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渡来船2

1カサブタ:2012/03/06(火) 22:56:29
※注 この小話は、過去に愛璃さんが某サイトにて投稿したシリーズを私が脚色したものです。
オリジナルの渡来船2とは一部設定が異なります。

2カサブタ:2012/03/06(火) 22:57:27
とある夏の夜、ここはハンガリーの片田舎ホロウ・クイ。ある夜、この人里離れた寒村の中心にある古城で盛大なパーティが開催されました。

宮殿の豪華な広間では紳士淑女たちが軽やかにステップを踏んで、
華やかに仮面舞踏会が繰り広げられていた。
その中でも一際めだったカップルが広間の中央で踊っていた。

一人はこの城の城主であり、仮面舞踏会の主催でもあるキルシュ伯爵である。由緒正しい貴族の血を引く伯爵であり、有数の大富豪でもある彼は、この古城でまさに中世の貴族さながらの悠々自適な生活を送っていた。彼は道楽好きで知られ、今では村の数少ない行事であるこの仮面舞踏会も元々は彼の思いつきで始められたものだった。

身長が180センチくらいある大柄な体格の持ち主であり、豊かな黒い髪は腰のあたりまで長く伸び、顔立ちも端正ですごく凛々しかった。きめ細かな白い肌に厚みのある口唇は、真っ赤で力強さが感じられた。

もともと病弱だった彼は、数年前まで病気療養中で暫くこの舞踏会にも姿を現さないでいたものの。今ではそれが嘘であったかと思うくらいに回復して周囲を驚かせたものでした。

黒い燕尾服の上に黒いマントを羽織り、そして黄金仮面の奥の瞳は優しく淑女を見つめていた。
そんな瞳に見つめられるとどんな女性でも彼に魅了されることだろう
事実、この仮面舞踏会に出席している大半の女性は彼のファンだった

今宵、伯爵の相手となった淑女の方は、危なっかしいステップで彼についていこうと必死で踊っていた。彼女にとって今日は、記念すべき舞踏会デビューの日でもあった。
今年数え年で17歳になり、名前はマリアといいます。町にある宿屋を死んだ両親に代わって姉とともに切盛りするしっかり者の少女であり、チャーミングで器量よしの看板娘だ。 もちろん、普段はこんな舞踏会とは無縁で、仕事以外では、読書することと絵を描くことくらいが楽しみのごく普通の町娘でした。実は今回の舞踏会も、招待状は姉に届いたのですが、優しい姉は彼女にチャンスを譲ってくれたのだった。

彼女にとってキルシュ伯爵とダンスをするなんて夢のような状況でした。
彼女の今まで知っている伯爵というのは、まわりの女性達が黄色い声をあげては噂しあっている、そんな姿だけでした。
男性を知らない彼女にとっては、初めて憧れた男(ひと)でもあったのです。

3カサブタ:2012/03/06(火) 22:59:24
「よりによって舞踏会デビューの日に、伯爵様のお相手だなんて・・・」

嬉しくて飛び上がって喜びたい反面、回りの女性達からの厳しい視線を仮面越しからでも感じられます。
そんなプレッシャーの中、彼女のかわいいフリルのついた純白のドレスは、室内の熱気と冷や汗でぐっしょりと濡れてしまいました。

「きゃあ!」

伯爵とリズムをあわせようと必死だった彼女だったのですが、微妙にタイミングが狂ったのです。
足を床に下ろした瞬間、自分のドレスのスカートを踏んで、バランスをくずしてしまったのです。

「おっと、大丈夫ですか?お嬢さん」

「あッ、大丈夫です!」

広間の床に倒れそうになった彼女を伯爵が支えて優しく抱きしめたのでした。

「踊り疲れたみたいですね!私も疲れたから、すこし中庭でやすもう」
「・・・はい、伯爵さま」
まわりの女性達から冷ややかなそして妬ましい視線を感じる中、両肩を優しく抱く伯爵さまの手からは、
白い絹の手袋ごしでも温もりを感じることができたのです。

「今夜の月はいつにもまして輝いている。
お譲さんのその美しさが、月の女神アルテミスを嫉妬させるのだろう・・・」

「そんな嫉妬だなんて・・・」

「だって、そうだろう。私達が広間から出るとき、あそこにいたすべての女達の想いがわからなかったのかい?」

「・・・・・」

伯爵はワイングラスに赤ワインを注ぐと、私に手渡したのでした。
その時の私の気持ちは複雑にゆれ動いていた・・・。

「美しくなるには、どうしたらいいと思う?」

私は伯爵さまに質問されたが、なんて答えていいのかわからず、グラスに注がれたワインを見つめていた。

「美しい」ってどういうことだろう?・・・今までそんな事すら考えもしなかった。
伯爵は答えに窮してる私をみていたのだが、おもむろに庭先に行くとたくさんある赤い薔薇を1本摘んできた。

「答えは、目の前にあるよ」

そう言うと私に薔薇を渡してくれました。
私はおもむろにそれを受け取ったのです。

4カサブタ:2012/03/06(火) 23:00:37
「痛ッ!」

無用心に受け取ったので、なんと薔薇のトゲで右手の人差し指を刺してしまったのです。
人差し指から血がにじみはじめてきたのです。
それをみた伯爵さまは私の前に跪くと、傷ついた右手をつかんできました。
その時です!
私の血を見た伯爵さまは不気味に笑い出したのでした!!

「ふふふッ、ふはははッ!」

そして、私の顔を見上げたのです!
あーなんてことでしょう・・・神様・・・!
あの優しかった仮面の奥の瞳は真っ赤に充血し、厚みのある口唇からは2本の長く大きな牙が伸びていたのでした!!

「きゃあ!」

私はびっくりして伯爵さまのつかんでいる右手をふりほどこうとしましたが、できませんでした。
人間の力ではない信じがたいような力を感じたからです。
すると伯爵さまはつかんでいる私の右手を、おもむろに自分の口唇に押し付け、血を吸い始めたのです。
伯爵さまに吸血されるたびに、私は今までに味わった事のない感覚が全身を襲ってきました。

「ああん・・・」

「おかしくなりそう・・・」

イッてもイッってもその感覚がさざなみのようにやってくるのです。

「・・・はッ、はく・・しゃく・・・さ・・・ま・・・」

黒く揺れ動く伯爵さまの長い髪をみつづけながら、
私の視界は真っ白になって、気を失いました・・・。

5カサブタ:2012/03/06(火) 23:01:53
2

「う、ううっ・・・」

少女が意識を取り戻したのは、あたりの闇がまた一段と濃くなった頃でした。
呻き声を発しながら上半身を起こした少女は、キョロキョロとあたりを見回しました。

「・・・ん」

マリアが見たものは窓が一つもない石造りの部屋でした。
部屋の中は冷たく張り詰めた空気が漂っていました。
部屋の四方には松明の明かりが煌々と照らしだされていて、
樹脂が焦げるかすかな音だけが聞こえてきました。
マリアは静寂に息苦しさを感じ、ごくりと唾を飲み込んだのでした。

「ここはどこ?」

なんとマリアが寝かせられていた場所は、大きな石の上だったのです。

(なぜ私、こんな所で寝ていたんだろう?
そうだわ!私は憧れていた伯爵様とダンスして踊ったんだっけ!そして・・・)

マリアは優しかった伯爵様が欲望を剥き出しにして変身していく姿を思い出して身震いするのでした。
そして、さらに自分の身体が震えているのは恐怖の為だけではないことに気づきました。
(え・・・? な・・・なにこれ)

シーツが掛けられていたために分かりませんでしたが、起き上がって冷たい空気に触れたことで自分が裸である事にようやく気づくのでした。
(わ・・・わたし、何をされるんだろう・・・。 怖い・・・。なぜわたしがこんな酷い目にあわないといけないの・・・)

その時でした!
2つの黒い影が部屋に入ってきたのです。
それは床に引きずるほどの長く黒いマントにすっぽり身を包んでいました。
1人はキルシュ伯爵本人で、もう1人は深くフードをかぶっているため顔までは見えませんでしたが、
姿から見て女性であることは想像がつきました。

「ふふふッ。 お目覚めかなお嬢さん。我が城へようこそ。」

伯爵の声をきいたマリアは背筋が凍る思いでしたが、勇気を出して言い返しました。

「私をどうするつもり・・・? どうしてこんなことをするの?!」

「おやおや・・・、これは驚いた。 大抵の娘達は恐怖のあまり声すらも上げられないというのに。
これは有望かもしれないな、ローズよ。」

伯爵に寄り添う、ローズと呼ばれた女性はクスリと笑いました。

この女も伯爵とグルなのか・・・。彼と同じ黒いマントを着ている所をみると彼女も吸血鬼?
一体、彼らはどうして私を連れてきたのだろう? まさか、私の血を吸うために?

「ふふふッ、この状況にあっても思考することをやめないか。実に素晴らしい娘だ。
どうして私がダンスの相手にあなたを選んだかお答えしましょうか?」

・・・!!
(なぜ私が考えている事が、伯爵様に伝わったのだろう・・・
伯爵様が本当にヴァンパイアだから・・・?)
そんな疑問をよそに、伯爵は真相を打ち明けたのでした。

「あなたのご察知のとおり、私はヴァンパイアなのだよ。とはいえ、元々は人間だがね…。

知ってのとおり、ヴァンパイアは人間とは違う。
人間以上に完全に近い存在だ。人間では持ち得ない強大な力を持ち、他の生き物のように死ぬことも無い。素晴らしいとは思わないかね?
私もかつてはおとぎ話だと思っていた。しかし、私はこのローズと出会ったことがきっかけでヴァンパイアが実在することを知り、その魅力に心を奪われてしまったのだ。
しかし、残念なことに今世界にいる多くのヴァンパイアは到底、知的とは言い難い、醜く、荒々しい化物だ。 

ここにいるローズも私もそんな現状を憂慮している。本来、ヴァンパイア達は彼女のように美しく、神に等しい崇高な存在であるべきなのだ。」

伯爵は、揚々と演説を続ける。ローズは黙っていたが、その目はまるで品定めをするようにマリアに注がれている。

6カサブタ:2012/03/06(火) 23:03:47
「私は、恥知らずなヴァンパイアが増えている原因の一つは、彼らを統率する存在がいない為だと考えている。 そこで私は彼女に提案したのだ。本当にヴァンパイアに変える価値のある者だけを選定し、その者達でいわゆる支配層を作ろうとな。

では、その価値ある者たちの基準とは何かと考えた時、私とローズは一つの結論に達した。
人の生血の中でも最高の質を持つ者たち・・・。すなわち若い娘こそが相応しいと考えたのだ。
そう、例えば君のような・・・。」

マリアは衝撃を受けた。 私の血を吸うことが目的ではなく、私を仲間にするのが目的だったなんて。

「古今東西の吸血鬼に関する物語では、処女が犠牲になることが多いのは知っているね? それにはちゃんとした理由があるのだよ。
純潔な娘は生命の根源に近い存在。
我々、ヴァンパイアの生命の力は質のいい純潔な娘の生き血をいただくことによって、より長く生き長らえることができるのだ。 そして同様に、女性がヴァンパイアに変わると、総じて強い魔力を持つことが私の研究により分かっている。 美しく汚れのない体こそ、強い生命力が溢れ、ヴァンパイアの素体として絶好なのだよ。

今夜のパーティは町の娘たちの中でも一際美しく芳醇な血を持った者を選定するために開いた。
そして、君は並居る美しい少女達の中から見事に選ばれたのだ。
光栄に思っていいぞ・・・ふふふッ

しかし、本当は君の美しい姉を招待した筈なのだが、どういう因果か君が来てみたら姉以上に優れた資質を持っているとはな。 どうやら君は運命に導かれたようだ。」

それを聞いたマリアは毅然とした態度でいいかえした。

「だったら何なのよ! わたしにこんな思いさせるなんて、許せない!!
何が運命よ!! 早くお家に返して!!」

「ここまで聞いてもなお物怖じせんか。 なんて聡明なお譲さんだ。
君はきっと素晴らしいヴァンパイアになるだろうよ。・・・ふははは!」

「バカにしないで!! 私は貴方と違って貧しい家の出だけど誇りはあるわ。
吸血鬼になんか絶対になるつもりは無いわ。」

「そうか・・・、ならばよかろう・・・。 まずは君にヴァンパイアになることの素晴らしさを教えてあげるとしよう。 ローズよ、任せてもいいかな?」

「はい、わかりました伯爵さま」

キルシュ伯爵の隣にいたローズという黒マントの女は、フードをあげるとマリアを見たのだった。

「・・・・・」

フードをあげたと同時に、ローズの長い髪の毛がサラサラとなびいた。
腰まであるそのしなやかな黒髪は、美白の肌とあいまってとても美しかった。
そして美白肌の顔は化粧をしているのだろう・・・目蓋を紫色に染め、口唇はまっ赤に塗っていた。
年の程はマリアの姉と大差無いように見えるが、その化粧のために妖しい美しさが漂っている。
憂いを含んだ暗い表情は、その神秘性をいっそう際立たせていた。
闇の誘惑に魅せられた者の美しさだ。

「マリア・・・。あなたはここで儀式を受けるのよ・・・。そして私達の仲間になるの・・・。」

女はマリアの瞳を見つめはじめたのでした。

「いけない・・・」

マリアは身の危険を感じたのですが、時既に遅し・・・体が金縛りにあって動けなくなったのでした。

「うふッ、恐がらなくていいのよ、マリア」

ローズの瞳はまっ赤に充血して口唇からは大きな2本の牙が伸びてきたのです。
そして妖しく微笑みながら、マントの裾を掴んで両手を広げてみせました。
なんと黒マントの下は全裸だったのです!

7カサブタ:2012/03/06(火) 23:05:26
病的なまでに白い彼女の肌は、月明かりを帯びて青白く不気味に輝いていました。

「うふッ、かわいらしい子。あなたがあんまりカワイイから
もうこんなに濡れてきちゃったわ…。」

ローズは股間に手を宛てがうと、マリアの目の前で陰部を拡げて見せた。
そこは彼女の白い身体の中にあって彼女の唇に負けず劣らず赤く輝いており、溢れ出た汁でしっとりと濡れていました。

「な・・・何をする気なの?」

マリアはまだ強がって見せますが。自分に迫ってくる不気味な女に恐怖を隠せないでいました。

「ふふふッ、流石に自分と同じ女に犯されることには戸惑いを隠せまい。
安心しろ。彼女は並の男とは比べ物にならないくらい女の悦ばせ方を知っている。
ローズよ。この娘をおまえの虜にしてやるがよい!」

「うふふふ・・、言われずとも・・・、 こんな可愛らしい子を目の前にしては、私の疼きも抑えようがありませんわ。」

ローズはマントを大きく広げると、そのまま覆い被さるようにマリアの身体を包み込み、抱き竦めました。

「きゃああっ!!」

黒いマントがマリアの身体を隙間無く巻き込み動きを封じます。ローズの肌がマリアに密着し、またその温もりと匂いはマントを通して、マリアの全身を包み込んできたのです。

「まぁ・・・、なんて滑らかなのかしら・・・。 それに温かいわぁ。 
とても若々しさに満ちて、いつまでも抱きしめていたくなるわ・・・。」

「あッ・・あ」

シュルル・・・サワ、 シュル・・・シュルル・・・

ローズが身体を上下に揺するたびに彼女の肌やマントが擦れあい、マリアの身体はぴくッ、ぴくッっと反応してしまいます。同じ女に、しかも吸血鬼に抱かれる、おぞましい状況だというのに最初に感じていた嫌悪感はだんだんなりを潜め、代わりになんともいえぬ気持ちよさを感じ始めました。

(なに・・・・・・、この感じ・・・・・・っ!! そんな・・・どうして私、こんな気持ちになるの・・・。)

マリアの身に今まで感じたことのない疼きが生じました。あそこから熱い汁が溢れてきてローズの身体にも飛び散ります。皮膚の上を伝って落ちる温かい液体に、ローズはマリアの心が傾き始めていることを感じとりました。

「い・・いや・・・・・・、 あぁ・・・。」

「うふふ・・・、すぐに慣れろとはいわないわ・・・。 ゆっくりと私の温もりに沈めてあげる・・・。」

ローズはまるで我が子を労るように優しくマリアを抱きしめ続けました。彼女の顔を引き寄せて自分の乳房の中に埋めると、マリアの震えはだんだんと小さくなって行きます。

マリアは精一杯の抵抗をこころみても体はもうローズの虜、豊満な美肉の誘惑にかないませんでした。我慢できなくなったマリアはとうとうローズの大きな乳房に頬を擦り付け乳首をくわえ込むと、
頭を左右に振りながら乳首を力強く吸っては舌で舐めあげたのです。

「あんッ・・いい・・気持ちいいわ・・マリア・・」

「んぁ・・・、ああ・・・っ わたしも気持ちいい・・・、もっと抱きしめてください・・・・・・。」

見た目は若い身体だというのに、ローズの赤い乳首の先からは濃い母乳がとっぷりと流れ出てきました。マリアはそれをごくごくと飲み込んでいきます。ですが乳房を口いっぱい頬張っても、そこから溢れ出るミルクを飲み込んでも、今のマリアには全然ものたりず、もっともっとローズの胸が、身体が欲しかったのです。

とうとうマリアはヴァンパイアの手に落ちたのでした・・・。

8カサブタ:2012/03/06(火) 23:09:40
3

それから2年後、日本にて

「ヴァンパイアとは孤独であり、永遠の愛のさすらい人・・・ヴァンパイア・キス」

わたしはいかにもありがちな映画広告から目をそむけると、
ミントの香るタバコの煙を胸いっぱいに吸い込んだ。
ふぅーッ!

「そうよね、ヴァンパイアほど魅力的で美しい存在はないものね! しかし・・・」

ここは東京は下北沢の一角にあるBAR渡来船。
わたしはこのBARの女船長で穂積みゆき。
もちろん船長っていっても、本物の船を操縦するわけではありません。
ちなみにこのお店は、かつて私の両親が経営していましたが、今は私が総支配人です。
店内は15、16世紀の渡来船をイメージしたつくりになっています。
女の子船員達(クルー)の制服は海軍のセーラー服風にできていて可愛く、
お客さまに大人気なのです。
常連客の中には、この制服姿の女の子を見たいがために通っている方もおられるらしいのですが・・・。

「ねー、カズ君!」

わたしの表の顔は女船長ですが、じつは裏の顔も持っているのです。

「ヴァンパイア・ハンター!!」

わたしの住む世界には「ヴァンパイア」はあたりまえのように存在し実在しているのです!
あたりまえのように存在すると言っても、裏の世界を知っている特殊な存在きりこの事実は知らないのです。
表世界の住人達にしてみれば「ヴァンパイア」という知識はあるのですが、
存在しているという事実はもちろん知りません。

わたしの職業である「ヴァンパイア・ハンター」はお祖母さん、母親、そしてわたしへと受け継がれてきました。
代々直属の女系に受け継がれてきているのです。

なぜ、女ばかりかって…? そりゃぁ、吸血鬼達は乙女の生血が大好物だからです。 自らの若々しい身体と生血をエサに吸血鬼達を誘き寄せて、油断したところを一気に突くのが我が家秘伝の猟法なのです。

とはいえ、別にヴァンパイア・ハンターだけがヴァンパイアを狩っているわけではありません。
世界中の宗教団体、特にキリスト、ユダヤ、イスラムといった教会には、公にはされていないものの大抵「化け物狩り」専門の戦闘集団を有しています。
その規模と戦闘能力たるや恐るべきもので、一国の軍隊にも匹敵すると言われています。

一方、ヴァンパイア・ハンターはと言うと、教会のような大きな組織に依存するわけでもなく、信仰する神がいるわけでもありません。
単純に日銭を稼いで生計を立てるため、もしくはヴァンパイアに対する私怨のために魔物狩りを営んでいる者達が多いのです。

前者が軍隊ならば、後者はいわば傭兵。 
依頼があればすぐに駆けつけて魔物をやっつけます! 

しかし、同業者だからといって仲がいいわけではなく、金のために魔物狩りをする私達を、教会は快く思ってはいないようです。
かくいう私もある事情から教会とは犬猿の仲なのですが・・・。

あと私達の仕事は、ヴァンパイアをこの世から抹殺(=存在をなくす)することを目的としてはいません。
教会のように大きな組織の中にはそれを目標としている所もありますが、我々はちょっと違います。
ハンターの仕事は悪さをするヴァンパイアをその都度討伐するという形になることが主で、表世界に生きる住人をいかにヴァンパイアの魔の手から守るかが問題なのです。

9カサブタ:2012/03/06(火) 23:13:30
ヴァンパイアは「永遠の若さ」を求めて、獲物の生き血や精気を吸うことにより、
この世に存在しつづけられるのです。その為には、あらゆる手を使って人間から「永遠の若さの源」を奪うのです。
それが「ヴァンパイアの意思」でもあるがゆえ、ヴァンパイア本体は人の形をしているとは限らないのです。

前回の事件がそうでした・・・。
ヴァンパイアの本体は黒いサテンのマント。
そのマントのなかに「ヴァンパイアの意思」が秘められていたのです。
事件の主犯だった黒百合は、まったくその事実を知りませんでした。
知りようがなかったからです・・・。

黒百合・・・、本名、黒川由里子は政界や経済界の重鎮も御用達の高級コールガールでした。
彼女は元々は普通の人間でしたが、このマントを羽織ったがために「ヴァンパイアの意思」に体が強く支配されて、女吸血鬼と化してしまったのです。
黒百合にとってみれば天から災が降り注いだようなものです。
女吸血鬼となった黒百合は、表の人間を無作為に襲っては「永遠の若さの源」を奪っていったのでした・・・。
どうしてヴァンパイアの本体が黒いサテンのマントに乗り移ったのか、また黒百合がどこでそれを手に入れたのかはわかりません。それは目下調査中なのです!

ただ心強いことに、こちらにはヴァンパイアの存在をいち早く察知できる切り札があります。
それはずばり「ヴァンパイアの意思」を感じ取ることができる仲間の存在です。
今ここにはいませんが、そろそろひょっこり顔を出す頃では無いでしょうか。

そして頼れるかは分からないけど中々役に立つ仲間がもう一人、もっともこいつは有事の時意外はまったくのダメ人間なのですが・・・。
前回の事件で彼を囮に使ったことが、わたしにとって間違いでないと考えたいですけどね。

「ね〜、みゆきさ〜ん。なに考え事してんの〜? 話に加わってよー。」

前回の事件ではかなり頑張ってもらったけど・・・、
わたしって男をみる目がないのかしら・・・(泣)。

わたしの目の前のカウンター席に座って、楽しそうにビールを飲んでる男ッ!

「美樹ちゅわ〜ん、お酌して〜〜。」

そー、こいつ。 カウンターを挟んで目の前に座ってるから嫌でも目に飛び込んでくるこいつ! 
こいつは飲めもしないのにお酒好きで、可愛い女の子さえいればどこにでもほいほい遊びに行く奴なのです。
最近、会社からリストラされたらしく暇なものだから、毎日うちの店に入り浸りだし・・・。
さっきから女の子船員(クルー)にあおられながら飲めもしないお酒を懲りずに飲んでるし・・・、みてるだけで頭痛が・・・。

「なぁーに美樹ちゃーん、さっきクルーのコに聞いて驚いたんだけどぉー。
最近、彼氏と結婚したんだってー!?」

「あー誰だー、カズ君にわたしが結婚したこと教えたのぉー!」

「ありゃ!?マジに結婚したんだぁー!おめでとーッ!!
えーとそれじゃあー、美樹ちゃんを祝してどーんっと俺がクルーみんなの分のビールおごちゃう!!」

「きゃーごちそーさま!ありがとうカズ君」

「えーとそれじゃあー、美樹ちゃんと彼氏・・・じゃなかった旦那さまの幸せにッ!乾杯ッ!!!」

「かんぱーい!!」

「ごくッ、ごくッ、ぷはーッ!最高にうまいっす!」

そんなお調子者のカズ君を見ていた みゆきが我慢できなくなったのだろう、嗜めた。

「ほらカズ君ったら、あんたそんなに飲めないんだから、ほどほどにしときなさい!(怒)」

「美樹ちゃーんの幸せのために、オレのんでるっす!だから大丈夫っす!オレも幸せっす!」

「はいはい!」

今までカズ君のことを心配してたあたしがバカだったか・・・はぁー!
まー酔っ払い相手にマジになってもしゃーないし。

「ところでカズ君、この映画広告はどうしたの?」

さっきカズ君がヴァンパイア映画を見に行こう!とわたしを誘ってくれたものでした。

「もちろん みゆきさんと映画みたいから映画館からもらってきたんですよぉー!
その広告には割引券もついているからぁー、お得なんですよぉー!
それにぃー」

意味ありげな視線を 私に投げかけるカズ君・・・。 も〜言葉なんて必要ないくらい下心丸出し。

はぁー!(ため息)

軽い眩暈を覚える みゆきだった。

10カサブタ:2012/03/06(火) 23:19:41
「こんばんはー」

おっと、あの声は・・・

「あら、いらしゃいアイ。今帰り?」

「そーでーす、みゆきさん。
あたし朝から何も食べてないの・・・だから、もーふらふらなのー。
みゆきさんの手作り料理で、体があたたまる美味しいもの食べたいなぁー」
ばたむ!

「ありゃ!?アイ、手作り料理ならお金を出してくれれば何でも食べさせてあげるわよ。
ただお店の入り口でへこまれても困るわよー!カズ君、アイんとこ手伝ってあげてやって!」

(私も少女時代は自分のボディーラインが気になってよく食事減らしたりしてたっけ。
母さんからは、食わないと力が出ないぞとか説教くらってたわね。)
みゆきは藍ちゃんの様子を伺いながらも、純情だった頃の自分を重ね合わせては苦笑いするのでした。

「アイちゃん、だいじょーぶー?」

よっぱらった赤い顔のカズ君が心配そうに藍ちゃんに声をかけました。

「あッ、カズ君」

「ほら、そんな所にいると他の人が通れないよ」

カズ君は優しく藍ちゃんを助け起こしました。

我らが「渡来船」のヒロインでありマドンナでもある吸血娘、水無月 藍ちゃん。
彼女は有名私立女子高、蓮見台女子高校に通う2年生のお嬢様。
学校では17歳で通っているのですが、ハーフ・ヴァンパイアなもので詳しい生年月日は彼女自身も把握していないのです。

実は彼女と私はかなり長い付き合いで、一時期一緒に暮らしてもいたのですが、彼女の希望によって現在は明大前あたりに一人暮らししています。
毎週火曜と木曜は学校帰りに駅前の劇場内の書店でアルバイトをしており、仕事上がりにちょくちょく顔を出してくれるのです。

そして、さっき言っていた我らが切り札こそほかならぬ彼女であります。彼女はヴァンパイアであることを生かして、私には到底出来ないことを色々やってくれます。
例えば、前回の事件の原因となったマントは彼女の魔力により封印され、厳重に保管されています。
もし、人間である私が触ってしまったら今度は私がマントに心を支配されかねませんが彼女なら平気なのです。
藍ちゃんの魔力は並のヴァンパイアとは比較にならない程強く、他のヴァンパイアの意思に支配されることはまずありません。

また、彼女はヴァンパイアの意志を感じることができます。これはハンターである私にとって非常に助けになる能力です。
なにしろ、人の中に紛れたヴァンパイアを見つけることは困難であり、大抵のハンターは犠牲者が出てから存在に気づくことが多いのです。
しかし、私は彼女のおかげで事件を事前に防ぐことができます。 まさに、ハーフ・ヴァンパイアさまさまですね。

11カサブタ:2012/03/06(火) 23:23:58
ここで「下級ヴァンパイア」について紹介しておきましょう。
下級ヴァンパイアにはハーフ・ヴァンパイアとレッサーヴァンパイアが存在します。
ハーフ・ヴァンパイア、もしくはダンピールとはヴァンパイアと純粋な人間の間に生まれた子のことです。
人間とヴァンパイアの血(悪?)を半分ずつ受け継いでおり、日中でも普通の人間と変わらず活動できる上に、ヴァンパイア特有の強い魔力も備えています。
 また、人間の子供であるためか、その多くは人間と友好関係にあるのです。
まさに藍ちゃんはヴァンパイアの血を受け継いでこの世に生まれてきました!

そしてもう1つは、ヴァンパイアに生き血や精気をすべて吸い尽くされた哀れな人間、
その残骸が生ける屍として生まれ変わったレッサーヴァンパイアがいます。
レッサーヴァンパイアになると知能が低く、欲望に歯止めがきかなくなり動物的な行動をとります。

下級ヴァンパイアは「永遠の生命」とはほとんど無関係で、
肉体が滅べばその人の意思も自然消滅します。
しかし下級ヴァンパイアはヴァンパイアの近くにいると(ヴァンパイアの存在を確認しなくとも)、
普通の人間以上の鋭い感覚で、その存在に気づきます。
レッサーヴァンパイアの場合は低知能ですので、すぐ近くにいるヴァンパイアの下僕となってしまいます。
ハーフ・ヴァンパイアの場合も、人間の血を受け継いでいるためか純粋なヴァンパイアに血を吸われた場合、意志をある程度支配されてしまうようです。

ちなみに、カズ君は前回の事件でハーフ・ヴァンパイアの藍ちゃんに初吸血されているため、レッサー化はしていないものの実質彼女の下僕なのです!


「アイちゃん、そのマントを脱ぐと少しは楽になるんじゃない?
オレがコート掛けにかけといとくよ」

「ありがとうカズ君、じゃあお願いね!」

そういうと藍ちゃんは胸元のリボン結びにしてあった紐を素早くほどくと、
「バサッ!」っとカッコよくマントを脱ぎ放ったのです!
「・・・・・」
(うぉー、かっちょえー!しびれるー!どよどよどよ)
その時、カズ君の心の中では歓声とどよめきがおこったのです(笑)。

カズ君は手渡された藍ちゃんの黒マントを何か思い出したかのように見つめたのでした。

「そういえば、最近は漫画とか映画でも吸血鬼が出てくるのが多くなったけど、
こういう黒マントを翻しているのって滅多にみないよなぁ…。」

そして何を思ったのか、いきなりマントの裾をつかむとおもむろに顔に押し当てくんくんと匂いを嗅いだのでした!

「はぅー、この匂いがたまらん!」

そういうとマントに頬づりするのでした。

「こりゃー、カズ君のへ・ン・タ・イ!!」

12カサブタ:2012/03/06(火) 23:31:46
藍ちゃんはマントの匂いを嗅いで喜んでいるカズ君を見て眉を潜めていたのですが・・・
そのうち何かをひらめいたのか、無邪気ないたずら娘の顔つきになると、カズ君を呼びました。

(うふッ、あたしのマントの匂いを嗅いで喜んでる人には、おしをきが必要だわね!
あたしは高貴なヴァンパイアの血を受け継いでるハーフ・ヴァンパイアよ。
一度血を吸った人なら、あたしの思い通りに操ることができるのよ!きゃは!
さあー覚悟なさい、へんたいさん)

「ほーらカズ君、あたしを見てごらん!きゃは!」

マントから顔を離したカズ君は、うっとりとほうけていたのですが。

「そうよ・・・、あたしの瞳をみつめるのよ・・・。私は君の”ご主人様”なんだからね」

するとどうでしょう・・・藍ちゃんの瞳が充血したように赤くなっていったのです!
そして藍ちゃんはカズ君を手招きしながら誘うのでした。
カズ君は夢遊病者のようにふらふらと吸い寄せられていきました。
その足取りは頼りなげでもありました。

「うぁ・・・っ!! アイちゃん・・・」

カズ君のズボンの中のモノはパンパンに膨れ上がって、
少し触れただけでもすぐに爆発してもおかしくない状態になっていました。

「おいでー、おいでー! あは!かわいいわね、カズくん」

たとえレッサー化しなかったとしてもヴァンパイアに血を吸われた者は眷属あるいは奴隷と呼ばれ、血を吸ったご主人様に心も身体も依存するようになります。
ご主人様に命令される、触られる、あるいはただ見つめられるだけでも、大きな快楽を感じ、ご主人様のいいなりにされるのです。 

しかも、これはご主人様と奴隷の性別が違うと更に顕著になるようです。 
いまのカズ君は藍ちゃんの暗示によってとってもエッチな気分にさせられ、いいように操られているのです。

「きゃは!やっときたわね! ささ・・・、他のみんなには刺激が強すぎるからこっちへいらっしゃい。」

藍ちゃんはカズ君の手を引くと、店の中から影になっている物置の方へ引っ張っていきました。
そして、暗がりに入ったところで藍ちゃんはいきなりカズ君のズボンのふくらみをわし掴みしたのでした。

「あうッ、アイちゃん・・・」

その瞬間、体に電気が走ったかのように一瞬びくッとしたカズ君でしたが、手は操られるように藍ちゃんの腰にまわり、制服の上からやさしく抱きしめたのです。

「そうよ・・・、そうやって私を抱きしめて。 やさしくだよ・・・?」

藍ちゃんもカズ君の首のほうに手を回すと顔を近づけて、
そーっと耳元で囁くのでした。

「あたしのお腹にあたっている、カズ君の熱くなったモノなぁーに?
あたしのマントの匂い嗅いで発情するなんて・・・信じられない!
この変態やろう・・・」

藍ちゃんはそういうと、カズ君の手からマントを奪い返しました。
そして、それを再び羽織ると、自分にすがりついているカズ君の身体をふわりと包み込んだのです。

「あ・・・っ、」

カズ君の身体を足元まで藍ちゃんの大きなマントが覆い込みました。そして同時に彼の鼻腔を甘い香りが満たしました。
マントから匂い立つ薔薇のような香りと、藍ちゃんが醸し出す初々しい女の子の匂いが混ざった香りです。 
密着した藍ちゃんの身体とマントから伝わる温もりと匂い。それに包まれたカズ君の興奮はどんどん高まっていきます。

「うふッ、でもあたしの匂いで感じてくれるなんて嬉しいわ! 
マントをクンクンするよりもこうやって直に嗅いだ方がずっといいでしょう?」

そういうとカズ君の首筋にキスをするのでした・・・。

13カサブタ:2012/03/06(火) 23:34:11
「あうぅ・・・っ!! あいちゃん・・・!!」

カズ君の身体に震えが走りました。藍ちゃんの唇はいじわるにも、この前血を吸われた時の痕をチュチュッ、と吸い上げたのです。
体中をジンと痺れさせる刺激にカズ君はへなへなと足元から崩れ落ちてしまいます。

「ふふふ・・・、この前は残念だったね? あんなに気持ちよくなってたのに寸止めされちゃって。
でも、あの時はああするしかなかったのよ。じゃないとカズ君は快楽と引換に心を失っていたもの・・・。」

カズ君はハッとします。あの時のおぞましくも気持ちいい感覚が蘇ってきたのです。

そうなのだ!オレはとんでもない経験をしていたのだ!!
実は恥ずかしい話、オレの童貞を奪った女こそ、女吸血鬼黒百合だったのだ!あはは(T_T)ぐすん。
偽りの愛でも肉体、精神ともに感じてしまったオレは、いつの間にかそれが快感になっていた。
女吸血鬼に犯され最後までイキたかったが、みゆきさんやアイちゃんのおかげで寸止めをくらったのです。
もしオレが最後までイッたとしたら、生ける屍と化して徘徊してさまよっていたはずだ。
それを考えると痛いものがあるが、だからといって寸止めも辛かった・・・相対する悩み・・・。
今ではその事がオレの癖になり、トラウマの1つでもある。

「まだうなされるんでしょう? なら私が慰めてあげようか?」

藍ちゃんの腕の力が強まり、マントがよりきつく巻きつきます。 
この状況・・・、あの時にそっくり・・・。カズ君の胸が高鳴ってきます。 
しかも、今マントで自分を拘束しているのは黒百合よりもずっと若い、ピチピチの女の子である藍ちゃん。正直今のドキドキだけでもあの時を凌駕しています。

「お・・・おれ・・・藍ちゃんになら・・・、何されてもいい。」

「嬉しい・・・、私はカズ君の命を取ったりなんかしないから、安心して溺れていいよ・・・。」

そして、とうとう藍ちゃんの指がカズ君のチャックにかかります。

14カサブタ:2012/03/06(火) 23:36:42
キュピーンッ!
「ハッ!! 不純で邪な密約の匂いがする!!」

「船長、急に何言ってるんですか?」

「美樹ちゃんっ!! ちょっとこの料理頼むね。」

みゆきはカウンターを飛び越えると、射るような目できょろきょろと店内を見渡した。

(ここにはいない!! となると・・・、)

みゆきは電光石火の早さで店の影にある物置に向かいました。そして、扉を開けると、思ったとおり二人の姿がそこにありました。

「み・・・みゆきさん・・・。」

「あ・・・姉御・・・、どうかご勘弁を。」

そこには二人してマントにくるまってなにやら乳繰りあっている男女の姿がありました。
床を見ると、脱ぎ捨てられたジーパンと汚いトランクスが・・・。
もうかなりヤバいところまでいきかけたのか、二人共額に汗が浮かび、息が荒くなっています。
みゆきはすぅ〜っと息を吸い込んでから、店全体が揺れるような大声で叫びました。

「こらァー!そこォー!ふざけてるんじゃねーぞ、てめーらッ!!」

カズ君と藍ちゃんは濡れ水をかぶったように、飛び上がりました!

「アイにバカ男!ここでそれ以上やったら、二度とこの店の敷居またがせないわよ!
ここはお酒を楽しんで飲むところであって、そっち系のいかがわしい店じゃないのよ!!」

ありゃまー、みゆきにしこたま怒られてしまったおバカな二人でした・・・。


再び 渡来船内

「ごめんなさーい、みゆきさん」

二人はみゆきの正面のカウンター席に座らされて反省していました。

悪い事をしたと思い、素直に謝った藍ではあったのだが・・・。

(ダイエットの最中だから普段より食欲旺盛なのはわかっていたのよ!
んッ、だけど・・・あたしって食欲を満たす方法って、アッチでもできちゃうじゃん!
そしたらお食事はアッチがメインでしちゃえば、ダイエットなんか気にしなくてもいいかも!
・・・てへッ!我ながらいい名案じゃーん)
真顔であった藍の顔がじょじょに緩みはじめ、しまいには口からヨダレがたらーっと。

「てへッ、えへへ!」

「ちょ、ちょっとアイちゃん。それヤバくない?」

カズ君に肩を叩かれ、ようやく正気を取り戻した藍は右手で口を拭った。

「ヤバー・・・(冷汗)」

気まずくなりながらも、みゆきを上目づかいでうかがう藍であった。

みゆきは温かい牛肉と野菜のトマトソース煮を皿に盛る最中だったのですが、藍の様子にあきれ返っていました。

「お前ら…、トマト塗れになりたくなければ暫くそこを動くな…。」

「「は……はい…」」

みゆきには藍が考えていたことが、どんな事なのがすぐにわかったようでした!
彼女は二人をじろりと見据えながら、近くに居た美樹を呼んだ。

「美樹ちゃん度々ごめん!私、ちょっとこいつらと地下室でお話ししてくるから!」

「は・・・はい!」

「あとの店番はよろしく頼む!」

「わ、わかりました船長!」

カズ君におごってもらった生ビールでほろ酔い状態だった美樹でしたが、
みゆきのただならぬ態度に、あっというまに酔いが覚めていくのでした・・・。

「痛ッ!うぎゃー」

「やめてー、みゆきさーん!!」

「うるさいわねー、ちょっとこっちおいで!」

みゆきは藍の右耳とカズの左耳をむんずとつかむと、ずりずりと引きずるように店内から連れ出したのでした。
美樹はふるえながらも、みゆきの後ろ姿に敬礼するのでした。
(ご愁傷さまです・・・アイちゃんそしてカズ君)

15名無しさん:2012/03/08(木) 03:46:21
4

昔、人間は夜が嫌いであった。
夜になると、暗い闇があらわれたからである。
暗い闇は、人間を恐怖へと陥れる。
その恐怖こそ、人間は死と同じ意味合いを持っていたからだ。
しかしある日、人間は火を手に入れた。
火は人間にとって大きな希望につながった。
火は夜の暗い闇を明るく照らし出してくれたからである。
それは人間が生きるうえで重要だった。

ここはキルシュ伯爵のお屋敷・・・。
まわりには、火の光も通さない漆黒の闇があたりいちめん包み込んでいた。
そんななか、闇に魅入られし1人の女が伯爵の寝室にあらわれた。

「おめざめなさい、伯爵さま・・・」

黒いフード付マントに身を包んだ女は、大きな木製の棺の前に跪いていた。
しばらくするとギギィーと鈍い音とともに、棺の蓋が静かに開いたのでした。
そこから充血したような赤い目をしたキルシュ伯爵が、上半身を起こして表れたのでした。

「うぅ・・・血がほしい・・・」

伯爵の厚みのある口唇からは大きな鋭い牙が2本伸びていたのです。

「ローズ・・・君の血が・・・ほしい・・・」

おさえきれない欲望の瞳で、女を見つめる伯爵。
女はそれを黙ったまま見つめると、立ち上がってフードをめくった。
それと同時に長い黒髪がさらさらとながれ、ほのかな甘い香りが伯爵の鼻腔をくすぐるのでした。
そして女は軽く頭を振ると、黒髪を1つに束ねて右肩から前に流したのです。

「ふふ・・・、いいわ。 ほら、お飲みなさい。」

ローズは静かに頭を右側に傾けると、左側の肩を伯爵へ向けるのでした。
伯爵はローズのうなじに顔を近づけると、大きな口を開いた!
真っ赤な口から伸びるするどい牙がローズの首筋にゆっくりと沈み、消えていったのだ。

「あぁ・・・、もう、そんなに欲張らないの・・・」

噛まれたときは痛そうにしていたローズだったが、
伯爵が血を吸うたびに恍惚な表情へとかわっていった。

「いい・・・気持ちいいわ・・・もっとよ・・・」

ローズは我慢できなくなったのだろう、じっとしてはおれず伯爵の股間をまさぐりはじめた。
伯爵のパンパンにはちきれんばかりの肉棒は、ズボンの上からでもその形が手にとるようにわかりました。
ローズはズボンのチャックから手を滑り込ませると、膨れ上がった肉棒を優しく撫ではじめたのです。
端正だった顔立ちの伯爵も次第に快楽の波に引きずりこまれ、
色白だった肌にもほのかに赤みがさしてきたのでした。

「あッ、あん。アナタも感じているのね!」

快楽に我慢できなくなった伯爵は吸血を一時中断して、
ローズをマントの上から強く抱きしめたのでした。

「わたしも伯爵さまに吸血されて、すごく感じているのよ。
ほら、わたしのアソコも伯爵さまに負けないくらいベトベトなんだから・・・うふッ」

そういうとマントを左右にひらいて、目の前にいる伯爵に自らの秘部をみせつけたのです。

「どうかしらわたしのア・ソ・コ。・・・ほら!」

ローズのそれは真っ赤に膨れ上がり、蜂蜜のようにトロトロした汁に濡れていました。

「君は実に淫乱な女だな…、淫乱で…、とても美しい……。」

伯爵はローズのヴァギナに手を伸ばし、ゆっくりとした指使いで弄びました。
陰唇に沿って上下に指先で撫で上げたかと思えば、クリトリスをつまんでみたり・・・
思いのよらぬ動きが、刺激となって彼女の女陰に快楽をあたえ続けたのです。

16名無しさん:2012/03/08(木) 03:48:11
「うッ・・うん!上手よ・・・」

そして濡れたビラビラの奥からは膣液が止め処なくどくどくと流れ出し、あちらこちら汚したのでした。

「こうやって軽く触っているだけで指が溶けてしまうのがわかる…。
これは少し皮膚に付いただけで人間を死に至らしめる猛毒の蜜なのだ…。
私は君がこの蜜で何人もの人間を蝋燭のように溶かしてしまうのを見てきたというのに、こうやって味わうのをやめることができん。
これも吸血鬼の魔性というやつか…?」

「うふッ、ひょっとしたら伯爵さまが変態なだけかもしれませんわ…。貴方も私に溶かされてしまいたいと思っているのではなくて?
ほら、貴方のアソコがもういやらしいお汁でいっぱいだわ!ズボンに染み出した我慢汁が、濡れてテカテカに光っているわよ!」

そういうとズボンの大きな染みを指ですくったのです。

「ほら、こんなに糸がひいてるわよ!」

親指と人差し指で我慢汁をもてあそぶローズであった。
伯爵の顔は紅潮して赤くなった。
もちろん吸血して赤くなっていたのだろうけど、それだけではなかった。

「久しぶりに伯爵さまのアソコをみせていただきますわね!」

ローズはズボンの中から伯爵の肉棒を取り出したのでした。

「こんなに大きくなっちゃって、ほらッ、ピクピクって引きつってるんじゃない、うふふ・・・!
もう、そんなにココに入れるのが待ちきれないのかしら?」

そういうとローズは自分の陰唇を、伯爵の亀頭に向かい合わせたのです。
濡れたクリトリスが鈴口にちゅくっ、と触れた途端に彼のペニスはますますビクビクと震え、溢れてきた汁で濡れるのでした。

「ううッ・・・」

まるで自分の意志とは無関係にペニスが疼いているようでした。体中がローズの魔力に侵されて彼女の中に還りたがっているのがわかります。

「どう伯爵さま?こんなことされてガマンできるかしらね!うふふッ!」

ローズは自分のマントの裾をつかむと、彼の肉棒に絡めていった。
そして滑らかな布地越しに肉棒を優しく撫でては、亀頭に刺激をあたえたのです。

「う…ぁぁ、ッローズ!! 素晴らしい……、
君の責めは…、何度味わってもたまらない……!!」

「ふふふ……、そういえば私が初めて貴方にお目に掛かった時からこのマントの虜でしたわね。」

「あぁ……、忘れるものか…、あの暗い地下墓地で、棺の中で眠る君を初めて見たときから私は変わった。以来、私は君を長い眠りから目覚めさせることだけを考えて日々を過ごしたのだ…。

度重なる実験の失敗で疲労し、眠りに落ちたあの冬の晩のことだ・・・
私の寝室に月明かりに光る黒いマントを纏った美しい女が現れた・・・・・・。

その女は私の召使い達を忽ち死に追いやり、私までも誘惑するような視線で舐めるように見つめてきた。私は恐怖した・・・!! 私も君に殺されると覚悟したのだ・・・。

だが、君は私を殺すどころか、死ぬ運命にあった私を救ってくれた・・・。私の血を吸い、眷属にしてくれたのだ・・・。その瞬間、私は恐怖以上に大きな感情が湧き上がってくるのを感じたのだ。
狂おしい情欲!! 羨望・・・!! 愛情・・・!!
私はこの美女の物になってももいいと思ってしまったのだ!!
これまでどんな女も自由に手に入れ、好きなように弄んでは捨ててきたこの私がだ・・・!!

