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持ち帰ったキャラで雑談 その二

145確執編十七章:悟りの終着点       3/12:2007/09/06(木) 23:08:06
 セリスは速度を落とさないままアクマを捉えた。
「動揺するとでも思ったか?」
 魔法を放った直後の体勢で、アクマの動きは鈍い。
 刺突は狙い違わず片翼を貫いた。
「報いろ」
 勢いを殺さず、そのまま翼を引き裂く。
 アクマの体が堕ちる。なのに、そこには動揺も痛痒もない。
 彼女の表情はどこまでも虚無。
 体を回転させ、セリスの連撃がうなる。
 アクマは右手で受け止めた。掌にわずかに食い込んだ傷口から滴り落ちる血。
「っ!?」
 攻めていたはずのセリスの顔が、突然驚愕に彩られた。剣を離し、後ろへ飛び退る。
 雷柱が降り注いだ。
 平たく言えば、あたしの使う雷撃をでかくして連発したようなもんだ。
「セリス!」
 叫ぶ。彼女はこちらを振り返ろうともしない。
 呼吸をするのと同じ感覚で、あたしは呪文を紡ぐ。
 あとは発動のキーを告げるだけってとこで、激しいフラッシュバックがよぎる。
 言葉が――出ない。

 あたしの力で何が出来る?
 ひょっとしたらアクマを倒せるかもしれない。
 ――それで? それで、どうなる?
 あたしの力は誰も守れない。誰かを傷つけることしかできない。
 望むものは、あたしの力じゃ手に入らない。

 命中精度を捨てて数を頼りにした攻撃が、実は一番怖い。
 自分を狙ってるならまだかわしようがある。
 けどランダムに降り注ぐ雷が当たるかはどこまでも運だ。
 標的は完全にセリスだった。
 広範囲に撒くほど精度は落ちる。あたしが範囲外にいたのもやっぱり運でしかない。
「セリス!」
 もはや雷のつんざく音に紛れてあたしの声は届かない。
 その姿が、光の中に、消えた。


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