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昔桃子やベリの学園小説書いてた者だけど〜新狼

1001:2015/08/08(土) 00:45:09
「真野ちゃん、生理かな…」
「きっと重いんだよ」
南波とか嶺脇とかの馬鹿な童貞たちが、訳知り顔にひそひそ話をしているのが漏れ聞こえてきて、植村は顔をしかめた。

俺はと言うと、ただ心が重かった。
(真野ちゃん休みって、ひょっとしてこれも俺のせいなのか…? 面倒くさすぎるぜ、真野ちゃん…)
そう思うと、また自然とため息が出た。

「またため息ついた! いったい何なの?」
ちょっと怒ったように植村が聞いてきた。

「あ、ゴメン」と、俺はちょっと慌てて答えてから、
「真野ちゃんが休んだの、俺のせいかもしれないと思ってさ…」と言うと、
「えっ、何それ?何それ?」と、植村はちょっと興味津々って感じで聞いてきた。

1011:2015/08/08(土) 00:45:43
「いや、真野ちゃんは写真部の顧問でさ…、んで俺は写真部の部長、ってことにさせられてるんだ…」
「うん…」
「それで、部の運営っていうか、写真展への方針をめぐって、昨日、真野ちゃんと口論しちゃってさ…、それでかなりキツいこと言っちゃったんだよね…」

俺がそういうと、植村はいきなり「わかる!それ!」と大声を出した。「顧問とのやり取りって、苦労するよねー」と、
植村はまるで仲間でもみつけたように、急にフレンドリーに話し出してきた。

1021:2015/08/08(土) 00:46:24
「えっ、植村さんも、そういうのあんの?」
「うん。私は合唱部なんだけどさ…。ホラ、ずっと顧問だった寺田センセイがあんなことになって…」
「あー。大丈夫なのかな、寺田センセイ…」
うちの合唱部を何度も全国大会に導いていた寺田センセイは、去年いきなり喉の調子を悪くして、入院してしまったのだ。

「うん、手術は成功したんだけど、もう少し休養が必要みたいで…」
「そっか…」
音楽の授業で、平気でロックのレコードをかけたりするファンキーな寺田センセイは、俺も大好きだったのだ。早く復帰してほしい、と思ってる。

「それで、代わりにきた先生がさ…」と言うと、植村はため息をついた。
「あー、聞いた。なんか、音楽大学出た凄い先生って言ったな。名前何て言ったっけ?」
「菅井先生って言うんだけど…」

1031:2015/08/08(土) 00:47:16
菅井先生の噂は、俺も聞いたことがあった。
まあ、ハッキリ言って、よい噂ではない。

「なんか、セクハラするって聞いたけど…」と俺が言うと、
植村は「セクハラ? それは無い。まあ確かに体触ってきたりするけど、明らかに指導のためだし。それに、菅井ちゃん、ハードゲイだから女に興味ないし」と、一笑に付した。

「マジかよ? ガチホモってことか?」
「うん。たぶん…」
「それはそれでスゲーな…」
「菅井ちゃんはどちらかっていうと、パワハラとかモラハラって言うのかな…」と、植村は表情を曇らせた。

「パワハラ?」
「うん…。大声で怒鳴りつけたりするんだよね…。まあ、菅井ちゃんの指導通りに練習してこない子も悪いんだけど…」

1041:2015/08/08(土) 00:48:03
植村が菅井先生を擁護すればするほど、俺は正直、嫉妬した。
まあ、ホモに嫉妬しても仕方ないことくらい、分かっているのだが。

「でさ、それで、菅井ちゃんが怒鳴ったりするから、1年生が脅えてごっそり辞めちゃったんだよね」
「マジか…」
「でも、まあ、1年生ならまだ分かるよ。だけど、2年の、それも中心メンバーだった佳林まで辞めるって何なの?!」
「えっ、佳林って…、宮本のことか?」
「うん。確かに菅井ちゃんは厳しいけど、菅井ちゃんの言うとおりにやれば絶対実力はアップする…、って、そんなことが分からない佳林じゃないはずないのに…」

確かに、言われてみれば宮本はもともと1年の時からずっと合唱部にいたのだ。
だからこそ、ダンス部で宮本を見て、俺は驚いたのだ、と思い出した。

1051:2015/08/08(土) 00:48:38
「私、佳林のこと、見損なった…」と、植村は吐き捨てるように言った。

俺は返事に窮した。

俺が黙っていると、植村は「そうだ! 佳林って言えば、○○クン、佳林のいるダンス部に入ったんだって? それも、佳林目当てで入ったって聞いたけど…?」と、冷たい視線で聞いてきた。

「えっ!?何だよそれ!?」

俺は狼狽した。
俺がダンス部に入って、まだ昨日の今日なのだ。
それに、俺が去年宮本に告って玉砕したことは、俺と宮本とズッキしか知らない、はずなのだ…。

「…誰に、そんなこと聞いたの?」
俺が聞き返すと、
「ああ、ダンス部の3年生に高木さんっているでしょ? 私、仲いいんだ」と、植村は屈託のない表情で答えた。

「昨日ダンス部に入る時、何かキミが佳林にわざわざアヤつけてたって、紗友希ちゃんが言ってた」

1061:2015/08/08(土) 00:49:24
「アヤつけてた」とか…。
こりゃまたベタな…。
昭和のヤクザじゃないんだから、(いい加減にしてよ高木さん…)、と俺は思ったけど…。

確かに昨日、清水センセイに入部を強制され、鞘師にも頼まれた時、俺は宮本に「俺が入ってもいいのか?」なんて、みんなの前でわざわざ聞いていたのだった。

俺としては、宮本に対して最低限の仁義を通したつもりだったけど…、
確かに、他の女の子から見れば、俺が宮本の気を引こうとしていたとしか見えていなかったのかな、と俺は気が付いた。

(それにしても、そんなことをペラペラと…、あのお猿さん、お喋りがすぎるぜ)と俺は思った。

いや、でも、植村までが既にこんな話を知っているのだから、ダンス部の女の子たちは、みんな気が付いているはずだ。
当然、いろいろと尾鰭のついた噂だってしているだろう。
女の子ってのは、本当におしゃべりなものだ。

俺が去年宮本に告って玉砕したことまでバレているのかどうかはともかくとしても…。

どちらにしても、俺は今日の放課後、あの女の子たちに、どんな顔をして会えばいいのだろうか。
特に宮本と鞘師には…。

1071:2015/08/08(土) 00:49:46
俺がそんなことを考えてると、

「返事もできないってことは、やっぱり佳林狙いで図星なんだ?」と、植村が意地悪そうに聞いてきた。
「えっ…、違う…」 俺はうろたえながら答えた。

「そりゃ、昔は宮本のこと好きだったけど、今は…、別に俺、そんなつもりでダンス部に入った訳じゃない…」
慌ててつい、言わなくていいことまで答えてしまう俺であった。

「ほら、やっぱり好きなんじゃん」と、馬鹿にしたような目で俺を見る植村。

1081:2015/08/08(土) 00:50:09
「いや、その…」としどろもどろになる俺に、
「どうして男の子って、佳林みたいな子に、コロッと騙されちゃうのかな…」と、植村はちょっと馬鹿にしたような顔をして言った。
「えっ…?」
「だってさ、高校に入ってから今までに、10人以上の男の子が佳林に告白したって言うじゃん。佳林は全部断ったらしいけど」
「そなの…?」

ええ、俺もその10人のうちの1人です、とはさすがに言えなかった俺だった。

「植村さんは、宮本のこと嫌いなの?」
「えっ? 別にそんなことないけど。まあ、合唱部辞めたのは腹立ってるけどさ…」
「…でもさ、植村さんだってモテるだろ? 告白してくる男子だっていっぱいいるんじゃないのか?」
「は?何言ってんの? 私そんなこと言われたこと、一度もないもん!」

1091:2015/08/08(土) 00:50:31
「だけどさ、前に男子で人気投票したら、植村さんは学年でも…、かなり上位に入ってたんだぜ」
宮本の次の2位、とか、危うく言いそうになって、慌ててこらえた俺だった。

「は? そんなの聞いたことないもん。○○クン、私のことからかってるの? 馬鹿にしてるんなら怒るから!」
顔を真っ赤にして、植村が言った。

「いや、からかってない。植村さん本当に美人じゃん。俺もマジそう思ってる」
と言ってから、(いかん、これじゃまるで告白してるみたいだろ)と思った俺は慌てて、
「いや、別に変な意味じゃなくて。その…、みんな言ってることだし…」と、また俺はしどろもどろになってしまった。

「でも、私、全然男の子にモテないもん…」
と拗ねたように言う植村が可愛かった。

1101:2015/08/08(土) 00:50:53
いや、それはたぶん、植村さんに隙が無さ過ぎるっていうのか…」
「隙がない?」
「ホラ、そんな風に…、なんか怖いじゃん」
「怖い?私が…?」

植村はマジマジと俺の顔を見た後、
「私、そんな風に男子に思われてたのか…。 ちょっとショックだな…」とつぶやいた。

俺はなんとなくいたたまれなくなって、なんとかしてこの美少女を慰めたくなった。
「いや、でも、怖そうなところもいいっていうのか…、男にはほら、そういうやつも多いし…」
ちょっと、これは無理なフォローか…、と俺は思ったけど、植村はクスリと笑って、
「まあ、そんなに無理に持ち上げてもらわなくてもいいけど。でも…、ありがと」と、小さな声で言った。

植村が笑ったのを見て、俺が少しホッとしていると、
「それはともかく、部活の顧問の…、菅井ちゃんの話はこれからも相談していいかな?」と植村が聞いてきた。

「もちろん」と、俺が答えるのと、終業のチャイムが鳴るのが同時だった。

1111:2015/08/08(土) 00:51:20
その後、3時間目と4時間目が過ぎて…
学食でメシを食っていたときに、「そういえば俺、昼休みに職員室にこいって、嗣永センセイに言われてたっけ」と思い出した。

慌ててメシを平らげて職員室に行くと、嗣永センセイは自分の席にお弁当を広げて食っていた。
嗣永センセイの弁当は、女の子らしいかわいいお弁当なのかな?、と勝手に想像して覗き込んだら、これが予想に反して、
から揚げだけのおかずが眩しすぎる、男らしい弁当でびっくりした。

「おっ、来たか。ちょっとこれ食べるまで待っててくれる?」と嗣永センセイは言うと、丸椅子を出して、俺に座るよう勧めてきた。

俺はそこに座って、しばらくの間、嗣永センセイのなかなか男らしい食べっぷりをゆっくりと観察させてもらった。

1121:2015/08/08(土) 00:51:43
「さて、ここに何で呼ばれたかは分かっているよねー?」と、メシを食いおわった嗣永センセイは聞いてきた。

「あのー…、やっぱり真野ちゃ…、いや真野先生のことでしょうか?」と俺が聞くと、嗣永センセイは、
「正解ー!」と子供っぽい声でいいながら、俺を小指で指さした。

「真野先生が今日休んだのも、俺のせい…、なんですか?」
「ん…? いや、それは違う」
「じゃあ、なんで…?」

嗣永センセイは一瞬、あたりを見回してから、声を落として言った。
「いやー、昨日慰めるつもりで酒飲ませたらさ…、あいつ調子乗ってガンガン飲んで。ただの二日酔い」

1131:2015/08/08(土) 00:52:06
「えっ?二日酔い?」
俺が驚いて聞き返すと、嗣永センセイは「しっ!声が大きい!」と俺を制して、慌てて周囲を見回した。

「内緒だからね。ほかの生徒には絶対言っちゃダメだよ」
「は、はい…」
「○○クンが変に責任感じるといけないから、一応キミだけにはホントのこと言っておこうと思って、呼んだだけ」

真野ちゃんが休んだのは俺のせいではなくて、大五郎のせいだった、というのが分かって、俺はとりあえずホッとしたけど…、
それにしても、そんなに酒を飲まなきゃいけないほど、俺のせいで真野ちゃんが落ち込んだとでもいうのだろうか…。

1141:2015/08/08(土) 00:52:25
「嗣永センセイ、俺はそんなに真野先生を傷つけたんでしょうか?」
俺が真顔で聞くと、嗣永センセイは、「ん? ああ、それも違う」と、あっさり否定した。

「えっ?」
「落ち込んだきっかけは、確かに○○クンとの口論だったけど、昨日も後半は、男に捨てられた愚痴ばっかり話してたから…」
「そ、それは…」
「あっ、いけない! こんなこと生徒にしていい話じゃなかった。今の話は本当に、絶対内緒だからね。分かってんでしょうね!」

嗣永センセイは俺の学生服の袖をぐいっと引っ張ると、ちょっと凄むような顔をして念を押してきた。

1151:2015/08/08(土) 00:52:57
(世の中には、真野ちゃんの、あのエロコアラのようなピチピチした肢体を弄ぶだけ弄んで、飽きたらポイと捨てるオッサンがいるのか…)
また童貞特有の極端な妄想を始めて、下半身が熱くなってくる俺だった。

そんな俺の妄想をかき消すように、嗣永センセイは、
「まあ、でも…、そんな訳だからさ。○○クンもいろいろあるとは思うけど、ちょっと真野ちゃんにやさしくしてやってくれるかな?」と、
お姉さんのように優しい口調で囁いた。

「は、はい。それはまあ…」
「分かってくれた?」
「ええ。でも…」
「でも?」
「真野先生って… なかなか面倒くさい人ですね」
「それが分かってるからこそ、私が今わざわざこうやって、キミに頭下げて頼んでるんじゃん」

<一応、ひとしきり弄ばれた後のエロコアラ的イメージ画像>
http://i.imgur.com/u4G8Ht3.jpg

1161:2015/08/17(月) 11:43:21
そう言うと、嗣永センセイはため息をついた。
俺も、これからの真野センセイとの付き合い方を考えると、やっぱりため息が出た。

俺たちは思わず、顔を見合わせた。
「お互い、大変ですね」
「全くだ…」

そんな話をしていたとき、ガラッと職員室のドアが開いて、大柄なお姉さんが書類の束を抱えて入ってきた。
そのお姉さんが教頭先生の机に書類の束を置いて、帰ろうとして俺たちの前を通りかかった時に、嗣永センセイが声をかけた。

「よう、茉麻」
「おっ、桃じゃん。元気?」

そう言った後に、須藤さんは俺に気付いて、びっくりしたように話しかけてきた。
「あれっ? キミ、千奈美の弟の○○クンじゃないの? この高校にいたの?」

「あっ、須藤さん…。どうも御無沙汰してます」
俺が畏まったように挨拶をすると、嗣永センセイは俺たち二人を交互に見て、
「ちょっと何? あんたたち知り合いなの?」と驚いたように言った。

「知り合いも何も、ちいの弟じゃん。この子」
「えっ? 『ちい』って、あの千奈美のこと!?」

1171:2015/08/17(月) 11:44:04
俺は話が全くのみこめなかったのだが、嗣永センセイはまじまじと俺の顔を見つめてから言った。
「あー。言われてみりゃ確かに千奈美に似てるわ。いやー、自分が担任のクラスに、千奈美の弟がいるなんて気付かなかったなー」

「ちょっとさ桃…、アンタ担任なら、家庭調査書とか持ってんでしょ? 千奈美の名前書いてあっても気付かなかったの?」
そう須藤さんが突っ込むと、嗣永センセイは、書類をごそごそと探しながら、
「いやー、確かにそんな名前は見た記憶あるのよね。でも、あの千奈美だよ? その弟がうちみたいな進学校に来るわけないじゃん。だから別人だと思ってた」と、
悪びれる様子もなしに言った。

「ちょっと待ってくださいよ! それって俺を馬鹿にしてるんですか? それとも姉ちゃんを馬鹿にしてるんですか?」
思わず俺は大声を上げた。

あんな姉ちゃんでも、俺にとっては大事な姉ちゃんなのだ。

1181:2015/08/17(月) 11:44:41
「悪い悪い。全然馬鹿にするとかじゃなくて、うちらの間じゃそういうキャラなのよ、君の姉ちゃんは」と、嗣永センセイは笑いながら言った。

何か騙されているような気もするが…。まあ、それはいい。
「それより、お二人とうちの姉ちゃんはどんな関係なんですか? いや、須藤さんは同級生だったの知ってますけど、嗣永センセイは違う高校じゃ…?」

「ああ、ウチらバイト先が一緒だったの。駅前のフルーツケーキ屋さん」と須藤さんが言った。

そういえば、千奈美姉ちゃんは高校時代ずっと、そのフルーツケーキ屋でバイトをしていたのだった。

「えーっと、確か、何とか工房って言ったっけ…」
俺がそう言いかけると、「ベリーズ工房!」と嗣永センセイが怒ったように言った。

1191:2015/08/17(月) 11:45:10
しかし、姉ちゃんと嗣永センセイが友達だったとは、全然知らなかった。
そういえば、俺も姉ちゃんに、わざわざ担任の名前など伝えたことはなかったのだ。

そんなことを考えていると、
「あっ、そういえば確か、その頃の写真持ってたな…」と嗣永センセイが、スマホを取り出して探し始めた。

「あったあった。これ」
そう言うと、嗣永センセイは俺と須藤さんにスマホの画面を見せた。

<フルーツケーキ屋のバイト時代の嗣永センセイと須藤さん、千奈美姉ちゃんたちイメージ画像>
http://i.imgur.com/bFiFQXS.jpg

1201:2015/08/17(月) 11:45:40
「どれどれ…」と画面を覗き込んだ須藤さんは、「おー、この制服。懐かしい!」と声を上げた。

俺も写真を見た。千奈美姉ちゃんに嗣永センセイ、それに…、俺が毎晩お世話になってた頃の須藤さん…。
(みんな若いな)と思ったとき、俺はあることに気が付いた。

「あの…、嗣永センセイ」
「何?」
「もう一人、見たことのあるような人が写ってるんですけど」
「誰?」
「えーと、嗣永センセイの隣のこの人…」
「あー。佐紀ちゃんじゃん」
「佐紀ちゃんって…、清水センセイですか!?」
「そだよ」
「えーっ!?」

1211:2015/08/17(月) 11:46:14
(世の中と言うのは、こんなに狭いものなのか…)
俺が呆れていると、嗣永センセイが「いやー、でもこの7人は本当に仲良かったよねー」と須藤さんに言った。
須藤さんも「本当だよねー。でも、みんな若いなー」と弾んだ声で答えた。

すると、嗣永センセイは突然俺を見て、「ねえ、○○クンだったら、もし付き合うとしたらどの子を選ぶ?」と、半分からかうように聞いてきた。

「ええっと…」俺は7人の写真を見回した。
まあ、こんな質問に、まともに答える必要もないのだが…。思わず真剣に選んでしまう俺だった。

「そうですね… やっぱり嗣永センセイ…」
「えっ!?えっ!? やっぱりもぉなの? ダメよ○○クン、私は教師であなたは生徒よ!」
「…の隣の、赤いエプロンのこの人ですかね…」

「ブハハハハハハ」と須藤さんが豪快に笑った。「桃、やっぱり、りーちゃんだってさ」
「もう! どうして男の子って、ちゃんみたいな子に、コロッと騙されちゃうのかな…」

(あれ、今日、どこかで聞いたようなセリフだな)と俺は思った。

1221:2015/08/17(月) 11:46:40
(そうか、さっき植村が宮本のことを…)と俺が思い出していると、
「久しぶりにこの7人で集まって、女子会でもするか?」と須藤さんが言った。
「いいね」と、嗣永センセイ。

「じゃあさ、桃、佐紀ちゃんに言っといてよ。私、ほかのみんなに連絡するから」
「オーケー」
「いつ頃がいい?」
「明日終業式だから、夏休み入ったら、いつでも!」

1231:2015/08/17(月) 11:47:06
その時、昼休み終了前の予鈴がなった。
「いけない。早く戻らないと事務長に嫌味言われる」と須藤さん。
「ちょっと、○○クンも早く教室戻って、授業受ける準備しないと」と、したり顔の嗣永センセイ。

「ハイハイ」と俺が言うと、「ちょっと!『ハイ』は一回でしょ!?」と、嗣永センセイが口をとがらせた。
「はーい」

俺が立ち上がると、「千奈美によろしく言っといてね」と須藤さんが言った。
「あっ、私からもね」と嗣永センセイ。

1241:2015/08/17(月) 11:47:44
その日の放課後、俺はダンス部の練習のために第二体育館に行った。
俺がそこに着いたときには、女の子たちは既にあらかた集まっていたけど、鞘師はまだ来ていなかった。

よくよく考えてみると…
今朝一緒に練習して、ちょっと打ち解けた鞘師を除けば、この中に、俺が親しく話しかけれるような女の子は誰もいない。
何となく、みんなよそよそしい感じで、それでいて、遠巻きに俺の様子を探っている感じだ。

一瞬、宮本と目が合った。

(もう俺は、別にお前のことを何とも思ってないから、怖がらなくていい。安心しろ)
って言ってやりたいと思ったけど、そんなことをここで言ったら、また高木さんあたりに変な邪推をされるのは確実だ。

そんなことを考えてるまさに今も、高木さんが俺を見ているような気がする。

1251:2015/08/17(月) 11:48:12
その時、鞘師が壇上に上がってきた。
鞘師は、まっすぐ俺の方に歩いてくると、突然、真面目くさった顔で言った。

「今朝は…、なんか、ゴメン。悪かった」
「『ゴメン』って…、何がだよ?」
「うん…。あの後、私、ずっと考えてたんだけど…」
「何を?」
「ほら…、私『ツンツンしてる』って○○クンに言われたけど、本当にそうだなあって…」
「えっ?」
鞘師が何を言いたいのか、俺にはなかなか呑み込めなかった。

1261:2015/08/17(月) 11:48:37
鞘師は、少し顔を赤くして続けた。
「やっぱさ…、りなぶーとかから見ればさ、まるで私が〇○クンの彼女気取りで、しゃしゃり出てるように見えたかなあ…、って」

「いや、お前…」
思わず俺の方も、自分の頬が赤くなるのを感じた。

「そんな風に思われたら、○○クンだってきっと迷惑だったよね? ホント、ゴメン。『キミを守る』とか、私、調子乗りすぎてた」

1271:2015/08/17(月) 11:49:05
俺は慌てて否定した。
「いや、そんなことねーよ。俺は…、お前にそう言われて、嬉しかったよ」

俺がそう答えると、鞘師は「本当?」と、パッと表情を明るくして聞いてきた。

「ああ、本当だよ」
俺はまた、今朝と同じ昂揚感を感じていたのだが…、
その時、他の女の子たちが、素知らぬ風を装いながら、俺たちの会話に全身で聞き耳を立てている様子も、また痛いほどに感じていた。

そしてそれは、高木さんや竹内さんたちだけでなく、俺の気のせいかもしれんけど、どうも宮本までもがそんな様子なのだ。

1281:2015/08/17(月) 11:49:34
俺がそういうと、鞘師は「良かった」と無邪気な笑顔を見せた。

俺ももちろん嬉しい。
しかし…

(鞘師は周りの女の子たちが全く気にならないのだろうか?)と俺は思った。

今の俺たちの会話を、前後の脈絡も知らずに断片的に聞いた人にとっては、これはやはり一種の愛の告白のようにしか聞こえないのではないか?

そう思って周囲を見回すと、女の子たちはみんな慌てて視線をそらしていく。
宮本も、真っ赤な顔をしながら、不自然に下を向いた。

俺はまあいい。
でも鞘師は…。

鞘師はこの女の子たちの、探るような空気が全く気にならないのだろうか?
それとも、他の女の子たちなんか眼中にないとでもいうのか…

1291:2015/08/17(月) 11:49:54
俺がそんなことを考えていると、突然後ろからポンと肩をたたかれた。
清水センセイだった。

「おぱよ」
「あっ、どうも」

てゆーか、(こんな時間に『おぱよ』って、水商売のお姉さんかよ…)と、俺が思ったのは内緒だ。

「桃に聞いたよ。キミ、千奈美の弟だったんだって? びっくりしたなあ、もう…」
「あ、はい」
「ちいは元気?」
「ええ、おかげさまで。毎日元気にアシカの相手してるみたいです」

突然フレンドリーに話し出した清水センセイと俺を、周囲の女の子たちは「何事か」という感じで、様子を伺っている。

1301:2015/08/17(月) 11:50:27
すると、清水センセイは突然、キリッとした声に変わって、
「はーい、みんな集合!」と号令をかけた。

慌てて女の子たちが整列した。

「えーと、それじゃ、いつものように、みんなまずパート練習を…」と言いかけたところで、清水センセイはぐるりと全員を見回して、
「ふむ…」と、二、三秒考え込んだ。

(何だろう…)と俺が思っていると、
「いや、まず一度通して全体練習しようか。はい、準備!」と、清水センセイが言って、パンパンと手を鳴らした。

慌てて配置につこうとした俺と鞘師に、「あっ、○○クンと鞘師は踊らなくていいから。一緒にこっちで見てて」と清水センセイ。

「え? は、はい…」と訝しげな鞘師。
俺はまあ…、踊っても邪魔になるだけだ。

1311:2015/08/17(月) 11:50:49
清水センセイが曲をかけると、女の子たちがそれに合わせて踊りだした。

しばらくすると、鞘師は「えっ… ウソでしょ…」とつぶやき、身を乗り出して、食い入るように女の子たちのダンスを見つめだした。
そんな鞘師を見て、ニヤニヤとしてる清水センセイ。
何が起きてるのか、俺にはさっぱりわからなかった。

曲が終わると…
「どうよ?鞘師?」と、清水センセイが何故か勝ち誇ったようにドヤ顔で言った。
「信じられません…。たった一日で…。なんでみんなこんなに上手くなったんだろう…」と、鞘師は呆然とした様子だった。

すると、清水センセイは突然、「オーホホホホホ」と高笑いしてから言った。
「作戦大成功! やっぱ○○クンに無理やり入ってもらった効果あったわ!」

「えっ?」
俺と鞘師が同時に聞き返した。

1321:2015/08/17(月) 11:51:11
「あのさあ…、前から何度も何度も、『常に、見られることを意識して踊れ』って、言ってたじゃん私」
清水センセイは、今度は少し怒ったような声を出して、女の子全員を見回した。

呆気にとられてる女の子たち。

「みんな今まで全然言うこと聞かなかったくせに、男の子が一人入っただけで意識しちゃって。ホンっトに単純なんだから。普段より動きも表情も全然いいじゃん」

「えっ…!」と、声を上げた高木さんに、
「紗友希ー。紗友希はいつもよりずーっとエッチな表情してたよー。なんか体もクネクネしてたし。もう…、色気づいちゃってー」とからかう清水センセイ。
「してないです!してないです!」顔を真っ赤にして否定する高木さん。

「あれー? タケちゃん。タケちゃんいつもダッさいゆるゆるのTシャツ着てるくせに、今日はかわいいピチTじゃん。初めて見た―」
「ギャー」と悲鳴を上げてしゃがみこむ竹内さん。

「佳林ちゃん」
「えっ、は、はい」
「佳林ちゃんも、いつもは地味なゴムで髪まとめてんのに、今日は可愛いヘアバンドなんかつけてるしー」
「えっ、いや、これは…」 宮本までが顔を赤らめてうろたえてる。

1331:2015/08/17(月) 11:51:31
呆気にとられた様子の鞘師に、清水センセイが言った。
「だいたい鞘師だって…」
「えっ?」
「色つきのリップなんかつけてー。校則違反じゃん。普段そんなのしたことないくせに」
「違うんです!違うんです! 今朝家を出るとき、これしか見当たらなくて…」

うろたえる鞘師を無視して清水センセイは続けた。
「みんなさ、ちょっと男の子に見られること意識しただけでも、これくらい表情も動きもガラッと変われるんだよ。わかった!?」

「は、ハイ!」と女の子たちが慌てて返事をした。

1341:2015/08/17(月) 11:51:48
すると、清水センセイは、今度はくるりと俺の方を向いて言った。

「いやー、○○クン、本当にありがとう」
「は、はい」
「嫌がってたのに、強引に入ってもらった価値あった。ホントに助かったわ―」
「い、いえ…」
「無理強いして悪かったね。もう辞めてもいいよ」
「えっ…、ええっ!?」

1351:2015/08/17(月) 11:52:08
女の子が色気づいて、やる気になったところで、「ハイご苦労さん」って…
酷えよ、清水センセイ…。

(これじゃまるっきり、俺はただの当て馬じゃねえか…)と、軽くショックを受けた自分だった。

しかし…
よくよく考えてみれば、俺がダンスなんてやったって、女の子たちの邪魔になるだけなのは明らかだっだ。
鞘師だって、俺に教える暇があったら、自分の練習をした方が、よっぽど優勝の確率が高まるというものだ。

それに、鞘師はあんなに優勝したがっていたではないか。
だからこそ、清水センセイに言われるまま、俺に「入部してくれ」と、頭を下げてきたのだ。

だとすれば…
(ここは潔く身を引くのが男ってものか…)

そこまで考えたとき、ちょっと憤然とした表情で鞘師が言った。
「ちょっと待ってください!清水先生!」

1361:2015/08/18(火) 04:36:31
「何、鞘師?」と、クールな表情の清水センセイ。

「あ、あの…、せっかく○○クンに入ってもらったばかりなのに、用が済んだからすぐに辞めろっていうのは…」
「えっ、何? 鞘師は私の言うことが気に入らないわけ?」

(ちょっ… 怖えよ、佐紀ちゃん…)
俺はこの二人の女の対決にハラハラした。

「いえ、気に入らないとかじゃなくて…」
「だったら何なの?」

「せっかく○○クンもダンス始めてくれたんだから、一緒に大会出れたらなあ、って…」
「えっ、でも○○クン、嫌がってんじゃん。いつまでも無理強いはできないよ」
「でも!でも! 今朝○○クン、『ダンス楽しい』って…私に…」

1371:2015/08/18(火) 04:37:03
「えっ、そなの?」と清水センセイが俺に聞いてくるのと、
「そうだよね!?」と鞘師が俺に聞いてくるのが、同時だった。

「お、お、おう…」と、しどろもどろに答える俺。

その時、突然宮本が、
「清水先生、私からもお願いします。○○クンに居てもらうようにしてください」と声を上げた。

(えっ、宮本…、俺のこと見るのもイヤじゃなかったのか…?)

俺は訳が分からなくなった。

清水センセイは「ふーん…」と、鞘師と宮本を交互に見つめた後、
「まあ、あんたたちがそうしたいなら、別に構わないけど」と意味ありげに笑った。

1381:2015/08/18(火) 04:37:31
正直言って…、俺は動揺していた。
その後の練習のことは、実はあまりよく覚えていない。

「はい、今日はここまでー」という清水センセイの声に、我に返った。

女の子たちは、ぞろぞろと女子更衣室に向かっていった。
俺も男子更衣室に向かおうとして、壇上に置かれているCDラジカセに気が付いた。

「清水センセイ、これ、どこにしまうんですか?」と俺が聞くと、
「ああ、体育用具室の奥の棚に置いといて」と、清水センセイが答えた。

俺はCDラジカセを持ち上げると、のろのろと体育用具室に向かった。

1391:2015/08/18(火) 04:38:05
体育用具室は、ステージの脇にあって、L字型に奥が曲がっている。
その、曲がった奥の方の棚にCDラジカセを置いたとき、ガラガラと後ろでドアが開く気配がした。

「えっ、こんなとこで着替えて、男子とか入ってきたらどうするんですか?」
あれ、三年の稲場さんの声だ、と思ったとき、

「平気平気。女子更衣室混みすぎだから、うちらいつもここで着替えてるんだよ」と、竹内さんの声がした…、と思う間もなく、
竹内さんが汗で濡れたTシャツを豪快に脱ぎだした。

慌てて俺は奥に隠れた。

1401:2015/08/18(火) 04:38:36
(ちょっ…! こんなところにいるのがバレたら身の破滅だ…)と俺は思ったけど、今さら名乗り出るには、もう遅すぎた。
俺は壁の陰に隠れて、息を潜めながら、女の子たちから目が離せなくなった。

ピンク色のブラとパンツだけになった竹内さんの姿は、童貞の俺にとっては肉感的すぎた。
(やばい…、鼻血が出そうだ…)

そう思ったとき、「そうそう。全然平気」と言って、高木さんもTシャツとジャージのズボンを脱ぎだした。
高木さんはイエローのブラとパンツだった。
(このお猿さん、いい体してるじゃねえか…) 愚息が痛いぐらいにビンビンになってくるのを感じる俺。

「そうですか…」と言って、稲場さんもおずおずとTシャツを脱ぎだした。
真っ白い肌にブルーのブラジャーが眩しすぎた。
(ヤバい…。これは本当にヤバい…)

1411:2015/08/18(火) 04:39:15
俺がそう思った時、
「でもびっくりしたよねー」と竹内さんが言った。
「さやぴょんのこと?」と高木さん

(さやぴょん…? 鞘師のことか?)と俺が思う間もなく、

「あれ、絶対に○○クンのこと好きだよねー」と竹内さん。
「やっぱ、そう思ったー!?」と高木さんも大声を上げた。

「うん。何か、練習前に『彼女気取りでどうこう』、とか話してたし、それに、『ダンス部辞めさせないで』とか、すごく必死だったよね。それにあのリップ…」
「びっくりしたよねー。りほぴょんのあんなの初めて見たー」

「でもさー、紗友希ちゃんもエッチな表情してたんでしょー?」
「いやあっ! 何言ってんの? 自分だってピチT着てたくせにー」
「ぎゃーっ! いやだあっ!」

(こいつら… 何言ってやがる…)と俺が思ったとき、
「でも、佳林ちゃんも〇○クンのこと、好きなんじゃないでしょうか?」と稲場さんが言った。

1421:2015/08/18(火) 04:39:46
「ああー、そうかもねー」と竹内さん。
「うん。最初の日に○○クンもわざわざ『俺が入っていいのか』とか、佳林ちゃんにアヤつけてたしー」と高木さん。

(だからその、『アヤつける』とか、ベタな表現やめろよ)と、俺は心の中で叫んだ。

「何かさっきも、鞘師さんに張り合って、『私からもお願いします』とか、言ってたように感じました」と、
稲場さんがセーラー服の上着を身に着けながら言った。

(こいつら、俺が宮本に告って玉砕したことも知らずに、勝手なことばかり言いやがって…。てゆーか、さっさと着替えて出て行ってくれよ)と、俺は思った。

1431:2015/08/18(火) 04:40:19
三人が着替え終わって、用具室から出ていっても、俺はすぐにはそこから動けなかった。
もし出て行って、三人に見つかれば、俺がそこに隠れていたのが当然バレるからだ。
てゆーか、別に俺は隠れて覗いていたわけではない。あの三人が突然あんなところにやってきて、勝手に着替え始めた方が悪いのだ。それは、声を大にして言いたい。

しばらくたってから、俺は意を決して用具室から出た。

俺は無性に鞘師と話がしたかった。
鞘師の姿を探したけれど…、

鞘師どころか、第二体育館には、既に俺の他には誰もいなくなっていた。

1441:2015/08/18(火) 04:40:43
校舎を出て、自転車置き場に来てから、
(あっ、今日は朝に雨が降っていたから、電車で来たんだっけ)と思い出した。

雨は上がっていた。
電停に向かって歩き出したところで、
(そういえば、写真のフィルムと印画紙がなくなってたな。せっかく電車で来たんだから、ついでに買って帰ろうか)と、俺は思い直した。

いつもフィルムや印画紙を買う写真屋は、駅の近くにある。
俺は家へ帰るのとは反対方向の、駅前行きの電停から市電に乗りこんだ。

1451:2015/08/18(火) 04:41:03
写真屋に着いて、フィルムや印画紙を買い終えて、帰りの電車に乗ろうと思ったとき、
(そういえば、帰りの電停の前に、姉ちゃんがバイトしてた『ベリーズ工房』があったんだよな…)と俺は思い出した。

今は営業休止中だから、シャッターが閉まったままのはず、と思っていたのだが、予想に反して店は開いていた。

「あれ?」と思ってよく見ると、店の看板には「ANGERME」と書いてあった。

(店が替わったのか…。でも『アンガーミー』って、いったい何の店だ?)

1461:2015/08/21(金) 01:33:17
近寄ってよく見ると、看板には「コーヒーとホームメイドパイのお店 ANGERME」と書いてあった。

(ホームメイドパイ、って何だ?)

ウインドウに近づいて中を覗くと、どうやらそこは、喫茶店のような感じの店だった。

店の中には長いカウンターと、ボックスの席。インテリアは60年代のアメリカ風、という感じのネオンサインやブリキの看板が飾られていた。

その時、カウンターの間をこっちに向かって歩いてきた、エプロン姿のウエイトレスさんと目があって、俺は慌てて視線を逸らした。

(あっ、結構かわいいお姉さんかも…)

<結構かわいいウエイトレスのお姉さんイメージ画像>
http://i.imgur.com/cr5rdSr.jpg

1471:2015/08/21(金) 01:33:53
慌てて視線を外しはしたものの、俺はそのお姉さんのことが気になって、もう一度ウインドウの中を覗こうとした。

その時「ねえ、こんなとこで何やってんの?」と後ろから肩を叩かれて、俺はびっくりして振り向いた。
そこに立っていたのは、今朝も電車で一緒だった、田村芽実だった。

「な、なんだ、めいじゃねえかよ…。今日はよく会うな…」
「ねえ、何覗いてんの?」
「い、いや、新しい店できたんだなあって…。てゆーか、お前こそこんなとこで何やってんの? もう遅いだろ…」

時計を見ると、既に夜の7時を回っていた。

「めいはこの店で週に2回バイトしてるんだよ。いま仕事終わったところ」と田村は八重歯を見せて笑った。

1481:2015/08/21(金) 01:34:28
「そ、そうなのか。ところでこの店、何て読むんだ?」
「アンジュルム」
「案じる夢?」
「アンジュルム! フランス語で『天使の涙』っていう意味なんだよ」
田村はなぜか、ちょっと頬っぺたを膨らませて言った。

「ホームメイドパイって…アメリカだろ? それに店のインテリアもアメリカ風じゃん。何でフランス語なんだ?」
「知らないよめい。そんなこと、山崎さんに聞いてよ」
「山崎さん?」
「この店のオーナーやってるおじいちゃん。なんかいつも行き当たりばったりに物事決めるみたい」
「そなの?」
「うん。バイトの先輩の女子大生のお姉さんも『アンジュルムはいつもこうだ』って言ってたし…」

1491:2015/08/21(金) 01:35:06
「ふーん…」
よくわからずに相槌を打つと、田村は、
「私だけじゃなくて、りなぷーや3年生のかななんもバイトしてるんだよ」と笑った。

「かななん?」
「うん。中西さん。前に写真部にいたから知ってるでしょ?」
「あー、中西さん…」

中西さんは、抽象画的というのか、なかなか独特なセンスの写真を撮る先輩だったのだ。俺は中西さんのそんなふんわりとした写真が大好きだったのだけど、
そういう作風は、「友情、努力、勝利」を絶対のテーマとする真野ちゃんの好むところではなく…、
「指導」と称して散々作品に手を入れられた挙句、やはり山木さんと一緒に、今年の春先に部を辞めていたのだった。

(全く惜しい先輩を…)と俺が思っていると、
「あとねー、タケちゃん、竹内さんもいるんだよー。ダンス部忙しいみたいで、最近はあまりこないけど」と、田村は言った。

1501:2015/08/21(金) 01:35:28
竹内さん…。

そう言えば俺はさっき、竹内さんの肉感的な、ピンク色の下着姿を拝見していたのだった。
思い出すと、下半身が一気に勃起してくる俺だった。

「でも、ダンス部って言えばさ…」
そう田村が話しだしたとき、俺たちの家の方へ向かう電車がやってくるのが見えた。

「おい、あれに乗ろうぜ」
「わかった!」

俺たち二人は電停に向かって駆け出した。

1511:2015/08/21(金) 01:35:49
市電の中は比較的空いていた。
俺と田村は後ろの方の座席に、並んで腰を下ろした。

「ダンス部って言えばさあ…」
田村が話し出した。

「ん?」
「○○クン、ダンス部に入っちゃったの?」

俺の気のせいかもしれんけど、どことなく、非難のニュアンスにも聞こえる、田村の口調だった。

1521:2015/08/21(金) 01:36:22
「いや、まあ…、入ったって言うか、入らされたって言うか…」
「何で今朝、黙ってたの? 写真部の朝練とかウソまでついて…」

手厳しい田村のつっこみだった。

「いや…、俺がそう言ったつもりはないけど…」
「めいが聞いたら頷いたんだから、結局同じことじゃん」
「そうだったっけか?」
「ずるい!誤魔化して…」

まあ、確かにコイツの言う通りではあるのだが…

「まあ、ダンス部なんて、大の男がこっ恥ずかしいだろ。勘弁してくれよ」俺がそう言うと、
「そんなに恥ずかしいなら、そもそもなんで入部したの?」と、どこまでも問い詰めてくる田村だった。

1531:2015/08/21(金) 01:36:58

「いや、それがな…」
仕方ないから、清水センセイに盗撮魔に間違えられたくだりから、またいちいちコイツにも説明する羽目になった俺であった。
といっても、鞘師に「キミを守る」と言われたこととか、今日、放課後に退部を引き留められた一件なんかは、省略して話したのだが…。

説明をし終わっても、田村はあまり納得した表情を浮かべてはいなかった。
「ふーん…。人助けとか、ずいぶん優しいんだね。だったら演劇部も手伝ってくれたらよかったのに」
「えっ?どゆこと?」
「男子がいなくて困ってるのはダンス部だけじゃなくて演劇部も同じだよ。うちらだって男子が入ってくれた方が、全国大会に出れる確率高まるじゃん」

田村はそう言って、口をとがらせた。

1541:2015/08/21(金) 01:37:35

「いや…、そんなこと言われたって…。てゆーか、お前ら全国大会なんか出る気あんの? だいたい放課後に練習もしないでバイトなんかしてるんだろ?」
俺がそういうと、田村は「酷い! 演劇部のこと全然知らないくせにー!」と大声を上げた。

「えっ?」
「いまうちらの指導してくれてる須藤さんっていう人は、プレイングマネージャーで、自分自身も劇団に所属してるプロの舞台女優さんなの! 
それで、夕方は本当は自分の劇団の練習にも行かなきゃならないのに、それでも週4回は放課後も残って教えてくれて、その他にも毎日朝練して頑張ってるのに…!
めいたちがバイトしてるのは、練習のない日の放課後だけだよ! それも『いろんな経験した方が演技に生かせる』って須藤さんに言われたからなのに…!」

「そ、そうか、スマン…。俺が悪かった」
田村の迫力に押されて思わず謝る俺だった。

1551:2015/08/21(金) 01:38:04

「でも、須藤さん、プロの舞台女優になってたのか…」と、俺が思わずつぶやくと、
「えっ、○○クン、須藤さん知ってるの?」と田村は驚いたような顔で聞いてきた。

「ああ。めいもうちの姉ちゃん知ってるだろ? 高校の同級生なんだ、須藤さん。昔からちょくちょくうちにも遊びに来てて…」
(だから、ガキの頃からおかずにしてました)と、心の中で田村に詫びる俺だった。

