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イベント優先スレ
494
:
叡肖「」 ミナクチ『』 黒蔵
:2011/08/17(水) 00:39:20 ID:1gBuqmPQ
>>486
>>487
「姐さん大丈夫?」
(いやー、これは眼福♪)
和戌姉と同じくずぶ濡れになりながらも、鯨を包んだ叡肖は楽しんでいる。
「四十萬陀、大丈夫?」
安全圏まで四十萬陀を抱きかかえて走った黒蔵が、そっと降ろす。
今更密着していたことに気づいたのか、顔が真っ赤になった。
495
:
送り妖怪勢/天ッ堕
:2011/08/17(水) 00:46:20 ID:0rvvBuFg
>>491
「むっ」
機嫌悪そうにする三鳳の言い草に、五月がむかちんと来たようだ。
「……まあ、いいわ」
(どこか休憩できる場所はないかしら……)
双葉はさっさと飛葉の頭を占領してしまっている。
このまま飛び続けるのは、流石に辛い。
(むう〜〜っ、双葉の馬鹿!)
ゆったり休憩する双葉を睨むが、無口な送り雀は素知らぬ顔である。
>>492
夷磨璃の手を握り、すたすたと歩いていく。
着いた先は無人の焼きそば屋。
店主はいないのだろうか?
「……」
しかし、いないのをいいことに、天ッ堕は店の裏側に回って、商品の焼きそばに手を出そうとしていた。
止めなければ叱られるかもしれない!
496
:
露希
:2011/08/17(水) 00:48:04 ID:BQ990e1A
>>493
(氷亜さんに抱かれている…氷亜さんに抱かれている…
ボクをクジラから庇ってくれた……出血しながらも…
こんなボクを氷亜さんは……)
「ごめんなさい、しないよね!うん、氷亜さんはしないよっ!!
氷亜さんは絶対に浮気しないし、絶対にボクのだっ!!!
もう離さないよっ///////」
氷亜が仕事中にもかかわらず、手を後ろへ回し、ぎゅっと…。
これでは出血が止まらずに死んでしまうのでは…?
それに、簡単には露希も離れる気は無い。
497
:
叡肖「」 鹿南『』
:2011/08/17(水) 00:49:40 ID:1gBuqmPQ
>>492
『カキ氷ね。行きましょ』
空っぽのカキ氷屋台へ向かう危険なカップル。
>>486
>>493
>>496
他方、そのカキ氷屋台の店主を、釣り屋台の店主はニヤニヤと見ていた。
「二人ともお熱いねぇ」
あそこまで派手に鼻血を吹きつつカッコつける男は、叡肖でも見たことが無い。
「ところで瞳ちゃん、君、この鯨どうする?」
じたばたと暴れる鯨はまだ蛸の衣に包まれている。
持って帰るにしても、到底消費しきれる大きさではない。
498
:
夷磨璃&零
:2011/08/17(水) 00:54:24 ID:BQ990e1A
>>495
「あれ?送り雀…ですか?どうしたの?」
たまたま、そこを通りかかった少年。
疲れた表情を見て心配しているようだ。
「ここ、澪殿のお店でござるよ。
澪殿〜。…いないでござるね。」
ふと天ッ堕を見たら焼きそばに手を出してた!
「天ッ堕お兄ちゃん、それは駄目でござるよ。
これなら暖かいし、美味しいでござるよ。」
え、なんか違う気がするけど…。
無料だし、問題ない!
499
:
送り妖怪勢/四十萬陀
:2011/08/17(水) 00:54:58 ID:0rvvBuFg
>>494
「いやぁ……あんまり大丈夫じゃないな……」
テンションだだ下がりの和戌姉は、溜め息をついてびちゃびちゃの浴衣を脱ぎ捨てた。
サラシと布のハーフパンツのみの、ラフな格好になる。
あのまま濡れた浴衣を着ているより、幾分かマシだと考えた結果だ。
「お兄さんこそ大丈夫かい?」
同じくずぶ濡れになった叡肖に尋ねる。
「なんだったら乾かすよ?」と平然と言って、その口端から少しばかりの炎を覗かせた。
「わっ、と」
(ほっ……)
抱き留められ、四十萬陀は転ぶことなく無事に済んだ。
後ろで翠狼が安堵の息をつく。
「あ、ありがとじゃん、黒蔵君」
照れながらもお礼を言って、袖を握る。
(おアツいぜよー。しかし初めて会ったが、あれが七生姐さんの想い人ぜよ?
つまり……犬御兄貴の恋敵!!)
ぎらん、と翠狼の瞳が光る。
この狼、昔東雲に喧嘩を売って返り討ちにあってから、東雲を兄貴と慕っているのである。
敵意をもった視線が、黒蔵に向けられる……。
500
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 00:58:10 ID:bJBnsqT6
>>497
彼らが向かった先で、店番をしていたのは知らない顔であった。
ねじり鉢巻とはっぴ姿、少女か少年か分からない中性的なその子は、
どうやらこの祭りのお囃子を担当している者の様だ。
「・・・もう、氷亜さんめ。
せっかく僕が演奏を楽しんでるときに変われだなんて・・・ひどい人です」
ぶつくさと、ぎりぎり身長が届くためカウンターに肘をついて愚痴る華音。
しかし二人のお客に気づいたのか、ぱあっと顔が笑顔になった。
「いらっしゃいませです!!店長は完全な私用でいませんが、
この音楽の華音がお相手します!!」
夜店でよくある、どこかのヒーローのお面をつけて、
陽気な接客を始める。
>>497
彼の声に気づいて氷亜は、ゆっくりと顔をそちらに向ける。
そしてにやっと笑い返した。鼻血は今も放流中であるのにも関わらず。
「いいでしょ?こんなに可愛い子といれて。
でも熱くはないな。だって今血が抜けて涼しくなってるし」
501
:
三凰&飛葉&夢無
:2011/08/17(水) 01:00:46 ID:SmXQZqJk
>>495
夢無「あの、良ければ私のところへ…」
三凰「放っておけ。あんな奴。」
まだ、機嫌が悪そうな三凰。
飛葉「まあまあ、三凰坊ちゃま。」
502
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 01:03:21 ID:bJBnsqT6
>>496
「な、なるほど・・・
(これがサマージャンボか・・・)」
なにやら理解できない納得をして、彼は噴水のように鼻血を噴き出す。
くらっとそれによる急性貧血で倒れそうになるが、
なんとか体勢を整えて、露希からそっと体を離した。
「ふ・・・ふふ。
分かってくれてるのならいいよ・・・。
そうだ、僕このお祭りでお店出してるんだけど、
どう?一緒に来ないかい?」
血の気が引ききって、白い肌がむしろ青くなりながら、
彼はカキ氷屋を指差した。
503
:
稀璃華
:2011/08/17(水) 01:06:03 ID:BQ990e1A
>>497
,500
「えぇっと…鹿南さん、何かお勧めはあるか?
それと…一緒に喰わないか?」
華音から見れば、普通のカップル…でもないが、まだ行ける範囲だと思うかもしれぬ。
だが…いけないのだ!!許されないよ、危険カップル。
男同士で一緒にかき氷を食べるなど聞いたことが無い。
504
:
送り妖怪勢/天ッ堕
:2011/08/17(水) 01:11:38 ID:0rvvBuFg
>>498
>>501
「翼休めの場所がなくて困ってるのよ……相棒はあんなだし……」
零に尋ねられ、にくったらしげに飛葉の上の双葉を睨む。
だがそこへ、夢無が助け舟を出してくれた。
「本当?」と言い返そうとするが、三鳳がそれをせき止める。
「むっ! 何よあんた! つつくわよ!」
三鳳に突っかかるように言う。
と、そこでふと思い出したように零を見た。
「……ってそういえば、あなた誰?」
>>498
「?」
夷磨璃に差し出された焼きそばを受け取る。
確かにこちらの方が、暖かい。
天ッ堕は素直に焼きそばの蓋を開けた。
「……」
ここまでは良いが、実は未体験の食べ物である。
しばらく迷った天ッ堕は、結局、焼きそばに手を突っ込もうとした。
505
:
瞳
:2011/08/17(水) 01:11:49 ID:SmXQZqJk
>>497
「うーん、持って帰るわけにはいかないしな…」
しばらく考えた後、結論をだす。
「海に帰してやれないか?」
506
:
露希
:2011/08/17(水) 01:13:17 ID:BQ990e1A
>>502
「ちょ、ちょっと待ってよ?顔色悪いし、大丈夫?
勿論、行くよ!そこまで支えて行くから、肩貸して。」
鼻血の原因が自分のせいだとは思っていないようで、
再び体が接触してしまう。
そして、現在、かき氷屋で何が起きているのか知る筈もない露希達。
507
:
ミナクチ『』 黒蔵→巴津火 叡肖
:2011/08/17(水) 01:17:32 ID:1gBuqmPQ
>>499
叡肖「いや、元々俺は水妖だし、しばらく水も滴る良い男、で居ることにするよ。
それに炎が扱えるなら、後で祭りの〆に打ち上げ花火でも派手に頼むぜ?」
衣蛸は和戌姉に軽く片目を瞑った。
良い感じだし後でデートでも持ちかけよう、という腹積もりだったのだが、
その思惑を打ち壊すものが居た。
『叡肖さん!新しい桶は無いですか?!』
カップルだらけのこの場で、一人切羽詰っているのは小さな水神である。
本体から分かれたこの小さな欠片の身では、溢れた海を制御しきれないで居た。
じわじわと溢れた海水が広がりつつあるその様子に、黒蔵の表情が変わる。ここは山の「上」なのだ。
「四十萬陀ごめん。俺、もう行かなくちゃ」
織理陽狐に貰ったあの守り袋から翡翠の輪を取り出す。
(これは、巴津火の大事なもの)
たった一つの窮奇の形見の品、それを黒蔵は海水へ投げた。
「貴様ぁぁぁっ!!!」
ほんの一瞬で、黒蔵の内側の巴津火が怒りで飛び出した。
同じ身体を共有している最上級の蛇神は、翡翠の輪を取り戻そうと海水へ飛び込んだ。
>>505
叡肖 「OK、ならばそうしようか。ちょっと勿体無いけどね」
縮み行く水面に鯨を放り込んだのは、ぎりぎりのタイミングだった。
鯨が水に落ちたあと、小さくなった水面に顔を出した巴津火は、息も荒く翡翠の輪を握り締めていた。
「ミナクチも何をしているっ!!さっさとこんなもの片付けてしまえ!」
その叱責はミナクチにも飛んだ。その怒りは海を押し返し、水面はどんどん小さくなって消えた。
後にはずぶ濡れの和戌姉、叡肖、巴津火が残るばかりである。
叡肖「釣り屋台は店仕舞いだね。そろそろ祭りも最後の盛り上がりかな」
508
:
三凰&夢無
:2011/08/17(水) 01:19:53 ID:SmXQZqJk
>>504
三凰「フン…やれるものなら、やってみろ。」
夢無「三凰様!喧嘩はよくないですよ!」
三凰の態度に困っている夢無。宝玉院家では、よくある。
509
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 01:20:20 ID:bJBnsqT6
>>506
露希が体を寄せたことで、
自分の為に気を使わせてしまったことに気づいた氷亜は恥じて、
すっと無理をして一人で立ってみせる。足元はふらつくが何とかいけるようだ。
「だ、だいじょうぶさ。
露希、君はどんな味が好きかな?
なんでもあるよ。だってここは」
ぶしゃああああ。
時間差的に彼の粘膜は再び決壊し、鼻血が強めに噴出した。
赤い血のせいで、いみじくもイチゴシロップのかかったカキ氷のようだ。
510
:
夷磨璃&零
:2011/08/17(水) 01:21:53 ID:BQ990e1A
>>504
「なるほど、ね。それでこんなことを…。私なら構わないよ。」
周りには三凰もいたが、苦い思い出しかないので関わろうとはしなかった。
「私?私は零、七生さんの知り合い、ってところかな?」
ニコニコと笑って答えた。
夢無に乗るか、零に乗るかは自由だ。
割り箸を取って、割ろうとした時だった。
「ござるっ!?ち、違うでござるよ。
これをこうパキンって折ってね、それで…」
正直、びっくりしたのだ。
それでも夷磨璃は優しく割りばしの使い方を教えてあげる。
511
:
瞳
:2011/08/17(水) 01:23:38 ID:SmXQZqJk
>>507
「鯨を捕るのは、なんだか危ない気がするしな。」
鯨を捕るのはまずいかもしれない。捕鯨的な意味で
「なんだかすごいことになっているが、大丈夫か?」
512
:
鹿南
:2011/08/17(水) 01:23:38 ID:1gBuqmPQ
>>503
「この店のお勧めはアタシに聞くよりこの子に聞かなくちゃ」
華音を差して鹿南はそう答えた。
「それにアタシを誘ったんだから、何にするか決めるのも、
一番美味しくあるべきなのもアンタでしょ」
ニヤリと笑った隻眼の男は、稀璃華を喰う気ならあるらしい。
513
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 01:28:38 ID:bJBnsqT6
>>503
、
>>512
「華音のお勧めはイチゴとメロン、そしてレモンのトリプル練乳かけですぜ!!
見た目も綺麗さもさることながら、四つの味というお得感!!」
びしっ、と三本指を立てて熱弁をする華音。
その様子から見ると、目の前のカポーの異様さには気づいていないようだ。
「でもジンとかテキーラもあるくらいです!!
お好きなようにどぞですぜ!!」
ぐいっとカウンターの下から取り出したのは、
確かに度数の高いような洋酒のビンであった。この様子なら焼酎などもあるのだろう。
514
:
送り妖怪勢/四十萬陀
:2011/08/17(水) 01:34:26 ID:0rvvBuFg
>>507
「あぁ、あの狐さんも似たようなこと言ってたな。」
叡肖のウインクを軽くスルーし、頭をがしがしと掻く。
「それより……アレはいいのか?」
ミナクチが焦っている様子を横目に、和戌姉が言う。
明らかに切羽詰まった状態のミナクチに、周囲もざわついてきた。
黒蔵に目を向けていた翠狼も、様子がおかしいことに気付き、そちらに視線を向けている。
「黒蔵君?」
表情が変わった黒蔵を見て、四十萬陀が不安そうに呟く。
そして、翡翠の輪を海水に投げ入れた途端、黒蔵は黒蔵ではなくなった。
「――っ!!」
海水へ飛び込んだ巴津火を追い掛け、鯨が放り込まれた後、慌てて水際から水面を見下ろす。
心臓の動きが早い。その表情は、四十萬陀自身思ってもいないほど緊迫していた。
だから、水面から巴津火が顔を出した瞬間、吐き出した安堵の溜め息は深いものだった。
「だ、大丈夫じゃん? ……巴津火君」
よかった、と動いた唇は、少し乾いていた。
「はー……お騒がせだな」
「全くぜよ」
和戌姉と翠狼が、うんうんと頷く。
515
:
露希&稀璃華
:2011/08/17(水) 01:35:03 ID:BQ990e1A
>>509
「えええっ!?氷亜さんっ?!
誰か、誰か助けてください!!!」
と言っても助けてくれそうにない為、結局は自分がなんとかするのである。
そして、そんなフラフラな氷亜に、お決まりのパターンで止めを刺そうとした。
「ボクが好きな味……それはね…。<氷亜さん>と言うプレーンな味だよ♪」
>>512
「私だったら、苺&メロン&練乳、かな。それにしても鹿南さん…
いえ、やっぱりなんでもないです。(駄目だ、素敵過ぎる!!いっそ食べられたい…!)」
過激な妄想が広がって、もう手の着けようがない。
516
:
送り妖怪勢/天ッ堕
:2011/08/17(水) 01:43:41 ID:0rvvBuFg
>>508
>>510
「きーっ! もう怒った! ほんとに突いてやるんだからっ!」
ついに腹を立てた五月が、三鳳の頭に突撃する。
「……五月、やめろよ」
「!! 何よ双葉まで! 知らない!」
だが、双葉にそれを止められてしまった。
納得いかない様子の五月は、ピーピー鳴きながら文句を言っている。
双葉はいつものことのように、再び飛葉の頭で丸くなった。
(向こうには気に喰わない奴もいるし、こっちにしよっ)
「頭、借りるわよ」
そう言うなり、五月は零の頭に飛び乗った。
ふう、と息をつく。これでやっと落ち着ける。
「七生の知り合いなの? なあんだ、早く言いなさいよ」
>>510
「? ?」
もっぱらスプーンかフォークな天ッ堕は、箸の使い方を知らないようだった。
夷磨璃に教えられながら、不器用に箸を握る。
「……」
何度かやってみるが、上手く取れない。
段々と不機嫌になってくるのが目に見えるようだ。
しばらくして箸を使うのを諦めたのか、天ッ堕はちょっと頭を捻った結果、割り箸を握り焼きそばを掻き込み始めた。
517
:
巴津火「」 ミナクチ『』 叡肖
:2011/08/17(水) 01:47:29 ID:1gBuqmPQ
>>511
>>514
叡肖「鯨は海の幸だよ。誰が食べてもいいのさ」
鯨を放すなら貰って食べれば良かった気もするが、
今は陸上、食べれば身体も重くなる、と思い直した。
「面、無くしたな」
それでも、コレだけは無くさないですんだ。
偽物の翡翠の輪、しかし、巴津火にとっては本物の、かけがえの無い大事なものである。
泥をそっと袖で拭って、握り締めた。
(あいつめ…)
後で黒蔵には仕返しをしてやらねばならない。
『お詫び申し上げます。しかし助かりました』
客と巴津火にミナクチが頭を下げた。それを無視して巴津火は翠狼に向かう。
「お前、何ださっきの目つきは」
翠狼に睨まれていたのは黒蔵なのだが、紫濁の瞳は自分にも向けられたぞと意地悪く睨んでいる。
叡肖「まあまあ、何はともあれ落ち着いたんだろ?八つ当たりは良くない」
しかし叡肖は叡肖で、巴津火の成長に少々驚いてもいた。
まさか巴津火が進んで収拾をつけるとは思わなかったのだ。
(このまま行くとこの坊ちゃん、真っ当に神格に育つのかねぇ?)
叡肖「それに、そろそろ花火の時間だろ?灯篭流しもできるしさ?」
翠狼と巴津火にここでガルガルされても、叡肖も困るのだ。
袂神社を貸してくれている織理陽狐の手前、面倒は起せない。
518
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 01:48:36 ID:bJBnsqT6
>>515
地面に倒れこんだ。
それによって、後頭部とかが結構痛くなっているのに、
泣きっ面に蜂、というかなんというか、彼には更なる追撃が。
「我が妖生に・・・悔い無し・・・!!」
仰向けでこぶしを高く上げた氷亜は、
その言葉を最後にして、貧血のあまり気絶した。手がどさりと悲しい音を立てる。
「はい〜どいて〜、回収しますよ〜」
するとそこに、氷亜と同じ格好をした男性がやってきた。
どうやら彼は氷亜の後輩のようで、カキ氷店の店員だ。
彼は気絶したままの氷亜に肩を預けさせて、そのまま店に連れて行こうとする。
519
:
三凰&夢無
:2011/08/17(水) 01:56:09 ID:SmXQZqJk
>>516
三凰「フン…」
夢無「ごめんなさい。三凰様が…
でも、三凰様、これでも優しいところあるんですよ。」
今言うのは、説得力が無い。
520
:
鹿南「」 美雪『』
:2011/08/17(水) 01:56:47 ID:1gBuqmPQ
>>513
>>515
「じゃ、アタシこれもらうわ」
カキ氷のカップに削れてない氷をイン。そこに直接ジンを注ぐ。
「はいどうぞ」
あろうことか鹿南はそれをそのまま稀璃華に差し出した。
その頃、踊り疲れた妖怪達が三々五々、下の川原のほうへ降りてゆくのに気づいた美雪は、
枝角の面をつけてその後に続く。
(何があるんだろ?)
川原へ降りていくと、子供の妖怪達が笹の葉を千切って舟を作っていた。
『笹舟かぁ。ここの笹大きいのね』
それを真似て、美雪も笹舟を折る。
さあどうするんだろうと見ていたら、一人の妖怪の所へ皆が並んでいるではないか。
(並ぶの?)
とりあえず列があったら並んでみる性質の人間、美雪。
521
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 02:02:35 ID:bJBnsqT6
>>515
、
>>520
ぽかんと、稀璃華の妄想暴走を口をあけて途方にくれ眺める華音。
華音には今彼が、なにを妄想しているかとか、
そもそも妄想しているかどうかなどはわからない。
「・・・決めて欲しいです」
ぽそりと口から小さく声を漏らすと、鹿南のほうが注文をしようとしていた。
少し安心して、ため息はつかないもののビンをカウンターに置く。
だが、華音の期待に反して、まさかの鹿南のダイレクトドリンキング。
「・・・削れよ」
そんな不思議な二人をさらにあっけにとられて、見つめるだけだった
522
:
送り妖怪勢/四十萬陀 七生
:2011/08/17(水) 02:02:55 ID:0rvvBuFg
>>517
「あ? 何って……」
こちらへ向かってきた巴津火を見て、翠狼が顔を顰める。
(この少年、さっきと雰囲気違くないか?)
そう感じたのは勘違いではない。
だが事情を知らぬ翠狼は、自分の勘違いだろうとその違和感を隅に置いた。
隣で息を付く四十萬陀に話し掛ける。
「……兄貴の敵は俺の敵、ってことぜよ。な、七生姐さん」
「え、う、うん……?」
よく分かっていなさそうに、四十萬陀は小首を傾げた。
そして、こちらを睨む巴津火に視線をやる。
黒蔵の中にいるオロチに、複雑な心境を覚えながら。
「んじゃ、さくっと花火でも打ち上げようか。
狐さんは鳥居の上かな」
叡肖の言葉に、和戌姉がぐいっと伸びをした。
花火を上げるには織理陽狐の手助けが必要だ。
朱鳥居にいるであろう織理陽狐のところへと駆けていく。
523
:
零&夷磨璃&澪
:2011/08/17(水) 02:03:27 ID:BQ990e1A
>>516
「いや、だって言われなかったし…。
とりあえず落ち着いたのならよかったよ。」
零はさりげなく飛葉の横に立ち、辺りを見渡している。
「うぅむ…」
「あれ、夷磨璃君。その子は確か…」
ノワールで良く見るあの子だった。
天ッ堕の行動を見て、それを直ぐに察した駄目店長はフォークを何処からか取り出した。
「はい、どうぞ。使う?」
澪は優しく声をかけてフォークを差し出した。
524
:
零&夷磨璃&澪
:2011/08/17(水) 02:10:13 ID:BQ990e1A
>>518
「お願いです、氷亜さんを助けてください!!」
病院に運び込まれる、ドラマのようなワンシーンになった気がした。
「…大丈夫、なんかよく分かんないけどボクがいるからね。」
>>520
「ダイレクトだな、鹿南さん。では、頂きます。」
ぐびっとそれを飲み、華音にお代わりを頼む。
2杯飲んでも足らず、瓶ごとお願いする。
「鹿南さんもどうだ?一杯。」
525
:
送り妖怪勢/天ッ堕
:2011/08/17(水) 02:11:48 ID:0rvvBuFg
>>519
>>523
「へぇーふーん、信じられないけどねー」
零の頭の上でぶつくさ言いながら、相変わらず三鳳を睨んでいる。
零が飛葉の隣に立ったことで、自然と五月と双葉が並んだ。
ナイスよ! と内心ガッツポーズ。
「……どうでもいいけど、そろそろ花火の時間ね。
動くのも面倒だし、一緒に見てあげてもいいわよ?
べっ別にこのまま双葉と並んで花火見たいわけじゃないんだからね! 本当なんだからっ!」
テンプレである。
>>523
差し出されたフォークを見て、天ッ堕の顔が輝く。
こちらは使い慣れているらしく、フォークを使って焼きそばを食べ始めた。
「♪」
幸せそうに頬を緩める様子は、かわいらしいと形容できるものであった。
526
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 02:16:09 ID:bJBnsqT6
>>524
抱えて向かう途中に後輩は、
その声に聞き覚えがあり、くるっと顔だけをそちらへ向ける。
「あ、露希の姉さんじゃないっすか。ちゃーす。
多分、増血剤なり何なり打ったら直ぐおきると思うんで、
その間になんかカキ氷いかがっすか?御代は氷亜さんのおごりなんで」
顔見知りである顔だと気づいてニカッと笑う。
尊敬はしているようだが、呆れたような目線を氷亜へと向け、
またカキ氷店へと向かった。
527
:
瞳/三凰
:2011/08/17(水) 02:18:05 ID:SmXQZqJk
>>517
,
>>525
瞳「お、もうすぐ花火なんだな。」
期待している様子の瞳。
三凰「花火か…」
三凰もなんだかんだで期待しているのだろうか?
528
:
巴津火→黒蔵「」 ミナクチ『』
:2011/08/17(水) 02:19:01 ID:1gBuqmPQ
>>522
敵、と言われて巴津火の妖気がざわりと膨らむ。しかしその肩に手を乗せて叡肖が抑えた。
叡肖「お祭り、だよ?判るね?」チッチッチ
しぶしぶと巴津火が引き下がる。そして、四十萬陀の手を掴んだ。
「お前…あの時、助けてくれた」
叡肖が自分に書いた文字をこの少女が消してくれたのを、巴津火は覚えている。
「ありがとな、七生」
この夜雀がどこか微妙な態度なのを感じて、巴津火は本当はまだ何か言いたかったのだが、
少し躊躇いがちにそう言うだけに留めた。
(この女にも、ボクはいらない存在なのか)
窮奇に捨てられたと思いこみ、まだ傷が癒えていない巴津火は諦めたように消えた。
それはつまり、黒蔵が戻ってくる事でもあった。
「水、水は引いた?…あ」
自分の掌に翡翠の輪があることに気づき、黒蔵はそれをそっと守り袋へと戻す。
(巴津火、ごめん)
『そろそろ花火ですね。私たちも川原に行きましょうか』
水を通じて帰る死者を見送らねばならない。
529
:
夷磨璃&澪&露希
:2011/08/17(水) 02:29:03 ID:BQ990e1A
>>525
澪「夷磨璃君、そろそろ花火が始まるらしいから、
その黄色い子と一緒に見ると良いよ。」
夷磨璃と天ッ堕の頭を撫でると、走って何処かへと向かう。
>>527
澪「間に会った、かな。三凰。」
もっと仲良くなっておきたかった澪は、一緒に見ようと考えていたのだ。
>>526
露希「ああ、君は確か…。まぁ、大丈夫そうだね。
じゃあ、お言葉に甘えて…あ、友達のところ行かなきゃ!!
ごめん、また後で行くよ!」
鯨を釣った瞳を置いてきてしまったのだ。
だから、この隙に戻るつもりだ。
530
:
鹿南「」 美雪『』
:2011/08/17(水) 02:29:53 ID:1gBuqmPQ
>>524
>>526
「そうね、アタシは宇治金時にするわ。一つ頂戴」
華音にそう頼む鹿南。
稀璃華には飲ませるだけで自分は飲まないのか。
そしてやがて店主がカキ氷の屋台へと戻ってくる筈だ。
そして美雪はと言うと。
(あ、桔梗の花持ってきても良かったのかー)
妖怪が川原に立つ狐に笹舟や花を手渡し、そこに小さな狐火を点してもらうのを見ながら
美雪も自分の番を待っていた。
狐は、美雪の笹舟にも熱くない静かな火を点してくれた。
『ありがとう』
他の妖怪たちと一緒に美雪も川に近づき、彼らと同じようにその火の灯った笹舟を水に載せた。
(もしかしたら、あたしの産みの親も帰ってきていたのかな)
ゆらゆらと幾つもの火が流れてゆくのを、ちょっぴり複雑な気持ちで眺める。
でも、逢ったとしても何も話せることは無いのだ。
531
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 02:35:01 ID:bJBnsqT6
>>524
華音はぽかんと口をあけたまま、稀璃華に機械的にお替りを渡す。
首をかしげながらなのは、いまだに納得がいっていないのだろう。
「(削らせて・・・削らしてください・・・)」
しかし今度は、鹿南はちゃんと注文をしてくれた。
そこでようやく華音はぱあっと明るい笑顔になって、
はい、と大きな声で返事をした。
「あ、もうそろそろ灯篭と花火ですね。
華音としては華音の音楽でよりムーディーにしなくては!!
代金は後からやってくる方に渡してください」
そして宇治金時を鹿南に渡したかと思うと、
最後にそう言い残して全速力でひとごみの中に消えていった。
532
:
稀璃華
:2011/08/17(水) 02:35:02 ID:BQ990e1A
>>530
「あれぇ、鹿南さんは飲まないの//」
彼は結構な量を飲んだため、酔いつぶれてしまった。
結局、鹿南とのデートはパーだったのかもしれない。
それでも、彼と過ごしたほんのひと時は幸せな時間だった。
533
:
夜行集団
:2011/08/17(水) 02:38:31 ID:bJBnsqT6
>>529
「ああ、そうっすか。
わかりましたでは、また後で」
走っていく露希の背中へ挨拶をする。
そして彼女が見えなくなった後、後輩は先輩を店の隅に連れて行き、
顔をはたきもって増血剤を打つことにしたのであった。
534
:
鹿南
:2011/08/17(水) 02:42:48 ID:1gBuqmPQ
>>531
>>533
「あらおいしそう。演奏頑張ってねー」
宇治金時を受け取り華音を見送ると、鹿南は代金をちょっと多めに屋台に置く。
華音の頑張りへの応援のつもりだ。
>>532
「んー?もちろん飲むわよー?でも、アンタを美味しく頂いてからね」
余裕綽々で宇治金時を平らげ、酔いつぶれた稀璃華を抱え上げると鹿南は山へと消えていった。
…ひょっとしてテイクアウト?
眠くなって重くなった石の泣塔は、途中で一休みと降ろされるかもしれない。
稀璃華が逃げ出すならそこがチャンス、そうでなければお泊りコースとなるであろう。
【鹿南退場】
535
:
稀璃華
:2011/08/17(水) 02:47:05 ID:BQ990e1A
>>534
酔いつぶれては起きることも逃げることも出来ず。
あっけなくテイクアウトでお泊まりコース行きである。
ちなみに、寝言で鹿南さんをずっと言っているだろう。
稀璃華、テイクアウトー
536
:
送り妖怪勢/四十萬陀 七生
:2011/08/17(水) 02:50:58 ID:0rvvBuFg
>>528
「え?」
礼を言われたのが意外で、四十萬陀は思わず声を上げた。
しかし何か言う前に、巴津火は引っ込んでしまう。
「……」
ぽかん、としていた四十萬陀だったが、なぜだか嬉しくなり、
ふわりとくすぐったい微笑みを浮かべた。7
「じゃあ行こっか、黒蔵君」
水辺に向かうミナクチたちに着いていこうと、黒蔵に手を差し出す。
「なーんか蚊帳の外ぜよ……?
……まあいいか、俺はこのまま退散するぜよ」
537
:
送り妖怪勢/天ッ堕
:2011/08/17(水) 02:54:08 ID:0rvvBuFg
>>527
>>529
「♪」
打って変わって上機嫌になった五月が空を見上げる。
すると段々、提灯の灯が消え始めてきた。
盆祭りの最期を締めくくるように、美しく炎を瞬かせながら、一つ一つ消えていく。
>>529
一緒に見るといい、と言われたても天ッ堕には通じず、
焼きそばに夢中である。
「……」
ずるずるずる……。
花より団子、といったところだ。
538
:
夷磨璃
:2011/08/17(水) 03:00:15 ID:BQ990e1A
>>537
「天ッ堕お兄ちゃん、美味しいでござるか?」
焼きそばに夢中であっても、彼の幸せそうな顔を見れば嬉しくなる。
二人はしばらく、共に時間を過ごすだろう。
539
:
黒蔵
:2011/08/17(水) 03:00:48 ID:1gBuqmPQ
>>536
「うん」
なぜ四十萬陀があんな笑みを浮かべたのか、よく判らないままに黒蔵はその手をとって
一緒に水辺へと向かう。
そして川原にて花火の打ち上げを待つ間、黒蔵も笹舟を作った。
ミナクチに点してもらった蛍火色の小さな火は、ゆらゆらと黒い水面に浮かんで流れていった。
水際にしゃがみこんでそれを見送る。
『後ろ、ふりむくなよ』
その時耳元で、聞き覚えのあるその声が聞えた。
しかし振り向いてもそこには誰も居ないのだ。
(嘘っ!)
目を見開いて立ち上がり、辺りを見る。
黒蔵が注意深ければ、自分の流す笹舟に小さな蟹が乗っているのに気づいたかもしれない。
『振り向くなよ、って、言ったじゃないか』
もう一度だけ、遠く小さく、僅かに笑いを含んであの声が聞えた気がした。
540
:
ミナクチ『』 叡肖「」
:2011/08/17(水) 03:09:46 ID:1gBuqmPQ
>>537
『そろそろ始まりますね』「ああ、皆が帰るな」
暗さを増す夜空を見上げて、彼らも待っていた。
『ところで、叡肖さんは気づいてました?』
「んぁ?そういうのは口に出したら野暮だろ?
ああいうのは逢いたい奴だけが見れば良いんだ」
暗がりで、小さく抑えた笑い声がした。
「お、始まるぞ」
打ちあがる前の、最初の火花がちらりと見えた。
541
:
送り妖怪勢/天ッ堕/四十萬陀 七生/織理陽狐
:2011/08/17(水) 03:14:27 ID:0rvvBuFg
>>538
>>540
笹船を作り、そっと川に浮かべていると、突然黒蔵が立ち上がった。
なんだか分からず、四十萬陀は困惑したそうに首を傾げる。
「黒蔵君?」
しかしその時、ふと四十萬陀は感じた。
(あ、)
胸の奥がきゅっと熱くなる感覚。
ずっと昔、自分を守ってくれた、あの暖かさ。
(なんだろう……暖かい……。
懐かしい――)
『黒蔵君、ってこの子なのね。
ふふ、僕、七生を頼んだわね』
白鼬はくすりとほほ笑むと、川の向こうへと消えていく。
そして――。
「さあ、思い残すことはないな!
盛大な送り火を、今こそ上げるのじゃ!」
織理陽狐の高らかな声が響き、高い夏の空に、花火が上がった。
それは人の上げる花火とは違う、炎を作る妖怪が打ち上げる、力強い火の華。
狐火と願いの炎も織り交ぜられたそれは、見る者の心を揺さぶる力があった。
>>583
「……」
先程まで、焼きそばに夢中だった天ッ堕も、自然に夜空を見上げる。
まっさらな無垢な瞳に、生者の、死者の、想いのつまった花火が、焼付いた。
542
:
祭りの終焉
:2011/08/17(水) 03:22:10 ID:1gBuqmPQ
華やかに打ちあがる花火、静かに流れ行く灯。
どちらも死者を送る火である。
『逢えたかい?』「逢えたね」『見てただけだったよ』「それでもいいのさ」
死者の魂が送られて、この世を離れる。
炎の消えた祭りのあとの静けさは、ほんの少しの寂しさと秋の気配を告げるもの。
盆の祭りが終わった。
地獄の釜の蓋もまた、ぴたりと閉じたのである。
543
:
瞳/三凰
:2011/08/17(水) 03:42:26 ID:SmXQZqJk
>>529
澪と共に花火を見る三凰。
三凰「ま、当初は祭りなんて乗り気じゃなかったが、案外いいものだな。」
満足そうに言う。
三凰だけでなく、夢無も飛葉もきっと満足しただろう。
鯨を釣ったり色々あった瞳だが、今は落ち着き花火をみている。
瞳「綺麗…だな…」
何故だか、涙が流れてくる。感動したからだろうか?
もしかしたら、どこかで風月と春花が見ているのを感じたのかもしれない。彼らはきっと、瞳のことを見守っていたのだから。
544
:
イベント予告(戦闘ロールの可能性有り)
:2011/08/17(水) 23:52:11 ID:bJBnsqT6
>>430
8月20日の午後9時頃から、
牛神神社へ結界の破壊者が訪れるクエストを行う予定です。
人数の指定やキャラ数、種族も問いませんが、
破壊者たちの実力は非常に高く設定してあるので、実力者なキャラでのロールをお勧めします。
他にも神格を持ったキャラを使うと彼らは激昂するため、
あらかじめご了承の上ご参加ください。
ですが姫さんたちのリアクションによっては思った以上に早く、
ロールが終わる可能性も無きにしも非ず、です。
もちろん破壊者側のキャラのご参加も歓迎。
545
:
零
:2011/08/19(金) 23:09:47 ID:HbHPxpxY
少し嬉しそうな顔をした少年は、繁華街を歩いていた。
紺色のポロシャツと、ジーンズ、それから首飾りを付け、この少年にしては珍しい。
「紅茶でも買って行こうかな。」
目指すはコンビニ、数百メートル先のそこに足を運ぶ。
546
:
???
:2011/08/20(土) 21:47:19 ID:bJBnsqT6
この街で、数ある神社仏閣の中でも特に異質なそこ、牛神神社。
神格を持たない身でありながらも、甚大な実力者の姫さん。
巫女という聖職でありながらも、常識の枠からも飛び出した巫女たち。
そんな奇妙な者たちが集まる神社に
彼らは訪れた。彼らの理由である坊ちゃんが為に。
果たして、その訪問は予知や予見はされていたのであろうか。
この形容の余地もないほどに邪悪で、
そして神聖な彼らの来襲を、牛神の者達は知っていたのであろうか。
しかしそれがもし予知されて、奇襲や強襲などの、防衛に戦闘準備が備えられたとしても、
あまり意味を感じず拍子抜けするかもしれない。
精神体調を共に整え、非戦闘員を逃がし、
武器を手にとって牛神神社に警戒を張り巡らした彼女たちは、
それが徒労だと思ってしまうかもしれない。
「さて、ここが牛神神社か」
「神格を感じないというのはありがたいな!!いらいらしない!!
ノンストレッサーだ!!」「うるせえよ」
なぜなら彼らは、軍団など率いることなく二人っきりで、
そして正門からゆっくりと歩いてくるという暢気さと、牧歌的なやり取りがあまりにも、
これからなにがしかを破壊しようという者たちの態度ではないからだ。
だが、彼らはやはり多大な脅威なのである。
547
:
巴津火
:2011/08/20(土) 22:04:04 ID:1gBuqmPQ
>>546
かねてからあの大きな木へは一度登ってやろうと思っていた。
そして今、牛神神社はなにやら慌しくて巴津火に構うものは居ない。
(あれが無くなるのなら、今のうちに登ってやろう)
半分は神格、半分は邪神の巴津火にとって、今最も身近な神界と繋がる場所がこの大樹である。
あの金髪の男は、この結界の支柱に天界が関わると言っていた。
ならば、この木に天界への道の手がかりもあるかもしれない。
それが巴津火がこの御神木の下へ向かう理由であった。
548
:
牛神神社
:2011/08/20(土) 22:12:02 ID:c1.PBF/s
>>546
そんな彼等が第一に見たものは
姫「それロン!!」バッ
巫女B「えっ…嘘?」
巫女A「悪い……ダブロンだ」バッ
鬼「アルジ…トビダゼ…コリャ」
……………………………………………………………………………………………………………………………………
神社の庭で麻雀してる!!!
巫女A「そういうわけで今回の買い出しはお前だ。頑張りな」
巫女B「……先輩の馬鹿ぁぁぁ!!!」
泣きながら巫女Bと鬼が彼等の横を通りすぎていった。
巫女A「ん……参拝客……ではないか」チャキッ
姫「あ…麻雀やってて、結界破られてたみたい」
………姫!!!!!!!!!
なんかカオスな雰囲気の中、巫女Aはタバコをくわえながら銃を用意し
姫はテヘッ♪と舌を出していた。
だがこんな馬鹿やってる二人だがただではスマナイ相手だと貴方達はわかるだろう。
一人は元裏の住人
そしてもう一人は牛御前
さあ…貴方達はどう対応する?
549
:
???
:2011/08/20(土) 22:24:05 ID:bJBnsqT6
>>547
、
>>548
こうも易々と入れたのだ。牛神神社は、彼らの訪問を知らなかったらしい。
だが、彼らも知らないことがあった。
「なるほど、麻雀か!!頭を使うあれは面白いからな!!
気づかないのも無理は無い!!って馬鹿!!」
「うんにゃ、むしろコレは好都合だな。
事は意外と穏便に行くかも知れねえ」
まさか彼女達が卓を囲んでいるとは。
しかし律儀に突っ込む包帯の男とは違って、
農家の男は、その様子にむしろ喜んで顔には笑みを作っていた。
「あんま構えんでええ、おら達は参拝客みてえなもんだ。」
彼は殺意も悪意も無く、手を力なく振って参道を歩いてみせる。
その態度に、包帯の男は首を傾げるも止める理由は無く、
彼の後ろに黙ってついていく。
「ここは少し変わった神社と聞いてな。
ちょっとこの土地を調べさせてもらってもいいか?
おらは、よくわからんこんな感じの場所が好きでな、よくこうやって散策してんだ。」
ざりざりと、その草鞋の様な粗末な履き物で、
参道にある石たちを鳴らしながら男はのんきに笑っていた。
その裏で、巴津火が動いていると言うことも、妖気で感じていたのだが。
550
:
巴津火
:2011/08/20(土) 22:29:05 ID:1gBuqmPQ
御神木の下には、既に先客が居た。
>>548
そのうち、金髪の男には見覚えがあった。
巴津火は彼を見て口を尖らせる。
「なんだよ、迎えを寄越すって言ってたくせに」
抜け駆けしてこの支柱を壊そうと思っていた巴津火の言う事ではないが、
彼らの迎えがあったなら巴津火もあの双剣を用意してここへ来ていた筈なのだ。
しかし結果として巴津火は素手であり、この辺り一帯が土砂に埋もれることだけは回避されることになった。
>>549
巴津火はまだ麻雀を見たことが無い。
故に彼らが何をしているのかなんて知らないし、木登りするつもりには何の代わりも無いのだ。
ただ、ちょっとばかし彼らの居る場所が邪魔ではある。
「そこ退いて。ボクは木登りするんだから」
麻雀に突っ込みを入れるでもなく攻撃するでもなく、ただ神木の根元に近づくだけである。
近づいてみて初めて、神木の梢からさらに上へに伸びる太い気があるのを巴津火は感じた。
結界を支えるこの大樹に、今、巴津火は登ろうとしている。
しかしこの社の聖域と結界の両方を支えているこの樹に、さらに半分とは言え神格の負担がかかったなら
この樹はどうなるだろう。
まだ幼体ではあるが、最上級の蛇神の神格でもある。
この巨木はその負荷に耐えうるのだろうか。
551
:
巴津火
:2011/08/20(土) 22:30:11 ID:1gBuqmPQ
//安価ミス。逆でした。
552
:
牛神神社
:2011/08/20(土) 22:44:29 ID:c1.PBF/s
>>549
>>550
巫女A「おいおい。ハツビ少し待て。お菓子やるから」ホイッ
麻雀卓に一緒に置いてたチョコレートをハツビーを大人しくさせようと渡そうとする。
一応ハツビーの扱い方は夜に言われてる為、お菓子で釣るようだ。
姫「うんうん。麻雀って結構、頭使うよねー」
なんかニッコリと笑いながら包帯の人に言い
姫「……の割には結界破壊しちゃってるじゃない。小さくだけど」
少し真剣な眼でマンドラゴラを見つめ
姫「……っで本当の用件は?
あっ、ハツビー!あの人達知ってる?教えてくれたら今日は宴会するよ」
553
:
???
:2011/08/20(土) 22:54:21 ID:bJBnsqT6
>>550
ニコニコとまではいかないが、
それでも敵意の無い笑顔で近寄る農家だが、心の中で小さく舌打ちをしていた。
包帯の男は農家のその態度で、大体の事情は把握する。
「(あの坊主、黙って破壊すりゃあ良いものの。
あれはあんまり信用すると、こっちが痛え目を見るタイプの奴だな)」
牛神神社の者達に気づかれること無く、目の前のそれへ攻撃を済ませば終わったと言うのに、
彼が喋りかけてしまったせいでそれはし難くなった。
彼の中で巴津火の評価が、ある程度下がった。
今すぐにでも、悪態を彼に向けたいという衝動を勤めて押さえ込むが、
それは直ぐに解消されることになる。なぜなら、
巴津火が既に、遠いところで目的のものに攻撃を与えていたからだ。
>>552
ペテンを行う農家とは違って、少し緊張した風の包帯の男は姫さんに話しかけられ、
長い沈黙の終わりに安堵したのか、包帯の向こうで笑った気がした。
「しかも賭けの度胸も必要だからな!!俺には無理だ!!
度胸なし頭脳なし、それに幸薄だからな!!できるはずがない、はっはっは!!」
「おい、黙らねえとその包帯、牛乳を拭いてそのままにするぞ。」
「それだけは勘弁だ!!あの白い液体の殺傷能力は高すぎる!!」
そんなのんきな会話を楽しんでいる流れで、
姫さんの次の言葉にも農家は笑顔で答える。片目をつぶって意地悪げに。
「おら達は妖気の都合上、こんな場所には行きづれえんだ。
それともあれか?おら達邪悪なものが参拝するのは、いけえねえか?」
姫さんのその目にも、一切の動揺を見せずに彼は歩き、
ついには彼女達との距離は10メートルよりも近くなってしまう。
554
:
巴津火
:2011/08/20(土) 23:02:09 ID:1gBuqmPQ
>>552-553
間近に寄った幼い邪神を厭うたか、御神木の梢が風も無いのにざわめいた。
そのざわめきは姫さん達に不吉な予感を伝えるかもしれない。
「お菓子!」
お子様邪神は麻雀卓の上のチョコレートにあっさり釣られた。とろける甘さは巴津火の大好物なのだ。
瞬く間にチョコレートは巴津火の口の中へと消える。
その二股の舌は、チョコレートの甘さを得て滑らかになったらしい。
「あの二人のうち金髪の一人とはこの前会ったぞ。この樹を壊すんだって言ってたな。
だからボクは、この樹がなくなる前に登りに来たんだ。
…ねえ、これも食べて良い?」
はつびー、それはチロルチョコのホワイトではなく白牌だ。食べてもきっと美味くはないぞ。
しかし巴津火がお菓子と宴会に釣られたせいで、謎の二人組の目的についての情報は得られた。
そして二人の侵略者を他所に、巴津火はまだ他にお菓子が無いかと
麻雀卓の周りをうろうろと探している。
555
:
牛神神社
:2011/08/20(土) 23:23:41 ID:c1.PBF/s
>>553
>>554
あっさりチョコレートと宴会に釣られたハツビーに
巫女A「それは食べられないぞ…。コレを食べなさい」ハァ…
白牌を取り上げ、新たなお菓子を取り出しハツビーに渡そうとする。
とりあえず、二人の対応は姫さんに任せる事にして、ハツビーの相手をする事にした。
姫「それは、確かに向いてないかもしれないね…
けど一回やってみる?賭け無しで。人間が造った遊びは本当に面白い!だから私は人間が大好きなの」ニコニコ
楽しそうに包帯の男にフレンドリーに話しかける。
姫「参拝は構わない!!!……っでハツビーがそう言ってるんだけど目的は御神木って訳ね」
そう言いながら姫もマンドラゴラに近づき
姫「あの御神木を壊すなら、代わりのモノを用意しなさい?あと壊した結界の修理も手伝ってね?もしくは私と戦う?」ニコッ
相手が何を仕掛けるかわからないのに、まるで警戒してないかのような感じで微笑みかける。
だが放たれるプレッシャーは……そこら辺の神格には負けない。
556
:
???
:2011/08/20(土) 23:35:00 ID:bJBnsqT6
>>554
お菓子に釣られた、約束をしたはずの巴津火に包帯の男は、
頭に血が上って今すぐにでも彼に制裁を加えようと、少し身を乗り出そうとする。
それを農家は、巴津火にも彼女達にも気づかれないほど自然に、
体を包帯男の前に進み出て、彼を止めた。
「(・・・駄目だこりゃ)」
だが、彼も仮面のしたでは憤怒の感情が、ふつふつと煮えたぎっている。
>>555
先ほどから、ペテンのような仕草を行う農家とは打って変わって、
包帯な彼は馬鹿なのだろうか、姫さんの言葉にぱあっと喜んだ雰囲気を漂わせていた。
「そうだな!!なにごともやらなくては何も得られないからな!!
では、レッツ麻雀だ!!自分の可能性を信じる!!」
「おらはお前の可能性を見限った」
わくわくとした足取りで麻雀卓に歩み寄り、
どかっと胡坐を掻いて一角に座り込んだ。どうやら本当にやるつもりらしい。
その様子を農家は、生ゴミを見るような目つきで見ていた。
「あんたが物分りのええ奴でよかった。
この馬鹿と、あの馬鹿がしでかしたときにゃあ諦めていたが、
ここは平和的解決ができそうだな」
そういうと彼は、その身から少しの妖気を発する。
それからしばらくたたぬうちに、地面が大きく隆起し、
ご神木よりも、高さも周囲も圧倒的に大きな巨木が地面から召還された。
「御神木っつっても、所詮は木だぜ。
それにあんたがいりゃあ、この木も直ぐに神聖を手に入れるさ」
姫さんのプレッシャーにまったく応えるそぶりの無い彼は、
その巨木の横をぺちぺちと叩き、顎をくいっと姫さんに向けて笑った。
557
:
巴津火
:2011/08/20(土) 23:42:51 ID:1gBuqmPQ
>>555
「わーい、お菓子お菓子♪」
しかし巴津火の胃袋を満たすなら菓子問屋が一軒必要だろう。
巫女Aさんの手持ちのお菓子は、瞬く間に食い尽くされた。
「もっと無いの?」
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞと、
一年中がトリックオアトリートなちび邪神の目は、再び御神木へと注がれる。
にへら、と企みを含む笑みはカボチャ提灯のそれにも似ていた。
御神木のピンチ?
>>556
新たな大樹が現れたものの、その梢からは気が立ち上っていない。
(あれに登っても、多分天界へは行けないな)
巴津火は立ち上がると、御神木のほうへと歩み寄る。
新たな樹へと姫さん達の注意がそれている間に、身体を蛇身に変えてよじ登るつもりなのだ。
558
:
牛神神社
:2011/08/21(日) 00:09:30 ID:c1.PBF/s
>>556
>>557
巫女A「あぁ、待ってな。今頼むから」
そう言いながらケータイを取り出し、巫女Bにメールをいれた。
何処かで巫女Bの喜びと悲しみの絶叫が響いたような。
そしてハツビーの顔を見てて、勘弁しろ…って苦笑いする。
巫女A「んじゃあ、やる?今メンバー呼ぶな」
そう言いながら、何かの端末を弄り他の巫女を呼び始める。
巫女D・E「「……呼ばれて来たら麻雀でしたか」」
現れたのは双子の巫女だ。彼女達は左右に座り、巫女Aは対面に座る。
そして麻雀をイカサマ無し東風戦をやるだろう。
姫「私は楽しければいいの。だからあのミイラさんは結構気に入った」ニカッ姫さんは楽しそうに笑いながらできた木を見上げる。
姫「この大きさは大変ね。あとで柚梨とセツコにこの木を御神木にする作業しないと
ハツビー!怪我しないでね」
昇るハツビーにそう声をかけ
姫「……っであの木を壊す理由は何かな?それくらいは聞かないとね。メリーから聞いた悪人さん?
あと、もうすぐ宴会やるから貴方も一緒に楽しみなね」
559
:
???
:2011/08/21(日) 00:21:30 ID:bJBnsqT6
>>557
なんとか事が収まりそうだと、農家は胸をなでおろして安心した。
しかし、またあの問題児が動き出したのだ。
だが今回は邪魔、が入るわけではなさそうなので、
幸運なことに彼のストレスゲージは上昇していない。
「(またあの坊主はよく分からんことを・・・
まあ・・・ええか)」
その一方でなぜか農家は、彼の動きについて若干の諦めを感じていた。
壊すかと思えば壊さないし、遊ぶかと思えば壊そうと言うのだ。
確かに一々一喜一憂するほど、彼はお人よしでも付き合い良くもない
>>558
嬉々として麻雀卓に向かう包帯男。
彼も一応、数箇所地点を破壊した存在だと言うのに、その威厳は皆無。
普段は坊ちゃんの制御係な彼は、牌を前に座っている。
そんな彼を農家はもはや無視して、姫さんと向き合う。
「いい性格だな。だが、あれは好かれるようなもんじゃねえぜ。
メリーと交流があったことには驚いたが、まあ、つまり俺達は悪、だからな」
これでようやく一段階が終了するのだ。
そのことに彼の心は、いろいろあったが高揚していた。
「良い、せっかく大人しく引いてくれたんだ。
その分のことくらいは喋ってやってもええよな
最終的なことはメリーから聞いただろうが、かいつまんで言うと、
その木は街に張られた巨大な結界の、支柱となる箇所の最終地点だ。
つまり、それを破壊すれば、うざったい結界は力をなくすんだ」
560
:
巴津火
:2011/08/21(日) 00:28:42 ID:1gBuqmPQ
>>552-553
(あの気を辿れば、天界へ行けるんだろうか)
その問いに答えは無い。登ってみなければ判らないのだ。
引き寄せられるように神木の根元に寄って、巴津火はその身を蛇体へと変えた。
黒く蟠った長い蛇身はゆるゆると樹の根元に絡みつき、ゆっくりと這い上がってゆく。
太い杉の幹がぎしりと不吉な音を立てた。
はつびー「ちょっと登りますよ」
御神木 「ちょwwwwwおまwwwwwwww登ってくんなしwwwww」
流石蛇神の最上級、八岐大蛇の重みは半端じゃないぜ!
