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イベント優先スレ
1
:
名無しさん
:2011/05/01(日) 01:39:06 ID:???
・イベントの無い時はここも使えます。
・イベントの開催はここと「雑談用スレ」にイベント情報を貼り付けて告知すると親切。
846
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 08:32:34 ID:3FBgi9l6
>>843
>>845
(不味い)
飛び上がった暴君が棍棒を振り上げた。その狙いは黒蔵の頭。
妖気を感じ取れなくなった黒蔵にも感じられるぴりぴりとした危険が、
その皮膚を粟立たせる。
がづっ!!!
金棒の二撃目を転がって避けた傍らで、黒蔵の代わりに攻撃を受けたコンクリートが砕け散り、
その破片が黒蔵の耳を掠めて飛んでゆく。
(この距離にいたら、確実に死ぬ)
地べたを転がり、死者の血に汚れて立ち上がった黒蔵は、獅子王の重みに苦労しながら袋の口を解く。
袋の中でその鯉口を切ると、解放された刃から破邪の気が吹き上がった。
目覚めた獅子王が、あたりの妖気も邪気もその持ち主が誰であれ、無差別に喰らい始めたのだ。
「ちっがーうっ!俺と天狗さんとはただの知り合い!
そういうお前は何なんだよ一体っ?」
答えは無いのだろうが、状況が今一良く判っていない黒蔵は、結界越しに見える警官たちへも
気を取られながら、生き残るためだけに行動を始めた。
「くっそぉ!!あいつデカ過ぎるっ」
鞘から抜きかけの獅子王を手に、巨大化した暴君から距離をとろうと駆け出す。
その方向は、自分を追う鬼が天狗へその背中を向けるように誘導していた。
しかし、先ほどまで重たい獅子王を抱えて警官から逃げ回っていたため思うようには
距離をとれず、鬼の金棒の届く範囲からは離脱し切れない。
そしてコンクリートの破片で傷ついた耳たぶからは、黒蔵自身の血が滴り落ちている。
その傷は以前に、黒蔵と同じ顔のあの糞ガキ、巴津火が暴君につけた、
ピアスをちぎった時の耳の傷と同じ場所であった。
847
:
天狗
:2012/02/12(日) 21:40:21 ID:EK/9fLvc
>>845
、
>>846
揚々として術をけし掛けた天狗は、思った通りの効果が発揮されなかったことで、
少し不機嫌そうに片眉を上げて向こうを睨んだ。
相手も火を使役する者であるから、ある程度この術が尻すぼみする事は予想してはいたのだが、
やはりそれにしても一切の痛手を与えられなかったのは不満なのだ。
「貴重的だな、よもやこれほどに錬度の高い神性と遭遇できるとは。
上位神か?それとも単にアマツカミの誰かか?どちらにせよ、滅多に見れる物ではない」
しかし、そんな天狗の顔も正体を現した死神を見た時、
まるで綺麗な石やセミの抜け殻などを見つけた子供のように、きらきらと輝き始める。
そこには全く怯えが混じっておらず、むしろこの状況に歓喜しているようでもあった。
「ほうほう、好奇的好奇的。
名前は知らぬがお前程の実力者、次に何を見せてくれるのか胸が躍って仕方がない!」
するりと動き始めた死神を見て、天狗は静かに口角を上げてニヤつく。
今現在、あまりにも不用心で不遜な態度を取っている天狗に、
次の動作に身構える様な素振りは見られなかった。
848
:
七罪者
:2012/02/12(日) 22:56:28 ID:c1.PBF/s
>>846
暴君「テメー見てるとイライラすんだよ!!!俺様の耳を引きちぎったあのガキみたいでよ!!!!」
避けられ、更に八つ当たりに似たような怒りを覚えながら暴君は地面に減り込んだ金棒を横へと薙ぎ払い、黒蔵へ一閃を放とうとする。
