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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
1
:
名前が無い程度の能力
:2008/11/26(水) 00:23:45 ID:qDu.RquQ0
安価の人のお題で自分の好きなキャラの妄想をするスレ。
【例】
お題:煙草 キャラ:パチェ
「ここじゃ吸っちゃダメだよな…?」
「図書館の中は禁煙よ」
「…だよな、ちょっと外散歩してくるよ」
「えっ?」
「ほら、パチェも喘息持ちだし、な」
「だ、大丈夫よ、小悪魔、窓を全部開けてきて頂戴、あと○○(名前)に灰皿も」
「…大丈夫か?」
「へ、平気よ。ほら、早く座って、本の感想でも聞かせて頂戴」
「そうか…じゃあここで吸っちゃうぜ」
「え、えぇ」
(…むきゅー)
176
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/17(水) 18:50:14 ID:ac4JmblU0
今は静かな竹林で 虫の声が聴こえる夜
双方から向かい合って近づく影が2つ
広い場所に出てその者たちは止まる
二人は殺気立っており、虫は近づかず
いや、近づけずと言ったほうが良いだろう
竹の葉が風でゆれる音以外は聴こえない
そしてしばらく経ち、片方が口をあける
「よう」
「こんばんは、ってあら、だれかと思えばホームレスの妹紅じゃないの」
「ホームレスって…あんたが戦うたんびに私の住み家を壊すからでしょう」
「あら、たまにはあなたの弾幕で焼け落ちたこともあるじゃない」
「…ほとんど自分がやったってことは認めるんだな。
だったら直すのをてつだって、っていっても素直に聞くようなやつじゃないな」
「わかってるじゃない、ならあなたは永遠亭でもねらってみたら?」
「そんなことはしない、あんたほど甲斐性なしじゃあないんでね」
「それじゃあストレス溜まってばっかじゃないの?」
誰のせいだよ、誰の
妹紅は、はぁ…とため息をつく
「それは、」
妹紅の手からごうっと黄金色の炎がきらめく
「輝夜、おまえを殺し、晴らす」
あらあら、そうくるのね。と
輝夜は、自分の周りに五つの難題を浮かべる
「それじゃあ妹紅、私といっしょに冥界への門をくぐりましょう?」
「ならわたしはおまえをいっきに極楽浄土までぶっ飛ばしてやるよ」
「わぁい! なんて、これは本音かしら、うそかしら」
「ふん、そんなこと言ってられるのもいまのうちだぞ」
「そうね、」
「それじゃあ」「それじゃあ」
「「はじめようか!」」
遠くのほうで爆発音が聞こえる
そんな永遠亭の縁側で八意 永琳がお茶をすすっている
「ふぅ…今日も何事もなく終わったわねー」
幻想郷は、今日も平和です
177
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/17(水) 19:44:41 ID:ac4JmblU0
っと私は
>>176
ですが
今日初めて東方SSとゆうか、初めての創作物語は
緊張しながら書き込むボタンをクリックしましたよ
スレ違いかもしれませんがコメントしてくれたらうれしいです
スレ違いだと思ったら「スレ違ーよこのバカ」とでも罵って下さい
題消費:「わぁい!(シリアス指定)」「喧嘩」
残りのお題:「金がない」「スポーツ」「妖精の日常」「おっぱい」「仕事場」
「種」「楽器」「秘宝」「香水」「読み物」「靴」「雪融け」
「初めてのインターネット」「神隠し」「酒」「象」「時間」
かなり前のからもひっぱりだしてみた。…多いな
連投すまそ
178
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/17(水) 20:01:21 ID:CbPGYDbsO
>>177
なら言っておかねばならないな
いいぞもっとやれ
179
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/17(水) 20:32:05 ID:A1GQtRe60
紅魔館の門番がスキマ妖怪と手合わせした。
手応えがおかしい事に気付いた門番がスキマ妖怪に尋ねた。
「服の下に何を仕込んでるの?」
お題:おっぱい
<完>
正直スマンカッタ
180
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/19(金) 20:36:25 ID:7gG22UeE0
>>178
ありがとう
実はもう一つ「秘宝」で作ってあったんだが
元ネタのアイテムの能力を勘違いして憶えてて話が壊れちまったんだorz
…もういいや、考えた話もったいないから
勘違いしていた能力を受け継いだアイテムを自分で作ろう
今日か明日中に書き込むよ
181
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/21(日) 00:26:36 ID:Z6HzVCsM0
>>180
だが悪いちょっと遅れた、まあ待ってる人はいないと思うが
しかも長いんで分割
ここは里から離れた、外の世界から忘れられたや使い方がわからないものなどを取り扱っている香霖堂とゆう店だ
珍しいものなら沢山取り扱っているから一見の価値はあると思うよ
まあそれを売るかは僕の勝手だけどね
たとえば、この品物はパソコンといって誰でも使える式神なんだ
だけどどんなにいじくっても動かないから今は誰にも使えないんだけどね
だから僕は考えるんだ、これには何か足りないと。僕が思うにこれには
幽霊や亡霊のような形のないものが入るんじゃないかと思っている
なぜかと言うと、これは結構重いんだ中にも何か入っていて、とても形があるものが入れる隙間はないと思う
でも霊を入れただけでは僕たちには動かせない、だがそれはここにあるマウスとキーボードというものがある
これはこのパソコンというものを操る力があるんだ、これをどうにかして繋げれば…
っとどうやら君のほかにもお客が来たようだそれじゃあ君の相手はいったん終わりにし、新しく来たお客に目を向けてみようか
カランカラン
「こんにちは」
「やあ、きみは紅い館のメイドさんだね。きみのようなれっきとしたお客は少ないからありがたいよ」
「こちらこそ覚えていただいてうれしい限りですわ」
「春用のメイド服の仕立てはできてるよ」
ああ、言い忘れてたけど僕はこうゆう仕事もしてるんだよ。手先が器用だからね副業としてやってるんだ
「もうできたんですか、ありがたいですわ。それでわ近々使いのものをよこします。それで今日は掘り出し物はありますか?」
「ああ、昨日無緑塚で見つけたんだが、『光の玉』というらしい」
「光の玉…ずいぶん安直な名前ですわね」
「だがこれには、『魔を滅ぼす程度の能力』があるんだ」
「へえ、うちのお嬢様でさえ消すことができるのかしら?」
「わからない、だがこれほどの名をうっているんだからそれなりに強力ではあるんだろうね」
「ふ〜ん、少し気になるわね貰っていこうかしら」
「それはありがたいね、マジック系統は僕の専門外だから、ここにあっても埋もれるだけだからね」
「それでは、これにてごきげんよう」
カランカラン
…さて、話の続きだったね問題は霊をどう大人しくこの中に入れるかそれは------」
「で?これがその光の玉っての?」
「はい」
[ふーん,こんなものがね〜]
…うず
「ええ、なんとなく気になったもので」
…うずうず
「パチェ、ちょっとだまってて」
「え、あ、うん」
「…気になってるみたいね」
「うん、私もなんとなく」
「いいわ、パチェにあげる。わたしは興味ないし好きにしちゃっていいよ」
「本当にいいの?わたしがもらっちゃって」
「ええ」
「そ、それじゃあわたしはこれで」
そういいながら、静かに部屋を出る
「本当にああゆうときのパチェはいきいきしてるね〜」
「そうですね、魔女のさがなんでしょうか」
[どっちかってゆうと、そうゆう性格してるやつが魔法使いになるんじゃない?
まあパチェは生まれたときから魔女だったみたいだけどね」
「なら魔法使いは知識中毒でもないとやっていけないんですね」
「咲夜、それは言いすぎ」
はい、と笑みをかえしてくる
やれやれ、咲夜と話してると返す言葉をわかってて言ってくるように思うから困る。遊びようがない
さてパチェの方はどうなるかな、これから楽しみね
182
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/21(日) 00:39:23 ID:Z6HzVCsM0
〜一週間後〜
「ようパチュリー。あれ、それなんだ?」
「ああ魔理沙、ちょうどいいわちょっと聞いて」
少女説明中
「へえ〜そんなの香霖堂にあったのかあの日行った時には香霖のやつ何もいってなかったのに」
「客じゃない人に商品を勧める商人はいないわよ」
「失礼な、わたしはれっきとした客だぜ、つけてもらってるだけでな」
「はあ…」
「まあそんなことよりそれの研究はどうなんだ?」
「ああ、それであなたに手伝って欲しいのよ」
「お?わたしに手伝わせたりしたらパチュリーの出番なくなっちまうぜ?」
「あなた光の魔法得意でしょ、このアイテムも光の玉ってゆう名前だからなにか変化があるんじゃないかと思って」
「なるほど、じゃちょっくら試してみるか!」
八卦路の上に光の玉を乗せる魔理沙
「ちょ、マスパ打つつもりじゃないでしょうね」
「大丈夫だ、今回は熱なしバージョンだぜ」
「ホントに大丈夫?」
「ああ、まかせろ!」
まったく、この自信はどこからくるのか。少しうらやましいわ
「それじゃ、スイッチオン!」ポチッ
…八卦路ってボタン式だったのか
「……何も起こらないわよ」
「あれ〜おかしいな〜」
そういって近づく魔理沙
この子打ち上げ花火でやけどするタイプだわ
「お?なんか光ってきたぞ」
「え?」
そこには、内から光ってきている光の玉が
「ほんとに?成功?」
「なに驚いてるんだ、わたしにかかればこんなもん昼飯前だぜ」
ほんとに…あっ、ちゃんと能力が発動してるか調べないと
「魔の物魔の物…ってどこ?」
「パチェ〜、遊びにきたわよ〜」
え?レミィ?ってまずい!
「レミィ−!こっちきちゃだめー!」
「へ?うおっ!まぶし!」
「ちょ!」そんなこと言ってる場合じゃ
この間もより光り続ける秘宝、そしてこの場にいるもの全てのみこみ…
『けっきょく、あのアイテムにはもう力は残っていないようだ
だが何か魔法のヒントになるものを残してくれた
さっそくその研究に取り掛かろうと思う』
パチュリーは自分の日記から白紙の本に持ち換える
そして英語やら魔方陣やらを書き記し始めた
(あの強い光は結晶体の内部による光の乱反射によって増幅されたもの
その光を日の魔法に置き換え応用すれば…)
カランカラン
「いらっしゃい」
「よう、香霖」
「なんだ魔理沙か、今日は何の用だい」
「買い取って欲しい物があるんだ」
トンッ
「おや?これは?」
名「光の玉」能力「運命を狂わす程度の能力」
能力が変わってる?これはいったいどうゆうことだ?
実はこの秘宝にはもう一つ本当の能力が隠されていた
『触れた物の能力を映す程度の能力』
このとき、この秘宝によって起こされる異変はまだ誰も知るよしもなかった
183
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/21(日) 03:54:09 ID:DbKClbFAO
>>182
続き物になりそうな予感だねぇ
さてさて、俺も一つ
「私の御柱が神隠しにあったァー!」
神奈子がこう叫ぶと同時に早苗は驚きながら彼女を見た
「早苗ッ!早苗ッ!私の御柱が…私の御柱がァー!」
「お、落ち着いてください!神奈子様!」
「誰かが盗んだんだ!誰かが盗んだんだァー!」
「あんな大きい物誰も盗みませんって!」
事は昼過ぎ。暇つぶしに諏訪子と弾幕ごっこをしようと御柱を探したら、いつもおいてある場所に無かったそうな
「絶対盗まれたのよ!あれは大切なのにぃ!」
神奈子はいつもにあらぬ狼狽え方で箪笥から何からひっくり返していた
「なんであんな大きな物を無くすんですか?第一盗みませんよ」
「盗まれてないなら神隠しにあったんだよ!神隠しに!私を妬んだから!」
「まぁ、物を無くすのは神隠しとは言えない事もないですけど」
「なんでぇ?なんでないのよぉ!」
瞳からぼろぼろと大粒の涙を溢しながら箪笥の最後の段を開けていた
「困りましたねぇ…。確かにあれがないと信仰に関わってきますし」
その反面早苗は半ば呆れ眼で、部屋の隅という隅を探していた
「どっかに置いたとかじゃないんですか?」
「そんなわけないじゃない!あんなに大切なもの!嫌だぁ…そんなの嫌だぁ…」
「大切なものならなんで大切にしないんですか」
「大切にしてたわよ!あの御柱は信仰する人の血や汗が含まれてるのよ!」
「それはわかりますけど」
「あれが無くなったら私は信仰してる人にどうやって顔向けしたらいいのよ!」
早苗はこの時、ただただ信仰を集めるだけに興味があるだけと思っていた神奈子が
こんなに信仰する人々を大切にしていたことに、少しだけ見直した
だが目の前にいるのは、其処らにいる少女と変わらぬ神様である
しかも神様の癖に自分の無くし物を神隠しで済まそうとしている
「おい。神奈子なにやってるんだい」
すると神奈子の部屋の入口から諏訪子が入ってきた
「もう待ちくたびれたよ私」
「その…私の御柱が…」
「アンタ今日の朝弾幕ごっこするから万全にするため外に干しておくっていってたじゃないか」
「!!」
「えっ…?神奈子…様…?」
「……あ…あはは」
「…何が神隠しですか…」
「そ、それじゃ弾幕ごっこしてくるわ」
「あ…こら神奈子様っ!!」
幽霊の正体見たり枯れ尾花とはよく言ったものである
<了>
レス一つで書くのは無理があるかしら…「消費お題:神隠し」
お題:珍味
184
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/24(水) 23:05:56 ID:qv8ihHI.0
お題「珍味」
夜。虫の音や、夜行性の動物たちの蠢く気配、鳴き声が美鈴の周りを飛び交っていた。
いつもの通りだったが、やはり暇だった。花や動物相手に話しかけるほどメルヘンな性格ではないし、そこらへんの妖怪は皆この館を恐れて近づかない。
そんな時は大抵睡眠をとることで時間の束縛から逃れるのが常だったが、今日はどうにも眠れそうにない。こういう時は無駄に頭が働いてしまう。
例えば、ここに来たのはいつのころからだったかとか。
もう思い出せないし、常日頃思い出そうとも思わない。
「けど、時々は気になるのよねぇ」
ぽつりと、誰に言うでもなく美鈴はつぶやく。
ここは幻想卿にある紅魔の館。平和で、たまに物騒で、とても不可思議な自分の居場所。
いつ、どうして、何故ここにいるのか。私はいかにしてこの紅魔館の門番になったのか。
記憶を失ったのかと問われれば、どうなのだろうとしか言えない。もやもやと、曖昧すぎてそんな質問にもはっきりと答えられない。
けれど自然と不安はない。居心地がいいからかもしれないし、単にそんな思考すら許されないほどの何かをされているのか。
自分の記憶を辿るとき、それはブツリと途切れるわけではなく、蜃気楼のように静かに消えていく。
考えるだけ無駄、とまでは思わないが、それよりもなによりも、今はこの紅魔館の門番であり幻想卿の住人であることが自分にとって最も重要なことなのだ。
「めいりーーん」
門の内から、呼ばれた声に振り返る。
「そろそろ休憩時間ですよ」
言って、紅魔館のメイド長はお茶の準備をするためか、そそくさと館の中へ戻っていってしまった。
「はーい」
ワンテンポ遅れての返事。すぐに立ち上がり、門をくぐる。
この紅魔館の主は所謂吸血鬼、ドラキュラ、バンパイアであり、夜行性だ。ゆえにこんな時間にティータイムがある。
こんな、といっても慣れてしまった美鈴にとっては最早普通ではあるのだが、時折昔の感覚を思い出し、そういえばと思わないこともない。
185
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/24(水) 23:06:30 ID:qv8ihHI.0
「今日はシャーチーマーというお菓子を作ってみました」
メイド長はテキパキと揃った全員の前にお茶とお菓子を並べていく。
一目で高価と分かる上品で精密な食器たちの上に乗っていたのは、間違いなく自分の知っている沙蒞玛というお菓子だった。
「珍しいわね。いつもは洋菓子なのに」
メイド長に話しかけるレミリア=スカーレットは初めて見る物に対しての好奇心か嬉しそうだ。
話しかけられたメイド長も、ほっこりとした表情で中国でたべられているお菓子なんですよと応えている。
その通りだ。これは中国のお菓子で、私はこれを知っている。知っているから、どうしたというのか。
「……あれ…?」
あまりの体の違和感に、つい声が出る。何か喋らないと、喋っていないと、頭の中で巻き起こる嵐に、意識を持って行かれそうになる。
「……あ、あれ…あ、…?」
駄目だ。と思った。最早自分の態勢など気にすることなく手の平で顔を覆い、椅子の上で頭をもたげる。
「メイリン?」
明らかに異常な美鈴に、不安そうな咲夜が寄っていく。
「メイリン? どうした―」
言いかけて、咲夜はぞっとした。
指の隙間から現れた美鈴の目に。
その目は、紅魔館の門番である美鈴のものではなく、もっとなにか別の。
「大丈夫? メイリン…」
怯んだ咲夜を押しのけ、レミリアが仰ぐように美鈴の顔を覗きこむ。正確には目を。
レミリアの眼はいつもよりも一層紅く輝き、隠すことのない魔力を放っていた。
近くにいた咲夜は、その様子を直視することができなかった。今行われていることが、なんとなくわかってしまったから、決定的な部分をみることができなかった。
「メイリン、もう大丈夫よね?」
その言葉を合図に、美鈴は顔を覆うのをやめ、頭の靄を振り払うかのように頭を左右に振る。
「あー、すいません。なんか急に立ちくらみがしちゃって」
「気にすることはないわ。さ、甘いものでも食べて血糖値をあげておきなさい」
「はーい」
その会話は、咲夜にとって、とても不自然だった。あの様子は立ちくらみなどで表現できるほど軽いものではなかったし、なにより、あの目はなんだったのか。
呆然とする咲夜は、不思議そうにこちらを見る美鈴の視線を感じてはっとする。
「私ならもう大丈夫ですよ?」
「そう、よかったわ」
今お菓子を頬張る美鈴はいつもの美鈴で、あまりにもいつもの美鈴で、咲夜はまたぞっとした。
まるで、数秒前のことが全てリセットされたかのように。
「このお菓子、なんていうんですか?」
「? シャーチーマーよ」
「へぇ、知らなかったなぁ。お代わりあります?」
「……えぇ、いいわ」
「よく食べるわね」
「お嬢様もちゃんと食べないと大きくなれないですよ?」
「別にいいわ。咲夜みたいに無駄なあがきはしたくないし」
「? 私身長はありますよ?」
「胸の話よ」
「お、お嬢様! 私はあがいてなんか…!」
賑やかに、されど狂気に満たされ、今宵も紅魔館の夜は更けていく。
P.S幻想郷の中で最も健康そうな美鈴が大好きです。
186
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/31(水) 22:42:18 ID:O1igk4560
>>182
だが正直あまり創る気はなかった
だけど残りのお題思い返してたらピン!ときたので続きを投下
前回と同じくらい長いが話の切りが上手くいかず前代未聞の3分割だぜ
前回
>>181
,182の続き
ここは里から離れた、外の世界から忘れられた使い方がわからないものなどを取り扱っている香霖堂とゆう店だ
めずらしいものなら沢山取り扱(ry
「こんにちは」
「うわ!?い、いきなり後ろから話しかけないでくれ!」
「あらごめんなさい、あなたが集中して話してるもんだからちょっとおどかしたかっただけよ」
「はあ…君に言っても無駄…とゆうより、幻想郷にすんでる人はみな僕のゆうことを聞いてくれない」
「あなたのゆうことは理屈っぽいのよ、そんなんじゃ誰も聞いてくれないわよ」
「その言葉、閻魔さまにも同じことが言えるのかい?」
「うっ…た、立場が違うのよ、立場が」
「そうかい」
僕は皮肉っぽく言い返す
「そ、そうよ」
紫の顔は少しひきつっていた
「ところで今日は何しに来たんだい」
「え、ああ、まあ暇つぶしよ」
「ここは道具屋で品物を売り買いするところなのだが」
「まあ硬いことは言いっこなしで。あらこれは何かしら?」
そういって光の玉を手に取る
「ああ、それは」
「待った!長くなるから説明はいいわよ」
紫はそのまま光の玉をじっと見ていた…と思ったらとつぜんいやらしい笑みを浮かべた。正直少し引いた
「まあこれは置いといて、それより少しの間お話しましょ」
僕としては光の玉に何かしたのかと聞きたかったが、まあうまく話を逸らされるだろう
そしてこのあと、たわいもない話をし紫は帰っていった
187
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/31(水) 22:48:08 ID:O1igk4560
カランカラン
「こんにちわ〜!」
「おや、君は始めての見る子だね、いらっしゃい」
「はじめまして、私河童のにとりっていいます。よろしく!」
「ああ、覚えておくよ。ところで今日は何用だい」
「ここに行けばいろんな物があるから一度行ってみればいいって言われてさっそく来てみたんだよ」
「…ところでその言ってた人って誰だい」
「ん〜、一言で言えばあやしい人、二つの意味で」
「わかった、もういいよ」
「わ〜すごいね!これがパソコンってゆーのか」
「ああ、それどうやっても動かないんだ。僕が思うに」
「じゃじゃ〜ん!はつでんき〜」
「ん?それはなんだい」
「そのパソコンを動かせるようになる道具だよ〜」
「それは本当なのかい?」
「うん、じゃさっそくやってみよ〜」
そう言ってにとりはコンセントを発電機に刺し込み
「え〜っと、それでこのボタンを…ぽちっとな」
「おお、本当に動いた…」
「ね、いったとおりでしょ」
カランカラン
「よっす香霖、お?こんなところに河童とは珍しいこともあるんだな。なにやってんだ?」
「ああ、魔理沙か今式神が動くようになったんだよ」
「え?式神ってあの白くて箱型のやつか?」
「ああそうだ」
「そうかそうか、それはよかった。で、こいつは弾幕とか出せるのか?」
「それはできないと思うよ〜、外の世界の弾幕出す道具は発射口とかそうゆうのが必要みたいだからね〜」
「そうか…んで、そいつはいったいどんなことができるんだ?」
「今やってる最中だからまだわからな…そういえばあの人、むせんるーたってものを繋げればもっといろんなことができるって言ってたような」
「無線ルータ?それならここらへんに」
がさごそ
「あったあった、それじゃあ繋げてくれないか」
「あいよ!」
…ちぇ、随分と仲良くなってるじゃないか。と、人に聞こえないように呟く
「よし、これでオッケー、それじゃあ」
「…まあいい。てきと〜にそのインターネットとか押してみりゃわかるだろ」
「ちょっと!かってに動かしたらだめだって!」
このときすでに秘宝の能力が発動していた
秘宝が小さなすきまをつくり、運命的にこちらのインターネットにつながった。
「お〜なんかでてきたぜ」
「まったく…まあ少しは動かしてもいいかもね」
「いろんなのがでてきたが。ん?検索とか書かれてるぜ」
「何か調べられるのかな?でもどうやったら」
「…言葉を入れるんじゃないかな。横に四角い空欄があるし、それにキーボードとゆう物もあるしね」
「おお、さすが香霖。だてに無駄なこと考えてるわけじゃないぜ」
「君は一言多いよ」
「じゃあまずはきのこって調べてくれ。これが弾幕打てないんなら新種のきのこを見つけてそれで新しい弾幕作ってやるぜ」
「まあ最初はそれでいいかな。え〜っと、き〜の〜こっと」
「…gkbとかでてきたぞ」
「え?ちゃんと押したはずなのに。あれ〜?」
悪戦苦闘し1時間後
「や、やっとできた…」
「3文字書くだけで全力つかっちまったぜ…」
「まあとにかく検索っと。へ〜いろんなのがあるんだね〜」
「でもここらへんじゃあ生えないようなのばかりだな。こうなったらいつか外の世界へ行ってやるぜ!」
「えっと、じゃあ次は〜」
カラーン
188
:
名前が無い程度の能力
:2010/03/31(水) 23:00:35 ID:O1igk4560
「ん?お、なんだ今日は珍しいことだらけだな、こんな所にパチュリーが来るなんて」
「魔理沙…また私の物盗んだわね…」
「ああ、あの玉のことか。あれは盗んでない、借りてるだk」
「その言葉は聞き飽きたわ。丁度いい機会だし新しくできたスペカで葬ってあげる」
「ち、ちょっとまてってわたしは今疲れてるんだ弾幕はまたこんどに」
「日符…」
「わたしもいるんだぞ〜!!」
「ここは店の中だ、やるなら外で…」
「『ロイヤルフレア』!!」
「どわ〜〜!!」「いや〜〜!!」
ああ…僕の店が壊れる…どうして君はこう災厄をもってくるのだろうか。だから僕はいつもいつも――――――
「…上出来ね。まあ光の玉はいらないわ。もうできることもないだろうし、今回はあなたが何回も盗むからついに嫌気が差したのよ。それじゃね」
この時、香霖堂が壊れた拍子に秘宝がコロコロと転がってゆく
コロコロ…コロコロ…コロコrひょい
「うにゅ?こ、これは!……きれいだから持ってか〜えろ。ふふ、さとり様きっとよろこぶぞ〜」
烏の習性で光る物には目がないとゆうことで
つづく
こっからあとがき
実は、この物語最後までできてしまったんですよ
あとはどうやってお題に繋げるか…
お題「初めてのインターネット」消費
189
:
名前が無い程度の能力
:2010/04/08(木) 13:23:15 ID:5R8Wrbfw0
残りのお題:「金がない」「スポーツ」「妖精の日常」「仕事場」
「種」「楽器」「香水」「読み物」「靴」「雪融け」
「神隠し」「酒」「時間」
ちょっと書きたくなったが、どれが残ってるか分からなかったので
190
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/06(木) 23:08:08 ID:64VmnXRI0
このスレはじめてきたけど、
>>189
の中から適当に書いちゃっていいの?
