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渡来船2

61カサブタ:2012/03/15(木) 02:25:32
だが、それから少し後、息子であるキルシュから研究がついに完成したという連絡があった。ついに真祖を完全にコントロールできるようになったというのだ。

キルシュはその証明としてローズの力によって不治の病を克服し、教会の手を掻い潜っていた梨香をたちまち始末してみせた。

枢機卿は息子の命令に従うローズの姿を見て歓喜に震えたという。とうとう、真祖の力を自在に操る術を手に入れた。これで、失態を帳消しにできるだけでなく、教会の権威を世界に示す準備ができたのだと信じて疑わなかったのだ。

 結果が出たとなれば、後は、禁断の研究の証拠をどのようにして処分するかが問題だった。そのときキルシュは、あの町ごと研究の証拠を全て葬り、ついでに邪魔者であるハンター達も一網打尽にできる策を枢機卿に提案した。カタコンベにハンター、この厄介な不安要素を“合法的”に処分できるその提案に彼はすっかり乗り気になり、何の疑いもなく実行に移したのだ。

「だが、あんたは大きな思い違いをしていた。 キルシュはローズを手懐けたわけではなかった。逆にローズによってキルシュは支配されてしまっていたのよ・・・。おそらく、彼が最初に奴を目覚めさせた時から既に虜にされていたのよ。

ローズは当初、教会とハンターの両方を自分の力でねじ伏せようとしていた。
しかし、母さんに棺を焼かれたことで力を失いかけた奴は別の手を考えたんだわ。

既に眷属となっていたキルシュに従うふりをして、あんたを信用させ教会を味方につけた。
そして、今回の作戦で教会にハンターを始末させ、カタコンベの情報を私に流させることで教会も潰そうとした。奴は自ら手を下すことなく私達両方を消そうとしたのよ。」

枢機卿は暫く黙ったあと、気落ちした声で話しはじめる。

「息子は生まれ持った持病で残り少ない命だった・・・。
本当ならもうとっくに歩くこともできなくなっている筈なのだ。現に、あやつが真祖を私に引き合わせたあの日の数ヶ月前までは、太陽の下に出ることも憚られるくらいに病状が進行していた。

あの日・・・、不治の病を克服して見違えるように健康になったあやつの姿を見て、私は永遠の命についての研究が完成したことを確信しただけでなく、息子があの化け物を手懐けたと思ってしまった。

あとは大体、お前の言ったとおりだ・・・。あの女は教会に全面的に協力することと引換に自分を化け物狩りの討伐対象から外すことを申し入れてきた。息子も真祖の管理を任せてくれと言ってきたから、私は半ば黙認という形で彼女に関する全てのことを息子に委ねたのだ・・・。
敬虔なあやつならまさか、吸血鬼に対して間違いは起こすまいと・・・。」

彼の告白を聞いたみゆきは、怒りを通り越して呆れてしまった。

「そうして、あいつにとって都合のいい環境が整ったわけね・・・。キルシュとあいつは出張という名目でまんまと日本に高飛びし、留守の間に街は予期せぬ事態によって合法的に浄化される。
ハンターは運悪く、その浄化作戦に巻き込まれて止むを得ず全滅するというシナリオね。」

「・・・・・・・・・。」

「息子の為にやったなんて言い訳が通用するとは思わないことね。
あんたの行動はあまりに軽率すぎた・・・。ハンター憎さのあまり判断を誤ったわね。

でも、幸運なことに奴のシナリオはまだ完成していない。 私が教会を破滅させなければ、奴に立ち向かう勢力が無くなるという最悪の事態は回避されるわ。」

「思いとどまってくれるのか・・・。」

「自惚れないで。私はあんたたちを許すつもりは無い。 あいつを倒すという目標を達成する上で適切な判断をしたまでのことよ・・・。 当然、タダで済むとは思わないことね。
あんたらには私に協力してもらうわ。あいつを倒せるほぼ唯一の攻撃手段は今私の手にある宝珠の弾が2発だけよ。 これを奴の心臓に確実に打ち込む為には現状の私の力では到底足りない。それなりの準備が必要だわ。」

「我々に協力しろというのだな?」

「枢機卿・・・、あんたのハンター嫌いはよく知ってるわ。
でもこの際だから目を開けて、よく考えなさい・・・。 あんたが立ち向かうべきだった敵は母さんでもなければ私でもない。 異教徒でもないしハンター達ですらない・・・。 
あんたたち自身が生み出し、あんたの息子を奪ったあの悪魔でしょ・・・?」

「・・・・・・・・・。」


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