人間の女では決して持ち得ない美しさを持ち…、いつまでも若くありつづける…。 まさしく“完全”っ! 運命の出会いとはまさにあのことだったのだ。」

17名無しさん:2012/03/08(木) 03:55:10
そこまで話したところで、ローズは彼の唇を自らのそれで塞いだ。

「ふふふ・・・、いつにも増して口が多いですわよ、キルシュ坊や? 貴方を吸血鬼に変えてあげたのはこの私。 本当なら死せる運命だった貴方を生かしてあげたのはこの私なのよ。
人間相手には尊大な貴方も私にとってはただの従者。 よもやお忘れになどなってないでしょうね?」

「ううぅ・・・。 ローズよっ!!  一体いつになったら君は私を同等とみなしてくれるのだ?
私は君の心が欲しい! 君を本当に愛しているのだっ!! 私は君の物になりたい!! 永遠に君を妻としたいのだ・・・!!」

「ええ、存じていますわ・・・。私自身、長い眠りから醒ましてくださった貴方のことを特別だと思っていますもの。
でも、貴方の願いを叶えてあげるのは私の悲願が叶ったその時ですわ。お忘れになっていませんわよね?」

「無論だ・・・。私は君の願いを叶えるためにこれまで手を尽くしてきた。
そのために、君の“城”を作り、良い血を持つ処女を選りすぐり、儀式の為の生贄として君に提供してきたのだ。」

「感謝していますわ伯爵さま・・・。貴方のおかげで今までの黒ミサは成功続きですわ。
それに、あの忌々しいハンターに邪魔されていた最後の儀式もまもなく準備が整います。おそらく次の満月の夜くらいには・・・。」

「なにっ!? もうそんな段階まで来ているのか? 次の満月には私も完全な存在に変われるのだな?!」 

ローズは肉棒をしごく手を早めました。

「うぅっ!!」

「ふふふ・・・、ついつい話し込んでしまいましたわ。
私たちは今、夜伽の途中でしたわね・・・。詳しいことはあとでゆっくりと話しましょう。
今は楽しんでくださいな・・・。」

バサァァァッ!!

ローズはマントを大きく広げると、そそり立つ伯爵の肉棒の上に腰を持ってきました。
そして、猛毒の蜜が滴る肉の華の中へ伯爵のペニスを呑み込んでいったのです。

ヌププ・・・、ヌプン・・・ヌブブ・・・・・・

「うッ・・・!!
ううッ・・・あぁ、 体が・・・熱い!! い、イキそうだ・・・!! 」

「いいわよ、イッっちゃっても!わたしの中ににいっぱい貴方の熱い命を注ぐのよ!!
一滴残らず絞り上げてあげるわ!! うふふッ、死んだとしてもまた生き返らせてあげるから
怖がらずに溶けておしまいなさい。」

ローズは彼に跨ったまま身体をマントで包み込むと、腰をゆっくりと揺らしながら肉棒を搾り上げていった。

「うぁ・・・っ!! おぁぁ・・・!!」

びゅるる〜〜 ぶびゅるるるっ!!

亀頭がぐりぐり膣の内壁と擦れあううちに伯爵のペニスは射精をむかえ、大量の白濁液がローズの子宮へと流れ込んでいく。
普通ならとっくに精液が途切れる時間が過ぎてもその勢いは衰えることは無く、彼の精は止め処なくどぷどぷと流れ出て行った。

18名無しさん:2012/03/08(木) 03:59:31
「ん・・・、はぁ・・・。 おいしいぃ・・・!!」

精液を飲み込む度に、ローズは自らの乳房を揉みしだきながら身体を捩らせて感じていた。
新鮮な命のエキスを搾り取るのは彼女の最大の愉悦だ。若い男たちの精を枯らす度に彼女の身体はますます瑞々しさを増し、美しく妖しく輝くのだ。 

「貴方の精はやはり格別ですわ・・・。お礼に私もぶっかけてあげる・・・。」 

ローズが一際強く胸を寄せ上げると、そこから大量の乳が迸った。

どびゅるるるる〜〜〜!! ジュバジュバジュバァァ〜〜〜

伯爵が漏らした精液などまるで比較にならないくらい、ローズの乳は生白く濃厚でまるで練乳のような粘度を持っていた。
おまけに量も桁外れで、激流のような勢いで伯爵の寝る棺桶の中を満たしていった。

「うぅ…!! ああぁぁ…っ!!!」

ローズの乳から吹き出たミルクが伯爵の身体をどんどん白く汚していく。
大量の濃いミルクは彼の顔や胸にまで当たって弾け、まるでパイでもぶつけられたように頭をドロドロの粘液で覆い隠してしまった。

そして、白い乳液はたちまち伯爵の服を溶かし、ついには彼の体までもドロドロに溶解しはじめた。
皮膚が溶け、 内蔵が溶け・・・、 溶けた体は下腹部に溜まり、精液のように股間から吹き出し続ける。 伯爵は溶けていきながら延々と続く射精の快楽に狂い続けていた。

「うああぁ・・・・・・ ああぁぁ・・・・・・と・・・ける・・・ とけ・・・・・・。」

じゅぶぶ 、べちょ・・・ どくどくどく・・・・・・

「うふふふ・・・、今のその身体もそろそろ綻びが出てくる頃よ。
とろとろに溶けなさい・・・。そして私のお腹の中でまた新たに生まれ変わりなさい・・・。」

「うぶ・・・・・・、おぁ・・・・・・ うくぅ・・・・・・・・・」

びちゃびちゃびちゃ・・・・・・ どろどろどろ・・・・・・・
ヌプププ・・・・・・、ジュルジュルジュルルゥ〜〜〜〜

ローズの乳と粘液に溶かされ、伯爵の身体はどんどん形を失い小さくなっていった。
最後には身体は萎んだ風船のようにペラペラになり、それすらも溶けて彼女の膣の中へと没してしまった。

クチュ・・・、クチュ・・・、 クチュ・・・・・・ 

「ん・・・はぁ・・・ん、 よしよし・・・・・・ボウヤ・・・、そんなに暴れないの・・・。
すぐにまた産み落としてあげるからおとなしくするのよ・・・・・・、ああぁ・・・ああん・・・っ!!」

バサァ、 ブワサァァ・・・

自分の身体に濡れたマントを巻きつけ、少し大きくなったお腹を抑えながら、闇の美女はくねくねと身体をうねらせ、悩ましい声を漏らす。

「ああ・・・、おおぉ・・・、ん・・・、はぁっ!! あああぁぁっ!!!」

バサァァァッ!!

そして、大きく身体をくねらせたかと思うとマントをめいっぱいに広げ、腰を突き出した。すると、吸い残しの精液と粘液で濡れた彼女の膣から、ズルリと何かが産み落とされ、ドロドロのミルクで満たされた棺桶の中に落ちた。

「はぁ・・・はぁん・・・・・・、んふ・・・っ うふふふふ・・・・・・!!」

息を落ち着かせた彼女は棺桶の中の物をいとおしそうに見つめた。
そのミルクの海の中には、大きさが卵くらいの胎児のような物が蠢いていたのだ。 
いや、胎児と呼ぶにはあまりにおぞましいそれはまるで母体の中から無理やり取り出されたように不完全で、手足の無い水蛭子のようだった。 
そしてその顔は歪な形に歪んでいるもののキルシュ伯爵そのものであり、言葉にならないうめき声を上げつづけていた。

「ふふふ・・・、これで何回目の誕生かしら・・・? 覚えているかい? キルシュ坊や?」

ローズはその胎児を両手で掬い上げると、自分のマントでその身体を包んで胸に抱いてやり、その小さな口を自分の乳房へと持っていったのだ。
小さな伯爵は母の乳を吸うように濃厚なミルクをのみはじめた。

19名無しさん:2012/03/08(木) 04:05:16
するとどうだろう。 卵のように小さかったその身体は、つい一刻前に身体を溶かしてしまった筈の乳を飲む度に大きくなり、だんだんと元の伯爵の姿に戻っていったのだ。

普通なら、ローズに溶かされた人間は彼女の血肉と化し、二度と元の姿に戻ることはない。
だが、ローズにとって有益な人間であるキルシュ伯爵に限っては、一度殺された後、例外的に新しい身体で再生させてくれたのだ。 
ローズの母胎の中で作られた身体は、吸い取った人間の精から作られたホムンクルスである。

通常のレッサーヴァンパイアと違い、理性を失わず、生きている人間と見た目にも遜色が無い上に、純粋なヴァンパイアと同等の魔力を行使できる。
しかし、その代償にその身体は非常に不安定であり、長い間形を保つことはできないのである。
伯爵は身体にガタがくる度にローズに溶かしてもらい、また生み出してもらうということを繰り返しているのだ。

「ふふふ、お目覚めかしら伯爵様? 今度の身体の調子はいかが?」

ローズはまだ足元もおぼつかない伯爵の身体を抱いたままやさしく微笑んだ。
フード付きの大きなマントで裸の男の身体を包込み胸に抱く姿はさながらマリア様のようではあるが、彼女のその姿は聖母に例えるにはあまりにもおぞましかった。



それから数時間・・・。
伯爵はすっかり元に戻り、秘め事を終えた2人は別室でくつろいでいた。
伯爵が着ていた服はローズのミルクによってもう原型をとどめておらず、彼は別の服に着替えていた

「時にローズよ、マリアの調子はどうだ? 日本に留学させてから随分たつが。」

「伯爵さま。マリアは中々頭が回る切れ者ですわ。狙った獲物はほとんど逃がしません。
さすが伯爵さまが目をつけた小娘だけのことはありますわ!」

伯爵は氷の入ったグラスにブランディーを注ぐと、軽くグラスに入った液体をまわした。

「そうか、マリアは使えるか! くくく・・・、本当はあれではなく美しく聡明な姉の方が候補だったのだがな。マリアは思わぬ収穫だったようだ。」

「ふふ、姉のエレナの方もなかなか手際がいいですわ。毎晩1、2名の人間がエレナの犠牲になっております。
ただ彼女は手加減をまだ知らないので、欲望が満たされるまでは暴走するのですが・・・。
わたくし共々、その点は困っているのです・・・」

「まーよいではないか!エレナに群がる奴らが悪いのよ! ところで、成果があったということは例の娘が見つかったということだろう? 
ということはつまりこの村もそろそろ用済みということだ。いっそエレナにやってしまっても構わんだろう。」

「そうですわね・・・うふッ。 これからもっと広い狩場が必要になりますわね。
伯爵様の贈り物がいよいよ役に立つ時がきたのですわ。」

ブランディーを口に含みながら、妖しい笑みをうかべる伯爵。ローズは彼が座るソファに腰掛け彼の身体にしなだれかかった。
伯爵は彼女の肩を引き寄せると、軽くキスを交わしあった。

「で、だ。 娘は一体どこにいるのだ」

「ふふふ・・・、日本ですわ伯爵さま。 前に貴方が会見の為に訪日した際、黒百合という娼婦を私に味わわせてくださったでしょう? 
先日彼女が襲ったある男の中に“あの子”の血を感じましたの。
私は早速、黒百合にその男を襲わせてあの子をおびき出そうとしたのだけど、残念ながら例のハンターの手で黒百合は滅んでしまいましたわ。 
でも倒される瞬間、確かにあの子の姿を見ましたの。驚いたことにハンターといっしょになって黒百合と戦っていましたわ」

「ほう・・・、君を苦しめるあのハンターと娘が仲間か。 おもしろい・・・。 で、居場所は?」

「黒百合が倒されたのは東京の世田谷区内。でも、そこに住んでいるとは限りませんわ。たまたま黒百合を追ってきただけなのかも。」

それを聞いて、伯爵はほくそ笑みます。

「ローズよ、確かそこはマリアを向かわせた学校からも遠くないな? さては彼女を留学させたのは娘を捕まえる為か?」

「最終目的はそうですが、少し違いますわね。マリアは稀に見る逸材ですけど、さすがにアイの力には敵いませんわ。
あの子に近すぎると気配を察知されてしまいますもの。マリアには別の仕事を頼んでいますの。それこそこの計画の為に重要な仕事を。」

すると、ローズはマリアの動向と計画の骨子について伯爵に話始めた。

「くくく、なるほど・・・。 君はいつも手が早いな。 
私もうかうかしてはいられない。すぐに訪日の準備をはじめなければ。」 

「よろしくお願いしますわ! 私たち二人が君臨するユートピアの実現のために!! ほほほほッ!!」

暗い闇夜に大きく真っ赤に輝いている月の光は、2人の影を妖しくうつしだしていたのです・・・。

20名無しさん:2012/03/08(木) 04:11:23
5

「渡来船」の地下室は、お店の従業員でも滅多に出入りしない場所であった。
いや出入りしない場所ではなく、したくても出入りできない力が働いていると考えたほうが、
わかりやすいのではないだろうか。
それは裏の世界を知っている特殊な存在きり出入りできない空間だったからです。
その為か、お店の従業員でも「渡来船」の地下室があることを知っているのは、
穂積みゆきと北原美樹だけなのです。

地下室は中世ヨーロッパのお城の一室のような部屋でした。
部屋の大きさは、地下室にしてみれば結構広い空間でした。
そして部屋の中央には、ドラキュラが愛用してるような木製の棺がおいてあり、そのためか部屋は狭く感じられ、異様な雰囲気が漂っていたのです。

カズこと、早瀬和也 は みゆきに案内されてこの地下室を訪れるのは2度目となった。
初めて訪れた時もそうだったが、この部屋に入ると緊張して変な胸騒ぎがするのでした。
(それにしても、左耳が痛てー!)
みゆきに左耳をつかまれ引きずられながらこの部屋についてきたので、
まっかっかに腫上がってしまったのでした・・・。
カズは耳をさすりながら部屋見渡すと、同様に藍も泣きべそをかきながら右耳をさすっています。

「みゆきさん!確かにお店でアイちゃんといちゃついた事については謝るよ!だけれどもこの仕打ちは・・・」

「カズ!おだまり!!」

間一髪、みゆきから返事がかえってきた。
みゆきはセーラー服のポケットからバージニアスリムを取り出すと、1本口にくわえた。
そのタバコをジッポで火をつけると、煙を胸にいっぱい吸い込んだのでした。
ふぅーッ!
その時、みゆきは何かを考えていたのだろう・・・タバコの煙を吐き出したとき、その考えが決意にかわったのです。
そして話しました。

「2人ともこれからわたしが話すことをよくきいてちょうだい!
イチャつくのは構わない。 だけど、節度をわきまえなさい!!
アイには欲望に左右されない、誇り高い愛のあるヴァンパイアになってほしいの!
もしアイが欲望のうずまく黒い闇に心を奪われたなら、わたしはヴァンパイア・ハンターの名にかけてあなたを手に掛けなければならないわ・・・」

「ちょ、ちょっと待った!!
ってことはアイちゃんが黒い闇の世界に支配されちゃったら、あの年増女の黒百合みたくエッチになちゃうわけ?」

「”エッチになっちゃう”? ほほぅ・・・、
男を暗がりに連れ込んで、子種を絞り取ろうとするような状態でもまだエッチじゃないと?」

「いや・・・、それは」

「今ならまだその程度で済むかもしれない。 でもアイがヴァンパイアであることを忘れちゃいけないわ。
アイだけでなく多くのハーフヴァンパイアは個人差はあれど性に対して奔放だと聞くわ。これは吸血鬼の本能に起因する部分が多いの。 

ヴァンパイアにとって性交渉は獲物を狩ること、つまり吸血行為の延長線上にある。 
ああいうふしだらな事をなりふり構わず行っていると、そのうち欲望に歯止めが効かなくなるわ。

吸血鬼としての動物的本能が目覚めて、永遠の若さを求めて手当たり次第に獲物を追い求めては生き血をすすり、そして偽りの愛で精気を貪り尽くすの。
そしてボロボロになって死んだ人間は、生ける屍、レッサーヴァンパイアとして生まれ変わり他の獲物を襲うのよ!
カズは1度経験してるからわかるでしょう!」

「う・・・それは・・・」

「・・・・・」

藍は無口のままうつむいて、二人の会話をきいていた。

21名無しさん:2012/03/08(木) 04:15:11
「わたしとアイは昔、あるきっかで強い絆で結ばれたの・・・今は時間がないから詳しいことは話さないけど。
しかしこの事を口にしたのは、カズがはじめてなのよ・・・」

(ずっしり!なんかオレすごい重荷を背負わされちゃったみたい・・・。みゆきさん、オレの気持ちは・・・)
どんよりとした湿気のある空気が室内にただよった。
そんな空気を打ち消したのは、今まで無口でうつむいていた藍であった。

「偽りの愛なんかじゃないもん・・・・・・。」

藍は下を向いたままボソッとつぶやいた。その言葉にみゆきも和也も彼女の方を向く。すると今度は藍は二人の方をまっすぐに向いて話し始めた

「みゆきさんの言う通り、さっきのは確かに軽率だったわ・・・。 
でも私、あの時カズくんのことを単に性欲の対象として見てたわけじゃない。 
私、誰彼かまわずあんなことしないわ。相手がカズくんだったから、ちょっと変な気持ちになっちゃっただけだもん・・・。 

だってカズ君のこと好きだもん!! 好きなひととならついエッチなことしてもいいって思っちゃうのは当然でしょ? 
カズ君といっしょに気持ちよくなりたいと思ったから・・・。」

「ストップっ!! よくわかったからそこまでにしなさい!!」

「みゆきさん!! 私これでも真剣に話してるのよ?」

「わかってるわよ・・・、問題はそこじゃなくて・・・。」

みゆきは横に目配せする・・・、藍もそっちを見ると、思わずあっ!! と叫んだ。

「あ・・・あい・・・ひゃん・・・。ぼくのこと・・・・・・そんなに・・・」

ぼ〜っと藍を見つめて立ち尽くす和也の鼻からボタボタと鼻血が滴っていたのだ。
既に足元には大きな血溜まりができつつある。

「カズ君!! ちょっと、大丈夫?」

「貴女の気持ちは純粋なんだろうけど、こいつの頭の中では全部いやらしく変換されちゃうの。店の床が汚れるからこいつのスケベ心を刺激しないでちょうだい。」

カズ君はそのまま、貧血で倒れそうになったところを二人に介抱されました。

・・・・

「みゆきさん。あたしあなたの希望に添えるようなヴァンパイアになれるかわからないけど、努力してみる。 
カズ君が私の手でレッサーになるのなんて嫌だもの。」

なんとか落ち着いたカズの頭を撫でながら藍は言います。

「そうね、その考え方は賢明だわ。貴方が気をつけていてもカズがこの調子じゃね。
勝手に鼻血出して失血死して、ヴァンパイアになっちゃったらやりきれないし。」

「そこまでいわなくても・・・。」
 
「しゃべるな、寝てろバカ男!! 
ま、それはそうと貴女自身もまだヴァンパイアとして未熟だし、ヴァンパイア・ハンターとしての腕前もまだまだだし、修行が必要だけどね。」

「ぶーッ!!そこまでいうことないぢゃん!!」

「だって本当のことでしょう?それに初めて吸血した相手ってカズだったんでしょう!?
ちょっと男の趣味も問題ありすぎて心配だわ。」

意味ありげな視線で、藍をみつめる みゆきであった。

「えッー、オレがアイちゃんのファーストキス・・・じゃなかったファースト吸血の相手なのー?」

藍の顔が一瞬にして真っ赤になってしまった。
そんな藍の初心な姿に心温まるみゆきであった。 でも、だからこそ厳しくしなければならないとみゆきは改めて思うのだった。
この純粋な笑顔を守る為に私がまだまだ教えてあげなきゃならないことは多いのだ。

22名無しさん:2012/03/08(木) 04:19:11
「それでは2人に試練をあたえるわよ、まずはカズ。
さっきあなたはわたしにヴァンパイアの映画を見に行こうって誘ってくれたよね。
その気持ちは嬉しいわ、素直に受け取ってあげる。
だけどカズは前回の体験(ヴァンパイアに肉体を弄ばれた)での興味本位からのお誘いなんでしょう?」

(ずさーッ!みゆきの姉御はそこまで気づいていたのか・・・お、男のロマンが崩されていくー・・・む、無念!)
そういうと みゆきはカズの瞳を見つめながら話したのでした。

「くすッ・・カズ、あなたはそんな安っぽい男になってはダメ。
もっと自分に自信を持って生きてほしいの!その為には強い理性と優しさが必要よ!
そしてアイが暗黒の闇に堕落しないようにサポートしてあげてほしいの!!」

オレは吠えた!

「うぉーッ!オレはカズ、男の中の男だぁーッ!やってやるぅーッ!!」

「くすッ、やっぱりカズって単細胞な男ね!」

みゆきの姉御には弱いカズであった。

「そしてアイ、あなたは自分自身のことをしっかりと受け止めるの。
自分を知る事が一番大事なことよ!自分というモノサシをしっかり持つの!
そうすると自分の行くべき道は、おのずと開かれてくるはずだわ!」

そういうと みゆきはタバコの煙を吸い込むと、短くなったタバコをもみ消した。

「わたしがあなたたちにアドバイスできるのはここまでよ。
これからは自分達が自分の意思でしっかり進みなさい!」

(ヴァンパイアハンターのわたしが、ハーフ・ヴァンパイアのアイに教育するなんてね・・・
表世界の住人を守る為には、致し方ないことだものね(苦笑))

「ま、そんなわけで…、藍、急な話だけどちょっと一週間ばかり店に入ってくれない? 寝泊まりは私の事務所を使っていいから。」

「「へ?」」

みゆきは大きなカバンを取り出すと呆然と立ち尽くす2人を尻目に、地下室にある一見ガラクタにしか見えないものを自分の鞄に詰めていた。

「あの…、みゆきさん? そのカバンは一体。」

「ああ、この中に私の着替えと非常食とパスポートが入っているわ。
その他もろもろ、必要なもの。」

「いや…、そうじゃなくて…。旅行にいくなんて聞いてませんけど……。」

みゆきは手を止めて、真剣な表情で言った。

「旅行じゃないわ。 事件(ヤマ)よ。 それもとびきりビッグな…。」

みゆきの言葉を聞いて2人は思わずゴクリと唾を飲んだ。

「ちょっと前に知合いの情報屋から連絡があったのよ。 ヨーロッパの田舎でね、人を襲う魔物が出ているらしいの。 しかも、そいつはかなりの大物で力もハンパじゃないらしいの…。」

みゆきは一旦言葉を切ると、アイの方を向いて言った。

「事件の発生場所はハンガリー北西の寒村、ホロウ・クイよ。 私と貴女が出会った場所もかなり近いわね。」

それを聞いて藍もハッとしたようだ。カズにはその意味を伺い知ることはできなかったが、二人にとって何か深い因縁のある場所なのだということは予感できた。

「みゆきさん・・・っ!! 私も行きます!」

「だめよ!! 今回は貴女は連れていけない。 カズといっしょに留守番してて。」

「私はハンターでみゆきさんのパートナーなんですよ! 
それに・・・、このことは私の手で決着をつけたいんです。お願いですから連れていってくださいっ!!」

「藍・・・、気持ちはわかるわ。貴方には戦う理由がある・・・。でも、わかって。
敵がもしあいつだとしたら貴女を近づかせるわけにはいかない。もし貴女があいつの手に落ちたら大変な事になるわ。 わかるでしょう?」

「でも・・・・・・。」

23名無しさん:2012/03/08(木) 04:21:59
みゆきは藍の側に寄ると、そっと抱き締めた。

「もう貴女は一人じゃない。わたしだけじゃなく、お店のみんなや、学校のみんなや、それにカズだって・・・、貴女を思う人たちは沢山いる。
貴方にもしものことがあったら皆を悲しませることになるわ。
ハンターとして皆を守りたい気持ちはわかるけど、でも抑えて・・・。 相手は貴女にとって危険過ぎるのよ。」

「・・・・・・・・・。」

藍はもう何もいいませんでした。

「藍、貴女にこれをあげる、お守りよ。」

そういうと、みゆきは藍の首にペンダントのようなものをかけた。金属製で少し錆びており六芒星を象ったものだった。

「みゆきさん・・・、それなに?」

「今からこの店に我が家秘伝の防御陣を施すわ。これでヴァンパイアはこの店に一歩も踏み込めなくなる。
もちろん、このままじゃ藍にも悪影響があるけど、そのペンダントをつけていれば貴女にはまじないが作用しなくなるわ。」

そして、みゆきはカズと藍の両方を見て言った。

「いい? カズも良く聞いて。 私は行くけど、その間にこちらで何か起きないとも限らない。
前の事件でわかったろうけど、吸血鬼は気付かないうちに紛れ込んでいるものよ。

さっき私が言ったことを良く噛み締めて!! 何があっても絶対に闇の世界に堕ちてはならないわ。
いざというときはこの店に来なさい。ここにさえいれば奴等の手を逃れられるわ。」

「わ…わかったよ、みゆきさん……なんかよくわからないけど頑張ってみるよ。」

カズの表情に強い決心を感じたみゆきは、安心したように微笑むと大声で二人に言った。

「よーし! そんじゃ、ちょっと言ってくるわ! 二人とも店番よろしく!!」

みゆきは、地下室から出ると美樹や他のクルーたちに声をかけて、しばらく休養を取ることを伝えた。
そして、さっき集めたガラクタのうちいくつかを店のあちこちに置き、小さく十字を切っていた。
どうやらこれが、ヴァンパイア用の防御陣のようだ。

そして、その仕事を終えたあと、軽く挨拶をして一人店を出て行った。
後にはカズと藍だけが残されて、しばらくの間その場から動くことができなかった。

「アイちゃん・・・。」

「みゆきさんのバカ・・・、 みゆきさんがいなくなっても悲しむ人は大勢いるのに・・・。」

24カサブタ:2012/03/08(木) 23:56:20
私がまだハンター見習いだった頃・・・。
私は束縛されることが嫌で世間に反抗し、親に反抗し、そして自分自身にも反抗した。
若さゆえの無知無謀が自分自身をそう駆り立てたのかもしれない。
その時の私は自分に力さえあれば束縛されることから逃げ出し、自分の宿命であるヴァンパイア・ハンターの道を替えることができると信じて疑わなかった。

「ちッ、逃げられたか!」

《生命(いのち)の宝珠(たま)》を天高く掲げた梨香(りか)は、ひるんで膝をついていたみゆきに声をかけたのだった。

「みゆき、しゃっきっとしなさい!!その扉からヴァンパイアが逃げたわ!!急いで後を追うのよ!!」

ヴァンパイアの下僕となって襲ってきたレッサーヴァンパイア達は、《生命の宝珠》から溢れ出した聖なる光を体全身に浴びて声にもならない断末魔を漏らした。
そして次々と灰になって静かに崩れ去った。

「はい、母さん」

ヴァンパイアは《生命の宝珠》から光が溢れ出ると同時に、蝙蝠へと姿をかえたのでした。
そして光を避けながら下僕としていたレッサーヴァンパイアの陰に隠れるように部屋から逃げ出したのだった。
キワドイ戦闘服の上に黒のロングコートに身を包んだ梨香は、娘のことなど気にもせずに扉から出て行ったヴァンパイアの後を追いかけていった。

「はぁ、はぁ・・・」
みゆきは額から流れ出る汗を濃紺のセーラー服の袖で拭うと、母の後を追うように走った。
自分のプライドと体制への反逆の印であるロングスカートがこの時ほど恨めしく思ったことはない。
すると突然、女がみゆきを呼び止めたのだ。

「ヴァンパイア・ハンターのお姉さん。どうかわたしの魂を、この呪われた身体から解放してください・・・」

ヴァンパイアの吸血の呪力が今ひとつ足りなかったせいなのだろうか、
下僕のなかにはレッサーヴァンパイアになり果てない不完全な吸血鬼として存在した奴がいたのである。
理性を保ってはいるが肉体は既に痴れ狂っていた・・・。

25カサブタ:2012/03/08(木) 23:59:05
先程までここではヴァンパイアによる漆黒の宴(黒ミサ)が執り行われていたのである。
男女の性別は関係なく互いの精気を心ゆくまで貪り尽くしては、また自分の側にいる別の相手を犯し、そして犯される。
その凄まじい狂態は地の底の深淵から轟々と湧き上がる瘴気そのものであった。

女の口元には血が付着し、身体は体液で濡れている。おそらくは彼女も、自分の中からどす黒く湧き上がる欲望を抑えきれず、周囲の犠牲者達を襲ってしまったのだろう。

「私はもう人を襲う衝動を理性で抑えることができません・・・。親や子供、そして友人を吸血し殺してまで、生きたいとは思いません・・・。
どうかわたしが生気を保っているうちに、また誰かをを襲わないうちに殺してください・・・」

まだ見習いヴァンパイア・ハンターの みゆきでさえも、彼女は人間として生きていくことのできない体であることがわかった。
そして他人の生き血や精気を吸い取り続けなければ、生きていくことはできない体であることもすぐにわかった。
自分にはどうすることもできない儚く虚しい感情が みゆきの体を覆い尽くすのだった。

「しかし、わたしには・・・」

「まだ生気であるうちに・・・、お願いします・・・。そしてこの子を・・・ううッ・・・」

女吸血鬼のマントの陰に隠れるように、1人の少女が みゆきを見つめていた。
まだ小学生くらいのその子は、おかっぱ頭の少女だった。

(っ!! この子・・・!!)

みゆきは彼女の顔を見て、驚愕した。彼女はどころなく今逃がしたヴァンパイアに似ていたのだ。
その娘はまだあどけない顔をしているが、その姿や纏う雰囲気には、ヴァンパイア特有の人を惹きつけるような妖しさが片鱗を見せている。
そして彼女の口の中も既に小さい牙が生え始めていた。

この子もヴァンパイアであることは間違いないが、おそらく他のレッサー達とは違う。
あのヴァンパイアが執り行おうとした黒ミサにおいて何かの重要な役割を担っていたのでは?

(どうしよう・・・、 悪い可能性は小さなうちに潰しておくべきかしら・・・。)

みゆきは少女を怖がらせないようにゆっくり歩み寄るが、片手は聖水の瓶に手をかけていた。
この少女があいつに何の関係あるのかは知らない、だが、憂いを残さない為には今ここで殺しておくに越したことはないはず・・・。

「おねがいします・・・・・・、この子をどうか・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

しかし、みゆきにはどうしてもできなかった。
この瘴気がうずまく絶望のなかにあって、みゆきを見つめる少女の瞳には生きる希望を秘めた強い意志が感じられる。ヴァンパイアとは死の影を背負う者の筈なのに、彼女からはなぜか眩しいばかりの生命の光を感じるのだ。

この子をここで殺すべきではない・・・。みゆきの心はそう伝えていた。

26カサブタ:2012/03/09(金) 00:00:27
「名前は?」

「アイ」

「アイ、わたしについておいで!」

みゆきの淡い想いが通じたのだろうか?藍がこくりと頷いた。

「わかった・・・。この子はわたしが預かるわ。
あなたはこの世に未練を、そして心残すことなくすべて忘れなさい」

みゆきはロングスカートのポケットから聖水の入った小さな小瓶を取り出すと、
不完全な吸血鬼にむけて聖水を降りかけたのでした。
そして女吸血鬼は至福な表情を浮かべポロポロと涙を流しながら、とろけるように静かに消えていったのだ。

(天にまします我らの父よ 願わくば御名を尊とまれんことを、
御国の来たらんことを 御旨の天に行なわるるごとく
地にも行なわれんことを、 我らの日常のかてを今日我らに与えたまえ
我らが人に許すごとく、我らの罪を許し給え
我らを試みに引き給わざれ、我らを悪より救い給え アーメン)

みゆきは心の中で主の祈りを唱えると、十字をきった。
これで みゆきは女吸血鬼に対して正しく弔ったどうかは、自分自身でもよくわからなかった。
しかし少女の瞳から語られた意思から、みゆきに新しい何かの力を受け取ったことは確かであった。

「ふーッ!何やってたのさーみゆき。
あんたがボケボケしていたおかげで、ヴァンパイアを逃しちゃったじゃないの!」

くわえタバコをしながら みゆきの前に姿をあらわした梨香であった。

「しかし奴の寝床の棺は浄化しながら燃やしたから、当分の間は悪さをしないでおとなしくしているはずよ!」

梨香は自慢げに娘をみた。

「はいはい!」

すこし憂鬱になった みゆきだった。

みゆきの母、梨香の容貌は、みゆきより背が少し小さかった。
体格はやや小柄で細身だが決して華奢(きゃしゃ)ではなかった。
むしろ昔から体を動かす事が大好きで、鍛え上げられたしなやかさは並みの人間では考えられないほどである。野性の中の美獣といっても過言ではない。
ショートにした黒髪がとても似合い、特に左腕に彫った蝶のタトゥーがまた印象的でもあった。

27カサブタ:2012/03/09(金) 00:02:33
「およ? みゆき。 その子はなんだ?」

「ああ、母さん。 実はね・・・。」

みゆきは先程ここであったことを梨香に話した。

「なるほど・・・、確かに似てる・・・。 それに普通のヴァンパイアでもないわね。何か特別なのよ。」

「特別ってどういうこと?」

「よく考えてみなさいよ。 この子、宝珠の光を浴びても大丈夫だったんでしょ?」

「あっ!!」

みゆきはそこで初めて重要なことに気付いた。宝珠の光はヴァンパイアをはじめとした魔物をほぼ確実に滅ぼす力を持っている。
純粋なヴァンパイアならばこの光の威力に耐えることは出来ないはず。

「さっきから違和感を感じたんだけどね・・・、あいつがやろうとしていた黒ミサって私が知ってるのとちょっと違うのよ。 
この子はたぶんあんたの思った通り、黒ミサで何かの役割を担っていた可能性はあるわね・・・。」

梨香はアイの顔を見つめながら言う。 じっと見つめられたアイはたじろぐようにしてみゆきの影に隠れてしまう。

「あらー、みゆきったらいつの間にか懐かれちゃったのね!」

「・・・・・・母さん・・・、この子どうするの・・・?」

みゆきの不安そうな表情を見て、梨香もすぐに彼女の心中を察したようだった。

「それは逆にあんたに聞きたいわね・・・。 何を思ってこの子を生かそうとしたの・・・?
あのヴァンパイアが私の仲間達を大勢殺したことは知ってるはずよね?
あいつと同じ顔をしたこの子を私が放っておくと思うか?

第一、私達ハンターの流儀に従うなら、この子を保護するべきではなかったはずよね?」

「それはわかってる・・・。でも・・・。」

じっと、アイのことを見つめるみゆき・・・、梨香はじれったそうに頭を掻いた。

「あんたさぁ・・・、まるで動物拾ってきた子供みたいな反応ね。
そろそろ、シャキッとしなさいよ!! あたしがどうとか、ハンターがどうとかじゃなく、あんた自身がその子をどうしたいのかを聞いてるの!! どうなのさ・・・?」

「私は・・・。」

みゆきはまっすぐ梨香に向き直って答えた。

「母さんは抵抗があると思う・・・、でも私はこの子を助けたいわ・・・!!
理屈じゃないんだけど、この子を絶対消してはならない気がするの。それに何より、あの女の人の死に際にこの子を生かすって約束してしまったもの・・・。それを裏切りたくないわ。」

「ふむ・・・、相変わらず身勝手な理由だね。」

梨香はしかし、そう言ったものの表情を緩ませた。

「でもまぁ、あんたらしい答えだ・・・。 
いいよ。 うちは教会みたいな戒律も無いんだし。思うようにやってみることだね。
もし、その子があいつにとって重要なものなら弱みを握ったことにもなるしね。」

「ありがとう母さん・・・。」

28カサブタ:2012/03/09(金) 00:04:35
「さぁて、となるといつまでも怖がられたまんまじゃ困るわね。」

そういうと梨香は笑いながら藍の前に右手をさしのべた。

「ほ〜ら、見ててごらん!」

藍は少々とまどいを見せたが、恐る恐る手を出したのだった。
するとどうだろう!
梨香の右手の真ん中には、いつの間にか赤い大きな飴玉が1つあらわれていた。
びっくりした藍は、何もなかった所から突然あらわれた飴玉を興味深々と見つめたのだった。

(くすッ!あの時のびっくりしたアイの顔は、10数年たった今でも思い出すよなぁ・・・。
なんていったて、母さんの飴玉マジックは子供を驚かす時のとっておきの十八番(おハコ)だもの!
私も小さい頃、よくあのマジックで母さんに誤魔化されたもんなぁ)

みゆきは飛行機の席で窓の外を見つめながら昔の事を思い出していた。

みゆきは何度か母に変わって幼い藍の世話をしたことがある。
ベッドの中で眠る藍はやすらかな天使のような寝顔をしていた。 
その顔を見るたびに藍が恐ろしい魔物であるヴァンパイアだということを忘れそうになったものだ

(もうあれからアイもずいぶんと大人になったのね。こんな娘に発情する男が現れるようになったんだから)

「さて、目的地まではまだ遠いし私も寝るか!」

みゆきは目をつぶると、飛行機の静かな振動に揺られながら静かに眠りについていったのだ。

29カサブタ:2012/03/09(金) 00:07:58
7

みゆきが出かけた翌日、日本を一つのニュースが駆け巡った。

“欧州一のシェアを誇る大手製薬会社ローバックスの社長、キルシュ・ローバックス氏がアポなしで緊急来日!! 
羽田空港に自家用ジェット機で飛来。訪日の目的はまだ不明とのこと。”

“欧州の雄、ローバックス緊急来日!! 赤字続きの武藤製薬の買収交渉が目的か?”

