したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

241名前が無い程度の能力:2011/11/24(木) 02:23:41 ID:IoRF1Zpw0
【団子】

「珍しいな、こんなところで」
紅魔館からの帰り、買出しに立ち寄った人里の西商店区。
立ち並ぶ店の一つ、広い道に面した甘味屋で、見慣れない女性が長いすに座っているのを見かけたのだ。
たいていの物が和様な人里で、鮮やかな赤いドレスと絹のような輝く緑髪のシルエットはかなり目立って、周囲から切り離されているように強調されて見えた。
そんな姿になんとなく興味を惹かれて、声を掛けてみたのである。

その女性――"鍵山雛"という名前だと、にとりに以前聞いた――はわたしを見上げて、口に運んでいた団子の串を皿に戻した。隣いいか、と聞くと薄く微笑んでゆるりとうなずきをくれる。箒を足元に置いて厄神を見ると、その膝には三毛猫が心地よさそうに丸まっていた。
「今日は厄が少なかったからね。たまには里でゆっくり過ごすのもいいかなって」
おひとついかが、とよもぎ団子が差し出されたので遠慮なく受け取る。霜月の空気は冷たかったが、そばに置かれた火鉢から温かさがほんのり感じられて、なるほどなかなか気分がいい。よもぎ団子をパクつくと程よい苦味が口に広がる。うん、おいしい。
「今日は、って、毎日人里まで来ているのか」
「年末はそうね。人間達が一番忙しいころだから、精神的に参っちゃう人も多いのよ」
そういう心が厄を呼び寄せちゃうの。そう言って、左手のリボンを解いて滑らかな手の平をわたしの額にかざす。わたしの目には見えなかったが、結構な量の厄が溜まっていたらしく
「貴女もそうみたいね。なにかいやなことでもあった・・・・・・」
見透かされてしまった。猫を撫でながらこちらを見る目はどこまでも優しくて、何もかもを告解したい気分になるが、こらえて、ちょっと遠まわしな質問を雛にする。
「―――雛はよもぎ団子をわたしにくれたけど、もしわたしが、実は世の食べ物でよもぎ団子が一番嫌いだって言ったら、雛はどうする・・・・・・」
「すぐに謝るわ。ごめんなさい、って。それから、こっちのみたらし団子と交換してあげる」
わたしの脈略のない例え話に、雛は逡巡することなく答える。静かに微笑を湛えたままで。
「やっぱりそうか。そうだよな。早く謝らないとダメだよなぁ」
乾いた笑いが口からでる。
すると、厄神様は手に持っていた串を口に運んでみたらし団子を頬張った。団子を口に含んだままにやりと笑う。
「ほら、もう貴女はみたらし団子を食べられないわね。おいしいお団子を完全な状態で食べたいなら、食べられちゃう前に行動しないと」
「なんだそれ」
西洋的な顔立ちから飛び出た和風な例えに、思わず笑いがこぼれて。それを見て雛も愉快そうに笑った。

「いやぁ昔もさ、母親に同じこと言われたよ。小さいころから友達とは年中喧嘩ばかりで―――」
はっとする。この光景をわたしは経験したことがある気がするのだ。遠い記憶の底から、母との記憶が突出してくるのを強く感じる。
たしかあの時も市は賑やかで、火鉢が気持ちよくって、そして母の手がよもぎ団子を―――

ため息をついて、思い出を再び底に追いやる。
今更家族のことを思い出しても仕方がない。いつの日か、何かが変わるときが来るのかも知れないが、とにかく今はあいつだ。三日前から続く彼女とのささいな喧嘩を終わらせることが、今のわたしがやるべきこと。厄神様の言う通りに。そっから先は後で考えろ。
そんなことを考えているうちに、気づけば雛はどこかへ行ってしまっていた。辺りを見回しても、帰宅を急ぐ人間の雑踏しか目に入らない。
先ほどまで彼女の膝上に乗っていた三毛猫が、呆然と立ち尽くすわたしの足に擦り寄ってきた。


波長の長い光が、秋の空をカクテルみたいに染め上げている。夕暮れの紅い空は星空に次いで飛ぶのに楽しい空だ。
あいつのことだ。月が昇りきるまでは床に就かないだろう。どうせなら、夕食の最中に突撃してやる。ああ、精々思いっきり頭を下げてやろうじゃないか。
厄をすべてそぎ落とした心身は軽く、どんな困難でも乗り越えられる気がした。
――――――――――――――――――――――――――――――
昔書いたメモがあったのを、スレに合うように圧縮。なので展開が文並

お題投下:【試験】 【お暇をいただきます】 【談話】


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板