの元気の表現法らしい。
こういう時、虚飾や虚勢のないアスミの言葉はありがたい。
素直に安堵することができる。
「何で、こんなところに一人で来たの?」
その声には非難の響きが含まれている。
アスミも敏感に感じ取ったようで、ぱたぱたをバタバタに変えて、
「一人じゃないー、いっしょー」
そう言った。
思わず首を傾げ、リディア様と顔を見合わせる。
「誰と…一緒だったの?」
「いっしょー、あっちこっちー、いなくなったー、おいかけるー」
ついには部屋の中を駆け出しながら、右手を矢印にしてくるくると回り出す。
「アスミ落ち着いて…ねぇどうしよう?」
リディア様が自分に意見を求めるのも珍しい。
だが、それには応えない。
「一人はやー、いっしょー、いっぱい一人ー、いくなー」
「今はもう、いないんですね?」
ぴたりとアスミが動きを止めた。
「いないー、いっしょはくるしー、うたってばいばいー」
リディア様の目から、涙が溢れ出した。
何故かはわからない。わかるような気がしても、それはきっと錯覚だろう。
アスミは変わらず満面の笑みを浮かべながら、
矢印の形にした右手で、空を指差していた。
136
:
埋葬、9
:2007/08/11(土) 22:40:58
「……それで?」
「いえ、それで終わりです。その後すぐあなた達と合流して、以降は説明する必要ないでしょう?」
アーチェは口を結んで難しそうな顔をした。
「んー、結局何だったワケ?」
「いや俺に聞かれても」
アスミが何を見て、誰と会話していたのか。
それはアスミにしかわからない。
彼女は嘘をつかないが、すべてが彼女の妄想だったとも考えられる。
だが――
「『あそこ』では、そんなことがあってもおかしくないような気もする、かな」
「あそこって、話に出てきた廃墟のこと?」
頷く。
「多分、数十年前まではどこにでもある普通の家屋だったんでしょう」
「森の中に一軒だけ立ってて普通もないもんだけど」
「いえ、その頃はまだ森じゃなかったんだと思いますよ?
あそこまでの間に生えてた木はそんなに生長しているようには見えなかった。
戦争時代、家と一緒に多くの木々も焼けたんでしょう。あれは植林されたものです」
「じゃあ、その廃墟は……」
「多分、戦争時代に焼け残ったんでしょう。もっと昔の可能性もありますけど。
取り壊すのにも費用がかかるから、そこに放置された」
「…………」
上を見上げる。
部屋の中だ。見えるのは天井でしかない。
昨夜のアスミには、空に還る誰かの姿が映っていたのだろうか。
「そうしてあの建物は『埋葬』されたんです。
――森という棺の中に、ね」
137
:
埋葬、10
:2007/08/11(土) 23:42:51
「リディアー、ごはんおいしー」
一対の箸をフォークのように掴んで口の中にかきこむせいで、
アスミの食事機能にはデフォルトとして「口の周りを汚す」と「床にこぼす」が備わっている。
それをすべて世話するのがリディア様の日課だ。
「ありがとう、アスミ」
時折ハンカチで彼女の口の周りを拭う。
最初の頃は食事を邪魔する行為として嫌がっていたが、最近は素直に受け入れるようになったようだ。
落ち着きのない妹の世話を焼く姉を見ているようで微笑ましい。
これは余談だが、アスミは時々地下室で歌っていることがあるようだ。
地下室には通気口のための穴が何箇所かある。中には部屋と繋がっているものも。
それが伝声管の役割を果たしたのが、枯れ尾花の原因になったようだ。
アスミが地下室で一人歌っていた理由は、不明である。
箸を動かすアスミの動きが止まった。
怪訝な顔で見やるリディア様。
「これおいしー」
「うん、どうしたのアスミ?」
すっ、とアスミが皿を差し出した。
もういらない、というジェスチャーではないだろう。それは天地がひっくり返るよりもありえない。
「……食べるー?」
リディア様の目が大きく見開かれる。
――独りは嫌だと、彼女は言った。
それはつまり、今は独りではないと。
自分達は「認識されている」と。
そう、思っていいのだろうか。
にこりと笑って、皿を受け取る。
言う言葉は、月並みで、ありふれているかもしれない。
だが、だからこそそれはそこに存在し続ける。
忘れることのない、確かな想い――
「ありがとう、アスミ」
138
:
夏空、時々、雨
:2007/08/14(火) 01:07:48
建物から出ると見事なまでの土砂降りだった。
「すごい雨だねぇ」
ラムネの瓶を開けながら、フヨウ。
「けどこれじゃあ帰れないよ…」
建物の中には泣きそうなフランドールとそんな彼女と手を繋ぐアサヒ。二人の隣ではメイディが携帯を見ている。
ざんざん、ざぁざぁ。
突然の雨に道行く人がかけていく。
「ねぇ」
空になったラムネの瓶と鞄を腰かけていた長椅子に置くと、たんっ、と地面を蹴り、前へ飛び出す。
「あはははは!やっぱりすごーい!」
ざんざん降り注ぐ雨を頭から浴びながら、彼女は嬉しそうに笑った。
「なにやってんだよー!?」
雨に負けない様に叫ぶアサヒにフヨウが同じ様に叫び返す。
「思い出してるんだよー!」
ぽたん、と軒下から落ちる雫に日傘をさしかけていたフランドールが小さな悲鳴を上げる。
「うわぁ、すっごい青空」
思わず感嘆の声を上げ、携帯で空を写す。
「僕とお母さんがあったのも雨の日だったんだ」
複雑そうなアサヒが見つめるなか、濡れた髪をなびかせながら、空を見上げるフヨウの視線の先には
真っ青な夏空と白い雲を繋ぐ大きな虹がかかっていた。
夕立と女の子組
139
:
花火
:2007/08/16(木) 14:06:33
8月のある日―――
皆はこの夏の異様な暑さでだらけていた。
「おーい!今年は冷夏だとか言った奴出てこーい!」
と、巨乳戦闘機の声が一日一回は聞こえるほどだ。
そんなとき―――。
「なぁ、皆で乃木の地元で花火やらへん?」
不意に先生が思いがけない提案をする。
「しっかり夏の思い出は作っておかんと後々後悔するでー?」
そんなこんなで花火をすることになったのだが………。
「………東京やてー!?」
先生は驚いていた。
「や、やる場所確保できへんやん………」
現在の東京というものは広い公園や空き地が無く、
あってもそこは花火禁止の立て看板がいやらしく立っているのであった。
「うーん、それじゃバーンとォ!天界でやります?」
皆がその提案に驚いた。
「て、天界?………上?」
「ええ!上です!さぁ今から皆さんを天界にバーンとォ!ご招待しますので歯を食いしばってくださいね!?」
どこからか金属バットを取り出し………
「ちょっと待て(カキーン」
皆まだ死にたくないと必死に逃げるも見事に打たれたのであった。
―天界―
「ようこそ!極楽浄土の天界へ!」
一同を迎えたのはいつものお手伝いだが、その姿はいつもと違う巫女姿。
「……………」
沈黙する一同。しかしそのお手伝いの口から―――。
「花火はあちらにバーンとォ!沢山用意させていただきました!」
途端に皆の顔が明るくなる。しかし空はまだ青い…。
「どうしよう…まだ…」
また一同の顔が暗くなっていく。すると…。
「あ、昼子様に頼んで夜にしてきてもらうのでバーンとォ!待っててくださいネ!」
それから10分ぐらい経っただろうか…。
みるみるうちに空は暗くなっていき花火をやるには今しかなかった。
「じゃ、打ち上げるでー!?」
一発目の花火は赤く空の野に咲く花の様な…
「じゃ、いっくよー!?スプレッドボム!」
二発目の花火は橙色に丸く―――。あれ?何かおかしい。
「その前にそれは花火じゃなくて爆弾だっ!」
一同の突っ込みが炸裂する。
その後も数時間に渡って花火を楽しんだ一同ではあったが―――。
―ネオトーキョー カツ○カ地区―
「へぇー、未来 の東京ってこんな感じなんだー!」
「………浦島太郎か俺らは?」
彼らが天界からかえってきたときにはすでに500年の歴史が流れていたそうな…。
140
:
メガネとキスと魔女
:2007/08/30(木) 18:27:00
「いつも思うんだけど」
不意に上がった疑問の声に紅は新聞からキャンバスに筆を滑らせているドロシアへと視線を移した。
メガネをはずしてるせいか、キャンバスの絵はあやふやでしか見えず、彼女が何を描いているのかわからなかった。
「紅ってやっぱりメガネないほうがカワイイですよ?」
くすくす、と笑い声が聞こえる。
少し距離があるせいか、振り返ったドロシアの表情まではぼやけて分からない。
「今更何言ってるのよ」
むっとしながら、立ち上がり、メガネを手に―
「ダメ、ですよ?」
トン、と軽い衝撃と油絵の具独特の匂いが近付く。
「メガネかけないと前見えないんだけど?」
「だからだめですって」
「…なんでよ」
「だって」
少しドロシアの顔が近付き―
チュッ
「メガネが邪魔でキス出来ないでしょう?」
やあ、最近ネタが出ないえぐい色の魔道士だぜ
ドロシアさんに最後の台詞を言わせたかっただけなんだ
…BGMに某銀森のアリスの王子さまかけたら脳内がやばいぜ
141
:
勢いでやった、反省はry
:2007/09/01(土) 04:55:23
今日もスパ家は何食わぬ顔して非日常な日常がすぎ、季節も過ぎ今日もまたのんびり過ごしております。
おーい、ライー。
ライ(擬人キリン♂)「呼んだー?(何故か巫女服)」
…だから、何故いつもそういうかっこうしてくるのかと。
ライ「しかたないじゃん、そういう服しか持ち合わせてないのに。」
そういう服しかないの!?
