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渡来船2
80
:
カサブタ
:2012/03/16(金) 23:23:20
全ては私を手に入れるため・・・。私がいるせい・・・。
「みゆきさん・・・・・・」
胸が・・・ 痛い・・・!! 痛いよ・・・!!
みゆきさんは私のせいじゃないって・・・、気にするなっていつも言ってくれるけど・・・・・・。
本当はつらいよ・・・。 その優しさが・・・。
「藍さん・・・。」
七美の声にハッとする藍。 彼女を見ると、とても心配そうな顔をしている。
「あ・・・、私・・・。」
目頭が熱い・・・、自分が泣いていることにようやく気付いた。
「ふふ・・・、悔しいでしょうね・・・藍さん?
でももう遅いのよ。 貴女がいくら急いだところでもうあの男を助けることなんて出来ないの。
お姉さまが貴女の血を手に入れるのはもう時間の問題。貴女はそこであと僅かな自由な時間を満喫していればいいのよ。」
藍の心中を見抜いてか・・・、マリアはますます楽しそうな声でサディスティックに挑発してくる。
「その前に、もうひとつ・・・。 貴女の所へ来た大原七美さんだけど、私たちの正体を知っているのは都合が悪いわ・・・。
彼女は始末するか、もしくは私達の眷属にしなければならないわね。そこで提案なんだけど、藍さんの手でその子を吸血鬼にしていただけない?」
「なんですって・・・?! そんなこと出来るわけないわっ!!」
「あらそう? どのみち貴女がお姉さまの物になったら彼女を襲うことになると思うわ。お姉さまはああ見えて容赦の無い方だから、彼女を丁寧に扱ってくれるかわからないわよ?
もちろん、私だってそう・・・。 だから、今のうちにやさしい藍さんがやってあげた方がいいと私は思うな〜。」
・・・っ!!
どこまで卑劣なことをっ!!
勇気を出して私に協力してくれた・・・、吸血鬼とわかっていながら私を信じてくれた・・・
そんな彼女を吸うなんて裏切りに他ならない。 彼女の気持ちを無駄にしないと言ったばかりなのに・・・!!
まさか、七美ちゃんを泳がせていたのも・・・!! 私に彼女を襲わせるため・・・・・・!!
「うふふ・・・、つい長く話してしまったわね。 そろそろ終わりにしましょうか・・・。
あまり時間は無いけれど、よく考えることね藍さん・・・。 仲間になって会えるのを楽しみにしているわ・・・。」
そしてマリアは電話を切った。
携帯電話を持ったまま立ち尽くす藍・・・。それを何も言わず見つめる七美。 2人の間に重々しい沈黙が流れていた。
「七美ちゃん・・・。」
藍は何かを決心したように、七美の方を向く。
「ごめんなさい・・・大事な話があるの・・・。」
藍の辛そうな表情を見返す七美もまた、覚悟をしたような、あるいは何かを諦めたような複雑な面持ちをしていた。
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