[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
200
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/05(月) 03:52:07 ID:6EI/wyT2O
「楽器」で行こうそうしよう
寺子屋に静けさが訪れた。
学童のいなくなった教室で、ふぅ、とため息をつくと、教材を黒板の横に設置した本棚に戻した。
傾いた日が入る教室で、今、いるのは、教師一人。児童も帰った教室に、ぽつんと帽子を机に置いて座っている女性が一人だった。
彼女はうつろな目で教室を眺めて、やれ帰ったら何をしなければならないか、やれ明日は何をしなければならないか、と、ぽかんとだらしなく口を開けて、物思いに耽っていた。
しばらくして―日が、山に隠れる頃に―彼女は立ち上がり、その空っぽの教室から出ようと、腰を上げた。
その時、外から何か音が聞こえてきた。
喇叭である。それも飛びきり明るい―まるで、スペインのグラナダを思い起こすかのような―音色を持った喇叭が、耳に入ってきた。
彼女は、その音につられるかの様に窓を見た。
すると、青髪で独特な服装の少女が、里に向かって、一人喇叭を鳴らしている。
この辺りでも有名な楽団の、花形を勤めている少女であった。
その目に笑顔はなく、何かを見つめるように―まるでこの世界以外を見つめるかのように―里をみながら、喇叭を吹いていた。
一心不乱と言う言葉がよく似合った。いや、実際一心不乱なのだろう。
少女の演奏を、彼女は一度聴きにいった事がある。その時の少女は、独特のほがらかな笑顔で対応してくれていた。
しかし、そこに立つ少女は違う。同じ少女なのに、笑顔もなく、ただ、脇目も振らずひたすら喇叭を吹く、全く違う少女がそこに立っていたのだ。
彼女は衝撃に包まれた。それと同時に先ほどまでの自分を恥じた。
彼女は、明日の事を、朧気に、―どうせ変わらないからどうしよう―と虚ろげに考えていた。
しかし、少女はどうだ。明日の事ではない。明日に繋げるために必死ではないか。人前で笑顔になるために、必死になっている少女がいるではないか。
すると、人を教える身として、何故だか非常に恥ずかしくなった。
こういう事を教えねばならないのに、私は教えきれているのか、と。
その内、少女は練習を終えた。
と、同じくして彼女から大粒の涙がこぼれていた。
この涙の意味は、具体的には分からない。ただ、何か意味があるのだろう。
彼女は、涙を拭うと、机からすっく、と立ち上がり、これを学童に伝えるべく、明日の事をしっかり考えながら、足を家路につかせた。
<了>
久々だから大分ダメダメに
新しいテーマ「歌」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板