“欧州一のセレブにしてプレイボーイとして知られるローバックス氏、愛人と見られる女性を伴って来日! この女性は前回の訪日の際も同行していた噂があり・・・”

「どの新聞も週刊誌も同じ記事ばっかし・・・。」

いつものごとく渡来船に来ていたカズは新聞を広げながらビールをチビチビ飲んでいた。
みゆきがいなくなった渡来船はてんやわんやの大忙し。

実質、みゆきの片腕であった美樹がなんとか仕切ってはいるものの、クルーたちはみゆきの存在の大きさを改めて実感した次第だった。
こんな状態ではいつものように、ぺちゃくちゃおしゃべりするわけにもいかずカズは一人酒に甘んじていた。

(ローバックスっていえば俺がいた会社とも取引があったところだな。きっと今頃、この店なんか比較にならないくらいの大騒ぎだぞ。 ざまぁみろだ、くそっ!!)

後輩に抜かれ、企画を潰され、あえなくリストラとなり、元彼女にも逃げられた苦い記憶を拭い去るようにカズはビールを飲み干すのだった。

週末の為か今日の客は多かった。
いつもの常連に加え、先日藍といっしょに店に来ていたクラスメート達も藍が店で働いている姿を見物に来ていた。
そのうちの一人は自分の弟まで連れてきていて、

彼は藍に挨拶されると顔を赤くしていた。

まぁ、それも当然の反応だろう。
藍が渡来船の制服である水兵服を着ているところを見るのはカズも初めてだが、これがなかなか可愛いのだ。

彼女が通う蓮見台女子校では白いブラウスの上にベストを着て、チェックのスカートを履くという、
いかにも女学院的なオシャレな制服を採用していて、これも中々良いのだが、藍はセーラー服を着てもすごく似合うことがこれで証明されたわけだ。 眼福、眼福。

30カサブタ:2012/03/09(金) 00:13:57
いつもより早い閉店時間を迎えると、クルーの女の子達はあちこちの机でぐったりとなっていた。

「つかれた〜〜、もううごけない〜〜。」

「みゆきさぁん、早く帰ってきて〜〜。」

「みんなお疲れ、俺が一人ずつビール奢ってあげようか。」

甲斐性なしの俺をこの子たちはいつも温かく迎えてくれるのだ。
普段の感謝の意味も込めてこれくらいしてあげなければ・・・。 
俺はカウンターに入ると自らビールサーバからジョッキに注いでいった。勝手知ったるなんとやらだ。

「きゃぁぁ☆ カズ君太っ腹〜〜!!」

「へへへ・・・、」

おいしそうにビールを飲む彼女達を横目にカズは外れの席を見る。
そこには机に頬杖をついてなにやら物思いに耽る藍の姿があった。彼女も皆と同じように疲れているのだろうが、表情が暗い理由はそれだけではないだろう。

「はい、藍ちゃんにはオレンジジュース。一応未成年ってことで。」

「あ・・・、カズ君、ありがとう・・・。」

藍はそれきり何も言わずジュースを飲みはじめる。

「落ち着いた?」

「・・・・・・・・・。」

コクッ と最後の一滴を飲み干すと、ふぅ、と息をはき、藍は笑う。

「正直言うと、まだ気持ちの整理がついてないかな・・・。でも、大丈夫。
私、頑張るってみゆきさんと約束したもん。」

藍はみゆきから貰ったペンダントをぎゅっと握り締めた。

「みゆきさんから店を任されたからには帰ってくるまできちんと仕事をしないと。また修行不足って言われちゃうわ。」

「そうか、元気で良かったよ。 でもあまり無理しちゃだめだよ? 困ったときは俺に相談してくれよ。
藍ちゃんを助けられないようじゃ俺だってみゆきさんにど突かれるもん。」

「あはっ、そうだね。 ん〜、でもカズくんは相談相手としてどうなのかな〜?
なんか、普段の君をみてるとちゃんと女心を理解できるのかものすごく疑問なのです。」

「え〜? 藍ちゃんまでそんなこというの?」

「あはは、冗談、冗談♪ でもこうやって話してるだけでも気が楽になるよ。 それは素直に感謝してるかな?」

楽しそうに話す二人を他のクルー達はじ〜っと見つめています。

(ほおほお、これはこれは・・・・・・。) バイトA
(なかなか、よい感じではないでしょうか?) 美樹
(でも、カズくんとじゃ年齢的にも、性格的にも不釣り合いな気がするわ。無職だし・・・。) バイトB
(確かに今は愛だけじゃやっていけないね。正直私はカズくんは無理〜。)バイトC

(そもそも、なんでカズくんといい感じになってるのか理解できないわね。カズくんて正直どうなの?)A
(スケベですよぉ・・・、そしてダメ人間ですよぉ・・・。) 美樹
(あれよ・・・、藍ちゃんは優しいから、きっと母性本能みたいなのが働いて・・・。)B
(あちゃ〜〜っ ダメ男に引っ掛かるタイプか〜。)C

(どうする? ここは順当に応援してあげるべきかな?)A
(藍さんの為を思ったら、友達としてそれでいいのかどうか・・・)美樹
(確かに、ここは道を踏み外す前にきっぱり別れさせてあげるのが親心というものかも)B
(それならなるべく穏やかにやらないと、カズくんは単純だからいいけど逆に藍ちゃんが傷ついちゃうかも・・・)C

「ちょっと? 君たち何かすごく酷いこと噂してない?」

「「「「そんなめっそうもございません(よぉ)!! カズ君、最高!!」」」」

「くすっ!!」

他のメンバーのおかしなやりとりをみて藍の顔にもようやくいつもの笑顔がもどったのでした。

31カサブタ:2012/03/09(金) 00:17:52
「みゆきさん、そろそろ着いたのかな・・・。ハンガリーって遠いよな。」

「そうだね・・・、私も住んでたことがあるけど。 よく考えたら随分遠くに来ちゃったんだな・・・。 
日本の方が長いからむこうの事はあまり覚えてないんだけどね。」

そういえば、藍は外国の出身だったか。 なるほど、この日本人離れしたスタイルや顔つきはヨーロッパ系の血が混じっているためか。
藍は自分の生い立ちについて語ったことが無いので今まで気にしてなかった。
むこうでは一体どんな生活をしていたかとか、家族はどうしてるのかとか、 藍とは親密になったとはいえカズにとってはまだ謎が多い。

「みゆきさん、大丈夫かしら・・・。思い過ごしならいいけど、少し胸騒ぎがするのよね。」

「そうだ、 藍ちゃん占いができるんだよね? それでみゆきさんの運勢はわからないの?」

「実はもうやったの。そしたら、ちょっと不安な結果が出てね・・・。今日持ってきてるんだけど見る?」

すると藍はカバンからタロットカードのデッキを取り出し、そこから4枚のカードを引いた。昨日帰ってから行った占いに使った物らしい。 
彼女はタロットを使った占いを得意としているらしい。
説明を聞いてもカズにはチンプンカンプンだったが、藍が言うにはかなり我流の方法なので理解しなくてもいいとのことだった。

使うのは大アルカナと呼ばれる22枚のカード。カードをよく切ってから特殊な方法で振り分けるのだそうだ。 
そうして形6枚のカードを裏返したまま選び出し、並べてから全てを開く。
そのうち正位置のカードが運勢を表すのだという

「出たのは、右から正義(Justice)、死神(Death)、吊られた男(Hunged Man)・・・。」

「意味は知らないけど、俺にも不吉なのはわかるね・・・。」

「正義はきっとみゆきさんのことね。死神はたぶん私。吊られた男はやっぱカズくんよね・・・優柔不断で女難の相ありかな。 ふふふ・・・。」

「えぇ、そんな単純な判断でいいの? タロットってもっとこうカードごとに深い意味があるんじゃ・・・。」

「だから、私の我流なのよ。 実質は私の魔力を使って占ってて、カードはただの媒体みたいなものなの。 で、気になるのは最後のこれ・・・。」

藍は一番左端のカードを指差す。 夜空の下で水を注ぐ女性の絵柄が描かれたカードだ。

「星(ster)・・・。 暗い見通しの中に残された一筋の希望。 一体何を示しているのかしらね・・・。」

「きっと、何かいいことがあるってことじゃないかな。みゆきさんはたぶん無事ってことだと思うよ?」

「そうね・・・。私もそうだったらいいなって思うよ・・・。」

「なになに? 何の話してるの?」

「あっ! これってひょっとして占いじゃないですか?」

「カズくんだけずる〜い!! 藍ちゃんの占いってよく当たるって評判なのに!!」

二人の様子を見て周りの女の子達も寄ってきた。恋愛運を占ってほしいという皆に藍はちょっと困ったように笑いながらも答えていた。

(やっぱり和むなあ・・・。 これがこの店のいいところだ。)
皆の輪の中心にいる藍はとても幸せそうに笑っている。俺だけでなく、きっと藍にとってもこの店は特別な存在なんだろうなと思った。

32カサブタ:2012/03/09(金) 00:22:43
と、その時、店のドアが開いて誰かが入って来ました。

「あっ!! すいませ〜ん、今お昼休みなんですけどぉ・・・、 あっ!!」

「おや、貴女はこの前の。」

入ってきたのは白髪まじりの初老の男だった。応対に出た美樹と藍は見知った顔に驚く。
というのも彼は先日の一件の時、黒百合に襲われて倒れていた美樹を保護してくれた警察官だったのだ。

「先日はどうもお世話になりました(ペコリ」

「いやいや、覚えていていただけるとは・・・。その後、お変わりありませんか?」

「はい!! すっかり元気です!!」

「美樹ちゃん、この人は?」

「この前、私が怪我したときにお世話になった警察官の人ですよぉ。」

「世田谷署で警部をやっております、大原という者です。 
こちらこそ、先日はどうもお世話になりました。そこの水無月藍さんが知らせてくれたおかげで美樹さんを保護することができたんです。
しかし、貴女もこちらで働かれていたとは。」

「あはは・・・、先日はどうも・・・。 あのときは変な恰好で驚かせちゃいましたよね・・・。」

「いえいえ・・・、お気になさらず。 さっそくなのですが、穂積みゆきさんはいらっしゃいますか?」

「あ、船長ですか? すいません。今ちょっと外遊中でここ一週間は来ない予定なんです。」

「え? そうなんですか? それは残念ですね・・・、ちょっと彼女の耳にも入れて頂きたかったのですが・・・。」

「あの、俺連絡先知っているんですけど、言伝があるなら伝えますよ? 何かあったんですか?」 

「ああ、いや。すぐにではなくていいのですが。ちょっとご注意に上がりまして。
ここ最近、隣の狛江市で奇妙な通り魔事件が頻発しているんです。
ニュースでご覧にはなっていると思うのですが、被害者は既に4人を越えており、全身から血を抜かれた状態で発見されるのです。」

「え・・・?!」

店内が一瞬騒然となりカズと藍は顔を見合わせた。 すると、バイトの子の一人が言った。

「そのニュース聞いたことある! けっこうここから遠くないから怖いなって思ってたんだけど。」

「はい、これまでは被害が狛江市周辺に集中していたのですが、先日、とうとうこの世田谷でも被害者が出たのです。
おそらく夕方辺りには各ニュースで取り上げられると思いますが・・・。

私共は今、区内の各店舗に対しこうやって注意を促して回っているのです。特にここはそこにいる美樹さんが先日、首筋を噛まれたような傷を負いましたよね。
実は今回の被害者にも同じような傷が見られるのです。ですから、美樹さんの一件となんらかの関連性がないかと睨んでおりまして・・・。
貴女にまた被害が及ばないとも限りませんので十分にご注意いただきたいのです。」

大原警部は、その他諸々の注意をよびかけ、店内に防犯啓発のポスターを貼るよう伝えると店を出て行った。
クルーの皆はまだ騒然としていたが、しかしカズと藍の動揺はそれ以上の物だった。

33カサブタ:2012/03/10(土) 01:57:39
8

「七海・・・、一緒に帰らない・・・?」

七海と呼ばれた少女は振り返る。 そこには仲良しで無二の親友の姿があった。

「ううん・・・、ちょっと寄りたいところがあるの。 さやかは先に帰ってて・・・。」

少女は無理をして作り笑いをしていたが、音無さやかには彼女が辛い胸中にあることがよくわかっていた。

「無理しちゃだめだよ・・・。 私はいつでも七海の味方だからね。」

「ありがとう・・・。 じゃあね・・・。」

七海は駆けるように校門を飛び出した。本当は寄りたいところがあったわけじゃない。
ただ一人になりたかった・・・。 今日の出来事を思い出すと泣きたくなってしまう。 ここ最近は親友のさやかと顔を合わせることも辛かった。

「ひっく……、うぅ……。」

帰りがけに立ち寄った夕暮れの公園、人目をはばかるように彼女は一人泣いていた。
紺のブレザーの袖を涙で濡らし、肩を震わせて立ち尽くしている。

紅葉台学園高等学部の2年生、大原七美。彼女は今日、失恋した。
幼馴染でありずっと密かに想っていた男の子、金森健二が1歳年上の先輩と付き合い始めたというのだ。

彼女の名前はマリア・ハミルトン。今年度の初めに転入してきたハンガリー出身の留学生だ。
マリアは健二と同じ美術部に所属する先輩であり、七美が健二を尋ねて部室を訪れたときとても親密にしていたことを覚えている。
外国人とは思えないほど日本語が堪能で他の部員とも早々に打ち解けていたようだった。

しかし、前から健二のことが気になっていた七美はマリアが好きになれなかった。健二とマリアが仲良くしていたこの数ヶ月間は辛い日々だった。
部活を見に行ったとき、強情な性格をしているはずの彼が、マリアの前ではあからさまにモジモジし、ぎこちない敬語を使っていたことにまず衝撃を受けた。 
そして、今まで当たり前のように話をしていた健二が段々冷たくなり、七美のことを避けるようになっていった。

それだけでも辛かったが、一番打ちのめされる出来事はつい1週間程前に起こった。

ある日の放課後、健二と一緒に帰ろうと思って彼を誘うと、健二は用事があるといって突然七美から離れた。不審に思った七美がこっそり跡を付けると、彼が校舎裏でマリアと会っているのを見た。何を話しているのか気になって隠れて見ていたが、次の瞬間マリアは健二の肩をそっと引き寄せ、彼の唇にキスをしたのだった…。 

二人はそのまま一緒にどこかへ向かった。七海は気付かれないように跡をつけてみると、マリアと健二は住宅地の外れにある洋風の大きな家の中に入っていったのだ・・・。
七海がその家の表札を確認すると、そこがマリアの家であることがわかった。

なんとか気持ちの整理をつけ、今日になってようやく健二にそのことを問いただしてみたが、そこで健二にマリアと付き合っていることを打ち明けられたのだ。

34カサブタ:2012/03/10(土) 02:03:25
「帰ろう・・・。」

まだつらくてたまらないが、沢山泣いて少し落ち着いた。七美はショックで足元もおぼつかなかったが、ゆっくりと家路についたのだった。

七海は他の子たちよりもずっと長く健二と付き合ってきた。だからこそ、つい最近になって現れたマリアに健二を取られてしまったことが悔しくてたまらなかった。だが、その一方でしょうがないという諦めの気持ちもある。
七美は引っ込み思案だったから今まで健二に対して思いを伝えたことなんて無いし、それに、マリアは可愛いのだ。
亜麻色の髪を肩よりも少し長いくらいのセミロングにして、きめ細かな肌の色は小麦色で健康的、外国人だからなのか他のクラスメートに比べて長身でスマートだったしとってもお洒落だった。
健二でなくとも夢中になってしまうのは七美自身にも痛いほどよくわかった。それに比べて七美は今でさえ高等部のブレザーを着ていなければ小学生とも見間違えそうな小さな女の子だったのだ。

「あ・・・。」

歩いている途中、七海はハッとした。あの交差点を右に曲がってまっすぐいったらマリアの家だ。なんてことだろう。足が勝手にこっちを向いてしまったようだ。健二に未練があるから・・・?
今は彼のこともマリアのこともなるべく考えたくない。七海は踵を返そうとしたが・・・

キッ!!

「わぁっ!!」

七美の目の前で黒い車が急ブレーキを掛けた。七美は驚くと同時にゾッとした。
自分は今、車道の真中に居たのだ。彼女は端っこに避けて道を開けようとしたが、その時、車の後ろの窓が開いた。

「大丈夫? 怪我は無い?」

車の中から顔を出したのは若い女の人だった。流れるような黒髪に黒い服を着てサングラスをかけている。
とても気品を感じさせる人だ。よくみると車も見るからに高級そうな外車だし、きっとすごいお金持ちの人なんだろう。

「す・・・すいません。 よく見てなかったもので・・・。」

「気にしないで・・・。こっちもちょっと不注意だったわ。 貴女みたいな可愛い子を轢いてしまったら大変だものね。」

七美の無事を確認すると車は発進し、交差点を右に曲がっていった。
マリアの家がある方向だ・・・。 この住宅地はよく通るが普段あんなすごい車がくるような場所じゃない・・・。 七海は何かおかしな予感がした・・・。

35カサブタ:2012/03/10(土) 02:05:20
ちゅっ、 くちゅ……  ぴちゃ……

はぁ……  はぁ……っ!!

息苦しそうな喘ぎ声が、薄暗く広い部屋の中に響いている。 
紫色のサテンシーツが敷かれた天蓋付きの豪華なベッドの上で、大きな黒マントを羽織ったマリアは妖しい微笑を浮かべ心底愉しそうに声を漏らすのだ。

「うふふ……、ふふふふ……。」

彼女はマント以外何も身につけておらず、十代とはとても思えぬグラマラスな肉体をすべて晒してしまっている、

そして、ベッドの上に座する彼女の膝元には、サテンのシーツに巻かれた裸の少年が…。 
マリアは綺麗な爪をした手を少年の身体に伸ばし、繊細な細い指で彼の体中を弄るように愛撫するのだ。

「あぁ……、だ……だめ…!! くすぐったいです……っ!!」

「ふふ…、金森くんってほんとうにカワイイわぁ…。
癖になっちゃいそう……。」

バサァァ

マリアは彼の上に覆いかぶさり、自分より小柄な身体をマントの中にきつく抱きこんでしまう。
彼の耳元に熱い息を吹きかけると、マリアの舌が、耳の裏をチロチロと舐めくすぐる。

「あ…ッ!! マリア…さん…。 そこはダメです…、くすぐった…、ヒィッ!!」 

「ふふ…、マリアさんじゃないでしょう…? 二人きりのときは“マリアお姉様”
もう忘れたのかしら…ボウヤ?」

彼を押し倒すような体勢でのし掛かったまま絶えず愛撫し、柔らかいマリアの肢体がゆっくりうねりながら強く絡み付いてくる。
巻きついたマントも健二の敏感な肌をサワ、サワ、と撫でくすぐり、彼女の素肌と共に健二を快楽の中に沈めていく。

「う…うぅ…っっ!!! あぁ!! すいません……、マリア……っ さま……っ!! 
あ・・・ あああっ!!」

どぷっ、 どくどくどくどく・・・・・・。

健二はマリアの身体に溺れながら、今日何度目か分からない射精を迎えた。力なく溢れ出た精液がマリアの太股を濡らし、身体を痺れるような痛みが襲う。
同時に彼女の身体の熱さと湧き出る汗の匂いに頭がぼんやりし、目が潤んで涙が零れ落ちた…。

マリアと付き合いはじめて以来、健二は幾度となくこうやって彼女に弄ばれてきた。

外国の人は積極的だとは思っていたし、マリアのことはちょっとSっ気があるお姉さんくらいにしか思っていなかった。 だが本格的に付き合い始めマリアの家に泊まりにいった最初の晩、彼女はその悪魔的な本性を露にした。

二人きりになった途端、彼女は成熟の早い自分の身体を惜しげもなく晒して健二を誘惑し、彼がつられて寄ってくるや否やベッドに連れ込んで淫らに性交した挙句、たちまち童貞を奪ってしまったのだ。

それ以来、既成事実を作ったのをいいことに彼女は度々彼を呼び出して過激なプレイを強要してくるようになった。 
そして、どういうわけか彼女は健二の身体を弄びながら彼の家族の事や一人いる姉の事、そして彼自身のことを強引に聞き出すのだ。それは快楽による拷問に他ならなかった

健二は最初こそ彼女の淫乱さに戸惑い、一方的で暴力的とも言えるプレイに戦慄した
しかし健二も所詮は男、マリアの美しさと彼女が与えてくる快楽から逃れることなどできず、ズルズルと彼女の手に堕ちてしまった。

「うふふ…、ふふふ……っ!! もっと味わっていいのよ。
君はもう私の物なんだからね。」

マリアは健二を抱き起こすと、顎を掴んで無理やり上を向かせ、半開きになった彼の口に舌を突っ込み、ドクドクと唾液を流し込んだ。

「うぅ…、ごほっ!! ……ぐふっ!!」

苦しそうに身体を震わせながら、それでも彼はマリアの唾液を溢すことなく飲み干していく。

苦しいはずなのに彼女の命令には逆らえない。それどころか、彼女に従わさせされることや、いいように弄ばれることに対し悦びを覚えるようにさえなっていった。
調教されるとはこういうことなのだろうかと、健二は薄れ行く意識の中で思った。

36カサブタ:2012/03/10(土) 02:12:33
「ふふふ・・・、マリア、随分ご機嫌じゃない?」

その時、二人の後ろで声がした。マリアが驚いて振り向くと、そこにはマリアと同じように黒いマントを羽織った、流れるような黒髪の美女が立っていた。

「ローズお姉様!! いらしてくれたのねっ!!」

「会いたかったわ、マリア。」

マリアは健二の身体をベッドに放り出すと、そのローズという女性の元に駆けていった。そして飛びつくように抱きつくと、いきなり彼女と濃厚なキスを交わし始めたのだ。

「・・・?!!!」

健二はわけがわからなかったが、美しい女同士が激しく求めあう艶かしい光景に衝撃を受けた。
やがて二人はお互いの顔をゆっくり離すと健二の方を見た。

「マリア・・・、この子が例の?」

「ええ・・・、正確にはお姉様が探している子・・・、 アイさんだったかしら?
その子の友達の弟なんですって。この前、学校で話してたのを偶然聞いたの。」

「ほほほっ、 貴女を先んじて日本に送り込んだのは藍の手掛かりを探す為でもあったのだけど、まさかこの学校の生徒から見つかってしまうなんてね。」

「ふふ・・・、それでもこの子に行き着くまでには苦労しましたわ。世田谷周辺の高校の生徒を襲ってみても何の情報も得られなかったんですもの。」

マリアはこれまでに健二を拷問して聞き出した情報をローズに話し出した。

「お姉さんには水無月藍っていうすごく綺麗な友達がいて、その子と一緒に下北沢のBARによく行くんですって。BARの名前は“渡来船”だそうよ。」

「水無月藍・・・、なるほどそんな名前を・・・。
下北沢といえば世田谷ね。 でも、その店は例のハンターの居場所なのかしら?」

「ふふっ!! それも調べたわ。 この前、この子には姉と一緒にこのBARに行くように命令したの。
私はお姉様が前にテレパシーで見せてくれたアイさんとハンターがいるかどうか、この子を使って調べさせたの。 
そしたら確かに見たそうよ!! この子の姉はアイさんのクラスメートだったの。
そして、一緒に渡来船に行き、そこで店主みたいな女と仲良さそうに話していたわ。その女は間違いなくあのハンターだったそうよ。お姉様!!」

黒百合の目を通して見た藍とみゆきの姿、ローズはマリアを日本に行かせる前にそのビジョンを見せていた。
マリアは後輩にあたる健二が藍の友達の肉親であることを突き止めると、すぐにレッサーヴァンパイアに変えることはせず、姦淫によって生きたまま彼を虜にしてしまった。

絵を趣味とし写生に長けたマリアは藍とみゆきの似顔絵を描き、健二に持たせた。
そして、健二に命令して渡来船に向かわせ、店の場所と藍とみゆきの存在を確認したのである。

37カサブタ:2012/03/10(土) 02:14:43
「私はこの前、店の近くへ行ってみたの。そしたらお姉様が思った通り、店にはヴァンパイアを寄せ付けない為のまじないが幾重にも施してあったわ。
ご丁寧にも、アイさんに対してだけは無効化されるように仕組んであるみたいよ。」

「なるほどね・・・。このボウヤをわざわざレッサーに変えないまま使っていたのは、アイに気取られないようにする為だけでなく、それも見越してのことだったのね。
レッサーだったらそのお守りに弾かれて中に入れないものね。」

「つい昨日だけど、蝙蝠に化けて店の前を張っていたらあの女が出てくるのを見たわ。きっと連絡を受けてホロウ・クイに向かったのよ。お姉様の作戦は見事に成功したってことだわ。」

「上出来だわマリア!! 貴女は本当に頭がいい子ね。 今、随分楽しんでいるみたいだったから仕事を忘れて遊びほうけているのかと心配になったわ。」

「金森くんには今、情報をくれたお礼にたっぷりと可愛がってあげてるところなの。
この1週間、血を吸わずに焦らすだけだったから、 今日は搾れるだけ搾ってあげようと思ってね・・・、うふふっ!!」

マリアの目が真っ赤に染まり、口元には八重歯が鋭く尖って伸びていた。

「ひ・・・ひいいぃぃっ!!」

「ふふ・・・、動いちゃだめよ金森くん・・・。いまからとぉってもイイことしてあげる。」

マリアの目に見つめられると健二の体は動かなくなった。マリアはベッドの上に上がると健二を羽交い締めにし、ローズの方を向いた。

「お姉様も味わってみない? この子・・・おいしい精をもっているわ。」

「ふふふ・・・、マリアったら。 ならお言葉に甘えようかしら。」

ローズはマントを体に巻きつけてベッドに近づいていく。 妖しい微笑みを湛える美女に健二はこの上ない恐怖を覚えた。
彼女のマントがさらさらと床を撫でながら近づいてくる音が、死神の足音に聞こえた。

「本当に可愛らしいボウヤ・・・、とってもおいしそうだわ・・・。」

ローズは少年の目前でマントを大きく広げる。
健二の目の前に、真っ白で肉感的な彼女の肉体が晒される。
二つの巨大な乳は彼を誘惑するようにタプンと揺れ、股間はしっとり濡れて、粘液が糸を引いて滴り落ちていた。

「私のマントに溺れさせてあげるわ。」

バサアアァァァァッ!!

「あぁぁ・・・っ!!」

ローズの巨大なマントは、彼の体を捕まえていたマリアもろとも覆いこみ、ベッドに組み敷いてしまった。 
紫のシーツが敷かれたベッドは真っ黒に染め上げられ、健二はまるでタールの沼に溺れているようにも見えた。

「あん!! お姉様のマント気持ちいい・・・、このままじゃ私までおかしくなっちゃう。」

「ふふ・・・、久しぶりだから貴女も一緒に味わいたくなっちゃったわ。 貴女も私と一緒にこのボウヤに魔の快楽を味わわせてあげましょう!!」

「うふ・・・、そうねお姉様・・・。」

マリアは後ろから、健二のうなじに唇を這わせたり息を吹きかけたりし、彼の身体に絡ませた手で胸や脇を愛撫したり、乳首の先を指先で弄んだりする。

38カサブタ:2012/03/10(土) 02:19:17
「抱いてるだけなのにこんなに震えて、女を知らなかったのねボウヤ・・・。
お姉さんがもっと気持ちよくして、溺れさせてあげる・・・。」 

ローズはマントの中で彼の股間に手を伸ばし、硬くなった肉棒を柔らかな手つきでしごき上げる。

「ああぁ・・・っ!! んぁぁ・・・!!!」

ぴゅる・・・、びゅるる・・・・、 びちゃびちゃ・・・。

ローズの手にしごき上げられ、たちまち射精させられる。
精液がマントに付着して汚れてしまうが、やがて真っ赤な裏地へと染み込んでゆき、そのままローズの糧となるのだ。

「ふふふ・・・、若い精を吸ってこのマントも喜んでいるわ。 ボウヤ、貴方のザーメンをもっとかけてちょうだい。 このマントにも、私にもね・・・。」

さわさわさわ・・・、しゅる・・・、しゅるるる・・・・・・ 

「ひゃぁ・・・!! いぃぃ・・・、や・・・あ・・・!!」

ローズはマントを手繰り寄せ、精液を求めて不気味な光沢を放つ裏地に少年の身体を舐め上げさせた。 
滑らかな布地が身体を滑っていくうちにまた精液が筒先からトロトロと漏れ、吸い取られていく。

艶々した肌触りのマントと、二人の女の身体に絡みつかれ、健二は為す術もなく快楽の泥沼へ引き込まれていった。
元々、女性に免疫が無いうえ、それをいいことにマリアに好き勝手虐められてきたのだ。
マリアのみならず、より成熟した美女であるローズにまで責められてしまっては、これ以上理性を保つことさえ苦しくなってきた。

「ひぃ・・・っ!! ひっく・・・っ ひぁぁ・・・っ!!」

「あらあら・・・、ソフトに攻めてあげてるあげてるつもりなのに・・・。
もう壊れてしまいそうじゃない?」

「やっぱり、この子にお姉様はまだ早かったみたいね・・・。 この子ったら本当にウブでもともと加減が難しかったの。 
お姉様がそんなにいやらしく責めたら発狂しないか心配だったのだけど・・・。」

「まあ、そんなに? 全然、手加減してたのに弱いのねぇ・・・。
まぁいいわ。 長く持たないなら、それはそれで楽しみ方があるわ。」

ローズはぐったりした少年の身体を寝かせると、その上にまたがり、未だ硬くなっている彼のモノを受け入れ始めた。

ヌプヌプ・・・、くちゅるる・・・・・・

「ぁぁ・・・・・・、あああ・・・!!」

「うふふふ・・・、どうせすぐ壊れてしまうなら、どんなに手荒に扱っても同じことよねぇ?
なら遠慮なく、思い切り吸い尽くしてあげるわ。」

グチュ・・・、グチュ・・・、 じゅぷ・・・ジュブブ・・・!!

少年のペニスを取り込んだ悪魔の肉壷は、熱く濡れそぼった肉襞で激しく締め上げてきた。
若く、未熟な彼のモノは容赦なく揉まれ、しゃぶり上げられ、なすがままに精液を漏らしつづけた。


じゅぶぶぅぅ・・・!! びゅるびゅる・・・・・・ どびゅううぅぅ・・・・!!

「あ・・・あ・・・、 あああああああぁぁぁっ!!!」

いつまでも終わらない、長い長い射精。 数回分の精液が1秒も経たないうちにローズの子宮へ吸い込まれていく。 
彼の身体はローズの魔力によって、自己崩壊しながら絶えず精液を産生し続け、精液も快楽も途切れることはない。

「うふふ・・・、健二くんの身体、どんどん腐り落ちてる・・・。 とってもいい匂い・・・。
きっと血もさっきより美味しくなっているわね・・・。」

マリアも後ろで押さえているだけでいるのが我慢できず、彼の首筋に噛みついた。

がぶぅ!!

「・・・っ!!」

「じゅる・・・、ぢゅ・・・、ごくごく・・・、チュゥ・・・チュゥ・・・!!」

首筋から血を、股間から精液を、少年は彼女達の思いのままに貪り尽くされる。
吸血鬼にとって、獲物を性的に犯すことは食事を盛り上げるための前戯に過ぎない。
快楽漬けになって反応が楽しめなくなった時点で彼の身体は二人の魔女にとってオモチャから食べ物に変わってしまったのだ。

あとは、身体が朽ち果ててしまうまで彼女達に味わわれるだけだ。
地獄のような快楽に、少年がいくら暴れようともローズのマントから解放されること二度とはなかった。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

39カサブタ:2012/03/13(火) 02:29:34
9

すべてが眠りについてるような、静かな夜であった。
耳の痛むような静寂があたりいちめん満たしていた。
空には星々が輝き、月の淡い光が森の木々と茂みに溶け込んでいた。
その静寂の中を二つの影が歩いていく。

「姐さん、ずいぶん辺鄙なところにきましたねぇ? ここら辺はバスも通ってないみたいですよ?」

みゆきは舗装もされていない山道を、月明かりを頼りに2時間以上歩いていた。 彼女に同行しているのは相棒のトビー。度々、彼女と仕事を共にしてきた腕利きのハンターだ。 二人はブダペスト空港で落ち合ってから、北西へおよそ80キロ先の山間にある村コスパラッグを経て、深い山中を数キロも歩いている。自然保護区であるドゥナ=イポイ国立公園に属するこの山間は、周囲におよそ人工物とよべるものが全く無い異界のような場所だった。

「わたしも始めて来るから良く知らないのよ。 こんな山奥の田舎町なんて観光ガイドにも載ってないし。とりあえずゆっくり休める場所を見つけましょう!」

「こんな崖だらけの一本道しか町にいくルートが無いなんてね。ここが崩れたら完全に陸の孤島ですぜ。」

「まぁ、確かにミステリーものとかなら明日には崖がダイナマイトで爆破されて私たちは孤立無援かな。」

「ちょっと、縁起でもないこと言わないでくださいよ。」

昔馴染みの2人は気軽に談笑していたが、やがて森の先にちらちらと光が漏れるのを確認した。

「あれ!? 姐さん! この森を抜けた先に、点々と明かりが見えますよ。
もしかしたらあれが目的の町じゃないですか?」

「おっ! ようやく見えてきたようね。でかしたトビー!街に行けば何か美味しいものご馳走してあげるから!」

「へ〜い! そんじゃ急ぎますよ!!」

…………
……

崖道を抜けた先の開けた谷間には月明かりに照らされた暗い街の影が、静かに横たわっていた・・・。

ホロウ・クイはまるで、中世から時間が止まったような村だった。くねくねした石畳の細い道路の脇にパローツ式の木造住宅が点々と立ち並び、村を見下ろす丘の上には13世紀に建てられたという古城が立っている。教会らしき尖塔が月を背負って巨大な影を落とし、いかにも魔物が出て来そうな風景である。

夜の帳が降りた街に明かりはまばらで、ねずみや猫、犬といったような小動物の奏でる物音が聞こえる他は静まり返っていた

(この街のメイン通りだというのに、誰も人がいないなんて不思議よね・・・。
やっぱり魔物の被害のせいで警戒してるのかしら?)

「姐さん、宿屋がありましたよ? とりあえず腹ごしらえして狩りに備えましょうや。」

「ま、それもそうね!」

二人は木の看板が掛かったレトロで小さな宿屋を見つけた。

「いらっしゃいませ。今日は泊まりですか?」

扉を開けてエプロン姿の若い女主人が顔を出した。
無邪気に笑う笑顔が可愛らしく、その口元の八重歯がちょこっと覗かせるところがまた印象的でもあった。彼女に見惚れてか、トビーがヒューッと口笛を吹いた。

「お二人さまですね? ごらんの通り、今日はお客様が多いので相部屋でもよろしいでしょうか?」

「え?! えええっ??! 」

店の中に通されたみゆきは店内を見ておどろいた。街はあれだけ閑散としていたはずなのに、なぜか宿屋のロビーは沢山の人でごった返していた。しかも、その中の何人かはみゆきと顔見知りか、写真でだけなら見たことがある人物達だった。なにしろ、彼らは皆ヴァンパイアハンターだったからである。

「みゆきっ!! みゆきじゃねえか!!」

「何? みゆきまで来てるのか?!」

どうやら向こうもこちらに驚いたようだ。
その名前を聞いて、料理のオーダーを取ろうとしていた女主人は横目でチラリとみゆきの方を見ました。

(穂積みゆき・・・、ふ〜ん彼女が・・・、うふふっ!!)

彼女は、騒然とする客たちを尻目に、こっそりと店の奥へ入っていった。

40カサブタ:2012/03/13(火) 02:40:57
「あんたたち・・・、なんでここに居るの?」

「その反応をみると・・・、どうやらお前もボルマンの情報で来たようだな・・・。」

「えっ! そうだけど・・・。まさかあんたらのところにも連絡が?」

「ああ、俺たちみんなあいつの情報を聞いてこの村に来たんだぜ。」

「くそ・・・、ボルマンの奴、嵌めやがったな。俺だけに耳寄りな情報をくれるとか言いやがったのに。」

情報屋のボルマンはガセ情報を複数の人間に売ったりはしない。漏金に汚い男だが、ネタの正確さと質の良さをなによりの売りにしていたからだ。そもそも、儲けが第一なら尚更こんなマネをするわけがない。これだけ大勢のハンターの信頼を失うのは情報屋を営む物にとって死活問題だからだ。

だとすれば、今回のような行為に及んだ理由は大金と引換えに何者かに買収されたからだと考えてもおかしくはないだろう。

「そういえば、あんたらはどうしてこんなところで油売ってるわけ?
同じ情報もらってんなら、ターゲットが居る場所の目星はつけているんでしょう?」

「知らないのか? ローバックスは今朝、日本に向かったらしいぞ?」

「えっ?!」

「お前もボルマンの情報を聞いて、ローバックスが“奴”を匿ってると睨んだんだろ?
俺達だって丘の上のあの城が怪しいと思って調べたようと思ったさ。だが、いざこの村に着いてみりゃ入れ替わるように高飛びだぜ。この村は情報が入ってくるのが遅いからすっかり巻かれちまった。」

「ボルマンはおそらく利用されたんだ。まだ生きているとはとても思えないな。
ローバックスは嘘情報で俺達をこの辺境の村に集めて、まとめて足止めさせる魂胆だったんだろうぜ。この森を夜に抜けるのは俺達でも危険だから今日一日は邪魔されることないってことだろう。」

「こうなりゃ、明るくなると同時に村を出て明日一番の飛行機で日本に向かうしかないぜ。
ローバックスが何企んでるのか知らねえがこんなことするってことはかなりの大事だろう。」

ハンター達は早くも明日に向けて息巻いているようだった。一方でみゆきはまだ今の状況が釈然としないようだった。

「姐さん・・・、どうしやす? こりゃ何やらキナ臭いですぜ。」

(妙だ・・・。 

おそらく奴が日本に向かった目的は藍に違いない・・・。私と藍を引き離す為に仕組んだんだ。だが、それなら最初から私だけに情報を与えればいいだけのこと。
なぜわざわざ他のハンター達にも情報を流した・・・?

仮に私以外のハンター達の妨害を恐れてこの村に誘き寄せたにしても、このやり方はあまりに場当たり的すぎる。今日一晩足止めしたところで、足の速いハンター達は明日にでも日本に押し寄せ、邪魔をしてくるは明らかなはずなのに。)

みゆきは腕を組むと目をつぶり考え込んだ。
そして・・・
「くしゅん!」
とくしゃみをしたのだった。

だがその刺激がきっかけになったのか、彼女はある可能性に思い当たった。

「!!・・・まさか!! いや、そうとしか考えられない!!」

「ちょっと!! なんですかい?」

「やられた・・・!! 私としたことがっ!!」

「え・・・? なんですって?」

「トビー、早く引き返しましょう!! 今すぐ日本に・・・。」

その時、遠くの方で激しい爆発音が鳴るのが聞こえた。来る時に通ってきた崖の方だ。

「うふふふ・・・、せっかく来たのにもうお帰りになるの?」

突然、不気味な笑い声が宿屋の中に響く。全員が上を見ると、さっきいなくなった筈の女主人が天井に掛かったシャンデリアの上に座り、妖しい笑みを浮かべていた。彼女の目は真っ赤に染まり、濡れたような光沢のドラキュラマントを羽織っていた。

「おもてなしの準備はもうできていますのよ? ぜひとも楽しんでいってくだなさいな。」

そして、彼女を取り囲むように獣のような目をした男たちが天井に張り付いてハンター達を睨みつけていた。

41カサブタ:2012/03/13(火) 02:44:54
ちゅ・・・・・・、 ちゅ・・・っ
  ちゅぅ・・・・・・、 ちゅぱっ

暗く、 湿っていて、 血生臭い部屋の中で二つの真っ赤な唇と舌が互いを求めあって絡み合う。

「ちゅ・・・ん・・・、マリア・・・・・・、これくらいにしましょう・・・、あんまり時間を使うわけにはいかないわ。」

「ん・・・、お姉様のカラダ、もっと味わいたい・・・。」

「ふふ・・・、機会ならこれから何度でもあるわ。それにこの子ももう動かなくなっちゃったみたいだし・・・。」

二人の柔肌とマントに挟まれるようにして、少年は干からびて横たわっていた。体は二人の牙によっておびただしい噛み傷が穿たれ、二人の体液でベトベトに汚されていた。もはや動くことはないだろう。

「あら・・・、もうちょっと楽しむつもりだったのに案外保たないものね。やっぱり我慢しすぎると加減が
出来ないみたいだわ。」

二人はベッドから起きると、今後について少し話し合った。

「ローズお姉様、一体どうするの? アイさんがあの店にいる限りお姉様も近寄れないわ。」

「ふふふ、心配いらないわマリア。こういう時は慌てずに外堀から固めていくことよ。あの子は確かに並のヴァンパイアじゃ敵わないくらい強いけれど、その半面とっても優しいのよ。
あのハンターさえ居なければ、つけ込む隙はいくらでもあるわ。安心なさい。」

「そういえば、今頃ハンターの方はどうしてるかしらね? お姉様の罠は完璧だし流石にもう生きてはいないかしら?」

「さて、どうかしらね・・・、そうなってくれれば嬉しいけれど、相手は私を封じ込めたあの女の娘よ。
そう簡単にやられてくれるとは思えないわね・・・。」

「心配いらないわ。 私の尊敬するお姉様の計画が上手くいかないわけがないもの。
きっと他のハンターと一緒にあの世いきにきまってるわ。」

「ふふっ、ありがとう。 本当に可愛くて良い子だわマリア。 でも、例え死んでなくても構わないのよ。
あの女があそこに向かっただけで、目的の半分は達成できたような物だもの。」

…………
……


つい先刻まで水を打ったように静かだった町は銃声と怒号に包まれた。
あちこちの家からは火の手が上がり、不気味ないななきと悲鳴が谺している

宿屋の女主人がレッサーヴァンパイアを仕向けたことによってハンター達は外に飛び出て散り散りになった。 しかし、外に出た彼らを待っていたのは、同じようにマントを着た大勢の女達と彼女達に従えられたさらに多くのレッサーヴァンパイアだった。

暗闇の中から、レッサーヴァンパイア達が次々と飛び出し、ハンター達を狙ってきた。

「くそっ!! どんどん沸いてくるぞ。キリがねえ!!」

「弾の残りがもう少ないっ!! 誰か分けてくれっ!!」

ハンター達は町のメインストリートを走りながら応戦を始める。経験の浅い素人は既に何人かが宿屋で女主人の餌食になった。今生き残っているのはほとんどが歴戦のベテラン達だった。流石に経験豊富な狩人だけあって、大量の敵にも慄くことなく、次々と撃破していく。 しかし、あちこちの路地や建物の壁を這い回る影の数が減ることはない。敵はどうやらこちらの消耗を狙っているようだ。

「ふふふふ・・・・・、」         「きゃははっ!!」
          「ほほほほほ・・・・・・・」
バサァッ バサバサァッ!!