暴君「その耳の怪我は俺様への挑戦かぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
力任せの一撃が襲い掛かる……だが、思ったよりスピードは遅いし、先程より威力は弱い。
何故なら獅子王が周りの邪気を吸ってるのに、暴君は気付いてない−−そのため自分の力が弱体化しているのだ。
更にこの一撃を上手く防げば、暴君の胴体に隙ができるはず。
>>847
死神「そうであり違う。僕は違う」
そう言いながらビルの一部に触れると金属部分が溶け、まるで生き物のように動き始める。
死神「僕は《火之迦具土神》の残留思念と《黄泉の禍津》を練り込んで産まれた《火之迦具土神》の偽物」
その溶けた金属を操るのは鍛冶の神としても崇められてる火之迦具土神の神性の力。
死神「偽物だからって………僕を舐めないで」
そう言うと溶けた金属は銀色の奔流となり、まるで巨大な大蛇が口をあけ敵を丸呑みにしようと天狗に襲い掛かる。
849
:
黒蔵
:2012/02/12(日) 23:27:46 ID:3FBgi9l6
>>847-848
「それどう見ても八つ当たりィィィ?!!」
鬼から背を丸めて逃げながら、黒蔵は鞘から獅子王の長い刀身をなんとか引き抜く。
しかし、反撃する前に、逃げるその足元を救うような横なぎの一閃を受けて、投げ出されるように前に倒れた。
「ぐわあぁっ!!」
あとほんの少しで建物に逃げ込めたのに。
獅子王の刀身は黒蔵の手を離れてがらんと地面に転がった。
「!!」
そして、立ちあがろうにも右足首には力が入らないのだ。
上体を捻って反転し、座り込んだままの姿勢で、やけくそになった黒蔵は手にした唯一の武器を振り回す。
(多分死ぬ、きっと死ぬ、ここで俺死ぬ…)
それは、袋に入ったままの獅子王の鞘だった。
恐怖に引きつった表情で泣きながら、黒蔵は袋の口についていた紐を握り、ぶんぶんと振り回す。
その長さは、袋の長さ+紐の長さで2m弱。
どうみても金棒のリーチの方が長いです本当にあ(ry
「もうどうにでもなーれ!!」
振り回して勢いの付いた袋と鞘を、そのまま暴君の額へと投げつけた。
ちなみに袋の中に隠れた鞘そのものは木製だが、その先っちょには金属製の石突が付いていたりする。
そして獅子王の刀身はというと、ぎりぎり持ち主の手の届かないところで
周囲の邪気や妖気を存分に吸い取りまくっていた。
850
:
天狗
:2012/02/12(日) 23:43:50 ID:EK/9fLvc
>>848
、
>>849
「なるほどの、残留物とは言え素材は一級品の神性、通りで侮れん気配を出す訳じゃ
だが、僅かばかりに疑問的。
お前が模造品であろうが転生体であろうがウチは知らぬが、
まるで何がしかの意思を持って、お前が"製造"されたかの様な口ぶりじゃな?」
彼によって鉄骨が物の見事に溶解した様を見て、天狗の死神を見つめる瞳の光りは増す。
しかしその一方、天狗は微かに眉間にしわを寄せ首を傾げた。
本来偶発的に彼が生まれたのなら、大方"混ざり合って"と言葉を選ぶ所なのだが、
敢えて死神は"練り込んで"という、何者かの意思を匂わせる言葉を用いた。
その事から、天狗は彼の言葉の内に何者かの影が見え隠れしたような気がしたのだ。
「くっはっはっは!愚問的、少々お前は先走った自論を持っているようだ。
紛い物が必ずしも劣るとは限らんぞ?拙者がそうであるようにな」
なによりも天狗であるこの天狗は、その為になによりも天狗からは程遠い存在にいる。
なぜなら全ての天狗信仰を継承する天狗など、どの種類の天狗信仰にも該当しないのだから。
「孤高的、模造的、違法的、故に最強!!」
銀の濁流を目の前にして、天狗はそう声高に叫んだ。
しかしそんな天狗の剛毅な叫びも全く意に介さず、鉄は天狗の体を全て飲み込んだ。
「圧倒的!お前の術は確かに我を満足させる事が適う物であった!
だが、吾輩はそれすらも超越する!!
