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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
262
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/24(土) 10:24:48 ID:rbb5KJ260
>>253
『ラーメン』
ぼぉーん、ぼぉ−ん、ぼぉーん………
執務室の壁に掛けられた振り子時計が重厚な鐘を鳴らす。時刻は午後7時を指していた。
窓の外はすっかり夜の帳が下りている。私はひとつ伸びをすると、上司の閻魔様が申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさいね、こんな時間まで残業に付き合わせちゃって……」
「あぁ、いえ……これがお仕事ですから」
私は恐縮して答えると、再び書類の整理に取り掛かった。既決になった『旧都開拓事業報告』という公文書を裁断する。
死者の魂を裁く司法機関・是非曲直庁の書記局に私が特命書記官として入庁したのはつい先月のことだ。
幻想郷の歴史を編纂してきた御阿礼の子。その9代目に当たる私も、2冊目の歴史書を記し終えて天寿を迎えた。
次の10代目が産まれるまで約1世紀、私はこうして幻想郷を管轄する四季映姫・ヤマザナドゥ様の下で働いている。
「まったく、あの子は何度言ってもサボり癖が直らなくて……」
「ははっ、小野塚さんはマイペースですからね……」
閻魔様の愚痴に、私は愛想笑いを浮かべながら相槌を打った。すると、噂をすればご本人が執務室に駆け込んできた。
乱雑なノックと、間を置かずに扉が開け放たれる。茜色の髪の死神が、書類の束をふらふらと私の机に置いた。
「あひぃー、四季様これで終わりました〜!」
「何ですか小町、騒々しい! 忙しい時ほど落ち着きなさいと何度言ったら……!!」
目くじらを立てて自分より大柄な死神に説教をする閻魔様。実のところ、このお説教も残業が生じた要因の一つなのだが…。
世渡り下手じゃない私はそんな指摘は微塵も声に出さず、彼女らの仲裁に割って入った。
「まぁまぁ、お仕事も一段落した事ですし、中有の道でご飯でも食べてから帰りませんか?」
私の提案に、御二方ともピタッと動きを止めました。そして、「くぅぅ〜」とお腹の鳴る音が執務室に響きます。
「……こほんっ、ええ、そうですね。時間も遅いですし、みんなで一緒に食事へ行きましょうか。小町のおごりで」
「ちょっ!? なんであたいの奢りなんですか!? 普通、上司が部下に奢るもんでしょ?!」
「おだまりなさい小町。貴方がサボらなければとっくに帰宅できてたのですよ!」
四季様の正論に小野塚さんはぐうの音も出ないようです。もう小野塚さんが奢る事は確定していました。
それから30分後、私たちは中有の道の屋台に並んで腰かけていました。
目の前では屋台の主人が手際よく麺を茹でています。大きな鍋には鶏ガラのスープが煮込まれています。
ここは生前に里でちょっとした話題になったラーメンの屋台です。中でも厚切りのチャーシューは絶品だとか。
「へい、チャーシューメン特盛りに半ライスお待ち!」
ごとんと大きな器いっぱいにチャーシューが盛られたラーメンが四季様の前に出されました。
意外な事に、四季様は小柄な体躯で結構な大食家なのです。庁内の食堂でも定食+デザートはペロリと平らげます。
「あらっ、これは美味しそうですね。ではいただきます」
四季様は嬉しそうな笑みを湛えながら丁寧に合掌すると、割り箸で特盛りチャーシューを切り崩しにかかりました。
「へい、チャーシューメン2つお待ち!」
間を置かずに私の小野塚さんの注文したチャーシューメンが出てきました。量は特盛りの半分ほどでしょうか。
小野塚さんの財布はスッカラカンなのでしょう。チャーシューメンに胡椒を振りながら溜め息をついています。
「はぁ……今月は金欠なのに参ったねぇ……」
「はふはふ……これを機に少しでも反省する事です。もぐもぐ……小町、貴方はサボり過ぎるとあれ程……ずるずる」
お説教をしつつも、汗を額に滲ませながら美味しそうに麺を啜りご飯を頬張る四季様に、私たちは苦笑しました。
何だかんだ言って面倒見の良い閻魔様と、マイペースだけど忠愛のある死神。
素敵な凸凹コンビの下で働く愉快さを噛み締め、私は煮干しの匂いが漂うラーメンを味わいました。
お題:石油
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