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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

225鵺+寺子屋 2/2:2011/11/21(月) 00:32:39 ID:TddhQ57o0
「また、自分が誰だか分からなくなった……かな?」
中りだろうか。星と月の優しい光に照らされた先生の顔にやや当惑した表情が浮かんだ。迷いを湛えるその瞳の色は、鵺のものと同じ深紅。半妖だ。満月の夜が近くなると、月の妖力に感応して段々と体が変化していくタイプの。それが故の、戸惑いだろうか。鵺から見ると少しばかり大人びてはいるものの、それでもその顔は迷い恥じらう少女。
「……あぁ、そうだな。あるときは人間、またあるときは妖怪。はたして私は何者なのか……」
月明かりと窓の格子に裂かれた半妖の少女は目を細め、物憂げにつぶやく。小さなため息が思わず口をついて出た。
「何者かである必要はないんじゃない?」
そんな彼女を見、鵺はそう答えた。答えになっていないが、しかし多少なれど気が休まったように感じた。
「おまえは気楽でいいな、鵺」
先生の表情が少し緩んだ。
「正体不明だからね」
鵺が歯を見せて笑い返す。月光に彩られた蒼い幻燈のような彩色でありながら温かみを感じる優しい笑顔。その笑顔に、先生は心の底がぽっと暖かくなるのを感じた。
「そう、正体なんてどうでもいいんだよ。先生は先生」
鵺が先生の白い手を取る。先生はびくっと肩をすくめ、手を引きそうになった。けれど、鵺の目を見ると、心の中に生まれた小さな気恥ずかしさなんてどこかにいってしまった。
「私は……私か。例え妖怪の思考回路に自我を侵されているときでさえ、あるいは人間の思考回路に身を置いているときも。どちらが本当の私か、ではなく全部ひっくるめてという事か」
先生は鵺の目をじっと見据え、まとまらない考えをぽつりぽつりと言葉に紡ぐ。蒼い世界に放たれたつぎはぎの言葉は、目の前の妖怪が全て、拾ってくれた。
「そう、全部。私は、先生が何だろうと先生のことが好きだよ」
夜の闇は、月の明りは。昼間の間ではとても言えないような言葉も抱擁してくれる。故にだろうか、こんな言葉が飛び出したのは。けれども、鵺の言葉はしっかしと先生に受け止められた。
「ありがとう、お前のお陰で少し自信が持てたよ。鵺」
先生は、儚げな笑みを浮かべ、そして鵺の頬に手を触れた。
「どういたしまして。また迷ったら、何度でも自信をつけてあげるよ。慧音先生」
鵺はその手を自分の手で愛おしそうに包み込み、そしてゆっくりと机の上に戻した。
「それじゃ、私は命蓮寺に帰るね」
鵺はコツコツと窓に歩み寄り、そして翼を広げた。一瞬彼女がこちらを振り返ったみたいだが、蒼い光に縁取られたその影では、はっきりとは分からなかった。幻想の夜に、少女は飛び立つ。
 そんな彼女を見送りつつ、慧音は胸の底に何とも言えない感情の芽生えを感じていた。
 この気持ち、正体不明、測定不能。

2レスに渡ってしまった……。お目汚し失礼しました


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