191
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/07(金) 02:35:06 ID:Q2Gw2N4cO
いいんじゃない?
192
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/07(金) 07:33:59 ID:jVQsIyxgO
かまわん、やれ
193
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/08(土) 22:41:37 ID:M/q.nNzw0
僕もやろうっと
194
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/10(月) 21:23:52 ID:mzYLrJUcO
俺も俺も
195
:
「仕事場」「時間」
:2010/06/29(火) 04:06:39 ID:S67dBAUY0
あのひとの仕事場は少し狭い。とはいっても十畳を超えるから絶対的に考えれば狭くないのだけど、地霊殿の他の部屋と比べて、その上仕事場であるという事実を加味して考えれば、やっぱり相対的には狭いと言わざるをえないのだった。
「狭い場所で時間に追い込まれるのが好きなの?」
「そうでもありませんよ」
ここには空き部屋もたくさんあるのだから、もっと広い部屋を使えば良いのに。
少しの本棚、そこにめいっぱい詰め込まれた分厚い本、ひとつの古びた書斎机、小さな窓。古い本からにおうようなちょっと鼻につくにおいが、じんわりと染みついている。空間から切り取られたみたいに、時間の流れがここだけ遅く感じる不思議な部屋。このひとの仕事部屋。
「そう言うこいしこそ、どうして今日に限ってここにいるんです」
落ちるような言葉。耳に少し残る声。嫌いじゃない。むしろ好き。
「仕事と時間に追い立てられるお姉ちゃんを観察するのも悪くないかなって」
「良い性格してる」
私の方を見ようとはしないで紙面に眼を通しながら、喉の奥の方で笑う音がした。
こーん、こんこん。
この声の落ちる音があるなら、きっとこんな音だろう。
「遊ぶ時間とか出掛ける時間とか、そういう余剰の時間は幾らでもあるしね」
「時間は有限ですよ」
「今のお姉ちゃんにとっては、でしょ?」
「まぁ、ね」
万年筆をがりがり動かす音がし始める。私はふらふら仕事部屋を歩き回りながら、時々その姿を見ていた。何をする訳でもなく。何をしたい訳でもなく。時々本棚に視線をやって、適当な本を手に取って、小難しい内容に頭が痛くなったり。窓の向こう側の、いつも通りの曇り空からこぼれる陽の光の先を眺めたり。
何秒経ったか、何分経ったか。この部屋に時計は無い。仕事場なんだから必要なんじゃないの、と聞いた事がある。その答えは、「仕事場だからこそ、時間を忘れるべきなのです」。言い得て妙かな、と一瞬思ったけれど、後になってよく考えれば、そりゃそうかもしれないけどやっぱり必要でしょうに、現実問題。このひとの考えは、ちょっと私にはよく判らない事が往々にしてある。
「ねぇ、お姉ちゃん」
声をかける。返事は、無い。
「お姉ちゃん?」
しぃん。冷たい部屋に、じわり私の言葉が落ちた。
「こいし?」
その三つの眼は、とうとう私を捉えなかった。
――あぁ、そう。
三つの眼はしばらくきょろきょろと部屋を見渡してから、その後小さく嘆息つき、そして作業に戻っていった。
「またあの子は、これだから」
がこん。ばつ、ばつ。
この声の落ちる音があるなら、きっとこんな音だろうね。お姉ちゃん。..
196
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/29(火) 05:35:54 ID:FmDcEx.A0
>>195
GJ
偶に上がってると思うと、こういう良作に巡りあえるのが良いなぁ
せっかくなので、お題まとめに協力
残りのお題:「金がない」「スポーツ」「妖精の日常」「種」「楽器」「香水」
「読み物」「靴」「雪融け」「神隠し」「酒」
197
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/30(水) 13:00:01 ID:WxgfoLg20
>>196
「スポーツ」と「神隠し」と「酒」は出てなかったか?
198
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/01(木) 00:24:19 ID:8ajv6n4g0
重複疑惑があるのなら、重複して消化すればいいじゃない
「金がない」と「酒」で。
-----
つい先ほどから私の精神の均衡を乱して仕方が無い存在がいる。
追い返そうにも追い返せない厄介な存在がいる。
どうしようもなく大きな声で笑う存在がいる。
「よー、相変わらず不機嫌そうな顔してるねえ」
星熊勇儀である。
「不機嫌そうなんじゃなくて、実際不機嫌なのよ」
「何か悩み事か?聞いてやらんこともないよ」
「あんたの存在よ」
「やー、こりゃ手厳しいねぇ」
「橋姫じゃなけりゃ、あんたから姿をくらますためにいくらでも住む場所を替えるのに」
「まぁまぁ。酒も飲めば忘れるさ。一杯お酌してやるよ」
「遠慮しておくわ」
「ありゃ残念。今日はイカも持ってきたのに」
「完璧にここを何か勘違いしてない?」
「パルスィの住処だろ?」
「間違ってないけれど、その表現はホームレスっぽいわね・・・
ともかく、どうにもあんたの酒をもらうのは気に入らないわ・・・」
「強情だなあー。素直になれよー」
「誰が。えーと、鬼殺しはだいたいいくら位するかしら・・・」
「その酒チョイスは嫌がらせかい?」
「精一杯の嫌がらせよ。一緒に飲んでやるだけ感謝なさい・・・って」
「どうした?」
「若干足りないわ。残念。一緒に飲むことすら叶いませんでしたと。」
「じゃあ私のお金若干ばかしあげるからさ」
「借りを作れというの?」
「徳政令を出すから大丈夫だって」
「幕府の死亡フラグじゃない・・・」
「仕方ないな。半分ずつでそれを買って飲もう。私の酒でもない、パルスィの酒でもない、二人の酒だ。
一緒に飲むべきものじゃないか?」
「・・・仕方が無いわね。じゃあ鬼殺しを買ってきて」
「その嫌がらせチョイスは変えないんだな。」
「精一杯の抵抗よ。」
本当に、食えない奴だ。
正直、苦手である。
だが、不思議と嫌ではない。
このわだかまりを解消するものは無いかと思って辺りを見回すと、
イカが置いてあった。
それを口にくわえ、力任せに噛み締めたり引っ張ったりした。
口の中に少しずつ、幸せな味が広がってきた。
「・・・本当、」
半ば諦めたような、敵わないと悟ったような、笑いを浮かべて。
「妬ましいわ」
199
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/04(日) 10:45:52 ID:y2t4DTCQ0
ちょっと強引だが「読み物」
--------------------
妖怪の山に変な神様が来たらしい。
みんな迷惑していて面白そうなので退治に行くことにした。
山に入ると神を名乗る二人組が現れた。
楽勝で蹴散らす。
なんか今日は左のショットが調子いいぜ。
続いてくるくる回ってる自称神が現れた。
楽勝で蹴散らす。
なんか今日は左のショットが調子いいぜ。
次は隠れてるつもりの河童だった。
その程度の迷彩じゃ、もろ見えだぜ。
楽勝で蹴散らす。
なんか今日は左のショットが調子いいぜ。
九天の滝とか言うところに出た。
天狗が藁藁と出てきやがる。ここは厳しいぜ。
もっとも私にかかればお茶の子さいさいだがな。
ちょっとまじめに相手してやったら木っ端天狗のボスが逃げてった。
滝を登りきると文が待ってた。
こいつと一戦交えるのも面白そうだ。
と思ったら楽勝で蹴散らしちまった。
これじゃ木っ端天狗のがよっぽど強いぜ。
なんか今日は左のショットが不思議なくらい調子いいのぜ。
なぜか山に神社があった。
青いと言うか緑の巫女が出てきたので遊んでやった。
楽勝で蹴散らす。
今日は左のショットが調子よすぎるな。流石私だぜ。
神社の奥に湖があったのぜ。変な柱がいっぱい立っているのぜ。
ここに迷惑な神様がいるはずだ。
普通に呼んだら普通に出てきた。結構律儀なんだな。
柱とか粥とか投げてきてたいそうに見えるけど楽勝だぜ。
今日は左のショットが絶好調。こいつも楽勝だぜ。
って、あ゛、?これなんだ、え゛これが風神様の神■
「ここで筆が止まってる…いったい何があったのかしら」
博麗神社を脅しに来た風祝のところにお礼参りに来た博麗の巫女は道中で
魔道書の一頁と思われる紙片を拾って読み、背筋を凍らせていた。
文字の癖からすると普通の魔法使いのもののようだ
「弾幕張りながら日記も書けるなんて、魔理沙、なんて恐ろしい子なの」
200
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/05(月) 03:52:07 ID:6EI/wyT2O
「楽器」で行こうそうしよう
寺子屋に静けさが訪れた。
学童のいなくなった教室で、ふぅ、とため息をつくと、教材を黒板の横に設置した本棚に戻した。
傾いた日が入る教室で、今、いるのは、教師一人。児童も帰った教室に、ぽつんと帽子を机に置いて座っている女性が一人だった。
彼女はうつろな目で教室を眺めて、やれ帰ったら何をしなければならないか、やれ明日は何をしなければならないか、と、ぽかんとだらしなく口を開けて、物思いに耽っていた。
しばらくして―日が、山に隠れる頃に―彼女は立ち上がり、その空っぽの教室から出ようと、腰を上げた。
その時、外から何か音が聞こえてきた。
喇叭である。それも飛びきり明るい―まるで、スペインのグラナダを思い起こすかのような―音色を持った喇叭が、耳に入ってきた。
彼女は、その音につられるかの様に窓を見た。
すると、青髪で独特な服装の少女が、里に向かって、一人喇叭を鳴らしている。
この辺りでも有名な楽団の、花形を勤めている少女であった。
その目に笑顔はなく、何かを見つめるように―まるでこの世界以外を見つめるかのように―里をみながら、喇叭を吹いていた。
一心不乱と言う言葉がよく似合った。いや、実際一心不乱なのだろう。
少女の演奏を、彼女は一度聴きにいった事がある。その時の少女は、独特のほがらかな笑顔で対応してくれていた。
しかし、そこに立つ少女は違う。同じ少女なのに、笑顔もなく、ただ、脇目も振らずひたすら喇叭を吹く、全く違う少女がそこに立っていたのだ。
彼女は衝撃に包まれた。それと同時に先ほどまでの自分を恥じた。
彼女は、明日の事を、朧気に、―どうせ変わらないからどうしよう―と虚ろげに考えていた。
しかし、少女はどうだ。明日の事ではない。明日に繋げるために必死ではないか。人前で笑顔になるために、必死になっている少女がいるではないか。
すると、人を教える身として、何故だか非常に恥ずかしくなった。
こういう事を教えねばならないのに、私は教えきれているのか、と。
その内、少女は練習を終えた。
と、同じくして彼女から大粒の涙がこぼれていた。
この涙の意味は、具体的には分からない。ただ、何か意味があるのだろう。
彼女は、涙を拭うと、机からすっく、と立ち上がり、これを学童に伝えるべく、明日の事をしっかり考えながら、足を家路につかせた。
<了>
久々だから大分ダメダメに
新しいテーマ「歌」
201
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/27(火) 18:29:21 ID:TLsrjPs60
お題「歌」
歌が、聴こえた。それは紅魔の館の門の前。どこか懐かしい門番の歌声。
日は高く、丁度今が正午であることを示していた。
洗濯かごを抱えていたメイド長は、やれやれとかごを足元に置き、館の中から声をかける。
「メイリーン!」
「はーい!」
歌は止み、下から聞こえるのは必要以上の大声。
「そろそろお昼にするから、中に入ってきていいわよ」
「わかりましたー!」
言うと同時、門を開け中に入ってくるメイリンを見届け、咲夜も食堂へと向かった。
「いただきます!」
「いただきます」
メイリンは箸で、咲夜はナイフとフォークを使い、妖精が運ぶ料理に口をつける。
二本の棒を器用に使い目の前の料理を次々と平らげるメイリン。
それとは対照的に、咲夜は一つの皿を時間をかけてじっくりと味わう。
「ごちそうさまでした!」
ものの15分もしないうちに、数え切れないほどの皿を重ねてお茶をすするメイリンに、咲夜はあきれ顔で話しかける。
「毎回思うけど、あなたもうちょっと味わって食べられないの?」
「毎回言いますけど、咲夜さんはもうちょっと食べたほうがいいと思いますよ? だからきっと…」
言いながら、メイリンの視線は咲夜の胸元へと向かう。
「…何か?」
「いえ、なんでもありません。それでは私は職務へと戻ります!」
湯呑を置き、さっと席を立つ。
「あら、いつになく仕事熱心ね」
「そんな、私はいつも熱心ですよ?」
「でも歌を歌っていたじゃない」
「歌…ああ、あの歌ですか」
おどけた感じのメイリンの表情が途端に柔和になる。
その一瞬の表情に少しドキリとしつつ、ばれないように言葉を紡ぐ。
「あの歌、悪くなかったわよ」
「ええ、私の好きな歌なんです。前に、人間に教えてもらった歌なんですけどね」
「妖怪の前っていうくらいだから、相当に前なんでしょうね」
「そうですねぇ、何年前かなんてもうすっかり覚えてませんけど」
「私には、わからない感覚ね」
スッ、と二人の間の空気が少しだけ重くなる。人間と妖怪。二人の相違は、いつもふとした会話に内包される。
「…でも、私は、限られた時間って素晴らしいことだと思いますよ」
メイリンはそこまで言って、口を噤む。瞬間の沈黙。
コーヒーカップから口を離した咲夜は、少し笑って、感慨深げに「そうね」と呟いた。
夜。咲夜は結わいていた髪をほどき、つかの間の休息を得ようと寝まきへと着替えていた。
部屋が暗いせいか、三面鏡の前に座る咲夜の表情はどこか物憂げで、そこには紅魔のメイド長ではなく、一人の少女が佇んでいた。
そんな、虫の音も聞こえない館の一室に、昼に聴いた、あの歌声が舞い込む。
凛として張りのある声は、優しく、穏やかに咲夜の耳に届けられる。
窓から覗いた紅魔の門番は、相も変わらず誰に聞かせるでもなく、自由に、心底楽しそうに歌を歌っている。
なんだか少し羨ましく、窓から見下ろす銀髪の少女はポツリポツリと歌を重ねる。
遥か昔、一人の少女が一人の妖怪に歌を歌った。
そして今、其の妖怪は一人の少女に歌を歌う。
満天の星空の下。幻想卿にて、歌はまた、少女の元へと舞い戻る。
202
:
名前が無い程度の能力
:2010/08/11(水) 02:46:41 ID:Bb5CJxooO
おまいらちゃんとお題は出すんだで
ただでさえ過渡なんだからさらに燃料なくなっちまうでよ
<遊戯><団扇><清涼飲料><味噌><ぬこ>
<やらないか><お米><イワナ><しじみ>
ここは縛りプレイ
<コイン+さとり><賭け+白蓮><本+リリカ><松岡修造+妹紅>
<眼鏡+しみじみ><お茶+シリアス><和歌+ネタ>
203
:
名前が無い程度の能力
:2010/10/04(月) 05:46:14 ID:7SV/I4d6O
遊戯
幻想郷と言えど、子どもが遊ぶ事には、その道具は違えど変わらない
大抵は鬼ごっこやかくれんぼといった、いわゆる道具を使わない遊びがほとんどなのだが、
破れた布をまとめあげ、それを投げると、布を棒で打つような道具を使う遊びもやらないわけではなかった
偶々、一人買い物に来ていた神奈子は、里を少し離れた原っぱで子ども達がそれをしているのを見つけ、それを眺めていた
おぅい、投げるぞぉ、と小太りの少年が声をあげると、その布を棒を持つ細身の少年目掛け放った
細身はいともたやすく布を打つと、両手を上げて原っぱを走り回り、小太りはその布を追い、草むらに分けていった
小太りが布を見つけ戻ってくると、今度は細身が布を持ち、小太りが棒を持った
子どもというのはこんな単純な遊びでも面白いのであろう。そう思いながら腰を上げ、帰路についた
その夜であった
諏訪子と縁側に腰を落ち着かせ、たわいもない事を話すついでに、今日の昼の事を話した
子どもは、あんな単純な事にも夢中になれるんだなぁ、と感慨に耽りながら口からもらした
すると諏訪子は、茶を一口含むと、それは違うよ、と神奈子に答えた
別にその単純な遊びが面白いのではないんだよ。友人と単純な遊びをする事が面白いんだよ
私達がこう茶を啜りながら、世間話をするように、彼らにとってはあれが私達でいう世間話なんだ
ああいうのはどちらが欠けても続かないものさ、私達が一人で会話できないようにね
子どもにとって、その気持ちが通う時が、いわゆる遊びなんだよ
諏訪子は長い講義を終えると、一呼吸したあとにまた茶を啜った
神奈子は驚きと尊敬の眼差しで諏訪子を見ると、彼女は多少顔を赤くしながら帽子を深く被った
すると神奈子はにやりと笑うと、ならば私はお前さんの布を打つ番かな。教授さん、と冗談まじりに口にした
教授は赤面したまま黙ると、軽くうなずいた
その姿がいじらしくもあり愛らしくもあったので、諏訪子の頭に手を添えるなり、ゆっくり撫で始めた
教授はさらに赤面した
<了>
友情とか友人と口にするって恥ずかしいよね
テーマが変わっているようだが気にするな!
