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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

184名前が無い程度の能力:2010/03/24(水) 23:05:56 ID:qv8ihHI.0
お題「珍味」

 夜。虫の音や、夜行性の動物たちの蠢く気配、鳴き声が美鈴の周りを飛び交っていた。
 いつもの通りだったが、やはり暇だった。花や動物相手に話しかけるほどメルヘンな性格ではないし、そこらへんの妖怪は皆この館を恐れて近づかない。
 そんな時は大抵睡眠をとることで時間の束縛から逃れるのが常だったが、今日はどうにも眠れそうにない。こういう時は無駄に頭が働いてしまう。
 例えば、ここに来たのはいつのころからだったかとか。
 もう思い出せないし、常日頃思い出そうとも思わない。
「けど、時々は気になるのよねぇ」
 ぽつりと、誰に言うでもなく美鈴はつぶやく。
 ここは幻想卿にある紅魔の館。平和で、たまに物騒で、とても不可思議な自分の居場所。
 いつ、どうして、何故ここにいるのか。私はいかにしてこの紅魔館の門番になったのか。
 記憶を失ったのかと問われれば、どうなのだろうとしか言えない。もやもやと、曖昧すぎてそんな質問にもはっきりと答えられない。
 けれど自然と不安はない。居心地がいいからかもしれないし、単にそんな思考すら許されないほどの何かをされているのか。
 自分の記憶を辿るとき、それはブツリと途切れるわけではなく、蜃気楼のように静かに消えていく。
 考えるだけ無駄、とまでは思わないが、それよりもなによりも、今はこの紅魔館の門番であり幻想卿の住人であることが自分にとって最も重要なことなのだ。

「めいりーーん」
 門の内から、呼ばれた声に振り返る。
「そろそろ休憩時間ですよ」
 言って、紅魔館のメイド長はお茶の準備をするためか、そそくさと館の中へ戻っていってしまった。
「はーい」
 ワンテンポ遅れての返事。すぐに立ち上がり、門をくぐる。
 この紅魔館の主は所謂吸血鬼、ドラキュラ、バンパイアであり、夜行性だ。ゆえにこんな時間にティータイムがある。
 こんな、といっても慣れてしまった美鈴にとっては最早普通ではあるのだが、時折昔の感覚を思い出し、そういえばと思わないこともない。


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