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渡来船2
98
:
カサブタ
:2012/03/17(土) 11:58:42
藍がそういうと、キルシュを包んだマントが紫色の燐光を発しはじめ、彼の体を焼きはじめた
ジュゥゥゥゥゥ・・・・、
「うああ!!? なんだ・・・っ!! 熱いっ!!」
「どう? あいつが貴方や獲物達にいつもやっていることの正体がこれよ!! 快楽でごまかしているけど、その実は獲物の体中から生命を無理やり搾り取っているのよ。」
「ひぃ・・・、や・・・やめろ・・・!! 身体が・・・熱い あああ・・・なんだ!? 身体がおかしいっ!!」
藍のマントの中でじたばたともがくキルシュ。だが、彼の腕や足が藍のマントと擦れ合う度に、触れた場所が灼かれてどんどん溶けていくのだ。
「逃さないって・・・言ってるでしょ!! 貴女は私のマントの中で死ぬのよ!!
ブラッディ・ローズが沢山の罪の無い人々にやってきたようにね!!」
藍はマントを通して、キルシュの身体から生命力を吸い取っていたのだ。
彼女もローズと同じようにマントで包み込んだ人間を溶かしてしまうことができる。
それどころか、強力な魔力を持つ彼女にかかれば吸血鬼からですら、その永遠の命を吸い尽くすことができるのである。
人間を愛し共存を望む藍はこの呪われた力を使うことをずっとためらってきたが、今回は別だ。
ローズに唆されたとはいえ、キルシュは身勝手に人の命を奪いすぎた。その報いを与えられるのは自分しかいないのだ。
「うあぁ・・・・ くるしぃ・・・・・・!! とけ・・・る・・・ たすけ・・・・・・・て・・・。」
枯れるような声で悶えるキルシュ。藍に抱かれるその腕の中で、彼の命は消えかかっていた。
「なんて哀れな男なのかしら・・・・・・。 今まで誰にも本当に愛されたことがないのね・・・・・・。
その心の隙間をあの魔女に付け入られ、ここまで堕ちてしまったなんて。 貴方も奴の立派な被害者だわ。」
藍はまるで罪人を見据える女神の様に厳かな表情で、キルシュを抱いたまま溶かしていく。
「でもごめんなさい・・・。私にはこうすることしかできないわ・・・。
貴方は奴に言われるまま災厄をばら撒き、何人もの命を弄んだ。それは決して許されない事よ・・・。
私はハンターである以上。貴方を罰しなければならない。
でも、貴方はとても可哀想な人・・・、ちゃんと誰かに愛されていれば、ローズに付け入られることもなかったのに・・・。 だから・・・、せめて私の腕の中で安らかに逝って・・・。」
「うぁ・・・・・・、 あ・・・あ・・・、 と・・・と・・・け・・・・・・。」
キルシュは消え入るような断末魔と共に、藍のマントの中に沈んでいった。
彼女はそれでも自らの身体に巻きつけたマントを開こうとはしなかった。
肉の欠片ひとつ残さないように、まるで彼の罪と苦しみを残さず飲み干そうとするかのように、藍は目を閉じてキルシュを奥底まで取り込んでしまった。
七海は震えながら何も言わずにそれを見守っていた。
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