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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

213名前が無い程度の能力:2011/11/06(日) 18:33:21 ID:hAj0piaM0
久々にSSを投下 >>205の『業者』


それは、そろそろ冬の訪れを感じさせる霜月の事だった。
倉庫から引っ張り出してきたストーブを試運転させていた香霖堂に、勢いよく白黒の魔法使い…霧雨 魔理沙が飛び込んできた。

―――カランカラン!

「香霖、香霖! 大変な事になったぜ!」
「…何だい魔理沙、朝から騒々しいな…」
手にこびり付いた黒ずんだ石油の残滓をボロ布で拭いながら、香霖堂の店主…森近 霖之助が辟易した表情で少女の方を振り向く。
息を切らせながら駆け込んできた魔理沙は、何故か背中に大きな風呂敷包みを背負っていた。

「私、このままじゃ年を越せなくなるんだぜ!」
「……はぁ、なるほど。それで夜逃げの準備ってわけかい?」
「違う! いいから私の話を聞いてくれ!!」
その後、魔理沙が矢継ぎ早に説明した事柄を整理すると、彼女の営む『霧雨魔法店』の売り上げが芳しくないらしい。あんな森の奥に建っていれば自明の理であろう。
生活も家庭菜園や魔法の共同研究で何とか凌いできたが、いよいよ首がまわらなくなったそうだ。

「……それで、僕に如何しろと? 先に言っておくが、ツケを踏み倒そうなんて思っちゃいけないよ」
「ふふっ、いくら生活が苦しくてもそんな卑屈になったりしないぜ。ただ、店の陳列棚を間借りしたいだけさ」
そう言って魔理沙は店の片隅にひっそりと佇む陳列棚を指差した。以前は小物が置いてあった場所は、霖之助が整理をした為に空っぽになっている。

「つまり、君は此処の立地条件を活かしてテナント事業を試みようってわけか……」
「流石、同業者だけあって話が早いぜ。あっ、ちなみにテナント料はツケで頼む」
魔理沙は霖之助が返事をするのを待たず、いそいそと背中に背負った風呂敷包みから妖しげな商品を取り出して棚に並べ始めた。
その商品を霖之助は自身の能力を使ってしげしげと眺めている。
キノコから抽出した魔法薬の小瓶、簡単な呪術を施した人形、爆竹程度の威力しかない発火魔法の護符etc.…

「ふむ、確かに面白い品物だね……わかった、暫くは様子見でテナント料は要らないよ」
「えっ、本当か香霖!? やったぁ! 香霖だいすきだぜ!!」
パッと笑顔が弾け、魔理沙は嬉々とした表情で霖之助に抱きついてきた。無邪気に抱きつく少女の華奢な身体を、霖之助はやれやれと言った感じで抱きとめる。

(この店もあまり繁盛しているとは言い難いが、まあウチにとっても商品の新分野を開拓したかったし丁度良いか……)
霖之助は脳内で冷静に算盤を弾いていた。そんな思考を、上目遣いで見つめる魔理沙の仔猫のような声が遮る。
こころなしか赤らんだ表情で、もじもじと指で霖之助の胸板を突っついている。
霖之助はくすぐったい感覚を堪えながら、不思議そうな表情で魔理沙の言葉に耳を傾ける。

「んっ、なんだい魔理沙?」
「な、なぁ香霖、もし…その、私の商品が売れなかったら…その時は、わ、私を…あの……よ、嫁に………あぁ、何でもない!」
ぶんぶんと頭を振り、とんがり帽子を目深に被りながら魔理沙は駆け足で店を走り去っていた。
霖之助はその様子をぽかんと見送っていたが、やがて苦笑しながらひとつ大きなため息をついた。

「やれやれ、こりゃ大きなツケを支払われそうだ……」
換気の為に窓を開けながら、霖之助は清々しい気分で初冬の空を見上げた。越冬の為に日本を訪れた気の早いマガモが一羽、幻想郷の空を渡っていた。


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