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持ち帰ったキャラで雑談 その二

166ここより続く道、5:2007/09/19(水) 22:55:56
「で、あなたは何しに来たんです? まさか俺の腕を縛りに来たわけじゃないですよね?」
「そうだと言ったら?」
「全力で逃げます」
 と言ったら、何故か意外っぽい顔をされた。
『ぽい』というのは、変化したのが僧帽筋の伸縮だけで、目の奥の光は微塵も揺るがなかったからだが。
「……おかしい」
「はい?」
「あなたはMのはず」
「どっから仕入れたそのソース」
「むしろM」
「断言されたし」
「ならまさかS!?」
「この世にはSかMの二種類しかいないのかってか体を両手で隠すな縛られた腕じゃ何も出来ん」
 ナイロンで出来た(自分で言っても説得力がないが)堪忍袋の緒も、摩耗の果てに擦り切れつつあった。
「すべてじょーだんです。やーいやーい釣られたクマー」
「……………………」
 体を反対側に向け、視界から彼女を消した。
 これならまだ誘拐の方がマシだ。少なくとも誘拐犯には人並の理性があると思うから。
「怒った?」
 無視。
「ごめんなさい」
 ……無視。
「挨拶したのに無視されたから、少し落ち込んだ。だからからかってやろうと思った」
 …………無視。
「手を縛ったのはやり過ぎだった。そこまで怒ると思わなかったの、ごめんなさい」
 縛られていた腕が自由になる感覚。足の方は相変わらずだったが。
 ……………………嘆息。
 体の向きを戻す。
「……わかりましたよ、今回だけは」
 水に流そうと言う前に、
「すべてじょーだんです。やーいやーい釣られたクマー」
 即座に彼女の顔の『征服』にとりかかった。

 ひとしきり憂さ晴らしを敢行した後。
「あぁ、もうお嫁に行けない私。およよよよ」
「およよとか泣くな被害者ぶるないいから黙れ」
 名誉のために言うが、誓って人の(自分も含め)尊厳を損なう行為はしていない。
 まぁ自身の主観だと言われてしまえばそれまでだが。
「女の子に対してそんな暴言を吐くなんて。鬼畜」
「……あなたは『女の子』なんてカテゴリーに含まれる生温い存在じゃないでしょう」
「差別発言。人非人。こんな可愛い女の子を前にしてそんなことが言えるなんて。……薔薇?」
 血が出そうなくらい下唇を噛みこらえる。
「…………で? 真面目な話、俺に何の用です?」
「いや、別に」
 あっけらかんと。
「さっきも言ったけど。挨拶に来ただけ」
 そこには喜びも悲しみも怒りも焦燥も何もない。
 どこまでも、無。

「改めまして。こんにちは、『観測者』」
「えぇ。こんにちは、『代理人』」

 ――そして、それ故の『代理人』だった。


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