お題:目
204
:
<激写されました>
:<激写されました>
<激写されました>
205
:
名前が無い程度の能力
:2011/03/30(水) 12:39:32 ID:uM8ClT/A0
業者
206
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/07(木) 00:51:38 ID:dH7vCPno0
<賭け+白蓮>
「丁か半かで、見定めろと?」
「賭け事みたいなものでしょう」
賽子が篭の中で、からからと音を立てている。
胡坐をかく男の目は、眠たげに細められながらも爛々と瞬いていた。
「掛け橋を繋ぐなど」
「無謀だと言いたいのですね」
「両者は違いがある、それもはっきりとした違いだ」
篭が、畳に打ち付けられた。半と、男は呟く。
「あんたは、それでも?」
「賭け事は嫌いです」
女は朗らかに微笑む。
「当たりませんから」
それでも丁と呟き、女はやんわりと立ち上がった。
障子を開けると、控えていた者たちが一礼をしてついていく。尼入道、船幽霊など、様々な者が垣間見えた。
部屋には男以外に誰もいなくなる。
「どれ」
篭をどけてみた。
ふたつの賽子はそれぞれ一と四とが出ていた。
「なるほど、確かに」
人知れず男は笑みを浮かべた。
「賭け事はお嫌いなようだ」
刻薄な笑みだった。
207
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/07(木) 06:51:23 ID:dH7vCPno0
>>202
<コイン+さとり>
裏があって表がある。
心というのは一見すると複雑怪奇なのだが、それらを解きほぐしていけばその一点に辿り着くことを、古明地さとりは知っていた。
裏があるから表がある、逆もまた然り。
意思のある者が動くのは理由があってこそなのである。それこそ、どんなに取るに無いことでも。
その裏打ちを、言動の一つ一つからそつなく探るのもまた、ひとつの処世術と言えるのだろう。
そう考えると自分はそのプロセスを踏まないで良いのだから、随分とずるいものである。我ながら、大した能力に恵まれているとも思える。
おかげで、こうして人目を忍んで暮らす羽目となっているのだが。
それこそコインの裏表でも見るように、相対する者の心など手に取るように分かってしまう。
表で笑い、裏で唾していることなど、自分の前では無意味なのだ。すべて分かってしまい、腹芸など丸裸にしてしまう。
忌み嫌われるのも、避けられるのも、当然と言えば当然か。
ならばこそ、妹が瞳を閉じてしまったのも一応の理解はできる。納得などは到底出来るものではないが。
思考に埋没していた頭を醒ませて、ティーカップを手に取る。
丸いテーブルには、小洒落た椅子がひとつ。
相席のための椅子は無い。
すっかり冷めてしまった紅茶は、甘みも香りも感じさせず、苦いだけだった。
片側だけの。
表だけ、或いは裏だけのコインがあっても良かったのに。
囁きは声にもならず、溶けていった。
208
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/07(木) 07:33:01 ID:dH7vCPno0
>>202
<お茶+シリアス>
霊夢は真剣に悩んでいた。
保存している茶葉が痛みはじめていたのだ。
捨てるにしては少々惜しいほどの量が余っている。かと言って、痛みはじめたものを飲み続けるのも人としてどうかとも考える。
捨てるか、飲み続けるか。
道はふたつにひとつ。
ひとまず、こうして胡坐をかいて考え続けても仕方がない。掃除でもして身体を動かしながら、考えることにした。
せっせと掃いて、ひとまず終える。
だが答えは見えてこない。
結局はふたつにひとつの答えなのだから、どこかで踏ん切りをつけなければならないのだ。
一歩が肝心である、霊夢はなおも真剣に悩んでいた。
身体を動かし、喉に潤いが欲しくなったので、まずは茶葉の具合を改めて見てみる。
匂いも嗅いで、ほんの少し噛んでもみる。
やっぱり微妙な塩梅だった。
胃腸は丈夫な方なので、ここは我慢することも兼ねて淹れてみる。ほっこりと漂う香りも、微妙なものだった。
深刻な顔で霊夢は湯呑みを用意する。
やはり替えるべきだっただろうか。いや、これくらいなら大丈夫な気もする。いやしかし。
煮え切らないしかめ面で、急須から湯呑みへと茶を注ぐ。
しつこく、霊夢は真剣に悩んでいた。
わずかばかりの茶葉が急須からこぼれ、湯呑みへと移る。
「あ、茶柱」
ころりと霊夢の顔がほころんだ。
ちょっと幸せになれたので、しばらくはこの茶葉を使うことにしよう。
霊夢はあっさりと決めてしまった。
>>203
<目>
「紫のスキマって、覗きに便利よね」
「藪から棒ね、霊夢でも誰かの生活を覗きたいと思うの?」
「全然」
「でしょうね」
「まさしく、壁に耳あり障子に目あり、よね」
「妖怪の賢者ですから」
「でも耳は出せないの?」
「え?」
「ほら、壁に耳あり障子に目あり、でしょう。でも紫の場合、スキマから目が覗いていても耳は覗いていないじゃない」
「そ、それは……ほら、やっぱり耳だけなんて気持ち悪いじゃない」
「目だけでも充分気持ち悪い」
「うぐ」
「もしかして出せないとか?」
「そんなことないわよ!」
「なんで声を荒げるのよ」
「沽券にかかわるからよ! 見てなさい、んんっ……ほらっ、出た出た!」
「ふっ」
「ひゃうん」
「なるほど、紫の弱点は耳と。痛い目見たわね〜」
連投、失礼致しました。
209
:
名前が無い程度の能力
:2011/06/07(火) 00:08:56 ID:yrkH7Nfs0
お題「団扇」妖怪総出の博霊神社で荒稼ぎ
霊夢「やっぱりこうして集まると賑やかねー」
魔理沙「……」
霊夢「……? どうしたの」
魔理沙「いや、見間違いかと思ったんだが」
霊夢「どうしたのよ?」
魔理沙「祭り客が持ってる団扇をよくみてみろ」
霊夢「……?……え!」
魔理沙「俺たちの写真が張ってあるだろ?」
霊夢「しかも……全部きわどい写真じゃない!」
魔理沙「諦めろ、恐らくあいつはもうここにいない」
霊夢「そうね……自分のいた痕跡は塵一つ残さないでしょうね」
魔理沙「まさに天狗だな」
霊夢「そういうところだけは忠実よね」
文は悪いほうがいいと思います。
210
:
名前が無い程度の能力
:2011/06/07(火) 02:38:24 ID:yrkH7Nfs0
投下。メイリンで「お米」
メイリンは絶対にお米派だと思う。
メイ「……咲夜さん…私、昨日とある夢を見たんです」
咲夜「なによ、藪から棒に。夢?」
メイ「はい……お米をお腹いっぱい食べる夢だったんです…」
咲夜「…へぇ」
メイ「察してください! 咲夜さん! 咲夜さんならもう私が何を言わんとしてるか…!」
咲夜「そんなこと言ったって今御屋敷にお米はありません」
メイ「そんな! じゃあ買ってきますから!」
咲夜「……門番は?」
メイ「外出許可を……」
咲夜「理由は?」
メイ「……お米を買いに…」
咲夜「駄目です」
メイ「そんな殺生な!」
咲夜「そのうちお米が手に入ったら出してあげますから」
メイ「絶対ですよ! 絶対ですよぉお!」
――夜
メイ「はぁ……」
咲夜「……メイリン」
メイ「はい! 異常ありまっ……え? そ、それは!」
咲夜「夜食よ」
メイ「夜食なんていつも…それにそれおにぎりじゃないですか!」
咲夜「そうよ。食べたがってたでしょう? どうぞ?」
メイ「あ…ありがとうございます……」
咲夜「礼を言う必要はないわよ。私は貴女に正当な対価を差し出してるだけよ」
メイ「で、でも、うっ、うれ、うえぢいでず……」
咲夜「な、何も泣くことはないじゃない」
メイ「ぁい、すいばぜん…」
咲夜「ともかく、それを食べたら顔を洗ってきなさい。紅魔の門番としては失格よ」
メイ「はぃっ」
――屋敷内
レミ「随分と優しいのね」
咲夜「屋敷を取り仕切るものとして、部下の人心掌握も重要な職務ですので」
レミ「貴女のほうがここの主にふさわしいのかしら?」
咲夜「滅相もございません」
レミ「あら? 満更でもないでしょう?」
咲夜「……私は、500年も生きている吸血鬼と椅子取り合戦をして勝てると思うほど初心ではありませんので」
レミ「ふぅん……まぁ、今のは聞かなかったことにしといてあげるわ」
咲夜「ありがとうございます」
こんなんだったらいいなぁってだけですがレミ×サクの油断ならない主従関係とか素敵。
211
:
名前が無い程度の能力
:2011/07/10(日) 13:32:30 ID:q6ikFKsY0
お題がないから、上にあった「歌」でいいや。
みすちー「アアアアア」
ルー「それは何?Mugenのミクの戦闘時の歌だね」
みすちー「これはバイエルの22番といって本来はピアノの練習曲よ」
ルー「そーなのかー」
212
:
慧龍
:2011/07/10(日) 14:00:01 ID:svlBAROY0
名前はあえてつけさせてもらいます。
あと話を作るのは得意です。
じゃあ、「妖夢」と「料理」で。
幽「よーむー今日のゴハンはなーに?」
妖「ええっと、今日は、刺身と大根の味噌汁です。」
幽「・・・」
妖「どうしました?幽々子様」
幽「主食は?」
妖「刺身です。」
幽「どこでそんなものを、幻想郷に海はないわよ。」
妖「紫様からもらいました。」
幽「そう・・・(大丈夫なのかしら。)」
213
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/06(日) 18:33:21 ID:hAj0piaM0
久々にSSを投下
>>205
の『業者』
それは、そろそろ冬の訪れを感じさせる霜月の事だった。
倉庫から引っ張り出してきたストーブを試運転させていた香霖堂に、勢いよく白黒の魔法使い…霧雨 魔理沙が飛び込んできた。
―――カランカラン!
「香霖、香霖! 大変な事になったぜ!」
「…何だい魔理沙、朝から騒々しいな…」
手にこびり付いた黒ずんだ石油の残滓をボロ布で拭いながら、香霖堂の店主…森近 霖之助が辟易した表情で少女の方を振り向く。
息を切らせながら駆け込んできた魔理沙は、何故か背中に大きな風呂敷包みを背負っていた。
「私、このままじゃ年を越せなくなるんだぜ!」
「……はぁ、なるほど。それで夜逃げの準備ってわけかい?」
「違う! いいから私の話を聞いてくれ!!」
その後、魔理沙が矢継ぎ早に説明した事柄を整理すると、彼女の営む『霧雨魔法店』の売り上げが芳しくないらしい。あんな森の奥に建っていれば自明の理であろう。
生活も家庭菜園や魔法の共同研究で何とか凌いできたが、いよいよ首がまわらなくなったそうだ。
「……それで、僕に如何しろと? 先に言っておくが、ツケを踏み倒そうなんて思っちゃいけないよ」
「ふふっ、いくら生活が苦しくてもそんな卑屈になったりしないぜ。ただ、店の陳列棚を間借りしたいだけさ」
そう言って魔理沙は店の片隅にひっそりと佇む陳列棚を指差した。以前は小物が置いてあった場所は、霖之助が整理をした為に空っぽになっている。
「つまり、君は此処の立地条件を活かしてテナント事業を試みようってわけか……」
「流石、同業者だけあって話が早いぜ。あっ、ちなみにテナント料はツケで頼む」
魔理沙は霖之助が返事をするのを待たず、いそいそと背中に背負った風呂敷包みから妖しげな商品を取り出して棚に並べ始めた。
その商品を霖之助は自身の能力を使ってしげしげと眺めている。
キノコから抽出した魔法薬の小瓶、簡単な呪術を施した人形、爆竹程度の威力しかない発火魔法の護符etc.…
「ふむ、確かに面白い品物だね……わかった、暫くは様子見でテナント料は要らないよ」
「えっ、本当か香霖!? やったぁ! 香霖だいすきだぜ!!」
パッと笑顔が弾け、魔理沙は嬉々とした表情で霖之助に抱きついてきた。無邪気に抱きつく少女の華奢な身体を、霖之助はやれやれと言った感じで抱きとめる。
(この店もあまり繁盛しているとは言い難いが、まあウチにとっても商品の新分野を開拓したかったし丁度良いか……)
霖之助は脳内で冷静に算盤を弾いていた。そんな思考を、上目遣いで見つめる魔理沙の仔猫のような声が遮る。
こころなしか赤らんだ表情で、もじもじと指で霖之助の胸板を突っついている。
霖之助はくすぐったい感覚を堪えながら、不思議そうな表情で魔理沙の言葉に耳を傾ける。
「んっ、なんだい魔理沙?」
「な、なぁ香霖、もし…その、私の商品が売れなかったら…その時は、わ、私を…あの……よ、嫁に………あぁ、何でもない!」
ぶんぶんと頭を振り、とんがり帽子を目深に被りながら魔理沙は駆け足で店を走り去っていた。
霖之助はその様子をぽかんと見送っていたが、やがて苦笑しながらひとつ大きなため息をついた。
「やれやれ、こりゃ大きなツケを支払われそうだ……」
換気の為に窓を開けながら、霖之助は清々しい気分で初冬の空を見上げた。越冬の為に日本を訪れた気の早いマガモが一羽、幻想郷の空を渡っていた。
214
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/06(日) 18:34:17 ID:hAj0piaM0
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 『おれは「業者」でSSを書いていたと
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 思ったらいつのまにか魔理×霖だった』
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ |
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった…
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ ラブイチャだとかこーりん○すだとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
215
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/06(日) 20:42:49 ID:hAj0piaM0
>>202
「味噌」と「しじみ」で秋姉妹の朝ごはん
幻想郷の山にひっそりと佇む秋屋敷。そこには秋を象徴する2柱の神様が住んでいる。
晩秋の朝、台所ではコトコトと湯が沸き、新米の香ばしい匂いが立ち昇っていた。
秋屋敷の台所を与かるのは、姉の秋 静葉だ。赤いワンピースの上から若草色のエプロンを羽織って、軽やかに朝食の支度を進めていく。
「〜〜〜♪」
鼻歌も高らかに、コンロで熱したフライパンへ卵を落とす。ジュゥと小気味の良い音を立てて焼ける卵。
びっくり水を投入して蓋を閉じた所で、居間から這いずるようにもう一柱の神様が姿を現した。
「うぅ〜、お姉ちゃん頭痛い〜」
「……穣子、あんた吞み過ぎよ。意地張って鬼や八坂殿と吞み比べなんてするから」
穣子と呼ばれた神様は、静葉の妹神である。栗色のネクリジェからは姉を超える豊満な乳房が存在を主張していた。
豊穣の女神のプロポーションもしかし、二日酔いでげっそりとやつれた容貌では台無しであった。
そんな妹に対し、静葉は呆れながらもコップに冷水を汲んで渡してやる。渇いた身体を潤すように飲み干す穣子だが、調子はいまいちのようだ。
「ゴクゴク……ぷはぁ〜、だってぇ、西洋かぶれの神奈さんが舶来品の方が美味しいって宣うから……あぁ、ちゃぶ台がひんやりして気持ちいい……」
「だからって酒樽で勝負するひとがいる? まぁ、私もあの『うゐすきー』ってお酒は匂いが苦手だけど……」
そう言って静葉は肩を竦めながら食事の支度に戻った。穣子は気だるそうに今のちゃぶ台に突っ伏している。
暫くして朝食が出来上がり、静葉は改めて穣子に声を掛けた。
「どう? 朝ごはんは食べられる?」
「……ちょっと無理かも」
「そう、じゃぁこれだけでも飲みなさい」
未だちゃぶ台に突っ伏している穣子の前に、静葉は汁椀をそっと差し出した。
自家製味噌の芳醇な匂いを含んだ湯気が穣子の鼻をくすぐる。力なく顔を上げた穣子の眼前には、小さな貝と万能ネギのはいった味噌汁が置かれていた。
「……この匂い、シジミのお汁?」
「そう、この前出雲に行った時頂いたの。宍道湖で採れた高級品よ」
静葉はそう言って自身の汁椀に盛られた味噌汁を静かに啜る。真っ白な新米のご飯と新鮮な卵の目玉焼き。それにほうれん草と小女子のおひたし。
穣子も今年収穫されたばかりの新米を味わいたかったが、今は胃が受け付けてくれない。残念そうな表情で差し出された味噌汁を一口啜った。
「わぁ、美味しい……!」
「でしょ? 二日酔いにはしじみが一番よ」
濃厚なシジミの旨味と味噌の香ばしさ、そして万能ネギの瑞々しい歯応えに不機嫌そうだった穣子の表情も自然と綻ぶ。
静葉はそんな妹を温かい眼差しで見守りながら、艶やかな新米を頬張る。
こうして、秋姉妹の朝ごはんは和気あいあいと過ぎていくのであった。
216
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/07(月) 12:01:34 ID:OstEM9tk0
>>213
魔理沙かわいい
きゃーってなった
>>215
……食後でよかった
危ないところだった
お題「大人バージョン・子供バージョン」
217
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/13(日) 19:56:28 ID:0CdrDZIU0
>>202
「本+リリカ」
皆さんこんにちは、プリズムリバー三姉妹の末っ子リリカです。
今日は私が抱える悩みを皆さんにお話ししようと思います。
それは、ある雨の日の事でした。
私はひとり、住処である湖の廃洋館で寛いでいました。
2人の姉は所用で出掛けています。この雨音が寂しげに響く気だるい午後が一番好きです。
「あぁ〜、暇だわ〜」
そう、いくら雨の日が好きでもひとりで留守番は退屈です。
森の古道具屋さんで買った蓄音機からは、擦り切れたソナタが流れています。
私は読みかけの雑誌を放り投げ、ぼんやりと天井の木目を見つめました。
ちょうど真上の2階にはルナ姉の部屋があります。その時、私の脳裡にアイディアが浮かびました。
「そうだ、ルナ姉の部屋から本を借りてこよう」
ルナ姉は陰気臭い…もとい物静かな性格です。部屋には本棚いっぱいの本が有るのを私は知っていました。
私はさっさと2階へ駆け上がり、ルナ姉の部屋に忍び込みました。
質素な机とベット、そして壁一面を覆う大きな本棚。薄暗い部屋にぼんやりとルナ姉の匂いが鼻をくすぐります。
本棚には音楽関連の雑誌やハードカバーの難しそうな本が並んでいます。
私はそのうちの面白そうな本に手を伸ばしました。
ストンッ―――
すると、本棚の裏から何かが落ちる音がしました。本棚と壁には僅かな隙間があって、そこに落ちたようです。
「んっ? 何か落ちた?」
私は恐る恐る本棚の裏を覗きこみました。すると、私の手の届くギリギリの所に薄い本が落ちていました。
「うんしょ、よいしょ……」
精一杯腕を伸ばすと指先に本の角が引っ掛かり、何とかその本を引っ張り出せました。
「一体何の本だろう………えっ?」
疑問を抱いたまま本の表紙を見た私は、そのまま凝り固まってしまいました。
だって、その本の表紙は女の人がヌードで、なんか『淫乱メルラン』とか題名があって、その女の人がメル姉に似ていて、18禁とか書いてあって、私に似た女の子が何か触手みたいなのに………
そこまで思考がぐるぐる廻っていた所で、玄関から物音がしました。続いてメル姉とルナ姉の対照的な話し声が聞こえてきます。
私は慌てて薄い本を本棚の裏に放り投げ、ルナ姉の部屋から出て行きました。
あれ以来、ルナ姉の部屋には勝手にはいってません。なんだか怖いです。
私はこれからどうルナ姉と接していけばいいでしょうか?
218
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/13(日) 20:25:55 ID:0CdrDZIU0
>>196
「妖精の日常」チルノ編
11がつ11にち(きん) はれ
あさ7じ おきろ さむくてきもちいいあさだ。
あさ8じ あさごはん おにぎりをたべた。おいしかった。
あさ10じ だいちゃんとあそぶ かくれんぼした。たのしかった。
ひる12じ ひるごはん みすちーのやたいでうなぎをたべた。「つけ」ってなんだ?
ひる3じ おやつ じんじゃでれいむからおまんじゅうをもらった。ちょっとにがかった。
ゆうがた5じ かえる だいちゃんといっしょにうちへかえる。
ゆうがた6じ ゆうごはん がんばってさらだをつくった。れていにたべておいしいっていってほしい。
よる7じ おふろ やっぱりおふろはこおりぶろがきもちいい。
よる9じ ねる きょうもいいゆめみられるかな。はやくれていにあいたい。
219
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/20(日) 10:43:04 ID:fU9SqcWI0
>>196
「スポーツ」
幻想郷に冬が訪れた。
荘厳な里山は一面の銀世界となり、空は高らかに青く澄み渡っている。
昨今、幻想郷ではスキーやスノーボードが流行っていた。
妖怪の山の一角にスキー場が開設されたのも、ウインタースポーツが流行するきっかけとなった。
スキー場は妖怪だけでなく人間にも開放され、連日多くのスキー客で賑わっている。
「いやっほぅ〜!」
上級者向けの起伏の激しいコースから、雄叫びを上げて黒い弾丸が直滑降で駈けていく。
スキーを上手く操舵しながら麓に到着したのは、黒いスキーウェアに身を包んだ霧雨 魔理沙だった。
「あはっは、スキーって面白いな!」
ゴーグルを外して、汗ばんだ額を手で拭いながら魔理沙は上機嫌で笑った。
ちなみに魔理沙のスキー用品は香霖堂の倉庫から引っ張り出してきたものだ。
その様子を三白眼で見ていたのは、いつもの巫女装束にドテラを羽織った博麗霊夢である。
「まったく、アンタのスピード狂には呆れるわ。マスタースパーク噴射しながら滑り降りるなんて馬鹿なの?」
そう言いながら霊夢は手に持っていた紙コップへ口を付けた。湯気が立ち上る紙コップには、熱々の甘酒が入っている。
「なんだよ、楽しまなきゃ損だろ。霊夢こそ、カンジキなんか履いてないで一緒に滑ろうぜ」
甘酒を飲んでホッと一息つく霊夢の足元を見ながら、魔理沙は苦笑していた。
「私はパス。それより、アンタよりも目立つ奴が降りてきたわよ…」
「あぁん?」
霊夢の指差す方向を、魔理沙は怪訝な表情で振り向いた。
すると、そこには何故かスカイブルーのビキニを着て華麗にスノーボードを操る冬の妖怪が居た。
滑らかな腰遣いは、水着の為に艶めかしく強調されている。豊満な乳房は、今にも水着からはみ出んばかりの勢いで揺れている。
広瀬香美も驚天する格好で滑り降りてきたのは、『冬の忘れ物』ことレティ・ホワイトロックであった。
「あら、アナタたちも来ていたのね。そんなに厚着して蒸し暑くない?」
「………お前と一緒にするな」
ぶるんと跳ねるレティのおっぱいに羨望と嫉妬の眼差しを向けながら、魔理沙は苦々しく呟いた。
腹回りが少々太ましいが、それを差し引いても巨大な存在感を誇るレティの肉体美に、衆目は釘づけだ。
「ふふっ、まぁ怪我のないようにね。雪山って油断していると怖いわよ…」
意味深な忠告を投げ掛け、レティは再び滑降すべく山頂の方へ飛び去って行った。
「ちぇ、おっぱいデカいからって偉そうに……気晴らしにもう一回滑ってくる」
「元気でよろしいこと。私は休憩所に引き上げるわ……」
陽光を反射する雪原の眩しさに目を細めながら魔理沙はリフトへ向かい、霊夢は手をひらひら振りながら踵を返した。【了】
220
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/20(日) 11:51:29 ID:fU9SqcWI0
>>202
「清涼飲料」
小春日和。晩秋の空は静謐に晴れ渡っている。
そんな麗らかな日の午後、紅魔館では門番の紅 美鈴が冬囲いをしていた。
紅魔館の中庭にある花壇を休耕させ、梔子や銀木犀などの庭木は雪吊を施す。
雪吊の技術は、白玉楼の庭師である魂魄 妖夢から教わったものだ。
「よいしょ……これで良し」
最後の一本を吊り終えると、美鈴はふぅっと深く息を吐いた。
作業しやすいようにポニーテールに束ねた赤いロングヘアーが秋風に靡く。
「ご苦労様、美鈴。少し休憩したら?」
縄やハサミを片付ける美鈴に声を掛けたのは、紅魔館のメイド長である十六夜 咲夜だ。
濃紺のメイド服を瀟洒に着こなし、手には缶ジュースを携えていた。
「あっ、咲夜さん。ありがとうございます」
美鈴は普段の中華服ではなく、深緑のツナギを着ている。軍手を脱いで簡単にツナギで手を拭うと、咲夜から缶ジュースを受け取った。
よく冷やされた缶ジュースは、幻想郷では珍品だ。美鈴はそのパッケージをまじまじと見詰めている。
「……何だか黒くて毒々しいデザインですね」
「香霖堂から箱買いしてきたのよ。お嬢様や妹様の好きそうな柄だったし……」
そう言って咲夜は傍らからもう一本同じパッケージの缶ジュースを取り出した。
缶の地色は黒で赤い縁取りを施した白字で『QUAN FUU』と記されている。
美鈴は恐る恐る缶のプルタグを指で開けた。プシュッと炭酸の弾ける音と共に、独特な匂いが立ち昇る。
「……ちょっと懐かしい匂いですね」
「そう? 私はあまり懐かしくはならないけど」
一口飲んだ美鈴は、故郷のユーラシア大陸を思い出したのか自然と頬を緩ませた。
一方の咲夜はあまり得意じゃないのか、イマイチと言った複雑そうな表情を浮かべている。
人の嗜好はそれぞれ、冬の足音が近しい小春日和の午後は長閑に過ぎてゆく。【了】
【参考文献】
ttp://softdrinks.org/request/req2000.htm
221
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/20(日) 12:55:13 ID:YZ1wzVxUO
こんなスレがあったんだ。
お題:ぬえ+寺子屋
222
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/20(日) 14:36:22 ID:zpNLi.zYO
ファイトスレみたい。
お題『晴天の霹靂』
223
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/20(日) 14:58:28 ID:M.S2BpXI0
>>222
『晴天の霹靂』
今日は良く晴れていた。
とても良く晴れていた。
まさに晴天。天晴れだ。
……四季様の気分とは、裏腹に。
「小町ぃッ!」
ああ、四季様のバックに雷が見える。
可笑しいなあ、今日晴れじゃなかったっけ。
「貴方はまた仕事をサボって!貴方はやれば出来るのですからちゃんと仕事をしなさい!