ライ「うん。後はセラ服にチャイナドレスにメイド服にry」
まてえぇい! おまいそれはおかしいだろ!!!
ライ「でも、女の子顔女装ショタってある意味需要あると思うけどなー?」
いやそんなわけないだろ
ライ「ま、ちょっと誰かに写真撮ってもらって写真集にしてネットでばらまくわ。」
ちょ、そうじゃなくてn
ライ「あ、アリオル先生だ。 せんせーwww(たったった…」
…(゚Д゚ )
…(゚Д゜)
…( ゚Д゚ )
今日もまた、スパ家は賑やかそうです。
142
:
ギャラクティック・コンクエスト:序章・工業惑星マイギートー
:2007/09/05(水) 18:51:40
その頃、ルーンニウム郊外のハイウェイを疾走する2台のスピーダーバイクの姿
があった。レイズ上級曹長とその部下のドレロシン軍曹である。彼らは第501大隊
への情報面での援護をする為に、偵察を行っていた。
レイズ「本当に自然に乏しい惑星だなぁ…」
ドレロシン「都市は綺麗なんですがね。まあ、アウター・リムの惑星なんてこんなも
んですよ」
破壊された車や装甲車両を巧みにかわしながら彼らは雑談を行っている。その辺
りのチンピラならすぐに霊柩車の厄介となる行為だ。この事から、彼らの練度の高
さが伺える。その時、彼らは突如バイクを止め、焼け焦げた反乱軍の戦車の陰に
隠れた。
レイズ「こちらST-1138レイズ上級曹長、6号ハイウェイ上に小規模な敵の砲撃陣地
を確認、行動の際は注意されたし」
彼らのヘルメットに内蔵された高性能スコープは数km.先の火点を正確に捉えてい
たのだった。更に周囲を彼らは見回す。ハイウェイは高所に建設され、大地は平坦
で見晴らしが非常に良い。が、これは味方にとって不利であり、敵にとっては利点で
ある。この砲撃陣地を潰さなければ、大隊の行動が通報され、同時に攻撃を受ける。
ドレロシン「分隊長、どうします…?」
レイズ「軍曹、人数を数えろ」
敵の守備隊は10数名…砲兵やその他の兵や将校を入れても30名は超えないだろ
う。奇襲をかければ、一個分隊でも制圧することは容易い。彼は別のエリアを探索
しているスカウトに召集をかけた。奇襲攻撃をかける為に。
143
:
確執編十七章:悟りの終着点 1/12
:2007/09/06(木) 23:04:38
・三日目 AM10:30 サイド:アーチェ
「これが最終日でよかったわよねー」
空を見上げながらしみじみとつぶやく杏。
確かに、と思いつつ倣えば、そこにはちらちらと舞い降りる白い結晶。
「電車止まんないかな。そうしたら『仕方なく』もう一日こっちにいられるじゃん」
「バカね。泊まるとこもお金もないのに、下手したらここで朝まで野宿よ?」
駅の構内を指差す。春原はつまらなそうに舌打ちした。
春原の期待とは裏腹に、電車が止まるというアナウンスは聞こえてこない。
「向こうも雪らしいね。このまま降り続けたら積もるかも」
「その時は雪かきお願いね、陽平」
「はぁ? 旅行疲れの、特にやたらと重い荷物を背負わされてボロボロの僕に、まだそんな重労働をさせるわけ?」
「男でしょ? ここでいいとこ見せなきゃあんたの株は死ぬまでストップ安よ」
「杏がやればいいだろ。僕はお前と違って繊細なんだよ」
「陽平〜、犬神家雪原Verの餌食になりたくなきゃ今すぐ前言を撤回しなさい」
「ひぃっ!?」
二人を無視して、あたしは少し離れたところに一人立つセリスに近寄った。
「来ると思う?」
「ほぼ、間違いなく」
セリスの声は確信に満ちている。
誰か、なんて言うまでもない。
「彼女は『彼』と契約を結んでいる。それを果たすためにも、彼女は来るわ」
「そういや昨日もそんなこと言ってたけど。契約って一体、何? それがあたしとどう関係してるの?」
セリスの顔にわずかに生まれたのは、躊躇いだった。
「…私も、そんなに詳しく知ってるわけじゃない。特に『彼』が何を提示して彼女を従わせてるのかは。
けど、彼女が何をしようとしてるかは知ってる」
「教えて」
「……あなたを、負かし続けること」
呼吸が止まった。
何となく予想はしてた。それでも面と向かって言われるとショックだった。
「正確に言うと、同等の条件下でって制約がつくらしいんだけれど」
「同等の?」
「剣には剣で、魔法には魔法でのみ対すること。
けど彼女はそれを守らなかった。つまり最優先はあくまで――」
「あたしを殺すこと、か」
それは死の劣化した世界であたしを殺させ続ける契約を交わしたってこと。
「……やっぱ、アイツあたしのこと恨んでんのかな」
考えてみれば、あたしは当たり前のようにアイツは中立だと思い込んでた。
けどアイツが使徒を名乗ったのはあくまでリディアに対してだ。あたしじゃない。
秤にかけて向こうを選ぶのは、極めて自然なことじゃないか。
「あなただけじゃないわ。これはリディアに対しても行われてる」
あたしの心理を読んだのか、セリスがそう言葉を付け足した。初耳だ。
「私にはその意図はわからないけれど…負けることに意味があると、そう思ってるみたい」
負けることの意味、か。
144
:
確執編十七章:悟りの終着点 2/12
:2007/09/06(木) 23:06:02
・三日目 AM11:00 サイド:アーチェ
あたしは正義って言葉があんま好きじゃない。
その言葉を好んで使う奴にはロクなのがいない。
自分が正しいことを知ってる奴は、それを自分の中だけに留める。吹聴したりしない。
何故なら、その正しさが自分だけのものだってことをちゃんと知ってるからだ。
正義なんて十人いたら十通りのカタチがあって当然で。
だからこそ――あたし達は、理解し合えない。
そう考えて、あたしは逃げてただけだった。ずっと。
――カチンッ
それは戦闘の始まりを告げる鐘にしてはあっけなさすぎるほど軽い音だった。
「面白い剣術ですね。魔法を『斬る』とは」
どうやらあたしめがけて飛んできた魔法をセリスが防いでくれたらしい。
完全に不意打ちだ。セリスがいなかったら、自覚した瞬間にこの世界から消えてただろう。
「……貴様は何を考えている?」
怒気を隠そうともしていない。今の一撃がよっぽど腹に据えかねたらしい。
それにしても狙われたあたしの方がまだ状況を呑み込めてないってのも何だか恥ずかしい。
一方のアクマは、背から広げた漆黒の翼をはためかせ、
「誰もが理解できる事象など、この世のどこに存在するでしょう?」
世界に染み渡るような澄んだ音色で、そう言った。
セリスが駆ける。
彼女の剣の間合いがアクマを捉えるより早く、大気を引き裂く音が宙を跳ねた。
魔力で凝縮された紫電の槍。狙いは――あたしっ!?
「つぁっ!?」
頭より体の方が先に動いてた。
地面から生えた錐が槍の進行を阻む。
嫌な汗が背筋を伝う。雪のちらつく世界に、かすかに震えるあたしの躰。
これが彼女の――ひいてはアイツの中にある意味。
負けることで得られるものをあたし達に求めてるということ。
実際あたしは何が得られただろう。
自分の無力。悔しさ。それ以上に――後悔と、恐怖。
けどそんなのは今何の役にも立たない。
リディアと仲直りしろといいたいのか。
とにかくいっぺん痛い目見ろってことなのか。
何にせよ、アイツが求めてるものをあげられるとは思えない。あげたいとも思わない。
145
:
確執編十七章:悟りの終着点 3/12
:2007/09/06(木) 23:08:06
セリスは速度を落とさないままアクマを捉えた。
「動揺するとでも思ったか?」
魔法を放った直後の体勢で、アクマの動きは鈍い。
刺突は狙い違わず片翼を貫いた。
「報いろ」
勢いを殺さず、そのまま翼を引き裂く。
アクマの体が堕ちる。なのに、そこには動揺も痛痒もない。
彼女の表情はどこまでも虚無。
体を回転させ、セリスの連撃がうなる。
アクマは右手で受け止めた。掌にわずかに食い込んだ傷口から滴り落ちる血。
「っ!?」
攻めていたはずのセリスの顔が、突然驚愕に彩られた。剣を離し、後ろへ飛び退る。
雷柱が降り注いだ。
平たく言えば、あたしの使う雷撃をでかくして連発したようなもんだ。
「セリス!」
叫ぶ。彼女はこちらを振り返ろうともしない。
呼吸をするのと同じ感覚で、あたしは呪文を紡ぐ。
あとは発動のキーを告げるだけってとこで、激しいフラッシュバックがよぎる。
言葉が――出ない。
あたしの力で何が出来る?
