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渡来船2

58カサブタ:2012/03/15(木) 02:15:22
なんとか、平静を保とうとする枢機卿だが、手の震えが収まらない。 
非常にまずいことになった。 あれが公になれば、自分の進退だけではない。教会全体にとって大きなダメージだ。

「あんたら教会は長年に渡り、“不老不死”の研究を行ってきた。 あんたらの教えによれば、歴史上死んでから生き返った人物はただ一人・・・。 
よって、死なない身体を手に入れることは彼と同等になることであり聖人になることと同義なわけよね。もし実現できれば教会の権威を絶対の物とすることができる・・・。 だからあんたたちははるか昔から血眼になって探求を続けてきた。 そうでしょう・・・?」

反論しなくては・・・、そう思っているはずなのに枢機卿の口からは言葉が出てこない。 

「そして、研究の過程であんたらはとてつもない過ちを犯した・・・。
はるか古代、死なない肉体の開発に行き詰まった当時の教会は、ついに教えで禁じている筈の黒魔術に手を出し・・・、
 そしてとうとう天の摂理に反し、創造主に唾吐く、おぞましい術式を完成させた。 他の人間の命を自らの中に取り込み生き永らえる存在、ヴァンパイアを作り出す方法をね!!」

かつて梨香が教会にいた頃、恐るべきヴァンパイアが現れた。
桁外れの魔力を持ち、それまで多くのヴァンパイアを葬ってきた化け物狩りチームの装備すら通用しない怪物だった。そして何より、おそろしく残虐かつ狡猾で、梨香の仲間たちは多くがそのヴァンパイアに殺されてしまったのだ。

そいつこそ、噂こそ聞いていたが、だれもがその存在を信じているわけではなかった存在。
始まりのヴァンパイア、“真祖”の一人だったのだ。

ロサリナ・エルジュベート。
ハンター達の間でも“ブラッディ・ローズ”の異名で恐れられる最凶の吸血鬼にして、全ての吸血鬼の頂点に立つ存在だ。 彼女はヴァンパイアこそ人間を越える種であるという強い確信を持っており、人間を食い物か奴隷としかみなしていない。プライドの高い彼女は世界を人間が支配していることが大いに不満らしい。永遠の美しさの為に人を襲うことに飽き足らず、人間すべてを自分の奴隷にして全世界を支配下に置くという壮大な野望を抱いているのだ。 
 そんな慢心を持つヴァンパイアは決して少なくないが、ローズの場合、それを実現するだけの実力を備えているから始末が悪かった。

梨香はすぐさま仲間たちの仇討ちの為に、法王庁が秘蔵する宝物級の武具の使用と、真祖討伐の許可を申し入れたのだった。 一般の戦闘員とは違い、梨香にはそれだけの許可を取り付ける実力があったのだ。

だが、教会から返ってきた答えは不可だった。どういうわけか、上層部は真祖に関わるなと釘を刺してきたのだった。

だが、梨香は教会からの勧告を無視して、そのブラッディ・ローズについての情報を密かに集め出した。
そして、教会の内情を探っているうちに彼女は世にもおぞましい事実を知ってしまうことになったのだ。

はるか古代の時代に教会は不老不死の研究の途中、ヴァンパイアを作り出してしまったこと。
その最初のヴァンパイア達こそが真祖の正体であり、現在いる全てのヴァンパイアの祖であり、仲間たちを殺した仇敵であること。

そして、教会はその事実を秘匿していたうえに、ヴァンパイア達を処理するどころか、今でもどこかに封印しているということだった。真祖の一人ローズが封印を破り、我が物顔で外を歩き回っていたのはすべて教会の過ちゆえだったのである。

この事実を知ったわずか3日後、梨香は宝具である生命の宝珠を盗みだし出奔した。


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