そもそもあなたは仕事の意欲が足りない!何故この仕事をやっているのかと問い詰めたくなるくらいに!」
あたいは今正座中で四季様の説教を受けている。
ああ、足が痺れて来た。雷の効果だろうか。
「あなたは船頭死神に特別に与えられる、"距離を操る程度の能力"も良く使いこなせています!
同期の中でも飛び抜ける程に!それと仕事意欲が比例しないのは何故ですか!」
だって今日は晴れですよ四季様。そりゃあ眠くなっちゃうってもんでしょ。
……とは、正直者のあたいも恐れ多くてさすがに言えない。
「そう、あなたは少し怠慢すぎる。仕事意欲を取り戻し、今回や前回のサボタージュの分の仕事をこなす事。
それがあなたにできる善行です」
そう説教は締めくくられた。
四季様にしては短い方である。その短い期間に、雷によってあたいの足は完全に痺れてしまったわけだけど。
はいすいません、と中身のない返事を適当に言うと四季様は変な目でこっちを見た。
「……本当に反省していますか?」
「はい。反省しています」
反省はしてます。
四季様に嘘は通じない。あたいはただ真実を言っただけである。
「……私の説教の内容を、もう一度、大雑把で良いので、繰り返してみなさい」
「えっ」
やばい覚えてない。あたいは戦慄を覚えた。
あたいは黙る。四季様が苛々するようにこちらを見た。
「……すいません、覚えてません」
「小町ぃっ!!」
ああ、またバックに雷が見える。
まさに晴天の霹靂と言ったところだろうか。
そんな事を考えていたら、また四季様に雷を落とされた。
224
:
鵺+寺子屋 1/2
:2011/11/21(月) 00:31:51 ID:TddhQ57o0
>>221
やってみたら鵺+寺子屋と言うより ぬえ×けーね という異色カプになってしまった
子ども達のいない寺子屋は、静かだった。普段騒がしい彼らがいてこその寺子屋故に、その静けさは一層際立つ。蒼い月の光に浮かび上がる教室。昼間の喧騒が現実ならば、夜の教室はまさに幻想。窓から差し込む幻想の灯りは枠に切り取られ、青一色のステンドグラスを室内に投げかける。机や本立てに遮られればそこは漆黒。立体に遮られる平面の複雑な造形。その蒼と闇のコントラストが、切り絵のようで美しかった。闇の渚、静寂の空間。少女が一人。
別に残業に追われていた訳ではない。ただ、今日は帰りたくないだけ。
憂鬱そうに窓の外を眺める彼女の顔を照らす蒼い光。窓の格子に切り取られ、少女の姿を十字に分かつ。
ふと、少女は夜の香りを感じ、そして額を撫ぜる柔らかい風に窓の方を振り向いた。闇に慣れた目が一瞬遅延して月光になじみ、夜風に泳ぐカーテンレースが目に付いた。
窓があいている。いつの間にだろうか。誰かは、大体予想がついた。
「今晩は、先生。考え事かな?」
ひょこ、と窓枠の向こう側から小さな人影が姿を現す。蒼い月光に縁取られ、逆光に塗りつぶされた小さな影。
「……鵺か」
先生、と呼ばれた少女は目を細めてその人影を見据えた。星明り、月明かり。蒼い光を背に、鵺は歩み寄ってくる。
「さて、本当に鵺でしょうか」
浮かび上がる異様な羽のシェルットが、有無を言わさずその正体を明らかにしているのだけれど。ただし、その顔は確かに逆光に縁取られて正体不明。鵺が窓枠よりも大きく見える距離に来てやっと、彼女の表情が分かった。
「やっぱり鵺じゃないか」
先生と呼ばれた少女は鵺の顔を見てほっとし、そしてその美しさに一瞬息をのんだ。紅玉のような瞳が、宇宙の微かな明りを捕まえて僅かな輝きを湛えていた。透き通るような白磁の肌はこの闇の中にあってなお白く、艶やかな黒絹の髪はきらきらと光の粒を撒き散らしている。いたずらそうな、けれど優しそうな花の唇は微かに湿り、魔性の笑みを浮かべていた。
妖怪と言うのはそういうものなのだろうか。昼間見るよりも、ずっと妖しく、ずっと美しい。同性であるにも関わらず、魅了されてしまいそうなほどに。
「えっへへー、当たり」
鵺は教卓にうなだれる先生の前にコツコツと歩み出て微笑んだ。石鹸の香りだろうか、微かな薬草の香りが鼻をくすぐる。包み込むような……月明かりのような優しい香り。
「それで、元気がないみたいだけど……どうしたの?」
彼女は膝を折り、先生と同じ目線になった。蒼い光を透いて、彼女の紅玉の瞳と目が合う。先生が困ったように目を逸らすと、鵺は目を細めて笑った。
225
:
鵺+寺子屋 2/2
:2011/11/21(月) 00:32:39 ID:TddhQ57o0
「また、自分が誰だか分からなくなった……かな?」
中りだろうか。星と月の優しい光に照らされた先生の顔にやや当惑した表情が浮かんだ。迷いを湛えるその瞳の色は、鵺のものと同じ深紅。半妖だ。満月の夜が近くなると、月の妖力に感応して段々と体が変化していくタイプの。それが故の、戸惑いだろうか。鵺から見ると少しばかり大人びてはいるものの、それでもその顔は迷い恥じらう少女。
「……あぁ、そうだな。あるときは人間、またあるときは妖怪。はたして私は何者なのか……」
月明かりと窓の格子に裂かれた半妖の少女は目を細め、物憂げにつぶやく。小さなため息が思わず口をついて出た。
「何者かである必要はないんじゃない?」
そんな彼女を見、鵺はそう答えた。答えになっていないが、しかし多少なれど気が休まったように感じた。
「おまえは気楽でいいな、鵺」
先生の表情が少し緩んだ。
「正体不明だからね」
鵺が歯を見せて笑い返す。月光に彩られた蒼い幻燈のような彩色でありながら温かみを感じる優しい笑顔。その笑顔に、先生は心の底がぽっと暖かくなるのを感じた。
「そう、正体なんてどうでもいいんだよ。先生は先生」
鵺が先生の白い手を取る。先生はびくっと肩をすくめ、手を引きそうになった。けれど、鵺の目を見ると、心の中に生まれた小さな気恥ずかしさなんてどこかにいってしまった。
「私は……私か。例え妖怪の思考回路に自我を侵されているときでさえ、あるいは人間の思考回路に身を置いているときも。どちらが本当の私か、ではなく全部ひっくるめてという事か」
先生は鵺の目をじっと見据え、まとまらない考えをぽつりぽつりと言葉に紡ぐ。蒼い世界に放たれたつぎはぎの言葉は、目の前の妖怪が全て、拾ってくれた。
「そう、全部。私は、先生が何だろうと先生のことが好きだよ」
夜の闇は、月の明りは。昼間の間ではとても言えないような言葉も抱擁してくれる。故にだろうか、こんな言葉が飛び出したのは。けれども、鵺の言葉はしっかしと先生に受け止められた。
「ありがとう、お前のお陰で少し自信が持てたよ。鵺」
先生は、儚げな笑みを浮かべ、そして鵺の頬に手を触れた。
「どういたしまして。また迷ったら、何度でも自信をつけてあげるよ。慧音先生」
鵺はその手を自分の手で愛おしそうに包み込み、そしてゆっくりと机の上に戻した。
「それじゃ、私は命蓮寺に帰るね」
鵺はコツコツと窓に歩み寄り、そして翼を広げた。一瞬彼女がこちらを振り返ったみたいだが、蒼い光に縁取られたその影では、はっきりとは分からなかった。幻想の夜に、少女は飛び立つ。
そんな彼女を見送りつつ、慧音は胸の底に何とも言えない感情の芽生えを感じていた。
この気持ち、正体不明、測定不能。
2レスに渡ってしまった……。お目汚し失礼しました
226
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/21(月) 07:52:12 ID:ae/6Jux.0
>>224-225
夜の教室って幻想的ですよね。素敵なSSでした。
【お題まとめ】
・種 ・ぬこ
・香水 ・やらないか
・靴 ・イワナ
・雪融け ・眼鏡+しみじみ
・松岡修造+妹紅 ・大人バージョン、子供バージョン
227
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/21(月) 16:06:13 ID:xZaxKryUO
>>224-225
>>221
です。ありがとうございます。
お題:無礼講
228
:
(1/2)
:2011/11/21(月) 16:33:32 ID:6KJUkdYoO
>>216
お題:大人バージョン・子供バージョン
お題からズレてるかも。ごめん。
迫る年の瀬。
弱々しいながらも太陽が顔をのぞかせた今日は、命蓮寺一同各々作務衣に着替えて大掃除ということになった。
手加減無しのぬえとの箒チャンバラから逃げた響子は、はたきに持ち替えると勝手気ままに部屋を渡り歩いていた。
ある部屋に足を踏み入れた時、それまでは襖を開けるなり無造作にはたきを振り回していた響子の動きが止まった。
シンと静まり返った空気。きっちりと整えられた調度品。お香と、もう一つ別の落ち着いた香り。
聖白蓮の居室だった。
何か胸躍る気持ちでしばらく眺めていた響子は、部屋の隅にこれまた几帳面に畳まれた白蓮の法衣を見つけた。
側まで寄ってぺたりと座り込むと、恐る恐るといった風に手を伸ばした。
触れてみる。思いのほか柔らかかった。
「…大丈夫だよね」
誰に確かめるでもなく声が出てしまった。
ゆっくりと立ち上がりながら法衣を広げた。大丈夫、ちゃんと畳んで戻せばばれない。
肩に当ててみる。自分でも何をやっているのか分からなくなってきていた。
ついには――もぞもぞと作務衣の上から着込み始める。
さすがにサイズは合わない。
けれどもぶかぶかの袖に腕を通し、襟から無理矢理頭を出した頃にはすっかり白蓮気分になっていた。
『星、今日のお務めを始めましょう』
殊更に澄ました顔で白蓮の口真似をしてみた。山彦である響子の口からは本人さながらの声が出る。
無性に楽しくなってきた。
ひとしきりぷくぷくと笑うと、思い付く限りの白蓮の言動を余った袖を振り振り真似をする。
『ぎゃーてーぎゃーてー』
読経が始まった。意味なんか知らないけどいいのだ。今の自分は白蓮なんだから。
ふと見れば、法衣の丈が心持ち合ってきているように感じる。袖も先ほどまでは完全に隠れていた手指が見えてきていた。
法衣が縮んだのか自身が伸びたのか。
不思議に思いながらも、一層楽しくなってきた響子は合い具合を見るかのようにくるりと回りながら読経を続ける。
『はーらーぎゃーてー、はらそう…』
そこまで読み上げて、響子は障子の向こう、縁側に立つ小柄な人影に気付いた。
(聞かれた…!)
得意な気持ちは瞬時に萎んで、代わりに羞恥の心が湧き上がってくる。
どうしよう、誰だろう、逃げなきゃ、服は、様々な思いで動けなくなっていると、するすると障子が開いた。
229
:
(2/2)
:2011/11/21(月) 16:41:20 ID:6KJUkdYoO
そこに立っていたのはいつもの響子と同じくらいの背格好の少女だった。響子の普段着とまったく同じ桜色の服を着ている。
柔和な顔立ちと柔らかく広がった長い髪。知っているはずのないこの少女を、響子はよく知っていた。
「白蓮様、その姿は」
はっきりそう思えるほど、少女は白蓮その人を感じさせた。
私が白蓮様を見下ろしてるなんて、やっぱり何かおかしい。響子はようやく事態の異常さに気付きはじめていた。
そんな響子の言葉に少女はくすりと笑った。
「私に様だなんて、からかってらっしゃるんですね」
つ、と響子に歩み寄ると、真っ直ぐ見つめてきた。
「さあ、響子様、今日も白蓮にありがたい教えを」
そう言ってにっこりと微笑む。
「え、いや、その…」
「どうされたんです? 響子様」
「その響子様ってのやめて!」
何がなんだか分からないまま、響子は泣き出しそうになっていた。
「私、お経ちゃんと習ってないし」
「響子様」
「お掃除だってまじめにやってないし」
「響子様」
「ごめんなさいもうしません、だから許してー!」
思わず叫んでいた。
「大丈夫? 響子ちゃん」
いつの間に目を閉じたのだろう、響子ははっと目を開いた。周りには心配そうに覗き込む命蓮寺の面々。
「私の部屋でうんうんうなされてるんですもの、びっくりしちゃいました」
気付けば白蓮に膝枕されている。ゆっくりと視線を自分の体に向けると…やはり法衣を着たままであった。
「あの、これはですね」
おずおずと弁解をしようとすると、頭に乗っていたのであろう大きめの木の葉がはらりと落ちる。
それまでニヤニヤと眺めていたぬえが、たまらず吹き出した。響子の顔がみるみる紅潮していく。
まんまと狸に化かされたのだ。恥ずかしいやら悔しいやら、大声を張り上げずにはいられなかった。
「マ・ミ・ゾ・ウ・さーん!」
「ほっほ、適当に合わせとりゃ聖尼公気分を満喫できたろうに」
響く大音声を聞き流しながら、マミゾウはくつくつと笑った。
しばらくすれば、またガタガタゴトゴトと大掃除が再開されるだろう。
「みーんなヘタッピじゃ。もっと適当にやらんと息が詰まるぞい」
命蓮寺の屋根の上、一人隠れて飲む酒は少しばかり寒くはあったが、まあそれなりに旨かった。
230
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/21(月) 21:13:04 ID:dcu/iLDM0
このスレすげーな…
俺もこんなSS書けるようになりたいなと思いつつ
お題を投下してみる
お題:スクランブルエッグ
231
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/22(火) 01:10:20 ID:Zh3XBtxk0
>>230
スクランブルエッグ
やってみた。天子好きの皆さん、天子をメシマズ嫁扱いしてごめんなさい。けど料理が出来ない女の子って可愛いと思うんd
「何か料理が作れるようになりたい」
天人の少女は呟いた。彼女は美しかった。天界の晴れ渡った空にあってなお蒼いサファイア色の髪を腰まで蓄え、天を駆け抜ける風を捉えてキラキラと舞う。世界を映すその瞳は対となる宝玉、ルビーの深紅。澄んだ紅の瞳の中に優しさと意思の強さと、そして少しばかりのいたずら心が溶けあっている。透き通るような白、真珠の輝きと滑らかさを持った肌。その真珠の肌に差す仄かな赤みは、人がどれほど苦労して頬紅を取り繕っても決して及ぶことはない桃色。この世のどんな宝石よりも美しく、そして得難い。そんな少女。
少女の名、比那名居天子。彼女は何百年も生きていながら、未だに未婚であった。その美貌とは裏腹に、致命的な弱点を抱えていたから。
ひとつは我儘。これはまだいい。尻に敷かれるのが好きな男性も少なからずいるだろう。
もうひとつ。彼女には特別な能力があった。
『料理と称して劇物を作る程度の能力』
つまり料理が出来ない。出来ないのなら、しなければいいのだが……どうにも彼女は頑張ってしまうのである。結果、その頑張りを無駄にはしまいと未来の夫も同じく頑張り、思い悩む。
目の前にいるのは絶世の美女、性格だって皆が言うほど悪くはない。家系だって名門だ。そんな少女が一生自分のために尽くしてくれるというのだ。この料理(笑)を毎朝毎晩作ってくれるのだ!
そこで未来の夫は人生を分かつクライシスに立たされることになる。愛する彼女のためならば、これを毎日食べられるか、否か。
「なんで、なんで料理が出来ないだけでそんな扱いを受けなきゃいけないのよー! 昨日まで私の事愛してるって言ってたくせに!!」
天子は天界の雲の上から、下界に向かって胸中を吐きだした。それはもう、全力で。そう、彼女はつい昨日失恋したばかりであった。ただ、料理が出来ないがためだけに。
「総領娘様」
びくっ。肩をすくめる天子。あれだけ大きな声で叫べば、誰に聞かれていてもおかしくはない。
「貴女は、いつもその努力を悟られまいと他人の見えないところで努力なさいます。けれど、一人で料理の練習と言うのは……味が分からなくなりますから」
振り返れば、そこにいたのは竜宮の使い。緋想天異変の時から妙に縁のある奴だった。
「ギャー! イクサーン!! 聞いてたわね!? 貴女、全部聞いてたわね!?」
天子の顔が、恥ずかしさからかあっという間に真っ赤に染まる。それはもう、今にも湯気が出そうなほどに。
「えぇ、始終。聞いていたどころか事の顛末全て存じております」
「――――っ!!」
天子は悔しいやら悲しいやらで、とうとうその場に崩れて泣きだしてしまった。失恋の事、自分の才能の無さの事、全部聞かれていた事、そして衣玖が自分より自分の事をよく知っていること。全部ひっくるめて、よく分からない感情になって押し寄せる。
彼女の美しい顔が、涙に歪む。それでもなお彼女は美しく、そして可愛い。ぽろぽろと涙をこぼしてすすり泣く彼女に、保護欲をそそられたのは泣かせた当人であった。
「申し訳ございません、けれど衣玖は必ず総領娘様の力になりますよ?」
天子の、その滑らかな髪に覆われた背中をそっと撫でて、衣玖は耳元で優しく囁く。
「ふぇ……?」
天子は涙で潤んだ目で衣玖を見据え。暫し考え込んだ。
あぁ、もうこの子……抱きしめたい。そしてもうちょっとだけ泣かせたい。衣玖は心の中に膨れ上がる衝動をどうにか押さえつつ、彼女が言葉を発するのを待った。
「教えてくれるの?」
手で涙をぐしぐしと拭いて、衣玖の顔を見上げる。
「えぇ、簡単なものからですけど……。そうですね、先ずはスクランブルエッグなんてどうでしょうか」
232
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/22(火) 01:16:53 ID:Zh3XBtxk0
あ、普通に1レスに収まった。
そして次のお題を出すのを忘れたんでお題出させて頂きますね〜
お題:中二病
233
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/22(火) 22:04:02 ID:4knGgPQ20
>>226
「やらないか」
や…やっぱり
ら…藍は
な…何と言っても
い…一番
か…可愛い
藍「………あの、何ですかコレ?」
紫「お題で私の式に対する愛を表現してみたの。どう、感想は?」
藍「えっ、いや、そのぉ……ありがとうございます」
紫「うふふ、照れちゃって。本当に貴方って可愛いわね」
藍「お、お戯れを……あぁん、尻尾をもふもふしないで下さい」
紫「いいじゃない。あっ、でもひとり気になる娘がいるのよねぇ……」
藍「気になる娘?」
紫「命蓮寺へお使いに行かせた橙が『おばあちゃんみたいに優しくて、尻尾ももふもふして気持ち良かったです!』って言ってたんだけど…
眼鏡を掛けた古臭い言葉遣いの、佐渡から来た化け狸で、確か名前が二つ岩……あら、藍ったら出掛けちゃうの?」
藍「えぇ、ちょっと結界の点検に行こうかと」
紫「……チェーンソーなんか持って?」(てか、眼がマジで怖いわ……)
藍「ちょっと幻想郷の掟を叩きこまなきゃならぬ輩が居るので……」
のちの『封獣大戦争』である。
ぬ「ちょっ!? なんで封獣なのよ! そこは『妖獣大戦争』でしょうがぁ!!」
マ「ほっほっほ、そう怒るなぬえよ。お前さんが儂らの諍いに巻き込まれて
『ぬえぇぇぇ!』って叫びながら吹っ飛ばされるからそれはそれで正解じゃよ」
ぬ「マミゾウ姐さん何言ってんの?!」
藍「ごるぁぁぁぁ、この古狸がぁぁぁ!! 人の式に手ぇ出しくさりやがってぇぇ!!」ギュォォォォンと唸るチェーンソー
ぬ「ぬえぇぇぇぇぇ!!?」
234
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/22(火) 22:31:11 ID:4knGgPQ20
>>231
>>料理が出来ない女の子って可愛いと思う
激しく同意です。今のご時世、男が料理作っても全く無問題ですし。
食事・料理系のSSは書いていて楽しそうなのでお題投下します。
お題:【餅】【レトルトご飯】【団子】【そば】【米粉】【ラーメン】
235
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/23(水) 01:10:15 ID:ym/Mi.z.0
輝夜「どうお? 今日のご飯は私が用意させてもらったわ」
永琳「ひ……姫様が……っ」
優曇華(これはあれね、胃薬の準備をしておくべきね……)
てゐ(それじゃ優曇華のために胃薬と下剤を入れ替えておくかな……)
輝夜「どうしたの? なんでそんな険しそうな顔を……」
永琳「いえいえ、姫様がせっかく作って下さったんですもの、有難く食べさせていただきます」
ぱくっ……
永琳「……うまい!!」
テーレッテレー!!