恨むのなら、運命を恨め!!」
天狗の姿が消えてからしばらく静寂が死神のいる空間に広がる。
しかし、その静寂は彼の流した鉄の一部が激しく赤熱した事によって、脆くも崩れ去った。
橙に光り始める鉄の中から、天狗が超高速で飛び出して来たのだ。
天狗はあの時、鉄の濁流に唯呑まれたのではなかった。
むしろ、超高速で前進することによって自身をより流星に近い物に変化させ、
熱を持って鉄を更に溶かしその流れの中を縦断して見せたのだ。
突如出現した天狗はその超高速のまま、片手に先ほどの小刀を握っていた。
そして天狗は勢いをそのままに死神を貫かんと突進をした。
851
:
七罪者
:2012/02/13(月) 00:47:20 ID:c1.PBF/s
>>849
暴君「八つ当たりではない!!!俺様がそう言うなら間違いない!!!!」
そう叫びながら、武器を放した黒蔵を見て獰猛な笑みを浮かべた。
完全な勝利の確信。
暴君は獲物をどう刈り取ろうか…そういう余裕を見せる。
だが
暴君「ガッ…!?」
その油断と一閃からの隙により黒蔵が投げた鞘が暴君の額に当たる。
僅かに後ろに下がり、怯んだ。
刀を拾う余裕を黒蔵に与えてしまうだろう。
>>850
死神「君の質問に答える義理はない。お喋りはここまで……」
その影は…果たして大禍津日神なのか青行燈なのかはたまた別の誰かか天狗にはわからないだろうが…彼は確かに《何者》かに作られた。
死神「…………確かにそうだね。けど君は……なっ!?」
天狗が金属の奔流に飲まれたのを確認し、また悲しそうに見つめるがソレはすぐ驚愕の色に変わる。
流星と化した天狗に対応しようとするが、流星に近い天狗の熱は、死神のイザナミを殺した炎の身体を越えており、ソレは死神の身体を貫いた。
プスプスと嫌な音を奏でながら死神は膝をつく。
死神「……ま…だ……ぁ…ぼくは…まぁ………」
もはや完全に死ねのも時間の問題……
だが……死神の身体から不気味な負の気配と青行燈のような不気味な妖気が沸き上がる。
ソレは死神の《怠惰》
産まれた瞬間に母を焼き殺した火之迦具土神の自分の力を使いたくないという残留思念。
ソレが巨大な胎児の形になり、死神の身体から出て来た。
不気味な産声を上げ、動き始める。まるで母親を求めるように。
だがソレが動く度に周りが燃え始める。
異常に気付きビルから出ようとパニックになってる人々に被害が及ぶのも時間の問題だ。
>>二人
そんな時ビルの下から不思議な気配が発生してるのがわかるだろう。
まるでパニックになってる人間を落ち着かせようとする優しい力が……
852
:
黒蔵
:2012/02/13(月) 18:17:54 ID:3FBgi9l6
>>850-851
袋ごと鞘を投げた後、当たったかどうかを確認するよりも先に、黒蔵はあたりを見回して獅子王を探す。
身体を引きずって獅子王を掴み、立ち上がろうとしてうめき声を上げる。
右足首がありえない方へぐんにゃりと曲がっていた。
これでは一太刀浴びせに行ったところで、あっさり返り討ちに逢って終わる。
なにしろ相手は体躯5mの鬼なのだ。
これではいくら獅子王が破邪の剣でも、有効な攻撃ができるほどの接近は難しい。
(四十萬陀)
何としても生き延びたい。
しかしこの足ではきっと、逃げることも叶わない。
(織理陽狐さん)
泣きべそをかきながら、先ほど投げたのは鞘だった。
今度は獅子王の刀身を大きく振りかぶると、鬼の心臓めがけてはっしと投げつける。
(多分、これじゃ致命傷にもならない)
暴君の前で、黒蔵はあまりにも小さかった。
獅子王は黒蔵にとってあんなにも重かったのに、大きな赤鬼へと飛んでゆく今は酷く頼りない。
(俺はここで殺される)
警備員の血に汚れた左手がポケットを探り、その中の黒い羽を握り締めた。
(蛇神、ごめんなさい)
暴君の金棒と獅子王には、すりこぎと爪楊枝ほどの差がある。
飛来する獅子王を暴君が弾き飛ばせば、黒蔵にとっては何もかもが終わるのだ。
853
:
天狗
:2012/02/13(月) 21:47:47 ID:EK/9fLvc
>>851
,
>>852
手応えを感じた天狗は、滑らかな手つきで刀を体から引き抜いた。
そして懐から小さな絹の布切れを取り出し、刀に突いた血を小慣れた手つきで拭き取る。
もう決着はついたと思ったのだろう、刀は仕舞い天狗は満足げな顔つきで死神を見つめた。
「くっく、愉快的、実に心の躍った戦闘であった!