空には、沢山のヴァンパイア達が獲物を狙うカラスのように飛び交っている。ドレスを着た年配の女性や、裸同然の若い娘、中には子供たちまで、マントを広げて飛び回っている。 あちこちの屋根の上には、下で繰り広げられる死闘を見物するように笑いあう女たちの姿もあった。 所々にマントを着た女たちが集まって黒い塊のようになっている場所があるが、そこでは既に倒されたハンターが寄って集って貪り喰われているのだ。

42カサブタ:2012/03/13(火) 02:51:25
空には、沢山のヴァンパイア達が獲物を狙うカラスのように飛び交っている。ドレスを着た年配の女性や、裸同然の若い娘、中には子供たちまで、マントを広げて飛び回っている。 あちこちの屋根の上には、下で繰り広げられる死闘を見物するように笑いあう女たちの姿もあった。 所々にマントを着た女たちが集まって黒い塊のようになっている場所があるが、そこでは既に倒されたハンターが寄って集って貪り喰われているのだ。

「姐さん何なんですかねあいつらは!? 男共はただのレッサーだが、女の方は普通じゃないですぜ?」

「純血のヴァンパイアがこんなに沢山寄り集まっているわけがない!! こいつら、前に話した黒百合と同じだわ。あのマントのせいでヴァンパイアと同等の力を得ているのよ!」

(きっと、町の女達全員があのマントによってヴァンパイアにされたに違いない。このレッサー達は、彼女達に噛まれたこの町の男達だ!!)

みゆきとトビーはハンター達の戦列に紛れながら、正確な射撃とナイフ捌きでレッサーヴァンパイアを狩っていく。しかし、このままではいずれ限界がくることはみゆき自身にもわかっていた。

(まさか、住民全員が敵だなんて!!
どんなヴァンパイアハンターだって、町ひとつを相手にする装備なんか持っているはずがない!
おまけに普段、単独か少ない人数で行動するのが常のハンターがいくら寄り集まったところで所詮は烏合の衆だ。 あいつめ!! これを機に邪魔なハンター達を一網打尽にするつもりか!!)

屋根の上や空にいるヴァンパイア達は無闇に手を出してはこない。自分たちの下僕であるレッサーヴァンパイア達に戦わせ、こちらの弾薬と体力が尽きるのを待っているのだ。レッサーヴァンパイアがハンターを仕留める度に歓声を上げる者たちや、自分の下僕が何人殺せるかを賭ける者たちまでおり、まるで人間を狩るゲームを楽しんでいるようだった。

「ちくしょうめ・・・、高見の見物決め込みやがって、俺たちが野垂れ死ぬのを待ってやがる!!」

ハンターの一人が空に向かって発砲を始める。

「・・・っ!! やめなさいっ!! よそ見をしているとレッサーにやられるわっ!!」

みゆきは忠告したが、もう遅かった。 ガラ空きになった彼の横腹めがけて闇の中からレッサーが飛び出してきたのだ

「ぐぁ!!」

彼はとっさに避けて致命傷は免れたものの、鋭い爪で足を負傷するとそのまま地面に倒れて動けなくなってしまった。相棒と思しき男が彼に駆け寄っていこうとしたが・・・、

「うふっ つ〜かまえた♪」

バサアアァァァッ!!

その時突然闇の中に真っ赤な色が広がり、彼を包み込むとそのまま飛び去ってしまった。 

「うわあぁぁ・・・、やめろ・・・はなせ!!」

「ふふふ・・・、抵抗なんてせずにおとなしくしていれば気持ちよくしてあげるのに。」

ヴァンパイアは彼を屋根の上に転がすと、その上からマントを広げて覆い被さり首筋に牙を突き立てた。

じゅぶっ!! じゅるじゅるじゅる・・・、じゅじゅ・・・

「ぎゃあああぁぁっ!! あ・・・あ、あああっ!!」

「イイ男じゃない。私にも吸わせてよ!! 」 

「あたしも〜〜!! しゃぶりたい〜!!」

ブワァ、 バサァッ!! 

他のヴァンパイア達も近づいてきて彼の体に飛びかかってきた。
マントの黒い奔流が次々と彼を覆い隠していく。

「ああんっ おさないでよ!! この子の首筋は私のなんだから」

「じゃぁ、二の腕から吸っちゃお・・・。」

「うふ・・・っ キスしちゃおうかな。」

「ぐぁ・・・、がはぁ!! や・・・やめ・・・。 うぶぅ・・・!!」

じゅぷっ!! じゅじゅじゅ・・・っ!! 
ちゅう・・・チュゥゥ・・・

「くすっ、それじゃぁ、私はあそこを・・・。」

ヌププ・・・、ヌプヌプヌプ・・・。

「ふふ、次は私なんだから、全部は搾りとらないでちょうだいよ。」

「ぉあ・・・・・・、 ああぁ・・・・・・、 か・・・はぁ・・・・・・。」

ドクドク・・・、びゅる・・・・・・ びちゃ・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・


「く・・・・・・っ!!」

ああなってしまえばもう終わりだ。一度ヴァンパイアに犯された者は完全に心を奪われてしまう。あの男が理性を取り戻すことは二度とないだろう。
地面に倒れていた方の男はレッサーヴァンパイアに群がられ、貪られていた。

みゆきを含め、誰もが仲間たちの凄惨な光景から目を背けた。少しでも戦いから目を離せば次にああなるのは自分だ

43カサブタ:2012/03/13(火) 02:53:28
「この野郎・・・っ!! 死んでたまるか!!」

次々、襲い来るレッサーにハンター達はなおも善戦を続けるが、いよいよ肉体的な疲労が目に見えて大きくなってきた。

ふふふふふ・・・・   おほほほほ・・・・・・

ヴァンパイア達の歓喜と嘲笑の声、そして彼女達に捕まり喰われる仲間の悲鳴によって彼らの精神も急速に蝕まれていく。

ダァンッ!!

一瞬よろめいた隙に襲いかかろうとしたヴァンパイアをみゆきの銃が捉える。宝珠の弾は打ち出された瞬間に強烈な光を放ち、直接命中していない数人のヴァンパイアやレッサーをも巻き込んで一撃で葬り去った。

「これで・・・、あと3発・・・。」

奴を討ち取るために今日まで温存しておいた切り札がどんどん消費されていく。トビーに調達させた廉価の銀コーティング弾で粘ってはいるものの、レッサーはともかくこれだけのヴァンパイアに太刀打ちするには不十分だ。この危機的な状況を生き残るには武器を出し惜しみする余裕などない。

その時、頭上から干からびた男の死体がみゆきの横にどさりと落ちてきた。
みゆきは思わず動きを止めてしまった。 身ぐるみを剥がされ、皮膚は茶色に痩け、枯れ枝のようになった男。その顔には心の許容量をはるかに越えた快楽によって歪まされた壮絶な表情が貼り付いていた。

「あんまり美味しくなかったね・・・、クスクスッ!!」

「あのお姉ちゃんはちょっと美味しそうだよ・・・。 早く怪我しないかな〜。」

「あっ!! こっち見てるよ。 お〜い。」

上では、数人のヴァンパイアがくすくす笑いながらみゆきを見下ろしていた。 みんなまだ幼い少女達だ・・・。 しかし彼女達の口元にも鋭い牙が伸び、涎のように血を滴らせていた。

(まさか、この男はあの子達に・・・っ?! そんな・・・、子供達までがこんな惨いことを・・・。)

みゆきの目の前に落としたのは無邪気さ故の残酷ないたずらのつもりか・・・、しかし、それはみゆきのメンタルを擦り減らすには十分なものだった。

(なんで・・・・・・、なんで皆こんな酷い目に遭わなきゃならないの・・・!! あの子たちも他のヴァンパイア達も、元は何の関係もない人たちなのにっ!!)

みゆきの動きが鈍ったのをヴァンパイア達は見逃さなかった。空の上から虎視眈々と彼女を狙っていた数人の女たちが一斉に急降下しはじめたのだ。

「うふふ・・・、可愛いお嬢さん、貴女も私達とお友達になりましょう!!」

ブワァァッ!!
大鷲のようにマントを広げ、みゆきを包み込もうとする。

「姐さんっ、あぶねぇ!!」

トビーが放った銀の散弾が、最初に飛び込んできたヴァンパイアを横殴りした。ヴァンパイアは悲鳴を上げてそのまま地面に落ちると燃え尽きて灰に変わってしまい、後のヴァンパイアは一目散に空へ逃げて行った。

「大丈夫ですかい?! 気をしっかり持ってくださいよ!!」 

「トビーッ!! く・・・っ、ごめんなさい。 私どうかしてた・・・!」

「姐さんっ、こっちですぜ!! ついてきてください!!」

トビーは腰からジュースのような金属の缶を取り出すと、それを空中に放った。
それが空中で破裂すると、周囲に銀色の粒子がばらまかれ、近くにいたレッサー達はひるんで後退った。

「シルバーチャフか!」

「ここで出し惜しみする理由はないでしょう? お互いにね!!」

空中に浮揚する銀の粒子をばら撒くこの装備は、魔物に直接ダメージを与えるだけでなく、ヴァンパイアの念を遮断しレッサーを撹乱する作用もある。高価ではあるもののかなり有効な武器だった。

トビーは、主人と意思の疎通が出来ずに戸惑っているレッサー達の隙間をすり抜けて裏通りに入っていった。
みゆきは彼を追いかける。後ろではまだ仲間のハンターたちが戦っており、彼らを残していくのが後ろめたくもあったが、振り向くことはなかった。今は他人の心配をする余裕はない。戦場では非情にならなければ生きられないことが彼女には身に染みていた。

44カサブタ:2012/03/13(火) 02:57:50
トビーが辿り着いた場所は、元は教会だったと思われる東側の町外れの廃墟だった。ここは今回のことが起こる前に既に焼失していたらしい。

「うっ!! これはっ!!」

教会の中や周辺にはおびただしい数の亡骸が折り重なる用に転がっていた。吸血鬼に噛まれた様子はなく、皆黒焦げになって焼け死んだようだった。

「ヴァンパイアやレッサーにならなかった住民たちは、俺たちが来る前に粛清されてたみたいですね。
こいつらはきっと、ヴァンパイア達が教会に足を踏み入れることができないと知って、ここに逃げ込んできたんでしょう。 だが、そうなってしまうと袋の鼠も同然でさぁ。 大方、教会に火を点けられて炙り出された奴は喰われて、逃げ出さなかった奴はこうやって焼け死んだんでしょう・・・。」

「普通、ヴァンパイアは火なんて使わないわ。大の苦手だもの。もし、あんたの予想どおりだとすると生きた人間の仲間が居たか・・・、もしくはヴァンパイアの親玉は火も大丈夫な奴ってことになる。」

「後者だとすると・・・、やはりボルマンの情報の内容自体は正しかったってことですかい?」

「ええ、きっと奴で間違いないと思うわ。 おそらく、私を藍から引き離すために今回の罠を仕組んだんだわ。他のハンター仲間たちも巻き添えにして・・・。 そして、先の黒百合の一件もおそらくは奴が藍を見つけるために世界中にばらまいた災いの種の一つ。」

「ま、詳しい分析は逃げた後でも遅くないですぜ。とりあえずこちらへ・・・。」 

トビーは教会に踏み入り、瓦礫を掻き分けると、床に敷かれたタイルを探り当てた。その中の一つを動かすと、なんと地下への入り口が姿を表したのだ。

「こんな道が・・・!?」

「この穴の奥は隠された地下墓地(カタコンベ)です。この町では中世の異端審問を逃れるために、邪教の信徒たちや祭具を隠すための秘密の抜け道が作られてたんでさぁ。 ま、教会には早々に見つかっちまってその後は、もっとヤバい代物の取引に使われてたようですが・・・。奥には谷底の河原に続く隧道が掘られているのでそこから出られますぜ。」

「こんな小さな町の裏の歴史なんていくら調べても見つからなかったわ。貴方、一体どこからこういうネタを拾ってくるの?」

「へへっ!! 伊達に梨香さんの代からサポート努めてるわけじゃない。実は教会にハッキングかけたらこの街に関する資料があっさり見つかったんですぜ。
 この脱出ルートもそのデータに載ってたもんです。事前準備は抜かりないですぜ。
 外に出たら河に沿って山を抜けてから、西のエステルゴムに向かいましょう。 あそこには俺のセーフハウスがあります。そこで準備を整えて日本に帰りましょう。 お供しますぜ。」

二人が深い穴を降りていくと、そこには日干し煉瓦で粗末に補強されただけの暗い空間が広がっていた。あちらこちらに古びた棺が無造作に置かれ、床にはなぜか本来なら棺に入っているべき遺体がごろごろ転がっていた。

「これは墓場というより人間のゴミ捨て場ね・・・。 なるほど、死体を抜き出した空っぽの棺をブツの入れ物に使ってたのね。大抵の物は入るし教会の人間以外には開けられる心配もないと。」

「ブツを入れた棺はこの隧道を通って川に運ばれたり、舟で川から持ち込まれたりしてたみたいでさ。残念ながら何を取引してたのかはわかりやせんでした。宝石や金塊も運ばれてたようですが、本命は他にあるみたいで・・・。」

「ふ〜ん、その辺調べたら面白い物が出てきそうね。教会にはいろいろ邪魔されることも多いし、スキャンダルの一つでも掴んだら黙らせる材料にもなるかな・・・。」

カタコンベの奥にはさらに下へ続く道があった。洞穴のあちこちに溜まった地下水をバシャバシャと踏み分けながら二人は走っていく。

45カサブタ:2012/03/14(水) 01:45:25
「あなたには感謝するわ・・・。今回ばかりは本当に貴方がいなければどうなってたか・・・。」

「よしてくだせぇ・・・。女を守るのは男として当たり前のことですぜ。それに俺はまだ梨香さんに恩を返せてないんです。せめて姐さんを無事に送り届けなきゃ申し訳が立たないってもんです。」

「貴方もまだ母さんのことを吹っ切れてないのね? 貴方には何も責任はないのに・・・。
 ま、あいつを倒せると聞いて頭に血が登っちゃうあたり、私も人のことは言えないわね。」

「しっかし、今回の罠は奴にしちゃずいぶんと雑ですねぇ。奴もいよいよ後先考えなくなってきたんでしょうか・・・。 いくら人里離れた村だからってこれだけの大事おこしたら教会の化け物狩り部隊だって黙っているわけが・・・。」

トビーがそこまで言いかけた所で二人とも重要なことに感づき顔を見合わせた。

「姐さん・・・、まさか奴は・・・。」

「私も違和感があった・・・。奴の謀略にしてはあまりに大雑把すぎるって。
現にあんたも私もこうやって生きてるし、たぶん上のハンターも何人かは生き残るわ・・・。第一、これだけの騒ぎなら、教会どころか一般にまでヴァンパイアの存在を知られる危険があるはず。奴がそんなリスクを犯すわけがないわ。

でも最初からそう企んでいたのなら合点はいく・・・。そっちの方がハンター達を確実に皆殺しに出来るもの!!」

「だとしたら、なおのこと早くここから抜けた方が・・・・・・っ!! ううぅ・・・っ!!」

「っ!! どうしたのトビー!!」

いきなりトビーが腕を抱えて苦しみ始めた。立っているのも苦痛なのか、壁に寄りかかってしまう。

「姐さん・・・。どうやらついていけないみたいです・・・。 すいません・・・。」

「何言ってるのよ・・・!! 怪我してたんなら早く言いなさい!! 
あんた一人を担いでいくことくらい訳もないわよ。」

「へへ・・・、そうですよね。 今まで姐さんにも梨香さんにもそうやって何度も助けていただきやした。
でなきゃ、俺はとっくに死んでましたよ。だが、こればっかりは流石の姐さんにも無理ですぜ・・・。」

そう言って、トビーは悟ったような表情で自分の腕を見せた。みゆきは驚くとともに彼の言うことの意味を理解した。 そこには小さい傷ではあるが、ヴァンパイアの牙に噛まれた跡があったのだ。

「実をいいますとね・・・、最初に逃げるときに一足遅れて・・・。
あの女主人のコにやられちまったんです。小さな傷だし、今まで何ともなかったから大丈夫かと思ったんですがね・・・。
 どうやら彼女、わざと俺を泳がせてたみたいですぜ。 感じるんです・・・、あの子すぐ近くまで来やがってます。」

みゆきは何か助ける方法はないかと思案したが、無情にも長年の経験はそれが無理であることを即座に悟らせた。自分を襲ったヴァンパイアの存在を感じるということは、既にレッサーになりかかっている証拠だ。こうなってはもう助けようがない。

「姐さんの読み通りならそろそろここも危ないですぜ。 俺はいいんでどうか生き延びてください。」

「トビー・・・、そんな・・・。」

「姐さん、俺がいなくなってもどうか仇を打とうなんてバカなことは考えないでください。
敵を間違えちゃいけませんぜ。 姐さんは藍ちゃんを守ることだけを考えてください。

さぁ、いってくだせぇ姐さん・・・。あの子は俺が食い止めます。 セーフハウスにある武器はお譲りしますぜ。あと、パソコンの中には姐さんの指紋も登録してあるんで、それでログインしてください。解析途中だったこのカタコンベのデータがあるんで活動資金の足しにでもしてくだせぇ。  さぁ、早く!!」 

トビーは手榴弾をみゆきにみせた。 みゆきは即座に洞窟の奥へ駆け出す。
彼女が十分に離れたことを確認すると、トビーは奥に向かって手榴弾を放った。爆音とともに古い隧道は崩れ、道は完全に塞がってしまった。

(姐さん・・・、生き延びてくださいよ・・・。)

トビーはほっと一安心した。

46カサブタ:2012/03/14(水) 01:52:39
「ふふっ、みーつけた。 さっきのイケてるお兄さん。」

鈴のなるような声が洞窟に響く。やがて闇の中から一匹の蝙蝠が現れたかと思うと、煙のように霧散し、空中に浮かぶ若い女性が現れた。宿屋の女主人だ。

ふわりと空気を孕んだ彼女のスカートとマントは、黒いヒールの爪先が地面に着地するとともに彼女の身体を包み込んだ。

「随分かっこいいやりとりしてたみたいね? おかげで本命を取り逃しちゃったわ。
こうなってしまったら、逃した獲物の分は貴方の血で贖ってもらうしかなさそうね。」

彼女は身体に巻きつけたマントを優雅に揺らしながら、しゃなりしゃなりと誘うように近寄ってくる

「へへ・・・、この俺を狙うとは嬢ちゃんお目が高いぜ。だが、殺し合いは止めてもっと平和的な夜の過ごし方してくれるならなおいいんだけどな。」

「ふふ・・・、私これでも男を見る目は自身あるのよ? でも、平和主義の貴方には悪いけど、男の扱いに関してはあまり上品じゃないの・・・。」

バサアアァァァァッ

トビーの目の前でマントを広げる女主人。今までに襲った男の抵抗を受けたのか、メイド服のようなエプロンドレスは血まみれで所々破けており、胸元はすっかりはだけて豊満な乳房が露出している。顔の印象からまだ若い娘と思いきや、身体の方はたわわに成熟しきっており実に扇情的だった。

「貴方みたいに粋がった男って大好き・・・、たっぷりイジメて泣かせてあげたいわ・・・。」

妖しく微笑み、ルージュを塗ったように赤い唇を舌で舐める彼女。
真っ赤に揺れるドレープの中に浮き上がる姿はあまりにも艶やかで、既に何人かの男を食い荒らしたのか、胸はヌルリとした粘液が淫らな光沢を作っている。

「へ・・・へへ・・・っ!!」

恐怖と期待、そして諦めが入り混じったような震えと欲情がトビーを襲った。身体に力が入らない、彼女を見ているだけで溺れてしまいたくなってくる・・・。 どうやら、もうこの魔の誘惑から逃れる精神力は残されていないらしい。

彼女の真っ赤な瞳に魅入られ、身体は勝手に彼女の方へ引き寄せられる・・・

(このコ・・・・・・、一目見たときからちょっと気になってたんだよねぇ・・・、
へ・・・・・・へ・・・、 醜いレッサーヴァンパイアに喰われた仲間に比べりゃ、このカワイ子ちゃんにやられる俺はまだ幸せかなぁ・・・。)

トビーが近くまで寄ってきた所で彼女はマントを閉じ、彼の身体を包み込んでしまった。

ブワッ、バサアァッ

「あ・・・、ああぁ・・・・・・!!」

彼女の匂い、そして服を通して伝わってくる体温を味わうだけで彼の股間は膨らみ、だんだんと濡れ始めた・・・。

「ふふ・・・ 私に抱かれた瞬間から貴方は壊れ始めるわ・・・。」

トビーの方が背が高い為に、彼の顔を見つめる女主人は自然と上目遣いになり、胸の谷間まで見えてしまう。普段ならただ欲情するだけですむが、今の彼にとってはこれも見ただけで心を破壊する誘惑の魔術だ。

(ああぁ・・・、なんだこれ・・・、 胸に・・・、瞳に・・・意識が吸いとられる・・・・・・、
怖い・・・・・・、でも気持ちいい・・・・・・、溺れたい・・・・・・!!)

マントに包まれているうちに身体から力が抜け、彼女の手でなすがままになり、身体の中に抑えられない疼きが沸き上がる。

「もっと私に顔をよくみせてちょうだい・・・。」

彼女の言葉に操られるように膝を落としていくトビー、やがて顔が彼女と同じ高さになると、彼女は両手で彼の頬を優しく包み、労るように撫ではじめる。やさしい手つきにトビーの意識は蕩かされるばかりだ。

「お名前・・・。まだ聞いてなかったわね?」

「あ・・・っ??」

「貴方のお名前は・・・? 私はエレナ・・・、エレナ・ハミルトン・・・。」

「お・・・おれ・・・、トビー・・・。」

まるで、催眠術を掛けられたようにぼんやりとした意識で答えるトビー。

「そう、トビーね・・・。 ふふふ・・・私の下僕になってもらうわ。」

彼女の手が服の間に潜り込み、トビーの身体に直接触れて愛撫してくる。指の表面で撫でるように、そして爪の先でくすぐるように、背中から脇腹、そして胸まで
さわさわ、こちょこちょと繊細な指使いでくすぐる。

「ううぅ・・・、なぁ・・・あ・・・ (なんだこれぇ・・・、くすぐられてるだけの快感じゃねぇ・・・)」

トビーはよろめいて、背中から壁にぶつかり、そのまま倒れそうになる。

47カサブタ:2012/03/14(水) 01:56:25
「くすっ、まだ降参するには早いんじゃない? まだまだよ・・・。もっと敏感にしてあげる。」

やさしくちょっとイジワルに耳元で囁くエレナ。トビーは女の手で弄ばれることに少しの悔しさと、ゾクリとするような疼きを覚えた。彼女は指先で彼の皮膚の感触を味わうように体中に手を這わせていく。

「ほら、貴女の身体はもう私の手の中・・・。」

そして、それまで体の表面をやさしく引っかくように撫で回していたか細い指がほんの少し力を込めてめりこむと・・・

「アッ!! うああっ、」

それだけのことで、思わず声を漏らしてしまう程の快感が走った。
そして倒れそうになる彼の身体を彼女の手が支え、無理やり立たせる。

「ふふっ、一度感じたらもう我慢できないわよ・・・。ほら、もっともっとセメてあげる。」

さわさわさわ〜こちょこちょこちょ〜

「あっ!! ひぃ・・・っ、ぁは、あっ!!」

思わず足から崩れ落ちる。 何度も壁伝いに倒れ、倒れてはてはやさしく引き起こされて、また撫でくすぐられる。

「か・・・、かんべんしてくれぇ・・・っ!!  も、もう立ってられねぇ・・・」

トビーは、泣きそうな声で懇願する・・・、喧嘩なら負けない自信があったのに、少女の指先でこの有様・・・、情けないやら気持ちいいやらで、心が乱される。

「ふふふ・・・っ!!」

そして、エレナは指を這わせると同時に彼が着ていたジャケットのボタンを外し、シャツを爪で引き裂き、徐々に彼の身ぐるみを剥がしていった。

「まぁ、素敵・・・。」

トビーの上半身が露になると、彼女は目の前の鍛えられた大胸筋にうっとりと見惚れた。そして彼女はトビーの身体を壁に押し付けると、浮かび上がる彼の鎖骨にチュッ、と吸い付いた。

「・・・っひあぁ!!」

そのまま、皮膚に浮かび上がる骨や筋にそってチュゥチュゥと吸い付き、上目遣いで反応を伺う彼女。
そして、彼女の手はズボンの中に潜り込み、今にも破裂しそうな彼の股間へ伸びていった。ベルトはひとりでに外れ、ズボンも下着も落ちる。そして彼女は固くなったペニスに指を絡みつかせると、滲んできた我慢汁をわざと触り、粘液まみれの指でしごき上げてきた。
にちゅ、ぬちゅ、くちゅ・・・、淫らな水音を立てて彼のペニスを弄ぶ指。

(う・・・ぁ・・・、でる・・・、絞り出される・・・・・・っ!!)

精神は犯されても、彼の身体はまだ危険を感じて彼女から逃れようとする。しかし、彼女のマントに包み込まれた状態では身動きもとれない。そのまま、抵抗もできず彼女の手によって搾り出されてしまった。

どぶびゅぅぅ・・・、 どぷどぷぷ・・・・・・!!

「あ・・・がぁ・・・・・、あぁ・・・!!」

気持ちいい・・・。なめらかで温かい少女の指で精液が搾り出されてしまう・・・。
精液がびちゃびちゃと落ちる地面にトビーは力なく膝を落とす。エレナはもうトビーの身体を無理やり起こすことはせず、そのまま地面に倒れさせ、手についた精液をおいしそうに舐めながら微笑んだ。

「これでもう貴方は抵抗できないわ。 さぁて・・・、どうしてあげようかしらね?」

彼女の女豹のような目は、これで終わりではないことを如実に物語っていた。彼女はマントを巻きつけて、倒れるトビーのまわりをコツ、コツ、と歩き回る。どこから責めてやろうか思案しているのだ。

「そうね・・・、やっぱりここかしら・・・。」

エレナは片方のヒールを脱ぎ、トビーの肉棒の上に黒のハイソックスを履いた脚を持ってくると、足の親指で亀頭をくちゅくちゅと撫で回した。

「あっ!! あうぅ・・・っ!!」

「まだまだ夜は長いわ。 楽しみましょう・・・。」

足の親指に擦られた亀頭から、透明な汁がぴゅっ、と吹き出す。 エレナはしばらく先端を弄んだあと、こんどは土踏まずで裏筋全体を覆うようにして股間を踏みつけてきた。
最初は、あまり力を入れず、だんだんと体重を乗せて、グリグリと彼の股間を刺激する。

「ううぅぅ・・・、あ・・・、な・・・なにを・・・・・・、ああぁっ!!」

48カサブタ:2012/03/14(水) 01:58:39

ぐりぐりゅ・・・、じゅぷ・・・くりゅ・・・。

今までに襲った男もこうやって責めたのか、既にヌルヌルの液がべっとり付いたハイソックスで攻め嬲るエレナ。ざらざらした靴下の生地で肉棒を包んで擦り上げ、折り曲げた指で亀頭をゴシュゴシュと刺激する。縦に横に、足を少しずらしただけで異なった喘ぎ声を上げる男の姿に彼女は悦楽に満ちた表情を浮かべた。

「ふふふ・・・、みっともない・・・。 さっきの子を逃して正解だったわねぇ。あんなカッコいい別れのあとでこんな無様な姿になったと知ったら彼女もゲンナリでしょうからね。」

エレナは足を一旦浮かせると、今度は乱暴にトビーの股間をドス、ドスと踏みつけてきた。

「ほぉらっ 正体みせなさいよ。 貴方も所詮、足でやられて興奮しちゃうヘンタイ男なんでしょう?」

「い・・・っ!! ぎゃっ!! ぎゃあ・・・っ!!」
 
びゅるるっ!! びゅびゅっ!!

若い女の足で責められ、無様にイってしまう。今までの人生でここまでの醜態を晒したことはない。
トビーの羞恥はもはや耐えがたいものになっていた・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・、 も・・・、もうやめてくれよ・・・・・・、後生だぜ・・・。」

しかし、彼の必死そうな顔はエレナを喜ばせるだけだった。エレナは今度はヒールを履いたもう片方の足で踏みつけ、踵を彼の身体に食い込ませた

「ぉああ・・・っ、あああぁ・・・!!」

「ふふふ・・・、ほんとに止めてほしいの? その割には喜んでるようにみえるけど?」

「やめ・・・、あ・・・ちが・・・・・・っ!!」

「嘘はおやめなさいっ、気持ちいい癖に。 貴方の身体は正直に答えてるわよ。
もっともっと踏んでくださいってね!!」

バサッ

エレナがマントを広げると、彼女の身体が浮き上がる。そして、彼女は両足をトビーの身体の上に降ろし、ヒールとソックスの両方で踏みつけはじめた。 マントで浮力を調整し、痛みと快感を程よく感じるくらいの体重がかかるようにして彼の身体の上を歩き回る。

「い・・・ひいいぃぃっ!!」

トビーはまたしてもみっともない喘ぎ声を上げた。認めたくないと思っていたのに、踏まれることに対して彼は確かにだんだんと欲情を呈するようになってきたのだ。

「ん〜? どうしたの? だんだんとふやけた顔になってきたねぇ? もう強がりも限界かな?」

「はぁ・・・、はぁ・・・・っ!!」

エレナはお辞儀をするように可愛く上半身を曲げて、わざとらしく小首を傾げながらトビーの顔を覗き込んでくる。それでも、足は彼の身体をぐりぐり刺激するのを忘れない。

彼女が自分を踏む度に目の前で揺れるドレスの裾。チラチラと見える絶対領域・・・。
両手でマントを広げ、支配者のように見下ろすエレナの嘲るような目線に、彼の中に眠っていたマゾヒズムが不気味に沸き上がってくる。

「ようやく素直なお顔になってきたようね・・・。 ほらっ、ご褒美よ!!」

エレナはエプロンドレスの肩紐を外した。すると、ドレスが彼女の身体からすべり落ちて、トビーの身体の上に ふぁさっ、と覆い被さったのだ。

「うぅ・・・っ!!」

ビロードと思しきドレスの裏はツルツルのキュプラだろうか、 彼女の匂いが染み付き、汗で湿っていて冷たかった。

「女の子のスカートに埋もれて光栄でしょう? 特別におまけも付けてあげる・・・。」

そういうと、エレナは下着に手を掛けて脱ぎ始める。上半身を曲げたせいで、マントの裾がトビーの身体に届きさらさら撫でくすぐってきた。

そしてエレナは脱いだショーツをトビーの顔の上に被せてしまった。 彼女の恥部は既にトロトロに塗れており、その粘液がベッチョリと染み付いたショーツは彼の顔に纏わりついてきた。

49カサブタ:2012/03/14(水) 02:05:32
「うああぁ・・・っ!!」

鼻までショーツで被われてしまった彼は、ヌルヌルしたおぞましい感触に震えた。息を吸うと愛液の濃厚な匂いが頭の中に広がって気分が変になる。

「ふふふっ!! せっかく私のドレスっていういいオカズがあるのに、それじゃオナニーもできないわね! 特別に手伝ってあげるわっ!!」

そういうとエレナは、片足を上げたままバレリーナのようにくるくると周り始めた。マントが水平に翻り、トビーの目の前で真っ赤な渦を巻く。すると回転する軸足がスカートの生地を巻き込み、回るモップのようにザワザワと彼の身体を撫で回し始めた。

「うぉ・・・っ!! うぅ、 あぁぁぁっ!!!」

ザワワワ〜〜〜、サワサワサワ〜〜〜っ!!

今までは、点の責めだった彼女の足が、ドレスによって面の攻めに変貌した。高速回転する布地が彼の頭から足先までくまなく舐め尽くしてくる。

びゅるびゅるびゅるびゅる、びゅるびゅるびゅびゅびゅびゅ〜〜〜っ!!

「ああぁ・・・・、くぅ、 うぉ・・・ぉあっ!! あああ・・・!!」

固く上を向くペニスの表面を、まるで削るように滑っていくドレスは、吹き出した精液を絡めとっていく。まるでドレスの渦巻きの中に吸い込まれていくようだった。

「さぁて、お遊びはこれくらいにしましょうか・・・。」

エレナは軽く彼の体を蹴って、地面に着地した。
トビーは濡れたスカートに巻かれたまま、地面に力なく横たわっている。

「うふふふ・・・、そろそろ噛んであげてもいいけど・・・。
せっかく、ゆっくり楽しめるわけだし、もうちょっといじめてもいいかしらねぇ・・・。」

裸のままぐったりしているトビーを見て、彼女は艶かしく唇を濡らした。
悩ましく腰を揺らし、エレナはじりじりとトビーに近づいてくる。

「私は妹に噛まれて吸血鬼になったの・・・。
手塩にかけた可愛い妹が、獣みたいに私を求めてきて、めちゃくちゃにされてしまったわ。」

そう言いながら、彼女はトビーに覆い被さったエプロンドレスを蹴りのける。

「それから私おかしいの・・・、体が妙に疼いてね・・・。 ずっと心にしまっていた欲求みたいなのが抑えられなくなっちゃったわ。それ以前の私は男に言い寄られることはあっても怖くてダメだったのにねぇ。
 うふふ・・・、それでね、私、妹と一緒にこの村の半分以上の男を襲っちゃったわ。男だけじゃ足りないから女も襲っちゃった。

でも、他の子たちみたいにただ血を奪うだけじゃ満たされないの・・・。獲物の体をたっぷり味わい尽くして、たっぷり犯し抜かなきゃ私は満足できないの・・・。」

エレナは股間の割れ目を指で両側に開いた。
ぐちゃぁっ と音を立てて濡れたヴァギナが露になる。
真っ赤に腫れた女肉は、まるで彼のペニスを欲しがっているようにぴくぴくと蠢き、粘度の高そうな愛液をとろとろと滴らせている。

「こんな小さな村に住んでると、お兄さんみたいな男の人には中々出会えないの。 だから、殺す前にたっぷり楽しむとするわ・・・。覚悟なさい…、ボウヤ。今までここに飲み込まれて無事だった男は一人もいないわ…。村中の男達を狂わせ、溶かしてきた私の肉壷…。貴方はいつまで理性を保っていられるかしら…?」

ヌチュゥ…

「ぁ……ひぃ…!!」

粘液にまみれた陰唇が亀頭を咥え込む。それだけで、トビーの身体にじんわりと痺れるような刺激が染み渡っていく。

「地獄へ引き摺り込んであげるわ…。」

エレナのヴァギナがトビーの肉棒を根元まで飲み込んでいく。

ずびゅる……、ぬぷぬぷ・・・じゅぶじゅぶじゅぶ………。

「ああああ……、あひゃぁぁあああああっ!!」 

彼は絶叫を上げた。
そこは、普通の女とは明らかに違う未知の感覚が渦巻く場所だった。

まるで、熱く煮立った蜂蜜の中にペニスを挿しいれたような感触…。

枯れていたはずのペニスがドロドロの蜜の中で揉まれるにつれて徐々に硬さをとりもどしていき、身体は体内の器官を溶かして異常な速度で精液を産生していく。
あっという間に数日間精液を溜め込んだような状態になり、少しでも刺激が加わればすぐに射精に至ってしまいそうだった。
すると次の瞬間、柔らかい感触でペニスを押し包んでいた膣が一気に収縮し、恐ろしい吸引力で搾り上げる

「快楽の坩堝の中で溶けておしまいっ!!」

ヌブブブ…、ブジュルルルゥ……!!

「はぁあああああぁぁっ!!」

で……でるぅぅ……っ!! 搾り出されるううぅ…………っ!!!

ぶびゅるるる〜〜!! ドブドブドブブブブブ……

ものの数秒も持たず、トビーは屈服の証をエレナの胎内へと漏らしてしまう。

50カサブタ:2012/03/14(水) 02:08:31
さっき大量に搾り取られたのがうそだったかのような勢いだ。

「ふふふ・・・っ!! 体を内側から壊されて吸い取られる感覚はいかが?」

それでもエレナは腰を激しく揺らして彼を責め続ける。
彼女の膣の中でトビーのペニスはグチャグチャとしごき上げられ、萎えることも許されないまま次の射精へと導かれる。

じゅぶ・・・びゅっ!! びゅっ びゅぅぅっ!!

「ぃあっ!! あああ・・・・・、うああ・・・・っ!!!」

その繰り返しで、彼は幾度となく精を搾られ続けやがてペニスからは何も出てこなくなってしまう。

「ぜぇ……、はぁ… はぁ…… 」

「くふふ……どうしたのよ……、早く出しなさいよ……
私はまだ全然、満足できていないわ……。」

ヌププッ  ッチュゥ・・・ チュゥゥッ!!

「ひぁ・・・、やめ・・・、ぁああああっ!!」

精液が中々出てこなくなったペニスを、エレナの膣が貪欲に吸い上げてくる。
膀胱が吸い上げられるような吸引力にトビーはビクビクとのたうつが、それでももう精液は出てきそうにない。

「ふ〜ん、これ以上無理やり出させたら流石に死んじゃうかしらね?
まぁいいわ…。 出せないなら出せないで別の楽しみ方をさせてもらうだけよ。」

にゅるっ ずぷぅ・・・。

エレナが腰を上げると、トロトロの粘液を滴らせながらトビーのペニスが開放された。
彼の自慢の息子は、今では溶けかけてひしゃげたアイスキャンディーみたいに弱々しくなっている。

「まぁ・・・、どうりであんまり気持ちよくないはずだわ。 これじゃぁ使い物にならないわね。 くすくすっ!!」

「う・・・うぅ、 あ・・・っ!!」

じょぼ・・・じょぼぼぼぼ・・・・・・・っ!!

常軌を逸した快感を与えられ続けた彼は、ペニスを開放された途端に力が抜け、失禁してしまった。水たまりが地面にじわ〜、と広がっていき、エレナの足元までも濡らした。

「うわぁっ、 きたな〜い!! うふふふ・・・っ!! お兄さん最高ね・・・。
どうしてそんなに私を笑わせてくれるの?」

「く、うぅ・・・、あ・・・ああぁ・・・・・・。」

トビーの精神はもはや羞恥とか屈辱とかそういうものを通り越していた。
ただただ惨めでしょうがなかった。

「おねがいだ・・・・・・、もう殺してくれよぉ・・・。」

せめて死ぬときくらいは誇り高くという信念ゆえにわずかに残っていた理性も、この羞恥には耐えられなかった。 彼の心はすべてを諦め、投げやりになり、ついにエレナに対して死を懇願しはじめた。

「うふふっ!! いくら泣いてもだめ! すぐに殺してなんかあげないわよ。
死んだらつまんないし、心が空っぽのレッサーになったら責め甲斐が無いじゃない。」

それでも、エレナは更なる生き恥をトビーに要求する。

「あなたを泳がせたのは、他の子たちと取り合いになるのが嫌だったからよ。 あの子達ったらすぐ殺しちゃうんだもん。
だからわざわざ、あなたが他の誰にも見つからない所に逃げ込んでくれるのを待ってたのよ。
せっかく、たっぷり楽しめる場所に居るのに、誰が殺してやるもんですか!!」

「ひぃぃ・・・っ!!」

エレナはトビーの両足を掴んでひっくり返した。いわゆるちんぐりがえしの姿勢だ。

「ふふふ・・・、私みたいな女の子にこんなに好き勝手されて悔しい?
なら、もっと死にたい気分にさせてあげようか?」

51カサブタ:2012/03/14(水) 02:10:18
彼女の手が彼の股を無理やり開いた。そして、指を2本まっすぐに重ね合わせて菊門に狙いを定める

「地獄の羞恥を味わいなさい。 ボ・ウ・ヤ」

ズ…、ジュボォッッ!!

「ぁ…!! ぐああああぁ…っ!!」

ぐりっ、ぐりりり・・・っ!!

エレナは、トビーのアナルに2本の指を挿し込んだ。細いしなやかな指は彼の肛門をやすやすと押しのけてどんどん奥まで入り込んでゆく。

「ふふ…、身体の外からだけでなく…。内側からも辱しめてあげるわ…。」

そして彼女は差し込んだ指をグイッと曲げたままものすごい勢いで出し入れした

ズポッ、ジュッボ…ジュボ、ジュボッ、ジュボッ!
 ズブッ ズズ…… ジュブジュブ……ズボボボボボボ…ッ!!

「あああ…、うぁあああああああ……!!!!」

「うふふ…、あはははっ!! 感じてるわね……。
お尻の穴を犯されてそんなに気持ちいいの…? この変態!! ケダモノ!!」

彼女の指は前立腺を削り取らんばかりの勢いで出し入れされる。
そして・・・、

「ふふ・・・、ほぉらっ!!」

ずぶぅっ!!
「うああぁぁっ!!」

彼女の指が3本一気に突き刺さり、前立腺にぐりぐりと食い込んだ。

ぶびゅぅぅぅ!! ビュルビュルビュルっ!!

「っ!! うっ!! あああぁぁぁっ!!」

枯れたはずのペニスから、透明な液体が流れ出す。潮を吹いてしまったのだ。

「あははははっ!! お漏らしだけじゃなく、潮まで吹いちゃってる! もう、恥も外聞もないわねぇ。」

彼が堕落していく様子を楽しみながら、アナルを責め続けるエレナ…。
トビーはもはや発狂する寸前だった。 涎と涙を垂れ流し、焦点の合わない目で快楽に狂い続ける…。

「ふふふ……、なんて醜いの…。貴方の性欲は本当に底なしだわ…。
すこし責めてあげればすぐに心を乱し、快楽の亡者に成り下がる愚かな獣だわ!!」

「や・・・ぁ・・・っ!! やめ・・・、もうっ!! ううぅ・・・・・・っ!!
も・・・もう・・・ぁぁあ、 こ・・・ころして・・・、ぇぇえ・・・ぇああああっ!!!」

「あはははっ、それよ・・・その可愛い悲鳴と嗚咽がたまらないのよっ!!
すぐに吸って下僕にするなんてつまらない・・・、生殺しにしてあげるのが一番楽しいわ!
ふふふ・・・あはははははっ!!」

ジュブブッ!! ズビュ・・・ッ、どぷ、 ぐびゅぅぅぅ・・・!

