したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

239名前が無い程度の能力:2011/11/24(木) 02:11:55 ID:azqw0TI.0
【雪融け】
「隣、いいかしら」
 忽然と現れた気配に声をかけられ、ナズーリンは動揺を押し隠しながら視線を巡らせた。
いつの間にか自分の傍らに、人当たりの良い笑みを浮かべた清楚な雰囲気の少女がいる。
「好きにするといいさ、大体私の家じゃないんだし」
 突き放したような物言いにも彼女は気分を害した様子はなく、では失礼、と愛想よく
腰を下ろした。周囲に気は配っていたはずだが、とナズーリンは心中いぶかしむが、
すぐに馬鹿馬鹿しくなってやめた。彼女たちはどこからでも現れることができる。
ましてや、壁抜けの技能を伝承に残す彼女は特に。
「まだ会談は終わっていないだろう?」
 彼女、霍青娥とは視線を合わさず、ナズーリンは尋ねた。腰掛けた縁側から眺める
神社の境内は紅葉も終盤を迎え、木々は寒々しい姿を風に晒している。遠くに見える妖怪の山、
その頂きは既に色をなくしており、これから一月もかけてそれは裾野へ、そしてこの神社へも
広がってゆくのだろう。
 幻想郷に冬が訪れようとしている。
「冷えますね」
 同じことを考えていたのだろうか、同意を求めるでもなしに青娥は呟いた。よく通る、
心地よい声だ。きっと歌も上手かろうと、ナズーリンは思った。
「貴方のほうこそ、会談に出なくてもいいのかしら? ナズーリンさん」
 青娥が自分の名前を知っていることに、ナズーリンは別段驚かなかった。むしろ、彼女が
自分の思っているような人物だとするなら、当然知っているだろうと考えていた。その想像が
当たっているかどうかは、次に自分が発する言葉に青娥がどう反応するかによる。
「私は戦うのが苦手だからね」
 肩をすくめて、答える。くすり、と青娥が笑った。
「私も、あの方たちとまともに渡り合う自信はありませんわ。だから、事が始まる前に中座してきたの」
「なるほど、お互い辛いところだね」
 深くうなずく。それで通じた。
「この会談を提案したのは、貴方でしょう? ナズーリンさん」
「そうだよ。博麗の巫女に立会人になってもらうのもね。面倒そうにしていたが、幻想郷の平和のためと
言われれば彼女も断れないさ」
 奥の座敷では現在、命蓮寺の主要メンバーと神子一派による会談が行われていた。過去の経緯に
より険悪な関係にある両者を引き合わせ、とにもかくにも話し合わせる。それで対立による緊張が
緩和されれば何よりであった。
 とはいえそう単純な話ではない。
「交渉の場を設けるというのは私も考えていたわ。けれど、建設的な議論になるとは思えなくて躊躇していた」
「君がそう言うということは、やはり場の雰囲気はまずいかい」
「ええ。トップのお二人はさすがに冷静だけど、後ろに控えている子たちがね。まあ、口だけではなく
手が出るのは時間の問題かしら」
「そうなればさすがの聖も、みなを守るために手を出さざるを得ないか」
 君のところもそうだろう、と言外に含ませてナズーリンは息を吐いた。気配だけで、青娥が
うなずくのを感じ取る。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板