「へえー、そうなんだー」と、やっと表情が明るくなる田村。

「でも、うちの姉ちゃんの話だと、『卒業してもまともに働かずにプラプラしてた』ってことだったけど…」
「酷い―! そりゃ、演劇だけで食べていくのは大変だから、いろいろバイトしたりはしてたんだろうけど、でも地元の演劇界じゃ結構有名人なんだよ、須藤さん。それに、今度東京の舞台にも出るし…」
「そうなのか…」

(千奈美姉ちゃん、テキトーなことばっかり教えやがって…)と俺は思った。

1561:2015/08/21(金) 01:38:37
俺がそんなことを考えてると、「ホラ、これがその舞台だよ」と、田村が鞄の中からチラシを出して俺に見せてきた。

<須藤さんの出演する舞台・イメージ画像>
http://i.imgur.com/1Kkvfv4.jpg

俺がそのチラシに見入ってると、突然、電車の屋根を打つ雨音が聞こえ始めた。

「おっ、また雨降ってきたか…」と俺が言うと、
「いけない! めい、アンジュルムに傘忘れてきちゃった!」と、田村が叫んだ。

1571:2015/08/21(金) 01:39:13
その時、「次は○○です」と、俺の家の降りる電停のアナウンスが聞こえてきた。
田村の降りる電停は、さらに一つ先だ。

雨は結構な勢いで降っていた。
「どうする? 傘取りに戻るか?」と俺が聞くと、
「でも、もう遅いし…。どうしよう…」と、田村が泣きそうな声で言った。

「しょうがねえな…。俺の傘に入っていくか?」
「えっ?」
「遠回りになるけど…、送ってってやるよ」と俺は答えた。

降車ボタンを押す人もなく、俺の降りるはずだった電停を過ぎていく電車…。

1581:2015/08/21(金) 01:39:59

「えっ、いいの?」と、田村。
「いいも何も、もう俺の降りる電停過ぎちゃったしな。それに次の電停からお前の家まで結構歩くだろ? 傘なしじゃ済まんだろ」と、俺。

次の電停で、2人そろって電車を降りると、雨足はさらに強くなってきたようだった。

俺は鞄から折り畳みの傘を出して広げた。

(田村と相合傘か…) そう思いながら歩き出した時、
「今日は、何か、すごくいろいろあった一日だったな…」と、田村が言った。

それは俺もそうだった。

朝、コイツと一緒の電車に乗ってから、鞘師とのプライベートレッスン…、そしてズッキと二人で廊下に立たされ…、
植村さんと初めて会話し…、嗣永センセイと千奈美姉ちゃんが知り合いだったとわかり…、鞘師にダンス部に引き留められ…、
竹内さんや高木さんの下着姿を拝見して…、そして、今またコイツとこうして一緒にいる…。

1591:2015/08/21(金) 01:40:23
そこまで考えを辿ったとき、
「○○クンが今朝、めいのこと、『綺麗になったな』なんて言ったせいで、あの後、めいはりなぷーに散々からかわれたんだよ…」と、田村が呟いた。
「あっ、そなの…?」
「そうだよ。それなのに、○○クン、すぐその後に鞘師さんと、何かいい雰囲気になっていて…」
「えっ?」
「今度は『弄ばれてた』とか、『二股かけられてた』とか、またりなぷーにからかわれて…」
「…」

何と答えればいいものか、考えていたとき、
「○○クンは、鞘師さんのこと、好きなの?」と、田村が核心を突く質問を投げかけてきた。

1601:2015/08/21(金) 01:40:56
「そ、それは…」
「それは?」
また、例の上目遣いで俺を見上げる田村。

「それは…、俺にもまだ正直わからないよ」、と俺が言うと、
田村は怒ったような、拍子抜けしたような声で「何なの、それ?」と、言った。

「だって、初めて鞘師とまともに話をして、まだ二日目だし。あいつがどんなやつかも、俺には正直、まだ分かってないんだよ。ただ…」
「ただ?」
「ああいう風に、はっきりと自分の目標持ってるやつは、すごいな、とは思ってる」

俺がそう言うと、田村はしばらく黙り込んだ後、
「めいのこと、『綺麗になった』なんて、言わなけりゃよかったのに…」と、ぽつりと呟いた。

1611:2015/08/21(金) 01:41:30
沈黙が流れた。

「いや、でもめい、お前、本当に綺麗になったし…」
何か言わなけりゃいけない気がして、思わず俺は早口でしゃべり出した。
「えっ?」と、顔を赤らめて、俺を見上げる田村。

「うん。本当に綺麗になった。これが、あのダンゴ虫集めてたガキとはとても思えない…」
そこまで俺が言ったとき、田村は俺の背中を思いっきり叩いた。
「もう! めいのこと馬鹿にして! もういい! 一人で帰る!」

田村はそう叫ぶと、俺の傘から飛び出して、駆けだそうとした。

「おい!待て!」

その時、近くでドーンと雷が鳴った。

田村は「キャッ!」と叫ぶと、慌てて振り返って、俺に抱きついてきた。

1621:2015/08/21(金) 01:41:51
「めい…」

初めて感じる女の子の体の柔らかさに、俺は我を失いそうだった。

(このまま、めいの体をギュッと抱きしめたい)、という欲望に負けそうになったその時、
「ご、ごめん…」と言って、田村が俺から身を離した。

「い、いや…」 粘った声で返事をする俺。
「ゴメン、めい、雷ホント苦手で…」

田村がそう言ったとき、もう一度雷が近くで鳴って、また田村は俺にしがみついた。

1631:2015/08/21(金) 01:42:18
田村の体を抱きしめる勇気が無かった代わりに、俺は、恐る恐る田村の髪を撫でた。

すると、何となく、田村の髪からいい匂いが立ち上ってくるような気がした。
(シャンプー? いや、もっとお菓子みたいな甘い匂いだ…)

「めい、お前、何か甘い、いい匂いするな…」俺がそう言うと、
「ずっと厨房でアップルパイとか、フルーツクリームパイとか作ってたから、その匂いかも…」と、真っ赤な顔でつぶやく田村。

田村の匂いをもっと嗅ぎたくて、思わず俺は深呼吸をした。

1641:2015/08/21(金) 01:42:44
雷が鳴りだしてから、雨は一層激しく降りだして、もはや、傘をさしていても濡れるのは避けられないほどだった。
田村の白いセーラー服も既にびしょびしょに濡れていて、下着の模様までがはっきりと透けて見えるほどだった。

「めい、もっとこっちにこい…」
「うん…」

二人ほとんど密着するような姿勢で、傘にしがみついて歩いていた。

夏だというのに…
二人のびしょびしょに濡れた肌が触れ合うと、冷たく感じた。

「何か、寒い…」
「ん?」
「寒いね…」田村がつぶやいた。

俺は思わず、無言で田村の肩を抱き寄せた。

<その時の俺の脳内イメージソング>
https://www.youtube.com/watch?v=VDFAXMSSt2o

1651:2015/08/21(金) 01:43:24
田村の家の前にたどり着いたときには、二人とも濡れ鼠のようになっていて、正直、傘の意味などほとんど無かったのだった。
そして、皮肉なことに、そのころちょうど、雨が小降りになってきた。

「今、タオル持ってくるから、ちょっと待っててよ」と、玄関の前で田村は言った。
「いや、いいよ。どうせすぐだし、急いで帰る」
「でも…」
「こんな時間に男なんかと一緒に帰ってきたら、めいの母ちゃんだって、心配するだろ」
「そんな…」
「じゃ、またな」

俺が振り向いて帰ろうとしたとき、「○○クン!」と、田村が俺を呼び止めた。
「どうした?」
「あの…」
「ん?」
「今日はなんか…、いろいろ甘えちゃってゴメン」
「いや、俺の方こそ…」

そう言ったとき、田村の家の玄関の電気がついて、誰かが出てくる気配がした。
「じゃあな!」
俺は慌てて、自分の家に向かって駆けだした。

1661:2015/08/21(金) 01:43:49
急いで家まで帰って帰ってきて、玄関のドアを開けると、ばったりと千奈美姉ちゃんに出くわした。

从*´∇`)<アンタどうしたの?びしょ濡れじゃん

と呆れたように言う千奈美姉ちゃん。

「いやその…、すげー雨降ってたんだよ、今まで」と俺が言うと、千奈美姉ちゃんは、

从*´∇`)<ちょっと待ってな

と言ってから、バスルームからタオルを持ってきて、

从*´∇`)<ホラ、よく拭いてから玄関上がるんだよ

と、タオルを俺に投げてよこした。

1671:2015/08/21(金) 01:44:18
「サンキュー、姉ちゃん」
俺が頭をごしごしと拭いていると、

从*´∇`)<ちょっと、茉麻から聞いたよ! あんたの担任、桃なんだって? それにキャプテンも学校にいるとか? 今度飲み会やることなったよー

と、千奈美姉ちゃんが話しかけてきた。

「キャプテン?」と俺が問いかけると、

从*´∇`)<ああ、佐紀ちゃんのこと。バイトのシフトのキャプテンだったの

と、姉ちゃんが言った。

「そうなんだ。でも、俺もびっくりだよ。まさか嗣永センセイと千奈美姉ちゃんが友達だったなんて…」と、俺が言うと、千奈美姉ちゃんは、

从*´∇`)<友達? 違う違う。あいつはただのビジネスパートナー

と笑った。

1681:2015/08/22(土) 01:05:30
次の日は、前日とはうって変わり、すっきりと晴れわたった好天になった。
早起きしてチャリで学校に向かうまでの間にも、既に汗がダラダラと全身を伝ってきた。

俺が家庭科室についた時、鞘師はまだいなかった。
(今日は俺の方が先に来たみたいだな)

練習着に着替えようとして、家庭科準備室に通じるドアを何気なく開けると、
セーラー服の上着を脱ごうとしていた鞘師と目があった。

「キャッ!」
「す、すまん!」

慌ててドアを閉じる俺。
ほんの一瞬ではあったが、鞘師の白いブラジャー姿が、俺の目に強烈に焼き付いた。

しばらくすると、Tシャツとジャージに着替えた鞘師が、真っ赤な顔をしながら準備室から出てきた。

1691:2015/08/22(土) 01:06:00
「すまん、鞘師…、ノックもせずに。まだ来てないんだと勝手に思いこんでて…」
俺が早口で謝ると、鞘師は、
「い、いや…、ウチも、家庭科室の方に何か鞄でも置いとけばよかったかも…」と、赤い顔のままで下を向いた。

しばらく気まずい沈黙が続いた後、「早く練習しようか。着替えてきて…」と鞘師が俺を促した。

「お、おう…」
慌てて準備室に飛び込む俺。

急いで着替えをしていると、やはり昨日と同じように、鞘師のセーラー服が紙袋の中に無造作に突っ込まれるようにして置いてあるのに気がついた。

さっき一瞬だけ見た、鞘師のブラジャー姿が俺の頭の中に浮かんできて、どうにも離れなくなってきた。
そして目の前にある鞘師のセーラー服…

俺はどうにも欲求が抑えられなくなった。

(スマン鞘師、1秒だけだ…)

俺は紙袋の中に顔を突っ込むようにして、思い切り息を吸い込んだ。

どんな匂いがしたかはご想像にお任せしたい。

1701:2015/08/22(土) 01:06:27
匂いを吸い込んだ後、フル勃起した愚息を鎮めるために、深呼吸すること数秒。

正直まだ半勃起状態ではあったけど、これ以上時間をかけると確実に怪しまれると思って、意を決して俺は準備室を出た。

「それじゃ始めようか」と鞘師。
まだ鞘師にも恥ずかしさが残っているのか、俺を直視はしてこなかったのが幸いだった。

練習は淡々と進んだ。
俺の方もちょっとは慣れてきたおかげで、昨日みたいに手取り足取りは教えてもらわなくても、鞘師の言う通りに大体はできるようになってきた。

嬉しさ半分、残念さ半分、といったところか。

1711:2015/08/22(土) 01:06:54
そのまましばらく踊った後、鞘師が壁の時計を見て言った。
「まだちょっと時間はあるけど…、今日はキリのいいここまでにしとこうか」
「わかった」

「でも、○○クン、たった二日なのに、結構できるようになったね」
「ホントか!?」 鞘師に褒められたと思って、思わず表情の緩む俺。
「うん。下の下だったのが、下の中くらいにはなってきた」 と、したり顔で採点する鞘師。

「酷えな、下かよ…」 思わず俺が不満そうに言うと、
「ゴメン。でも、まだ始めたばかりなんだから当たり前じゃん…。そんなにすぐに上手くなるなら、私だって苦労しないわよ」と、鞘師は笑った。

1721:2015/08/22(土) 01:07:15
「あっ、そうか」と俺も笑うと、
「うん、そうだよ。でも、少しずつでも上手くなっているのはホントだから」と、鞘師が優しい表情を俺に見せた。
「そうなのか?」

思わず見つめあう俺と鞘師。

鞘師はまた少し顔を赤くして、慌てたように視線を逸らすと、早口でしゃべり出した。
「そ、そうだ。昨日のことなんだけど…」
「昨日?」
「私、やっぱり悪いことしちゃったかな?」
「…? 何の話?」

俺は鞘師の顔を覗き込んだ。

1731:2015/08/22(土) 01:07:40
「昨日、家に帰ってからずっと考えてたんだけど?」
「何を?」
「私が〇○クンをダンス部に引き留めたのは、本当に正しかったのかなって…」
「そのことか…」
「うん。せっかく○○クンが『ダンスは楽しい』って言ってくれたんだから、今さらやめて欲しくないと思って、清水先生に逆らったけど…」
「けど?」
「ホントは、○○クンにとっては、迷惑だったんじゃないか、って…」

あのいつも自身満々に見えていた鞘師が、まるで迷子になった子犬のような目で俺のことを見上げてきた。

1741:2015/08/22(土) 01:08:04
「迷惑だなんて…、鞘師がそんな風に思うことはないよ」
「本当?」
「うん。まあ、正直言って、ここ数日の成り行きには俺が一番戸惑っているんだけど…。ダンスが楽しいって言ったのはウソじゃない。ただ…」
「ただ?」
「俺なんかがいたら、お前の足を引っ張るだけじゃないかって。現にこうやって俺に教えてる間も、自分の練習した方が鞘師にとってはホントはいい筈だろ? むしろそれが心配なんだよ」

俺がそういうと、鞘師は少し怒ったような顔をして俺に言った。

「そんなこと、言わないの!」
「でも…」
「私は一人で優勝したいんじゃなくて、○○クンも含めたうちの学校のダンス好きな仲間全員と、みんなで優勝したいの!」

まっすぐに俺の目をみつめてくる、鞘師の表情が凛々しかった。

1751:2015/08/22(土) 01:08:22
「そうか…」俺がそういうと、
「うん。でも良かった。迷惑じゃないみたいで…」と、鞘師がホッとしたように言った。

「お前、ずっとそんなこと心配してたの?」
「おかしい?」
「いや…、でも鞘師って、そんな心配するタイプだと思ってなかったから、意外だったわ」
「どういうこと?」
「うん。もっと、何事にも自信満々なヤツかと思い込んでた」
「ひどーい。私全然そんなことないのに…」
「でもたぶん、みんなにそういうイメージ持たれてるぜ」
「私、あんまり顔に出さないだけで、いつもいろんなことにビクビクしてるのに…」

1761:2015/08/22(土) 01:08:46

鞘師とこんな話をしているのが、素直に楽しかった。
コイツとは、心が通じ合う何かがあるかもしれない、と俺は思った。
(もっと、鞘師のことを知りたいな…)

そう思ったとき、「じゃあ、まだ早いけど、そろそろ教室に戻ろうか…」と鞘師が言った。
「お、おう。それじゃ、俺また写真部の暗室行って着替えるから…」と俺は答えた。

1771:2015/08/22(土) 01:09:07
暗室に行って、着替えをしていると、さっきの鞘師のブラジャー姿が、また脳裏に蘇ってきた。
そして、あのセーラー服の匂い…。

たちまち元気になってきた愚息を、俺は持て余した。

正直言って…
イメージの鮮明なうちに、俺はこの場で一本抜いてしまいたい気持ちだった。

(やるか…?)

鍵をかければ誰も入ってこないし、換気扇もあるから臭いがこもることもないだろう…。

今着たばかりのズボンを再び脱ぎだす俺。パンツも下ろして、ビンビンになった一物を握りしめると、俺は目を閉じた。

(里保…、里保…!)

その時、トントンと暗室のドアをノックする音が聞こえて、俺は慌てた。

1781:2015/08/25(火) 03:50:40
「ちょっと待って!」と、俺は叫んだ。

(こんな時に…、どうせまた優樹か…)

俺は急いでパンツを穿いてズボンを上げると、ドアを開けた。

「あのな優樹…」と言いかけてよく見ると、そこにいたのは優樹じゃなくて、真野センセイだった。

「あっ、○○クン…」と、気まずそうに下を向く真野センセイ。
「あっ、真野センセイ、お早うございます」と挨拶しながら、俺も気まずいものを感じていた。

1791:2015/08/25(火) 03:51:19
「お早う…」と真野ちゃんは答えると、「今ちょっと、買ってきた薬品を置きに来ただけだから…」と、なぜか言いわけでもするように俺に言った。
「あっ、そうなんですか…」と俺。そして、沈黙が流れた。

この気まずい空気は、やはり早めにどうにかしといた方がいい。
それに昨日、嗣永センセイにも「真野ちゃんに優しくしろ」と念を押されていたのだった。

俺は意を決して言った。

「あの、真野センセイ…」
「何?」 警戒した表情の真野ちゃん。
「一昨日は、生意気なこと言って、済みませんでした」
「えっ?」
「俺、あんな風に言うつもりは…」
「あっ、それは私も全然気にしてないから。むしろ取り乱したりして、私の方が悪かったかも…」

明らかに無理に作り笑顔を見せる真野ちゃんだった。

1801:2015/08/25(火) 03:52:04
「は、はあ…」と、俺が答えると、
「それよりも、早く作品を私に提出してね」と、真野ちゃんは言った。

(結局、そこに話が戻るのか…)

俺は嘆息しかけたけど、それを言い出してはまた元の木阿弥だ。

「わかりました…」と俺が返事をしかけたとき、暗室の前で立ち話をしていた俺たちの眼前に、鞘師が現れた。

「あっ、鞘師…」
「良かった。やっぱりまだここにいた」と鞘師が笑って言った。
「今日の放課後のダンス部の練習、場所が変更になったから教えにきたの」

その時、真野ちゃんが「ダンス部の練習って、いったい何の話?」と、鞘師と俺を交互に見つめた。

1811:2015/08/25(火) 03:52:33
「あっ、えっと…」と、俺が返事を躊躇ってると、
「○○クン、一昨日から、ダンス部に入ってくれたんです」と、何も知らない鞘師がニコニコしながら真野ちゃんに言った。

(あっ、待て…)と俺が目配せする暇もなく…。

「ちょっと!何それ!そんな話、聞いてないわよ!」と、怖い顔で俺に向き直る真野ちゃん。

「えっ…、どうかしたの…?」と、鞘師が俺に耳打ちしてきた。

1821:2015/08/25(火) 03:53:16
俺は真野ちゃんと向き合ったまま、鞘師を制するように、後ろ手で鞘師の袖を軽く二回叩いた。

「いろいろあって、ダンス部に入ったんです」 俺がそう言うと、真野ちゃんは、いきり立った。
「『ダンス部に入った』ですって!? あなた自分の立場分かってるの!? 作品もまだ出してないくせに、そんなものなんかに関わってる暇ないでしょう!」

「えっ、『そんなもの』って…?」ぼそりとつぶやく鞘師。

すると、真野ちゃんは鞘師に、
「あなたが〇○クンを誘惑してダンス部なんかに引きずり込んだのね!? あのね、○○クンは写真で忙しいの!」と、決めつけるように言った。

「そんな…、私!」 鞘師が何か言おうとしたので、俺は慌てて二人の間に割って入った。

1831:2015/08/25(火) 03:53:46
「いや、真野センセイ、鞘師のせいにするのはやめてくれ。ダンス部はあくまで俺がやりたくて、俺の意志で入ったんだから」
「それじゃ写真はどうするつもりなのよ!?」
「もちろんやるけど…」
「けど…、何よ?」
「俺は義務感で写真を撮りたいわけじゃない…」
「あなたまだそんなこと言ってるの!?」

すると突然、今度は鞘師が俺と真野ちゃんの間に割って入ってきた。

1841:2015/08/25(火) 03:54:23
「真野先生、○○クンにはちゃんと、写真とダンスを両立してもらいますから。認めてください」と、鞘師は真野ちゃんに頭を下げた。

「鞘師…」 そんなことまで言い出す鞘師に、俺は正直すごく驚いた。
真野ちゃんは、「どうして鞘師さんにそんなことが言えるのよ!?」と、怒りが収まらない様子だったけど、
鞘師も、「あの…、○○クンがいい写真撮れるように、私もできることは手伝いますから!」と、一歩も引かない構えだった。

そのまま数秒。

真野ちゃんは「もうそろそろ、職員室戻らなきゃ…」と言うと、「まだ、完全に認めたわけじゃないからね…」と、捨て台詞を吐いて去って行った。

俺と鞘師は思わず見つめあった。

1851:2015/08/25(火) 03:55:01
「ふーっ」と鞘師はため息を一つついてから、
「あーびっくりした…。ずいぶん変わってるね、真野先生って」と呆れた様子で言った。

「ああ。去年の大会が散々だったから、『何としてでも今年は』って気負いすぎなんだよ。正直俺もすごく困ってる」と、俺は答えてから、
「でも、鞘師があんなことまで言ってくれるとは思わんかったわ」と、つい呟いた。

「あんなこと?」
「俺にいい写真を撮らせるとか」
「言ったじゃん、『キミを守る』って。あっ、でもまた出しゃばっちゃったかな…」

急に不安そうな目で俺を見る鞘師。

俺はそんな鞘師が可愛くなってきて、思わず鞘師の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でた。

「キャッ、髪が乱れる!」
「じゃあ、また放課後な」
「あっ、場所が多目的教室に変わったの。終業式のあと1時半から」

俺は無言で手を上げて、自分の教室に向かった。

1861:2015/08/25(火) 03:56:02
終業式が終わったのはお昼前だった。

ダンス部だの写真部だので忙しくなるのはわかっていても、やっぱり夏休みだと思うと解放感があった。

「練習1時半からだったよな…。あっ、そういや今日弁当持ってこなかったや。何か外に食いに行くかな…」
俺が独り言を言うと、隣の席のズッキが耳ざとく聞いていたのか、
「ねえ、私もお昼持ってこなかったんだけどさ、一緒に食べに行かない?」と、例の屈託のない笑顔で聞いてきた。

「ん、お前も練習あるのか?」
「うん。演劇部も1時半からだから、結構時間あるし」
「で、何か食いに行きたいものあるの?」
「前から気になってるスープカレー屋さんがあるんだ」

1871:2015/08/25(火) 03:56:31
「スープカレーか…。別にいいけど。でも、お前大丈夫なの?」
「何が?」
「ホラ、ダイエットしてたんだろ?」
「平気平気。ちゃんと計算して食べて、ちゃんと運動してるから」
ドヤ顔で語るズッキ。

「そういうもんなの?」
「うん。単に食事減らすより、そのほうがいいんだって」
「へえ…、それがこれの秘訣か…」
俺はズッキの爆乳を凝視した。

「もう!またそればっかり! だから、やらしいってば!」
ズッキが俺の背中を叩いた。

1881:2015/08/25(火) 03:57:22
「で、そのカレー屋って、どこにあるの?」と俺が聞くと、
「ちょっと前に聞いたお店で、私もまだ行ったことないんだけど、駅前の方にあるらしいの。行けばたぶんわかる」

「駅前か…」
学校からはちょっと遠いが、まだ二時間近く時間がある。行き帰りの時間を入れても余裕だろう。

「よし、行くか」と俺は答えた。

二人一緒に玄関を出て、自転車置き場の方に行こうとすると、
「えっ、市電じゃないの?」と聞いてくるズッキ。
「電車賃もったいないから、チャリで行こうぜ」と俺が言うと、
「だって、私電車通学だもん」とズッキが答えた。

「じゃあ、俺の後ろ乗れよ」
「わかった」

ズッキをチャリの後ろに乗せて校門を出ようとしたとき、後ろから「こらあっ!二人乗り!」と叫び声が聞こえた。
たぶん英語の光井センセイだろう。俺は構わずにスピードを上げて通りに出た。

熱風が吹きつけてきたけど、ズッキは「あー、風が気持ちいい」と言った。

1891:2015/08/25(火) 03:58:04
駅前通りに差し掛かった時には、すでに汗だくになっていた。

「で、カレー屋ってどの辺なの?」
「たぶん、この辺だと思うんだけど…」
「カレー屋なんかないじゃん」
「おっかしいなあ…。あっ、ちょっと止めて! あのお姉さんに聞いてみる!」

ズッキがそう言うので自転車を止めた。

(あれ、ここは…?)

ここは、昨日田村と出会った、「コーヒーとホームメイドパイの店ANGERME」の前だった。

綺麗なお姉さんが店の前の黒板に字を書きこんでいた。
昨日のぽっちゃりしたお姉さんではなくて、もっと痩せてて色黒のお姉さんだった。
着ている服も全然違うのだが、制服が何種類かあるのだろうか…。

<ANGERMEの綺麗なお姉さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/52u0Spo.jpg

1901:2015/08/25(火) 03:58:39
「あのー、スミマセン、この辺に『スープカレーの店スマイレージ』っていうのがあるって聞いたんですけど、知りませんか?」
と、ズッキが聞くと、
「あー、それうちのことです。どうぞどうぞ。名前が変わったのよ」と、お姉さんが屈託のない表情で答えた。

「えっ、でもカレー食べたいんですけど、『ホームメイドパイ』って…」と、躊躇するズッキを、
「大丈夫!カレーもちゃんとあるから」と、お姉さんは半ば強引に店内に押し込んだ。

慌てて自転車を止めて後を追う俺。

1911:2015/08/25(火) 03:59:07
お姉さんに案内されて、二人向かい合わせの席に座るズッキと俺だった。

「あの…、ここ昔、『フルーツケーキの店ベリーズ工房』だったところですよね?」と俺が聞くと、
「あっ、よく知ってるのね。オーナーが一緒なんですよ」とお姉さんが微笑んだ。

「そのあと、『スープカレーの店スマイレージ』になったんですか?」と俺が聞くと、横からズッキが、
「えっ、そのあと焼肉屋になってなかったっけ?」と口を挟んだ。

お姉さんはなぜかズッキを睨みつけた後、「スマイレージになって、それからアンジュルムになったのよ」と俺に言った。

1921:2015/08/25(火) 03:59:44
俺たち二人はスープカレーをオーダーした。
お姉さんがカウンターに戻ってから、俺はズッキに言った。
「この店、田村やりなぷーがバイトしてる店だぜ」

ズッキは、「あー、ここなのかー。噂には聞いてたけど」と答えてから、ぐるりと店内を見回した後、
「何かコンセプトの定まらない店だね」と、小声で俺に囁いた。
「そうだな」と俺も同意した。

「あっ、そうそう。めいめいって言えばさー…」とズッキが話し出した。
「何?」と聞き返しながら水を飲む俺。

「昨日○○クンと相合傘して帰ったんだって?」
俺は思わず水を吹き出しそうになった。

「何で知ってるの?」
「何でって…、今日の演劇部の朝練で、めいめいが嬉しそうに自分で喋ってたもん…」

1931:2015/08/25(火) 04:00:22
「あいつ、そんなことペラペラと…」と、俺が思わずこぼすと、
「いや、めいめいもペラペラ喋ったわけじゃないの。『昨日雨凄かったね』って話になった時、ついポロっと言っちゃったの。そしたらそれをりなぷーに散々からかわれて…」
と、ズッキが説明しだした。

「しょうがねえな…」
「でも、きっと嬉しかったんだよ、めいめい」
そう言って、ズッキは俺の表情を探るように見てきた。

俺が返答に窮していると、
「めいめいはきっと、○○クンのこと、好きなんだと思うな」と、ズッキが畳み掛けてきた。

1941:2015/08/25(火) 04:00:52
俺は、また水を噴きそうになった。
「いや、俺と田村は、ガキの頃からの幼馴染だからな。確かに仲はいいけど、お互いそんな気持ちはないと思うぞ」と、平静を装って言った。

とはいえ…
それが明らかに嘘だと言うのは、実は俺自身が一番よく知っていることだった。
雨の中、田村が抱きついてきたときの柔らかい体の感触を思い出して、俺は昨日、家に帰った後、2回もしていたからだった。

と、思い出している今も、ムクムクと愚息が鎌首をもたげてくるのが、正直なところだったのだ。

1951:2015/08/25(火) 04:01:28
「だけどさ、そうやってめいめいにもちょっかいかけて、里保ちゃんはどうすんの?」
「えっ?」
「里保ちゃんのこと好きなんでしょ?」
ドヤ顔のズッキだった。

「あのなあ…」俺は苦笑した。

「俺は田村のことはいいやつだと思ってるし、鞘師のことも、そう思い始めてる。そういうレベルの話なら、お前のことだって」
「私!?」と、大げさに驚いたふりをするズッキが小憎らしかった。

「うん。そうじゃなきゃ、こんなとこまで一緒にメシ食いにきたりしねえだろ」
「そうなの?」
「うん。でもそれが好きとか嫌いっていう話に関係あるのかどうかなんて、そんなこと俺には分からんけどな」

(俺、自分に嘘をついてるな)と、その時思った。

1961:2015/08/25(火) 04:02:05
そんなことを話していると、お姉さんが「お待たせしましたー」とカレーを持ってきた。
俺は正直ホッとした。この話題をいつまでも平静に続ける自信がなかったからだ。

「じゃ、食うか」
「うん。いただきまーす」

一口食って、俺たちは顔を見合わせた。

「普通…、だな」
「うん。普通…、だね」

可もなく不可もない、印象の薄い味のカレーだった。

普通のカレーを淡々と食うズッキの表情には、なかなかの味わいがあった。

「おい、一枚撮らせろ」
そういうと、俺は鞄からカメラを取り出して、有無を言わせずシャッターを切った。

「ちょっと何撮ってるのー!ひどいー!」

(使い物になるかどうかはともかく、こうやって写真も少しずつ撮っていかなきゃ)

ズッキの抗議を受け流しながら俺は思った。

1971:2015/08/25(火) 04:02:31
カレーを食い終わり、学校に戻ってきても、まだ30分以上時間が余っていた。

玄関まで来たところで、ズッキは「じゃ、私は演劇部の練習行くから、ここで」と、別れていった。

(さて、暗室にでも行って時間潰すか。いや、それより、まだ早いけど、一人でダンスの復習でもしておくか。確か多目的教室だったな…)

多目的教室に行ってドアを開けると…
まだ誰も来てないと思ったのに宮本が一人で練習していた。

<一人でダンスの練習をしていた宮本・イメージ動画>
https://youtu.be/ONTflT4Rqtk?t=1315

1981:2015/08/25(火) 04:03:08
目線が合うと、宮本は練習を止めて、こっちを見た。

俺は少し気まずくなって、「俺、後でまたくるわ」と言って、教室を出ようとしたけど、その時、
「待って!」と宮本が叫んだ。

「えっ?」と、俺が振り返ると、
「○○クン、あのさあ…、ずっと言おうと思ってたんだけどさあ…、何でそうやっていつも私のことだけ避けるわけ!? 前は仲良かったのに、もう半年も口きいてくれないし!」
怒ったような泣きそうな声で、宮本が叫んだ。

「何でって…、お前、俺なんかと話すのイヤなんだろ?」
「何言ってんの!? 意味わかんない!」

1991:2015/08/25(火) 04:04:05
いや…、意味が分からないのはこっちの方だ。

「お前さ、それは無いんじゃね? 俺が告った時、『○○クンなんか大っ嫌い、顔も見たくない』って言ったの、宮本の方じゃん」
言っててミジメさを噛み締める俺だったのだが、宮本の返事は想像を絶するものだった。

「えっ?あの…? あれ、まさか…、もしかして本気…、だったの!?」
宮本は両手で頬っぺたを抑えて突然、うろたえ始めた。

2001:2015/08/25(火) 04:04:49
「『本気か?』だって!? お前、冗談であんなこと言えると思ってんのかよ?」
思わず声を荒げる俺。

「えっ!?だって、だって…。あの日、朝から男子たちが次から次に私のこと呼び出しては、『好きだ』とか『付き合って』とか言ってきて…」
「?」
「最初のうちはちゃんとまじめに断ってたけど、10人目くらいから、『男子がみんなで示し合わせて、私のことからかって遊んでるんだ』って気がついて…」
「何!?」
「で、○○クンで15人目。あんなに仲の良かった○○クンまで私のことそんな風に馬鹿にするなんて、絶対に許せなかったんだもん!」

2011:2015/08/25(火) 04:05:30
俺は呆気にとられた。
確かにあの宿泊研修の晩、盛り上がった野郎どもの中には、「明日宮本に絶対告白する」と、息巻いていた連中もいたけれど、
俺が後日聞いた情報では、次の日に実際に告って玉砕したのは、確か俺を入れて3人のはずだったのだが…。

そういえば昨日、植村さんと話した時に、植村さんは「佳林はこの一年で10人くらいから告白された」とか言っていたから、一瞬「おや」とは思っていたのだ。
(実際は1日で15人かよ…)

そこまで考えていると、
「怒ってる…、よね?」と、宮本が恐る恐ると言った感じで、俺の目を覗き込んできた。

2021:2015/08/25(火) 04:06:06
「怒ってる…、ってゆーか、訳わかんねえ。正直困惑してる」俺が振り絞るように言うと。
「そうだよね…。怒って当然だよね…」と、宮本が泣きそうな顔をしてから、いきなり
「ごめんなさい!!」と深々と頭を下げてきた。

「いや、ちょっと待て…」
「でも、私だって、そうと知っていれば、もっと真剣に考えたもん…。ねえ、私たち、もう一度友達からやり直せないのかな…」

そう言っている途中から、宮本は涙声になってきた。
真っ赤に腫らした目からは、涙がポロポロと…。

「おい、落ち着け、宮本…」
そう言って近寄ろうとした時、教室のドアが勢いよく開いた。

2031:2015/08/25(火) 04:06:40
顔を真っ赤にして泣いている宮本と、そんな宮本に寄り添おうとしている俺。
こんなところは誰が見ても、「訳あり」にしか見えないだろう。

ドアを開けたのは誰だろうか?
俺は恐る恐る振り向いた。

そこにいたのは清水センセイだった。

清水センセイは俺と宮本を交互に見つめてから、「あら…、お取り込み中だったかしら」とクールな表情で言った。

「いえ、別に…」と言いかける俺を制して、清水センセイは、
「早くしないとみんな来ちゃうよ。じゃ、私はもう一回りしてからくるから」と、訳知り顔で言ってドアを閉じた。

2041:2015/08/25(火) 04:07:19
(清水センセイ、絶対勘違いしてるだろうな…。いや…、あながち勘違いとも言えないか…)と俺が思ってると、
宮本はポロポロと流れる涙を拭おうともせず、「ねえ、私のこと許してくれる?」と上目遣いで聞いてきた。

ここ数日、ずいぶんいろんな女の子たちの上目遣いを見てきたような気がするが…
これは桁違いに強力、(てゆーか、涙は反則だろ?)と思う俺だった。

「別に、許すも許さないもないけど…」
「けど?」
「ちょっと、写真撮らせろ」
「えっ!? 何それ? ヤダ…、こんな顔で…」

俺は鞄からカメラを取り出すと、パシャパシャと写真を撮った。

戸惑う宮本の顔が、だんだんと笑顔に変わっていく。
涙を流しながら笑う宮本の表情は、これは絶品の可愛さだった。

素晴らしい写真が撮れた手ごたえがあったけれど、(この写真は誰にも見せられないな)と俺は思った。

205名無し募集中。。。:2015/08/25(火) 06:29:46


2061:2015/08/31(月) 04:13:22
ようやく宮本が笑顔に戻ったころに、他の女の子たちがぞろぞろと教室に入ってきた。
どうも他の女の子たちはみんなで一緒にメシを食いに行ってたようだった。
(宮本…、他の女の子たちにハブにされてんじゃないのかな…)と、俺は妙な心配をせずにはいられなかった。

そして、そんな女の子たちを意に介さないように、一人で教室に入ってくる鞘師。
(鞘師は…、強いな)と、やっぱり俺は思わずにはいられなかった。

そのうち清水センセイも戻ってきて、練習が始まった。

2071:2015/08/31(月) 04:15:08
練習中、俺は宮本のことが気になって、つい何度もチラチラと見てしまった。
そのうち、何度かは宮本の方も気付いて、俺に微笑みかけてくれたりして、俺はいい気分になっていたのだが…。

練習が終わると、鞘師がまっすぐと俺の方に寄ってきて、詰問調で言った。

「一体どうしちゃったの?」
「ん?」
「何か『心ここにあらず』って感じ」
「えっ?」
「朝は結構うまく踊れてたのに、逆戻りしちゃったみたい」
「そ、そうか?」
「あのさ…、ぼんやりと練習するくらいなら、やらない方がいいかも」

まっすぐに俺の目を見つめてくる鞘師だった。

「す、すまん…」
「いや、責めるつもりはないんだけど。気持ちを集中してないと怪我とかすることもあるし…、そうなったら馬鹿らしいじゃん」
「そ、そうだな」

そんな俺と鞘師のやりとりを、清水センセイが見つめているのを感じていた。

2081:2015/08/31(月) 04:16:22
その日家に帰ってから、ベッドの上に寝転がって、俺はしばらく考え込んだ。
(ここ数日の俺はあまりに軽薄だ。いろんな女の子の間で、少しフラフラしすぎではないか?)

ズッキは「めいめいは〇○クンのことが好きなんじゃないか?」と言った。

確かに、傍から見ればそう思われても仕方ないだろう。
それに昨日雨の中で、田村が俺の腕に飛び込んできたとき、俺の中にも一種の恋愛感情が湧いてきたのは間違いない事実なのだ。

しかし俺は、ズッキと二人でメシを食っている時は、田村のことなどすっかり忘れて、ズッキとの会話を心地よく思っていたのだ。
あれだって、傍から見れば、仲良くデートしているように見えないこともないのではないか。

そして鞘師。
俺のことを守ると言い、現にそういう行動をとってくれている鞘師に対して、俺が何とも思わずにいられる訳がない。

しかし、宮本のことは全くの予想外だった。
ほんの数時間前まで、再び宮本と仲良く話せる日がくるなどあり得ないと思っていたのだ。

さっき宮本は「もう一度友達からやり直せないのかな」と言った。

(友達『から』、その先があるとでもいうのだろうか…)

2091:2015/08/31(月) 04:17:13
そんなことを考え続けていると、その晩はなかなか眠れなかった。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

次の朝、目が覚めて時計を見ると、俺は飛び起きた。
(いかん!完全に遅刻だ!)

慌ててクローゼットから制服を出そうとして、
(そうか、今日から夏休みに入ったんだっけ)と俺は気が付いた。

「夏休み中の練習は午後1時から夕方まで」と、昨日、清水センセイが一方的に決めていたのだった。
鞘師は、「午前中はやらないんですか?」と不服そうだったけど、
清水センセイは「そんなに一日中やったって、意味ないって。もっとメリハリつけないと」と、意に介していなかった。

竹内さんたちは「午前中の方が涼しくていいのにね」と、ぶつぶつ言っていたが…
俺は単に、清水センセイが早起きをしたくないだけじゃないか、と睨んでいる。

俺と鞘師の練習も、全体練習が始まる前の、12時ごろからと決めていたのだった。

お昼まではまだだいぶ時間があったが、俺は学校に行くことにした。
昨日撮ったズッキや宮本の写真を現像しておきたかったからだ。

2101:2015/08/31(月) 04:18:20
学校に着いて、暗室に入ると、中はひんやりとして心地よかった。
とはいえ、やはり夏だ。数日前に作り置きしておいた現像液の温度を測ると、基準の20℃を大きく超えていた。

現像液の温度と言うのは、高すぎると現像が一気に進んで、画質が粗くなったり、ムラができやすくなるのだ。

(さて、どうしたものか…)と、俺はしばらく考えてから、希釈現像をしてみることを思いついた。

希釈現像と言うのは、現像液を水で割り、薄めて使うやり方のことだ。冷たい水で割れば当然、温度は下がる。
しかし、薄めた分、現像する力も落ちるので、現像時間を長くしてやる必要がある。

とはいえ、一口に長くと言っても、その加減は、フィルムの種類や撮影した時の露出、現像液の種類や温度によっても全然変わってくる。

上手く嵌れば、原液の時よりも、諧調が豊かでエッジの利いた画像が得られるはずなのだが、
経験を積んでコツをつかんでないと、失敗する確率も高い。一筋縄ではいかない方法なのだ。

2111:2015/08/31(月) 04:18:51
正直言って、俺はあまりやったことのない方法だった。

何か参考になるデータはないか、と思って暗室の棚を探ると、山木さんの作ったノートが出てきた。

(確か、山木さんが得意にしていた現像法だったな…)

ページをめくると、山木さんが自分で何度も試した結果をまとめたのか、フイルムの種類や現像時間と温度の関係、
その時のネガの仕上がりなどのデータが、几帳面な字でびっしりと書き込まれていた。

(こいつは助かる…)

2121:2015/08/31(月) 04:19:18
山木さんのデータを100%信頼して、俺は迷いなく現像を行った。
出来上がったネガは、素晴らしい出来栄えのように見えた。

(とはいえ、ネガシャンってこともあるからな…)と俺は用心した。

「ネガシャン」というのは、ネガで見たときにはすごく良く見えたのに、いざ引き伸ばしてみると大したことない写真のことだ。

(よし、引き伸ばすか…)と思って、暗室の電気を赤いセーフライトに切り替えたとき、トントンと暗室のドアを叩く音が聞こえた。

(誰だろう?)

