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渡来船2

10カサブタ:2012/03/06(火) 23:19:41
「こんばんはー」

おっと、あの声は・・・

「あら、いらしゃいアイ。今帰り?」

「そーでーす、みゆきさん。
あたし朝から何も食べてないの・・・だから、もーふらふらなのー。
みゆきさんの手作り料理で、体があたたまる美味しいもの食べたいなぁー」
ばたむ!

「ありゃ!?アイ、手作り料理ならお金を出してくれれば何でも食べさせてあげるわよ。
ただお店の入り口でへこまれても困るわよー!カズ君、アイんとこ手伝ってあげてやって!」

(私も少女時代は自分のボディーラインが気になってよく食事減らしたりしてたっけ。
母さんからは、食わないと力が出ないぞとか説教くらってたわね。)
みゆきは藍ちゃんの様子を伺いながらも、純情だった頃の自分を重ね合わせては苦笑いするのでした。

「アイちゃん、だいじょーぶー?」

よっぱらった赤い顔のカズ君が心配そうに藍ちゃんに声をかけました。

「あッ、カズ君」

「ほら、そんな所にいると他の人が通れないよ」

カズ君は優しく藍ちゃんを助け起こしました。

我らが「渡来船」のヒロインでありマドンナでもある吸血娘、水無月 藍ちゃん。
彼女は有名私立女子高、蓮見台女子高校に通う2年生のお嬢様。
学校では17歳で通っているのですが、ハーフ・ヴァンパイアなもので詳しい生年月日は彼女自身も把握していないのです。

実は彼女と私はかなり長い付き合いで、一時期一緒に暮らしてもいたのですが、彼女の希望によって現在は明大前あたりに一人暮らししています。
毎週火曜と木曜は学校帰りに駅前の劇場内の書店でアルバイトをしており、仕事上がりにちょくちょく顔を出してくれるのです。

そして、さっき言っていた我らが切り札こそほかならぬ彼女であります。彼女はヴァンパイアであることを生かして、私には到底出来ないことを色々やってくれます。
例えば、前回の事件の原因となったマントは彼女の魔力により封印され、厳重に保管されています。
もし、人間である私が触ってしまったら今度は私がマントに心を支配されかねませんが彼女なら平気なのです。
藍ちゃんの魔力は並のヴァンパイアとは比較にならない程強く、他のヴァンパイアの意思に支配されることはまずありません。

また、彼女はヴァンパイアの意志を感じることができます。これはハンターである私にとって非常に助けになる能力です。
なにしろ、人の中に紛れたヴァンパイアを見つけることは困難であり、大抵のハンターは犠牲者が出てから存在に気づくことが多いのです。
しかし、私は彼女のおかげで事件を事前に防ぐことができます。 まさに、ハーフ・ヴァンパイアさまさまですね。


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