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渡来船2

33カサブタ:2012/03/10(土) 01:57:39
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「七海・・・、一緒に帰らない・・・?」

七海と呼ばれた少女は振り返る。 そこには仲良しで無二の親友の姿があった。

「ううん・・・、ちょっと寄りたいところがあるの。 さやかは先に帰ってて・・・。」

少女は無理をして作り笑いをしていたが、音無さやかには彼女が辛い胸中にあることがよくわかっていた。

「無理しちゃだめだよ・・・。 私はいつでも七海の味方だからね。」

「ありがとう・・・。 じゃあね・・・。」

七海は駆けるように校門を飛び出した。本当は寄りたいところがあったわけじゃない。
ただ一人になりたかった・・・。 今日の出来事を思い出すと泣きたくなってしまう。 ここ最近は親友のさやかと顔を合わせることも辛かった。

「ひっく……、うぅ……。」

帰りがけに立ち寄った夕暮れの公園、人目をはばかるように彼女は一人泣いていた。
紺のブレザーの袖を涙で濡らし、肩を震わせて立ち尽くしている。

紅葉台学園高等学部の2年生、大原七美。彼女は今日、失恋した。
幼馴染でありずっと密かに想っていた男の子、金森健二が1歳年上の先輩と付き合い始めたというのだ。

彼女の名前はマリア・ハミルトン。今年度の初めに転入してきたハンガリー出身の留学生だ。
マリアは健二と同じ美術部に所属する先輩であり、七美が健二を尋ねて部室を訪れたときとても親密にしていたことを覚えている。
外国人とは思えないほど日本語が堪能で他の部員とも早々に打ち解けていたようだった。

しかし、前から健二のことが気になっていた七美はマリアが好きになれなかった。健二とマリアが仲良くしていたこの数ヶ月間は辛い日々だった。
部活を見に行ったとき、強情な性格をしているはずの彼が、マリアの前ではあからさまにモジモジし、ぎこちない敬語を使っていたことにまず衝撃を受けた。 
そして、今まで当たり前のように話をしていた健二が段々冷たくなり、七美のことを避けるようになっていった。

それだけでも辛かったが、一番打ちのめされる出来事はつい1週間程前に起こった。

ある日の放課後、健二と一緒に帰ろうと思って彼を誘うと、健二は用事があるといって突然七美から離れた。不審に思った七美がこっそり跡を付けると、彼が校舎裏でマリアと会っているのを見た。何を話しているのか気になって隠れて見ていたが、次の瞬間マリアは健二の肩をそっと引き寄せ、彼の唇にキスをしたのだった…。 

二人はそのまま一緒にどこかへ向かった。七海は気付かれないように跡をつけてみると、マリアと健二は住宅地の外れにある洋風の大きな家の中に入っていったのだ・・・。
七海がその家の表札を確認すると、そこがマリアの家であることがわかった。

なんとか気持ちの整理をつけ、今日になってようやく健二にそのことを問いただしてみたが、そこで健二にマリアと付き合っていることを打ち明けられたのだ。


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