俺は「ちょっと待って!」と外に向かって叫んでから、いったん印画紙を片づけて、暗室のドアを開けた。

2131:2015/08/31(月) 04:20:05
ドアを開けると、そこに立っていたのは鞘師だった。

「お…、おっす…。どうした?」と訝しげに聞く俺に、鞘師は「やっぱりここに居た」と小さく微笑んでから、暗室の中を覗きこみ、
「わあ…、暗室の中って本当に暗いんだね…。何で赤い電気なんてついてるの?」と聞いてきた。

「赤い光だけは印画紙に感光しないんだよ。今写真の引き伸ばし始めるところだったから、つけてたんだ」と俺が答えると、
「私、引き伸ばしするところとか、見たことないよ」と鞘師が弾んだ声で言った。

「見てくか?」
「見てく!」

2141:2015/08/31(月) 04:20:33
鞘師は暗室に入ると、「涼しいね、ここ」と俺を見上げてきた。

「ところで、何か俺に用だったか?」
「あっ、うん。あのね、昨日、練習は12時ごろからにしようって言ったけど…」
「うん」
「よく考えると、それだとお昼ご飯も食べられないよね」
「それもそうだな」
「ちょっと短くなるけど、12時20分ぐらいからでどうかな?って話」
「いいよ」

(それだけを言うために、わざわざこんな時間にきたのかな?)と俺は思った。

2151:2015/08/31(月) 04:21:09
「鞘師、それならメールででも知らせてくれりゃ良かったのに」と俺が言うと
「あ、あのさ…」と鞘師は少し赤い顔で言い出した。
いや、赤い顔っていうのは、単に赤いライトが当たっているからそう見えただけかもしれないけど。

「どうした?」
「○○クン、今日お弁当とか持ってきた?」
「いや、どっかコンビニでも行って買おうと思ってたけど」
「実は今日、私、おにぎり多めに作ってきたんだけど、一緒に…どうかな?と思って…」
「えっ?」
「あっ、イヤなら別にいいんだよ…。たぶんそんなに美味しくないし…」

2161:2015/08/31(月) 04:21:42
「イヤだなんてことはないよ。ありがたく頂くけど。でも…」
「でも?」
「ちょっと意外だったわ。鞘師って、そんなイメージなかったから」
「えっ?えっ? どういうこと?」
「いや、その…、結構家庭的なんだなって」
「…」

鞘師が黙り込んでしまったので、俺も言葉が見つからなくなった。

(困ったな…)と思っていると、突然、鞘師が話題を変えるように明るい口調で話し出した。
「ねえ、それより、写真の引き伸ばし見せてよ。何の写真なの?」
「ああ、これか? これは…」

そこまで言って、俺は固まった。

これはズッキとデートしてるところの写真と、宮本が泣いているところの写真なのだ。

2171:2015/08/31(月) 04:22:17
(何かほかにネガを持っていなかったか!?)
俺の頭はフル回転したけれど、鞄の中にも暗室の棚の中にも、そんな都合のいいネガがあるわけはなかったのだ。

「ああ…。ええと、これはな…」
「何?」
「あのな、ズッキの…」
「えっ? ズッキって…、香音ちゃんのこと?」訝しげに聞く鞘師。

「お、おう…。鞘師とは中学一緒だったんだろ?」
「うん。そうだよ」
「ズッキがカレー食ってるところの写真」
「えーっ!?見たい見たい!」

鞘師の反応に一瞬、俺は胸をなでおろした。
(そうか…。鞘師とズッキは意外に仲がいいんだな。よし。ズッキの写真だけを見せよう。宮本の写真はとても見せられん)と、とっさに俺は思った。
と、同時に、そんな小ズルい計算をする自分がイヤになる俺だった。

2181:2015/08/31(月) 04:22:53
引き伸ばし機にネガをセットして投影すると、白と黒が反転したズッキの顔がイーゼルマスクに写った。

「えっ?これが香音ちゃん?」と鞘師。
「うん。ネガだからよく分からんだろ。でも、まあ見てろって…」

そう言ってから、印画紙をセットして露光を行い、現像液に浸すと、神妙な表情でカレーを食うズッキの顔がゆらゆらと浮かび上がってきた。

「わっ!すごーい!すごーい!香音ちゃんだ!面白ーい!」
予想外に無邪気にはしゃぐ鞘師を見て、実は俺は結構戸惑った。

「香音ちゃん、いい表情してるね。面白い写真だ…」
「そうか?」

俺は一瞬有頂天になりかけたけど…。

「これって、二人でカレー食べに行ったの?」
冷や水を浴びせるように鞘師が聞いてきた。

2191:2015/08/31(月) 04:23:26
「えっ、ああ、まあ、それは…」
俺がしどろもどろになりかけた時、トントンと、暗室のドアをノックする音が聞こえた。

(天の助けか!) そう思いながら俺は、「ちょっと待って!」とドアの外に向かって大声を上げた。

急いで印画紙を片づけてドアを開けると、そこにいたのは佐藤優樹だった。

「なんだ、優樹かよ。どした?」と俺が聞くと、優樹は返事もせずに暗室の中を覗きこんだ。
そして、鞘師の姿を見つけると、俺に向き直って、「兄ちゃん、やるじゃん」と、囁いた。

「ばばばば、馬鹿! 何言ってんだお前!」
「キャー! 赤くなった!赤くなった!」
「赤いのは安全灯のせいだろ馬鹿!」

そんな俺たちを、呆気にとられたような顔で鞘師は見つめていた。

2201:2015/08/31(月) 04:23:54
「あっ、鞘師、コイツはうちの近所のお寺の子で、一学年下の…」 俺がそう言いかけると、
「まーちゃんだよ!」と、優樹が勝手に話に割り込んできた。

「ま、まーちゃん!?」と、たじろぐ鞘師。
「うん。まーちゃん!」と、なぜかドヤ顔の優樹。

「おい、優樹、何しに来たんだよ? 用がないなら帰れ」と、俺が言うと、
「酷ーい! まーちゃん、兄ちゃんに言われた通り、合唱部の写真撮って持ってきたのに!」と、優樹が頬っぺたを膨らませた。

2211:2015/08/31(月) 04:24:31
「そ、そうか。じゃあ見せろ」と俺が言うと、優樹は「ハイ!」と言って、スマホの画面を俺にかざしてきた。

「こ、これは…」その写真を見て、俺は一瞬言葉を失った。
「えっ?何?」と言って覗き込んできた鞘師も、その写真を見た途端、顔を真っ赤にして黙り込んだ。

そこに写っていたのは、植村さんに歌唱指導をする菅井先生の様子だったのだが…

(体に触るどころか…、舌触ってやがる…!)

<植村さんに歌唱指導する菅井先生の様子・イメージ画像>
http://i.imgur.com/08TmX1S.jpg

2221:2015/08/31(月) 04:24:59
いくらオカマとはいえ…
ここまでやっていいものなのか。

(宮本…、合唱部辞めて大正解)と、俺が心の中で思ったとき、
「噂には聞いてたけど…、凄いね…」と、呆れたように鞘師が呟いた。

「あのな、優樹」
「なあに兄ちゃん?」
「菅井先生って、みんなにこういうことすんのか?」
「まーちゃんにはしない」
「何で?」
「歌の下手な子にだけするから」
「あのなあ…」
「でも菅井先生来てから、あーりーはすごく歌上手くなったよ」
「お前、ずいぶん上から目線じゃん(笑)」

2231:2015/08/31(月) 04:25:29
とはいえ…
確かに、植村本人も「菅井ちゃんの指導を受けたら実力がアップする」と真顔で言っていたし、
別に嫌がっている風ではなかったのだ。だとすれば俺たちが口を出す問題ではない。

「優樹、その写真、俺のスマホに送ってくれ」
「わかった」

優樹が俺に写真を転送したのを見届けてから、俺は優樹のスマホを取り上げた。
「あっ! ちょっと!何するの!まーちゃんのスマホ!」
「こっちの写真は消去するからな」
「きゃーっ!やめて!」
「悪いけどな、この写真はボツだ。これが世に出たら、菅井ちゃん叩かれるかもしれんだろ。そしたら一番困るのは植村だ」
「キャーッ!返して!キャーッ!」

優樹のキンキン声に耳をふさぐ鞘師。

2241:2015/08/31(月) 04:25:57

「酷い!兄ちゃん!勝手にまーちゃんの写真消すなんて最低!」と、優樹は俺に抗議した。
「あのな…、何でもかんでも撮ればいいってもんじゃないんだぞ」
「何でもいいから撮ってこい、って自分で言ったくせに!」

確かにそう言ったのは俺の方だったのだが…

「まあ…、また別なの撮ってこいよ」
「もういい!知らない!」
「でも優樹、写真の構図とかはすごく上手かったぞ」
「そんな見え透いたお世辞言って…」

すると、鞘師が助け舟を出すつもりなのか
「うん。本当に上手かった。表情もよく出てたし」と優樹に言った。

「ホント?」と鞘師を見上げる優樹。

2251:2015/08/31(月) 04:26:30
優樹はしばらく鞘師の顔をまじまじと見つめてから、
「じゃあいいや。まーちゃん、合唱部のみんなとお昼ご飯食べに行くから戻る!」と言うと、暗室を飛び出していった。

時計を見ると、もうすぐ12時になるところだった。

「鞘師、俺たちもそろそろメシにするか?」
「そだね」

俺が薬品を片づけだすと、鞘師が「ところで、優樹ちゃんの写真消す前に、何で自分のスマホに転送したの?」と聞いてきた。

俺は一瞬たじろいだ。
(植村の舌を触る妄想で、夜のおかずにするため)なんて、正直に言えるわけがなかった。

「ま、まあ…、見ようによっては確かにいい写真だったし…、植村本人には渡しておこうかと思って…」
「そうなんだ」

2261:2015/08/31(月) 04:27:06
薬品を片づけ終わり、俺たちはメシにすることにした。
暗室の中は涼しくていいのだが、さすがに薬品の臭いのするところでは食欲が湧かない。

俺と鞘師は手近な空き教室でメシを食うことにした。

鞄の中から、いそいそとお握りの包みを取り出した鞘師は、
「口に合うかどうか、分からないけど…」と、赤い顔で俺を見上げてきた。

鞘師の作ってきたお握りは…
正直言って、ちょっと大きすぎたし、形も不恰好で不揃いだった。

(きっとこういうの、あんまり作ったことないんだろうな…。でも、この手で一生懸命握ってくれたんだな…)
俺は思わず鞘師の両手を見つめた。

「えっと…、どうかしたの?」と怪訝そうな顔の鞘師。
俺は慌てて、「んじゃ、いただきます」と、そのうちの一つをつまんだ。

2271:2015/08/31(月) 04:27:29
俺がおにぎりを食べるのを、鞘師は不安そうな表情で見てから、「どう?」と聞いてきた。

正直言って…
塩味が足りなすぎる。
具のおかかも片方に寄り過ぎいて、こぼれてきそうだった。

俺はそんな気持ちを表情に出さないように頑張りながら、「うん、おいしいよ」と答えた。

「ホント?」
鞘師の表情がパッと明るく花開いた。

2281:2015/08/31(月) 04:28:00
「でも、鞘師は何でわざわざお握りなんかつくってきてくれたの?」と俺は聞いた。

「かえって迷惑だったかな?」と鞘師。
「いや、すごくうれしいけどさ」と俺。

「ほら、真野センセイに…」
「真野ちゃんに?」
「『○○クンがいい写真撮れるように、私もできることは手伝う』とか、私偉そうに言っちゃったじゃん」
「あー…」
「でも、よく考えたらさ…、私に手伝えることなんか何もないし…」
「そんなこと鞘師が気にせんでも…」
「せめてお弁当でも、って思ったんだけど…、おにぎりくらいしか作れなかったんだよね。ごめん」

俺は目の前のコイツを抱きしめたい衝動に駆られた。

2291:2015/08/31(月) 04:28:21
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
鞘師は「さあ、あんまり時間ないから、早く食べて、練習しよう」と俺を促した。
「お、おう…」と俺も応じて、おにぎりをもう一個腹に詰め込んだ。

メシを食い終わって、練習を始めると、鞘師の要求はいつもよりも厳しかった。
「こっちも写真に協力するんだから、○○クンももっと気合入れてダンスの練習してよね」と、
鞘師は冗談とも本気ともつかない顔で俺に言った。

2301:2015/08/31(月) 04:28:45
二人きりの練習は瞬く間に過ぎ…、
練習が一段落したところで、俺は鞘師に聞いた。

「なあ鞘師…」
「何?」
「俺少しはうまくなってるのかな?」
「…まだ始めたばかりじゃない。焦ることないって」
「だけど、大会なんてすぐだろ。足を引っ張るだけじゃなあ…」
「…やっぱり、ダンス部辞めたいの?」
「そんなことないけど」
「じゃあ、そういうこと言わないの」

2311:2015/08/31(月) 04:29:17
まるで子供をあやす母親のように俺に言う鞘師の態度に、
俺はちょっと安心して、軽口を叩きたくなった。

「でも俺、自分のことはわからんけど、上手い人のすごさはちょっとずつ分かってきたぞ」
「へえ、どううこと?」
「上手い人って、軸がブレないよな…。鞘師もそうだけど、清水センセイは凄いな」
「あっ、そう思う?」
「うん。それと何ていうか…、清水センセイのダンスは生々しくて…」
「えっ?『生々しい』?」
「うん。うまく言えないんだけど、動きがエロいって言うのか…、清水センセイのダンスを見てるとすごくエッチな気分になる…」

2321:2015/08/31(月) 04:29:54
鞘師の表情が固まった。
(しまった!調子に乗りすぎたか…)と俺は後悔した。
何て言い訳しようか、と俺が焦っていると、

「やっぱりそういうのってあるのかな…」と、鞘師が真っ赤な顔をしてつぶやいた。

「すまん、何かスケベな話して」
「いや、実は私も薄々感じてはいたんだ。清水先生にはあって、私には決定的に足りない何かがあるって…」
「えっ?」

そこまで言うと、また鞘師は黙り込んだ。

「いや、変なこと言って、本当にゴメン」と、俺が慌てて言うと、
「いいよ。別に気にしてないから。それより、もうすぐ1時になるから、休憩しようか」
と、鞘師は変に取り繕ったような笑顔を見せた。

2331:2015/08/31(月) 04:30:24
1時の全体練習開始まで、10分くらい休み時間があった。
俺は今のうちに、合唱部が練習している音楽室に行って、
植村に例の優樹が撮った写真を渡しておこうと思った。

まあ、本当はそんなものをわざわざ渡す必要もなかったのだけど、
さっき鞘師に「植村本人に渡す」と言ってしまった以上、
何かの拍子に渡してないことがバレたら、変に勘ぐられるんじゃないかとか、
まあ、童貞特有の被害妄想があったからなのだが…

2341:2015/08/31(月) 04:31:29
音楽室に行くと、ちょうど合唱部も休み時間だったのか、人影はまばらだった。
俺は中を覗きこんで、まず優樹がいないのを確認すると、少しホッとした。

「あっ、○○君じゃん。何か用?」
後ろから話しかけられて振り向くと、同じクラスの小田さくらが立っていた。

「お、おう、小田か。そういえば、お前も合唱部だったっけ」
「そうだよ」と、ニコニコ笑う小田。

俺は周りを確認すると、思わず声を落として、「あのさ、植村いる?」と聞いた。

小田は一瞬、俺を馬鹿にしたように目を細めて、「ふーん…」と言った。

「『ふーん…』って、何だよ」
「はいはい。ちょっと待ってね」と言うと小田は、いきなり、「植村さーん!」と大声を上げた。

小田に呼ばれて、教室の奥の方から出てきた植村は、
「えっ、○○クンじゃん、何?」
と、ちょっとクールな表情で聞いてきた。

「あのな、実は…」
俺は、優樹が撮った例の写真について説明しながら、スマホの画面を植村に見せた。

怒るかな、と思ったけど、予想に反して、植村は写真を見ると、
「あはははは」と、豪快に笑い出した。

2351:2015/08/31(月) 04:31:54
「あははは。まさきちゃん、いつ撮ったんだろ?」
植村は手を叩いて爆笑した。

「あいつ、こんな写真撮ってきて…。すまんな。この写真はボツにするから。一応報告に来ただけ」
「えっ?何でボツにしちゃうの? 面白いじゃん」
「えっ?」

あっけらかんとした植村の返事に、俺の方があっけにとられてしまった。

2361:2015/08/31(月) 04:32:15
「私は別にいいよ。面白いじゃん」と植村は言った。
「そ、そうか? 確かに菅井ちゃんの表情もいいし、面白い写真ではあるんだが…」
「使おうよ」
「でもさ、このレッスン見たら、セクハラって思う人もいるんじゃないか?」
「えーっ?そうなの?」
「うん。それで問題になったりしたら、合唱部にも迷惑かかるんじゃないかと思って…」

「そうかな…?」
あまり納得してない様子の植村だった。

「うん。たぶんそう思う」
俺がそう断定すると、植村は思いもかけないことを言い出した。

2371:2015/08/31(月) 04:32:49
「なんだ。せっかく展覧会の写真に出してもらえると思ったのに。じゃあさ、
代わりに○○クンが責任とって、私の写真撮って展覧会に出してよ。そしたら許したげる」

そう言って、小悪魔のように俺を見上げる植村の表情に一瞬ドキリとした。

「いや…、そんなのはお安い用だけど…」
「じゃあ、今撮ってよ」
「スマン…。今カメラ、暗室に置いてきちゃって…」
完全に予想外の展開に、俺は焦りまくった。

「あー、ダメだなあ。写真部員ならカメラぐらいいつも持ち歩くんだぞ」と、
俺をからかうように植村は言った。

「す、すまん」
「それじゃ練習何時に終わるの? その後でいいよ」

2381:2015/08/31(月) 04:33:12
植村とそんな話をしていて、ふと時計を見上げると、もうすぐ1時になる寸前だった。

「やばい、俺戻らんと」
「うん。じゃあ後でね」

植村と別れてダッシュで練習場所に戻ると、すでに全員集まっていて、
清水センセイが話を始めている最中だった。

「あら、遅いじゃない」と清水センセイ。
「す、すみません」慌てて謝る俺。

そんな俺を咎めるような目で見つめている鞘師と、
ニコニコと楽しそうな目で見つめている宮本…。

2391:2015/08/31(月) 04:33:35
そのあとの数時間…
俺は雑念を振り払って、練習に集中した。

この間みたいに、鞘師に『心ここにあらず』なんて、見抜かれてはたまらない。

そんな俺を見て、
「あら、結構うまくなってきたじゃない」と清水センセイが微笑みかけてきた。

「そうですか?」
俺が思わず笑顔で聞き返すと、横から鞘師が
「いえ、まだまだ全然だと思います。○○君には、こんなレベルで満足されちゃ困ります」
と、冷ややかな口調で割り込んできた。

「えっ、まあ、それはそうだけど…」
鞘師に気圧された感じの清水センセイだった。

俺もまた、シュンとなった。

2401:2015/08/31(月) 04:34:00
その日の練習が終わると、清水センセイが、
「ところでみんな、明日の練習は休みにするから」と突然言い出した。

顔を見合わせて、ざわざわとする女の子たち。

「先生、明日は日曜でもないのに、何でですか?」と高木さんが聞くと、
「だって、日曜だと千奈美が休めないし…」と、清水センセイは独り言みたいに言った。

女の子たちはキョトンとしていたけど、俺にはすぐにピンときた。
(ははあ…。要するにセンセイや姉ちゃんたち、今晩飲む気なんだな…。それで明日は学校に来たくない、ってことか…)

正直、俺は少し呆れた。

2411:2015/08/31(月) 04:34:31
清水センセイの一方的な宣言で、練習はお開きになった。

鞘師が何か言いたそうな目で俺を見ていたから、近寄ろうとすると、
「○○クン!」と、俺は後ろから呼び止められた。

宮本だった。

「何?」と、俺は、鞘師の視線を気にしながら聞いたけど、
宮本はそんな俺の様子に気づいた風でもなく、
「あのね、今度の夏祭りなんだけど…」と、早口で話し出した。

その時、教室のドアが開いて、いきなり植村が入ってきた。

植村はまっすぐに俺の方に進んでくると、
「ダンス部練習終わった? こっちも終わったから来たよ。ねえ、どこで写真撮ってくれるの?」
と、ニコニコと微笑みながら聞いてきた。

瞬間、表情を凍りつかせる宮本。
鞘師の方は…、怖くて見られなかった俺だった。

2421:2015/08/31(月) 04:34:55
植村は宮本に気付くと、
「りんかじゃん! あっ、もしかして、何か話してる途中だった? ごめんごめん、割り込んじゃって。
先にそっちの話済ませちゃってよ」と、屈託のない笑顔で言った。

宮本はぎこちない作り笑いを浮かべながら、
「ううん。もう話済んだから、いいよ。うえむー」と言い出すと、
「じゃあね…」と、足早に教室を出て行ってしまった。

「ゴホン」と、わざとらしく咳払いをして、ゆっくり教室を出ていく鞘師。

ほかの女の子たちは、何事かと、好奇の視線でこちらを見つめている。

「ねえ、ここで撮るの?」と、何も気づかない様子で植村が首をかしげて聞いてきた。

「い、いや…。ちょっと近所の公園にでも行こうか」と、俺は植村を促した。

2431:2015/08/31(月) 04:35:20
「うん。いいよ」と、
植村はニッコリ笑って、教室の外に向かって歩き出した。

女の子たちの視線から逃れることができて、俺は一瞬ホッとしたけど、
教室の外に一歩出た途端、植村は笑顔を消して、
「ゴメン! 私、空気とか全然読めなくて! なんか悪いことしたみたいだよね?」
と、突然俺に謝りだした。

お気楽に見えたけど、植村だって何も気づいてないなんてことは、なかったのだ。

2441:2015/08/31(月) 04:35:43

「えっ、いや…、別に植村が謝るようなこと、何もないと思うけど」
「でも、りんかも行っちゃったし、鞘師さんも何か睨んでたし…」
「そ、そうか?」
「うん。〇○クン、りんかと何か話してる途中だったんでしょ? 何の話だったの?」
「いや…、俺もよくわからん」

何の話かはわからんけど、宮本が怒って帰ったのは事実なんだろう。
それに、確かに鞘師も怒っていたのか、呆れていたのか…。
もしかしたら、愛想を尽かされてしまったのかもしれない。

でも、そんなことを植村に言ったって仕方あるまい。
悪いとすれば、俺なのだ。

2451:2015/08/31(月) 04:36:09
そんなことを考えていると、
「なんか大変そうだね。女の中に男が一人って…」と植村が言った。

「う、うん。まあな…」
俺は言葉を濁した。

「でも、この間さあ、『〇○クンは佳林狙いなの?』とか聞いたけど…」
「ん?」
「なんかさっきは、むしろりんかの方こそ〇○クンに気があるみたいに見えたな」
「おい、待て…」
「りんかもハッキリしたらいいのに。私、りんかに言ってやろうか?」
「言うって、何を?」
「『愛してるわ』と言え、って」

植村が真顔で俺の目を覗き込んできた。

2461:2015/08/31(月) 04:36:32
「おいおい、いきなり『愛してる』とか、飛躍しすぎだろ…」
俺は慌てた。

「そうかな?でも…」
「でも?」
「そういうことって、はっきり口に出さなきゃ…」
「出さなきゃ?」
「すごいやばい、っていうのか…」
「ちょっと植村、お前何言ってるか分からない」
「あー、もう! 私国語苦手だから、うまく言えないよ!」

公園に向かって、俺の少し前を歩いていた植村が、
そう言うと、ようやく笑顔を見せて振りむいた。

「おっ、いただき!」
俺は思わずカメラのシャッターを切った。

<その時の植村・イメージ画像>
http://i.imgur.com/z6pfa4E.jpg

2471:2015/08/31(月) 04:38:01
>>245>>246の間にこれが抜けてた

<その時の俺の脳内イメージソング>
https://www.youtube.com/watch?v=rh8eeteWbHc

2481:2015/08/31(月) 04:38:31
俺たちは、そこからすぐの公園に移動して、何枚も写真を撮った。
ファインダーを通して見る植村は、可愛いというのか美しいというのか、
それはまあ、最高のモデルだった。

「しかし綺麗だな、植村…」
そんな言葉が、ため息とともに、ごく自然に何度も口をついて出た。

そのたびに植村は「あはははは。褒めすぎだよ」と笑った。

(少し馴れ馴れしいな、俺)と思ったけど、
それでもやはり、「うーん、綺麗だわ…」と、またつぶやいてしまう俺だった。

しばらく撮り続けた後、
「それじゃ、もういいかな? 写真できたら頂戴ね」と植村が微笑んだ。
「お、おう」と俺が返事をすると、植村は「じゃあね」と、電停の方に駆けていった。

2491:2015/08/31(月) 04:39:49
余韻に浸りながら植村の後ろ姿を見送っていると、
「呆れた…。本っ当に誰にでも『綺麗だ』とか言うんだね」と、後ろから声がした。

「えっ?」
慌てて振り向くと、そこに田村が腕組みをして仁王立ちしていた。

「な、なんだ…、めいかよ。見てたのか?」
「見てたのか、じゃないわよ! あー、もう鼻の下伸ばしちゃって…、見てらんなかったわよ!」

早口でまくし立ててくる田村に対して、俺は必死に言葉を探した。

「でもめい、実際植村綺麗だったろ?」
「そりゃあ、そうだけど…」
「それにな、俺は部活のために写真撮ってるんだ。撮るためならたとえ少々のブスにだって、
『綺麗だ』とか褒めて、気分よくポーズしてもらわんと、作品なんかできんだろ」
「そんなこと言って誤魔化して…! あー、もう、やっぱり頼むのやめようかな…?」

口をとがらせて俺を見上げる田村に、
「『頼む』って何を? 何か俺に用事でもあったの?」
と、俺は聞き返した。

2501:2015/08/31(月) 04:40:11
「うーん…」と、田村は言いよどんだ。

「まあ、座ろうぜ」と俺は言うと、公園のベンチに腰を下ろした。
少し遅れて、田村が俺の横に並んで座った。

「で、何の用?」
「実はね…、今練習してる演劇なんだけど…」
「うん」
「男の子とデートするシーンがあるんだけどさ…、めい、男の子とデートなんてしたことないから…、
うまく演じられなくて、失敗ばかりして…」
「そなの?」
「そしたら須藤さんが、『誰でもいいから男の子とデートしてこい。○○クンでいいんじゃないの?』って」
「『俺でいい』、だと…?」
「めいじゃなくて、須藤さんにそう言われたの!」
と、田村は耳まで赤くして、怒鳴った。

2511:2015/08/31(月) 04:40:35

「そりゃまあ…、須藤さんにそう言われたんなら、仕方ねえな…」
俺は照れくさくなって、田村と視線も合わせずに答えると、
「あのね、頼んどいてこう言うのも何だけど、めいだって仕方なくなんだからね!」
と、田村は口をとがらせた。

「須藤さんは、『一緒に花火大会見てこい』って。今度の夏祭りの…」
「ん、ああ…。分かったよ」と俺は返事をした。

そういえば、どこかで何か夏祭りの話を聞いたような気もするのだが、思い出せなかった。

2521:2015/08/31(月) 04:40:59
これから、例のANGERMEにバイトに行くという田村とは、その場で別れ、
俺は一人で学校に戻った。

今日のうちに、さっきの植村を撮ったフィルムを現像しておきたかったのだ。

誰もいない暗室で、フィルム現像をし終えると、夕方を通り過ぎて、夜になってしまった。

仕上がったネガは満足のいく出来栄えで、俺はすぐに引く伸ばしもしたかったけど、
さすがにそれは、今日は時間的に無理そうだ。それに少々腹も減ってきた。

(今日引き伸ばせなかった宮本の写真と合わせて、また後日にしよう)
と、俺は思った。

宮本と言えば、さっき何か俺に言いたそうにしていたけど、何か用でもあったのかな…。
そんなことを考えながら、俺は暗室の後片付けを済ませて、一人でチャリに乗って家に向かった。

2531:2015/08/31(月) 04:41:16
家の前は、電気も点いておらず、真っ暗だった。
「誰もいないのか?」と一瞬考えてから、
そういや、両親が今日から旅行に出かけていて、しばらく不在になることを思い出した。

それにさっきの清水センセイの口ぶりだと、千奈美姉ちゃんは、きっと今日、
センセイたちと飲み会なのだろう。帰りは遅くなるに違いない。

「自分でメシを作らなきゃな…」と考えながら、俺は家のカギを開けた。

2541:2015/09/07(月) 04:22:50
腹が減ってはいるものの、自分でメシを作ることを考えると、やはり億劫だった。
(コンビニにでも行こうかな…、いや、金がもったいないな)

そんなことを考えてダラダラしていると、どんどん時間が過ぎていった。

(もういいや。カップ麺でも食おう。台所の収納の中にあったよな)
部屋を出て、台所に向かおうとしたその時、玄関の方からガラガラと扉を開く音と、
ガヤガヤとした話し声が聞こえてきた。

(何だろう?)
見に行くと、千奈美姉ちゃんと嗣永、清水の両センセイ、須藤さん、
それに、背の高いお姉さんと、金髪のスリムなお姉さん…の、どちらも初めて見るけど、
すごい美人の2人…、全部で6人がぞろぞろと家に入ってくるところだった。

「飲み会やってたんじゃないの?」と俺が聞くと

从*´∇`)<うん。うちで二次会やることなった!

と、姉ちゃんが笑った。

2551:2015/09/07(月) 04:23:44
「うわー!キミ、ちいの弟さんなんだー、そっくりじゃん!」と、
金髪のお姉さんが俺を見て叫んだ。

「あっ、どうも」と俺が言うと、
「私は雅。ミヤって呼んでいいよ。こっちは熊井ちゃん」と、そのお姉さんがニコニコと笑った。

結構なテンションの高さに、
(ちょっと酔ってるのかな)と俺は思った。

嗣永センセイは俺を見ると、「よっ!邪魔するよ」と言って、笑った。

俺は嗣永センセイに聞いてみた。
「あの、この間見せてもらった写真に写っていた、赤いエプロンの人はいないんですか?」
「えっ、ちゃんりー? ああ、あの子だけ、今日は最初から来なかったんだ」

すると、清水センセイが
「えっ、ちゃんの話? 何で〇○クンがちゃんのこと知ってるの?」と、話に割り込んできた。
「この間、写真見せたら『一番かわいい』って、ちゃんりーを指さして…」と嗣永センセイ。

清水センセイも嗣永センセイも結構酔っぱらってるような雰囲気だった。
こんなところにいつまでもいるのは危険すぎる。

カップ麺のことは諦めて、部屋に戻ろうとしたとき、

从*´∇`)<あっ、焼酎買うの忘れた! ちょっとアンタ! おつかい行ってきてくれない?

と、姉ちゃんが俺を呼び止めた。

2561:2015/09/07(月) 04:24:10

「えっ、カンベンしてくれよ…」と俺が断ると、

从*´∇`)<いいじゃん、お小遣いあげるから、頼むよ!

と姉ちゃんが言った。

小遣いをくれるというなら、まあ行ってやってもいいのだが…
その時、嗣永センセイと目があった。

「やっぱ姉ちゃん、ダメだよ。未成年が酒なんて買いに行ったらまずいだろ」
と、俺は慌てて断ったけど、

「別に、いんじゃね?」と嗣永センセイ。
「うん。いいよね」と清水センセイ。

从*´∇`)<ほら、教師が二人ともいいって言ってるんだから、買ってきてよ!

と、俺は姉ちゃんに押し切られた。

2571:2015/09/07(月) 04:24:31
从*´∇`)<じゃあ、大五郎のペットボトルと、生ハムと…

千奈美姉ちゃんが言い出すと、
「私はさきいか!」
「私は抹茶アイス!」
と、あちこちから声が上がった。

俺は「はいはい」と、言いながら紙にメモをとって、家を出た。

2581:2015/09/07(月) 04:25:22
俺は近所のコンビニに向かって歩いて行った。

そのコンビニはいつも、やる気のないおじさん店長がレジにいて、
俺が未成年と知ってはいても、何にも言わずに酒を売ってくれるのだ。
だから俺は両親や姉ちゃんから、たまに酒のおつかいを頼まれるとここにくるのだ。
まあ、田舎にはよくあることだ。

そのコンビニに入った途端、

「いらっしゃいませー! ただいま、からあげクン揚げ立てでーす!」
と、いきなりかわいい女の子の声が聞こえてきて、俺はびっくりした。

レジを見ると、見たことのないお姉さんが、こちらを見てニコニコしていた。

<コンビニのお姉さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/4Ma9CRK.jpg

2591:2015/09/07(月) 04:25:57
俺はメモを見ながら、頼まれた品物を探して、かごに入れていった。

全部集めてレジに持って行くと、お姉さんがバーコードで商品を読み取り始めた。
大五郎のペットボトルにバーコードリーダーをかざした時、

「年齢確認が必要な商品です」と、電子音声がレジから聞こえてきた。

俺が何の気なしにタッチパネルを押そうとしたとき、
「ちょっと待って! キミ、高校生じゃないの?」と、
お姉さんが、訝しげな顔つきで聞いてきた。

「はい?」と俺。
「はいじゃないが」とお姉さん。

2601:2015/09/07(月) 04:26:44
(まいったな…)と、俺が思ってると、
「やっぱり君、高校生なんでしょ? ダメじゃない、お酒なんか」と、
お姉さんが咎めるように言った。

「いや、俺が飲むわけじゃなくて、家族に頼まれて…」と俺が答えると、
「あのね、たとえおつかいでも、未成年には売っちゃダメって決まってるんだよ」
と、お姉さんが、今度は諭すように言ってきた。

「でも、いつもここの店長さん、売ってくれますよ」
「えっ、パパが? 本当? しょうがないなあ…」
呆れたような口調だった。

「『パパ』って、お姉さん、ここの家の娘さんなんですか? 初めて見たけど」
「うん。普段は東京の学校に通ってて、今はたまたま帰省中だから、仕事手伝ってたの」
「あのー、都会の人には分からないかもしれないけど、
この辺じゃ、お酒のおつかいなんて、普通のことなんっすよ」

俺は柔らかくいったつもりだったけど、その一言にお姉さんはカチンときたようだった。

「あのさ…、キミ、どこの高校なの?」

2611:2015/09/07(月) 04:27:16
何か面倒くさい話になりそうだった。
逃げようか、と一瞬思ったけど、今さらそれもカッコ悪すぎる…。

「××高校ですけど…」と、俺が答えると、
「××高って、愛佳の学校じゃん」と、お姉さんはつぶやいた。

(えっ、愛佳って…、まさか…)
と、考える間もなく、いきなりお姉さんが携帯電話をかけ出した。

「ちょっと愛佳! すぐ来てくれる? 愛佳のところの生徒が、まいにお酒売れって…」

そんな成り行きに、俺が呆気にとられていると、それから10秒も経たないうちに、
店の奥の従業員用の通路のドアが開いて、
「ごるぁーっ!」と、光井センセイが怒鳴り込んできた。

2621:2015/09/07(月) 04:27:43
「高校生のくせに酒だとっ!? お前か!? お前か!?」
すごい勢いで、光井センセイが俺に詰め寄ってきた。

「ちょっ、センセイ、待って…」
「あっ、○○じゃねえか!? この野郎! 昨日二人乗りして逃げただろっ!?」
俺の胸倉をつかんで、にじり寄る光井センセイだった。
「ご、ごめんなさい、セ、センセイ、苦しいよ…。ちょっと離して…」
「うるさいっ!」

そんな俺を「いい気味」、とでもいいたげな顔で、お姉さんが見つめていた。

2631:2015/09/07(月) 04:28:13
ようやく手を放してくれた光井センセイに、
「な、何でセンセイがこんなところにいるんですか?」と問いかけると、
「何で、じゃねえだろ」と、俺は頭を小突かれた。

光井センセイの代わりに、お姉さんが、
「愛佳はうちに下宿してるんだよ」と、勝ち誇ったような表情で言った。

うちの近所にこんな鬼門があったとは…。

そう思っていると、
「呆れた…。こんな大きなペットボトルの焼酎、一人で飲むつもりなだったの?」
と、光井センセイがかごの中を覗きこんで言った。

「だーかーらー、俺が飲むんじゃなくて、おつかいで仕方なく来たの!
てゆーか、嗣永センセイや清水センセイも、今俺の家にいて、
うちの姉ちゃんたちと宴会やってるの! いわば俺はセンセイたちに頼まれて、
仕方なく、酒を買いに来たようなもんなんですよ!」

2641:2015/09/07(月) 04:28:43
俺は必死に弁明したけど、光井センセイは、
「そんなテキトーな出まかせ言って、言い逃れしようとしてるんじゃないでしょうね!?」
と、聞く耳を持たなかった。

「だったら電話して確かめりゃいいでしょ!?」と俺が聞くと、
「嘘だったら承知しないわよ」と言って、光井センセイは電話をかけ出した。

「あっ、嗣永先生? 光井です―。あのね、お宅のクラスの○○クンが…」

光井センセイが電話で話すのを、俺は聞き耳を立てて聞いたけど、向こうの声は聞こえなかった。

しばらく話をして電話を切った光井センセイは、
「嗣永先生も清水先生も、『そんなの知らない』って言ってたわよ」
と、冷たい表情で言った。

(あの二人…、鬼だ…)
と俺は思った。

2651:2015/09/07(月) 04:29:15
「いや!確かに、あの2人は俺の家に!」と、俺は叫んだ。

光井センセイは「うん。確かに○○の家にいるとは言うてたな。でも、お酒なんか頼んでないってさ」
と、クールな表情を変えずに言った。

「ひ、酷い…」
愕然とする俺に追い打ちをかけるように、光井センセイは、
「こりゃ停学かな…?」と脅かすように言ってきた。

すると、レジのお姉さんが、
「ねえ、愛佳…? それはちょっとかわいそうじゃない? 許してあげたら?」と、助け舟を出してきた。

「まあ、舞がそう言うなら…」と光井センセイ。

俺が「舞さんって言うんですか? きれいな方ですね」と慌ててお世辞を言うと、
「こらあっ!調子乗んなよ!」と、また光井センセイが怒鳴った。

舞さんが俺を見てクスリと笑った。

2661:2015/09/07(月) 04:29:51
「じゃあ、今回だけは許したるから、もう二度と酒なんか買おうとしちゃアカンよ」
と、光井センセイが俺を睨んだ。

俺は「は、はい」と答えてから、あらためて酒以外の買い物を済ませ、
そそくさと店を出ようとした。

すると、光井センセイが、
「あっ、これウチからの差し入れや。嗣永センセイたちに渡したって」
と、レジに置いたままの大五郎を袋に入れると、俺に突き出してきた。

「えっ?」と俺が驚くと、
「○○は飲んだらアカンよ!」と、凄む光井センセイ。

俺は袋を受け取りつつ、
「あー、だからみっついー好きだわ! 愛してるよ!」と軽口を叩いて、
走って店を飛び出した。

「だから、調子乗んなって言ってるやろ!」と、
光井センセイの叫び声が背中から聞こえてきた。

2671:2015/09/07(月) 04:30:24
走って家に向かいながら俺は思った。

光井センセイは、嗣永センセイや清水センセイが、本当は俺に酒を買わせるのを黙認してたことなど、
最初からお見通しだったのだろう。分かった上で、一応俺にもお灸を据えようと思ったのだろう。

光井センセイのそういうところは結構好きだ。

それはいい。
しかし、許せないのは嗣永センセイと清水センセイだ。

一体、どうしてくれようか…。
そう思いながら家に着いて玄関を開けると、

从*´∇`)<何やってたの? 遅いー!

と、姉ちゃんが飛び出してきて、出鼻をくじかれた。

「あ、あのなあ…」と反論しようとすると、嗣永センセイたちもぞろぞろと玄関にやってきた。

俺が口を開くよりも早く、
「みっついーに捕まるなんて、要領悪すぎ」と、嗣永センセイ。
「うん。どん臭すぎるよね…」と清水センセイ。

呆気にとられて二の句が継げずにいる俺に、

从*´∇`)<いいから早く家に入ってよ

と、姉ちゃんが言った。

2681:2015/09/07(月) 04:30:50

「酷えよ、センセイたち!」
俺が大声でそう言いかけたとき、
「ねっ、男の子なんだから、小っちゃなことで怒んないの。そんなことより、こっちおいでよ」
と、いきなり雅さんが俺の腕をつかんで、ぐいぐいと居間の方に連れて行った。

「そうそう」と清水センセイ。
「うんうん」と嗣永センセイ。

須藤さんは「ほら、さっきピザ届いたところだから、○○クンも食べなよ」と、
皿にとりわけて、俺に差し出してきた。

そういえば、すごく腹が減っていた。

「じゃあ…、いただきます」と俺はピザを食いだした。
こんなところにいつまでもいるのは危険すぎる。
俺はさっさと食って、自分の部屋に戻るつもりだった。

ふと見ると、熊井さんはピザ屋の持ってきたチラシを熟読中だった。

2691:2015/09/07(月) 04:31:22
その時、雅さんが、「○○クン、何か飲む?」と聞いてきたので、
俺は「あっ、それじゃウーロン茶お願いします」と答えながら、残りのピザを食っていた。

「ハイ、お待たせ―」と、雅さんが差し出してきたグラスに口をつけて、
俺は噴き出しそうになった。

「ちょっ、雅さん! これ、焼酎入ってるんじゃ…!?」
「えっ、薄すぎた?」
「いや、無茶苦茶濃いんですけど…」

「まあ、ちょっとくらいいいじゃん」と言う須藤さんに、
「いやいや、俺まだ高校生ですから…」と答えかけると、

「別に、いんじゃね?」と嗣永センセイ。
「うん。いいよね」と清水センセイ。

从*´∇`)<ほら、教師が二人ともいいって言ってるんだから、飲みなよ!

と、俺は姉ちゃんに押し切られた。

熊井さんはまだチラシを熟読中だった。

2701:2015/09/07(月) 04:32:08
从*´∇`)<そんなことよりアンタ、私に内緒でダンス部なんかに入ってたんだって?

と、姉ちゃんが言い出した。
それは姉ちゃんに報告する義務があったのだろうか…。

嗣永センセイは、「んでダンス部ってどうなの?うまくいってるの?」と、
さきいかをつまみながら、清水センセイに聞いた。

清水センセイが「うん。まあそれなりに上手いやつもいるし…」と言うと、
「鞘師だっけ? あと佳林ちゃんも上手いの?」と嗣永センセイが聞き返した。

俺は思わず姉ちゃんをシカトして、2人のセンセイの会話に耳を傾けた。

「鞘師はねえ…、確かに技術は凄いんだけどさ。何ていうのか、色気が足りないっていうのか、
あれは男を知った方がうまくなると思うんだけどなあ」

清水センセイも結構酔っているのだろうか? 大胆な放言に、俺はドキドキしてきた。

「ふーん。佳林ちゃんは?」
「うん。そこいくと佳林ちゃんの方が色気はあるかな。あの子はもう経験してるかもね…」

俺は焼酎を噴きだした。

从*´∇`)<ちょっとアンタ! 何やってんの!

と、姉ちゃんが叫んだけど、俺の耳には入ってこなかった。

(宮本が経験済み!? そんな馬鹿な!?)

動揺する俺に追い打ちをかけるように、
「あー、そうかもねー」と、ごく当たり前のように嗣永センセイが相槌を打った。

2711:2015/09/07(月) 04:32:48

(まさかそんな!?まさかそんな!?)
俺が心の中で叫び続けていると、突然清水センセイが俺に向かって言い出した。

「そんなことより〇○クンさあ、鞘師を好きなの?それとも佳林ちゃんを好きなの?
毎日鞘師とラブラブで練習してるかと思ったら、昨日は佳林ちゃん泣かせてたしさあ…」

从*´∇`)<えっ!?何それ!?何それ!?

と、食いつく千奈美姉ちゃん。

「そ、そんな…」と俺が答えるよりも早く、嗣永センセイが、
「えっ○○クン、アンタ、ズッキと付き合ってたんじゃないの?」と、俺の袖を引っ張った。

「い、いや」と弁解しようとしたけれど、今度は須藤さんが、
「ちょっと待った! 『○○クンがめいめいのこと好きみたい』って、りなぷーに聞いたから、
せっかくデートのお膳立てしてやったのに、一体どうなってんのよ?」
と、俺に詰め寄ってきた。

興味津々という顔で俺を見ている雅さん。熊井さんはまだチラシを熟読中だった。
突然、姉ちゃんが、

从*´∇`)<フハハハハハハ

と高笑いした。

2721:2015/09/07(月) 04:33:09
从*´∇`)<フハハハハ。さすが我が弟! 姉に似てモテモテだな!

と、姉ちゃんが高笑いした。

一瞬の沈黙の後、「でも、優柔不断すぎね?」と須藤さんが言った。

从*´∇`)<おい! 突っ込めよ須藤!

