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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
201
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/27(火) 18:29:21 ID:TLsrjPs60
お題「歌」
歌が、聴こえた。それは紅魔の館の門の前。どこか懐かしい門番の歌声。
日は高く、丁度今が正午であることを示していた。
洗濯かごを抱えていたメイド長は、やれやれとかごを足元に置き、館の中から声をかける。
「メイリーン!」
「はーい!」
歌は止み、下から聞こえるのは必要以上の大声。
「そろそろお昼にするから、中に入ってきていいわよ」
「わかりましたー!」
言うと同時、門を開け中に入ってくるメイリンを見届け、咲夜も食堂へと向かった。
「いただきます!」
「いただきます」
メイリンは箸で、咲夜はナイフとフォークを使い、妖精が運ぶ料理に口をつける。
二本の棒を器用に使い目の前の料理を次々と平らげるメイリン。
それとは対照的に、咲夜は一つの皿を時間をかけてじっくりと味わう。
「ごちそうさまでした!」
ものの15分もしないうちに、数え切れないほどの皿を重ねてお茶をすするメイリンに、咲夜はあきれ顔で話しかける。
「毎回思うけど、あなたもうちょっと味わって食べられないの?」
「毎回言いますけど、咲夜さんはもうちょっと食べたほうがいいと思いますよ? だからきっと…」
言いながら、メイリンの視線は咲夜の胸元へと向かう。
「…何か?」
「いえ、なんでもありません。それでは私は職務へと戻ります!」
湯呑を置き、さっと席を立つ。
「あら、いつになく仕事熱心ね」
「そんな、私はいつも熱心ですよ?」
「でも歌を歌っていたじゃない」
「歌…ああ、あの歌ですか」
おどけた感じのメイリンの表情が途端に柔和になる。
その一瞬の表情に少しドキリとしつつ、ばれないように言葉を紡ぐ。
「あの歌、悪くなかったわよ」
「ええ、私の好きな歌なんです。前に、人間に教えてもらった歌なんですけどね」
「妖怪の前っていうくらいだから、相当に前なんでしょうね」
「そうですねぇ、何年前かなんてもうすっかり覚えてませんけど」
「私には、わからない感覚ね」
スッ、と二人の間の空気が少しだけ重くなる。人間と妖怪。二人の相違は、いつもふとした会話に内包される。
「…でも、私は、限られた時間って素晴らしいことだと思いますよ」
メイリンはそこまで言って、口を噤む。瞬間の沈黙。
コーヒーカップから口を離した咲夜は、少し笑って、感慨深げに「そうね」と呟いた。
夜。咲夜は結わいていた髪をほどき、つかの間の休息を得ようと寝まきへと着替えていた。
部屋が暗いせいか、三面鏡の前に座る咲夜の表情はどこか物憂げで、そこには紅魔のメイド長ではなく、一人の少女が佇んでいた。
そんな、虫の音も聞こえない館の一室に、昼に聴いた、あの歌声が舞い込む。
凛として張りのある声は、優しく、穏やかに咲夜の耳に届けられる。
窓から覗いた紅魔の門番は、相も変わらず誰に聞かせるでもなく、自由に、心底楽しそうに歌を歌っている。
なんだか少し羨ましく、窓から見下ろす銀髪の少女はポツリポツリと歌を重ねる。
遥か昔、一人の少女が一人の妖怪に歌を歌った。
そして今、其の妖怪は一人の少女に歌を歌う。
満天の星空の下。幻想卿にて、歌はまた、少女の元へと舞い戻る。
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