永琳「どうなされたのですか、姫様! こんなに突然料理が上手になって……」
優曇華「本当ですよ、今日のこれと先週のあれでは天と地、カレーとウンコほどの開きがございます! 本当に何があったんですか!?」
てゐ(もぐもぐ……オチが読めたウサ)
輝夜「えへへ……それ、レトルトなんだ」
てゐ(もぐもぐ……優曇華死んだな)
>>234
レトルトご飯
で書かせていただきました。ベタなネタで申し訳ないw
236
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/23(水) 01:52:23 ID:OO5lxjsgO
なんだひさびさに来てみたら盛り上がり始めてるやん!イケるで!
隙が出来たら今度からちょくちょく書こう
お題
「時計」「夜」「朝露」
237
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/23(水) 18:12:11 ID:QvbFoelYO
>>228-229
まさに寸劇、不思議な気持ちを纏わせる可愛らしいSS良かったです。
238
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/23(水) 21:28:58 ID:9w57DlgEO
時期ネタを投下。
【衣替え】【暖の取り方】
239
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/24(木) 02:11:55 ID:azqw0TI.0
【雪融け】
「隣、いいかしら」
忽然と現れた気配に声をかけられ、ナズーリンは動揺を押し隠しながら視線を巡らせた。
いつの間にか自分の傍らに、人当たりの良い笑みを浮かべた清楚な雰囲気の少女がいる。
「好きにするといいさ、大体私の家じゃないんだし」
突き放したような物言いにも彼女は気分を害した様子はなく、では失礼、と愛想よく
腰を下ろした。周囲に気は配っていたはずだが、とナズーリンは心中いぶかしむが、
すぐに馬鹿馬鹿しくなってやめた。彼女たちはどこからでも現れることができる。
ましてや、壁抜けの技能を伝承に残す彼女は特に。
「まだ会談は終わっていないだろう?」
彼女、霍青娥とは視線を合わさず、ナズーリンは尋ねた。腰掛けた縁側から眺める
神社の境内は紅葉も終盤を迎え、木々は寒々しい姿を風に晒している。遠くに見える妖怪の山、
その頂きは既に色をなくしており、これから一月もかけてそれは裾野へ、そしてこの神社へも
広がってゆくのだろう。
幻想郷に冬が訪れようとしている。
「冷えますね」
同じことを考えていたのだろうか、同意を求めるでもなしに青娥は呟いた。よく通る、
心地よい声だ。きっと歌も上手かろうと、ナズーリンは思った。
「貴方のほうこそ、会談に出なくてもいいのかしら? ナズーリンさん」
青娥が自分の名前を知っていることに、ナズーリンは別段驚かなかった。むしろ、彼女が
自分の思っているような人物だとするなら、当然知っているだろうと考えていた。その想像が
当たっているかどうかは、次に自分が発する言葉に青娥がどう反応するかによる。
「私は戦うのが苦手だからね」
肩をすくめて、答える。くすり、と青娥が笑った。
「私も、あの方たちとまともに渡り合う自信はありませんわ。だから、事が始まる前に中座してきたの」
「なるほど、お互い辛いところだね」
深くうなずく。それで通じた。
「この会談を提案したのは、貴方でしょう? ナズーリンさん」
「そうだよ。博麗の巫女に立会人になってもらうのもね。面倒そうにしていたが、幻想郷の平和のためと
言われれば彼女も断れないさ」
奥の座敷では現在、命蓮寺の主要メンバーと神子一派による会談が行われていた。過去の経緯に
より険悪な関係にある両者を引き合わせ、とにもかくにも話し合わせる。それで対立による緊張が
緩和されれば何よりであった。
とはいえそう単純な話ではない。
「交渉の場を設けるというのは私も考えていたわ。けれど、建設的な議論になるとは思えなくて躊躇していた」
「君がそう言うということは、やはり場の雰囲気はまずいかい」
「ええ。トップのお二人はさすがに冷静だけど、後ろに控えている子たちがね。まあ、口だけではなく
手が出るのは時間の問題かしら」
「そうなればさすがの聖も、みなを守るために手を出さざるを得ないか」
君のところもそうだろう、と言外に含ませてナズーリンは息を吐いた。気配だけで、青娥が
うなずくのを感じ取る。
240
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/24(木) 02:15:14 ID:azqw0TI.0
「布都も屠自古も熱しやすいタチだから」
貴方のところもそうでしょう、と言外に含ませているようだった。ナズーリンとしては苦笑する他にない。
「このまま引っ込みが付かなくなって全面戦争、というのは今は避けたいわね。対外イメージも
あるし、私たちはまだこの地に確固たる地盤を築けていない」
「問題ないさ。そのための霊夢だし、あの二人も本当は分かっているはずだ」
白蓮と神子も落としどころは弁えているし、なんとなれば霊夢が全員ボコボコに
してくれるだろう、と言うナズーリンに青娥は目を見開き、続いてわずかに残念そうな表情を浮かべた。
「信用しているのね」
霊夢と、白蓮と、そしておそらく神子をも。青娥のその表情は、果たしてナズーリンへの羨望か、
それとも失望か。そこまで読み取ることはナズーリンにはできなかった。
「お人よしがうつったのかもしれないな」
嘯くナズーリンを青娥は見つめ、そのまま少し時間が流れた。
「私はね、強い人が好きなの。強い人が私のおかげで成功するのは、もっと好き」
何かが割れるような音が奥から聞こえて来、注意をそらしたわずかなタイミングに
滑り込むように青娥は言った。
「そうかい。まあ私も似たようなものだよ。みんな仲良く、さ」
「仲良く、ね」
「君のボスだって似たようなことを言っているだろう」
「ええ、古今東西、聖人は誰もが似たようなことを言う。けれど、そうはならない。何故か……?」
挑戦的な視線を向けられ、ナズーリンは軽く息を漏らした。
「決まってる。私や君のようなのがいるからさ」
問答に付き合う気は無かった。しかし青娥は、ナズーリンの答えを気に入ったようだった。
「ふふふ、対立を作るのが私たちなら、融かすのも私たちということですわね」
奥が騒がしくなってきた。どうやら乱闘が始まったようだ。
「暇なら酒宴の準備でもしていてくれないかな。私は軟膏や包帯を取ってこよう」
「うまくいくと思っています? かつて外の世界であった冷たい戦争……それを終わらせたのが
結局何であったか、知らない貴方ではないと思いますが」
縁側から腰を上げて、ナズーリンは青娥を見下ろした。その本性を押し隠した澄んだ瞳――
いや、もしかすると彼女は本性を隠してなどいないのかもしれない。どこまでも純粋で、
素直で悪気なく、ひたむきな仙人――目をそらすのを待っていたかのように、青娥は言う。
「まあ、今回は貴方の提案に乗っておきましょう。貴方とは、これからもいい関係を築いていきたいですからね」
「それはどうも」
嘆息して視線を戻すと、来たときと同じように、青娥は忽然と消えていた。
「聖も聖徳王も、私の考えくらいはお見通しだろう。その上で私の提案に乗ってくれたと
いうことは、和解の目はあると思っていいはずだ」
この場にいない青娥へ聞かせるように、ナズーリンは一人呟く。
「君の望む世の中は、ここでは実現させないよ。雪が融ければ、あとは春になるだけさ」
しかし、もしかすると青娥ならば、とナズーリンは思う。そう思うのはナズーリンだからこそ
かもしれない。本当に警戒すべきは個人では大した力を持っていない者である、ということを
知っているナズーリンだからこそ。
「マミゾウにでも相談しておこうか。化かし合いは得意そうだし……」
まったく嫌な役割だ、と思案をめぐらせながらナズーリンは駆け出した。
木枯らしが身を切る。しかし冬が来たならば、春もそう遠くない。
===
雪融けと聞いてまず思いついたのが東西冷戦ネタだったので……
241
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/24(木) 02:23:41 ID:IoRF1Zpw0
【団子】
「珍しいな、こんなところで」
紅魔館からの帰り、買出しに立ち寄った人里の西商店区。
立ち並ぶ店の一つ、広い道に面した甘味屋で、見慣れない女性が長いすに座っているのを見かけたのだ。
たいていの物が和様な人里で、鮮やかな赤いドレスと絹のような輝く緑髪のシルエットはかなり目立って、周囲から切り離されているように強調されて見えた。
そんな姿になんとなく興味を惹かれて、声を掛けてみたのである。
その女性――"鍵山雛"という名前だと、にとりに以前聞いた――はわたしを見上げて、口に運んでいた団子の串を皿に戻した。隣いいか、と聞くと薄く微笑んでゆるりとうなずきをくれる。箒を足元に置いて厄神を見ると、その膝には三毛猫が心地よさそうに丸まっていた。
「今日は厄が少なかったからね。たまには里でゆっくり過ごすのもいいかなって」
おひとついかが、とよもぎ団子が差し出されたので遠慮なく受け取る。霜月の空気は冷たかったが、そばに置かれた火鉢から温かさがほんのり感じられて、なるほどなかなか気分がいい。よもぎ団子をパクつくと程よい苦味が口に広がる。うん、おいしい。
「今日は、って、毎日人里まで来ているのか」
「年末はそうね。人間達が一番忙しいころだから、精神的に参っちゃう人も多いのよ」
そういう心が厄を呼び寄せちゃうの。そう言って、左手のリボンを解いて滑らかな手の平をわたしの額にかざす。わたしの目には見えなかったが、結構な量の厄が溜まっていたらしく
「貴女もそうみたいね。なにかいやなことでもあった・・・・・・」
見透かされてしまった。猫を撫でながらこちらを見る目はどこまでも優しくて、何もかもを告解したい気分になるが、こらえて、ちょっと遠まわしな質問を雛にする。
「―――雛はよもぎ団子をわたしにくれたけど、もしわたしが、実は世の食べ物でよもぎ団子が一番嫌いだって言ったら、雛はどうする・・・・・・」
「すぐに謝るわ。ごめんなさい、って。それから、こっちのみたらし団子と交換してあげる」
わたしの脈略のない例え話に、雛は逡巡することなく答える。静かに微笑を湛えたままで。
「やっぱりそうか。そうだよな。早く謝らないとダメだよなぁ」
乾いた笑いが口からでる。
すると、厄神様は手に持っていた串を口に運んでみたらし団子を頬張った。団子を口に含んだままにやりと笑う。
「ほら、もう貴女はみたらし団子を食べられないわね。おいしいお団子を完全な状態で食べたいなら、食べられちゃう前に行動しないと」
「なんだそれ」
西洋的な顔立ちから飛び出た和風な例えに、思わず笑いがこぼれて。それを見て雛も愉快そうに笑った。
「いやぁ昔もさ、母親に同じこと言われたよ。小さいころから友達とは年中喧嘩ばかりで―――」
はっとする。この光景をわたしは経験したことがある気がするのだ。遠い記憶の底から、母との記憶が突出してくるのを強く感じる。
たしかあの時も市は賑やかで、火鉢が気持ちよくって、そして母の手がよもぎ団子を―――
ため息をついて、思い出を再び底に追いやる。
今更家族のことを思い出しても仕方がない。いつの日か、何かが変わるときが来るのかも知れないが、とにかく今はあいつだ。三日前から続く彼女とのささいな喧嘩を終わらせることが、今のわたしがやるべきこと。厄神様の言う通りに。そっから先は後で考えろ。
そんなことを考えているうちに、気づけば雛はどこかへ行ってしまっていた。辺りを見回しても、帰宅を急ぐ人間の雑踏しか目に入らない。
先ほどまで彼女の膝上に乗っていた三毛猫が、呆然と立ち尽くすわたしの足に擦り寄ってきた。
波長の長い光が、秋の空をカクテルみたいに染め上げている。夕暮れの紅い空は星空に次いで飛ぶのに楽しい空だ。
あいつのことだ。月が昇りきるまでは床に就かないだろう。どうせなら、夕食の最中に突撃してやる。ああ、精々思いっきり頭を下げてやろうじゃないか。
厄をすべてそぎ落とした心身は軽く、どんな困難でも乗り越えられる気がした。
――――――――――――――――――――――――――――――
昔書いたメモがあったのを、スレに合うように圧縮。なので展開が文並
お題投下:【試験】 【お暇をいただきます】 【談話】
242
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/24(木) 19:31:56 ID:3Pt1zmagO
>>226
から、お題:靴
「お、なんか面白いことかい?」
旧都の居酒屋でちくわぶをつついていたヤマメは、後ろから声をかけられた。
「あ、勇儀姐さん」
熱いの一本ね、と言いながら勇儀は当たり前のようにヤマメの隣に座った。
「なんとも曰くありげじゃないか。そりゃ何だい?」
勇儀の言う「それ」とは、ヤマメが卓に乗せて眺めていた木箱だ。
一抱えほどの大きさがある。上蓋には仰々しく「奉」と記されていた。
「おとついになりますけども、人間の童が風穴に迷い込んでましてね」
要領を得ない話しぶりだったが勇儀は急かしたりはしなかった。お通しと熱燗が出てくる。
「縦穴に落っこちてびーびー泣いてるんですよ」
勇儀は手酌でスイスイと呑み始めた。
「あんまり五月蝿くされてもかなわんと、こう、天井に糸引っ掛けてですね」
「ははーん、するするっと抱え上げてやったわけね。お前さんの十八番だ」
「ええ、ただ向こうさんにしてみりゃ妖怪にとっ捕まってるわけで」
「そりゃ怖いわな」
「大暴れされて靴がどっかにすっ飛ばされました」
「で、裸足で外まで送ってやったと。人がいいねぇ」
「童の親御が気ぃつかったのか、次の日この箱が風穴の口に置いてあったって次第で」
「お礼の奉納って奴だねぇ。社でも建てた方がいいんじゃないかい?」
「よしてくださいよ。これ以上大袈裟に誤解されたくないんですから」
「いいと思うけどねぇ。お供え物付きの年に一回ヤマメの日」
「いえね、人間のおっかながってる時の想像力てぇか妄想力てのは凄いじゃないですか」
「おん?」
「例えば姐さんなんかは金棒担いだ大男ってことになったり」
「うん、まあそうさね」
「古明地さんちは毛むくじゃらとか」
「アレをどう見間違えたのかねぇ」
「でまあ私はやっぱり大蜘蛛に見えたらしいんで」
そう言うとヤマメは木箱の蓋を外してみせた。中には真新しい革靴が四足、きれいに収められていた。
243
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/25(金) 00:42:52 ID:arq5Fo7o0
>>239-240
賢将対策士と言ったところでしょうか。
このままスレで流れてしまうのが惜しいと思いました。
公式の続きみたいな感じで非常に良かったです。争いの後に宴会っていうのも幻想郷っぽくてグー
>>242
この短さでオチがちゃんと付いているのがすごいと思いました。
起承転結がしっかりしているし、結の部分での逆転の発想もうまいと思いますw
ショートショートの片鱗のようなものを感じました。
と、稚拙ながら感想を書かせていただきました。
文を書けばやはり感想が欲しくなるもの。
せっかく読ませていただいたのに感想を残さないのは勿体ない。
ということで、つらつらと思ったことをそのまま。
244
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/25(金) 02:00:11 ID:Zc3/iDtg0
>>242
オチがうまい!
245
:
1/2
:2011/11/25(金) 23:13:38 ID:zS91v5bQ0
>>241
「試験」
霜月も半ば、迷いの竹林にも肌寒い風が吹いている。
そんな日の午前十時五分前。永遠亭の一室では緊張した雰囲気が漂っていた。
ホワイトボードを背に、厳めしい表情で教壇に立つ八意永琳。手にはストップウォッチを握っている。
その傍らには蓬莱山輝夜が椅子に座って火鉢に手を翳しながらにこにこと不敵な笑みを浮かべている。
そして、永琳と対峙するかのようにフローリングの床に机が三つ、縦に並べられている。
手前から鈴仙・優曇華院・イナバ、因幡てゐ、メディスン・メランコリーの三名が静かに座して待機していた。
「……はい、時間よ。これから問題用紙と答案用紙を配布するわ」
午前十時二分前。永琳の凛然とした指示に従い、三人はそそくさと配布された問題用紙と答案用紙を机の上に伏せる。
各々、違った表情を浮かべながら眼前の真っ白な問題用紙の裏面をじっと見据えている。
「では、これから期末試験を始めます。三人とも、私の弟子として恥じない点数を期待しているわ」
「トップの子には素敵なご褒美が待ってるわ。逆に最下位にはお仕置きが待ってるからがんばってねぇ〜」
真面目な表情で激励する永琳と、他人事のように笑って手を振る輝夜。
(はぁ〜、どうしよう全然勉強してないよ……何とかヤマが当たればいいけど……)
不安げな表情でテキストの内容を思い出そうとしているのは、鈴仙・優曇華院・イナバ。勤勉だが試験の雰囲気に吞まれるタイプである。
(ふぁあ〜、眠い。師匠の思いつきだが姫様の暇潰しだかしらないけど、まぁ適当にやれば良いでしょ)
欠伸を噛み殺しながら辟易とした表情を浮かべるのは、因幡てゐ。楽観視して一夜漬けでテストに臨んで自滅するタイプである。
(わぁ、テストって初めてだから緊張するなぁ。ちゃんと名前書かないとダメなんだっけ……)
無邪気にワクワクとした表情で消しゴムを転がしているのは、メディスン・メランコリー。不思議ちゃんで未知数なタイプである。
「制限時間は六十分よ。では、始めっ!」
カランカランカラン――
輝夜が手に持っていた鐘をチャイムにして、永遠亭期末試験は幕を開けた。
一斉に問題用紙を捲る三人。抱き合わせて配布された答案用紙に名前を記し、問題用紙に目を移したのだが…
246
:
2/2
:2011/11/25(金) 23:15:47 ID:zS91v5bQ0
『問.ウイルスに関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ウイルスは、細菌に感染しない。
b RNAウイルスが有するマイナス鎖RNAは、直接mRNAとして使われるRNAである。
c レトロウイルスは、逆転写酵素をウイルス粒子内に保持する。
d 重症急性呼吸器症候群 (SARS) ウイルスは、コロナウイルス科に属する。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(b、d) 6(c、d)』
『問.細菌の毒素に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 内毒素は、グラム陽性菌外膜に存在するリポ多糖である。
b ウェルシュ菌のα毒素は、ガス壊疽を引き起こす。
c ボツリヌス毒素は、内毒素に分類される。
d ジフテリア毒素のAフラグメントは、ADPリボシル化活性を有する。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(b、d) 6(c、d)』
※この問題は第九十六回薬剤師国家試験問題から引用
(うわぁ……ガチで分からん! 一体どうしたら……はっ?!)
ヤマ勘が完全に外れて困惑する鈴仙の作りものっぽい耳に、背後から鉛筆の走る音が飛び込んできた。
カッカカカッカッカカカッカッカカッカ―――
淀みなく流れる鉛筆の音は、ライバルが順調に解答している証左である。
瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。振り向く事など出来ないが、鈴仙は自分が出遅れた事に焦っていた。
(うわぁマズイ、このままでは確実にビリだ。どうしよう、どうしよう……)
不安と緊張に押し潰され、鈴仙の脳内は真っ白になっていた。
(ふふっ、鈴仙ったら思惑通り罠に引っ掛かってくれたわね……)
動揺する鈴仙の背中を垣間見ながら、てゐはニヤリと腹黒い野心家のような笑みを湛えた。
実は、てゐも問題はほとんど分からなかったのだ。しかし、そこで動転しないのがてゐの底力。
「点数を稼ぐ」から「ライバルを蹴落とす」と瞬時に思考を切り替え、気弱な鈴仙に陽動作戦を仕掛けたのだ。
試験開始直後、てゐは机に向かって鉛筆を連打した。リズムを変え、まるでスラスラと答案用紙に解答を記入しているように。
果たして、作戦は功を奏した。鈴仙は焦燥し、早々に戦線から離脱していった。
しかし、そんな策士なてゐにも一つ誤算があった。それは……
(ドクウツギの主な毒成分はコリアミルチン、ドクゼリはシクトキシン……なんだ、簡単じゃない!)
毒薬に関する知識がメディスンに備わっていた事であった。
結局、メディスンが満点でぶっちぎりトップ。鈴仙とてゐは同率ブービーで仲良くお仕置きされたそうな。【完】
鉛筆連打の兵法は高校時代に社会科の先生から教わったものです。
でも、実際の大学受験ではマークシートだったので無意味でした(笑)。
247
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/27(日) 12:10:06 ID:yZIB2EdU0
>>236
より、お題「時計」
丁度、太陽が沈もうとしていた時だった。
西日を受け、普段よりもさらに紅い姿を晒す紅魔館。
――ねえ、咲夜
――はい、なんでしょう?
その主、レミリア・スカーレットは戯れに問う。
――貴女は何故、この私に仕えているの?