「うぁぁぁっ!! ぐぁ、ぎゃああああああっ!!」

エレナは楽しそうに彼の身体を弄びつづける。狂喜に溺れる吸血少女のマントは闇の中でいつまでも翻りつづけた。 たとえ血を吸われなくても、この強烈な責めのせいで十分に狂ってしまいそうだった。
トビーは半殺しの快楽地獄を味わわされながら叫び声を上げつづける。 彼女が求めるままに何度も何度も・・・、

52カサブタ:2012/03/14(水) 02:11:48



ぎゃああああ・・・・・

ふふ・・・、あははは・・・・・

「くっ!!」

遠く離れても響いてくる悲鳴に、みゆきの心は締め上げられる。
これを聞いているだけで、どんな酷い辱めをうけているかがわかってしまう。
あの時、せめてすぐに逃げ出したりせずに自分の手で介錯してやればよかったと激しく後悔していた。

そうしてさえいれば、あの誇り高い男が死の間際にあんな恥辱を味わうことも無かったのに・・・。

だが、みゆきは背中に纏いつく悲鳴を振り払うように洞窟を駆け抜けた。いくら後悔してももうどうしようもないのだ。ならば、この悲劇の元凶を叩くしか彼に報いる方法はない。まずは私自身がここを生き延びなければ。 みゆきは息を切らしながら奥へ奥へと進んでいく。

「あら・・・?」

ふと、彼女は立ち止まった。目の前は行き止まりなのだ。

「いけない、さっきの分かれ道を間違えたか・・・。 早く戻らなきゃ!!」

だが、振り返ろうとした時、みゆきは奇妙なことに気がついた。行き止まりになっている壁、そこだけが洞穴の他の壁と様子が違ったのだ。

「人の手が加わっている・・・? きっと後から埋められたものだわ。」

ここだけは、日干し煉瓦やモルタルではなくコンクリートで固められている。おそらくかなり最近埋められたものだろう。みゆきはプラスチック爆弾を取り出すと、適当な量を壁に貼り付け、急いで離れた。

洞窟の中に轟音が響き、石壁が崩れた。すると、その先には教会の真下と同じかそれ以上の広い空間が広がっていた。 中には教会の地下と同じように棺がいくつも並べてあったが、どれも中身が入っているのか蓋が厳重に閉められている。

みゆきはナイフを取り出すと、古い蓋をこじ開けて中を見てみた。

「・・・っ!! やっぱりっ!!」

棺の中には白骨化した死体。 しかし、胸には木の杭が打ち込まれ、口には煉瓦の欠片を咥えさせられていた。そして、その口から覗く歯は獣のように鋭い牙だった。

「母さん・・・、ついにみつけたわ。 貴女が暴こうとしていた教会の大罪・・・。」

みゆきは携行していた小型のカメラを取り出すと、時間が許す限りそこにあるものを写真に収めたのだった。

53カサブタ:2012/03/14(水) 02:13:59


一方、街の方ではまだ数名の手練のハンターが生き残り、吸血鬼達を相手に善戦を繰り広げていた。

「なによあいつら・・・、 全然、倒れる気配が無いわ・・・。 誰か倒せないの?」

「で・・・でも、私の下僕はもういないわ。 みんな倒されちゃった。」

「まずいわ・・・、もうすぐ日の出が近い。」

今まで、余裕の表情だったヴァンパイア達にも少しずつ焦りの色が見えてきた。これまで防戦一方だったハンターたちが次第に反撃を始めたのだ。力が劣る者たち、互いに協力できない者たちが淘汰される中で、自然に最高レベルの実力を持つハンターだけが前線に立ち、それ以外の者は彼らのサポートに徹するというチームワークが出来上がっていった。

人数が絞り込まれた今なら、弾薬や兵糧の配分が正確になり、互いに足りないものを補強しあいながら身軽に動くことができる。皮肉にも多くの仲間が殺されたことが、本来少人数で行動するハンターにとって絶好のコンディションを生み出したのだ。

「弾と食料はまだあるか?!」

「安心しろ、この分なら日の出まで十分だ!!」

「深追いは無用だぞ! 襲ってくる相手だけをやれ!
どのみち日が出れば奴等は終わりだ!!」

いかに手強い相手とはいえ、歴戦の勇士である彼らは常に冷静だった。戦況を分析し、相手の強みと弱みを見極め、適切な対応をするだけのこと。

レッサー達も無限ではない。確実に一人ずつ片付けていくうちに、目に見えて数を減らしていった。
屋根の上のヴァンパイア達も焦りを隠せなくなり、ハンターたちに余裕が生まれはじめた。

レッサーが少なくなれば、ヴァンパイア達は自ら出てこざるを得なくなる。力は下僕より数段上の彼女達だが、レッサーと違い決定的な弱点がある。 それは死を恐れることだ。
経験の浅いハンターは、最初から元凶である彼女達を叩こうとする。 彼女達はレッサーを無限に生み出すし、そいつらを倒しきっても彼女達が襲ってくる頃には、体力も弾も尽きていると考えるからだ。 だから、遠くの彼女達に気をとられ、足元から迫るレッサーに隙を突かれる。
しかし、それは間違い。 経験を積んだハンターはもっと賢い戦い方を知っている。

まず第一に、彼女達は襲ってこない。
そもそも彼女らが大量の下僕達を仕向けて自分は後方に控えているのは、身を危険に晒したくないからに他ならない。 ならば駒が無くなればかえって戦意を喪失し、逃亡するか隠れるしかない。

第二に、レッサーは無限ではない
勘違いするものが多いが彼女達はレッサーを“生み出して”いるわけではない。元々いた人間をレッサーに変えているだけなのだ。となれば、住民全員がレッサーになり、唯一の道も封鎖されたこの町にこれ以上人間が増えることはなく、彼女達の駒はいつか底をつくのは道理なのだ。
そしてなによりも重要なのは、無限に下僕を生み出せるという勘違いをするのはハンターよりもむしろ当のヴァンパイアである場合が多いということだ。

現に彼女達は気付き始めた。 レッサーたちはまだまだいるが、直接襲ってくる数は減っている。
保身を第一に考える彼女達は自分が出ざるを得ない状況を恐れて、レッサーたちを出し惜しみしはじめたのだ。

いける・・・!! ハンターたちは確実な手応えを覚えた。この膠着状態こそずっと待ち望んでいた状況だ。 屋根の上のヴァンパイア達はようやく彼らの企みに気付いて慌てふためいている。これが人間同士の戦いならばこの膠着状態は人数が少なく、物資もないハンターたちの方が圧倒的に不利になるだろう。 しかし、ヴァンパイアである彼女たちには日の出という絶対のタイムリミットが存在しているのだ。

「どうするのよ・・・!! もうすぐ太陽が上り始めるわ!!」

「私にいけっていうの?! もし殺されちゃったらどうするのよ・・・。」

「でも、日が登ったら家に入るか、棺桶に入れば・・・。」

「バカなの?! その家や棺桶を燃やされたらどうするのよ!!」

「へい、お嬢さんたち!! あんたらはこないのか? 男共の相手はもうごめんだぜ。」

「もうすぐ朝だがどうするんだい? このまま俺と遊ばないでベッドにいっちゃうなら寝込みを襲っちまうぞ?」

ハンターが挑発すると、女たちは顔をしかめた。 苛立ってレッサーを向かわせる者もいたがもはや彼らの敵ではなかった。

54カサブタ:2012/03/14(水) 02:18:33
「空が白み始めたぞ!! もうすぐの辛抱だ! みんな頑張れよ!!」

ハンターたちは一斉に雄叫びを上げた。誰もが生き残れる希望を抱いた。
しかし、ハンターの一人が明るくなり始めた空に複数の小さな影を見つけたことでそれは絶望に変わることになった。

「おいっ!! ヘリが近づいてくるぞ!!」

遠くから聞こえてくるローター音にハンターのみならず、ヴァンパイア達すらも一斉に目を向けた。
見ると、複数の黒い機影が町の上空を旋回しながら近づいてくる。 ハンターの一人が双眼鏡でそのヘリの詳細を捕らえると、震える声で叫んだ。

「畜生やられたっ!! 教会の化物狩り部隊だっ!!」

その声と同時にヘリから一斉にミサイル攻撃と機銃掃射が始まった。 轟音と共にまず上がったのが屋根の上や空にいたヴァンパイア達の悲鳴だった。空に身を晒していたために彼女らは降り注ぐ銃弾をまともに浴びて次々と倒れ建物ごとミサイルの爆炎に飲み込まれていった。

「逃げるぞっ!! 散れ!!」

崩れゆく瓦礫に混じってヴァンパイアの灰や焼けたマントの欠片が降り注ぐなか、地面にいたハンターたちは各々、銃火から逃れようとした。だが、ヴァンパイアとの戦いで優位になった彼らも、近代兵器の圧倒的な火力の前には歯が立たなかった。 時代を感じさせる古い町に爆炎を凌げる建物などあるはずも無く、彼らは

「各機、ハンターと思しき一団を確認したら ミサイルを出し惜しみせずに殲滅しろ!!
一人も生かして帰すなとのお達しだ!」

「まだ、空を逃げているヴァンパイアがいますぜ。 ニンニク入りのマスタードガスをバラ撒いているとも知らずに哀れなもんだ。」  

ヘリの乗組員達は嬉々として地上攻撃を続けていた。 訓練以外でこれほど大規模な攻撃が行える状況など滅多にないために今回の作戦に参加した者たちの興奮はただごとでは無かった。

「隊長〜、もう動いてる影はありませんよ? そろそろじゃないですか?」

「うむ、そろそろだな。」

ヴァンパイアとハンターの殲滅を一通り済ますと、チームの隊長、ジェームスは各機体に次の指令を出した。いよいよ、本作戦の本題に入る時だ。

「全機、町の東側に移動!! 教会の廃墟を目印にしてホバリングだ。地中貫通爆弾(バンカーバスター)でカタコンベを埋めろ!!」

ヘリたちは、一定の距離を保って上空に停止すると、一斉に爆弾を落とし始めた。
バンカーバスターは厚い地盤を貫き、その衝撃は地下墓地と隧道にまで及んだ。古い墓地はたちまち崩れ初め、隧道のあちこちで落盤が起きた。

「な・・・なに・・・?! 一体何が!?」

トビーを徹底的に犯し抜き、そろそろ血を吸おうとしていたエレナは洞窟の異変に慌てふためいていた。

(始まったか・・・、幸か不幸か、どうやら完全にレッサーヴァンパイアになる前に死ねるみて〜だな。)

裸に剥かれ、体は傷とあざだらけ。精神の方も限界に近い。だが、エレナが吸血行為を散々焦らしたために理性だけは失わずに済んだようだ。

「きゃあっ!!」

すぐそばで落盤が起きる。エレナは思わずトビーの体にすがりついた。

「い・・・いやぁ・・・、死にたくない・・・!!」

「・・・・・・・・。」

トビーはエレナの背中に手を回し、話しかける。

「嬢ちゃん・・・、もうあきらめようぜ。気休めかもしれないけど、気持ちよくしてくれたお礼に最後まで俺がついててやるよ・・・。」

彼女は何も言わず、震えながらトビーの胸に顔を埋めていた。

(これでお別れだな姐さん・・・、先に梨香さんの所に行ってますぜ・・・。)
 
爆弾の威力は凄まじく、隧道の真上の地面をまるまる打ち砕いてしまった。岩盤が降り注ぎ、トビーはエレナもろとも土の中へ埋まっていく、頭まで土が被ってしまう最後の一瞬に太陽の光に照らされる空を見た・・・。

55カサブタ:2012/03/14(水) 02:23:55


「こんだけ打ち込めば、カタコンベは跡形もないでしょうね。」

すっかり地形が変わってしまった地上を見て、パイロットはつぶやく。 地上にはもうそこに町があった形跡すら残っていないほどに破壊し尽くされている。

「よし、空挺部隊を下ろせ。 ハンター共はゴキブリのようにしぶといから油断するな。まだ生き残っている者がいないか徹底的に洗え。 もちろんカタコンベもだ!! 形跡を残すものは棺桶の欠片でも焼き捨てろ。」

「ひひひ・・・、ずいぶん念入りですね隊長。 そりゃぁ、あのカタコンベを合法的に破壊できるチャンスですからね。枢機卿もさぞや鼻息が荒かったのでは?」

「黙ってろ。一兵士であるお前が知る所ではない。」

「へいへい・・・、 空挺降下開始させます。」

・・・・・・・・・
・・・・・・

激しい衝撃は、町からかなり遠ざかったと思われる隧道の東側まで及んでいた。 後ろから落盤による土煙が迫る中をみゆきは必死に駆け抜ける。 ここで絶対に死ぬ訳にはいかない。教会の罠に嵌った仲間たち、そして志半ばにして倒れた母に報いる為には、今この手の中にある情報を必ず生きて持ち帰らなければならない。

やがて、暗い洞窟の先に光が見え始めた。谷底の河原が見えてきたのだ。
もう落盤はすぐ後ろ。 土煙がみゆきを追い越しつつある。

みゆきは渾身の力を振り絞って跳んだ。 
彼女の体が川に没したその後ろで、岩肌に開いた穴が崩れ落ちた。 間に合った・・・。 

「く・・・っ!!」

落盤には巻き込まれなかったものの、みゆきは体中を強打してしまった。
命は助かったものの、この状態で川を下ってエステルゴムに向かうのは非常に危ういだろう。

と、そのとき。みゆきの目の前を古びた木の棺が流れていくのが見えた。

(ブツを運んでいた棺か・・・、爆発の勢いで飛び出てきたのね。 これは好都合だわ。)

みゆきは、近くに落ちていた流木を拾ってから棺に向かって泳いで言った、みゆきはその上に乗ると流木を櫂にしてカヤックのように川を下っていった。森が開けてくると、やがて目の前に広大な流域面積を持つドナウ川が見えてきた。

みゆきは棺を捨て、そこからは陸路で街を目指した。チェコ・スロバキアとの国境付近にあるハンガリー有数の歴史ある都市、エステルゴムの片隅にトビーから教えられた住所はあった。
トビーから渡された鍵を使って中に入る。その空き家は一見すると何も無いが、これはカムフラージュだろう。

案の定、床板の一部に隠し扉があり、その下の階段を下っていくと、最新の情報機器と武器で埋め尽くされた一室が姿を表した。パソコンの電源がついており、パスワードの打ち込み画面が表示されている。みゆきが指紋認証を行うと、画面には伸びきったプログレスバーとcompleteの文字が出てきた。

「データの解析を自動で行ってたのか・・・。きっと、さっき言ってたカタコンベの資料の解析が完了したのね。」

みゆきは早速、そのデータを見てみることにした・・・。さっきあそこで見たものの正体、そして恐るべき事実がここに書かれているに違いない。母がかつて見つけようとしていた事実が・・・。

56カサブタ:2012/03/14(水) 02:41:41

ローマ法王庁 バチカン

「ジェームス君!! これはどういうことだね!! 説明したまえ」

「はぁ・・・、何か問題でも?」

枢機卿が見ていたのは、今回の作戦で死亡が確認されたハンターのリストだった。各ハンター達の身元と、遺体発見場所、そして遺体の写真が載っている。彼が激怒していたのはその中に2つだけ、
遺体の写真が無い人物がいたことだ。

「トビー・トンプソンにミユキ・ホズミ!! こいつらは今回の作戦で確実に殺さなければならなかったターゲットだ!! なぜ死体を確認せんのだ!!」

「お言葉ですが枢機卿どの、あのミサイルの雨の後で死体の判別をしろってのも中々無理がある話ですよ。他の写真を見れば分かる通り殆どのターゲットが身体の原型を止めて居ない状態でして・・・、ミサイルの直撃を受けた場合は粉々になってその辺の灰との判別もできなくなってしまいますし、その二人に関しても生きているとは思えませんが。」

隊長の言っていることはもっともだった。
確かに、資料に出ている写真を見てみても死亡が確認されたハンターの中で、その顔や体が一目で判別できるものは少なかった。 住民どころか町自体が消えてしまうほどの破壊状況で、特定の人物が原型を留めたまま発見される可能性は極めて低いことだろう。

だが隊長の言葉を聞いても枢機卿の表情はまだ晴れなかった。彼の仕事は確かに完璧ではあるが、それはあくまで一般のハンターに対しての話だ。 トビーやみゆきに関しては実際に死体を見ない限りは死んだと確信することはできない。 

考えられないことだが、万が一あのカタコンベを発見されているとしたら・・・、それだけは絶対にあってはならない。

あの女の母親、穂積梨香はかつて教会のブラックリストに載った程の危険人物だった。 というのは、彼女は元々、教会専属の化物狩り部隊に所属していた優秀なハンターであり、多くの仲間のみならず何人かの枢機卿からの多大な信頼も得ていた修道女(プリースト)だったのだ。 しかし、ある日、教会がひた隠しにしていた禁忌とも言えるある秘密を知ったことで教会と決別。厳重に保管されていた聖遺物である生命の宝珠を盗み出し逃走したのだ。

以来、教会は彼女を抹殺する為に様々な手を尽くすが、あと一歩というところでいつも煙に巻かれていた。とうとう彼女を自分たちの手で始末することは叶わず、数年前に彼女が死んだという報告を受けたときには胸を撫で下ろしたものだが、今度は彼女の娘であるみゆきが立ちはだかってきたのだった。彼女の腕前は全盛期の母親に匹敵するものがあり、おまけに母から教会の秘密を知らされており、ハンター稼業の傍らにその証拠を探し回っているのだ。 また、梨香の現役時代に彼女の同僚だった元神父のトビー・トンプソンが、彼女の遺言によって娘であるみゆきの味方に回っているのも由々しき事態だった。 

(ここで、潰しておくべきなのだ・・・。 あいつらだけは・・・・・・。)

と、その時、枢機卿の机にあるアンティークな電話のベルがなった。
こんな時間になんだ? 今日は何も予定は無いはずではと、彼は受話器を取ったが

「ハーイ、枢機卿。 ずいぶん苛立ってるみたいじゃない?」

電話の先から響いてきた声に枢機卿は絶句する。そして、目の前に立ち尽くジェームスを忌々しげに睨みつけた。

「あの・・・、何か問題が?」

「いや・・・・・・、もうよい。 お前は下がってろ!!」

枢機卿は怒りを押し殺すように静かな声で言った。ジェームスが出ていくと、彼は息を整えて再び受話器を耳に当てる。

「これはこれは・・・、リカ・ホズミの娘か。 私の専用回線に直接電話するなんて余程、早急な用事なのかね?」

彼は、何も知らないと言う風につとめて冷静に答えた。

57カサブタ:2012/03/14(水) 02:45:40
「よくも、仲間のハンターたちを沢山殺してくれたわね・・・。 あの攻撃命令は貴方が出したんでしょう・・・?」

「あの村に、危険な吸血鬼が潜伏しているという情報を得たのだよ。 教会としては見過ごせないに決まっているだろう。 それに、君やお仲間だってどこからか同じ情報を得てあの村に集まったのだろう? まさか、ハンター達が死んだのを私のせいにするつもりか?」

「・・・・・・・・・。」

みゆきは黙っていた。

「私に文句を言ってくるとはお門違いもいいところだな・・・。こちらは君たちが頼っている情報屋と違って、村民全員が吸血鬼化していることを事前に掴んでいたんだよ。ならばヴァンパイアを一匹でも逃さないよう、速やかに全火力を持って処理するのは当然のことだろう?」

「へぇ・・・、私が街に向かっている間、検問も何も無かったわよ? 一般人が巻き込まれたらどうするつもりだったのよ・・・。」

「そんなことをして相手に悟られたらどうする。 我々にとってはヴァンパイアが逃げ出す方が一大事なのだ。勝手にやってきたハンター達が巻き込まれようが、それは自業自得というものだ。

納得がいかないか? ならリカの名を出して教会に私を訴えてみるか・・・? もっともハンター一人の言うことなど、信じてくれるとは思えんがね・・・。」

枢機卿はみゆきが仲間を殺されたことへの抗議として電話を掛けてきたのだと思っていた。
だからこそ、枢機卿はあくまで作戦の正当性を謳い、わざとみゆきの神経を逆撫でするような口調で話していたのだ。

きっと彼女はこう思うことだろう・・・
今回の作戦の目的は、ヴァンパイア狩りにかこつけて気に入らないハンター達を一掃することが目的だったと・・・。そして我々教会がその事実を隠蔽しようとしていると。

ならば、そうであるとますます彼女に思い込ませてやればいい。 彼女は教会に対する恨みを一層強くするだろうが、そんなことはどうでもいい。
彼女が作戦の本当の目的に気付かなければそれでいいのだ。

だが、次のみゆきの発言を聞いて彼は凍り付くことになる

「そう、訴えてもいいのね? なら、あんたたち教会があの町の地下に隠した秘密を世界中にバラしてやるわ。」

「・・・っ!! なにっ?!」

「時間が無いから単刀直入に言うわ・・・。 私、母さんが探していたものを見つけたの。
あんたの目の前にあるパソコンにダイレクトメールを送ってあるからチェックしてみなさい。」

枢機卿は急いで、デスクのパソコンから自分宛の連絡をチェックした。
見るとそこには今しがた届いたと思われる画像ファイルとデータファイルがあった。
そして、その内容を見た彼は青ざめる。
そこには、教会の部隊が破壊する前のカタコンベと、その中の棺、そして、棺の中の奇妙なミイラがはっきりと写っていたのだ。

なんということだ・・・。よりにもよって彼女にここが見つかってしまうとは・・・。

とうとう恐れていた事態が起こってしまった・・・。
しかし、彼はなんとか冷静さを保ち、白を切り通そうとした

「こ・・・これがどうしたというのだ・・・、 一体なんなのか私にはわからん。 あの女が何を探していたって?」

「まだとぼける気? これこそあんたたち教会がひた隠しにする秘密でしょ! これで母さんが言ってたことが正しかったことが証明されたわ!! ヴァンパイアはあんたら教会が作り出した物だったのねっ!!」

58カサブタ:2012/03/15(木) 02:15:22
なんとか、平静を保とうとする枢機卿だが、手の震えが収まらない。 
非常にまずいことになった。 あれが公になれば、自分の進退だけではない。教会全体にとって大きなダメージだ。

「あんたら教会は長年に渡り、“不老不死”の研究を行ってきた。 あんたらの教えによれば、歴史上死んでから生き返った人物はただ一人・・・。 
よって、死なない身体を手に入れることは彼と同等になることであり聖人になることと同義なわけよね。もし実現できれば教会の権威を絶対の物とすることができる・・・。 だからあんたたちははるか昔から血眼になって探求を続けてきた。 そうでしょう・・・?」

反論しなくては・・・、そう思っているはずなのに枢機卿の口からは言葉が出てこない。 

「そして、研究の過程であんたらはとてつもない過ちを犯した・・・。
はるか古代、死なない肉体の開発に行き詰まった当時の教会は、ついに教えで禁じている筈の黒魔術に手を出し・・・、
 そしてとうとう天の摂理に反し、創造主に唾吐く、おぞましい術式を完成させた。 他の人間の命を自らの中に取り込み生き永らえる存在、ヴァンパイアを作り出す方法をね!!」

かつて梨香が教会にいた頃、恐るべきヴァンパイアが現れた。
桁外れの魔力を持ち、それまで多くのヴァンパイアを葬ってきた化け物狩りチームの装備すら通用しない怪物だった。そして何より、おそろしく残虐かつ狡猾で、梨香の仲間たちは多くがそのヴァンパイアに殺されてしまったのだ。

そいつこそ、噂こそ聞いていたが、だれもがその存在を信じているわけではなかった存在。
始まりのヴァンパイア、“真祖”の一人だったのだ。

ロサリナ・エルジュベート。
ハンター達の間でも“ブラッディ・ローズ”の異名で恐れられる最凶の吸血鬼にして、全ての吸血鬼の頂点に立つ存在だ。 彼女はヴァンパイアこそ人間を越える種であるという強い確信を持っており、人間を食い物か奴隷としかみなしていない。プライドの高い彼女は世界を人間が支配していることが大いに不満らしい。永遠の美しさの為に人を襲うことに飽き足らず、人間すべてを自分の奴隷にして全世界を支配下に置くという壮大な野望を抱いているのだ。 
 そんな慢心を持つヴァンパイアは決して少なくないが、ローズの場合、それを実現するだけの実力を備えているから始末が悪かった。

梨香はすぐさま仲間たちの仇討ちの為に、法王庁が秘蔵する宝物級の武具の使用と、真祖討伐の許可を申し入れたのだった。 一般の戦闘員とは違い、梨香にはそれだけの許可を取り付ける実力があったのだ。

だが、教会から返ってきた答えは不可だった。どういうわけか、上層部は真祖に関わるなと釘を刺してきたのだった。

だが、梨香は教会からの勧告を無視して、そのブラッディ・ローズについての情報を密かに集め出した。
そして、教会の内情を探っているうちに彼女は世にもおぞましい事実を知ってしまうことになったのだ。

はるか古代の時代に教会は不老不死の研究の途中、ヴァンパイアを作り出してしまったこと。
その最初のヴァンパイア達こそが真祖の正体であり、現在いる全てのヴァンパイアの祖であり、仲間たちを殺した仇敵であること。

そして、教会はその事実を秘匿していたうえに、ヴァンパイア達を処理するどころか、今でもどこかに封印しているということだった。真祖の一人ローズが封印を破り、我が物顔で外を歩き回っていたのはすべて教会の過ちゆえだったのである。

この事実を知ったわずか3日後、梨香は宝具である生命の宝珠を盗みだし出奔した。

59カサブタ:2012/03/15(木) 02:19:10
「あんたらは、過ちに気付いていながら結局、作り出したヴァンパイアを放棄することができなかった。
ヴァンパイアの中でも真祖の力が桁違いだっていうことは私もよく知っているわ。
不老不死の足掛かりになるかもしれないし、そうでなくてもあの力をコントロールできれば強力な武器になるからね。 あんた達はとりあえずあの街のカタコンベにヴァンパイア達を封印して隠し、うまく利用するための研究を密かに進めていたんでしょう? でも、そのせいでやっかいなことになってしまった。
封印は解かれ、真祖は目覚めてしまったのよ!!」

「そ・・・それは・・・推測にすぎない!! 我々があの町にヴァンパイアを隠していただと・・・!?
デタラメを言うな!!」

「ハンターに転向した母さんや、その娘である私を躍起になって消そうとしていたのはこの事実を悟られるわけにはいかなかったからでしょう・・・?
 情報化が進んだ今の時代、あの巨大なカタコンベや大量の真祖のミイラをハンターや他の宗教団体に知られることなく秘密裏に処理するなんて出来るわけが無い。とりわけ、ハンターは情報を盗み出すのも広めるのも早いから、特に危険視してたんでしょ? あんたらは相当、頭を悩ませていたはずだわ・・・。
でも、そこに思わぬチャンスが舞い込んできた・・・。 待ちに待った機会がね・・・!!」」

みゆきはそこで一呼吸おいて、いよいよ問題の核心に触れる。

「あの村で不老不死の研究をしていたあんたらの関係者が、あんたにある提案を持ちかけてきた。
村にヴァンパイアをわざと蔓延させて、その処理の名目でカタコンベを村ごと消滅させようという計画よ。 ついでにヴァンパイアと真祖の情報をハンター側にもリークしてあの村に集まらせ、不安の種をまとめて潰そうって魂胆だったんでしょう?」

「憶測だっ!! 我々は真祖なんて生み出していないし、そもそも真祖という存在など関知すらしていない!! 今回の作戦はヴァンパイアの処理という責務を果たしただけだっ!!」

「そう・・・、ならそのメールに添付されてるもう一つのデータを見なさい。 そこに私の言うことの根拠が全部書いてあるわ。」

枢機卿は、メールに添付されているもう一つのデータを開いた。
そして戦慄する。 それは、カタコンベの写真以上に想定外の物だったのだ。

「なんだ・・・、 これは・・・・・・!!」

それは羊皮紙に書かれていると思しき古い街の地図と、いくつかのスケッチの写しだった。
地図に描かれたその街は明らかにみゆき達が向かったホロウ・クイだった。そして、そこには地表の街と共に地下のカタコンベの構造までも詳細に描いてあったのだ。
それはまさしく、教会の最高機密であるあのカタコンベの工事計画書だった。
そこには、当時の法王の署名のみならず、工事責任者としてローバックスのサインまであったのである。

そして、もう一つはなにやら物品の名前と数字が書かれた目録のようなものがある。
空っぽの棺を使ってカタコンベに運び込まれた物品のリストだった。そこには金塊や宝石とその重量が書かれていたが、それに混じって人間の名前と、運び込まれた年月日が書かれていた。

見ると、そのいくつかの名前の中に、ロサリナ・エルジュベートの名がはっきりと書かれていたのだ。

「この年月日は、ちょうど中世で魔女狩りが行われていた時期だわ。
ロサリナ・エルジュベート・・・。 つまりブラッディ・ローズも魔女狩りによってあんたら教会が処刑した異教徒の女僧だったようね。おそらく、ここに名前が書かれている他の人間達も同じくヴァンパイアの素体にされたんでしょう? あんたらは街の下の川から隧道を通って死体をカタコンベに運びこんでたのね。他にも、そこで行われたと思われる研究の記録が私の手元に大量にあるわ。あんたらが罪人の死体をあのカタコンベに集めて不老不死の研究や実験を行っていた証拠よ。」

「ばかな・・・・なんなのだこれは・・・!! なぜそんなものがあるのだ!! 
これは、法王庁の地下金庫に厳重に保管しているはずなのに・・・。」

「やっぱり・・・、その反応を見るとこれをトビーに渡したのはあんたらじゃないようね・・・。
そもそもこんな機密情報が、簡単に複製したり改竄できる電子データになってるなんておかしいと思ったわ。」

「トビー・トンプソンがこれを持っていただと・・・、バカな・・・、例え教会内に奴の内通者が居たとしてもこれを持ち出せる筈が無い・・・。一体誰が・・・。」

60カサブタ:2012/03/15(木) 02:22:32
と、そこで枢機卿の頭にはある人物の顔が浮かび上がった。

「ま・・・まさか・・・。」

「そうよ、いるでしょう? 教会の金庫に忍び込まなくても、これら資料のオリジナルを持っていそうな人間が・・・。」

そう・・・、枢機卿自身にもそれしか考えられなかった。だが、信じたくなかった・・・。
まさか・・・、あの男がそんなことを・・・・・・。

「キルシュ・ローバックス。話を持ちかけてきたのはそいつなんでしょう? その資料によればローバックスの家系は代々、あのカタコンベの墓守だったそうね? その計画書に書いてある通り、古くからあの地域を治める辺境伯だったローバックス家は街の建設に関わっているだけでなく、教会で不老不死の研究にも携わっていた。あんた以外にこの資料のオリジナルを持っている人物はこいつしか考えられないわ。」

「ばかな・・・・・・、そんなことがあってたまるか・・・。奴は教会に忠誠を尽くしている筈・・・。」

「いい加減に認めなさいっ!! ジョリオ・ローバックス!! 
あんたの息子はもう心の底まであの魔女に毒されてしまっているのよ!!
あんたら教会は、まんまと欺かれていた。 奴は教会に隠蔽工作を持ちかけておきながら、あんたらがもっとも警戒するハンターの一人であるトビーにこれをわざと盗ませていた。

それはなぜか・・・。 今のこの状況こそがその答えよ!!
あんた達が、町をひとつ消してでも隠したがっていた秘密は今私の手の内にある。

そして、私にはこれを世界に公開する動機も準備もある。 今、ほんの少しキーを操作すればそれができるのよ!!
私がハンターたちの弔いの為にこの秘密を暴露すれば、教会は世界中の批判に晒される。
今回の隠蔽工作のことまで公になれば、あんたらといえど二度と権威を取り戻せなくなるでしょうね。

もうわかるでしょう? ハンターと教会を同士討ちさせて、邪魔者同士潰し合わせるのが奴の本当の目的だったのよ。」

枢機卿はまだ信じられなかった。あの優秀な息子がまさかこんなことをするなんて。

「あんただって分かっているんでしょう・・・? キルシュを唆してあんたらにこのえげつない作戦を実行させたのが誰なのか。 ハンターと教会の両方が潰れて一番特をするのは誰なのか・・・。」

「・・・ブラッディ・ローズ・・・っ!!」

「あの女が裏で糸を引いていたことは分かっている・・・。 でも、その提案をまんまと受け入れ、たくさんの仲間たちを殺したあんたたちが憎い。 とっても憎いわ・・・。

あいつの思うツボだってわかっていても、私はこの情報をバラまいてあんたたちを破滅させたくてしょうがないのよ・・・。 今でもこのボタンを押す衝動を抑えるので精一杯だわ。」

「やめろ・・・!! たのむ・・・やめてくれっ!!」

枢機卿は今までの態度から一変して、一気に下手に出た。

「全て話す・・・!! だからその情報を流さないでくれ・・・。 たのむ・・・、もしそれが公になったらバチカンの崩壊だけでは済まないんだ。我々の破滅は三千世界の敬虔な信徒たち全てに及ぶのだ。」

またその言い訳か。何を勝手な・・・。 みゆきは信徒達を盾に取った彼の言い草に辟易しながらも情報の漏洩を寸でのところで思いとどまった。

しばらくの沈黙の後、枢機卿は真実を語り始めた。

真祖に関する研究は、公に凍結された中世以後もローバックスの子孫に代々引き継がれていた。 薬学の天才とも言われるキルシュ・ローバックスは、ヴァンパイアを利用する手段についてかなり研究を進めており、とうとう教会の悲願を達成するものと期待されていた。

だが、数年前。キルシュの手で長い眠りから目覚めたブラッディ・ローズは、その力を暴走させて一度教会の手を離れてしまった。ジョリオ・ローバックス枢機卿は、息子と家系を守るためにこの失態を隠ぺいしようとした。ローズの正体を教会にも隠したまま処理しようとし、そのために何も知らされていなかった梨香とその仲間たちはローズをただの吸血鬼と思い込んで返り討ちになったのである。

後に教会を離れてハンターになった梨香によってローズは棺を焼かれてしまった。みゆきと藍が出会ったあの夜のことだ・・・。

その後、姿をくらましたローズは実はキルシュによって身柄を保護されていた。
枢機卿はローズを再び封印するよう息子に伝え、危険な研究は今度こそ本当に凍結されるはずだったのだ。

61カサブタ:2012/03/15(木) 02:25:32
だが、それから少し後、息子であるキルシュから研究がついに完成したという連絡があった。ついに真祖を完全にコントロールできるようになったというのだ。

キルシュはその証明としてローズの力によって不治の病を克服し、教会の手を掻い潜っていた梨香をたちまち始末してみせた。

枢機卿は息子の命令に従うローズの姿を見て歓喜に震えたという。とうとう、真祖の力を自在に操る術を手に入れた。これで、失態を帳消しにできるだけでなく、教会の権威を世界に示す準備ができたのだと信じて疑わなかったのだ。

 結果が出たとなれば、後は、禁断の研究の証拠をどのようにして処分するかが問題だった。そのときキルシュは、あの町ごと研究の証拠を全て葬り、ついでに邪魔者であるハンター達も一網打尽にできる策を枢機卿に提案した。カタコンベにハンター、この厄介な不安要素を“合法的”に処分できるその提案に彼はすっかり乗り気になり、何の疑いもなく実行に移したのだ。

「だが、あんたは大きな思い違いをしていた。 キルシュはローズを手懐けたわけではなかった。逆にローズによってキルシュは支配されてしまっていたのよ・・・。おそらく、彼が最初に奴を目覚めさせた時から既に虜にされていたのよ。

ローズは当初、教会とハンターの両方を自分の力でねじ伏せようとしていた。
しかし、母さんに棺を焼かれたことで力を失いかけた奴は別の手を考えたんだわ。

既に眷属となっていたキルシュに従うふりをして、あんたを信用させ教会を味方につけた。
そして、今回の作戦で教会にハンターを始末させ、カタコンベの情報を私に流させることで教会も潰そうとした。奴は自ら手を下すことなく私達両方を消そうとしたのよ。」

枢機卿は暫く黙ったあと、気落ちした声で話しはじめる。

「息子は生まれ持った持病で残り少ない命だった・・・。
本当ならもうとっくに歩くこともできなくなっている筈なのだ。現に、あやつが真祖を私に引き合わせたあの日の数ヶ月前までは、太陽の下に出ることも憚られるくらいに病状が進行していた。

あの日・・・、不治の病を克服して見違えるように健康になったあやつの姿を見て、私は永遠の命についての研究が完成したことを確信しただけでなく、息子があの化け物を手懐けたと思ってしまった。

あとは大体、お前の言ったとおりだ・・・。あの女は教会に全面的に協力することと引換に自分を化け物狩りの討伐対象から外すことを申し入れてきた。息子も真祖の管理を任せてくれと言ってきたから、私は半ば黙認という形で彼女に関する全てのことを息子に委ねたのだ・・・。
敬虔なあやつならまさか、吸血鬼に対して間違いは起こすまいと・・・。」

彼の告白を聞いたみゆきは、怒りを通り越して呆れてしまった。

「そうして、あいつにとって都合のいい環境が整ったわけね・・・。キルシュとあいつは出張という名目でまんまと日本に高飛びし、留守の間に街は予期せぬ事態によって合法的に浄化される。
ハンターは運悪く、その浄化作戦に巻き込まれて止むを得ず全滅するというシナリオね。」

「・・・・・・・・・。」

「息子の為にやったなんて言い訳が通用するとは思わないことね。
あんたの行動はあまりに軽率すぎた・・・。ハンター憎さのあまり判断を誤ったわね。

でも、幸運なことに奴のシナリオはまだ完成していない。 私が教会を破滅させなければ、奴に立ち向かう勢力が無くなるという最悪の事態は回避されるわ。」

「思いとどまってくれるのか・・・。」

「自惚れないで。私はあんたたちを許すつもりは無い。 あいつを倒すという目標を達成する上で適切な判断をしたまでのことよ・・・。 当然、タダで済むとは思わないことね。
あんたらには私に協力してもらうわ。あいつを倒せるほぼ唯一の攻撃手段は今私の手にある宝珠の弾が2発だけよ。 これを奴の心臓に確実に打ち込む為には現状の私の力では到底足りない。それなりの準備が必要だわ。」

「我々に協力しろというのだな?」

「枢機卿・・・、あんたのハンター嫌いはよく知ってるわ。
でもこの際だから目を開けて、よく考えなさい・・・。 あんたが立ち向かうべきだった敵は母さんでもなければ私でもない。 異教徒でもないしハンター達ですらない・・・。 
あんたたち自身が生み出し、あんたの息子を奪ったあの悪魔でしょ・・・?」

「・・・・・・・・・。」

62カサブタ:2012/03/15(木) 02:27:25
「対魔装備で武装したヘリを最低でも3機。 あんた達の中でも選りすぐりの戦闘部隊を一個小隊レベル。それと私にもヘリを一機ちょうだい。今から必要な装備をメールで送るからそれに換装して明朝までに用意して。当然それを日本の領空内で飛ばせるように根回しを頼むわよ。私が持つ全データは作戦の成功後にあんたらに引き渡すわ。明朝までに来ないようならすぐにバラ撒く。以上よ。」

枢機卿の返事を待つことなく電話は切れた。彼は、大きなため息をつくと、先程下がらせたジェームスを呼び戻した。

「ただいま戻りました。 要件は何でしょうか?」

「すぐにお前の部隊を完全に動ける状態にしろ。今日中にだ。作戦内容は極秘。 
ハンガリー教会に着陸許可を取るから明朝、エステルゴムに飛べ。そこにミユキ・ホズミが待っているからピックアップして後は彼女の指示に従え。」

「へっ?!」



電話を終えたみゆきはデータを厳重に保管しなおしたことを確認すると、大きく伸びをした。
教会に要求する装備のリストをすぐに纏め上げそれを送ると、少し気が楽になったためか自分が空腹であることに気づいたのだ。

みゆきは、近くに置いてあった冷蔵庫からいくつかの食料を取り出し、料理もしないまま頬張った。
ポットで湯を沸かし、インスタントコーヒーを飲むと、ようやく落ち着いた気分になったのだ。

「あたしも甘くなったわね・・・。」

みゆきはさっき、自分が教会の秘密をバラさなかったことに少し驚いていた。
一人でローズに立ち向かえるわけがないので結果的にはそれで良かったのだろう
だが、それでもあれだけひどいことをされて、怒りに燃えていたのに、結局は共闘する道を選ぶなんて、ちょっと前までは考えられなかったことだ。

彼女の理性をギリギリで引き止めたのは別れ際のトビーの言葉だった。

“姐さん、俺がいなくなってもどうか仇を打とうなんてバカなことは考えないでください。
敵を間違えちゃいけませんぜ。 姐さんは藍ちゃんを守ることだけを考えてください。”

感情に流されて、冷静な判断を失うのは決してあってはならないことだ。だが、頭ではわかっていても中々できることではないのも事実。あの時、トビーに嗜めてもらえなかったら今私はどうしていただろうか。

「ありがとう、トビー。 貴方には本当に最後まで助けられっぱなしだった。」

63カサブタ:2012/03/15(木) 02:31:12
そして、みゆきは、忌まわしい記憶を思い出していた。5年前のこと、藍と始めて出会ったあの時に取り逃したローズが復讐しにきた。藍を攫いにきたのだ。

彼女は10数年前の黒ミサによって禁断の力を得て以来、“進化”を続けているのだ。普通のヴァンパイアが恐れるニンニク、聖水、銀等の弱点を克服し、炎でも死ぬことはない。

 だが、今まで奴が更なる変異を遂げることはなんとか防げていた。奴が進化する為の重要な鍵を藍が握っていることが分かったのは奴が再び襲ってくる少し前のこと・・・。 もっとはやく気づいていたらと何度思ったことか。