一番下の太い枝に巴津火がその身をかけたとき、耐え切れなくなった生木の裂ける音がした。
枝の根元が裂けて枝先がだらりと垂れ下がる。
ずり落ちかけた巴津火は慌てて次の枝へと這い上がる。しかし登るほどに幹は細って弱くなるのだ。
バキバキと音を立てながら折れた枝が地上へと落下してゆく。木の下の者にはそれ自体が警告となるだろう。
(もう少し、あと少し)
ついに梢から上昇する気の流れを捕らえた時、巴津火はふわりと身体が持ち上がる感覚を覚えた。
しかし杉の大樹のほうは限界だった。一番下の枝から縦に幹を分かつ裂け目が根元近くまで伸び、
樹は巴津火どころかそれ自身の重みにすら耐えられなくなっていたのだ。
ぐらり、と樹が傾ぐ。
同時に梢の先から立ち上る気の柱が細って消え始め、その中を昇って行こうとしていた巴津火の身体も落ちた。
折れて傾いだ杉の老木にはそれが駄目押しの一撃となった。
こんもりとした杉の樹冠がどさりと上空から落ちてきた大蛇を受け止め、その重みがさらに裂け目を大きくする。
ゆっくりと、しかし確実に御神木は倒れていった。
こうして無邪気な邪神によって、結界の支柱は破壊されたのである。
(むーーーっ!!!)
杉の葉に埋もれて、天界へと上り損ねた巴津火は機嫌を損ねていた。
561
:
牛神神社
:2011/08/21(日) 00:40:56 ID:c1.PBF/s
>>559
>>560
巫女A「それで、ルールはわかるか?」ジャラジャラ
牌を掻き交ぜ山を作りながらミイラに聞く。
姫「それで、素晴らしい人間と妖怪の間に産まれた素晴らしい存在が来れるのね」
うっとりした顔で、マンドラゴラを見る。
姫「メリーから大体は聞いたけど、コレは私の予想ね
人間と妖怪と天界に復讐するつもりかな?」
その表情は凄く楽しそうだ。
何故?
彼女は人が好きだ。
自分達を恐れる人が好きだ。自分達を怖がらない人が好きだ。妖怪を倒す人が好きだ。妖怪を助ける人が好きだ。妖怪に助けられた人が好きだ。成長の可能性がある人が好きだ。自分を倒す人が好きだ。自分を倒す為にどんな手段を使う人が好きだ…っと狂っている程、人を愛してる。
だから……人間と妖怪の間に産まれた子供はどんな素晴らしい存在なのか?
彼女は楽しみだった。
そして木が倒れた時に姫が派手にやったなーと笑う。
巫女B「ショタがいると聞いて!!!!」
そんな時、馬鹿巫女が買物袋を持った鬼達を引き連れやってきた!!
巫女Bの持ってる買物袋には大量のお菓子が…
562
:
???
:2011/08/21(日) 00:51:40 ID:bJBnsqT6
>>560
麻雀の包帯男には、意外や意外、とても良い役がそろっていた。
包帯男は自分の集めたその役に興奮し、包帯を通しても彼の喜びようが伺えた。
それが、彼の賭け事に負ける理由の一つ。感情が、包帯がさえぎっても丸分かり。
「やはりやってみるものだ!!今この場には最高の役g」
その刹那、御神木が倒壊した。
衝撃は思った以上に大きく、牛神神社を全体的に振動させるほど。
そして、麻雀卓を振動させるほど。ご想像通り卓の上は、牌が混ざり混ざって役どころではない。
これが彼も負けるもう一つの理由。絶対的な幸薄加減。
「〜〜〜〜〜っ、理不尽だ!!」
包帯男が悲しみを天に咆哮した時、この街の上空から地中までを、
それも超越的に巨大な範囲で覆っていた、街とその周辺全てを覆った球体な神々の張った結界が、
まるでガラスの割れた時の様な音をそこら中に響かせ、崩壊した。
「良くやった坊主!!」
この街にいた全ての者たちは、どこか、いいしれない喪失感を感じるだろう。
それは、今まで当然のように傍にあったものが、突然失ったかのような。
農家は顔に、激しいほどの歓喜を浮かべていた。
その喜びようは大きく、珍しくも小躍りをしたほどだ。
>>561
農家の小躍りは、姫さんが再び話しかけるまで続いた。
いかに嬉しいといえど、話しながら踊るほど彼はファンキーではないのだ。
だが、姫さんの言葉を彼は聞くことになるので、
たとえそんな性格であっても彼は、踊りを止めるのだろう。
「素晴しい?」
今までは歓喜が、男の顔を覆っていたのに今は、
その顔にあるのはとても苦々しげなものだった。
「復讐・・・人や妖や神にか。
それが本当なのかもどんな存在なのかも、
坊ちゃんを、見れば分かる知れば分かる感じれば、理解する。お前の言葉がどういう意味を持っているのかを」
彼の発した言葉には、これ以上の質問は受け付けない、
というような強い拒絶があった。
563
:
巴津火
:2011/08/21(日) 00:56:18 ID:1gBuqmPQ
>>561-562
「浮いたのに!昇れるはずだったのに!これだけ大きい木なら大丈夫だと思ったのに!」
蛇体の重みではなく、神格の重みのほうに杉の老木は耐え切れなかったのだが。
農家の男に褒めちぎられても、お子様の巴津火は悔し泣きしている。
尚、その尻尾でペシペシと地べたを叩きながら泣いているので、その間は包帯男が麻雀牌を
並べなおしても振動でまた崩れてしまうかもしれない。
そして巫女Bさんには残念な事に、ショタではなく丸太のような大蛇のままである。
とは言えお菓子を貰ってよしよしと慰められたら、あっさりショ体化するのかもしれないが。
564
:
牛神神社
:2011/08/21(日) 01:10:11 ID:c1.PBF/s
>>562
>>563
巫女A・B・D・E「「「「!?」」」」
結界が破壊された事により、巫女達はその違和感に気付く。
巫女A「ちっ……麻雀も途中で中断しちゃうわ。嫌な感じがするわ……ウチは物騒な事が多いな」プハァー
タバコを吸いながら、空を見上げる巫女A。
巫女D・E「「……姫の気まぐれには頭を抱える」」
双子は無表情で頭をおさえながら同時に言う。
姫「なら会いに行くわ。私の友達にも会いに行きたいしね」
マンドラゴラのその変化した表情を見ながら狂ったように楽しそうに笑う。
下手したらこっちも悪人か?というように……
この姫は……最初から結界を壊し、坊ちゃんと姉妹に会うのが目的だった。それに……天界の思い通りにされるのは気に食わなかったのだ。
巫女B「あ……蛇状態か
ハツビー泣かないの。ホラホラお菓子だよ」
ハツビーにお菓子を渡しながら蛇の頭を優しく撫でるだろう。
565
:
???
:2011/08/21(日) 01:22:35 ID:bJBnsqT6
>>563
先ほどとは違って、高揚感は少し冷めて農家は大人しくなったが、
それでも顔には再び笑みを浮かべる。
駄々をこねるような巴津火へと、農家は声に歓喜を含まして話しかけた。
「うんにゃ、もしかしたら思った以上に、早く天へ行けるかも知れねえぞ。
天のやつらが見てたらだがな」
一方包帯男は、何度も牌を元に戻そうと苦心していたが、
その度に崩壊するものだから、諦めて横に悔しがって寝そべっていた。
「なんというか、著しく不服だ!!これ以上のはそうないぞ!!
アイキャントヴィリーブだ!!」
「どうでもいいが、believeのところをヴィで発音するあたりが腹立つな」
>>564
農家は、姫さんのその精神傾向にめんどくさく感じたのか、
頭を無造作に掻き、深くため息をついた。
「あんたは本当に、『良い』性格だな。この悪人が。
それにあんたは、もしかしたら後悔しないでいてくれるかもな。」
意味深な言葉を、こぼす様に口から発して、
彼は寝そべっている包帯男の首元を乱暴に掴んだ。
最後に姫さんと巴津火のほうを交互に見やる。
「お前らもコレで、ペテンの加担者だ。
お前らは悪ではねえが、責任はしっかりこうむってもらうぜ」
悪意のこもった笑みで、
口角を不気味に歪めたかと思うと男と包帯の男は、地面へと消えていった。
/僕のほうはコレで落ちにさせていただきます!
/絡みありがとうございました!!
566
:
巴津火
:2011/08/21(日) 01:29:11 ID:1gBuqmPQ
>>564-565
「ひっく……ぐすっ」
べそをかきながらもお菓子はしっかり口に入れてもらうのだ。
そして手が無ければパッケージをあけられない事に気づいて、ゆっくりと人の姿に戻る。
巫女Bさんに撫でてもらいながら、それでもお菓子を口に運ぶのは忘れない。
「あの、ね。身体、浮いたんだ。天界まで、昇れそうだったの。でも、駄目だったの」
今までこんな風に慰めてもらう事なんて無かったせいで、すっかり幼児退行してしまっている。
だが、こんなおガキ様にへし折られた御神木の方のほうが、余程泣きたい気分だろう。
倒れる直前には主からも、「貴方が居なくても代わりが居るもの」と言われてしまったのだから。
「…ホント?」
天へ行ける、という農家の男の言葉に泣き止む巴津火。しかし口にお菓子を運ぶのは止めない。
本当に泣いてたのだろうか、嘘泣きと違うのか?
「ペテン?」
よく判らないけれど、巴津火にとって難しい事はどうでもいいのだ。
泣き止んだ今は、このお菓子を食べる事が一番の目的なのである。
巫女Bさんにモフられながら、お菓子の山を食べつくす頃には
元通りの我侭な坊ちゃんに戻っていることだろう。
//では自分もこれで落ちます。お二人とも、どうもありがとうございました。
567
:
牛神神社
:2011/08/21(日) 01:45:17 ID:c1.PBF/s
>>565
>>566
巫女B「よしよし、悔しかったんだね。ハツビー
大丈夫だからね」ハァ…ハァ…
優しく撫でる彼女の言動と表情は子供を慰めるお姉さんのようなのに、息が荒く興奮している変態だった…
姫「褒め言葉ありがとう
……気になる言葉ね」クスッ
姫「ペテンね。何に対して欺くのかしらね」
そして消えた二人を見て
巫女A「おいおい……天界と争う気か?姫」
姫「えっ?利用したのはあっちよ?私が気付かない間に勝手に小細工して
だから私なりの天界への文句よ」
呆れたような巫女Aと悪戯っぽく笑う姫。
絶対、巫女Cはこの件で頭を抱えてるだろうが
姫「じゃあ、みんなにこの倒れた御神木の供養お願い!それが終わったら宴会よ!!!!」
今日も牛神神社は平和だった
/皆さんお疲れ様でしたー
/絡みありがとうございます
568
:
露希「」&黒龍『』
:2011/10/31(月) 22:13:19 ID:BQ990e1A
10月31日、その日の晩には魔女や悪魔が訪れると言う。
それから身を守る為に、お面を被り、色々とするらしい。
…ってことで、今日はハロウィンです。
商店街はハロウィンっぽく、かぼちゃとか、仮装した人で賑わっている。
「黒龍、トリックオアトリート!」
『………俺なんも持ってないよ!!!
にしても露希の仮装…何それ。』
「え?んーとねー。魔王?ww」
『あー、うん、そうだよな。魔王しかないもんな。』
露希は黒いマントで身を包んだ魔王。
黒龍は魔女(某アニメのコスプレ)をしてきている。
今日の長いハロウィンの夜が、幕を開ける!
569
:
閑古鳥
:2011/10/31(月) 22:26:29 ID:1gBuqmPQ
>>568
「悪戯ガイイカー、オ菓子ニスルカー?悪イ子イネガー?ワハハハハー!」
耳障りで出鱈目なお喋りと、甘い匂いの食べ屑が、頭の上から降ってくる。
「オー怖イ怖イ!魔王モ怖イガ、ココラデチョットオ茶ガ怖ァーイ!」
食べかけのカボチャ饅頭を片足に掴み、電線の上で騒ぐあいつは閑古鳥。
まだ完全な修理の済んでいない木の翼をカタカタと鳴らしながら、
洗濯屋のお喋り九官鳥は確保したお菓子を貪っているところだった。
570
:
夜行集団
:2011/10/31(月) 22:36:47 ID:bJBnsqT6
>>568
ただでさえ賑やかなこの繁華街が、
なにかイベントの口実を得たときのはしゃぎようといったら、
それはもう街を上げてのお祭り騒ぎである。
だから、当然のごとく街は様々なお化け、もとい仮装で溢れていた。
「ひっひっひwwwwトリ〜ックオアトリ〜トォオ!!」
そんな各々が精を尽くして着飾った、渾身の仮装で満ち溢れる通りの中、
一人だけやけに完成度が高すぎるのでその中でも、
がっつり浮いてしまっている者が、彼らの間を闊歩していた。
「ひっひwwwおっ、露希ちゃんじゃねえかっていうwww」
そして、しばらく歩いていると人ごみの向こうに知った顔が。
その為通行人から視線をかなり集めた彼は、
大きく手を振って向こうの彼らに呼び掛けた。
ちなみに彼が今扮しているお化けは、もちろんナイト○アー・ビフォア・クリスマスである。
571
:
十夜「」&七郎『』
:2011/10/31(月) 22:38:59 ID:SmXQZqJk
>>568
,
>>569
『なんか世間の様子がいつもと違うなーと思ったら、今日はハロウィンか。
日本じゃ、まだあんまり浸透してねぇイベントかと思ったが、そうでもないみたいだな。先にはクリスマスもあるってのに……なんつーか、みんな祭り好きなんだろうな。』
「まぁ、賑やかなのはいいことだと思うよ。僕も好きだし。」
歩いているのは、人間形態の七郎と十夜。七郎は、街を見た感想を述べながら呑気に歩き、十夜はその隣りでどこか楽しそうに歩いていた。
572
:
露希「」&黒龍『』+フォード
:2011/10/31(月) 22:45:21 ID:BQ990e1A
>>569
『へ?何アレ?』
「怖いね、ああいうのはスルーが一番だよ。」
カンちゃん、華麗にスルーされました。
その光景を見て、ニコニコと笑っている白髭の老人が居た。
フォード「あれは面白いな」
>>570
「ああ、虚冥さn……(クオリティーが半端ない!)」
『う、うわっ、俺アイツ苦手、ちょっとぶらついて来る!』
その姿を見る限り、まさしく格好その物である。
露希はそれを苦笑いしながら見ている。
黒龍は以前、散々弄られたので虚冥恐怖症になったらしい。
>>571
『…ったく、誰か知ってる奴いねーかな…。』
きょろきょろと辺りを見渡す黒龍。
まだ二人の存在には気づいていない。
573
:
閑古鳥
:2011/10/31(月) 22:50:53 ID:1gBuqmPQ
>>571
>>572
「オ?オ?華麗ニスルーシヤガッタゼ魔王ノコンチクショゥ!
…ッテアリャ十夜ジャナイカヨ、オイオイ元気ダッタカァ?」
騒々しく十夜の肩にとまろうとする図々しい閑古鳥。
元気つーか本調子じゃないのは最近のお前だよカンちゃん。
修理したとは言え完全復活はしていないのだ。
幸い、この祭りに水を差さずにすむ位弱体化しているので、ここに居ても問題は無いらしい。
574
:
虚冥
:2011/10/31(月) 23:01:17 ID:bJBnsqT6
>>573
あまりの人の多さなため、始め頭上の存在には気づかなかった。
しかし、流石に空から菓子屑が、目の前の露希たちに降り注げば気づかないはずがない。
何事かと思って頭を上げたナイトメアが見た者は、なんと喋る鳥。
「・・・っていう」
虚冥、あえてのスルー・・・!!
自分よりも近い場所にいるはずの露希が、あまり触れずに置いているのだから、
それをわざわざほじくり返す必要もないと虚冥は判断する。
それにあの鳥が騒ぎになった時、
絡んでいる姿を他の通行人に見られるのも、多少分が悪いのだ。
>>572
あちらも気づいたようなので、虚冥はつかつかと歩み寄って行く。
すると彼の歩こうとする道の前方の人たちが、
距離を置いて虚冥をかわしていくのでまるでモーゼの如く、
露希まで続く一本の道が出来上がっていた。
「おっすwww
てかwwwさっき逃げてった奴誰だっていう?www」
しかしあれだけ奇妙な光景にも関わらず、虚冥は気にする様子は無い。
けろっと笑いながら話しかける虚冥は、今しがた消えていった人影のことが気になった。
>>571
へのレスは今のところスルーです
575
:
十夜「」&七郎『』
:2011/10/31(月) 23:07:24 ID:SmXQZqJk
>>572
『ん?よぅ、黒龍。ずいぶんと、ハロウィンに乗り気じゃねぇか。』
「誰?」
『ちょっとした友人だよ。悪い奴じゃねぇから安心しろよ。』
ちょっと不安がる十夜に安心するよう七郎は言った。
>>573
「わ、久しぶりだね。う、うん、元気だよ。」
七郎(あり…こいつなんか変わったか?)
肩にとまられ、戸惑っている十夜。七郎は、彼が本調子でないことを見抜いたようだ。
576
:
黒蔵
:2011/10/31(月) 23:10:06 ID:1gBuqmPQ
(お店の宣伝、なんだよねぇ)
祭りの賑わいからぽつねんと取り残されたような、どんより不幸オーラを纏った奴が一人
人の流れの中に立っていた。
手には『Perfect incompleteness』の宣伝用キャンディーの詰まった籠を持っている。
(なのにどうして俺、こんな格好させられなくちゃいけないんだよ!)
トリックオアトリート、と声を掛けられたらこの飴を渡すんだよ、と言い含められている黒蔵は
何故か首輪と鎖付の狼男に仮装させられている。
こんな格好、犬御にだけは見られたくない。
(どう見ても俺晒し者じゃん?)
あお〜〜〜ん!とか叫びたいところである。
577
:
露希「」&黒龍『』+フォード
:2011/10/31(月) 23:16:42 ID:BQ990e1A
>>574
なぜか自分の前に出来る一本の道。
そこに居る自分がなぜか物凄く恥ずかしい。
「えっと……ボクの友達だよ。きっと怯えちゃったんじゃないかな(汗)」
もしも「黒龍は虚冥さんが苦手だから」なんて言ったら何をしでかすか知ったもんじゃない。
ひとまずは嘘でも言って、この話題から逸らそうとする。
「虚冥さん、お菓子ください♪」
>>573
,575
フ「お、移動するのか。ん?」
カンちゃんが向かった先は十夜君のところ。
フォードはにこっと十夜に笑いかけた。
>>575
『七郎、ハロウィンと言えばコスプレだろ?お前もなんかしろよ。
んー、猫耳のカチューシャならあるけど?』
黒龍の場合、なんかシュシが違うのだ。
仮装と言うか、何かに変装する的な捕らえ方である。
だから七郎にピンク猫耳のカチューシャを差し出したのだ。
『そこの子は…七郎の主さん?』
578
:
閑古鳥
:2011/10/31(月) 23:17:57 ID:1gBuqmPQ
>>575
「オウ、コノマエチョットバカシ、火アソビシチマッテナ!ハハハハハ!」
カッコつけていう閑古鳥、しかし火遊びの意味が違う、意味が。
リアルにファイアーダンス踊っちまった事は内緒にして、十夜に豪快に笑ってみせるが
嘴に黄色く付いている饅頭屑のせいで、どうにもしまらない。
「誰カト思エバ、コッチノハ兄チャンハアノチビ狐ジャナイカヨウ。同ジ妖気ダ!」
頭を低く下げて羽を少し広げ、七郎を警戒する閑古鳥。
579
:
虚冥
:2011/10/31(月) 23:28:04 ID:bJBnsqT6
>>577
「でもあれが男だったら気をつけろよっていうwww
氷亜がまた爆発しかねないしなwww」
ただの友達ならば気にすることは無いと、これ以上の質問はしなかった。
何の気なしにその後ろ姿を見ているので、
彼が黒龍だとは気付いていないようである。
「お、そこはトリック・オア・トリートじゃねえのか?www」
すると露希がお菓子を要求したのでそちらからは視線を外し、
くるっと顔を彼女に向けた。
それから虚冥は笑いながら数個、ミルク味のテニスボールなみの飴を手渡した。
どこで見つけたのだと言いたくなるような大きさである。
>>576
露希へけらけら笑いながら話しかけていると、
視界の端に不幸のオーラーが入ってきた。
悪戯好きの性によって反射的にそちらへ振り向く。
目の前にいたのはトリック重視の虚冥お待ちかね、黒蔵君であった。
「黒蔵〜。
トリック・オア・ミルクトリート?」
すると虚冥はとてつもなく邪悪な笑みを浮かべながら、黒蔵に近づく。
しかも要求はただのお菓子でなく、ミルク要素のあるお菓子だ。
手にはなにかが既にセットされていた。
580
:
澪
:2011/10/31(月) 23:30:55 ID:BQ990e1A
>>576
昨日、たくさんの食材を買ったと言うのに、一日で無くなってしまった。
そんな訳で、今日も買い物に来た澪。
特に仮装とかはせず、緑のパーカーである。
「Perfect incompleteness?」
ふと目に付いた先には、狼の格好をした宣伝をしてる人だった。
結婚するのだから、きちんとした仕事しようかなと考えている澪。
何の仕事かな、と尋ねることにした。
ちなみに中身が黒蔵なんて知る訳がない。
581
:
露希
:2011/10/31(月) 23:36:04 ID:BQ990e1A
>>576
,579
「いやいや、魔王がトリックオアトリート♪なんて恥ずかしいよッ。
にしてもこれ……」
一番初めにアンタ言ったよ、トリックオアトリートって!!
虚冥から受け渡された飴の大きさに驚いている。
(どうやって舐めるの、これ。)
そして虚冥が話しかけた狼の着ぐるみ。
どうやら中身は黒蔵らしい。
「黒蔵君、お菓子頂戴ー!」
582
:
十夜「」&七郎『』
:2011/10/31(月) 23:37:17 ID:SmXQZqJk
>>577
「?」
十夜(誰だろう?あのおじいさん)
笑いかけたフォードに対し、疑問符を浮かべる十夜。
『おい。なんつーもん取り出してんだよ。俺は、狐だぞ?猫耳はねぇだろ。猫耳は。』
七郎の口から出たのは、似合う似合わない以前に狐に猫耳はねぇだろという意見だった。まぁ、実際長身の男にピンクの猫耳は似合わないだろうが。
『ああ、こいつは十夜っつてな、なんつーか俺の弟のようなもんだ。』
十夜の頭をぽんぽんと軽く叩きつつ言った。
>>578
「えええ!?火遊びって、危ないよ!」
『そうそう、危ないことはやめとけよ。下手したら焼き鳥になっちまうぞ。
おう、よく気づいたな。正解、俺だよ。』
ヘラヘラと笑いながら、冗談を言う七郎。十夜は、真剣に心配しているようだ。
583
:
黒蔵
:2011/10/31(月) 23:37:38 ID:1gBuqmPQ
>>579
黒蔵が振向いた先には不幸の化身がいた。
あの目の輝きからは尋常じゃない不幸が予測されているのに、動けなかった。
「み、みるくとりーと?虚冥さん?」
籠の中の飴を一つ手にして渡そうとするが、途中でその手がピタリととまる。
(お店の宣伝なんだよねこれ?同じ店のホストに渡す意味って、何?)
>>580-581
「あ、はい。そうですよ?って、うわぁ露希!」
横から澪にも露希にも話しかけられて、店名の書かれたちょっぴり扇情的な赤い包み紙の
キャンデーを手にした黒蔵は隙だらけであった。
584
:
閑古鳥
:2011/10/31(月) 23:43:35 ID:1gBuqmPQ
>>577
>>582
「アノ爺サン、十夜ノ知リ合イカ?」
フォードの視線に閑古鳥も気づいたがしかし、それより面白いものもやってきた。
「猫耳イイネェ、ツケチャエヨ!似合ウゼ!」
ずずいっと嘴を挟んで勝手に煽るのは空気なんて読まないから。
黒龍が知り合いでなくてもお構いなしである。
「十夜ダッテ、コイツが猫耳ツケルトコ見タイヨナー?」
そして巻き込まれる十夜君。
585
:
黒龍
:2011/10/31(月) 23:46:35 ID:BQ990e1A
>>582
「猫耳駄目か?七郎なら喜ぶと思ったんだけどな。」
いや、絶対喜ばないし。
そんな考えされてる七郎君がかわいそすぎるから!!
「あ、じゃあさ、その弟君に猫耳はどうだろう。
ちょっとした仮装気分になれていいと思うぜ?」
ショタっ子十夜君がこんなことしたら、全国のショタコンが集まる気がする。
586
:
黒龍&フォード
:2011/10/31(月) 23:50:24 ID:BQ990e1A
>>584
「だよな、七郎なら凄い萌えると思う。って…さっきの。」
『ははは、若い子はいいな、楽しそうで。わしも混ぜてくれないか?』
先程、スルーした方が良いと言われてしまった奴がここに。
黒龍はカンちゃんと話すか迷った。
逆にフォードはカンちゃんをじぃっと眺めている。
587
:
虚冥
:2011/10/31(月) 23:50:47 ID:bJBnsqT6
>>581
虚冥にも、露希が恥ずかしがった理由は分からないらしい。
何とも言えない表情をしながら見つめるだけである。
しかし、魔王の部分の理解はできたらしい虚冥はにんまりと笑って、
もう一度黒蔵のほうへと向きなおった。
魔王とはどういうものか見ておけ、とでもいうように。
「知っているか黒蔵?www
トリック・オア・トリートって言葉の意味はなwww
[お菓子がなければ悪戯していい]ってことなんだっていうwww」
意味深な言葉を発してからの虚冥の動きは、とても速かった。
虚冥の手に握られていたもの、それは、
あっつあつのトマトジュースの入った理科などで使われるスポイトである。
その激熱の液体を、黒蔵の丁度首筋に少しだけ注入した。
彼が着ぐるみを着ている分、外からいくらパイなどを投げようが効果は無いが、
中に熱いジュースである、脱ぎにくいだけ効果は抜群だ。
588
:
rei
:2011/10/31(月) 23:51:25 ID:BQ990e1A
>>583
589
:
虚冥
:2011/10/31(月) 23:52:19 ID:bJBnsqT6
安価ミスです
>>587
には
>>583
へも入っています、スイマセン
590
:
露希「」&澪『』
:2011/10/31(月) 23:56:15 ID:BQ990e1A
>>588
ミスです、すいません。
>>583-587
『これって、きちんとした仕事ですよね?詳しく教えてください。』
目を輝かせ、黒蔵に聞いてみる。
これが虚冥の働いてる仕事先と知ったら、澪はきっと落ち込む。
「虚冥さん……。それはある意味、後輩のいじめってやつですよ。
まぁ、ボクも魔王だし楽しもうかなっ?」
魔王は着ぐるみが脱げないよう、黒蔵にしっかりと抱きついた。
そして虚冥に気づいた澪は言葉を失っていた。
591
:
閑古鳥
:2011/10/31(月) 23:57:52 ID:1gBuqmPQ
>>586
「ナンダナンダ爺サン?オイラニ何カ用カイ?
オ菓子ナラモウ食ベチマッタカラ、他ヲ当タッテクレヨナ?」
様子のおかしい黒龍よりも、まじまじと見つめてくるフォード老人のほうに戸惑って
十夜の肩で落ち着かない様子の閑古鳥は足を踏み変えた。
十夜君はちょっと肩が痛いかもしれない。
592
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 00:04:25 ID:SmXQZqJk
>>584
『おい!似合わねぇから!ぜってぇ似合わねぇから!』
全力で否定する七郎。猫耳なんてプライドとかがいろいろ許さないようだ。
「え?ええと…ちょっと見てみたい…かも…」
『十夜、お前……』
>>585
『喜ばねーよ。お前の中で俺はどんな奴なんだよ。』
「え?ぼ、僕?そ、それはちょっと……」
やっぱり恥ずかしいのか、拒否する十夜。
593
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 00:05:12 ID:1gBuqmPQ
>>587
>>590
「え?え?あの、そんな一気に話しかけられても」
聖徳太子ではないのだ。
対応しきれずにあたふたしている間に、狼男はスポイトの餌食になった。
「痛っ!!熱っ!ちょ、露希ま……ぐえっ」
スポイトの先端が首に当たって痛かった。
それに露希が抱きついたとき、ぶら下がった鎖も巻き込まれて、黒蔵の喉元に首輪が食い込む。
(お菓子ある!あるってば!虚冥さん、持ってるの見えてる癖に!)
しかし喋れない。
不幸猛ラッシュに涙目の黒蔵は、何とかして熱さから逃れようと、
着ぐるみの頭部分を脱いで背中の後ろに追いやったので
澪にはばっちり黒蔵の顔が判る筈である。
594
:
虚冥
:2011/11/01(火) 00:12:38 ID:bJBnsqT6
>>590
スポイト攻撃が成功した虚冥は、笑顔のまま露希のほうへ振り向く。
だが、露希の言葉を聞いた虚冥は居住まいを正し、
人差し指を一本だけ立てて悪戯気に笑って言った。
「これが違うんだなっていうwww
丁度これと同じことを別の奴にやってしばかれたばっかだっていうwww
俺は悪戯するかわりにwww殴られても怒らねえんだwww」
虚冥の悪戯には、基本彼なりのルールがある。
悪戯する以上は、その反撃は甘んじて受ける、というものだ。
その為彼は黒蔵の前にも今日、道行く誰かに殴られたらしい。
魔王であるということは、いつ勇者にやられても文句は無いということなのだ。
それと、隣で愕然とした表情をしている澪には、
虚冥のこれでもかというほどの挑発するような笑い顔が贈られている。
>>593
熱がる黒蔵に向かって、またも虚冥はニヤニヤ笑う。
顎に手をやった彼の顔は、してやってというような顔だ。
「違うぜ黒蔵。
俺が望んだのは、“ミルクの菓子”か悪戯だぜ?」
今までもたくさん悪戯を仕掛けた虚冥は黒蔵の顔が見えなくても、
悪戯の種類や状況で、
なんとなくのリアクションや言いたいことは分かるようになっていた。
595
:
黒龍「」&フォード『』
:2011/11/01(火) 00:18:28 ID:BQ990e1A
>>591
『違う違う、良い造りだと思ってな。凄い興味が沸いたんだ。
おお、そうだ、主の名前を聞いてなかったな。』
「あ、俺も気になる。なんて名前なん?」
二人はカンちゃんを見て、変にプレッシャーを掛ける。
カンちゃん、どういう対応をするのだ…?
>>592
「ん?普通にいい奴だと思ってる。
ノリも良さそうなんだけどな、七郎。」
ちょっぴり残念そうに猫耳カチューシャをしまう。
十夜君にも断られ、ちょっぴりがっかりした黒龍だった。
「そうだ、七郎。トリックオアトリート!
お菓子くれないと、お前のこともふるぜ?」
何を思いついたのか、急に七郎にそんなことを言う。
多分、お菓子持ってなさそうだなーと言う感じからのいたずらである。
596
:
閑古鳥
:2011/11/01(火) 00:22:43 ID:1gBuqmPQ
>>592
>>595
「サーテ、ドッチガ猫耳ツケルノカナー?」
猫耳のサイズ的に除外される閑古鳥は、十夜と七郎を見比べてひょいひょいと首を振っている。
「オイラハ、ドッチデモイインダゼー?」
しかし猫耳はしまわれてしまった。
「ナンダヨーツマンナイナー。
十夜かチビ狐のドッチカガ猫耳ツケテクレタラ、オイラノ名前教エテヤンヨ」
やたら偉そうな閑古鳥。これはもうひっぱたいても良いんじゃなかろうか。
597
:
露希「」&澪『』
:2011/11/01(火) 00:26:47 ID:BQ990e1A
>>593-594
「(何それーー!ってことは自分が攻撃を受けるのを前提に悪戯を?
なんか理解出来ないなぁ。もう魔王止めよう。)」
しかし、黒蔵が反撃する様子は伺えない。
これでは虚冥の一人勝ちである。
『あ、黒蔵。』
ちょうど澪が黒蔵の顔を確認した。
虚冥の一部始終をみていたし、元々好きではない為、澪はちょっぴり怒っていた。
さらには黒蔵のこの様である。
反撃できない黒蔵なら、代わりに自分がやろう、と覚悟を決め。
気づいた時にはグーパンチで虚冥の顔面目掛けて放っていた。
「わーーーー!?(何これー!?)」
598
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 00:28:02 ID:SmXQZqJk
>>595
『うお…そうきたか…』
もちろん、七郎はお菓子なんて持っていない。しかし……
『しょうがねぇなぁ、俺がおやつに食おうと思ってたとっておきの味噌をやるよ。特別だからな。』
スッとどこからかパックに入った味噌を取り出す。良い奴だと言ってくれた礼のつもりのようだが、いきなり調味料を出されても普通困るだろう。
>>596
『おいコラ。誰がチビ狐だよ。別に小さくないっての。俺は、猫耳なんざ付けねぇかんな。』
「僕もちょっと……猫耳は……」
七郎も十夜もどこかうんざりした様子。
まぁ、これが普通の反応なのだろう。
599
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 00:31:31 ID:1gBuqmPQ
>>594
(殴りたい、ああ殴りたい、殴りたい)
しかし今はそのための十分な腕力が無い。
しかもまだ露希は離してくれないし、なにより籠を持っているので、黒蔵は殴れない。
首は絞められたまま、次第に視界もぼやけてきて、周りの状況が良く見えなくなってきた。
(あ)
しかし、反撃として出来ることがまだ一つだけあった。
(蹴ればいいのか)
だいぶ本気度の高い狼男の蹴りが、得意げな先輩ホストの、偶然にも金的を狙った。
そして
>>597
の澪の行動も、あまりよく見えていないままだった、
600
:
黒龍
:2011/11/01(火) 00:40:46 ID:BQ990e1A
>>596
「…七郎、コイツ燃やしちまおうぜ?
焼き鳥にでもなれって感じなんだが。」
黒龍は半笑いしながら、がっちりとカンちゃんを押さえ付けた。
勿論、冗談のつもりではあるのだが。
>>598
「え?おやつ?味噌?」
七郎が味噌を好きなのは少し前に知ったが、
まさかそのままとは思わなかった。
「七郎、冗談だって!お前のおやつを取り上げるとか、そんなことしないって!!
それに俺、味噌をそのまま喰わないから!(もふりたかっただけなんだけど)」
なんとか言いたいことを言って、最後にぼやいた。
素直に言えば良いのに。
601
:
虚冥
:2011/11/01(火) 00:41:36 ID:bJBnsqT6
>>597
だから虚冥は常日頃、天狗に悪戯しては殴られるを繰り返し、
それが今や夜行集団での、日常風景と化していたりするのであった。
ちなみに、殴られるのを前提でなく、殴られようと悪戯したい、が正解である。
「お?なんか言いたいことあんのか?っていうwww」
黒蔵のリアクションを見るのに気が行っていたり、
まさか澪が代理するとは思っていなかったりで、
反射的にその拳を片手で止めてしまった虚冥は笑顔のまま、澪に質問をした。
>>599
つまり結果として、今現在意識は完全に澪にだけ向けられていたのである。
今まで反撃がなかった分警戒をしていない虚冥は、
真正面にと言うべきか真下にと言うべきか、思いっきり股間に一撃をくらってしまった。
「っぐあ!?」
男にとってそこへの急襲は、まさにパールハーバーと言われるほどの痛み。
この事実は例にもれず虚冥にも適用され、
ナイトメアの格好の男は膝から崩れ落ちて蹲った。
「て・・・てめえ・・・
ホストの顔に次ぐ禁止区域を蹴りいれやがって・・・」
声を上手く出せずに蹲る虚冥は、痛みのせいで声がかすれていた。
魔王、堕つ。
602
:
閑古鳥
:2011/11/01(火) 00:46:58 ID:1gBuqmPQ
>>600
「キャー!!オマワリサーン、コッチデース!」
魔女っ子龍ちゃんにがっちり体を押さえつけられ、けたたましい声を上げて大騒ぎする閑古鳥。
「コノヒトッテバ変態ナノヨー!!子供に猫耳ツケテモイカガワシイ事スルノヨー!助ケテ殺サレルー!」
カンちゃん、騒ぐのならば大得意である。黒龍はまずその嘴を押さえるべきだった。
603
:
澪
:2011/11/01(火) 00:48:12 ID:BQ990e1A
>>599
,601
『くっ…』
あっけなく受け止められた澪は、少なからず屈辱を味わうことに。
もう駄目だと思った時、黒蔵の攻撃が。
『ぶふっww』
クリティカルヒット、であろうか。
その崩れ落ちる虚冥を見て吹き出し、当てられなかった顔面に一発当てといた。
露希はそれを見て、恥ずかしそうに顔を隠していた。
『黒蔵、やるじゃん。』
604
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 00:57:01 ID:SmXQZqJk
>>600
『あ、そうか。味噌は調味料だったな。忘れてたぜ。』
まさかの発言。まぁ、主食が味噌なので仕方がない。
『ん?燃やすか?』
と、指先に火を灯して見せる。周りに人がいるので控え目だ。
605
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 00:59:46 ID:1gBuqmPQ
>>601
「…げほっ、ごほっ」
多分一生に一度しかできないんじゃなかろうかというクリティカルヒットを放ったのに、
黒蔵はその場にがくりと膝をつく。
それで少しだけ首輪が緩み、呼吸が戻ってきた。
「ひはーっ、ひはーっ」
まだ焦点が定まらぬまま、だらだらと涎を垂らしながら四つんばいで肺に空気を送り込んでいる
その様子はどう見ても狂犬病の狼男である。
後で何処にどんな風にヒットしたか聞いたら、真っ青になって虚冥に謝り倒すに違いない。
今はついてないものだけれど、その痛みはよく知っているのだ。
>>603
そして自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
顔をあげると、見たことのある相手。
「澪?」
顎の涎を着ぐるみの腕で拭って、思い出したように喉もとのジッパーを下げた。
首に流し込まれたトマトジュースで中は今、どうなっているだろう。
606
:
黒龍「」&フォード『』
:2011/11/01(火) 01:03:58 ID:BQ990e1A
>>602
「なっ!?変態じゃねぇ、これ以上言ったらティ○フィナーレぶちこむぞ!!?」
黒龍、敗北。
騒ぐのが得意なカンちゃん、そして周りの視線が痛い。
『こら、もう少し落ち着きなさい。』
そして空気と化していた老人が、注意した。
>>604
「ああ、もうどーんと!やっちゃって欲しいっ…。
もしやってくれたら、味噌プレゼントするからさぁっ…。」
しかし変に手出し出来ないことが分かった黒龍は大人しくカンちゃんを解放することに。
607
:
虚冥
:2011/11/01(火) 01:07:25 ID:bJBnsqT6
>>603
、
>>605
しばらく蹲る虚冥。
今日は仮装な為うかつにも、反撃を兼ねた鉄のガードプレートの入っていないズボンをはいていて、
彼にとっては約数年ぶりの金的である。
しかし、そこは虚冥は場慣れしている、ということなのだろう。
蹲っていたのは10秒前後で、彼はゆっくりながらも立ち上がって見せた。
顔は俯いて表情は窺えないが、
虚冥が何かをしきりに呟いているのは分かる。
「俺1、黒蔵1。
俺0、澪1。負債1。
おいおいせっかく±0だったのに余計なことしやがって。
まあこれで、負債ナシだ」
呟きが止んで顔を上げる虚冥の顔には、またもや悪戯鬼の笑み。
そう、虚冥は澪の一撃が顔に決まった時瞬時に、負債ゼロの一撃を放っていたのだ。
澪の頭上へと、茹でていない硬いままのパンプキンパイが落下してきた。
底の部分と中身だけはくりぬいてあり、丁度他の物の仮装と同じように、
仮面としてかぶれるように作られたものだ。
しかし、澪がかぶせられたジャクォーランタンが他のものと違う所は、
金槌でも持ってこない限り割れないほど硬く、
かつ虚冥の呪詛により明後日までは決して外れない点であった。
「ざまあ見ろっていうwww」
608
:
虚冥
:2011/11/01(火) 01:09:29 ID:bJBnsqT6
>>607
パンプキンパイじゃないですパンプキンです、スイマセン
609
:
閑古鳥
:2011/11/01(火) 01:10:12 ID:1gBuqmPQ
>>604
「嫌ァー!!放火魔ヨ!放火魔ガココニ居ルワヨ!!誰カ通報シテー!!」
とことん他力本願かよおい。
しかしその、あまりの騒ぎっぷりにお爺さんからの救いの手が差し伸べられた。
>>606
「フゥ、助カッタゼ爺サン。オイラ、郭公時計ノ九十九神、閑古鳥ノカン」
解放された途端に図々しさも復活しやがった。
しかし、救い主に名乗る程度の常識は、この鳥頭も持ち合わせていたらしい。
610
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 01:15:06 ID:SmXQZqJk
>>606
『まぁ、燃やすってのは冗談だ。こんなとこでやんねぇよ。いや、ここ以外でもやんねぇけど
でも、味噌は欲しいな。』
「し、七郎。味噌なら僕が買ってあげるから…」
『分かってるって。燃やしたりしねーよ。』
心配した十夜とそんな会話をする七郎。
>>609
『だー!叫ぶなっての!冗談だよ!冗談!マジで通報されたらどうすんだよ!』
慌ててツッコむ七郎。表情に疲れが見える。
611
:
露希「」&澪『』
:2011/11/01(火) 01:16:44 ID:BQ990e1A
>>605
,607
『………………ッ。』
痛い。硬い。取れない。
これぞ虚冥の力なのだろうか。
もう泣きそうで仕方なくなった澪は、走ってどこかに行ってしまう。
きっとノワールだろう。
「とりあえず終わった…のかな?虚冥さんも黒蔵君も大丈夫?
(あの人も変に怪我して無ければいいけど)」
なぜかハロウィンが大乱戦になっていて、露希も入りようがなかったようだ。
612
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 01:23:31 ID:1gBuqmPQ
>>607
>>611
「ああ、やっぱり。クリーニング代がかかる…」
着ぐるみの頭を外して上半分を脱いで見たところ、トマトジュースの赤で
この狼男はなんだか生皮を剥がれている途中のようにも見える。
中で着ていた真っ赤に染み付いたシャツを脱いでみれば、その下には染みと同じ位置に
うっすらと赤く軽い火傷の跡が付いていることだろう。
しかしこの貧乏ホストは、着ぐるみ衣装のクリーニング代に頭を悩ませていた。
「…酷いや、虚冥さん。今日の仕事できなくなっちゃったじゃないか」
泣きそうな顔で見上げるその首からは、まだ首輪と鎖がぶらさがったままである。
「あれ?露希?澪は?」
黒蔵が衣装にかまけて居るうちに、いつの間にか澪は居なくなっていて
困ったような顔の露希がそこに居た。
613
:
黒龍「」&フォード『』
:2011/11/01(火) 01:25:40 ID:BQ990e1A
>>609
『九十九神のカン君か、わしはドワーフのフォードだ。
いい子だ、よしよし。
(元々こんな喋り方なのか?ううむ、なぜか気になる。)』
カンちゃんが多少、おかしいことを見抜いたのか見抜いてないのか…。
しかし直そうと思えば直せるのだ。
>>610
「七郎、あんまり弟さんに気を遣わせるなよ?
でも、お互いに理解し合ってそうな感じだよな。」
凄く仲の良さそうなのは、見ただけで分かる。
少し羨ましそうに見ていた。
「(零の奴、ハロウィンくらいであんなに捻くれて。)」
614
:
虚冥
:2011/11/01(火) 01:29:32 ID:bJBnsqT6
>>611
澪が走り去っていくのでそろそろ嘲り笑うは止めて虚冥は、
少し真面目な顔をして、露希の方を振り向き言った。
「いや、下の方は大丈夫だけどな。
反撃が来ないと思ってた黒蔵にやられたから頭が混乱してるっていう」
だから姫に宥めてもらう、とまでは流石に口に出さなかったが、
どうやら混乱しているというのは本当の様である。
>>612
「そんなもん他の奴に借りたらいいだろうがっていうwww」
服を気にするそぶりを見せる黒蔵を見つめて、
彼の言葉に軽い調子で笑いながら答えた。
それから、これは頭が混乱しているからなのかそれとも素なのか、
そっとクリーン代に戸惑う黒蔵に、数枚の一万円の紙幣を差し出していた。
「今日はいくらなんでもヘビーなもん食らいすぎたからな。
この金もらう分、
今日俺がサボる穴をお前が埋めろよっていうwww」
しかしその行動の理由には、そうしたものがあるらしかった。
615
:
閑古鳥
:2011/11/01(火) 01:31:13 ID:1gBuqmPQ
>>610
「冗談デモ火遊ビハ良クナイゼー!マッチ一本火事ノモト!」
火に関しては良い思い出の無い閑古鳥。
まあいつも、口が災いを呼ぶ自業自得なのだが。
>>613
「ドワーフ?モシカシテ、オイラト同郷カ?コウ見エテオイラッテバ、舶来品ナノヨ!」
ちょっぴり得意げに胸を張る閑古鳥。その背中は塗りの少々粗い木製である。
時計職人は努力してくれたのだが、どうも骨董品の風格は感じられない。
「チョットワケアリデ、今ハコンナダケドナ。本当ハモット立派ナ鳥ニ化ケラレルンダ」
立派に化けても黒くて煩い鳥だったよ。
616
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 01:35:09 ID:SmXQZqJk
>>613
『分かってるって。
ま、こいつは本当の弟のようなもんだからな。』
「ありがとう、七郎。」
そういわれて、少し恥ずかしそうにする十夜。だが、嬉しそうでもある。
>>615
『ああ、まぁ、火事だけは起こさないように気をつけるぜ。』
火の扱いは慣れているが、慣れているからこそ気をつけようと思った七郎だった。
617
:
露希
:2011/11/01(火) 01:37:45 ID:BQ990e1A
>>612-614
「澪?ああ、なんか半泣きしながら帰ってったよ…。」
かぼちゃ攻撃は精神的にダメージが与えられる。
よって、澪は余計に虚冥が苦手になったようだ。
澪に軽く同情した露希は、黒蔵にそう伝えた。
「でも黒蔵君もよく反撃しましたよね。
まさか、あんなとこ狙うなんてボクも思わなかったですし。」
黒蔵はわざとやってないとしても、露希から見たら狙った風にしか見えなかったようだ。
618
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 01:42:42 ID:1gBuqmPQ
>>614
「借りたらって…返さなきゃならないじゃないですか結局ー」
黒蔵はぶつぶつ言いながらもクリーニング代は受け取った。
受け取ってから穴埋めの話を聞かされて、少々慌てながら立ち上がる。
「いやあの、これから俺も店に戻らなきゃならないんですけど?!」
どの道クリーニング代は誰かに借りるしかないのだ。
そして痛みの酷くなってきた首から胸にかけての火傷を、早く冷やさなくてはならない。
>>617
「澪、帰っちゃったのか。何か聞きたそうだったのになー。
うん、反撃できると自分でも思わなかった…って、あんなとこ?」
着ぐるみの頭と籠を回収しながら、半剥きの狼男は露希の言葉に首を傾げた。
ちゃりん、と鎖が音を立てる。
619
:
黒龍「」&フォード『』
:2011/11/01(火) 01:45:11 ID:BQ990e1A
>>615
『舶来品?そうだったか!
お主とは気が合いそうだな♪
ところで、その訳ありって言うのは、修理をすれば直せるのか?
わし、こう見えてももの造りは得意なんだ。』
おじいちゃん、ちょっと機嫌よさげです。
きっとカンちゃんが頼めば、後日、直してくれるはず。
>>616
「それなら安心だ。さて、俺はそろそろ家に戻ろうかな。
実は、彼zy…いや、うん、俺の家族が待ってるからな。
じゃあな、七郎、十夜。」
二人を見ていて、こちらもイチャイチャしたくなったのだろう。
黒龍は別れを言うと、露希を置いて帰るだろう。
620
:
閑古鳥
:2011/11/01(火) 01:52:29 ID:1gBuqmPQ
>>619
「直シテクレルノカ!?ソレナラ是非頼ミタイナ♪」
ぴょん、と十夜の肩からおじいちゃんの方へ飛び移った閑古鳥。
おじいちゃんは耳元でカチカチと、かすかな心音のような時を刻む音を聞くかもしれない。
「ヤッパ、コノ身体ジャ強張リガ酷クテナー。一緒ニ行ッテモ良イカ?」
>>616
「ソウ言ウ訳ダカラ、マタナー!」
おじいちゃんの返事もまだ聞いていないのに、十夜と七郎にそう挨拶をし、
この閑古鳥はおじいちゃんの肩ですっかりくつろいでいた。
この口の悪い鳥は、ままおじいちゃんについてゆくのだろう。
621
:
虚冥
:2011/11/01(火) 01:55:49 ID:bJBnsqT6
>>617
、
>>618
露希に虚冥は無言で頷いた。
黒蔵との思い出の中で、悪戯を含めても彼の反撃というのは、
これ以上のないほどの衝撃だったのである。
「当たり前だろwwwでもスタッフルームにサラのがあるかもしれねえなwww
そこら辺は氷亜にでも聞いてくれっていうwww」
黒蔵の不満を流しながら、虚冥は服に関しての自分の記憶を探った。
だが、結局は氷亜に任せることにしたのであった。
「戻りゃあいいじゃねえか。
どうせ俺は今日店の中の登板だっていうwww
てか、俺他の奴にもトリックオアミルクトリートしたいし、
そろそろおいとまするっていうwww」
これから出会う悪戯相手に思いを馳せながら、
虚冥は再び衣装に身を包んだ。
「それと、あれだ黒蔵。
お前の金的大分効いたぜっていう」
そして彼はそう言い残し、ハロウィンの街へと消えて入った。
/これで僕は落ちにします
/絡みありがとうございました!!
622
:
露希
:2011/11/01(火) 02:02:49 ID:BQ990e1A
>>618
,621
「……男の人なら、絶対当たると痛いところ、かなぁ…。」
これなら黒蔵も分かるはずだろう。
にしても、やはりホストは大変なんだなぁと実感する。
「ボクもそろそろ帰らなきゃ。虚冥さん、黒蔵君、じゃあね。」
今までのハロウィンとは少し質の違う物となった。
だが、それはそれで良かったのかもしれない。
二人に手を振ると、露希は家に帰っていった。
623
:
十夜「」&七郎『』
:2011/11/01(火) 02:04:28 ID:SmXQZqJk
>>619
「さようなら。」
十夜(彼…?)
『ああ、じゃあな。』
七郎(彼…?)
こちらも別れを言い、黒龍が帰っていくのを見送った。
>>620
『おう、じゃあな。直るといいな。』
「さようなら。またね。」
二人は、閑古鳥に別れを言った。
『さって、そろそろ俺らも帰ろうぜ。いろんな奴に会えて、なかなか楽しめたしな。』
「うん、そうだね。」
二人とも満足そうな表情で帰っていった。
/自分もここで落ちます。絡みありがとうございました&お疲れ様です。
624
:
黒蔵
:2011/11/01(火) 02:05:24 ID:1gBuqmPQ
>>621
「金…的?」
黒蔵がぴたりと動きを止めた。
ざーーーっと音でも聞こえそうな勢いでその表情から血の気が失せる。
(何でそれで平気なんだ虚冥さん…じゃなくて)
「うわああああ!!マジでっ!?ごめんなさいいいいっっ!!!!」
雑踏を遠ざかる虚冥を追いかけて、飴の籠と着ぐるみの頭を両手に下げた
貧乏ホストも、鎖の音を立てながら虚冥を追って店のほうへ遠ざかってゆく。
きっと別の衣装に着替えるとき、後になってから痛み出す火傷に擦れて悶絶するのだろう。
625
:
フォード
:2011/11/01(火) 02:06:29 ID:BQ990e1A
>>620
「おっ、わしと来るか?いいぞ。
それにしても、お前さんを作った職人はいい腕をしておるな。
是非とも、一度は会ってみたいものだな…」
カンちゃんを肩に乗せて、山奥の洋館へと向かうのだ。
十夜たちにも軽くお辞儀をすると、繁華街を後にするのだった。
626
:
名無しさん
:2011/11/12(土) 22:49:15 ID:bJBnsqT6
装飾の気間細かく刻まれた長椅子が然として並び、
それらの列の中央に、堂々と敷かれた紅く長いカーペット。
中に数々の色を投げかけるステンドグラスが、上から見下ろすそこは、
運命の怪物、神代の支配する教会である。
司祭の立つ立ち位置には神代が、
敬虔な信者のように、静粛に長椅子の前列に腰掛けるのは、
右から農夫、包帯男、そして榊である。
「くすくす、この構図は少し照れてしまいますね。
まるで僕が今から演説をするようではないですか」
「いんや、坊ちゃんはおらたちのリーダー、導き手なんだ、
どっちかっていうと激励の言葉くらいは欲しいな」
「そうだぞ!逆に俺はこの構図結構好きだぞ!
