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渡来船2
40
:
カサブタ
:2012/03/13(火) 02:40:57
「あんたたち・・・、なんでここに居るの?」
「その反応をみると・・・、どうやらお前もボルマンの情報で来たようだな・・・。」
「えっ! そうだけど・・・。まさかあんたらのところにも連絡が?」
「ああ、俺たちみんなあいつの情報を聞いてこの村に来たんだぜ。」
「くそ・・・、ボルマンの奴、嵌めやがったな。俺だけに耳寄りな情報をくれるとか言いやがったのに。」
情報屋のボルマンはガセ情報を複数の人間に売ったりはしない。漏金に汚い男だが、ネタの正確さと質の良さをなによりの売りにしていたからだ。そもそも、儲けが第一なら尚更こんなマネをするわけがない。これだけ大勢のハンターの信頼を失うのは情報屋を営む物にとって死活問題だからだ。
だとすれば、今回のような行為に及んだ理由は大金と引換えに何者かに買収されたからだと考えてもおかしくはないだろう。
「そういえば、あんたらはどうしてこんなところで油売ってるわけ?
同じ情報もらってんなら、ターゲットが居る場所の目星はつけているんでしょう?」
「知らないのか? ローバックスは今朝、日本に向かったらしいぞ?」
「えっ?!」
「お前もボルマンの情報を聞いて、ローバックスが“奴”を匿ってると睨んだんだろ?
俺達だって丘の上のあの城が怪しいと思って調べたようと思ったさ。だが、いざこの村に着いてみりゃ入れ替わるように高飛びだぜ。この村は情報が入ってくるのが遅いからすっかり巻かれちまった。」
「ボルマンはおそらく利用されたんだ。まだ生きているとはとても思えないな。
ローバックスは嘘情報で俺達をこの辺境の村に集めて、まとめて足止めさせる魂胆だったんだろうぜ。この森を夜に抜けるのは俺達でも危険だから今日一日は邪魔されることないってことだろう。」
「こうなりゃ、明るくなると同時に村を出て明日一番の飛行機で日本に向かうしかないぜ。
ローバックスが何企んでるのか知らねえがこんなことするってことはかなりの大事だろう。」
ハンター達は早くも明日に向けて息巻いているようだった。一方でみゆきはまだ今の状況が釈然としないようだった。
「姐さん・・・、どうしやす? こりゃ何やらキナ臭いですぜ。」
(妙だ・・・。
おそらく奴が日本に向かった目的は藍に違いない・・・。私と藍を引き離す為に仕組んだんだ。だが、それなら最初から私だけに情報を与えればいいだけのこと。
なぜわざわざ他のハンター達にも情報を流した・・・?
仮に私以外のハンター達の妨害を恐れてこの村に誘き寄せたにしても、このやり方はあまりに場当たり的すぎる。今日一晩足止めしたところで、足の速いハンター達は明日にでも日本に押し寄せ、邪魔をしてくるは明らかなはずなのに。)
みゆきは腕を組むと目をつぶり考え込んだ。
そして・・・
「くしゅん!」
とくしゃみをしたのだった。
だがその刺激がきっかけになったのか、彼女はある可能性に思い当たった。
「!!・・・まさか!! いや、そうとしか考えられない!!」
「ちょっと!! なんですかい?」
「やられた・・・!! 私としたことがっ!!」
「え・・・? なんですって?」
「トビー、早く引き返しましょう!! 今すぐ日本に・・・。」
その時、遠くの方で激しい爆発音が鳴るのが聞こえた。来る時に通ってきた崖の方だ。
「うふふふ・・・、せっかく来たのにもうお帰りになるの?」
突然、不気味な笑い声が宿屋の中に響く。全員が上を見ると、さっきいなくなった筈の女主人が天井に掛かったシャンデリアの上に座り、妖しい笑みを浮かべていた。彼女の目は真っ赤に染まり、濡れたような光沢のドラキュラマントを羽織っていた。
「おもてなしの準備はもうできていますのよ? ぜひとも楽しんでいってくだなさいな。」
そして、彼女を取り囲むように獣のような目をした男たちが天井に張り付いてハンター達を睨みつけていた。
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