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渡来船2

45カサブタ:2012/03/14(水) 01:45:25
「あなたには感謝するわ・・・。今回ばかりは本当に貴方がいなければどうなってたか・・・。」

「よしてくだせぇ・・・。女を守るのは男として当たり前のことですぜ。それに俺はまだ梨香さんに恩を返せてないんです。せめて姐さんを無事に送り届けなきゃ申し訳が立たないってもんです。」

「貴方もまだ母さんのことを吹っ切れてないのね? 貴方には何も責任はないのに・・・。
 ま、あいつを倒せると聞いて頭に血が登っちゃうあたり、私も人のことは言えないわね。」

「しっかし、今回の罠は奴にしちゃずいぶんと雑ですねぇ。奴もいよいよ後先考えなくなってきたんでしょうか・・・。 いくら人里離れた村だからってこれだけの大事おこしたら教会の化け物狩り部隊だって黙っているわけが・・・。」

トビーがそこまで言いかけた所で二人とも重要なことに感づき顔を見合わせた。

「姐さん・・・、まさか奴は・・・。」

「私も違和感があった・・・。奴の謀略にしてはあまりに大雑把すぎるって。
現にあんたも私もこうやって生きてるし、たぶん上のハンターも何人かは生き残るわ・・・。第一、これだけの騒ぎなら、教会どころか一般にまでヴァンパイアの存在を知られる危険があるはず。奴がそんなリスクを犯すわけがないわ。

でも最初からそう企んでいたのなら合点はいく・・・。そっちの方がハンター達を確実に皆殺しに出来るもの!!」

「だとしたら、なおのこと早くここから抜けた方が・・・・・・っ!! ううぅ・・・っ!!」

「っ!! どうしたのトビー!!」

いきなりトビーが腕を抱えて苦しみ始めた。立っているのも苦痛なのか、壁に寄りかかってしまう。

「姐さん・・・。どうやらついていけないみたいです・・・。 すいません・・・。」

「何言ってるのよ・・・!! 怪我してたんなら早く言いなさい!! 
あんた一人を担いでいくことくらい訳もないわよ。」

「へへ・・・、そうですよね。 今まで姐さんにも梨香さんにもそうやって何度も助けていただきやした。
でなきゃ、俺はとっくに死んでましたよ。だが、こればっかりは流石の姐さんにも無理ですぜ・・・。」

そう言って、トビーは悟ったような表情で自分の腕を見せた。みゆきは驚くとともに彼の言うことの意味を理解した。 そこには小さい傷ではあるが、ヴァンパイアの牙に噛まれた跡があったのだ。

「実をいいますとね・・・、最初に逃げるときに一足遅れて・・・。
あの女主人のコにやられちまったんです。小さな傷だし、今まで何ともなかったから大丈夫かと思ったんですがね・・・。
 どうやら彼女、わざと俺を泳がせてたみたいですぜ。 感じるんです・・・、あの子すぐ近くまで来やがってます。」

みゆきは何か助ける方法はないかと思案したが、無情にも長年の経験はそれが無理であることを即座に悟らせた。自分を襲ったヴァンパイアの存在を感じるということは、既にレッサーになりかかっている証拠だ。こうなってはもう助けようがない。

「姐さんの読み通りならそろそろここも危ないですぜ。 俺はいいんでどうか生き延びてください。」

「トビー・・・、そんな・・・。」

「姐さん、俺がいなくなってもどうか仇を打とうなんてバカなことは考えないでください。
敵を間違えちゃいけませんぜ。 姐さんは藍ちゃんを守ることだけを考えてください。

さぁ、いってくだせぇ姐さん・・・。あの子は俺が食い止めます。 セーフハウスにある武器はお譲りしますぜ。あと、パソコンの中には姐さんの指紋も登録してあるんで、それでログインしてください。解析途中だったこのカタコンベのデータがあるんで活動資金の足しにでもしてくだせぇ。  さぁ、早く!!」 

トビーは手榴弾をみゆきにみせた。 みゆきは即座に洞窟の奥へ駆け出す。
彼女が十分に離れたことを確認すると、トビーは奥に向かって手榴弾を放った。爆音とともに古い隧道は崩れ、道は完全に塞がってしまった。

(姐さん・・・、生き延びてくださいよ・・・。)

トビーはほっと一安心した。


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