と、姉ちゃんが叫んだ。

「そうよね、優柔不断すぎるよね…」と清水センセイ。
「本当は誰が好きなの?」と嗣永センセイ。

2731:2015/09/07(月) 04:33:36
「誰が好きとか、そんな…」と俺が答えに窮していると、
ようやく話に加わってきた熊井さんが、「えっ?何?何?、四つ股? うわぁ…、本当!?」
とか、大げさに驚きだした。

「いや、そんなんじゃなくて…」と、オレは必死に否定したけど、

「だけどさ、みんなに粉撒いてるくせに、実際のところ、誰ともうまくいってないんでしょ?」
と、清水センセイが、冷酷で的確な一言をぶつけてきた。

「うっ…」
まさしくその通りだった。

「だめじゃん…」と嗣永センセイ。
「だめだな…」と須藤さん。

俺には返す言葉がなかった。

2741:2015/09/07(月) 04:34:02
俺が黙っていると、
嗣永センセイが、「よし。ここは恋愛マスターの夏焼センセイの意見を聞こう!」と、
ふざけた顔をして言い出した。

「どうなの、ミヤ?」と、須藤さんも、ふざけた表情で聞いてきた。

「そうね…」と、大真面目な顔で雅さんが話し出した。

「例愛とは…」、と、焼酎のコップを掲げる雅さん。
「恋愛とは?」と、真顔で雅さんを見上げる嗣永センセイたち。

「来た球を打つ!」と、夏焼さんがドヤ顔で言った。
「おー…!」と、清水センセイ。

「○○クンさあ、若いんだから小難しいこと考えずに、成り行きでもなんでもいいから、
好きな子と好きなことすりゃいいのよ」と、雅さんは言った。

从*´∇`)<いや…、それじゃダメだろ…

と、姉ちゃんが言った。

2751:2015/09/07(月) 04:34:29
俺はようやく気が付いた。
要するに、俺はこのお姉さんたちにからかわれているのだ。

こんな場所からは、早く退散するに限る。
俺はウーロンハイのコップを置くと、「じゃあ、俺はそろそろ自分の部屋に戻って寝ます」と宣言した。

すると、雅さんが、「じゃあ、みやもホテルに戻ろうかな…」と言い出した。

「えっ?」と俺は聞き返した。

夏焼さんは東京でファッション関係の仕事をしていて、今日はたまたま用事で帰ってきていたところに、
飲み会の話があって、急きょ、参戦したのだという。

ほかの4人はうちに泊まっていくみたいだけど、夏焼さんは明日の仕事の関係もあって、
ホテルに戻るのだと言い出した。

「そうですか、それじゃ…」と言いかけた俺に、
「みや、一人で帰るのちょっと怖いな。○○クン、送っていってくれないかな?」
と、夏焼さんが上眼遣いで俺の目を覗き込んできた。

2761:2015/09/07(月) 04:34:48
从*´∇`)<おい夏焼! そんなこと言って、うちの弟にちょっかい出す気じゃないだろうな!?

と、千奈美姉ちゃんが言ったけど、夏焼さんは、
「ちょっと、千奈美! 馬鹿なこと言わないでよ! 夜道は怖いから頼んでるだけじゃん!」
と、怖い顔をして言い返した。

呆気にとられている俺に、須藤さんが、
「そうね。○○クン、悪いけど、みやをホテルまで送っていってあげてくれるかな?」
と、真面目な顔で言い出した。

2771:2015/09/07(月) 04:35:08
雅さんと外に出て歩き出すと、雅さんはすぐに俺の腕をギュッと掴んで、思い切り密着してきた。

(ちょっ! くっつきすぎだろ、このお姉さん…!)

即座に息子が反応してしまう、情けない俺。

雅さんからは、清水センセイや嗣永センセイのとは全然違う、
もっと大人っぽい、高級な感じの香水の匂いが濃厚に漂ってきた。

「ねえ、○○クンって、女の子とエッチしたことあるの?」
雅さんがからかうような口調で聞いてきた。

2781:2015/09/07(月) 04:35:29
その時、電停に市電がやってきたので、俺たちはとりあえず乗り込んだ。
雅さんと2人並んで座席に座ってから、俺は小声でさっきの質問に答えた。

「エッチどころか…、女の子と付き合ったこともありませんけど…」
「えーっ!? じゃあまだ童貞ってことー!?」

酔っぱらっているのか、雅さんが車内中に聞こえるくらいでかい声で言った。
俺は慌てて車内を見回した。

車内には俺たちの他には、前の方に女子大生風のお姉さんが座っているだけだった。
明らかにお姉さんにも聞こえていただろうけど、そのお姉さんは聞こえないふりをしていた。

「ちょっと!雅さん!声がでかすぎですよ!」と、俺は抗議したけど、
雅さんは相変わらずでかい声で、
「そうかー。童貞なんだー。アハハハハ」と笑った。

正直、俺は傷ついた。

2791:2015/09/07(月) 04:35:54

俺がシュンとなっていると、雅さんは、
「ごめん、○○クン。怒った?」と言って、
俺の肩に手を回しながら、下から俺の顔を見上げるように覗き込んできた。

「別に…、怒りはしませんけど…」と、俺が震え声で強がると、
「そっかー。怒ってないんだ! 良かった!」と、雅さんがあっさりと笑った。

(いや、それは違うだろ…)と、俺が心の中で抗議するいとまもなく、
雅さんは「でも○○クン、高2でしょ? 17でしょ? まだ童貞とか、遅すぎない?」
と、相変わらずの大声で、憐れむように聞いてきた。

いくらなんでも、俺も腹が立ってきた。
「じゃあ雅さんは、いくつの時に経験したって言うんですか?」と聞き返した。

雅さんは、「みやはねえ…」と言いかけてから、
「ちょっと! 何言わせるの! もう!童貞のくせにエッチなんだから!」と、
俺の背中を思い切り叩いてから、けらけらと笑い出した。

2801:2015/09/07(月) 04:36:20
2人のセンセイや須藤さんもそうだけど、やはりこのお姉さんたちには、
俺みたいな小僧は、きっと最初から敵わないのだ。

俺はそう思って諦めることにした。
(無駄な抵抗はやめて、適当に相手して送って、さっさと家に帰ろう)

そんなことを考えているうちに、電車が駅前の電停に着いた。

電停を降りても、雅さんはまた俺の腕をとって、ぴったりと密着してきた。

電停の目の前には…
そういえば、例のANGERMEがあったのだ。

(もう遅い時間だから、いくら何でも田村やりなぷーはいないと思うけど…)

俺は顔をそむけるようにして、店の前を通り過ぎた。

すると、雅さんは、
「あっ、ココ! ここに私たちの働いていたベリーズ工房があったんだよ!
今は店変わったんだ…。ねえ、ちょっと入っていかない?」とか言い出した。

俺は慌てて、「いや、俺も早く帰らなきゃならないし、まっすぐ行きましょう」
と言って、雅さんを引っ張るように歩き続けた。

雅さんはちょっと不服そうな顔で俺を睨んだ。

2811:2015/09/07(月) 04:36:39
ホテルに向かって歩き出すと、
「でも、さっきの話だけどさあ…」と、また雅さんが話し出した。

「さっきの話?」
「ホラ、○○クンがモテモテって話。四つ股かけてるとか…」
「あのね…、四つ股なんてかけてませんから。人聞きの悪い…」
「そんなに周りに仲のいい女の子がいっぱいいるのに、何で童貞なの?」

大真面目な顔で聞いてくる雅さんだった。

「あのね、雅さん、いくら仲がいいからって、そんな手当たりしだいにやっちゃうなんて…」
「やっちゃえばいいじゃん」
「ええっ!?」

2821:2015/09/07(月) 04:36:58
雅さんは大真面目な顔で話し出した。

「全部、自分勝手、自分勝手選べばいいのよ」
「何で、自分勝手って2回も言うんですか?」
「大事なことだから2度言ったの!」

俺が呆気にとられていると、雅さんは、
「○○クンはさあ、単に結果ビビっちゃってるだけでしょ?
あのね、自分で決めたら、『何があったって後悔はしない』って、まず決めるの!
それにね、やらぬ後悔よりも、やっちまった後悔した方がいいんだよ!」
と、ドヤ顔でまくし立ててきた。

「雅さん、やるとかやらないとか、えげつなさすぎます…」


<その時の俺の脳内イメージソング>
https://www.youtube.com/watch?v=XBQ0v95I9RE

2831:2015/09/07(月) 04:37:19
そんな話をしながら歩いていると、ホテルの前にたどり着いた。

「じゃ、雅さん、俺はここで…」と言いかけた時、
「ダメ! 女の子はちゃんと部屋まで送るものよ!」と、
雅さんが怒ったように言った。

今さらこの人に逆らっても仕方ない。

宿泊客でもないのに、こんな時間に客室に入っていいのかどうか分からなかったけど、
俺は覚悟を決めて、雅さんと一緒にホテルのエントランスをくぐった。
フロントの前を通っても、ホテルの人が何も言わなかったので、ホッとした。

エレベーターに乗り込んで、ドアが閉まった瞬間、
いきなり、雅さんが俺に抱きついて、キスをしてきた。

「!!!」
無様に棒立ちになったまま、雅さんのベロチューを受け入れる俺。

俺の人生初のキスの味は、大五郎のフレーバーだった。

2841:2015/09/07(月) 04:37:58
童貞の俺が想像していたよりもずっと…、
(キスと言うのは生々しくて、気持ちのいいものだな)と、俺は思った。

目的の階についてドアが開くと、雅さんは俺の手をとってエレベーターを降りた。
俺がまるで、でくの坊のように、雅さんのなすがままに部屋の前までついて来ると、
雅さんはさも当然、という感じで、俺を部屋の中に導いた。

部屋のドアにカギをかけた雅さんは、俺の目を見て悪戯っぽく笑うと、
再びキスをしようとしてきた。

俺は思わず、それを制して、
「あ、あの…、雅さん…」と、問いかけた。

「なあに?」
「雅さんは…、東京に彼氏とかいないんですか?」
「もちろんいるわよ(笑)」
「それなのに…、いいんですか?」
「何が?」
「好きでもない相手と、こんなことして…」

瞬間、雅さんはまじまじと俺の目を覗き込んで、
「あら? ○○クンはみやのこと、好きじゃないの?」と真面目な顔で聞いてきた。

「もちろん、好きです!」と反射的に答えてしまう俺。
「じゃあ、いいじゃん。私も〇○クンのこと、嫌いじゃないわよ」
そういうと、再び雅さんは、俺にねっとりとしたキスをお見舞いしてきた。

2851:2015/09/07(月) 04:38:19

しばらく俺はまた、かかしのようにぶざまに立ち尽くしていたけれど…、
そのうち、雅さんの体に触りたいという欲求が、猛烈に湧き上がってきた。
すでに俺の愚息は、痛いほどビンビンに勃起しつくしていた。

思い切って雅さんの背中に手を回そうとしたその時、俺より先に、
雅さんの細い指が、いきなり俺の股間をまさぐってきた。

「アッー!」
思わず情けない声を上げて、前かがみになる俺。
「わあ!カチンカチンじゃん。すごーい! やっぱ10代は違うね!」と笑う雅さん。

俺の頭の中で何かが弾けた。

「雅さん!!」
俺が雅さんの体を強く抱きしめながら、ベッドの上に押し倒すと、
「あん!慌てちゃダメ」と、雅さんが甘い声で囁いた。

2861:2015/09/07(月) 04:39:05
俺にベッドの上に組み伏せられた格好の雅さんは、
「ね、一緒にシャワー浴びようか?」と、下から俺を見上げて笑いかけてきた。

「えっ!?シャワー!? い、一緒に、ですか…!?」

俺がうろたえていると、雅さんは、自分に覆いかぶさっていた俺をスルリと躱して起き上がり、
さっさと自分の着ていた上着とショートパンツを、恥ずかしがる様子もなしに堂々と脱ぎはじめた。

俺が思わず五クりと生唾をのみこんで凝視していると、下着だけの姿になった雅さんは、
バスルームのドアを開けたところで俺を振り返り、
「ほらあ! モタモタしてないで〇○クンもおいでよ!」と、妖しく微笑みかけてきた。

<バスルームに俺を誘う雅さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/LJNTvXk.jpg

2871:2015/09/07(月) 04:39:27
慌ててジーンズとTシャツを脱ぎだす俺を見て、雅さんが「あはは」と笑った。
パンツ一丁になった俺は、雅さんの後らから抱きつくようにして、バスルームになだれ込んだ。

「雅さん!!」
俺は雅さんの背後から、両手で雅さんの薄い胸を覆った。

「あん…」と甘い声を出す雅さん。

初めて触る女の人のオッパイ。
その柔らかさに陶然となっていると、
「小さいでしょ?」と雅さんが聞いてきた。

「いえ…、そんなこと…」
さすがに、はいそうですね、と答える訳にもいかない俺だった。

「小さいけれど感度はいいのよ」
そんなベタなことを言いながら、首をこちらにむけて、俺にキスしてくる雅さんだった。

2881:2015/09/07(月) 04:39:44
キスを続けながら、俺は雅さんのチューブトップのブラをずらして、
硬く大きくなっていた、雅さんの乳首をつまんだ。
「はあっ…」と、雅さんが吐息を漏らしながら、俺の腰に手を回すと、
あっという間に、俺のパンツをずり下ろした。

ビンビンに勃起した一物が露出して、思わず「あっ!」とうろたえる俺。

雅さんは俺の腰の前にしゃがみこみながら、俺を上目遣いで見上げてきて、
「ウフッ」と、妖しげに微笑んた。

雅さんは、「童貞のくせに、結構立派な物持ってるんじゃん」と言ってから、
俺の亀頭にチュッと、一瞬キスをした。

「ヒィッ!」と情けない声を上げて、感じる俺。
そんな俺の反応をいちいち楽しむように、雅さんは俺の亀頭に短いキスを繰り返した。

(遊ばれてるな、俺)と、思ったその時、
満を持して、雅さんが俺の一物を深くくわえてきた。

2891:2015/09/07(月) 04:40:01
「アッー」
思わず頭が真っ白になりかける俺。

今までこんなに勃起したことがあっただろうか、というくらい、
痛いほど硬くなった俺の一物を、雅さんは、ディープキスの時と同じような、
素晴らしい舌遣いで、チュバッ、チュバッといやらしい音を立てながら、攻めたててきた。

「雅さん! ダメです! ダメ! こんなことされたら、すぐに出ちゃいます!」
俺は情けない声で訴えた。

「それより俺の方も…、雅さんを舐めたいです」

2901:2015/09/07(月) 04:40:21
雅さんは、そんな俺の哀願を無視して、ますます強く早く、俺の一物をしごきつつ、
強烈なバキュームフェラ施してきた。

ジュボジュボジュボジュボ…

「あっ!ホントにいきそうです!ダメっ!」
思わず叫ぶ俺。

あと一しごきで暴発、というその寸前に、雅さんはピタリと動きを止めて、
ニヤニヤしながら俺を上目遣いで見上げてきた。

「ふう…、ふう…、ふう…」
深呼吸して、暴発を回避しようとする俺。

その瞬間、また雅さんが激しく俺の一物を口でしごきだす。

「ひいっ…!」

雅さんのなすがままに弄ばれながら、
(この人、もしかしたらドSなんじゃないか…?)
と、思う俺だった。

2911:2015/09/07(月) 04:40:42
このまま一方的に弄ばれるだけではたまらない。
俺の方からも、雅さんを攻めたいという気持ちが猛烈に湧き上がってきた。

というよりも、率直に言って、早く雅さんのマ○コをこの目でじっくり見たい。そして舐めたい。
童貞なら、いや、男なら誰しもそう思って当然なのではあるまいか。

「雅さんっ!!」

俺は雅さんのフェラを振り払うようにして、雅さんの下半身に向かって突進した。

しかし、雅さんは、まるで闘牛士のように、俺の突進をヒラリと躱すと、
スクッと立ち上がって、自分からさっさとパンツを脱ぎ捨てた。

(あっ! それ、俺が脱がせたかったのに!)

俺は思わず歯ぎしりした。

2921:2015/09/07(月) 04:41:01
一糸まとわぬ姿になった雅さんは、バスタブの中に進むと、シャワーのカランを大きくひねって、
全身にお湯を浴びだした。そして、自分の両手で、お腹のあたりから乳房のあたりまで、
ゆっくりとセクシーになぞっていった後、俺の方を見て、「おいで」と笑った。

「は、はい!」

バスタブの中に突進した俺は、
雅さんの丸いお尻の膨らみを両手で抱え込むようにしながらしゃがみこみ、
雅さんの立派な太ももの内側に口をつけた。

「ハァーン」と、甘い声を出す雅さん。

俺は太ももから上の方に向かって、舌を這わせていった。

俺の目の前に、雅さんのアンダーヘアがあった。
こんなところまで脱色しているのか、ヘアの色は、雅さんの髪と同じ金色だった。

そのヘアの奥の方をじっくり見たいのだが…、

雅さんの体をつたって流れてくるお湯が邪魔になって、よく見えないのだ…。

2931:2015/09/07(月) 04:41:19
俺は両手の親指で、雅さんのそこを押し広げるようにして、下から覗き込んだ。
流れるお湯の反射の中に、ピンク色の突起がちらりと見えた。

(これが女の子の秘密の恋のボタンってやつか…)

五クりと唾をのみこんでから、そこに口づけすると、
雅さんが「アアーッン」とため息をついた。

その声に興奮しながら、俺は猿のようにそこを舐め続けた。

もっと奥の方にどんどん舌を進めていくと、
さらさらとしたお湯の感触が、突然ぬるっとした感じに変わるところに行き当たった。

雅さんの陰毛も口の中に入ってきたけど、もう構わなかった。

「あっ、そこ…。そこ、いい…!」
雅さんがかわいい声であえぎながら、俺の髪の毛をつかんで、
自分に押し付けるような態勢になってきた。

お湯の味が、しょっぱいような味に変わってきた。

2941:2015/09/07(月) 04:41:36
「はぁん、はぁん…」と、リズミカルにあえぐ雅さん。

(このまま舐め続けて、イカせてやる!!)
と、俺は思ったけど、雅さんは、俺のそんな気持ちを遮るように、
「じゃあ…、ベッドに戻ろうか?」と、聞いてきた。

望むところだった。
俺もベッドに雅さんを押し倒して、もっとじっくりと、
雅さんのマ○コを観察したかったのだ。

「は、はい…!」
俺が返事をすると、雅さんは、バスタオルに身をくるんで、
俺を置いてすたすたとベッドの方に戻っていった。

俺は勃起した一物を持て余しながら、慌ててその後を追った。

2951:2015/09/07(月) 04:41:54
ベッドの縁に並んで腰かけると、雅さんは、
「ねえ○○クン、ゴム持ってる?」と聞いてきた。

「えっ…? ゴムって…」
「コンドーム」
「い、いや…、持ってないです」

俺がそう答えると、雅さんは呆れたように「はあ…」とため息をついてから、
「あのね○○クン、そういうのは男の子の方が用意しておくのがエチケットなのよ。
ちゃんと普段から持ち歩いてないと、ダメじゃないの!」と、
なじるような口調で言ってきた。

「…ごめんなさい」
俺がそう謝ると、雅さんは「仕方ないわね…」と言いながら、
自分のハンドバックの中を探って、「1個だけなら持ってるけど…」と、
コンドームのパッケージを取り出した。

2961:2015/09/07(月) 04:42:14
「横になって」
と、雅さんに命令されて、俺は慌ててベッドの上に、マグロのように横たわった。

雅さんはコンドームのパッケージを破ると、ビンビンに怒張したままの俺の一物に、
手慣れた手つきで、コンドームをスルスルと嵌めていった。

結局、主導権は雅さんに握られたままだった。

雅さんは俺の腰の上にまたがる格好で、俺の一物をつかんで自分の秘部にあてがうと、
ゆっくりと腰を下ろしていった。

2971:2015/09/08(火) 04:29:58
その瞬間は、意外にあっけなく訪れた。

ヌルッ、とした感触とともに、俺の一物は雅さんの下の口に呑み込まれていった。

「あんっ…、太い…」
雅さんが眉根を寄せて、ため息をもらした。
お世辞だとわかっていても、素直に俺は嬉しかった。

とはいえ…
正直なことを言うと、その時の俺の気持ちは、案外冷静だった。
ハッキリ言って、さっき初めてフェラチオしてもらったときの方が、
よっぽど痺れるような陶酔感があったのだ。

つまり、その時の俺は、実際の快感よりも、
「雅さんみたいな最高の女のオマ○コに、今、俺のチンポが奥まで刺さっている」
という、観念による嬉しさの方が勝っていた、とでもいえばいいのだろうか。

(もう、俺は童貞ではないのだ)

そんな気持ちを、俺は噛み締めた。

2981:2015/09/08(火) 04:30:26
雅さんが、前後にゆっくり体を動かし始めた。

(ふーん…。セックスって、こんなもんか)
と、俺はちょっと余裕をかましながら思った。

後で思えば、愚かであった。いや、愚かすぎた。

全く無警戒になっていた俺に、次の瞬間、
雅さんがギューッと、そこを締め付けてきた。

「アッー!!!」

あまりにも呆気なすぎる終局だった。
三こすり半も持たずに、俺は自分自身を放出してしまったのだ。

「えっ? まさか、もうイッちゃったとか?」
憐れみと不満の入り混じった目で、雅さんが俺を見下ろしてきた。

2991:2015/09/08(火) 04:30:45
「初めてとはいえ…、いくら何でも、ちょっと早すぎるんじゃない?」
雅さんの口調には、明らかに非難のニュアンスが込められていた。

「ご、ごめんなさい…」
穴があったら入りたい、とはまさにこのことだった。

「できなさすぎるよね…。ちゃんと練習してきたん?」
とは、さすがに雅さんは言わなかったけど、まあそういうことだろう。

「自分ひとりだけイッちゃうなんて、ダメよ、そんな身勝手なの」と、雅さんは言った。

「ごめんなさい。いや、もう一回…! 今度は頑張ります!」
俺がそう言うと、雅さんは、「もう一回って…、もうゴムないじゃん」と、
ちょっと呆れ顔で言った。

「やっぱり…、ゴム無しじゃ駄目ですか…?」
俺がそう聞くと、雅さんは、困ったような顔をして、しばらくの間考え込んでから、
「中で出さない自信あるの?」と、俺を試すような顔で聞いてきた。

3001:2015/09/08(火) 04:31:03
俺は思わず口ごもった。

「そ、そんな…、自信なんて…。だって、雅さんのあそこ、気持ちよすぎるし…」

俺がそう言うと、雅さんも満更でもなさそうな表情を浮かべて俺を見てきた。

「それに、雅さんに自由に動かれたら、俺すぐイッちゃいますよ…。
でも、俺が上になれば、少しはマシかも…」

雅さんは、じっと俺を見つめた後、
「じゃあさ、○○クンの好きなようにしてもいいよ。今度は頑張ってよね」
と、妖しげに笑った。

3011:2015/09/08(火) 04:31:21
雅さんは、ベッドの上に横たわると、
「じゃあ…、おいで」と、俺を誘った。

「は、はい! いただきます!」
反射的におバカな返事をしながら、俺は思った。
(とにかく、雅さんのマ○コを、じっくり見たい!!)

俺は雅さんの両膝を押し広げると、そこに顔を埋めた。

ぴたりと閉じたピンク色の花びらが、じっとりと濡れていた。

「綺麗だ…。綺麗です!雅さん!」
俺は自分の愚息がまたビンビンに復活してくるのを感じながら、そこに口づけした。

「ア…、アン、アンアン…」
雅さんがかわいらしい声で鳴きだした。

3021:2015/09/09(水) 03:23:24
俺の舌遣いに合わせて、どんどん高まっている様子の雅さん。

(このまま舐め続ければ、イクだろう)とは思ったものの…。
それではさっきのリベンジにならない気が俺はした。

それに、やはりここは、俺のチンポで雅さんをイカせなければ、
せっかく筆下ろしをしてもらった恩返しにもならないではないか。

「雅さん、挿れますよ…」
身を起こしながら俺が言うと、
「いいわよ…」と、雅さんが囁いた。

3031:2015/09/09(水) 03:24:28

雅さんの両膝を抱えるようにして、俺は一物を雅さんにあてがった。

単に先っぽが粘膜に接触しただけなのに…。
さっきゴム付きでしたときとは一段レベルの違う気持ち良さが、瞬時に俺を襲ってきた。

(やばい! こりゃ、またすぐにイッちゃいそうだ…)

慌てて挿れるのは危険すぎた。

俺は心を落ち着かせるために、ちょっとの間、先っぽだけを雅さんの中に、
挿れたり出したりしていたのだが…。

雅さんは、「あーんっ…、もう! 生意気にじらしたりして! 早く挿れてえっ…!」
と、泣き声を上げた。

3041:2015/09/09(水) 03:24:54
ズンッ!

雅さんのその言葉が終わらぬうちに、俺は一気に雅さんの奥まで一物を叩きこんだ。

「ひいっ!」と、雅さんが1オクターブ高い声で叫んだ。

すんでのところでこらえたけど、本当は声を上げたいのは俺の方だった。

生で味わう雅さんの中は、生温かくて、ねっとりと俺を包み込んでくるようで、
本当に、ちょっとでも気を抜いたら、すぐにでも暴発してしまいそうな気がしたのだった。

数秒、そのままの態勢で気を落ち着かせた後、
意を決して、俺は前後に動き出した。

「あっ、あっ、あっ…」と、俺の動きに合わせて、可愛い声で鳴く雅さん。

3051:2015/09/09(水) 03:25:16

何が何でも、今度は先に雅さんをイカせたい。
でも、それにはどうすればいいのか…。

ピストン運動を続けながら、俺は必死で考えたけれど、
つい今しがた童貞を卒業したばかりの俺に、そんな妙案が浮かぶはずもなかった。

(とにかく、若さに任せて力で押しまくるしかないッ…!)

そう思ってピストンのスピードを速めようとしたとき、力んだせいか、
偶然に、一物の当たる角度が変わって、雅さんの感じるところを捉えたようだった。

「あっ! そこ! そこ、イイッ!」
雅さんが、両足を俺の腰に絡めてきた。

3061:2015/09/09(水) 03:25:38
雅さんが足を絡めてきたせいで、俺の方も快感が倍増した感じになってきた。

(いかん! このままだと、また俺が先にイッちゃうかも…!)
そう思ったものの、今さら動きを止めるわけにもいかなかった。

(俺が先にイクか、それとも雅さんを先にイカせるか…!?)

俺は最後の力を振り絞って、もう一段ピストンのスピードを速めていった。

その時、雅さんが「アッ! イク、イクイク!」と叫んで、体をガクガクと痙攣させた。

たとえようのない征服感に包まれて、歓喜する俺。
しかし、次の瞬間、雅さんがさっきと同じく、ギューッとそこに力を入れて、俺を締め上げてきた。

「アッー!!!」

一物を抜き去る余裕などあるわけもなく、
ビュッ、ビュッ、ビュッ!と、俺は雅さんの奥深くに、愛の弾丸をたっぷりと撃ちこんでしまった。

3071:2015/09/10(木) 05:10:48
https://www.youtube.com/watch?v=J_P4Hb6upDc

3081:2015/09/10(木) 05:11:12
しばらく放心状態のまま、俺は雅さんの上に覆いかぶさっていたけど…、
やがて、我に返ってのろのろと起き上がった。

それにしても…。
雅さんのマ○コの締め付けは強烈過ぎた。

その時は、これが普通なのかと思ったけれど…、
その後、俺が同級生とか他の女の子とセックスしたときも、
こんな強烈な締め付けを味わうことはなかったから、
やっぱり雅さんが名器だったってことなんだろう。

それはともかく…

俺は雅さんの中にたっぷりと生で放出してしまっていたのだった。

(どうしよう…?)

そう考えていると、雅さんが、

「ちょ…、信じらんない。中で出すとか…」

と、体を起こしながら、俺をなじってきた。

3091:2015/09/10(木) 05:11:39
「ご、ごめんなさい…」
と、俺は謝ったけど…、

「『ごめん』じゃないわよ。妊娠したらどうすんのよ!?」
と、雅さんはご立腹だった。

当然と言えば当然な怒りだった。

「雅さん…! 俺と結婚してください!」
俺は思わず叫んだ。

「はあ?」
と、呆れた様子の雅さん。

「雅さん! 『妊娠したら』じゃなくて、妊娠してください! そして俺の子供を産んでください!」
「えっ…?」

「雅さん! 好きです! 雅さんと結婚したい!」
俺はそう言って、ベッドの上に再び雅さんを押し倒した。

それは実際、その時の俺の正直な気持ちだったのだ。

3101:2015/09/10(木) 05:12:11
雅さんは、俺の髪の毛を撫でながら、
「もう…、可愛いこと言っちゃって…。困った子ね…」
と、呆れたように言った。

「でも…、本気なんです! 俺、雅さんのこと…!」
「『結婚して』とか、どうやって生活するの?」
「それは…、学校辞めて、バイトとかして…」
「そんなこと、できるわけないでしょ」

沈黙が流れた。

「しょうがないなあ…。アフターピル持ってるから、まあ、いいよ」
と雅さんが言った。

「えっ、何ですかそれ」
「そういう薬があるの」
「そうなんですか…。良かった…」
「良くないわよ! それ飲むと、すごく体調悪くなるんだから」
「そうなんですか…。ごめんなさい」

しばらくの沈黙の後、

「あのねキミ、責任とって、もう一回、ちゃんとお姉さんをイカせなさい!」
と、言いながら、雅さんが俺にキスしてきた。

3111:2015/09/10(木) 05:12:33
それは俺も望むところだった。
俺はもう、二回も放出していたけれど、徐々に慣れてきた感じも、間違いなくあったのだ。

(次こそは、もっと雅さんを攻めたててやる)
そんな気持ちがこみ上げてきた。

「雅さん、今度は後ろからしてもいいですか?」

俺が聞くと、雅さんは「フフッ」と笑ってから、「好きにしていいよ」と囁いた。

「じゃあ…、そこの窓際に立ってください」
と、俺が言うと、「そんな、生意気なこと言って…」と雅さんが言いかけたけど、
俺は有無を言わさず、雅さんを後ろから抱きすくめると、再び硬直していた愚息を、
ズブリと雅さんの中に突き入れた。

「あっ!」と、雅さんが鳴き声を上げた。

「みやび!みやび!」
俺は雅さんの腰をつかみながら、激しく雅さんの中に一物を突き差しした。

3121:2015/09/10(木) 05:12:55
「あっ! あん!あん!あん!」
と、甘い声を立て始める雅さん。

窓の下は、街の明かり。
よく見ると「アンジュルム」の店の看板も、真下で光っていた。

「雅さん、あそこが『ベリーズ工房』のあったところですよ。見えますか?」
俺がそう言いながら、雅さんの背中を舐めて、ピストンを続けると、
「あんっ! それ! それ、いい!」と、雅さんが泣き声を上げた。

(この人…、ドSだと思ってたけど、ドMでもあるんじゃ…?)

そう思った俺は、試しに雅さんの立派なお尻をピシャッと、平手で叩いてみた。

その途端、
「ふあーっ!」
と、盛りのついたネコのような叫び声を雅さんが上げた。

(間違いない!)

3131:2015/09/10(木) 05:13:16
「みやび!みやび!みやび!」
真っ赤に手の跡がつくほど、俺は強い力で雅さんのお尻を何度も何度も叩きながら、ピストンを続けた

「ふあーっ!ふあーっ!ふあーっ!」
ガクガクと体を震わせながら、連続して雅さんがイッた。

(勝った!)

俺はそう感じながら、なおも雅さんを突き続けた。

崩れ落ちそうになる雅さんの腰を抱えて、一方的に突き続けた挙句、
俺も雅さんの中に再び放出した。

ミヤ━━━(゚∀゚).━━━!!!

俺は叫びながら、もう三度目なのにこんなに出るのか、と思うほどの量を、
雅さんの子宮の奥に叩き込んだ。

<その時の俺の脳内の叫び声>
https://www.youtube.com/watch?v=AvpgQ7Vjafk&feature=player_detailpage#t=201

3141:2015/09/10(木) 05:13:32
俺たちはその後、しばらくの間、放心状態のままで、ベッドの上に佇んでいた。

「最初は童貞クンをつまみ食いしようと思っただけだったんだけど…、キミ、よく頑張ったね」
と、雅さんが笑った。

「雅さん! 俺は雅さんのこと、本気で好きになっちゃいました!」
「えっ?」
「雅さん! 離れたくない!」

俺は雅さんにしがみついた。

雅さんはしばらくの間、優しく俺の髪を撫でてから、
「ダメよ。○○クンは、ちゃんと本当に好きな子を見つけなきゃ」
と、囁いた。

「そ、そんな…。雅さん、また会えませんか?」
俺がそう懇願すると、雅さんは、
「ううん、もう会えない」と、優しく笑った。

3151:2015/09/10(木) 05:14:04
雅さんと別れてから…、
俺はのろのろと歩いて家に向かった。

市電はとっくの前に終電が出た後だった。
歩いて帰ると、40分以上の長い道のりだった。

俺はその道すがら、さっきまでの雅さんとの初体験を心の中で反芻し続けていた。

「俺はもう童貞じゃない。しかも、雅さんみたいな最高のオンナを征服した!」

そのことが、とにかく誇らしかった。

家に着いたときは、すでに午前3時近かった。
いくら何でも遅すぎた。

(姉ちゃんは、俺の顔を見たら何て言うだろう…?)

そう思いながら家のドアを開け、中に入った。

居間の明かりは既に消えていた。
姉ちゃんやセンセイたちも寝たのだろう。

俺は少しホッとして自分の部屋に戻ろうとしたとき、

「お帰り」と、後ろから声をかけられた。

3161:2015/09/11(金) 01:40:39
慌てて振り向くと…、

そこにはパジャマ姿の嗣永センセイが立っていた。

<パジャマ姿の嗣永センセイ・イメージ画像>
http://i.imgur.com/0KVe10m.jpg

「あっ、ただいま…。姉ちゃんたちは?」
と、俺が少し焦りながら聞くと、
「千奈美は結構前に潰れて寝ちゃった。佐紀ちゃんたちもさっき眠ったところ。
まだ起きてるのは、私と茉麻だけ」と、嗣永センセイは、声を潜めて言った。

俺はちょっとホッとしながら、
「そうですか。それじゃ、俺も寝ます。おやすみなさい」
と言って、部屋に戻ろうとしたけれど、

「待った!」
と、嗣永センセイは、俺の腕を引っ張った。

3171:2015/09/11(金) 01:41:12
「えっ、ちょっと…」
うろたえる俺に有無を言わせず、嗣永センセイは、
電気の消えた居間の中に、俺を引っ張りこんだ。

居間のソファーには、やはりパジャマに着替えた須藤さんが寝そべっていて、
俺を見ると、少しニヤりとしながら、「お帰り」と言った。

須藤さんも、もうかなり酔っているのか、
心なしか眼のふちが、とろんとしているように見えた。

<パジャマ姿でソファーに寝そべる須藤さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/qfgJXG3.jpg

本当はこっちを使いたかったんだけど…、ちょっと無理があるかな
http://i.imgur.com/6PCX2sc.jpg

3181:2015/09/11(金) 01:41:33
居間の隣の客間には布団が敷かれていて、
姉ちゃんや清水センセイたちが雑魚寝していた。
3人のスース―という寝息が、居間にも響いていた。

近づいて行った嗣永センセイが、そーっと客間の襖を閉じた。

すると、ソファーから起き上がった須藤さんが、
「じゃあ、話聞こうか」と、
真面目なのかふざけているのかわからないような口調で、俺に言った。

3191:2015/09/11(金) 01:41:55
「は、話って…、何のことですか」

と、俺が言うと、須藤さんは、
「まあ、そんな固くならずに、焼酎でも飲みなよ」と、
残り3分の1ほどにまで減っていた大五郎のペットボトルを取り出し、
グラスにドボドボと注ぐと、申し訳程度のウーロン茶を混ぜて、俺の前に突き出してきた。

「そうそう。飲んじゃえ飲んじゃえ」と、無責任に煽る嗣永センセイ。

俺はしばらくコップを見つめていたけれど、意を決してゴクンと呑み込んだ。

3201:2015/09/11(金) 01:42:17
「おー、いい飲みっぷりだねえ…」と、須藤さんは言いかけたけれど、
次の瞬間、俺は、「ゴホッ、ゴホッ!」と、むせてしまった。
須藤さんが注いだ焼酎は、ほとんど原液に近い感じの濃さだったのだ。

それに構わず、須藤さんは声を落として、「ねえ、ミヤに抱かれてきたの?」
と、単刀直入に切り込んできた。
興味津々、という感じで須藤さんの目が光っていた。

「どうなのよ。ハッキリしなさいよ」
と、こちらも目の光に力のこもる嗣永センセイだった。

3211:2015/09/11(金) 01:42:38
「そんなこと…」
と、俺は口ごもった。

そんなことをペラペラと、この人たちに喋っていいわけがない。
それが俺を男にしてくれた雅さんへの仁義というものだろう。

「雅さんを送って、途中で一緒にお茶飲んで、帰ってきただけですよ…」
との、俺の言葉が終わらないうちに、
「そんなんで、こんな時間になるわけないじゃん」
と、嗣永センセイが真顔で詰めてきた。

3221:2015/09/11(金) 01:43:01
「そんなこと言われても…、本当にそれだけですから!」

俺が強い口調で言い切ると、須藤さんと嗣永センセイは、2人で目を見合わせて、
何かいわくありげに頷き合った。

次の瞬間、須藤さんがいきなり、俺を後ろから羽交い絞めにしてきた。

「えっ!? ちょっ!? 何するんですか、須藤さん!?」
俺は暴れて逃げようとしたけれど、須藤さんの怪力にガッチリと抑え込まれて動けない。

それに、須藤さんのオッパイが、完全に俺の背中に密着する態勢になって、
さっき三発も出してきたばかりなのに、俺の下半身はビンビンに膨らんできた。

「桃!今のうちよ!」と、須藤さんが言うと、
嗣永センセイが顔を突き出して、クンクンと俺の全身の匂いを嗅ぎ始めた。

「ちょっ!嗣永センセイまで!いったい何を!?」

前かがみになった、嗣永センセイのパジャマの胸元はばっくりと開いて、
ピンク色のブラジャーに包まれた意外に豊満なオッパイが、
俺の位置からは丸見えになった。

「どう、桃?」と須藤さん。
「うん。ミヤの香水の匂いがプンプンする!」と嗣永センセイ。

3231:2015/09/11(金) 01:43:21
ようやく俺を離した須藤さんが、
「決まりだな」と、勝ち誇ったように言った。

「うん。完全にギルティ!」と、頷く嗣永センセイ。

「ちょっ! 馬鹿馬鹿しい! だってさっき俺は…」

(帰りにシャワーを浴びてきたから、移り香など残っているわけない)
と、言いかけて、俺はハッとして、両手で口を抑えた。

危ない危ない…。

この二人の連係のとれた鮮やかな誘導尋問に、あやうく俺は引っ掛かるところだったのだ。

「さっき…、どした?」と須藤さん。
「何があったの?」と嗣永センセイ。

「何もないです!お休みなさい!」
俺は二人を振り払うようにして、自分の部屋に戻り、そして寝た。

ベッドに入ると、大五郎の酔いが強烈に回ってきて、
俺はあっという間に眠りに落ちてしまった。

3241:2015/09/20(日) 05:14:51
目が覚めた時は、すでにお昼近くになっていた。
俺はベッドの中で、ぼんやりした頭のまま、
昨夜の雅さんとの出来事を何度も思い返した。

(夢じゃない)

今日は、童貞じゃなくなった俺が、最初に迎える朝だった。いや、昼だけど…。

のろのろとベッドから這い出して、階段を降りて居間にいくと、
すでにセンセイたちは帰った後のようで、誰も居なかった。

ソファーに座ってボーっとしていると、千奈美姉ちゃんがやってきた。
姉ちゃんも、酒が残っているのか、まだボーっとした顔をしていた。

从*´∇`)<あっ、アンタも起きたの?

と姉ちゃんが言った。

3251:2015/09/20(日) 05:15:13
「うん…。嗣永センセイたちは?」

从*´∇`)<さっき帰ったとこ…。あー、飲みすぎたわ。

姉ちゃんが昨夜の雅さんのことなど忘れているのか、話題に出してこないのにはホッとした。

「ところで、姉ちゃん、今日はアシカに餌やりにいかなくていいの?」

从*´∇`)<うん。今日は当番変わってもらった。てゆーか、変わってもらえたから昨日飲み会にしたの。

「そなの」

从*´∇`)<それよりアンタ、学校行かなくていいの? ダンス部だかの練習あるんじゃないの?

「いや、今日は休み。てゆーか、自分がその飲み会明けだからって、清水センセが勝手に休みにしたの」

从*´∇`)<そうなんだー

3261:2015/09/20(日) 05:15:38
俺はしばらくそのままソファーの上でボーっとしていたけど、
少し経ってから、「やっぱり学校に行こう」と思い直した。

ダンス部の練習がない日に、この間から貯まったままの写真を、
現像・引き伸ばししておきたかったのだ。

お昼少し前になってから、俺は自転車に乗って家を出た。

自転車を漕いでいると、まだ昨夜の酒が抜け切っていないのか、少し頭が重かった。

(スポーツドリンクでも買っていくか…)
と、例のコンビニの前まで来たときに思った。

もしかして、舞さんがいないかな、と少し期待しながら入ったけど、
レジにいたのは、舞さんのお父さんという、いつものやる気のないおじさん店長だった。

飲み物の棚からスポーツドリンクをつかんでかごに入れて、レジまでいく途中、
ふと、俺は雅さんの昨日の言葉を思い出した。

「男の子ならコンドームくらい持ち歩いておくのがエチケット」ってやつだ。

3271:2015/09/20(日) 05:15:59
俺は今までそんなものを買ったことがなかったけど、
もう俺も童貞じゃないわけだし…(ドヤ顔)。

確かに雅さんの言う通り、いつどんなことがあっても困らぬよう、
コンドームくらいは持っていた方がいいように思えてきたのだ。

幸い、このおじさん店長の時には、エロ本を買ったことも何度もあるし…。
今が絶好のチャンスのような気がしてきた。

俺は、無造作にコンドームの箱をつかんでかごに入れると、レジに向かった。

「ポンタカードお持ちですか?」とおじさん店長が聞いてきた。

「あっ、あります。確か鞄の中に…」

鞄の中を探っていると、レジの奥の扉が開いて舞さんが出てきた。

「パパ、レジ替わるよ」

そういうと、舞さんが俺の前に来て、
「あら、昨日の、愛佳の生徒の子ね?」と笑った。

3281:2015/09/20(日) 05:16:30
俺は慌てて、レジからいったん離れようかとも思ったけど…、
その時には、すでに舞さんが俺の顔を見てニコニコと話し出していた。

「昨日はゴメンね。ホントはあんな風に大げさにするつもりはなかったんだ。
実は、まいもあれから結構気になってて。でも、キミがまた買い物に来てくれて嬉しいよ」と、
早口で、弾んだ声で話す舞さん。

「あっ、はい。いえ…」
しどろもどろに返事をする俺。

そう言いながら、舞さんが、かごの中のサガミオリジナルを手にとって、
そのまま数秒、固まった。

見る見る顔を真っ赤に染めていく舞さん。

舞さんは上気した顔で、無言のままバーコードリーダーを箱に当てた。

それから…。

舞さんは一切俺に視線を合わすことなく…、
エロ本や生理用品と同じ扱いなのか、サガミオリジナルをわざわざいったん紙袋に入れてから、
レジ袋に入れて、俺に押し付けるように手渡してきた。

3291:2015/09/20(日) 05:16:49

会計を済ませた俺は、逃げるように店を出た。
心臓がドキドキと高鳴ったまま、俺は自転車を漕いだ。

(舞さん、また光井センセイに言いつけるだろうか?)と俺は考えた。

でも、昨日と違って、舞さんは文句を言わずにコンドームを売ってくれたのだ。
てゆーか、よくよく考えたら、高校生がコンドームを買っちゃダメなんていう法律はないだろう。

それよりも、客が何を買ったとか、プライバシーを漏らすことの方がよほどの問題だ。
だからこそ、舞さんも、わざわざ紙袋にコンドームを包んだのだ。

俺は必死に理屈で自分を安心させようとしていた。

ちょっと落ち着いてくると、別の興味も俺の頭の中に浮かんできた。

(コンドームくらいであんなに真っ赤になっちゃって…。舞さん、処女なのかな…)

もう自分は童貞じゃない、という心の余裕が、俺にそんなことを考えさせていた。

3301:2015/09/20(日) 05:17:07
学校に着くと、俺はまっすぐに写真部の暗室へと向かった。

暗室に着くと、ドアの上の「現像中」のランプが目に入った。

(誰だろう…?)