ひょっとしたらアクマを倒せるかもしれない。
――それで? それで、どうなる?
あたしの力は誰も守れない。誰かを傷つけることしかできない。
望むものは、あたしの力じゃ手に入らない。
命中精度を捨てて数を頼りにした攻撃が、実は一番怖い。
自分を狙ってるならまだかわしようがある。
けどランダムに降り注ぐ雷が当たるかはどこまでも運だ。
標的は完全にセリスだった。
広範囲に撒くほど精度は落ちる。あたしが範囲外にいたのもやっぱり運でしかない。
「セリス!」
もはや雷のつんざく音に紛れてあたしの声は届かない。
その姿が、光の中に、消えた。
146
:
確執編十七章:悟りの終着点 4/12
:2007/09/06(木) 23:09:17
雷の集中砲火がやんだ。
アクマの右手にはすでに剣が握られている。
神速の斬撃を彼女は片手で受け止めた。
誰の? そんなの、言うまでもない。
いつのまにかさっきとは別の剣をその手に携えたセリスは、雷直撃の余韻も残さずアクマと切り結ぶ。
「興味深い」
片手でセリスの剣戟を抑えていたアクマが、ふいにその澄んだ声を紡いだ。
「相殺とも違う。強いて言えば――吸収でしょうか」
セリスの力のことを言ってるんだろう。
それはあたしも興味があった。
なんて言うか、セリスのあの力はおかしい。絶対に普通じゃない。
魔法の完全キャンセルなんて聞いたこともなかった。
「随分と余裕だな」
「そう思うなら、もっと追い詰めさせてみなさい」
アクマの剣が青白い輝きを帯び始める。
あたしでもわかる。あれは『斬るための力』だ。
セリスも気づいたんだろう。一瞬で距離を離す。
そして、アクマの一閃。
その一撃はかろうじて原型を留めてたプラットホームをきれいに両断してセリスへ疾る。
対するセリスは剣を鞘に納めて構える。剣閃に対して、抜剣。
――なんてーか、もうムチャクチャだ。
雷を槍の形状に変化させたり、剣に魔力を乗せて『斬る』ことに特化させたりするアクマの技術もそうだけど、
それらをことごとく斬り捨てるセリスの力も桁外れ。
今のあたしじゃ決して届くことのない世界。
わからない。
何故ここにあたしはいるんだろう。
戦う意志も。
覚悟も。
力さえもない。
そもそもそんなもの望んでさえいない。
「それで何もせずここでくすぶってる、と」
振り返る。
飄々とした姿が、そこにあった。
147
:
確執編十七章:悟りの終着点 5/12
:2007/09/06(木) 23:12:02
ほんの三日前まで普通に見てた顔。
二日前には言葉も交わした声。
それなのに、何故かひどく違和感を感じた。
――今あたしの目の前にいるこいつは、本当にあたしの知ってるアイツと同一人物だろうか。
「彼女はまた随分と派手にやってるようですね」
「アンタが指図したんでしょ?」
舌が乾いて言葉がうまく出ない。
何であたし、こいつ相手にこんな緊張してんだろ。
「俺は負かせと言っただけ。手段はすべて彼女に一任してます。
一応ハンデはつけるよう言ったんですが…まぁ、いいか」
それはここ数日のあたし達に対する言葉にしては、あまりにも軽かった。
「ふ…ざけんじゃないわよ!」
一拍遅れて叫びになった。
「何が負かし続ける、よ。そんなワケわかんない理由であたし達をこんなメに遭わせてるっての!?」
「それは誤りですね」
一太刀で切り捨てられた。
「あなたはもう理由に気づいてるはずです。ただそれを認められないだけでしょう?」
「…………!」
わかってはいる。わかってはいるけど、それでもこんな時は腹を立てずにいられない。
こいつはこちらのすべてを把握してる。してる上で、すべてを動かしてる。
普段はまったく感じない――いや感じさせないそれを、今あたしは痛いほど味わってた。
「一方的に負けて終わりにしますか? それもいい、アクマとの契約は今日までですし。
――ただし」
次の一言に、あたしはこれまでの何よりも動揺した。
「リディア様は、これに確かな価値を見出しましたよ」
気づくと、アイツはもういなかった。
最初からいなかったのかもしれない。あたし自身が望んだ幻とは、思いたくないけど。
――リディアは、あたしとは違うと。
そう言いたかったのか。
あるいはあたしが無意識にそう思ってたのか。
それは劣等感? まさか嫉妬、なんて心底考えたくもない。
これに価値があるというなら。
それは自分の負けを肯定したってこと。
自分が足りてないことを、劣ってることを認めて、それでも前に進むと決めたってこと。
――このまま彼女と再会して。
果たして、あたしはリディアの顔をまともに見ることが出来るだろうか。
まっすぐにあたしを見てくるだろう、その瞳に対して、
自信を持って見つめ返すことが、出来るだろうか。
148
:
確執編十七章:悟りの終着点 6/12
:2007/09/06(木) 23:13:02
この前と違い、アクマはセリスと積極的に斬りあおうとはしない。
魔法を使った遠距離攻撃を主体として、極力距離を置こうとしてるように見える。
「翼なしで私と斬り合うのが怖いか?」
そう。完全に対等な条件下でなら、セリスの剣技はアクマより上だ。
これまでも何度かアクマの剣を弾いて隙を作ってもいる。
詰め切れないのは一重に多彩な魔法技術のせいだ。
「怖い、という感情は持ち合わせていません」
「なら知ってみるといい」
激しい金属音。腕力でアクマが勝っても、セリスはそれを技量で受け流す。
アクマの剣が流される。剣の素人なあたしでもわかる、隙。
不自然な体勢でアクマがそれでも剣を揮う。けどそれをセリスが払ったら終わりだ。
実際、その通りにセリスは動いた。
そしてそれが勝敗を決した。
セリスの剣が『斬られた』。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
それはあたしだけじゃない。あのセリスが、戦闘中に動揺をはっきりと出している。
折られたのとは違う。
まるでバターをナイフで切るみたいに、きれいに剣身が断ち切られてた。
『それ』に気づいたのは一拍遅れてから。
金属の輝きとは異なる、淡い銀光がアクマの剣から発せられている。
――剣に魔力を乗せたまま斬ったんだ。
どうすればそんなことが可能なのか、あたしにはさっぱりわからない。
卓越した魔法技術とそれを駆使する力量あって初めて可能となるスキル。
セリスでさえ予想できなかった一撃。
「それなりに楽しませてもらいましたよ」
アクマが軽く手を払う。その手に握っていた剣が消えるのと同時、セリスの周囲を紫色の障壁が囲む。
「では、本題に入るとしましょうか」
そうしてアクマは初めてはっきりとこちらに視線を向けた。
149
:
確執編十七章:悟りの終着点 7/12
:2007/09/06(木) 23:16:20
人は自分の正しさのために力を使う。
どんなにいい言葉を並べてもそれは変わらない。
あたしの力も、あたしの正しさのために使われるべきだ。
けど、あたしの力は人を傷つけることにしか使えない。
――そしたら、あたしは他人を傷つけることでしか、正しさを貫けないんだろうか。
負けてしまえばいい。
そうすれば、誰も傷つけなくて済む。
あたしの正しさは、どこにも表すことなくあたしの中だけに留めてしまえば――
「詭弁ですね」
アクマの声はこんな時でさえも穏やかに澄み渡っていた。
「己を否定するために詭弁を用いるというのも、愚かな話」
それに応える余裕はあたしにはない。
アクマの猛攻をかろうじて退けるので精一杯だ。
「そうしてあなたはこれからも負け続けるのですか?
優しさというオブラートで誤魔化して、己の臆病を隠して生きるのも――
えぇ、愚かではあっても否定はしません」
何であたしだけが責められなきゃいけないんだろ。
優しさという言葉で臆病を隠す――そんなの、みんなやってることじゃないか。
誰も傷つけたくないって気持ちは本当だ。
それを臆病と嗤いたければ嗤えばいい。
「人間とはつくづく不思議な生き物ですね。生きるために己を否定する思考、私には理解できません」
仕方ない。それが生きるってことなんだから。
「そうですね。このまま私に負けるように、彼女にも負けるといい。
それもまた、あれの望む一つの終りの形でしょうから」
その一言が、眠るように沈みかけたあたしの思考を呼び覚ました。
負ける。リディアに。
具体的なビジョンがあたしの中によぎることで、これまでの自分の思考が具体化される。
誰も傷つけたくないから、自分の正しさを否定する?