なんか知らんが、カッケー!」
今から神より授かった命、
穂産姉妹神討伐を前にして彼らはこの教会に集結し、
今、新たに加わった仲間の稀璃華、巴津火を悠然と待っていた。
627
:
巴津火
:2011/11/12(土) 23:02:03 ID:1gBuqmPQ
>>626
いよいよその時である。
秋牙羅未の大剣を背負って、ガラス球の入った袋も持った。
念のためにと、ミナクチの一部が小さな翡翠の輪になってついてくることにもなった。
叡肖『万一の時のために、だよ。
あの黒い奴と、榊の新情報が気になる。俺も支援できるように控えているからな』
そう言い含められていても、お目付けが付いてくるのは正直嬉しくない。
大剣の柄にぶら下げられた翡翠の輪を不満そうに軽く睨んで、巴津火は教会の扉を開いた。
「神代ー、来たぞ」
あまり機嫌の良く無さそうな声が教会に響く。
うっかりすると引きずりそうな大剣を斜めに背負って巴津火はカーペットを歩み、祭壇の前に来た。
「で、どう攻めるんだ?」
まず最初にそう尋ねた。
628
:
稀璃華
:2011/11/12(土) 23:06:31 ID:BQ990e1A
>>626-627
時は満ちた。
今日の稀璃華は容姿、雰囲気が今までとは全く違っていた。
長くサイドテールにされた髪は随分と短くなり、
片手には大きな槍を持って。
巴津火の後に続き、教会へと入った。
「………。」
629
:
夜行集団
:2011/11/12(土) 23:19:29 ID:bJBnsqT6
>>627
彼らにとって背後に当たる扉の開く音を聞いて、
農夫は訪問者がだれかを知って渋々と、
包帯男は誰かが分からなくとも嬉々として後ろを振り向いた。
「来たか。まあ遅刻はしてねえが、
なんだそのテンションは死ぬぞ?」
「おお!あの時の蛇じゃないか!!
新入りはお前のことだったのか驚いたぞ!」
「おい、巴津火が仲間って今知ったのかよ」
「くすくす、みなさん揃いましたね。
こんばんは巴津火さん、稀璃華さん。
僕へのご協力、とても感謝しています」
神代はニコニコと優しい笑みをフードの下から覗かせながら、
いつものあの美しい響きで二人を出迎える。
「攻め方は、特別なことはやりません。
敷いて言うならば真っ正面から堂々と、と言った感じでしょうか。
英雄譚、新たに神話を作ろうとしている彼らは、
どうやら格好をとても気にするそうなのです。ヤマトタケルノミコトしかりです」
630
:
夜行集団
:2011/11/12(土) 23:20:27 ID:bJBnsqT6
安価ミスです
>>629
には
>>628
へも含みます
631
:
巴津火
:2011/11/12(土) 23:31:01 ID:1gBuqmPQ
>>628-629
「あの時の蛇って、おい。そもそもそっちが誘いに来たんじゃないか」
流石に包帯男には突っ込み返す。
「神話を創る?誰が?」
そんなことを企んでいるとは初耳だ。巴津火は思わず神代に尋ね返していた。
意図しなくても神々が動けば神話になってしまうのに、それを創るということは、
そこに誰かの意図があり仕組まれた物事があることを示している。
「で、神代はどうするんだ?俺と…稀璃華はどう動けば良い?」
背後の稀璃華に、微妙に身体を斜めにしながら巴津火はそう神代に尋ねる。
流石に稀璃華から抱きついてくる気配はないが、巴津火にとってその警戒はもう習性に
なってしまっているのだ。
(見える範囲にこいつが入ってないと何か落ち着かないんだよ…)
632
:
稀璃華
:2011/11/12(土) 23:38:25 ID:BQ990e1A
>>629-631
「よろしく」
いつものように、巴津火に抱きついたり
農夫達を見て騒ぎ立てたりはしていない。
今日、この後に起きる出来事を思慮しての振る舞い方なのだろう。
「正面から戦うのなら、適当に暴れればいいんじゃないのか、巴津火?」
633
:
名無しさん
:2011/11/12(土) 23:49:13 ID:bJBnsqT6
>>631
、
>>632
巴津火の言葉に包帯男は立ち尽くす。
包帯で顔は見えないが、なんとなく困惑しているのが窺える彼を見て、
農夫は深くため息をつき、呆れて両手で顔を覆った。
「おらは言ったぞ、ヤマタノオロチを仲間に引き入れたって。
あの神社に行く前に懇々と説明したよな?」
「説明されたってな!!戦う前だから高ぶってそんなの全部忘れるだろ!!
そんなことぐらいも分からんのか馬鹿!!」
「おおコラ?」
今にも喧嘩をしそうな二人をほっておいて、
神代は苦笑いをしながら巴津火稀璃華と会話をすることにした。
「くすくす、それは僕達ですよ。
僕達が穂産姉妹を打倒する、そんな神話を天界は予想しているようです」
稀璃華の言葉を聞いて、榊は静かに立ち上がった。
こつこつと靴音を鳴らしながら近づくのは、
彼女が説明しようというのだろう。
「その通りだ。
この神話は堂々と神代達が邪を打倒する。
それだけを天界の者達は望んでいるのだ。だからどう暴れようと問題がない」
634
:
巴津火
:2011/11/13(日) 00:00:39 ID:1gBuqmPQ
>>632
「本当に適当に暴れてもいいのならそうするけど、そのかわり巻き込まれる覚悟はしてくれよな」
稀璃華へ笑ってみせた紫濁の瞳は冷たく底光りし、本気であることを示す。
しかしそれはほんの一瞬で、巴津火はフードに隠れた神代の顔を覗き込んで何時もどおりに尋ねた。
>>633
「この前渡したガラス玉、ちゃんと持ってるか?あれ、お前のお守りだからな」
もし神代がそれを持っているなら、いざという時に離れていても巴津火は一度だけ
神代を守る事が出来る。
「それとお前の親の仇を討ったら、神代はその後どうするんだ?」
戦う前にそれだけは確かめておきたかった。
神代の意志、戦いのその先に希望することを、巴津火は知っておきたかったのだ。
榊の言葉には頷き、短く答える。
「判った、好き勝手に暴れれば良いんだな」
大剣の柄からぶら下がった尾を噛む蛇を模した翡翠の輪が、
どこか不安げに絹紐の先で房と一緒にゆれていた。
635
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 00:13:53 ID:BQ990e1A
>>633-634
「神話か、楽しみだな。
でも、無理はするなよ。」
神代に一言声を掛け、手に持った槍を一振り。
「巻き込んだら、どうなるか分かってるよな?」
巻き込んで、生きていられたら、巴津火は抱き殺されるだろう。
まぁ大丈夫だ、と最後に付け加える。
「さて、巴津火が暴れるんなら僕も本気だそうかな。」
636
:
名無しさん
:2011/11/13(日) 00:24:37 ID:bJBnsqT6
>>634
神代は巴津火の言葉を聞いて黙りながら、
ローブの中に手を突っ込んで、巴津火の言うお守りを取り出す。
その手に握られているガラス玉には傷がなく、
あの後神代はそれを大事に、傷つかないようしまってあったのが窺えた。
「ふふ、初めてのお友達ですからね。
思わず大事に大事にしまっていました」
神代でも、贈り物を厳重にしっかりと守っているのは、
流石にやりすぎだと分かっているのか少し照れている。
「終わった後、ですか。そうですね・・・。
くすくす、今は秘密、にしておきましょうか」
しばらく質問に考え込む仕草をしてから、
神代は何故か寂しそうに笑い、口元を人差し指で押さえて答える。
その様を、農夫は包帯男を叱りながら横目で見ていた。
あくまでも彼らのリーダーであり、さらに運命に左右され続けた少年、
神代のこれからについては、彼もどうしようもなく気になっていたようである。
>>635
「ふふ、そうですね。
ですがまずは倒せてからの話です。
どうか、体にはあなたもお気をつけてください」
頼もしくやりを振るって見せた稀璃華に、
神代は丁寧で優しく微笑んだ。
いまさら言うまでもないことであるが、神話には神々が勝つこともあれば、
ヤマトタケルのようにみじめに一人死したり、
そもそも神々の世界全てが敗北によって消え去ることもあるのだ。
さらに相手は穂産姉妹、元上位神格である。
>>ALL
「ふふ、それではみなさん準備はよろしいですか?」
神代は教会にいる全ての者を見渡して言う。
その言葉に先ほどまでいざこざしていた農夫、
さては包帯の彼すらも凛として身なりを整え頷いた。
637
:
巴津火
:2011/11/13(日) 00:39:59 ID:1gBuqmPQ
>>635
「つまり巻き込んだら全部殺せば良いんだろ判ってるさ」
座った目で稀璃華に笑い返す巴津火。
なぜか他の誰とよりもギスギスした雰囲気がこの二人の間には漂う。
(こいつにはもう二度と触らせねーぞ)
あの時を思い出してぞぞぞっ、とシャツの下で巴津火の皮膚には鳥肌が立った。
>>636
「秘密、か」
意味深に、寂しげにそういう神代に、巴津火はつまらなそうに鼻を鳴らした。
そしてフードの耳元に口を寄せ
「終わったところで燃え尽きたりするなよ?
思い残すことは無い、これでもう死んでも良いなんて思うようだったら…
ケガレ
…ボクはお前を"気枯れ″と見なす」
ほんの一瞬、どこか残忍な笑みを浮かべた巴津火は、脅迫するかのように囁いた。
生気が尽きて枯れた状態、それは穢れにも繋がり、水の神格にとっては漱ぐ対象でもある。
「そんなことさえなきゃ、ボクはお前を守る。……始めてくれ」
ころりと普段の表情に戻った巴津火は、神代の肩を軽く叩いて行動を促した。
638
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 00:49:04 ID:BQ990e1A
>>636-637
「………それでいい、巴津火。
この中で死者が出るなら、僕が弔う。皆、死を恐れるな。」
ゆっくりと頷きながら、身を整えた稀璃華。
準備は万全である。
「僕も大丈夫だ。全力で参る。」
639
:
名無しさん
:2011/11/13(日) 00:56:46 ID:bJBnsqT6
大人しく耳打ちを聞いた神代は、
離れた巴津火に対し手を口元までやって静かに笑った。
農夫は内容を気にしていたが、聞いてくる様子はなく、
包帯男のほうはその仕草自体に気付いていないようだ。
「くすくす、大丈夫ですよ。
僕は燃え尽きませんしそもそも、
きっと僕は燃えてはいけなくとも最後まで燃える、そんな性を持っているのでしょうし」
さらりと巴津火の笑みを流しながら神代は慣れた手つきで、
手を肩の高さまで上げ、何かを呟いた。
すると見る見るうちに、神代の足元で赤と黒の混じりあった炎が燃え始め、
最後には人の背丈を大きく超える程になる。
「では、行きましょうか」
農夫がライターで出現させていたあの炎は、
どうやら神代の術を半永久的に刻んだものであるようだ。
「・・・守ってほしくはないのです」
そして黒炎の燃え盛る音にかき消されるほどの、
とても小さな小さな声で、神代は呟いた。
>>638
「そう言うな!出来る限りみんな生き残るぞ!!
・・・死ぬのは痛いし死体運ぶのがめんどくさいからな!!」
「なんで最後までカッコつけられねえんだよ、」
神代が一番に炎で飛び込んでから、
包帯男と農夫は入る前に稀璃華を振り返って、笑いながら言った。
神代の目標は、こちらの死傷者はゼロ、である。
640
:
巴津火
:2011/11/13(日) 01:04:48 ID:1gBuqmPQ
>>638-639
「死を覚悟して戦う奴なら良い。死ぬことが目的で戦う奴がいたら、ボクが食らう」
斜めに背負っていた大剣を下ろし、鞘ごと肩に担いだ巴津火は稀璃華の言葉にそう続けた。
巴津火が穂産姉妹神と戦う理由はこれである。
自ら死のうとした姉妹は既に巴津火にとって漱ぐ対象であり、それを食らうことで巴津火は
また力を蓄えるつもりなのだ。
つまり巴津火には、場合によっては穂産姉妹神どころかこの場にいる全員、いや夜行集団すらも
敵として見なすことにためらいは無い。
このことが叡肖を始め竜宮にとっては頭痛のタネである。
夜行集団とは協力関係の筈なのだが、巴津火は一切そこを考慮しないのだ。
(竜宮の馬鹿どもは勝手に困れば良いんだ)
腹の中で舌をだしながら、巴津火は黒炎に踏み込んだ。
641
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 01:13:07 ID:BQ990e1A
>>639-640
「くすっ、そうだな。」
二人のやりとりをくすりと笑う。
巴津火に関しては何を考えているのか全く読めず。
喰っちゃだめだろう?と言うと、稀璃華も黒炎へと入った。
「(さて、どうするかな。)」
642
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 01:21:16 ID:bJBnsqT6
>>640
、
>>641
黒と赤、二色の炎が前方を遮るが、
しばらくの時間をおくと、それらは一瞬にして霧散する。
そして彼らの目に映る最初の光景は、荘厳で巨大な一つの建造物。
あたりはしんと静まり返り人気はない。
太陽は沈みきって暗い空には、半分欠けた月が浮かんでいる。
そしてその月が光を降らしているここは、あらゆる因縁の決戦地となる、
名は信仰と人の記憶とともに失われた、穂産姉妹の大社。
だが建築物は全てもれなく風雨、不手入れ、
あらゆる種類の劣化風化にあい、あらゆる箇所が痛んで朽ちている。
そしてそれが神格剥奪の憂いを表しているかのように、
穂産姉妹の本殿、そしてその前を二列になって建つ守護神殿は、
特に劣化ひどく看板、境内、あらゆる場所に穴や崩壊があった。
そして彼らの炎から姿を現して立つここは、
それらに三方向から囲まれた、まさに神代の言った通りの真正面である。
「最初の火蓋は、まあ坊ちゃんがおろすべきなんだろうが、
巴津火、稀璃華。
めったにねえ事なんだから、おまえらのどっちか、やってみねえか」
この大社に来てから、少し神代の雰囲気が変わる。
それをどことなく感じた農夫はだしぬけに、
二人の方を振り返って提案をしてみた。彼なりに神代に気遣ったのだ。
643
:
巴津火
:2011/11/13(日) 01:39:03 ID:1gBuqmPQ
>>641
「生きものはな、食うか食われるかなんだ」
石にはよく判らない価値観だろうけどな、と稀璃華に答えながら黒炎を抜ける。
>>642
「どっちか、じゃなくてどっちにもやらせたいんじゃないのか?」
農夫と包帯男、榊を見回し、稀璃華にもにやりと笑いかける。
お前達の力を披露しろ、ということなのだと判っていても、あえて乗ることにした巴津火は
鞘ごと大剣を足元に突き刺す。
まだ秋牙羅未の力は解き放たれず、剣は巴津火の振るうがままだ。
「来い!」
まだ荒削りで無駄の多い巴津火の力を、翡翠の輪のミナクチがサポートする。
鞘先から地が割れ、大人が二人入れるほどの裂け目が生じ、呼び起こされた水脈が湧き出した。
ごぼごぼと膝丈ほどに水が盛り上がり沸きたち、次第に地表に広がってゆく。
準備は整ったと見て、巴津火は袋ごとあのガラス玉を全部湧き水に放り込んだ。
「稀璃華、先に良いか?」
以前の戦い方からみて、稀璃華の攻撃が突撃型と読んだため、
その前にまず巴津火が広範囲攻撃を仕掛けるつもりである。
いつの間にか鞘の周りには、水が這い上がって巨大な刃と化している。
透き通った水刃を掲げて巴津火は大きく振るった。
その切っ先が建物を指した時、地の裂け目から沸き立つ水が太い柱となって
正面の建物をぶち破ろうと逆巻きながらうねり走る。
建物の正面をまず吹き飛ばすつもりなのだ。
644
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 01:51:33 ID:BQ990e1A
>>642-643
「火蓋?」
姉妹の社を見て、少し不思議な感覚に捉われていた稀璃華。
つい疑問形で発してしまったらしい。
「任せる、巴津火。」
槍に気を溜め始める稀璃華は、巴津火に頷いた。
妖気を纏った刃の部分は、硬く、鋭く変化していく。
645
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 01:59:58 ID:bJBnsqT6
>>643
、
>>644
凝縮された激流が、本殿を襲いかかろうとしたその瞬間、
高さ横幅は人の背丈三つ分、厚さは2mにも及ぶような巨大な土壁が、
突如として出現しそれを完全に防いだ。
「お久しぶり、ですね巴津火君」
土壁の向こうからは、巴津火もよく知るあの声が、
どう考えても今までの彼女と会わないほど力なく聞こえてきた。
「ふふ、ここは晴れ舞台。
でしたら僕は、礼儀としてフードをはずしたほうがいいですね」
強大な衝突が起こった後、神代はすたすたとおびえることなく前進し、、
何か呟いたかと思うと自身のフードに手をかけ、そっとそれをはずした。
神代がようやくフードで顔を隠さずに堂々と立つ。
そしてその時見えるこの少年の顔は、
どう言えばいいのか言葉をなくすような、とてもちぐはぐな物だった。
「くすくす、醜いですよね?
僕をこんな体にした報い、ようやく受けてもらいます」
首筋までの長さの髪は、
黒と白がマーブル模様のようにバラバラに色として点在している。
しかし問題は髪色ではない。そしてまた眼球の黒と白が、
きっちりと反転してしまっていることも問題ではないのである。
本来ならば色白の綺麗な肌だったのはずなのに、
右目の周りが大きく、黒に塗りつぶされていることよりも問題なそれとは、
神代がフードをはずしたことによって外に漏れ出した、妖気である。
黒と白、その二つが表すかのように、
神代の妖気からは邪を払う清い、上位神格が持つような清涼な妖気の中に、
それとまったく同じ容量の、
地獄の底、サタンレベルで穢れきった黒の妖気が混在していた。
646
:
巴津火
:2011/11/13(日) 02:14:20 ID:1gBuqmPQ
>>645-644
「久しぶりかもな。どうして仲間に話さないで勝手に終わらせようとする?」
案の定、水は土で防がれた。ならば、あれを壊すのは稀璃華に任せたほうが良いだろう。
巴津火はそっと稀璃華に目配せをする。
あの土壁に稀璃華が穴を開けてくれたら、巴津火は第二波を叩き込める。
水を纏った鞘ごとの大剣を肩に担ぎ、榊と包帯男は何をするのだろうかと巴津火は頭を廻らせた。
その間にも裂け目からはこんこんと水が湧き出し、地下の水脈の中へはガラス玉が散って行っている。
「…呪いか」
(さて、秋牙羅未の剣。お前はアレを見てどう思う?祓えそうか?)
フードをはずし呪われた姿を露にした神代と、声だけの姉妹神、双方を伺いながら
鞘の中で眠るこの剣の使い時を巴津火はじっと待っていた。
647
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 02:32:26 ID:BQ990e1A
>>645-646
「」
神代の姿を見る限り、同情はしなかった。
しかし一種の哀れみという感情は沸いた。
辛かったのか、悲しかったのか、稀璃華には分からなくとも、
そこからあふれ出す妖気が、過去を語っているように見えた。
巴津火の攻撃が弾かれると同時に、走りだした稀璃華。
刃は形を変え、三つに刃が別れた。
巴津火なら分かるかも知れぬその槍の形状は、
海の神が使っていた物と酷似している。
648
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 02:41:01 ID:bJBnsqT6
>>646
「私達は絶対に死ぬからですよ。
そう言ったら、氷亜や虚冥でなくとも止めてしまうでしょう?」
壁を隔てて聞こえてくるのは声には、
まだやはり強い意志が見えて、力なくともまだ折れるものではなさそうだ。
巴津火の攻撃に反応したのだろう、
彼らを挟んで立つ守護神殿の三か所から、
突如として三柱の、強力な妖気を携えた守護神たちが出現した。
「おれの名前は夏津燈だ、突然だが、死んじまえ」
その中の大槍を持った、人並の背丈の一柱が巴津火めがけ、
目にも止まらぬ速さで突進を繰り出した。
しかしこの攻撃は、地面から突如発生した木々の群れによって止められる。
「おい巴津火。このちっこいのはおらが相手しておいてやる。
お前は坊ちゃんと一緒に戦え」
ゆっくりと歩きながら本殿より離れる農夫。
大量の木々で夏津燈をからめ捕り、乱暴にそのまま農夫の向かう先に投げ飛ばしていた。
その一方秋牙羅未の大剣は、
神代が姿を現した瞬間既に覚醒し力を漲らせていた。
しかし巴津火は感じれるかもしれない、この力の向く先が、
穂産姉妹でなくあの神代へ、向けられている二つしかないことに。
>>647
日子神は、ある意味油断しているのかもしれない。
なぜなら一度も顔を合していないのだから仕方がないことであるが、
稀璃華のその槍の力を、見くびって稀璃華の接近に対してなんら、
それを妨げるようなことはしていないからだ。
壁の防御は固いが、稀璃華の力があれば貫通するかもしれない。
649
:
巴津火
:2011/11/13(日) 02:56:13 ID:1gBuqmPQ
>>647-648
「ボクは止めないぞ。むしろ、手伝ってやるさ」
くすくすと笑いながら巴津火は声に答えた。
そこへ守護の槍が飛び出すのを、農夫が止めた。
「死んじまえ、か。久々にそんな暴言聞いたな。
……おい、出来ればそいつは縛っとけ。それが無理なら殺せ」
竜宮で馬鹿丁寧に扱われるよりは、こんな真っ直ぐな罵倒のほうがよほど心地よい。
農夫に夏津燈をまかせて、巴津火は大剣の震えを掌に感じながら神代のほうへと近づく。
「暴れたいところ悪いが、生憎、お前の主はボクなんだな」
秋牙羅未の剣が覚醒しても、まだ神木の材の鞘と、さらにその上から水の刃とが剣を縛っているのだ。
「稀璃華、終わったら直ぐに避けろよっ!」
稀璃華が走ってゆくのを目で追いながら、巴津火も再び水刃を構える。
今度は大きく横に振るって、稀璃華が土壁に穴をあけたらそれを広げるように水流で抉るつもりだ。
しかし土壁の向こうから聞こえた声は一つ。
双子のもう片方は他の守護達と別の場所で行動していることも考えられるのだ。
(まずあの二人に、神代の前へ出てきてもらわなきゃな)
650
:
巴津火
:2011/11/13(日) 03:03:26 ID:1gBuqmPQ
//
>>649
追加
残る二柱の守護へは、視線を走らせたものの巴津火は構えを崩さない。
それぞれの攻撃をまずは受けて、相手の力量を読むつもりだ。
651
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 03:08:01 ID:BQ990e1A
>>648-649
「轟け、トライデント。」
土壁目掛けて、槍を大きく振り下げ、
追撃するかの如く、次は思い切り振りあげる。
ここは意地でも壊さなくてはいけない。
ちょうどそこへ巴津火の声が聞こえた。
「巴津火、ぶちかませ!!」
槍を軸に、体を浮かせ、巴津火の後ろへと着地しようとする。
その間にも、周りの守護神への警戒は怠らない。
「(あの壁の向こうの主は折れないのか。
もう一人もいるらしいけど聞こえないな、何処かに潜んでるのか?)」
652
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 03:22:31 ID:bJBnsqT6
>>649
->>651
「悪いな巴津火。たぶん縛るなんてことはできねえよ。
おらがたぶん殺しちまうからな」
後ろ手で手を振りながら、農夫は呑気な口調で答える。
きっと巴津火がこちらへひと段落済ませて来ようとも、
農夫はきっちり夏津燈を仕留めてしまって甲斐がなくなるだろう。
今までのそののどかな調子で誤魔化されてきたが、
神代を除いたこの一派の中で農夫は、
もっとも戦闘、それに関しては傍若無人、悪辣非道なのである。
槍によって放たれた稀璃華の二撃は、
土壁を大きく振動させて、さらにその閃きの形どおりに貫通させた。
その穴の奥には、白い、神服を着た人影がちらりと見える。
「油断してはいけませんよ少年。
吾輩の名前は春宇知厄、あなたを屠って見せましょう」
そして、壁に穴をあけて巴津火の元へ着地しようとした瞬間、
稀璃華の右側から突然、人の背丈の倍ほどの女性が現れた。
稀璃華が気づいて何かの反応をしようとする前に、
既に攻撃の構えをしていた春宇知厄は、強力な正拳を腹部へと放った。
強烈すぎるその威力で、稀璃華は本殿前から大きく離れた場所に、
かなりの速度を持って飛ばされるだろう。
653
:
巴津火
:2011/11/13(日) 03:32:39 ID:1gBuqmPQ
>>651-652
「稀璃華よくやった!」
稀璃華の三叉矛が土壁に皹をいれたのを見て、すかさず巴津火は水刃を振るう。
土壁の修復前に大穴があけられれば、その向こう側へダメージを与えられなくても
かまわないのだ。再び水流がうねり、土壁を抉ろうとする。
その時にはもう、春宇知厄が稀璃華に殴りかかっていた。
(てことはもう一人がボクに来るのか)
殴り飛ばされる稀璃華とは別方向に、巴津火も一度飛び下がった。
神代から離れ、日子神に近づく方向だ。
(まだ迂闊に神代に近づかないほうがいいな。先に守護を始末しないと)
稀璃華なら拳程度では参らないだろうと、ダメージについてはあまり気に掛けていない。
落ち着かない様子でカタカタと暴れる秋牙羅未の大剣に少しウンザリしながらも、
巴津火はもう一柱の守護の様子を含め、辺りの状況を伺った。
(包帯男と榊の様子が伺えないのが気になるな)
敵はともかく味方の状況が見えてこないのだ。
654
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 03:48:30 ID:BQ990e1A
>>652-653
それが並みの拳で有れば、稀璃華にはびくともしないだろう。
だが流石に守護神、と言うだけあって威力はかなりの物。
ふっ飛ばされた稀璃華は、離れた場所の壁にぶつかってようやく止まる。
「こほっ……男の人なら殺すのは気が引けるけど。
女性だしやっちゃおうかなぁ。僕、強いよ?」
吐いた血を拭い、余裕の笑みを浮かべる。
先程溜めた妖気が体に馴染み、石の装甲を身に纏う。
さらに槍は一回り小さくなり、近接近に対応する形となった。
「グングニール。君にはこの武器で終わるのが相応しい。
(早く巴津火たちの元へ戻らないと。)」
655
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 03:58:47 ID:bJBnsqT6
>>653
しかし、巴津火の低めの目的とは反して、
土壁は度重なる会心によってぼろぼろと崩れ去った。
崩壊した土の向こうから見えるのは、
先から言葉を発していた巴津火もよく知る、穂産姉妹神の片割れ、穂産日子神。
「そんなことが出来たのですか、連携なんて。
あなたの性格には合わないと思っていました」
彼女の恰好は神崩れ、その一言が正鵠を射ていて、
着ている神服はそこらじゅうが破れていたり、穴があいていたり、
これが神服でなかったら、唯の浮浪者と間違ってしまう程だった。
だが巴津火は日子神へ、目を遣っているような暇はなくなった。
なぜなら巴津火の意中どおり、
残りの守護神が二つの鎌を手に持ち振りかぶって、
いつのまにか彼の背後から切り裂こうとしているからだ。
二鎌が唸りをあげて、巴津火の胴体辺りに刃を光らせた。
>>654
「強さは関係ありませんよ。
侵入、攻撃、これらをした以上吾輩が行うのは、
排除それだけなのですから」
槍を変えた稀璃華に間髪いれず、
俊敏すぎるフットワークで急接近し、一度稀璃華に背後を見せ油断させた。
しかし一瞬でも心に隙間が浮かんでしまえば、
稀璃華はこの回し蹴りの餌食になるだろう。
「最強の鉾ですか、これは光栄なことであります。
ですが、それはあなたの鼻っ柱とともに折ってしまいましょう」
そしてたとえこの蹴りが交わされようと、
春宇知厄は既に次の一撃への構えを取ることができる。
三手目は顎への掌底。稀璃華のダウンを狙ったものだ。
656
:
巴津火
:2011/11/13(日) 04:25:24 ID:1gBuqmPQ
>>654
稀璃華が立ち上がったのが目の端でちらりと見えた。
あちらは放っておいて良さそうだ。
ここからは完全に単独行動だと、巴津火は紫狂の顔でほくそえむ。
(よし全部ぶち壊す!)
上手く行けば穂産姉妹も神代も巴津火の餌となるかもしれない。
下手をすれば穂産姉妹も神代も助かってしまうかもしれない。
全てはこの反逆の申し子と姉妹神にかかっているのだ。
>>655
「連携?ボクとしては利用って言って欲しいなぁ」
日子神に向けてニタリと笑う表情は、かつての窮奇のそれと酷似していた。
背後からの鎌の片方へと、秋牙羅未の大剣が鞘ごと振るわれた。
鎌の一撃で鞘が破れ、かつての守護の刀身が一部露になる。
もう片方の鎌は、半歩避けた巴津火のわき腹から背中をやや深めに抉った。
「痛いじゃないか。
ほら、この通りボクは秋牙羅未の役を引き継いでいるんだけど、
君は同士討ちをしたいのかい?」
自分に攻撃してきた冬の守護に、くすくすと笑いながら
半邪神は見せ付けるかのように血を流す傷と大剣とを示して見せた。
「見ているだけならそっちも、自分の守護同士の対決をお望みだと見て『良い』のかなぁ?」
血で濡れた傷を負いながら、ニヤニヤ笑いを深める巴津火の妖気の質が変わった。
毒気と悪意を含んだ、神格混じりとは思えない強い邪気である。
「この剣に護られし我が主の思し召しとあらば、同士討ちも致し方ないね」
日子神の耳を汚す毒を含む言葉を、二股の舌が紡いだ。
巴津火は暗に要求しているのだ。日子神が神代を殺せと命じるのか否か、を。
曲がりなりにも守護の立場を受け継ぎながら、主である立場の姉妹神を試して面白がっている。
日子神が巴津火を敵と見なすか、味方として守護を命じるか、どちらにしても同士討ちには変わりないのだ。
657
:
稀璃華
:2011/11/13(日) 04:39:54 ID:BQ990e1A
>>655-656
「ねぇ、僕のことなめてるでしょ、君。
槍は一本じゃないんだよね。」
稀璃華が春宇知厄と距離を取ると、彼女のいる地面から、無数の槍が飛び出す。
彼女のフットワークなら問題ないだろう。
しかしそれでも、数は多い。
「君は、なんの為に守護神やってるの?
排除、たったそれだけの意しか持たない君が僕に勝てるの?
………無理だなぁ。きっと。」
稀璃華の笑みは絶えない。
これは何かの予兆か。
もしくは泣塔に手を出した物はただでは済まないことを
表してるのかもしれない。
658
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 04:49:03 ID:bJBnsqT6
>>656
日子神は遠目からでもわかる、巴津火に引き継がれた邪心を見た。
しかし、光がなくなって意思だけが込められたこの瞳が動じることは無く、
ただまっすぐに向こうの神代と面しているだけであった。
「くすくす、利用、ですか。確かにそう言えば反転してしまいますね」
日子神の言葉を代弁するかのように、
立ち尽くしたままの神代は口角を先ほどよりも上げて、
こちらも彼女に視線を送っている。
「我は士通冬、破邪の神なり。
一切の邪、一切の不義を消しさる」
「どのような武器であっても、何が残されても本当は、
使う者だけが行動の義を持っているのです。
それに私は、同士打ちとなってももとより止まる気はありません」
巴津火の逆心の力も届かないほどに、
穂産姉妹神の心は硬く、そして揺るげないものと変わってしまっていた。
日子神が巴津火に命令を執行せず、
代わりに士通冬にさらなる追撃として、片方の鎌を巴津火の足元に刈り取らせた。
どうやら彼女は同志討ちを物とも思わず、
巴津火を敵として判断したようである。
そして巴津火が負うべき同志討ちによる不義は、穂産姉妹神への反逆となった。
>>657
足場を失くしたことによって回し蹴りはあきらめる。
しかしそこは守護神、すぐ飛び上がった姿勢から、
構えは既に行われていた掌底を稀璃華に放つ。
「排除とは護衛の一義ですよ少年。
それに、意を複数持つ様な不純な行動で、己の意思をしかと持てるのですか?」
そして掌低の最中に下の槍は複数折られ、
彼女の着地のエリアはもう確保されていた。
さらに上段蹴りを着地とともに放つ準備も。
659
:
巴津火
:2011/11/13(日) 05:31:47 ID:1gBuqmPQ
>>658-659
「なーんだ、そういう選択かぁ」
ため息とともに一部が壊れた鞘が払われ、投げ捨てられた。
「残念だったね秋牙羅未の剣、ボクが持ち主だとその力はお仲間に認めてもらえないってさ。
あと、ボクは無駄な同士討ちは好まないんだ」
士通冬の鎌が振るわれた瞬間、巴津火の姿がつつっと滑るように動いた。
歩いたようにも走ったようにも見えないが、かなりの移動速度で一撃は避けられる。
「無駄な同士討ちなんかよりもさ、下克上ってほうがずっと『良い』選択肢だと思わない?」
士通冬の目の前から神殿へ、まだ溢れ続ける湧き水を飲み込んで広がりつつある水溜りは、
先ほどの二本の水柱の成れの果てである。
その水面を滑るように移動してきた巴津火は、ねぇそうでしょ?と笑顔で同意を求めながら
秋牙羅未の大剣を日子神の白い喉元に突きつけていた。
姉妹をまた復活させることが出来ると知っている巴津火は
守護神の妨害があったところで、笑いながら躊躇い無く日子神を手に掛けることだろう。
それはまた同時に、神代に穂産姉妹を殺害させようとする何者かの意図を妨害する一端にも
なりうるのだ。
(穂産姉妹の力の源が手に入るなら、多少の怪我も我慢しないとな)
「『悪い』けど、また死んでもらうね?」
強い邪気を纏った子供の半邪神は、日子神に無邪気に笑って見せた。
660
:
名無しさん
:2011/11/13(日) 09:26:39 ID:HbHPxpxY
>>657-658
「護衛かぁ。君はあの姉妹を守る為に生きてるのか。
確かに一つの意は固く、物事を貫き通せる。
だけど、それだけじゃ駄目なんだ、気付いた時にはもう遅い。」
上段蹴りを避けるかと思えば、がっしりと構え、それを受け止める。
「今、ここにいる君はこの意を最後まで貫き通せ。
そして、もし。君に新しい世界が訪れた時は、もっと別の意を持て。
君は理解出来る人だと信じている。」
次の瞬間、彼女を投げ飛ばし、追撃をかける。
装甲を外したが為に動きは早い
661
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 11:33:16 ID:bJBnsqT6
>>659
「我は邪を滅するものなり」
さらなる一撃を喰らわそうと二つの鎌を振り上げるも、
一瞬にして射程距離外に言ってしまった巴津火にどうすることもできない。
大きく開いた距離を士通冬は、素早く接近を始めた。
しかし、この守護神が到着する前には、
巴津火がさまざまなことを行う時間が発生してしまうだろう。
「邪神の種を持っているというのは伊達でありませんね。
ですが、あなたは何故切りかかる前に質問をするのですか?
相手に恐れを抱かせたい?それとも自分鼓舞したい?
相手の了承がないと、やはりあなたは斬れないのですか?」
半分不死の体をもつからなのか、
喉元に刃が光っても取り乱す様子はなく、むしろ笑っていた。
蔑むように笑って見つめる日子神は、
あたかも巴津火を挑発しているかのようである。
>>660
岩すらも易々と砕く、そう呼ばれ続けた彼女は蹴りを止められ、
少し驚いて目を丸くしていた。
そのため一瞬隙が生じ、彼女は投げ飛ばされてしまった。
「なるほどなるほど。
物事をまだ知らぬ少年かと思っていましたが、
存外あなたにも考え付いたものがあるのですね」
しかしさっと空中で身を翻し、受け身も取らずに地面へと、
難もなさげにすとっと着地して見せる。
「ですがどうであろうと、吾輩は一を貫きますよ。
少なくとも吾輩と、あそこの夏津燈は以前より穂産姉妹神の守護。
これが生きる道を固定されたつもりはありませんが、
どのような世界でも吾輩たちは、あの姉妹の盾と槍」
接近する稀璃華を撃退するように、
腰を少し下ろして態勢を下げ、拳は顔の前に置かれる。
もし彼が攻撃可能な領域に入れば、最高速度の中段正拳が襲いかかる。
662
:
巴津火
:2011/11/13(日) 12:17:26 ID:1gBuqmPQ
>>660-661
「問いとは、必ずしも答えを待つためのものとは限らないよね」
秋牙羅未の剣が重く軋んだ。
こんな使い方のために在るのではないと、この神器は主である女神を害することに使われるのを厭うた。
しかし巴津火はわき腹を濡らす己の血を片手に掬うと、それを大剣の刀身にたっぷりとなすりつけた。
その途端、苦しむかのように大剣の軋む音が高くなった。
そして刀身を伝って巴津火の血は、この神域の主である日子神の胸にも垂れかかってゆく。
破れた白い衣に、点々と赤い染みが付く。
「ボクは、結果がどうなるとしてもボクがこうするには、理由があると知っておいて欲しいだけ。
そして考えて欲しいから問いの形で投げかけるんだ。答えを求める問いじゃなく、ただの謎掛けだよ」
その言葉とともに、邪神の血に狂わされた神器が、主の喉元を貫いた。
巴津火の表情と纏う気配は、その行動の凶悪さとは裏腹に、その一瞬だけ清々しさを含む神格の
気配へと転じ、紫濁の瞳のなかには火の粉のような橙色の煌きが点々とよぎった。
(日子神、その負うものを漱がれよ。ボクの名は巴津火、この力は禊)
日子神を殺害することで、この半分だけの神格は日子神の負う罪とその一切を己へと移そうとした。
それは同時に、神代の手を汚さないための方便でもある。
663
:
稀璃花
:2011/11/13(日) 12:54:06 ID:HbHPxpxY
>>661-662
「主を守る槍と楯、ね。
ますます興味深いっ。」
中段正拳が向かってくるのに、稀璃花は彼女の懐に突っ込んで行く。
正拳は確かに腹にあたり、辛そうな表情が伺える。
だが、吹っ飛ばされることなく、槍を構え、瞬時に突いた。
「ぐっ、痛いじゃないか。でも君と戦ってると、なぜか楽しいよ。ねぇ、もっと話そうよ?
例えば君の友人と、あそこの子供、どちらが勝つか、とかね?」
ちらりと巴津火を見ると、何やら巴津火は押されているのか、血まみれである。
だが、稀璃花は巴津火が負けるとか思っちゃいない。それも引っくるめ、問い掛けた。
664
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/13(日) 23:02:24 ID:bJBnsqT6
>>662
堂々と、巴津火の前に不動を貫く。
この姿勢は巴津火が自身の血を、守護神の形見から伝わせてきた時すら、
変わることなく彼女の神服は紅の色を付けた。
「・・・っ」
これを挑発と見ていたのか、彼女は油断し、
巴津火の剣が喉元を貫いた時は思わず苦しそうな声を発した。
しかし、日子神はそれから眉間にしわを寄せるも、
痛みのために呻くこともなく、凛として巴津火を睨む。
『君には・・・この罪を負うことはできない・・・
実力がじゃない・・・覚悟がじゃない・・・
罰がそもそも・・・誰も変わって贖罪できないから・・・』
神格の力の行使によって、一瞬、日子神の妖気と伴って
因果が巴津火へと流れ込み始めた。
しかし、それは彼の背後から現れた彼女によって、
惜しくも中断を余儀なくされる。
『神代は・・・全ては・・・僕たちの死しか望んでいない』
日子神の纏う神服と同じように、雨子神は朽ち果て切った布を着ている。
そして間髪をいれずに雨子神は片手を上げ、
地を操作して巴津火を囲うように、鋭く大きい牙を作り出した。
「・・・っ」
当たり前のことを考えればこれらの牙は、
雨子神を合図として閉じられ、巴津火を八つ裂きにするだろう。
しかし彼は逃げることができない。
それは、喉元に突き刺されたままの日子神が、
自らの手で大剣をつかんで決して離そうとしていないから。
>>663
春宇知厄は自身の、しっかりとした一撃の会心を感じたが、
それと同時に、襲い来る槍の脅威も感じ取っていた。
しかし深く入った拳を元に戻すのは、多少の時間がかかるため彼女は
何とかかわそうと身をよじるも、稀璃華の放った槍は強く、
彼女の右肩を貫ききる。
「これは油断しました・・・!」
穂産姉妹神と違って、肉体の再生の聞かない春宇知厄はすぐさま後ろへ飛びのき、
稀璃華とはもう一度数歩距離をあけた。
「戦闘の途中私語など、本来であればそれこそ無礼。
目的の義もぶれ、話にならない滑稽な道化と化してしまう。
しかし、この質問は特別、吾輩が答えましょう。
答えはあの蛇の少年です」
春宇知厄が距離を開けたのは、さらなる追撃を避ける為だけではない。
ゆっくりと力をためるように膝を曲げて、
一瞬の間の後、彼女は強烈な速度で稀璃華へと走った。
数歩助走をつけて放たれる技はとび蹴り。
シンプルかつ隙が大きくはなるも、加速の付いたこれの威力は、
そうとうな重みを持って稀璃華の腹部へと衝撃を与えるだろう。
665
:
巴津火
:2011/11/14(月) 01:47:08 ID:1gBuqmPQ
>>663-664
「ボクには罪を負えない?そんなことは知ってる。
だから罰として殺しにきてあげたんじゃないか」
背後からの雨子神の声に、振り返りもせずに巴津火は答える。
その顔には既に紫狂のニタニタ笑いが戻ってきていて、己を取り囲む牙を
避ける代わりに大剣の柄から絹紐を探った。
「だから、望まれた通りさっさと殺されてくれよ。
それとも全てのものが君たちの死を望むわけじゃない、とかそいつに諭されたいの?」
くすくすと笑いながら、巴津火はミナクチの化けた翡翠の輪を絹紐から外して
肩越しに雨子神へと放った。
〔あっ!!〕
護るべき主から放り捨てられた蛇神の欠片は慌てたが、既にその身は宙を舞っている。
〔いけません!〕
喋ることも変化を解くことも出来ないうちに、翡翠の輪は雨子神の手元へと飛ばされてゆく。
「何のためにボクがここに居ると思っているんだ」
(そして何のためにわざわざこの剣で殺しに来たと思っている…ふん)
雨子神のほうは振り返りもせずに、日子神を貫く剣へと力を込めた。
牙を避けるつもりも、日子神を解放するつもりも、巴津火には無い。
(ボクがこれを受け止められない程弱いと思うなよ)
自信と歪んだ光とが紫濁の瞳に満ちた。
666
:
稀璃花
:2011/11/14(月) 07:30:29 ID:HbHPxpxY
>>664-665
「君もそう思う?なら、守らなくていいのかい?主を守る槍と楯なら、お互いに助けあってもいいんじゃないか?」
瞬時の飛び蹴りをまともにくらい、ゲホッと吐血しながら吹っ飛ぶ。
地面に着地すると腹を押さえて咳込む。
ダメージはかなりのものだったようだ。
「けほっ、ではなぜ巴津火が勝つ?何かしらの根拠があるから言えるのだろう?」
667
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/14(月) 19:57:26 ID:bJBnsqT6
『だから君は・・・罰すらも・・・』
雨子神は論を、術を伴って行おうとする。
しかし、その標的となる彼の動きは予想を外し、
結果として何手も後の動きを余儀なくされてしまった。
そして一方、巴津火に剣を突き立てられた彼女も同様に驚く。
しかしすぐさま、彼女は牙の術の行使権を、
雨子神から日子神へ、
自らの物へ転嫁させ喉に空いた風穴をいとわず手を上げた。
『僕たちが全て終わらせるんだ・・・生きたいわけじゃない・・・
ただ・・・死に方だけは・・・討伐者だけは・・・
神代じゃないと駄目なんだ・・・』
もはやここまで来たのだ、この際構わない、
と雨子神は手にミナクチの冷たさを感じながら、目に意思を込めて話す。
そして彼女の視線は、閉じられた牙の彼を見ていた。
いくら巴津火が丈夫で、上位神格の卵で、どのように硬い意思を持っていようが、
穂産姉妹の強力な術の牙は、当然のごとく彼に突き刺さるだろう。
もしそうであるならば、全ては貫通しきって、
形による無駄なスペースが外した牙を除いたとしても、
傷はおおよそ6か所くらいに及ぶ。
「巴津火さん、お熱くなるのは構いませんが。
大事なことを一つ、忘れていませんか?
穂産姉妹、彼女たちはいかような攻撃を身に受けたとしても、
神体が害されなければ復活できることを」
ダメージを負う巴津火へ優しく、明瞭な声で遠くから語りかけるのは、
少なからず仲間の負傷で声を出して笑うことはなくなったものの、
笑顔を顔に張り付かせている、神代であった。
彼は今、穂産姉妹神本殿の戸の前に立っている。
どうやら神代は巴津火が二人をひきつけ、自身が接近する隙を窺っていたようだ。
>>666
「現に今行っているでしょう?
吾輩は今しがた、外敵のあなたに膝をつかせているのでは?」
一般の戦士ならば、稀璃華の状態を好機を見て、
さらなる非常な追撃を与え続けるだろう。
しかしそれをしないで凛として目の前に立って見せているのは、
どうやら彼女なりの筋があるためらしい。
「根拠はありません。
吾輩や夏津燈、四武神たちが知りえる情報は日本神話人世第34章だけ」
そういうと彼女は首をそっと、
今まさに凄惨な光景を生み出している穂産姉妹神達へ向けた。
「ですが、感ずるのですよ。
仲間内である上に守護神ともなれば余計に、
彼女たちからまったくもって、生きる意志が感じられないことを。
穂産姉妹神は死ぬ気です。
それがなにをもってしてか、なにがあってなのかは、やはり判りませんが。」
若干の憂いが、春宇知厄の目に映った。
668
:
巴津火「」 ミナクチ『』
:2011/11/14(月) 23:01:51 ID:1gBuqmPQ
>>666-667
「神代!何をぼうっとしている。今のうちにそっちの片割れを始末しろ」
雨子神の背後の神代へ、ピシリと鞭で打つような厳しい声が飛んだのと、
日子神の牙の術の行使はほぼ同時だった。
巨大な土の顎が巴津火の姿をくわえ込んで隠した。
日子神からは半球状に閉じた土壁の隙間から大剣が見えるだけとなる。
『殿下!駄目ですっ!』
雨子神の手の中で変化を解いたミナクチは、ようやく口にくわえた尾を離し声を上げた。
この小さな蛇の役割は幼い主に危険が迫った時に、その身柄を水伝いに運び去ることだった筈。
しかし幼い主はそれを許さず、彼を放り出し戦いに身を投じてしまっている。
〔姉妹を助ける為に潜入した筈だったのに、一体何故…〕
しかし巴津火は熱くなっているわけでも、潜入した目的を忘れているわけでもなかった。
土の顎の中で身体を牙に貫かれながらも、秋牙羅未の剣は離さない。
「その神体、ってのをな、ボクは貰いに、来たんだよ」
神体があれば姉妹が復活するのは承知の上の行動である。
息はついているもののその声は力と毒気を失わず、
土の顎の隙間からは、真っ赤な液体がごぼりと染み出して溢れた。
その量は見る見るうちに増え、溢れて広がってゆく。
ここは姉妹神の神域であり、血で汚すだけでも彼女らの力は削ぎ取られることを
神格としての巴津火は知っていた。
「秋牙羅未の剣で死ぬ機会をくれてやる!
神代の手にかかることはボクが許さない。それがお前への犯した罪への罰だ!」
土の顎の中から、巴津火の声が響いた。
先ほど邪魔をされた禊の力が、土の顎の中の巴津火から大剣を通じて日子神に流れ込んだ。
役割をゆがめられていた神器は、巴津火から日子神へとその力を余さずに伝え、因果は巴津火へと流れ込む。
その力はまた同時に秋牙羅未の大剣をも漱ぎ、一度は狂わされた神器を本来の役割に戻す。
竜宮も夜行集団も神代たちの思惑も利用したこの紫狂は、全てを曲げるためにここに来たのだ。
姉妹神と神代の運命を、その死に方を、窮奇から受け継いだ力で根本から歪めるつもりでいる。
669
:
稀璃花
:2011/11/14(月) 23:14:41 ID:HbHPxpxY
>>667-668
「辛いのか・・・。姉妹の死が。」
槍の構えを止め、巴津火達へと目を向けた稀璃花。
春宇知厄の憂いを感じ取った稀璃花は、掛ける言葉を見つけられないまま、立ち尽くしていた。
だが、春宇知厄が望むなら出来ることはある。
「姉妹、助けたいか?」
槍を下げたまま、一歩近づく。
戦う気力は感じられない。
670
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/14(月) 23:40:17 ID:bJBnsqT6
>>668
あの巴津火ならば、一撃程度の致命傷では命を落とさないだろう、
そう言った半ば信頼にも似ている確信のもと、
神代はあらゆる術や技の隙間をかいくぐって、今現在本殿と対面している。
そして神代は、幼い蛇神の思いに関わらず意を決し、
本殿の扉を破壊して中に入ってしまった。
「(やめて・・・ください・・・!!
あなたではせお・・・背負いきれない・・・!!)」
禊が自身の体に流れ込むのを感じた日子神は、
何とか力を振り絞って、声の出ないままこの流れを止めようと足掻いた。
しかし、単純な戦闘はともかく魂本位での争いとなると、
ただの付喪神の日子神に適うはずがなく、どんどん因果は巴津火へと。
『巴津火まで・・・この運命に呑まれる必要はない!!』
いつぶりだろうか、雨子神は大きく巴津火へ慟哭した。
いつも眠気に支配された瞳には、もう呑気な光はない。
「ふふ、そうですよ、それに困ります。
最後の一手は、僕がやりたいのです」
そんな雨子神の言葉を継いだのは、神代であった。
既にその手には、穂産日子神、穂産雨子神、
両柱の神体が握られていた。
「さらに言えば、運命はあなたが思う以上にもっと酷く、
そしてもっと喜劇に歪んでいるんです」
>>669
「・・・そうですね。
いかに神格が奪われようと、吾輩は彼女たちの守護神」
向こうを見据えたまま、春宇知厄は静かに答える。
しかし、再び顔が稀璃華と対面させて時には、
もう哀しげな面持ちの表情はそこにはなかった。
「ですが、吾輩は甘んじて穂産姉妹神の意思を汲みましょう。
どんな窮地、どんな悲劇にあっても、人のため、
妖怪の子供のため、愛のため、生きることを止めなかったあの二柱が、
終ぞ死を望んだ。
何かを守るためであろうその意思を、吾輩は何よりも尊重する!!」
稀璃華の態度と反し、彼女にはまた戦闘の火が。
671
:
巴津火「」 ミナクチ『』
:2011/11/15(火) 00:08:20 ID:1gBuqmPQ
>>669-670
日子神が弱ってゆくとともに、巴津火を捕らえた土の顎も弱る。
孵化するかのごとく、土の半球を崩して這い出してきたのは黒い鱗を濡らした蛇の姿だった。
「誰かを困らせるのはボクの本来の役割の一つだ。『悪い』な神代」
色が黒いため血の色ははっきりしないが、這い出した大蛇の背中には所々酷い穴が開いていた。
雨子神の手から這い降りた小さな青い蛇が、慌ててそちらへ這い寄っていこうとする。
「運命に呑まれる?ボクは自分で選択しただけだ。
死にたがりは黙っているか、きちんと申し開くかどちらかにしろ」
既に日子神の負っていた因果は巴津火のものだ。
半分の神格は、姉妹の因果のうち丁度半分だけを背負ったことになる。
「それが神体か、随分小さいな。神代はどうする?その喜劇とやらを続けるか?
