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渡来船2

60カサブタ:2012/03/15(木) 02:22:32
と、そこで枢機卿の頭にはある人物の顔が浮かび上がった。

「ま・・・まさか・・・。」

「そうよ、いるでしょう? 教会の金庫に忍び込まなくても、これら資料のオリジナルを持っていそうな人間が・・・。」

そう・・・、枢機卿自身にもそれしか考えられなかった。だが、信じたくなかった・・・。
まさか・・・、あの男がそんなことを・・・・・・。

「キルシュ・ローバックス。話を持ちかけてきたのはそいつなんでしょう? その資料によればローバックスの家系は代々、あのカタコンベの墓守だったそうね? その計画書に書いてある通り、古くからあの地域を治める辺境伯だったローバックス家は街の建設に関わっているだけでなく、教会で不老不死の研究にも携わっていた。あんた以外にこの資料のオリジナルを持っている人物はこいつしか考えられないわ。」

「ばかな・・・・・・、そんなことがあってたまるか・・・。奴は教会に忠誠を尽くしている筈・・・。」

「いい加減に認めなさいっ!! ジョリオ・ローバックス!! 
あんたの息子はもう心の底まであの魔女に毒されてしまっているのよ!!
あんたら教会は、まんまと欺かれていた。 奴は教会に隠蔽工作を持ちかけておきながら、あんたらがもっとも警戒するハンターの一人であるトビーにこれをわざと盗ませていた。

それはなぜか・・・。 今のこの状況こそがその答えよ!!
あんた達が、町をひとつ消してでも隠したがっていた秘密は今私の手の内にある。

そして、私にはこれを世界に公開する動機も準備もある。 今、ほんの少しキーを操作すればそれができるのよ!!
私がハンターたちの弔いの為にこの秘密を暴露すれば、教会は世界中の批判に晒される。
今回の隠蔽工作のことまで公になれば、あんたらといえど二度と権威を取り戻せなくなるでしょうね。

もうわかるでしょう? ハンターと教会を同士討ちさせて、邪魔者同士潰し合わせるのが奴の本当の目的だったのよ。」

枢機卿はまだ信じられなかった。あの優秀な息子がまさかこんなことをするなんて。

「あんただって分かっているんでしょう・・・? キルシュを唆してあんたらにこのえげつない作戦を実行させたのが誰なのか。 ハンターと教会の両方が潰れて一番特をするのは誰なのか・・・。」

「・・・ブラッディ・ローズ・・・っ!!」

「あの女が裏で糸を引いていたことは分かっている・・・。 でも、その提案をまんまと受け入れ、たくさんの仲間たちを殺したあんたたちが憎い。 とっても憎いわ・・・。

あいつの思うツボだってわかっていても、私はこの情報をバラまいてあんたたちを破滅させたくてしょうがないのよ・・・。 今でもこのボタンを押す衝動を抑えるので精一杯だわ。」

「やめろ・・・!! たのむ・・・やめてくれっ!!」

枢機卿は今までの態度から一変して、一気に下手に出た。

「全て話す・・・!! だからその情報を流さないでくれ・・・。 たのむ・・・、もしそれが公になったらバチカンの崩壊だけでは済まないんだ。我々の破滅は三千世界の敬虔な信徒たち全てに及ぶのだ。」

またその言い訳か。何を勝手な・・・。 みゆきは信徒達を盾に取った彼の言い草に辟易しながらも情報の漏洩を寸でのところで思いとどまった。

しばらくの沈黙の後、枢機卿は真実を語り始めた。

真祖に関する研究は、公に凍結された中世以後もローバックスの子孫に代々引き継がれていた。 薬学の天才とも言われるキルシュ・ローバックスは、ヴァンパイアを利用する手段についてかなり研究を進めており、とうとう教会の悲願を達成するものと期待されていた。

だが、数年前。キルシュの手で長い眠りから目覚めたブラッディ・ローズは、その力を暴走させて一度教会の手を離れてしまった。ジョリオ・ローバックス枢機卿は、息子と家系を守るためにこの失態を隠ぺいしようとした。ローズの正体を教会にも隠したまま処理しようとし、そのために何も知らされていなかった梨香とその仲間たちはローズをただの吸血鬼と思い込んで返り討ちになったのである。

後に教会を離れてハンターになった梨香によってローズは棺を焼かれてしまった。みゆきと藍が出会ったあの夜のことだ・・・。

その後、姿をくらましたローズは実はキルシュによって身柄を保護されていた。
枢機卿はローズを再び封印するよう息子に伝え、危険な研究は今度こそ本当に凍結されるはずだったのだ。


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