何でそうまでして周りを守んなきゃいけないのか。
こう言っちゃ何だけど、あたしはあたしが可愛い。
時と場合にもよるけど、誰かと自分を秤にかけたらあたしは自分を選ぶだろう。
『アクマ』の言う通りだ。
それは優しさなんかじゃない。
自分が傷つきたくないから、誰も傷つけないだけ。
150
:
確執編十七章:悟りの終着点 8/12
:2007/09/06(木) 23:18:33
「ねぇ、『アクマ』。ひとつ聞いてもいい?」
案の定、あたしがそう言った途端、攻撃の手が止まった。
これまで『かろうじてあたしが凌げる程度の攻撃』をしていた理由なんて、他には考えられない。
「えぇ、ひとつだけなら」
「理解するって、どういうこと?」
アクマの表情が変わる。無表情から、わずかな微笑へ。
「そう聞かれた以上、私はこう応えるしかありません。
――『それは穏やかな幻想に包まれること』」
どこかから笑い声が聞こえる。
誰かと思ったら、声の主はすぐ近く。
それはあたし自身が発してたものだった。
――そっか。そういうことか。
ようやくあたしは理解した。
『アクマ』の――いや、『とある誰か』の言葉を借りれば、ようやくあたしは穏やかな幻想に辿り着いたってこと。
何て遠回りをしてたんだろう。
あたしは答えに辿り着くために、答えとはずっと逆の方向に歩いてたわけだ。
他人とはわかりあえないとあたしは悟った。
そんなことはないとセリスは語った。
――それはきっと、どっちも正しい。
結局のところ、他人を理解することなんてできない。
けど、わかりあうことは出来る。
その手段は簡単。
『わかりあえる』って幻想にずっと浸り続けてればいい。
悟った気になったあたしは、その瞬間から他人を理解できなくなった。
それはあたし自身が理解することを放棄したからだ。
「……ずいぶん長いこと忘れてたけど、ようやく見せてやれそうだわ」
それはしょせん幻かもしれない。
実態のない夢でしかないのかもしれない。
けど、あたしは知ってる。
「これが、あたしよ」
覚めない夢は現実と変わりない、と。
151
:
確執編十七章:悟りの終着点 9/12
:2007/09/06(木) 23:21:58
詠唱は一瞬。
あたしが放った雷撃は、アクマの一撃と相殺して虚空に消える。
「魔法合戦なら、アンタにだって負ける気がしないわ」
アクマの手に光が宿る。
純粋に魔力のみを凝縮させた力の結晶。
「それで? あなたは自分の力を肯定するのですか?」
「あたしはあたしのやりたいようにやるだけよ。今も、そしてこれからもね」
どうしてこんな簡単なことを忘れてたんだろ。
思い出した今となっては、逆に思い出すことができない。シーソーの両端に括られた思考。
あたし自身があたしを信じられる行動をとる限り、あたしは決して間違わない。
反省することはあっても、後悔はしない。
それこそがこの世界であたしが唯一信じられる『正しさ』だ。
「それがあなたの結論ですか」
魔力光を、握り潰す。
反射的に後ろへ跳ぶ。結果的にそれが時間の猶予をもたらしてくれた。
アクマを中心として、無数の錐が地面から生えてきた。
さらに錐からはまた別の錐が、その錐からまた別の錐がというように、次々と増殖していく。
たちまち錐で象られた茨で埋め尽くされた。
それは範囲を広げ、あたしの方へと襲いかかってくる。
「アースクエイク」
大地が裂けた。
あたしの魔法は錐を飲み込み、砕き、勢いを殺さないままアクマへと走る。
周囲を錐に囲まれたアクマは動けない。さながら自分で檻を作ったようなもんだ。
と、思ったら。
錐が一瞬で薙ぎ払われた。アクマの振るったたったの一閃で、だ。
その衝撃だけであたしの魔法もねじ伏せられる。
「出でよ、神の雷!」
全力の雷はアクマが上空へ投げ上げた魔力塊で爆砕。
「メテオスォーム!」
飛び交う隕石群を、もはや魔法すら使わず素手で粉砕。
「児戯ですね」
言いながら長髪をかきあげる仕草が悔しいほど様になっている。
「たとえどれほど魔力が優れていたところで、私に勝つなど不可能です」
「……そう。いつもそうよね」
小さくため息。魔力の使い過ぎで息が切れたってのもある。
「あんたみたいに桁違いの力を持ってる奴って、大抵そうやって人をみくびんのよ」
152
:
確執編十七章:悟りの終着点 10/12
:2007/09/06(木) 23:23:13
「…………っ!」
――初めて。
アクマの顔に動揺が走った。
二度も『殺された』身だ。胸がすく思いを感じたって、あたしは悪くない。
「貴様の敗因を強いてあげるとするなら――」
セリスの手には最初に弾かれた剣が握られ、
「アーチェを考えなしの無鉄砲と判断したことだろう」
アクマの胸を貫いていた。
それにしても考えなしの無鉄砲ってどういうことだ。
「あなたが、魔法を乱発したのは……」
アクマの双眸は己を刺し貫いたセリスをまったく見ていない。
まっすぐに、あたしだけを見ていた。
あたしが男だったら、そのまなざしだけで惚れちゃったかもしれない。女で良かったわ。
「セリスを解放するためよ」
セリスの剣はあらゆる魔法を『斬る』。
どれだけ力をぶつけても彼女は傷つかないと計算したんだ。
あのアクマが、小さく息を漏らした。
「まったく。人間とは、愚かであるが故に時に興味深い」
その顔にもはや感情の色はない。苦悶の色なんて最初から感じさせない。
「もっとも、関心を割いてまで突き詰めるほどのものではありませんが」
セリスが横に剣を薙ごうとしたのが、体の動きでわかった。
決まれば致命傷だ。下手したら両だ……やめよ、考えるとひたすら怖い。
そしてそれは呆気なく叶えられた。
「……ちっ」
小さく舌打つセリス。
その手に握る剣には、血の一滴もついてない。
アクマの姿はその残影さえも残さず、夢のように虚空へとかき消えてた。
153
:
確執編十七章:悟りの終着点 11/12
:2007/09/06(木) 23:24:17
「あれ?」
気がつくと地面にへたりこんでた。
「…アーチェ?」
「え? あれ?」
戦いの気配はすでにない。アクマが丸ごとどこかへ持ち去ってしまった。
あたしは安心したんだろうか。
「どうして、泣いてるの?」
わからない。
あたしにもわからない。
何でか涙が止まらなかった。
悲しいわけじゃない。特に嬉しいわけでもない。
それどころか、ここ数日で一番落ち着いてると言っていい。
なのに、何でこんなに涙が出るんだろ。
涙腺が壊れたんじゃないかと、自分の体が心配になってくる。
「あー、ごめん。あたしのことは気にしないで。ホント、何でもないから」
セリスは無言でこちらの顔を覗き込んでる。
昨日といい今日といい、セリスの前では泣いてばっかりだ。
「ありがとう、アーチェ」
目を見開く。
「何で…お礼を言うワケ?」
「あなたは私に見せてくれたもの。
――人はわかりあえる生き物だってことを」
「今の戦いの中に、そんな場面あった?」
特にあたしなんか魔法連発してただけだ。戦いというより魔法のバーゲンセールって感じ。
セリスは意外そうに眉を上げた。気づいてないのかって顔だ。
「うん、そうだね。それがあなたであり、だからこそ私はそれに喜びを覚える」
いや本気でわけわからないんですけど。
まだわからないの?、という言葉の後に繋がったのは、
「だってあなたは私を、私はあなたを理解してたじゃない」
――あぁ、そういえば。
生まれたばかりの赤ちゃんも、同じように泣いてるっけ。
154
:
確執編十七章:悟りの終着点 12/12
:2007/09/06(木) 23:25:24
・三日目
「まったく、とんだ茶番でした」
漆黒の翼をはためかせ、アクマがその髪をかきあげる。
その体には傷一つついていない。
最初からすべてが夢幻にしか過ぎなかったというように。
「お疲れ様です」
その言葉を彼女に対して用いることに意味があるのかと自問しつつ、
「わざと負けるのは納得がいきませんか?」
「最初から負けてなどいません」
「時々変なところで強情ですよね……」
深く、溜息をひとつ。
「これでようやくスタートラインといったところ、か」
「興味ありません」
心の底から無関心な響き。
「契約は果たしてもらいますよ」
「それこそ児戯ですね。貴女が気にかけても詮無いことです」
彼女は答えない。
「アーチェはリディア様と違って聞き分けが悪く、変なところで聡い。
最初から苦戦は覚悟の上だったが……えぇ、十分です」
「あなたの回した歯車はどこで何とかみ合うのでしょう?」
「興味がなかったのでは?」
「歯車には運命を知る権利はないと?」
「貴女でも自虐的なことを言うんですね。意外です。
まぁ運命なんて大層な呼び名をつけるほどのことじゃないですよ。
これからもう少しだけ騒がしくなって、それで、終わり。いや、終わり? 終わりになると、いいなぁ」
「それはどこに行きつくと?」
「無論、俺の望むゴールです」
お互いに、沈黙。
「さて。彼女達は、相手の中に映した自分とどう決着をつけるんでしょうね…」
155
:
名無しさん
:2007/09/09(日) 01:17:01
ageなのですよー
156
:
らいーる
:2007/09/09(日) 23:13:34
age
157
:
コア一族 -ビッグコア&テトラン編-
:2007/09/10(月) 11:59:31
私らコア系統はグラディウスを苦しめたバクテリアン軍の主力艦だ。
しかしそのバクテリアン様も今はビックバイパーによって死に絶え、