そっちの死にたがりを始末するならボクは止めないぞ。
お前がやらなきゃボクが祓うまでだからな」
運命の歪みなど気にしない。
そもそも巴津火はもっと歪めてしまうつもりなのだ。
ぐん、と大きく鎌首を持ち上げて、橙の目を輝かせた大蛇は丸太のような身体で大きくとぐろを巻いた。
その高さからは、稀璃華たちの様子がよく伺える。
(あちらはあちらで、動いたようだな)
672
:
稀璃花
:2011/11/15(火) 00:25:46 ID:HbHPxpxY
>>670-671
「どんなことがあっても、主の為、そういうことだな。」
春宇知厄の表情が変われば、こちらもやはり戦闘は免れない。
一歩バックステップし、再び巴津火を見る。
だが、そこにいたのはとぐろを巻く蛇。
流石に向こうの現状を理解することは出来ず、こちらをなんとかするしかないようだ。
「・・・・・・・・・。」
ぐらり、春宇知厄の立つ、地面の周辺が揺れる。
地から現れたのは、5mは越えるであろう石塔。
それは、隙間なく、円を描くように春宇知厄を囲んで行く。
「こちらも時間がない、決めさせてね。」
673
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/15(火) 00:33:39 ID:bJBnsqT6
>>671
神体をしっかり確保した神代は若干上の立ち位置である、
本殿の境内からどこか清々しい、
と言った雰囲気を醸し出しながら、辺りをゆっくりと見下ろし見渡した。
『日子神!!』
まだ妖気は吸われつくされてはおらず、
体の崩壊は免れた日子神はそれでもふらりと態勢を崩した。
しかし瞬時にそれを察知した雨子神は、
憎まれ口を叩く巴津火に一瞥しながら、
いち早く駆けよって、倒れる日子神の体を両手で抱きとめる。
声が出ないため口だけを動かし礼を言う。
そして日子神は、そしてその動作に気付いて雨子神も、
ゆっくり境内で、自分たちの心臓を握っている神代を見上げた。
「ふふ、包帯さんは士通冬と交戦中。
農夫さんは、直に倒しますね。今は遊んでいるのでしょうか?」
巴津火への返答を後回しにして、仲間の状況を確認する。
その時の今までは貼り付けていることもあった神代の笑顔は、
今まさに、混じりけのない、むしろ子供の笑うような、
無邪気な微笑みをその顔にたたえていた。
「くすくす、どうしましたか?穂産姉妹さん。
そんな解放されたような、救われたような顔をして
それと巴津火さん、残念ですが僕は喜劇を続けるつもりはありません。
なぜなら僕も、ようやくここまで来れたのですから。
壮大なペテンを終わらせるための、二人だけの奮闘をね」
勝者が自身を誇示するように、神代は神体を上に高く上げた。
>>672
「そういうことです」
むしろ明るく、望むところだという通りに彼女は笑う。
そして覚悟は既に決まったらしく、次なる技の構えをとった。
しかし、その突如に春宇知厄の周りの状況は、
著しく変化をして彼女は驚くこととなるのだ。
「なにが来ようと、吾輩が排除して見せましょう」
うかつにこれらの石塔を破壊してしまっては、
一体どのようなことが起こってしまうか、皆目見当もつかない春宇知厄。
罠かもしれないしそうでないかも知れない。
だがどちらを決めることもできない状況で彼女は、
一般ならば半ばあきらめを現すような、後だしをあえて選択をした。
674
:
巴津火「」 ミナクチ『』
:2011/11/15(火) 00:54:56 ID:1gBuqmPQ
>>672-673
傷を癒そうとする青い小蛇に、黒い大蛇はそれを許さなかった。
「お前は運ぶ為に連れて来た。回復は不要だ」
その背の傷口からはまだ血が流れている。
地の裂け目から溢れる水はひたひたとあたりを濡らし、周りの地面はすっかり濡れて水溜りが広がっている。
蛇の血は水溜りへ流れ込み、本殿の床下で濁った水を赤く染めていた。
(水脈の道を結ぶ準備をしておけ)
〔はい〕
命じられてぽとりと青い小蛇が水溜りへ飛び込んだ。
そして黒い蛇は榊の気配を探り始める。彼女についてのみ神代が言及しなかったためだ。
秋牙羅未の剣のお陰で命を護られた日子神のほうへは視線すら投げずに、
黒い大蛇は神代が神体を掲げるのをじっと橙色の2つの目で見つめていた。
「ならば終わらせて、そしてそのペテンを明かしてやれ」
675
:
稀璃花
:2011/11/15(火) 01:04:09 ID:HbHPxpxY
>>673-674
「その石塔は・・・・・・。」
一言ずつ話ながら、稀璃花は攻撃を進める。
いずれは、石塔は周囲を完全に囲むだろう。
「葬られた魂が眠る場所・・・。」
囲んだ石塔の中に、青い炎が燈ると、ちょうど空の見える真上から。
槍が落ちて来た。
「新たな魂・・・ここに燈す。」
676
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/15(火) 01:15:22 ID:bJBnsqT6
>>674
「巴津火、ミナクチに私を探す必要はないと言っておくといい」
無感情で冷淡な声が、ミナクチが水面へ飛び込んでから丁度数秒後、
大きくはないが皆に聞こえるように聞こえてくる。
起伏の少ないその声が聞こえてくる場所は、
巴津火が目を向ける先、神代の隣であった。
「ふふ、榊、術式をお願いしま」
『止めろ!!』
いつの間にか神代と肩を並べていた榊へと、
彼は驚く様子もなく穂産姉妹神の神体を両方とも、彼女に手渡した。
その時、境内にいる二人へと、雨子神は強く叫んだ。
今先ほどまでは神代の言った通り、どこか解放された風があった穂産姉妹。
しかし、神代たちを見上げて叫ぶ雨子神の声は、懇願のようであり、
姉妹の表情には驚愕か、それとも怯えか、失望か、
それとも全てを混ぜ入れた様な絶望が浮かんでいた。
「くすくす、では巴津火さんの言うとおり全てのペテンを、
解き明かしてしまいましょうか。
日本神話人世第34章いや、天界、全ての神々の嘘を」
対照的な神代には、凄惨な笑いが浮かんでいる。
>>675
いつ何時どのような攻撃が来ても、
すぐさま対応できるように深く一回呼吸をする。
見る見るうちに研ぎ澄まされていく集中力は、
彼女の瞳を見ればその鋭さと俊敏が分かるのだろう。
「―――上!!」
空気の音、気配、
あらゆる五感を総動員させた彼女のセンサーによって、
頭上からの奇襲にも似た攻撃は察知される。
構えはしっかり作られていたため呼び動作は用いられずに、
空から降る槍を迎撃するよう、強烈なストレートをそれに放った。
677
:
巴津火「」 ミナクチ『』
:2011/11/15(火) 01:31:05 ID:1gBuqmPQ
>>675-676
「ようやく来たか、どこで油売ってるのかと思ったぞ」
黒い大蛇はゆるりと身体を伸ばして廻らせる。
「あとそっちの、煩い。黙れ」
そして長い尾の先を伸ばして雨子神・日子神の足元を絡めて払う。
もし二人が転べばそこはゆるく巻いた蛇の尾の上。
怪我をさせないように、しかしぞんざいに尾が二人を巻き取って邪魔にならない場所へ移そうとするのだ。
そして大蛇の頭のほうは、好奇心にかられて榊のすることを覗き込みに行く。
「天界の嘘?面白そうだな。何の話するんだ?」
まるで紙芝居の前の子供のようであるが、その動きは傷の為に緩慢だ。
同時にその鎌首は、稀璃華との距離を測っても居る。
這い回る大蛇の腹がざりざりと床をかく音に混じって、床下ではごぶりと水の沸くようなおかしな音がした。
678
:
稀璃花
:2011/11/15(火) 01:42:01 ID:HbHPxpxY
>>676-677
「春宇知厄・・・。僕の動きに惑わされたね。」
ストレートは、本来ならば入っていたかも知れない。だが、それは幻影、先程の石塔が作り出した幻なのだ。
「泣塔である僕に、あんなでかい攻撃など出来るものか。場を伺い、そして[仕留める]」
隙のある春宇知厄の後ろから、腹を目掛けて槍を放つ。
当たれば、春宇知厄はしばらく動けなくなるはず。
あくまで、殺しはしない。みねうちだ。
679
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/15(火) 01:56:12 ID:bJBnsqT6
>>677
「『!?』」
今にも泣き出してしまいそうになる二人は、
意識が全て神代へと向けられていたため簡単に足元をすくわれる。
蛇の体がクッションとなって怪我は無いが、
それでもまだ神代へ、すがるような目を向ける彼女達には関係がないように思われた。
「ふふ、それよりもまず、僕の立ち位置をはっきりさせておきましょう」
そんな視線を受ける神代は、口元に手をやって楽しそうに笑う。
しかし逆の手では、既に黒と赤の炎によって鋭く長い、
三又の槍が創生されていた。
遠くからでもそれが恐ろしいほどの妖気を込められたものだと、
霊感がなくとも直感でわかるような槍を神代は天へと構える
そして槍が放たれた時には、凄まじい轟音を立てながら、
空へ雷光のように昇り雲を貫く。
「ぐうああああああああああ!!」
すると雲のほうから、男性のつんざく悲鳴が轟いた。
そして槍をくらったのであろう男性は、断末魔の叫びを上げながら遥か上空の雲より、
既に絶命が確認される様なほど黒こげの状態で、堕ちてきた。
「彼は、神界の中でも上位の、
天界に神格を持つ、とある上位神です」
どしゃ、と肉の地面に当たる嫌な音を立てながら、
今しがた降ってきた者を見つめて言った。
>>678
拳は確かに槍を真芯をとらえ、当たれば砕くことができる一撃であった。
それゆえ彼女も技の勝利を確信しにやと笑うが、
全力を持って放たれた拳には手ごたえがない。
「・・・なn」
それが疑似餌だと気付いた時にはもう遅い。
春宇知厄は重い一撃をくらって蹲り、四肢をどれも動かせなくなった。
「油断・・・しました・・・」
680
:
巴津火「」 ミナクチ『』
:2011/11/15(火) 02:11:11 ID:1gBuqmPQ
>>678-679
蛇の尾は姉妹を本殿の屋根の下から遠ざけてゆく。
そこはもし建物が崩れたとしても、彼女らに影響しない場所であった。
黒い蛇の頭のほうは榊と神代の直ぐ傍まで来て、彼らの言葉に耳を傾ける。
「うんうん。……で、これ食っても良い?」
目の前に、空からこんがり焼けて香ばしい肉が振ってきたのだ。
傷を負い、いい加減出血の多い黒い蛇は、思わぬおやつに目を輝かせる。
(天の神格の肉たべたら、天に行く力が付くのかな)
もしこれを食べることができたなら、この上位神について
巴津火は何がしかの知識を得ることができるかもしれない。
「あと、あの距離で当てられるのは凄いな」
地上から天界の一人をピンポイント狙撃した神代を、蛇神の最上級は素直に賞賛した。
681
:
稀璃花
:2011/11/15(火) 07:32:24 ID:HbHPxpxY
>>679-680
「駄目だよ、油断なんて。その油断こそ、君の命取りになるから。」
倒れた彼女を、置いてある石塔にくくりつけながら、言葉を繋げる。
「最後まで姉妹がどうなるか見ていきな。君の生死はそれからだ。」
括りつけ終えれば、真面目な表情の稀璃花が巴津火達の元へ駆け寄る。
そしてそこにあったのは黒い焦げた物。何か不信に思いつつも、現状を聞こうと巴津火に問い掛ける。
682
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/15(火) 08:16:43 ID:bJBnsqT6
>>680
動くこともせず、完全に沈黙して死体を判断できるそれ。
だが神代が言葉を信じてもらうために加減したのか、
多少ばかり男性の体には、まだ焦げていない白い神服の部分が見受けられた。
「くすくす、もちろん!」
傍から見れば恐ろしいやりとりを、両者とも平然と笑いながら行う。
それにしても先ほどからの神代には、
無理に張り付かせた笑顔は垣間見えず、本心からの笑みが多いように思える。
それはおそらく、
神代にとっての何かがうまく行こうとしているからなのだろう。
「ふふ、これでも色々頑張ったのです。
ちなみにあの技は遠くからでも裁きを下す、
雷の神のみわざを僕なりにアレンジしたものなんですけどね」
神代にとってのなにかが、とても上手く行きそうなのだろう。
術の説明は仲間達からも止められているが、
上機嫌な彼は敢えて口を滑らした。
>>681
「なるほど・・・では吾輩はこの機に甘んじて、
穂産姉妹の最後をしっかりと見る栄誉を受けましょう」
動かない体を石塔にくくられながら、
春宇知厄は静かな声で稀璃華に呟く。
顔には笑顔、ある意味これも、
彼女の願う形の一つであったのかもしれない。
だが、彼女がそう言って見据えた光景は彼女の予想と反し、
穂産姉妹はまだ死なず、知らない神が殺されていた。
そんな理解できない光景が広がるも、
春宇知厄はこの原因が、あそこに佇む白と黒、漆黒、にあることを感じる。
683
:
巴津火「」
:2011/11/15(火) 18:27:50 ID:1gBuqmPQ
>>682-683
「稀璃華?」
まだ戦えるのか、相手守護神の始末は大丈夫かと、黒い蛇はその一言のみで尋ねた。
稀璃華の口元にこびり付いている血は、守護神との戦いでそれなりにダメージを受けたこと
を示していたからだ。
「これか?神代がさっき打ち落とした天界の上位神だそうだ。
で今からはボクのおやつ。稀璃華も喰う?」
鼻先で黒く焦げた肉塊を転がしながら、黒い蛇はそう尋ねた。
地に叩きつけられたそれは、良い具合に骨も砕けていて呑みやすそうだ。
しかしこの黒い蛇は、実は別の餌食を狙っていた。
(隙を見てあの二つの神体も喰ってやろう)
穂産姉妹の力の源、巴津火がここに来た目的の一つだ。
舌を伸ばせば届きそうな距離の、榊の手の中にある神体は、
これからまだ何かをするために使われるらしい。
今は機会を伺うべき時だと見て、黒い蛇は待つことにする。
「ふーん。雷はボクも使うけど大体は雲から呼んで使ってる。
ただ撃つほうだとどうしても拡散して威力は弱くなるからな。
玉にして使うこともあるけどそれは天ッ堕のご飯用」
雷獣の子供に食べさせていたのは檣頭電光、またはセントエルモの火と呼ばれるものだ。
684
:
稀璃花
:2011/11/15(火) 20:43:40 ID:HbHPxpxY
>>682-683
「・・・・・・・・・。」
こくっと、頷き、辺りを見渡した。
地面には巴津火の流した血が染みて、異様に赤黒くなっているのが分かった。
「神格を一撃でか、神代は強いな。(何者だ、コイツ。)」
食べない、と首を横に振り何かが起きるであろう瞬間を待っていた。
(巴津火、目的は忘れてないよな・・・。何かあったら僕一人だけでも止めてみせる・・・!)
685
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/15(火) 22:34:39 ID:bJBnsqT6
>>683
捕食者となった巴津火が今彼らに手中にある、
彼女たちの神体を狙っていることなど露も知らないで、
榊、また神代は術式を開始した。
「ふふ、僕の力は自然の神気以外からも供給されているのです。
確かに条件がそろった場合は自然派には負けますが、
やっぱりオールマイティーって便利でしょ?」
榊の術の準備が終了するまで、巴津火との談笑をするようだ。
証明するように、胸元に挙げられた片手に電気を纏わせ、
神代は巴津火に見せつけるようにくすりと笑った。
しかし上機嫌な神代も、流石に力の他の供給源は言わず、
それは俗にいう企業秘密ということなのだろう。
「準備はそろった、後は神代、神代の合図次第だ」
「くすくす、いよいよですね。本当に長かったです」
再び神代の隣についた榊は言う。
そして言葉を聞いた神代が向いた先にあるのは、とある魔法陣。
よほど術に精通した者でないと内容が分からないほど、
それは古い、神世にも遡る陣であった。
「ふふ、では巴津火さん、見ていてください。
穂産姉妹神が今、堕天すること瞬間を」
>>684
神代が陣へ気を移す少し前には、
少し離れた場所にいた稀璃華の声を聞いて、彼のほうを振り向いていた。
「ふふ、これでも相当な修練は積んだと自負しますからね。
ですが上位神の彼も、やはり油断はしていたようですよ。
彼の心の臓ど真ん中でしたから」
褒められて少し気を良くしたのだろう、
照れて口元を何気なく隠しながらも、口元は褒められた子供のように笑っている。
「」
その神代の後ろ側から、
感情を感じなせないながらも無言の圧を飛ばす、異様な者がいた。
それは榊。
まるで彼女は決心をする稀璃華に感づいたように、
しかと彼を見据えている。
686
:
巴津火「」
:2011/11/15(火) 23:12:31 ID:1gBuqmPQ
>>684-685
「ボクの独り占めだな。いただきまーすっ」
蛇の顎が裂けたようにぱくりと開いて、上位神だったものを飲み込んでゆく。
喉の皮膚は伸びて餌食を包みこみ、その膨らみはゆっくりとその胴のほうへと降りてゆく。
傷だらけの胴部が膨れ傷口が広がるのではと思いきや、その膨らみは喉の下ですっとしぼんで
蛇の胴体が膨れることはなかった。
「流石にちょっと焦げ臭い。けど、この力は悪くないな」
腹は膨れなくても、食べたことによる影響はあった。
血を失った身体に温かさが戻ってくるのを、黒い蛇は心地よく感じていた。
これでまだ少しは戦える。
これからの戦いは今までのよりもっと激しくなる、いや、激しくするのだ。
「ああ、神代は強い。だからボクは神代が好きだ」
(自然の他からというと、祈りによる信仰の力でも授かっているのか。
まったく神代って奴は、恵まれているのか疎まれているのかよく判んないな)
稀璃華に頷き、今だけは機嫌良さそうに欠伸して顎の骨を直しているこの蛇に、
上位神の何がしかの情報は流れこんでくるだろうか。
「あの陣で堕天するのか。単純に神体を壊すんじゃないんだな」
榊の注意が稀璃華に向いているのを良いことに、黒い蛇は神体のほうを伺っている。
あの神体が術で壊されないのなら、巴津火にとっては都合が良い。
「ところで稀璃華、お前榊に嫌われたっぽいけど、あいつに何かしたのか?」
榊と稀璃華の仲を煽るかのように、蛇の裂けた舌先は毒ある言葉を注いだ。
稀璃華が女性に敵対心を持つと知っていて、あえて二人をぶつけるように仕向けたのだ。
(稀璃華が隙を作ってくれたらいい、そうでなくても、どの道神代とは敵対するんだ)
神代が示した力の通り十分強いのなら、巴津火にとって彼は敵とするに不足は無い。
687
:
名無しさん
:2011/11/16(水) 07:04:17 ID:HbHPxpxY
>>685-686
「油断はいけないよな、あそこのも油断してああなった。」
縛り付けた春宇知厄をちらっと見て、うれしそうにする神代を眺めた。
直後、背後から現れた榊に無言で見られ、少しキョトンとした。
「な、なんだよ・・・。巴津火、僕は何もしてない。
榊もなんで・・・。」
女性に関しては嫌いではないのだ、ただ好きになることはないが。
688
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/16(水) 08:06:00 ID:bJBnsqT6
>>686
堕天の様を見ることを巴津火に提案してから、
なかなか彼らのほうへ神代が振り返らないのは、きっと照れ隠しなのだろう。
確かに神代でなくともこうもきっぱり褒められれば、
中の思いを意識してもやはり照れてしまうもので、人付き合いのない神代は特に、
こういった出来事には弱いのであった。
「おや?くすくす、あの榊が何かを気に留めるなんて、珍しいですね」
「いや、直観として稀璃華のほうへ気が向いただけ。
特別意味を込めたつもりはないが、気にしたのならすまない」
なんとなしに神代がそうやって声をかけると、榊は首を小さく振って否定する。
すぐに頭を下げた榊の行動のせいで、巴津火の思い通りとはいかなかったようだ。
そして、そんな人間臭い反応を表す彼が殺めた、天界の神の死体からは、
おそらくメデゥーサのように意図的な記憶の蓋といった物は感じないだろう。
なぜなら、死を覚悟できたメデゥーサと違ってこの神の死は突然で、
彼自身は咄嗟に記憶を封印することはできず、
機密に当たる情報は全開にされた状態で巴津火の前へと落ちたのだから。
丸のみによって更に巴津火へと伝わる情報は、限りなくクリアだ。
そして天の神の記憶の中にあるのは、日本神話人世第34章、
だけではなく本来ならば決して地上には存在しない、
絶対的な機密事項、神々の最大の痛手、日本神話人世第34章禁伝第2項であった。
『なんでそんな無駄な術をするの?
僕達の能力の代償として神体は、とても脆い物だって知ってるのに?馬鹿なの?』
神の死体から情報が取り出されようとしている一方で、
神代に対し、雨子神は出し抜けに声を発した。
いつの間にか喉元の修繕を終えた日子神の隣で、雨子神はその顔に、
巴津火も誰も見たことがないであろう程邪悪で、そして下劣な笑みを浮かべている。
『ふ、普通に殺すだけでは気が済まないから、もう一度僕たちにあの時の、
神格を奪われた時と同じような屈辱を味わわせたいっていうの!?
どこまで下劣なんだ!やっぱりあの時呪っておいて正解だったじゃないか!
異種族の愛が厳禁だということもよく理解していない、馬鹿で愚鈍な悪魔!
その上そんな悪魔に恋する○○な巫女!
そんな馬鹿の間に生まれる子供が、まともな筈ないじゃないか!!
やっぱり呪っておいてよかった!!
おかげで少なくとも普通な生き方を出来るみたいな、
恥知らずなことをしないですんだんだから!!むしろ感謝してよ!!』
689
:
巴津火「」
:2011/11/16(水) 18:26:53 ID:1gBuqmPQ
>>687-688
稀璃華と榊の間には波風が立てられなかった。つまり神体はまだお預けである。
(いざとなったら力押しで、この場の全員を喰えば良い)
元は黒蔵のそれだった黒い蛇の胃袋は、ほぼ底なしだ。
そして胃の腑で溶けゆく神格の記憶がじわじわと巴津火に伝わってくる。
日本神話人世第34章、禁伝第2項、さらに、ヤマタノオロチのあの伝承についてもそこにはあった。
あんな風に貶められた伝説が残されたのには、天界の意図もあったと今初めて巴津火は知ったのだ。
湧き上がる力と共に巴津火は、実に子供っぽい怒りを覚えた。
悔しさと上手く言葉に表せないもどかしさとが入り混じったところへの、雨子神の罵倒である。
「煩い!!お前なんかそもそも神代よりずっと下だ!」
挑発だろうと心のどこかでは判っていても、苛立った黒い蛇の目は鬼灯色に燃え始めている。
そもそも巴津火は同じ紫狂の弟妹のような冷静な性質ではないのだ。
神代たちよりはほんの少しだけ巴津火と付き合いの長い稀璃華ならば、今の巴津火が周囲の全てにとって
危険であることを感じ取れるかもしれない。
(天界の意など知るものか!あの姉妹の救出だってそもそもボクにはどうでも良いんだ。
竜宮の馬鹿どもなんざ糞喰らえ、ボクは紫狂として勝手を通してやる!)
「神代、お前がやらなきゃボクがあいつを黙らせる」
黒い蛇が尾で地を叩くと、その怒りに呼応して地下の水が噴き出してきた。
その場所は本殿の床下。
噴き上がった水はそれまでのどの水柱よりも太く、本殿の床板と屋根と突き破り
根太や梁の太い材木も容易く折り砕いて、天高くへと跳ね上げた。
690
:
稀璃花
:2011/11/16(水) 19:15:36 ID:HbHPxpxY
>>688-689
「(コイツ、気でも狂ったのか?)」
下劣なる笑みを浮かべながら話す雨子神を見ながら思った。
どうやら本性をぶちまけているのか、静かに聞いていた。
一方で焦げ死んだ神格を食べて、機嫌が良くなったと思っていた巴津火が大声を出す。
流石の稀璃花も、黙って見ている訳にもいかない。
今、ここで巴津火をほっとけば、何をしでかすか知ったことじゃない。
「煩いのはお前だ、巴津火!」
槍の柄の部分だが、稀璃花は黒い蛇の頭目掛けて殴ろうとする。
(巴津火、自己中は止めろ)
691
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/16(水) 23:32:53 ID:bJBnsqT6
>>689
、
>>690
『何が下だ!!
唯でさえ馬鹿で性欲の制御も働いてない奴らの子供に、
今までまっとうに神様してきた僕が下回るものか!!
ただでさえ!!世界をなめきったようなクズたちの餓鬼に!!』
巴津火、稀璃華、
二人の視線が自分へ注がれていようと、雨子神は罵声をやめない。
その一方の日子神は、平然と黙って全てを雨子神へ託していた。
「少し待ってください巴津火さん。
もう少し冷静にならないと」
おそらくそれが宿敵といえど、自らでも嫌う呪われた出生をこうまで、
口汚く罵られれば神代の言葉から笑い声が無くなるのも当然である。
顔には憂いか、それとも心奥底の憤怒か、
どちらにせよこの顔に浮かぶ笑いが、嘘だと簡単に見抜ける程に神代は追い詰められている。
そんな彼を追い詰める過去の惨劇。
巴津火が得た情報の中には、その全てが刻まれているのだ。
そして穂産雨子神の言葉通り、神代の両親に当たる二つの魂は、
地獄に名を轟かす屈強かつ聡明な悪魔、
禊、神官の名門と謳われた神代家の巫女達であった。
更にはこの二人の間に、禁じられながらも子を宿したことも、
哀しいまでに本当であった。
692
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 00:17:44 ID:1gBuqmPQ
>>690-691
歴史とは勝者によって作られるものではあるが。
(あの話しか残されなかったのはそのせいだったか!)
真っ向勝負ではなくて、酒に酔わされ寝首をかかれ、果てはその身を刻まれた。
強大なる神格にとって、罠にはまった愚かで間抜けな悪者にされた話しか残らなかったのは、
実に悔しいことだった。
その後もヤマタノオロチが転生するたびに祟りをもたらした伝承があるのには、
そんな裏側があったのかもしれない。
「黙れ!」
雨子神に憤る大蛇の頭への稀璃華の一撃は寸前で止められた。
その槍の柄を蛇の顎が、がっちりと咥え込んだのだ。
(だって稀璃華…!!)
天界の神格に諮られた悔しさを湛えた鬼灯色の眼と、冷静な稀璃華の目がかちあった。
両者はしばし槍の柄を引き合うも、直ぐに大蛇の頭は駄々を捏ねるように横に振られ、
稀璃華の手からは乱暴に槍が奪われる。
代わりに稀璃華の直ぐ傍に、本殿と一緒に噴き飛ばされたあの秋牙羅未の大剣が振ってきて、
その刀身の半ばまで地に突き刺さった。
「もういい!!神代がやらないならボクがやる!」
仕返しもしない神代のことも癪にさわり、
槍を吐き捨てた黒い蛇は、穂産姉妹の神体を狙ってその首を伸ばした。
(助けるつもりで来たけど、もう知らない!やっぱり双子の力、奪ってやる!)
巨大な顎は、神体を二つとも丸呑みにしようと大きく開かれる。
その瞬間、黒い蛇はその弱点である首を、神代と榊に無防備に晒すこととなった。
693
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 07:58:47 ID:HbHPxpxY
>>691-692
「巴津火、止めろ!!」
ヤマタノオロチの伝承については自分も聞いたことがある。
自分では特に気にも止めなかった伝承が、神格持ちの巴津火に取っては悔しく、そして恥なのだ。
「・・・・・・」
もうどうにでもなってしまえ、と稀璃花は思う。
この際にすべてばらしてしまおうと、春宇知厄を横目で見ながら口を開く。
「君の主がどう思おうが、僕は姉妹を助ける。」
運よくそこに落ちて来た大剣、それを軽々と持ち上げた。
「死ね、神代。」
694
:
名無しさん
:2011/11/17(木) 08:03:00 ID:HbHPxpxY
追加
(今回の目的の為だ、巴津火。)
姉妹へと手を出そうとした巴津火へ、大剣を投げた。
もっと方法はあったんじゃないか、と後悔しながら。
695
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 18:08:10 ID:EK/9fLvc
>>692
巴津火が慟哭して、あれだけ自身を侮辱された。
両親までも雨子神に口汚く罵られて、それでもまだ神代には、
彼女たちに襲いかかるような素振りは見えなかった。
『屑が英雄になれるチャンスだったのに!!
宿敵のとどめすらもできないんだ!!塵の子は塵だな!!』
そんな神代に更に降りかかるのは、顔をひくつかせている雨子神の罵声。
それによってなのだろうか、巴津火が丁度堪忍袋の緒を切った時、
神代の手に黒炎の槍が握られた。
明らかに今までの雰囲気と異なる神代は、全身から夥しい力を発している。
「もう、止めてください」
小さな声で呟く神代。
この因果の怪物は、標的への照準合わせも振りかぶる態勢も、
槍に力を込める事も全ての動作が目にも止まらぬほど早かった。
神代の黒炎の槍は、巴津火の速度すらも上回って、
彼の牙が穂産姉妹へ到着する前にはもう、槍は標的を射たのであった。
神代の激情がこもった一撃は、巴津火に胴体に命中した。
>>693
、
>>694
「それは困るなぁ?」
討伐の意を明らかにした彼の後ろから、
含み笑いのある上機嫌な男性の声が聞こえてきた。
その声に稀璃華が振り返れば、目の前にはあの農夫がいるだろう。
「せっかくいいところなんだ。
それに、あんな姉妹を助けたいと思うような場面でもねえと思うがな」
実は、秋牙羅未の大剣を手に持たれた時に農夫は、
それで神代に果敢にも挑むものだと思っていた。だが予想は外れ、
大きく光る刃の向かう先は巴津火。
その為、笑顔の農夫だがこの稀璃華の対処をどうするべきか、
若干決めあぐねているというのが本音である。
696
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 18:58:21 ID:1gBuqmPQ
>>693-695
姉妹の力を奪わんとする巴津火の、神体への攻撃は防がれる。
秋牙羅未の大剣はようやくその役割にふさわしい使い手を得た。
二心を持って姉妹を狙うのでなく、ただ守るがためにこの神器を振るう者の手を。
稀璃華の手の中で力を増した大剣は、真っ直ぐに投げられて巴津火を貫く。
その長い蛇体の中ほどを串刺しにして、大地へと縫いとめたのだ。
そして動きを止めた大蛇を、神代の一撃が襲う。
神代のその一撃を、黒い蛇は待っていた。
破邪の剣に貫かれ、雷の業に焼け焦げて尚、全ての運命を歪め全てを打ち壊す紫狂として
暴れ狂う悦びのほうを選んだのだ。
「ボクは許さないぞ!!天の卑劣漢どもめ!!」
黒い蛇の背は苦しげに反り、その頭は高々と持ち上がり、焦げた胴は大剣に巻きついて
尾は稀璃華たちへ横なぎに地を払う。
そして神代の呟きに、黒い蛇が答えた。
「神代が、神代の言い分を、はっきり突きつけてやらないのならば、ボクは止めない」
黒い蛇は天に向かい、哄笑と共に瘴気を吐き散らす。
「どうする神代!!お前がペテンとやらを明かさずに何時までも何もしないならば、
ボクが今ここでお前を含めて全てを無にしてやるぞ!!」
雨子神の罵倒とはまた違う形で、巴津火もまた神代に行動と選択を迫ったのだった。
697
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 20:00:13 ID:HbHPxpxY
>>695-696
秋牙羅末の剣を当て、攻撃を防ぐ事の出来た稀璃花だが、安心できない。
農夫、彼が立ち塞がったのだ。
「いいところだって?あれはバットエンドにしかならない。」
今すぐにでも戦闘できるであろうが、稀璃花には武器がない。
槍も剣も、自分から取れる位置にはない。
しかも、春宇知厄との戦闘もあって稀璃花はかなり不利であった。
(姉妹連れて逃げられれば・・・・・・。だがこの戦況。
僕も死ぬかもな。)
「農夫、君が止めるなら、この稀璃花、押し通る!」
698
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 20:21:15 ID:EK/9fLvc
>>696
飛びかかる激怒とはまったく対照的に、
迫られている神代の顔に浮かぶのは、何故か焦りと苦笑。
哀しげに笑う様は今までもあったとはいえ焦燥については、
おそらく巴津火の言葉を契機にして隠せなくなったものと思われる。
「農夫が途中遊んでいた為に遅くなったが、
問題なく結界は発動できる」
それ故なのかちらりと、榊の方へ振り向く神代に彼女は、
冷淡な顔で返答をした。それに伴って榊は片手を空へ向け上げて、小さく呟く。
するとその一瞬を持って、この空間は銃弾を遮る防弾のガラスのような、
いわゆる亜空間と呼ばれる結界によって全体を覆われた。
辺りを見渡して確認したらしい神代は、ようやく穂産姉妹神のもとに歩み寄る。
「急かさないでください巴津火さん。僕も今ようやく、自由になったのですから」
『だったら早く殺ってみろよ!!ぐだぐだ言ってないではや』
「・・・。僕は神体を得た、ここも遮断された。
もう全て終わったんです。だからもう頑張らなくても良いんですよ?
だからもうこれ以上、自分を傷つけないでください、穂産雨子さん、穂産日子さん」
あろうことか巴津火の歯牙も恐れず、姉妹に接近した神代から出た言葉は、
今までにも、そして神話にも刻まれなかった、優しいものだったのだ。
>>697
「そうだ、バッドエンドにしかならねえ。
それも上手くいきゃあ史上最大、前代未聞、空前絶後なワーストエンドだ」
神代たちと、稀璃華を直線で結んだ間の地点に割り込む農夫の顔は、
つい先ほどまでの彼とは別人物と思わる程に、
醜悪で、邪悪で、凶悪で、狂悪に笑い歪んでいた。
だが彼に構えるそぶりはない。
しかしそれは、何もしてこない訳ではなく、既に事は起していたからであった。
「させねえよバカたれが。
おらは、おら達は、この瞬間こそをずっっっっっっと待ってたんだ!
長さはそれぞれだがおらの場合は、人類の始まりのあの時からな」
そう言って稀璃華の意識を逸らした農夫の術は既に、
稀璃華の足元で発動されている。
突如地面が二か所隆起を始めたかと思うと、その二つから、
太い木の幹が異常な早さで成長して、
それらは稀璃華の体のそこらじゅうに絡まり、身体を拘束した。
699
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 21:22:49 ID:1gBuqmPQ
>>697-698
「榊も榊だ。
ぼさっと見てる暇があったら、そっちの金髪の首根っこ引っつかんでさっさと連れて来いっつの」
いつの間にか大剣にその身を巻きつけていた黒い蛇は、人の姿に化身していた。
「ぐああっ、くそっ!」
地に両膝を付き無事な左腕でなんとか上体を支えているが、その背は大きく焼けただれ胴を大剣が貫いている。
右腕と肩は土の顎に噛み潰されて腕らしい形を成していない。
「いいざまだな稀璃華、この落とし前としてしばらくはその格好でいろよ」
拘束された稀璃華を首だけで振り返ってニィッと笑った顔は血の仮面をつけたように赤く、
紫濁の瞳には橙色の煌きが混じり始めている。
「おい金髪。これ抜くの手伝え」
立ち上がって大剣を地から引き抜くことには成功したものの、背から腹へ貫いたその刃は
この姿の巴津火の身の丈ほどもあり、左腕一本では到底抜くことが出来ない。
(このくらいのハンデはありだな)
突き刺さったままの秋牙羅未の大剣は、巴津火の邪神としての力を徐々に削いでいた。
その影響で巴津火には神格としての自覚が強まってゆく。
憤りはもちろんまだあるが、感情とはまた違う理由で担うべき役割を自覚し、
神代と天界との間の真実を見た巴津火は限界まで己の我侭を貫くことにした。
(あの時も正々堂々と戦ったなら、ボクは決して負けはしなかった)
遥か昔に敗者として全ての栄光を奪われ貶められた、かつての強大なる神格は
今度こそ正攻法による戦いをするつもりなのだ。
(神代、ボクはそうしなければならない。『悪い』な)
700
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 21:47:44 ID:HbHPxpxY
>>698-699
「離せ農夫っ!今すぐこれを解け!!!」
もう無理なのは分かっている。
だが体を無理に動かしたり、懸命に振りほどこうとした。
「巴津・・・・・・・・・。」
巴津火が言い放った言葉は、深く突き刺さった。
何も出来なかった自分が惨め過ぎて、泣けてくるのだ。
事は一向に進み、ただ稀璃花は見ているしかなかった。
701
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:06:08 ID:EK/9fLvc
>>699
,
>>700
「私は堕天術の調整がある。
それに急がなくとも良い筈。結果は同じなのだから」
巴津火の悪態を聞きながらもまったく変化のない榊は、
巴津火に事情を説明するために、神体が未だ置かれている陣を指さす。
それにここから動く気もなく、農夫を急かす気もないらしい。
「まあ無理だ。
お前も最後まで見ればいいじゃねえか
それに巴津火、お前も刺さったままにしておくぞ。どうせ死なないだろ?」
ここで暴れられても困る、そう判断した農夫は稀璃華を残し、
呑気な口調で巴津火たちのもとへ歩み寄る。
先に見せた笑みが、まるで嘘のように暢気な顔であった。
『なにがだよ!?良いから早く殺しゃあいいいじゃねえか!!』
「嘘までついて自身を殺させ、でもそれももう意味が無くなったんですよ?」
『な、何が意味ないだ!せっかくの神命・・・神命・・・を』
面に浮かんでいた邪悪よりも、どこか必死な雰囲気が雨子神からは、
いや、穂産姉妹から滲みだしていた。
下劣な笑みもなく、今は唯、視線は定まらなくなって。
「僕はもう、全てを知ったんですよ。禁伝の部分も」
『・・・いやだ。やめ、やめて・・・・』
「お願いだから!これ以上は言わないでください!!
私たちは貴方を、貴方をのろ」
「守っていた、ですよね・・・?」
最後に神代の言葉を聞いた頃の穂産姉妹は、
唇はわなないて、既に泣き出しそうな顔色を浮かべている。
目には涙を浮かべて、まるで子供の駄々のように首を振っていた。
702
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 22:20:30 ID:1gBuqmPQ
>>700
>>701
「バカヤロー!まだ死なないけどこのままじゃ動きづらいんだ!」
何としてでもこの剣を抜いてやる。そして暴れてやるのだ。
巴津火は剣が刺さったままうろうろと辺りを見回し、手ごろなものを見つけた。
(刃先を押して抜けば何とか)
稀璃華のほうへふらふらと歩み寄って、その剣先を木に当てた巴津火は力いっぱいに寄りかかる。
上手くすれば刃先を押し戻して抜くことができると踏んだのだ。
「うああああっ!!」
綺麗に抜くのとは違い、ごそりと刃で傷口をかき回される感触に、流石の巴津火も苦鳴を上げた。
剣を抜けば酷く出血するだろう。
「あの金髪め…、後で同じ目見せてやる。おい稀璃華!その手で握れるか」
最終手段として巴津火は、捕縛された稀璃華の手に大剣の柄を握っていてもらうことにしようと
思ったらしい。
703
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 22:30:50 ID:HbHPxpxY
>>701-702
「・・・・・・。」
ただ大剣を無言で握る。
溢れ出る血を目に止めず、神代達を眺めていた。
「(な、なんだ?あのさっきまで狂ってた奴の雰囲気が変わった?)」
非常に気になるが、縛られていて何も出来ず。
704
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:47:37 ID:EK/9fLvc
>>702
、
>>703
今度は巴津火の声をシカトして、穂産姉妹達の近くに立つ。
背中は見せても巴津火たちの動きの警戒は怠らず、
仮に今巴津火が出し抜けに襲いかかろうとも、迎撃はできるようだ。
「やっぱりこうなったな!!ペテンなんて無理なもんだ!
復讐の相手をずらすなんて荒業、最初からできると思う方がおかしい!!」
農夫のしばらく後にやってきた包帯男。
馬鹿デカイ声を上げてやってきたために、農夫は彼の首元に拳を決めた。
邪魔しないように黙らされた包帯男は、気道を確保するために地面でもがいていた。
「僕だって最初は、神話どおりに実行しようとしました」
『だったら・・・だったらその通りに・・・お願いだからぁ・・・』
「でも、復讐すべきは穂産日子さん穂産雨子さんじゃない」
雨子神はもはやすがりつくように涙を頬に伝わせて、
力なく神代に訴えかけた。
そして彼らの間で理解不能なやり取りがなされている最中に、
巴津火の中の禁伝第二項、それの更なる続きが溶け出した。
そこはより機密として封印されていたらしく、情報の流出までに時間がかかっていたようである。
―大きな力を手に入れた二柱の神は、
人々に結実豊作と、子宝児童安全の恵みを与え、より江戸の人から信仰を集めていました。
そしてそんな優しい神々にはその時、特に愛おしい存在があったのです。
それは、悪魔と尊の垣根を超え、固い愛によって結ばれているとある夫婦でした。
悪の骨頂の彼と、それに相反する巫女がここまでの愛を生み出したのには、
彼らの間で数々の死闘、論争、それらを超えていったからなのです。
黒と白、善と悪、それらを二分せず中庸して愛する彼らが子を宿した時、
同じく中庸を愛する、穂産姉妹神は大変喜びました。
全ての子を愛する母性神は特にこの子供を可愛がり、
安産、児童安全、彼女たちの持ちうる全ての力や祈りを用いて祝福しました―
705
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 22:50:29 ID:EK/9fLvc
>>704
訂正
悪魔と尊×
悪魔と巫女○
706
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 22:59:52 ID:1gBuqmPQ
>>703-704
稀璃華が大剣の柄を握ったのを確かめると、一つ深呼吸して思い切り身体を前へと投げ出した。
「がほっ!!」
破邪の大剣からずるりと解放されて、膝を突いた巴津火は血混じりに咳き込む。
しかしその顔には不穏な笑みが広がっていた。
「よし、ボクには左腕一本あればよい」
夥しい量の血を足元に零しながら、巴津火は立ち上がった。
その時、機密とやらが胃の腑で溶けたらしい。
「…ペテンってよりも茶番か。蛸の言うとおり、神格ってやつはめんどくさい代物らしい」
大剣から解放された巴津火の表情は、既に紫狂のそれである。
「稀璃華、その剣よこせ。ボクがさっさと終わらせてやる」
ボロボロになりもはや邪魔な上衣を苦労しながら脱ぎ捨てて、ニタリと笑った血まみれの半邪神は、
振り返って稀璃華に左手を差し出し大剣を渡すよう要求した。
今、秋牙羅未の剣は新しい主と定めた稀璃華の手に、重さを殆ど感じさせずに握られている。
その気になれば、稀璃華はこの剣を振るうことが出来るだろう。
707
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 23:16:04 ID:HbHPxpxY
>>704-706
秋牙羅末の大剣は、稀璃花を新しい主として認めてくれたらしい。
それは気持ちの問題か、元を辿れば鉱石と言う同じ原子だからか、理由は解らないが。
「巴津火、僕は君の事、凄く好きだ。だけどね、その捻くれた性格だけは好かない。だから剣も渡さない。(ちょっとの間、僕の武器として力を出してくれ。)」
植物を瞬時に切り落とすと、傷が深いであろう巴津火に一発、殴りかかる。
「(何が終わらせる、だ。いい加減にしろよ・・・。)」
708
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/17(木) 23:27:27 ID:EK/9fLvc
>>706
>>707
―しかし穂産姉妹には祝福された夫婦の愛も子供も、
善と悪、絶対的な極端を信ずる天界の神々は決して許しませんでした。
彼らの不実に激怒した神々は、穂産姉妹神の術を打破しなおかつ死産させるよう、
数人がかりのアマツカミに命令し、赤子を呪いました。
秘密裏の呪術を穂産姉妹が知ることはなく、
更には赤子に重ね重ね祝福を彼女達は続けるのでした。
そうして知らず知らずに行われた術比べの結果は、誰もが勝つことはなく、
強いて言うのならば、誰もが完全敗北を喫したのです。
悪魔の邪、神気の正、胎児が受け継ぐであろう二つの力を両方活性化させ、
巫女の子宮の中で胎児を、正邪の衝突によって殺す目的の呪術。
どのような障害があろうと全てを退け、無事に出産を促す祝福。
これらの力が招いたのは、正邪の衝突を体内で起こしながらも全て中和し、
その分を外界へ全て発散してしまう、呪われた赤ん坊でした。
そこから、全てが狂いだしたのでした―
「ずっと待っていたんです。
大きくなった僕があなたたちの前に立って、立派な姿を見せる瞬間を」
ローブの中から神代は何かを取り出して優しく言った。
神代の手に握られたものは、穂産姉妹神の祝福の込められたお守り。
自らの邪気で黒く浸食しながらも、効力はまだ消えていないようであった。
「っと何してんだお前ら?」
そのようなやり取りの中、
後ろの不審な動きを察知して農夫は、やれやれと呆れながらも振り返った。
するとそこで見えるのは巴津火を切りつける稀璃華。
当初から彼らを今一理解していなかった分、この状況を、
まだじゃれあいの延長だということでしか見ていない。
709
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 23:35:48 ID:1gBuqmPQ
>>707
「ごふっ」
稀璃華の拳を、巴津火はたたらを踏んで持ちこたえる。
「…よりによって傷のある腹を殴るか?それにボクは前から言ってるとおりお前が大嫌いだ」
ぺっ、と血を吐きながら巴津火は稀璃華の売り言葉に買い言葉。
稀璃華を嫌いな理由は、もちろん撫で回されて触られるからだ。
「お前今、良い加減にしろ、って思っただろ」
巴津火は稀璃華の表情を瞬時に読み解いた。
「ボクは神代に対して、それと同意見を持ってる。
だからあいつを一発殴ってこの茶番を終わらせてくるんだ」
紫濁の瞳に強い橙色の輝きが混じった。
「手伝うか稀璃華?
ボクをコケにしてくれた天界への意趣返しに、神代とあの姉妹の殺し合いに
全く違う形で決着をつけさせてやるんだ」
一段声を低くして、農夫たちには聞こえないように稀璃華にそう囁いた巴津火は
邪気と神気の両方を入り混じらせ、その声にはぞくりとするような真剣さがあった。
今ならこのひねくれ者は、稀璃華の問いへ正しく答えることだろう。
710
:
巴津火「」
:2011/11/17(木) 23:37:41 ID:1gBuqmPQ
//安価ミス、
>>708
まで含みます。
711
:
稀璃花
:2011/11/17(木) 23:48:53 ID:HbHPxpxY
>>708-709
「ごめ・・・勢い付けすぎた・・・。」
軽く涙目になりながら、謝罪。まさか血を吐くなんて思わなかったからである。
「巴津火らしい、一発、やって来い。僕は見届けてやる、茶番の最後を。」
巴津火の肩を叩き、走り寄って行く先には・・・春宇知厄だ。
「生きてるか?あんたの主含め、一緒に見届けよう」
712
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:01:30 ID:EK/9fLvc
>>709
、
>>710
「全てを知っているあなた達なら、これから僕達がやることも知っているでしょう?」
「だから、それは駄目です!」
『死しか見えてないじゃないか!なんで生きようとしないの!?』
再び大事そうに、お守りを懐にしまった神代に大声でそう叫ぶのは、
今もまだ必死な形相で止めようとしている穂産姉妹。
心ではもう、目の前のこの少年がこれから一生、
体の全てが絶えて血に伏すその時まで止まらないことは分かっていても、
やはり穂産姉妹の神格の元になった心は、それでも否定するのだ。
「それで、お前らは何してんだ?」
途中から意識が巴津火と稀璃華へ向けられていて、
更に榊の進言があったことで、農夫は余計に警戒を強めていた。
なんとか回復できた包帯男も、彼の隣に立って、
状況を飲み込んでいないながらも警戒を強めた。
「・・・。」
稀璃華が駆け寄った、縛られたままだった春宇知厄の顔は、
目や口を大きく開けて、驚愕の様相を浮かべている。
何も言葉を発さないのでなく、発せないのだ。
713
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:02:10 ID:EK/9fLvc
/安価ミス
>>711
も含みます、スイマセン
714
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 00:08:15 ID:1gBuqmPQ
>>711-712
「…って見てるだけかよおい!」
いやむしろお前手伝えやコラ、と慌てて巴津火は稀璃華を追う。
「せめてその剣だけでもよこせ。これじゃないと出来ないことがあるんだ」
足を引きずりながらのろのろと追いすがり、稀璃華の手から秋牙羅未の大剣を奪おうとする。
大剣を手にしたら、今度はそれに縋りながら穂産姉妹の所へ取って返すだろう。
(もう一度あの因果を漱ぐ。この剣でなら雨子神を殺さずに漱げる)
半分しかない神格にで双子神の因果を背追うことは出来るだろうか。
やってみなければ判らない。
(死にたがりが3人か)
姉妹と神代の間の会話が巴津火にも聞こえてきた。
「稀璃華、包帯と農夫の注意引いてろよ」
(榊は多分、最後にしか動かない)
黒衣の人物、と衣蛸が言っていたのを今更に思い出す。
715
:
名無しさん
:2011/11/18(金) 00:17:39 ID:HbHPxpxY
>>713-714
「は?なんで僕が?・・・後さ、その剣、使い終えたらくれない?」
不思議と剣に興味を示した稀璃花。
一旦巴津火に手渡した。
「春ちゃん、こんなんなっちゃったね。君はこれでもいいか?」
解きながら、稀璃花は話した。あまりに、驚くべき事だろうが、現実だ。
農夫さん、包帯さん、と手を振りながら、注意を引くことも忘れず。
716
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 00:31:03 ID:EK/9fLvc
>>714
、
>>715
「・・・。」
返答は、まだ出来ないでいる彼女。
確かに神代と穂産姉妹の因縁自体がペテンであり、
今、彼らはお互いを守ろうとしているこの光景を見たときのこの驚きは、
春宇知厄から言葉を奪うのは簡単だったのだろう。
彼女の驚きのほとんどが、そんなことじゃないことを除いても、
やはり驚きは大きすぎるほどに大きかった。
「なんだ?おらはあれと絡むのは嫌なんだがな・・・」
警戒をしていたが、いや、ある意味警戒していた分稀璃華の動きに敏感になり、
半ば条件反射のように手を振り返す。
それゆえ警戒は稀璃華にだけ注がれ、
状況を理解できていない包帯男も役に立たないので、まさに今は巴津火の独断場であった。
717
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 00:42:12 ID:1gBuqmPQ
>>715-716
「使い終わったらお前に投げるから上手く掴め」
巴津火の手を嫌がってキシキシと剣が軋むところを見ると、
投げ渡さなくても剣自らで稀璃華の元へと飛んでゆきそうではある。
(もう一度、もう一度だ)
既に血の気のない頬を、流れた血が汚して誤魔化してくれる。
稀璃華が作ってくれた隙に、穂産姉妹と神代の元へ巴津火は左手に大剣を引きずりながら向かう。
既にこの刃は巴津火の血で汚れているのだ。
(この血が流し損になったら、それこそ本当の茶番だな)
そして目の前には雨子神の背中。
神代と目が会えば、愛想良く笑って見せながら禊の刃を雨子神に突き立てねばならない。
(今だ!)
日子神を漱いだ時と同じく、形式上雨子神を殺害することで、残るもう半分の因果を巴津火は引き受けた。
あのニヤニヤ笑いを神代に向けて貼り付けたままである。
「死にたがりの2人目を始末。三人目がいたら名乗り出ろ」
巴津火が秋牙羅未の大剣を抜き去ると、雨子神の身体はゆっくりと日子神のほうへ倒れた。
息はまだある。
718
:
稀璃花
:2011/11/18(金) 00:54:52 ID:HbHPxpxY
>>716-717
「春、おーい。・・・ダメだこりゃ。」
しばらく彼女はほっぽっとき、絡むのをいやがる農夫へと近寄った。
きっといい迷惑である。
「おっさん、僕と結婚しよう?おっさんは正義って決まってるからね。」
女装があったならいいかも知れないが、今、話してるのは完全なる男。
農夫にはかなりのダメージを与えられた・・・と思う。
ちなみに包帯さんには無関心だ。
719
:
穂産姉妹大社
:2011/11/18(金) 01:09:20 ID:EK/9fLvc
>>717
ほんの少し前まで、巴津火は穂産姉妹の命を狙っていた。
その事を知っていた神代でも長年の悲願、
それを果たしかけていたこの瞬間には油断して警戒は意識の外へ。
贈られた笑みに本心からのそれを贈り返し、
それでも巴津火に真意を把握できていなかった神代は数秒後、
彼の行おうとして現に成功せしめた事実を、目の前に叩きつけられることとなる。
「な・・・んで?」
自らの片割れを突然刺された日子神は状況が呑みこめず、声が掠れていた。
雨子神の生存は、体が崩れていない事で分かるがやはり、
巴津火の凶刃は彼女から思考を奪うことは容易いことである。
「僕もたいがいそうだと自覚していたつもりなのですが。
巴津火さん、今あなた以上に、死にたがりな方はいませんよ」
だが、金縛りにあったように動けない日子神と対照的に、
呪われた怪物はこの出来事を見てまだ優しく明瞭ながらも、
かの地獄の王ルシフェルの姿を後ろに見える程の憤怒を体から発して、
巴津火にゆっくりと喋りかける。
【ジャッジアンリーゾナブル】
言葉の後、数秒も待たず巴津火には、計6本、
先ほどよりも長く太く、強靭な黒炎の槍が凄まじい轟音とともに放たれた。
>>718
「(にしてもあの守護神・・・
神だから当然の報いっちゃあ報いだが、お気持ちはお察しするぞ)」
遠くの彼女を眺めながら、農夫は顔をしかめた。
そして稀璃華がこちらへ残念なことに接近して、余計に顔のしわが増える。
「は?