そもそも、本来、吸血鬼や魔女が自分の魔力を高める為に行う儀式である黒ミサと、ローズがかつて行った儀式はまったく種類が異なるものだったのだ。

吸血鬼は永遠の命と強大な魔力と引き換えに生物が持つ大きな性質を失っている。
それは、生殖機能。 淫魔の一種である吸血鬼にとって精液は生殖の手段ではなく食料に過ぎないので、子供を作ることができない。そもそも、永遠に生きられる彼女達にとって子孫を残す能力は無用であり、生殖機能が無くなるのはある意味では自然の摂理だった。しかし、それは自分と異なる個体との間に子孫を残し、多様性を手に入れることができないことを意味する。吸血鬼は生物の特質である“進化”ができないのだ。

だが、ローズは吸血鬼としての永遠の命を保ちながらも人間と同じように多様性を手に入れる術を完成させた。 それがローズによる“薔薇の黒ミサ”。自分の血を与えるだけでなく、魔力や遺伝子を凝縮した種を眷属たちに埋め込む。そして眷属たちを特殊な魔方陣の中で交わらせ、何人もの良質な精を持つ人間達を襲わせる。母胎となる眷属の体内で、生命エネルギーやローズの血が結びつくと。その眷属は、ローズとまったく同じ姿を持ち、それでいて、進化しているハーフヴァンパイアの子供を孕むのである。しかも、ハーフといってもただの下級ヴァンパイアではない。薔薇の黒ミサで生まれる子供は、人間の利点を持っている上で真祖の力も兼ね備えた、まさに究極の存在なのである。

そう、かつて黒ミサの現場で唯一人生き残り、梨香とみゆきによって保護された少女、藍こそがローズが生み出した分身だったのだ。みゆきたちの邪魔さえ入らなければ、ローズは新たな器である藍に魂を移し、より強大な力を手に入れる筈だったのである。

ローズが藍の体を手に入れていたら、それこそ大変なことになっていた。
太陽の光も生命の宝珠も通用せず、定期的に血を吸わなくても食事は人間と同じ物で平気になる。今、奴が全力を出せるのは夜に限定されているが、藍の体を手に入れたらきっと手がつけられなくなっていた。

その事実を知った梨香は、再び現れたローズに絶対に藍を渡すまいと決死の覚悟で挑んだ。
梨香は藍とみゆきを守るため、奴の罠に嵌って命を落とし、ヴァンパイアに対抗する強力な武器である生命の宝珠は粉々に砕かれてしまった。不利になるとわかっていながら、梨香はトビーにみゆき達を逃す手伝いをさせ、最後まで一人で戦ったのだ。みゆきにできたことといえば、梨香の遺言に従って藍を奴の目から隠したことくらい。何もできなかった彼女は弱い自分と決別する事を心に決めた。あの日を境にみゆきは本当の意味でハンターなったのだ。

梨香が死んだ後、藍は自分を責め、悲しみに暮れた。自分さえいなければ梨香が死ぬことはなかったのにと、何度も言っていた。そして、私に対して自分を殺してくれと懇願してきたことすらあったのだ。

だが、私にも母にも藍を殺すという選択肢は無かった。藍は私たちの大切な仲間だったからだ。
私たちの関係はあれから幾度となくぎくしゃくしたが、藍はなんとか私の気持ちをわかってくれた。
そして彼女は贖罪の意味を込めてか、ハンターとして戦うことを申し出てきて、今では共にヴァンパイアを狩るパートナーとなったのだ。

「藍・・・。」

みゆきは目を細めて、いままで彼女と過ごしてきた日々を思い出していた。楽しかったこと、苦しかったことは何度もあったが、どんなときも藍は側にいた。 思えば、生まれてからずっとハンターとして生きてきた私には同年代の友人がいなかった。 そんな自分にとって藍は初めてできた友達だったかもしれない。

「まっていてね・・・。 貴女は絶対に奪わせないっ!!」

64カサブタ:2012/03/15(木) 02:36:36
ポケットの中にある宝珠の弾を確かめる。この2発の弾丸が最後の希望だ。
あの日、砕かれた生命の宝珠の欠片を掻き集め、細かく砕いて弾頭に詰めた必殺の退魔兵器。
火薬の爆発を利用して励起し、一瞬だけ宝珠の光を出すことができる。今ではあいつに致命傷を与えられるほぼ唯一の武器だった。みゆきは日本に帰り、そこにいるであろうローズをこの弾丸で確実に仕留めなければならない。

みゆきはコーヒーカップを置くと、来るべき決戦に備えて早速準備を始めるのだった。

9

“○月×日未明、狛江市内の路上で、少年の遺体が発見されました。少年は身体から血を抜かれており、首筋に小さな傷がある意外は目立った外傷は無いとのことです。歯の検査記録からこの遺体の身元は同区内に住む高校生であり、数日前から行方不明になっていた、金森健二さん(17)であることが判明しました。遺体の状況から警察は一連の怪死事件と同一犯の犯行と見て調査を進めており・・・    ”

みゆきが出かけてから4日目のこと、都内某所にて連続怪死事件の第5の犠牲者である金森健二の葬儀が行われていた。カズと藍が斎場に着いたとき、既に親族や友人と見られる人々でごった返していた。中には藍と同じ蓮見台女子校の生徒達もいるようだ。

外には数台のパトカーが止まっており、何人かの制服警官が神妙な面持ちで葬儀を見守っていた。

「あっ!! 大原警部!」

藍とカズはその中に初老の警部の姿を見つけ、話しかけた。

「あぁ、水無月さんに早瀬さん・・・。 いらっしゃったんですね。
この度はご友人の身内の不幸だそうですね。お悔やみ申し上げます。」

「ありがとうございます。 でも世田谷署の大原さんがどうしてこちらにいらっしゃるんですか・・・。」

「ええ、今回はかなり大きなヤマなので各区の署が合同で調査を行っているのです。 ですが、実を言いますと私の娘も紅葉台学園の生徒でしてね。 心配なので無理を言って来させてもらったんです。危ないから来るなと言ったのですが、被害者の金森健二さんとは幼いころからとても仲がよかったので、どうしても行くと言って聞かないんです。」

「そうだったんですか・・・。」

大原警部と別れ葬儀場の中に入ると、藍はその中に一人の少女の姿を見つけ、近づいていった。

「晶子・・・。」

「あ・・・ 藍ぃ・・・、 健二が・・・けんじがぁぁ〜〜〜っ!!」

彼女は藍の胸にすがって泣いていた。藍は彼女の身体をやさしく抱きしめ、背中を撫でてあげた。
金森晶子は死んだ金森健二の姉であり、藍のクラスメートでもある。渡来船でカズが藍と始めて会ったとき、彼女と一緒にいた友達の一人だ。

あの時、友人の中で彼女は藍とカズの関係について特に口うるさく根堀り葉堀り聞いてきた。見るからに活発なスポーツ少女という印象だった。その晶子が今では悲しみに暮れ、言葉もまともに発することが出来なくなっている。藍に抱かれる肩はあの元気な姿が信じられないほどに小さく見え、カズはどうにもやりきれない気分になった。

65カサブタ:2012/03/15(木) 02:40:27
祭壇の上には、つい先日姉と共に渡来船に来店したままの健二の写真が飾られている。

カズと共に葬儀の列に並び焼香を済ますと、藍は棺の中の健二に意識を集中した。彼の亡骸があまりに悲惨な状態の為、棺の窓も閉められているが藍は透視を使って彼の遺体を調べた。

死者を辱める行為に後ろめたさもあるが、警察ではない自分が被害者の身体を詳しく調べられるまたとない機会だ。これ以上の犠牲を出さない為にも必要なのだ。

(やっぱり、ヴァンパイアの仕業だ・・・。それも並のレッサーとは比較にならない魔力の残滓がある。 純粋なヴァンパイアの仕業か・・・、そうでないとすればやはりこの前の黒百合と同じパターン・・・。
ヴァンパイアの意志が宿ったマントによって、純血種に近い力を得ているのかしら・・・。)



「健二くん・・・。」

献花台に置くための花を握った小さな少女は、祭壇の上に飾られた健二の写真を見ながら震えている。
来賓席の方を振り向くと、一緒に式に出席していたクラスメートの中にマリアの姿を見た。

(なんで・・・・・・、なんでそんな平気な顔でここに来られるの・・・。 健二くんを殺したくせにっ!!)

大原七海の心は悲しみと怒りで張り裂けそうだった。 できることなら、この場で犯人の名前を大声で叫んでやりたかった。

しかし、彼女は堪えた。マリアの正体が吸血鬼で、健二を殺したなんて誰が信じてくれるというのか。
もしそれで私が彼女の正体を知っていることがバレたら今度は私が殺されてお終いだ。 幸いにも彼女は私が現場を見ていたことに気付いていない。

でも・・・、それなら一体誰に話せばいい? 警察に話したってきっと信じてはくれない。吸血鬼であることを隠して単なる殺人として通報すれば動いてくれるかも知れないが、なにしろ相手は超常の化物だ。いたずらに犠牲者を増やすだけなのでは・・・?

七海はもどかしかった。せっかく相手の正体を握っているのにそれを生かす術が無いなんて。
七海が肩を落として祭壇の方へ歩いていくと、先に焼香に行っていた男女とすれ違う。

「間違いなくヴァンパイアの仕業だわ・・・、4人も犠牲者が出てから気づくなんて・・・。」

「俺にだって落ち度はあるよ。 新聞は読んでたけど、殺人事件とかのニュースはいつも流し読みしてるから気づかなかったんだ。 これじゃみゆきさんにも顔向けできないな・・・。」

七海は思わず立ち止まってしまった。 いま・・・、ヴァンパイアって・・・?
彼女はその二人を背中ごしに目で追った。  

(えっ!? あの女の人って・・・・・・っ!!)

男の方はごく普通の男性に見えるが、彼と話している女子高生と思しき少女の横顔を見て彼女は衝撃を受けた。
そして、藍とカズの二人を密かに見つめているもう一つの目があった。マリアはクラスメート達と話しながら横目でカズと藍の姿を捕らえていたのだ。

(くすっ、やっぱり来たわねアイさん・・・。
なるほど、お姉様の言った通り落ち着いてるように見えてすごく警戒してる。 少しでも襲うそぶりを見せれば気配を感じ取られてしまうわね・・・。)

ローズからは無闇に藍に近づかないように念を押されている。なんとか彼女の隙をつく手を見つける為にマリアは絶えず策を巡らせていた。
わざと世田谷の周辺で“食事”をしていたのは、ハンターである藍の出方を見る為だった。 中々、餌に引っ掛からない藍にやきもきしながらも、彼女は執念深く藍の弱みを探ろうとしていたのだ。

(ふふ・・・、貴女がいくら警戒していたとしても私はもう見つけちゃってるのよ。 貴女の泣き所をね。)

藍の隣に寄り添う男を見てマリアはほくそ笑んだ。 藍の友人の身内というとっておきの餌を撒いた甲斐はあったということだ。
真っ向から責めるのがダメならば、外堀から埋めていく。敬愛するお姉様のアドバイスに感謝しなければ・・・。

66カサブタ:2012/03/15(木) 02:43:08
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」

途中、カズは藍を残して一人用を足しにいった。 その後、藍の元へ戻ろうと斎場の廊下を歩いていると、途中、制服を着た女の子とすれ違った。

「ん・・・?」

女の子のポケットからハンカチのようなものが落ちるのを見たカズはそれを拾い、彼女を呼び止める。

「ちょっと君。 何か落としたよ」

「あっ!! すいません。 ありがとうございます!」

彼女はカズに駆け寄り、ハンカチを受け取った。

カズは改めて彼女を見て、おっ、と思った。
てっきり髪を染めているのかと思ったが、顔つきも白人系だ。 留学生、もしくはハーフか何かだろうか? なんにせよなかなかの美少女だ。 ニコニコと笑う可愛い少女の姿に、カズのスケベ心も思わず反応してしまう

「よかった〜。これお気に入りなんです。なくしたら大変でした。」

「そ・・・そう、よかったね。 気をつけなきゃダメだよ?」

「ありがとうございます。 お兄さん♪」

そういうと、彼女はカズの頬に チュッ、と軽くキスをしたのだった。

「っ!!」

カズが一瞬石化しているうちに彼女は足早に歩いていってしまった。

「・・・・・・え、と。」

頬に降れてみると、一点だけわずかに濡れており、柔らかい感触の余韻がまだ残っていた。
和也はいろんな物がぐるぐる回っている頭をなんとか整理しようとして、結論をだした。

「うん・・・・・・、ただの挨拶だよね・・・。 おふらんすではみんな普通にやってるっていうし・・・
フレンチキスってやつ?」

今の子がフランス人かどうかもわからないが、そういうことにして藍のところへと急いだ。

「ごめんごめん、 ちょっと遅れちゃったね。」

「・・・? どしたの? 顔赤いよ?」

二人のやりとりを遠目にみていたマリアは、微笑みながら唇をぺろりと舐めた。

「ふふ・・・、私のあま〜いキスの味をじっくり味わうことね・・・。 とっても刺激的よ。」

67カサブタ:2012/03/15(木) 02:45:59
葬式に参列した後、和也と藍の二人は高幡不動駅から京王線に乗って家路についた。
学校帰りの若者が多い車内で、スーツ姿のサラリーマンと名門女子高の制服を着たお嬢様という異色の組合せは中々目立つ。だが、二人は周囲を気にかけないようにして、これからのことを相談しあった。

「どう思う?」

「おそらく、この前の黒百合と同じケースだわ。 すごい魔力を感じるのに肝心の吸血鬼本体の気配は何も感じ取れない。 もしかしたら、今回の敵も前のマントみたいなので吸血鬼にされた一般人かもしれないわ。 だとしたら厄介なことになる。 あのマントは身につけている間だけ吸血鬼化するみたいなの。」

「あのマントは一つだけじゃなかったってこと・・・? 一体誰がばら撒いているんだろう。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・? 藍ちゃん?」

「あ・・・っ!! ごめん。 ちょっと、よくわからない・・・。 
でも、ハンターの経験からいうと、 吸血鬼はどこかに自分の“城”を構えている場合が多いわ。城っていうのは日中、潜伏してる場所のことで自分の棺桶を隠してあったりもするんだけど。 一度、城を構えた吸血鬼は滅多に拠点を移動させようとはしない傾向にあるの。つまり・・・。」

「被害は城を中心にして起こる・・・? てことは、実行犯は狛江や世田谷周辺のどこかにいるってことかな。」

「可能性は高いけど、集中捜査しようにも範囲が広すぎるわね・・・、この前の黒百合は世田谷在住だったけど、マントをばら撒いた黒幕が都心にいるとは限らないわ。多摩地域のどこかに拠点を構えてさえいれば電車や車を使って都心部で事件を起こすことは可能よ。こうなると、もうしらみつぶしに足で探すしかないわね。私は早速、明日から探索を始めるつもりよ。」

「俺もできる限り協力するよ。 まぁ、藍ちゃんの方が俺なんかよりずっと強いし余計なお世話と思うけど・・・。」

「ううん・・・、そんなことないよ・・・。 
カズ君はあまり気付いてないかもしれないけど、私は結構カズ君に救われてるんだよ・・・?
この前のお店でのこともそうだし、普段もカズ君から沢山元気を貰っているもん。 だからそんなに卑屈にならなくてもいいと思うけどな・・・。」


二人は明大前で京王線から井の頭線に乗り換え、下北沢へと帰ってきた。
既に日は傾きかけ、周囲は夕闇に包まれようとしていた。

「藍ちゃんはこれから渡来船に戻るんだよね?」

「うん、みゆきさんの言いつけだもん。それに、今後の対策を練らないとね。みゆきさんのパソコン借りて情報を集めるわ。 カズ君はどうするの? お店寄ってく?」

「う〜ん、ごめん。 せっかくだけど今日はやめとくよ。明日、新しい職場の面接に行くから早く寝ないといけないんだ。」

「えっ? 就職活動してたの? 
ふ〜ん、ここんところ毎日お店来て呑んだくれてると思ってたのに。」

「あのね・・・、 店の子たちとか俺のこと散々に言ってるけどこれでも俺なりには努力してるんだからね・・・。 みゆきさんにも藍ちゃんのこと任せられたんだし、いつまでも甲斐性なしじゃいられないよ。」

「ふふ・・・、ホントみゆきさんには弱いね。」

「ちょっと、そこは俺のこと見直すところじゃないの? 藍ちゃんも俺が仕事するの無理だと思ってる?」

「ううん・・・、そんなことない。 私の為にそこまでしてくれるなんて素直に嬉しいよ。 
カズ君ってば、いい所はたくさんあるのに見せるのが下手なんだよね。ちょっともったいないと思うな。」

藍は口を抑えてクスクスと笑って見せた。 カズもつられてニヤけてしまう。
前から自転車がきたので、二人は避けようとするが・・・、

「おっとっと!!」

和也がそのままよろけて転びそうになる。

「ちょっとぉ、 いってるそばからみっともない姿みせないでよ。」

「はは・・・、ごめんごめん・・・。」

二人は少し話した後、駅前で別れた。カズは家に向かい、藍は渡来船に向かって歩いていった。

68カサブタ:2012/03/15(木) 02:49:50
今日は本来なら定休日ではないが、みゆきも居ないことと藍の友人の不幸ということで店を閉めていた。

美樹は藍がいなくても頑張ると言ってくれたが、流石にまだみゆきの代わりを十分にこなせるほどにはなっていないし、結婚したての彼女をあまりこき使うのも悪いと思ったのだ。
たまには彼と水入らずの時間を作ってあげるのもみゆきの代理としての配慮だ。

(お店の経営って大変だな・・・。私はハンターの仕事だけでいっぱいいっぱいだっていうのに。 やっぱりみゆきさんってすごい人なんだな・・・)

親友である晶子の為にもヴァンパイアのことだけを考えたい所だが、店のこともないがしろにするわけにはいかない。
ハンターの仕事以外にもやるべき重要なことは色々あって目がまわりそうだ。しかし、こんな時こそ冷静にひとつずつこなしていくしかないのだ。

とりあえず真っ先に片付けなければならないことは今この瞬間の状況だ。

「ふぅ・・・、殿方に追っかけられることは良くあるけど・・・・・・。」

藍は立ち止まり後ろを振り向きながら言った。

「私に何か用事があるんなら、出てくれば? 服の端っこが見えてるよ?」

曲がり角の電柱から少しだけ見えていたスカートがピクッ、と震える。やがて、観念したように一人の少女が出てきた。
思った以上に小柄な子で藍は少し驚いた。紅葉台学園の校章が付いたブレザーを着ていなければ、小学生か中学生に見えていたかもしれない。

「女の子にストーカーされるのは初めてね・・・。」

「あの・・・、ごめんなさい・・・。 いつ話しかけようかと思って・・・・・・。」

七海はオドオドした様子で藍を見たり目を逸らしたりしている。どうやら、悪い子ではないらしいので藍は近づこうとしたが、そこで思い出した。

「っ!! まって、貴女さっきのお葬式にいたわよね? 紅葉台ってことは金森くんのクラスメート?」

「え・・・あ・・・、はい。 そうです。 健二くんとは幼なじみで・・・。」

藍はびっくりした。 なぜ彼の友達が自分に?

「その・・・、私になにか用?」 

「え・・・と・・・、さっき話してましたよね・・・? バンパイアがどうとか・・・。」

しまったっ!! 聞かれちゃったか・・・!!
これは不覚だ。これだけ怪しい連続殺人事件なら吸血鬼の仕業とかいう噂が立っていてもおかしくはない。
魔物の存在を信じている人間なんて殆どいないが、やっかいなことにヴァンパイアに関しては被害者の状況が共通していることとその知名度の高さから噂が広まることはよくあるのだ。
興味本位で首を突っ込んで餌食になってしまう一般人も多く、中には人質になってハンターの仕事の障害になる者たちもいる。 よって、穏便に仕事を遂行するためにはなによりも社会の目に触れないことが重要であり、
ハンターなら誰しもが頭を悩ます問題なのだ。

(こんな小さくて可愛らしい子、奴等にとっては絶好の獲物だわ。 なんとか、手を引いて貰わないと・・・。)

「私・・・、金森くんが誰に殺されたのか見たんですっ!!」

「え・・・っ?!」

藍はどうにかしてごまかそうとしたが、それより先に七海が言った言葉に彼女は耳を疑うことになった。

「待って・・・、それ本当なの?」

「はい・・・。金森くんを殺したのは・・・。」

「しっ!! ここで話すことじゃないわ。」

藍は周囲に気を配った。 どうやらヴァンパイアの気配は無い・・・。 
もし、この事件がヴァンパイアの仕業で、彼女が本当に現場を目撃したのなら、絶対に彼女をここで追い返すわけにはいかない。
相手の正体を探る手がかりになるし、目撃したことを気付かれたら確実に狙われる。とりあえず、ヴァンパイアに狙われる危険の無い渡来船につれていくことが先決だ。

「時間は大丈夫? できれば私についてきて欲しいわ。 話はもっと安全なところで・・・ね?」

「あ・・・はい、 かまいません・・・。」

七海は藍の後ろについて、一緒に渡来船まで歩いた。 先に歩く藍の背中をじっと見つめながら、七海はカバンの中に忍ばせている物を改めて確認した・・・。

69カサブタ:2012/03/16(金) 01:19:29
「じゃぁ、そのマリアっていう留学生の子が・・・?」

「はい・・・。」

七海は藍に自分が見たもの全てを打ち明けた。 なるほど、こんなことを誰かに話せるわけがない。
最近、転校してきた留学生の正体が吸血鬼で、後輩の金森健二を殺したなど、誰が信じられるだろうか。 もし、軽率に口に出したものなら、まわりから軽蔑されるだけでなく、吸血鬼から狙われる危険も高まったことだろう。

さりとて、藍自身にも少女が語るその話が本当であるか確かめる術は無い。ハンターを続けているとこういう類の作り話をしてくる者と接する機会も多いからだ。

しかし、藍はこの小さな少女は嘘を言っていないと思えた。 というのも、彼女が吸血鬼だと主張するマリアと一緒にいたというもう一人の女に覚えがあるからだ。

大きな黒マント、真っ白な肌、長い黒髪、異様に整った顔立ち・・・、 あいつの容姿そのままだ・・・。
しかし、それだけじゃまだあいつだと断定は出来ない。この前の黒百合だってその特徴が当てはまる。

だが・・・、あいつであるという確信を得る手段は無いわけじゃない・・・。
この子がこそこそと私を付けていた理由・・・。 おそらく、カズ君との会話だけじゃない・・・。

「ねぇ、 そのもう一人の女の顔は見た?」

「え・・・? はい・・・。」

「覚えてる・・・?」

七海は言葉を詰まらせた・・・。 どうも藍と目を合わせ辛いらしい。
やっぱり・・・これは・・・。 藍は息を呑みながら切り出す

「・・・私にそっくりだったでしょう・・・?」

七海の身体がピクッ、と反応する。

「そ・・・・・・その・・・。」

「うん・・・、言いにくいよね・・・・・・。 気にしてないからいいのよ・・・。」

藍は辛そうな顔でうつむいた。 二人の間にしばらく重苦しい沈黙が訪れる。
おそるおそる口を開いたのは七海の方だった。

「貴女も・・・、吸血鬼なんですか・・・・・・?」

「ええ・・・。」

藍は彼女に怖がられることも覚悟の上で正直に答えた。

「なんとなくわかってると思うけど・・・、貴女が見たその女とも無関係じゃない・・・・・・。
でも、私は貴女の敵じゃないわ・・・。むしろ、私の敵は貴女が見たって言うその女。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・ごめんね、信じられないよね・・・、 私も貴女の友達を殺した化け物と同類だもんね・・・。
そうじゃなきゃ、カバンの中にそんなものは入れないわよね・・・。」

「あ・・・!!」

七海は持っているカバンを反射的に隠そうとした。しかし、しばらく目を泳がせた後、顔を落とした。
そして、何も言わずにカバンの中を探り、パイプとハンマーを取り出した。

細いパイプはカバンに収まるサイズに切られており、片方の端を斜めにカットして鋭くしてある。おそらく普段から持ち歩いていたのだ。吸血鬼という漠然としたイメージから有効な武器として杭を連想したのだろう。 同時に、彼女が事件を目撃して以来、どれだけの恐怖に怯えながら日々を過ごしていたかが垣間見れた。

「これは・・・、その・・・・・・。 ごめんなさい・・・・・・。」

「いいの・・・、怖がられて当たり前だもの・・・・・・。 怒ってないから・・・ね・・・。」

藍は優しい笑顔を作ったが、その表情から辛い心境を隠すことはできなくなっていた。
七海はまだ藍に心を開くことができないでいたが、藍が見せる表情に警戒心は自然に弱まっていった。

70カサブタ:2012/03/16(金) 01:23:15
「大原七海さん・・・、 貴女のお父さんって、もしかして刑事さん・・・?」

「・・・はい。」

「やっぱり・・・、私、貴女のお父さんと何度か会ったことがあるのよ。
ちょっと前にこの店にも来たの。 この店の子が悪いヴァンパイアに襲われたことがあってね、その時お世話になったの。」

七海は父が言っていたことを思い出していた。 少し前に怪我をして倒れていた女の人を保護したとき、黒いマントを着た不思議な人がそれを知らせてくれたという話。

「もしかして藍さんのことなの・・・?」

藍は微笑みながらうなずく。

「立派で素敵なお父さんだね・・・。 この前も、この店にわざわざ注意しにきてくれたのよ?
この店だけでなく、この辺りの店を一軒一軒回って、注意してくれてたの。」

七海は驚いたように藍を見つめていたが、やがて、顔を歪ませて目に涙を溜めはじめた。

「わたし・・・、本当はお父さんになるべく出歩かないように言われてたの・・・。
でも・・・、私、 健二くんが死んでも、なんにもできないのが嫌だった・・・。

今日も無理言って、健二くんの葬儀に行くことを許してもらったの。 今日、あそこにマリアがいることがすごく悔しかった・・・、 目の前に犯人がいるのに何もできなくて・・・・・・。

でも、藍さんを見たとき・・・、 私にも何か出きるんじゃないかって・・・・・・ それで・・・。」

藍はゆっくりと少女に歩み寄り、手を差し伸べた。 七海は驚いたが、彼女の手の暖かさと、穏やかだが悲しげな笑顔を見て、緊張はすぐに解きほぐれていった。

「もう・・・いいのよ・・・。 私にはわからないくらいずっと苦しんでたんだよね・・・。
でも、もういいの・・・。 
たぶんお父さんはすごい心配しているだろうし、貴女が勝手にいなくなったらすごく悲しむと思うよ・・・。 だから帰ろう・・・。 安心して・・・。貴女がこうして伝えてくれたこと、 絶対無駄にしないから・・・。」

そして藍は七海を優しく抱きしめた。 泣くのを堪えようとしていた七海の目から堰を切ったように涙が溢れ出す。 とても小さく弱々しいけれど、力強く心音を刻む身体を藍は思い切り抱き締めた。

さっき彼女が話している間、恐怖と無念によって幾度となく言葉を詰まらせるのを藍は見逃さなかった。 当然だ、目の前で得体の知れないものに、密かに想っていた相手を殺されてしまう。
並大抵の恐怖と悲しみではないだろう。彼女だってとっても怖かったろうに・・・。

なのに、彼女は恐ろしい怪物の仲間であるかもしれない私に一人で近づき、私だけでは到底知り得なかったであろう重要な情報をすべて教えてくれた。 なんて強い子なんだろう・・・。

ふと、藍は前に行った占いの事を思い出した。
みゆきや自分たちの運命を占うタロットの中に1つだけ紛れ込んだあのカード・・・

ster・・・、深く暗い闇を照らす、小さな小さな希望の光・・・

(そうか・・・、この子が・・・)

今、こうして自分がこの少女とめぐり逢えたのは彼女の健気な愛情と偉大な勇気が起こした奇跡としか思えない。 

藍は自分の胸で泣き崩れる少女がいとおしくて堪らなかった。そして彼女の勇気に必ず応えなければならないと強く心に誓ったのだった。

71カサブタ:2012/03/16(金) 01:34:58
「入院ってどういうことですか・・・っ?!」

「原因は詳しい検査をしないと分からないんですが、貴方の症状をみるとただの風邪とは思えません。」

下北沢で藍と別れたカズは家ではなく病院にいた。 
斎場を出た直後から心なしか寒気を感じてはいたが、大して気にもとめていなかった。
だが、藍には黙っていたものの駅に向かっている時からだんだんとダルさを感じてきて、自転車を避けようとしてよろめいた所で、本格的に身体の不調を自覚し始めた。

最初は家へ向かったのだが、その道中でも具合は悪くなる一方で、仕方なく最寄りの病院へ向かったのだった。ようやく診察室についた頃にはすでに体中がだるい上、発汗と軽い震えが止まらず、わずかな眩暈も覚えていた。そのうえ、医師に言われて気付いたが黄疸までも出てきているようだ。

「具合が悪くなったのはついさっきなんですよね?
この症状からすると溶血性細菌による感染症の疑いもありますが、それにしても病状の進行が早すぎます。
詳しいことはもっと検査しないとわからないので、結果が出るまではどうかここで安静にお願いできますか?」

なんということだ・・・、せっかく再就職のチャンスだというのにその直前に急病だなんてあまりにもタイミングが悪すぎる。 だが、非常にもどかしいことに自覚症状だけからでも、明日面接を受けられる状態じゃないことが分かってしまう。

日々の不節制が祟ったのか? なんて情けない・・・。
困るのは自分だけじゃないんだ。 藍ちゃんのサポートもしなきゃならないのに・・・
こんな様で、みゆきさんにどう顔を合わせればいいのだ・・・

カズはどうしようもない歯痒さを噛み締めながら入院することになってしまった。

その夜、カズの血液は早速さらに詳しい分析にかけられることになった。
医師達は採取した血液から新種のウイルスによる感染症も疑って念入りに調査を行うことにした。だが、検査を始めたその直後から彼らは、その症状の異常さに目を疑った。

血液自体はいたって健康そのもので、細菌らしき物も、既存の毒物も検出されていない。 にも関わらず、顕微鏡のレンズが見つめる先で、赤血球や白血球、その他の組織が、氷のように溶け崩れていくのだ。 
 だが、さらに医師たちを驚愕させたのはその後だった。 それまで赤かった血液が赤血球の破壊により半透明になったかと思うと、わずかに黄色味を帯びた白いドロドロの液体へと姿を変えたのだ。 その液体を採取して分析してみると、そこからは高濃度のエンケフェリンやβ-エンドルフィンなどのいわゆる脳内麻薬の他、強い興奮を引き起こすドーパミン、その他、未知の組成を持つホルモンらしき物質が次々と検出されたのだ。 そして驚いたことに、不完全な形ではあるものの精子と思しき物が無数に蠢いていたのだ。

「早瀬さんを早く連れてきてくれ!! 大至急だ!!」

翌日に精密検査を行う予定でいたが、異常な結果を受けて今からすぐに始めることになった。
医師は手術室の準備に向かい、 看護師二人がカズを運ぶために病室へ急いだ。


「ううぅ・・・・・・っ!!」

ベッドに入った後も、楽になるどころか病状はひどくなるばかりだった。掛け替えたばかりのシーツは汗でぐっしょりと濡れ、身体はだるさを通り越して苦しみを感じ始めている。熱も高くなったようで視界がかなりぼやけている。

まるで身体が内側から燃え上がるようだ・・・。手足の感覚がなくなっていく。 
どうしてこんなことになったんだ・・・。 わけもわからないまま俺は死ぬのか・・・。

悪態をつこうにも言葉を出す気力もない・・・。

そのときだった。突然、病室の窓がひとりでに開き、室内には夜のひんやりした湿った空気が、夜風とともに流れ込んできた。
暗い闇夜には、月が大きくまっ赤になって輝いていた。
すると夜空からは闇をまとった2匹の蝙蝠が部屋に舞い込んできた。
その蝙蝠は部屋に降り立つと同時に、黒いフードを被ったマント姿の女に変身した。

ぼやけた視界の隅に何か黒い物が揺れるのが見えたカズはそちらに顔を向ける。 たしか、そっちには窓しかなかった筈だが・・・。 そこには女性と思しきシルエットがあった。

黒いゆったりした衣に身を包み、 長い髪をさらさらとなびかせる女性・・・。 ぼやけた視界でも分かる真っ白な肌・・・、 赤い唇・・・。 吸い込まれるような瞳・・・。

「あい・・・・・・、 ちゃん・・・・・・」

72カサブタ:2012/03/16(金) 01:51:13
消え入りそうな声で呼ばれた名前に、その人影は冷たく微笑み返し、そして言った。

「無理に動こうとしてはだめよ。 すぐに溶けてしまうから・・・。 しばらく寝ていなさい。」

そして、その女は ふぅ、 とカズに吐息を吹きかけた。

「う・・・・・・。」

温かい吐息、わずかに混じる愛しい薔薇の香り・・・。 カズはたちまち苦しさも忘れるくらいの眠気に襲われ、静かに眠りに落ちてしまった。

「あらあら・・・、こんなに毒がまわってしまって。
マリアったら。 男の子に対しては本当に容赦がないのね。」

ローズは自分の身体にマントを巻きつかせ、ベッドの上で眠る獲物をおいしそうに見つめていた。
そして彼女の後ろからブロンドの髪の少女がひょっこりと顔を出した。 彼女、マリアもまたローズと同じように黒いマントを羽織っていた。

「ふふ…、ほんの少しチュッ、としてあげただけなのに・・・。童貞坊やにはこの程度でも刺激が強すぎたかしら・・・。」

「いいえ、貴女の魔力が高まっている証拠よマリア。 貴女もなかなかやるじゃない。口づけだけでここまで毒するとは大したものだわ。 」

「くすっ、 お言葉ですけどお姉様・・・、あの村の男共の半分以上は私の熱ぅいベーゼで殺してさしあげましてよ♪」

マリアは指先を唇にちょん、と当ててウインクしてみせた。
ローズは微笑みながら、夜露で湿ったフードをあげた。
フードをあげたと同時に、ローズの黒い髪がさらさらと流れ、ほのかに香る甘い匂いがマリアの鼻腔をくすぐる。
(あん!お姉さまの黒髪の匂いが心地いい・・・)

カズがここまでひどい状態になった原因は、斎場でマリアから受けたキスが原因だった。
ほんの一瞬唇が触れた時、わずかに付着した彼女の唾液が彼の身体をここまで侵食していたのだ。

「体が腐ったおいしそうな匂いがするわね・・・。だいぶ熟成が進んでいるようだわ。
いますぐにでも食べてしまいたいところだけど、それができないのが残念ですわ・・・。」

「ふふ・・・、我慢できないのマリア? たとえ食べられるとしてもまだ手を出してはだめよ?
この男は大事な人質なんだから。」

ローズはもちろん、その眷属であるマリアも人間を溶かしてしまう魔性の力を身につけていた。
彼女達の身体や体液、そしてマントなど彼女達が身につけている物ですら、一旦触れれば悪魔の官能毒に冒されてしまうのだ。
 通常、吸血鬼は人間の生命力を奪うために血を吸う。しかし、血液よりも精液のほうがより多くの生気を含んでいることから、女吸血鬼は本能的に男を好んで襲い、血とともに精液を吸い取るのだ。

当然、血に比べて精液は一度に吸い取れる量が少ないのだが、ローズは一人の人間からできるだけ多くの精液を搾り取るための黒魔術を生み出していた。

彼女は、男の精液を餌にする魔物サキュバスに着目し、人間の精気を効率よく奪い取る力を魔法として身につけることに成功したのだ。
強大な快楽によって人間の男の身体を大量の精液に変えてしまう魔法。これこそが、始祖の吸血鬼であるとともに強力な魔術師でもあるローズが生み出した秘術の一つ「サキュバスの呪い」だった。

この魔法の為にローズに襲われた男はそのほとんどが原型を留めていない。皆、彼女に身体をドロドロの精液に変えられ根こそぎ吸い取られてしまうからだ。

そして、ローズの眷属となったマリアも、潜在的な魔力の高さからこの力を受け継いでいる。
吸血鬼の魔力を含むマリアの唾液はカズの皮膚から体内に入り込み、血流にのって全身を巡っているうちに彼の身体を内側から侵食していったのだ。 それは、どんな薬物よりも強力な麻薬であり毒だった。
魔力に犯された体中の細胞は異常に活性化し、大量の快楽物質を産生しそれをぶちまけながら破裂してしまうのだ。 異常な快楽を引き起こすと同時に身体の組織を溶かして破壊する。溶けた身体は濃厚な命のスープとなり、彼の身体の中に溜まり続けていくのだ。

普通の人間ならば既に体の表面まで溶解が始まってもおかしくないところだ。あとは、犯すなりして溶けた身体を吸い取ってしまえばいいだけ。

だがカズは違った。すでに藍という強力な吸血鬼に吸われている彼の身体は、他の吸血鬼の魔力を激しく拒絶するようになっている。これもまた吸血鬼の呪いに他ならないが、藍はカズを他の吸血鬼から守るためにあえてそうしたのだ。 藍の加護のおかげで、カズの身体は苦しみながらもマリアの唾液による侵食を寸での所で食い止めているようだ。 彼が感じている高熱と眩暈はマリアの呪いに対する激しい抵抗の為だろう。

73カサブタ:2012/03/16(金) 01:59:37
(私の眷属の中でもとりわけ優秀なマリアならもしかしたら大丈夫かと思ったけれど・・・、見立てが甘かったわね。
今、この男から精を吸ってしまえば、この子でさえどうなるかわからない・・・、下手をすれば黒百合と同じように逆に支配されてしまいかねない。
アイ・・・、あの子ったらここまで魔力を上達させていたのね。)

ローズはフッ、と笑った。

「ますます、取り戻したくなったわ・・・。」

「え・・・?」

「なんでもないわマリア・・・、 
よくやってくれたわね。ご褒美をあげるわ。」

ローズはマリアをそっと引き寄せると、赤い口唇の回りをなめてやった。
マリアは目をとろんとさせ、ローズと顔を見合わせて、妖しく微笑んだのでした。

「ローズお姉さま・・・」

2人は顔を近づけると口唇同士を触れ合った。
そして体を寄せ合いながら、両手で軽く相手を抱きしめてぬくもりを感じあった。
つるつるとしたマントの感触、そして豊満な胸のぬくもりを感じながら口の中に舌を入れて舐め回す。

「・・・んッ!あん」

ロ-ズはマリアの長い舌の動きに、そして熱い抱擁に感じて甘い吐息をもらしました。

「気持ちいいわよ、マリア」

ローズの瞳も赤く光だし、まっ赤な口唇からも次第に大きな牙が伸びてきた。
マリアはローズのつんと起ってきた乳首をマントの上から摘むと、くりくりと両手でいじって刺激を与えた。

「・・・んッ!」

マリアに刺激され、激しくキスをされて口を塞がれていたので、悶えが鼻から吐息となって抜けていった。

「ほら、お姉さまのア・ソ・コもグチョグチョに濡れてしまっているわよ!クスクス!」

耳元で囁かれたローズはたまらない、マリアと擦れ合う股間は溢れてきたラブジュースでぬるぬるとなっていたのだ。

「・・・あん、マリア。あなたの血をいただくわよ・・・」

「いいわよ・・・お姉さま・・・」

マリアも血を吸われるという快楽に期待して、身を震わせて目をつぶった。
ローズはマリアの亜麻色の髪をかき分けると、小麦色のうなじに顔を近づけまっ赤な口を開けた。
そしてするどい牙がマリアの首筋にゆっくりと沈み込んでいく。

ローズに血を吸われのどが鳴る度に、マリアのアソコからは留め止めもなくいやらしい汁が湧き出し、両足の股を濡らしていった。

「・・・もっと、吸って・・・下さい・・・」

マリアは押し寄せる快楽に我慢できず、自分のアソコを手で慰めはじめた。
ローズも次第に顔が赤らんできて、感じている事がわかった。

「はあぁ・・・んうッ!」

ローズは吸血を中断すると、マリアのうなじから真っ赤な口を放した。

「だ・・・ダメッ!!お姉さま・・・」

哀願するように、マリアはローズを見つめたのです。

「ほらマリアの股間からいやらしいお汁が糸をひいて、床まで滴って汚れているじゃない!
イケナイ娘はお預けにしちゃうわよ・・・うふふッ」

「・・・あん、イジワル・・・」

マリアは自分の股間からたっぷり出たお汁をすくい取ると、おもむろにローズのヴァギナへ指を伸ばした。
そして自分のいやらしいお汁をローション代わり使うと、パンパンに膨れたクリトリスに塗りたくったのだった

74カサブタ:2012/03/16(金) 02:03:11
「あぁん・・・」

くちゅ、くちゅ!と手を動かす度に、いやらしい音が部屋中に響きわたった。

「いいわ・・・気持ち・・・いいわよ・・・」

ローズもマリアの首筋についた傷口から流れ出る血を、長い舌でぺろぺろと舐めあげるのだった。

「あん!噛んでよ・・・お姉さま・・・」

マリアはローズに体を預けると、足を交差させ熱くなった性器を、こすりつけるように腰を振った。
互いの太股でクリトリスを刺激しては、どくどくと溢れる愛液同士が混ざり合い、泡となって床に滴り落ちた。

「はあッ・・・すっごい・・・いい」

「くう・・・イッちゃうよぉ!」

「あッ、ああーッん!!!」

2人同時にイッってしまったのでした。

「はぁ、はぁ!・・・あん。ローズお姉さまの・・・あついお汁が・・・」

マリアのマントのまっ赤な裏地は、ローズの飛ばしたジュースでべっとりと汚れて染みになっていた。

「っく・・・、ふぅーッ・・・」

マリアは額から流れ落ちる汗を拭うと、ローズに向かって甘い声で囁いた。

「お姉さまもいっぱい感じてくれて、嬉しいわ・・・。耐え切れずにいっぱい出しちゃったのね・・・。
おかげでわたしのお気に入りのマントが汚れて台無しになっちゃったわよ!クスクス」

「うふふ・・・、ごめんなさい。 貴女があんまり可愛いものだからつい歯止めが利かなくなったわ。
でも、興奮したでしょう? あの子たちも満足したみたいよ?」

ローズに言われて病室の入り口を見るマリア。 そこには白衣を着た二人の若い医師が立っていた。
手術室からカズを迎えにやってきた職員達だった。 さっきから居たようだが暗い病室の中で繰り広げられていた妖しい美女達のレズショーにしばし呆然と見入っていたのだ。

「あ〜ら、美味しそうなお兄さんたちね・・・。 そんなに顔を真っ赤にして、私に惚れちゃった?」

「ち・・・ちょっとあなた達!! 一体何をしているんです!!」

「な…なんですかその格好は…。 ここは病院ですよ!!」

我に返った二人は強い口調でローズ達を問い詰めたが、明らかに目の前の怪しい出で立ちの美女に怯えている様子だった。

「どうするの、お姉様? 空いてるベッドもあるし一人ずつ楽しんじゃう?」

「いいえ、この子達を食べても、また別の人間がきてしまうわ。
こうなったらしょうがないわね。この病院も支配してしまいましょう。」

ローズはやれやれといった感じでいいったが、その顔は妖しく綻んでいた。
彼女の赤い目が職員を見つめると、たちまち二人はそれに見入り、金縛りにあってしまった。

「さぁ、貴方達も私の虜になりなさい!!」

バサァァァァッ!!