私らは宇宙に彷徨うだけの存在となっていた。
その後ヴェノム様に拾っていただくも酷い扱われ方をされた。
最初はビックバイパーを見つけ出し、ヴェノム様と供に倒して
再び第二次バクテリアンを築き、自分の地位を上げようとした。
しかしヴェノム様はビックバイパーに倒された…。
もう、可愛い妹達を自分と同じ目にあわせたくない…。
自由を求めて妹達と旅をしよう…心からそう思った。
そしてそれが叶った…。
それから数十年後…。
テトラン「ビッグコア姉どうしたの…?」
ビッグコア「あ?て、テトランか…昔のことを思い出してて…」
テトラン「そうなんだ…」
ビッグコア「あの頃が懐かしいな…テトランがまだコアだった頃だもの…」
テトラン「それ新手のギャグ?」
私とテトランは顔を見合わせて笑った。
ビッグコア「テトラン…お前は年老いちゃったねぇ…もう72歳か…」
テトラン「あ…うん…人間になってからね…あの人の子供も産めたし良かったよ…」
ビッグコア「馬鹿……………お願いだから死なないで私の可愛い妹…!」
私はぎゅっとテトランを抱きしめた。
テトラン「ビッグコア姉…だけどね…あの人のおかげでもう幸せはたっぷり味わったから…
今までありがとう…ごめんね…心配かけ…て………」
テトラン目を閉じてが動かなくなる。
ビッグコア「テトラン!?テトラン………馬鹿っ…」
私は動かなくなった
次の月、テトランの葬儀が静かに行われた。
そこにはビッグコアやカバードコア、クリスタルコアはもちろんのこと、
ビックバイパーなどの戦闘機一族も来ていたという。
待っていてねテトラン…。私も今、そっちに行くから…。
そう言ってからもう何光年経つだろうか…。
私は今でも生き続けている。テトランとの約束は果たせていない。
でも、いつか果たすつもりでいるんだ…テトランのためにね…
158
:
コア一族 -ビッグコア&テトラン編- 改訂Ver
:2007/09/10(月) 12:08:38
私らコア系統はグラディウスを苦しめたバクテリアン軍の主力艦だ。
しかしそのバクテリアン様も今はビックバイパーによって死に絶え、
私らは宇宙に彷徨うだけの存在となっていた。
その後ヴェノム様に拾っていただくも酷い扱われ方をされた。
最初はビックバイパーを見つけ出し、ヴェノム様と供に倒して
再び第二次バクテリアンを築き、自分の地位を上げようとした。
しかしヴェノム様はビックバイパーに倒された…。
もう、可愛い妹達を自分と同じ目にあわせたくない…。
自由を求めて妹達と旅をしよう…心からそう思った。
そしてそれが叶った…。
それから数十年後…。
テトラン「ビッグコア姉どうしたの…?」
ビッグコア「あ?て、テトランか…昔のことを思い出してて…」
テトラン「そうなんだ…」
ビッグコア「あの頃が懐かしいな…テトランがまだコアだった頃だもの…」
テトラン「それ新手のギャグ?」
私とテトランは顔を見合わせて笑った。
ビッグコア「テトラン…お前は年老いちゃったねぇ…もう72歳か…」
テトラン「あ…うん…人間になってからね…あの人の子供も産めたし良かったよ…」
ビッグコア「馬鹿……………お願いだから死なないで私の可愛い妹…!」
私はぎゅっとテトランを抱きしめた。
テトラン「ビッグコア姉…だけどね…あの人のおかげでもう幸せはたっぷり味わったから…
今までありがとう…ごめんね…心配かけ…て………」
テトラン目を閉じてが動かなくなる。
ビッグコア「テトラン!?テトラン………馬鹿っ…」
私は動かなくなったテトランを抱いて一日中ずっとそのままでいた…。
次の月、テトランの葬儀が静かに行われた。
そこにはビッグコアやカバードコア、クリスタルコアはもちろんのこと、
ビックバイパーなどの戦闘機一族も来ていたという。
しかしテトランが言ったあの人は来ていなかった。
彼は仕事で忙しくて来れなかったらしい…。
代わりに、兵士が何人か来た。
皆、テトランの顔を見るたびに「昔と全然違うな」と一言。
でも、私は昔と変わっていない、そんな気がした。
待っていてねテトラン…。私も今、そっちに行くから…。
そう思ってからもう何光年経つだろうか…。
私は今でも生き続けている。テトランとの約束は果たせていない。
でも、いつか果たすつもりでいるんだ…テトランのためにね…
(まさかのミス発見orz とほほ…)
159
:
ここより続く道、1
:2007/09/17(月) 19:49:21
チャイムが鳴る音で目が覚めた。
珍しい、と言えるだろう。基本的にその音色は予定調和によってもたらされるものであり、
確認を促すため以外の意味を持ちえない。
平たく言えば、何の連絡もなくチャイムを鳴らして我が家に訪れる輩はいないということだ。
つまり「チャイムを鳴らさずに」訪れる輩ならいるわけだが。
――NHKの集金か?
半年放置プレイの刑に処したのに、まだ懲りていないのだろうか。
だとしたら随分とガッツのある集金員だ。実に好感が持てる。
もう半年放置してやろう。
そう結論づけ、聞かなかったことにした。
再びチャイムの音――居留守ですが何か?
さらにもう一度。
もう一度。
もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度もう一度…
25回目のチャイムを聞いたところで、さすがに何かおかしい事に気がついた。
いくらなんでもガッツとバカの意味を履き違えた集金員などいないだろう。
――どっかのネタ製造機じゃあるまいし。
ちなみに現在の所在地はマンションである。どんなに入口で喚き散らされても、
自分のいる部屋までは聞こえてこない。
わずかに。
そう、ここにきてわずかに。
――嫌な予感がした。
自分は二択の――そう、たった二つしかない選択肢の――半分は正解となる確率を有した事象の――
はずれを選んでしまったのではないか。
そしてその予感は反省も悔悛も許さぬ速度で確信に相転移する。
「居留守使ってんじゃないわよ!!!」
すさまじい轟音・爆音・騒音と共に視界が暗転する。
平たく言えば、脳天を打ち据えられて昏倒した。
160
:
ここより続く道、2
:2007/09/17(月) 19:50:27
目が覚めると、そこは楽園だった。
即座に理解する。
「あぁ、俺、死んだのか……」
「アンタはいいけど、あたし達まで死んだことにしないでくれる?」
「天国でも理不尽な物言いをありがとう」
かぶりを振って起き上がる。
「いきかえったー」
視界に収まっていた顔のひとつが横に転がる――落ちた。
「? ……? ここはどこだー」
足をバタバタと振り回す。頭から床に落下したにしては元気なセリフだ。
それでも気にはなるので、スカートの大輪を咲かせた花をどかしつつ見下ろす。
「大丈夫ですか?」
「あ、はっけー」
満面の笑み。こちらは苦笑交じりに溜息ひとつ。
「…あなたは全然変わりませんね、アスミ」
この性格が一年やそこらで変わるはずもないが。
見回してみれば、なるほど、ここに彼女達がいる理由が理解できる。
「いつの間に……」
半年前まで日常を過ごした場所が、そこにはあった。
何も変わってない――そう感じるのはただの錯覚か、あるいは幻想だろう。
無駄に書籍が積まれていた場所には箪笥がある。
寝袋を置いていた場所にはハンガーラックがある。
自分の存在した痕跡には墓標が立てられている――は、自虐が過ぎるか。
「アーチェですね?」
ここまで歩いて来た記憶は、当然だが、まったくない。
というか窓をブチ割られた直後に脳天強打されたあたりからプツリと糸が途切れている。
とりあえず主犯格を犯人扱いしてみる。
「違うわよ」
即答。まるで質問されるのを予想していたかのようだ。
「アーチェですね?」
「違うってば」
「アーチェです」
「わかってんならいちいち聞くなバカ!」
雷撃。というか逆ギレ。
161
:
ここより続く道、3
:2007/09/17(月) 19:55:09
――さて。
ある程度落ち着いてから見回してみると、何かがおかしなことに気づく。
「あの、イサ?」
人の真ん前で胡坐をかいて座っている姿に問いかける。
「ん、何かな何かな?」
イサと呼ばれたその姿は、持っていたコミックから視線をこちらに向けた。
少年や少女という形容はあまり相応しいとは言えない――故にどちらも相応しいと言える、そんな『少女』。
それがイサだ。
「何で俺は足を縛られてるんです?」
――むしろ最初に気づけと言う感じだが。
「決まってんじゃん、動けなくするためですだよ!」
「敬語とタメ口が混在してカオスと化してます。それにそれは聞きたい回答じゃありません」
「難しいこと言うね! 謎人!」
「いえ言ってません。あの…俺の言葉、通じてます?」
「ジャパニーズ日本語通じてます! ハラキリ、ゲイシャ、カネカエセ!」
「決死の覚悟をした芸者から金まで毟らないであげてください」
「あはははは! 面白いねおじさん! ボク大好き!」
「………………」
笑われたことに腹を立てるべきか。
大好きと言われたことに喜ぶべきか。
――おじさんと言われたことに凹むべきか。
とりあえず一番インパクトのあったラストに沈むことにする。
「リディア様とかは何をしてるんです?」
日本語が――いや、そもそも人間としての会話が成立するのかと思いつつ、
如何せん相手が目の前の悪魔しかいない現状では、いい悪いに関わらず話しかけるしかない。
「ディア? 朝から何かやってるよ! ボ……ワタクシサマは詳しいことは知らないかな!