まあ、高等な神性を手先誤って絶命させてしまったのは、少し悔いが残るがな」
用は済んだ、とばかりに天狗は視線を黒蔵の方へ向ける。
先ほどから驚くばかりの反応を見せる黒蔵だが、いつまでも放置している訳にもいかない。
しかし、そんな暢気な事を考えて死神から意識を外してしまったばかりに、
天狗は彼の大規模な変容を見逃すことになってしまった。
突如死神の体を捨てて出現した膨大な妖気には、天狗も思わず動きから悠然さを失くし、
顔には多量の疑問を浮かべて振り向いた。
「直情的、どこまでも純粋で混ざりけの無い激情・・・
だが、素晴らしい!!やはりここまで貫き通して然るべしだ。
こうまでして童を楽しませるとは、その思いに報いてやる・・・」
だがこの状況を理解してからの天狗の反応は、やはり先程死神に向けていた物と同じであった。
嬉しげに惨状を見つめる天狗は静かに笑い、懐からなにかを取り出そうとする。
「うん? ・・・ほう、酔狂的。
何が来て何をするかは分からんが、手並みを見せてもらおうか」
しかし、ふつふつと沸く何かを地下から感じた天狗は、その手を懐から引き抜く。
とは言っても正体が全く分からない相手に全て、
黒蔵の救済を含めた全てを任せるわけにもいかないので、もちろん天狗は意識の半分を黒蔵に向けていた。
854
:
暴走した七罪者
:2012/02/13(月) 23:13:44 ID:c1.PBF/s
>>853
>>854
暴君「クソがぁぁぁぁぁあ!!!!!舐めやがって!!!!」
油断していたとはいえ、額に当たったダメージは微量のもの。まだまだ自分に有利がある。
刀とはいえ、投げたなら自分のこの金棒ならたたき落とせる。
そう考えなら暴君は刀をたたき落とそうとする……
が…それが油断だ。
暴君「!?」
その刀は周りの妖気や自分の邪気を吸い込んでる。それが力になり金棒を貫いた。
だが軌道がずれたのか心臓からそれている。
だが……
暴君「がぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」
その刀から突き刺さった場所から妖気と邪気が吸われていき、もがき苦しむ。
慌てて刀を抜き、黒蔵から少し離れた位置に投げ捨てる。
血を流し息を荒げ苦しみながら、視線をずらす。
そこに見えたのは《死神》の死体と彼から離脱した《残留思念》。
暴君「…!?死神………テメェェェエ!!!」
仲間の死は避けられないものは七罪者は理解してる。だが割り切れない時もある。
暴君は天狗を睨み、最後の力を振り絞り、両手を地面にやった。
暴君「………もう俺様は長くねえ………だから最後にビルの人間全員とテメーらの命を奪う……」
すると暴君のいる地面から巨大な古びた門が競り上がってく。
そこから無数の妖気と邪気が感じられるだろう。
《羅生門》
その門が一度開けばそこから無数の悪鬼共が溢れ出るだろう。
そうなれば、本格的にこのビルは地獄絵図になる……
死神「――――――――――――」
そして死神は……いや《残留思念》はビルを掴むとそこから炎が広がりビルを燃やそうとするだろう。更にそこから炎と熔けた鉄が無数の触手になり暴れ回り、それは天狗にも襲い掛かる。
だが……不思議と人間達はまだ死んでいない。
それは地面の下から沸き上がる不思議な力の影響だ。
人間に生命力を与え、この場からなんとか逃げ出させようとしてるのだ。
そして、それは人間の身体である黒蔵にも影響を与えるだろう。
そして、その何かは段々黒蔵の足元へと近づいてくる。
すると地面から小さな白い何か……《生玉》が出て来るだろう。
それが結界内の人間に生命力を与え、なんとか生かせようと頑張ってるようだ。
855
:
セツコ
:2012/02/13(月) 23:28:54 ID:c1.PBF/s
間違えた…
>>854
は
>>852
>>853
宛てです
856
:
黒蔵
:2012/02/14(火) 18:44:54 ID:3FBgi9l6
>>853-854
「やった…てないっ!!」
獅子王が金棒の防御を突き抜けて暴君に刺さったのを、祈るように固唾を呑んで見つめたが、
すぐに獅子王が投げ捨てられるのを見て黒蔵の表情は判りやすく落ち込み、慌てて獅子王へと這いよってゆく。
幸い、暴君は黒蔵を追うのではなく仲間の死神に気をとられ、
かつ何かを召喚・出現させていたため、その隙に再び獅子王を掴むことには成功した。
「え?扉だけ?」
そして肩越しに振り向いて、現れた《羅生門》に間抜けた表情で疑問を浮かべた。
それが暴君の苛立ちをさらに増すことになるとは思っても居ない、阿呆面である。
天狗と異なり、今は人の身である黒蔵は気の類には鈍感だ。
それゆえ邪気も妖気も感じ取れず、《羅生門》のヤバさもなんとなくしか理解できていない。
異界への扉について話には聞いたことのあるものの、所詮は下級の蛇妖、
実際にその手の物を目にするのは始めてなのだ。
そして気でアピールしても気づかないニブチンに、《生玉》も業を煮やしたのだろうか。
「痛でっ!!……んん?」
折れた足首に《生玉》がこつんと当たったことで、ようやく黒蔵は《生玉》に気が付いた。
《生玉》の作用だろうか、ずきずきとした足首の痛みはそれがぶつかった直後から、一気に緩んでゆく。
(何だこれ?)