結婚って・・・・てか駄目だありゃあ。
おい稀璃華、今はどうでもいいから避難しとくぞ」
いつも通り稀璃華のようなキャラに翻弄されるかと思っていたが、
農夫は目の前の神代を見て、それはない事を知る。
今はただ逃げるだけ、それほどの危機が存在しているからだ。
720
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 01:28:30 ID:1gBuqmPQ
>>718-719
稀璃華のほうへからん、と大剣を放りなげて巴津火の様子が変わった。
もともと邪気は持っていたが、それがさらに純粋なものとなる。
「ふふ、神格が重荷で押さえ込まれたか」
その瞳は鬼灯色に赤く輝き、神代を真っ直ぐに見た。
「死にたがり?残念だが私はまだまだ生きるつもりだ」
物柔らかに力強く語る大人びた口調は、とても巴津火とは思えない。
「さもなくば、天に仕返しできないからな」
指先で軽く天を指すと同時に、地下では水脈の中に広がった、あのガラス玉が一斉にはじけた。
八本の水柱が大地に固定された大蛇の周囲から鎌首を持ち上げ、
各々口を開いた蛇の形となって、黒炎の槍に襲いかかっていく。
6本の槍とそれにに絡みついた水蛇は互いを相殺し、2匹の水蛇を残して消えた。
「このくらいの挑発は許してもらおう。お前達のペテンに付き合ってやったんだからな」
巴津火は呆然とした日子神を見て笑う余裕があった。
雨子神も日子神も、因果を漱がれたことで悪影響は出ていないようだ。
「次は私の番だな。多田羅!」
その手には明々と輝く鉄の刃があった。
薄紫の炎を纏うその灼熱の刃を神代に叩き込むべく、清々しい笑みを浮かべて巴津火は跳んだ。
残った二匹の水蛇がその身を守っている。
721
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 01:34:56 ID:1gBuqmPQ
//
>>720
訂正です
×八本の水柱が大地に固定された大蛇の周囲から鎌首を持ち上げ、
↓
○八本の水柱が巴津火の周囲から鎌首を持ち上げ、
722
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 01:52:11 ID:EK/9fLvc
>>720
、
>>721
神代の顔には笑顔、だが厳密に言うとそれは正しくなく、
神代は顔だけに笑みを浮かべそれ以外には、
七つの大罪の一角、憤怒を結晶化させたような激情が迸っているというのが正しいだろう。
「いいえ、あなたには死んでもらいます。
こんな言葉を使うのは、おとうさんおかあさんは喜んでくれないでしょう。
でもたまには子供らしくわがまま言って、我を通させてもらいましょう
死ね、死ね死ね死ね死ね死ね。
死んでしまえ!!」
投げられた槍の数は6。
だがそれは、一度に、投擲できる数の最大であって、
必ずしもこの技の本数が6本までと限られた訳ではないのだ。
目にもとまらぬ、風すらも追い越すような速度で、
神代は黒槍を投げ二匹の水蛇を一瞬にして破壊し消滅させた。
守るものが無くなった無防備の巴津火へと、神代も衝突するように接近した。
手にはどの術なのか定かではないが、雷迸る両手剣が握られていて、
その刃は巴津火の眉間を目指して、煌めいている。
しかしそこへ、正体不明の長さは10cmにも満たない、
小さな妖気を纏っただけの針が、神代の手の甲へと突き刺さった。
大したダメージにならなくてもそれによって、刃をふるう際の動きに、
若干の遅れが生じるだろう。
723
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 02:13:18 ID:1gBuqmPQ
>>722
憤怒する神代を、ニコニコと微笑ましげに鬼灯色の瞳で見つめて、巴津火が迫る。
使い物にならない右腕では黒槍を叩き落しながら、かまわずに左手で逆手に持った灼熱の刃を神代につきたてようとする。
その途端、じゅんっ!と、赤熱の刃が音を立てて消えた。
その時にはもう、紫濁の瞳が神代の目の前でニヤニヤと憎たらしい薄笑いを浮かべている。
「バーカバーカ、ひっかかってやーんのー。あと、誰が死ぬか」
その台詞と同時に、ぺろりと二股の舌がつき出た。
上手いことペテンが成功して、この小憎らしいお子様は大喜びである。
「守ってやるって、言っただろ。
さっきので、お前とあの二人の因果は全部消えた」
姉妹神の代わりに因果を背負い、巴津火は神代と戦った。
そう笑いながら、満身創痍な巴津火は満足そうに神代の腕の中に倒れこんだ。
神代の懐で、お守りのあのガラス玉は割れてしまっていることだろう。
「あと、ボクを打ち負かした奴には、ご褒美をやるんだ。
神代におとうさんとかおかあさんはやれないけど、何かいらないものを捨てさせてやれる。
捨てられなくて困ってるものがあったら、ボクが水に流させてやるよ」
(そうだ。昔々に罪人を一人漱いだ。罪を漱いで英雄にした)
「何か捨てたいもの、いらないものあるか?」
巴津火は僅かに動く左手で不器用に神代を撫でてやった。
724
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 02:33:21 ID:EK/9fLvc
>>723
「!?」
剣の衝突を予期して、自らの手に精一杯の力を込めていた分、
フェイクを振り切った時の力は空へと発散し、神代の体勢は崩れ切る。
しかしそれと同時に神代の眼に映るのは、
こちらに倒れこんでくる力を使いつくしたであろう巴津火の姿。
「ぼ・・・・僕の・・・僕の因果が」
自らの体で支えるために倒れはすまいと踏ん張ったおかげで、
巴津火は地面に身を叩きつけることは無くなった。
しかし支え切って見せた神代の顔には、言い知れないほどの虚無が生まれていた。
「おい!!榊!!
これもお前の筋書き通りなのか!?坊ちゃんは鎖をなくしちまったぞ!!」
そこへ怒鳴り込むのは、かなりの剣幕な農夫である。
榊の胸倉に乱暴に掴みかかった農夫は小声で、榊と密談を始めている。
一方巴津火を抱く姿勢になった坊ちゃんは、しばし呆然自失としていたが、
すぐに気を取り戻して巴津火を突き飛ばした。
固くはなく丁度戦闘で、隆起した柔らかい部分に飛ぶ巴津火だが、
やはり満身創痍なだけに体にはこたえるだろう。
「捨てる?流す?
そんなもの、いる物もいらない物も、生まれた時から全部なかったですよ!!
半妖の僕には!!なにも得ることができなかったんです!
やっと・・・やっと手に入っていたところなのに・・・」
ひざから崩れ落ちた神代。
笑みを浮かべた顔が邪魔をするが、それでも伝わる悲愴はあった。
725
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 02:47:47 ID:1gBuqmPQ
>>724
「捨てられるもの、あるじゃないか」
弾き飛ばされて尚、ニヤニヤ笑いは巴津火に張り付いていた。
力を使い果たして横たわって居るというのに、さらに相手を挑発するのだ。
「たかが半妖生まれというだけで一々悲壮に暮れているなら、いっそ命でも流してしまうか?」
慌てる農夫や榊に対しても、おちょくったような物言いをする。
「自分たちから協力を頼んでおいて、ボクに目的を隠したりするからさ」
(よーし、怒れ。もっともっと怒れ)
紫濁の瞳は、先ほどまでとはまた違った風に輝き始めた。
726
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 02:57:47 ID:EK/9fLvc
>>725
榊に掴みかかったままの姿勢で農夫は振り向き、
今まで怒っていた、どの表情よりも本物の憎悪ある眼差しを巴津火に向ける。
何か言おうと言葉を探すような素振りがしばらく見てとれたが、
悔しそうに声を漏らしただけで、後はまた榊に怒鳴り散らすだけであった。
明らかに事態の雰囲気は異様で、
この中でも空気を読まない立ち位置の筈の包帯男にも、言い知れない激情があるのだ。
「たかが半妖?どこにも混じれない!嫌われも好かれもしない!
他者の悪意の最大で赴く無関心が、どれほど恐ろしいかも知らないのに!!」
もう心が止まりきれないのだろう、顔に張り付かせた笑顔の仮面も皹が入り、
ところどころに怒り顔の特徴が神代の顔に浮かび始める。
声は今や怒鳴り散らして、面影は声のまだ声変わりのなさだけであった。
「流せるものなら!捨てられるものなら!!
いつだって!!なんなら生まれた瞬間に死んでやるさ!!」
727
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:04:15 ID:1gBuqmPQ
>>726
「だってたかが半妖だろう。お前一人が半妖だと思うなよ?
今までにもこれからも、半妖なんて幾らでも生まれてくるんだ」
澪と夜夫婦の間にも、まもなく半妖は生まれてくるだろう。
同じ「ぼっちゃん」のくくりではあっても、巴津火と神代は多分絶対的に違う。
巴津火はいじめっ子なのだ。
「お前だって他の半妖に出会ったこと位はあるんだろ?
そいつら皆、お前みたいなぼっちだったか?」
巴津火は神代の笑顔の仮面をその激情で剥がそうとしている。
体力は無いが余裕はある様子だ。
728
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 03:17:03 ID:EK/9fLvc
>>727
「巴津火さん、あなたが僕を撫でた手、黒く変色していませんか?」
当然来るだろうと思っていた質問。
かつて神代も、誰もいない空間で何度も自問し、
何度もその答えを出して、何度もその答えが自分に該当しないことを思い知らされた、
当てもなく同じことを繰り返した質問。
逆に沸点の上がっていた神代の怒りは醒め、
いやに冷静に、いやに感情を手放して、表情に笑顔を取り戻した。
巴津火が神代の言葉通りに自分の掌を覗き込めば、
おそらくいつかの牛神神社の姫君がそうであったように、黒く変色して、
はっきり言えば邪悪に汚染されているのがわかるだろう。
「禁伝にもあったはずですよ。
僕は僕の正邪に殺されない代わりに、周囲に正邪を振りまく。
清きものと触れあえば邪悪によって焦がし、悪しきものとじゃれあえば、
清純さによって体は清められ消滅するのですよ。
だからあの時あなたを突き飛ばして、穂産姉妹にも抱きつけなかったんですよ」
呪われし赤子、怪物。
その由縁とは、ただの半妖のジレンマではない。
陽のあたる世界では生物を焼死させ、陰の世界では怪物を消滅させる。
どこにいても殺して、どこにいても害してしまうのだ。
729
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:27:10 ID:1gBuqmPQ
>>728
「んー?ああ、黒いな」
巴津火は左の手を持ち上げてみる。
ついで、泥だらけのズボンのポケットに手を突っ込んでぐいぐいと拭う。
「ま、ほぼ泥と煤だな」
先ほどは焼けた鉄を握り、今は泥の上に寝転がっているのだ。
「正邪を振りまく?禁伝にそんなことあったんだ?
ボク自分の伝承の方に夢中になってたからなー」
事情を聞いてしばらくポカンとしていた巴津火が、困ったように呟いた。
「神代に言ってなかったっけ?
ボク半分は神格だけどもう半分は、邪神格なんだって。
それに今までも何回か神代にさわったりしてたぞ?ほら、あのお守り渡した時とか」
730
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 03:41:21 ID:EK/9fLvc
>>729
「もちろん撫でただけですよ。
でも一瞬僕に触って、一瞬で巴津火さんの手の表皮は焦げた」
赤熱した鉄なのか、神代の邪悪なのか、
巴津火の手を焼いた方はどちらなのかは分からないが、どちらもかも知れないが、
ただ、触れる機会が一瞬であった巴津火が、
体に大きな黒点を作ってしまう機会を失ったことは確かである。
「あの時も一瞬ですよ。それにそれで済んでいるのは、
何よりもあなたが上位神格を所持できる程の存在だからです」
人間であったならば、身に禊という自己修復能力もなく、
神代の残す黒はより深くより長く残っていたのであろう。
今や完全に落ち着いてしまった神代は顔に笑顔を浮かべ、ちらと穂産姉妹の二人を見た。
どうやら二人は心労でいつかのタイミングに意識がなくなったらしい。
「あなたは日本の神の邪と、西洋の邪を同一視しています。
災厄や災害の神たちの持つ邪な力は、生きる上でどうしようもなく切り離せず、
自然にとっても人間にとっても避けられない、業、なのです。
でも、僕にある悪魔の邪は、人間たちの切り離せるはずの、
それでも手に取ってしまった邪な心による、罪、なのです」
731
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 03:59:15 ID:1gBuqmPQ
>>730
「ちょっとまて、その種類の邪の概念はこの国にもあるぞ?」
西洋の神の邪に相当するもの、人の心における悪の概念は仏典と共に流れてきている。
邪神とされる存在もいる。
「それにボクがお前に触ることができたり、こうして話していることは
さっき言ってた嫌われも好かれもしない、どこにも混じれないということは間違ってるだろ?
あの二人だって、結局はお前が憎いなわけじゃなかったようだし?」
巴津火は、左手をしげしげと眺めた後に神代のほうへ再び手を伸ばしてみた。
「これ握ってみろ」
ニヤリと笑いながら、神代に言った。
732
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 04:14:00 ID:EK/9fLvc
>>731
「この国にも確かに罪の邪は存在しているでしょう。
でもだからって、全身全霊の悪がいたって、
僕がその者を慕って近づけば今度は禊の力で、彼を害するんです」
ちなみに巴津火の邪は前者のほうであるといえる。
自然に罪はない、というより人間ごときが自然の一部分を観測して、
流れを悪と決め付けることはできないのだ。
たとえそれが母、窮奇の残した罪の邪があっても邪神の神格の部が上回って、
結果神代の呪を無効化できるようなものでもない。
「だからあなたは僕の友達で、穂産日子さん穂産雨子さんは恩人なのです。
ですが世界はあなたたちほどはみ出しや、中庸に寛大ではないんですよ。
人の世界では退魔士が、妖怪の世界では界の神格が、
それぞれ僕の追ってとなるんです。弾劾する代表となるんですよ」
そう説明していると巴津火は手を差し出していた。
「あなたはひどい方ですね」
しかし神代は、笑ってそれを拒否した。
今まで可能性を信じて様々な者と触れ合ってきた神代。
そしてその全ての結果を受けて神代は、他者に触れることにすら臆病になっているのだ。
733
:
巴津火「」
:2011/11/18(金) 19:19:31 ID:1gBuqmPQ
>>732
>>715
神代の口から「友達」という言葉と、「ひどい」という台詞を聞いて、
今度は自然なニヤニヤ笑いが巴津火の顔に広がり始めた。
そして少しばかり皮肉げに神代に言う。
「差し出されたものすらそうやって拒否してたら何も手に入らなくて当然じゃないか。
そうやって他の何かのせいにしてきた奴がボクの友達? 笑わすな。
生きるに足るだけの身体も考える頭もちゃんと持って生まれておいて、
いる物も要らない物も何も無いだとか、親が聞いたら泣くか呆れる」
ほんの少し口調を和らげ、
「この手はボクの意思で差し出した。お前が握りたいなら握り返して良いんだ。
多少焦げたってボクにはそんなの日に焼けるのと大差ないんだから。
それでも何にも触れないとか気にするなら、あらかじめ手袋でも嵌めておけ」
既に巴津火の背中も右腕も、神代の術で黒く焼け焦げているのだ。
この左手を拒否したところで、何を今更である。
そしてこちらの様子を伺っている稀璃華に向け、神代が拒否したその左手を振って招こうとする。
絶対に友達なんかではないと互いに言い張るだろう稀璃華と巴津火だが、
それでもこの二人の行動は神代とのそれよりもずっと親しげだ。
「お前が今後あの双子どう馴れ合おうが、ボクが天に文句は言わせない。
望むならその化け物の汚名も漱いでやれる。だから自分の居場所はこれから作れ」
何時までも因果になどしがみついてないで、姉妹とは新しい繋がりを作れば良い。
巴津火が祓ったのは、姉妹と対立しなくてはならぬように天が仕組んだ因果のみ。
彼らの間の想いまでは祓ってはいない証拠に、神代の持つ姉妹からのお守りは無事だ。
「それも嫌なら捨てたいというその命、いつでもボクが喰ってやるから安心しろ。
お前の言う『友達』ってのが手すら掴めない程度の仲のことなら、簡単なことだ」
安心させるつもりの欠片も無い言葉が、遠慮無く神代に注がれる。
神代が悩もうが農夫が怒ろうが天が揺るごうが、巴津火にとっては知ったことではない。
734
:
稀璃華
:2011/11/18(金) 19:33:02 ID:HbHPxpxY
>>732-733
「おっ、巴津火、ある程度は整理ついたっぽいな。」
槍と剣を持った稀璃華はなんだか男っぽい。(実際男だが。)
友達でないにしろ、スキンシップは大切にする稀璃華は、神代にも馴れ馴れしく抱き着いた。
「ほぉら、僕が友達になってあげるよー?神代もぐじくじしてないて、我を通せ、子供らしくな。」
稀璃華には清い物だの、邪悪だのないし、ましてや石の塔。
神代に触れたところで、問題ないのだ。
735
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/18(金) 23:41:40 ID:EK/9fLvc
>>733
「ふふ、ありがとうございます。
でもやっぱり僕はこの力を認めることはできなくて、
だから、その懐に甘えても誰かにこの力で、害なすことはしたくないのです」
神代の臆病になった他者への関心も、
多少手荒であれ優しい言葉はゆっくり染み入って、神代には笑い声が戻った。
それでもまだ、こう言われようと神代の意思は変わらず、
巴津火には見えないようなところでその手は、悔しそうに握り拳を作る。
神代にとっての巴津火は、友達ということを否定されてもやはり、
人生の中でも特に大事な存在であることに変わりない。
そうであるからこそ、神代は自分の手で大事なモノを汚したくはないのだ。
「くすくす、やりたいことはまだまだありますよ。
穂産姉妹さん達を引き入れることはできなくなりましたが、
僕にはまだやりたいことも、やるべき事も残っている、死ねませんよ」
討伐が終わったなら、全てが終了したなら、その時に神代が生を諦めたら、
この目の前に立つ巴津火が殺してくれる。
以前話したその内容と、今の彼のまったくの不変さに神代は思わず笑みを強くした。
「そうですか、僕の消された因果は穂産姉妹さん達のだけ。
なら僕はまだまだ、安心して死ぬために生きることができます」
遠くで聞いていた農夫も、巴津火によって拭い去られた因果の内容は聞いていた。
そして彼の顔に浮かぶのは、心の底からの安堵であった。
>>734
まさか近づくどころか後ろから、抱きつかれるとは思っていなかったために、
神代は目を少し丸くして驚いている。
先ほどまで警戒を解いていた分稀璃華の体に触れてしまった神代は、
少しの焦りを顔に浮かべて、素早く彼の方へ顔を向けた。
「・・・はは、まったくこの街は本当に恐ろしいですね。
触れても逃げようともしない暴れ神、むしろ手を差し出す邪神、
さらには正邪の外にいるあなたですか」
しかし彼の体に変化はない。
しばらく経て意味を理解して、深く安堵のため息をついた。
「これから、どんどん我を通しますよ。
実はこれでも穂産姉妹さんに対しては、意思を無視して我儘したつもりなのですけどね」
736
:
巴津火「」
:2011/11/19(土) 00:08:54 ID:1gBuqmPQ
>>734-735
「おい、稀璃華……」
稀璃華が神代に抱きつくのを反射的に止めようとした巴津火だったが、途中で思い直した。
下手をすると今動けない自分のほうが稀璃華のターゲットになりかねないのだ。
自分の安全のために神代には犠牲になってもらおうと決めた巴津火は、稀璃華へは
黙っておくことにする。
「神代。安心して死ぬまでにお前の運命の中で強くなれ。
お前はさっき上位神を殺した。だからその神殺しの因果を新しく背負ったんだ」
喰らった巴津火も共犯ではあるのだが、殺したのは神代だ。
「確かにお前の生まれには波乱が付いて回る。
けどそれは、その中で揉まれても諦めなければもっと強くなれるってことだ」
因果を背負い続け、いつか殺した神格の立場を担える強さを証明できたなら。
「お前は神にもなれる」
その時にはお前の背負わされた呪いも縛り付ける因果も漱いでやるよ、と、
友達という関係を早くも諦めたらしい神代にそう約束した。
(あの笑顔の仮面を引き剥がして泣きべそかかせてみたいけど、それはまた次だな。
あーあ、もうちょっと苛めてやりたかったのに……限界だ)
既に巴津火の瞼は半分落ちかけていた。
「お前ら、何時までこそこそしてる」
半ば目を閉じた巴津火の叱責に、直ぐ傍の水溜りがぷくりと泡を吐いた。
737
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 07:29:40 ID:HbHPxpxY
>>735-736
「巴津火の言う通り。神代、今の自分の壁を乗り越えろ。きっとお前の世界観は変わるから。
にしても、巴津火とは違った肌の感触だな。これが純粋な男の子か。ぷにぷに」
(そう言えば、あの時の墓の火の子供、今何してるかな。)
少し昔の事を思い出しつつ、神代を撫で回す変態。
巴津火よりも優しく、繊細に撫で回している変態は、もう倒れそうな巴津火を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「巴津火は僕の背中に乗ってく?フフフ」
なんやかんやで一件落着なのだろうか。戦いの場となった神社を眺めながら思った。
738
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/19(土) 09:59:24 ID:EK/9fLvc
>>736
,
>>737
なおも対処をせずに、稀璃華に抱きつかれたままの神代。
笑顔の崩れていないその顔は、巴津火の声で少し俯いて、
神代もその言葉をかみしめるように小さく、しかし意思を持って呟いた。
「・・・もう、殺しちゃったんですよね。
ふふ、これで僕も神殺しですか」
状況の終息を感じた神代の一派は各々が神代の元に集まる。
榊に変化はないが、農夫の方の怒りは何かしらの安心によって収まり、
理由の判明しない包帯男も、あの足取りに考えの無しな雰囲気を見れば、
しっかりと冷めているのが窺えた。
「くすくす、神にもなれる、ですか」
しかし最後の巴津火の言葉に対する神代の笑いには、
どこか悪辣な、それでいて無邪気な雰囲気が見える。
農夫は神代のその笑みを見て、また彼も静かに笑ったのであった。
「なんだ?俺たちは今ここに巴津火の前にいるじゃないか!
近眼なら俺のほうが近づいてやるぞ!!」
「多分今お前以上の近眼はいねえ」
一方水溜りの変化に気付かず、
巴津火の言葉通りに馬鹿らしい返答をして歩み寄る包帯男。
「あはは、くすぐったいです、止めてください。
は、巴津火さんだって稀璃華さんだって男の子じゃないですか」
そんな包帯男とは違う地点では、
嫌がるでもなくただ困ったように笑う神代の姿が。
巴津火のような拒否反応はないらしい。
今まで女性男性関わらず、しっかりと肌で触れ合ったことのない神代にとって男性であろうが、
それが同性との触れ合いであっても拒絶反応は出ない。
だがある意味巴津火と同じように、こしょばいのは苦手なようだ。
「おいおい稀璃華、いつまで坊ちゃんを抱き枕にしてんだ」
しかし農夫は無理やりにでも稀璃華を神代の体から剥がす。
まだあの肌の感触が残る神代は笑いながら、農夫に伴って黒炎を発した。
人の伸長の大きさまで炎を大きくさせると、
彼らは炎に飛び込もうとする。
739
:
巴津火「」 叡肖・ミナクチ
:2011/11/19(土) 12:20:50 ID:1gBuqmPQ
>>737-738
「誰が!!!お前にっ!……おい包帯」
今この場で一番余裕のありそうな稀璃華に、一番余裕の無い巴津火が噛み付くように答える。
もはや包帯男のボケに突っ込む余力はない。
そして帰り支度の神代に巴津火は、最後に念を押した。
「あの建物を作る約束は守れよ。場所は決めておくからな」
いつか敵対するであろう友達と判っていても、このいじめっ子は神代から
目を離すつもりは無いらしい。
「いるなら出て来い。帰るぞ」
その声に答えて、さして深いとも思えない先ほどの水溜りから現れたのは、
等身大の少年の姿のミナクチと、彼を乗せて半ばまで水面に現れた衣蛸の殻だった。
「蛸、お前ガラス玉に何か細工してたな。水蛇が海水だったぞ」
巴津火は半眼のまま、恨めしげに衣蛸を睨む。
『そりゃだって殿下が暴走したら止めるのが俺の役目だしぃー?
あのガラス玉に力を封じるの手伝ったの俺だしぃー?
普段から殿下の行動パターン見てたら、あらかじめ保険掛けておくなんて当然ですよねー』
殻からぬるりとその身を覗かせた大蛸は、その触腕をゆるゆると伸ばして巴津火を抱き上げる。
「お前のせいで傷に塩が沁みるじゃないか」
目を閉じて尚怒りながら、巴津火は衣蛸の殻の中へと引き込まれていった。
『私は稀璃華さんと穂産姉妹を夜行集団へ送り届けてから参ります』
衣蛸のためにこの水溜まりと川を水脈の道で繋げながら、下級の水神はそう伝える。
『判った、なるべく急いでくれ。
このまま宮に戻ると爺ィが煩いし、急ぎだからまず小鳥遊の所で応急処置させる』
水溜まりに沈んでゆく衣蛸に一つ頷くと、ミナクチは稀璃華を招く。
稀璃華の手を借りて夜行集団の本拠地へと姉妹を送り届けるつもりだ。
740
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 14:01:12 ID:HbHPxpxY
>>738-739
「うおぅ!?」
農夫に引っぺがされた稀璃華は残念そうにしつつも、楽しそうに笑っていた。
「ははーん、農夫のおっさん、僕が神代に抱き着いたのに嫉妬したの?これだからツンデレおっさんはっ☆」
そして、稀璃華の抱き枕となる残念な農夫だった。
「・・・・・・・・・っと、僕も帰ろー。よろしく、えーと・・・可愛い男の子☆
神代達もまたどこかでな。今度会ったら、たくさん遊んでやるからな。」
本当に男は可哀相だと思う。姉妹を呼び、ミナクチへと送られるだろう。
741
:
穂産姉妹神大社
:2011/11/19(土) 17:09:07 ID:EK/9fLvc
>>739
「?なんだ!?
俺の顔にはなにもついてないぞ!!布以外な!!」
「ほいほい、訳分からねえ事言ってねえで帰るぞ。
それとおらたちの母国じゃあ、そんくらいは普通だ。
なんならヨーロッパにでも吹き飛べよ、稀璃華」
さっぱり返答の意味を理解していないので、立ち止まって聞き返そうとする。
そんな包帯男の後頭部を軽く小突きながら、
稀璃華に馬鹿にしたような指差しと惜しみない呆れかえりを送った。
「くすくす、なんにせよ約束は守りますよ。
建物を建てるのに苦労はありません、目印ぐらいはつけておいて下さいね」
口元に手をあてて笑えるほどにゆとりを取り戻して、
神代は去り際に巴津火に念を押す。
そして隣の彼に対して別れの笑みが巴津火より少し輝いているのは、
スキンシップを好きなだけ出来た稀璃華に、神代が懐いたからかも知れない。
そんなやり取りをして炎の中に消えたのは、
叡肖たちが水たまりから姿を現すほんの数秒前であった。
「『・・・。』」
未だに意識を戻さない穂産姉妹は叡肖の言葉通り、
重くはないがやはり本拠地まで届ける、
その手間を彼らに負わせることになるのである。
/僕はこれを落ちにさせてもらいます。
/とても長い間付き合っていただき本当にありがとう&お疲れさまでした
742
:
ミナクチ
:2011/11/19(土) 18:06:23 ID:1gBuqmPQ
「え?はい。稀璃華さんにはお初にお目にかかりますね。
私はミナクチ、巴津火殿下に仕えております」
可愛い男の子と呼ばれてしばし戸惑ったミナクチは、稀璃華に一礼した。
「夜行集団の皆様にはこのお二人を護るとお約束していたのですが、
正直申し上げて危ういところでした……」
主の暴走にやや疲れた表情である。性格的に蛸よりもストレスに弱いのだろう。
「初対面の方にお願いしてしまってすまないのですが、
どうかこちらのお二人を支えていて下さいませんか」
稀璃華には姉妹神を頼み、自らは穂産姉妹の神体を丁寧に白布に包んで大事そうに抱くと、
そのの足下の水溜りが揺らいで、雨に煙った夜行集団の本距離が映しだされる。
そして次の瞬間にはもう水をぬけて、店の扉が全員の目の前であった。
//お二人とも絡みどうもありがとうございました!
743
:
稀璃華
:2011/11/19(土) 18:51:48 ID:HbHPxpxY
>>741
「ヨーロッパ?田舎者の僕でも行けるのか?」
懐く懐かないは別として、あそこまで普通にスキンシップさせてくれた子供は久しぶりだ。
今だにぷにぷにっとした感触の残った手を振り、神代と別れた。
「なんだな、呼びにくいな。
よし、ミナチー!運んであげるから、これからはこう呼ぶぞ!」
姉妹を支えながら、訳の解らぬことを言う稀璃華。
(春宇知厄もまたな。)
ミナクチに続き、そこに入ればホストの扉が。
中にはきっと、露希達が待っているはずだ。
//中々参加できず、長引かせてすいませんでした。
夜行さん、蛇さん、長い間お疲れ様でした!
744
:
巴津火
:2011/11/21(月) 23:33:11 ID:1gBuqmPQ
退屈しきった我侭なお子様は、白いベッドの上で泣き言を言っていた。
「こざると一緒の部屋がいい!お菓子欲しい!暑い、痒い、蛸、どこ行った!」
しかし、誰も応答しない。
ナースコールはとっくに鳴らせないようにされてしまった。
ベッドの傍らには水を注いだガラスボトルが置かれ、監視役の水神は水を通して
何時でもこの子供の様子を見ることが出来る。
「うーーっ!!」
右の肩から腕には分厚く包帯が巻かれ、その長さは上腕の半分しかない。
今の巴津火は唯一自由になる左手で、上掛けをばたばたと叩くことしかできないのだ。
それもやりすぎると、他の傷に響く。
病室の扉の前に誰かが来た時、一瞬、期待するようにその子供の表情が輝いた。
745
:
巴津火
:2011/11/21(月) 23:35:02 ID:1gBuqmPQ
//投下ミス 取り消します
746
:
結婚式当日
:2012/01/02(月) 22:20:44 ID:BQ990e1A
新年があけて、数日が経った。
そんなおめでたい時期に、更におめでたい事が。
それの始まりは刻々と迫ってきている。
―――ここは少し山奥にある大きな教会。
辺りには森や湖が広がり、天気も快晴。
本日はここで、結婚式が行われる予定である。
スタッフA「本日、ここで行われますので、参列者の方々はここへ。」
スタッフB「では奥から座っていってください。式はもうすぐです。」
露希「(すっごぉい、こんな大きなところでやるだなんて♪)」
黒龍「(俺も零と…)」
零「」ニコニコ
スタッフの誘導と共に、参列者は席へと移動する。
全員が座った時、式は始まる。
747
:
田中家
:2012/01/02(月) 22:41:19 ID:c1.PBF/s
>>746
そんな人生の幸せを祝福する場所の親族席。
そこに人間……だけどなんか首を傾げたくなるような人達が座っていた。
祖父(父方)「……………………」
祖母(母方)「おやぁ?澪くんの関係者かねぇ?」
下駄をはき、右手に縦に長い何かが包まれたモノを持ち、白いい袴に、長い白髪で白目のおじいさんと
小柄で、花柄の着物を着て、椿の簪をオカッパの白い髪につけ、狐の御面をかぶった女性。
一人は明らかに人の身でありながら鬼に近い存在。もう一人はおばさんみたいな喋り方なのに明らかに声が若い。
けど座ってるのは祖父母の席…
そしてもう一カ所の祖父母の席には…
祖父(母方)「ヘーイ!!!そこのカワイイ子!!僕とお茶………イタタタタ!!!冗談だからヤメテー!!マイハニー!!!」
祖母(母方)「まったく……孫のめでたい席どアナタは…」
黒いスーツに、サングラスをして、三日月のような白い髭を生やした陽気なイタリア人のおじいちゃんと
桜色の着物を着て、少し人間とも妖怪ともつかない中途半端な雰囲気の優しそうなおばさんが座っていた。
従業員のお姉さんにナンパしようとしたおじいちゃんはおばあさんに膝を抓られていた。
田中「おーい!零!露希!黒龍!!こっちだよー」
田中母「おや?あの子達が澪くんの友達かい?」
いつもの田中くんと火傷傷が目立つ田中母が三人に気付いた。
748
:
宝玉院 三凰
:2012/01/02(月) 22:46:53 ID:SmXQZqJk
>>746
,
>>747
「澪の奴、ついに結婚か。」
ゆっくりと辺りを見回し歩いてきた三凰。
「で、友人代表のスピーチは僕が読んでいいのか?」
立ち止まり、スタッフに尋ねる。答えを聞いたら席へ移動するだろう。
749
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/02(月) 22:56:42 ID:3FBgi9l6
>>746-748
『蛸ー…。これ苦しいー』
「こら、タイを勝手に解くな。これでも束帯よりは楽なんだぞ」
会場が教会なので二人とも人間の姿、かつ洋装ではあるが、
しっかり糊付けされて硬いカラーとその上のタイが、逆鱗を持つ巴津火には少々苦しいものらしい。
勝手に服の喉元を緩めようとする巴津火を、せめて式の間だけはきちんとさせようと叡肖は苦労している。
「結婚式がどんなものか見てみたいって言いだしたのは坊ちゃんだろ。そんなじゃ姫に笑われるぞ」
『だってこれ、喉にあたるんだもん…』
同じ蛇である雨邑なら、逆鱗に何かがあたる不快さは判ってくれる筈なのに、と口をへの字に結んで
幼い竜宮の次期当主はせっかく緩めたタイを、再びきっちり締め直す守役を恨めしげに睨んだ。
「公の場ではきちんとしないと、恥かくぞ」
叡肖に背中を押され、巴津火は席へと着かされる。
〔露希がいるぅ…〕
流石にこういう場所で露希も抱きついたりはしないだろうが、
巴津火の気持ちをさらに凹ませるには十分な存在だった。
元気のない巴津火を他所に、叡肖のほうはへらへらと田中家の面子へ愛想よく会釈している。
750
:
名無しさん
:2012/01/02(月) 23:16:53 ID:BQ990e1A
>>747
露希「あ、田中君だ。今行くねー。」
黒龍「よ、夕。お前の姉ちゃんが結婚だなんてな、驚いたよ。」
零 「夕君のお母さんですね?初めまして。」
三人は夕に気づくとそちらへと移動した。
黒龍はとんでもない田中家を見て口をあんぐりしている。
一方で零は礼儀正しく挨拶した。
露希「もうすぐだね。きっと夜さん、奇麗なんだろうなぁ。」
>>748
スタッフC「祝辞の方ですね?それは披露宴で行う予定になっております。」
先程ナンパされてしまった若い女性スタッフは
きっちりと三凰に説明した。
丁度零の隣の席が空いているはずだ。
零「」ニコニ……ずぅぅん
それを知った零はなんというか、落ち込んでいる。やっぱ怖い。
>>749
露希「叡肖さんに巴津火君!こっちです。(ピリっとしてる巴津火君萌えッ)」
黒龍「よっ、巴津火。なんか似合わないな〜(笑)」
零 「三凰が…ぇぇぇッ?」
一人を覗き、にっこり挨拶。
確かに式場は儀式の様な堅苦しい場で、まだお子様の
巴津火には辛いかもしれない。もとい、露希まで。
しかし、まだいるのだ。ちっちゃくて気づかれていない白髪の男の子。
巴津火の声を聞くと、直ぐに振りかえった。
夷磨璃「巴津火お兄ちゃんっ、わぁい♪」
説明しよう。夷磨璃は、纏さんの許可を得て、ここへやってきたのだ!!
751
:
田中家
:2012/01/02(月) 23:40:20 ID:c1.PBF/s
>>748
田中母「あの子が、澪くんの友人代表の子か
今日は澪さんとうちの娘の結婚式に来ていただきありがとうございます」
礼儀ただしく来た人(妖怪)達に礼儀正しく挨拶する母。
……火傷傷のせいでなんか怖いが…
祖母(母方)「山の妖怪に海の妖怪もいるねぇ?随分澪くんは親友に恵まれてるみたいだね。君から見て澪くんはどんな子かい?」
三鳳に向かいそうきく狐面の女性。
>>749
祖父(父方)「…………………………」
父方の祖父が、ハツビーを睨むように見つめてる。
すると懐から飴を取り出しハツビーに渡そうとする。
田中「ハツビー!おじいちゃんが飴食べて元気出して!だって」
そして田中くんがその行動の意味を通訳した。
祖父(母方)「おやー?なかなか礼儀いいねー!君!!僕と同じ匂いするけど、どうだい?この後一緒に僕と女の子をナンパしにいか……グギャッ!!!!冗談だぜー!!!!!痛いよ!二人とも」
祖母(母方)「まったく…ごめんなさいね。うちの人が」ニコリ
田中母「パパの言ってる事は気にしないで叡肖さん。今日はわざわざありがとうございます。娘の店の常連でお世話になってますし」
叡肖に向かい、なんか感じたのかそう言うが隣のおばあさんと田中母に殴られてるおじいちゃん。そしておばあさんは不思議な気配を出しながらも田中母と一緒にニコッと挨拶した。
あ……巫女Bもいるけど夜の友人達が押さえてるから問題はないよ!
>>750
田中「あれ?黒龍に言ってなかったけ?
露希もやっぱり女の子だからこういのに憧れるの?」
普通にそんな会話をし、キョロキョロと色々来る人を見ている田中くん。
田中母「わざわざどうも。
今日は澪さんとうちの娘の結婚式に来ていただきありがとうございます」
零に丁寧にお辞儀し挨拶する田中母だった。
752
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 01:35:59 ID:3FBgi9l6
>>750-751
(,>>三凰)
「やあ露希ちゃん!それじゃお誘いに甘えて」
叡肖が誘われてしまったから仕方ない。
喉元を締め付ける礼服でできる最大の溜息をつきながら、巴津火は席を移動する。
『るっさいっ。好きでこの服着てるんじゃないやい』
黒龍の冷やかしには、じろりとにらみ返して拗ねた返事をする。
ここが式場じゃなかったら黒龍の逆鱗をくすぐってやるところなのだが、巴津火はぐっと堪えた。
気に食わなければすぐ暴れていた以前に比べれば格段に成長しているのだ。
ただし、その身長だけは別だが。
『こざる来てたのか。……あまり無理するなよ?辛くなったら言うんだぞ?』
ここで現れた苛立ちを拭ってくれる存在に、巴津火はどこかほっとしたような表情を浮かべる。
一時は失われていたその右手で夷磨璃を招き、顔を寄せてかがみこむと、
巴津火は夷磨璃の額に自分の額をそっと当てた。
〔熱は…ないな。顔色も、大丈夫そうだ〕
夷磨璃を伏し目がちに観察し、無言で顔を寄せているその様子が、
巫女Bさんや露希の変なスイッチを入れてしまう可能性には気づいてすらいない。
『飴?…どうもありがとう』
伏せていたその視線を上げさせたのは、田中君だった。
田中君とお爺ちゃんへ戸惑いがちに、しかし表情を和らげて巴津火は礼を言い、
貰った飴を夷磨璃と分け合おうとする。
「ナンパ!いいですねー、では早速こちらのお嬢さんなんてどうです?」
叡肖は叡肖で、イタリアン爺ちゃんに意気投合しつつも、茶目っ気たっぷりに
お婆ちゃんの手をお爺ちゃんに握らせようとしている。さりげないイタリアン爺ちゃんへの牽制だ。
(そういうのはねー、隠れてするのが嫁さんへの礼儀ってもんだと俺は思うのよ)
決まった相手がいる場合、余所見はそれを感づかせないようにするのが叡肖の信条。
逆に言えば相手を決めていないうちなら、それこそ遊び放題というものだ。
「こちらこそ何時も美味しい珈琲を飲ませて貰ってますよ?
ノワールに通えない間は他の珈琲じゃ物足りなくてホント困りました、ハハッ」
卒なく田中母に答えているうちに、三凰に気づいた叡肖。
「三凰殿、スピーチ期待してるよっ」
田中家親族に会釈して場を辞し、三凰へと軽く手を振ってから、叡肖は席に着いた。
753
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 13:30:10 ID:SmXQZqJk
>>750
「そうか、わかった。答えてくれて感謝する。」
無表情ながらも珍しくちゃんと礼を言い、そのまま零の隣の席まで行き座った。
「…貴様も来ていたのか。」
特に嫌そうな表情をするでもなく無表情のまま零に言った。
>>751
「随分と妖怪に慣れているようだな。
僕から見た澪?そうだな……絆や繋がりを大切にする奴、かな。ま、それは今日ここに集まった面々を見たら分かるな。」
これも、澪の人柄が良かったからだろう。それに三凰は澪に出会えて良い方向へ変われたのだ。
>>752
「フッ…期待しているがいいさ。」
いつも通りの三凰。緊張とかはしていないようだ。
754
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 14:00:36 ID:HbHPxpxY
>>751
黒龍「聞いてないし!!」露希「お嫁さんは女の子の夢だからね。ボクもいつか・・・・・・キャッ/////」
黒龍はちょっぴりぷんすか。いや、聞いたところで誰得って話だけど。
一方、別の待合室にて。
スタッフ「そろそろ式が始まりますよ。」
澪「はいっ!夜のパパさん、どうかよろしくお願いしますね!」
ぴっちりとした姿で、縛っていた髪も、切られている。
澪は夜に軽くウインクして、一足先にスタッフへついていった。
>>752
黒龍「ぷっwwww」
露希「叡肖さん、中々似合ってますよ、巴津火君も☆」
夷磨璃「ひゃぁ/////お兄ちゃんっ?どうしたでござるかっ!?」
巴津火がなぜおでこを付けたのか、夷磨璃には解らない。なぜか体が触れ合ったことで顔を真っ赤にする。
夷磨璃「せ、拙者は大丈夫でござるよっ!お兄ちゃんも無理したらダメでござるからね!!」
露希「(腐・・・/////)」
>>753
零「ちっ、お前、ふざけんなよ!?(あ、本性が)」
三凰への色々な想いがついに言葉へ。
これはまずい。
零「おい、式終わったら覚悟しとけよ?」
うん、三凰君、スルー奨励。
スタッフ「では、人数が揃いましたので、式を開始致します。本日、御結婚なさる婿さん、入場です。」
入口の扉が開き、そこから現れたのは、澪とフォードさんが出て来た。
どうやらフォードさんは牧師のようだ。中々様になって・・・いるのか?
755
:
田中家
:2012/01/03(火) 14:33:01 ID:c1.PBF/s
>>752
ハツビーと夷磨璃の行動に反応し、巫女Bは息を荒げながら暴走しようとしてるが、友人の結婚式のためなんとか押さえてるようだ。
祖父(父方)「………………」
表情は変わってないのに(*・ω・*)←こんな風にしてるような気がする
田中「ハツビー。なんか雰囲気変わったね。しっかりしたというか何と言うか。なんかあったの?」
不思議そうにそう話す田中。脱皮のことも、神代との因縁も彼はまだ知らない。だが何かハツビーが成長したような気がしてそう聞いたのだ。
祖父(母方)「オー…、フハハハハハ!!コレは一本とられたぜー!!!」
祖母(母方)「ふふふ。わざわざお気遣いありがとう」ニコリ
そういいながら、結局二人は仲良く手を繋いでたりしてる。なんだかんだ言いながらこのおじいちゃんは妻を大事にしてるようだ。おばあさんもそれがわかってるみたいだが…
田中母「よかったら今後ともよろしくお願いします」
>>753
祖母(父方)「私は忍の里出身だからねぇ。妖怪とも関わって暮らしてるからねぇ
それもそうだねぇ……ありがとうねー。スピーチとやらを頑張りなさいな」
そう言うと三鳳の肩を叩き戻っていった。
>>754
田中「ごめんね…黒龍」ナデナデ
何故か黒龍の頭を撫でて機嫌をよくしようとする。
田中「じゃあ今日の姉さんが投げるブーケとるの頑張ってね」
《待合室》
田中父「ええ。こちらこそよろしく頼むよ。澪くん」
黒髪で、スーツ姿の優しそうな糸目の男性がそう澪に言う。
夜「いってらっしゃい♪私もすぐ行くからね〜」
純白のウェディングドレスをきて、普段しない化粧をし、眼鏡からコンタクトにした夜がいた。
756
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 15:44:37 ID:3FBgi9l6
>>753-755
巫女Bさんの妙に荒い鼻息には気づけても、その原因は巴津火には判らないのだ。
こちらをガン見する視線に、ただ不思議そうにちらりと見返すだけである。
『大丈夫じゃないだろこざる、急に熱あがったか?座っとけ』
巴津火なりの気遣いで、赤い顔の夷磨璃をひょいと持ち上げて、右隣の席に座らせようとする。
そして自分の分の飴の包み紙を剥がしながら、田中君の問いにも答えた。
『うー?ボクそんなに何か違う?確かに色々あったけど』
これからもまだ色々あるのだ。
雨邑の刺した釘と神代のことを思うと少々心が重く、苦い表情で目を伏せる。
その思いをぶち壊すように、衣蛸の一言がちくりと刺した。
「一皮剥けたんだよな、それも失敗しかけてw」
『黙れ蛸』
実質これといって何も変わっていない巴津火は、さっと頬に血を上らせて額に青筋を立てる。
脱皮の失敗は蛇にとっては恥ずかしい話なのだ。
茶々をいれた叡肖は、しれっと巴津火の左の席で花婿の入場を待つ。
やがて厳かに入場する牧師と、新郎の澪。
初めて目にするその様と、口に放り込んだ飴玉とに、お子様は不機嫌を忘れた。
『ぷふっ、澪すげー格好w』
「しーっ」
口内の飴のお陰で響かなかったその声は、幸いにも祝福の拍手にかき消される音量だった。
田中家父方祖父のくれたヴェ○タースオリジナル、GJ。
あまりにもいつもと違いすぎる澪の様子が巴津火には面白かったようだが、
式の形式は違えどあれが明日のわが身であることに、このお子様は果たして気づいているのだろうか。
(三凰のスピーチの間も、何もないと良いんだが。頼むぜホント)
叡肖は叡肖で、巴津火が最後まで落ち着いていてくれることを願っている。
零と三凰の間の静かな火花が、巴津火へも飛び火する可能性は高いのだ。
757
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 15:52:19 ID:SmXQZqJk
>>754
「はぁ?僕が何をしたと言うんだ?」
露骨に嫌そうな顔をし言う。
「…決闘なら受けて立つが、今日は武器を持ってきてないんでな。また今度だ。」
>>755
「忍の里…?」
(そんなもの現在もあるのか?)
「ああ、まかせておけ。」
忍の里に疑問を覚えつつも自信満々に言った。
>>756
「澪の奴、なかなか似合っているじゃないか。」
巴津火とは違った反応をしながら澪を見ている。今のところ飛び火の危険性はなさそうだ。今のところは。
758
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 16:06:14 ID:BQ990e1A
>>755-757
バージンロードを歩いてくるフォードと澪。
教会にはよくあるステンドグラスの中心にフォード、右側に澪が立つ。
これで準備は整った。
次は新婦さんの入場である。
一般的には新婦とその父が腕を組み入場→新郎と父が礼をして新婦受け渡し。
…といった手順である。
新郎さんにとっては凄く緊張するところだと思うが、
澪はいつも以上にのんびり笑顔である。
それはありのままの自分を見せる為であって、
この式を準備してくれた方や参列者、田中家に感謝しているからである。
……それ以前に。
澪「(夜のこと、誰よりも愛してるから。)」
759
:
田中家
:2012/01/03(火) 16:38:43 ID:c1.PBF/s
>>756
>>757
>>758
そして、新婦の入場がはじまった。
いつもの恰好と比べ、化粧をし眼鏡からコンタクトに変えた花嫁姿の夜が
黒髪で、スーツ姿の優しそうな糸目の男性と共に入場してきた。
夜はどこか緊張しているのか、動きは少しぎこちない…けど新郎の顔を見て、緊張がとけたようにホッとした表情になっていた。
田中父「……娘をよろしく頼むよ」
ボソッとそう言うと、一礼するだろう。
何事もなければそのまま新婦引き渡しが行われるだろう。
760
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 16:52:15 ID:3FBgi9l6
>>757-759
〔澪の奴、にやけ過ぎ〕
(人間の冠婚葬祭はいろんな形式があるもんだな。後で詳しく書いておくか)
記録の担当もする叡肖にとって、この人妖婚は貴重な経験の場だ。
人と妖の距離がどんどんと広がりつつある昨今、このように双方から祝福された
珍しい例については、事細かに記して残しておかねばならない。
(好事魔多し、この先邪魔が出ない事を俺も祈るか)
人なり妖なり神なり、この先の夫婦の縁に横槍を入れる者が出た場合は、
こうして参列し祝福している以上、竜宮は澪たちの後ろ盾となる立場だ。
(…そうなった場合、坊ちゃんは喜んで守るんだろうが、下の者には災難だな)
『わぁっ!こざる見ろよあれ、すっげーっ!』
場が沸き立ち、現れた華やかな花嫁にすっかり視線を奪われている巴津火を、
叡肖は冷静に、幾分の危惧を含んだ視線で見ている。
(いつか、天からの通達でこの夫婦の子孫の住む地に災害を起こすよう
求められた時、この思い出は坊ちゃんの枷となるわけだ)
神代の件など、これからの巴津火の担う責務を思えば、まだ小手調べのようなものだ。
今は物珍しげに目を輝かせている巴津火の、瑞々しい子供そのものの表情が、
この先失望と諦めの中に傷つき失われゆく様を、叡肖はずっと見守ることになる。
(まったく、爺ィも因果な役目を押し付けてくれやがったもんだ)
祖父アッコロカムイの口車に乗ったことの意味、その持つ苦さと重みを
この華やかな空気のなかで、叡肖自身もようやく悟ったのだった。
761
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 17:00:53 ID:SmXQZqJk
>>758
,
>>759
,
>>760
(澪、もっと緊張してるかと思ったが大丈夫そうだな。)
密かに澪のことを心配していた様だが、澪の様子を見てその心配はなさそうだと安心した。
(まぁ、澪のことだし心配する必要はなかったか。)
762
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 17:20:41 ID:BQ990e1A
>>759-761
深々と夜のパパさんにお辞儀をした。
その返答には短く、こくリと頷いた。
夷磨璃「わぁっ、てんちょーさん、奇麗でござるねっ。」
夷磨璃が見ても奇麗だと分かるくらいの姿。
その姿を誰よりも間近で見ている澪は本当に幸せ者である。
二人が祭壇に立つと、司祭であるフォードはにっこりと微笑み、
聖書を読み始める。
露希「巴津火君、夷磨璃君、目を閉じて二人を祝福するんだよ。三凰さんもね。」
小声で露希はそう伝え、目を閉じた。
やはり天使なだけにそこそこは知っているようだ。
そして静かな教会にフォードの声が鳴り響き終わる頃、アレが来るのだ。
フォード『夜さん、澪さん、貴方方はお互いを永遠に愛し続けますか?』
澪は、そっと夜の手を握る。
一緒に言おう、と言う合図かなにかだ。
きっと夜さんが望めば、一緒に言う筈だ。
763
:
セツコ中
:2012/01/03(火) 17:35:45 ID:c1.PBF/s
>>760
>>761
>>762
静かに聖書を聞いている。
先程さわがしかった祖父母もこの時は静かに聞いていた。
祖父(父方)「…………………」(´;ω;`)ブワァッ
おじいちゃん!?もう泣いてるの!?早くない!?
そして誓いの言葉が始まり、澪が手を繋いでくれ、暖かさが肌まで伝わり、彼の意図に気付き、小さく頷く。
そして、澪と一緒に言うだろう。
「はい♪誓います」
764
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 17:38:13 ID:3FBgi9l6
>>761-763
『祝福するのに、あいてを見ないで目を閉じちゃうのか?』
祝福する対象をしっかり見据えなくて良いのかと、巴津火は不思議に思う。
それに、何もかもが物珍しくて目を閉じるのが惜しいのだ。
「坊ちゃんは坊ちゃんで祝福すりゃいいんだ。ただしあまり目立つなよ」
慌てて耳元で囁いた叡肖に頷き返した巴津火は、一つ息を吸うと掌を地に向けた。
もう片手は天を指す。
呼応した地下の水、天の雲行きが共に夫婦を寿ぐ。
見えない場所の水が障りを拭い、太陽を一時隠した雲が晴れると、
ステンドグラスから差し込んだ日差しが、宣誓する新郎新婦をさっと照らした。
辺りには清浄な気配が、大地から染み出すように満ち始める。
それでよし、と叡肖は教え子に及第点を出した。
765
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 17:45:02 ID:SmXQZqJk
>>762
,
>>763
,
>>764
「………」
黙って静かに目を閉じ、二人を祝福した。
(おめでとう……澪……)
766
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 18:01:10 ID:HbHPxpxY
>>763-765
澪「誓います♪」
巴津火の行った行為のお陰で、ステンドグラスから暖かい光が差し込む。
このタイミングで、スタッフの一人が夜の近くへ近づく。フォードも同時に、祭壇にある物を持って来た。
誓いの後は指輪交換&キスなのです!!
スタッフは夜の持っているブーケ、それから手袋を預かりにきたのだ。
それを預ければいよいよ・・・。
フォードは婚約指輪をそれぞれに手渡した。
澪「夜、手を出して。指輪交換♪」
767
:
田中家
:2012/01/03(火) 18:15:31 ID:c1.PBF/s
>>764
>>765
>>766
夜はブーケと手袋をスタッフに渡し、頬を赤く染めながら
指輪を受け取った。
夜「はい♪」
そう言って、夜は手を出すだろう。
/ちょっとご飯落ちしますOTL
768
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 18:21:05 ID:3FBgi9l6
>>765-767
(こらこら、ここで蛇になるなよおい)
手渡される小さな結婚指輪が、近眼の巴津火にはあまり良く見えない。
あれは一体何だろうと目を眇めて首を伸ばし、あわや立ち上がろうとするその襟首を、
叡肖はすかさず捕まえる。
『ねぇ蛸、あれ何?』
「指輪だ、結婚指輪。結婚の誓約のしるし。
いいから大人しくしてろ、きょときょとするなっての」
小声のやり取りの後、むりやり椅子に尻を落ち着かされた巴津火は、目を丸くして見つめている。
//わかりました、こちらも1時間ほど落ちます。
769
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 18:53:55 ID:SmXQZqJk
>>766
,
>>767
,
>>768
(いよいよか……父上と母上もこんな感じだったのだろうか?