ってか、知ってても言うなって言われてる!」
と、言うことらしい。
それにしても度重なる脳への衝撃の後に、この廃テンションに市中引き回しの刑にされるのはかなりこたえる。
せめてもう少しまっとうに会話できる人材はいないのかと、思索を巡らす。
リヴァルやフィーナなんて贅沢は言わない。せめて霧香か杏ぐらいの常識度はほしい。
というのを(具体的に述べるのは伏せ、ニュアンスで)イサに伝えると、
「おっけー了解! イサちゃん承りまくりましたでござる!」
いつの時代の日本語だ、と言いたくなるのをこらえる。
きっと彼女には1000年ぐらい未来の日本語を1Tビットの脳内無線LANで受信する機能でも備わっているのだろう。
何にせよこちらの日本語を理解した(らしい)イサは、窓から勢いよく飛び出して行った。
――その光景も、何とはなしに懐かしい。
しばらく独りの退屈な時間を過ごす。何しろ動けない。
「イサちゃん無事帰還! ただし乗組員全員逃亡、ドゾー!」
どこが無事なんだ、と言いたくなるのをこらえる。
何せ相手は1000年後だ。10世紀だ。ドラ○もんでさえ1世紀の差でギガゾンビに負けたというのに。
で、その無事(?)に帰還した宇宙戦艦イサは、
「おなかすいたー、ごはんだー」
わざわざ、遥か遠くのイスカンダルから、
常識度皆無、絶無、それはもう完璧にゼロの娘さんを連れてきてくれた。
「……………………………………イサ、ちょっと来てもらえます?」
「ごほうび? ワタクシサマにごほうびですね? 謹んで強奪させていただきます!」
嬉しそうに近寄ってくるイサの頭を両手で掴み、
振り回す。
「自分の脳みそを、一体、どこに、置き忘れてきたんですか、あなたは?」
「うぎゃー! 暴力反対だよおじさん! ボク大嫌い!」
「繊細な硝子のハートをハンマーで殴りつけるのはこの口か? この口か? あぁこの口か」
「うにゃににゃににゃにゅにゃにょ!」
「おなかすいたー、ごはんだー」
162
:
Gradius
:2007/09/19(水) 01:10:51
ここは蒼き聖なる惑星グラディウス。
第五次バクテリアン戦役(グラディウスⅤ)から幾多のも年月が過ぎ、
惑星グラディウスの歴史は1万を迎えようとしていた。
そんなとき、皇帝ラーズ63世による他の惑星にいると思われるリーク人の
捜索が始まった。
それというのも絶滅したはずのリーク人の子孫達が、
他の惑星で繁栄していたという話を聞きつけたためである。
そしてグラディウス帝国はとんでもない場所でリーク人を見つけることになる。
そこはかつて特殊部隊サラマンダと戦った星。
爆発して消えたと思っていたあのサラマンダの本拠地であった。
しかもグラディウスからそんなに離れていない。
グラディウスはすぐさまその地に軍隊と調査隊を派遣する。
しかし送ってすぐに音信が途絶えてしまう。
予測していた事態とはいえグラディウス連邦政府は
超時空戦闘機ビックバイパーを緊急発動させることにしたのだった。
今回ビックバイパーのパイロットになったのはなんと
皇帝ラーズ68世の息子、イアン・ドゥーリットルだった。
163
:
Gradius2
:2007/09/19(水) 01:50:28
そしてすぐさまイアンの乗ったビックバイパーが
グラディウス空軍基地から発射していった。
目指すはサラマンダの元本拠地。
ビックバイパーはものすごい速さでその元本拠地へと近づいていく。
そのときグラディウスから通信が入る。
「7つのスペース・プラントが何者かによって占領された!」
イアンは驚きを隠せなかった。
これでは4000年前と同じサイレント・ナイトメア事件の二の舞である。
「もしかして…ヴェノム?」
イアンの脳裏にふと一人の人物の名がよぎる。
しかし第五次バクテリアン戦役においてヴェノムは完璧に死に絶えた。
宇宙各地に分散されたヴェノムの脳みそも完全に破壊され
バクテリアンは完全に消え去ったはずである。
しかしイアンにはそんなことを考えている余裕もなかった。
まずはグラディウスに一番近いスペース・プラント、
「アルマティア」へ向かうことにした。
164
:
Gradius3
:2007/09/19(水) 16:39:49
―スペース・プラント「アルマティア」―
このプラント「アルマティア」は商業が盛んなプラントとして有名であったが
ビックバイパーとイアンが到着した頃に地表が氷で覆われた
無残な姿へとなっていた。
氷の中に閉ざされた建物や犬や猫などの小動物、そして人。
イアンはただただ呆然としているのみだった。
「これが…アルマティア…?」
しばらく進むとそこには大きな要塞があった。
間違いなかった。それは紛れも無くバクテリアンだった。
青いコアを持った要塞。それは第二次バクテリアン戦役(グラディウスⅡ)のときに
確認された「要塞ヴァリス」とほぼ同じものだった。
もはや侵略者はヴェノムぐらいしかいなかった。
165
:
ここより続く道、4
:2007/09/19(水) 22:54:17
というわけで暇だった。
何が「というわけで」なのかを解説すると、
1:イサ、泣きながらイスカンダルへと再出航。
2:アスミ、食糧がないことを悲観して失踪(単に別の部屋へ移っただけとも言う)。
3:残された一人、身動きも満足に出来ず放置プレイ。
空間は静かだった。何せ自分以外誰もいない。
隣の部屋から時々聞こえてくる喧噪がまた哀れを誘う。
そもそも理不尽ではないだろうか。
望んで来たのならいい。フォズの着替えを覗いた末路だと言うなら、この仕打ちも甘んじて受けよう。
自分はここに誘拐されてきたのだ。
――とここまで頭を巡らせて、あれ誘拐ならこの監禁的状況もおかしくないかと妙な納得感に包まれる。
つまり。これは。
俺を誘拐して身代金を要求しようとする――
「なんて卑劣な犯罪……」
「いきなりわけのわからないこと呟いてるし」
「うわっ!」
声が聞こえてきたのは頭の後ろ。
振り返る。
「こんにちは、『観測者』」
目の覚めるような蒼が佇んでいた。
髪も青なら、着ている服もほぼ青一色。
胸に描かれた金の十字架が、何故だろう、恐ろしく似合っている気がしてならない。
無論、ずっとそこにいたわけではない、はずだ。
しかし声を聞くまでそこに『いる』ことをまったく知覚出来なかった。
「……影が薄いのか」
「わけのわかるすっげー失礼なこと呟いてるし」
淡々とした口調。そこには感情の欠片も伺えない。
世界の終わりを韻律で表現するなら、こんな音になるのではないだろうか。
すべてを見据えた上でそれらを片っ端から見下すような――
そんな極地を『限りなく希釈した』、まぁつまり単なる無味乾燥な声。
「すっげー失礼な奴にはすっげー失礼な対応をしろと師匠から教わりました」
「あえて聞きますが……師匠とは?」
「私」
自分かよ! とツッコむのに気を取られてるうちに腕を縛られた。
ごく自然に、縛られた。
「…あの、これだと完全に一人じゃ身動き取れないんですけど」
足縛り + 腕縛り = 推してシルベスタ・スタローン。
「青虫や蛇は動けるじゃない」
「人間と比較してください頼みますから」
「今の貴方、とっても素敵」
「手放しで誉められても現状に満足したりしませんから」
「…………チッ」
舌打ちしたいのはこっちだ。
いや、心底から。
166
:
ここより続く道、5
:2007/09/19(水) 22:55:56
「で、あなたは何しに来たんです? まさか俺の腕を縛りに来たわけじゃないですよね?」
「そうだと言ったら?」
「全力で逃げます」
と言ったら、何故か意外っぽい顔をされた。
『ぽい』というのは、変化したのが僧帽筋の伸縮だけで、目の奥の光は微塵も揺るがなかったからだが。
「……おかしい」
「はい?」
「あなたはMのはず」
「どっから仕入れたそのソース」
「むしろM」
「断言されたし」
「ならまさかS!?」
「この世にはSかMの二種類しかいないのかってか体を両手で隠すな縛られた腕じゃ何も出来ん」
ナイロンで出来た(自分で言っても説得力がないが)堪忍袋の緒も、摩耗の果てに擦り切れつつあった。
「すべてじょーだんです。やーいやーい釣られたクマー」
「……………………」
体を反対側に向け、視界から彼女を消した。
これならまだ誘拐の方がマシだ。少なくとも誘拐犯には人並の理性があると思うから。
「怒った?」