右手の獅子王を杖がわりに、右膝を地に付いたままで立ち上がりかけ黒蔵の左手は《生玉》を拾い上げようとした。
その左手には夜雀の黒い羽をまだ握ったままであり、
拾い上げられれば《生玉》は、羽と、そこに篭った恋する想いとに触れることとなる。
857
:
天狗
:2012/02/15(水) 22:14:54 ID:EK/9fLvc
>>854
,
>>856
巨大な赤子にしがみ付かれ、どんどん炎上していこうとするビルを天狗は見つめる。
その顔には、裏表の一切を感じさせない程のおぞましい怒りが浮かんでいた。
それはここにいる人も妖怪も大差なく、
思わず身を委縮させてしまうほどの膨大な妖気と威圧感と共に発せられる。
「ほうほう、不遜的・・・
よもや俺の所有物を破壊しようなどとは・・・万死に値する!!」
怒りと同調して天狗の体から炎が噴出し、再び天狗は高速で死神に接近する。
唯のた打ち回るだけな触手の茂みを意に介さず力技でかわしていった。
「そして・・・奇妙的、なにかはわからんが大袈裟な物が飛び出しおった」
その中でも、暴君が門を召喚した事を視界の端に捉え、小さく愚痴るように呟く。
すると天狗は突如、自身の両腕に妖気を多量に纏わせて、赤子の腹部辺りを二か所突き刺した。
「黒蔵!!絶対的な命令だ!!
この建物から出たその何かは、もちろんわしの所有物!!決してそれから手を離すな」
腕を突き刺したままの天狗は、黒蔵の方を向かずに唯吠えて命令する。
それがなにかを天狗は一切知らない。しかし、絶大な程に我儘な天狗の欲望は、
その何か分からない物も自分の所有物と勝手に決定していた。
黒蔵に言い残してから天狗は、腕を突き刺したまま背中の黒い羽を広げた。
すると天狗は大きく羽ばたいて、死神と共に上空へと上昇していく。
空に連れ去られた赤ん坊の今現在いる高度は、眼下にあるビル群が霞んで見える程。
天狗は赤ん坊がビルを焼かぬ様、空へと退場させたのだ。
「絶景的、実に心地よい眺めじゃ。しかし、お前よ。
これから捨てられる立場のお前からは、この世界どう見える?」
それから天狗は静かに赤ん坊に囁いてから、赤ん坊に突き刺していた手を離した。
死神は天狗という上空での支えを失くして凶悪な高度から落下するだろう。
そして赤ん坊が落ちるであろう地点は、丁度暴君の召喚した門の真上であった。
858
:
七罪者
:2012/02/16(木) 00:02:36 ID:c1.PBF/s
>>856
>>857
黒蔵に持ち上げられ、生玉は黒蔵の想いを…その手に握る羽の持ち主の想いを読み取っていく。
この羽の持ち主は貴方の安否を心配している…無事であるよう願ってる。
貴方はこの場から生き残りたいか?再び愛する人に会いたいか?
