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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
265
:
名前が無い程度の能力
:2012/11/12(月) 00:33:54 ID:tKvm3.160
『衣替え』
「衣替えです、総領娘様」
「……はぁ?」
唐突に言われ、私室のベッドで寝転がりながら雑誌を読んでいた天人の比那名居天子は怪訝な表情を浮かべた。
視線の先には、飄然とした涼しげな表情で微笑む竜宮の使い・永江衣玖が豪奢な綾羅の羽衣を靡かせ正座している。
「……一体全体、何を言い出すのよ衣玖」
「ですから、世間的には衣替えのシーズンなのです」
眉ひとつ動かさず、衣玖は再び同じような主張を繰り返した。天子は気だるそうに起き上がり、眉を顰めて衣玖を見返す。
腰まで伸びたコバルトブルーの髪を掻き上げ、天子は首を傾げながら反論した。
「衣替えって……気候が穏やかな天界では必要ない行為じゃない」
天子の言う通り、夏はやや暖かく冬はやや涼しくなる程度の天界では衣替えなど必要ない。天子は半袖で一年中暮らしている。
「ええ、確かに天界で衣替えの必要はありません。あの異変以来、総領娘様が地上に赴く事も滅多になくなりましたし……」
「だったら別にいいじゃない。片付ける手間がないから楽だs」
「そう、それです!」
天子の言葉を遮るようにして衣玖はビシッと指を突き立て牽制した。その威勢に天子が眼を丸くして少し仰け反る。
「総領娘様はそう言って部屋の片付けをまったくしていないではないですか!? 御覧なさい、この有様を!」
衣玖はそう叫びながら両腕を広げて空間、即ち天子の私室を見渡すよう彼女に促した。
しかし俯瞰するまでもなく、天子の私室は文字通り足の踏み場もないほど散らかっている。
床に四散する下着や衣服、雑然と山積みにされた古雑誌、使いかけの化粧品や果てには菓子の残骸まで無秩序に打ち捨てられていた。
「あぁ〜、衣玖は気ままな独身ライフをフィーバーしているくせにそういう所はきっちりしてるもんね……」
「それとこれとは別問題。兎に角、少しは片付けないと心身ともに衛生的な環境ではありません。ほら……」
衣玖は説教じみたセリフを言いながら衣類の海へ手をまさぐり、するするっとシンプルなデザインの空色のブラジャーを釣り上げた。
「この見栄と虚勢を張って購入したBカップのブラなんか、涙が止まらなくなる……」
「うっ、うるさいわね! ちょっとした見込み違いだもん! これから大きくなるんだもん!!」
顔を真っ赤にしながら天子は衣玖からブラジャーを引っ手繰った。ちなみに天子の適正なサイズはA級の絶壁である。
そんなわけで天子は衣玖に促され、不承不承で久しぶりに部屋の片付けに着手することになった。
――――― 少女清掃中 ―――――
「……ねぇ、衣玖」
「なんでしょう、総領娘様?」
「私たち、部屋の片付けをしていたんだよね?」
「ええ、今も片付けている最中ではありませんか。」
天子の問いに、衣玖はきょとんとした不思議そうな表情で答える。その手にはヘアブラシが握られていた。
「だったら、なんで私がツインテールになってメイド服なんて着てるわけ?!」
フガーッと猫が威嚇するような甲高い声で天子は抗議した。だが衣玖は馬耳東風、いそいそと次の衣裳を見繕っている。
部屋の片付けはいつの間にか、衣玖が発掘した衣類(天子の衝動買いによる)のコーディネートに趣旨が変わっていた。
今、天子が身に纏っているメイド服も彼女自身が特に理由なく買い漁った衣服の一群に過ぎない。
「あぁ、空気を読んで、お題に沿って『衣玖が天子を着せ替えで遊ぶ話』略して『衣替え』ってことでオチを……」
「そんなオチでまとめようとしないでよ!」
「えぇ〜、でもほらこれなんかも可愛らしくて総領娘様にぴったりだと思いますよ。今度は髪を三つ編みにして」
「ふぇ……そ、そう? それじゃ仕方ないわね。私が可愛いのは当然だけど、衣玖がどうしてもって言うなら着てあげるわ」
衣玖の巧妙な褒め殺しでホイホイと着替える天子。結局、部屋の片付けはさっぱり進捗しなかったが、今日も天界は平和であった。
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