俺はトントンとドアをノックした。

「ゴメン、今印画紙しまうから、ちょっと待って!」

女の人の声だった。

3311:2015/09/20(日) 05:17:53
ドアの前で待つこと数分。

「待たせちゃって…、ゴメンね」と言いながらドアを開けてきたのは…、
3年生の山木先輩だった。

「あっ、山木さん。どうもお久しぶりです…」と俺はあいさつした。

山木さんは、「あっ、○○クン、元気だった?」とはにかむような笑顔を見せてから、
「私もう部を辞めたのに、勝手に暗室使っちゃって、迷惑だよね?
ゴメン。今片づけるから…」と、真面目な顔をして言った。

「迷惑だなんて、そんなこと…。構わないから続けてください」
俺がそう言うと、山木さんは、
「でも、○○クンも現像するんでしょ?」と、俺の目を覗き込むように言った。

「引き伸ばしをしようと思って来ましたけど…。引き伸ばし機は二台あるんだし、
お互いに声をかけあってやれば、2人で同時にやっても全然問題ないですよ。
どうぞ続けてください」

俺がそういうと、山木さんは「悪いね…。じゃあ、お言葉に甘えちゃうよ」
と言って、笑った。

<山木先輩・イメージ画像>
http://i.imgur.com/j8gQN1u.jpg
制服の種類が違うのは、例によって脳内補完で頼む。

3321:2015/09/20(日) 05:18:24
カギをかけた、薄暗い暗室の中で山木さんと二人っきり…。

そのことに気付くと、俺は急にドキドキとしてきた。

何を隠そう…。
俺の初恋の人は須藤さんだったけど、高校に入って最初に好きになったのは、
宮本ではなく、今、目の前にいる、この山木さんだったのだ。

高校に入って、俺に写真の現像の仕方を初めて教えてくれたのも山木さんだったし、
飛びぬけた美人ではないかもしれないけど、清楚で真面目な感じに、
入学したての俺は、たまらなく惹かれたのだ。

いつも優しい山木さんは、俺にとって、理想の姉みたいな存在だったのだ。

いや、千奈美姉ちゃんが理想の姉じゃない、とは言わないのだが…。

3331:2015/09/20(日) 05:18:49
実を言うと、俺は高校1年の時に、この山木さんに告ろうか、と思ったこともあったのだ。
でも、山木さんにはその時既に、2年年上の彼氏がいて、俺は諦めたのだった。

その彼氏も写真部の人だったらしいのだけど、俺とは入れ違いだから、会ったことはない。

その彼氏は頭が良くて、東京のK大に推薦入学したという話だった。

そして、山木さんも同じくK大に推薦で進むだろう、というのが最近の専らの噂だった。
何せ山木さんは、うちの高校でも常に学年で5番以内に入っているような才女なのだ。

3341:2015/09/20(日) 05:19:09
俺が引き伸ばし機にネガをセットしていると、山木さんが、
「最近の写真部はどうなの?」と、聞いてきた。

「どうって…。山木さんたちが辞めてからガタガタですよ。
相変わらず、真野ちゃんはヒステリーばかり起こしてるし…」と、俺は力なく笑った。

「そうなんだ…」と山木さん。

「せめて、次の高文連までは、山木さんたちに頑張って欲しかったんですけどね…」
俺がそういうと、山木さんは、
「ごめんね…。あんな時期に辞めるなんて、かわいくないやり方だったけど…」
と、伏し目がちに言った。

真野ちゃんと山木さんの方針の対立は極限に達していたから、それは仕方のないことだった、
と俺は思ったけど、それをうまく口に出して言う自信がなくて、俺は黙っていた。

3351:2015/09/20(日) 05:19:49
それからしばらく二人とも無言になって…。
それぞれ自分のネガを引き伸ばすのに熱中していた。

山木さんは何か、風景画のような写真を何度も何度も納得いくまで焼き直している様子で、
俺は俺で、この間の「カレーを食うズッキ」の写真を焼き直したり、
「涙を流す宮本」や「振り向く植村」の写真を引き伸ばしたりしていたのだが…。

定着液に溜まった俺の印画紙を見て、山木さんが驚いたように言った。

「えっ、女の子の写真ばっかりじゃん。びっくりー」
「えっ、おかしいですか?」
俺は少し、顔が赤くなるのを感じた。まあ、暗室の中では見えないだろうけど。

「別におかしくはないけど、何か意外ー」
「えっ?」
「ホラ、○○クンって、あまり女の子に縁のないイメージだったから…」

それは…。
童貞丸出しだったってことなのだろうか…。

俺が何気に傷ついていると、
「あっ、いや、ゴメン。別に変な意味とか、馬鹿にしてるとかじゃなくて、
○○クンは硬派っていうのか、大器晩成っていうのか…。
えっと…、女の子とかより、お寺や神社の写真ばっかり撮っているイメージだったから…」

山木さんがちょっとしどろもどろになりながら、必死にフォローしてきた。

3361:2015/09/20(日) 05:20:12
俺が黙っていると、山木さんは、
「でもちょっと複雑な気分だなー。○○クンのことはずっと弟みたいに思っていたから。
そのキミが女の子の写真を撮りだすなんてねー。しかも写っているのは可愛い子ばかりだし」
と言って、俺の焼いた印画紙をまた見返して言った。

妙な話になってきて、俺は少しどぎまぎした。

「そ、そんなことより、山木さんの写真、見せてください」
と言って、俺は水洗い槽に入ったままの、山木さんの印画紙を引っ張り出した。

それは何か、抽象画のような難解な写真だった。

学校の体育館への渡り廊下なのか、周囲が暗いトーンに覆われていて、
遠くのドアの向こうがハイライトになっている。廊下にはところどころ薄い陽が差し込んでいて、
廊下に影を織りなしている、というような構図だった。

よくは分からないけど、これは山木さんの心象風景を表しているのかな、と俺は思った。

ドアの向こうのハイライトは、未来をイメージしているのだろう。
では、全体を覆う暗さはいったい何なのか…。

俺は勝手にそんなことを考えていた。

3371:2015/09/20(日) 05:20:35

「何か、じっくり見られると、恥ずかしいけど…」と山木さんは囁いた。
「いや、俺はこういう写真、すごく好きです。でも…」
「でも?」
「真野ちゃんはこういうの、きっと認めないだろうなあ…」

山木さんは、それには答えず、
「これを高校時代の最後の写真にしようと思っていたの。
明日からは、もう受験勉強頑張らなきゃならないし」と、言った。

「受験勉強って…、山木さんはK大に推薦入学するって聞きましたけど?」
と俺が驚いて聞くと、山木さんは、
「K大、やめることにしたんだ。国立大を受験しようと思って」と力なく笑った。

「何でですか?もったいない! それに…、山木さんの彼氏ってK大なんでしょ?」
「…別れたんだ」
「えっ?」
「てゆーか、ハッキリ言うと、捨てられたの。私は結局遊ばれてただけみたいで…」
「そんな…」

俺が言葉を継げずにいると、いきなり山木さんが俺の背中に抱きついてきた。

「えっ!?」
「ゴメン…。しばらくの間、こうさせていて…」

山木さんは俺の背中で、泣いているようだった。

3381:2015/09/20(日) 05:20:59
山木さんが俺の背中で泣いている間、俺は何もできずに、
ただ木偶の坊みたいに突っ立っているだけだった。

その間、山木さんが途切れ途切れに言ったことをつなぎ合わせると、
山木さんは、夏休みに入ってすぐ、東京の彼氏の元を訪れたということだった。
それも、驚かせようと思って、何の連絡もせずに。

んで、彼氏のアパートを訪れると、彼氏は、東京でつくっていた他の女と、
セックスの真っ最中だった…、というような、
まあ、いかにも安い恋愛小説にありそうな、ベタな話だった。

俺はその話を聞いて、ムカムカと腹が立ってきた。

俺が新入生の頃から、ずっと憧れていた山木さん。
その山木さんの心と体を弄んで、紙屑みたいにポイと捨てた男がいる…。

そう考えると、その男をボコボコに殴ってやりたいような怒りとともに、
今すぐ山木さんを無理やりにでも犯して、
山木さんの気持ちを上書きインストールしてやりたいような、
複雑な感情に襲われて、俺は酷く狼狽した。

3391:2015/09/20(日) 05:21:20
まだ俺の背中で泣き続けている山木さんに、正面から向き直ると、
俺は山木さんの体を、ギュッと、きつく抱きしめた。

「えっ…!?」
と、狼狽した様子の山木さん。

俺は無言のまま、山木さんの唇を奪った。

「ちょっ! えっ? イヤ…」
驚いて、慌てたように、身をよじる山木さん。

「山木さん! 俺はずっと山木さんのこと好きでした。そんなやつのことなんか忘れて、
俺の女になってください!」

俺は再び山木さんの体をきつく抱きしめた後、むさぼるように山木さんの唇を求めた。

もう山木さんも拒まなかった。

『来た球を打て』という、雅さんの言葉が、俺の頭の中を支配していた。

3401:2015/09/20(日) 05:21:44
ねっとりとじっくりと、俺は山木さんの唇を貪った。
俺にとっては…、
これが大五郎の味のしない、初めてのキスだった。

(俺はもしかして、勢いに流されてこんなことをしているのか?)
キスをしながら、俺は自問した。

(いや、違う)

俺はもともと、このお姉さんみたいな人のことを、ずっと好きだったのだ。
でも、たまたま彼氏がいたから諦めたというだけの話であって、
いつでも俺は、隙あらばこの人のことをずっと狙っていたのだ。

と、そこまで考えてから、俺はまるでそれが、
自分に言い聞かせているような言い訳のように思えてきて、少しうろたえた。

ハッキリ言えば…、
昨日雅さんとセックスして、童貞を捨てていなければ、
こんなに調子に乗ったことは、できていないのではあるまいか…。

(違う!そんなことない!)

俺は、そんな気持ちを打ち消すように、山木さんの胸を、制服の上から鷲掴みにした。

3411:2015/09/20(日) 05:22:07
(これが…、女の人の、本物のオッパイか…)

いや…。
昨日触った、雅さんのオッパイが偽物などというつもりはない。

でも…。
どこまでも柔らかい山木さんのオッパイに触れて、俺は陶然となったのだ。

「くっ…!」
と、山木さんは、かみ殺すような声を一瞬上げたけど…、
別に俺の手を振り払ったり、嫌がるようなことはしなかった。

3421:2015/09/20(日) 05:22:26
「好きです…。山木さん!好きです!」
そう言いながら、俺は山木さんの首筋を吸った。

「あっ…!」
と、押し殺したような声を出す山木さん。

(本当に好きなのか?)

俺の中のもう一人の俺が問いかけてきた。

鞘師の顔が、宮本の顔が、めいの顔が、俺の脳裏をよぎった。

俺は思わず、首を強く振った。

(鞘師も、宮本も、めいも捨てる! 俺は今、山木さんが欲しい!)

俺は山木さんのセーラー服の裾から、右手を忍ばせていった。

3431:2015/09/20(日) 05:22:45
俺は山木さんのセーラー服の上着を乱暴にたくし上げて、
白いブラジャーの上から、山木さんの意外に豊満な胸を掴んだ。

「うっ…、うくっ…! うくうっ!」
山木さんはこらえるような嗚咽を漏らしながら、俺の手を制するように、抑えてきた。
でもその時すでに、俺の逆の手が山木さんの背中に回り、ブラジャーのホックを外していたのだ。

ポンッ、と弾けるように露わになる、山木さんのオッパイ。
ビンビンに尖った乳首を、薄暗く赤い安全灯が照らした。

「山木さん!山木さん!」
俺は叫びながら、その乳首にむしゃぶりついた。

「うっ… ううっ、ふううっ…!」
なすがままに俺に乳首を吸われながら、身もだえする山木さん。

3441:2015/09/20(日) 05:23:04
俺は山木さんの丸いお尻をスカートの上から撫でまわしてから、
今度はスカートの中に手を入れていった。

「ダメ…、それはダメ…」
切迫したような低い声で、一度山木さんが激しく抵抗したけど、
俺はお構いなしに、山木さんの恥丘をパンツの上から手のひらで包み込んだ。

(あっ!)
と、俺は思った。

山木さんのパンツは、まるでオシッコをもらしたみたいに、グショグショに濡れていたのだ。

3451:2015/09/20(日) 05:23:29
(すげえ…!)
俺は興奮しながら、山木さんのパンツの中に指を侵入させた。

グチョッ、グチョッ、グチョッ、グチョッと、
俺の指の動きに合わせながら、山木さんのそこがイヤラシイ音を立てた。

山木さんみたいな清楚で真面目なお姉さんが、こんな下品な音を立てながら、俺の指を下の口で受け入れている…。
そう思うだけで、既に俺のチンポも破裂しそうなほどに勃起していた。

「くっ! ううっ…! ふあっ! うわあーっ…!」
瞬間的に、大声を上げた山木さんは、次の瞬間、慌てたように自分の両手で口を塞いだ。

「うぐぅ… うぐぅ… うぐぅ…」
山木さんの手の隙間からくぐもった嗚咽が漏れた。

3461:2015/09/20(日) 05:23:48
よく見ると…。
山木さんは両目から涙を流して泣き続けているようだった。

その涙を見た瞬間、俺は正直言って、少し萎えた。
山木さんが嫌がっているなら、こんなことを続けても意味がない。

そう思って顔を覗き込むと、山木さんと視線があった。

山木さんは真っ赤な顔をしながら、
「お願い…。私のこと滅茶苦茶にして…。全部忘れさせてほしい…」
と、途切れ途切れに言った。

3471:2015/09/20(日) 05:24:08
山木さんの哀願の声を聞いて、俺はつい興奮して、
思わず中指を山木さんの奥深くへ、ズブっと突き挿してしまった

その瞬間、「ヒッ!」と、短く叫び声を上げた山木さんは、
体をガクガクと震わせて痙攣し、倒れそうになった。

俺は慌てて山木さんの体を支えた。

(もうイッちゃったのか、山木さん…。でも滅茶苦茶にしてほしいって言ったよな…。
じゃあ、まだまだこんなもんで済ませるわけにいかんだろう…)

山木さんが少し落ち着きを取り戻してきたのを見計らって、
俺は鞄の中から、さっき舞さんのコンビニで買った、サガミオリジナルの箱を取り出した。

3481:2015/09/20(日) 05:24:29
ボーっとした目のままで、コンドームの箱を見ている山木さん。

俺はおもむろに学生服のベルトを外して、ズボンを脱いだ。
パンツを下ろすと、ビンビンにそそり立った愚息が露わになった。

コンドームのパッケージを取り出して…。

俺はさっさとそれを一物に装着して、山木さんと一つになりたかったのだが、
いざ装着しようとすると、コンドームのゴムが絡まって、うまく嵌らない…。

(あっ!)
と、俺は思った。

よくよく考えてみると、俺は自分でコンドームをつける練習をしたことなどなかったのだ。
昨日は雅さんがつけてくれたし…。

3491:2015/09/20(日) 05:24:49
(落ち着け!落ち着け!)
俺は自分に言い聞かせたけれど、焦れば焦るほど、
ゴム同士がくっつくような感じになって、うまく装着できなかった。

俺が悪戦苦闘しているのを見て、
「あのさ…」
と、山木さんがおずおずと声を出した。

「先っぽの方に引っ張るようにして、逆の手でクルクル下ろしていけばいいんだよ」
「えっ…」

しばらくの沈黙の後、
「○○君って…、もしかして初めてなの?」
と、少し興醒めしたような口調で山木さんが聞いてきた。

3501:2015/09/20(日) 05:25:08
「ち、ち、ち、違いますよ!!!」

俺は意地になって、必死に否定した。

とはいえ…。
(これじゃ、何の説得力もないだろう)
俺は、恥ずかしさで顔が真っ赤になってくるのを感じていた。

とにかく、さっさとコンドームを着けることだ。

山木さんのアドバイス通り、片手で逆に引っ張るようにしながら下ろしていくと、
あんなに難渋していたのが嘘だったかのように、あっさりとゴムを装着できた。

正直、これほどホッとしたのは人生初めてのことだ。

(よし。初めてかどうか、山木さんに体で教えてやる! 俺はあの雅さんさえ満足させたんだからな!)
と、俺は自分に言い聞かせた。

351名無し募集中。。。:2015/09/24(木) 23:42:49
こっちが本スレになるんだな

352名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 03:24:32
よかったこっちにスレあったか

3531:2015/09/25(金) 04:47:22
本スレ落ちましたね(笑)
旅から帰ってきたらこっちで再開します。
2日ばかり全くネット見てなかったから、野中問題ってのも知らなかった(笑)

354名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 05:34:58
楽しみに待ってますね〜

355名無し募集中。。。:2015/09/25(金) 09:49:23
(笑)

3561:2015/10/01(木) 18:54:06
準備は万端整った。

(しかし、この狭い暗室の中で、どうすればいいんだろう…)
と、俺は少し考えた。

いくら「滅茶苦茶にして」とは言っても、いきなり立ってするというのも少々気おくれした。

何と言っても…。
俺にとっては、ずっと好きだった人とする、初めてのセックスなのだ。

昨日の雅さんとのセックスは、やっぱり一種の行きずりの恋のようなもので、
それはそれで凄く燃え上がったけれども、そこに愛があったかと聞かれると、
やはり、疑問符をつけざるを得なかった。

でも…。
山木さんとは違う。
俺にとっては、山木さんは憧れの人なのだ。

体だけじゃなく、山木さんの心も奪いたい。

山木さんを愛したい。
山木さんに愛されたい。

愛のあるセックスをしたかった。

3571:2015/10/01(木) 18:54:54
暗室の奥には、一応、長椅子がある。

しかし、この暗室は階段下のスペースなので、奥の方に行くに従って、
天井が低くなっている。動けば確実に頭を天井に打つような場所だ。

長椅子は諦めて、俺は引き伸ばし機の前の丸椅子に腰かけた。

「山木さん…。来てください」

エロ本で読んだ知識によると、いわゆる対面座位というのか…。

俺は山木さんと向かい合うような形で、膝の上に山木さんを抱え込むと、
再び彼女の体をギュッと強く抱きしめてキスをした。

ビンビンになった愚息が、山木さんのグショグショになったところにぴったり当たっている。

「はぁ、はぁ…」と、再び息を荒くした山木さんが、
「〇○クンと、こんな風になるなんて…、考えたこともなかった」
と、泣きそうな声で言った。

「俺は山木さんと初めて会った時からずっと、こうしたいと思ってました」
俺はそう言って、山木さんの目を見つめた。

3581:2015/10/01(木) 18:55:21
今度は山木さんの方から求めるようにキスをしてきた。

キスをしながら山木さんのスカートをたくし上げると、白いお尻に赤い安全灯の光が差して、
異様に艶めかしく見えた。

俺はもう、これ以上は我慢できなかった。

「山木さん、挿れますよ…」

山木さんがコクンと小さく頷くのを見て、俺は自分の一物に手を添え、山木さんの中へと導いていった。

3591:2015/10/01(木) 18:56:05
山木さんを貫いた瞬間、
「うっ…!」
と声を上げて、山木さんがまた慌てたように自分の口を両手で塞いだ。

山木さんは俺のものになったのだ。

山木さんの中は…、
ハッキリ言うと、昨日の雅さんみたいに、強烈に締まってきたりする感じはなく、
(同じ女の人でも、結構感じは違うもんだな…)
と、俺は思った。

でも次の瞬間、2人をそういう風に較べている、自分のゲスさ加減に気づいて、
俺は自分が恥ずかしくなった。

その時、山木さんが、
「い、痛い…」
と、小さな声で呻いた。

3601:2015/10/01(木) 18:56:42
(えっ…?)
俺は慌てた。

「痛いですか…? 山木さん、まさか初めて、なんてことは…?」

俺がそう聞くと、山木さんは、はぁはぁと荒い息を整えるようにしてから答えた。
「初めてってことないけど、私もあんまり経験多いわけじゃないし…、それに…」
「それに…?」
「○○クンの…、少し大きいんだと思う…」

恥ずかしそうな山木さんの声だった。

(昨日雅さんが言ってたこと、あながちお世辞でもなかったのかな…)

俺は少し誇らしげな気持ちになった。

3611:2015/10/01(木) 18:57:34
俺は少しの間、山木さんを落ち着かせようと、強く抱きしめたまま背中を撫でていたけれど、
そのうち、我慢しきれなくなって、耳元で聞いた。

「山木さん、動いていいですか?」

山木さんが無言のままコクンと頷いた。

俺がゆっくりと動き出すと、山木さんはもう感じまくっているのか、
「くぅっ…!」と、奥歯をかみしめるような声を出して、
顔全体を隠すように自分の両手で覆って、首を振った。

そのとき、俺は気づいた。
俺が動くたびに、山木さんのそこからは、生暖かい液体が、次から次と、
まるで尽きぬように湧き出していたのだった。

(これは…、気持ちいい…!)
締め付けとはまた違う、つゆだくの素晴らしい感触に、俺もだんだん陶然となってきた。

3621:2015/10/01(木) 18:58:20
俺はそろそろ本格的に動きたくなっていた。
それには、椅子に座ったままではやっぱり限界がある。

俺は山木さんとつながったままの体勢で、彼女を抱えるようにして立ち上がった。

「山木さん、俺の首に両手を回してください」

「こう…?」

俺のおでこに自分のおでこをくっつけて、上気した顔で聞いてくる山木さん。
俺は、山木さんの唇にチュッと短いキスをしてから、腰を前後に振り始めた。

「うわあっ!」

その瞬間、大声を出した山木さんが、とっさに自分の口を両手で押さえようとしたのか、
俺の首から手を離して、のけぞるようにバランスを崩した。俺は慌てて、山木さんを背中を強く抑えた。

「ダメ!ダメだよ…!○○クン…、これ、刺激が、刺激が強すぎる…、声が、声が…! うわあっ!」

3631:2015/10/01(木) 18:59:07
もともとが階段下スペースの暗室だから、山木さんのエッチな声が部屋中にものすごく反響した。

いくら校舎の隅とはいえ、いくら夏休み中で、校内に人が少ないとはいえ、
こんな声を響かせていたら、そのうち誰かに気づかれる。

また、そんな結果が容易に想像つくことが、余計に山木さんを興奮させているのだろう。
てゆーか、山木さんだけではなく、さっきから俺自身も、そんなスリルに異様に興奮していたのだ。

しかし、とにかく…。
駅弁は無理だ。
山木さんには悪いけれど、自分の口を押さえていてもらえるような体位でするしかない。

3641:2015/10/01(木) 19:00:35
俺はいったん山木さんを降ろすと、背中から山木さんを抱きしめた。

「山木さん、そこの机に肘をついてもらえますか…」

「えっ…、こう?」

言うとおりに肘を突いて前かがみになった山木さんの腰をつかむと、俺は後ろから一気に、
山木さんの奥深くまで突き刺した。

「ふあっ…!」

再び大声を上げかけた山木さんは、肘をついたまま、慌てたように両手で自分の口を押さえた。

「うぐっ…、うぐっ…、うぐっ…、うぐぐっ!」
俺のピストン運動に合わせて、嗚咽を洩らす山木さん。

(お望みどおり、滅茶苦茶にしてあげますよ)
と、俺は心の中でつぶやきながら、山木さんを突くスピードを速めていった。

3651:2015/10/01(木) 19:01:39
俺が動くに連れ、山木さんの泉がまた、こんこんと湧き出してきた。
それは俺のチンポどころか袋の方まで、ぐしょぐしょに濡らしていた。

あんまりヌルヌルになってきたせいで、そのうち、俺が突くたびに、空気が入るのが、
まるでオナラでもしているような、下品な音を山木さんのそこが立て始めた。

ブピッ、ブピッ、ブピッ、ブピッ…

「これイヤ! イヤだあっ…! 恥ずかしすぎるっ!」
と、山木さんが叫んだ。

ブピッ、ブピッ、ブピッ、ブピッ…

嗜虐心の出てきた俺は、素知らぬふりをして、
「山木さん、オナラしてるんですか?」と聞いてみた。

「違うのっ! 違うのっ! イヤだあっ!」
ブンブンと大きく首を左右に振りながら叫んだ山木さんだったけど、
また、ハッと気づいたように、自分の両手で口を押さえた。

ブピッ、ブピッ、ブピッ、ブピッ…
「うぐぅっ! うぐぅっ! うぐぅっ! うぐぅっ!」

3661:2015/10/01(木) 19:03:29
とりあえず
ここまでが本スレの補完

367名無し募集中。。。:2015/10/01(木) 21:06:20
乙です
こっちでもヨロシク

368名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 00:52:27
早く続きを

369名無し募集中。。。:2015/10/02(金) 14:41:14
見捨てられてなかった!

3701:2015/10/02(金) 20:23:43
それから俺は、山木さんのことを滅茶苦茶に突きまくった。

結局、山木さんは自分の声を抑えきれずに、何度も大声をあげた。

その声が暗室中に反響したけれど、俺も山木さんも、
もうそんなことには構っていなかった。

やがて、山木さんが何度も体をガクガクと震わせるのを見届けてから、俺も全てを解き放った。

3711:2015/10/02(金) 20:24:12
ことが終わった後、俺は山木さんを、暗室の奥の長椅子にいざない、
無言のままで、しばらく抱き締めていた。

俺は満ち足りた気持ちに包まれていた。

雅さんとのセックスも、もちろん最高に気持ちよかったけど、
好きな人とのセックスが、こんなに多幸感に包まれたものだとは…。

やはり、愛がなければダメなのだ。

山木さんはしばらくの間、呆然とした表情のままで俺に抱かれていたけれど、
やがて、俺の胸に顔を埋めて、また少し泣いた。

3721:2015/10/02(金) 20:25:44
前よりはかなりペース落ちると思うけど、ぼちぼち再開します

373名無し募集中。。。:2015/10/03(土) 08:16:22
楽しみに待ってます

374名無し募集中。。。:2015/10/04(日) 17:03:23
あげ

3751:2015/10/05(月) 04:54:16
それから…。

ようやくのろのろと身を起こした山木さんは、「はあ…」と一つため息をついてから、
びしょびしょに濡れた床を見て、「ヤダ…、これ…、私が…?」と言って、顔を赤く染めた。

「いや…、そんなこと、気にしなくても…」と、俺は言いながら、
とにかく鞄からタオルを取り出して、山木さんの体を拭いてあげようと思った。

山木さんの太もものあたりを拭くと、タオルに赤いものが着いた。

「えっ…、血…?」

俺が驚いていると、山木さんは言い訳するように話し出した。

「私も経験あるって言っても、まだこれが二回目だったし、初めての時はホントすぐに終わったような感じだったから…。それに…」
「それに?」
「〇○君の方が、彼のより、大きかったから…」

(山木さん、実質処女のようなものだったのか…)

俺はまた歓喜に包まれた。

3761:2015/10/05(月) 05:08:58
「私、初めての時は本当に痛いだけだったのに、今日は気が狂ったみたいに感じちゃって…。
自分がこんな風になるとか、思ってもいなかった。私、大きな声も出してたでしょ? 超恥ずかしいよ…」

そう言って、山木さんはまた俺の胸に顔を伏せた。

俺は山木さんのことがたまらなく愛おしくなって、ギュっと強く抱きしめた。

「山木さん、俺、山木さんのこと絶対大事にします」

(俺もこれから必死に勉強して、山木さんと同じ大学に入ろう。
そして、東京で同棲して、大学を出たらすぐに結婚したい!)

俺の妄想がそこまで飛躍した時、山木さんが静かに言った。

「ゴメン。最初に私の方から抱きついたりして、こんなことになるようなきっかけ作っておいて、すごく無責任とは思うけど…。
〇○君とは、やっぱり付き合えない…」

377名無し募集中。。。:2015/10/05(月) 10:01:36
りさちゃん‥…

378名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 01:15:53
あー残念

379名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 03:55:32
これでやりまくれるな

3801:2015/10/06(火) 05:37:25
「えっ…、どうして…」

俺はすっかり混乱した。
つい今まで、あんなに濃厚に愛を確かめ合った山木さんが、俺の手のひらから離れていくというのか…。

「ごめんね。○○君のことはもちろん嫌いじゃないよ。
うん…。私は好きでもない子と、絶対にこんなことしたりしないし」
そう言って、山木さんは俺のことを上目遣いに覗き込んで、さらに続けた。

「でも、やっぱり〇○君のことは、恋人っていうよりは、弟みたいにしか見れない。
さっきの私は、ただ単に、〇○君に慰めて欲しかっただけだったんだと思う…」

「そんな…」
「本当にごめん。私の気まぐれで、○○君の気持ちを弄んだだけみたいになっちゃったよね…」

そう言うと、また山木さんは顔を伏せて、静かに泣きだした。

3811:2015/10/06(火) 05:40:11
俺はどうしたらいいか分からずに、ただオロオロしていたけれど、
やっぱり山木さんを強く抱きしめずにはいられなかった。

「俺、山木さんのこと好きだったんです。高校に入った時からずっと」
「知ってたよ…。でも、ごめん。私はその気持ちに応えられない」

そんな会話を交わしながらも、
(いや、山木さんが謝ることじゃない)
と、俺は思った。

俺がずっと山木さんを好きだったというのは、確かに嘘ではない。
でも、今日は明らかに、失恋して弱っていた山木さんの心につけこんで、俺が強引に抱いたのだ。
それなのに、山木さんはそのことも自分のせいだと思っている。

それは違う。
悪いのは俺の方だ。

そのことを何とか山木さんに伝えたいと思ったけど、
どうにも適当な言葉が、俺には見つけられなかった。

382名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 06:39:28
来てた

383名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 12:33:01
きてる!!

384名無し募集中。。。:2015/10/06(火) 22:46:42
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

3851:2015/10/07(水) 03:03:29
そのまま、俺が木偶の坊みたいに突っ立っていると、
やがて、山木さんは俺から離れ、のろのろと衣服を整えると、自分の写真を片づけ始めた。

「もう、この暗室に来ることもないと思う。明日からは、受験勉強に集中しなきゃ…」
山木さんはそう言って、暗室を出ようとした。

「ちょっと待って!」
俺は思わず呼び止めた。

「えっ?」
と、小首をかしげる山木さん。

「山木さん、その写真、俺にくれませんか?」
「えっ、どうして?」

「その写真、高文連の大会に出したいと思うんです」
俺がそう答えると、山木さんは、少し困ったような顔をしてから、
「でも、私はもう部を辞めてるんだし、だいいち、真野先生が、こういう写真許さないんじゃない?」
と、寂しそうに笑った。

「いや、誰か幽霊部員の名前でも使って出せば、そこまで目くじら立てませんよ。いけませんか?」
俺がそういうと、山木さんは少し考えてから、
「〇○君のやりたいようにしていいよ」と、小さく笑った。

3861:2015/10/07(水) 03:18:26
俺の手元に一枚の印画紙を残して、山木さんは暗室から去って行った。
俺はその後もしばらく、放心状態のまま、その場に立ち尽くしていた。

酷い罪悪感と喪失感とに包まれたまま、何もする気力が湧いてこなかった。

その時、トントンと、暗室のドアをノックする音が聞こえた。

「は、はい!」

(山木さんが戻ってきたのか!)
そう思って急いでドアを開けると、そこにいたのは佐藤優樹だった。

「なんだ、優樹かよ…」
俺ががっかりしながら思わずそう言うと、
「『なんだ』って何よ!」
と、優樹はぷーっと頬っぺたを膨らませた。

「それで…、何の用だ?」
と俺が聞くと、優樹は
「ねえお兄ちゃん、幽霊見なかった?」
と、勢い込んで聞いてきた。

「幽霊? 何だそれ?」
俺が呆れて聞き返すと、
「さっき、小田ちゃんがこの近くで、変な叫び声聞いたんだって。
だから、『きっと幽霊じゃないか』って、まーちゃん言ったの」

387名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 13:24:29
ここでまーちゃんかw

388名無し募集中。。。:2015/10/07(水) 14:09:37
そういえば12期メンバー出す予定はないんですか?

389名無し募集中。。。:2015/10/08(木) 05:03:26
まーちゃん最近エロいからな

390名無し募集中。。。:2015/10/11(日) 11:59:33
良すれ発見!

391名無し募集中。。。:2015/10/13(火) 14:34:04
こっちに来てたのか

392名無し募集中。。。:2015/10/14(水) 06:31:47
一週間とかサボりすぎだろ
スレ削除すっぞこの野郎

3931:2015/10/15(木) 07:47:32
ごめんよ
2週間も有給とっちゃったから
仕事が溜まってどうにもならない

394名無し募集中。。。:2015/10/15(木) 12:33:23
おつおつ

395名無し募集中。。。:2015/10/15(木) 12:52:55
なるほど!じゃあのんびり待ってます

3961:2015/10/17(土) 03:31:25
とりあえず復刻版の方をちょっと書き足しました

397名無し募集中。。。:2015/10/20(火) 07:43:03
サンクユーが終わってこのスレに戻ってきました

398名無し募集中。。。:2015/10/27(火) 11:17:15
そろそろ更新して欲しい

399名無し募集中。。。:2015/10/29(木) 23:38:58
りほりほ卒業しちゃう…

4001:2015/10/31(土) 05:28:35
そろそろちょっと余裕が出てきたんで続き書こうと思ってたら
鞘師の一件で頭真っ白です(笑)

401名無し募集中。。。:2015/10/31(土) 18:06:31
ほんと予想外だったね

402名無し募集中。。。:2015/10/31(土) 22:58:09
ハロプロには残るからいる設定でいいと思うよ〜

403名無し募集中。。。:2015/11/07(土) 03:25:57
新狼になった途端やる気なくしててワロタ

404名無し募集中。。。:2015/11/30(月) 19:06:34
更新をまちわびて毎日スレをひらく

4051:2015/12/27(日) 05:26:39
鞘師卒業に対応してストーリー展開考え直してたら
今度はめいめいとかどうにもならん…。

406名無し募集中。。。:2015/12/27(日) 14:27:50
待ってるよー

407名無し募集中。。。:2015/12/27(日) 20:45:13
あーそかそか大変だなあ
気長に待つよ

408名無し募集中。。。:2016/10/16(日) 15:10:18
1年半ため込んでた狼のログと合わせて一気読みしましたーまさかこんなに面白かったなんて…もっと早く読めば良かった

それにしても鞘師・めいめい・香音と主要メンバー卒業でもう続けるのは難しいのかな・・・

4091:2016/11/15(火) 17:02:42
鞘師は海外留学
めいめいは宝塚合格で転校
みたいな続きもちょっと考えてみたのだが
ズッキが高校辞めて福祉の学校じゃさすがに話が難しい(笑)

410名無し募集中。。。:2016/11/18(金) 13:05:07
思い切って数年後卒業しみなバラバラになった後再会するところから始めてみるのは?

4111:2016/11/26(土) 09:22:42
「幽霊なんか…、いるわけないだろ…」
たぶん粘ったような声で、俺は優樹に言い返したのだと思う。

(それは幽霊じゃなくて、さっきの山木さんの声だ…)と俺はすぐに分かったけど、
いかに優樹とはいえ、そんなことを言うのは山木さんへの冒涜だと、俺は一瞬、カッと頭が熱くなった。

「でも、でも、幽霊の声を聞いたって!」
「知らねえよ、そんなの!」
「でも、でも、小田ンゴが! 小田ンゴがこの辺で聞いたって…」と優樹は言い続けていたけれど、

「何が小田ンゴだよ! 先輩だろ!? うるせえよ、お前!」と、俺は思わず、ドン、と優樹の肩を強く突いて、その場に突き倒してしまった。

床に倒れたまま、一瞬びっくりしたような目で俺を見つめる優樹。

「あっ、いや…、その…」
我に返った俺が言いよどんでいるうちに、優樹の瞳に見る見るうちに涙が溢れ出してきた。

「い、いや、す、すまん…」
「お兄ちゃんのバカー!」
大声で叫ぶなり、優樹は駆け出して行った。

4121:2016/11/26(土) 09:24:19
「おい、優樹…」
と、俺は一瞬口に出したけど、優樹を引き留める気力もなく、その場に立ち尽くしていた。

いくら優樹とはいえ、年頃の女の子だ。そんな子に暴力を振るって突き倒すなんて、いくらなんでもやりすぎだ。激しい嫌悪感に襲われながら俺が立ち尽くしていると、向こうの方から、小田が小走りでやってきた。

「あっ、○○クン、優樹ちゃん来なかった?」と息を切らしながら小田が俺に聞いてきた。

「来たよ…」

4131:2016/11/26(土) 09:25:31
小田がまっずくに俺の目を見つめながら話してきた。
「まーちゃん、どこに行ったのかな? もう…、練習中だって言うのに。私がこの辺で、変な声を聞いたって言ったら、勝手に『幽霊だ、幽霊だ』って大騒ぎしちゃって…。もう…、菅井先生は怒り出すし…。私、どうすればいいんだろう…」

俺は小田に言った。
「幽霊の声なんかじゃない、って、小田は分かってるんだろ?」
「えっ?」
小田が真顔で俺の顔を覗き込んできた。


「幽霊なんているわけないだろ。それは、この暗室から聞こえていた声だよ」
「えっ? 何?」
「小田だって分かってるんだろ? 女の子の声だよ」
「何? 何の話?」
まっすぐに俺の瞳を見つめる小田の顔を見ていると、俺はますます自分の頭が熱くなるのを感じてきた。
「俺と女の子がここで、抱き合っていた、って言ってるんだよ」

4141:2016/11/26(土) 09:26:40
両手で自分の口を塞いで、無言のまま、一歩、後ずさる小田。
「幽霊なんかじゃねえよ! ふざけんなよ!」
俺は一体、自分が何に対して怒っているのかも分からないまま、思わず両手で小田の肩をつかんだ。

「言わないから! 誰にも言わないから!」
突然、小田が叫んだ。

「えっ?」
俺が一瞬怯むと、小田はスルリと俺の手から抜け出して、
「ごめん! ○○クン、わたし、誰にもこのこと言わないから!」
と叫ぶと、突然駆け出して逃げて行った。

俺はそのままそこに立ち尽くしていた。

4151:2016/11/26(土) 09:39:55
俺は自分の頭が激しく混乱しているのを感じていた。

ずっと憧れていた山木さんと、いきなり成り行きでセックスしてしまったけど…、
付き合ってほしいという俺の懇願を拒絶して、山木さんは去って行った。

優樹や小田に怒りをぶつけて何になるというのか…。

俺は訳が分からないまま再び暗室に入ると、また写真の引き伸ばしを始めた。現像液の中から浮かび上がるズッキの、植村の、そして宮本の笑顔は美しかった。

「オレ、いったい何をやっているんだろう…」
引き伸ばしを続けながら、訳も分からず、熱い涙がこぼれてくるのを感じていた。

4161:2016/11/26(土) 17:47:54
家に帰ってくると、玄関には電気も点いておらず真っ暗なままだった。
両親は旅行に行ったままだし、姉ちゃんは一体どこへ行ってしまったのか。

台所のテーブルの上に、置手紙があった。
「アシカが熱出したから、急に呼び出されちゃった。今夜は帰らないかもしれないけど心配スンナ。カップラーメンでも食べてね」と、姉ちゃんの字で書いてあった。

食欲は湧かなかった。それより、安い酒でもくらって、何もかも忘れてしまいたかった。

(昨日の大五郎が残っているはず…)
食器棚の下の引き出しを探したけど、大五郎のペットボトルには、コップ一杯にも満たないほどの液体しか入っていなかった。

俺は諦めて外に出た。

4171:2016/11/26(土) 17:48:51
あてのないまま、駅の方に向かって俺は歩いた。

(『酒を飲みたい』なんて言っても、いまどき高校生に酒を飲ませてくれる店なんて…)
と、そこまで考えて、俺はまことさんの店のことを思い出した。

まことさんというのは、俺の住んでいる地域の兄ちゃんみたいな人で、もともとロックバンドのドラマーをして一旗揚げた人なのだが、最近は音楽活動の噂はさっぱり聞かず、もっぱらアウトドアで楽しんでいるような、まあ遊び人だ。そのまことさんは、夜はバーみたいな店をやっていて、細かいことは言わずに、高校生にでも飲ませてくれるという噂だった。

4181:2016/11/26(土) 17:50:06
俺は肝心の店の名前を知らなかったけど、以前に聞いていた場所に行ってみた。でも、それらしい店は見当たらなかった。

あたりを探して歩いていると、一軒、飲食店らしい店があった。真っ黒い壁に真っ黒いドアの妖しい雰囲気の店で、ドアにはただ一文字「℃」と書かれていた。

「こんな名前だったかな? でもバーって言う感じじゃないな…」

俺が店の前に佇んでいると、突然ドアが開いた。

4191:2016/11/27(日) 02:14:18
「ありがとうございました。またいらしてくださいね!」
そういいながら、ドアから出てきたのは、℃派手なコスチュームを着たお姉さんだった。
http://i.imgur.com/IhlkJwj.jpg

客の見送りに出てきたのだろう。俺は思わず目が点になった。
「何だこの店… 風俗店なのか…」

その時、見送りを終え、店内に戻ろうとするお姉さんと目が合った。
俺は最初はコスチュームにばかり気をとられていたのだが、この人の顔を見て、思わず「あっ!」と叫んだ。
「あなたは…、コンビニの…、舞さん!」
「えっ!?」

舞さんは俺の顔をまじまじと見つめてから、ため息をついて言った。
「はあ…。あのねキミ、こんなところまで舞のこと、ストーカーみたいに後をつけてきたの?」
「はい?」
「はいじゃないが」

4201:2016/11/27(日) 02:15:34
自体の成り行きがのみこめない俺に、舞さんは畳み掛けるように言ってきた。
「ねえ、ストーキングとか気持ち悪いって。どうしてそんな女の子が嫌がるようなことするのかな」
「ストーキング!? ち、違う!」
「違うって、じゃあどうしてこんなところにいるわけ?」
「そ、それはたまたま…」
「たまたまなわけないじゃん。あっ、そうだ。今朝のもキミ、わざとなんでしょ?」
「今朝の?」

「ほら、コン…、あんなの買って。舞がレジにいたからって、わざとああいうの買って、舞の反応見ようとしたんでしょ」
「えっ?」
「そんなことして、舞の気を引こうとしたってダメだからね」

最初は怒っているだけに見えた舞さんだったけど、だんだんとドヤ顔になってきた感じだった。
俺をからかって楽しんでいるのだろうか。それとも酒に酔っているのだろうか。

「あのねキミ。舞のことが好きなんだったらさ、変な小細工とかしなくていいから、男らしくまっすぐおいでよ、まっすぐ」
蓮っ葉な感じの笑みを浮かべながら、舞さんが俺を上目遣いで見上げてきた。

4211:2016/11/27(日) 02:16:32
何と答えたらいいのか…。
俺が戸惑っていると、店のドアが開いて、別のお姉さんが出てきた。
やはり際どいコスチュームだ。
http://i.imgur.com/QDnJvkq.jpg

「舞ちゃん、何かあったの?」
「あっ、舞美ちゃん。あのね、この子が…」

『この子』呼ばわりされた俺を、しげしげと見つめるお姉さん。
このお姉さんの顔には見覚えがあった。

「あれ、キミ千奈美の弟さんじゃない? やっぱりそうだ!」

4221:2017/04/04(火) 04:24:10
「あ、あなたは…?」

俺もそのお姉さんの顔をしげしげと見つめ返した。

(すごい美人だ…)
見つめていると、何故かこちらが恥ずかしくなるような気がしてきて、
俺は思わず目を伏せた。

『千奈美の弟』なんて俺を呼ぶところを見ると、千奈美姉ちゃんの友達なのか?

