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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

274名前が無い程度の能力:2013/01/01(火) 17:30:08 ID:F/F5j4Hc0
連投失礼。>>202より和歌+ネタ。
不比等は俺のy(ry……嘘です。本当はもう少し輝夜を前面に出そうとして失敗しました。

「pleasure」

「私と恋をしませんか?」
「およそ自分が袖にした男に対して言う科白ではありませんね。今度は一体何を企んでいるのです?」
 招かれざる客が浮かべる天女の如き微笑みを、私は能う限りの渋面で出迎えた。突如私の私室に現れたのは、姿形だけ見れば完全無欠なる麗しの姫君。かつての私の求婚相手だ。ちなみに、彼女を邸に招じ入れた覚えなど、私には一切無い。まったく、我が家の警衛共は何をしているのか。
「ご挨拶ね。最近、歌に凝っているの。だから、その題材作りのためにね」
「歌、ねえ……」
 聞く限りでは人畜無害なことを考えているようである。だが、この姫はかつて人間の成長が云々というよく分からない理屈で国家規模の事件を引き起こしかけている。油断はならない。
「ほら、私が『野守は見ずや……』とやったら貴方が『妹が憎くあらば……』っていう風にね」
「あれは空想によって作ったものなのだから、何も実際に恋をせずともよいでしょうに」
「気分の問題よ、気分の」
 話に怪しい点は無い。歌詠みに入れ込んでいるだけなら大した害もあるまい。少々傍迷惑ではあるが。
「どうやら、本当にただ趣味として歌の題材探しをしているだけのようですね。天下国家に仇なさんという訳ではなくて」
「どうやって歌で国家転覆を謀るのよ。あ、歌の才でもって帝をたぶらかして宮中を牛耳る、とか?」
「それは良いことを聞きました。早速我が娘にも歌の素養を身に付けさせましょう」
 それでは今から、とばかり立ち上がり、姫を無視して部屋を出た。彼女が何か物騒なことを目論んでいるのでなければ、私がこれ以上彼女にかかずりあう理由は無い。
「つまらない。いいわ、朴念仁を何とか振り向かせようとする片思いの女の子の歌でも詠んでいるから」
 はいはい目的達成慶賀の至りと気の無い返事を振り向きもせず返して、さっさとその場を後にした。

 警衛の頭の者を一通り叱って自室に戻ろうとしたところで、娘に呼び止められた。
「お父様、わたくし、歌を詠みましたのよ。聞いて下さいまし」
 巷で流行ってでもいるのか、今日はよくよく歌に付き合わされる日である。しかし、さっきの話ではないが、やがて成長の暁には宮中に上がる可能性もある娘が、歌の一つも碌に詠めないようでは話にならない。
「うむ。しっかり修練しなさい。お前は――」
「それで、今宵は月がとてもきれいでしたから、それを初めに詠み込んで、それから……」
 私が話しきらないうちに、娘は勢い込んで自作の歌の説明を始めた。得意気な顔をして、目を輝かせて喋っている。
 娘は、楽しんでいるのだ。
 ――お前はいずれ、帝の妃になるのだから。
 そんな父の思惑などお構いなしに、歌を詠むことそれ自体に、胸を弾ませているのだ。
 少し、娘をうらやましく思った。それから、今頃片思いの歌とやらを詠んでいるであろう、あの姫のことも。
「前栽の秋草が大層おもしろう咲いていましたので、それをですね……」
 娘の講釈はまだ終わらない。
 久しぶりに、私も一首詠んでみようか。題材は――そう、かつて喧嘩別れした女性が今更恋しくてならない、情けない男の心持ちでも。


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