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渡来船2

68カサブタ:2012/03/15(木) 02:49:50
今日は本来なら定休日ではないが、みゆきも居ないことと藍の友人の不幸ということで店を閉めていた。

美樹は藍がいなくても頑張ると言ってくれたが、流石にまだみゆきの代わりを十分にこなせるほどにはなっていないし、結婚したての彼女をあまりこき使うのも悪いと思ったのだ。
たまには彼と水入らずの時間を作ってあげるのもみゆきの代理としての配慮だ。

(お店の経営って大変だな・・・。私はハンターの仕事だけでいっぱいいっぱいだっていうのに。 やっぱりみゆきさんってすごい人なんだな・・・)

親友である晶子の為にもヴァンパイアのことだけを考えたい所だが、店のこともないがしろにするわけにはいかない。
ハンターの仕事以外にもやるべき重要なことは色々あって目がまわりそうだ。しかし、こんな時こそ冷静にひとつずつこなしていくしかないのだ。

とりあえず真っ先に片付けなければならないことは今この瞬間の状況だ。

「ふぅ・・・、殿方に追っかけられることは良くあるけど・・・・・・。」

藍は立ち止まり後ろを振り向きながら言った。

「私に何か用事があるんなら、出てくれば? 服の端っこが見えてるよ?」

曲がり角の電柱から少しだけ見えていたスカートがピクッ、と震える。やがて、観念したように一人の少女が出てきた。
思った以上に小柄な子で藍は少し驚いた。紅葉台学園の校章が付いたブレザーを着ていなければ、小学生か中学生に見えていたかもしれない。

「女の子にストーカーされるのは初めてね・・・。」

「あの・・・、ごめんなさい・・・。 いつ話しかけようかと思って・・・・・・。」

七海はオドオドした様子で藍を見たり目を逸らしたりしている。どうやら、悪い子ではないらしいので藍は近づこうとしたが、そこで思い出した。

「っ!! まって、貴女さっきのお葬式にいたわよね? 紅葉台ってことは金森くんのクラスメート?」

「え・・・あ・・・、はい。 そうです。 健二くんとは幼なじみで・・・。」

藍はびっくりした。 なぜ彼の友達が自分に?

「その・・・、私になにか用?」 

「え・・・と・・・、さっき話してましたよね・・・? バンパイアがどうとか・・・。」

しまったっ!! 聞かれちゃったか・・・!!
これは不覚だ。これだけ怪しい連続殺人事件なら吸血鬼の仕業とかいう噂が立っていてもおかしくはない。
魔物の存在を信じている人間なんて殆どいないが、やっかいなことにヴァンパイアに関しては被害者の状況が共通していることとその知名度の高さから噂が広まることはよくあるのだ。
興味本位で首を突っ込んで餌食になってしまう一般人も多く、中には人質になってハンターの仕事の障害になる者たちもいる。 よって、穏便に仕事を遂行するためにはなによりも社会の目に触れないことが重要であり、
ハンターなら誰しもが頭を悩ます問題なのだ。

(こんな小さくて可愛らしい子、奴等にとっては絶好の獲物だわ。 なんとか、手を引いて貰わないと・・・。)

「私・・・、金森くんが誰に殺されたのか見たんですっ!!」

「え・・・っ?!」

藍はどうにかしてごまかそうとしたが、それより先に七海が言った言葉に彼女は耳を疑うことになった。

「待って・・・、それ本当なの?」

「はい・・・。金森くんを殺したのは・・・。」

「しっ!! ここで話すことじゃないわ。」

藍は周囲に気を配った。 どうやらヴァンパイアの気配は無い・・・。 
もし、この事件がヴァンパイアの仕業で、彼女が本当に現場を目撃したのなら、絶対に彼女をここで追い返すわけにはいかない。
相手の正体を探る手がかりになるし、目撃したことを気付かれたら確実に狙われる。とりあえず、ヴァンパイアに狙われる危険の無い渡来船につれていくことが先決だ。

「時間は大丈夫? できれば私についてきて欲しいわ。 話はもっと安全なところで・・・ね?」

「あ・・・はい、 かまいません・・・。」

七海は藍の後ろについて、一緒に渡来船まで歩いた。 先に歩く藍の背中をじっと見つめながら、七海はカバンの中に忍ばせている物を改めて確認した・・・。


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