確かに見たことはある顔のような気がするのだが、どうにも思い出せない。

4231:2017/04/04(火) 04:47:43
そのお姉さんはニコニコとした笑みを浮かべて俺に近寄ってくると、
「××クン!? 久しぶりだねー! わあ!すっかり大人っぽくなって!
びっくりしたなあ!」と、いきなりフレンドリーな口調で話し出した。

「えっと、あの…、俺××じゃなくて○○ですけど…。
てゆーか、××って誰ですか?」

俺が呆れていると、そのお姉さんは、
「あれっ?」と、一瞬小首をかしげるような素振りを見せたのの、
「○○クンよね!分かってるって! 千奈美の弟クンよね!」と、何事もなかったように話をまとめようとした。てゆーか、俺の名前は絶対に忘れていたのだろう。

その堂々とした姿で俺も思い出した。

矢島舞美さん。

千奈美姉ちゃんの小学・中学時代の一番仲良しの同級生で、昔は毎日のように俺のうちに遊びに来てた人だ。

4241:2017/04/04(火) 05:02:55
俺はあらためて舞美さんを見つめ返した。

舞美さんが一番よく家に遊びに来ていたころは、俺は小学校低学年の、まだまだガキの時分だった。

だから、舞美さんのことを性的な目で見つめたことなど、俺にはなかったのだ。

その点、毎日夜のおかずにさせてもらってた、JK時代の須藤さんとは別次元の存在だ。

舞美さんというのは、俺にとってはあくまで活発で優しいお姉さんだったのだ。

そのお姉さんが…。

一体全体、どうしてこんな扇情的なカッコをしているのか…。

俺はつい舞美さんの全身をガン見してしまっていたのだろう。

「ちょっと…、ヤダ…」
それに気付いたのか、舞美さんが慌てて恥ずかしそうな表情をして、あたりを見回してから言った
「とにかく、店の中に入ってよ…」

4251:2017/04/04(火) 05:11:56
そんなやりとりをしている俺と舞美さんを見て、舞さんが、

「あっそ…。舞美ちゃんの知り合いだったんだ。舞じゃなかったんだね。はいはい…。どうせそうだよね」

と、なぜかやさぐれた表情でブツブツ言いながら、先に店の中に入って行った。

「?」という表情で俺を見つめる舞美さん。

「さあ…」と俺が答えると、「いいから入って」と、舞美さんは俺の腕をギュッとつかんで店の中に誘った。

(あっ!)
舞美さんの小ぶりなオッパイが俺の腕に触れて、俺はドキドキした。

4261:2017/04/05(水) 01:40:04
舞美さんに引っ張られるように入った店の中は暗かった。

カウンターとボックス席が4つ。
カウンターの横にはポールダンスの棒があって、妖しげなピンク色のスポットライトが当たっていた。

(この店はいったい…?)

ボックス席に座らされた俺が考えあぐねていると、舞美さんが開口一番、「ね? このお店のことは千奈美には内緒にしてね、お願い」と、俺の耳元でささやいた。

「内緒ってことは…、あの…、もしかして、まさか風俗関係とか…」

俺がそこまで言いかけたとき、「風俗なわけないじゃん!」と、舞さんの怒ったような声が背後から降り注いできた。

「舞美ちゃん! この子、舞美ちゃんの何なの!? 風俗とか失礼すぎ!」
と、おかんむりの舞さん。

舞美さんはそれには答えずに、「あのね、一応『ガールズバー』って話だったんだけど…」と、困ったように顔を赤らめながら言った。

4271:2017/04/06(木) 04:21:35
「ガールズバー、ですか…」

正直言って、高校生の俺には「ガールズバー」というのがどういう形態の店なのか、分かるはずもなかったのだ。ただ、千奈美姉ちゃんの友達の舞美さんの働いている店が、風俗店のような店ではない、という話を信じたい気持ちでいっぱいだった、というのが正直なところだったのだ。

俺が黙り込んでいると、「○○クンはどうしてこんなところに来たの?」と、舞美さんが俺の目を覗き込むようにして聞いてきた。

「俺は…、まことさんの店を探していて…」

そういうと、舞美さんが舞さんと、目線を交わし合ってから、俺に向き直って言った。

「まあ、ここが、まことさんの店なんだけど…」

4281:2017/04/07(金) 04:53:30
「えっ?」
「正確には、まことさんの店『だった』ってことになるけど…」

舞美さんが説明してくれた話を要約すると…。

ここは確かにもともと、まことさんの店「east cloud」のあった場所なのだが、まことさんはアウトドアでの遊びが過ぎて経営が思わしくなくなり、半年ほど前に店をたたんだのだという。その後、まことさんのバンド時代からの後援者だったという山崎さんというおじいさんが、後を引き取ってこの店を出したのだということだった。

「『山崎さん』って、どこかで聞いたことある名前だな…、あっ、そうだ!」

この間、雨の晩に成り行きで田村と相合傘をしてしまったとき、田村たちがバイトしている『コーヒーとホームメイドパイのお店 ANGERME』は、「山崎さんというおじいさんが、行き当たりばったりで開店した」という話を、俺は田村から聞いていたのだった。

その話を舞美さんにすると、「ああ、そうそう。アンジュルムもそうだし、その前にあった『スマイレージ』も、それにホラ、千奈美たちがバイトしていた『BERRYZ工房』も、みんな山崎さんの店なんだよ」と、舞美さんは笑った。

429名無し募集中。。。:2017/04/10(月) 01:32:17
来てた(笑)

430あぼ〜ん:あぼ〜ん
あぼ〜ん

4311:2017/04/28(金) 04:33:39
「そうなんですか…」
正直、よくわからなかったけど、成り行きで俺は相槌を打った。

舞美さんは「でも、ガールズバーって聞いてたから…、こんな感じの店になるとは正直思ってなかったんだけど…」と言って顔を赤らめた。

「はあ…」と俺。

一瞬、沈黙が流れた。

舞美さんはその沈黙をかき消すように、「でも○○クンは、どうしてまことさんの店なんか探していたの?」と、微妙な笑みを浮かべながら、俺を上目遣いで覗き込んで言った。

「酒を飲みたかったんです」
「えっ?」
「ムシャクシャすることがあって…、酒を飲みたかったんです」

舞美さんは一瞬真顔で俺を見つめた後、「じゃ、飲もっか」と、満面の笑みを浮かべて言った。

「えっ?」と俺が声を上げるのと、「ちょっと!舞美ちゃん!」と、舞さんが怒ったように制するのが同時だった。

4321:2017/04/28(金) 04:53:46
「えっ?ダメ?」と振り返った舞美さんに、舞さんは「ダメに決まってんじゃん! だいたいこの子、高校生だよ!」と言って口をとがらせた。

舞美さんは「うーん…」と、少し考え込むようなしぐさをした後、「もう他のお客さんみんな帰ったし…、ちょっとくらいいいんじゃないかな」と小首を傾げてから、「舞ちゃん、もう看板仕舞ってちゃってよ」と、笑みを浮かべて言った。

舞さんは一瞬ポカンと口を開けてから、「はいはい…。でも、知らないよ、舞」と呆気にとられたような口調で呟いた。

「○○クン、何飲みたかったの? ビール?焼酎?」と舞美さん。
「あっ、はい…、でも俺、そんなにお金持ってないし…」
「お金なんて気にしなくていいよ。キミと私の仲じゃん。何でも好きな物飲んでいいよ」
「じゃあビールで…」
「舞ちゃん、ビール二つ!」

ちょうど看板を仕舞い終えたところだった舞さんは、呆れたようにこちらを見てから、返事もせずに、グラスにビールを注ぎ始めた。そして、しばらくしてから三杯のグラスをお盆に載せてやってくると、お盆をテーブルに置いて、自分もどっかりと俺の横に腰を下ろした。

そんなことにはお構いなし、といった感じで舞美さんが「じゃあみんなで乾杯しよう!」と笑った。

「乾杯!」と舞美さん。
「あ…、乾杯!」と慌てて応じる俺。
怒ったような顔をしながら無言でグラスを持つ舞さん。

4331:2017/04/28(金) 05:06:37
俺は(どうにでもなれ…)と思いながら、ビールを喉の奥に流し込んだ。

今までビールは苦いだけだと思っていたのに、グーッと一気にビールを注ぎ込むと、何だか甘いような感じの味がして、俺は少し驚いた。(あっ、これは旨いかも…)

そう思いながら俺がグラスの3分の1ほど飲んでテーブルに置いた時、舞美さんはまだゴクゴクと飲み続けていて、結局半分くらいを飲み干してからテーブルに置き、「ああ、美味しい!」と笑った。舞さんは、そんな俺たちを呆れたように見てから、ちょこんと一口だけ口をつけてグラスを置いた。

「美味しいね!」と舞美さん。
「は、はい…」と俺。
「…」と舞さん。

4341:2017/04/28(金) 05:22:45
「でも高校生の○○クンが、お酒を飲みたいほどムシャクシャするって、どんなことなの? よかったら、お姉さんに話してみなよ」と、舞美さんが笑った。

「は、はあ…」と、俺が言い淀むと、
「昨日も飲んでたくせに」と、ぼそっと舞さんが言った。
「えっ、なあに?」と小首をかしげる舞美さん。

俺はいちいち俺に突っかかってくる舞さんが、段々と小憎らしくなってきた。

「セックスまでしたのに、俺と付き合えないって女の子がいうから、ムシャクシャして…」
俺はわざと舞さんに当てつけるように露悪的な口調で言った。

「えっ?」と舞美さん。
「!」と、驚いたように両手で口を押える舞さん。

4351:2017/04/29(土) 03:31:53
沈黙が流れた。

舞さんは真っ赤な顔をしながら目を伏せていた。

(俺のバカ! 調子乗ってこんなこと言って…)と、俺が後悔しかけた時、
「そっか…。○○クンもそんな歳になったんだ。早いなあ」と舞美さんが笑った。

「えっ?」
救われたような気持ちになって、俺が思わず舞美さんを見上げると、
舞美さんは「○○クンももう高校生だもん。そりゃ、いろいろあるよね。うん。いろいろ経験するといいよ」と、優しく俺に微笑みかけてきた。

俺は思わず聞かずにはいられなかった。
「舞美さんにも、やっぱりそういうこと、いろいろあったりしたんですか?」

「そりゃね。誰だって高校生くらいの時は、そういうことあると思うよ」と、舞美さんは爽やかな笑みを浮かべた。

(この舞美さんも、やっぱりいろんな男といろんな経験しているのか…)
と、俺が思わずゲスな想像を浮かべた時、

「舞は…、そんなこと全然なかったもん…」と、舞さんが拗ねたような口調でぼそりと呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。

4361:2017/04/30(日) 05:02:43
俺が舞さんのそんなつぶやきに思わず聞き耳を立てていると、
そんなことには気づきもしないように、舞美さんが、
「○○クンは、その子のこと、そんなに好きだったの?」と探るような目で俺を見上げながら聞いてきた。

「好きだった、と言い切れればいいんですけど、正直、自分でもよく分からないから、余計にムシャクシャしているんです」と俺は正直な気持ちを言った。

「そっか…」と舞美さんが言うのと、「何よそれ。意味わかんない!」と舞さんが言うのが同時だった。

「ちょっと、舞ちゃん…」と、舞美さんが舞さんをたしなめようとしたけど、舞さんは、
「別に大して好きでもない子とエッチして、その子に振られて、ヤケ酒飲んでるってだけじゃん。何よそれ」と、怒ったような口調で言った。

4371:2017/05/01(月) 04:17:18
「えっ?」
俺が思わず二の句を継げずにいると舞さんは、
「だってそうじゃん。それにその子もその子よ。別にキミじゃなくても、エッチさえできれば誰でも良かったんじゃないの?」と、冷たく言い放った。

「おい、ちょ、待てよ…」
俺は山木さんが馬鹿にされたような感じがして、カッと頭が熱くなった。

思わず立ち上がろうとした俺を制して、舞美さんが
「ダメよ舞ちゃん! そんなこと言っちゃ!」と厳しい口調でたしなめた。

舞さんは「だって…!」と、何か言いかけたけど、舞美さんの厳しい視線に遮られて、「わかったよ…」と、小さな声で不服そうにつぶやいた。

4381:2017/05/03(水) 04:21:57
沈黙が流れた。

俺は、何か興醒めしたような気分になって、思わず壁の時計を見上げると、舞美さんも連られたように時計を見てから、「いけない、もうこんな時間…」とつぶやいた。

俺が舞美さんを見返すと、舞美さんは「ごめんね。そろそろ閉店なの」と笑った。

俺が慌てて「あっ、いくら払えばいいんですか?」と聞くと、「今日はお金はいいよ」と舞美さんは笑ってから、「あのね、舞ちゃんを家まで送ってあげてくれるかな?」と、俺を上目遣いに見てから言った。

「舞美さんはまだ帰らないんですか?」
「うん。私はまだちょっと用事があるから…」

4391:2017/05/03(水) 04:35:53
それからしばらくして…

舞さんが私服に着替え終わるのを待ってから、俺たちは舞美さんに見送られて店を出た。

舞さんと2人ならんで歩いて、大通りに出て…
舞さんはしばらく無言のまま歩いていたけど、「ねえ…、舞美ちゃん、私たちを追い返して、きっとこれから山崎さんと会うんだよ」と、むすっとした表情のまま、突然俺に話しかけてきた。

「えっ? 山崎さんって…」
「さっき言ってた、オーナーのおじいちゃん」

俺は返事に困ってしまった。

舞美さんとそのおじいちゃんが会うなんて言われても…。
それは単に仕事の上での話なのか、それとももっと深い意味でもあるとでもいうのか。

俺は一瞬カッと頭が熱くなったけど、それを舞さんに確かめる勇気も無くて、無言のまま歩き続けた。

4401:2017/05/04(木) 05:13:30
俺が黙って歩いていると、舞さんは「ねえ、怒ってる?」と言って、俺の目を上目遣いに覗き込んできた。

「えっ?」
「さっきのこと。『エッチさえできれば誰でも良かったんじゃないの』とか、言っちゃったけど…」

俺は一瞬またカッと頭が熱くなったけど、気持ちを抑えて黙っていた。

「ごめんね。舞、あんな風にいうつもりはなかったんだ。怒ってるよね?」
「別に…、怒ってはいませんけど…」

441名無し募集中。。。:2017/05/09(火) 23:26:32
まいまいみ楽しみにしてます

4421:2017/05/14(日) 04:52:27
超低速進行で申し訳ないけど(笑)
読んでくださってありがとうございます

4431:2017/05/23(火) 02:51:16
「怒ってはいません、けど…?」
俺の言葉を鸚鵡返しに繰り返すと、舞さんは俺の目を上目遣いに覗き込んできた。

「なんか、気持ちがモヤモヤするって言うか…」
俺が答えるか早いか、舞さんが「うん…。なんか舞もさっきからずっとモヤモヤした気分なんだ」とつぶやいた。

俺が言葉に窮して無言のまま歩いていると、「ねえ…」と舞さんが話しかけてきた。

「はい」
「もう一杯、一緒にお酒飲まない?」
「はい?」
「はいじゃないが」

少し口をとがらせて、俺を見上げる舞さん。

「でも、舞さん、『未成年は飲んじゃダメ』って…」
「昨日もさっきも飲んでたくせに、こんなときだけ未成年アピールして…、ズルいぞ!」

ちょっと酔っているのか、座ったような舞さんの目つきだった。

4441:2017/05/23(火) 03:17:09
そう言われると、俺の中にも少々やさぐれた気持ちが蘇ってきた。
俺はもともと、今日はヤケ酒を飲んで、山木さんとのことを忘れたい気分だったのだ。

「じゃあ…、飲みましょうか」
俺がそう答えると、「うん。舞も飲む」と、舞さんがニコリともせずに言った。

俺は何も考えずに、舞さんの進むにまかせて歩いていたのだが、よくよく考えると、舞さんと俺は、駅や繁華街とは逆の、丘の方に向かって歩いていた。

(どこに向かって歩いているんだろう?)と俺は思った。

丘の上といえば…。
港を見下ろす公園と、外国人墓地、そしてその丘を越したところにある2軒の古いラブホテルくらいしか俺には思いつかなかった。

4451:2017/05/23(火) 03:18:50
(まさか舞さん、いきなり俺をラブホに連れ込む気か…?)

そう思うと俄然強めに緊張してくる俺であった。

「あ、あの…、舞さん」
「何?」
「えっと、こっちの方には…」

俺がそう言いかけた時、舞さんが「そこのコンビニでお酒買って、公園で飲もう」と俺に向かって言った。

「公園ですか?」
「イヤ?」
「いえ、別に…」

ホッとしたような、ガッカリしたような気持ちになる俺であった。

4461:2017/05/24(水) 05:04:28
コンビニに入ると舞さんは、氷結のもも味を選んで籠に入れた。俺はちょっと考えた後、スーパードライの500ミリを手に取った。

「いいからこっちの籠に入れなよ」と舞さんは俺からスーパードライの缶を奪うと、すたすたとレジの方に行って、さっさと会計を済ませてしまった。

「自分の分、払いますよ」と俺は言ったけど、舞さんは「このくらい、いいよ」とそっけなく言って店を出ると、すたすたと公園の方に歩き出した。

俺は慌てて舞さんの後を追った。

4471:2017/05/24(水) 05:26:38
コンビニを出てからダラダラとした坂を登り詰めて、ちょっと曲がったところに公園はあった。

この公園は地元ではそれなりに有名な観光スポットで、俺もガキのころから幼稚園の遠足とかで何度か来たことがあったけど、こんな夜更けに来たのは、初めての経験だった。

目の前には、港と街の夜景が広がっていた。

「わあ…」と俺は思わず口に出した。
港を取り巻く街の灯りと、波止場に佇む貨物船のきらびやかな灯火。

自分の生まれ育った街の夜景が、思いのほか美しいことに初めて気がついて、俺は少し高揚した気持ちになった。

(カメラを持ってくるんだった)と思いながら、俺が立ち尽くしていると、舞さんはそんな俺の気持ちは一切分からないかのように、「ねえ、あそこのベンチに座ろう」と、俺の袖を引っ張った。

4481:2017/05/24(水) 05:34:57
舞さんと二人並んでベンチに座ると、「じゃあ、飲もっか…」と、ぎこちない素振りで舞さんが言った。

2人それぞれ、プシュッ、と缶の蓋を開け、「乾杯…」と言って、カチリと缶をぶつけ合った。

スーパードライを喉の奥に乱暴に流し込む俺。横を見ると、舞さんもちょっと無理矢理気味に氷結を喉に流し込んでいる。

「ゴホっ…」とせき込む舞さん。

「大丈夫ですか?」と俺が心配して聞くと、「大丈夫だよ、こんなの」と、投げやりな口調で舞さんが返事をした。

4491:2017/05/24(水) 05:48:15
俺はもう一度港の夜景に目をやってから、ゆっくりと周囲を見渡した。

すると…。

最初は気がつかなかったのだが、だんだん目が暗闇に慣れてくると、公園のあちこちのベンチには、たくさんのカップルがいて、抱き合ったり、キスをしていたり、中にはもっと激しいことをしている連中もいるのが、少しずつわかってきた。

ベンチだけでなく…

公園の周囲には、停まっている車もたくさんあって、それぞれの車内には人影があって…。
中にはゆらゆらと揺れている車さえあるのであった。

(ここはそういう場所だったんだな)と、俺は初めて気付くと、ちょっと頭がカッと熱くなってきた。

舞さんはというと…。
そんな周囲の状況に気付いているのかいないのか、何事もないように、氷結の缶をちびちびと飲み続けているのであった。

4501:2017/05/25(木) 05:09:51
俺はスーパードライを一口ゴクッと飲んでから、舞さんに声をかけた。

「舞さん…」
「何…?」
「あの…、周り見えてますか?」
「…ムカつく」
「えっ…?」
「何かムカつく!」

舞さんはそういうと、氷結の缶をゴクンと飲んでから、俺に向き直って言った。

「舞美ちゃんってば…、舞のこと、子ども扱いばかりして! 超ムカつく!」
「は、はあ…」

舞さんの目には、周りの景色は入っていないようだった。

4511:2017/05/26(金) 04:18:47
それからしばらくの間…。
俺は舞さんの愚痴ともつかぬ話を、ただ一方的に延々と聞かされ続けたのだった。

曰く…、
舞さんと舞美さんは、町内の子供会で、舞さんが小学校に入ったころからの付き合いだということ。
そして、そのころから今に至るまで、舞さんはずっと舞美さんに子ども扱いされているていうこと。

そのくせ、今回は、帰省ついでに舞美さんに誘われてバイトをしたけど、あんな際どい衣装の店だなんて、ちっとも聞いていなかったということ。

店には舞美さんの他にも何人かの女の子がいるけど、みんなが舞さんのことを子ども扱いしているということ。

「だからさ、いろいろ思うことはあったけど、店の誰にも…、素直に本心を話すなんて、できないかもしれないって」
「はあ、そうなんですか…」
「でもね、私子供じゃない…」

そう言うと、ちょっと座り気味の目で、まっすぐに俺を見つめる舞さんだった。

4521:2017/05/26(金) 04:41:53
正直、(困ったな…)と思いながら俺は舞さんの話を聞いていたのだけれど。

そのうち、舞さんはもっと困ったことを言い出してきた。

「だいたい、キミだってさ…」
「はい」
「昨日は舞のこと『きれいだ』なんて言ったくせに」
「はあ」
「今日は『違う子とエッチした』とか、ぬけぬけと話しだして」
「…」
「舞のこと、馬鹿にしてるんでしょ!?」
「いえ…、そんなつもりは…」

4531:2017/05/26(金) 05:02:15
舞さんは、それから何かまたぶつぶつと話し出したのだけど…。

正直言って、俺は舞さんの話がもうほとんど全然頭の中に入ってこなかったのだった。
というのも…

花壇を挟んで俺たちの向かいのベンチに座っているカップル…、何かすごい美人とイケメンのカップルなんだけど、その二人が俄然強めに愛を確かめだして…、女の人のオッパイなんか、ほとんど丸出しといった感じで、イケメンの手に激しく揉みしだかれ始めたからだった。

(ど…、℃エロいだに…!!)

舞さんのことなんかそっちのけで、ほとんどガン見、という感じで俺は興奮しながらそのカップルを見ていたのだけど、瞬間、その美人と視線が合って、俺は腰が抜けそうになるほど驚いたのだった。

(ちょ! あれ、真野センセイじゃね?!)

俺が驚くのとほとんど同時に、ハッとした感じで俺の方を凝視してくる、その美人。

(ヤバい!)

俺は慌てて、舞さんを押し倒すようにして、真野ちゃんから視線を逸らせた。

「えっ?何!?何!?」と、切迫したような低い声を出しながら、俺を見つめる舞さん。

「あ…、あの…」俺が釈明しようとするより早く、「そんなに舞のこと、好きになっちゃったの?」と、とろんとした目で、舞さんが俺を見上げてきた。

「いや、それは…」
話し出そうとする俺の唇に、舞さんの唇がぴったりと重なり合って、押しとどめてきたのだった。

4541:2017/05/27(土) 00:40:49
一応貼っておくか
https://www.youtube.com/watch?v=orxN4z4Yny0

455名無し募集中。。。:2017/05/28(日) 08:17:56
これじゃマイマイがまるで馬鹿ビッチみたいだろ



いいね

4561:2017/05/30(火) 03:28:12
舞さんの舌がチロチロと動き出すと、俺は反射的に舞さんの背中に手を伸ばしてギュッと抱きしめてしまった。

舞さんの薄手のTシャツは汗でしっとりと湿っていて、舞さんのぬくもりが俺の掌にもハッキリと伝わってくるようだった。

(舞さんの体って、プニプニしていて、触ると気持ちいいな…)と俺は思った。雅さんや山木さんの体が固かった、というのではないけれど、舞さんの体を触っていると、その柔らかさに陶然となりかけて、俺は少し焦ってきた。

4571:2017/05/30(火) 03:28:49
(さすがにこのまま突っ走ってしまうのはマズいのではないだろうか…)
俺の中の良心が俺を咎めた。

舞さんは、俺が舞さんを好きで押し倒したのだと思い込んでいる。
でも、俺は真野ちゃん似の美女の視線を逃れようとしただけなのだ。そう思っている今時点でも、正直、その美女のことが気になって仕方ないというのが本当のところなのだ。

そんなことを考えている間も舞さんの舌はチロチロと動き続けて、俺の愚息はどんどん元気君になり続けていたのだった。

4581:2017/05/30(火) 03:29:51
いちおうお約束
https://www.youtube.com/watch?v=ccu7rWRUR8U

4591:2017/05/30(火) 03:32:20
雅さんは『来た球を打て』と言ったけれど…。

昨日その雅さんに童貞を奪ってもらい、今日は昼過ぎに山木さんを抱いてからまだ半日しか経っていないのだ。

それも…。
雅さんには憧れを感じたし、山木さんには淡い恋心があったけど、舞さんのことは…。

ハッキリ言うけど、「可愛い人」とは思うけど、「好きな人」とは違うのだ。

それなのに…。
(このまま突っ走ってしまうのは、人間のクズというものではないだろうか)と俺は強く感じた。

俺は意を決して、(本当のことを言おう)と思った。

4601:2017/05/30(火) 03:46:57
舞さんからいったん体を離すと、舞さんは「?」という顔で俺を見つめた。

「舞さん、あの…」
言いかけた俺の言葉を遮るように、「あのね、もう『舞さん』じゃなくて、『舞』って呼んでいいんだよ!」

そう言うと、舞さんは俺をギュッと抱きしめて、またキスを求めてくるのであった。

勢いに流されてしまいそうになった俺であったけど、理性のかけらと、舞さんのどうしようもない地雷女臭が俺をかろうじて押しとどめた。

(舞さんの親友は光井センセイなんだぞ!)
俺は心に強く言い聞かせた。

4611:2017/05/30(火) 03:48:14
再度身を離した俺に、「どうしたの?」と怪訝そうに聞く舞さん。

「あのね、舞さん…」
「だから『舞』って呼んでいいって…」
「俺、舞さんのこと、『舞』なんて呼べないよ…」
「やさしいんだね。分かった。キミがそう呼びたいんなら、舞はそれでもいいよ」

「えっ?」と俺が正直困りかけた瞬間、もう一度舞さんが俺に抱きついてきて、ぽつりとつぶやいた。
「舞、ずっと、ずっと、独りっきりで寂しかったんだ」
はっとして、舞さんを見ると、舞さんの両目から一滴の涙がポロリとこぼれてきた。

4621:2017/06/01(木) 03:29:33
舞さんの涙を見た瞬間、俺は反射的に舞さんの躰をギュッと強く抱きしめてしまった。男の大半はそうだと思うけど、俺も女の涙には弱いのだ。

「舞さん…」
そう言って俺が舞さんの背中をまさぐっている間も、舞さんはずっと一人語りを続けていた。

「舞の家、コンビニやってるから、子供の時からパパもママも仕事で忙しくて、舞はずっと独りぼっちで…」

俺の家も両親は共働きだし、姉ちゃんは姉ちゃんで一人であちこち遊びに行っちうから、(そういや俺もずっと独りぼっちだったなあ)と、俺は思った。

舞さんが愛おしくなってきて、思わず、舞さんの栗色の髪に顔を埋める俺。

「東京に行ってからもさ…、夏休みになったら、彼氏は舞に断りもせずに、勝手に友達と遊びに行っちゃうし…」

(えっ…?)

「舞はいっつも独りぼっちなんだもん…」

(彼氏いるって…。いや、それ全然独りじゃないだろ…)

4631:2017/06/03(土) 04:45:23
舞さんの話を聞いていて、俺は完全に白けた気持ちになりかけたけど、その後に、嗜虐的な感情がふつふつと湧き起こってきた。

(そういうことなら…、そんなに寂しくて抱いてほしいって言うんなら、お望み通りに抱いてやろうじゃないか! そして彼氏と俺のどっちがいいか、体で比べさせてやる!)

今度は自分の方からキスをして舞さんの独り語りをやめさせた俺は、舞さんのTシャツをほとんどまくり上げるようにして、ピンクのブラジャーの上から荒々しく舞さんの乳房を揉み始めた。

「う、う、ふん…」と甘い声を漏らしはじめる舞さん。

俺はブラのカップの隙間から強引に指を入れると、舞さんの乳首を摘まんで転がした。

「あ、あん、あん」と、眉根を寄せて切なげな表情を浮かべる舞さん。

4641:2017/06/03(土) 04:47:04
胸を揉みながらふと見ると、舞さんの胸と脇の間には、何か乳首のような突起物があることに、俺は気がついた。

(なんだろう…、これ? 副乳ってやつか…?)

思わず、そこに俺は口をあてがって、吸ったり舐めたりしていたのだけど…、

「ねえ…、あのさあ、何やってんの?」と、イラっとした口調で舞さんが抗議してきたので、俺は慌てて舞さんの唇をまたキスで塞いだ。

それから舞さんの背中に手を回して、ブラのホックを外すと、舞さんのこんもりとしたオッパイが目の前に露わになった。

「きれいだよ、舞さん」
俺がそう言ってしばらく眺めていると、舞さんはあたりを見回してハッとして、初めて周囲の状況に気付いたらしく、「ちょっ、周りに結構人いるじゃん! ヤバいって! 誰かに見られてるかも!」と、切迫したような低い声を上げながら、慌ててTシャツの裾を下げようとした。

「大丈夫。みんな自分たちのことに熱中してて、俺たちのことなんか見ちゃいないよ」

俺はそう言うと、舞さんの下ろしかけたTシャツの中に強引に頭を突っ込んで、舞さんの尖った乳首を口に含んだ。

「あ、アン、だめっ、アン…」
舞さんの舌っ足らずな甘い吐息が響いた。

4651:2017/06/03(土) 04:59:58
乳首を吸いながら、俺は舞さんの太ももに手を這わせ、ミニスカートの奥へと進めていった。

俺の指がパンツの裾に触れた時、「だめ…」と囁いて、舞さんは俺の手を上から抑えようとした。

俺は構わず、パンツの中に強引に指を進めていった。
ヌルっとした感触と、思ったよりも熱い舞さんの体温。
瞬間、「あんっ!」と甲高い声を上げてから、慌てたように両手で自分の口を押える舞さん。

俺は舞さんの顔にぴったりと自分の顔が付きそうになるくらい近い距離で、舞さんの目を見つめながら、舞さんの熱い蜜壺の中でゆっくりと指を動かした。

「だめぇっ…」とくぐもった声を上げながら、俺の手を上から抑える舞さん。
無言のまま、俺が指を動かし続けると、ヌチャヌチャとしたいやらしい音があたりに響いた。

「ねえっ…」
ヌチャッ、ヌチャッ、ヌチャッ…

「ホントに…」
ヌチャッ、ヌチャッ、ヌチャッ…

「お願い…」
ヌチャッ、ヌチャッ、ヌチャッ…

「ここじゃイヤなの…」
哀願するような目で舞さんが俺を見上げてきた。

「どこか行く?」
俺がそう聞くと、舞さんがコクコクと首を縦に振った。

4661:2017/06/04(日) 05:43:07
俺にしなだれかかってくる舞さんを促して、俺たちはベンチから立ち上がった。

公園を出るときにチラッと、向かいのベンチの方を確かめたのだけど、そこにはもう、真野ちゃんに似た美女とイケメンのカップルはいなかった。俺が舞さんとのプレイに熱中している間に、一足先に席を立ったのだろうか。

俺と舞さんは、公園から元の道に出て、丘を越えたところにあるラブホテルを目指した。その間、俺は無言のままずっと舞さんのオッパイを揉み続けていて、舞さんも無言のまま、俺の肩に頭をくっつけていた。

しばらく歩くと、古いお城のような形をした、二軒のラブホテルが見えてきた。

4671:2017/06/05(月) 04:53:39
闇夜の中、ようやく現れたラブホテルを目を凝らして見つめると、手前のラブホの玄関にちょうど入ろうとしている一組の先客がいることに気が付いた。

遠くてはっきりしないけど、女の人の服装はさっきの真野ちゃんに似た美人と同じもののようにも見えた。だとすると、俺たちよりも一足先にベンチを立って、ホテルに向けて歩き出していたのかもしれない。

ちょっとドキドキしながらも、俺は舞さんのオッパイを揉み続けて歩いていたのだが、そのとき舞さんが「あっ、満室になった…」と言った。

「えっ? どうして分かるの?」と俺が聞くと、舞さんは「知らないの?」とちょっと呆れた感じの声で呟いてから、「ここのラブホ、満室になったら看板の上のライトが消えるんだよ。この辺じゃ有名じゃん」と、なぜかちょっとドヤ顔をしながら俺を見上げた。

「そなの…?」
(昨日まで童貞だった俺には、まだまだ知らないことがたくさんあるのだな)と思うと、俺は何かシュンとした気持ちになって、舞さんのオッパイを揉み続ける気力もなくなってきた。

オッパイを揉むのをやめると、舞さんは「?」という感じの表情で俺を見上げてきた。俺は舞さんの胸から手を離して、あらためて舞さんの手を握った。

4681:2017/06/05(月) 05:17:16

「じゃあ、もう一軒の方は…」と俺が聞くと、「ああ、あっちも満室みたい。あっちはね、建物の上のツリーのイルミが消えたら満室なんだよ」と、舞さんは蓮っ葉な笑みを浮かべながら、舌足らずな声で俺に解説しはじめた。

俺は歩くのをやめた。
「じゃあ、ダメじゃん」と俺が言うと、「そんなこと、舞に言われても困るよ」と、舞さんがふくれっ面をした。

俺たちはそのまま数秒、顔を見合わせた。
「帰ろっか…」と、舞さんがつまらなそうに言った。

仕方なくその場から回れ右をした俺たちは、元来た道を戻り始めた。

すると…
来るときは気がつかなかったのだが、公園とラブホの間の長い雑木林の中から、それもあちこちから、女の人の喘ぎ声のような音が、聞こえてくるのだった。

俺と舞さんは思わず顔を見合わせた。

4691:2017/06/05(月) 05:26:05
「舞さん…!」
「…うん」
「この中で…、してる人たち、いっぱいいるみたいだ」
「…そう、…みたいだね」

俺は舞さんの手をギュッと握った。
瞬間、一歩後ずさる舞さん。

「舞さん…!」
「…はい?」
「俺たちも…」
「えっ?」
「俺たちも…、林の中に行こう」
「ちょっ…!? ええっ!?」

俺は舞さんの手をつかんで、強引に林の中に誘おうとしたけど、「ちょっと!待ってよ!」と舞さんは腰を引き気味に立ち止まった。

「舞さん…」
「ちょ! こんなところで…、外でなんて、ヤダヤダヤダ! 絶対嫌だからね、舞!」と、舞さんは耳まで真っ赤に染めながら小さく叫んだ。

4701:2017/06/08(木) 01:44:16
俺はというと、ここまできてお預けなんていうのも、とても我慢できない気持ちになって、舞さんを強く抱きしめた。

「お願い。舞さん。舞さんが欲しい!」
そんなことを言いながら舞さんのお尻を揉んでいると、舞さんは「困った子ね…。でもそんなかわいいこと言っても、ダメなものはダメだよ。こんなところでなんて、舞、絶対恥ずかしいし…」と、舌っ足らずな声でいいながら、上目遣いに俺の目を覗き込んできた。

「でも…」
「それならさ…、帰り道に…、駅の裏手の方にもラブホあるじゃん。あっちに行ってみて、空いてたら入ってもいいよ。ねっ、ねっ?」

そういうと、舞さんは俺の手を引いて、坂の下の方に向かって歩き出した。

4711:2017/06/08(木) 01:46:29

ダラダラとした坂を下り、もと来た電車通りに沿って、俺と舞さんは手をつないで歩いていた。

舞さんはさっきも話していた、東京の学校での彼氏への不満話などを、またぬけぬけと話し出して、俺を辟易させ続けた。

その時、前の方から、一台の怪しげな車、〜その車は紫色に塗られてローダウンした旧型のセルシオで、夜中だというのに大音量のヒップホップを流していたのだが〜、がやってくると、ちょうど俺たちとすれ違ったあたりで急にUターンをして、俺たちに並びかけて停まった。

俺は焦って、思わず五クりと唾をのみこんだ。

(ヤンキーに絡まれるのか…。でも、何があっても舞さんだけは逃がさないと…)

俺はつないでいた舞さんの手を一度ギュッと握ってから、俺の背中で舞さんを隠すようにした。もう片方の手は、ズボンのポケットの中で握りこぶしを固めた。

4721:2017/06/10(土) 04:10:39
俺が身構えていると、セルシオの助手席のフルスモークの窓ガラスがゆっくり下がってきた。

助手席に乗っていたのは髪を金色に染めた女の人で、窓が開くなり「ちょっと舞ちゃん! こっちに帰ってたんなら連絡くらいくれればいいのに!」と、俺のことなど眼中にない感じで、舞さんに向かって舌足らずな声で叫んだ。

途端に舞さんが「えっ!千聖じゃん! 元気?」と、俺を押しのけるようにして、車に駆け寄った。

車の中を伺うと、運転席にはチャラそうな男、後ろの席にももう一組の男女が乗っているようだった。

千聖と呼ばれた女の人が、「ウチら今までサバゲーしてたんだけどさ、これから千聖の家で飲む直すんだ。そうだ!舞ちゃんも来ない?」と聞くと、舞さんは車を覗き込んで、「あっ! なっきぃもいるんじゃん! 行く行く!」と明るい声で答えながら、後ろのドアに手をかけた。

4731:2017/06/10(土) 04:12:36
俺が呆気にとられていると、千聖という人が「ところで舞ちゃん、この子舞ちゃんの彼氏? もしかして高校生? 舞ちゃんまさか高校生と付き合ってんの? 超受けるんだけど」と俺を見て蓮っ葉な笑みを浮かべた。

舞さんは「ちょっと千聖! 変なこと言わないでよ!」と怒ったような声を出して、「この子は舞も会ったばっかりで、良く知らないんだけど、舞美ちゃんの知り合いの子なんだってさ」と言うと、俺に向き直って「ごめんね。久しぶりに友達に会ったから、今日はここまででいいかな?」と、悪びれる様子もなしに言った。

「えっ…」
返事も出来ずにいる俺をその場に残して、舞さんは後ろの席に乗り込むと、「ばいばい。またね」と、何故だかちょっと赤い顔をして、俺に手を振ってきた。

呆然として立ち尽くす俺を残して、車はタイヤの音を軋ませながらUターンして、そのまま走り去って行った。

4741:2017/06/10(土) 04:44:41
俺はしばらくの間、その場から動く気力もなくなり、立ち尽くしていたのだけれど、そのうち、なぜだか可笑しくなってきた。

「ハハハハ」と、力のない笑い声が出た。

手マンまでさせておきながら、俺のことを「良く知らない」なんて言う舞さん。でも、よくよく考えれば、俺の方だって、別に舞さんのことなど深く知っているわけでもなんでもなかったのだ。

しょせん、寂しいもの同士が一晩、勢いだけで互いを慰めあおうとしていただけの話なのだ。これでよかったのかもしれない。

そんなことをぼんやり考えながら歩き出したけど、そのうち、舞さんがさっきの男女と乱交しているような妄想が頭の中で止まらなくなってきた。

男に後ろから激しく突かれながらお尻を叩かれて、別の男の一物もしゃぶらされている舞さん。その男は千聖っていう人とディープキスなんかしてたりして…。

俺は思わず首を振った。

すると、今度はさっきの古いホテルの一室で、真野ちゃんがさっきのイケメン風の男に駅弁スタイルで突き上げられて喘いでいるような妄想が頭の中に浮かんできた。

(俺、頭がおかしくなったんじゃないか…)と、俺は自分で自分に呆れてきた。

(それにしても、あの人は本当に真野ちゃんだったのだろうか…)

475名無し募集中。。。:2017/06/10(土) 07:08:02
嫌な予感はしてたがお預けルート残念すぎる
長期間に及ぶ期待が直前で消えてしまってつらいw

476名無し募集中。。。:2017/06/10(土) 13:29:25
サバゲー(笑)

4771:2017/06/11(日) 05:35:10
>>475
マイマイはまたの機会に

4781:2017/06/11(日) 05:50:39
俺は駅の方に向かって、ブラブラと歩き出した。

歩く気力は全然湧かなかったけど、いつまでもこんなところに立ち尽くしていても仕方ない。市電はとっくの前に終わっているし、タクシーに乗る金もない。自分の足で歩いて帰るしか他にないのだ。

歩き出すと、山木さんのこと、舞さんのこと、それに真野ちゃんのことも頭に浮かんできた。でも、そのたび、俺は頭を強く降って、とにかく歩き続けた。

4791:2017/06/11(日) 05:51:55
駅前を通り過ぎる時、駅舎の時計を見ると、午前1時半を回っていた。繁華街の飲食店も、ほとんどの店は既に電気が消えていて、明かりのついている店がぽつりぽつりとある程度だった。例の「ANGERME」も、もちろんシャッターが降りている…。

そのまま市電の線路に沿って歩き続け、高校の前まできたとき、このまま線路に沿って歩くより、毎日チャリで通る通学路をショートカットした方が近いことに気が付いて、俺は路地を曲がった。

4801:2017/06/11(日) 06:24:43
ずっと歩き続けて、ようやく高校と家の中間くらいまでたどり着いた。

(今はとにかく早く家に帰って、布団に入りたい)
それだけを考えていたのだが…。

小さな川沿いに「赤ちょうちん横丁」という、古い平屋の長屋が向かい合った、怪しげな飲み屋街があった。いつもは朝か夕方しか通ったことがなくて、店が開いているのを見たことは一度もなかったので、建物全体が空き店舗なのだと俺は勝手に思っていたのだが、今見ると、そのうちの数軒に明かりがついている。