無視。
「ごめんなさい」
……無視。
「挨拶したのに無視されたから、少し落ち込んだ。だからからかってやろうと思った」
…………無視。
「手を縛ったのはやり過ぎだった。そこまで怒ると思わなかったの、ごめんなさい」
縛られていた腕が自由になる感覚。足の方は相変わらずだったが。
……………………嘆息。
体の向きを戻す。
「……わかりましたよ、今回だけは」
水に流そうと言う前に、
「すべてじょーだんです。やーいやーい釣られたクマー」
即座に彼女の顔の『征服』にとりかかった。
ひとしきり憂さ晴らしを敢行した後。
「あぁ、もうお嫁に行けない私。およよよよ」
「およよとか泣くな被害者ぶるないいから黙れ」
名誉のために言うが、誓って人の(自分も含め)尊厳を損なう行為はしていない。
まぁ自身の主観だと言われてしまえばそれまでだが。
「女の子に対してそんな暴言を吐くなんて。鬼畜」
「……あなたは『女の子』なんてカテゴリーに含まれる生温い存在じゃないでしょう」
「差別発言。人非人。こんな可愛い女の子を前にしてそんなことが言えるなんて。……薔薇?」
血が出そうなくらい下唇を噛みこらえる。
「…………で? 真面目な話、俺に何の用です?」
「いや、別に」
あっけらかんと。
「さっきも言ったけど。挨拶に来ただけ」
そこには喜びも悲しみも怒りも焦燥も何もない。
どこまでも、無。
「改めまして。こんにちは、『観測者』」
「えぇ。こんにちは、『代理人』」
――そして、それ故の『代理人』だった。
167
:
Gradius4
:2007/09/21(金) 19:34:37
ビックバイパーが要塞ヴァリスとほぼ同じ要塞を見つけた頃、
惑星グラディウスはバクテリアン軍と必死の戦いを繰り広げていた。
そして次第に勢いを増すバクテリアン軍。
最後には壊滅し、敗走していくグラディウス軍。
勝負は敗北という最悪の形でついてしまった。
聖なる蒼き惑星グラディウスはついにバクテリアンの支配下となってしまったのだ。
巨大なダーク・フォースの力に飲み込まれていくグラディウス。
そしてすぐさまバクテリアンの要塞と化していった。
???(これで私の願いがやっと叶ったぞ…リーク人に栄光あれ…!)
168
:
少女、思い
:2007/09/22(土) 02:31:28
最近、自分を呼ぶ声がする。
そう、姉に話すと姉はただ寂しげに笑って「それは“オトウサマ”の声だよ」と言った。
オトウサマ、私を作った知らない、ニンゲン。
姉にとってお父様より大切な…ニンゲン。
以前お父様とそのニンゲンのどちらが大切か、聞いた事があった。
お姉様は手入れの手を止め、困った様に笑っていたのを、私は覚えている。
彼はそんなに、そんなに大切な存在なのだろうか?
姉妹を互いに戦わせる様なニンゲンが。
その問いかけにもお姉様は困った様に笑っていた。
「アリスがオトウサマの願いだから…」
“薔薇水晶…”
また、声がした。
「どうしたんだ?」
お父様のぶっきらぼうな、心配してくれてる声に私は首を振った。
お父様は少し肩をすくめると、再び髪を柔らかなブラシでとかし始める。
…お姉様は贅沢だ、お父様の愛を受けながら、他のニンゲンを求めている。
そんな、姉への嫉妬にも似た思いがいつしか私にオトウサマに対して怒りに近い感情を抱かせていた。
「はて、では貴方はアリスゲームを放棄すると?」
目の前の兎男の問いに薔薇水晶はただ無言で見つめ返した。
ただ、彼女が纏う闇は落ち着きなくうごめき、明らかな敵意を現していた。
「ですが…宿命から逃れられませんよ?
貴方がいくらあがこうとも全てはいずれ一つとなるのですから」
―あら、今日はずいぶんと早いじゃない
―え?ナハト?
―紫が言うにはゼロツーともども帰ってこれなかったみたいよ?
―それより、一緒に朝御飯はいかが?
そして、今日もまた一日が始まる
169
:
ここより続く道、6
:2007/09/25(火) 21:50:54
「あの。準備が、終わりました」
視線を遣る。が、姿は見えない。
世界は闇色に溶け込み、視界は夜色に染まる。
『代理人』との他愛ない会話は、時間を忘れるほどには充実していたようだ。
――いや、そんなことよりも。
「フォズ、ですよね?」
「え、あ、はい」
応えが返ってきた直後、言葉が「証明」された。
光が灯る。
電気? そんな無粋な光ではない。婚礼衣裳のように彼女を包む、純白の光。
佇むのは、10歳ほどの少女。
「御挨拶が遅れました。お久しぶりです」
利発そうな大きな瞳が、下げられて降りた髪に隠れた。
「確かに。こうして面と向かって会話するのは、久方ぶりですね」
「久方ぶりの再開。ロ(ryコン観測者、大興奮」
「黙れ戯言代理人」
困ったような笑みを浮かべるフォズ。
それにしても、
「準備――とは、一体何のことです?」
そういえば、と。さっきイサも同じようなことを言っていたことを思い出す。
フォズは瞳を意外そうに揺らした。
「え? あの、そちらの代理人さんからは、何も?」
首は動かさず、黒瞳だけを彼女に向ける。
「知ってることを吐け」
「『教えてください、セクシィでビューティフルな代理人さん』。はい復唱」
「知ってることを吐きやがってください、リスキィでデンジャラスな代理人さん」
「よろしい」
「いいんだ」
「ディアからの伝言です。『パーティの準備が終わるまで部屋で待っていてください』」
「……準備が終わってから言うことでは?」
「ありませんが何か」
「…………」
「いやー、犯されるー」
「誤解を招くことを大声で言うな!」
こほんと、咳ばらい――したのは自分ではなく、フォズ。
唐突に『代理人』との子供じみたやり取りに羞恥心が湧いてくる。
「……ともかく、こちらの準備は終わったので、早く来てほしいとのことです」
「はぁ、それはいいんですが……」
尾ひれを跳ねさせる人魚姫さながらに、ぱたぱたと足を動かす。相変わらず縛られたままだ。
フォズは初めてそれに気づいたようだった。怪訝そうに、
「何をなさっているんです?」
「趣味なんです。緊縛が。Mなので」
「フォズー、このイカれたお姉さんの言うことは無視していいですからねー」
結局、縛られた足はフォズの魔法で解放された。
170
:
ここより続く道、7
:2007/09/25(火) 21:52:06
案内されたのは隣の部屋。
扉を開けた瞬間、軽い破裂音が鼓膜を揺らす。
「…………!」
軽く、絶句する。
音に驚いたということもあるが、それ以上に、
――前にもこんなことがあったような。
あれは、そう、ちょうど一年前――
「あ……」
遅まきながら気がついた。
『にしぅねん☆ばんざい』(筆跡から察するにメイドバイアスミ)
正確には、思いだした。
そう、あの日から、もう、
「2年か……」
「なにアンタ、ひょっとしてマジで忘れてたワケ?」
呆れた、とアーチェ。
「まぁ部屋に乗り込んだ時の反応から、だろうと思ってたけどさー」
「そういえば、去年も、忘れてたもんね」
「リディア様……」
「アスミがいなくなった時以来だよね。二ケ月ぶり、かな?」
翠の双眸が微笑む。そこだけ空気が火照ったかのように、温かい。
「んじゃま、始めますか!」
そしてパーティが始まった。
一部屋に全員が入るのは無理がある。
多くは部屋の外に領域を広げはしゃいでいた。
然り。
「あー、それボクの!」
「あん? 肉に名前でも書いてたか?」
「ヨーヘーのバカー! 肉泥棒! 罰として逆立ちで二階から飛び降りを要求します!」
「するかっ」
然り。
「今日は何を『代理』してんの?」
「主人公の代理などを」
「は?」
「オラは怒ったぞー、フ○ーザー」
「感情なし、抑揚なしで激怒されても。むしろこっちが金髪化したいわ」
「正確には主人公の代理の予行演習。私の『代理権限』は本来そのために『執行』されるものだから」
「…あんたの電波は今に始まったことじゃないけど、そこそこにしときなさいよ」
「『と、何だかんだと拒みつつも、そんな代理人がみんな大好きなのでした』――ありがとう、杏」
「都合のいいモノローグを捏造してんじゃないわよ!」
1年前とは色々なものが違う。
迷わなくなった。
正しいとまでは云わずとも、疑問を抱くことはなくなった。
心から思う。
――こんな『世界』も、悪くない。
171
:
I pray, you must have the smile.
