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持ち帰ったキャラで雑談 その二

97確執編十五章:再動の荒野        5/7:2007/06/24(日) 22:37:13
 私はすべてから目を背けることで信頼を失った。
 私の怒りや苛立ちは、すべて私自身のものでしかない。
 けれどそれによってもたらされるものは、私の周りにも被害を及ぼす。
 誰にも迷惑をかけないなんて無理だ。
 人は生きてる限り、誰かに迷惑をかけるしかない。

『彼』が何を求めているのか、何となくわかってきた。

 そうして、私は彼女と対峙した。
「アスミ」
 私は車が横に4台は通れる大きな通りの真ん中に立っていた。
 普通ならこんなことをしたら数秒で怒られるだろうけど、この世界では何の気兼ねも必要ない。
「アスミ、私の声が聞こえるかな?」
 アスミはのんびりとした顔で、右手をかざす。
 胸がどうしようもなく痛い。強く噛み締めた唇の痛みが気にならないほどに。
「今から私は、あなたを止めるよ」
 そして、私も右手をかざす。思考を即座にシフト。
 アスミは――敵だ。

「――神よ。意思通ずるなら、応えて!」

 耳をつんざく神竜の咆哮。
「すごくおっきー」
 さしものアスミも、その巨体に目を丸くしている。
「アスミ」
 そう彼女を呼んだのは、しかし私じゃなかった。
 声の方に視線を遣れば、そこには飄々とした風貌が立っている。

「構いません。『全力』でどうぞ」

 その声は、焼け付くようなこの空間でなお、ひどく冷たく響いた。
 アスミの目つきが――わずかに、変わる。
 可愛らしい声だけはいつもと同じまま、おそろしい早さで詠唱を紡ぐ。
「おしごとー」
 ……なるほど、と思う。
 昨日の彼女が全力じゃなかったという話は、虚勢でも脅しでもなかった。
 魔界から召喚されたもう一体の竜は、神の御前で世界を割る咆哮を発した。


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