(へえ…。こんな遅い時間にやっていたのか)

そんなことを考えながら、思わず立ち止まると、ちょうど一番手前の店のちょうちんの灯りが消えて、ガラガラと引き戸が開くと、中から割烹着姿の女の人が出てきた。

ちょうちんを店の中に仕舞おうとする女の人と、一瞬、目が合った。

4811:2017/06/11(日) 06:25:59

(こんな店のママさんなのだろうから、結構な年のおばさんだろう…)
そう思って何の気なしに見上げると、その人はおばさんどころかすごく若い、しかも相当な美人だったので、俺は一瞬たじろいだ。

(いくつだろう…、舞さんとどっちが年上かな? いずれにしても二十歳そこそこくらいかな…)

そんなことを考えていると、その女の人がいきなり「○○クン!」と、俺に向かって呼びかけてきたので、俺は二度驚いた。

(えっ… 誰だろう、この人…)

俺は無言のままドギマギした。

4821:2017/06/11(日) 06:27:55
「分からない?」とその人は小首を傾げながら、上目遣いに俺の目を覗き込んできた。その目つきで俺はようやく気がついて、思わず大声を上げた。

「お前…、小田か!?」

その人…、いや、俺と同じクラスの小田さくらは、恥ずかしそうに顔を赤く染めると、コクンと一つ頷いた。

「お前、前髪下ろしてるの初めて見たから…、全然気がつかなかった。てゆーか…」

話しをしながら、落ち着きを取り戻して周囲を見回すと、店の看板には「スナックさくら」と書いてあった。

「てゆーか、お前、高校生のくせにスナック経営してんの?」

俺がそう聞くと、「してるわけないじゃん。店をやってるのはお母さんで…、私は今日は夏休みだからたまたま手伝ってただけ…」と、小田は消え入りそうな声で答えた。

483名無し募集中。。。:2017/06/11(日) 16:38:23
ようやくばくわら世代に戻ってきたか

4841:2017/06/12(月) 04:04:45
「そうなのか…」と俺が答えると、「でも、学校のみんなには…、誰にも言わないでね。お願い!」と、小田が赤い顔のままで囁いた。

「あ、ああ…」と俺。

(それじゃ、これでお互いに秘密を一つずつ共有したってことになるのかな…)と、俺は思い出した。

今日は暗室で山木さんとあんなことをした後、山木さんに振られて混乱した俺は、優樹が「幽霊の声がした」なんてふれ回っていたせいもあり、カッとなって、ほとんど八つ当たり気味に、小田に本当のことを話してしまっていたのだった。

その時、「誰にも言わないから」と、生真面目な顔で俺に叫んた小田。

そんなことを考えていると、昨日からのことや、さっきまでのことが次々と脳裏に浮かびあがっては、止まらなくなってしまった。

(あれ、俺、泣いているのか…)
なぜだか、涙が出てきてしまっているのに気が付いて、俺は激しく狼狽した。

「どうしたの、○○クン?」と、驚いたように俺の顔を覗き込む小田。

「い、いや、なんでも…」

4851:2017/06/12(月) 04:53:34
「別に、なんでもない…」
俺は自分に言い聞かすように、そう答えたけど、涙は止まらなかった。

考えてみれば…。

これは前にも経験したような光景だった。

そう。昨年の宿泊研修の後の、2学期終了のクラスの打ち上げの後のことだ。

宿泊研修で宮本に告白して玉砕した(と思い込んだ)俺は、安酒に悪酔いして、泣きながらズッキの膝の上で介抱されていたのだが、その時も、今みたいにどうにも涙が止まらなかったのだ。

(俺って、女の前で涙腺が緩むタイプなのか…、情けない…)

「ねえ、何かあったの? 本当に大丈夫? …ちょっと落ち着くまで、うちの店で休んで行ったら?」と、小田が心配そうに言った。

4861:2017/06/12(月) 05:01:55
俺は慌てて、「いや、店の中に小田の母ちゃんいるんだろ? いいよ。いいよ」と断ったのだが…。

小田は「大丈夫。お母さんいないから」と、小さく微笑んでから、「お母さん、今日疲れてて体調悪そうだったから、さっき店閉めたらすぐ、先に帰ってもらったの。で、私一人で洗い物とか店の片づけしようとしていたところだったんだ。だから…」

そう言いながら、小田は俺を背中から押すような形で店の中に押し込んだ。

4871:2017/06/12(月) 05:15:01
店の中には、カウンターとボックス席が一つ。

外の看板には「スナック」とは書かれていたけれど、入ってみると、焼き鳥屋かおでん屋のような造りの店だった。それともこういう店を「小料理屋」というのだろうか。カウンターの奥にはカラオケのセットが置かれていた。

(それなら「和風スナック」とでもいうべき店なのだろうか…)

俺が店内を見回していると、後ろ手に玄関の引き戸を閉めて入ってきた小田が、「その辺にでも座ってて。あっ、そうだ。お茶でも飲む?」と言って、「サッポロビール」とロゴの入った冷蔵ケースの中を探りはじめた。

「そう言えば俺、今日はヤケ酒飲もうとして出てきたんだった。でも、酒なんて飲んでも、何もいいことなんてないもんだな」

ようやく涙のとまった俺がそう言って力なく笑うと、小田は真面目な顔をして数秒俺の顔をじっと見つめた後、無言のまま冷蔵ケースからサッポロ黒ラベルの中瓶を取り出し、俺の前に持ってきた。

4881:2017/06/13(火) 04:59:33
無言のままビールの栓を抜くと、俺の前に小さなコップを置き、注ぎ始める小田。

「えっ…」
おどろく俺を尻目に、小田は「私、注ぐのなかなか上手いでしょ。さっきもお客さんに褒められたんだ」と、小さく笑ってから、「ねえ、一体何があったの? これ飲んで、イヤなこと全部忘れちゃうといいよ」と、つぶやいた。

「小田、お前…」
思わず俺が真顔になって話しかけようとすると、小田は「ごめん! 詮索とかするつもりじゃなくて…。そうじゃなくて、元気出してほしいな…、って私思って…」と、言い訳するように言ってから、「私、洗い物済ませちゃうから、ゆっくり飲んでてね」と言って、カウンターの中に入った。

俺はしばらくコップのビールを見つめてから、一息にそれを飲み込んだ。

4891:2017/06/13(火) 05:02:40
空になったコップに手酌でビールを注ぎ足してから、「でも、小田が俺にビールを注いでくれるなんて、夢にも思わなかったわ」と、俺はつぶやいた。

カウンターの向こうで洗い物を始めながら、「えっ、どうして?」と生真面目な顔で俺を見上げてくる小田。

「小田とは1年生の時から同じクラスだったけど、俺たちあんまり接点なかったし、深く話したこともなかっただろ…。それにホラ、お前、俺なんかと違って頭もいいし真面目じゃん。去年は学級委員長もやってたし。そんな優等生のお前が、劣等生の俺に飲酒を注意することはあっても、まさか酒を勧めてくるなんて、想像もしてなかったから」

俺がそういうと小田は、一瞬、洗い物の手を止めて、「えっ、私はクラスの中では、〇○クンとは仲がいい方だと思ってたんだけど…。それに、私…、優等生なんかじゃない…」と言って、ちょっと寂しそうな表情を見せた。

4901:2017/06/14(水) 05:38:07
「えっ、いや…、その…」
小田の寂しげな表情を見て、俺は思わず言葉に詰まってしまった。

(俺はなんでいつも、物事を深く考えもせずに喋ってしまうのかな)と、俺は自分の軽口を後悔した。

「何か…、スマン」
俺がそう言うと、小田は「いいよ…、別に」と言って、また下を向いて洗い物を始めた。

沈黙が流れた。

何か話題を作ろうとして、俺は「ところで、あのあと優樹、どうなった?」と聞いた。そして、聞いてからまた後悔した。

小田は洗い物を続けながら、「優樹ちゃん…、あの後大変だったんだから。音楽室に戻ってきて大泣きして。『お兄ちゃんに突き飛ばされた』とか大騒ぎして。それ聞いて、合唱部のみんなも、そう、植村さんとかも『女の子に暴力振るうなんて最低』って、○○クンのこと、怒ってたよ」と、真面目な顔をして言った。

4911:2017/06/14(水) 06:13:55
(あの植村あかりに嫌われたのか…)
俺が何気にショックを受けていると、「でも、私はそうは思わないけど」と小田が言った。

「えっ?」
「いや、私もそんなによくは分からないけど…。○○クンが理由もなしに優樹ちゃんに暴力振るうなんて、私には想像つかないもん。きっと、何か行き違いがあったんじゃないのかな? 優樹ちゃんって、感情的になるとすごく大げさなこと言ったり、嘘ついたり、人の話聞かなくなったりするところあるし…」
「…」
「植村さんも、○○クンのこととかよく知りもしないくせに、優樹ちゃんの言い分だけを真に受けて、悪く言ったりしない方がいいのにって、私思った」

俺は恥ずかしさで自分の顔が赤くなるのを感じていた。と同時に、小田の俺への底抜けな買い被りにも似た同情に、正直言って戸惑ってもいた。

4921:2017/06/15(木) 04:19:08
「いや、小田、あのな…」
「何?」
「庇ってくれるのは嬉しいけど…、やっぱり俺が悪かったんだと思う…」

小田は数秒俺の顔を見てから、「ねえ…、いったいあのとき何があったの? あっ、いや…、言いたくないなら、別に言わなくてもいいんだよ」と、早口で言って、俺を見た。

俺は何て答えればいいか数秒迷ったけど、コップのビールをグッと飲み干してから、小田の疑問に答えることにした。

「あの時も言ったけど…」
「うん…」
「俺は暗室で、好きな先輩と、その…、抱きあってたんだ。声も響いてたと思う…」
「…」
「でも、俺、フラレてな…」
「えっ?」
「それで…、落ち込んでたところに、優樹が来て、幽霊だの何のって…。俺、ついカッとなって」
「そう、なんだ…」

赤い顔をしながら、俺を見つめる小田。

4931:2017/06/15(木) 04:32:13
「その先輩って、写真部の人? もしかして…、山木さん?」
「…」
「ごめん。詮索したりして…」

沈黙の中、小田が食器を洗い続ける音だけが響いた。

「でも…、こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど…」そう言って、小田が上目遣いで俺を見上げた。

「何?」
「私、ちょっとホッとしたな」
「どゆこと?」
「私、○○君って、うちらのクラスの鈴木さんか…、もしかしたら植村さんのことが好きなんじゃないかって、勝手に思ってたの。でも、そうじゃなくて、その先輩が好きだったんだね」

俺は小田の言っている意味が分からなくて、黙っていた。

「別にフラれたっていいじゃん! 女の子なんて星の数ほどいるんだよ。○○君のこと好きな子だって、きっといるよ」
小田はまっすぐに俺の目を見て言った。

4941:2017/06/15(木) 04:46:44
小田は小田なりに俺のことを励ましてくれているのかもしれないけど…。
その無責任な口ぶりに、正直俺は少し腹が立った。

「何で小田にそんなこと分かるんだよ」
「だって…」
「だって?」
「私、知ってるもん!」
「何を?」
「○○君のこと、好きだっていう女の子がいること、私、知ってるもん!」
「誰だよ、それ?」
「そんなこと…、言えないよ…」

そう言うと、また小田は下を向いて、洗い物に集中してしまった。

4951:2017/06/15(木) 05:16:49
そのまま小田は黙って洗い物を続けた。

俺も黙ってビールを飲み干すと、コップと瓶を小田に渡した。

しばらくして小田は「じゃあ、後片付終わったから…、店閉めるよ」と言った。
「お、おう…」と俺。

2人並んで店を出ると、小田は玄関にカギをかけて、シャッターを下ろした。

「おい、こんな時間になったし、お前の家まで送っていくよ」と俺は言った。
「いいよいいよ。だいたい私の家、○○君の家とは反対方向だし」と言って、首を振る小田。
「えっ、お前、俺の家知ってんの?」と俺。
「あっ、いや…、よくは知らないけど…」と小田。

「まあ…、それはいいけど…。遠慮すんなって。てゆーか、こんな時間に、女の子一人じゃいくら何でも危ないだろ」と俺が言うと、小田は少し考えるような素振りをしてから、「それじゃ、お言葉に甘えて送ってもらおうかな…。ホントはね、正直言うと、一人で帰るの、ちょっと怖かったんだ」と言って、頬を赤くして俺を見上げた。

4961:2017/06/15(木) 05:31:47
小田の家は、そこから高校の方に少し戻ったところの、歩いて5分くらいの場所だった。

今まで小田のことは別に何とも思ったことはなかった俺だけど、こんな時間に、クラスの女の子と二人きりで歩いていると思うと、少しドキドキとしてきた。それに、正直に言うけど、割烹着を脱いでワンピース姿になった小田は、俺が思っていたよりもずっとオッパイが大きく見えて、俺は目のやり場に困って緊張していたのだ。

俺だけじゃなく、どういうわけか、小田もほとんど無言のままで歩いていた。

「私の家、ここなんだ」と言って小田が指さしたのは、お世辞にも立派とは言えない、古い木造アパートの二階の一室だった。

「小田…、今日は何かスマンカッタな…」
「えっ、どうして…」
「何か俺、酔っ払って絡んだみたいで…」
「そんなことないよ。私の方こそ、わざわざ送ってもらって…」
「あっ、そうだ。ビール代払うの忘れてた」
「えっ、別にいいよ。そんなの」
「よくないだろ」
「そんな…。あっ、そうだ!じゃあ、ツケにしておくから、また今度きてよ」
「えっ?」
「…機会があったら、でいいから」
「お、おう」

そう言うと、小田は早足でアパートの鉄製の階段を昇って行って、自分の部屋の前で一度俺に振り向いて手を振ると、部屋の中に消えていった。

497名無し募集中。。。:2017/06/15(木) 22:11:28
本命は小田ちゃんか

4981:2017/06/18(日) 04:31:05
家まで帰ってくると、玄関に電気がついていた。

カギを開けて中に入ると、居間のテーブルに千奈美姉ちゃんが突っ伏して寝ていた。

姉ちゃんの姿を見ると、またさっきまでのいろいろな出来事が一気に押し寄せてきて、俺は泣きそうになってしまった。(いっそ、姉ちゃんに話を聞いてもらおうかな…)と、俺は一瞬思った。

「姉ちゃん、こんなところで寝てると風邪ひくぞ」と声をかけて体を揺さぶると、千奈美姉ちゃんはむくっと起き上がって

从*´∇`)<ちょっとアンタ! こんな時間まで何やってたの!

と大声を上げた。

「いや、別に心配してもらわなくても…」と俺が言いかけると、姉ちゃんは俺の言葉を遮って

从*´∇`)<心配? ハァ?

と首をかしげてから

从*´∇`)<そんなことどうでもいいけど、それより聞いてよ! ちいちゃんの大活躍で、アシカの赤ちゃんたちが劇的に回復したんだから! それをアンタに話してやろうと思ってわざわざこうして待ってたんだから!

というと、姉ちゃんは早口で一方的にアシカを治した自慢話をし始めた。

(姉ちゃんに話を聞いてもらおうと思った俺が馬鹿だった)と思ったけど、姉ちゃんの笑顔を見ていると、なんだか元気が出てくる俺でもあった。

4991:2017/06/18(日) 05:02:07
姉ちゃんの長い話を聞き流し…、
部屋に戻って時計を見ると、すでに時刻は午前3時半を回っていた。
(疲れた…)と俺は思った。

パジャマに着替えてすぐに布団にもぐりこんだのだが…。
すごく疲れていて、すぐにでも眠りたいのに、どういうわけか神経が高ぶって、目を閉じても眠れない。

(困ったな)と俺は思った。

これはきっと…、舞さんとセックスするつもりでいたのに、直前で寸止めされたのも影響しているのではないか。

(だったら、一本抜いて、スッキリしてから寝よう)

俺はベッドから這い出ると、おもむろに部屋のドアにカギをかけた。

5001:2017/06/18(日) 05:05:01
ズボンとパンツを脱いで、一物を握りしめた。

すると、頭の中には舞さんではなく、自然と山木さんのことが浮かんできた。

(山木さん…! 梨沙!)

昼のことを思い出すと、気持ちが昂揚してはきたのだが、「〇○君とは、やっぱり付き合えない…」という山木さんの言葉を思い出すと、自然と萎えてきてしまった。

(これじゃダメだ! もっと鬼畜になって、舞さんの…、体のことだけを考えよう)

俺は目を閉じて、舞さんを後ろから抱きしめているところを想像した。

(舞さん!舞さん!)

後ろからオッパイを揉みしだくと、妄想の中の舞さんのオッパイは、さっき実際に触った舞さんのオッパイよりも大きかった。

(あれ、舞さんじゃない! キミは!?)

肩をつかんで振り返させると…
そこにいたのは舞さんではなく、顔を真っ赤に染めた、さっきのワンピース姿の小田だった。

(えっ!? 小田…)

俺が叫ぶと同時に、俺の胸の中に飛び込んでくる小田

(くそ…!)
俺は訳が分からなくなって、妄想の中で小田を押し倒し、奥深くまで貫いた

(小田…!、さくら…!、さくらッッ!)
小田の中で勢いよく果てると同時に、猛烈な睡魔が俺を襲ってきた。

5011:2017/06/20(火) 05:20:27
ドン、ドン、ドン
ドン、ドン、ドン
と、激しくドアを叩く音で目が覚めた

从*´∇`)<ちょっと! アンタ! 何で部屋にカギなんかかけてんのよ!

そう言って、姉ちゃんが俺の部屋のドアをガチャガチャと開けようとしている。

俺は慌てて飛び起きた。

気がつくと、俺は下半身裸のまま、ティッシュを握りしめてベッドで大の字になって寝ていたのであった。

急いでパジャマのズボンを履いてから、部屋のドアを開けた。

「ちょっ…、何だよ姉ちゃん…。まだ朝早いだろ!」

俺がそう抗議したのにも構わぬ素振りで、姉ちゃんは俺の部屋に一歩入ると、

从*´∇`)<何!? なんかこの部屋、男臭い!

と言って、顔をしかめた。

「そ、そりゃ、男だもん、男臭いに決まってるだろ…。それより、何だよこんな時間に?」
と、俺がしどろもどろになって言い返すと、姉ちゃんは

从*´∇`)<電話だよ、電話! それも、可愛い声の女の子から!

と言って、ニヤニヤと俺の顔を覗き込んできた。

5021:2017/06/20(火) 05:40:06
慌てて階段を降りて、電話の受話器を握る俺。

「もしもし!」と俺が話しかけると、「あっ、ごめんね。こんな朝早くに。私、あの…、鞘師だけど」と、声がしてきた。

「お、おう。お早う」
俺がそう言うと、鞘師も小さな声で「うん。お早う」と返してきた。

「あれ、お前、俺の携帯の番号教えてなかったっけ?」と俺が聞くと、「うん。聞いてなかったから、名簿見て家の方にかけたんだ。ごめん。やっぱり、迷惑だったよね…」と、鞘師が消え入りそうな声で言った。

「いや、別にいいんだけと、何の用?」
「あのね、実は昨日の晩にも電話かけたんだけど、誰も出てくれなくて…」
「えっ、ああ…、スマン。昨日遅くまで用事あって、帰ったの遅かったんだ」
「そうなんだ…。あのね…」

その時、受話器の向こうから「出発便のご案内を致します。○○航空××便で羽田へご出発のお客様は、ただいま最終のご搭乗の…」と、アナウンスが聞こえてきて、鞘師の声がかき消された。

「ごめん! ちょっと聞こえない」
「あ、あのね…」
「鞘師、今空港にいるの?」
「う、うん。実はね…」

5031:2017/06/23(金) 02:14:03
「本当は、昨日のうちに○○クンにも相談したかったんだけど…」
「何を?」
「ごめん。いま詳しく説明してる時間ないんだけど、私これから用事で東京に行かなきゃならないんだ」
「へえ、いいじゃん」
「あのね、それで私、二日ほど、一緒に練習に出きなくて」
「ああ、そのことか。別に気にすんなよ」
「あっ、でも、ちゃんと代わりの先生頼んだから」
「えっ、誰?」
「ごめん。もう行かなきゃ。○○クンはいつもどおりの時間に練習に行ってね。じゃあ」

鞘師が早口でそう言い終わると、電話は切れた。

5041:2017/06/23(金) 02:32:33
(へえ…、鞘師、東京に遊びに行くのか。いいなあ。俺も行きたいなあ。あっ、でも急用だったみたいだから、もしかしたら親戚に不幸でもあったのかな…。だとしたら『いいじゃん』とか言って、失礼だったかな)と、俺は思った。

そんなことを考えていると、千奈美姉ちゃんがニヤニヤしながら近づいてきて

从*´∇`)<ちょっとアンタ! 今の子誰なのよ? あれが一昨日キャプテンの言ってたダンスの上手い子なの? それとも桃が言ってたクラスの子? デートの約束でもしたの?

と、探るような目つきで俺のことを見始めた。

「ちょっ、姉ちゃんまで変なこと言わないでくれよ!」

そういうと俺は姉ちゃんを振り切って部屋に戻った。

(そうだ。爆睡していたけど、そろそろ学校に行かなきゃならん時間だ)と俺は思った。

鞘師と会えない寂しさももちろんあったけど、正直に言うと、鞘師の厳しいレッスンを受けずに済むという、単純な解放感もあった。

(ところで、代わりの先生って、誰なんだろう)

5051:2017/06/23(金) 02:47:15
準備を済ませてから、チャリに乗って家を出ると、今日も外は暑かったが、日陰に差し掛かると時折心地よい風も吹いていた。

家からちょっと行くと、例の舞さんの家のコンビニの前に出た。

俺は一瞬、昼飯を買っていこうかとも考えたのだけど、正直言って、今は舞さんに顔を合わせたくない気分だった。

仮に会ったとしても…、いったい何を話せばいいというのか。

通りがかりに、スピードを落として店の中を覗くと、レジには舞さんのお父さんと言う店長が一人でいるだけだった。俺は何とはなしにホッとすると同時に、この人の知らないところで、娘さんに手マンまでしたのかと思うと、一瞬背徳感に襲われた。俺はやっぱり、店には寄らないことにした。

しばらく行くと、昨日寄った小田の母さんの店、「スナックさくら」がある、赤ちょうちん横丁の前に差し掛かった。

建物は、昼間に見ると、昨日の夜に見た時よりもさらにみすぼらしく感じられて、俺は何だか胸が締め付けられそうな気持ちになった。

5061:2017/06/23(金) 03:02:38
(昨日も詳しくは聞けなかったけど、小田の家って、お父さんいなそうだよな…)と俺は思った。

お母さんが夜の店をやりながら、女手一つで小田を育てたのだろうか。確かに小田にはどことなくそういう陰がある。(でも、それにしてはグレたりせずに真面目に勉強してるし、小田は偉いよな…)と俺は思った。

店の前から自転車を漕いでいて、気がつけば、小田のアパートの前で俺は停まっていた。

アパートもやはり、昼間に見ればより貧相に見えて、生活感の感じられる建物だった。

(ここで待っていたら、小田が偶然ドアを開けて出てこないかな…)と俺はぼんやりと考えた。(そしたらチャリの後ろに小田を乗せて、全速力で学校までぶっ飛ばしてやるのに…)

そんなことを妄想しながらその場に1分ほど佇んでいた俺は、自分の考えていることの馬鹿馬鹿しさに気付いて頭を振ってから、学校に向かった。

5071:2017/06/23(金) 03:07:10
学校に着き、自転車置き場にチャリを止め、玄関に向かった。

上靴を履いて校舎に入り、階段の横を通り過ぎようとしたとき、
突然、階段の上から、「こらっ!DV男!」と、大きな声が降ってきた。

「えっ?」
驚いて見上げると、あの植村あかりが腕組みをして大股を開いて、ちょっと頬っぺたを膨らませて、俺の前に仁王立ちしていた。

508名無し募集中。。。:2017/06/23(金) 21:09:08
2年ぶりに学校まで戻ったかw

5091:2017/06/28(水) 01:22:11
階段の踊り場から、植村がゆっくりと降りてきた。

俺は思わず植村から視線を逸らして、「確かに俺が悪いんだから、何言われても仕方ないよ」とつぶやいた。

すると植村は、「えっ? ちょっと、何マジレスしてんの?」と、驚いたように目を丸くして、俺を見つめてきた。

俺は少し頭がカッと熱くなってくるのを感じながら、自分に(落ち着け)と言い聞かせて話を続けた。

「俺は優樹を殴ったりしたつもりはないけど、まとわりついてきたあいつにカッとなって、思わずちょっと強く払ったら、突き飛ばしたような形になってしまったんだよ。とはいえ、結果的に暴力をふるったのは間違いないから、植村に軽蔑されても仕方ないよな。ただ、優樹は別に俺の家族じゃないから、『DV』ってのは当てはまらない」

俺がそう言い訳すると、植村は「えっ、何? ○○クンって、冗談も通じないの?」と呆れたような目で俺を見上げてきた。

5101:2017/06/28(水) 01:24:22
「えっ?」と思わず俺が聞き返すと、
「優樹ちゃんの話なんて、割り引いて聞いてるに決まってんじゃん。それなのにそんなにマジレスされると、何かかえって私、心配になっちゃうな」と、植村は硬い表情で答えた。

俺は正直混乱した。
「でもお前、みんなの前で、俺のこと『最低』って言ってたんだろ?」
俺がそう聞き返すと、植村は「はあ!? 何それ!? 誰がそんないい加減なこと言ってんの!?」と、大声を上げた。

5111:2017/06/29(木) 04:41:17
「い、いや、それは…」

俺が言いよどむと、植村は「あのさ…、確かに私、『暴力はよくないよね』とは言ったよ」
と怖い顔をして言い始めた。

「そうでも言わないと優樹ちゃんも収まらないだろうと思ったし。でもさ、優樹ちゃんって、感情的になるとすごく大げさなこと言ったり、嘘ついたり、人の話聞かなくなったりするところあるなんて、みんなが知ってることじゃん」

(あれ、どこかで聞いたようなセリフだな)と俺が考えているのにも構わず、植村は続けた。

「誰も〇○クンが本気で優樹ちゃんに暴力振るったなんて信じてないけど、そういう体にしとかないと、いつまで経っても優樹ちゃん、泣きやまないじゃん」
「そ、そうか」
「そうだよ! そんなの分かった上でみんなであやしてたのに。それなのにまるで私が陰で〇○クンの悪口言ってたみたいに告げ口した人がいるわけ!? 誰なのそれ!? マジ許せない!」

植村は本気で怒っているようだった。

5121:2017/06/30(金) 01:56:34
「ねえ、それ一体誰が○○クンにそんな話したの?」
「誰って…、いや、それは…」

昨日の晩、優しく俺をあやしてくれた小田の姿が脳裏に浮かんで、俺は狼狽した。(俺は本当に、いつも余計なことばかり言ってしまうんだな…)と、後悔が襲ってきた。

「言えないの? じゃあいいよ。私これから合唱部の練習に行ったら、誰が言ったのか一人ずつ問い詰めて、ハッキリさせるから!」
「おい、よせよ、そんなこと…」
「はあ? ○○クンは、その子の肩持つわけ!? マジ、ムカつくんだけど。○○クンも本当はその子のこと好きなんじゃないの?」
そう言うと、植村は冷ややかな表情で、俺の目を覗き込んできた。

「好きとか、そんなんじゃないけど…」
「あのさ…、ハッキリ言うけど、誰だか知らないけど、その子は私のこと悪く言って、○○クンに取り入ろうとしてるんだからね。○○クンも、そんな子の言うこと信じるんなら、勝手に仲良くしてるといいよ。私、○○クンのこと、見損なったわ」

そう吐き捨てると、植村はくるりと俺に背を向けて、すたすたと歩きだしてしまった。

5131:2017/07/03(月) 23:47:44
「おい、ちょっ、待てよ」
俺は思わず植村の肩をつかんだ。

振り向いた植村の顔を見て、俺は驚いた。怒って怖い顔をしているのだろうとばかり思いきや、植村は少し涙を溜めたみたいに赤い目をして俺を見ていた。

(俺のバカ! 植村、見かけによらず傷ついているじゃねえか…)

後悔だけに包まれながら、言うべき言葉を見つけられずにいると、植村が「…何よ?」と、口調だけは強気なままで言った。

「…いや、何て言うか、その…、スマン…」
俺がそう言いかけると、「はあ? スマンって何? 一体何を謝りたいわけ? 意味わかんない!」

植村は怒りを倍加させながら言った。

「いや、植村、俺はな…」
俺がそう言いかけた時、後ろから「…こんなとこで2人で大声出しあって何やってんの? 痴話喧嘩ってやつ?」と、冷ややかな声が聞こえて、慌てて振り向くと、そこに硬い表情をした宮本佳林が立っていた。

「宮本…」
「りんか…」
俺と植村が同時につぶやいた。

俺はつかんでいた植村の肩から、静かに手を放した。

5141:2017/07/04(火) 00:01:53
何と言ったらいいのか…。

俺が呆気にとられていると、植村はさっきまでの泣きそうだった表情とは一変して、冷たい笑みを浮かべながら、「へえ…。りんか、ずいぶん皮肉っぽいこと言うじゃん」と、宮本に向かって啖呵を切った。

「別に…、そんなつもりないけど。でも、いちゃいちゃするなら、廊下じゃなくて、別の場所でした方がいいんじゃない?」

宮本の声はさらに冷ややかな響きだった。

「おい、宮本…」
俺は驚いて、思わずそう声に出したけど、宮本は俺には視線すら合わせず、植村を見つめたままだった。

宮本がこういうことの言えるやつだと思っていなかった俺は、ただただ呆気にとられていた。(俺って、宮本のこと、いや、女の子のことなんて、全然分かってないんだな…)

515名無し募集中。。。:2017/10/20(金) 07:03:02
こんなのがあったとは

516名無し募集中。。。:2018/03/19(月) 02:32:51
続きはもう来ないのか

5171:2018/04/18(水) 01:49:20
「りんか、こないだのこと怒ってるんでしょ?」と、植村が冷たい笑みを浮かべながら言った。
「こないだ? こないだって何のこと?」と、能面のような表情で答える宮本。

「こないだ私がダンス部の練習後に教室行ったときのことだよ。りんかが○○クンと何か話そうとしてた時に私が横から割り込んじゃったから、そのことまだ根に持ってるんでしょ?」
「えっ?何の話? 私そんなこと全然覚えてないんだけど」
「へえ…。そうなんだ(笑)。それにしては私にずっとガンつけてたじゃん」
「ちょっと! ヘンな言いがかりやめてくれない!?」

2人の女の子のエスカレートする言い合いを、オレはハラハラしながら見ているだけしかできなかった。

5181:2018/04/18(水) 01:51:02
あのさあ…、りんかが〇○クンのこと好きになるのは自由だけど、そんなことで勝手に私にヤキモチ焼いて難癖つけられるのは迷惑なんだよね」
植村がそう言い放つと、宮本は顔を紅潮させて「うえむーこそ、○○クンのこと好きだからこんなとこで痴話喧嘩してたんじゃん。私をダシにするのやめてよね」と叫んだ。

このまま放っておくと、二人の女の子がつかみ合いの喧嘩をするんじゃないか、と思った俺は慌てて二人の間に割って入った。

「スマン! 全部オレが悪いんだ! だから俺のことでお前ら二人が喧嘩なんかしないでくれよ!」
そう叫んだ俺を、宮本は数秒間見下ろしてから冷ややかに言った。

「馬っ鹿じゃないの! ○○クン、自分がモテモテのイケメンで、私たちが○○クンを取り合って喧嘩してるとでも思ってんの? この間、私が謝ったからって、私が〇○クンのこと好きだとか思ってるんなら背負いすぎだから。そういう勘違い、マジキモいんだよね」
そう吐き捨てると、宮本は俺と植村をその場に残して、すたすたと歩き出した。

呆気にとられて宮本の後ろ姿を見ながら立ち尽くす俺。

しばらく呆然としていた俺は、「ゴホン…」という植村のわざとらしい咳払いで我に返った。
「あのさ…、私はりんかほどキツく言うつもりはないけど…、それでもやっぱり今日の○○クンには腹が立つわ。ちょっとは本当に反省してよね」
そう言い捨てると、植村も小走りに駆けていった。

俺は一人その場に取り残された。

5191:2018/04/18(水) 02:10:34
宮本と植村。この二人の美女に俺はどうやら完全に嫌われたのだろう。
(それも仕方ない。自業自得というやつだ)と、俺は思った。

この間ウチに遊びに来た嗣永センセイや清水センセイは、俺のことを「優柔不断すぎる」と言っていたけど、そんなことはあの二人に言われなくても、俺が一番分かっていたことだった。

(俺は本当は誰のことが好きなんだ…?)
鞘師なのか、田村なのか、ズッキなのか、植村なのか、宮本なのか、それとも小田なのか…。

(いや、違う…)
眼を閉じると、俺の脳裏に浮かんでくるのは、やっぱり山木さんの面影だった。

(俺、結構重症なのかもしれないな…)
そんなことを考えながら、俺は一人とぼとぼと、ダンスの練習場所の家庭科準備室へと歩いた。

5201:2018/04/18(水) 02:51:25
家庭科室の前まで来て、俺は思い出した。

(そうだ。今日は鞘師がいないんだ。『代わりの先生』ってのはいったい誰だろう…)

恐る恐る教室のドアを開けると、ジャージとTシャツ姿の3年の稲場さんがそこに立っていた。
俺に気付いた稲場さんは「遅い―!」と言ってから、壁の掛け時計を見て、「2分15秒の遅刻!」と口をとがらせた。

5211:2018/04/22(日) 03:01:55
「あっ、稲場さん…」
予想していなかった展開に、俺は少しびっくりした。

「すみません、遅れちゃって…」慌てて俺が謝ると、稲場さんは
「えっ、冗談だよう。そんなに真面目に謝られると、まなか困っちゃうよ。それより早く着替えてきて」と言って、はにかむように笑った。

「は、はい…」慌てて俺は家庭科準備室に通じるドアを開けた。

5221:2018/04/22(日) 03:27:50
家庭科準備室に入って、急いで着替えを始めると、目の前に稲場さんの物らしい紙袋が置いてあった。
紙袋の中からは綺麗に折りたたまれたセーラー服の上着が覗いて見えた。

(これをさっきまで稲場さんが…)

と考えだして、俺は(あっ!)と思い出した。

数日前に、俺は体育準備室で偶然に稲場さんが竹内さんや高木さんと一緒に着替えているところを覗いてしまっていた。
その時見てしまった稲場さんの、真っ白な肌。そして、ブルーのブラジャーとパンツに包まれた、むっちりとした肢体…。

途端に自分の下半身がビンビンにうずきだすのを、俺は感じていた。

5231:2018/04/25(水) 03:32:20
思い起こせば…。
同じこの場所で、鞘師のセーラー服を見て興奮したり、今日は稲場さんのセーラー服を見て興奮したり…。

(俺ってクズだな…)
そう考えると、今までビンビンだった愚息が急速に萎えてくるのを感じだした。

(早く着替えて、行こう…)
俺は急いでジャージに着替えると、稲場さんの待つ家庭科室に戻った

5241:2018/04/25(水) 03:50:30
ジャージに着替えてきた俺を見ると、稲場さんは「それじゃ、練習始めよっか」と、はにかむように笑った。

「は、はい」と俺が答えると、
「まなかが先生でびっくりした?」と、稲場さんは俺の目をのぞきこように上目遣いで聞いてきた。

「え、はい…。い、いえ…」
「まなかもね、びっくりしたよぉ。昨日ね、練習休みって話だったけど、ダンス部のみんな、結構学校にきてて」
「えっ、そうだったんですか…?」
当然のように練習を休んで、暗室で山木さんとあんなことをしていた俺は少々焦った。

「うん。そしたらね、急に鞘師さんが2、3日学校に来れなくなるって話になって」
「はい」
「『○○クンのために、誰かが代わりの先生を』ってことになったんだけど」
「はあ」
「みんなは『佳林ちゃんがいいんじゃない?』って言って、佳林ちゃんも満更でもない感じだったんだけど…」
「?」
「鞘師さんが『稲場さんが教えて』って言い出して…」
「えっ?」
「まなかもびっくりしたし、佳林ちゃんに悪いから気が進まなかったんだけど…、鞘師さんが『どうしても』って言うから…」
「…」
「で、まなかが教えることになっちゃったの。ごめんね。佳林ちゃんじゃなくて、○○クン、ガッカリしたでしょ?」

そういうとまた稲場さんは俺の目を覗き込むように、上目遣いで見つめてきた。

5251:2018/04/25(水) 04:02:04
(そんなことがあったは…)

そういえば、ついさっき俺は宮本に「馬っ鹿じゃないの?」とか「マジキモい」とか酷い罵声を浴びせられていたのだった。
(たぶん俺が悪いんだろうとはいえ、何でいきなりそこまで言われたのか…)

そんなことを考えて俺が黙っていると、
稲場さんが「ごめん。ホントにまなかが先生でガッカリさせちゃったみたいだね…」と、シュンとした顔をしてつぶやいた。

「い、いえ、全然そんなことないです。てゆーか、俺なんかのために稲場さんにまで迷惑かけて、ホントにわざわざスミマセン」
俺は慌てて頭を下げた。

526名無し募集中。。。:2018/04/25(水) 11:00:34
新作きてる…(´;ω;`)

5271:2018/04/26(木) 03:25:28
>>526
すみません。仕事が忙しかったりいろいろあって
書く気というのは突然湧いてきたりまた消えたりして…
構想自体はいろいろあるのでちょっとずつでも前進できればと

5281:2018/04/26(木) 03:39:01
「それじゃ、練習始めよっか…」
「は、はい」

「ワン、ツー、スリー、フォー…」
稲場さんの手拍子に合わせて、俺は踊りだした。
(せっかく来てくれた稲場さんをガッカリさせないためにも、真面目に踊らなきゃ…)
俺は真剣だった。

一通り踊り終えると、稲場さんが「すごーい! 前より全然うまくなってるじゃん!」と叫んで拍手をしてくれた。
「いえ、そんな…。鞘師には『まだまだ全然ダメ』とか言われてるんですけど…」
「ううん、そんなことないよ! 本当に上手くなった! ○○クン、すごーい!」
「そ、そうですか…?」
「そうだよ! まだ初めて全然経ってないのに、普通こんなにできないよ!」

少々大げさに褒められすぎているとは思ったけど、悪い気はしなかった。

5291:2018/04/26(木) 03:51:48
「全体的にはすごくいいと思ったんだけど、ちょっとまなかの気になったところ言ってもいい?」
と稲場さんが上目遣いに俺の目を覗きこんできて言った。
「は、はい。もちろんです」と、弾かれたように俺は答えた。

「あのね…、ここの角度なんだけど…」
そう言い出すと、稲場さんはナチュラルな感じで背後から俺の体に密着してきた。
「えっ…?!」

前にも鞘師に手取り足取り教えてもらってドキドキしたことはあったけど…
それよりも稲場さんの密着度合いは遥かに強かった。

「あのね、肩の力抜いて…」
「は、はい…」
「ちょっと腰をひねって…、そう。このくらい…」

そう言いながら、稲場さんはほとんど俺の背中に抱きつくような体勢で指導をしてくるのだった。
俺の背中に稲場さんのオッパイがびったりと密着しているのが、薄手のTシャツを通じてハッキリと感じ取れていた。

「そう!そんな感じ!」
稲場さんの甘い吐息が俺の耳にかかった。

530名無し募集中。。。:2018/04/27(金) 03:36:11
>>527
ゆっくりでも全然大丈夫です!
気長に待ってます(^o^)

5311:2018/05/02(水) 02:28:24
(この間鞘師に密着された時は童貞だったから、不覚にもフル勃起してしまったけど…、今はもう俺も童貞じゃないのだから…)

そう思って平然を装っていた俺ではあったが、やはり背中に伝わってくる稲場さんの体の柔らかい感触に、愚息がギンギンに勃起してくるのは避けようもないことだった。

そんなことを考えていると、不意に稲場さんが俺の前に回り込んできて、
「じゃ、もう一回やってみて?」とほほ笑んだ。

(あっ)と、途端に顔が赤らんでくるのを感じる俺。

そのとき一瞬稲場さんの視点が俺の下半身に下りてきた。
ジャージのズボンに盛大にテントを張っていた俺の一物に、稲場さんもハッキリと気が付いたはずだ。

稲場さんが一瞬「ウフッ」と笑ったように見えたのは俺の気のせいだろうか?

「深呼吸して落ち着いてから、もう一回踊ってみて」と稲場さんは上目遣いで微笑んだ。
「は、はい…」と答えながら、俺はますます自分の顔が赤らんでいくのを感じていた。
深呼吸をしても愚息は一向に萎えてくる気配がなかった。

5321:2018/05/02(水) 02:49:06
(『落ち着いてから』って、稲場さん…、何が落ち着いたらなんだ…?)と俺は思ったけど、いくら深呼吸をしても愚息が落ち着かないものは仕方ない。
俺はそのままの体勢からやけくそになって踊りだした。

体の動きに合わせて、時折乱暴に暴れ出す我が愚息。俺はなるべく手足に神経を集中して踊ったつもりだったけれど、もはや稲場さんも確実に気づいているはずだ。というより、俺はさっきから稲場さんの突き刺さるような視線をハッキリと愚息に感じているのだ。

曲が終わってから稲場さんの方を向くと、稲場さんは上気したような赤い顔で俺の方を見ていたけど、一瞬してから慌てたように「うん。すごくよくなってきた」と舌足らずな口調で俺を褒めて拍手を始めた。

5331:2018/05/02(水) 02:58:55
(本当にうまくなってきているのかな…)と俺は思った。

愚息のことはさておいても…、というより、愚息から意識を逸らすためにも、俺は手の先や足の先まで意識を集中しようとして踊ったのは事実であって、(もしかして、今までで一番うまく踊れたんじゃないか)と素直に感じていたのも本当のところだったのだ。

「うん。本当に今のはすごく良かった。なんか生き生きした生命力がダンスにすごく出てたよ」と稲場さんは言った。

(ダンスにじゃなくて、愚息にじゃないか…)と俺は一瞬吹き出しそうになったけど、稲場さんに褒められるのは全然悪い気分ではなかった。(やっぱり俺、褒められた方が伸びるタイプだな)と俺は思った。

5341:2018/05/09(水) 02:16:21
{「稲場さん、すみませんけど…」
俺はこの際、もっと真剣にダンスを教えてもらおうと思って、稲場さんに切り出した。

「えっ、なあに?」
「俺、自分では鞘師に教わった通りに踊ってるつもりなんですけど、本当にこれであっているのかどうか…。もう一度ちゃんとしたお手本を見て確かめたいなと思って。俺のパートを、稲場さんが通しで一度踊って見せてもらえませんか?」
「あっ、うん。いいけど。じゃあちょっと見ててね」

そういうと、稲場さんは曲をセットし直して、俺の目の前で最初から踊り始めた。

(あっ、この人、ガチで上手い…)
稲場さんのダンスをじっくりと観察するのは初めてだったけど、踊りだすと、素人の俺にも一目でわかるほどの切れ味があって、俺の視線は思わず稲場さんの体にくぎ付けとなった。
(この人、もしかしたら鞘師よりも上手いんじゃないか…?)