母上……どんな方だったんだろう…)
自分の記憶にない母親のことを考えつつ、結婚というものの深さを考えた。
770
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 19:24:51 ID:HbHPxpxY
>>767-769
澪「よし♪今度は夜の番だね。」
夜に嵌めると次は澪の番。澪も手を差し出し、入れて貰うだろう。
入れて貰い、キスへと入る訳だが、澪は少しそわそわしている。
澪「夜、そのっ・・・・・・。」
その時だ、婚約する二人と参列者の間を隔てるように、白い煙が上から降り注ぐ。
参列者側からは、二人の影だけしか見えないようになってしまったのだ。
澪「キスは・・・本当の姿の僕と、して欲しいな・・・/////」
露希「綺麗だね。あ、あれって・・・!」
参列者側からは信じられないだろうが(一部)影は大きなヤマタノオロチと新婦になっていた。
オロチの一匹が先の裂けた舌を出して、夜の顔に近づく。
澪「・・・っ」
771
:
田中家
:2012/01/03(火) 20:27:55 ID:c1.PBF/s
>>768
>>769
>>770
夜「ええ♪」
嬉しそうに微笑みながら、澪に微笑み指輪をはめてあげるだろう。
そして、白い煙がおおい
澪が本当の姿でキスしたいという言葉に
夜「もちろん♪」ニコッ
そう言い蛇の舌に怯えることなく、上手く口にいれ舌を絡ませながら口づけをかわした。
田中「なんか凄い演出だね」
田中母「確かにね。なんかロマンチックだけど」
祖父(母方)「なかなか面白いぜ!!!」パチパチ
田中家のこの三人だけはなんかの演出と思っていた。
まあシルエットだからね…
ついでに他の田中家四人は普通に妖怪と気付いてたりする。
/ただいまー
772
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 20:46:54 ID:3FBgi9l6
>>769-771
シルエットになにやら興奮した様子で、小声の会話がひそひそと。
近い席の者には聞こえたかもしれない。
『見るの!?これ、見てるの!?ねぇ!マジ?見てていいの!?』
「あぁ、見てるんだよ」
『本当!?大丈夫なの!?人前なのに!?』
「あぁ、しきたりだから大丈夫だよ」
『そうかぁ!ボク式みるの初めてで色々わかんないから!』
「そうだね。わかってないね」
『うん!でもしきたりなんだ!じゃぁボクの時もしていいんだよね!」
「さぁね。いいんじゃないかね」
『そうかぁ!じゃぁボクも式ではキスしよう!』
興奮した面持ちで招待客やフォード達の様子をきょろきょろと見回そうとする巴津火の頭を、
叡肖はキスの間中がっちり押さえつけておく羽目になった。
(あー…どう見てもうちの主は思春期のお子様だわ)
茹でられても居ないのに、衣蛸は赤くなった。
巴津火のようにシルエットの二人へ目が釘付けなせいではない。
//おかえりなさい
773
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 20:53:37 ID:SmXQZqJk
>>770
,
>>771
,
>>772
(おいおい……ここで妖怪の姿になるのか…
ま、ここに居る者達なら特に問題はないか…)
チラッと田中家の者達を見ながら思う三凰。
774
:
名無しさん
:2012/01/03(火) 21:27:46 ID:HbHPxpxY
>>771-773
澪「ぷはっ//////」
少し荒い息を上げた澪はそのまま人間に戻ると、ぽおっとしていた。
フォード「これにて、この二人の結婚を認めます。」
そして霧が晴れると、ニコニコした表情のフォードが二人の婚約を宣言した。
おめでとう、夜店長!!
露希「す、凄いっ・・・!ね、ねぇ、黒龍?」
黒龍「俺も零と挙げるんだぁっジュルリ。」
夷磨璃「拙者達がこんなの見ていいんでござろうか/////」
何かと騒がしい参列者だが、フォードの宣言後、暖かく拍手した。
澪「・・・夜っ/////」
そして式は二人の退場で幕を閉じる。
澪は夜さんと手を組み・・・・・・いや、お姫様抱っこ!
775
:
田中家
:2012/01/03(火) 21:52:20 ID:c1.PBF/s
>>772
>>773
>>774
田中「ハツビー達には刺激が強すぎかな?」
ハハハと苦笑いしながらハツビーと夷磨璃を見てる田中くんだったが…
田中「………………うん。うすうすは気付いてたけど黒龍
日本じゃ同性の結婚はできないはずだけど?」
ツッコミ所はそこか!?田中!?
祖父(母方)「いいね!!!サイコーだよ!!!!僕は猛烈に感動したぁぁぁあ!!!!!!ちょっとファミリーにこの感動を国際電話で」
祖父(父方)「……………………」(TДT)
祖母(母方)「アナタ達。静かにしなさい」
祖母(父方)「だらしないねぇ。男共はさぁ」
祖父母たちはなんか騒がしくしている。
夜「////……澪っ♪」
キスの余韻に浸りながら、頬を赤く染め、澪にお姫様抱っこされ退場するだろう。
776
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/03(火) 22:00:00 ID:3FBgi9l6
>>773-776
興奮冷めやらぬ表情で新郎新婦を見送る巴津火に、叡肖が小さな布袋を押し付ける。
「ライスシャワー用に持ってきたから、後で澪達にぶつけてやれ」
『らいすしゃわー?何それ?』
「この形式の挙式は、新郎新婦の挙式会場から披露宴場への移動のときに、
花とか米を振りまいて祝うんだとさ。
それは式場が用意する筈だから、俺らはこれぶつけてやればいい」
ふーん、と判ったような判らないような表情で、巴津火は袋の中身をざらざらとかき混ぜた。
「露希ちゃん達も、どうだい?豆まきならぬ、真珠撒きでも」
誘いながら叡肖が見せた袋の中身は芥子真珠。
ちょうど米粒ほどの大きさの虹色を纏った白い粒である。
「次はいよいよ三凰殿の見せ場だな」
披露宴でのスピーチは、三凰の担当なのだ。
777
:
宝玉院 三凰
:2012/01/03(火) 22:15:11 ID:SmXQZqJk
>>774
,
>>775
,
>>776
「澪の奴大胆なことするじゃないか。」
澪と夜を見てそう呟く。
「ま、澪らしいな。」
親友の結婚を心から祝い言った。
「ああ、いよいよだ。」
叡肖に向け、自信ありげな笑顔で言った。
778
:
名無しさん
:2012/01/04(水) 13:59:51 ID:BQ990e1A
>>775
黒龍「そんな常識、通用する訳ないぜ♪だって俺は魔法少zy(ry」
露希「お姫様抱っこ〜//////
そ、それより田中君のおじいちゃん泣いちゃったりしてるけど大丈夫?」
式が終わった途端、急に騒がしくなるのだ。
澪「披露宴はもうすぐだね。一緒にケーキ食べたり、ぎゅってしたり♪」
澪は澪でこの後が待ちきれないらしい。
>>776
露希「ぉぉっ!やりたいです、叡肖さんっ!!」
零 (思ったけど叡肖さんって結婚とかする気あんのかな。)
式で真珠まきなんてしたことがない露希は
わくわくしながらその案に乗った。
>>777
黒龍「スピーチ、お前がやるのか?噛むなよ♪」
夷磨璃「緊張しないでござるか?」
決して馬鹿にしたつもりはないが、そう聞こえるかもしれない。
スピーチはかなり重役だったりする。
スタッフ「では披露宴会場へと向かいます。準備したバスへお乗りください。」
…とは言っても、披露宴会場はここから湖の反対側のホテルで行うらしい。
きっとすぐにつくはずだ。
ついたら、スタッフの誘導があり、席まで案内があるだろう。
779
:
田中家
:2012/01/04(水) 23:01:50 ID:c1.PBF/s
>>776
>
>>777
>>778
田中「俺もやりたい」キラキラ
祖母(父方)「真珠とは洒落てるねぇ。私もいいかい?」
メリー「私もやりたいんだよー」キラキラ
叡肖が真珠をライスシャワーにするときいて田中くんと巫女Bと一緒に友人席の方にさりげなくいたメリーが目を輝かせた。
そして興味をもったのか狐面の女性(田中祖母)が真珠を見て自分もいいか?と聞いてきた。
田中父「おや?君が澪くんの友人代表かね?スピーチ頑張ってください」ニコッ
三凰にスッと足音立てずに近づきニコッと微笑み浮かべた新婦の父が挨拶しにきた。
田中父「君にとっては余り娘とは面識はないと思うが、澪くんと一緒に娘と仲良くしてやってください」
紳士のような丁寧なお辞儀をし、そう三凰に頼んだ。
田中「魔法少女だったの!?」ガビーン!!
信じるな!!田中!!!
田中「大丈夫だよ!おじいちゃんはいつもの事だから」
祖父(父方)「……………」(TДT)
そう言うが、おじいちゃんは何処からか《孫成長記録帖》と筆で古めかしく書かれた本を取り出し見て泣いてる。
澪が見たら喜びそうな小さい頃からの夜の写真が!!
何故か白黒だが…
というか両親より先に泣くおじいちゃん……
夜「うん♪食べさせっこしましょうね〜
あと…優しくね///」
頬を染めながら周りにお構いなしにイチャイチャするのは変わらず、澪に抱っこされながら向かうだろう。
田中家や夜の友人たちもスタッフに案内され向かうだろう。
780
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/04(水) 23:31:19 ID:3FBgi9l6
>>777-779
『魔法少女っ?黒龍って女?』
芥子真珠を一握りとってから、巴津火は真珠の袋を露希へと渡す。
「もちろん皆さんのもありますよ、順繰りにどうぞ。メリーちゃんから回そうか」
そして叡肖も、もう一つの袋から一握り真珠をとって三凰に差出し、残りを袋ごとメリーに渡した。
これで皆に回るだろう。
この他に式場側の用意するライスシャワーや花もあるのだ。
『その記録帖、ボクにも見せて!』
式場から音楽に送られて出てゆく新婚夫婦に、ライスシャワーの祝福を振りまいた巴津火は
田中家父方祖父の所へよってゆき、お爺ちゃんの手元を覗き込もうとする筈だ。
「夜店長、お幸せになー。俺に祝福される女性は数少ないんだぜ?」
叡肖もお姫様だっこの新婦に、気障なウインクをかましつつ、粉を…もとい、芥子真珠の雨を降らせる。
祝福される女性の数が少ない理由は、この蛸の場合、口説く女性の数のほうが圧倒的に多いせいだろう。
781
:
宝玉院 三凰
:2012/01/05(木) 13:00:51 ID:SmXQZqJk
>>778
,
>>779
,
>>780
「フッ…僕はいずれ百鬼夜行の主になる男だ。スピーチなんてどうってことないな。」
三凰を応援する皆に余裕の表情を見せる。
「フッ…華やかなライスシャワーじゃないか。」
そう言って、一握りの真珠を受け取りライスシャワーを振りまいた。
782
:
名無しさん
:2012/01/05(木) 13:37:17 ID:HbHPxpxY
>>779-781
黒龍「実はな、m「嘘は駄目だよ、黒龍。」」
何かを言おうとしたが、零の制止が入る。
勿論、魔法少女ではない。魔法使えるけど。
露希「いつか氷亜さんとこんな・・・・・・/////」
妄想世界に突入してしまった。
主役の澪、夜が会場に到着、いよいよ披露宴である。
フォード「皆様、この度はこの会場にお集まりして頂いたこと、真に感謝致します。先程、式を無事に終えた夫妻から一言どうぞ。」
澪「皆様、どうもありがとうございます♪僕は凄く感動して、ぐすん、います・・・っ」
夜さんも一言どうぞ。
それが無事に終了したら、新郎側、新婦側の順でスピーチが。三凰の出番だ!
783
:
田中家
:2012/01/05(木) 15:48:19 ID:c1.PBF/s
>>780
>>781
>>782
メリー「わかったんだよー」
袋を貰うと、小さな手で真珠を掴み、祖母(父方)へと渡しそこから次々と回されていくだろう。
祖父(父方)「……………………いいぞ」グスッ
(´;ω;`)←な顔でハツビーや近くの人達に見えるようにアルバムを見せてあげた。
そこには
クロコと一緒にお昼寝してる赤ちゃんの夜。
手裏剣を持ちながら笑顔の赤ちゃんの夜。
着物姿で綿飴を食べてる5歳くらいの夜。
忍装束みたいのを着て木の枝からぶら下がってる5歳くらいの夜。
着物を着て茶道をしてる小学生の夜。
父親と母親と手を繋いではしゃいでる小学生の夜。
髪をミツアミにし、眼鏡をかけた中学生の時の普通な感じの夜。
などだ。多分澪に見せたら鼻血モノだが…
様々な皆が知らない過去の夜が写っていた。
きっと中学生の時まで田中くんみたいな普通じゃない普通な子だったんだろう。
田中「ええー!嘘なの…」
黒龍の魔法少女発言が嘘だとわかり、なぜかがっかりする田中だった。
夜「叡肖さん!!ありがとうございます〜!!」
ライスシャワーならぬ真珠シャワーを浴びながら感謝の気持ちを伝え、会場へと移動した。
そして、会場につき披露宴が始まった。
フォードさんに促され、夜からも一言言う事にした。
夜「……コホン。皆さん今日はお忙しい中わざわざ式に参加していただきありがとうございます。
私達がこうして無事に結婚式が迎えられたのも……皆さんの……お…かげです。」グスッ
普段と違い間延びした喋り方ではなく、真面目にスピーチをするものの、涙を堪えながらも感極まり泣きそうな声で喋り始める。
夜「この先……辛い事が…ありゅかも…しりぇましぇんが…ヒグッ……
皆さん!どうか……私達を…澪を…暖かく…見守って…くだしゃいっ!!」ポロポロ
我慢できなくなったのか段々呂律がまわらなくなり涙を流しながらそう言い、澪にそっと寄り添った。
………ところで、皆さんは気付いてると思うが一つ。恐らく夜側の友人代表のスピーチは巫女Bになるだろう。
普段、ショタ発言や変態行動が目立つ為、彼女を知ってる人は不安になるかもしれないが……
784
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/05(木) 17:58:19 ID:3FBgi9l6
>>781-783
式場からの移動中、バスの中でも巴津火はずっと、お爺ちゃんと記録帖に張り付いていた。
写真に写っているあれこれについて矢継ぎ早に尋ねて、お爺ちゃんに息つく暇も与えない。
「こらこら、ご親族をあまり困らせるな。ちゃんと自分の席に着け」
会場ではお爺ちゃんの傍ではなく席次どおりに座らせようと、叡肖は巴津火の襟首を引っ張り、
喉もとに圧迫を受けた巴津火は嫌な顔をする。
「席に着いたら、ご馳走もでるから」
美味しいものにつられた巴津火は、けろりと機嫌を直して大人しくなると、
新婦のスピーチの間、勝手に服の喉元を緩めている。
『あ、やべ』
散々引っ張られて緩んでいたのだろう、ぷちん、とちぎれたシャツの喉元のボタンが
ころころと床を転げていった。
「よっ、三国一の花嫁っ!」
しかし叡肖のほうは、涙と一緒に、その髪からライスシャワーの真珠の粒を零す新婦に
拍手を送るのに気を取られて、巴津火が勝手にタイを緩めているのを見咎めることはなかった。
〔どこへ落ちた?〕
落ちたボタンを拾おうと、座ったままテーブルの下を覗き込んだ巴津火。
かがんだその腰の後ろ、シャツの裾と黒いズボンのウエストの間からちらりと背中が見えている。
着席しているのもあって参列客の席からは気づかれないが、高砂の新郎新婦と親族席、
スピーチに立った巫女Bさんからは、ばっちり見えてしまうかもしれない。
785
:
宝玉院 三凰
:2012/01/05(木) 18:27:55 ID:SmXQZqJk
>>782
,
>>783
,
>>784
スピーチの為に立ち上がり、前へ出る三凰。コホンと咳払いをし、スピーチを始める。
「澪君、夜さん、ご結婚おめでとうございます。この度友人代表スピーチを勤めさせていただく、宝玉院三凰でございます。
新郎の澪君とは、実を言うとそんなに長い付き合いという訳ではありません。しかし、私と澪君は心から信頼しあった親友同士と言えるでしょう。」
澪との出会い、そして今までの思い出を思い出しながら言う。
「そもそも、私と澪君の関係は澪君が怪我をしていた私を助けたことから始まりました。見ず知らずの者を助けるなど、並大抵の優しさではできないことだと思います。そんな澪君だからこそ、沢山の良い友人達がいるのでしょう。この出来事がきっかけで、私達は仲良くなっていきました。」
その言葉からは、嘘偽りの無い信頼関係が伝わってくるだろう。
「この出会いが、お互いの運命を変えたと言っても過言ではないでしょう。それほどまでに、支え合い、励まし合い、助け合って生まれたものは大きいのだと思います。
出会った当初は、澪君に対し、まだなんとも言えませんでしたが、今だから言えます。
澪君は、この私、宝玉院三凰のかけがえのない親友だと。
……こんな彼と結婚できる夜さんは、間違いなく幸せ者でしょう。
最後に、飾らない言葉で祝福させてもらいます。」
ここで一息つき、再び口を開く。
「――澪、本当におめでとう。心から祝福する。良い家庭を築けよ。
以上をもちまして、お祝いの言葉とさせて頂きます。」
心から澪を祝福し、最後に一礼をし自分の席へ戻っていった。
786
:
名無しさん
:2012/01/05(木) 20:10:39 ID:HbHPxpxY
>>783-785
澪「三凰・・・・・・僕のこと・・・ぐすっ、あり、ありがとうございます!!」
三凰が親友と認めてくれた、もうそれだけで幸せである。
普段はツンな彼であっても、このようなときは正直に言ってくれる。
・・・凄く、嬉しかった。
後で礼を言おうと思いながら、そっと夜に寄り添う。
・・・が。
澪「(巴津火!?)」
見えてしまった。
これをみた澪は叡肖にアイコンタクトし、なんとかして貰おうとした。
次はBさんだ。
787
:
田中家
:2012/01/05(木) 22:44:51 ID:c1.PBF/s
>>784
>>785
>>786
記録帖についてのハツビーの矢継ぎ早に尋ねる事に思い出し泣きをしながら口数少ない言葉ながら説明していた。
が、ハツビーが叡肖さんに連れてかれ(´・ω・`)ノ~←と淋しそうに見送った。
三鳳のスピーチが終わり涙ぐみながらお辞儀をする夜。
親族席からも拍手をし感動がこみあがる。
そして、いよいよ巫女Bこと橘 美月の番である。
だが…ショタスキーの心を揺さぶり狂わせるハツビーの背中チラ。
巫女Bのショタ狂いぶりを知ってる澪は慌てているが、夜は意外にも慌ててなかった。何故なら
巫女B「まずは同じ言葉の繰り返しになると思いますが
澪さん。夜さん。結婚おめでとうございます。
新婦の友人代表を勤めさせていただきます。橘 美月です」
…………誰?と言いたくなるほど凜とした雰囲気になっていた。
あ…けど、一瞬だけ鼻押さえた。
「私と夜さんは高校からの友人であり、生徒会で私が会長。夜さんが書記として活動を共にしました。彼女には幾度なく助けられました。私だけではなく彼女が在学した時の生徒には沢山いるでしょう。貴女は知らないかもしれないけどファンクラブあったのよ?
ただ変わった趣味があり、それを自覚し、自ら男から離れ、恋愛も苦手だった貴女がこうして結婚できたのは、分け隔てなく接してくれた澪さんのおかげだと思います。」
顔を手で覆うようにし口だけだしてスピーチをしてる様は泣いてるように見える。
多くの人はそう思うだろう。
「だから………夜。澪さんを絶対離さないであげて……幸せになりなさい……
澪さん……夜をよろしく…お願いします…
以上で終わらせていただきます」
礼をし、急いで退場していった。
向かうのは…外。
誰もが思う。泣くのを見せたくないから外にでたんだと……
実際は鼻血を噴射させるためだったとわかるのは夜と澪だけだろうが
788
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/05(木) 22:56:35 ID:3FBgi9l6
>>785-787
三凰の堂々たるスピーチに賞賛の拍手を送っていた叡肖は、
澪の視線に気づいて巴津火の席を見る。
(何やってんだおい)
「こら、スピーチの間くらいはしゃんとしてないと駄目だろ」
テーブルクロスの下を覗き込んでいる幼い主に声を掛けると、巴津火の頭がもっそりと
クロスの下から出てきた。
『蛸ー、これ取れた。どっか行っちゃった』
「取れたんじゃなく、取ったんだろ。
それに、どっか行っちゃったじゃなく、どっかやっちゃったって言うんだそれは」
叡肖はしかたなくボタンの取れてしまった巴津火のカラーの上にタイを締め直し、
奥の手としてカラーピンを刺して止めてしまう。
「正装のマナーなんだから、もうタイは弄るな」
『喉んところに尖った金属なんて嫌だぁ…』
「下手に弄らなきゃ刺さりゃしないっつの」
蛇妖が苦手とする針状の金属でタイを留められてしまったら、
巴津火はもう下手にタイを弄れない。
そしてかがんでいた間、巴津火の背中が出ていたことに、叡肖は気づいていない。
『ううう…』
他人のスピーチはちゃんと聞け、と叡肖に頭を巫女Bさんのほうへ向けて抑えられてしまったら
巴津火も大人しく拍手するしかないのだ。
視線を左右に投げかけても、メリーも夷磨璃も助けてはくれない。
「二人ともいい友人を持ったな」
スピーチが終わり、乾杯の準備に給仕たちが卓の間を慌しく動き、卓上のグラスが満たされ始めた。
叡肖は機嫌良くグラスを手にしたが、巴津火のほうは大気中に血の匂いを感じて首をかしげている。
〔なんか血腥くないか?どこからだろ〕
きょろきょろと辺りを見回すが、それが外で噴出した巫女さんの鼻血の匂いであり、
自身がその遠因であることを巴津火は知らない。
789
:
宝玉院 三凰
:2012/01/06(金) 13:12:38 ID:SmXQZqJk
>>786
,
>>787
,
>>788
「ふぅ…」
(僕も変わったな……
だが、あの時父上が言っていたこと今なら完全に理解できるな。)
スピーチを終えた三凰は、自分が良い方向へ変われた事、父の言っていた友情の大切さを理解できた事を実感していた。
790
:
名無しさん
:2012/01/06(金) 16:50:07 ID:HbHPxpxY
>>787-789
澪「(任せて下さい、夜は幸せにしてみます。でも・・・鼻血落ちって・・・。)」
フォード「お二人共、良い御友人をお持ちになりましたね。では、ケーキ入刀をお願いします。ゲストの皆様もお立ち下さい。」
2mはあろうかと言うケーキがスタッフによって運びこまれた。
澪「夜、切ろうか。皆、僕達を祝ってくれてるんだから、ぐすっ、泣くことないよっ・・・。」
うむ、澪、泣いてます。
ここは夜さんにリードして欲しいところだ。
黒龍「なあ、夕。お前はこの結婚、嬉しいと思うか?姉が結婚なんて受け入れられたか?」
黒龍は一つだけ気になっていたことを夕に問う。
零「三凰さん、よかったよ。貴方なら、お気づきでしょう?友人の大切さを。」
791
:
田中家
:2012/01/06(金) 17:44:02 ID:c1.PBF/s
>>788
>>789
>>790
親友の久々に聞いた真面目な言葉にウルッとくるが………安定の変態ぶりに思わず苦笑いしてしまう。
夜(…けど、ありがとう)
そして、ケーキカットの時間になり、立ち上がり澪の方を見て緊張が少しとけ、クスっと笑う。
夜「澪が泣いちゃってたらダメよ〜
…じゃあ、切りましょう」ニコニコ
いつもの調子にもどり、澪の手をにぎりながら一緒にケーキ入刀するだろう。
田中「ん?もちろんだよ?
少し淋しいけど…別に二度と会えなくなるわけじゃないし、姉さんが幸せなら俺はいいと思うんだ」ニカッ
黒龍の発言に、夕は正直に答えた。それが彼の答えだ。
メリー「ハツビー。あともう少しでご飯だよー」
落ち着かないハツビーに対し、メリーはそういってあげた。
巫女B「ふぅ…」
あ…なんかスッキリした顔の巫女Bが戻って来た。
792
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/06(金) 21:04:20 ID:3FBgi9l6
>>789-791
『ケーキ!ご飯!』
メリーの言葉の前に既に、スタッフの運び込むケーキに巴津火の注意は全力集中している。
起立を促されたからというよりも、好奇心と食欲の両方から突き上げられるように立ち上がり、
伸び上がって何が起こるか観ようとしている。
「ここで見てるだけだよ」
ふらふらとケーキのほうへ出て行こうとする巴津火を、叡肖が引き止めた。
しかし食べ物を目の前にして、巴津火の空腹と煩悩はMAXだ。
『はーなーせーェ!』
「わー待て!お預け!ここで変化を解くな!」
筆で抑えの呪文を描こうにも、暴れる巴津火を抑えるのに叡肖は手一杯なのだ。
ケーキ入刀のこの場では、一部とは言え蛸の姿を出すわけにもいかない。
「あー、美月さん!すみませんがちょっとこの坊ちゃんを捕まえててもらえませんか」
妙にすっきりした表情の巫女Bさんに、叡肖が声を掛けた。
巫女Bさんが抑えていてくれれば、叡肖は筆で巴津火を抑える文字を記すことが出来る。
793
:
宝玉院 三凰
:2012/01/06(金) 21:39:04 ID:SmXQZqJk
>>790
,
>>791
,
>>792
「そうかもしれないな。」
零の問にそっけなく答える三凰。
とは言え、内心ではそれをきちんと理解しているだろう。でなければ、あのようなスピーチを読むことは出来なかったはずだ。
794
:
名無しさん
:2012/01/06(金) 22:57:15 ID:???
>>791-793
澪「ぐすん、だって嬉しくて・・・・・・」
拍手と共に、ケーキ入刀が行われた。
この後は雑談会である。
澪「夜、新郎新婦は一緒にいるらしいから、一緒にご飯食べよ♪」
そこへ露希がやってきた。
露希「夜さん、どうやって結婚まで持ち込んだんですか!?」ワクワク
795
:
田中家
:2012/01/06(金) 23:50:04 ID:c1.PBF/s
>>792
>>793
>>794
巫女B「はいはい♪ハツビーちゃん。ケーキ切るまで待っててね」
なんかスッキリしたせいなのか変態行動はしないものの、ギュッと抱きしめるように押さえようとする。
一応、普通の状態じゃ力負けするため、若干鬼化してるが。
そして、三凰の方を見て
巫女B「アナタもスピーチお疲れ様。コレからも二人をよろしくね」
ケーキ入刀を終え、雑談会にはいり
夜「もちろ〜ん♪一緒に食べさせっこしましょ〜」ニコニコ
そう惚気てると、露希がやってきた。
夜「どうやってって〜。澪と一緒にいたいと思ったから♪」
夜よ……それ答えになってないぞ…
796
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/07(土) 10:10:52 ID:3FBgi9l6
>>793-795
『むー、むーッ!!』
じたばたする巴津火のシャツを少しめくって、その横腹に筆を走らせる。
巴津火が押さえ込まれたお陰で、叡肖は「煩悩抑制」「変化禁止」の文字を記すことが出来た。
ケーキ入刀が恙無く終わり、皆が安心して乾杯できたのは巫女Bさんのお陰でもある。
大人しくなった巴津火を運ばれてきた食事に一度集中させてしまえば、
新婚カップルの熱に当てられた巴津火が、居並ぶ女性陣へ野放図に甘えに行く心配もないだろう。
落ち着いて食べ始めた巴津火に、叡肖はほっとしてグラスを空にした。
(後は、神代の件さえなきゃ、楽なんだがなぁ)
華燭の宴には相応しくない悩み事を抱えて、叡肖は客達を眺める。
一見穏やかな表情ながらも、どこかつかみ所無い光がその目にはあった。
(飛葉殿でも居たら、こういうややこしい話の一つ二つできたものを)
出世法螺の白累が天界へ掛け合いに行くつもりなのは叡肖も知っている。
その際、天竜川の主に会いに行くよう祖父のアッコロカムイが勧めているのを
耳に挟んでもいた。
(…あー。せっかくの酒が不味くなるからもうヤメだ、ヤメ)
切り替えの速さは叡肖の取り柄である。
さっと遊び人の表情を取り戻すと、面白いものは無いかと辺りを見回し、耳を澄ませ始めた。
797
:
宝玉院 三凰
:2012/01/07(土) 12:47:47 ID:SmXQZqJk
>>794
,
>>795
,
>>796
「なんとか無事に終わりそうだな。」
巴津火達の方を見て、小さく呟いた。
「ああ、わかっている。」
そして、巫女Bに対し目を瞑り当然だとでも言うように答えた。
798
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 15:41:54 ID:HbHPxpxY
>>795-797
露希「そ、それだけで結婚!?」
澪「夜にいきなり告白されたけど、嬉しかったなァ。はい、あーん♪」
露希「凄いっ!」
納得しちゃったよ!!
それはそれで答えになっているようだ。
夷磨璃「お兄ちゃん、一緒に食べようでござるっ。」
黒龍「叡肖さん、俺、女体化したい!!」
・・・えっ?
黒龍「女体化したい!大切な事なので二回言いました。」
799
:
田中家
:2012/01/08(日) 18:26:01 ID:c1.PBF/s
>>796
>>797
>>798
巫女B「ハツビーちゃん。カワイイ♪
夷磨璃くんにも好かれてて、やっぱり男の子は見てていいな
(………っと言っても夷磨璃くんはまだ入院生活だし……あの俺様男。次あったら全力でぶちのめすか…)」
ショタ二人のほほえましい光景を見ながら、機嫌よさそうにお酒を飲んでいるが…
やはり夷磨璃が酷い目にあった状況を思い出し、少しイラッときながらも今のめでたい席に集中することにした。
巫女B「まあ、よろしくね。三凰でいいかしら?ところでアナタは澪くんたちのところいかなくっていいの?」
お酒を軽く飲みながら、澪たちの席の方に首をやる。
夜「だから露希ちゃんも彼氏さんがいるなら結婚申し込んでみたら〜?
あ〜〜ん♪」モキュモキュ
幸せそうに澪にあーんされながらアドバイスを送る。
夜「私からも〜♪はい。あ〜〜ん♪」
そして、澪に食べさせっこしながら幸せそうな夜は周りの楽しそうな雰囲気に嬉しそうだった。
800
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/08(日) 18:43:03 ID:3FBgi9l6
>>797-799
『おー、こざるもこっち来いよ!
……ケーキのおかわりって無いのかな』
かなりの速度で皿を空にしていた巴津火が、フォークを片手に夷磨璃を招く。
頬っぺたに飛んだクリームを二股の舌先で舐め取りながら給仕スタッフを目で探す幼い主に、
苦笑いしつつ叡肖は自分の分の皿を譲ると、夷磨璃の分の椅子をこちらへ持ってきてくれるよう、
スタッフに依頼した。
そして大切な事を二度くりかえす黒龍にゆっくりと向き直ると、少々含みのある様子で
「それは、余興ってことで良いのかな?俺の筆で出来るのは一時的なものだし。
完全に女の子になりたいなら、俺よりもっと適任な者を紹介するよ」
黒龍の覚悟の程を確かめるつもりか、あるいは困らせて返答を楽しみたいだけなのか、
どちらにも取れるような質問を、叡肖はにやにやしながら投げかけた。
返答を待つ間、この蛸が横目で夜さんへちらりと目配せしたのは、
余興の許可をとるというよりも衣装の有無の確認のつもりかもしれない。
「もし余興やるというのなら、ステージには複数人欲しいなぁ」
口元だけは愛想よい笑いを浮かべたまま、衣蛸は黒龍だけでなく、零、澪、三凰、田中君をも、
冷たい視線で撫でるように見回す。
途中、巫女Bさんと視線が合ったときだけ、何事も無かったかのように視線の冷たさは緩んで
(先ほどはどうも)
と、軽い会釈をするに留めた。
何かが始まる予感を他所に、テーブルでは巴津火が夷磨璃にグラスのワインを
飲ませようとしている。
こっちはこっちでまた別の注意が必要そうだが、果たして気に留める者は居るのだろうか。
801
:
宝玉院 三凰
:2012/01/08(日) 20:39:42 ID:SmXQZqJk
>>798
,
>>799
,
>>800
「ああ……まぁ、今はな……」
巫女Bにそう答える三凰。
若干顔が赤いのは、酒が入っているからかそれともあのスピーチの後だから照れくさくなったのか
802
:
名無しさん
:2012/01/08(日) 21:20:53 ID:HbHPxpxY
>>799-801
澪「あーん♪三凰もこっちきなよー」モキュ
にこっと微笑み呼んでみる。
黒龍「あー、まあ試しにな。完全にはなりたくない、断じて。お、そこのチビもどうだ?夕も女体化するか?」
夷磨璃「拙者?巴津火お兄ちゃんの父上殿に?」
黒龍「え、叡肖さん、巴津火の親父さん?まさかな。」
澪「ニヤリ」
それはいつかのお返しということで、澪は夷磨璃に吹き込んでおいたらしい。
叡肖は巴津火の親父さんとね☆(澪が一方的に悪いが)
黒龍は、零が女の自分にどう反応するか見たいだけだ。
以前、女装では大丈夫だったが今回はどうなのだろう?
803
:
田中
:2012/01/08(日) 23:04:27 ID:c1.PBF/s
>>800
>>801
>>802
巫女Bはハツビーが夷磨璃のグラスにワインをいれたのを気付いたが止めなかった…
何故なら…
巫女B(酔ったショタもカワイイよね♪だから私は何も見なかった…
酔ってハツビーくんと絡むだろうし……ふふふ♪)
………ダメだコイツΣ(゚Д゚;)ガビーン
巫女B「澪くんに呼ばれてるよ?いってみたら?」クスクス
三凰が顔を赤くしてるのを楽しそうに笑いながら、そう言った。
そして、ペコリと叡肖に頭をさげた。
牛神神社的には天界含め神格連中には良く思われてない為、竜宮とはいい関係をきずきたいという考えもあるためでもあるが。
夜「美味しいね〜?澪♪
」
食べさせっこしながら、フッと視線を感じ叡肖を見て
夜「♪」サッ
何処からかスーツケースを出しやがった!!
その瞬間、夜の趣味を知ってる夜の友人連中はざわめいたのは気のせいではない。何故なら自分たちに飛び火するかもしれないか冷や冷やしてるのであるから…
田中「…あれ?嫌な予感が……」
姉の行動と叡肖の視線に寒気を感じ、不幸体質の彼はトイレに逃げようと立ち上がり歩きだす
が…
田中「ちょっ!?待って黒龍!少し話し合おう!俺は……」
そう慌てながら黒龍に顔を向ける。
だが、背中は叡肖の近く……
やるなら今だ
804
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/08(日) 23:18:54 ID:3FBgi9l6
>>801-803
「うーん、実の息子ならもっと気楽に育てられるんだけどねー。
でも俺はただの教育係、血縁もない」
大した精神的ダメージも無く、叡肖はあっさりと否定する。
『蛸がボクの父親ぁ?誰が流したんだそんな嘘?
……そういえばボクの父親って誰なんだろ』
自分のグラスにワインを満たしながら巴津火も首を傾げた。
いつの間にか、空のボトルが卓上に並び始めている。
叡肖のほうは、ちょっぴり意地の悪い笑みを浮かべた。
「なら、余興に踊りか歌か、してもらうのを条件に女体化してあげよう」
黒龍がうんと言えば、叡肖は女体化の文字を記してくれるだろう。
たった今、夜さんとスーツケースに人間の友人達が注目している隙に、
田中君の服の背中をめくってそこに書き込んだように。
夷磨璃も…もし酔っ払っていなければ、衣蛸の筆の巻き添えを食うかもしれない。
酔っ払っていたら、多分巫女Bさん好みの展開だ。
805
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 00:09:30 ID:SmXQZqJk
>>802
,
>>803
,
>>804
「呼ばれたからには行かなければな。」
クイッとグラスに残った酒を飲み干し、立ち上がる。
「ああ、今行く。」
澪の方へ歩き始めた。
806
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 00:16:59 ID:HbHPxpxY
>>803-805
黒龍「歌はアニソンしか知らないぞ?まあ、やるけどな。夕も決定な!」
澪「三凰さぁ、女装しない?てか女体化しなよ〜ヒクッ。」
夷磨璃「巴津火様・・・・・・好き、です。」ギュッ
誰だ澪と夷磨璃にアルコール飲ませたのは!
田中君は残念ながら決定なのです!!
零「騒がしいけど何が?」
露希「美月さん、萌えましょう!」
807
:
田中家
:2012/01/09(月) 09:23:30 ID:c1.PBF/s
>>804
>>805
>>806
田中「えっ!?決定なの!?
…………っていつの間に!?」
何と言う事でしょう。田中くんはカワイイ女の子に変身してしまったではないか。
夜「皆さ〜〜ん!今から私の弟とその友達が女装しながら踊ります〜」
田中「ちょっ!?姉さん!?」ウルッ
女体化された所を一部の人間の招待客に見せない為にワザと大きい声で注目を浴びさせる事にした。
田中「不幸だ…」ガクッ
諦めたようにしながらコスプレがはいったスーツケースをとりにいき、黒龍と着替えにいくだろう。
夜「あらあら〜…いつの間にお酒飲んでたのね〜
ごめんね〜。三凰」
なんか酔っ払って三凰に絡み始めた澪を見て、クスッと笑いながら澪の頭を優しくナデナデしようとする。
巫女B「はぁはぁ…。やっぱり男の子同士の絡みはカワァゥイイィィィィィ!」
おい!酔っ払った夷磨璃がハツビーを抱きしめて暴走してるのを見て、息をあらげてるぞ?
そして、二人の頭をナデナデモフモフしようと魔手が伸びる。
もう確実に通報するべきだ…コイツ…
巫女B「露希も一緒にナデナデしてあげましょう!ショタカワイイよショタ!!」
808
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 10:32:36 ID:3FBgi9l6
>>805-807
『こざるー?どした?』
顔色は変わらない巴津火だが、椅子の上で片足を胡坐でもかくように組んでいるあたり、
酒による気の緩みが見て取れる。
しがみつく夷磨璃を抱き上げて膝の上に乗せたが、屈んだ拍子にカラーに逆鱗を圧迫されて
ほんの一瞬、苦しげに眉根を寄せた。
思わずタイを弄ろうとしたその左手が、カラーピンに触れて火傷でもしたように慌てて離れる。
『こざる。これ、外せるか?この金属の』
自分の膝に据わらせた夷磨璃に、銀色のカラーピンを指して、巴津火が酒気交じりの息で囁く。
叡肖に気づかれないように声を潜めているのだが、そのせいで夷磨璃とは顔がやたら近い。
その目の縁がほんのりと染まり始めていることに、夷磨璃ならば気づけるかもしれない。
『んぅっ?!』
気づかぬ間に巫女Bさんの手が伸びてきていて、敏感な耳をさわられた巴津火は一瞬身をすくめた。
酒で気が緩んでいる巴津火は隙だらけである。
椅子に座り、さらに夷磨璃を膝に乗せているので、逃げる訳にも行かない。
そして夜さんが客の気を引いた瞬間に、黒龍のシャツの下にも叡肖の筆が走った。
(三凰殿もやる気か?面白くなってきたじゃないか)
黒龍を女の子に変えながら、にんまりとほくそえむ蛸の歪な瞳孔は、三凰にも向けられていた。
809
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 12:32:59 ID:SmXQZqJk
>>806
,
>>807
,
>>808
「は?女装……?女体化?」
何も知らずに近づいてきた三凰。状況が掴めず首を傾げる。
「するわけないだろ。澪、貴様だいぶ酔っているな。少し休んだらどうだ?」
自分に危機が迫っているとも知らずに言う。そもそも、酔って意味不明な事を言っているだけだと思っているようだ。
810
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 13:46:18 ID:HbHPxpxY
>>807-809
澪「ん?三凰、僕は酔ってないって/////んじゃ、女体化行ってみようー、叡肖〜、三凰が〜女体化したいって〜////」
夜になでなでされながら、無理に三凰を掴む。
そのまま叡肖の元へGO!
夷磨璃「んふっ、巴津火、大好きだよ・・・・・・。」
カラーピンを瞬時に取り外し、膝に乗せられたまま、巴津火の肩の裏に手を回す。
夷磨璃「目の色変えて、やらしいね、巴津火はァ////」
露希「美月さん、夷磨璃君とか酒飲んで大丈夫なのかな?・・・カワイイ」
ゆっくり巴津火に口づけしようとする夷磨璃を見てニヤニヤする露希だが、少し躊躇うとこもある。
黒龍「ぁ、ちょ、胸が・・・////苦しい・・・っ///」
黒龍は大人のお姉さんになったよ!胸はそこそこだが、体が細くなって服の合間から胸が見えry
黒龍「夕はロリっ子か、俺は主人公を惑わすやらしいヒロイン・・・かな♪」
服は学園系がいい、と夜さんに付け足し、ついていくだろう。
零「叡肖さんも女体化してよ」ボソッ
811
:
田中家
:2012/01/09(月) 16:49:35 ID:c1.PBF/s
>>807
>>808
>>809
巫女B「はい。ストップ♪」ハァハァ
微笑みながら、夷磨璃がハツビーにキスしようとするのを止めてあげようとする。
巫女B「酔ったショタもカワイイけど、酔った勢いで過ちを犯したらそのあとが気まずくなるからメッ!」ハァハァ
そう言いながら夷磨璃を持ち上げ、露希に渡すだろう。
巫女B「だから場の状況を見て私たちショタコンはショタ達を手助けし見守るの。例え嫌われてもね」ハァハァ
そう露希にウィンクする巫女B。
……だが、この原因の半分はお前だ…
そして、コイツなんか頬を染めて息あらげてるし…言ってる事だいなし…
夜「じゃあ三凰《と澪》も女装しようね〜」キラーン
ちゃっかり後ろについていき二人にそういう《変態》が目を光らせた。
田中「うぅ……」
夜「任せて〜♪」
一瞬の早業で田中と黒龍を物影に連れ込み、化粧と着替えをさせた。
もちろん。ゲームに出てきそうな学園ものの制服だよ!
田中くんはロリ系美少女だ!露希さん…出番です。
そして夜の友人たち(妖怪人間とわず)は被害者たちに合掌するも余りにも似合ってる為歓声をあげてたりする。
更に零の一言に夜は目を光らせた。
夜「叡肖さんも女装似合うわよね〜♪
美人秘書風のコスプレが〜〜♪」ニコニコ
………ミイラ取りがなんとやら、《変態》のターゲットが叡肖にもうつりそうだ…
812
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 18:04:34 ID:3FBgi9l6
>>809-811
「三凰殿が?流石だな、親友のためにもう一肌脱ぐのか」
スピーチに加えて余興まで出るとは、澪と三凰の仲はかなり親しいのだろう。
そんな風に言外に匂わせて、叡肖は三凰達にも筆先を向ける。
ここで抵抗しなければ、澪も三凰も女の子にされてしまうことだろう。
『ふわぁー…楽になったーぁ♪こざる良い子!』
夷磨璃に忌々しいピンを外してもらい、巴津火は喉元をくつろげて伸びをする。
さっきボタンの取れてしまった襟は開いて、夷磨璃の目の前には
血の色を淡く透かした薄い皮膚に包まれた鎖骨がある。
『…ぅえ?おい、こざる?』
やらしい、とか言われても何のことやら。夷磨璃の唇が迫ってくるのを、ぼーっと見ている巴津火。
このまま行くと雨邑さんに往復ビンタどころじゃなく、もうひと皮剥けるまでしばき倒される未来が
待っている……筈だったが。
巫女Bさんのフォローによって年嵩ショタの未来は救われたらしい。
そして叡肖は、というと。
「OK。そんな程度ならお安い御用だけど、お兄さんこのまま脱いでも凄いんだぜ?
いいのかー?女の身体で?」
ひらひらと肩まで上げた両掌を人間のお客達へ振って、わざわざ注目を集めながら物陰に下がる。
「先に着替えをこっちにくれないか」
物陰にいる零や三凰、澪の前で、堂々と礼服を脱ぎ始めた衣蛸。
上着を脱ぎ、タイを緩め、カフスボタンを外してシャツに手をかける。
さて皆さんはご存知だろうか。
蛸の身はその殆どが筋肉で、脂肪分がごく少ないのだ。
腹持ちもよく高蛋白低カロリー、ダイエットしたい方にはお勧めな食材である。
日頃は服の下で存在を匂わせもしない引き締まった肉体に、色素胞の文字が浮かぶと、
叡肖はすらりとした、しかしどこか冷たそうな美女に化けた。
「んー、スリットはもうちょっと深くても良いかもなー」
黒のタイトスカートのスリットを、ガーターがちらりと覗く程度の深さに裂くと、
グロスで艶やかに唇を彩り、アップにした髪と眼鏡、ハイヒールで女秘書の出来上がりだ。
シャツのサイズはあえてワンサイズ小さめを選び、胸元のボタンの隙間からちらりと
谷間が見えるようにしてあるが、舞台にでるまでそれは色鮮やかなスカーフで隠してある。
筋金入りの遊び人、叡肖には、この程度の余興は何てこと無いのだ。
「俺の準備はできたけど?零、君はどうする?」
夜さんのGOサインで叡肖は何時でもステージに出られるが、
零君がその気なら文字を書く気は満々なようだ。
813
:
宝玉院 三凰
:2012/01/09(月) 19:39:55 ID:SmXQZqJk
>>810
,
>>811
,
>>812
「おい、待て澪!僕はするわけないと言ったんだぞ!や、やめろー!!」
じたばたと暴れる三凰。
「女の格好などできるわけないだろ!!ましてや女体化って一生の恥になるだろう!
ええい!近づくな!その筆を僕に向けるな!」
筆先を向けた叡肖に対し叫ぶ。
「……こうなったら!」
叡肖が着替えている間に蝙蝠の姿に戻り、そのまま天井付近まで飛び上がった。
「ふははは!どうだ?この高さなら誰も手を出せまい!」
814
:
名無しさん
:2012/01/09(月) 20:47:06 ID:BQ990e1A
>>811-813
夷磨璃「僕の巴津火が遠のいていく……。
僕は一生巴津火の…ヒクッZZZ」
露希「何!?巴津火君が好きすぎて生きるのが辛い!?」
変な解釈は良しとして、酔っ払った夷磨璃をそっとおぶってあげると、
ニヤニヤしながら夷磨璃の肌に触れる。スキンシップだ。多分。
黒龍「じゃあ、夕は生徒会の会長だな。ロリキャラの!!
俺は副会長的な流れで、叡肖は俺らの担任…てっとこか?」
勝手に学園物の約設定だよ!
夕君は絶対、いじられるひんにゅーなロリry
零「無理無理。私が女体化したって誰得。」
黒龍「俺得!!」
零「しょうがないなぁ。じゃあ私はオカルト研究部部長、って感じかな?」
零、アウトー、叡肖さん、お願いします。
澪「僕は見てればいいんだよね。わくわくー♪
あ、三凰はやらなきゃ。」
ピン、と痛みはないであろう麻痺入りの弓を構え、放った!
自分がこの後何をされるかいざ知らず、相変わらずなのんびりっぷりだ。
815
:
田中家
:2012/01/09(月) 22:12:00 ID:c1.PBF/s
>>812
>>813
>>814
巫女B「慕われてるのね。ハツビーちゃん」クスクス
眠った夷磨璃と呆然としてたハツビーを交互に見ながら微笑み、どさくさに紛れハツビーの頭を再びナデナデモフモフしようとする。
田中「え?俺は生徒会長になれる器じゃないよ?普通だし」
そう言いながらステージにあがり、女装した叡肖を見て「綺麗だなー」と思う。
夜「叡肖さ〜ん。やっぱり美人ね〜
澪の女装の方が1番だけど〜」ノホホーン
田中「じゃあ、何やりましょうか?とりあえずダンスはなんとかできるけど……アニメだったら《●宮ハル●》のやつ?」
ちょっと古いぞ!田中!つうか踊れるのか!?
夜「澪は女装しないの〜?」
ちょっと寂しそうな瞳で澪を見てるよ!
816
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/09(月) 23:56:27 ID:3FBgi9l6
>>813-815
『こざる、寝ちゃった』
夷磨璃の頬をつつき、巴津火もあくびする。
撫でてくれる巫女Bさんの手に、気持ちよさそうに目を瞑る。
うとうとしている巴津火はほんのりほろ酔いで、今ならモフり放題だ。
「三凰殿。たった一度の女装よりも、そうして見苦しい姿を晒すほうが
余程男が廃るんじゃないのかね」
天井に逃げた三凰に、叡肖は口の端に冷笑を浮かべ、女の姿で男らしさを語る。
こういう場ではさっさと乗ってしまった者勝ち、盛り上げた者勝ちだと叡肖は思うのだ。
追い討ちをかける澪を横目に、恥をかくことも必要だと、
三凰のその先を生暖かく見守ることにする。
「俺担任?保険医とかが良かったなー。で、どういう筋でやんの?」
零に筆を走らせつつ、学園モノの寸劇になりそうな気配に口を挟んだ。
これで三凰と夷磨璃、巴津火以外は全員が女性となったわけだ。
817
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 13:54:22 ID:SmXQZqJk
>>814
,
>>815
,
>>816
「……澪、何をした……」
澪の麻痺の弓が命中し、ゆっくりと落ちてくる三凰。
「ぐ……やればいいんだろ!やれば!女装だろうが、女体化だろうが好きにしろ!」
蝙蝠の姿のまま横たわり、叡肖の言葉により逆ギレし叫ぶ。
818
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 15:51:14 ID:HbHPxpxY
>>815-817
澪「麻痺弓だよ、三凰。三凰は可愛いからね。僕は・・・」
チラリと夜を見ると・・・!
澪「や、やろうかな。うん。」
流石は夜さん!
夜さんには弱いらしいよ!
黒龍「ハル○できんのか夕!見直したぜ!!」
零「私もアレは出来るね。」
黒龍「じゃあ叡肖とかもいるし、全員アドリブで☆」
女体化した零はミニスカに、黒い目立つリボンをつけ、眼鏡装着!
澪「服装は夜に任せるね。」
露希「胸熱!」
819
:
田中家
:2012/01/10(火) 18:01:10 ID:c1.PBF/s
>>816
>>817
>>818
巫女B「寝てる顔もカワイイなー」ハァハァ
寝てるハツビーを起こさないように優しくナデナデモフモフしながら、ステージの方に目をやった。
夜「じゃあ〜、澪はコレね〜〜♪」
白衣と眼鏡とハイヒールを用意したよ!叡肖がやりたかった保健医をやってって事だろう。
田中「ん〜……じゃあとりあえず(コホン
あーっ…あああああ」
そう言って田中は声を調整し始め
田中「は〜い☆皆さん!コレから文化祭の行事について話し合いたいと思います☆
叡肖先生!!今回の文化祭は私たち生徒会はダンスをやりたいんですけど、大丈夫ですか?」キャピーン
…………………誰?と言いたく成る程のアニメばりの声を出し、完全にロリ生徒会長になりきってる田中がいた…
コイツ…女装になれてやがる…
820
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/10(火) 19:06:28 ID:3FBgi9l6
>>817-819
「それじゃ三凰殿だけ、男のままの女装でハ●ヒダンスってことで」
氷の微笑で鬼畜秘書が宣言しやがった。
きっちり女体化しての女装ならただの綺麗どころの団体様だが、
その中の一人だけ男のままで女装したら浮くだろうことを見越しての発言だ。
逆に男のままでも目立たないほど化けられたならば、それはそれで男としてどうなんだろう。
残る抵抗の道はこのまま舞台へ上がらないことであるが、何を選択するかは三凰次第。
頼めば叡肖は三凰にも文字を記してくれるだろうが、急がねばさっさとステージに出てしまうぞ。
さて、三凰は何か行動できるのだろうか。
「音楽の準備は大丈夫か?」
最後にそう確認して叡肖がステージに出る。
そして眼鏡を光らせつつ、女教師らしい艶のある低めの声で田中君との掛け合いを始めた。
「皆さーん、異論は無いかしらー?
ところで夕さん、具体的にどんなダンスを見せてくれるつもり?」キラーン
客席からはフラッシュや動画撮影のケータイがこちらを向いている。
ステージに集中しているせいで、巫女Bさんとその胸にもたれて寝こけている巴津火、
夷磨璃には誰も注目していない。
こっちはこっちで巫女Bさんのやりたい放題タイムである。
821
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 19:28:46 ID:SmXQZqJk
>>818
,
>>819
,
>>820
「麻痺弓だと……流石だ澪。ていうか、可愛いって言うな。」
やはり、可愛いと言われるのは嫌なのだろう。不機嫌そうな表情をしている。
「くっ…まぁ、女体化よりはマシだろう。」
浮いてしまうなど先の事を考える余裕は、今の三凰にはなかった。ちなみに、逃げることはもう諦めている様子だ。
822
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 20:44:52 ID:HbHPxpxY
>>819-821
澪「コホン、皆さん〜、保険体育の勉強として、ダンスしますよ〜。」
零「UFO・・・来る・・・・・・」
黒龍「あらぁ、夕、もう少し先生に頼むんだから丁寧に話した方がいいわよ〜(ハート)
せんせ〜、生徒会の役員&αでおどりましょ〜んふ☆ミ」
胸のリボンを取り、胸の大きさを強調させる。
やらしい。
ロリ夕君も中々だ。
夷磨璃はすやすや寝息を立てているが、じわりじわりと巴津火によっていっている。
巫女さんが止めないと・・・ヤバい!