なら望め。そして、求めよ。
そう問うかのように、生玉から黒蔵に生命力を与え、痛みを和らげ、多少の傷を癒し、生き残る為に力を貸そうとする。
……願えば、刀での最大の一撃で振るう為の力を与えてくれるだろう。
暴君「俺様は…酒呑童子の旦那たちの敵を…俺達から全てを奪ったこの《國》から全てを奪う……
その為なら俺様の命くらいやるっ!!!!」
暴君がそう叫ぶ中
《死神》は天狗を焼き殺そうとするも、その意思なき触手は避けられていく。
そして、天狗の両手が突き刺さり、動じてないが、上空へと持ち上げられていく。
そして、天狗の問いを答えることなく……いや、残留思念に触れてる天狗なら想いが読み取れるだろう。
《僕は…この世界が憎い》
《産まれてすぐ、望んでない力で母を殺し、父に憎まれ殺された》
《父は愛してた母を黄泉から取り戻そうとした。それなのに父は醜くなった母を見て拒絶した》
《自分勝手だ。理不尽だ》
《この國は…世界は理不尽ばかりだ》
《僕は…もう何もしたくない…》
《ただ……ただ……》
《大禍津日神が…僕にいった。母を黄泉から連れ出そう。そして父に…》
―――謝ってほしかった――――
そして、死神は落下した。
暴君「……開け!!!《羅生門》!!!!!!!」
一方、羅生門はゆっくり開きそこから無数の悪鬼共が顔を出す。一匹一匹が並の妖怪より強い………
だが………それは完全に開く間もなく。
落下した死神により暴君ごと潰され、それは一気に炎上した。
それと同時に結界は粉々に砕けビルは隔離から解放された。
呆気ない幕切れ。
だが災難は終わらない。
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
859
:
セツコ中
:2012/02/16(木) 01:37:18 ID:c1.PBF/s
>>858
訂正
×
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に向かい襲い掛かろうとし
別の5匹がビルに向かおうとし
最後の5匹が繁華街に出ようとするだろう。
↓
○
最初に開いた時、15匹の悪鬼が潰されるのを逃れ、5匹が黒蔵に襲い掛かろうと近付こうと
別の5匹がビルの中にいる人を狙おうとビルに向かおうと
最後の5匹が敷地ないから殺戮を繰り広げようと繁華街に出ようとするだろう。
860
:
黒蔵
:2012/02/16(木) 20:27:13 ID:3FBgi9l6
>>857-858
「何?」
ただの物と思って何気なく拾い上げた《生玉》は、言葉ではない方法でその意を黒蔵に伝えてきた。
(四十萬陀に会いたい。山に帰りたい)
《生玉》により足首の痛みが薄れ行くのと共に、恋心が、里心が、ひどく掻き立てられる。
それは死の覚悟を、生き延びる意欲へと転じた。
そこに、天狗からの一喝が降って来る。
「いっ?!これ、天狗さんのだったの?」
天狗の威圧感に思わず身を竦めて、反射的にジャケットの内ポケットに羽と《生玉》を押しこんだ貧乏ホストが、
破壊された《羅生門》から吹きあがった炎から、左腕で庇った顔を再び上げたときにはもう、
15匹のうちの5匹の悪鬼が黒蔵に向かって来ていた。
(嫌だ!!!死ぬのは嫌だ!!!)
寄って来る悪鬼たちへ、黒蔵は遮二無二右手の獅子王を振り回す。
死への恐怖と生への執着は、内ポケットの《生玉》にも伝わってゆく。
(絶対に生きて帰る)
太刀筋も何もなったものではないが、それでも獅子王は空を切って低く楽しげに唸り始めていた。
「え?…あ?……おお?」
重たい筈の獅子王を、片手で振っていることに黒蔵が今更気づいたときには、
獅子王の動きに誘われるかのように、折れていたはずの足首で一歩目を踏み出していた。
獅子王の唸りが高まる。それは巨大な猫が満足気に喉を鳴らしているような音だった。
「うわぁぁぁぁいっ??!」
慌てて左手も太刀に添えたが、獅子王は己で望むかのように動き、黒蔵を振り回す。
やがて彼らは悪鬼の間を舞い始めた。かつて織理陽狐が獅子王を扱ってみせたときのような
優雅さは無いものの力強く、その気まぐれな動きは捉え難かった。
一打
右足が強く地を蹴った。
二拍
踏み込んだ左足の沈み込みをバネに、一匹目の鬼へ右下から左上へと斬り上げて、
次の鬼へと跳んでゆく。
獅子頭も囃子も無いが、その足裁きと跳躍は厄を祓い幸を呼び、
祝いの場を寿ぐ獅子舞のそれだった。
861
:
夜行集団
:2012/02/16(木) 21:54:04 ID:EK/9fLvc
>>858
,
>>860
死神を捨てた天狗は堂々と、大きく羽を羽ばたかせながら地面に降下していく。
そして地に降り立った天狗はただじっと死神を見つめて黙っていた。
「・・・ふむ、実に称賛的、死すら超越しようという気概は。
だがな、己からすればその願いは少々お節介、と言えぬ事はないぞ?」
木の高下駄を鳴らしながら、天狗は落下させられた死神に近づき話しかける。
どうやら今の彼は地獄の鬼に関して全く興味を示していないようだ。
「確かにあやつらはお互いを憎み合った、必然的にな。男は女の醜さを憎み、女は男の薄情を憎んだ。
それでお互いが別の世界に腰を据える事になるのも当然じゃ。
だがな、奴らにとってはそれでいいのじゃ。
仮想的にいえば、二人がまたも同じ世を共にすればどうなる?