その問いが向けられたのは、この館で唯一の人間のメイド、十六夜咲夜。
――.一時の、気の迷いですわ
紅茶を出し、用済みになった盆を小脇に抱える。
服のポケットから僅かに覗いた、懐中時計が一瞬の煌きを見せる
――フフ、そう――
その言葉は、主の微笑を引き出すには充分だった。
幻想郷に来る前から、彼女の時計は止まっている。そんなことは分かりきっていた。
時計塔の鐘が鳴り響く。夜の始まりを告げる音。
――では、お夕飯の支度があるので
――楽しみにしているわ
248
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/04(日) 06:34:30 ID:lyCbitqU0
>>226
>>234
萃×マミ『種』『イワナ』『餅』
神霊の騒ぎが収まり、春の陽気に桜が舞う曇天の午後。
幻想郷の東端に位置する博麗神社の境内で、鬼と狸が酒を酌み交わしていた。
鬼の名前は伊吹萃香。かつて酒吞童子として京の都を牛耳った大鬼である。
狸の名前は二つ岩マミゾウ。佐渡島からやってきた辣腕の化け狸である。
鬼の生まれは燕市にある国上寺、狸の根城は佐渡市。どちらも越後の出身だ。
同郷の者同士、ウマが合わない訳がない。マミゾウの手土産の『柿の種』を肴に、小さな酒宴が催された。
『柿の種』のカリッとした歯ごたえと米菓特有の香ばしさ、そして醤油の風味が酒を進ませる。
ピーナッツなど無粋なものは入っておらず、あくまで『柿の種』一本で勝負する潔さが心憎い。
すっかり意気投合した2人は故郷の銘酒『長者盛』を熱燗で吞み交わしている。
七輪で火を熾し、湯を沸かした鍋に銚子を投入する古風な熱燗からは、酒精の馥郁な香りが立ち昇る。
「おおっ、そうじゃ。今日は萃香殿にとっておきの酒を馳走しようぞ」
「ほぅ、そりゃ楽しみだね。一体どんな酒だい?」
思い出したように傍らの籠を漁るマミゾウに、萃香は身を乗り出して籠の中身を覗き込む。
「ほれ、これじゃよ」
そう言って自慢げにマミゾウが取りだしたのは、旬には聊か早いが身の引き締まったイワナだった。
命蓮寺の台所で捌いてきたのだろう、新鮮なイワナは既に内臓を取り除かれ串刺しにされている。
「おぉ! と言う事はマミゾウ、もしかして……」
じゅるりと垂涎の表情を浮かべ、円らな瞳をキラキラ輝かせている。
その萃香の表情に満足そうな笑顔で頷きながら、マミゾウはイワナを七輪の網に乗せた。
「左様、イワナの骨酒じゃよ。さて、魚が焼ける間に餅でも焼こうかのう……」
2人の周りには、七輪が3台も動員されている。どれも熱燗をつくる鍋が乗せられていた。
マミゾウは鍋を下ろし、代わりに網を乗せて餅を焼き始めた。
もち米でも最高級の『こがねもち米』をした新潟自慢の杵搗きの切り餅だ。
それが七輪で熱せられた炭火で、こんがりと黄金色に焦げ目が付きふっくら膨らんでいく。
数分後、香ばしく焼き上がった餅をマミゾウは素手で掴んで皿に移した。
手早く餅に醤油を浴びせ、予め七輪で炙って短冊状に裂いておいた佐渡産の海苔を巻きつける。
「ほれ、磯部巻の出来上がりじゃ。故郷の懐かしさを存分に味わうのじゃぞ」
もち米の香ばしさと海苔の風味、そして程よい塩梅の醤油が一体となって萃香の口全体に広がる。
「うひゃあぁ、こりゃ美味い! 霊夢もこの餅で年を越せるんだったら幸せ者だよ」
はふはふと熱い餅を口の中で転がしながら、萃香は感嘆の声を上げた。
そんな萃香の横顔を見ながら、優しい笑みでマミゾウは餅にきな粉を塗して食している。
「ふむっ、そろそろイワナも焼けた頃かのう」
チラッと目配せをしたマミゾウは、串に刺さったイワナを七輪から降ろした。
やや焦げ目のついたイワナを、用意していた湯呑に投入し、どぼどぼと銚子から熱燗を注ぐ。
すると、焼けたイワナの身から旨味エキスが浸み出し、酒はじわじわと黄金色に変わっていった。
「さぁ、仕切り直しの乾杯といこうではないか萃香殿」
「あぁ、同郷の妖怪に出逢えたんだ。懐かしい味を思い出させてくれたマミゾウには感謝が尽きないよ」
焼いたイワナが丸々一匹入ったダイナミック骨酒。その湯呑を軽くかち合わせ、2人は豪快に骨酒を呷った。
日本酒の甘味とイワナの旨味、それを引き立てる脇役はイワナに振った岩塩だ。
それらが丁度良い具合に融和して、舌から迸る味覚や鼻腔を突き抜ける薫りが旬な酒の愉しみ方を教えてくれる。
「ぷはぁー、美味い! そして懐かしい!!」
目尻に一粒の涙を滲ませ、萃香は餅と柿の種を肴に骨酒を存分に味わった。
湯呑から取り出したイワナに齧り付けば、出涸らしとは思えない魚肉の濃厚な旨味が弾ける。
桜が舞い散る。新潟ではまだ残雪のある景色を思い起こしながら、マミゾウはそっと湯呑を口に運んだ。
249
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/06(火) 21:39:46 ID:aZTFKISkO
>>241
『お暇をいただきます』
「−ということは、私めはもう必要でないと」
主人の座の前に立ち、唇を噛み締めながら十六夜咲夜は、そのかすれかけた声で口にした。
「いや、そういうわけではないのよ」
領主は苦笑いしながら応えるものの、潤んだ瞳の主にはほとんど耳には入っていなかった。
「私が人々の間でどういう立ち位置であるか、お嬢様には分からないわけではないはずです」
咲夜はあたかも歯ですり潰したような言葉を領主にかける。
「いや、だからそんなに堅苦しく考えなくていいのよ」
領主は苦笑いをしつつ、彼女をなだめようとした。しかし、あくまで領主がなだめているつもりなだけであって、彼女には懐柔の言葉にしかならなかった
「いえ。分かっております。所詮私は蝙蝠。人にも妖にもなれぬ身分。蝙蝠は両者からはじかれ惨めな死を選ばざるを得ぬことくらい、存じております。
たまたま、それが今日訪れただけであって、私はまた、蝙蝠として闇の中で、目を閉じ、自分の都合のいい音のみを聞き分け、
そしてどちらからも疎まれながらその生涯を終える日々に戻るだけのこと。むしろ、それが私の正しい姿なのです。
そのような蝙蝠に、一滴の血と暖を分け与えていただいたこと、感謝こそすれど、一瞬でも怒りを覚えたことに恥を覚えなければなりません。
『お暇をいただきます。』とは言いません。むしろ、ここまで愛おしんでいただき、ありがとうございました。」
一通り喋り終えると、スカートの端をつかみながらゆっくりと会釈すると、何食わぬ顔のまま、部屋へと出て行った。
領主は手に顎を乗せ、苦笑いをしながら溜め息をつくと、誰おらぬ広場に向かい、ゆっくりと口を開いた。
「−有給取って数日間遊んできたら、って言っただけなのにねぇ」
<了>
久々に書いたらうーんこの内容
お題:【賃金】【妖怪の山】【遅咲きの花】
250
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/08(木) 00:52:57 ID:46BM6U0.0
お題【賃金】
「そう言えば美鈴。貴女今まで門番として働いた分の賃金貰った事あるの?」
ある日の夕食後、唐突に思い出した様に十六夜咲夜はそんな疑問を口にした。
屋敷内の妖精メイド達への給与の管理は当然のことながらメイド長たる彼女の役目なのだが、それでは同様に屋敷の門の番や庭の手入れを担当している紅美鈴には一体誰が賃金を支払っているのだろうか、と。
問いを向けられた当の本人はえ、と一瞬だけ硬直し、それから少しだけ困った様な表情を浮かべる。
「いやあ、それが賃金を貰っても今一つ使い途が思いつかなくて……」
「もしかして、貰った事無いの?」
「はい」
あまりにもあっけらかんとした門番妖怪の返答に、咲夜は唖然とした。
確かに普段から眠りこけている彼女は職務怠慢として減給をされても不思議ではないかもしれないが、しかし一切賃金を支払われないというのは幾らなんでもおかしい。
ちなみに何時から貰っていないのかと尋ねると、自分がこの屋敷に世話になるようになってからずっと、という返答が返って来た。彼女がこの屋敷で三番目か四番目に古株である事を知っている咲夜は、妖精メイドに支払っている賃金基準でそれが一体どれ程の額になるのかを計算してみて軽く頭痛を覚えた。
「貴女、それはおかしいわよ。どうして賃金を受け取らないの?」
「あー、お嬢様にも昔同じ様な事を聞かれましたねぇ……」
昨夜の問いにしみじみと呟く美鈴。どうやら彼女達の主であるところの吸血鬼からも同じ事を問われたことがあるらしい。
「ほら、あれです。幾ら貰っても正直私欲しい物とかやりたい事とかなーんにもありませんから」
「それでも、賃金を受け取らない理由にはならない筈よ?」
「そうですかねぇ…」
うーん、と美鈴はひとしきり悩んだ後、
「でもほら、この屋敷の皆さんが毎日を平和に、笑顔で過ごしてくれているという結果が私の仕事の報酬みたいなもんですから」
などと言う事をあっけらかんと言い放った。
唖然とする咲夜を尻目に、じゃあ私門番に戻りますねー、と言い残して立ち去っていく美鈴。
その後ろ姿を見送りながら、彼女は溜息を吐いた。
「分かっていた事だけど、随分お人好しな妖怪ですわ…」
今度彼女の好物でも作って労ってやろう、とメイド長は一人決心するのだった。
初めて書いてみた。
お題:【雪】【聖夜】【散歩】
251
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/11(日) 09:38:58 ID:yy3FGHag0
>>236
>>241
「夜」「雪」
※既に消化済みだけど「雪融け」の要素も含んでます
肌寒い冬の夜。私は妹と二人で銀色の雪原を歩いていた。
空には赤銅色に染まった満月。遠くでは百鬼夜行の騒擾する気配を感じる。
凍みた雪は世界を覆い、遥か遠くの地平線まで白く塗り潰している。
私たち姉妹はその果てしない銀世界を、ただ黙って歩いていた。
それは、私なりの贖罪でもあった。妹と向き合ってこなかった私の背負った罪。
いつ赦されるか分からない。それでもこの子といつか分かり合えるなら。
隣を歩く妹の息遣い。誘った時に浮かんだ驚きと、微かな喜悦の表情。
横目で垣間見ながら、私はただひたすらに歩き続けた。
「……ねぇ、お姉様」
ふと、妹が私に声を掛けてきた。半歩先に歩いた私は、そっと後ろを振り返る。
随分と遠くまで来たようで、紅魔館の明かりは星屑の燐火のように瞬いていた。
妹は首に巻いたマフラーで口元が隠れている。門番の美鈴が見送る時に巻いてくれた臙脂色のマフラーだ。
「なに、フラン……」
私の言葉は、唐突に手を握られた事で遮られた。華奢な妹の手は、指先が微かに冷たい。
ハッとして私は眼前の妹を見据えた。絹のような金色の髪がしなやかに揺れ、緋色の瞳が物悲しげに潤んでいる。
「手……つないでも、いい?」
しなだれかかる妹の重さを腕に感じる。その重さは、私がずっと拒んできた妹の存在そのものだった。
歪なガラス細工のような翼が、星影に煌めく。私はそっと妹の手を握り返し、静かに妹の身体を引き寄せた。
「えぇ、いいわよ……」
他にもっと言いたい事があったが、私はそれだけしか言えなかった。
その言葉で十分だったのか、妹は静謐に微笑むと私の手をしっかりと握ってきた。
「ありがと。お姉様、だいすき……」
「…………そう」
“私も大好きよ”という言葉が熱く感じられて、喉から出てこなかった。
その代わりに流れた涙は温かく頬を伝う。滲む視界に赤い月が笑っているように見えた。
あぁ、もしこれが狂った月蝕のもたらした偽りの運命だとしても。
私はこの一瞬を愛しく思うのだ。いつか、この子と笑い合える事を夢見て。【完】
252
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/11(日) 17:33:03 ID:yy3FGHag0
>>236
>>249
「散歩」 「妖怪の山」 秋姉妹
「ねぇ、散歩に出掛けない?」
姉に誘われたのは、師走の気だるい午後の事だった。
炬燵に入り、今まさに剥いたばかりのみかんを口に運ぼうとしていた私は、ぽかんとした表情で姉の方を向いた。
姉はいつもの赤いワンピースの上にクリーム色のダッフルコートを着込み、浅黄色のマフラーと手袋を装備している。
「散歩って……こんな寒い日に?」
「寒い日だからこそよ」
そう言ってニッコリ微笑んだ姉の腕には、私のコートとマフラーが抱かれている。
姉は周囲のイメージとは裏腹に、頑固者で融通が効かない。私が嫌だと言っても聞く耳など持たないだろう。
これから豆炭炬燵で足元を温めつつ、箱根駅伝のガイドブックでも読もうと思った私の午後は水泡に帰した。
「はぁ……しょうがない、付き合ってあげるわよ」
「ふふっ、それでこそ私の妹神よ」
重い腰を上げ、私は姉から差し出されたコートを羽織って支度した。マフラーと手袋は姉が編んだ手製の品だ。
姉に促されるようにして私は外に出た。ガラガラと古めかしい玄関の引き戸を開けると、重苦しい曇天が広がっている。
「うぅ〜、寒い!」
秋の涼しさはとうに過ぎ去り、凍てつく冬の寒さが北風に乗って吹き荒れる。
姉が手入れしている自慢の日本庭園も、紅葉が散って寂寥とした印象を受けた。
池で泳ぐ錦鯉の緋色や金色だけが、今の庭に彩りを与えている。
「それで、お姉ちゃんは何処に行きたいの?」
「うぅ〜ん、別に行先は決めてないんだけど……まぁ、取り敢えず南へ」
「……アバウトだなぁ」
行先も決めずに散歩へ行こうと言いだしたのかと私は辟易したが、それも姉に手を掴まれて霧消した。
姉と手をつなぐのは何となく照れ臭かった。だけど、久しぶりに姉の手の温もりを感じる事が出来たのは嬉しい。
私たちはそれから、家でも出来るような雑談を時折交わしながら山道を歩いた。
山はすっかり冬景色に移ろい、単調な色彩に変わっていた。
里に続く道の両端に広がる田園は、刈り終わった稲の株がひっそりと春を待つ。
風が強い。遠く山の稜線から雲が私たちの頭上を追い越し、また遠くの世界へ流れていく。
冬の曇天は、夏の夕立のような急かされる勢いはない。ただ生命の終わりを象徴する鉛の蓋ような重苦しさがある。
夏が苛烈であるならば、冬は冷酷だ。
未熟な青い春は夏の熱病で熟れ、老いた白い秋は冬の寒波で枯れる。そうして四季は廻る。
「……あっ」
「えっ?」
突然に姉が立ち止り、私は蹈鞴を踏んだ。危うく姉の華奢な背中に追突するところだった。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「……見て、穣子」
そう言って姉は天に手を翳した。それに倣って私も鉛色の空に視線を移す。
ゆっくりと、綿のような雪が舞い落ちる。それは幻想郷に訪れた初雪だった。
吸い込まれそうなほど低い空から降る雪が、私の頬を冷たく濡らした。
―――もう秋も終わりだね
そう思った瞬間、私は姉の手が微かに震えている事に気付いた。
ハッとして姉の横顔を見る。姉は天を仰ぎながら、切実な表情で泣いていた。
声を殺し、唇を噛んで、ただぽろぽろと大粒の涙が色白な姉の頬を伝う。
「………お姉ちゃん」
「……ごめん、穣子」
私に声を掛けられて、姉はコートの袖でやや乱暴に涙を拭った。気丈に振る舞う姉の、泣き腫らした容貌が切なかった。
―――秋の心と書いて『愁い』と読むの
かつてそう教えてくれた姉の言葉が思い出される。
ならば、私もまた愁いているのは姉と同じ事だ。私たちは暫く肩を並べ、じっと空を見つめていた。
「……私たち、あとどれ位の秋を過ごす事が出来るんだろうね」
私は姉のか細い手を握り返して、静かに問いかける。その問いに、姉が応える事はなかったけど。
「……冷えて来たわね。人間の里で甘酒でも買って帰りましょう」
「お姉ちゃん、最初からそれが目的だったでしょう?」
「てへっ、バレたか」
苦笑いする姉に脱力しながら、私は静かに歩き始めた。私たちの足跡が、真新しい雪の上に残っている。
厄災の相次いだ今年も半月で終わる。時の流れは残酷に平等に、人々を癒す。
その過程で故郷や信仰が失われても、きっと失われない誇りがあると信じながら、私たちはこれからも人間に祀られていく。
253
:
名前が無い程度の能力
:2012/01/03(火) 20:54:10 ID:rXgjSejI0
お題まとめ
香水・ぬこ・眼鏡+しみじみ・無礼講・中二病・米粉・そば・ラーメン
朝露・衣替え・暖の取り方・談話・遅咲きの花・聖夜
254
:
名前が無い程度の能力
:2012/02/08(水) 19:23:18 ID:ODJkUShI0
過疎るからな。お題は前の投稿者が出すようにするといい。
255
:
名前が無い程度の能力
:2012/02/11(土) 22:26:11 ID:YnQuYmIY0
>>253
お題『ぬこ』
ぬえちゃんが仔猫を拾ってきました。
ある小春日和の午後の事です。
わたくし、幽谷響子は命蓮寺の門前を雪かきしていました。
「ねぇ、響子。ちょっと来て…」
スノーダンプで雪の塊と奮闘していると、ぬえちゃんが私を呼んで手招きしています。
「? どうしたんですか?」
私は除雪の手を休めて、ぬえちゃんの方へ歩いて行きました。
ぬえちゃんは後ろ手に何かを隠していて、にやにやと不敵な笑みを浮かべています。
「ほら、ぬこ拾った!」
そう言ってぬえちゃんは後ろ手に隠していたモノを私に見せつけました。
私の目の前に、小さな仔猫が姿を現しました。それはそれは毛並みの良い三毛猫でした。
「わぁ! かわい…もがぁ!?」
私が感嘆の声をあげようとした瞬間、ぬえちゃんは慌てて私の口を手で塞いでしまいました。
「しぃー! 響子ったら、大きな声で叫んだらみんなにバレちゃうじゃん!」
ぬえちゃんは腕に仔猫を抱えたまま、そう言って不機嫌そうに苦言を呈します。
「もがぁ、ほがぁ……ぷはぁ、ごめんなさい」
ちょっと鼻詰まり気味だった私は呼吸が苦しくなり、ぬえちゃんの手首を掴んで引き剥がしました。
だけど、さっきのぬえちゃんの声の方がよっぽど大きかったと思うのですが…
「ところで、その子は何処で見つけたんですか?」
私が改めて質問すると、ぬえちゃんはパッと表情を明るくして仔猫に頬擦りしながら答えました。
「へへっ、お寺の縁の下に居る所を見つけたの。きっと母猫が産み捨てたんだわ」
お寺の境内は先週みんなで雪かきしたので、恐らくその後に雪を避けて母猫が潜り込んだのでしょう。
仔猫は円らな瞳でじっと私やぬえちゃんを見つめています。時折、眠たげに欠伸をする仕種はとても愛らしいです。
ぬえちゃんはすっかり魅了されたらしく、顔がデレデレと緩んでいます。それを見て私も和やかな気持ちになりました。
「ねぇ、お寺でこの子飼おう! みんなもきっとOKしてくれるよね!?」
「ええっ、そうですね……あっ」
命蓮寺の仲間になって日の浅い私でも、白蓮様を筆頭に皆さんが優しい方々なのは承知していました。
なので快くこの子を迎え入れると思ったのですが、ひとりだけ反対しそうな人物を思い起こしたのです。
「……ナズーリンさんは鼠なので猫は苦手なんじゃないですか?」
「えっ? 大丈夫だよ、既に虎が居るじゃん。響子だって犬っぽいし、今さら猫が増えても気にしないって」
そうこう言っていると、噂の本人がこちらにやって来ました。隣には茄子紺の唐傘を携えた小傘ちゃんも居ます。
「おぉーい、聖がお茶を淹れたから休憩にしよう……って、何をしてるんだい?」
ナズーリンさんは怪訝な表情を浮かべて私たちを見つめています。小傘ちゃんは何故か嬉々とした表情ですが。
「あっ、丁度良かったナズ。ほら、可愛い仔猫!」
「ぎゃあああぁぁぁ!!?」
その時のナズーリンさんの絶叫は、山彦である私の声量を遙かに凌駕していました。
目を見開き、顔を蒼白にして飛び上がったナズーリンさんは一目散に逃げ出してしまいました。
「やったぁー! なずりんがあんなに驚いてくれてお腹いっぱい! じゃあ、私帰るね!」
隣に居た小傘ちゃんはこうなると予想していたのか、満足げな笑みを湛えて山の方へ飛んで行ってしまいました。
「……ナズーリンさん、戻ってくるといいですね」
「……うん」
どうやら仔猫が受け入れられるにはもうしばらく時間が掛かるようです。
私とぬえちゃんは互いに顔を見合わせ、少し苦笑してからお寺の中に入りました。【終わり】
お題:明晰夢
256
:
名前が無い程度の能力
:2012/02/14(火) 21:38:00 ID:NLU6nj3Q0
別人ですがちょっと付け足します。
白蓮「寅と猫とは動物形態学上、似てるというだけで遺伝学的
には全く別の種ですからね。それに嫌いな動物を急に出されたら
誰だって吃驚しますよ」
白蓮「そもそも幻想郷の猫はお燐や橙たちの情報を元に
データベース化されていて、野良猫など居るはずがありません」
白蓮「話を聞くと小傘が事情を知ってたみたいですが、
今度確認してみねばなりませんね」
お題:明晰夢
257
:
名前が無い程度の能力
:2012/02/16(木) 01:03:32 ID:EMd8e7p60
お題『明晰夢』
霊夢は人間の里でばったり阿求と会った。
お呼ばれして夕飯をご馳走になる事に。
阿求「これから作りますのでしばらく休んでいてください」
霊夢「手伝おうか?」
阿求「いいえ、あまり手のかかるものではないので30分もあれば
できますから」
今日も結構歩いたせいか、けっこう疲れた。
ちょっと横になろう・・・・・・・・・
魔理沙「おい霊夢、キノコがこんなに採れたぞ。
一緒に食わないか?」
霊夢(あれ?阿求の家では?・・・ははあ、これが明晰夢ね)
魔理沙「ほらほらどんどん食べてくれ、マッシュルームエスカルゴ
クリームソースだ」
魔理沙「舞茸とあさりのケチャップ煮だ」
魔理沙「どんことどんこの味噌仕立てだ」
霊夢(変なメニューばかりね。いいわ、どうせ夢だからどんどん
食べちゃいましょう)
霊夢と魔理沙は腹一杯きのこ料理を食べた。
霊夢「もうお腹一杯よ。これ以上食べられないわ、うふふふふ」
霊夢(あれ?何か可笑しい)
魔理沙「ありゃ?悪い悪い笑い茸が入ってたようだぜ」
霊夢(冗談じゃないわよ。変な夢ね)「うふふふふふふー」
「・・・むさん」
阿求「霊夢さん、ご飯が出来ましたよ。楽しい夢でも見てたんですか?」
霊夢「あっごめんなさい、ついうとうとと・・・お夕飯はきのこじゃ
ないわよね?」
阿求「いいえ、蟹と玉子の雑炊ですよ」
二人は楽しく夕飯を食べた。
霊夢は帰宅した。
それから数十年・・・霊夢は平凡ながらも充実した人生を
送ってきた。佳い男性とめぐり合って結婚もし、子も孫もできた。
そしていよいよ臨終の床・・・
「霊夢、霊夢〜およよよよ」
(紫ね、色々お世話になったわ)
「私より先に行くなんて悲しいぜ」
(魔理沙ね、もうあの頃の人間で生きてるのはあなただけに
なってしまったわね)
「おばあちゃん、おばあちゃん・・・」
(孫たちの声がする、心残りだけど仕方ないわね・・・
意識が薄らいでいく、思い返せばいい人生だったわ・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「・・・むさん」
阿求「霊夢さん、ご飯が出来ましたよ。悲しい夢でも見てたんですか?」
258
:
名前が無い程度の能力
:2012/02/26(日) 10:27:34 ID:KuKqcfwc0
>>253
『眼鏡+しみじみ』
如月。立春が過ぎて暦の上では春だが、幻想郷はいまだ雪深い。
それでも、久方ぶりの晴れ間は清々しく、澄んだ青空が広がる。
暖かな日差しによって、木々に被さる雪がどさっと崩れ落ちた。
その音を耳にしながら、森の古道具屋の店主は朝から雪掻きに勤しんでいた。
「ふぅ、今年も豪雪だったな……」
首に巻いた手拭いで汗を拭いながら、店主はスコップにもたれて一息ついた。
店主の名前は森近霖之助。銀髪に痩身、半妖半人の青年である。
彼は今、店舗の横にある倉庫の脇に積もった雪山を切り崩しにかかっていた。
すでに屋根の雪は片付けているので倒壊の恐れはない。しかし、巨大な雪山は皐月になっても残りそうな量だった。
「取り敢えず、倉庫の出入口だけでも確保しないと困る……」
霖之助はそう独り言を呟いて深呼吸すると、アイドリングしていたエンジンを再稼働させた。
雪に突き刺したスコップから、鋼鉄製のスノーダンプに武器を持ち替え雪山に挑む。
引き締まったザラメ雪にスノーダンプを喰い込ませ、ブロック状に切り分けて運び出す。
ぎゅっぎゅと力強く雪を踏み締め、密度の高い雪の塊を身体全体で外に押し出す。
30分くらい作業を続けた霖之助は、ふと雪山にぽっかりと洞穴のような空間が出来た事に気付いた。
雪山全体を切り崩すのではなく、倉庫の出入口に向かって一点集中して雪を搬出していたからだ。
それで遊び心を刺激されたのか、霖之助はいつしか雪掻きよりもカマクラづくりに熱中し始めていた。
ゴォーン、ゴォーン、ゴォーン―――
里の外れにある命蓮寺の鐘の音が聞こえてくる。12回打ち鳴らされた鐘の音は、時刻が正午であると告げた。
カマクラは約3畳ほどの広さに拡張され、高さも九尺(約90㎝)と大人でも十分入れる。
「うむっ、もうお昼か……さて飯はどうするか」
「おぉーい、香霖!」
霖之助が空腹感を覚えながら昼食のメニューを思案していると、森の小道から少女の声が聞こえてきた。
自分を屋号で呼ぶ少女は幻想郷でひとりしかいない。霖之助は小道を振りかえる事無く声の主を判別できた。
「やぁ、いらっしゃい魔理沙。こんなお昼時にどうしたんだい?」
そう言いながら霖之助はゆっくりと振り返る。そこには案の定、白黒の衣服を着た顔馴染みの少女の姿があった。
少女の名前は霧雨魔理沙。豪奢な金髪に小柄な身体つきの普通な魔法使いである。
「この前ウチの雪掻き手伝ってもらったお礼を持って来てやったぜ」
ニカッと爽やかな笑みを零しながら、魔理沙は手にしていた風呂敷を誇らしげに差し出した。
「ほう、珍しい事もあるもんだね。道理で今日は二月に似つかわしくない暖かい日だと思ったよ」
「へへっ、日頃の善行のおかげだぜ。中味はにとりからもらった猪肉や川魚だ」
にとりとは、魔理沙と交友のある山の河童である。機械いじりが趣味で、香霖堂にもしばしば訪れている。
霖之助はその中味を知って、ふとあるアイディアが思い浮かんだ。
「……そうだ、どうせならこの即席のカマクラで食べないかい?」
「おぉ、それは風流だな! 私も遠慮なくご相伴に与からせてもらうぜ」
「じゃあ、台所から七輪と豆炭、それとマッチを持って来てくれるかい? 僕は煙突と茣蓙を用意しよう」
「承知だぜ!」
そう言って魔理沙は元気よく店の中に駆け込んでいった。その後ろ姿を眺めながら、霖之助も店の中に入った。
1時間もしないうちに霖之助と魔理沙はカマクラで肉や魚を炙りながら焼きおにぎりを頬張っていた。
香ばしい肉や醤油の香りと、パチパチと豆炭の焼ける匂いが立ち込め、煙突から外へ流れ去っていく。
カマクラの天井を見上げると、雪の白にぽっかりと空の青が覗いている。白雲がゆったり流れる、穏やかな蒼穹だ。
「なんだか……のんびりしていて心地良いよな」
パリッと焼けた醤油味の焼きおにぎりを頬張りながら、魔理沙が満面の笑みで言った。
「あぁ……きっと、こういう時間が一番楽しい時間なんだろうね」
脂の滴る猪肉を肴に、霖之助はクイッと酒を呷る。辛口の酒が肉の旨味と融け合い、馥郁な酒精の香りが鼻腔を吹き抜けた。
凪いだ日常。異変も冒険も無関係な青年の、静かな一日が今日も半分終わった。そうして世界は廻っていくのだ。
傍らには、自分を慕ってくれる少女が食後の番茶を啜っている。いつか、自分を追い越して先立って行く儚い人間。
霖之助は今の何でもない日常を謳歌できる幸せをしみじみと噛みしめながら、切ない思いを酒と一緒に腹の底へ沈ませた。
冬が終わって春が来る。半妖半人の平坦な人生が、また巡ってくる。どこかで山鳩の暢気な鳴き声が聞こえていた。【完】
259
:
258
:2012/02/26(日) 10:31:21 ID:KuKqcfwc0
よくよく考えれば「眼鏡=香霖」って安直だったかしら…?