823
:
田中家
:2012/01/10(火) 22:16:42 ID:c1.PBF/s
>>819
>>820
>>821
夜「女装なら任せて〜〜」
もし、三凰が夜に女装を任せたら、見た目完全に女性の今時女子高生にされてしまうだろう。
やるかどうかは三凰しだいだ。
田中「任せてくださ〜い♪
ふえぇ…黒龍ちゃん。ごめんなさい…
では……ミュージックスタート♪」
メリー(いきなり私の出番だよー)ポチッ
突然、会場のスピーカーから《あの音楽》が流れだし、ハ●ヒのポジションで踊り始める。メリーがケータイに入ってる音楽をミキサーにつなげ流してるのだ
予断だが…ロリ夕が一瞬ロリータに見えてしまった…
メリー(にしても…なんかカオスだよー
アドリブって怖いんだよー)
巫女B「コレは天国ねー」ホクホク
寝てるハツビーとそれに近づく夷磨璃を自分に引き寄せ抱きしめて、しあわせそうにしている。
上手く夷磨璃が再びハツビーにキスしないようにしているが…
824
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/10(火) 22:41:14 ID:3FBgi9l6
>>821-823
「では澪せんせ、お手本をどうぞ」
ステージ前方へ保健医を誘い、あの音楽が始まると叡肖自身も
古●ポジションで踊る。
なぜかばっちりハル●ダンスが踊れるのは、
遊び歩いた夜のお店でネタにやったことがあるせいかもしれない。
そしてダンスの最後、決めのポーズではスカーフを外して、はちきれそうな谷間を見せつけ、
イタリアンなお爺ちゃんへ投げキッスをする。
夷磨璃と巴津火は、各々磁石でも入っているのか、そもそも夷磨璃が狸寝入りなのか。
夷磨璃に絡み付かれても、巴津火はもぐもぐと何か呟いただけで、
相変わらず寝息を立てている。
825
:
宝玉院 三凰
:2012/01/10(火) 23:09:29 ID:SmXQZqJk
>>822
,
>>823
,
>>824
「好きにしろ……」
夜に対し、消沈した様子で言う。もう抵抗する気もないだろう。
(ああ、そうだ。これは澪の為だ。澪の為だ。)
もはや、現実逃避のように思い込む三凰。がっくりと下を向いている。
826
:
名無しさん
:2012/01/10(火) 23:27:51 ID:HbHPxpxY
>>823-825
零「・・・・・・」キメッ
長○ポジションの零は何処からか取り出したクラッカーをパン!と鳴らす。
黒龍「うふふ、叡肖先生やらしい〜♪」
とかいいながら、こちらもイタリアンおじいちゃんに投げキス!
夷磨璃「むにゃむにゃ。」
露希「鼻血止まらないよ、クヒヒ・・・!」
大量出血している露希と美月さんにもふられている夷磨璃は残念ながら、ショーどこではない。
澪「注射しちゃうぞ♪」
澪は玩具であろう注射を夕にぷすっと刺し、ウインク!きっと麻痺の効果かな。間違ってもLEVEL5とかではない。
827
:
田中家
:2012/01/11(水) 00:05:18 ID:c1.PBF/s
>>824
>>825
>>826
田中「はぅぁ〜!?」
最後にキメっとポーズをしたが、クラッカーに驚きこけてしまい、ちょうど観客にパンツを見せる形になってしまった。
田中「あうあうあう」///顔を真っ赤にし恥ずかしそうにしている……が皆さん彼は男ですので悪しからず。
夜「は〜い♪出来ましたよ〜
遅れてるから早くいってらっしゃ〜い」
そう言いながら見事女装した三凰をステージに送り出すだろう。
祖父(母方)「おう!ありがとう!いやー、僕はモテるね。………いたたたたたたたた!!!菊ちゃん!?つねらないで!?あの子たち男だよ!?」
祖母(母方)「わかってますよ?けど…ねえ?」ニコッ
田中母「相変わらずラブラブだな。我が両親は」
田中父(……義父さん。同情しますよ?あと紅花。私には義母さんは嫉妬しやすいのではないか?)
二人に投げキスされ、イタリアン爺さんは、嫌な顔せず、嬉しそうにしながら投げキスを仕返すが……それでもおばあさんの嫉妬にふれてしまったようで、おもいっきり膝をつねられていた。
おばあさん……かなりのヤンデレかもしれない?
巫女B「ここは天国ね。露希」
…おい!コイツも鼻血流してるぞ!!
夜「二人とも〜?鼻血はやめましょうね〜」ニコニコ
田中「ちょっ!?」プスッ バタッ
注射され、痙攣しながらそのまま倒れてしまった。相変わらずの不幸属性だ……
828
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 00:41:07 ID:3FBgi9l6
>>825-827
「やらしい、だけじゃなく、色っぽいとか蠱惑的とか艶めかしいとか
もっと語彙を増やしたほうが表現の幅が広がるのよ、うふ」
客から向けられたカメラに愛想良く応えながら、叡肖センセから黒龍ちゃんへと
大人の指導入りましたー。
しかし巴津火の今後が色々と心配になる教師っぷりである。
「三凰殿、がんばれw」
これからは遅れてきた三凰の見せ場なのだ。
舞台は三凰に譲り、パンツを見せたまま倒れてしまった田中君をお姫様抱っこで回収した叡肖は
一度舞台裏へ下がる。
その際、田中家祖父母のやり取りに、叡肖の悪戯ッ気が触発された。
(あの老人にこの格好でちょっかいかけたら面白そうだな)
もしかしたら、田中君の不幸属性はイタリアン爺ちゃん譲りかもしれない。
そして一度巴津火の様子を見に来ると、鼻血の二人にハンカチを渡す。
「ありゃ、坊ちゃん寝たのか。
こう毎度食べて飲んで寝てると、ツチノコになるぞ」
叡肖に鼻をつままれた巴津火は眠ったままむずかるように顔をしかめて、
傍らの夷磨璃をぬいぐるみのように抱え込もうとする。
寝ているときは巴津火のほうが夷磨璃より幼い。なんだかんだ、まだゼロ歳児なのだ。
829
:
宝玉院 三凰
:2012/01/11(水) 00:54:10 ID:SmXQZqJk
>>826
,
>>827
,
>>828
「……どうしてこうなった」
どんよりとした表情のまま舞台上へ上がることになってしまった三凰。
当然踊ることなど出来ず、ただただ立ち尽くし落ち込むばかりだ。その姿は遠くから見ると、薄幸の美少女に見えなくもない……かもしれない。
830
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 07:31:39 ID:HbHPxpxY
>>827-829
露希「あ、ありがとうこまざいまふ・・・」
笑顔でハンカチを受け取りつつ、叡肖や三凰をニヤニヤ見ている。
黒龍「先生、解りました♪」
零「・・・戻る」
そうこうしている家に零達も舞台から降りる。
澪は三凰と手を繋ぎ、ダンスのリードをしている。
夷磨璃「ふへ、巴津火・・・・・・ヒクッ」
酔っ払っているこちらはこちらで大変な様子。
式が終盤に差し掛かると、フォードが前に出てきた。
フォード「さて、新婦さん、前へどうぞ」
これは新婦が両親に対して気持ちを伝えるアレだ。
よくお父さんが泣いているやつである。
831
:
田中家
:2012/01/11(水) 12:19:50 ID:c1.PBF/s
>>828
>>829
>>830
巫女B「どうも」ペコリ ダラダラ
ハンカチを受け取り礼をすると抱きしめてた、お子様二人を叡肖に引き渡そうとする。
田中「叡肖さん…すいません……本当身体動かない…」ピクピク
叡肖にお姫様抱っこで回収され、どこかに寝かされるもまだ動けない。
何をされても抵抗はできないのだ……
夜「……はい」
真面目な表情で、緊張したように息を整えながら前へと進む。
そしてスピーチが始まった
夜「お父さん。お母さん。
今まで育ててくれてありがとうございます。私が結婚すると聞いて、二人とも反対するどころか喜んでくれましたね?
正直……お父さんは反対するかと思ってました。けど、反対せず見守ってくれてありがとうございます」
「私は結婚しても喫茶店《ノワール》にいますから離れたわけではありません。だから…コレからも澪と私を見守ってください。
短いですがコレでおしまいです」ペコリ
スピーチを終えると、両目に涙をためながら静かに退場した。
……あ、田中母ないてる。
そして田中祖父(父方)何故お前が号泣している。
田中父は嬉しそうに微笑みながら、拍手をしていた。
832
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 18:42:15 ID:3FBgi9l6
>>829-831
「少しここで寝ていたほうがいい」
巫女Bさんから引き取った巴津火達と一緒に、ソファに田中君を座らせて、
叡肖は解毒の文字を書き込む。
痺れ薬が切れるまでは、もう少しだけかかるだろう。
●REC(これは違う意味での見ものかもしれんな…)ジー
田中君が落ち着くと鬼畜秘書は携帯電話を取り出し、ステージで棒立ちな
女装三凰の様子を録画している。どうみても丸っきりの嫌がらせ目的だ。
しかしこのままでは三凰君は良いとこ無しだぞ!頑張れ御曹司!
やがて場面は花嫁のスピーチへと流れてしまった。
「もうこの式は大団円だな」
叡肖は、親族席の感涙が落ち着いた頃合を見はからうと、
持っていたスカーフをイタリアンなお爺ちゃんの首にふわりと結ぶ。
「んふっ♪」
気を持たせるようなウインクと共に連絡先のメモをその結び目に挟み、
元の服に着替えるために物陰へ去っていった。
キャバ嬢の営業並みのこの行為、イタ爺ちゃんの運命や如何に。
833
:
宝玉院 三凰
:2012/01/11(水) 19:19:13 ID:SmXQZqJk
>>830
,
>>831
,
>>832
「ま、待て澪!僕は踊るつもりなんて……」
澪にリードされぎこちなく動く三凰。とても踊っているようには見えない状態だ。
「貴様も撮るんじゃない!今すぐやめろー!」
撮影を始めた叡肖に向かい怒鳴りつける。
834
:
名無しさん
:2012/01/11(水) 23:10:38 ID:HbHPxpxY
>>831-833
フォード「ありがとうございました、新婦さん。では、これにて式を終了させて頂きます。本日は、誠にありがとうございました。」
澪「よ、夜!!」
静かに退場した夜の元へと寄り添った。
泣くことはない、無事に終わったのだ、と笑顔で返すと参列者への挨拶をしに行った。
黒龍「お爺さんったら〜、そんなにこの胸が触りたいの?」
零「黒龍、もう止めよ?」
黒龍「お、おう。」
黒龍、イタリア爺ちゃんにちょっかい出したよ!しかも本来の女体目的をさっぱり忘れています!
露希「・・・・・・」
夷磨璃「・・・・・・」
こっちはノックダウンしている。なんだかんだな結婚式だったが、澪にとっては最高の物となった。
835
:
田中家
:2012/01/11(水) 23:46:56 ID:c1.PBF/s
>>832
>>833
>>834
田中「…ありがとう…ございます」ピクピク
解毒されながら、とりあえず静かにする事にした。
夜「うん…
皆さ〜ん!今日はありがとうございます!」
最後に集まってくれた全員に御礼を言い。
夜「三凰もなんかごめんね〜
ありがとう♪」
そして色々とばっちり喰らった三凰に謝り、そして御礼を言った
祖父(母方)「いやー、ありがとうねー
おっ!触らせてくれ……」ゾクッ
「き…菊ちゃん?いえ、菊乃さん…ちょっ…ちょっと落ち着こう?ここはめでたい席だよ?だから……」ダラダラダラダラダラダラダラ
祖母「私は落ち着いてますよ?
ア ナ タ ?
後で《お話》しましょうか?」ニコッ
叡肖にスカーフをまかれ名刺を貰い、男とわかりながらもサッと早業でしまい、黒龍に言われ反応するが………
突然、母方の祖母から神格…ほどではないが強い妖気と霊気が混ざり合ったような不気味な気配が感じられるだろう。
どうやらこの祖母…人間だが半妖とは違う人間と妖怪が混ざり合った存在のようだ。
……だけど笑顔でイタ爺を見ながら《優しく》言っている。
イタ爺も冷汗ダラダラで謝ってる。
どうやら田中家の異常さはこの祖母が原因かもしれない。
もしかしたら夕や夜にもこの力が受け継がれてる可能性が…
836
:
巴津火『』 叡肖「」
:2012/01/11(水) 23:59:39 ID:3FBgi9l6
>>833-835
撮るなと言われてやめるような衣蛸ではない。
三凰の勇姿(?)はばっちりメモリの中に保存された。
誰に見せるのかって?もちろん、三凰自身に見せるのだ。
「撮られても恥ずかしくないように堂々と行動していれば良いのさ」
中途半端に恥ずかしがるのが一番悪いって判ったろ、
と元の姿に戻った叡肖は静かに笑うと巴津火を抱え上げた。
「ほら、しっかり掴まるんだ。落ちるぞ?」
『……っhmう』
なにやら返事らしきものをしゃっくりで呟いて、酔った巴津火が叡肖の首に腕を回す。
片腕で巴津火、もう片腕で夷磨璃を楽に持ち上げて支え、帰りの車までを苦もなく歩き出す。
「夜さん、ハネムーンから帰ったら土産話頼むよ」
ゲストを見送る新郎新婦に挨拶して退出してゆく叡肖。
陸に戻ってこられたのだから、また珈琲を飲みにノワールへ通うのだろう。
(ありゃー、あの老人きっちりメモは保管するのかい)
とは言え、イタ爺ちゃんからの連絡は楽しく待つつもりの蛸である。
そして気配を感じ取った巴津火が、ぼんやりとその紫濁の瞳を開いて
叡肖の肩越しに菊お婆ちゃんと視線を合わせていた。
837
:
宝玉院 三凰
:2012/01/12(木) 00:29:26 ID:SmXQZqJk
>>834
,
>>835
,
>>836
「ち、ちくしょう!それを消せ!今すぐ消せ!すぐに消せ!」
叡肖が撮ったメモリを消すように必死で訴える三凰。まぁ、訴えたところで無駄だろうが。
「はぁ……まったく、散々な目にあった。」
疲れた顔でため息をつく三凰。
「澪の奴もむちゃくちゃだ。僕が踊れるわけないだろう……
……そんな澪に釣り合う女は貴様くらいしかいないだろうな。」
と、夜の方を振り向き言った。
「何はともあれ、お幸せにな。」
最後にそれだけ言い、背を向け去って行った。
838
:
七罪者
:2012/02/11(土) 23:14:27 ID:c1.PBF/s
繁華街のとあるビル。
その前に一つの影が見える。
口元を黒い布で隠し、灰色マントみたいなのを着た、赤い髪の男――七罪者の一人で怠惰の大罪を持つ《死神》。
彼はビルを悲しそうに見て、首をふるとビルの中に入ろうとする。
死神「…………」
「おい!!!君っ!!ここは関係者以外立入禁止だよ!帰った!帰った!!」
そのビルの警備員らしき二人が慌てて彼を止めようと触れようとする。
………が
死神「僕に触らない方が…」ボソッ
「え?……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
死神がポツリと言った小さな声は警備員の絶叫で掻き消された。
警備員は死神に《触れた瞬間》に火だるまになりそのまま動かなくなった。
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
もう一人の警備員は悲鳴をあげ、逃げていこうとするが…
見えない壁にぶつかったように弾き飛ばされる。
………そう、このビルの周りに結界がはられ、ビルから《人間》が出たり入ったりできないようになっていた。
警備員は何が何だかわからず必死に見えない壁をどんどん叩くが目の前を通る《外側》の人達は気付かない。
必死で声をあらげ叫びをあげ助けを求めようと必死だ…
グチャッ!!!!
煩く喚いてた《ソレ》は何かの潰れる音で静かになった。
暴君「静かにしてろ…クソが…他の妖怪に気付かれたら面倒だ!
まあ、俺様がボコボコにするがな!!」
短い金髪に、毛皮のコートを着て、右耳にピアスをした今時の若い男−−《暴君》が自分より大きな金棒を赤く染まらせながら自慢げに笑う。
彼らの目的はこのビルの破壊と下に眠ってる《生玉》を呼び起こすこと……その為に…
暴君「死神!!テメーはビルにいる人間全員殺しとけ!!!《悪魔》が言うには《生玉》は人が死ぬのが嫌いだから、全員やっとけば嫌でも出て来るだろ!!!」
ビルにいる人間全員の抹殺
果たしてこの人間は気付かない殺戮劇に気付くモノはいるか?
……いや、妖怪なら気付くだろう。
839
:
黒蔵
:2012/02/11(土) 23:31:25 ID:3FBgi9l6
>>838
ぜぇはぁ言いながら建物の方へ走ってくる貧乏ホスト。
身体スペックはある一部を除き、完全に普通の人間である。
それが振り返りながら建物の入り口に飛び込もうとしたのは、追いかけてくる警官が居たからである。
「何で!追いかけて!くるの!」
今時、刀なぞ持って街中をうろついていたら、職務質問されるのが普通なのだ。
獅子王はむき出しではなく鞘に納まり袋に入れられてはいるものの、
ずしりと重たげなそれは十分に警官の目を引いたのだろう。
ばちん!
建物の入り口に飛び込んで、追っ手をやり過ごそうとした貧乏ホストは
人間の出入りを拒む結界に激しくぶつかった。
「なっ?!にこれ?壁??」
目に見えない結界を、ドンドン、と激しく拳で叩く。建物の入り口は開いているのに、なぜか逃げ込めないのだ。
しかも道の反対側からも、別の警官の姿が走ってくるのが見えた。
「うわうわうわうわ…!!」
挟み撃ちにされて、見えない結界の壁に背をぴったりつけてオロオロする貧乏ホスト。
このままでは捕縛されるのは時間の問題のようだった。
840
:
夜行集団
:2012/02/11(土) 23:48:11 ID:EK/9fLvc
>>838
、
>>839
理由も分からないまま、逃げ込む事ができないで立往生している黒蔵の背面に、
あまりにも出し抜けで前兆も無く、圧倒的な存在感が突然発生した。
「喜劇的だ、お前はここを安全地帯と思っているようだが、
お前が今にも逃げ込もうとするこの建築物は、なによりもの修羅場だぞ?」
窮奇のような邪悪さや、桔梗姫の充足感、青行燈のような不明瞭さらのどれとも違い、
黒蔵の背後に降り立ったこの天狗から発せられる気配は、
なによりも人を圧倒させ、おし潰れる事もひれ伏す事も許さない程の威圧感であった。
「唐突的だが、俺は少しここに野暮用がある。
黒蔵、今から私と同行せよ、拒否権はもとより存在しない」
悠然とした態度で目の前のビルを見つめたまま、黒蔵に手みじかに命令を下す。
そして彼がどんな反応や反論をしようとも聞く耳を持たないとでも言うように、
天狗は懐から小さな小刀を抜きだす。
「挑発的に自己を紹介しよう。
お前らがどのような物かは知らんが、
この地にいる人間は吾輩のものだ!!」
突如響き渡るような大声を声高に叫んで、天狗はその小刀をビルに向かって立て一文字に振るった。
するとこの建物を覆っていた結界の、小刀が通った部分だけが突如幕を切ったかのように裂けた。
そして天狗の行った結界の破壊の衝撃は、中の者にも伝わるだろう。
841
:
七罪者
:2012/02/12(日) 00:16:35 ID:c1.PBF/s
>>839
>>840
死神「……………」ピタッ 中へ進もうと歩いた死神は…突然立ち止まり上を見上げた。
暴君「どうしたんだ?死神?」
急に立ち止まった死神に疑問を感じ結界の外を見た。
そこには人間が人間に追われ逃げてる暴君にとってくだらない光景。
死神が人を殺すのを今更躊躇ってると思ってしまう。
だが……すぐに暴君はそれは違うと知らしめられた。
暴君「なっ!?」ゾクッ
死神「…………………」
圧倒的な存在感、気配、威圧
暴君はその気配に圧倒され、小刀を振るう動作を見逃してしまった。
暴君「なっ!?テメー!!俺様達の邪魔を!!
作戦変更だ!!目撃者を全員殺すぞ!!!」
死神「…………………」
結界を破壊され、ビルが揺れた為大きく揺れた為ビルの人々は地震だと思い慌てている。
この異常事態に気付き避難されるのも時間の問題だ。
そして目の前の警官達は突然現れたように見えた二人と二つの死体を見てしまうだろう。
死神「ごめん」ボソッ
死神が手を翳すと、白き炎が放たれ、ソレは大きな赤ん坊の形になり天狗に抱き着こうとする。
僅かにその炎から《神格》の気配がする。
暴君は黒蔵と警官達に向かい巨大な金棒を振るい落とそうとする。
普通の人間なら潰れてしまう…そのため暴君は黒蔵に対し油断し、なんとか避けれる速さだろう。
842
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 00:31:23 ID:3FBgi9l6
>>840-841
「天ッ?!」
見知った相手ではあるものの、天狗の威圧感は人の身となった黒蔵を硬直させるには十分であり、
その行為は結果として裂け目の中へと黒蔵が仰向けに倒れこむ結果をもたらした。
「ぐぇっ!?」
肩に食い込む獅子王の重みに引きずられて、黒蔵の倒れこんだ先は、先ほどの警備員の成れの果て。
むっとする血臭は人間の嗅覚でも十分に感じられ、警官達からの黒蔵の見た目は、
殺人の現行犯そのものとなった。
「ぃぃ嫌ぁぁぁぁぁ!!」
魂が妖怪のままの黒蔵は、人間の死体に悲鳴をあげたわけではない。
単に天狗の命令に反射的に拒否反応を示しただけである。
天狗がクラブ組織のどれほど偉い人であろうと、その所有物に自分が数えられるのだけは
断固拒否したい貧乏ホストであった。
「こっち来んなぁぁぁ!!」
どうやら妖怪は見えない性質らしい警官の一人が駆け寄ってくるのを、
仰向けのままで黒蔵は蹴り飛ばす。
それは単に捕まりたくない一心であったが、呆然と妖怪たちを見つめて立っていた
もう一人の警官を巻き込んで、結界の裂け目の外へ二人ともしりもちをつかせることには成功したようだ。
結界から締め出された警官からは、天狗も黒蔵も死体も妖怪二人も、
一度に消えたように見えることだろう。
そして、そんなことをしている間にも暴君の金棒は黒蔵の上へ落ちてくるのだ。
「ひーーっ!!」
それを袋に収まったままの獅子王で、かろうじて受け止めた。
大太刀である獅子王の一端は地に付いていたため、そこを支点に黒蔵の力でも何とか、金棒の軌道をそらす。
「死ぬーっ!!マジやめてお願いーっ!!」
暴君からは見覚えのある顔の人間が、そんなことを言いながら起き上がって逃げ出そうとする。
843
:
夜行集団
:2012/02/12(日) 00:41:21 ID:EK/9fLvc
>>841
「好都合的だ、さっそくこの偉大な僕の前に馳せ参じてくるとは。
ふむふむ、だがどうやら実力は十分、自殺志願者とは違うらしいな」
結界を引き裂いた天狗は前方を見つめながら、これからこの建物の中、
害敵を虱潰しに探さなくてはいけないかもしれないという倦怠感を感じていた。
しかし、彼の予想とは反しそんな一切の手間が省かれ、
眼前に現れた1組の人影を見つけ、存外に天狗は上機嫌になった。
「心外的だ、わたくしの目測ではそこそこの実力者と判断したが、
よもやお前の先手がこれほどに小手調べ程度のものでしか無いとは」
天狗は死神の放った術を見て、残念そうに眼をつぶり首を振った。
しかし天狗はそのような反応を示したが、死神の術の実際の威力はかなりの威力なのだろう。
「根本的に某は天狗、確かにこの国の伝承ではそういった謂れは無いのであろうが、
むしろ火炎は自分の眷族であり分身なのだ。
お前がいくら磨き上げられた焔を灯そうが、わしを焼くに至れるかは不明瞭だ」
天狗、天を駆ける狗とは、
古くから中国において流れ星を妖怪と錯覚した者たちの伝承によるものなのだ。
つまり、本質的に天狗の司る属性は火。
そして天狗信仰が具現化した存在であるこの天狗は、日本の信仰とともに中国の信仰も身に帯びているのである。
「大罪的だ、警備のものであろうが建築物であろうが、
己の者に危害を加えた罰、その身を持って償え」
そのような力によって生まれた結果は、
死神の放った赤子の術が天狗の支配下に組み込まれたという事であった。
天狗は不遜な態度を崩さないまま、今度はこちらから火炎の赤子を死神にけしかける。
844
:
夜行集団
:2012/02/12(日) 00:41:53 ID:EK/9fLvc
>>843
すいません
>>842
も含みます
845
:
七罪者
:2012/02/12(日) 01:07:59 ID:c1.PBF/s
>>842
>>843
結界はまた塞がり、黒蔵を出れないようにしてしまった。
そして、暴君は黒蔵が刀で自分の金棒を防ぎ流したのを見て…顔に怒りを浮かべた。
暴君「テメー!ただの人間じゃねえな!!
そして俺様をおちょくりやがって!!!あの天狗の使いだろ!!!なめやがって!!」
突然、暴君から妖気のような気配な強欲と青行燈のような不気味な妖気が溢れ出し
5mの巨体で、短い金髪に、毛皮のコートを着て、右耳にピアスをした、赤い肌に、凶悪な顔の二本角の鬼に変貌した。
暴君「死ね!!!」
今度は飛び上がり力任せに辺りの大地を砕く様に黒蔵へと振り落とそうとする。
一方…
死神「………」
赤ん坊が天狗の力により死神に抱き着く………が、死神はなんともないように《燃えていた》。
死神「僕は炎であり、炎は僕
僕が何もしなくても皆死ぬ」
その炎は段々強くなっていき、彼は悲しそうに天狗を見た。
死神「君は僕と相性が悪いが君も僕と相性が悪い」
そう言いながら、放たれる妖気は………日本神話の神の気配?
だが何か違う。けどその気配はたしかに…
日本神話の神産みの話に出て来るイザナミを殺し、イザナギに殺され、神を産みだした……
炎の神……火之迦具土神
だが天狗は気付くだろう。コレは本物の火之迦具土神でなければ、転成体や分霊の類の火之迦具土神ではないと……
では火之迦具土神は?
死神「炎が効かないならこっちはどうかな?」
そんな疑問をよそに
そう言いながら死神はビルに触れようとする…ソレが意味する事は………
846
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 08:32:34 ID:3FBgi9l6
>>843
>>845
(不味い)
飛び上がった暴君が棍棒を振り上げた。その狙いは黒蔵の頭。
妖気を感じ取れなくなった黒蔵にも感じられるぴりぴりとした危険が、
その皮膚を粟立たせる。
がづっ!!!
金棒の二撃目を転がって避けた傍らで、黒蔵の代わりに攻撃を受けたコンクリートが砕け散り、
その破片が黒蔵の耳を掠めて飛んでゆく。
(この距離にいたら、確実に死ぬ)
地べたを転がり、死者の血に汚れて立ち上がった黒蔵は、獅子王の重みに苦労しながら袋の口を解く。
袋の中でその鯉口を切ると、解放された刃から破邪の気が吹き上がった。
目覚めた獅子王が、あたりの妖気も邪気もその持ち主が誰であれ、無差別に喰らい始めたのだ。
「ちっがーうっ!俺と天狗さんとはただの知り合い!
そういうお前は何なんだよ一体っ?」
答えは無いのだろうが、状況が今一良く判っていない黒蔵は、結界越しに見える警官たちへも
気を取られながら、生き残るためだけに行動を始めた。
「くっそぉ!!あいつデカ過ぎるっ」
鞘から抜きかけの獅子王を手に、巨大化した暴君から距離をとろうと駆け出す。
その方向は、自分を追う鬼が天狗へその背中を向けるように誘導していた。
しかし、先ほどまで重たい獅子王を抱えて警官から逃げ回っていたため思うようには
距離をとれず、鬼の金棒の届く範囲からは離脱し切れない。
そしてコンクリートの破片で傷ついた耳たぶからは、黒蔵自身の血が滴り落ちている。
その傷は以前に、黒蔵と同じ顔のあの糞ガキ、巴津火が暴君につけた、
ピアスをちぎった時の耳の傷と同じ場所であった。
847
:
天狗
:2012/02/12(日) 21:40:21 ID:EK/9fLvc
>>845
、
>>846
揚々として術をけし掛けた天狗は、思った通りの効果が発揮されなかったことで、
少し不機嫌そうに片眉を上げて向こうを睨んだ。
相手も火を使役する者であるから、ある程度この術が尻すぼみする事は予想してはいたのだが、
やはりそれにしても一切の痛手を与えられなかったのは不満なのだ。
「貴重的だな、よもやこれほどに錬度の高い神性と遭遇できるとは。
上位神か?それとも単にアマツカミの誰かか?どちらにせよ、滅多に見れる物ではない」
しかし、そんな天狗の顔も正体を現した死神を見た時、
まるで綺麗な石やセミの抜け殻などを見つけた子供のように、きらきらと輝き始める。
そこには全く怯えが混じっておらず、むしろこの状況に歓喜しているようでもあった。
「ほうほう、好奇的好奇的。
名前は知らぬがお前程の実力者、次に何を見せてくれるのか胸が躍って仕方がない!」
するりと動き始めた死神を見て、天狗は静かに口角を上げてニヤつく。
今現在、あまりにも不用心で不遜な態度を取っている天狗に、
次の動作に身構える様な素振りは見られなかった。
848
:
七罪者
:2012/02/12(日) 22:56:28 ID:c1.PBF/s
>>846
暴君「テメー見てるとイライラすんだよ!!!俺様の耳を引きちぎったあのガキみたいでよ!!!!」
避けられ、更に八つ当たりに似たような怒りを覚えながら暴君は地面に減り込んだ金棒を横へと薙ぎ払い、黒蔵へ一閃を放とうとする。
暴君「その耳の怪我は俺様への挑戦かぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
力任せの一撃が襲い掛かる……だが、思ったよりスピードは遅いし、先程より威力は弱い。
何故なら獅子王が周りの邪気を吸ってるのに、暴君は気付いてない−−そのため自分の力が弱体化しているのだ。
更にこの一撃を上手く防げば、暴君の胴体に隙ができるはず。
>>847
死神「そうであり違う。僕は違う」
そう言いながらビルの一部に触れると金属部分が溶け、まるで生き物のように動き始める。
死神「僕は《火之迦具土神》の残留思念と《黄泉の禍津》を練り込んで産まれた《火之迦具土神》の偽物」
その溶けた金属を操るのは鍛冶の神としても崇められてる火之迦具土神の神性の力。
死神「偽物だからって………僕を舐めないで」
そう言うと溶けた金属は銀色の奔流となり、まるで巨大な大蛇が口をあけ敵を丸呑みにしようと天狗に襲い掛かる。
849
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 23:27:46 ID:3FBgi9l6
>>847-848
「それどう見ても八つ当たりィィィ?!!」
鬼から背を丸めて逃げながら、黒蔵は鞘から獅子王の長い刀身をなんとか引き抜く。
しかし、反撃する前に、逃げるその足元を救うような横なぎの一閃を受けて、投げ出されるように前に倒れた。
「ぐわあぁっ!!」
あとほんの少しで建物に逃げ込めたのに。
獅子王の刀身は黒蔵の手を離れてがらんと地面に転がった。
「!!」
そして、立ちあがろうにも右足首には力が入らないのだ。
上体を捻って反転し、座り込んだままの姿勢で、やけくそになった黒蔵は手にした唯一の武器を振り回す。
(多分死ぬ、きっと死ぬ、ここで俺死ぬ…)
それは、袋に入ったままの獅子王の鞘だった。
恐怖に引きつった表情で泣きながら、黒蔵は袋の口についていた紐を握り、ぶんぶんと振り回す。
その長さは、袋の長さ+紐の長さで2m弱。
どうみても金棒のリーチの方が長いです本当にあ(ry
「もうどうにでもなーれ!!」
振り回して勢いの付いた袋と鞘を、そのまま暴君の額へと投げつけた。
ちなみに袋の中に隠れた鞘そのものは木製だが、その先っちょには金属製の石突が付いていたりする。
そして獅子王の刀身はというと、ぎりぎり持ち主の手の届かないところで
周囲の邪気や妖気を存分に吸い取りまくっていた。
850
:
天狗
:2012/02/12(日) 23:43:50 ID:EK/9fLvc
>>848
、
>>849
「なるほどの、残留物とは言え素材は一級品の神性、通りで侮れん気配を出す訳じゃ
だが、僅かばかりに疑問的。
お前が模造品であろうが転生体であろうがウチは知らぬが、
まるで何がしかの意思を持って、お前が"製造"されたかの様な口ぶりじゃな?」
彼によって鉄骨が物の見事に溶解した様を見て、天狗の死神を見つめる瞳の光りは増す。
しかしその一方、天狗は微かに眉間にしわを寄せ首を傾げた。
本来偶発的に彼が生まれたのなら、大方"混ざり合って"と言葉を選ぶ所なのだが、
敢えて死神は"練り込んで"という、何者かの意思を匂わせる言葉を用いた。
その事から、天狗は彼の言葉の内に何者かの影が見え隠れしたような気がしたのだ。
「くっはっはっは!愚問的、少々お前は先走った自論を持っているようだ。
紛い物が必ずしも劣るとは限らんぞ?拙者がそうであるようにな」
なによりも天狗であるこの天狗は、その為になによりも天狗からは程遠い存在にいる。
なぜなら全ての天狗信仰を継承する天狗など、どの種類の天狗信仰にも該当しないのだから。
「孤高的、模造的、違法的、故に最強!!」
銀の濁流を目の前にして、天狗はそう声高に叫んだ。
しかしそんな天狗の剛毅な叫びも全く意に介さず、鉄は天狗の体を全て飲み込んだ。
「圧倒的!お前の術は確かに我を満足させる事が適う物であった!
だが、吾輩はそれすらも超越する!!
恨むのなら、運命を恨め!!」
天狗の姿が消えてからしばらく静寂が死神のいる空間に広がる。
しかし、その静寂は彼の流した鉄の一部が激しく赤熱した事によって、脆くも崩れ去った。
橙に光り始める鉄の中から、天狗が超高速で飛び出して来たのだ。
天狗はあの時、鉄の濁流に唯呑まれたのではなかった。
むしろ、超高速で前進することによって自身をより流星に近い物に変化させ、
熱を持って鉄を更に溶かしその流れの中を縦断して見せたのだ。
突如出現した天狗はその超高速のまま、片手に先ほどの小刀を握っていた。
そして天狗は勢いをそのままに死神を貫かんと突進をした。
851
:
七罪者
:2012/02/13(月) 00:47:20 ID:c1.PBF/s
>>849
暴君「八つ当たりではない!!!俺様がそう言うなら間違いない!!!!」
そう叫びながら、武器を放した黒蔵を見て獰猛な笑みを浮かべた。
完全な勝利の確信。
暴君は獲物をどう刈り取ろうか…そういう余裕を見せる。
だが
暴君「ガッ…!?」
その油断と一閃からの隙により黒蔵が投げた鞘が暴君の額に当たる。
僅かに後ろに下がり、怯んだ。
刀を拾う余裕を黒蔵に与えてしまうだろう。
>>850
死神「君の質問に答える義理はない。お喋りはここまで……」
その影は…果たして大禍津日神なのか青行燈なのかはたまた別の誰かか天狗にはわからないだろうが…彼は確かに《何者》かに作られた。
死神「…………確かにそうだね。けど君は……なっ!?」
天狗が金属の奔流に飲まれたのを確認し、また悲しそうに見つめるがソレはすぐ驚愕の色に変わる。
流星と化した天狗に対応しようとするが、流星に近い天狗の熱は、死神のイザナミを殺した炎の身体を越えており、ソレは死神の身体を貫いた。
プスプスと嫌な音を奏でながら死神は膝をつく。
死神「……ま…だ……ぁ…ぼくは…まぁ………」
もはや完全に死ねのも時間の問題……
だが……死神の身体から不気味な負の気配と青行燈のような不気味な妖気が沸き上がる。
ソレは死神の《怠惰》
産まれた瞬間に母を焼き殺した火之迦具土神の自分の力を使いたくないという残留思念。
ソレが巨大な胎児の形になり、死神の身体から出て来た。
不気味な産声を上げ、動き始める。まるで母親を求めるように。
だがソレが動く度に周りが燃え始める。
異常に気付きビルから出ようとパニックになってる人々に被害が及ぶのも時間の問題だ。
>>二人
そんな時ビルの下から不思議な気配が発生してるのがわかるだろう。
まるでパニックになってる人間を落ち着かせようとする優しい力が……
852
:
黒蔵
:2012/02/13(月) 18:17:54 ID:3FBgi9l6
>>850-851
袋ごと鞘を投げた後、当たったかどうかを確認するよりも先に、黒蔵はあたりを見回して獅子王を探す。
身体を引きずって獅子王を掴み、立ち上がろうとしてうめき声を上げる。
右足首がありえない方へぐんにゃりと曲がっていた。
これでは一太刀浴びせに行ったところで、あっさり返り討ちに逢って終わる。
なにしろ相手は体躯5mの鬼なのだ。
これではいくら獅子王が破邪の剣でも、有効な攻撃ができるほどの接近は難しい。
(四十萬陀)
何としても生き延びたい。
しかしこの足ではきっと、逃げることも叶わない。
(織理陽狐さん)
泣きべそをかきながら、先ほど投げたのは鞘だった。
今度は獅子王の刀身を大きく振りかぶると、鬼の心臓めがけてはっしと投げつける。
(多分、これじゃ致命傷にもならない)
暴君の前で、黒蔵はあまりにも小さかった。
獅子王は黒蔵にとってあんなにも重かったのに、大きな赤鬼へと飛んでゆく今は酷く頼りない。
(俺はここで殺される)
警備員の血に汚れた左手がポケットを探り、その中の黒い羽を握り締めた。
(蛇神、ごめんなさい)
暴君の金棒と獅子王には、すりこぎと爪楊枝ほどの差がある。
飛来する獅子王を暴君が弾き飛ばせば、黒蔵にとっては何もかもが終わるのだ。
853
:
天狗
:2012/02/13(月) 21:47:47 ID:EK/9fLvc
>>851
,
>>852
手応えを感じた天狗は、滑らかな手つきで刀を体から引き抜いた。
そして懐から小さな絹の布切れを取り出し、刀に突いた血を小慣れた手つきで拭き取る。
もう決着はついたと思ったのだろう、刀は仕舞い天狗は満足げな顔つきで死神を見つめた。
「くっく、愉快的、実に心の躍った戦闘であった!
まあ、高等な神性を手先誤って絶命させてしまったのは、少し悔いが残るがな」
用は済んだ、とばかりに天狗は視線を黒蔵の方へ向ける。
先ほどから驚くばかりの反応を見せる黒蔵だが、いつまでも放置している訳にもいかない。
しかし、そんな暢気な事を考えて死神から意識を外してしまったばかりに、
天狗は彼の大規模な変容を見逃すことになってしまった。
突如死神の体を捨てて出現した膨大な妖気には、天狗も思わず動きから悠然さを失くし、
顔には多量の疑問を浮かべて振り向いた。
「直情的、どこまでも純粋で混ざりけの無い激情・・・
だが、素晴らしい!!やはりここまで貫き通して然るべしだ。
こうまでして童を楽しませるとは、その思いに報いてやる・・・」
だがこの状況を理解してからの天狗の反応は、やはり先程死神に向けていた物と同じであった。
嬉しげに惨状を見つめる天狗は静かに笑い、懐からなにかを取り出そうとする。
「うん? ・・・ほう、酔狂的。
何が来て何をするかは分からんが、手並みを見せてもらおうか」
しかし、ふつふつと沸く何かを地下から感じた天狗は、その手を懐から引き抜く。
とは言っても正体が全く分からない相手に全て、
黒蔵の救済を含めた全てを任せるわけにもいかないので、もちろん天狗は意識の半分を黒蔵に向けていた。
854
:
暴走した七罪者
:2012/02/13(月) 23:13:44 ID:c1.PBF/s
>>853
>>854
暴君「クソがぁぁぁぁぁあ!!!!!舐めやがって!!!!」
油断していたとはいえ、額に当たったダメージは微量のもの。まだまだ自分に有利がある。
刀とはいえ、投げたなら自分のこの金棒ならたたき落とせる。
そう考えなら暴君は刀をたたき落とそうとする……
が…それが油断だ。
暴君「!?」
その刀は周りの妖気や自分の邪気を吸い込んでる。それが力になり金棒を貫いた。
だが軌道がずれたのか心臓からそれている。
だが……
暴君「がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」
その刀から突き刺さった場所から妖気と邪気が吸われていき、もがき苦しむ。
慌てて刀を抜き、黒蔵から少し離れた位置に投げ捨てる。
血を流し息を荒げ苦しみながら、視線をずらす。
そこに見えたのは《死神》の死体と彼から離脱した《残留思念》。
暴君「…!?死神………テメェェェエ!!!」
仲間の死は避けられないものは七罪者は理解してる。だが割り切れない時もある。
暴君は天狗を睨み、最後の力を振り絞り、両手を地面にやった。
暴君「………もう俺様は長くねえ………だから最後にビルの人間全員とテメーらの命を奪う……」
すると暴君のいる地面から巨大な古びた門が競り上がってく。
そこから無数の妖気と邪気が感じられるだろう。
《羅生門》
その門が一度開けばそこから無数の悪鬼共が溢れ出るだろう。
そうなれば、本格的にこのビルは地獄絵図になる……
死神「――――――――――――」
そして死神は……いや《残留思念》はビルを掴むとそこから炎が広がりビルを燃やそうとするだろう。更にそこから炎と熔けた鉄が無数の触手になり暴れ回り、それは天狗にも襲い掛かる。
だが……不思議と人間達はまだ死んでいない。
それは地面の下から沸き上がる不思議な力の影響だ。
人間に生命力を与え、この場からなんとか逃げ出させようとしてるのだ。
そして、それは人間の身体である黒蔵にも影響を与えるだろう。
そして、その何かは段々黒蔵の足元へと近づいてくる。
すると地面から小さな白い何か……《生玉》が出て来るだろう。
それが結界内の人間に生命力を与え、なんとか生かせようと頑張ってるようだ。
855
:
セツコ
:2012/02/13(月) 23:28:54 ID:c1.PBF/s
間違えた…
>>854
は
>>852
>>853
宛てです
856
:
黒蔵
:2012/02/14(火) 18:44:54 ID:3FBgi9l6
>>853-854
「やった…てないっ!!」
獅子王が金棒の防御を突き抜けて暴君に刺さったのを、祈るように固唾を呑んで見つめたが、
すぐに獅子王が投げ捨てられるのを見て黒蔵の表情は判りやすく落ち込み、慌てて獅子王へと這いよってゆく。
幸い、暴君は黒蔵を追うのではなく仲間の死神に気をとられ、
かつ何かを召喚・出現させていたため、その隙に再び獅子王を掴むことには成功した。
「え?扉だけ?」
そして肩越しに振り向いて、現れた《羅生門》に間抜けた表情で疑問を浮かべた。
それが暴君の苛立ちをさらに増すことになるとは思っても居ない、阿呆面である。
天狗と異なり、今は人の身である黒蔵は気の類には鈍感だ。
それゆえ邪気も妖気も感じ取れず、《羅生門》のヤバさもなんとなくしか理解できていない。
異界への扉について話には聞いたことのあるものの、所詮は下級の蛇妖、
実際にその手の物を目にするのは始めてなのだ。
そして気でアピールしても気づかないニブチンに、《生玉》も業を煮やしたのだろうか。
「痛でっ!!……んん?」
折れた足首に《生玉》がこつんと当たったことで、ようやく黒蔵は《生玉》に気が付いた。
《生玉》の作用だろうか、ずきずきとした足首の痛みはそれがぶつかった直後から、一気に緩んでゆく。
(何だこれ?)
右手の獅子王を杖がわりに、右膝を地に付いたままで立ち上がりかけ黒蔵の左手は《生玉》を拾い上げようとした。
その左手には夜雀の黒い羽をまだ握ったままであり、
拾い上げられれば《生玉》は、羽と、そこに篭った恋する想いとに触れることとなる。
857
:
天狗
:2012/02/15(水) 22:14:54 ID:EK/9fLvc
>>854
,
>>856
巨大な赤子にしがみ付かれ、どんどん炎上していこうとするビルを天狗は見つめる。
その顔には、裏表の一切を感じさせない程のおぞましい怒りが浮かんでいた。
それはここにいる人も妖怪も大差なく、
思わず身を委縮させてしまうほどの膨大な妖気と威圧感と共に発せられる。
「ほうほう、不遜的・・・
よもや俺の所有物を破壊しようなどとは・・・万死に値する!!」
怒りと同調して天狗の体から炎が噴出し、再び天狗は高速で死神に接近する。
唯のた打ち回るだけな触手の茂みを意に介さず力技でかわしていった。
「そして・・・奇妙的、なにかはわからんが大袈裟な物が飛び出しおった」
その中でも、暴君が門を召喚した事を視界の端に捉え、小さく愚痴るように呟く。
すると天狗は突如、自身の両腕に妖気を多量に纏わせて、赤子の腹部辺りを二か所突き刺した。
「黒蔵!!絶対的な命令だ!!
この建物から出たその何かは、もちろんわしの所有物!!決してそれから手を離すな」
腕を突き刺したままの天狗は、黒蔵の方を向かずに唯吠えて命令する。
それがなにかを天狗は一切知らない。しかし、絶大な程に我儘な天狗の欲望は、
その何か分からない物も自分の所有物と勝手に決定していた。
黒蔵に言い残してから天狗は、腕を突き刺したまま背中の黒い羽を広げた。
すると天狗は大きく羽ばたいて、死神と共に上空へと上昇していく。
空に連れ去られた赤ん坊の今現在いる高度は、眼下にあるビル群が霞んで見える程。
天狗は赤ん坊がビルを焼かぬ様、空へと退場させたのだ。
「絶景的、実に心地よい眺めじゃ。しかし、お前よ。
これから捨てられる立場のお前からは、この世界どう見える?」
それから天狗は静かに赤ん坊に囁いてから、赤ん坊に突き刺していた手を離した。
死神は天狗という上空での支えを失くして凶悪な高度から落下するだろう。
そして赤ん坊が落ちるであろう地点は、丁度暴君の召喚した門の真上であった。
858
:
七罪者
:2012/02/16(木) 00:02:36 ID:c1.PBF/s
>>856
>>857
黒蔵に持ち上げられ、生玉は黒蔵の想いを…その手に握る羽の持ち主の想いを読み取っていく。
この羽の持ち主は貴方の安否を心配している…無事であるよう願ってる。
貴方はこの場から生き残りたいか?再び愛する人に会いたいか?
なら望め。そして、求めよ。
そう問うかのように、生玉から黒蔵に生命力を与え、痛みを和らげ、多少の傷を癒し、生き残る為に力を貸そうとする。
……願えば、刀での最大の一撃で振るう為の力を与えてくれるだろう。
暴君「俺様は…酒呑童子の旦那たちの敵を…俺達から全てを奪ったこの《國》から全てを奪う……
その為なら俺様の命くらいやるっ!!!!」
暴君がそう叫ぶ中
《死神》は天狗を焼き殺そうとするも、その意思なき触手は避けられていく。
そして、天狗の両手が突き刺さり、動じてないが、上空へと持ち上げられていく。
そして、天狗の問いを答えることなく……いや、残留思念に触れてる天狗なら想いが読み取れるだろう。
《僕は…この世界が憎い》
《産まれてすぐ、望んでない力で母を殺し、父に憎まれ殺された》
《父は愛してた母を黄泉から取り戻そうとした。それなのに父は醜くなった母を見て拒絶した》
《自分勝手だ。理不尽だ》
《この國は…世界は理不尽ばかりだ》
《僕は…もう何もしたくない…》
《ただ……ただ……》
《大禍津日神が…僕にいった。母を黄泉から連れ出そう。そして父に…》
―――謝ってほしかった――――
そして、死神は落下した。
暴君「……開け!!!《羅生門》!!!!!!!」
一方、羅生門はゆっくり開きそこから無数の悪鬼共が顔を出す。一匹一匹が並の妖怪より強い………
だが………それは完全に開く間もなく。
落下した死神により暴君ごと潰され、それは一気に炎上した。
それと同時に結界は粉々に砕けビルは隔離から解放された。
呆気ない幕切れ。
だが災難は終わらない。
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
859
:
セツコ中
:2012/02/16(木) 01:37:18 ID:c1.PBF/s
>>858
訂正
×
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
↓
○
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に襲い掛かろうと近付こうと
別の5匹がビルの中にいる人を狙おうとビルに向かおうと
最後の5匹が敷地ないから殺戮を繰り広げようと繁華街に出ようとするだろう。
860
:
黒蔵
:2012/02/16(木) 20:27:13 ID:3FBgi9l6
>>857-858
「何?」
ただの物と思って何気なく拾い上げた《生玉》は、言葉ではない方法でその意を黒蔵に伝えてきた。
(四十萬陀に会いたい。山に帰りたい)
《生玉》により足首の痛みが薄れ行くのと共に、恋心が、里心が、ひどく掻き立てられる。
それは死の覚悟を、生き延びる意欲へと転じた。
そこに、天狗からの一喝が降って来る。
「いっ?!これ、天狗さんのだったの?」
天狗の威圧感に思わず身を竦めて、反射的にジャケットの内ポケットに羽と《生玉》を押しこんだ貧乏ホストが、
破壊された《羅生門》から吹きあがった炎から、左腕で庇った顔を再び上げたときにはもう、
15匹のうちの5匹の悪鬼が黒蔵に向かって来ていた。
(嫌だ!!!死ぬのは嫌だ!!!)
寄って来る悪鬼たちへ、黒蔵は遮二無二右手の獅子王を振り回す。
死への恐怖と生への執着は、内ポケットの《生玉》にも伝わってゆく。
(絶対に生きて帰る)
太刀筋も何もなったものではないが、それでも獅子王は空を切って低く楽しげに唸り始めていた。
「え?…あ?……おお?」
重たい筈の獅子王を、片手で振っていることに黒蔵が今更気づいたときには、
獅子王の動きに誘われるかのように、折れていたはずの足首で一歩目を踏み出していた。
獅子王の唸りが高まる。それは巨大な猫が満足気に喉を鳴らしているような音だった。
「うわぁぁぁぁいっ??!」
慌てて左手も太刀に添えたが、獅子王は己で望むかのように動き、黒蔵を振り回す。
やがて彼らは悪鬼の間を舞い始めた。かつて織理陽狐が獅子王を扱ってみせたときのような
優雅さは無いものの力強く、その気まぐれな動きは捉え難かった。
一打
右足が強く地を蹴った。
二拍
踏み込んだ左足の沈み込みをバネに、一匹目の鬼へ右下から左上へと斬り上げて、
次の鬼へと跳んでゆく。
獅子頭も囃子も無いが、その足裁きと跳躍は厄を祓い幸を呼び、
祝いの場を寿ぐ獅子舞のそれだった。
861
:
夜行集団
:2012/02/16(木) 21:54:04 ID:EK/9fLvc
>>858
,
>>860
死神を捨てた天狗は堂々と、大きく羽を羽ばたかせながら地面に降下していく。
そして地に降り立った天狗はただじっと死神を見つめて黙っていた。
「・・・ふむ、実に称賛的、死すら超越しようという気概は。
だがな、己からすればその願いは少々お節介、と言えぬ事はないぞ?」
木の高下駄を鳴らしながら、天狗は落下させられた死神に近づき話しかける。
どうやら今の彼は地獄の鬼に関して全く興味を示していないようだ。
「確かにあやつらはお互いを憎み合った、必然的にな。男は女の醜さを憎み、女は男の薄情を憎んだ。
それでお互いが別の世界に腰を据える事になるのも当然じゃ。
だがな、奴らにとってはそれでいいのじゃ。
仮想的にいえば、二人がまたも同じ世を共にすればどうなる?
生の理と死の理が、またも混じりあえばどうなるか、思考せぬ程怠惰でもあるまい?
それに男も、既に女に対する非礼の償いはしておる。
何せ奴は自らの力で生み出した人間達の命を、いつも女に献上するという憂いを追っているのじゃぞ?」
その因果がどこまでの力を有して現在も成立しているかは分からないが、
それでも男は命を女に渡し続けている。
そして女も男を既に許しているのだ。その証拠にそれと同じ量、冥府から再びこの地に命を贈っているのだから。
「無礼的、いつまでも私の前で死んだふりをしておるのだ?