生の理と死の理が、またも混じりあえばどうなるか、思考せぬ程怠惰でもあるまい?
それに男も、既に女に対する非礼の償いはしておる。
何せ奴は自らの力で生み出した人間達の命を、いつも女に献上するという憂いを追っているのじゃぞ?」
その因果がどこまでの力を有して現在も成立しているかは分からないが、
それでも男は命を女に渡し続けている。
そして女も男を既に許しているのだ。その証拠にそれと同じ量、冥府から再びこの地に命を贈っているのだから。
「無礼的、いつまでも私の前で死んだふりをしておるのだ?
ここはあの何かの力の有効範囲、お前も例外なく死んでおらぬ筈だが?」
天狗はそう言って死神の腹を強く蹴った。
「それと、邪魔的。奴らは冥府に帰しておこうかの」
辺りを見回してから天狗は呟き、またもや右腕に妖気を込めた。
それから近くにあった小石を5個拾い、目線を暴れ回ろうとしている悪鬼たちに向ける。
【天狗礫】
天狗は大きく振りかぶり悪鬼たちへとその小石を投擲する。
膨大な妖気を帯びたその投げ石は本来の石の攻撃力を超えた速度に変化し、
まるで散弾銃のような効果を持って悪鬼たちへと向かっていった。
862
:
七罪者
:2012/02/16(木) 23:26:25 ID:c1.PBF/s
>>860
>>861
天狗の言う通り…まだこの範囲は《生玉》の能力の範囲内だ。
死神「――――――」
《……君の言う通り、僕も暴君もまだ生きてる。けど時間の問題だよ。僕らは生命力でギリギリたもってるだけ、だから生玉が能力をやめれば僕らはすぐ死ぬ》
ピクリとも動かない死神は腹を蹴られるも動きはしないが、念波が送られてくる。
《暴君――牙王丸が最後によんだ鬼達が勝つも負けるも生玉が生命力を送るのもやめれば僕はもうダメ》
羅生門の残骸の下から負の感情の塊である《強欲の大罪》が飛び出しどこかへ飛んでいった。
そして死神の身体からも、負の感情の塊である《怠惰の大罪》が飛び出しどこかへ行った。
死神「――――」
《僕ら七罪者はこの國に…父・イザナギに…復讐するのも目的です。生と死が混じり合い、この世界を混乱させる為に…》
《……父と母が互いを許しあってるなんて……嘘だ…それじゃあ…僕は……僕は…………》
そこから死神はしばらく黙り
死神「――――」
《…………僕らの役目はもう終わりだ。大罪が身体から飛び出した。死んだも同じ》
《速く僕らを殺しな……生命力でも回復仕切れないように消せばいくら生玉でも無理だよ。君ならそれくらいできるはず》
《もう僕は疲れた。何もしたくない……》
《母を呼び父に復讐するのも父に謝罪させるのも大禍津日神に任せるよ…》
《……………》
一方、悪鬼共は…
黒蔵に向かった5匹の内一匹は斬られ上半身が地面に落ちた。
更に切った際に妖気と邪気が吸われていく。
斬られた鬼は反撃もできず動けないが生玉の力で死ぬことはできない…あるいみ死ぬより酷いが…
そして2匹目の鬼は向かって来た黒蔵に警戒しながら、頭を狙おうと右手の鋭い爪を振るおうとする。
残り3匹の鬼は左右に1匹、2匹目の鬼の後ろに1匹と連携して攻撃しようと構える。
ビルに向かった5匹の鬼は天狗の攻撃により行動するもなく消滅した。
それを見た繁華街の5匹の鬼は急いで繁華街に逃げようとする。
だが…ビルの敷地外は生玉の範囲外だ……
更に繁華街は夜行達の縄張り…
はたしてどうなるか…
863
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 00:18:16 ID:3FBgi9l6
>>861-862
鬼の爪を掻い潜るように舞い手は身を沈めて、正面から受け止めようと獅子王を振るう。
右手の爪はがっきと刃を受け止めたが、徐々にその妖力は獅子王に喰われてゆく。
『そこの君、武器を捨てなさい!』
その時声を上げたのは、先ほど黒蔵を見失って戸惑っていた警官の一人。
繁華街は夜行集団だけでなく、人間の縄張りでもあるのだ。
