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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
248
:
名前が無い程度の能力
:2011/12/04(日) 06:34:30 ID:lyCbitqU0
>>226
>>234
萃×マミ『種』『イワナ』『餅』
神霊の騒ぎが収まり、春の陽気に桜が舞う曇天の午後。
幻想郷の東端に位置する博麗神社の境内で、鬼と狸が酒を酌み交わしていた。
鬼の名前は伊吹萃香。かつて酒吞童子として京の都を牛耳った大鬼である。
狸の名前は二つ岩マミゾウ。佐渡島からやってきた辣腕の化け狸である。
鬼の生まれは燕市にある国上寺、狸の根城は佐渡市。どちらも越後の出身だ。
同郷の者同士、ウマが合わない訳がない。マミゾウの手土産の『柿の種』を肴に、小さな酒宴が催された。
『柿の種』のカリッとした歯ごたえと米菓特有の香ばしさ、そして醤油の風味が酒を進ませる。
ピーナッツなど無粋なものは入っておらず、あくまで『柿の種』一本で勝負する潔さが心憎い。
すっかり意気投合した2人は故郷の銘酒『長者盛』を熱燗で吞み交わしている。
七輪で火を熾し、湯を沸かした鍋に銚子を投入する古風な熱燗からは、酒精の馥郁な香りが立ち昇る。
「おおっ、そうじゃ。今日は萃香殿にとっておきの酒を馳走しようぞ」
「ほぅ、そりゃ楽しみだね。一体どんな酒だい?」
思い出したように傍らの籠を漁るマミゾウに、萃香は身を乗り出して籠の中身を覗き込む。
「ほれ、これじゃよ」
そう言って自慢げにマミゾウが取りだしたのは、旬には聊か早いが身の引き締まったイワナだった。
命蓮寺の台所で捌いてきたのだろう、新鮮なイワナは既に内臓を取り除かれ串刺しにされている。
「おぉ! と言う事はマミゾウ、もしかして……」
じゅるりと垂涎の表情を浮かべ、円らな瞳をキラキラ輝かせている。
その萃香の表情に満足そうな笑顔で頷きながら、マミゾウはイワナを七輪の網に乗せた。
「左様、イワナの骨酒じゃよ。さて、魚が焼ける間に餅でも焼こうかのう……」
2人の周りには、七輪が3台も動員されている。どれも熱燗をつくる鍋が乗せられていた。
マミゾウは鍋を下ろし、代わりに網を乗せて餅を焼き始めた。
もち米でも最高級の『こがねもち米』をした新潟自慢の杵搗きの切り餅だ。
それが七輪で熱せられた炭火で、こんがりと黄金色に焦げ目が付きふっくら膨らんでいく。
数分後、香ばしく焼き上がった餅をマミゾウは素手で掴んで皿に移した。
手早く餅に醤油を浴びせ、予め七輪で炙って短冊状に裂いておいた佐渡産の海苔を巻きつける。
「ほれ、磯部巻の出来上がりじゃ。故郷の懐かしさを存分に味わうのじゃぞ」
もち米の香ばしさと海苔の風味、そして程よい塩梅の醤油が一体となって萃香の口全体に広がる。
「うひゃあぁ、こりゃ美味い! 霊夢もこの餅で年を越せるんだったら幸せ者だよ」
はふはふと熱い餅を口の中で転がしながら、萃香は感嘆の声を上げた。
そんな萃香の横顔を見ながら、優しい笑みでマミゾウは餅にきな粉を塗して食している。
「ふむっ、そろそろイワナも焼けた頃かのう」
チラッと目配せをしたマミゾウは、串に刺さったイワナを七輪から降ろした。
やや焦げ目のついたイワナを、用意していた湯呑に投入し、どぼどぼと銚子から熱燗を注ぐ。
すると、焼けたイワナの身から旨味エキスが浸み出し、酒はじわじわと黄金色に変わっていった。
「さぁ、仕切り直しの乾杯といこうではないか萃香殿」
「あぁ、同郷の妖怪に出逢えたんだ。懐かしい味を思い出させてくれたマミゾウには感謝が尽きないよ」
焼いたイワナが丸々一匹入ったダイナミック骨酒。その湯呑を軽くかち合わせ、2人は豪快に骨酒を呷った。
日本酒の甘味とイワナの旨味、それを引き立てる脇役はイワナに振った岩塩だ。
それらが丁度良い具合に融和して、舌から迸る味覚や鼻腔を突き抜ける薫りが旬な酒の愉しみ方を教えてくれる。
「ぷはぁー、美味い! そして懐かしい!!」
目尻に一粒の涙を滲ませ、萃香は餅と柿の種を肴に骨酒を存分に味わった。
湯呑から取り出したイワナに齧り付けば、出涸らしとは思えない魚肉の濃厚な旨味が弾ける。
桜が舞い散る。新潟ではまだ残雪のある景色を思い起こしながら、マミゾウはそっと湯呑を口に運んだ。
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