5351:2018/05/09(水) 02:30:41
俺は一瞬そう感じたけれど、よくよく見ているうちに、
(技術的な面では、やはり鞘師の方が繊細なうまさがあるのではないか)と思い直した。

でも…。
何というか、鞘師のダンスより稲場さんのダンスの方が、生命感があるというのか、生々しいというのか…。
(一言で言うと、エロいのだ)と俺は思った。

(そういえば、前に鞘師自身も清水先生のダンスについてそんなことを言っていたし、当の清水先生も俺の家にきたとき『鞘師のダンスには色気が足りない』なんて言っていたな…)と、俺は思い出した。

稲場さんが動くたびにプルプルと揺れるオッパイと、プリプリ弾むお尻…。
俺は自分がだんだんと興奮してくるのを感じながら、ほとんど稲場さんの体をガン見するような体勢になってきた。

5361:2018/05/10(木) 01:00:18
あらためてじっくり観察すると、躍動している稲場さんの体はほどよく肉感的で、
(抱いたら気持ちいいだろうな…)と俺は想像した。

こんなことを比べるのはゲスだとは思うけど…。
俺を男にしてくれた雅さんの体は細かったし、山木さんだって細い方だ。
(稲場さんみたいなぽっちゃりした感じの女の子も抱いてみたい…)
薄手の白いTシャツにブラジャーの縫い目がくっきり浮かび出ている稲場さんのオッパイを凝視しながら、俺はそんなことをボーっと考えていた。

「あの…、一応一通り終わったけど…」
稲場さんの声に俺は我に返った。

5371:2018/05/11(金) 02:56:03
俺にエッチな目で見られていることに気付いたのか、稲場さんは、両手でちょっと胸のあたりを隠すような仕草をしながら、赤い顔で俺を見ていた。
俺は自分もたぶん赤い顔をしているんだろうと思いながら、「あっ、はい…。ありがとうございます」と、とってつけたような返事をした。

「で、ダンスは分かってくれたのかな?」と稲場さんがちょっと皮肉っぽい口調で聞いてきた。
俺は少し返事に困りながら、「ごめんなさい…。何か稲場さんのダンス上手すぎて、見とれちゃいました。だから、正直言って、細かい動きとかはよく分からなかったです…」と、言った。
エッチな気持ちもあったけど、そのこと自体は嘘ではない、正直なところだったのだ。

「そ、そうかな…。そんなに褒められるほどじゃないよ」と稲場さんがはにかんだ笑顔を見せた。

538名無し募集中。。。:2018/05/12(土) 01:12:42
更新はじまったから楽しみダァ!

5391:2018/05/15(火) 01:35:01
稲場さんはそう言いながら、壁の時計に目をやると、「あっ、そろそろいい時間だね。じゃあ今日はここまでにしようか」と、俺を見つめて言った。

「は、はい。ありがとうございました」と、俺が少々慌てながら答えて、教室を出ようとすると、稲場さんがびっくりして俺を呼び止めるように「えっ、○○クン、お昼ご飯は?」と言って、俺の目を覗き込むように上目遣いで見つめてきた。

(この人の上目遣いも強力だな…)と思いながら、俺が「は、はい。どっかコンビニでも行って弁当でも買おうと思ってたんですけど…」答えると、稲場さんは「ええっ!? 鞘師さんに『○○クンにお弁当作ってあげて』って頼まれたから、まなか頑張って早起きして作ってきたんだけど…」というと、寂しそうな目をして俺を見上げてきた。

「えっ? えっ!? 鞘師のやつ、そんなことまで稲場さんに頼んでいたんですか?」俺は驚いて声を上げた。

5401:2018/05/15(火) 01:42:37
「食べたくないなら、別にいいけど…」
と、消え入りそうな声でつぶやく稲場さん。

「い、いや、食べたくないなんて…、そんなこと、あるわけありません。むしろ喜んでいただきますけど…」
「けど?」
「そんなことまで稲場さんにしていただくなんて、何かすごく申し訳なくて。てゆーか、鞘師のやつもいったい何考えてんだろ…」
「なんか鞘師さんは、それが一番気がかりだったみたいだよ」と、稲場さんもちょっと不思議そうな顔をして俺を見上げた。

(そういや、俺の写真部との掛け持ちのこと気にして、『せめてお昼ごはんくらいは』とか、言ってたっけな、鞘師…)と、俺は思い出した。

5411:2018/05/15(火) 01:51:39
「鞘師さんが佳林ちゃんじゃなくて、まなかに先生頼んだのも、もしかしたらダンスの上手さじゃなくて、お弁当づくりの腕を見込まれたのかなあ、なんて」と、稲場さんは笑った。
何と答えればいいのか、「は、はあ…」と俺は困りながら相槌を打ったけど、稲場さんは気にする素振りもなく、「じゃあ、持ってくるね」と言って家庭科準備室に消えると、すぐにかわいい感じの袋に包まれたお弁当を手にして戻ってきた。

「それじゃ、一緒に食べようね」と稲場さんは包みを開いた。
中に入っていたのは、バスケットに入ったサンドイッチだった。

稲場さんは、おしぼりで自分の手を拭いてからそのうちの一つをつかむと、「ハイ、あーん!」と俺の方に近寄せてきた。

5421:2018/05/15(火) 01:58:27
「えっ!?」
俺は自分の顔が赤くなるのを感じていた。

そんな俺の反応を見た稲場さんは、「えっ?」と言って、俺を見つめた。

「あっ、いや…、そこまでしていただかなくても…」
「あっ…、いつも鞘師さんに、こうやってもらっているのかな、と思って」
「い、いや、さすがにそこまでは…」

稲場さんは「そうなんだ…」と言うと、少し顔を赤らめて、「なんか変な気を回しちゃったみたいで、ごめんね」と、はにかんだ笑みを見せた。

5431:2018/05/15(火) 02:01:37
>>538
ありがとうございます。気長に読んでもらえると助かります。

544名無し募集中。。。:2018/05/15(火) 22:05:07
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

5451:2018/05/16(水) 00:33:11
そんな照れた様子の稲場さんが不意にすごく可愛く感じられて、俺はドキドキしながら、「と、とにかく、いただきます」と、話題を替えるようにサンドイッチをつまんで一口食べた。

「どう、お口に合うかな?」とちょっと不安げな顔の稲場さん。
「あ、おいしい」
「ホント?」稲場さんの表情がパッと明るくなった。

「うん。すごくおいしいです」
サンドイッチはピーナツバターとイチゴジャムをはさんだものだった。

その時の俺の脳内イメージソング
https://www.youtube.com/watch?v=5k9cmZLKdaQ

5461:2018/05/16(水) 01:06:52
他にも、ポテトサラダとハムをはさんだものとか、レタスとトマトのサンドとか、バスケットの中にはいろいろな種類のサンドイッチが入っていた。そして、それぞれ食べてみると、胡椒や辛子が微妙に効いたりしていて、どれも素晴らしく美味しい出来栄えのものばかりだった。

俺は自分でもゲスだと思ったけど、つい鞘師がこの間つくってくれた無骨なおにぎりと心の中で比較してしまった。
(鞘師の気持ちももちろん嬉しかったけど…。正直こっちの方が格段に上手い…)

俺は結構な勢いで食べながら、「稲場さん、マジ旨いです。てゆーか、その辺の店で売っているやつよりずっと美味しいです。稲場さんって、料理上手いんですね」と、お世辞ではなし本当に感心して思わず言った。

稲場さんは、「そんなに褒められると、まなか照れちゃうよ」と言いつつも、まんざらでもない表情を浮かべてから、「あっ、そうだ。野菜スティックも作ってきたから食べて」と言って、別の包みを取り出した。

キュウリと大根、それにニンジンが結構な太さで切ってあった。

「あっ、ニンジンかあ…」と俺は思わずつぶやいた。食べられないというほどではなかったけど、生のニンジンはあまり得意ではなかったのだ。
稲場さんは俺のそんなつぶやきを聞き逃さずに「ニンジン、ニンジン食べなきゃ駄目だよぉ!」と言うと、頬っぺたを膨らませた。

※参考動画はカントリーガールズDVD MAGAZINE VOL.3
見当たらないので各自探してください(笑)

5471:2018/05/17(木) 03:03:40
そんな稲場さんの素振りを見て俺は、
(この人、姉さん女房みたいで可愛いなあ…)と、思わずポーッとした気分になってきた。

と、その時、教室の後ろの入り口の方から「ねえ…、あざといから、ホントに…」と呆れたような、笑いを押し殺したような声が聞こえてきて、俺は我に返って振り向いた。
見ると、ポニーテールの女の子が、耳まで真っ赤にして俺たちを見つめていた。

稲場さんも振り向くと、「あざ…、あざとくないよぉ、ちいたん」と、その子に向かって言った。

「ちいたん?」と俺が聞くと、稲場さんは「あっ。この子、ダンス部の1年生の森戸知沙希ちゃん。知ってるでしょ?」と俺を見て言った。

ダンス部の練習の時、何度か見かけている顔の子ではあったけど、名前を聞いたのはこれが初めてだった。

548名無し募集中。。。:2018/05/17(木) 22:37:43
やりとりが微笑ましい

5491:2018/05/18(金) 02:32:24
俺と目が合うと、その子、知沙希ちゃんははぺこりと頭を下げて「こんにちは」と言った。

「あ、ああ、こんちは。そんなとこでキミ、どうしたの?」と俺が聞くと、
「まなかんが普通にあざといから、ちょっと注意してるだけです」と、知沙希ちゃんは耳まで真っ赤にしたまま、笑いをこらえるような声で言った。

「あざといとか、嫌な言い方…」と稲場さんは拗ねたように口をとがらせてみせてから、
一転、ふざけたような声に変わって、「反抗期なのかな?」と、からかうように知沙希ちゃんを見上げた。
「違うよ!」
「反抗期かな?」
「ちが!もう、ホントに!」

じゃれあう2人のやりとりが、掛け合い漫才のように俺には見えた。







てから、稲場さんの方を向き直り、

5501:2018/05/18(金) 02:34:20
てから、稲場さんの方を向き直り、

ってのはただの削除ミス。お恥ずかしい

5511:2018/05/18(金) 02:49:30
そんなやりとりがしばらく続いてから、
「ちいたん、本当はどうしたの? 何か用だった?」と稲場さんが聞いた。

「用ってわけじゃないけど…。ちょっと心配で見に来たの」
「心配って、何が?」
「あ、いや…、その…」と言うと、知沙希ちゃんはチラリと俺の方を見た。

「俺、席外そうか?」と俺が言うと、
「あ、いや、そんな、いいんです…」と知沙希ちゃんは慌てたように言ってから、
「ダンス部の先輩たちが、まなかんと○○さんのこと、面白おかしく噂してたから、ちょっと心配になって…」ともじもじしたような仕草をした。

「噂って、どんな噂?」と稲場さんが口を尖らして聞くと、
知沙希ちゃんは「『まなかんがきっと何かあざといことしてるんじゃないか』って噂だよ!」と、相変わらずの赤い顔で答えた。

5521:2018/05/18(金) 03:02:42
(そうか、他の女の子たちがそんなこと噂してるのか)と俺は思った。
(他の女の子たちがみんなそう言うってことは、稲場さん、やっぱりあざといんだろうな)と思うと、俺はちょっと吹き出しそうな気持ちになった。

でも、そのあざといという感じは、きっとあくまで女の子から見た感じなのだろう。男の俺からすれば、稲場さんの甲斐甲斐しい感じというのは、たまらなく可愛いとしかいいようのないものだった。

553名無し募集中。。。:2018/05/20(日) 12:19:58
ちぃかわええ

5541:2018/05/29(火) 00:22:23
俺のそんな思いとは裏腹に、稲場さんはちょっと怒ったように口をとがらせて、
「みんな酷い! 勝手にそんな無責任な噂話なんかして…」とつぶやいてから、
「ね?」と俺を上目遣いに見上げて同意を求めるように問いかけてきた。

俺は反射的に「は、はい…」と答えたけれど…。
(そういう稲場さんだって、前には鞘師が俺を好きとか、宮本が俺を好きとか、無責任な噂話してたじゃねえか)
と思い出すとちょっと可笑しくなってきた。

それと同時に、あのときの、別に隠れて覗いていたわけじゃないけど、偶然見てしまった稲場さんの下着姿をまたもや思い出して、
知沙希ちゃんの前だというのに、再び下半身が熱くなってくる俺だった。

5551:2018/05/29(火) 00:35:58
「いちおう、それを教えにきただけだから。いろいろ気をつけてよ、まなかん。あっ! それと、ちゃんと遅れず時間通り全体練習にこないと、きっとまたみんなにいろいろ言われるよ」

知沙希ちゃんは早口でそう言い終えると、「じゃあ、また後でね」と、くるっと背を向けて小走りに去って行った。

俺と稲場さんは思わず顔を見合わせた。

「はあ…」と、俺はため息をついた。
(女の子ばかりのサークルというのは、面倒くさいものだな)と俺はあらためて思った。

女の中に男が一人なんて、やっぱりそんなに良いことばかりであるわけがない。
鞘師の熱意にほだされて残留してしまったダンス部だけど、(やっぱり辞めた方が良かったのでは)と、俺は少し後悔した。

俺がそんなことを考えているとは思いもしていない感じで、稲場さんは、
「知沙希ちゃん、あんな憎まれ口きいてたけど、本当は結構いい子なんだよ。今のもきっと心配してきてくれたんだろうし」と、俺の耳元で囁くように言った。

5561:2018/06/02(土) 00:58:48
「は、はあ…」といったん答えてから俺は、「知沙希ちゃんと稲場さんはどういう関係なんですか?」と、残っていたサンドイッチをつまみながら聞いた。

「どういう関係ってほどの関係じゃないんだけど…、ダンス部入ってから知り合って…、気が合うっていうのか、妹みたいで可愛くて」と、稲場さんは笑った。

それから稲場さんは俺の目を覗き込むように見上げて、「知沙希ちゃん、可愛いでしょ?」と意味ありげに聞いてきた。

俺は一瞬、サンドイッチを吹き出しそうになったけど、この場合、何と答えればいいのか良く分からなかった。
とりあえず、「は、はあ。確かに可愛いですね…」と相槌を打つと、稲場さんは、「ダメよ、そうやっていろんな女の子に色目遣ってちゃ」と、釘を指すように言ってから、ポン、と俺の膝を叩いた。

稲場さんは冗談のつもりでいったのかもしれないけど…。

ここ数日の自分のフラフラとした行動を思い出して、何気に俺は落ち込んだ。

「俺…、やっぱそういう風に見えますかね…?」
「えっ…、何? マジレス?」
稲場さんは困ったような顔をして俺を見上げた。

5571:2018/06/02(土) 01:14:13
「やっぱ俺って…、女の子だけが目当てでこの部に入って、いろんな女の子に色目遣ってるって思われてるのかな…って」

俺がそういうと、稲場さんは「そ…、そんなことないよぉ! でも…」と口を濁した。
「でも?」
「女の子ばかりの部だから…。女の子って噂話とか好きだし、いろいろ言う子もいるのは仕方ないよ」と声を潜めて言った。

俺はまたしても…、当の稲場さんと高木さんたちが着替えをしながら俺の噂をしていたのを覗いてしまったときのことを思い出して、頭がカッと熱くなった。

「俺は鞘師に色目を遣ってるってことになってるんですか? それとも宮本にですか?」

5581:2018/06/02(土) 01:38:47
一瞬ムキになって聞いてしまった俺に、
稲場さんは「…どうしたの?」と驚いたように目を丸くしてから、
「誰かにそんなこと言われたの? 鞘師さんがどうとか、佳林ちゃんがどうとか、そんな噂、まなかは聞いたこともないけど」
と、ぬけぬけと言い出した。

俺が二の句を継げずにいると、
「○○クンは同級生とか下級生より…、年上の女の子の方が合っているんじゃないかなあ…」と、稲場さんは上目遣いで俺を見た。

「えっ?」
雅さんや山木さん、そして舞さんとのここ数日の出来事を思い出して、俺は少し焦った。

そんな俺の気持ちには気づかぬように、稲場さんは「○○クンは確か写真部だったよね?」と聞いてきた。
「は、はい」
「写真部に山木梨沙ちゃんっているでしょ?」
「えっ? あ…、いるっていうか、いたって言うか…」
「梨沙ちゃんとか、○○クンには向いているんじゃないかなあ。○○クン、甘えん坊みたいだから、梨沙ちゃんみたいなお姉さんタイプが似合ってるよ」

俺はそのまま固まった。
(この人、俺と山木さんのこと、何か知ってるのか? それともただの偶然か?)

559名無し募集中。。。:2018/06/04(月) 00:04:36
まなかんこわいなぁ。笑

5601:2018/06/06(水) 01:44:00
背中に冷や汗が流れ出すのを俺は感じていた。

このまま黙っていたら、山木さんに振られた時のことを思い出して、また不覚にも涙が出そうな気がした。
慌てた俺は、弾かれたように早口で話し出した。

「でも、山木さん、確か彼氏がいたはずですよ」
そんなことを言って韜晦しようとした俺に、すかさず稲場さんが返してきた。
「あ…、それ、もう別れてるはず」
「え?」
「東京のK大に行った彼氏のことでしょ? それもう別れたって聞いたよ。梨沙ちゃん、振られたんだってさ」

俺は完全にフリーズした。
俺が山木さんを抱いて、まだ昨日の今日なのだ。
そして山木さんが彼氏に振られたって言うのも、夏休みに入ってからのごく最近の話なのだ。

なぜ稲場さんがそんなことまで知っているのだろう…。

5611:2018/06/06(水) 01:55:43
俺が口もきけなくなって完全に固まっていると、
「あれ、もしかして梨沙ちゃんのこと本当に好きだった?」と、稲場さんがからかうように俺の目を覗き込んできた。

俺はうろたえながらも、(そう聞くってことは、稲場さん、まだ俺と山木さんがセックスしたことまでは知らないのだろう…)と一応判断した。
(とはいえ、山木さんが彼氏と別れたことまでもう知っているのだから、山木さんと稲場さんには相当深いつながりがあるのだろう。だとすれば、いずれ俺とのことが知られるのも時間の問題かもしれないな)
俺は半分涙目になりながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

「ねえ…、大丈夫? 遠くなんか見つめて…」
稲場さんの言葉で俺は我に返った。

5621:2018/06/06(水) 02:07:45
「あ、はい。い、いえ、別に…」
しどろもどろになった俺に、稲場さんは「本当に図星だったみたいだね。びっくり…」と、少し呆れたような口調で聞いてきた。

「そんなに好きならさ…、アタックすればいいじゃん」と稲場さん。
「い、いや…、俺と山木さんはそんなんじゃなくて…」
「あれ? もしかしてもうアタックしたことあったとか?」
「…」
「あのね、一度くらい断られたからって諦めちゃだめなんだよ」
「え?」
「梨沙ちゃんみたいな子って、ああ見えて押しに弱かったりするんだから」
「…」
「女の子なんて、勉強ができるからって、しっかりしてるとは限らないんだよ」

(稲場さん、何を言いたいのだろう? もしかして稲場さんと山木さんって、それほど仲がいいわけでもないのかな…)

563名無し募集中。。。:2018/06/09(土) 00:00:31
いいね!

5641:2018/06/10(日) 03:56:17
俺の気のせいかもしれんけど、稲場さんの口調の中に、何となく山木さんをディスっているようなニュアンスを感じて、警戒する俺であった。

そんな俺の気持ちには全く気づかぬ風に、稲場さんは「ねえ、もし本当に梨沙ちゃんのことがそんなに好きだったら、まなかから梨沙ちゃんに伝えてあげようか?」と、俺の目を上目遣いに覗き込んでくるのであった。

昨日、俺は山木さんにハッキリと振られているのだ。
この上、稲場さん経由でそんな未練がましいことを伝えてもらったりしたら、決定的に軽蔑されるだけに決まっている。

「そ、そういうのやめてください。だいたい俺、山木さんのことなんて、別に好きでもなんでもないし」
俺はしどろもどろになりながら、早口で言った。

5651:2018/06/10(日) 04:09:55
「そうなの?」
丸い目をして稲場さんが俺の目を覗き込んできた。

「そ、そうですよ」と反射的に答える俺。

稲場さんは、「ふーん。そっか…。まなかの考え過ぎだったのかな…」と考え込むような仕草をしてから、
「梨沙ちゃんがダメなら、竹内さんとかどう? あっ、それとも紗友希ちゃんの方がいいかな?」と、またニヤニヤしながら俺の顔を見上げてきた。

「そんな…、俺、そんなこと…」
「イヤなの?」
「イヤとかじゃないですけど…」
「けど?」
「そんな、俺、誰でもいいなんて風には…」
「じゃあさ…、まなかはどう?」
「えっ?」

不意に真剣な顔で俺を見上げる稲場さんだった。

566名無し募集中。。。:2018/06/11(月) 01:46:33
ワッフルワッフル

5671:2018/06/11(月) 02:19:10
(稲場さん、そんなこと言って、俺をからかってるのか…)
俺は思わず五クりと唾をのみ込んで、稲場さんを見つめ返したけど、稲場さんの真剣なまなざしにぶつかって、つい目を逸らした。

(それとも…、この人、もしかして本気で俺に告っているのか…?)
俺は自分の心臓がドキドキと早鐘を打つのを感じていた。

俺を見上げる稲場さんの表情は、さっきまでのお姉さんぶったものとは違って、一人のか弱い乙女のようにしか見えなかった。

(もし稲場さんが、真剣に言ってくれているのなら、この俺も真剣に答えないといけないに違いない…)と俺は思った。

稲場さんとは正直言ってこれまであまり接点がなかったけど…。
今日のこの数時間のやりとりで、俺の心が大きく稲場さんに惹かれだしているのも、認めざるを得ない事実だったのだ。

「お、俺は…」

568名無し募集中。。。:2018/06/13(水) 23:10:52
まなかんルートキターーーーー

5691:2018/06/14(木) 00:36:23
俺は深呼吸をしてから稲場さんの目をもう一度見つめた。

そして思い切って、「俺…、稲場さんみたいな人、す、好…」と言いかけた時、
稲場さんは「えっ、冗談だよ冗談! ○○クンって、ホント、マジレッサーなんだね(笑)」と、慌てたように早口で言った。

俺があっけにとられていると、稲場さんは顔を赤くして、
「ちょっと、○○クンが冗談通じないから、まなかも何か熱っくなってきた」と言って、両手の掌でパタパタと自分の顔を扇ぐような仕草をした。

5701:2018/06/14(木) 00:52:28
そんなふうに言って稲場さんはケラケラと笑った。

俺はからかわれていたと分かってカッとする気持ちと、冗談だと知ってホッとした気持ちと、稲場さんをモノにできなくてがっかりしたような気持ちが綯い交ぜになった、不思議な気持ちになっていた。

ただ一つハッキリしているのは、稲場さんとの会話は俺には刺激的で心地よいものだということだった。俺は目の前のこの可愛い先輩のことを数時間前よりも確実に好きになりつつあった。

571名無し募集中。。。:2018/06/14(木) 10:33:07
このタイミングでまなかんとは素晴らしい

572名無し募集中。。。:2018/06/14(木) 23:33:38
まったくだ

5731:2018/06/15(金) 01:00:41
3年もダラダラ続けているといろんなことがあるなあ(笑)

574名無し募集中。。。:2018/06/19(火) 00:49:07
地震大丈夫?

5751:2018/06/22(金) 01:29:58
ボクは東日本なので大丈夫ですが関西の方は心配ですね

5761:2018/06/22(金) 01:43:44
俺がそんなことをぼんやり考えていると、
稲場さんが「あっ、いけない! もうこんな時間。早くいかないと練習に遅れちゃう」と叫んだ。

壁の時計を見ると、集合時間までもうあと1、2分しか残っていなかった。
俺が「早く片付けて行きましょう!」と言うと、稲場さんは「そだね。遅れたりしたら、みんなにいろいろ根も葉もないこと言われちゃうかもしれないしね」と言って、上目遣いに俺を見上げてきた。

どう答えればいいのか分からないまま、「は、はあ…」と生返事をしながら、俺が弁当の包みを片付けていると、稲場さんが「コホン、コホン」と咳をした。

「?」と俺が振り向くと、稲場さんは口を押えて「コホン、コホン」ともう二回咳をした。

「どうしたんですか? 夏風邪ですか?」と俺が聞くと、稲場さんは「そ、そうかも。でも大丈夫…」と慌てたように返事をした。

(ずいぶん苦しそうな咳だな…)と俺は一瞬思ったけれど、「早く行こう!」と稲場さんが俺の袖を引っ張ってきたので、慌てて一緒に教室を飛び出した。

577名無し募集中。。。:2018/07/03(火) 22:29:55
まってるよ!

578名無し募集中。。。:2018/07/17(火) 20:43:42
待機チュゥ

5791:2018/07/18(水) 02:17:37
走り出した稲場さんの後を追って、俺も廊下に飛び出した。

稲場さんの足は思ったよりも速く、俺は一瞬置いていかれそうになって、ちょっと焦った。
(ちょ…、女の子に負けられるかよ…)
俺は本気になって走り出すと、「お先に!」と稲場さんを追い抜いて、廊下の角を曲がった。

しばらくムキになって走り続けてから、(稲場さん、追いついてきてるかな?)と思って振り返ると、そこに稲場さんの姿はなかった。

(あれ…?)
俺はしばらくその場に立ち止まって稲場さんを待ったけど、何秒経っても稲場さんは現れなかった。

5801:2018/07/18(水) 02:28:30
段々不安になってきた俺は、恐る恐る廊下を戻ってみた。

元来た角を曲がると、そこに稲場さんがしゃがみこんでいた。

「稲場さん!どうしたんですか!?」
稲場さんは胸を押さえて「コホン、コホン」と咳をし続けているようだった。

「えっ? 稲場さん、どうしたの!?」
俺はびっくりして、思わず自分もしゃがみこんだ。
稲場さんは(大丈夫)といいたげに、俺を制するように片手を挙げかけたけど、咳は収まるばかりか、むしろ強くなる一方のように見えた。

(ど、どうすりゃいいんだ!?)
俺は一瞬パニックになりかけたけど、俺がうろたえたら稲場さんが余計に混乱するだろうと思って、危ういところで踏みとどまった。

「大丈夫? 落ち着いて…」
俺は自分に言い聞かせるように言いながら、稲場さんを抱くようにして背中をさすった。
稲場さんは無言でコクンと頷いたけど、咳が収まる気配はなかった。

5811:2018/07/18(水) 02:40:21
(ちくしょう!どうすりゃいいんだ!)
俺は半ば稲場さんを強く抱きしめるような体勢になりながら、稲場さんの背中をさすり続けていた。

その時、向こうの方から誰かがつかつかと歩いてきて、俺の前で止まる気配がした。

見上げると、そこに宮本佳林が立っていた。

「呆れた…。本っ当に誰でもいいんだね…」
そんなことを言いかけた宮本に、俺は強い口調で「いいところに来た! 宮本! 手伝ってくれ!」と強い口調で声をかけた。

「えっ?」
一瞬、理解しかねるような顔を浮かべた宮本だけど、稲場さんが「コホン、コホン」と苦しそうに咳をし続けているのに気が付くと、「う、うん!」と声を上げて、駆け寄ってきた。

5821:2018/07/18(水) 02:50:50
宮本は俺と稲場さんの間に割って入ると、「稲場さん、気持ちを楽にして」と、冷静な口調で言いながら稲場さんの背中をゆっくりさすった。

俺が小声で「宮本、救急車呼んだ方がいいかな…?」と聞くと、宮本はそれには答えず、「稲場さん、薬か何か持ってませんか?」と落ち着いた声で聞いた。

稲場さんは苦しそうに咳をしながら、「家庭科、準備室の…、袋の中…」と途切れ途切れに答えた。

俺は「いま持ってくる!」と叫んで慌てて駆け出した。

5831:2018/07/19(木) 03:01:05
俺は急いで家庭科準備室へ走って、さっき見た稲場さんのセーラー服がはいった袋をつかむと、すぐにまたとって返した。

「稲場さん! この袋だよね!?」と言って、俺が袋の中身を引っ張り出すと、稲場さんのセーラー服だけでなく、ブラジャーとか下着までもが出てきてしまった。

真っ赤な顔をして、慌ててそれを隠そうとする稲場さん。
「バカ!」と宮本が俺の背中を叩いた。

稲場さんは、下の方に入っていたポーチの中から、吸入薬のようなものを取りだして吸い込んだ。
ようやく稲場さんの咳が収まってきて、俺と宮本は顔を見合わせてホッとした。

584名無し募集中。。。:2018/07/21(土) 03:00:30
新作ありがと!!

585名無し募集中。。。:2018/07/21(土) 03:50:10
http://nazr.in/11AJ

5861:2018/08/03(金) 03:06:20
稲場さんの様子が少し落ち着いてきたので、俺は「稲場さん、とりあえず保健室にでも行きませんか」と提案したけれど、
宮本が「今夏休みだし、確か保険の先生いないよ」と、覆い被せるように言ってきた。

俺が黙っていると、稲場さんは「私、病院に行ってくるから、○○クンたちは練習行ってよ」と、力なく笑った。

俺と宮本は顔を見合わせた。(でも、稲場さんを1人きりにしても大丈夫なのだろうか…)と、俺は不安になってきた。

5871:2018/08/04(土) 02:48:15
「じゃ…、じゃあ、俺か宮本が病院に付き添いますよ。あっ、その前に清水先生に報告しといた方がいいか。俺、ちょっと話してきます」と、走り出そうとした俺を、稲場さんは「待って!」と引き留めた。

「えっ?」
「清水先生には黙っていて。お願い!」
「で、でも…」
「お願い。今は黙っていて」
「そういうわけにも…」
「明日まなかが自分で先生に説明するから…。清水先生とは約束があって…、どっちみちきちんと自分で話をしなきゃならないから…」
「約束?」
「お願い…。今はそれ以上聞かないで」

稲場さんは泣きそうな顔をしてそれだけ言うと黙り込んだ。

俺と宮本は思わず顔を見合わせた。
すると宮本は「わかりました。それじゃとにかく一緒に病院に行きましょう」と、稲場さんを促した。
「俺も行く!」と俺は慌てて後を追った。

1人で部の練習に戻ったところで、いろいろみんなに聞かれるだろうし、聞かれたところで「清水先生には黙っていて」との稲場さんの頼みに従えば、俺は皆にも説明するわけにはいかなくなるのだ。

つまり、病院に着いていく以外の選択肢は、俺にも宮本にもなかったのだ。

5881:2018/08/04(土) 03:00:18
稲場さんを挟み込むように、俺と宮本が両側について、3人で校舎を出た。
稲場さんは途中で何度か「ゴホンゴホン」と咳がぶり返してきたようだった。俺は焦ってきたけど、学校の前まで来たところで折よくタクシーが走ってきたので手を挙げて止めた。

タクシーに乗り込むと「××病院までお願いします」と、稲場さんが駅前通りにある古い内科医院の名を告げた。

3人ほとんど無言のままで、タクシーは走って行った。

589名無し募集中。。。:2018/08/07(火) 01:19:24
すごい心配や

590名無し募集中。。。:2018/08/29(水) 02:11:55
待機

5911:2018/08/29(水) 02:15:31
タクシーを降りて、目の前の病院の看板を見ると「痛井病院」と書いてあって、俺は「ああ、この病院か」とようやく思い出した。
車中でも稲場さんがその病院名を告げたのを聞いていた筈だったのに、俺も動転していたのかピンと来ていなかったのだ。

午後の病院は静かだった。

3人で玄関から入ったところで、ベテラン風の看護師さんとばったり出くわした。

看護師さんが「あら、まなかちゃんじゃない? もしかして、また発作起きちゃった?」
と心配そうに聞くと、稲場さんはコクンと頷いた。

「待ってて。今先生呼んでくるから…」と優しく言いかけた看護師さんだったけど、何かに気付いたように突然、稲場さんの左腕をつかむと、「あなた、まだこんなことやってるの?」と厳しい口調で言いながら、稲場さんの肘あたりに巻かれていたベージュのサポーターをめくりあげた。

何がどうなっているのか、俺の位置からは何も見えなかったけど、稲場さんは慌てたように腕を隠して「ごめんなさい…」と消え入りそうな声でつぶやいた。

5921:2018/08/29(水) 02:24:28
稲場さんは、その看護師さんに促されるように診察室へと入っていった。

俺と宮本が待合室の長椅子に腰を下ろした時、向こうの廊下から不機嫌そうな顔をした工藤静香似の女医さんがつかつかと歩いてきて、診察室に入っていった。

俺と宮本は顔を見合わせた。

宮本は小声で「ねえ、○○クン、見た?」と不安そうな顔で聞いてきた。

「何を?」
「稲場さんの腕…」
「いや、俺の位置からは見えなかったけど…」
「私、見ちゃったんだけど、いっぱい切り傷がついてた…」
「えっ…?」

5931:2018/08/31(金) 02:14:00
俺と宮本はそのまま無言になった。

しばらくしてから俺が「稲場さんが喘息だったなんて知らなかったな…。やっぱりそのことで悩んでいたりしたのかな…」と言うと、
宮本は「私は薄々は知ってたけど…。でもリスカとかまではちょっと…」と言いかけて、また黙りこんだ。

「うーん…」と俺がため息をつくと、宮本は「でも○○クン、やっぱり男の子だししっかりしてるね。○○クンがてきぱきしてたから安心した。私だけだったらたぶん動転して何もできなかった」と、俺を上目遣いで見上げながら言い出した。

「へ? いやいや。俺こそ動転しちゃって、たまたま宮本が来てくれたから良かったものの、俺一人じゃどうなっていたことか…」と、俺は慌てて答えた。そして、それは本当に俺の正直な気持ちだったのだ。

5941:2018/08/31(金) 02:24:58
俺がそう言うと、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、宮本は俺の手の上に、そっと自分の手のひらを重ねてきた。

(えっ?)
突然心臓がドキドキと鳴りだす俺。
「稲場さん、大丈夫だよね?」と心細そうに俺を見上げる宮本。
「お、おう…」とあいまいな返事をするしかない俺。

すると宮本は、真っ赤な顔をしながら話し出した。
「○○クン、今朝はゴメン。私がどうかしてた」
「えっ?」
「○○クンとうえむーがあんまり仲良さそうだったから、私、ヤキモチ焼いてたのかもしれない」
「…。」

595名無し募集中。。。:2018/09/05(水) 21:35:07
待ってました!ありがと!

596名無し募集中。。。:2018/09/06(木) 02:31:31
痛井病院とか
こりゃまた古いな

597名無し募集中。。。:2018/09/06(木) 21:52:41
ハロモニかw

598名無し募集中。。。:2018/09/13(木) 22:03:02
飯田みたいなヤブ医者じゃ治るものも治らない

5991:2018/09/14(金) 22:28:49
宮本の手のひらはすべすべしていて、それでいてしっとりと湿っていて、思いの外ひんやりとした体温が、俺の手の甲に伝わってきた。おれは全身の神経を手の甲に集中して、宮本の体温を感じたいと思った。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、宮本はやがて俺の手の甲をそっと握ってきた。俺は少し逡巡した後、もう一方の手を宮本の手の上に重ねたいと思った。

意を決して俺がそうしようとした瞬間に、診察室のドアがガチャリと開いた。慌てたように宮本が俺から手を離した。

600名無し募集中。。。:2018/10/01(月) 03:06:54
台風やば

601名無し募集中。。。:2018/10/09(火) 16:28:02
待機

6021:2018/10/15(月) 00:39:22
診察室から出てきた稲場さんはさぞ落ち込んで深刻な表情をしているのでは…、と思いきや、ヘラヘラと笑みを浮かべながら出てきて、「いやー、まいったなー。症状ぶり返しちゃったみたいなんだってー」と、俺と宮本を交互に見ながら話しかけてきた。

俺と宮本は思わず一瞬顔を見合わせた。
俺たちに気を遣ってか、そんなことを笑いながら話して明るく振舞おうとする稲場さんの様子は、かえって痛々しく俺たちの目には映っていた。

俺は「そうなんですか…」と返すのが精いっぱいだった。

6031:2018/10/15(月) 00:50:56
「うん。『今度発作起きたら一人暮らしやめて家に帰る』って、前からお医者さんや両親と約束してたから、いったん実家に帰らなきゃならないなー」と、稲場さんは笑った。

(あっ、そうか。稲場さんって越境入学だったんだ)と俺は思い出した。
確か学区外の隣の町から出てきて、学生向けアパートみたいなところで一人暮らしをしていると聞いたことがあった。
隣町といってもこのあたりの田舎だと、汽車で片道2時間以上かかったりするのだ。

「ダンス部の練習には、もう出られないかもしれないなあ」と稲場さんは明るい口調のままで言った。
ふと見ると、稲場さんの目じりから涙が一滴、ポロリとこぼれ落ちるところだった。

604名無し募集中。。。:2018/10/16(火) 00:14:28
切ないなぁ

6051:2018/10/29(月) 01:48:10
俺と宮本は思わず顔を見合わせた。

宮本はもらい泣きでもしているみたいに真っ赤に目をはらしていた。

「帰ろっか…」との稲場さんの声に俺は我に返って、「は、はい…」と返事をした。

6061:2018/10/29(月) 02:02:11
会計を済ませ、薬を貰った稲場さんのに後について、俺と宮本は病院を出た。

俺たち3人はほとんど無言のまま歩いていた。
俺はそんな空気がたまらなく、何か話をして場を盛り上げたいとは思ったものの、
適当な話題がどうにも探せずに結局黙って歩いていた。

「ありがとうね。私の家、ここだから、もういいよ。二人とも学校に戻って」
普通のアパートみたいな建物の前で、稲場さんが言った。

「は、はい。それで、あの…」
清水先生や、みんなには何て伝えればいいか聞きたかったけど、それを稲場さんに聞くのは酷な気がして、思わず俺は言い淀んだ。

すると、稲場さんは俺のそんな気持ちを察したのか、「ああ、清水先生にも『喘息が再発したら部活を辞めて実家に帰る』って約策は前からしてたんだ。だから、まなかからきちんと話そうと思ったけど、○○クンたち、学校に戻ったら説明しないわけにもいかにいよね。だからおおよその話はしてもらっていいよ。『詳しくは明日自分で連絡する、ってまなかが言ってた』とでも伝えといてよ」と言って、力なく笑った。

6071:2018/10/29(月) 02:04:02
変換ミスが酷い…

608名無し募集中。。。:2018/10/29(月) 02:39:19
待ってたぞ��

6091:2018/10/31(水) 00:44:51
いろいろスマン

6101:2018/11/06(火) 03:35:16
稲場さんと別れて…
俺と宮本はほとんど無言のまま、学校に向かって歩いていた。

しばらく経ってから、「稲場さん、かわいそう…」と宮本が言った。
俺は答えるすべもなく、無言のまま歩いていた。

俺が黙っていると、「稲場さん、かわいそう」と、もう一度宮本が言った。

『分かっているよ、そんなこと』」と俺は言いたかったけど、俺は黙っていた。

「稲場さん、かわいそう」
もう一度そう言うと、宮本は俺の腕にギュッとしがみついてきた。

俺は矢も楯もたまらなくなって、思わずギュッと宮本を俺の方に抱き寄せた。

611名無し募集中。。。:2018/12/19(水) 01:16:03
待機

6121:2018/12/23(日) 03:04:47
そのまま数秒…。

期せずして宮本を抱き寄せるような恰好になっていたことに気が付いて、俺は慌てて身を離した。
それが合図になったように、宮本も弾かれたように俺から身を離すと、不自然な感じで俺に背を向けた。

「とにかく、学校に戻ろうよ…」そういうと、宮本は俺から顔を背けたままで、俺の学生服の袖をつかんで引っ張った。
「お、おう…」と答えながら、俺は宮本の頬が赤らんでいるのに気が付いた。

613名無し募集中。。。:2019/01/03(木) 22:58:01
あけおめ

614名無し募集中。。。:2019/01/11(金) 21:53:36
続き待ってまーす

615名無し募集中。。。:2019/01/30(水) 14:37:11
待ってるで

616名無し募集中。。。:2019/03/24(日) 21:14:20
待機やー

617名無し募集中。。。:2019/06/15(土) 19:09:07
つらたん

618名無し募集中。。。:2019/08/14(水) 14:23:54
続きはよ!

619名無し募集中。。。:2019/08/16(金) 15:50:20
ゆきぽよカワイイ
小山リーナ (マジパン) @Koyama_Rina_Box
6d
溶けそう????
https://pbs.twimg.com/media/EBcdtwRUYAAPt0q?format=jpg&name=large
https://pbs.twimg.com/media/EBcdtwQUEAAyORt?format=jpg&name=large
https://pbs.twimg.com/media/EBcdtwQUcAMsvtO?format=jpg&name=large
├342     >>339 ビジネスなんだから必死にやらないと お金を稼ぐ大変さがわかる
├348     >>339 そういえば、祐奈誕生日 トイスマメンバーお祝いしてた?
│└357     >>348 してない。 後藤と倉田がお祝いのツイートしてた
まさにルリカの頑張りが評価された役柄だったな
ルリカは女子アナで番組のアシスタントと言う役か
木下が殴られた時のルリカの驚いた演技が面白かった
るかぴょんって卒業時16才で高1だよな
339     祐奈は必死なんだよ。 トイスマ解散して収入源確保の為に 後藤と組んでイベントした...
高校以降であれだけ背が伸びて声が変わる女子も珍しい
一般人より成長期が4年ぐらい遅かったんじゃないか
瑠果は前にも増して何言ってんのか分からないらしい

620名無し募集中。。。:2019/08/16(金) 15:51:02
https://pbs.twimg.com/media/EBcdtwPU0AAGPgS?format=jpg&name=large
配信中、なんかガワさん暗くないか?
犬置いてくとか相変わらずなルミさん笑
こりゃ売れないわ
ゆうなは皆に祝われていいね
イベントすらない有れば凄いんだろうけど
祝われる歳でもなかったか
4000円や立ち見3000円が高額だと思う?
はした金だろ?あのーそもそも稼ぐことが集金なんですかね?
会社もタレントもファンもWin-Winだと思うんだけど
商売ってそういうもんだよ明日、やすらぎの刻にルリカ出るね
祐奈は必死なんだよ。
トイスマ解散して収入源確保の為に
後藤と組んでイベントしたりして。
フジ系福岡ローカルで
上半期ブレイクランキングで総合10位に朝日奈央111本だって
ルリカきたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
https://pbs.twimg.com/media/ECB8dMAUYAEmt0D.jpg

621名無し募集中。。。:2019/10/07(月) 23:21:35
もうおらん?

622名無し募集中。。。:2019/12/04(水) 00:31:08
あげ

623名無し募集中。。。:2021/06/02(水) 01:01:13


624名無し募集中。。。:2023/09/18(月) 01:13:03
アンジュルムの小説書いて下さいお願いします!

625名無し募集中。。。:2023/11/26(日) 00:11:34
>>624
わきゃなのエロしょうせつ

6261:2023/11/26(日) 00:12:18
>>624
わきゃな主役ののエロ小説書きたい気はちょっとしてる


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