二人の職員に向けてローズはマントを拡げる。すると、波打つ真っ赤な裏地の輝きが二人の目を捉え、その途端に彼らはローズに心の奥底まで魅了されてしまった。

「うううぅぅっ?! あぁぁ……!!」

二人は何か見えないものに襲われるかのように床に倒れ、じたばたと悶えていた。
彼らの股間からたちまち精液が溢れだし、ズボンに大きなシミをつくっていた。

「本当ならまとめて犯してしまいたいところだけど、あいにく時間が無いの。
精液が尽き果てるまで私の幻影と交わっていなさい。」

75カサブタ:2012/03/16(金) 02:05:41
ローズはカズの体を軽く持ち上げ、赤子のように自分のマントの中に抱くと、マリアと共に病室を出て行った。 来るときは蝙蝠に変身すれば良かったが、カズを連れて行くには玄関から出るしかない。マントの裾を引き摺りながら闊歩する様はまさに女王様のようだ。

そして、ローズは通り過ぎる医師や人々を次々と狂わせていったのだった。

「うわぁぁぁっ!!」

「あああん……あっ ああああぁぁ……!!!」

「ふふふふ・・・。」

ローズは歩を進めながら、時たまマントの裾をバサリと拡げる。すると、彼女の匂いが混じった瘴気が辺りに拡がり、それに包まれた者達はたちまち彼女の支配下に置かれてしまった。

壁の向こうにいようが、遠くにいようが関係ない。ローズの恐ろしい魔力からは誰も逃れられないのだ。

あちこちの病室で嬌声や喘ぎ声が上がる。患者達は自分のベッドの布団をべチャべチャに濡らして狂い、ナースステーションの中では看護士達が、嬌声を上げながらよがり狂っていた。

「素敵だわお姉様…。でもこんなことをして大丈夫なの?」

「ほほほ…、こんな小さな病院を支配することくらいどうということはないわ。誰も外へ連絡する暇も無く私の支配下に置かれるわ。この状況を知ることができる者なんて誰もいない。 例えいたとしても、私からは逃げられないけど・・・。

さて・・・、せっかくだからここで眷属たちを補充しようかしら・・・。」

ローズは再びマントを広げる。すると、真紅の裏地から湧き出すように何匹もの蝙蝠が現れ、床に転がってよがり狂うナースや女性患者に纏わりついていった。 すると、蝙蝠たちは互いに融合しあい、やがて女性達を包み込むマントと化した。
かつて黒百合を恐ろしい吸血鬼に変えたマント。

「いつ見てもすごいわ・・・。 こんなに早く沢山の下僕を生み出せるなんて、流石お姉様ね。
私もいつかこんな魔法が使えるようになりたいわ。」

「大丈夫よ、貴女は筋がいいからきっとすぐに出来るようになるわ。 でも、勘違いしてはだめよ。
この方法で作った下僕達は所詮はインスタント。何度も言うけれど私と直接交わって眷属になった貴女の方がずっと特別なのよ?」

「ええ、わかってるわ。 私をそんなに愛してくれるお姉様が大好きよ。」

二人が談笑している間にも、闇のマントを着せられた女たちは、強い吸血衝動に体も心も蝕まれていった。 やがて立ち上がった彼女達は皆、肉欲と嗜虐心に支配され、吸血鬼になったことに歓喜の笑いを上げるのだ。

このマントもまた、ローズが生み出した恐るべき魔法だった。 さっきの蝙蝠はローズのマントから分離したものでありいわばマントの欠片だった。 この欠片は離れていてもローズのマントと魔力でつながっており、着せられた者は感覚を彼女と共有し、彼女の意志に支配される。

着ている間は身体も吸血鬼のそれになり、魔法を行使することまでできるようになるのである。しかし、やはり直接血を吸うのに比べるとつながりは弱いため、主であるローズが魔力の供給を止めれば普通の人間の身体に戻ってしまう。
しかし、ローズはその欠点を逆手にとって下僕たちに普通の人間のふりをさせ、普段からハンター等の目を欺いていたのだ。

「ああんっ!! 体が疼く・・・、血・・・血が欲しいわ・・・。」

「うふふ・・・、男・・・男はどこ・・・? 私のカラダ温めて欲しいわ・・・。」

「クスッ、 せんせい・・・、 今日は私が診断してあげる・・・。」

「ひぃ・・・、うぁぁぁっ!!」

黒いマントを纏った白衣の天使達は、手当たり次第に医師や男性患者を襲いはじめた。
程なくして女性患者もその輪の中に加わり男たちを貪りはじめる。

ベッドにいた男性患者の末路は特に悲惨だった。動けないのをいいことに、ベッドを取り囲んだ数人のナース達に代わる代わる壮絶な逆レイプを受け続け、朽ち果てていった。

76カサブタ:2012/03/16(金) 02:08:13
「マリア・・・、この男さえいればアイは私の物になったも同然だわ。つまり黒ミサはもういつでも行える準備がある。 
だから、この男は貴女の家でなく直接学校に連れていくことにするわ。 貴女は先に学校に行ってこの男をゆっくりいたぶれる場所を確保してくれるかしら?」

「それなら女子寮がいいわ、お姉様。 あそこは広いしベッドもある。すぐに用意するからお姉様はゆっくりいらして。」

マリアがサッとマントで自らを包むと、黒い煙に包まれ一匹の蝙蝠に変身した。彼女は窓から外に飛びたっていった。

「たのんだわよ、マリア」

女たちの嬌声と男たちの悲鳴が鳴り響く病院を出たローズを、正面玄関で黒塗りのポルシェが迎えた。彼女が乗り込むとすぐに発進し、そのまま高速に乗って西方面へと進んでいった。

77カサブタ:2012/03/16(金) 23:09:48
10

「いろいろとごめんなさい・・・、それにありがとう、藍さん。」

帰ろうとする七美を藍は渡来船の出口の所で見送ろうとしていた。

「礼を言うのは私の方よ、七美ちゃん・・・。
いろいろ教えてくれてありがとう・・・。 貴女の勇気は無駄にしないわ・・・。
全部終わったら、またこのお店に呼んであげる。 今度はみゆきさんやカズ君も紹介するからね。」

「うん・・・、絶対来る。 藍さんのお友達にも会ってみたいし、恋人がどんな人なのかも気になるわ。」

「だぁから〜、 カズ君とはそんなんじゃないっていってるじゃん・・・、も〜。」

七美はくすくすっ、と笑った。 悔しいけれどこの笑顔を見せられたらムキになっても反論できない。
藍も思わずつられて笑ってしまった。

さっきは気配が無かったが、帰り道に何があるかは分からない。ともかく、駅までは送ってあげようと
藍は思っていた。

とその時、七美の携帯電話が鳴った。

「あちゃ〜、警部かな? さすがに遅くなっちゃったもんね。」

「ううん・・・、違うみたい。 なんだろこの番号・・・。」

携帯のディスプレイに写し出された見慣れない番号を訝しみながらも七美は出てみる。

「ふふふ・・・、こんばんは大原さん。 こんな時に知らない場所へ行くのは危ないわよ?」

その声を聞いて七美は凍りつく・・・。

「マリア・・・っ!!」

「えっ!!」

藍は急いで周りに気を配る。 が・・・、やはり気配は無い・・・。
どうやら、かなり遠くから電話を掛けているようだ。

「さっき、斎場で貴女が綺麗な女の子の後をこっそりつけていくのを見たのよ。 
何か事情があるんでしょうから追わないどいてあげたわ・・・、ひょっとしてソッチの趣味でもあるのかと思って・・・。 ふふふっ!!」

七美は震えながら藍をみる・・・。藍は彼女に“切れ”と合図したが。

「大原さん、悪いけどこの電話の目的は貴女じゃないの。 アイさんに変わってくれないかしら・・・?」

「え・・・っ!!」

藍のことを知っている?! これには藍自身も驚いた。
彼女は七美から電話を受けとると、マリアと話し始める。

78カサブタ:2012/03/16(金) 23:12:02
「もしもしっ!! 貴女がマリアさんかしら・・・?
あなたの目的は何? どこで私のことを知ったの?」

「はじめまして、アイさん。ようやく話すことができたわね。 折角なんだからゆっくり話しましょうよ。
私、貴女にずっと興味があったんだから・・・。」

とても可愛らしい声だった。だが、藍はすぐに相手が黒百合以上に危険であることを予感した。
相手は藍の正体を知っており、七美が彼女を追っていることも知っていた。
いつでも七美を襲えたはずなのにあえて泳がせていた。

おそらく、黒百合のように獲物を襲うこと自体を目的としているのではない。何か別の大きな目的のために暗躍しているのだ。

「貴女は黒百合の仲間・・・?」

「黒百合・・・、あぁ、実際に会ったことはないわね。
お姉様から名前だけは聞いたことあるけど。 でも、仲間じゃないわ・・・。」

「お姉様っていうのが貴女の主人ね・・・。 一体何者なの?」

「うふふ・・・、お姉様は私にとって絶対の存在・・・。 
いえ、私だけでなく全ての吸血鬼と人間にとって絶対の存在だわ。もちろん貴女にとってもよアイさん・・・。」

「ふざけないでくれるかしら・・・、私に主人なんていないわ・・・。」

「そうね・・・、貴女はハーフヴァンパイア。 つまり私みたいに人間からヴァンパイアになったわけじゃないものね?
でも、それなら貴女を生んだ人・・・つまり貴女の親が主人ということになるんじゃない?」

「・・・っ!! あなた・・・、 どうしてそんなことを・・・。」

「ふふ・・・、わからないふりはやめなさいよアイさん・・・。そこまで鈍くはないでしょう?
私の主人が誰なのか・・・だいたい目星は付くのではなくて・・・?」

「じゃぁ・・・、やはり・・・。」

「アイさん・・・、お姉様は貴女にすごく会いたがっているわ・・・。
お姉様も日本に来てるの。 貴女を歓迎する準備はもう整うところなのよ・・・。」 

そんな・・・、 だってみゆきさんはあいつを倒しにいくためにハンガリーへ行った筈なのに・・・。
そのあいつがどうして日本なんかに・・・。

・・・っ!! まさか・・・、みゆきさんが聞いたっていうあの情報自体が罠・・・!?
私とみゆきさんを引き離すための・・・

「どうしたのアイさん・・・、黙らないでよ・・・。 もっと貴女の声が聞きたい・・・。」

マリアは電話の向こうからますます熱っぽい声で囁いてくる。

「電話越しでもわかるの・・・、 アイさんの声・・・ お姉様の声にそっくり・・・。
今こうして話してるだけでもお腹の辺りがキュンとするのよ・・・。 ねえ、もっと話しましょう・・・。」 

「やめて・・・。」

「あ・・・喋ってくれた・・・・・・ アイさん・・・、 もっと声を聞かせて・・・!!」

「やめなさいっ!! 気色悪いのよっ!!」

藍は叫んだ。

「私はあいつのところなんて絶対行かない。 どうしても連れていきたければ自分たちでここに来ることね・・・。 一人残らず返り討ちにしてあげるつもりだけど・・・。」

「うふふ・・・、そんな無謀なことはしないわ。 貴女の力はよく知っているもの・・・。
それに、貴女がそのお店の中にいる限りは手出しができないわ・・・。
でもね、ずっと貴女を張り込んでてわかったけど、貴女は詰めが甘いわ・・・。
この上なく慎重なお姉様とはそこが大違いよ・・・。」

「なんですって・・・?」

「貴女の恋人・・・、和也さんだったかしら・・・? 彼が今、何しているかわかる?」

「な・・・っ!!」

まさか・・・、カズのことまで知ってるなんて・・・。

「彼とはとっても親密にしているそうね・・・。私から見たらまだまだ初々しい印象ではあるけど。」

「カズくんをどうしたっていうのよ?! 彼に手を出したら容赦しないわよ!!」

「まぁ・・・、彼のことになるとムキになっちゃって。 可愛い・・・。」

「カズくんをどうするつもりなの!!? 言いなさいっ!!」

「ふふふふ・・・・・・、彼の身はもう私達の手の内にあるわ。 お姉様が直々に彼を悦ばせてあげるそうよ・・・。
うふふ・・・。お姉様とのセックスなんて私でもおかしくなっちゃいそうなのに・・・。
男の身体でお姉様と交わったらどうなっちゃうのかしら・・・、 その点だけはあの男が羨ましいわ。」

79カサブタ:2012/03/16(金) 23:20:01
藍は呆然と立ち尽くした。 
和也が既にあいつに捕まっているなんて・・・。 

うかつだった・・・、彼だって私に関わっている以上、奴らに狙われる可能性は十分考えられたのに・・・。
さっきは彼の都合を考えて一人で帰してしまったが、無理にでもこの渡来船に連れてきておくべきだった・・・。

女吸血気と交わった男に待っている運命・・・、それは快楽に彩られた死だ・・・。
しかも、相手はあいつ・・・。 あいつが、簡単に死なせてくれるわけない・・・・・・。

彼の心と彼の尊厳を全て踏みにじるような恐ろしいやり方で犯し殺されてしまうに違いない・・・。

「やめて・・・、どうしてカズ君を狙うのよ・・・。貴女達の目的は私なんでしょう・・・?
どうしていつも関係のない人たちを巻き込むのよ・・・・・・。」

「関係ないですって・・・? ふふふ・・・、今でもそう思ってるの・・・?
やっぱり考えが甘いわね藍さん・・・、彼が私達に狙われる遠因を作ったのは貴女自身だということに気付いてないなんてね。」

「え・・・?」

「考えてもみなさい・・・、お姉様の目的は貴女を手に入れること・・・。
それはつまり貴女の血を手に入れることに他ならない、それはわかるわよね・・・?」

そんなことはわかっている・・・。 
悔しいが、あらゆるヴァンパイアを拒絶し支配することができる私の血も、あいつの前では無力。 
もしあいつと相対するようなことがあれば、血の強さというアドバンテージを失った私は圧倒的に不利になる。

ましてや、私の血があいつに飲まれるようなことになれば私はあいつの意思に支配されてしまう・・・。
だからこそ、みゆきさんは私を連れていかなかった。それだけでなく渡来船を私の隠れ場所として提供してくれたのだ。
全ては私とあいつが接触する機会を作らない為に・・・

私の血を吸われない為に・・・・・・


え・・・?

ふと、 藍はある可能性に思い当った・・・。 これだけ鉄壁の守りが施されてもなお血を奪われる可能性に・・・。

「ふふふ・・・。貴女の血が欲しいとしても、わざわざ危険を犯して直接、貴女に会いにいく必要なんてないでしょう?」

「あ・・・・・・、あ・・・・・・!!」

藍の顔が青褪めていく・・・、自分がとんでもない見過ごしをしていたことに気付いてしまったからだ。

「貴女の血を持っている人間なら他にいるじゃない・・・。貴女なんかよりもっと捕まえやすい子がね!!」

「あ・・・、ああぁ!!」

そういうことか・・・っ!!  だからカズ君を・・・
カズ君の身体の中には私の血がある・・・。 
もともとは黒百合を罠に嵌める為に彼に与え・・・、その後は他の吸血鬼から守るために残しておいた私の血・・・

だが、その血の加護もあいつには通用しない!! それどころか、彼を狙う口実にもなってしまった・・・。

「私の・・・、せいだ・・・・・・。」

「あっはっはっは!! 理解できた・・・?  なんとも皮肉な話よねぇ・・・?
彼を守るためにやったことなのにね・・・。 悔やんでも悔やみきれないでしょう?」

勝ち誇ったようなマリアの声・・・。 悔しいが藍にはもう強がることができない。

「お願い・・・。カズ君を・・・たすけて・・・。」

たとえ無駄だとわかっていても、弱々しく懇願するしかできなかった。

「甘いわ・・・、甘いのよ藍さん。 貴女は自分がどれだけ価値ある存在なのかわかっていないわ・・・。
あのお姉さまが血眼になって貴女を探しているのよ・・・。わたしも嫉妬してしまうくらいにね。

お姉さまにとっては、貴女を手に入れる過程でどれだけの血を流そうが関係ないのよ・・・。
あの男だってそう・・・、お姉さまが歩む間に踏み潰される哀れな蟻の一匹に過ぎないのよ。」

「そんなこと・・・、あいつの都合じゃない・・・。 私は知らない・・・。」

自分は悪くない・・・、あいつが全部悪い・・・。そう思えたらどんなに楽だろうか・・・
だが、藍の心は締め付けられるようだった・・・。 自分のせいでカズやみゆきが危機に瀕している。
いや・・・、きっと私の知らない所で多くの人間があいつやあいつの眷属達の犠牲になっているに違いない・・・。
あの黒百合も・・・、彼女に襲われた犠牲者たちもその一部に過ぎないのだ・・・

80カサブタ:2012/03/16(金) 23:23:20
全ては私を手に入れるため・・・。私がいるせい・・・。

「みゆきさん・・・・・・」

胸が・・・ 痛い・・・!! 痛いよ・・・!!

みゆきさんは私のせいじゃないって・・・、気にするなっていつも言ってくれるけど・・・・・・。

本当はつらいよ・・・。 その優しさが・・・。

「藍さん・・・。」

七美の声にハッとする藍。 彼女を見ると、とても心配そうな顔をしている。

「あ・・・、私・・・。」

目頭が熱い・・・、自分が泣いていることにようやく気付いた。

「ふふ・・・、悔しいでしょうね・・・藍さん? 
でももう遅いのよ。 貴女がいくら急いだところでもうあの男を助けることなんて出来ないの。
お姉さまが貴女の血を手に入れるのはもう時間の問題。貴女はそこであと僅かな自由な時間を満喫していればいいのよ。」

藍の心中を見抜いてか・・・、マリアはますます楽しそうな声でサディスティックに挑発してくる。

「その前に、もうひとつ・・・。 貴女の所へ来た大原七美さんだけど、私たちの正体を知っているのは都合が悪いわ・・・。
彼女は始末するか、もしくは私達の眷属にしなければならないわね。そこで提案なんだけど、藍さんの手でその子を吸血鬼にしていただけない?」

「なんですって・・・?! そんなこと出来るわけないわっ!!」

「あらそう? どのみち貴女がお姉さまの物になったら彼女を襲うことになると思うわ。お姉さまはああ見えて容赦の無い方だから、彼女を丁寧に扱ってくれるかわからないわよ?
もちろん、私だってそう・・・。 だから、今のうちにやさしい藍さんがやってあげた方がいいと私は思うな〜。」

・・・っ!!
どこまで卑劣なことをっ!!

勇気を出して私に協力してくれた・・・、吸血鬼とわかっていながら私を信じてくれた・・・
そんな彼女を吸うなんて裏切りに他ならない。 彼女の気持ちを無駄にしないと言ったばかりなのに・・・!!

まさか、七美ちゃんを泳がせていたのも・・・!! 私に彼女を襲わせるため・・・・・・!!

「うふふ・・・、つい長く話してしまったわね。 そろそろ終わりにしましょうか・・・。
あまり時間は無いけれど、よく考えることね藍さん・・・。 仲間になって会えるのを楽しみにしているわ・・・。」

そしてマリアは電話を切った。
携帯電話を持ったまま立ち尽くす藍・・・。それを何も言わず見つめる七美。 2人の間に重々しい沈黙が流れていた。

「七美ちゃん・・・。」

藍は何かを決心したように、七美の方を向く。

「ごめんなさい・・・大事な話があるの・・・。」

藍の辛そうな表情を見返す七美もまた、覚悟をしたような、あるいは何かを諦めたような複雑な面持ちをしていた。

81カサブタ:2012/03/16(金) 23:26:43
「クスッ、 あ〜楽しい!! あの気を落としたような声、たまらないわ!!」

マリアは閉じた携帯を持ったまま楽しそうにくるりと回った。マントの裾がフワッと広がって彼女に巻きつく。
思っていたよりも早く目的地に着いたマリアは、暇つぶしとして七美に電話を掛けていたのだ。

何もしなくても、すぐに藍がローズの物になることはわかっていたが、どうせならたっぷり恐怖を味わってもらうのも面白い。
ついでに、恋人を失った七美をもっとどん底に突き落としてやろう。
彼女の行動はそんな残酷なまでの嗜虐心故の遊びだった。

「さぁて・・・、そろそろいい頃合いね・・・。 お姉さまの寝床を確保するとしようかしら・・・。」

彼女の眼下には明かりの付いた女子寮の窓があった。その中では2人の男女がなにやら夢中で話している。
マリアはジュルリと舌舐めずりをしながら、その明りに向かって飛び込んでいった。

82カサブタ:2012/03/16(金) 23:39:41
11

紅葉台学園は、多摩丘陵の山間に広大な敷地を持つ中高大一貫性のマンモス学園だった。
日本には珍しい全寮制のミッション系学校法人で海外からの留学生も多く、多人数を収容できる巨大な学生寮が整備されている。 

殆どの部屋が静かに寝静まった夜、その寮の一室から甘い匂いと、悩ましい声が溢れ出した。

月明かりが照らす、真っ白なシーツの上で一人の少女が裸にされ、仰向けに転がされていた。
彼女の身体を、別の真っ赤な爪をした女の手が這い回っていた。

はぁ……、 はぁ……、

焦らすような手付き、細い指先が身体をなぞる度に少女の口から荒い息が漏れた…。

「くす…、どう? さやかちゃん? 気持ちいいかしら…?」

マリアはベッドの端に腰掛け、少女の胸や脇腹、太腿を余すところ無く弄る。
自分の指先一つで喘ぎたてる少女の姿を見て彼女はさも愉しそうに薄笑いを浮べる。

一糸纏わない少女とは違い、マリアは裸体の上に黒い大きなマントだけを羽織っていた。
それはとても大きくベッドの半分以上を覆い、少女の身体を毛布のように包んでいる。

薄い黒い生地の表面には、汗ばんだ少女の下半身の形がくっきりと浮き出て、
触られるたびに、布の下で美しい脚が蠢くのがわかる。

「あぁ……、マリアお姉さま……。
とても………、とっても心地がいいです…。
私の中が、どんどんお姉さまで満たされていくみたいです……。」

「クスっ!! それは嬉しいわ……
私の愛が貴女にちゃんと伝わっている証拠ね………。」

マリアはベッドに倒れ込み、そのまま彼女の身体の上に覆いかぶさる。
そして、二人の女はお互いの息が吹きかかるほどに密着しながら指を絡ませあう……。

彼女達の間を遮る物は何も無い。二人の女はお互いの若く瑞々しい裸体を圧し付け合い、愛撫しあった。

「あっ、あああぁぁ……っ!! そんな…、マリアさまぁ……!!
激しすぎます……!!」

汗と愛液でヌルヌルと濡れた体がマントの中で激しく絡み、大きな二つの乳房が押し合い潰れ合う。

「怖がらなくていいわ、快感に身を任せて素直に感じればいいのよ……。
うふふ……、どう? 貴女の男はこんな喜びを貴女に与えてくれるかしら…?」

マリアは少女の頬を両手で押さえ唇を奪う。
薔薇の唇が少女の呼吸を塞ぎ、長い舌が口の中を蹂躙する。

甘い毒気をたっぷりと含んだキスに、さやかの脳髄は蕩け、思考は停止し、
恥じらいもモラルも弾けとんだ。

音無さやかは同性愛者ではない。彼氏もいた。
この女子寮の中は男子禁制だが、窓や裏口から男子生徒が忍び込んで女子と逢引をすることが度々起こっていた。

さやかも、つい先ほどまで同じクラスの男子と部屋で過ごしていた。いつもの逢引の為ではなく落ち込んだ彼女の親友をどうやって励ませばいいか密かに話し合っていたのだ。
黒いマントを着たマリアが窓から入って来るまでは・・・。

マリアはさやかを金縛りにすると、彼女が見ている前で少年を吸血して奪い取ってしまった。

マリアのマントの中に包み込まれた青年はたちまち骨抜きにされ、枯れるまで精液を搾り取られ犯し抜かれたあげくに意識を失った。 今では裸のまま無残に部屋の床に放られている。

はじめマリアを怖がっていた少女も、少年に続いて誘惑されると、すぐに彼女の手に堕ちた。
今では女同士のキスを躊躇うことも無く受け入れ、マリアの動きに釣られるように舌を絡ませあう。 

身体のあちこちが小刻みに震え、股間からとろりとした液体を絶え間なくあふれ出させる。

やがてマリアの唇が離れても、ぐったりとしたまま舌の上にマリアの唾液の味を探しながら快感の余韻に浸っていた。

83カサブタ:2012/03/16(金) 23:43:37
「貴女も私の妹になるべきよ…。 貴女にはもっと幸せに、美しく生きる権利があるの……。 私が保証してあげるわ。 だから、私に貴女の血と魂を頂戴…。」

マリアはさやかの目の前で口を開ける。
濡れた唇の間から獣のように長く鋭い八重歯が覗いている。

さやかは身震いしながらその牙をうっとりした目で見つめる。

「あぁぁ…、とても…嬉しいです……!!
私の穢れた血でよければ……、いくらでもお姉さまに捧げます……!!」

少女は首を後ろに曲げて大きく仰け反り、首筋をマリアに向けて差し出す体勢になった。

「お姉さま!! どうか私の血を吸ってくださいませ……!!
私はもう、お姉さま以外何も要りません……!!
俗世に穢された私の身体を、お姉さまの愛で清めてくださいませぇ…!!」

焦点の合わない目で、涎を垂らしながら狂ったように懇願する少女。
マリアはそんな彼女の様子を見てほくそ笑む。

もうこの子の心も身体も自分のもの……。

これでまた一人、暗闇の眷属が増える……。

「いいわ、これで貴女は生まれ変わる。 もう私達は姉妹よ…。」

マリアは彼女の身体をマントの中に抱き込み、その首に牙を突き立てた。

「ああぁ・・・、あん・・・っ!!」

首に刺さった牙の痛みに身を振るわせた少女の身体は、その後すぐに襲ってきた温かな痺れに酔わされ、マリアの身体を抱き返していた。
 マリアのやさしい抱擁に恍惚とし、股間をぐっしょりと濡らしながら、糸が切れたようにベッドに倒れこんだ。 だらしなく涎を垂らすその口には既に牙が、そして焦点の合わない目は赤く染まっていた。

「うふふふ・・・。 カワイイ妹ができちゃった・・・。」

マリアは少女に覆い被さり、仰向けになった彼女の口の周りを舐めていた。

「あらあら・・・この子ったら、 この男を寝かせる場所を確保してほしいとは言ったけど、先に楽しんでいいとは言っていないわよ・・・?」

ドアの所にはいつのまにか和也を抱えたローズが立っていた。

「クスクス・・・、ごめんなさいお姉様。この子、前からカワイイと思ってた後輩でね。真っ先に眷属にしようと思ってたの。 変な虫がついてたから身体を綺麗にしてあげてたのよ。」

「私が来ていることにも気づかずに楽しんで・・・、おかげで私までおかしな気分になってしまったわ。
抜け駆けする悪い子にはお仕置きしてあげないとね。」

ローズは興奮が覚めやらぬまま、マリアの口を塞ぐようにキスをしてきた。

「うう・・・んッ、ダメよお姉さま。今宵はこの男(コ)を・・・あんッ!・・・」

マリアの感じてる顔を見つめながら苦笑いを浮かべたローズだった。

「うふッ、可愛いマリアを見ていたらまたやりたくなっちゃうのよ!
でもそろそろ、この男をつまみ食いしましょうかしら・・・。」

バサァッ、

ローズのマントから蝙蝠たちが飛び出しベッドの上の少女に纏わりつく。
黒マントを纏った少女は起き上がり、ローズにお辞儀をした。

「はじめまして、マリアの可愛い妹さん。 私とお姉さんは用事があるからちょっと向こうへ行っててくれる? そこのボウヤと遊んでていいわよ。」

新たな闇の少女はニコッと笑うと、床に倒れている少年の足を取り、引き摺りながら奥の部屋へ去って行った。 ほどなくして少年の苦しそうな喘ぎ声と少女の笑い声が聞こえ始めた。

84カサブタ:2012/03/16(金) 23:57:53
「さぁ・・・、私たちもはじめましょう。」

2人はカズをベッドに寝かせ、左右に分かれると、両脇を挟むようにベットに上がった。
カズは二人がいやらしい行為に及んでいる間にもますます弱っているようだった

「うふッ、この男、なかなか素質があるんじゃない。ほらみてごらん、マリア」

「ほんとだわ! すごく苦しんでいるはずなのにパンツがテント張っているわよ!クスクス……バカな男。」

「ふふふ…、でもバカな男は大好きよ。 虐めたら愉しいもの…。」

身体の侵食はなんとか拒絶しているとはいえ、“サキュバスの呪い”による激しい快楽はしっかり感じてしまっているカズ。そのうえ、2人の戯れに刺激されたのだろうか?彼の股間は既に勃起していた。

「マリア、さっきも言ったとおり残念ながらこのままじゃ血を吸うことはできないわ。 この男の中には藍の強力な血が入っているの。 さて、こんな時はどうすればいいかわかる?」

「クスクス!」

ローズの質問にあえて答えなかったマリアであった。

「うふッ、さて準備をはじめましょう」

「はい、お姉さま!」

ローズはカズのパンツに手をかけると、一気に引き下ろした。
弾かれたように勃起したカズの肉棒が顔を出した。
カズのモノは皮かぶりのままで猛々しく天に向かってそそり立っていた。

「うふふッ、ボウヤ皮かぶりのオチンチンだったなんてね!」

目の前に飛び出してきたカズの肉棒をまじまじと見つめながら、ローズは苦笑いを浮かべた。
そしてひんやりとしたしなやかなローズの指先が、カズの肉棒を掴むと軽くまさぐった。

「・・・ううんッ・・・!!」

ローズが手を動かす度にカズの顔が歪み、感じていることがわかった。

「この切ない寝顔を見ていると、かまい甲斐があって面白いわ・・・。
さぁ・・・、まずは藍の力を取り除いてやらないとね・・・。」

ローズはカズの肉棒を握っている手から、魔力を注ぎ込んだ。
すると、カズの身体の中にある藍の血は急激に沈静化し、マリアの唾液への抵抗を弱めたのだった。

「これでいいわ。 さぁてマリア、このままではこのボウヤが貴女の毒で死んでしまうわ。
このわたしたちの眠れる森の王子様ならぬ、
眠れる森の包茎坊やを起こして差し上げなさい・・・
あの村の男達を骨抜きにしたアナタの熱ぅいキッスでね……うふッ」

「はい・・・」

マリアはカズにおおいかぶさると、真っ赤な口を開けて鼻と口を塞いだ。

ちゅっ・・・、んじゅる・・・ちゅる・・・

そしてマリアの長い舌は、カズの鼻や唇をチロチロと舐めあげる。

「・・・んーッ・・・!!」

カズは息苦しさを感じ顔を振ったが、マリアの異常なまでのディープキスから逃れる事はできなかった

「んッ、んッ、んッ・・・あッ!?・・・むぐッ!むぐぐッ!!」

カズは新鮮な空気を求めて、閉じていた口を軽く開けるとマリアはその一瞬の隙を見逃さず口の中に舌を差し込んだのだった。
ねっとりと唾液で濡れた舌の感触が、カズの口の中全体を蹂躙した。
不意をつかれたカズは、自分にいったい何が起こっているのか把握する事もできずに、
ただなすがままだった・・・。
マリアの執拗なまでのディープキスに解放された時は、顔じゅうが唾液で濡れていた。

85カサブタ:2012/03/17(土) 00:02:29
「おはよう、眠れる森の包茎坊やくん!」

マリアは小麦色の頬を紅潮させて、切れ長の赤い瞳を妖しく輝かせた。
そして唖然として横たわっているカズに声をかけた。 

「え・・・、あ・・・。 君はさっきの・・・」

カズは今までの苦しみが嘘だったかのように、頭も身体すっきりしていた。
今のキスでマリアは彼の中にある毒を吸い出してやったのだ。

「お目覚めのキスの味はいかがだったかしら?うふッ」

(マリア・・・キスの味・・・包茎坊や・・・?)
急激に回復した為にまだ意識がぼやけていたが、頭が冴えてくるとともに、今マリアに何をされていたかを理解した。

「あーッ!!」

カズは弾かれたように起き上がろうとしたが、
下半身をローズに押さえつけられていた為に起き上がれなかった。
そして包茎坊やとマリアに言われたカズは、羞恥がこみ上げて顔が赤らんだのだった。
カズは下半身が裸である事を知り、とっさに両手で股間を隠したのでした。

「いまさら隠す事なんてないんじゃない。とってもたくましくて可愛いオチンチンね」

マントで口元を隠し、くすくすと笑うマリア

「ふふふ・・・、お姫様のキスですっきりしたからといって、すぐには動かないことね。
貴方の中にはまだ、体が溶けてできた大量の精液が溜まっているんですもの・・・。」

妖艶に微笑むローズを見て、カズは怯えた。

(あ・・・アイちゃん・・・? いや違う・・・、アイちゃんに似てはいるけど。この女は絶対にあの子とは違う!!)

今、目の前にいる女は高校生である藍がそのまま5、6歳くらい成長したような容貌をしていた。
だが、その美しい姿の奥から溢れてくる邪悪なオーラにカズは本能的な危険を感じていた。

「あら、どうしたの・・・? ひょっとして私が怖いのかしら?」 

ローズはカズの手を払いのけると、
包皮にくるまれてわずかに亀頭の先が露出している肉棒をしっかりと握りしめた。

「ふふ、怖がってるわりには、体は正直に反応しているじゃない。
ほら、あなたのオチンチンの奥からこみ上げてくる快感がこの手の中から感じるわよ。オチンチンの皮、剥いてあげるわね!」

そう言うとローズはカズの肉棒を強く根元から握り締めると、包皮を一気に剥きあげたのでした。

「ああーッ!」

カズは腰をくねらせると、2人の吸血娘に見られている激しい羞恥に思わず声をあげた。
カズの剥きあげられた亀頭は鮮やかなピンク色に充血し、既に鈴口からはじっとりと先走り汁が溢れ出ていたのだ。

「うふふふ・・・、ボウヤのオチンチンからおいしそうなニオイがしてくるわ・・・。
トロトロの汁も溢れてきてる・・・、そんなに私にいじめられたいの・・・?」

「ヤダッ・・・。見ないでッ、見ないでください!うやあーッ、お、お願いだからッ!」

カズは常軌を逸した快感と羞恥で、心身ともにズタズタにされた。

「あらあら。包皮を剥いただけで、もうこんなに感じちゃって。
あなたの亀頭っていやらしい形をしているのね!」

そう言うとローズは唾液をたっぷりと絡めた長い舌で裏筋を舐めあげ、
鈴口をチロチロとくすぐり、真っ赤な口でしごくように肉棒を咥えていった。
むせ返るような男の淫液を何度となくすくい取って味わっては、肉棒の匂いを吸い込んだ。

「ああーッ・・・!」

ローズの唇に肉棒を含まれ、カズは下半身を激しくくねらせた。

86カサブタ:2012/03/17(土) 00:06:56
「ふふ・・・、ローズお姉様にこんなに可愛がられるなんて、私も羨ましいわ。」

マリアはベッドに上がり、彼の背後にするりと這い寄ると、後ろから抱きしめてきた 

「ほら、もっとローズお姉さまに、あなたのよがり声を聞かせてあげなさい・・・」

上気して熱くなったカズの耳元で、マリアが囁いた。
そしてマリアはカズの耳たぶを口に含むと、鋭くとがった牙で軽く噛んだのだった。

「あひぃ……っ や……やめて……あ…ああ……。」

「ふふ、かわいい……、お耳を攻められるだけでもうそんなに感じちゃったの?
ウブなのね…ふふふ、じゃあ、こんなのはどうかしら?」

れろぉ・・・
マリアはカズの頬からこめかみの辺りにゆっくりと舌を這わせた。
彼の体が ビクビクッ!! と震え上がる。 毒は吸い取られたといえ、既にカズの体は彼女の唾液に対して異常なまでに敏感に反応するようになっていたのだ。

「うふッ。ご機嫌だこと、マリア。可愛いわ。この男をもっと責めて虐めてあげたくなっちゃうわ」

「そうね、お姉さま。もっとずっと気持ちよくさせて、辱めましょう」

2人の吸血娘は顔を見合し微笑むと、マントをバサァッと広げて前後からカズの身体を包み込んだ。
2人は、カズの身体をやさしく愛撫し、赤い紅の後を残しながら唇で吸い付き、艶かしく舌を這わせた。

「ちゅ・・・ちゅぶ・・・れろ・・・!! うふふ・・・、 ん・・・にゅ・・・じゅぅ・・・、 じゅるるるぅっ!!」

「れろ・・・れろ・・・、 ぅん・・・、 ぢゅぢゅぅ・・・、はぁん・・・ふふ・・・ ぢゅぶ!! じゅぼ・・・じゅぱっ!!」

「あぁ…、ああああ……!!」

妖しい美女と美少女に蹂躙され、唾液まみれにされるカズ
2人が動くたびに、2人のマントが、さわ、さわ、とカズの身体をなでまわし、カズがよがる声を聞く度に愛撫を強めていった・・・。

「うッ・・・これいじょう、うッん、されたら・・・オレッ・・・ああーッ!」

ローズの生温かい粘液質の唾液と舌で甘美な刺激を送り続けられ、カズの肉棒は我慢の限界へ達した。

ローズは肉棒が大きく膨れたのを察すると、素早く口を離した。

「ふふ、勝手にイカせてなんてあげないわ……。」

冷たく鋭い声で威嚇した。
それはまるで女獣が小動物をいたぶるかのような残忍さが含んでいた。

「わたしたちに心から服従を誓うなら、考えてもいいわよ・・・クスクス」

カズは、はぁー!はぁー!と荒い呼吸をしながら弱々しく返答した。

「い、いやです・・・、 俺は・・・服従なんか・・・・・・、 たのむから・・・もうやめて・・・。」

藍のことを思う故に辛うじて耐えているが、彼の意志はこの快楽の前にはあまりにも無力。
だが、それでも彼は堕ちることを拒んだ。 藍のためにも・・・・・・。
そして、カズは哀願するように、2人の吸血娘に命乞いをした・・・。

「何度も言わせるんじゃないわよ、包茎坊や! 往生際が悪い子にはお仕置きが必要ね、お姉様!!」

カズは絶望的な眼差しでマリアをみた。

「うふッ、そうね。 悪い子にはきつ〜い罰を与えなければね。」

そう言うとローズは腰まで伸びた黒髪を、自分の鋭い爪で数十本切り落とした。
そして長い黒髪をおもむろにカズの肉棒にくるくると巻きつけていったのだ!
根元をキリキリと黒髪に締め付けられ肉棒は、最大限に膨れ上がりいやらしいお汁がしたった。

「ほらこれでお前が勝手にソレを慰めても、絶対にイクことができない体になったわ」

「あらー、お姉さまの黒髪の貞操帯、似合っているじゃない!可愛いわよ!クスクス」

ローズはまた大きく膨らんだ瑞々しいピンク色の亀頭に濃密なキスをするのだった。

「うッ・・・うあーやだッ、おかしくなっちゃうーッ!」

肉棒の先から黒い闇の瘴気がじわりと染みこみ、気が狂いそうなほどの被虐の予感に身体を震わせた。

87カサブタ:2012/03/17(土) 00:09:25
「そう、それじゃ・・・狂ってしまいなさい!」

ローズはそう言うと、残虐な暗い微笑みを浮かべて鋭い牙でカズの肉棒に噛みついた!

「あうッ、あーッ!ぎゃーッ!!!」

静まった部屋の空気をかき乱すようなカズの悲鳴が室内に轟いた。
それは肉棒が火で炙られたような鋭い痛みだった。
足をバタつかせて必死になって逃げようともがくが、ローズはそれを許さなかった。
ごくッ、ごくッと生血を飲む音があたり一面になり響き、なおも肉棒に食い込んだ牙を沈めていった。

「あらあら、そんなに痛いの・・・可哀想に・・・クスクス」

カズの苦痛で歪んだ顔をのぞきこんだマリアは、さもその表情を楽しんでいるようだった。

「ああ、ううッ・・・くーッ!!」

(お、おかしい・・・これは・・・ど、どういうことなんだ!)

血を抜かれてるはずの真っ赤な薔薇色に染まった肉棒は、
火照った体の奥からなをも痛みとともに淫らな欲望が疼きこみ上げてくるのでした。

「ふふ…いい感じに熟成してきましたわ。お姉さま…。」

「そうね、じゃあそろそろ……。」

「ふふふ、喜びなさいボウヤ。 美しいローズお姉さまが、イケないあなたの為に最高の快楽を与えて下さるわ!!」

マリアはカズの首を掴んで再び仰向けにベッドに寝かせると、ローズがカズの前に来た。

「さあ、ボウヤ。お望み通りイカせてあげるわ! 
抵抗していたことがバカみたいに思えるくらい、最高の快楽を味わわせてあげる!!」

バサァァァッ!!

