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渡来船2

44カサブタ:2012/03/13(火) 02:57:50
トビーが辿り着いた場所は、元は教会だったと思われる東側の町外れの廃墟だった。ここは今回のことが起こる前に既に焼失していたらしい。

「うっ!! これはっ!!」

教会の中や周辺にはおびただしい数の亡骸が折り重なる用に転がっていた。吸血鬼に噛まれた様子はなく、皆黒焦げになって焼け死んだようだった。

「ヴァンパイアやレッサーにならなかった住民たちは、俺たちが来る前に粛清されてたみたいですね。
こいつらはきっと、ヴァンパイア達が教会に足を踏み入れることができないと知って、ここに逃げ込んできたんでしょう。 だが、そうなってしまうと袋の鼠も同然でさぁ。 大方、教会に火を点けられて炙り出された奴は喰われて、逃げ出さなかった奴はこうやって焼け死んだんでしょう・・・。」

「普通、ヴァンパイアは火なんて使わないわ。大の苦手だもの。もし、あんたの予想どおりだとすると生きた人間の仲間が居たか・・・、もしくはヴァンパイアの親玉は火も大丈夫な奴ってことになる。」

「後者だとすると・・・、やはりボルマンの情報の内容自体は正しかったってことですかい?」

「ええ、きっと奴で間違いないと思うわ。 おそらく、私を藍から引き離すために今回の罠を仕組んだんだわ。他のハンター仲間たちも巻き添えにして・・・。 そして、先の黒百合の一件もおそらくは奴が藍を見つけるために世界中にばらまいた災いの種の一つ。」

「ま、詳しい分析は逃げた後でも遅くないですぜ。とりあえずこちらへ・・・。」 

トビーは教会に踏み入り、瓦礫を掻き分けると、床に敷かれたタイルを探り当てた。その中の一つを動かすと、なんと地下への入り口が姿を表したのだ。

「こんな道が・・・!?」

「この穴の奥は隠された地下墓地(カタコンベ)です。この町では中世の異端審問を逃れるために、邪教の信徒たちや祭具を隠すための秘密の抜け道が作られてたんでさぁ。 ま、教会には早々に見つかっちまってその後は、もっとヤバい代物の取引に使われてたようですが・・・。奥には谷底の河原に続く隧道が掘られているのでそこから出られますぜ。」

「こんな小さな町の裏の歴史なんていくら調べても見つからなかったわ。貴方、一体どこからこういうネタを拾ってくるの?」

「へへっ!! 伊達に梨香さんの代からサポート努めてるわけじゃない。実は教会にハッキングかけたらこの街に関する資料があっさり見つかったんですぜ。
 この脱出ルートもそのデータに載ってたもんです。事前準備は抜かりないですぜ。
 外に出たら河に沿って山を抜けてから、西のエステルゴムに向かいましょう。 あそこには俺のセーフハウスがあります。そこで準備を整えて日本に帰りましょう。 お供しますぜ。」

二人が深い穴を降りていくと、そこには日干し煉瓦で粗末に補強されただけの暗い空間が広がっていた。あちらこちらに古びた棺が無造作に置かれ、床にはなぜか本来なら棺に入っているべき遺体がごろごろ転がっていた。

「これは墓場というより人間のゴミ捨て場ね・・・。 なるほど、死体を抜き出した空っぽの棺をブツの入れ物に使ってたのね。大抵の物は入るし教会の人間以外には開けられる心配もないと。」

「ブツを入れた棺はこの隧道を通って川に運ばれたり、舟で川から持ち込まれたりしてたみたいでさ。残念ながら何を取引してたのかはわかりやせんでした。宝石や金塊も運ばれてたようですが、本命は他にあるみたいで・・・。」

「ふ〜ん、その辺調べたら面白い物が出てきそうね。教会にはいろいろ邪魔されることも多いし、スキャンダルの一つでも掴んだら黙らせる材料にもなるかな・・・。」

カタコンベの奥にはさらに下へ続く道があった。洞穴のあちこちに溜まった地下水をバシャバシャと踏み分けながら二人は走っていく。


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