ここはあの何かの力の有効範囲、お前も例外なく死んでおらぬ筈だが?」
天狗はそう言って死神の腹を強く蹴った。
「それと、邪魔的。奴らは冥府に帰しておこうかの」
辺りを見回してから天狗は呟き、またもや右腕に妖気を込めた。
それから近くにあった小石を5個拾い、目線を暴れ回ろうとしている悪鬼たちに向ける。
【天狗礫】
天狗は大きく振りかぶり悪鬼たちへとその小石を投擲する。
膨大な妖気を帯びたその投げ石は本来の石の攻撃力を超えた速度に変化し、
まるで散弾銃のような効果を持って悪鬼たちへと向かっていった。
862
:
七罪者
:2012/02/16(木) 23:26:25 ID:c1.PBF/s
>>860
>>861
天狗の言う通り…まだこの範囲は《生玉》の能力の範囲内だ。
死神「――――――」
《……君の言う通り、僕も暴君もまだ生きてる。けど時間の問題だよ。僕らは生命力でギリギリたもってるだけ、だから生玉が能力をやめれば僕らはすぐ死ぬ》
ピクリとも動かない死神は腹を蹴られるも動きはしないが、念波が送られてくる。
《暴君――牙王丸が最後によんだ鬼達が勝つも負けるも生玉が生命力を送るのもやめれば僕はもうダメ》
羅生門の残骸の下から負の感情の塊である《強欲の大罪》が飛び出しどこかへ飛んでいった。
そして死神の身体からも、負の感情の塊である《怠惰の大罪》が飛び出しどこかへ行った。
死神「――――」
《僕ら七罪者はこの國に…父・イザナギに…復讐するのも目的です。生と死が混じり合い、この世界を混乱させる為に…》
《……父と母が互いを許しあってるなんて……嘘だ…それじゃあ…僕は……僕は…………》
そこから死神はしばらく黙り
死神「――――」
《…………僕らの役目はもう終わりだ。大罪が身体から飛び出した。死んだも同じ》
《速く僕らを殺しな……生命力でも回復仕切れないように消せばいくら生玉でも無理だよ。君ならそれくらいできるはず》
《もう僕は疲れた。何もしたくない……》
《母を呼び父に復讐するのも父に謝罪させるのも大禍津日神に任せるよ…》
《……………》
一方、悪鬼共は…
黒蔵に向かった5匹の内一匹は斬られ上半身が地面に落ちた。
更に切った際に妖気と邪気が吸われていく。
斬られた鬼は反撃もできず動けないが生玉の力で死ぬことはできない…あるいみ死ぬより酷いが…
そして2匹目の鬼は向かって来た黒蔵に警戒しながら、頭を狙おうと右手の鋭い爪を振るおうとする。
残り3匹の鬼は左右に1匹、2匹目の鬼の後ろに1匹と連携して攻撃しようと構える。
ビルに向かった5匹の鬼は天狗の攻撃により行動するもなく消滅した。
それを見た繁華街の5匹の鬼は急いで繁華街に逃げようとする。
だが…ビルの敷地外は生玉の範囲外だ……
更に繁華街は夜行達の縄張り…
はたしてどうなるか…
863
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 00:18:16 ID:3FBgi9l6
>>861-862
鬼の爪を掻い潜るように舞い手は身を沈めて、正面から受け止めようと獅子王を振るう。
右手の爪はがっきと刃を受け止めたが、徐々にその妖力は獅子王に喰われてゆく。
『そこの君、武器を捨てなさい!』
その時声を上げたのは、先ほど黒蔵を見失って戸惑っていた警官の一人。
繁華街は夜行集団だけでなく、人間の縄張りでもあるのだ。
ビルが結界から開放された今、警備員の遺体も壊れたビルも、彼らから見えているようだ。
天狗や七罪者ほどの妖怪ならその存在を人目に映らぬようにできるだろうが、
人の身である黒蔵はこの状況で逃げも隠れも出来ないのだ。
警官の目からみれば、もしかしなくても黒蔵は現行犯なのである。
声を上げた警官は、抜き身の太刀を手にした黒蔵にまっすぐ銃口を向けている。
見えない性質なためか、悪鬼にはノーマークだ。
見えるほうの警官も銃を向けてはいるものの、悪鬼達とその存在に全く動じない同僚とに、
どこか戸惑ったようにその銃口は揺れている。
(あれ、だ)
向けられた銃口に、黒蔵の背筋を恐怖がぞわりと這う。
目の前の鬼の左手も怖いが、向けられた2つの銃口はもっと怖かった。
あれは過去に2度受けた。一度は腹に、一度は背に。
警官に気を取られた黒蔵が、蘇る記憶に硬直したことが、その背後の悪鬼達には付け入る隙となった。
864
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 15:34:31 ID:EK/9fLvc
>>862
「なるほどのぅ、全体的に貴様らの状態は把握した。
貴様らの命運はあのよく分からん玉に左右されているという事じゃな?」
死神の言葉を聞いて天狗は低く唸って納得した。
彼らが今どれだけ衰弱しているのか、それは外から見ても確認できる程。
むしろよくこれで生きていれると驚くくらいであるが、それが生玉の力なのだろう。
「じゃが逆説的に言ってしまえば、お前はあの玉があれば命を繋ぐわけじゃ。
おい!!そこの奇妙的な玉よ!!わしの命令を聞け!!」
天狗は一度死神に向かってにやりと悪辣に笑った後、生玉の方へ振り向き指図をする。
その天狗の態度は願いや嘆願というよりも、拒否権を認めない絶対命令の様相であった。
「この怠惰的な者の命を救え!!貴様ならば生命力を回復させる事も出来よう!!
回復が適わぬのなら、この状態を維持し続けよ!!」
繁華街という広い空間、特にこのあたりの地域ならば天狗の所有物な土地も無く、
天狗にとって助ける必要が無いため、今現在天狗は悪鬼を無視している。
>>863
「おまわりさん、こちらの方が大変だっていう」
視認できる中で、最も不審な黒蔵に拳銃を向ける警官の耳元に、
どこか人を不安にさせる様な奇妙な声色の男の声が囁かれる。
警官はそんな奇妙極まりない声に反応して、背後を思わず振り向くかも知れない。
「ここは俺達が取り持つから、お前らはゆっくり眠っていろ」
もし彼らが後ろを振り向いたのなら、目の前にいるのは肉や皮の無い骸骨。
だが警官達は驚く暇も与えられることなく、その骸骨に息を吹きかけられ、
霊の息を吸ってしまった者達はすぐさまに昏倒するだろう。
「クロロなんとか的な奴だっていう」
前門の虎、後門の狼な黒蔵の眼前に霞のように立っているのは、彼もよく知る人物である。
しかし霊観の無い黒蔵には姿を見る事は出来ないかも知れない。
だが、あのいつも黒蔵を常々おちょくっているあの声だけは、なぜか聞き取れている状況であった。
そして黒蔵が後ろを振り向けば、霊観が無くとも視認できるあの蒼い髪色のイケメンが、
悪鬼たちの前に大きく立ちはだかっているのが見えるだろう。
865
:
七罪者
:2012/02/18(土) 17:34:53 ID:c1.PBF/s
>>863
>>864
黒蔵と対峙してる悪鬼はその右手を防がれ、更に自分の妖気と邪気を吸われていくのに若干動揺している。
だが、黒蔵が後ろの警察に気を取られたのを見てすぐさま持てる力を振り絞り、刀を下へと払い、左手の鋭い爪で黒蔵の腹部を突き刺そうとねらうだろう。
そして、後ろの三匹の鬼は連携を狙い、すぐさま黒蔵を狙おうとするが……
新たに現れた男にそれは防がれた。
真ん中の一匹が雄叫びを上げ、その鬼特有の怪力で雪男に右手で薙ぎ払おうとする。
そして、天狗の答えに応じたのか、生玉は強く光ると、死神の状態を維持し続けだろう。
今は他の人間達や黒蔵に生命力を与えてるが、この戦闘が終れば死神(天狗がいえば暴君も)を集中的に生命力を送り時間は関わるが回復させてくれるだろう。
死神「―――――――」
《………どういうつもりですか?》
天狗のその答えに死神は戸惑いながら念波を送った。
一方、繁華街に潜り込んだ5匹の悪鬼はあの状況をみて、この辺りは強い妖怪達がいると思い、人を襲うのは後にし闇夜に隠れ、状況を見てから人を襲うと少ない知恵をしぼり行動をしている。
866
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 18:29:31 ID:3FBgi9l6
>>864-865
警官たちは二人とも骸骨の吐く息に、誰何する間もなく、くたりとその場に膝からくずおれる。
一時的な昏睡に陥ったのだ。
「虚冥さん!!」
聞き知った声を頼りに、見えない相手を探す黒蔵。
獅子王に圧された悪鬼の右手が弱っていたからこそ、そこに生じた油断。
そこを衝いて、悪鬼の左手がその爪で黒蔵の腹を貫いた。
(しまっ…!!)
獅子舞の足裁きが乱れる。
借り物の仕事用ジャケットとシャツは裂かれて血が滴り落ち、内ポケットの《生玉》と羽が、
服の裂け目からこぼれ落ちた。
落ちた《生玉》は、一度地を跳ねて《死神》の元へと転がり、天狗の足元に差し掛かる。
一方、夜雀の羽はふわりと風に乗り、それを追いかけるように黒蔵の右手が伸びる。
左手のみに支えられた獅子王は切っ先を下げてしまい、腹は鬼の左手に貫かれたまま、
焼ける様な痛みと共に生命は流れ出してゆく。
それでも黒蔵は、あの黒い羽だけは、絶対になくしたくはなかった。
「…くっ!」
伸ばした指先が、かろうじて羽を風から奪い返す。
次の瞬間、悪鬼は左手を包む生暖かい肉の収縮と圧迫とを感じることだろう。
黒蔵が痛みに耐えながら総身の力を振り絞り、鬼の首を横薙ぎにしようと、その左手の獅子王を振るうからだ。
(四十萬陀ぁっ!!)
悪鬼を睨むその両眼は、死の影を濃くしつつある表情の中にあって尚、生きる意思に煌いていた。
867
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 23:02:23 ID:EK/9fLvc
>>865
、
>>866
「うん、別に君達に恨みはないんだけどね。
一応うちの後輩がお世話になったから、けじめくらいはつけといてもらうよ」
悪鬼を前にしながら飄々と、たじろぐ様子も逆に不遜な様子も見せずに、
ただ氷亜はへらへらと笑って中央の鬼に話しかける。
だがそんな暢気な口調ととは対照的に、悪鬼に対する報復は圧倒的であった。
殴りかかる悪鬼に向かって、氷亜はため息のように息を吐く。
すると鬼はその息がかかった部分、場合によっては全身が強烈な勢いで凍結しだした。
いくら相手が怪力であろうが、自分の体全ての操作権限を失えば意味をなさない。
「愚問的、どうもこうもない。わっちがお前の生を望んだからに決まっておる。
生と死の概念すらも超越できると盲信するその愚かさ、己は痛く気に入ったのだ」
一体何の偶然か、足元に転がって来た玉を拾い死神にかざした。生玉は天狗の望み通りに死神の回復を始める。
その回復のスピードは天狗の妖気の助力がある分、
本来持っている能力を遥かに超えて見る見るうちに死神の傷を治していく。
「当然的に、貴様に同情した訳ではないぞ?本来貴様は死を望んでいたのだからな。
だが貴様は死を選ぶことは許されない。
運が悪かったと思い、せいぜい拙が飽きるまで生き続けよ」
しかし、天狗が興味を示したのは死神だけ。
彼が天狗に暴君の救済を懇願しなければ、当然の如く暴君はそのままのろのろと死んでいくだろう。
868
:
七罪者
:2012/02/18(土) 23:53:08 ID:c1.PBF/s
>>867
>>868
殺った!!
そう黒蔵と対峙した悪鬼は自らの勝利を確信した。
―――いくら相手が厄介とはいえ所詮、人間。身体は脆い―――
だが……暴君と同じ……それは油断だ!!!
!?
―――腕が抜けない?馬鹿な…!?俺の妖気が吸われたとはいえ、ビクともしないっ……!!この人間のどこにそんな力が……!?―――
《悪鬼》は侮っていた……目の前の存在の……
ザシュッ!!………ボトッ
生きようとする命の輝きに!!
そう気付いた時には、悪鬼の頭は地面へと落ちていった。
そして氷亜と対峙した中央の鬼は、動こうとした時に自分の異変に気付いた。
―――身体が動かn……―――
そう気付いた時にはすでに彼は凍り付き、意識は遠退いていた。
そして、二匹の鬼は理解した。自分達がいかにヤバイのを相手してると……
―――どうする?―――
―――俺らのような小鬼じゃ、倒せない。中鬼、大鬼も一緒に現世に来てれば話は別だ。壊れる前に出れたのは俺らだけだ―――
―――他の仲間で逃げたのがいる。ソイツらに合流しよう―――
悪鬼同士しか理解できない言葉で、そう会話すると残った二匹は逃げようとする。
……だが、それを許してくれる程、目の前の雪男は甘くないだろう。
死神「――――――」
《…………ハハハハハハ。君には敵わないよ…力も器も全て……》
《僕達は妖魔より先に貴方に会いたかった……》
諦めたような、悲しんでるような、尊敬してるような、複雑な感情で念波を送る。
身体は修復されていき、動き出すと羅生門の瓦礫を持ち上げ、中からズタボロで原型がギリギリわかるくらいの鬼――牙王丸をとりだした。
死神「――――――」
《お願いします。僕より牙王丸を治してください。彼も國を怨み自分の命を捨てて母を蘇らせ國に復讐を誓った《仲間》なんです。口は悪いし自分勝手だけど……》
《治したら僕らを好きにしていいです。お願いします。貴方の軍門にも下ります》
自らの死を望み、復讐を願うモノ達でもやはり仲間の死は嫌なのだ。例え仲間が自分の死を望んでいても……
自分勝手で我が儘で、自分の命は安くみるのに、仲間の命は重く。なんという我が儘で、罪深い。
はたして目の前の天狗はその願いを聞いてくれるか……
869
:
黒蔵 ミナクチ
:2012/02/19(日) 00:47:31 ID:3FBgi9l6
>>867-868
脱力した悪鬼の左手を体内に残したまま、黒蔵はゆっくりとその場に膝をつく。
左手の獅子王を支えに、俯いたまま長い長い吐息を吐く。
その息の白さに、虚冥だけでなく氷亜もこの場に居ることを知った。
(寒いのは、怪我のせいだけじゃないんだ)
のろのろと頭を巡らせて氷亜を探そうとするも、既に視界は昏くなりつつあり、
人の身の脆さを黒蔵はまざまざと実感した。
この程度の怪我でこれほど急激な生命の減衰を感じることは、妖怪の身体の頃には無かったのだ。
〔なぜ、私を呑まない。許しは与えておいたのに〕
不意に深い声が黒蔵の心に響いた。
閉じていた目を開け、獅子王を置いて震える左手で首にかけた紐を探る。
服の下、胸元に下げられていた小さな翡翠の輪の蛇が、その頭を持ち上げて黒蔵をじっと見つめていた。
(俺が呑みたくないから。蛇神には傍に居て欲しい)
〔苦しむのですよ?〕
(うん)
ミナクチの欠片に答えて、そこで黒蔵の意識は途切れた。
倒れゆく際にその身体から、鬼の左手がずるりと抜ける。
翡翠の蛇は紐から抜け出すと、倒れた黒蔵の上を這い、その腹に開いた穴を覗き込む。
〔黒蔵、お前のその選択で私の賭けは勝ちと決まった〕
《生玉》を持った天狗と《七罪者》に、後の心配が無いことを確かめると
黒蔵の致死の傷を重傷にまで和らげる代償として、翡翠の蛇は長さの半ばから砕け、
蛍火色の光となって虚空へと散っていく。
〔その功の報いに欠片の私がしてやれるのは、その命を繋ぎとめるところまで〕
黒蔵がしっかり握ったままの黒い羽に、消えて行きながら翡翠の蛇は少し笑ったようだった。
〔もうしばらく苦労するでしょうが、腐ることの無いように〕
蛇神の欠片は、この先のことを予想していたのだろうか。
倒れた警官たちと夜行集団へ目礼すると、最後にその頭と尾が燃え尽きるようにして消えた。
870
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 01:05:37 ID:EK/9fLvc
>>868
「当然当然、俺を上回っていく者なぞ存在する筈がないであろう?絶対的にな」
基本的に自分では到底気恥ずかしくて言えないような自画自賛を、
天狗は大笑いしながら臆面も無く言い切った。
そして死神が天狗の前で、同胞の命乞いをしている最中その天狗の目は、
またもきらきらと輝く。
「根本的に、僕はその男に対して興味は微塵も無い。
が、貴様が我が傘下に加わる際更にこのような手土産を献上するという、
貴様の吾輩に対する忠誠心は気に入った!!
貴様にはその忠誠に応じた、童からの偉大な褒美をやろう」
天狗にとっての手土産とは、きっと牙王丸も同時に軍門に下らせることを意味しているのだろう。
そんな彼なりの価値観に死神の願いは響いたのか、
天狗は意気揚々として生玉の力を暴君へも分け与え始めた。
>>869
虚冥や氷亜、そして天狗も含めた夜行集団は失態を晒した、としか言いようが無い。
なぜなら仲間の黒蔵の怪我の回復も満足にできず、
その結果としてミナクチの守護を失う事になったというのに、
その事にすら戦闘に夢中になって気づく事が出来ていなかったのだから。
「ゴメン・・・黒蔵君。弁解の余地も無いよ・・・」
今更過失に気付いた氷亜は顔から笑みを失くし、倒れこんだ黒蔵にとぼとぼと歩み寄る。
黒蔵の隣で彼はしゃがみこみ、冷気を帯びていない深いため息をついた。
それが黒蔵に超常的な力を与えるわけではなくとも、ミナクチのその輪は黒蔵にとって、
少なからずとも精神の支柱となっていた筈なのだ。
自分の愚かさにうなだれる氷亜の背後には、完全に全身を冷凍された鬼達の姿があった。
そして氷となった彼らから、まだ妖気を感じる事が出来るという事は、
氷亜の放った冷気が簡易な捕縛ようの物だという言う事を意味していた。
氷亜は黒蔵に害をなした悪鬼の処分を、どうやら黒蔵に託そうとしているらしい。
871
:
七罪者
:2012/02/19(日) 10:15:37 ID:c1.PBF/s
>>869
>>870
死神「――――――」
《ありがとうございます》
《僕達の力…貴方の為につくしていきます》
天狗の命令により、生玉は牙王丸に生命力を与えていく。
身体が徐々に回復していってるのがわかるだろう。
死神「――――――」
《牙王丸には私がよくいっておきます。天狗さまコレからもよろしくお願いします》
こうして、死にたがりの七罪者の内、《死神》と《暴君》は死ぬことなく天狗の軍門に下り、生玉も天狗の手に渡っていった。
凍り付いた悪鬼達を処分するのも黒蔵と氷亜しだいだ。
余談だが、ビルの中にいた人間たちも無事に逃げていき、ニュースではガス爆発による火災として処理され、最初に亡くなった警備員2人は爆発に巻き込まれたとして処理された。
/これにてイベントは終わりです
/蛇さん、夜行さん一週間お付き合いいただきありがとうございます!
/お疲れ様でした!
872
:
黒蔵
:2012/02/19(日) 16:29:05 ID:3FBgi9l6
>>870-871
「氷亜さん?」
近寄ってきた気配に、黒蔵は目を開けた。
「お店で借りた服、駄目にしちゃった」
死から免れはしたものの、今だ重傷で横たわったままの黒蔵は、浅い呼吸の中で
クラブからの借り物の衣装の件を詫びた。
「お店にも迷惑かけるね」
黒蔵の仕事に穴が開くのだから、その分のしわ寄せは他のメンバーに行くのだろう。
もしかしたら、それだけでは済まないかもしれない。
(虚冥さん、怒るだろうなぁ…)
「あっちは天狗さんが勝ったんだ」
二人の《七罪者》と天狗、《生玉》の様子を見て取った黒蔵は安心した。
凍りついた鬼達からの妖気は相変わらず感じ取れないままであるが、《暴君》が天狗の軍門に下る
ということはその配下の悪鬼達もまた、夜行集団の傘下に加わるのかもしれない。
「……人が来る。氷亜さん、これお店で預かっておいてくれる?」
傍らの獅子王を指して氷亜に託す。これを現場に置いておくわけには行かない。
既に遠くからは、緊急車両のサイレンが聞こえ始めていた。
《生玉》の力でも《七罪者》二人に加え、黒蔵までも回復させるには少しばかり時間が足りないだろう。
「もう行って。氷亜さんまで警察に事情を聞かれることになるのはまずい」
これから人目も増えるだろう。氷亜の容姿はどうしても目立つのだ。
(お店のことだけは、黙っていよう)
この件がガス爆発として処理されることは、この時点での黒蔵はまだ知らない。
人間に何か聞かれたら、ホストクラブについては当たり障りの無い返答で済ませるつもりでいた。
氷亜に後を頼み、喋り疲れた黒蔵は目を瞑る。
このまま人間達に運ばれて、回復すれば色々事情を聞かれることになるだろう。
今回、《生玉》が天狗のものとなったことで、夷磨璃の回復手段としての《生玉》を交換条件にして
巴津火と取引するという手段を、黒蔵は失ったのだった。
873
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 19:23:55 ID:EK/9fLvc
>>871
「上々的、忠誠の挨拶にしては面白みが足らんがな。
これより貴様らは常にわしのため、骨を粉にし身を砕き全生命を賭し私に貢献せよ」
最後に高笑いをしたかと思うと天狗は目の前の二人を、
特に暴君に関してはかなりかさばるであろう事も全く意に介さず、
抱きよせて洗濯物を干すかのように天狗の両肩に掛けた。
「ここの後始末もろもろは貴様らに任せたぞ氷亜、虚冥よ。
基本的に僕は後始末を好まない」
そして大きく黒い羽を広げてから、振り返り同胞の二人に命令を下す。
快活にまた一笑いしてから天狗は羽ばたき始め、あっという間に空の中に姿を隠した。
>>872
やはりミナクチのお陰で、黒蔵は今現在急を要する様な容体ではないらしい。
少し安心して息をついた氷亜であったが、黒蔵の弱り切った声で放った言葉に苦笑して首を横に振る。
「それは君が気に負うようなことじゃないよ。
誰がどう言おうと強者が弱者を保護する僕達の掟に、僕達が全く及んでいなかったんだから」
それでも、それ故に黒蔵が今思っているであろう怪訝をせめて払拭するために、
氷亜は優しげに笑い自腹を切る事にした。
そんな時黒蔵は指でどこかを指し示し、氷亜はそれに従って彼の指先にある物を見つめた。
要件を把握した氷亜であったがその時には既に虚冥が、
部下の中でも屈強な霊に命令を下し黒蔵の獅子王の回収を済ませてあった。
「分かった、先輩がいが無くて本当に申し訳ないんだけど、
お言葉に甘えて逃げさせてもらう事にするよ。
出来る限り拘束を早く解けるように働きかけるから、ほんの少しだけ待っててね」
治療を行なえる術師や妖怪は夜行集団にも在籍しているし、
しようと思えば、黒蔵の怪我の治療も不可能ではないのであるがそれ以上に、
ビルの一件が起こる前に黒蔵はあまりにも騒ぎすぎていたため彼も姿を消してしまえば、
余計に黒蔵への懸念が増えてしまう事を恐れ、氷亜は渋々ながらもこの場を後にする。
完全凍結させた悪鬼たちも霊達に回収させ、彼らの取捨選択はまたの機会にする事になった。
874
:
インコレツジ(忌黄烈迅)
:2012/10/04(木) 21:35:23 ID:znuO.6vI
畏れる者は無い。
未だ、ヒトいうものを理解しえない。
食べれば、解かるカな?
一口、女の首を喰らい込んだ。
居てはならぬ。生きてはなら――。
俺様は人間を、シっている...?
記憶にあるのだ。ならば、もっと喰えば思い出すだろうか。
首より下も、噛み砕き咀嚼する
ああ、ここは、生きていけないから、だから人間を止めて、妖怪になろうと――?
875
:
テレビ
:2012/10/04(木) 21:38:43 ID:znuO.6vI
それは、山のふもとで起きた事件。
「人の血だけが落ちていた。防犯カメラには、突然血潮を上げるOL風の女性と、なぎ倒されるかのように倒れた木々が映っていた」
等と警官や報道関係者は語る。遺体は見つかっていない。
山の地滑りや一部崩落かと思われている。
「そういえば、この山は猿が大きめで自生しているそうだね
でも、山から下りてくることは、滅多にないとか」
インタビューに地元の老爺はこう、答えたのだ。
さて、この事件、放置してよいのか?
876
:
七郎
:2012/10/06(土) 22:00:03 ID:???
>>875
木々の間から一匹の小動物が顔を覗かせる。白く胴が長い狐だ。
「十夜……どこ行っちまったんだよ……」
その狐は何やら心配そうな顔をする。どうやら、彼は弟分の人間、十夜を探しているようだ。
「ここいらには入るなってあれほど言ったのによ……」
七郎ももちろん件の事件の事は知っている。そして、この事件の犯人が人間ではなく、自分では適うはずがない存在かもしれないことも当然分かっていた。
だから、焦っていたのだ……
877
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:14:39 ID:5tjm1s6k
町はずれの民家。
切れかけた街灯が点滅するその隣に一軒家はあった。
かつては全ての妖怪を不幸にしようとした組織、
そして現在は、ただ1つの意地の為に3人の子を”幸せ”にするための組織。
新生・紫狂の本拠地であった。
ニュースを見る青い着物の少女、雨邑。
「・・・」
女性の死亡、謎の多すぎる現場。
これは十中八九妖怪の仕業だ。
「どう思うのだ、宛誄?」
問いかけるは赤い着物の少年にして3兄弟の長男、安木。
宛誄と呼ばれた黒い着物の少年はやれやれと肩を竦める。
「妖怪の仕業だろうね、今時こんなに派手に人を襲う奴が居るなんて考えにくいけど」
そんな3兄弟を諌めるように、この中で一人だけ大人びた乙女がピシャリと言った。
「だめだよ、みんな! また首を突っ込もうとしてるでしょ?」
安木が食い下がる。
「いけませんか、入江姉さん」
「いけません! また・・・また誰かが死んじゃうような事になったら・・・!」
「しかし! 己達はこのような妖怪を放っては置けません!!」
「駄目! この妖怪があなた達よりずっと強い奴かもしれないんだよ!? お願い、お願いだから・・・」
「もうどこにも行かないで・・・」
878
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:16:32 ID:5tjm1s6k
涙目になる入江に安木はたじろぐ。
雨邑、宛誄もこれには首を縦に振らざるを得なかった。
以前、雨邑が殺されたあの頃。
宛誄は復讐鬼と化し、安木は修羅の道を共に歩み・・・。
そんな状況に入江は心が壊れかけた。
今のこの温かい家族を、もう2度と壊したくない。
それが今の紫狂の共通認識だった。
「やれやれ、みんな情けないね。一回死んだくらいでこんなに憶病になるなんてさ」
「・・・居たのですか、波洵姉さん」
「うん、ずっと。空気に変化してたんだよ、気付かなかった?」
そこに現れたのはかつての最悪の妖怪の実の娘にして、その生き写しの姿をした妖怪。
あらゆるものに化ける能力を持った天魔・波洵。
波洵は黒のドレスをはためかせ、ショートカットの髪を撫でる。
「やれやれ仕方がないね。この妖怪の調査、私が行ってあげよう」
「波洵ちゃん」
入江は反論しようとするが、波洵はニヤッと笑う。
「なぁに、心配いらないさ。私は粉々になっても死なないし、何より私が死んでも誰もトチ狂うほど悲しんだりしないだろ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「誰か反論しろよ!!」
波洵、ノリツッコミ。
ぶっちゃけ事実なのが悲しい。
「じゃ、じゃあ波洵ちゃん・・・お願いしていいかな?」
「ふん、まぁ瞬殺してきてやるよ」
「まぁ波洵姉さんより強い妖怪ってのも中々居ないだろうしな・・・」
こうして、この事件の調査。
新生紫狂からは波洵が出ることになった
879
:
山猿青介
:2012/10/08(月) 15:43:11 ID:znuO.6vI
近代においては異常といってよかった。
明治に入ってから、妖怪退治の実力は急速に衰えていった。
人間の神を信仰する社の数が、政治によって激減したからだ
だが、今は近代化された組織として、妖怪退治屋が幅を利かせている。
近代化とは、銃器による退魔や、世界各地に設置した聖的拠点を同時起動する妖気弱体化などである。
とにかく、世界規模であり、科学的なのだ。
お頭のやったことは頭が冷えてなさすぎると言っていい。
何が原因で暴走したかは、よく分かる。
お頭は元々の人間の想念なのだ。それが人の血肉を得て、平然としていていられる筈も無かった。
人間だけは、喰ろうてはならなかった。
880
:
山猿青介・インコレツジ
:2012/10/08(月) 15:44:06 ID:znuO.6vI
2人の猿は、対峙する。未来と、己の疑念を代価に。
「ワからぬ、のだ。俺は、何故。俺様とは、何者であるか」
「それを知るのは、冥途だぜ
この山の危機に、繋がる。それだけは、阻止する」
大規模浄化。それが行われれば、弱小のこの猿山など、もつまい。
青介は右手に握った妖気円剣を振り降ろす。インコレツジの周囲に、今までインコレツジが支配していた、猿の亡霊達が集まった。
「アまい。単純に、1人1人の戦闘に対する適性を顧みれば
お前らは、ただ10、12程度の砲撃で、滅する」
「人間に敵対して殺されるなんざ、ごめんでね
妖怪全員で、アンタ、インコレツジ……元お頭を殺しちまいます、できなくても。
できなくても、結果は一緒だ。お前ら、俺に続けぇええ!」
881
:
さぁ、舞台へ上がるのです
:2012/10/08(月) 15:45:05 ID:znuO.6vI
妖怪同士の戦いは、おおよそそのルーツで決まる妖力か、その者の特異能力の相性で決まる。
単なる打撃能力しか持たない、猿。青介も、数十年修練して手に入れたのが輪の形をした刃を持つ妖気の剣を能力とする以外に、特に何も持たない。
勝負は、一瞬だった。
瞬く間に掃滅され、青介と、青介の背後にいた25匹。それだけが、生き残った。
「お前ら、ここは、俺で食い止める
全員、この山から逃げちまえ。どっか、妖気が食えるところ探して、生き続けろ
お頭ァに勝とうとか
無理だわ」
そして、ここで場面は止まる。
ここに、主役達が集う時まで、場面は止まる。
幕を引かれるまで、いささかの猶予を・・・。
882
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/10(水) 22:50:20 ID:SmXQZqJk
>>881
(……なんだ?縄張り争いか?それにしちゃ、あまりに一方的すぎる……もしかして、あいつが例の事件の犯人か…?)
無残にも散っていった猿達を木々の間からこっそりと見る七郎。
(なんにせよ、関わらない方が良さそうだな。俺一人でどうにかなる相手でもないだろうし……早急に十夜を見つけねぇとな……あいつから十夜を守りながら戦うなんて危険すぎる……)
そう判断した七郎は、その場から立ち去ろうとした。
しかし――
「七郎?」
聞こえてきたのは少年の声。七郎が探していた十夜だ。
「良かった!もう出れないかと思ったよ!」
若干、目に涙を浮かべながら七郎に近づく十夜。
『十夜!?馬鹿っ!今、大声出すな!』
そう言っても、もう遅い。十夜はすでに周囲に聞こえるような声を出してしまった。
「え?ど、どうして?まさか……」
十夜が辺りを見渡そうとする。
883
:
波洵
:2012/10/13(土) 21:24:37 ID:Fk4/3PMc
>>881
>>882
「ふぅん、死屍累々って感じだね」
黒いドレスを揺らし、波洵は悠々と猿の屍が山と積もった舞台に舞出でた。
こめかみに指を当て、瞳を閉じるが。
しばしの後に忌々しそうに舌打ちをする。
「くそっ、やっぱりまだ〝貪欲″は使えないか・・・!」
波洵を天魔足らしめた妖術・貪欲。
周囲の者の魂をスキャンし、その長所たる部分を解析し、その長所を形作る回路に変化することで。
相手の長所、能力をそのまま手に入れるという反則じみた力だった。
これにより波洵は実質最強の妖怪となっていたのだ。
しかしとある一戦にて。
波洵は粉々に砕かれ、敗北した。
再生することはできたものの、波洵はこの貪欲という力を失った。
「忌々しいね、貪欲が使えたらここの状況も一発でわかるのにさ」
貪欲は魂をスキャンする、これを応用すれば相手の心を読むという使い方もできるのだ。
波洵は徹底的に弱体化した自分を恨みながら、猿の死体を蹴飛ばし八ツ当たりをする。
「仕方ない、地道に妖気を探るか・・・。
ん、割とおっきめの妖気が1つと、小さい妖気が1つか・・・小さい妖気?」
波洵はその方向を振り向くと、呑気にも声を上げた少年を目に止めた。
「ちっ、人間のガキか! 妖怪のお友達、もしくは使役者ってところか?
しかし馬鹿が! 人間の臭いを振りまいてそんな大きな声を出したら・・・」
大きな妖気が動くのを波洵は感じ取った。
「ほぅら、バレた」
大きな妖気の方角を睨み、手を刃のような金属に変化させる。
「仕方ない、ついでだ。討伐ついでに護衛もしてやるよ!」
884
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/14(日) 19:01:18 ID:znuO.6vI
>>882
>>883
「援軍、ノツもりか
ハッ、情けのない。青介、キ様……俺サまを倒して、この山ァ護る云ったな?ありゃあ、嘘か」
「嘘だ。もう、守るべきもんが8割型死んだしな
けど、逃げる猿に、正義漢、それと迷子もいる。負けられる道理が無ぇ」
「イうわ。去ね、みすぼらしく死ね
我が名は忌黄烈迅。このヨにテ生きられぬ無念の、総体
死せるべきでなく、生かされることもなかった……お前らのように生まれた時から守られた青猿共には、決して解らぬ、この惨めさは」
「……」
「覚悟セぇ!妖気を出し屍となり、人の世にナ染むこともなかった我らの」
インコレツジの声が、一段階、高く、数秒ごとに高く、甲高くなっていく――
まるで、気の狂った、女のように。
「業深き殺戮、食い散らかしたる怨念をッ」
インコレツジが右腕を振り下ろすと、背中の砲筒と同じものが、空中に四門現れた。
「真情を識りえた、我が『無念』という生命の記憶。身の滅びとともに、理解しろ
そして、我が暴食の妨げなる貴様ら4人、皆喰らいつくして、クれる」
鉄の砲弾。花火やミサイルのように破裂することもなく、ただ産まれ出され、落ちた場所に置き去りにされる鉄球。
それは、インコレツジが抱えた闇をルーツに持つ、妖気の武具だった。
8発。まずはそれだけの数、青介、七郎、十夜、波洵に出鱈目な速さで放たれた。
885
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/14(日) 22:17:20 ID:SmXQZqJk
>>884
「う、うわあああああ!?」
辺りを見渡した十夜の視界に入って来たのはインコレツジが放った鉄球だった。
鉄球は十夜の目の前に迫るが――
『あぶねぇ!!』
白髪の男性――瞬時に人化した七郎により突き飛ばされ、十夜は鉄球から一時だが逃れられた。
『ぐはぁっ!!』
しかし、変わりに十夜の居た位置に来た七郎に鉄球が直撃する。七郎はそのまま吹き飛ばされ、近くの木に激突する。
『いきなり……攻撃かよ……くそ……』
放たれた鉄球は8発。1人に2発ずつだとすると、十夜の分も合わせ残り3発の鉄球が七郎に迫ることになる。
1発でこのダメージ――おそらく骨はいくつか折れているだろう――あと3発も食らえば、ほぼ確実に死ぬと思われる。
『十夜!!逃げろっ!早く山から出るんだ!!』
「で、でも…」
『いいから逃げろ!!』
十夜は七郎のことが心配なようで、すぐに逃げ出さなかった。だが、さすがに怖くなったのか七郎に強く言われた後、十夜は泣きながら逃げ出していく。
>>883
『なぁ、アンタが何者だか知らねぇが頼みがある。』
十夜が逃げ出した直後、七郎は波洵に話しかける。
『さっきの人間の子供が無事に山から出れる位まで、あの猿を移動できないように足止めしてくれ。どのみち戦うつもりなんだろ?』
口元から血を垂らしながら、辛そうな口調で話す。
886
:
波山とか
:2012/10/16(火) 21:57:23 ID:cpTCnr7.
>>884
「ぐぅあ!!」
十夜に気を取られていたのか、突如放たれた砲弾に波洵は対処が遅れた。
1発目、とっさにガードした腕の骨が砕かれ、体に衝撃が走る。
2発目、仰け反った波洵の身体の中心に直撃し、波洵を後ろまで吹き飛ばして木にめり込ませる。
土煙の中、波洵の姿が浮かび上がる。
両の腕はグシャグシャに砕かれ、内臓もやられているようでペッと口に含んだ血を吐きだした。
「くっそが・・・。こんなか弱い女の子に向けてよくもこんな暴力的なことができるね」
>>885
波洵はじっとりと湿った目で七朗を睨む。
「それでも男かよ、こんな女の子に守ってくれだなんて」
しかし波洵は立ち上がる。
変化する波洵・・・〝攻撃を食らう前の自分″へと。
「ま、引き受けたけどさ」
十夜の前に歩み出る波洵。
既に攻撃を受けた傷は跡形もなく、波洵はせせら笑うようにインコレツジを見下す。
「この世に生きることが許されなかった存在だって?
くだらねーな、どいつもこいつも・・・どうしてそんなに自分が生まれた意味に拘るんだ」
波洵は指さし、堂々と宣言する。
「そんなに惨めな存在だったら、今から私に虫けらみたいに殺されても文句は無いよね?」
887
:
インコレツジ(忌黄烈迅)、山猿青介
:2012/10/19(金) 18:04:09 ID:znuO.6vI
>>885
>>886
「惨めという言葉ですら、我を形容するに値せぬ
我は、もはや異常な存在として、ある種、生きること自体が悪で、その生への渇望は・・・憎しみに溢れていた」
「四肢の一つが欠けていたとしよう。それは、生まれが名門であれば、その家の血を忌まれ、それ以上の出世が望めなくなる――【だから私は殺されたのです。生まれて三日のことでした】」
状況の仮定が終わると、子供の声が木霊する。
その辺りに落下したままの鉄球から、声が出ているようだ。
「易を読むことができたとしよう。しかし、その時代の終わりに占いは忌まれた
職につこうにも、村人によって手配所と噂は回り、結果、何も悪事を働かずに政府の獄に入れられた
罪無き汚名を被るまいと――【そう、だから私は自ら死を択び、目玉に橋を突き抜いた】」
今度は声変わりした男の声。
「海は綺麗だった。その島では金が採れたとしよう
その価値を我々は知らなかった。ある日、一人の漁師を保護し、国へ返してやった
すると翌日、大軍が来た――【我々は、税を払っていた国主率いる正規軍に、皆殺しにされた】」
子供、女、男、老人。今度は何百という声色が、きちんと調和をもって、一つの鉄球から流れた。
「そんな我々、一万少しの怨念が
惨めか。虫けらか」
「強者は、今ここで去ね
冥土で、敗れ血潮に塗れる苦しさを知れ
そして、思うとおりに生きられた幸福を、冥土で噛み締めろ
お前の絶望だけが、我々の癒しだ」
それは。きっと、異物の妬みだ、社会秩序に組み込まれなかった者が抱く、社会に融和できた者への、羨望だ。
「お頭ァ、そりゃ、妖怪にもなりゃすあな
けど、お頭。アンタのせいで、ここに転がってる猿の屍は、社会から弾き出されたんだぜ
そこから身を守るには、アンタが死ぬしかない
アンタは過去で、逃げた人間の子供と25匹の猿は・・・これからを社会で生きていくしかない、未来そのものなんだわ」
自分を語り始めてから、獣の本能が徐々に曖昧になっていく
その段階を踏むたびに、近接戦闘能力は低下する。
砲台。インコレツジは、今鉄球へと近づいていて、その戦闘能力は砲台へとシフトしているようだ。
なら、攻略の鍵は、5門による砲撃の突破だろうか?
888
:
七郎
:2012/10/19(金) 20:47:44 ID:SmXQZqJk
>>886
「性別なんざ関係ねぇ…だろ……つーか…それ言ったら俺は小動物だ」
辛そうに息切れしながら話す。
「感謝するぜ。……それにしても便利な能力だな。
攻撃食らった時は俺はもう駄目だと思ったが、アンタが味方なら俺も生きてこの山から出られる…かもな……」
傷が無くなった波洵を見て言う七郎。
同時に、もし波洵が敵だったらヤバかっただろうなと思った。
>>887
「いったい何が起こってんだ……?なんでこんなところにこんなに怨念が……?
考えたって分かることじゃねぇか……それより、十夜が心配だ。あいつは、こういった念とかに人一倍敏感だ……もし、この声が聞こえていたら……」
(ちくしょう……怪我さえなけりゃこの場から逃げて十夜を追いかけられるってのによ……)
今の七郎に出来ることは少ない。僅かな力を振り絞り炎で攻撃するか、ボロボロの身体で逃走を試みるか――
だったら早く敵を倒せるように、炎でサポートをする方を七郎は選ぶだろう。
「やってやるよ!過去だか未来だか知らねぇが、俺は現在(いま)を生きたいんでね!!」
七郎は、両腕に炎を灯し立ち上がる。
889
:
名無しさん
:2012/10/19(金) 21:27:25 ID:jvPZh9Bc
>>887
>>888
「へぇ、小動物か。その割には上手く変化したじゃん。私ほどじゃないけどね。
まぁいいや。私が味方に付いたからには、こんな小物いくら相手にしたって問題ないね!」
波洵はインコレツジに向き直り、さて、と一呼吸おいて語りかける。
「強者? それは少し違うかもね。現に私は負けたことの方が多い。
私は天魔雄神・第六天魔王他化自在天の波洵。誰でもあって誰でもない。
その気になればそのくだらねぇ、無念を背負う死者の誰にでもなれたんだぜ?
まぁ、今は無理だけどさ」
波洵はクツクツクツと笑うと、一呼吸おいて大声で捲し立てる。
せっかく語ることで収まりかけたインコレツジの攻撃本能を挑発する。
「無念? 恨み? アホくさ。生きることが許されなかったから、
今度こそマトモに生きてみたい、とかいうならまだわかるけどさ。
せっかく掴んだ2度目の命を復讐なんかに使うなんて馬鹿みたい!」
波洵の服を突き破り、肩から生えるのは蜘蛛のような、蟹のような。
長く甲殻に覆われた4本の脚。
その4本は波洵の身体を持ち上げ、波洵は高みから見下すようにインコレツジを一瞥し、中指を立てて言い放つ。
「お前等は結局私達にどうして欲しいんだ。どうやれば満足するんだ。
全ての者に理解されたいのか? 生きとし生ける者全てに死んで欲しいのか?
それとも同情して欲しいのか、供養して欲しいのか?
「違うだろバーカ」
「お前らがやりたいのは結局意味の無い八つ当たりだろ、ただ暴れまわって殺しまくりたいんだろ?
そんな下らねーことに付き合ってやるほど、私達生きてる奴等は暇でもお人好しでもないんだよ!」
波洵の両の手は蠍の尾のような鞭となる。
もはやその姿は異形と化した波洵、それでも高らかに宣言する。
「死んでる奴が泣き言ぬかすな、黙って死んでろ!!」
ここまで唯我独尊、同情の欠片も見せないとなるともはや清々しい。
波洵は情け容赦なく、先端に穂先の付いた鞭を伸ばし、インコレツジを貫こうとした。
890
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/20(土) 20:24:46 ID:znuO.6vI
>>888
>>889
インコレツジは、ぼんやりとした頭で、右腕を鞭槍へ伸ばした。
インコレツジは、信じられないという表情で、波洵の穂先が刺さったてのひらを眺める。
「ここでも」
「この時代でさえ」
「我々は否定されることしか
社会の枠組みに組み込まれることさえ
その願望の一つさえ
許されずに、また死を選ばされる」
「虫けら。人と呼ぶべき人間が、人とすら認められぬ我々に
理の外にある、余計な存在だ、と」
「我々が生き、その骨灰が埋まりし場所には、新たな生命が、芽吹けば……いいのにな」
幾千の人間の声が重なった雄叫びを天に上げてから、その歪んでしまった心根を露呈する。
「生きるとは。生きるということは
社会に認められる以外に、もう一つある
我々が、我々が、我々を否定する、ヒテイする、生き物全て――死に絶えた時ぞ」
確信を得た妄執は、既に世界の真理の如く思考を突き動かし
そして眼前にそびえる、敵、敵、敵。
自分を認めてくれなかった敵。
「許さない」
「我々は我々を認めるため、自然と同化して、身(てつ)を放ち人を殺す怨念となる」
怨念自体が自然へ帰ろうとしている。
「我々の往くべきだった生命の大道を築く」
七郎へ、二発。
波洵に、三発。
インコレツジは、鉄鉱石を最終的な魂の形態とする。行き着くのは鉄でも、それを解き放つ爆発力はルーツにない。
修行し身につけた妖術の一つ、砲撃。
唯一苦手とする動作。火薬の用意に、二秒かかった。
その隙を、七郎・波洵が活かしきれるかどうか。
近接戦闘能力が皆無の、大猿(インコレツジ)という鉄(くろがね)の外装を叩き壊せるのか。
一方で、山猿青介は、地面に窪みを掘って隠れていた。
自分はいわば保険である、と青介は考えていた。
あの五発が身の上を通り過ぎたら、この剣でインコレツジの首を撥ね上げる。
再発射までの間隔を、ずっと見てきた青介だから狙える。
だが、波洵を見ていれば、たぶん大丈夫だという気もした。
七郎は、きっと耐え切るとも思った。だから、二人の心配はしない。
大怪我をしても、この妖怪の世を守ってくれると、思いたいから……いや、思わせてしまうだけの強さと覚悟を、二人は示していた。
891
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/20(土) 21:47:59 ID:SmXQZqJk
>>889
『は、はは……想像以上にヤバい奴だったみてぇだな……天魔雄神って、おいおい……
今の俺にとっちゃありがたい存在だけどよ……』
波洵の正体に驚愕する七郎。それと同時に若干の畏怖の念を抱く。
>>890
『また鉄球か!?』
今の七郎には鉄球を避ける体力は無い。つまり、七郎が取る行動は一つ。
『耐えてくれよ、俺の身体!狐炎螺旋!!』
鉄球の進行を止めるべく、掌から螺旋状の炎を放った。
しかし――
『ぐはぁっ!!』
炎と鉄では相性が悪かった。鉄球を止めきれず、再び吹き飛ばされる七郎。
激しく地面に叩きつけられる。そこに2発目の鉄球が迫る。これを食らってしまえば、確実に致命傷になる。
(くっ……ここで終わりなのか……?)
目を瞑る七郎。そこに――
「七郎っ!!憑依だよ!憑依!」
現れたのは十夜だった。
『十夜!?なんで戻って来たんだよ!?』
「話しは後!早く憑依を!!」
『くっ!仕方ねぇ!!』
このままでは、自分だけでなく十夜も危ない。七郎はやむを得ず憑依をすることにした。
そして、辺りが光に包まれた。その後、七郎の居た場所には七郎の姿は無くなり、変わりに髪が白く変化した十夜が立っていた。
「行こうっ!七郎!」
『無茶はするなよ!隙を見て逃げ出すんだ!』
憑依十夜は腕に炎を灯す。まずは目の前の鉄球をどうにかするつもりだ。
「『狐炎鉄槌!!』」
二人の声が重なり、腕の炎が大きくなる。そして、そのまま鉄球を――殴った!
鉄球は勢いを失い、その場に落下する。
892
:
名無しさん
:2012/10/20(土) 22:07:18 ID:Glf.uH9o
>>891
「ふふーん、もっと怖れろ、敬え。この波洵ちゃんを」
得意気に胸を反らせる波洵。
やはり畏れられることは妖怪にとって気分が良いらしい。
>>890
「あーーーーっ、もう! ゴチャゴチャゴチャゴチャと!
何が言いたいのかさっぱりわからねぇ! 私にはもう心を読む力がないんだからもっとわかりやすくしゃべれよ!!」
インコレツジの言い回しは、短気な波洵が理解するには回りくどすぎた。
再び砲門がエイムされてるのをチラリと見据えると、さも愉快そうに笑った。
「そー何度も食らってやるかっての!」
4本の脚が一瞬で縮み、直後に跳躍。
その瞬間は大きな砲門を構えるインコレツジよりも幾分か早かった。
「こんなつまんねー技ばっかりなんて脳がないね! この能無し!!」
跳躍した真下にはインコレツジ。
波洵は長い鞭のような腕をらせん状に融合させ、一本の長い槍を作り出す。
「とっとと死ねっ!!」
風を切る長い突撃槍が今まさにインコレツジを貫かんとした。
あと波洵、護衛の事すっかり忘れてる。
893
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/21(日) 13:10:26 ID:znuO.6vI
>>892
>>891
槍は、忌黄烈迅の頭蓋を貫いた。
「自然へ還るとき が 、 来た ようだ」
幾重にも重なった声色で、インコレツジが呟く。
「山猿青介。此処(ここ)という場所は、無念が募りやすい
また我々を見つけたら、今度はちゃんと、二度目の生を送れるように
赤子の猿の時から、躾てやってくれまいか・・・」
山猿青介は微動だにせず、凛然と地面の窪みから立ち上がった。
インコレツジの姿が薄れ、光粉となって消えていく。
鉄屑が辺りに散らばる音と共に、インコレツジは存在を消した。
――
<エピローグ>
――
山猿青介は、十夜と波洵に向き直る。
「すみません。助かりました
ここに無念が募ったら、俺は」
青介は息がつまった。
「俺が、そういう役割の振られた猿の赤子に、ちゃんと、その時その時、とどめ刺します」
それは、社会で生きることが許されなかった者への、焼き直しにほかならない。
しかし、心底にある歪みきった感情を目の当たりにして、生かしておくことも、青介にはできなかった。
――
<イベント終結>
――
「狐さまのほう、怪我平気ですか?
ここの頭として、一応、ちゃんと最後まで義務は果たさないといけないですね
妖気の溜まり場が山と山の間にあって、そこなら怪我も早く癒えると思うので、これから案内しますね」
青介が、義侠染みた声で言った。
「波洵さまは、痛いところ、まあ、無いと思うんですが。ありましたかい?」
894
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/21(日) 21:53:24 ID:SmXQZqJk
>>892
,
>>893
『終わったか……』
「ねぇ、七郎……あの妖怪っていったい……」
『さあな、俺はなんにも聞いちゃいねぇからわかんねぇよ。』
七郎はあえてインコレツジのことを十夜に話さなかった。
その後、静かに憑依を解き、元の狐と黒髪の少年に戻った。そして、青介の方を向き
『礼なら俺には言わなくていい。俺は十夜と自分の身を守る以外、何もしてねぇよ。
って言ってもこんな怪我でしかも十夜にまで助けられて守れたって言えるのかは疑問だけどよ……』
苦笑いしながらそう答える七郎。
『つーか、俺が十夜に礼を言わなくちゃだな。』
「いいよそんなの。それより、七郎が無事で良かったよ……」
十夜は目に涙を浮かべながら嬉しそうにする。
『ああ、それはアイツが居てくれたからだよ。アイツがいなかったら、多分俺は今ごろお陀仏だっただろうよ。』
そう言って七郎は、波洵の方を見る。
「あなたが七郎を助けてくれたんですね!ありがとうございます!」
『俺も言う。マジで助かったぜ。ありがとよ。』
と、十夜は波洵に頭を下げた。
『で、怪我の具合か?まぁ……そうとう酷いな。治せるんだったら早いとこ治しちまいたい。また、あの厄介なのが現れてもおかしくないからな。連れて行ってくれ。』
早いとこ怪我を治したい七郎は、青介に答えた。
『十夜は先に帰ってろ。妖怪にとっちゃ有益な妖気でも、お前みたいな人間には危険だろうからな。』
「う、うん。」
七郎が話した後、十夜が頷く。そして、七郎は再び波洵の方を向く。
『あ、あと、何から何まで世話になっちまうが十夜が山から出るまで護衛頼めるか?いや、もう大丈夫だと思うんだけどよ。念のためな。』
895
:
波洵
:2012/10/23(火) 16:02:24 ID:IsFf8T.o
>>893
長い突撃槍が頭蓋を貫いたのを見届けると、
波洵はそれを勢いよく引き抜き、元の人のような腕に戻した。
「おや、あっけないね。この程度なのかい、お前等の無念とやらは?」
拍子抜けしたようにせせら笑う波洵。
最後まで欠片も同情はしない、代わりに完全に拒絶もしない。
彼女はもっと悪逆で、エゴイスティックな精神によって産み落とされたから・・・。
「私に踏み潰される程度の無念だったらどーってことは無いから、
次は綺麗さっぱり忘れて生まれて来いよ。どーせ次があっても今のままじゃ大したことはできないぜ?」
波洵は消えゆく光の粒子に、満面の笑みで中指を立てた。
――
しばしの後、あくび半分に青助の訴えを聞く波洵。
どこかうんざりしたような顔で言い捨てる。
「あの程度の妖怪で大袈裟だっつーの。
未練だのなんだの知らないけど、間引きだとかそんなことしなくても良いだろうが。
・・・またあーいうくだらねーのが生まれても、一応見届けてやれよ。
成長して、生き抜いて、それでもあんなロクデナシになったなら、私に知らせなよ。また踏み潰してやるからさ」
最後に波洵はニヤッと笑った。
――
お礼を言う七郎に波洵は少し頬を赤くして、胸を反らせる。
「そーだろ、助かっただろー。
もっと褒めろ、讃えろ、敬え、この波洵ちゃんを」
青助の提案に波洵は即答する。
「いらねーよ、そんなもん。
あんなくだらねー奴相手に怪我するわけないだろ?」
空元気である。
波洵の変化による治癒は、怪我のダメージの先延ばしに他ならない。
消耗した分はじっくり時間をかけて回復するしかないのだ。
「おっけー、また任されたぜ。それじゃいくぞおガキ様」
十夜の護衛を快諾する波洵。
大変不安の残る護衛である。
こうして万から成る一匹の妖怪の呼んだ騒動は終わりを告げた。
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