マミゾウさんと絡ませればよかったかな?
お題:風船
260
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/07(水) 05:40:23 ID:yK/wuR7M0
お題:風船
少し前、幻想郷で宝船が出るという異変が起こった。
今ではその騒動も収まり宝船は妖怪の寺となっている。
これもまた...ある「船」のお話。
長い白銀の冬が終わり幻想郷に春風が吹き始めた。
まだ、肌寒く感じるがすっきりとしていて気持ちのいい朝だ。
そんな事を思いつつ、布団から這い出して着替えを済ませた。
「殆ど雪もなくなったし久しぶりに無縁塚にでも行こうかな」
そう言い、古道具屋「香霖堂」の店主は無縁塚へと足を運んだ。
真っ赤に染まった彼岸花の毒が、彼の行く手を阻んだ。
血で染まった様に紅い彼岸花に守られたこの場所は、この世の物とは思えない
不思議な場所だ。
ここは冥界との壁が薄いせいか、外の世界とも近い場所である。なので、ここ
には見た事のない物が多く落ちている。
「ふむ、あまりめぼしい物は落ちてないな....ん?」
もう、帰ろうかと思っていた彼の目に奇妙な物が入った。
それは青く、ツヤツヤとしていて、穴が空いており、手触りは前に見たゴムと
似ていた。
「名前は風船....空気を入れて飛ばす船か、とても僕の知っている船と同じ物に
は見えないが...」
勿論、彼はそれを見た事も聞いた事もないが、彼は見た物の名前と用途が分か
る能力を持っている。その能力故に珍品を扱う店「香霖堂」を作ったのだが、
肝心な使い方がわからず、売れ行きは好調とは言えない。
他に気になる物もないので彼は風船を持っている帰路についた。
「あら、お帰りなさい」
家に着くと中で紅白の少女がお茶をすすっていた。
「ああ、ただいま...って、勝手に家に入るなって言ってるだろ」
「また何か拾って来たの?」
これだ...この少女は人の話を聞かない。
「これは風船、空気を入れて飛ばす船らしい」
「・・・船には見えないわね」
確かにどこからどう見てもとても船には見えない。
「そういえば、船に関係してる妖怪なら見たことあるわ」
「(海のない幻想郷で船に関係する妖怪なんて珍しいな)」
「たしか...水難事故を起こす様な妖怪だったわ」
それじゃあ船とはそこまで関係してない様に思うが...
それからまた話し合い、彼女の「ためにし飛ばしてみよう」という意見を聞き
入れ、空気を入れると思われる穴から息をいれて見た。すると、風船は元の大
きさより何倍も膨れて浮かび出した。まるで自分から空に飛ぼうしている様に
感じる。
触らせてくれという彼女に手渡そうとした時、突然風が吹いた。どうやら、天
狗が出した風らしい。
それに怒った彼女が逃げる天狗を追いかけて行くのが見える。ふと空を見ると
さっきまで持っていた風船が風に乗り飛んでいた。それは妖怪などの飛び方と
は、どことなく違って見えた。
その時、僕は風船を見た時から感じていた疑問の答えがわかった気がした。
普通、船は海などを渡るのに、なぜこの「風船」は飛ぶのだろうか、という
疑問だった。
きっとこの「風船」という船は名前の通り空という海の中で、風を渡る船な
のだろう。
その時、幻想郷の青空いっぱいに沢山の風船が飛んで行く景色が思い浮かんだ
。(糸冬)
お題 : 星
261
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/17(土) 02:40:52 ID:7D91.lng0
お題:星
「見て小悪魔、輝く星々の中でいっとう煌めくあの星を」
「パチュリー様、お身体に障ります。夜なんだからさっさと寝てください」
「そして尚大きく光を放つ、あの月を見て」
「パチュリー様、窓から身を乗り出すと危ないです。昼間は窓に近づこうともしない癖に」
「当たり前じゃない、髪が傷むわ。見てこの艶を、努力の賜物を」
「パチュリー様、引きこもりが過ぎて埃まみれです。目元のクマも酷いので寝たほうが良いですよ」
「見て小悪魔、あの星が落ちる頃、私も死ぬのね。美人薄命だわ」
「パチュリー様、憎まれっ子世に憚る、です。私、明日も早いんでもう寝てもいいですか」
紅魔館の夜は更けていく……。
お題:穴
262
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/24(土) 10:24:48 ID:rbb5KJ260
>>253
『ラーメン』
ぼぉーん、ぼぉ−ん、ぼぉーん………
執務室の壁に掛けられた振り子時計が重厚な鐘を鳴らす。時刻は午後7時を指していた。
窓の外はすっかり夜の帳が下りている。私はひとつ伸びをすると、上司の閻魔様が申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさいね、こんな時間まで残業に付き合わせちゃって……」
「あぁ、いえ……これがお仕事ですから」
私は恐縮して答えると、再び書類の整理に取り掛かった。既決になった『旧都開拓事業報告』という公文書を裁断する。
死者の魂を裁く司法機関・是非曲直庁の書記局に私が特命書記官として入庁したのはつい先月のことだ。
幻想郷の歴史を編纂してきた御阿礼の子。その9代目に当たる私も、2冊目の歴史書を記し終えて天寿を迎えた。
次の10代目が産まれるまで約1世紀、私はこうして幻想郷を管轄する四季映姫・ヤマザナドゥ様の下で働いている。
「まったく、あの子は何度言ってもサボり癖が直らなくて……」
「ははっ、小野塚さんはマイペースですからね……」
閻魔様の愚痴に、私は愛想笑いを浮かべながら相槌を打った。すると、噂をすればご本人が執務室に駆け込んできた。
乱雑なノックと、間を置かずに扉が開け放たれる。茜色の髪の死神が、書類の束をふらふらと私の机に置いた。
「あひぃー、四季様これで終わりました〜!」
「何ですか小町、騒々しい! 忙しい時ほど落ち着きなさいと何度言ったら……!!」
目くじらを立てて自分より大柄な死神に説教をする閻魔様。実のところ、このお説教も残業が生じた要因の一つなのだが…。
世渡り下手じゃない私はそんな指摘は微塵も声に出さず、彼女らの仲裁に割って入った。
「まぁまぁ、お仕事も一段落した事ですし、中有の道でご飯でも食べてから帰りませんか?」
私の提案に、御二方ともピタッと動きを止めました。そして、「くぅぅ〜」とお腹の鳴る音が執務室に響きます。
「……こほんっ、ええ、そうですね。時間も遅いですし、みんなで一緒に食事へ行きましょうか。小町のおごりで」
「ちょっ!? なんであたいの奢りなんですか!? 普通、上司が部下に奢るもんでしょ?!」
「おだまりなさい小町。貴方がサボらなければとっくに帰宅できてたのですよ!」
四季様の正論に小野塚さんはぐうの音も出ないようです。もう小野塚さんが奢る事は確定していました。
それから30分後、私たちは中有の道の屋台に並んで腰かけていました。
目の前では屋台の主人が手際よく麺を茹でています。大きな鍋には鶏ガラのスープが煮込まれています。
ここは生前に里でちょっとした話題になったラーメンの屋台です。中でも厚切りのチャーシューは絶品だとか。
「へい、チャーシューメン特盛りに半ライスお待ち!」
ごとんと大きな器いっぱいにチャーシューが盛られたラーメンが四季様の前に出されました。
意外な事に、四季様は小柄な体躯で結構な大食家なのです。庁内の食堂でも定食+デザートはペロリと平らげます。
「あらっ、これは美味しそうですね。ではいただきます」
四季様は嬉しそうな笑みを湛えながら丁寧に合掌すると、割り箸で特盛りチャーシューを切り崩しにかかりました。
「へい、チャーシューメン2つお待ち!」
間を置かずに私の小野塚さんの注文したチャーシューメンが出てきました。量は特盛りの半分ほどでしょうか。
小野塚さんの財布はスッカラカンなのでしょう。チャーシューメンに胡椒を振りながら溜め息をついています。
「はぁ……今月は金欠なのに参ったねぇ……」
「はふはふ……これを機に少しでも反省する事です。もぐもぐ……小町、貴方はサボり過ぎるとあれ程……ずるずる」
お説教をしつつも、汗を額に滲ませながら美味しそうに麺を啜りご飯を頬張る四季様に、私たちは苦笑しました。
何だかんだ言って面倒見の良い閻魔様と、マイペースだけど忠愛のある死神。
素敵な凸凹コンビの下で働く愉快さを噛み締め、私は煮干しの匂いが漂うラーメンを味わいました。
お題:石油
263
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/24(土) 12:48:34 ID:rbb5KJ260
お題まとめ
香水・無礼講・中二病・米粉・そば・朝露・衣替え
暖の取り方・談話・遅咲きの花・聖夜・穴・石油
264
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/11(日) 20:52:22 ID:W3UNPllA0
『そば』
蕎麦の旬は晩秋から初冬にかけてである。凩吹く霜月、幻想郷の田んぼでは二毛作の蕎麦が収穫の時季を迎えていた。
収穫した蕎麦の実を天日で干し、石臼で引けば香ばしい風味が漂う蕎麦粉が出来上がる。
あとは新鮮な蕎麦粉を麺にして新蕎麦を頂くだけだ。食事としても酒肴としても価値の高い一品になるだろう。
しかし、そんな新蕎麦を巡って里の外れにある命蓮寺では、ある種の冷戦と称すべき対立が生じていた。
「……………」
「……………」
居間のテーブルを隔てて向かい合うのは、命蓮寺の管理者・聖白蓮と居候・二ツ岩マミゾウ。
マミゾウはいかにも不機嫌さが滲む表情で、丸眼鏡の奥の瞳は鋭利な視線を対峙する白蓮に向けている。
一方の白蓮は柔和な笑みを崩してはいないものの、それは普段の温かさなど微塵も感じられない冷徹な仮面であった。
他のメンバーは、その一触即発の剣呑な様子を恐る恐る遠目に見守っている。
「……ね、ねぇマミゾウ。何もそんなに怒らなくても……」
「そ、そうよ。聖もここは矛を収めて……」
「やかましいぞ、ぬえ。此れは儂と白蓮の問題じゃ……」
「お黙りなさい一輪。今回ばかりは私も笑って済ませられないの……」
それぞれ宥めようと声を掛けた2人に、白蓮とマミゾウは厳しい言葉で仲裁を遮る。
そして、マミゾウがテーブルに肘を乗せ前のめりになって威圧的な口調で白蓮に詰め寄った。
「のぅ白蓮、儂は今日の昼飯は新蕎麦だと言うから楽しみにして天ぷらを揚げておった」
「えぇ、ですからちゃんと此処にみんなで一生懸命打ったお蕎麦があるじゃないですか」
「こんなボソボソした物体の何処が蕎麦じゃ!!」
ダンッとマミゾウが拳で思いっ切りテーブルを叩いた。食器が揺らぐが、幸い引っくり返ることはなかった。
その音に驚いた幽谷響子が肩をビクッと竦ませ、不安げに目を伏せた。他のメンバーも緊張した表情を浮かべる。
「そんなに声を荒げるから、みんな怯えていますよ。このお蕎麦の何処が不満なんですか?」
「蕎麦は布海苔を使ったコシと喉越しの良いツルツルっとした食感が命じゃ! こんな出来損ない、子供の粘土細工じゃ!」
「それは越後のローカルルールではありませんか。これは正当な信州のお蕎麦、海藻なんか入れる亜流とは違うのです」
「なんじゃと!」
「なんですか!」
激流のようなマミゾウの怒号と湖面のような白蓮の反論。睨み合う両者の放つ険悪なムードに、居間全体が重くなる。
「あっ、あのぉ……」
そんな重苦しい空気の中、戦々恐々として挙手したのは毘沙門天の代行代理・寅丸星であった。
「なんじゃい」
「なんです、星」
険しい目つきで星へ視線を移す2人。その眼光にたじろきそうになったが、星は何とか堪えて2人に意見を申し立てた。
「私は蕎麦より饂飩の方が……それにつゆも塩辛くて出汁の風味が全然ないですし」
寅丸星。彼女は熱狂的な阪神ファンにして情熱的な関西人であった。隣でナズーリンが辟易とした表情を浮かべる。
その後、幻想郷を巻き込んで「蕎麦・饂飩異変」が幕を開けるのだが、それはまた別の話。【END】
265
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/12(月) 00:33:54 ID:tKvm3.160
『衣替え』
「衣替えです、総領娘様」
「……はぁ?」
唐突に言われ、私室のベッドで寝転がりながら雑誌を読んでいた天人の比那名居天子は怪訝な表情を浮かべた。
視線の先には、飄然とした涼しげな表情で微笑む竜宮の使い・永江衣玖が豪奢な綾羅の羽衣を靡かせ正座している。
「……一体全体、何を言い出すのよ衣玖」
「ですから、世間的には衣替えのシーズンなのです」
眉ひとつ動かさず、衣玖は再び同じような主張を繰り返した。天子は気だるそうに起き上がり、眉を顰めて衣玖を見返す。
腰まで伸びたコバルトブルーの髪を掻き上げ、天子は首を傾げながら反論した。
「衣替えって……気候が穏やかな天界では必要ない行為じゃない」
天子の言う通り、夏はやや暖かく冬はやや涼しくなる程度の天界では衣替えなど必要ない。天子は半袖で一年中暮らしている。
「ええ、確かに天界で衣替えの必要はありません。あの異変以来、総領娘様が地上に赴く事も滅多になくなりましたし……」
「だったら別にいいじゃない。片付ける手間がないから楽だs」
「そう、それです!」
天子の言葉を遮るようにして衣玖はビシッと指を突き立て牽制した。その威勢に天子が眼を丸くして少し仰け反る。
「総領娘様はそう言って部屋の片付けをまったくしていないではないですか!? 御覧なさい、この有様を!」
衣玖はそう叫びながら両腕を広げて空間、即ち天子の私室を見渡すよう彼女に促した。
しかし俯瞰するまでもなく、天子の私室は文字通り足の踏み場もないほど散らかっている。
床に四散する下着や衣服、雑然と山積みにされた古雑誌、使いかけの化粧品や果てには菓子の残骸まで無秩序に打ち捨てられていた。
「あぁ〜、衣玖は気ままな独身ライフをフィーバーしているくせにそういう所はきっちりしてるもんね……」
「それとこれとは別問題。兎に角、少しは片付けないと心身ともに衛生的な環境ではありません。ほら……」
衣玖は説教じみたセリフを言いながら衣類の海へ手をまさぐり、するするっとシンプルなデザインの空色のブラジャーを釣り上げた。
「この見栄と虚勢を張って購入したBカップのブラなんか、涙が止まらなくなる……」
「うっ、うるさいわね! ちょっとした見込み違いだもん! これから大きくなるんだもん!!」
顔を真っ赤にしながら天子は衣玖からブラジャーを引っ手繰った。ちなみに天子の適正なサイズはA級の絶壁である。
そんなわけで天子は衣玖に促され、不承不承で久しぶりに部屋の片付けに着手することになった。
――――― 少女清掃中 ―――――
「……ねぇ、衣玖」
「なんでしょう、総領娘様?」
「私たち、部屋の片付けをしていたんだよね?」
「ええ、今も片付けている最中ではありませんか。」
天子の問いに、衣玖はきょとんとした不思議そうな表情で答える。その手にはヘアブラシが握られていた。
「だったら、なんで私がツインテールになってメイド服なんて着てるわけ?!」
フガーッと猫が威嚇するような甲高い声で天子は抗議した。だが衣玖は馬耳東風、いそいそと次の衣裳を見繕っている。
部屋の片付けはいつの間にか、衣玖が発掘した衣類(天子の衝動買いによる)のコーディネートに趣旨が変わっていた。
今、天子が身に纏っているメイド服も彼女自身が特に理由なく買い漁った衣服の一群に過ぎない。
「あぁ、空気を読んで、お題に沿って『衣玖が天子を着せ替えで遊ぶ話』略して『衣替え』ってことでオチを……」
「そんなオチでまとめようとしないでよ!」
「えぇ〜、でもほらこれなんかも可愛らしくて総領娘様にぴったりだと思いますよ。今度は髪を三つ編みにして」
「ふぇ……そ、そう? それじゃ仕方ないわね。私が可愛いのは当然だけど、衣玖がどうしてもって言うなら着てあげるわ」
衣玖の巧妙な褒め殺しでホイホイと着替える天子。結局、部屋の片付けはさっぱり進捗しなかったが、今日も天界は平和であった。
266
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/14(水) 06:06:01 ID:ZroGS9XAo
いいスレを見つけた。こういうお題があった方が、遊べて面白いぜ。
それでは思いつきで『香水』を。微グロ注意かも?