:2007/09/26(水) 00:47:07
「ひどい顔だな」
言われて、顔を上げてみれば、確かに涙やら鼻水やらで顔は相当ひどい有り様だった。
「ごめん…わざわざこんなことの為に起こしちゃってさ…」
うなだれながら、握りすぎて皺になってしまった服から手を離すと、
突然、髪がぐちゃぐちゃになるのではないかという勢いで頭を撫でられた。
「またすぐそういう事を言う」
「だ、だって…」
困惑しながら、手をどけようとする彼女を彼はにんまりと笑いながら、抱きしめた。
「お前は苦しくて助けを求めてたんだろう?
ならつまらなくもなんともないじゃないか」
そこまで言って、腕のなかの彼女がまた鼻をすすりだしたのに気付き、
彼は黙って彼女が落ち着くその時まで再び頭を―今度は優しく撫で続けるのだった。
「やっぱりひどい顔だな」
泣き疲れて寝息を立てる彼女の顔を覗きこみながら、彼は呟く。
「それでも独りで苦しむよりはずっとマシだな」
目元に残った涙を指で掬い、彼はそのまま部屋の明かりを消した。
「I pray, you must have the smile…」
やがて寝息は二つになり、夜はゆっくり更けていくのだった…
枕の裏
英語は自信なしだぜ
たまにこんな感じで現実逃避を(ダメジャン
枕の裏
172
:
名無しさん
:2007/10/02(火) 00:07:45
あげませう
173
:
英雄
:2007/10/07(日) 22:53:58
地響きを立てながら、地面に倒れ伏す魔物の横をくぐり抜けながら、ナハトはようやく息をついた。
火を自在に操る相手との戦いはまさに死闘そのものであり、彼もまた無傷ではなかった。
それでも、彼は大地に立ち、魔物は大地に沈んだ。
ナハトにとってそれだけで十分だった。
「ありがとうございます!お陰でこの街は救われました!」
証拠の魔物の角を持ち帰った彼を出迎えたのは人々の歓声と憧れ等が混じった視線だった。
「この村を救ってくださった貴方様こそまさに英雄にふさわしい!」
禿げかかった街長の言葉を無言で聞きながら、彼は杯をあおった。
皮肉な話である。彼は元々忌み嫌われる破壊と破滅をもたらす負の血族。
それを英雄と呼ぶ彼らは滑稽以外の何者でもなかった。
英雄というのは、とナハトは抱きつこうとする女を払い退けながら、思う。
英雄というのは、そう、命を賭して大切な者を守ろうとする、弱く、誰よりも強い彼女の事だろう。
ああ、本当に滑稽だ―
彼はほくそ笑みながら、再び酒で満たされた杯を傾けるのだった。
英雄の定義と闇の剣士のお話
174
:
星の海
:2007/10/07(日) 23:15:06
「たまには見上げる星というのもいいものだ」
そう言ったのは白い軍服を着た男―――大提督ピエットである。そしてその傍らには少々、
変わったポニーテールの女性―――アッシュが座っていた。彼らは今、都市郊外の丘に座
って、空を眺めていた。人工の光の少ないここでは、普段は見えない星も明瞭に見る事が
でき、まさに、星の海と形容するにふさわしい光景が彼らの視界の先に広がっていた。
「そうだな…いや、私にとってはこういう視点が当然だったのだが…」
男の先程の発言に対して相槌を打ち、自分のかつての立場を告げるアッシュ。彼女は元は
といえば、ハイラルという異世界の王国の騎士である。当然、その世界では、彼女のみなら
ず、多数の人々にとって、星々と同じ高さに登ろうなどとは夢にも思う事ではなかった。が、
今ではその非現実が現実となっている。そうなった後で、かつての常識の中に戻ると、違和
を感じるものである。
「まあ、喧騒を離れれば色々、考えや感じ方も湧くものさ。いつもなら、何がおかしくて、何が
当たり前かだなんて考えないだろう?それだけでも出てくる価値はあったさ」
彼女が言葉にしていない部分までを見通して、彼は語りかけた。普段、彼の喋る諧謔や口説
き文句とは違って、こんな時の彼の言葉は傾聴に値するように思われる。
「ふん…確かに出てくる価値はあったな。久しぶりにまともなお前を見た気がする」
「相変わらず、君は辛辣だね…だいぶ冷えてきた。そろそろ戻った方が良さそうだ」
そう言うと、彼は待機させていたシャトルへと彼女を促した。彼らの姿が消えると同時に、ライト
ブルーの機体が浮き上がり、星の海へと消えていった。
「間近で眺める星もいいものだ」
戦争物から離れてみようと試行錯誤した産物…o...rz
お題に沿っているかも怪しいものです…
175
:
確執編十八章:調和という名の歯車 1/7
:2007/10/08(月) 17:18:12
・三日目 サイド: ――――
吐く息が白い。
空が高い。
目の前の建物は白く、
見上げるほどの高さ。
不思議な感じがする。
ありふれた場所。
ありふれた場所――だった、はずだ。
違和感。
ここはどこだろう。
知っている場所なのに。
答えを求めることさえ意味がない。
そんな場所のはずなのに。
変わったのは世界?
変わったのは時間?
変わったのは――自分?
・三日目
「『あの高さはどれほどでしょう、と貴方は言っていた』、か」
「? 何です、それ?」
エプロン姿のリヴァルが、ふいに台所からこちらに声をかけてきた。
苦笑。まさか独り言を口にした上、その意味を聞かれることになるとは思わなかった。
「いえ――何の意味もありません」
時計を見やる。
「そういや今更と言えば今更ですけど、この三日間炊事洗濯家事等々ありがとうございました」
「今更――というかいきなりですね」
と言う割に、わずかに声には喜びがこもっている。
一昨日早苗さんが作り置きしていったパンは両手を合わせて供養し、
(何しろ食の権化とも言えるアスミでさえ首を横に振り、頑として口に入れようとしない)
以来ほとんどの家事は彼女に任せっきりだった。
「こういう仕事って、やってて楽しいんです。
私が楽しめて、皆さんに喜んでもらえたら、それに勝ることはありませんよね?」
「……きれいですね」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると、掃除のしがいもあります」
そういう意味ではなかったが、まぁ、それでいいのだろう。
「さ、そろそろ皆さんも帰っていらっしゃる頃ですよね。
私は夕食の支度をすませちゃいます」
「お願いします、リヴァル」
そう。今日は三日目。
確執から始まり、憎悪を経て、今、辿り着く。
176
:
確執編十八章:調和という名の歯車 2/7
:2007/10/08(月) 17:20:41
「ただい、まっ!」
「おかえ、りィィィィィィィィッ!?」
己の発した声より速く体が吹っ飛ぶ。
極めて珍しい現象かもしれない。体感する本人としては珍しがる余裕もなかったが。
そういえば1キロ以上離れた場所からライフルで狙撃すると、着弾した後に発射音が届くらしい。
そんなどうでもいいことを考えてる間に、体が壁に激突。
「て、敵襲だ! ライフルで狙撃された! 皆の者であえであえ!」
「またわけのわからないことを」
空気の色が変わった。
『人がいる』というのはそれだけで世界を変質させる。
無論、己の認識する世界が変わるだけなのだが。
「それ、おみやげだから。ありがたく受け取りなさい」
「ありがたく受け取ってほしいなら全力で投げつけないでください」
どうやら当たったのは角だったらしい。直方体が凶悪に歪んでいる。
この凹んだ分だけ脳が揺さぶられたのかと思いつつ、包装を解く。
温泉饅頭だった。
「あ、あたしにも頂戴。お腹すいたわ」
「まぁいいですけど……すぐにリヴァルが夕食を作ってくれますよ?」
「いいから寄越しなさい」
ふんだくられた。手持無沙汰になった両の手に、饅頭が一つ載せられる。
「覚悟はしてたのよね?」
これまでとトーンが変わる。
「その話はまた後にしましょう。今はまだその時じゃない。
――あぁ、一度でいいから言ってみたかったんですよね、このセリフ」
「浸んなバカ」
「なら真面目な話。片割れがいない状況で語る気はない、ってことで」
「………………」
「睨まないでください。お互いさまでしょう?」
彼女は諦めたようだった。嘆息して、かぶりを振る。
「それより他の面子はどうしたんです?」
「春原が道の真ん中でブッ倒れて、四葉が看病中。杏は隣の部屋に行ったわ。
あと、国崎とは向こうで別れた。しばらくあっちで稼いでからまた旅に出るってさ」
「それは心配ですね、四葉が。彼は……なるほど、流石としかいいようがない」
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