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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
231
:
名前が無い程度の能力
:2011/11/22(火) 01:10:20 ID:Zh3XBtxk0
>>230
スクランブルエッグ
やってみた。天子好きの皆さん、天子をメシマズ嫁扱いしてごめんなさい。けど料理が出来ない女の子って可愛いと思うんd
「何か料理が作れるようになりたい」
天人の少女は呟いた。彼女は美しかった。天界の晴れ渡った空にあってなお蒼いサファイア色の髪を腰まで蓄え、天を駆け抜ける風を捉えてキラキラと舞う。世界を映すその瞳は対となる宝玉、ルビーの深紅。澄んだ紅の瞳の中に優しさと意思の強さと、そして少しばかりのいたずら心が溶けあっている。透き通るような白、真珠の輝きと滑らかさを持った肌。その真珠の肌に差す仄かな赤みは、人がどれほど苦労して頬紅を取り繕っても決して及ぶことはない桃色。この世のどんな宝石よりも美しく、そして得難い。そんな少女。
少女の名、比那名居天子。彼女は何百年も生きていながら、未だに未婚であった。その美貌とは裏腹に、致命的な弱点を抱えていたから。
ひとつは我儘。これはまだいい。尻に敷かれるのが好きな男性も少なからずいるだろう。
もうひとつ。彼女には特別な能力があった。
『料理と称して劇物を作る程度の能力』
つまり料理が出来ない。出来ないのなら、しなければいいのだが……どうにも彼女は頑張ってしまうのである。結果、その頑張りを無駄にはしまいと未来の夫も同じく頑張り、思い悩む。
目の前にいるのは絶世の美女、性格だって皆が言うほど悪くはない。家系だって名門だ。そんな少女が一生自分のために尽くしてくれるというのだ。この料理(笑)を毎朝毎晩作ってくれるのだ!
そこで未来の夫は人生を分かつクライシスに立たされることになる。愛する彼女のためならば、これを毎日食べられるか、否か。
「なんで、なんで料理が出来ないだけでそんな扱いを受けなきゃいけないのよー! 昨日まで私の事愛してるって言ってたくせに!!」
天子は天界の雲の上から、下界に向かって胸中を吐きだした。それはもう、全力で。そう、彼女はつい昨日失恋したばかりであった。ただ、料理が出来ないがためだけに。
「総領娘様」
びくっ。肩をすくめる天子。あれだけ大きな声で叫べば、誰に聞かれていてもおかしくはない。
「貴女は、いつもその努力を悟られまいと他人の見えないところで努力なさいます。けれど、一人で料理の練習と言うのは……味が分からなくなりますから」
振り返れば、そこにいたのは竜宮の使い。緋想天異変の時から妙に縁のある奴だった。
「ギャー! イクサーン!! 聞いてたわね!? 貴女、全部聞いてたわね!?」
天子の顔が、恥ずかしさからかあっという間に真っ赤に染まる。それはもう、今にも湯気が出そうなほどに。
「えぇ、始終。聞いていたどころか事の顛末全て存じております」
「――――っ!!」
天子は悔しいやら悲しいやらで、とうとうその場に崩れて泣きだしてしまった。失恋の事、自分の才能の無さの事、全部聞かれていた事、そして衣玖が自分より自分の事をよく知っていること。全部ひっくるめて、よく分からない感情になって押し寄せる。
彼女の美しい顔が、涙に歪む。それでもなお彼女は美しく、そして可愛い。ぽろぽろと涙をこぼしてすすり泣く彼女に、保護欲をそそられたのは泣かせた当人であった。
「申し訳ございません、けれど衣玖は必ず総領娘様の力になりますよ?」
天子の、その滑らかな髪に覆われた背中をそっと撫でて、衣玖は耳元で優しく囁く。
「ふぇ……?」
天子は涙で潤んだ目で衣玖を見据え。暫し考え込んだ。
あぁ、もうこの子……抱きしめたい。そしてもうちょっとだけ泣かせたい。衣玖は心の中に膨れ上がる衝動をどうにか押さえつつ、彼女が言葉を発するのを待った。
「教えてくれるの?」
手で涙をぐしぐしと拭いて、衣玖の顔を見上げる。
「えぇ、簡単なものからですけど……。そうですね、先ずはスクランブルエッグなんてどうでしょうか」
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