──良い香りだ。ツンときつく感じるが、ほのかな甘さも混じった香り。願わくば全身に浴びてみたい、と思いつつも、さすがにそれは異臭になるか、と思い直す。
私は鼻歌を奏でながら、手のひらに液体を乗せた。両手を合わせて満遍なく広げる。クシュクシュと摺りあう音。広がる香りが鼻孔をくすぐる。
香りを楽しみながら入れ物を見る。
床に転がったそれは、閉じられていない口から液体を溢れさせていた。ついさっき、私が手を勢いよく振った時に倒したのである。
もったいない。だが、大体いつもこんな感じ。
少量で十分だとわかってはいるが、この匂いを嗅ぐとつい欲が出る。あと少しあと少し、を繰り返す。最終的には床に倒し、派手にこぼし、手や服はびしょ濡れ。抑えを知らない子供のようだ、と苦笑する。
もう何度目になるのか、またそれを繰り返した数分前。では数分後はというと、頬を赤くしたメイドが、私に向かって笑顔を浮かべている未来が見える。
……ああ、足音が聞こえてきた。物音を聞きつけて、彼女がやってくる。
私は両手を広げ、情け無い笑顔を浮かべて、彼女を出迎えよう。
「レミリアお嬢さま。私は、何度も申し上げたはずです」
ほら案の定。
十六夜咲夜は目端を吊り上げ、私に対して説教をする。床の掃除も服の洗濯も入れ物の始末も、咲夜がやっているのだ。甘んじて受け入れよう。
「お食事の時は、ご自分の許容量を超えないように、と」
違うわ咲夜。これは食事じゃなくてお化粧よ。
こう言えば、きっと咲夜は怒り狂う。だから言わないことにした。
「まあ……その、後始末はいつも通り、私にお任せを」
咲夜の視線は、私の足元に向かう。私は牙を剥き出して笑い、右足を軽く振った。
床に転がった入れ物の脇腹を蹴り上げ、私に相応しい香水をまき散らさせる。
ツンと漂う鉄のような臭い。ほのかに混じったかぐわしき香り。うん、やっぱり良い香りだ。
やはり私は、吸血鬼なのだ。両手を赤く染め、衣服を紅く染め、哀れで愚かな狩人を倒し、喉を潤す。この一連の行為がたまらなく好きなのだ。
蹴り上げた際に飛び散った血は、床に落ちた。壁を染めた。咲夜の頬に当たった。白いエプロンを汚した。美しい銀の髪に触れた。
「香水を、あなたにおすそわけ」
私の言葉を聞いた私の大好きなメイドは、私の大好きな香りをまとい、壮絶なまでに美しい笑顔を浮かべた。
やらなきゃよかったし、言わなきゃよかった。あの時見えた未来は、確実にすぐそばまで迫っている。
私に学習能力が無いのは、まあ、外見が幼いからということで、大目に見てほしい。
だって、抑えを知らない子供って、時として可愛く見えるものでしょう?
ごめん。ホラー系統好きだからこうなった。
自分からのお題は、『カウントダウン』で。
267
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/17(土) 18:56:04 ID:RtzoFuik0
>>264
マジレスするとひじりんが封印される前の時代で蕎麦と言えばそば粥とか蕎麦がきで
現代の切り蕎麦は無かったかも
だから蕎麦でマミゾウさんと対立してるところまで読んでてっきり切り蕎麦を期待したマミゾウさんに
蕎麦がきでも出したのかと思ったw
268
:
1/4
:2012/11/19(月) 00:30:21 ID:KtuKTfFMO
>>263
から『談話』
してやられた。
はたては今さら流れてきた汗を拭うと、大きく息を吐いた。
暑いわけではない。木枯らし舞う季節、いかに気候の安定した地底と言えどもこの地霊殿という建物の空気は当然それなりには冷えている。
よもやつい頭に浮かんだ「文には負けない」という思考を読まれ、付け込まれるとは予想していなかった。
以前文に見せられた写真――月のお姫様が繰り出したとかいう弾幕が、目の前で再現されたのだ。
撮影には成功したが、それでも全く勝った気がしない。
「……負けは負けですよ。さすがですね、降参です」
被写体の古明地さとりは事も無げに言ってのけると、ふわりとホールの床に降り立った。
「取材がご希望でしたね。さ、こちらへどうぞ」
抑揚に乏しい声。さとりは背を向けるとさっさと歩き出した。そのまま置いて行かれる気がして、はたても慌てて降りる。
だだっ広いエントランスホールに二人分の足音が響いては、遙か奥の暗がりに吸い込まれて消える。
例の間欠泉騒ぎで巫女や魔法使いが突入した際には、全速で飛行して最深部まで四、五分かかったという話だ。
規則正しく並んだ床面のステンドグラスが、灼熱地獄跡の光を受けて辺りをぼんやり照らしている。
気温の上昇を感じて、ああ床暖房なのね、夏はどうしてるのかしらなどと考えるはたてに、さとりは先を歩きながら声をかけた。
「この間いらした天狗さんは撮影だけ済ませたら早々にお帰りになりましたけど」
「文はそういう奴なんです。何でもてきとーで嫌になっちゃう」
また有ること無いことでっちあげて記事にするつもりなのだろう。いつものことだ。
「……あなた方は姉妹みたいにそっくりだったり、まるで正反対だったり、面白いのね」
振り返ったさとりが三つの瞳ではたてを見つめていた。
269
:
2/4
:2012/11/19(月) 00:33:21 ID:KtuKTfFMO
通されたのはこじんまりした応接室だった。
多めのランプと暖炉の光で、ホールとはうって変わって明るい。
はたてが所在なく重厚な雰囲気の調度品を眺めていると、お茶の用意をしたさとりが戻ってきた。
使用人の類は置いていないらしい。さとりは洋菓子が盛られた皿を並べ、二人分のカップにコーヒーを注いだ。
「どうぞ。さて、」
はたての向かいの席に着くと、さとりは薄く笑ってカップを手に取る。それと同時に膝元に赤黒い毛並みの猫が飛び乗ってきた。
さとりと一緒に入室したであろうその猫は、膝の上で盛大に伸びをすると、くるりと身を丸めた。
「もう、この子ったら。危ないでしょう?……あら、お燐とも遊んでくださっていたのね」
確かにはたては以前このお燐と呼ばれた猫を取材していた。危険な猫だ。
だがそれ以上に自分の思考が間断なく読み取られているらしいという現状にはたては慄然とした。
「……そんなに警戒なさらないで。普段はほんの表層しか読めないんですけど。さっきの弾幕遊びで仕掛けた暗示がまだ効いてるようね」
「いつの間に……」
それらしい素振りがないか、注意はしていた。
「最初から」
お燐の背を撫でながらさとりはにっこり笑った。
「興味や関心が少し表に出やすくなっているだけですよ。取材なさるんですから、むしろ好都合ですわ」
ここではたては腹を括った。開き直ったと言ってもいい。
「それじゃあ聞き取りを開始しますけど」
「ええ、あなたの質問に私が答える、そういう形式でいきしょ」
270
:
3/4
:2012/11/19(月) 00:38:21 ID:KtuKTfFMO
#はたての取材ノート(はたてにしか読めない速記文字が並んでいる。極最近まで出番の無かったものだ)
―今般話題の間欠泉センターについて、ご存知のことがあればお聞かせください。
「間欠泉センター、ね。あの施設にそんな呼称を与えるなんて、山の神様はおふざけがお好きなのね」
―やはりあれの建造には旧都も絡んでいる?
「そりゃあねぇ。底面は灼熱地獄跡にまで到達する大深度建造物です。私達に話を通さずにやられたら困っちゃいますから」
―どういった経緯で?
「基本構造は先に山の神様、洩矢様でしたっけ? が作ったらしいのです。事後承諾ですね」
―あー、うん。やりそうなこと…
「それで、地上の河童の皆さんがぞろぞろ入り込んで作業始めたあたりで、これは一度しっかり折衝しておかないと、と」
―どのような取り決めがなされたのでしょう。
「設計は地上の皆さんにお任せしますから、建造と保守管理は土蜘蛛衆で行いたいと私が直接八坂様にお話しました」
―うわぁ強気。
「こちらとしても勇儀さん…鬼の差配で進めてることにしないと御山の過剰な干渉だって意見、収まらないんですよ」
―地底で勝手は騒動の火種になると。守矢神社はあくまで御山の技術革新だ、と喧伝していますが。
「先進の技術がかなり投入されていることは確かです。結局融合炉は河童の皆さんの手を借りないと運用できないのが現状ですし」
―底部に設置されているという機械ですね。詳しくお願いします。(ビンゴ! の文字が乱雑に二重線で消されている)
「……慌てなくても結構ですよ……ああ、お空にもお会いになっているのね……それで察しがついたと」
―いや、まあ…ははは。間欠泉のためとすると大仰過ぎる力だなぁって。
「お考えの通り、熱水を吹き上げるのは二次的な機能にすぎません。あれの実態は核融合による実験炉です」
―本当の目的は何なのでしょう。
「八坂様曰く新たな生活基盤エネルギーの創出、そのための実験だそうです。……かなり情報が絞られているようですね」
―河童に直接取材してものらりくらり…箝口令でも出てるようで。
「それがあの方達のやり方みたいです。この件に関しては運用が軌道に乗ったら大々的に発表するのでしょう。守矢主導のエネルギー革命って」
271
:
4/4
:2012/11/19(月) 00:44:55 ID:KtuKTfFMO
―地上の人妖の生活に大きな変化をもたらすような計画が密かに進行しているわけですね。
「地上の? 私達地底の者にとっても、ですよ。ですからあのまま座視はできなかった」
―実用化に際しては恩恵に与ると?
「それはもう当然に。立地や建造以前に、炉心そのものが古明地家の物ですから」
―核融合の力は守矢二柱の物だと伝え聞いていますが。
「いいえ。お空はうちの地獄鴉、古明地家の人工太陽ですわ。断じて守矢の実験炉ではありません」
地上に戻る頃には陽は沈み、彼方の山の端を赤く染めるのみとなっていた。
風は冷たい。天蓋の上層に広がる雲が千切れながら走っていく。明日は一雨くるかもしれない。
はたては中空に静止すると、髪を靡くに任せながら今回の取材を反芻していた。
お世辞にも上手くいったとは言えない。聞き出すというよりは、一方的に押し付けられたようなものだ。
それでも、無駄であったとは思わなかった。
あの談話が事実であれ虚構であれ、相手は何故あのような話をしたのかを慎重に見極める必要がある。
大天狗に報告するか、独自に記事にするか、傍観に徹するか…どれを期待され、私はどうするのだろう。
「中立公平清く正しい射命丸、か」
はたては文のモットーを思い出して苦笑した。なるほど、だからこそ事実としての写真とどうでもいい憶測のみで紙面を構成するのだろう。
それと共に地霊殿のホールでさとりに言われたことも脳裏に浮かんでくる。
(――姉妹みたいにそっくりだったり、まるで正反対だったり――)
何故、文の後追いになるのを承知でこの取材行を始めたのか。
思考を打ち切ると、はたては妖怪の山へ向けての飛行を再開した。
もう夜回り組の目敏い白狼天狗に見つかっているだろう。いちいち詮索されるのも面倒だ。はたては速度を上げた。
長々すまぬ。お題追加『硬貨』
272
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/24(土) 06:32:36 ID:iR2xfLME0
>>268-271
great!
『暖の取り方』
その日、森近霖之助はすこぶる不機嫌だった。霜月も半ばの、凩吹き荒れる肌寒い曇天の昼下がりである。
普段からあまり愛想の宜しくない容貌をさらに顰め、憮然とした表情で頬杖を突いている。
「……なぁ香霖、いつまでそうやって拗ねてるんだよ」
そう話し掛けたのは、彼の顔馴染みの魔法使い・霧雨魔理沙である。
彼女は霖之助とは反対に愉快そうな笑みを浮かべ、声色にも喜悦の調子が混じっていた。
「うるさい、誰のせいでこうなったんだと思っているんだ……」
霖之助はずり落ちそうな眼鏡を煩わしく掛け直しながら、厭味ったらしく魔理沙を睨んだ。
「香霖だって何の疑いもなく食べたじゃないか」
彼の視線を意に介さず、魔理沙はビシッと人差し指を名の通り正面の人物に突き立てた。
一旦は反論しようと口を開きかけたが、その口からは深い溜め息が洩れただけで霖之助は口を噤んで目線を逸らした。
「はぁ……まったく、ちゃんと元に戻れるんだろうな」
霖之助は再び溜め息をつきつつ、自身の手をじっと見つめた。青年の手にしてはあまりに小さい、幼児のような手を。
比喩ではなく、将に霖之助は今現在『幼児』になっていた。年齢にして5〜6歳と言ったところか。
原因は勿論、目の前にニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている金髪の少女にある。
彼女が持参した毒キノコを、昨晩不覚にも警戒せずに食べてしまったからだ。その結果が肉体の『幼児化』だった。
「ふふっ、にしても子供になった香霖はなかなか可愛いじゃないか。私を『お姉ちゃん』と呼んでも良いんだぜ?」
「お寒い冗談は止してくれ……」
「いやぁ、でも流石『年の数茸』だぜ。噂通り、キノコのサイズ通りの年齢になった……ハックション!」
自身の収穫したキノコの成果を満足げに語っていた魔理沙の言葉は、少女らしからぬ豪快なくしゃみによって中断された。
「うぅ〜、そういえば今日はやけに冷えるな……」
「あぁ、ストーブを点けていないからね」
そう言って霖之助は壁際に鎮座する古めかしいダルマストーブを一瞥した。それを聞いて魔理沙が不満な声をあげる。
「えぇ〜、なんだよ早くつけてくれよ。寒くて仕方ないぜ」
店内の温度計は10℃を示している。霖之助も出来れば火を熾したい所だったが、魔理沙の言う通りに動くのは癪だった。
「いやだね。こんな身体じゃあ、動き回るのも億劫だよ」
霖之助はブカブカになった自分の衣服を手繰り寄せて身を固めた。何重にも衣類を巻いて、民芸品の人形のようだ。
「むぅ、なんだよケチ」
魔理沙はストーブの点け方を知らない。しばらく腕を組んで考えていたが、ふと何か思いついたのかドタドタと土間に上がり込んだ。
怪訝な表情で霖之助は彼女を見送る。すると、魔理沙は春秋用の薄手の毛布を一枚抱えて戻って来た。
「なんだ魔理沙、押入れから引っ張り出してきたのかい。それだと防寒には心細いと思うが……」
「へへっ、だからこうするのさ」
霖之助の指摘に対して、魔理沙は毛布を羽織るとそのまま霖之助を抱きかかえて近くの椅子に腰を下ろした。
いくら身体が幼い子供になったとは言え、魔理沙に軽々と抱きかかえられてしまった事に霖之助は眼を丸くしている。
「おぉ、あったかいぜ。やっぱ子供って体温高めだからな、人間カイロの出来上がりだ」
茫然としている霖之助を魔理沙はしっかりと両腕で抱き締める。今の霖之助では少女の抱擁すら容易に振り解けないだろう。
ぴったりと密着しているせいで、霖之助の身体へ魔理沙の柔肌の感触、少し膨らみ始めた胸の柔らかさが伝わっていく。
少女特有の甘い香りが毛布の中に籠る熱で温められ、沸き立つように霖之助の鼻腔をくすぐった。
ずっと年下である少女の膝の上に乗せられ抱き締められている気恥ずかしさで霖之助は押し黙った。顔は心なしか赤らんでいる。
だが、同時に彼は懐かしさと安らぎも感じていた。それは、母の御胸に抱かれた記憶が遙か遠い昔となった彼の感傷だ。
「………まぁ、こんな日もあって良いのかもしれないな」
少女の温もりに包まれながら、霖之助は不機嫌だった表情を少し和らげて静かに眼を閉じた。
「んっ、香霖寝るのか? じゃあ、私も……おやすみ」
そう言って魔理沙もまた眼を閉じ、自分に身を委ねる霖之助の身体を優しく抱きとめた。
冬が始まる。厳しい寒さを乗り切るには、文明の利器よりも人肌の温もりの方がいいのかもしれない。【FIN】
273
:
名前が無い程度の能力
:2013/01/01(火) 17:21:08 ID:F/F5j4Hc0
>>202
より、コイン+さとり+賭け+白蓮+眼鏡+しみじみ+お茶+シリアス。
一年越しだとかその間にお題が既に消化されているだとか一部お題を曲解しているとか、
いろいろ問題はありますが、一つよしなに。
「alternative」
池にいつかの巫女の姿は無かった。その代わり、真白い蓮の花が咲いていた。
僕は池のほとりに座って、金貨をポケットから取り出した。それを、宙めがけて思い切り親指ではじき上げた。
(表が出たら実行する、裏が出たらやめておく)
そう自分に言い聞かせつつ、もう何回同じことを繰り返しただろう。表が出てはやり直し、裏が出てはやり直し。
(まったく、これじゃあコイン占いの意味が全然無いじゃないか)
心中自分に文句を言って、地面に落ちたコインを確かめもせずポケットに戻した。
僕達八人がこの楽園に迷い込んでから、もう二年が経とうとしている。
楽園は僕達に、立派なお屋敷と肥えた畑、そして衣食の蓄えを与えてくれた。ご丁寧に、庭の井戸はたっぷりと清水を湛えていて、辺りの森は山の幸の宝庫だった。これで何不自由ない暮らしを送れる。そう言って皆喜んでいた。
「こうして三度のご飯にありつけて、おいしい紅茶までいただける。それが一番幸せなことだよ」
口を開けばシニカルなジョークばかりのあいつが、真面目な顔をしてそう言った。
「ああ、もう危ない真似なんかしなくていいんだ。なんてありがたいんだろう」
理屈屋のあいつが、眼鏡をずらして涙をぬぐいながら、しみじみそう言った。
確かにあいつらの言う通り。これからは活計[たつき]に事欠くことはない。今までのような無茶をする必要もない。それはきっと、素晴らしいこと、感謝すべきことなんだ。でも、僕はそんな気持ちになれない。何かが足りない、満たされない。
(何が足りないんだろう、一体何が……?)
考えながら、蓮の花を見遣る。清らかな純白の花。清浄という徳目が花となって咲いたような、穢れ無い美しさだ。
(確かに美しいよ。でも、あの巫女程じゃない)
僕が魅せられたのは、そう、あの巫女の舞。まるで二色の蝶のように、白い袖で空を裂き、真紅の裳裾を鮮やかにひるがえして舞う、紅白の巫女だ。
(どうしてなんだろう。あの巫女にあって、この蓮に無いものって……?)
目の前に咲く蓮と引き比べようと、巫女の舞姿を追憶した。脳裡に結んだ幻像を凝視する。白い蓮、紅白の巫女、真紅の裳裾、その鮮やかな赤い色。遠ざかってしまったその色が、妙に懐かしい。
(……ああ、そうか)
天啓のようにひらめいた。
赤の色。刺激的で、焼けつくように甘美で、享楽と罪業にまみれた色。
それは、二年前までの僕らそのものじゃないか。僕は、そんなかつての暮らしが恋しかったんだ。
安逸に浸る仲間達にとけこめず、けれど自分が何を求めているかも分からなかった。分からないから、現状を壊せないまま、徒に逡巡ばかりを繰り返していた。だが、もう迷いはない。
これは賭け。しかもすこぶる分の悪い賭けだ。なにしろ、自ら仲間と楽園――約束された安楽とを捨て去るのだ。でも悪くない。そんな鮮烈な刺激を求めて、僕は生きているのだから。
もう一度金貨を思い切りほうり上げた。表が出たら実行、裏が出ても実行。落ちたコインをやはり確かめずにポケットに戻すと、僕は立ち上がって歩きだした。
274
:
名前が無い程度の能力
:2013/01/01(火) 17:30:08 ID:F/F5j4Hc0
連投失礼。
>>202
より和歌+ネタ。
不比等は俺のy(ry……嘘です。本当はもう少し輝夜を前面に出そうとして失敗しました。
「pleasure」
「私と恋をしませんか?」
「およそ自分が袖にした男に対して言う科白ではありませんね。今度は一体何を企んでいるのです?」
招かれざる客が浮かべる天女の如き微笑みを、私は能う限りの渋面で出迎えた。突如私の私室に現れたのは、姿形だけ見れば完全無欠なる麗しの姫君。かつての私の求婚相手だ。ちなみに、彼女を邸に招じ入れた覚えなど、私には一切無い。まったく、我が家の警衛共は何をしているのか。
「ご挨拶ね。最近、歌に凝っているの。だから、その題材作りのためにね」
「歌、ねえ……」
聞く限りでは人畜無害なことを考えているようである。だが、この姫はかつて人間の成長が云々というよく分からない理屈で国家規模の事件を引き起こしかけている。油断はならない。
「ほら、私が『野守は見ずや……』とやったら貴方が『妹が憎くあらば……』っていう風にね」
「あれは空想によって作ったものなのだから、何も実際に恋をせずともよいでしょうに」
「気分の問題よ、気分の」
話に怪しい点は無い。歌詠みに入れ込んでいるだけなら大した害もあるまい。少々傍迷惑ではあるが。
「どうやら、本当にただ趣味として歌の題材探しをしているだけのようですね。天下国家に仇なさんという訳ではなくて」
「どうやって歌で国家転覆を謀るのよ。あ、歌の才でもって帝をたぶらかして宮中を牛耳る、とか?」
「それは良いことを聞きました。早速我が娘にも歌の素養を身に付けさせましょう」
それでは今から、とばかり立ち上がり、姫を無視して部屋を出た。彼女が何か物騒なことを目論んでいるのでなければ、私がこれ以上彼女にかかずりあう理由は無い。
「つまらない。いいわ、朴念仁を何とか振り向かせようとする片思いの女の子の歌でも詠んでいるから」
はいはい目的達成慶賀の至りと気の無い返事を振り向きもせず返して、さっさとその場を後にした。
警衛の頭の者を一通り叱って自室に戻ろうとしたところで、娘に呼び止められた。
「お父様、わたくし、歌を詠みましたのよ。聞いて下さいまし」
巷で流行ってでもいるのか、今日はよくよく歌に付き合わされる日である。しかし、さっきの話ではないが、やがて成長の暁には宮中に上がる可能性もある娘が、歌の一つも碌に詠めないようでは話にならない。
「うむ。しっかり修練しなさい。お前は――」
「それで、今宵は月がとてもきれいでしたから、それを初めに詠み込んで、それから……」
私が話しきらないうちに、娘は勢い込んで自作の歌の説明を始めた。得意気な顔をして、目を輝かせて喋っている。
娘は、楽しんでいるのだ。
――お前はいずれ、帝の妃になるのだから。
そんな父の思惑などお構いなしに、歌を詠むことそれ自体に、胸を弾ませているのだ。
少し、娘をうらやましく思った。それから、今頃片思いの歌とやらを詠んでいるであろう、あの姫のことも。
「前栽の秋草が大層おもしろう咲いていましたので、それをですね……」
娘の講釈はまだ終わらない。
久しぶりに、私も一首詠んでみようか。題材は――そう、かつて喧嘩別れした女性が今更恋しくてならない、情けない男の心持ちでも。
275
:
名前が無い程度の能力
:2013/01/04(金) 07:50:06 ID:0/8oYg3A0
>>273-274
寂寞とした雰囲気が素晴らしい
お題まとめ
無礼講・中二病・米粉・朝露・硬貨
遅咲きの花・聖夜・穴・石油 ・カウントダウン
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