そういうとローズはマントを大きく広げ、ドロドロに液を滲ませる自らの女性器を見せ付けた。

おぞましいまでに大きくグロテスクなヴァギナにカズは戦慄する。
それもそのはず。これまで数え切れないほどの男の命を枯らせてきたそれは、命を生み出す為の物では決してなく、命を吸い取る為にある捕食器官なのだ

「うわぁ・・・・っ!! い・・・いやだ・・・、 やめて・・・やめてください・・・!!」

もしも、あの中に挿入してしまったら・・・、
そこに待っているのは死なのか、それとも別の何かなのかわからない。
だが、その恐怖を塗りつぶす程の恐ろしいまでに絶大な快楽が待っているに違いない。

それが逆に怖かった・・・。悲しいかな、生来のスケベ心のために快楽に身を任せてしまい気持ちもあるのだが・・・。それによって自分の大事な何かが確実に終わりを迎える気がしてならなかった。

だが、もはやカズに選択する権利などない・・・。彼の運命はもう二人の魔女の物だ。

「私たちに服従を誓っておきながら、今更逃げられると思うの?」

「マリア、この子の後ろは頼むわよ。」

「ええ、わかっていますわ。」

マリアは後ろからカズを羽交い絞めにしたまま身体を仰け反らせた。
カズはそれから逃れようと必死にもがくがローズとマリアの腕でいとも簡単に制されてしまう。一見、華奢で細い腕なのにその力は万力のようだった。 

「覚悟なさい、ボウヤ。 ただイカせるだけじゃなく心をズタズタに引き裂いてあげるわ!!」

ブワァァ、とローズの大きなマントがマリアもろともカズを覆い込む。彼の頭はローズの胸の中に沈み、
体はローズとマリアの冷たく柔らかな肢体に挟み込まれた。

「ううぅ・・・っ!! ああぁ・・・っ!!」

(気持ちいい・・・っ!! 気持ちよすぎておかしくなるっ!!!)

「うふふ、いくら暴れても無駄よ。あなた程度の力では私たちから逃れられる筈が無いわ。」

「クスッ、藍さんではなく私たちに犯されるのが悔しいの? その苦しそうな顔、素敵よ…。
もっと、泣き喚いて…、もっと苦しんで…、カワイイ悲鳴をもっと聞かせて…。」

「ふふ…、マリアったら。本当におイタが好きなのね…。 涎が出ているわよ?」

「うふふふ・・・・・・。」

「ほほほ・・・・・・。」

88カサブタ:2012/03/17(土) 00:17:09
二人の魔女は、シュルシュルとマントを擦り合わせながら生贄の味を体中で味わった。
前後から手足を触手のように絡ませ、絶えず愛撫し、舌や口を這わせながら・・・

「じゅぷ・・・、ちゅ・・・、ん・・・じゅる。 おいしいわぁ・・・。 若い子をいたぶるのってどうしてこんなに愉しいのかしら・・・。 ぺろ・・・ぢゅぱっ じゅる・・・。」

「あ・・・、あ・・・・・・、 ひぁ・・・っ!!」

「チュ・・・ くちゅ・・・ほらほら・・・、ボウヤ。 私たちに全部委ねておしまいなさい・・・。
たっぷり気持ちよくして・・・、もっともっと狂わせてあげる・・・。」

生贄の呻き声を、・・・体温を、 匂いを・・・、 体の味を・・・、 悶える姿を・・・、 すべてを味わいながら犯していく・・・。

獲物を貪ることこそ吸血鬼の最大の愉悦。ただ血と精を吸うだけでなく、いかに楽しく味わうかが重要だ。  

「あ・・・・・・はぁ、 はぁ・・・・ああぅ・・・!! うぅぅん・・・、 ふぁ・・・っ!!」

(ああ・・・、だめだ・・・。 俺の力じゃもう耐えられない・・・。 気持ちよすぎて逆らえない・・・。
藍ちゃん・・・たすけて・・・。)

そして、和也は魔女達の妖しい性戯に狂わされる。黒百合の時には藍の励ましもあってなんとか耐えることができたが、今回はとても耐えられそうにない。 だれも助けてくれないし、与えられる快楽だけでもあの時を遥に上回っているのだ。

「本当に耐えようとしているの・・・? 貴方はどこかでこうなることを望んでいたのではなくてボウヤ?」

心の中を読み取るようにローズが話しかける。
同時にマントを使って彼をシュル、シュル、と撫で上げる

「あううぅぅっ!!」

「貴方は、口では抵抗してても私たちとの交わりを楽しんでいるじゃない・・・?
本当は私にメチャクチャにされたいんでしょう?」

「ち・・・ちが・・・、うううぅぅっ!!」

シュルシュル〜 さわさわさわ
今度はマリアがくすぐってくる。

「ふふふふ、男の子って弱い弱い♪ 心の弱さがすぐ身体に出ちゃうのね。
私が襲った村の男たちも最初は抵抗したけど、責めてあげてるうちにだんだん可愛いワンちゃんになっちゃったわ。 私に殺されるってわかってるのに最後まで私に吸われたがってたわ。
あなたもそうなんでしょう?」

「黒百合に襲われた時に、吸血鬼の魅惑をたっぷり味わわされて、それが忘れられないんでしょう?
藍と付き合ってるのもそれが理由よ。 

藍を好きになったのは、彼女が吸血鬼だったから・・・。 そうでしょう?

貴方は心の奥底で願ってたのよね・・・? 若くて綺麗な藍に、血を吸われたいって・・・。
黒百合にされたように、いいえそれ以上に藍にメチャクチャに犯されたいって・・・!!」

「・・・っ!! ち・・・違う!! あああぁ!!!」

ヌチュ・・・

カズの肉棒の先が、ローズの濡れた股間に触れる。

「違うのなら、貴方はどうして私に興奮してるのかしらね? どうして見ず知らずのマリアに欲情してるのかしら?」

「ひぃ・・・、ひ・・・・・・、いいぃ・・・!!」

カズは泣き出しそうだった。 いまの感情を言葉で否定しようとしても、体だけでなく頭もローズの言葉に悟らされてしまう。自分が藍に惚れた理由、 そして、ローズやマリアに興奮している理由を・・・。

「若くて綺麗で・・・、 こんな快楽を与えてくれるなら・・・。
女吸血鬼なら誰でもいいんでしょう、あなたは。 美人な女になら命を取られても構わない変態なんでしょう?」

「ちがうううぅぅぅぅぅっ!!!」

もともと、自分はスケベであるという自覚はあった・・・、藍に好意を抱いたのだってそんな醜い欲望故だったことも事実なのだ・・・。 仕方がない・・・男とは元来そんな生き物なのだ・・・

だが、

それを認めてしまうことに、彼は堪えがたい罪悪感を抱いていた。
長く藍と付き合っているうちに、 最初は性的な欲望も込めて見ていた彼女に、まったく別種の感情を抱くようになってきたのだ。

藍の純粋さ、天真爛漫さ・・・、それを自分の欲望で汚したくない・・・、守りたいという想いが次第に強くなっていった。

89カサブタ:2012/03/17(土) 00:24:37
相変わらず、可愛い子を見ると手を出したくなる性分だったが、いつしか藍にだけは軽々しく触れるのをためらうようになった。 野性の本能だけでなく、それを越えた想いを抱き始めていた・・・。

(アイちゃん・・・・・・俺は・・・)

ようやく彼は気付いた、 それこそが、誰かを好きになるということだと・・・。
だから、今ローズの言葉に悟らされてしまうのが怖いのだ・・・。 藍への気持ちがただの性欲の為だと自分で認めることになってしまうから・・・。

俺は・・・・・・。

「藍が好きなの・・・・・・?」

そうだ・・・・・・。

「藍のどこが好き・・・?」

アイちゃんの全部が・・・・・・。

「外見も好き・・・?」

それだけじゃない・・・。

「あの性格も?」

そうだ・・・。

「吸血鬼だけど・・・?」

かまわない・・・、むしろ好きだ・・・。

「匂いも? 声も? 顔も? 体も?」

ああっ!! 全部好きだ!!

「そう・・・、それならば・・・。 私の顔をよくごらんなさい・・・。」

「え・・・。」

胸に埋めていた顔を上げるカズ、 そして、目の前にある顔を改めて見た。

「見て・・・、貴方の藍と同じこの顔・・・。」

「・・・っ!!」

「感じるでしょう・・・、藍と同じこの体の感触・・・、体温・・・。」

「ああぁ・・・っ!!」

「同じ匂い・・・、薔薇の香り・・・。」

「や・・・やめて・・・っ!! あああぁ・・・。」

「成長したから少し声は違うけど・・・、 声帯も同じだから声は出せるよ
ね・・・カズくん・・・?」

藍と寸分違わぬその声にカズの体を衝撃が走り抜けドクンドクンと心臓が高鳴る・・・。
カズは今までローズの言葉責めに耐えるように必死で藍を思いだしていた。

ほんの少し前の、藍と出会う前のいい加減なカズのままだったらとっくにローズ達に陥落しているところだが、 今のカズは吸血鬼の誘惑にここまで耐え抜くほどに強い意志を持ったのだ・・・。

すべては藍のため・・・。 藍への愛情のために・・・。

そして、とうとうカズは自分がアイに抱いていた本当の感情に気付くことができたのだ。

だが・・・!! しかし・・・

それゆえにカズは嵌ってしまった・・・。 ローズが仕掛けた残酷な罠に・・・。

「ふふふ・・・、藍のことをそこまで想っているのなら・・・、 外見の年齢は違えど藍とまったく同じ体を持つ私のことも好きになって貰えるわよね・・・?」

「あああぁっ!!」

カズの中にある藍の血がローズの意志に従うように抵抗を止めたのには理由がある。藍の血はローズのことを藍であると認識しているのだ。 

「マリア、もう放していいわよ・・・。」

「あら、とっくに手は緩めてますけど・・・? うふふ・・・。」

マリアは手足の拘束を解いていたが、カズはもう自分の意思で動けなくなり、ローズの目と鼻の先で、泣きそうな表情になっていた。 

今のカズは先日、渡来船の物置で藍に操られていた時と同じ状態になっていたのだ。体内の藍の血はローズを宿主であると勘違いし、彼女の思うままに彼の体は操られているのだ。 それはカズが深層意識のレベルでローズを藍だと認めてしまった証拠だった

(ふふふ・・・、これであの子の血は完全に私の支配下に落ちた・・・。 あとは吸い出してやるだけ・・・。)

90カサブタ:2012/03/17(土) 00:26:48
「さぁ・・・、カズくん・・・。 今から貴方は全てを奪われるわ・・・。 貴方が愛した吸血鬼の手によって・・・ね・・・。」

そして、ローズはカズの前に移動すると、彼の肉棒目掛けてじっとり濡れた股間を下ろし始めた。

じゅぷっ ぬぷぬぷぬぷ・・・、

「ああぁっ!! あは・・・・・・。」

硬く硬くそそり立っている肉棒をローズのヴァギナが呑み込む。
何人もの男の命を奪う魔の女性器。女性関係の浅い和也に耐えられるはずもない。

「うふふ・・・、気持ちいいでしょう・・・? ドキドキするでしょうね・・・?
貴方がずっと好きだった藍と交わることができるんですものね・・・。」 

「あぁ・・・・あぅ!! あ・・・はぁぁ!!」

ぐちゅ・・・ぶちゅぅ じゅる・・・ずちゅぅ・・・ずぢゅぅっ!!

「ほほほほ・・・・・・っ!!」

バサァァッ

マントを高らかに広げ、歓喜の笑いを上げながら、ローズは激しい腰の動きで、何度も何度もカズをしごき上げる。和也の肉棒はヴァギナの中で徹底的に弄ばれ、たちまち彼の体内に溜まっていた
精液は尿道を駆け上がり、そして、ローズの子宮の中で爆ぜた

びゅびゅびゅぅ〜〜・・・、 ドロドロドロ・・・、 びちゃ・・・どくどくどく・・・

「ああああぁぁ・・・・・・・っ!!!」

その瞬間、カズの心は壊れた・・・。体中がローズの快楽に犯され、かつてない悦楽が駆け巡った。

「あぁ・・・、いい・・・いいわ。 もっと・・・もっと出すのよ・・・!!」

ぐちゅ・・・、ぶちゅ・・・ ぢゅぢゅ・・・、じゅじゅるるる・・・・・・!!

「あぅ・・・!! あひぃぃぃっ!! あぁ・・・!!!」

どぶどぶどびゅ・・・っ!! じゅくん・・・じゅくん・・・ びゅっ、びゅるる・・・!!

出せども出せども、流れ出す精液の勢いは止まらない。
身体の全ての水分を出し切ってしまうのではないかとも思える勢いと長さ、そして快楽だった。

「や・・・、やめて・・・、もう・・・で・・・・・・ ううぅっ!!!?」

ぶゎさぁっ シュルル・・・シュルシュル・・・

命乞いをしようとした和也をローズのおっぱいが制する。そのまま彼の上半身はマントでくるまれ、ローズの身体と密着したままベッドに圧しつけられてしまう。

「ふふふ・・・、 頼めば助けてあげるとでも思ってるの・・・?
甘いわよボウヤ。 私に包まれた者の末路は一つしかないわ。
お前はもう、私達に搾り尽くされるしか道はないの・・・。 ほら・・・もっと思い知らせてあげるわ・・・!!」

ごぷり・・・っ どぷ・・・、びゅぷ・・・・・・!!

「うぁぁっ!! あぁあ・・・っ あああああああっ!!!!」 

一回の絶頂で普段の数回分に相当する精液が迸る。
一度に作られる精子の量はとっくに越えている筈なのに、マントに包まれて愛撫されると、身体が内側から溶け出すように射精してしまう。

「あああ・・・っ!! なんて熱い・・・。 あの子の血・・・、あの子の力が流れ込んで来るわぁぁ・・・!!」

バサアァァ、 ブワサァァ・・・!!

ローズは恍惚の表情を浮かべて、狂ったように身をよじる。
カズから吸い取った精気を全身に行き渡らせるように激しく腕や上半身をうねらせ、マントを翻し続けた。

「あぁ・・・、 おおお・・・!! ほほほ・・・すごいわぁ・・・!! んああんっ!!
もっと・・・もっとよ・・・!! 」 

ブォォォ・・・ バサァァァァ、 バァァァ・・・・・・!!

ほてった身体を慰めるように、身体に巻きつかせ乳房を抱きよせたり。 
体の熱気を部屋中にまき散らすように、思い切り広げたり・・・。
それはまさに、生贄を喰らう魔女の儀式だった。

ジュブブブ・・・ ジュボボッ じゅぶ・・・ブシャァァ・・・ッ!!
(ああぁ・・・・!! き・・・きもちいい・・・!! きもちよすぎて し・・・しぬぅぅううううううう!!!)

91カサブタ:2012/03/17(土) 00:29:54
「あははは・・・っ!! すごぉ〜い!! 身体がどんどん干からびてくわ!!
男がお姉様に吸い殺される瞬間って何度見ても飽きないわ!
本当に地獄みたいな快楽なんでしょうね・・・、その苦しそうな顔を見てるだけで濡れてきちゃう!!」

「ほほほ・・・!! ほ〜っほっほっほっほ!! 
イキなさいボウヤ!! 私の中に堕ちていらっしゃいっ!!
お前は私のマントに囚われた哀れな奴隷。 女王である私の糧よ・・・!!

お前の中にあるアイの血だけでなく、お前自身の命を私に捧げなさい」

ぐびゅっ!! ず・・・ずぢゅぅぅぅうぅぅぅぅううっ!!!

「ぎぃやあああぁぁぁっ!!! ああぁ・・・・・・、かはぁぁ・・・!!」

とどめといわんばかりにローズの肉壷が和也の一物を搾り上げた。
和也の身体からわずかな精気さえも残さず吸い取ってしまいかねない激しい吸引だった

「あぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

和也の視界がぼやけ・・・意識が遠のく・・・。 

「・・・・・・・・・、・・・・・・・・!!!」

まるで、物が腐っていく様子を早回しで見ているかのように和也の身体は変色し、張り艶を失い萎んでいく・・・。 最後の方にはもう悲鳴すらなかった。 

しずかに、しずかに和也は朽ち果てていき・・・、そして不気味なまでの沈黙が訪れた・・・

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

「はぁ・・・・・・、 はぁぁ・・・とっても美味しかったわ。」

カズの全てを吸い尽くしたローズは充足に満ちた表情でマリアに目を向ける。
濡れたマントに被われた生白い彼女の身体は、ますます妖しい輝きを増し、邪悪な美しさを花開かせていた。

「お姉様すごいわ・・・、私にも今までよりずっとすごい魔力が感じられる・・・。お姉様の身体から素敵な匂いが立ち昇ってて私までクラクラしちゃう・・・。」

「ふふふ・・・、 私もまさかこれほどとは思わなかった。このボウヤに入っているあの子の血はほんの少しだけだというのに。
かつて黒ミサで生み出した時よりもアイは遥に魔力のポテンシャルを増しているわ・・・。
あのハンターには感謝をしなければね・・・、アイをここまで強くしてくれたんですもの・・・。」

「なら、お姉様。この男にも感謝してはどう? アイさんの血をお姉様に届けてくれたもの・・・。」

「それがいいわねマリア・・・。 この子も喜ぶでしょうし。」

「・・・・・・・・・・。」

ローズの腰の下・・・。 そこには、歪な形になった人型の肉の塊があった。
四肢の判別は辛うじて出来るものの、ヌルヌルの液体で濡れた表面は溶けかけ、頭と思しき場所には歪んだ凹凸があるのみ。 

それは完全に溶かされる途中で寸止めされた和也の成れの果てだった。 大きさは4分の1程度まで小さくなり、もはや原型を殆ど残していない・・・。 器官のほぼ全てが溶け崩れ、もう自分の力で動くことも、喋ることもできなくなっていた。

今は僅かに残された心臓だけが、時折弱々しく鼓動するだけ。ローズに産み落とされた直後のキルシュよりも悲惨な状態だったのだ。

92カサブタ:2012/03/17(土) 00:33:13
「ふふ・・・、これでも一応生きてるなんてね・・・。 お姉様ったら残酷ね・・・。
こんな姿になるならいっそ殺してあげた方がマシだったかも。」

マリアが表面を撫でると、それはピクン、と震えた。

「慈悲深いのねマリア。 それなら、この子にはあと僅かの人生を楽しんでもらうことにしましょうか。 このボウヤの魂は私のマントの中でゆっくり時間をかけて溶かしてあげるとするわ・・・。 マントの中は私の中・・・。たっぷりと快楽に溺れながら逝くのよ。 格別のご褒美だと思わない・・・?」

ローズは和也だった物体を胸に抱き上げると・・・、赤子をくるみこむように、マントを被せた。

「私のマントの中でお眠りなさい。 ふふふ・・・。」

ふぁさぁ・・・

さわさわ・・・ さらら・・・ ぬちょ・・・ねちょ

和也がマントの中に消えると、真っ赤な裏地がグニュグニュと蠢き初め・・・、不気味な水音を上げ始めた・・・。
ぬめったような光沢は、ローズの体液で塗れているからではない・・・。裏地そのものが真っ赤なスライム状の粘膜になり、粘液を滴らせているのだ

「安心しておやすみ・・・。 私の中で永遠に・・・、 うふふふ。」

ブチュブチュブチュ・・・・・・!! ずちゅ・・・ずずずず・・・・

ローズに抱かれた和也の肉は、粘液と化した裏地に纏わりつかれ、やがて泥沼に沈むように没していった。 マントの中は肉壁のような真っ赤な粘体で満たされた世界・・・
命ある物全てを飲み込む泥沼。 

(うぁぁぁ・・・・・・)

原型を失っても僅かな意識を残していた彼は深い闇の中へ堕ちていくような感覚を味わった。 しかし、実際に堕ちているわけではない。彼の魂が肉体と一緒にローズのマントの中へ吸い取られているのだ。

ローズは血や精液だけを吸うのではない。 彼女はマントや自分の身体を通して生き物の生体エネルギーそのものを全て吸い取ってしまう。文字通り、命を奪ってしまうのだ。

ずずず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・


どろろ・・・・・・ ぶちゅぶちゅ・・・・・・ ぐちゅ・・・

ううあ・・・・   ああ・・・・・・・・・、 
き・・・きもちいいっ なんだここは・・・!!

あぁ・・・、 お・・・俺は食われているんだ・・・っ!! この吸血鬼に・・・・・・。

ここは・・・、 あの女のマントの中だ・・・!!

じゅぶじゅぶ・・・・・・、 ドロドロドロ・・・・・・

あつい・・・・・・、身体が・・・、 気持ちいい・・・ 身体なんてもうないのに・・・

そうだ・・・・・・、この感じ・・・。 藍ちゃんの中みたいだ・・・

あの時包み込まれた 君のマントの中・・・。 温かさ・・・・・・ 匂い・・・ それに安心感・・・

ここは君のなかと同じ・・・ 藍ちゃんの・・・・・・

ジュブジュブジュブ・・・っ!! ジュクン・・・ぢゅぶん・・・

うああぁ・・・、 う・・・ うぅぅ・・・・・・っ!! ち・・・ちがう・・・!!  藍ちゃんの中は気持ちよかったけど・・・
こんな、快楽地獄じゃない!!

たすけて・・・・・・!!  ここにずっといたら・・・俺の・・・ 魂がとけてなくなる・・・!!

ああぁ・・・・・・ 藍ちゃん・・・。 たすけて・・・・・・!!

藍ちゃんにならどうされてもいい・・・・・・、 でも、この吸血鬼はキミじゃないっ!!

こんな恐ろしい快楽の中で死ぬなんて嫌だ・・・

たすけて・・・・ みゆきさん・・・・・・  あいちゃん・・・・・・

ああ・・・・・  あああぁぁ・・・・・・

どろろろ・・・・・・ ずぷずぷずぷ・・・・・・


和也の魂は魔女のマントの中に捉えられてしまった・・・。 藍を守ると約束したのに・・・。
誰も救えず・・・、誰にも看取られないまま・・・カズの身体は死に、 魂もゆっくりと崩壊しつつある・・・。 彼にはもう何もできない・・・ このまま助け出されなければ、彼はこのマントの中で消えてなくなってしまうのだ・・・。 

和也はもう恐怖と快楽の無間地獄の中で、ゆっくり終わりを待つのみとなった。

93カサブタ:2012/03/17(土) 00:37:43
バサリッ とマントを広げると、ローズの胸の中にもはやカズの姿は無かった。
二人の吸血鬼は笑いあいながら窓から飛びたち、女子寮の屋上へと降り立つ。

ローズは粘液で濡れた身体のまま、マントの裾を引き摺って屋根の際までゆっくりと歩いてきた。

先程まで、満月が輝いていた筈の空は、いつのまにか真っ黒な雲が立ちこめ、風もだんだんと強くなってきていた。

「ほほほ・・・、マリア。 いよいよ始まるわよ・・・。 本当の黒ミサ・・・。私たちの宴がね!!」

バサァァァァァッ!!!

ローズが空に向かって裸体を晒し、巨大なマントを広げる。
その瞬間、青白い稲光が空を切り裂き、耳を劈くような雷鳴が響き渡った。
分厚い雲が空の月を覆い、広大な学園を黒い影が覆い尽くす。

「ほほほほほ・・・・・・、 ほ〜っほっほっほっほっほ!!!」

稲妻は、翼を広げた魔女の影を大きく大きく映し出した。 その影はどんどん大きくなって学園全体を覆い、彼女の笑い声は嵐の空に響き渡る。

今、悪魔の宴が始まろうとしていた・・・。



「うぅぅ・・・・・・っ!!」

「藍さんっ!!」

不安そうな七美の目の前で藍は頭を抱えて悶え始めた。

おいで・・・、 アイ・・・、 私のところへおいで・・・・・・!!!

声が・・・・・・、 あいつの声が聞こえる・・・!! 頭の中に響く・・・。

「だ・・・め・・・。 カズくんを殺さないで・・・・・・。」

カズの気配がどんどん弱まっていく・・・。 命が消えようとしているのだ・・・。

おいで・・・ アイ・・・。 あなたは私のもの・・・ 一つになるのよアイ・・・!!

「・・・・・・っ!!」

和也はもう奴の手に掛かってしまったんだ・・・。 そして奴は彼の身体の中にある藍の血を吸った。
それは、藍が血を吸われたことと同義だ。

こうなったら藍はもう逆らうことができない・・・。 他の吸血鬼になら支配されることのない藍も、
ローズが相手ではどうしようもないのだ・・・。

「あ・・・・・・藍さん・・・。」

藍は七美を見る・・・。怯えている彼女の顔が歪んで見えた。
同時に湧き上がってきたのは、のどの渇きだった。

「七美ちゃん・・・・・・。」

藍の目は真っ赤に輝いている。 息は熱く、荒くなる・・・・・・。

「ごめんね・・・・・・、 七美ちゃん・・・。」

藍は頬を真っ赤に紅潮させ・・・、マントの裾をゆらゆら揺らしながら七美に歩み寄って行った・・・。

94カサブタ:2012/03/17(土) 11:51:58
12

普段ならば下北沢は夜でも主婦や学校帰りの若者達でごった返しているはずだった。
それが今ではまるで戒厳令でも敷かれているかのように不気味な静けさに包まれていた。

世田谷を初め、都内の各所で連続怪死事件によって特別警戒令が敷かれている今、多くの店舗は日が落ちる前にシャッターを下ろし、学生もサラリーマンも足早に家路を急いでいた。この街には警察署は無いが、かねてより防犯意識が高いこともあり、各商店街組合の合意の元で閉店時間を早める呼びかけがなされていた。

そのうえ、にわかに風が強くなりやがて戸板を叩くような大雨が降り始めると、いよいよ人通りはまばらになり、通り過ぎる電車とパトロールの警察車両を除いて動く物は無くなった。

あまりに場違いな一台のリムジンが下北沢の狭小路に入ってきたとしても。今ではそれに気付く者もいない。

「そうか・・・、 間もなく始まるのだなっ!!」

ローバックスの日本法人にて会合を行った後、ローズから連絡を受けたキルシュ伯爵は、まっすぐに渡来船へ向かっていた。

「伯爵様、あの子を迎えに行ってくださるかしら・・・?
こちらへ来る途中で楽しんでいただいても構いませんわよ?」

「ふははっ!! 良いのかローズ? あの娘は君の分身だろう?
宴が始まる前に私が傷物にしてしまってもかまわないのか?」

「私は貴方を愛しているといつも言っていますでしょう? 私の分身ということはつまりあの子も私と同じく貴方の寵愛を受けるべき対象であるということ。違いますか?」

「少女の頃の君か・・・。実に楽しみだ・・・。」

下北沢の狭い通りをリムジンは窮屈そうにゆっくり進んでいく。やがて渡来船の前までやってくると既に店の玄関の前に2人の少女が佇んでいた。2人とも黒いマントを着て雨の中立っている。

伯爵は車から降りて、彼女達を迎える。

「ほう・・・!!」

藍の顔をまじまじと見て彼はため息を漏らした。それに対して藍は眉ひとつ動かさず、冷たい表情で彼を見ていた。

「なるほど、似ている。 そして実に美しい・・・!!」

伯爵は藍の容姿に大層満足したようだった。そして、彼女の肩に手を回しエスコートするように車へと誘う。

「歓迎しよう。君もローズと同格なのだ。私が寵愛するに値する。」

そして、次に伯爵はもうひとりの少女に目配せする。 大原七美、今は彼女も藍と同じく血色の無い真っ白な肌をし真っ赤な目をしている。
幼い少女のような小さい体躯にやや大きめのマントの裾を引摺る。しかし、彼女もまた闇に魅せられた者特有の美しさを湛えていた。

「ほう、可愛らしくも艶やかな妖花のような娘だ。実にいい。
君も来るといい。ローズもきっと君を気に入るだろう。」

伯爵は七美にも手を差し伸べ、車に誘おうとするが、彼女はそれを無視して、自分で車の後部座席に向かって行った。

「後ろに乗せてもらうわ・・・。 その人の隣は嫌・・・。」

七美は藍を冷たく睨みつけて、吐き捨てるように言った。
怪訝な顔をする伯爵に藍が話しかける。

「気にしないで・・・、私は嫌われても仕方が無いのよ。 あの子の気持ちを裏切ってしまったんだもの・・・。」

「おやおやそれは・・・。」

伯爵はフッと鼻で笑う。

「さてはマリアにからかわれたか? 私たちが吸血鬼にしたとはいえあれは少々デリカシーに欠けるからな・・・。」

「ぜひ教育しなおして欲しいわね・・・あの子、性格が悪いにも程があるわ・・・。」

3人が乗り込むと、車は紅葉台学園に向けて出発した。
リムジンの中は、まるで伯爵の屋敷の部屋をそのまま切り取ったような空間だった。
燭台を象ったライトに皮のソファ。 アンティークな長机と木製のカクテルキャビネット。
全ての窓に黒いベルベットのカーテンがついていて、それを閉めると車の中に居ることを忘れてしまう。 ソファもベッドのように大きく長い。 キルシュ伯爵が愛人や娼婦と楽しむために作らせた空間であることは一目瞭然だった。

95カサブタ:2012/03/17(土) 11:53:47

「まずは私たちの出会いに乾杯するとしよう。」

キルシュと藍はソファに並んで座っていた。彼はシャンパンの入ったグラスを少し傾けながら、藍の肩に手を回し、その髪を指に絡ませて感触を楽しんでいた。 藍は目の前のテーブルに置かれたグラスに手をつけようともせず、キルシュの行為にも無反応だった。
そして、その二人とは離れたところには七美が腰掛け、二人から目を背けるようにして何も言わずに
いた。

「今宵の酒は特別に上手い。 やはり美女こそが最高の肴だ。」

車は永福ICから高速に乗ると、そのまま中央高速を西へと進んでいった

「どこへ向かっているの・・・?」

「八王子と日野の間にある紅葉台学園だよ。君も名前くらいは聞いたことがあるだろう・・・?」

「多摩の山林の中にある巨大な学園か・・・。
そこがあの女の城ね。なるほど・・・、周囲を森に囲まれた閉鎖的な環境に加えて若い子達を集めやすい学校法人。 城としてこれほどの好条件は無いわ。」

「ククク・・・、それだけではないさ。 あそこはヴァンパイアが快適に過ごせるように様々な設備が充実している。建物内に一切光が入らない遮光窓や地下の大ホール、体育館などそれこそ枚挙に暇が無い。留学生の受け入れ制度によってマリアのように外国からの眷属を連れ込むこともできる。
生徒達は貞操を守り健康を管理され、皆素晴らしい血を持っているのだ。

まさに理想的な城であり、良質な血を育てる牧場。いや、小さな城塞都市と言ってもいい。愛するローズの為に私が長い年月と財力を費やして作った最高のプレゼントなのだよ。 ふははは・・・!!」

紅葉台学園は一応は教会によって設立された学園ではあるものの、主にローバックスの出資によって作られた事実上の私立学校であり、理事会も一家と繋がりが深い者たちで固められていた。その運営方針を巡っては教会の意志よりもローバックス家の意志の方が強い影響力を持ち、教会から見ても不明瞭な部分が多いため、少なからず反発を招いたそうだ。 だが、この学園は他ならぬジョリオ・ローバックス枢機卿のお墨付きを頂いているとあって教会から口を挟まれることは無いに等しかった。
 そんな公共の目からも教会からも実態が見えない聖域だったからこそ、キルシュは好きなように手を加えることができた。この学園の本来の姿はローズが女王として君臨する居城だ。
彼女が魔術的な儀式や研究を行う為のあらゆる設備が整えられ、いずれ日本全体を侵略するための最初の足がかりとして万全の整備がされているのだ。

「最低のやり方だわ・・・。将来ある若い子達を騙して入学させ、知らず知らずのうちに貴方達の家畜に変えてしまうなんて。」

「ふふふ・・・、これも素晴らしき世界の実現のためだよ。 それに家畜という表現は少々間違っている。あそこはいずれ来るヴァンパイアの素晴らしき治世を担う若者を育てる場だ。」

「生徒達をお互いに襲わせることが、貴方達にとっての教育なの・・・?」

「勘違いしてはならない。これは“ふるい分け”だよ。ヴァンパイアとしての潜在能力が高い者たちを支配階級に置き、それ以外は眷属やレッサーに変えて下で働かせる。いわば適材適所だ。その選定の段階で脱落者が出るのは仕方がないことだろう?」

「ヴァンパイアが人間を支配し管理するだなんて・・・。教会関係者の言葉とは思えないわね。」

「何を言う・・・、私は信仰を棄ててなどいないさ。 ただ以前と違うのは信じる神が変わったということさ。 ローズこそが世界を統べる女王であり、全人類が恐れ敬うべき女神だ。

なのに、教会も父も酷い。 彼らはローズのことを駒としか考えていないのだ。私が愛し敬う彼女を化物だと言うのだ。 虚飾の神を信仰し、真実の神を侮辱するとはなんと許し難いことか・・・。
私はこの手で彼女の素晴らしさを世界に思い知らせてやらねばならない。」

「貴方達がやろうとしていることは結局はただの力による独裁よ。 あの女だけに都合のいい世界を作るための身勝手な侵略だわ・・・。」

「くくく・・・、ならば私を止めてみるか? いくら口では好きなことを言えても、今の君はローズの虜だ。
私が何をしても君は逆らうことができない。 そうだろう・・・?」

96カサブタ:2012/03/17(土) 11:55:54
キルシュは藍の肩を引き寄せると、鼻先を彼女の頬に触れるようにくっつけて匂いを味わった。
藍は嫌悪感に満ちた目を彼に向けるが、彼はそれすらも可愛いといわんばかりにニタリと笑うのだ。

「綺麗な髪だ、芳醇なる薔薇の香り・・・、まさに若かりし日のローズだ。」

「・・・、私の前であの女のことを言わないで・・・。」

「失礼・・・、彼女の分身とはいえ君にも自我があるのだったな・・・。 
くくく・・・、しかし、実際君はあらゆる点で彼女とは違うな。ローズは良い女ではあるが、少々練達しすぎている。 君は初々しさがあってとても新鮮だ。」

藍の態度にも構わずに、キルシュは彼女の服の中に手を突っ込み、直接肌に触れてきた。

「くっ・・・!!」

「ふふふ・・・私に触られるのが屈辱的かね? 悪いが、私にはその生娘らしい恥じらいがたまらないのだよ。
社交界の女たちは私の財力を目当てに寄ってくるためか、情交の時の態度もわざとらしくて
適わん。何も知らぬ村娘達を弄んでやる方が良い反応が返ってきて面白いのだ。」

とうとうキルシュは藍の制服を裂いて、下着姿を曝け出させてしまった。 そして、そこに顔を突っ込み藍の肌を舐めしゃぶりはじめたのだ。

「ひ・・・っ、う・・・・・・っ!!!」

藍はとてつもない屈辱と羞恥を感じていた。同時に、今まで感じたこともないような憎悪がふつふつと静かに湧き上がってきたのだ。

「やめて、さわらないで・・・・・・っ!!」

感情が今にも爆発しそうだ・・・。だが、そうしてしまったら私は私でなくなってしまう。そんな気分がした。

だが、藍が言葉で抵抗しても、キルシュの行為は更にエスカレートするばかりだった。
彼の手は藍のパンティの中にまで入り込み、彼女の秘密の場所にまで達しようとしている。

「・・・・・・っ!!!」

感情を抑えようとはしている。 だが、もう限界だった。
藍の身体の中でドス黒い怒りが炎のように激しく燃え上がっていくのだ。

「ふはははっ!! 実にいい顔だぞ。 私が憎いか? ならもっと憎むがいい!!
マリアも最初はそんな顔をしていた。 だが、血を吸う喜びに目覚めた途端にあの有様だ。
ましてや君はローズの片割れ。人間の血を吸う快感を知らないとは言わせないぞ?
放っておいても、いずれあの早瀬和也という青年を襲っていただろうさ!!

人間を襲い、支配することこそ吸血鬼の本能であり、あるべき姿なのだ!!
それを否定するのならば、この私が君の肉欲を引き出してやろう。人間のフリなどやめて、本当の心に従いたまえ!!」  

キルシュは藍の身体をソファに押し倒し、馬乗りになった。そして、とうとう彼女の下着を無理やり引き下ろそうと力を込めた。 その時・・・。

ザクッ!!

「ぐあぁっ!!?」

突然、キルシュの背中を鋭い痛みが走った。彼のスーツに黒いシミが広がり、ソファにも血飛沫が飛び散る・・・。

「何がふるい分けよ・・・、何が脱落者よ・・・。 そんな理由で金森くんは殺されたっていうの・・・?」

キルシュを刺したのは七海だった。 
藍を襲うことに夢中になっているキルシュの背後から近づき、隠し持っていた鉄パイプの杭で彼を背中から刺したのだ。 
杭はキルシュのマントも服も突き破って、彼の身体に深々と突き刺さった。

97カサブタ:2012/03/17(土) 11:57:10

「貴様・・・っ!!」

「私達は・・・、 貴方達の物になるためにあの学園に入ったんじゃない・・・!!
返してよ!! 金森くんを返してっ!!」

ガァン!!

「がぁぁ・・・っ!!!」

七海はハンマーを振り上げ、キルシュの背中に刺さった杭をさらに深々と打ち込んだ。
パイプはキルシュの身体を貫通して前にまで突き出した。彼の血がパイプの先から溢れだし、組み伏せられていた藍に降りかかる。 

「っ!!」

藍はその流れ落ちる血を口で受け止めると、それを喉の奥へゴクゴクと流し込んでいった。

「調子に乗るなっ!! 小娘風情がっ!!」

キルシュは恐ろしい力で七海の首を掴んだ。

「あぐっ!! あぁ・・・ぁぁ・・・っ!!」

七海は片手で身体ごと持ち上げられ苦しんだ。じたばたと暴れるが彼の手を振りほどくことはできない。

「アイに血を吸われたということは、お前もローズの眷属になった筈なのだがな・・・。
どうやって呪縛を解いたのか知らんが、そんなもので私を殺せると思ったら大間違いだ。
彼女に与えられたこの身体は普通の吸血鬼とは違う。ローズでなければ私を滅ぼすことはできないのだ。」

「そう・・・、ローズなら貴方をいつでも殺せるのね。 つまり、私にもということかしら?」

すると、藍は七海を捕まえている彼の腕を引っ掴んだ。

「ぬぅっ !?」

シュウシュゥという音と共に彼の腕から白い煙のようなものが立ち昇り始めたのだ。
たちまち彼の腕から力が抜け、七海の身体は開放される。

「うわぁぁぁっ!!? 私の腕がっ!!」

藍に捕まれている部分から先の感触が消えた。見ると手の平から指先までたちまち茶色く痩けて腐ってしまったのだ。

「な・・・なんだこれは・・・!? なぜ、魔法が使えるっ!! ローズの呪縛に捕らわれているはずなのに!!」

思わず藍の上から退こうとするキルシュだが、藍は逃すまいと彼の腰に腕を回す。

「そんなに私の身体が欲しいの・・・?!」

藍は、ソファから垂れ下がっていたマントの裾を手繰り寄せる。

「なら好きなだけ味わいなさいっ!!」

バサアアァァァッ!!

「うわぁぁっ!!!?」

藍は逃げようとするキルシュをマントで包み込んでしまう。 彼は藍に馬乗りになった体勢のまま、藍の身体の上に倒れこみ、マントに被われてしまったのだ。

「なにをするのだ!!? 離さないか!!」

「逃さないわよ・・・。 あいつのマントに包まれた犠牲者がどうなるか、あんたなら知ってるはずよね・・・?」

藍は燃えるような真っ赤な瞳で彼を睨みつけた。キルシュは今までの威勢が嘘であったかのように怯えている。

「私のマントの中に快楽なんて無いわ!! 地獄の炎で焼かれておしまい!!」

98カサブタ:2012/03/17(土) 11:58:42
藍がそういうと、キルシュを包んだマントが紫色の燐光を発しはじめ、彼の体を焼きはじめた

ジュゥゥゥゥゥ・・・・、

「うああ!!? なんだ・・・っ!! 熱いっ!!」

「どう? あいつが貴方や獲物達にいつもやっていることの正体がこれよ!! 快楽でごまかしているけど、その実は獲物の体中から生命を無理やり搾り取っているのよ。」

「ひぃ・・・、や・・・やめろ・・・!! 身体が・・・熱い あああ・・・なんだ!? 身体がおかしいっ!!」

藍のマントの中でじたばたともがくキルシュ。だが、彼の腕や足が藍のマントと擦れ合う度に、触れた場所が灼かれてどんどん溶けていくのだ。

「逃さないって・・・言ってるでしょ!! 貴女は私のマントの中で死ぬのよ!!
ブラッディ・ローズが沢山の罪の無い人々にやってきたようにね!!」

藍はマントを通して、キルシュの身体から生命力を吸い取っていたのだ。
彼女もローズと同じようにマントで包み込んだ人間を溶かしてしまうことができる。
それどころか、強力な魔力を持つ彼女にかかれば吸血鬼からですら、その永遠の命を吸い尽くすことができるのである。
人間を愛し共存を望む藍はこの呪われた力を使うことをずっとためらってきたが、今回は別だ。

ローズに唆されたとはいえ、キルシュは身勝手に人の命を奪いすぎた。その報いを与えられるのは自分しかいないのだ。

「うあぁ・・・・ くるしぃ・・・・・・!! とけ・・・る・・・ たすけ・・・・・・・て・・・。」

枯れるような声で悶えるキルシュ。藍に抱かれるその腕の中で、彼の命は消えかかっていた。

「なんて哀れな男なのかしら・・・・・・。 今まで誰にも本当に愛されたことがないのね・・・・・・。
その心の隙間をあの魔女に付け入られ、ここまで堕ちてしまったなんて。 貴方も奴の立派な被害者だわ。」

藍はまるで罪人を見据える女神の様に厳かな表情で、キルシュを抱いたまま溶かしていく。

「でもごめんなさい・・・。私にはこうすることしかできないわ・・・。
貴方は奴に言われるまま災厄をばら撒き、何人もの命を弄んだ。それは決して許されない事よ・・・。 
私はハンターである以上。貴方を罰しなければならない。

でも、貴方はとても可哀想な人・・・、ちゃんと誰かに愛されていれば、ローズに付け入られることもなかったのに・・・。 だから・・・、せめて私の腕の中で安らかに逝って・・・。」

「うぁ・・・・・・、 あ・・・あ・・・、 と・・・と・・・け・・・・・・。」

キルシュは消え入るような断末魔と共に、藍のマントの中に沈んでいった。
彼女はそれでも自らの身体に巻きつけたマントを開こうとはしなかった。
肉の欠片ひとつ残さないように、まるで彼の罪と苦しみを残さず飲み干そうとするかのように、藍は目を閉じてキルシュを奥底まで取り込んでしまった。

七海は震えながら何も言わずにそれを見守っていた。


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