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渡来船2
93
:
カサブタ
:2012/03/17(土) 00:37:43
バサリッ とマントを広げると、ローズの胸の中にもはやカズの姿は無かった。
二人の吸血鬼は笑いあいながら窓から飛びたち、女子寮の屋上へと降り立つ。
ローズは粘液で濡れた身体のまま、マントの裾を引き摺って屋根の際までゆっくりと歩いてきた。
先程まで、満月が輝いていた筈の空は、いつのまにか真っ黒な雲が立ちこめ、風もだんだんと強くなってきていた。
「ほほほ・・・、マリア。 いよいよ始まるわよ・・・。 本当の黒ミサ・・・。私たちの宴がね!!」
バサァァァァァッ!!!
ローズが空に向かって裸体を晒し、巨大なマントを広げる。
その瞬間、青白い稲光が空を切り裂き、耳を劈くような雷鳴が響き渡った。
分厚い雲が空の月を覆い、広大な学園を黒い影が覆い尽くす。
「ほほほほほ・・・・・・、 ほ〜っほっほっほっほっほ!!!」
稲妻は、翼を広げた魔女の影を大きく大きく映し出した。 その影はどんどん大きくなって学園全体を覆い、彼女の笑い声は嵐の空に響き渡る。
今、悪魔の宴が始まろうとしていた・・・。
「うぅぅ・・・・・・っ!!」
「藍さんっ!!」
不安そうな七美の目の前で藍は頭を抱えて悶え始めた。
おいで・・・、 アイ・・・、 私のところへおいで・・・・・・!!!
声が・・・・・・、 あいつの声が聞こえる・・・!! 頭の中に響く・・・。
「だ・・・め・・・。 カズくんを殺さないで・・・・・・。」
カズの気配がどんどん弱まっていく・・・。 命が消えようとしているのだ・・・。
おいで・・・ アイ・・・。 あなたは私のもの・・・ 一つになるのよアイ・・・!!
「・・・・・・っ!!」
和也はもう奴の手に掛かってしまったんだ・・・。 そして奴は彼の身体の中にある藍の血を吸った。
それは、藍が血を吸われたことと同義だ。
こうなったら藍はもう逆らうことができない・・・。 他の吸血鬼になら支配されることのない藍も、
ローズが相手ではどうしようもないのだ・・・。
「あ・・・・・・藍さん・・・。」
藍は七美を見る・・・。怯えている彼女の顔が歪んで見えた。
同時に湧き上がってきたのは、のどの渇きだった。
「七美ちゃん・・・・・・。」
藍の目は真っ赤に輝いている。 息は熱く、荒くなる・・・・・・。
「ごめんね・・・・・・、 七美ちゃん・・・。」
藍は頬を真っ赤に紅潮させ・・・、マントの裾をゆらゆら揺らしながら七美に歩み寄って行った・・・。
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