ビルが結界から開放された今、警備員の遺体も壊れたビルも、彼らから見えているようだ。
天狗や七罪者ほどの妖怪ならその存在を人目に映らぬようにできるだろうが、
人の身である黒蔵はこの状況で逃げも隠れも出来ないのだ。
警官の目からみれば、もしかしなくても黒蔵は現行犯なのである。
声を上げた警官は、抜き身の太刀を手にした黒蔵にまっすぐ銃口を向けている。
見えない性質なためか、悪鬼にはノーマークだ。
見えるほうの警官も銃を向けてはいるものの、悪鬼達とその存在に全く動じない同僚とに、
どこか戸惑ったようにその銃口は揺れている。
(あれ、だ)
向けられた銃口に、黒蔵の背筋を恐怖がぞわりと這う。
目の前の鬼の左手も怖いが、向けられた2つの銃口はもっと怖かった。
あれは過去に2度受けた。一度は腹に、一度は背に。
警官に気を取られた黒蔵が、蘇る記憶に硬直したことが、その背後の悪鬼達には付け入る隙となった。
864
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 15:34:31 ID:EK/9fLvc
>>862
「なるほどのぅ、全体的に貴様らの状態は把握した。
貴様らの命運はあのよく分からん玉に左右されているという事じゃな?」
死神の言葉を聞いて天狗は低く唸って納得した。
彼らが今どれだけ衰弱しているのか、それは外から見ても確認できる程。
むしろよくこれで生きていれると驚くくらいであるが、それが生玉の力なのだろう。
「じゃが逆説的に言ってしまえば、お前はあの玉があれば命を繋ぐわけじゃ。
おい!!そこの奇妙的な玉よ!!わしの命令を聞け!!」
天狗は一度死神に向かってにやりと悪辣に笑った後、生玉の方へ振り向き指図をする。
その天狗の態度は願いや嘆願というよりも、拒否権を認めない絶対命令の様相であった。
「この怠惰的な者の命を救え!!貴様ならば生命力を回復させる事も出来よう!!
回復が適わぬのなら、この状態を維持し続けよ!!」
繁華街という広い空間、特にこのあたりの地域ならば天狗の所有物な土地も無く、
天狗にとって助ける必要が無いため、今現在天狗は悪鬼を無視している。
>>863
「おまわりさん、こちらの方が大変だっていう」
視認できる中で、最も不審な黒蔵に拳銃を向ける警官の耳元に、
どこか人を不安にさせる様な奇妙な声色の男の声が囁かれる。
警官はそんな奇妙極まりない声に反応して、背後を思わず振り向くかも知れない。
「ここは俺達が取り持つから、お前らはゆっくり眠っていろ」
もし彼らが後ろを振り向いたのなら、目の前にいるのは肉や皮の無い骸骨。
だが警官達は驚く暇も与えられることなく、その骸骨に息を吹きかけられ、
霊の息を吸ってしまった者達はすぐさまに昏倒するだろう。
「クロロなんとか的な奴だっていう」
前門の虎、後門の狼な黒蔵の眼前に霞のように立っているのは、彼もよく知る人物である。
しかし霊観の無い黒蔵には姿を見る事は出来ないかも知れない。
だが、あのいつも黒蔵を常々おちょくっているあの声だけは、なぜか聞き取れている状況であった。
そして黒蔵が後ろを振り向けば、霊観が無くとも視認できるあの蒼い髪色のイケメンが、
悪鬼たちの前に大きく立ちはだかっているのが見えるだろう。
865
:
七罪者
:2012/02/18(土) 17:34:53 ID:c1.PBF/s
>>863
>>864
黒蔵と対峙してる悪鬼はその右手を防がれ、更に自分の妖気と邪気を吸われていくのに若干動揺している。
だが、黒蔵が後ろの警察に気を取られたのを見てすぐさま持てる力を振り絞り、刀を下へと払い、左手の鋭い爪で黒蔵の腹部を突き刺そうとねらうだろう。
そして、後ろの三匹の鬼は連携を狙い、すぐさま黒蔵を狙おうとするが……
新たに現れた男にそれは防がれた。
真ん中の一匹が雄叫びを上げ、その鬼特有の怪力で雪男に右手で薙ぎ払おうとする。
そして、天狗の答えに応じたのか、生玉は強く光ると、死神の状態を維持し続けだろう。
今は他の人間達や黒蔵に生命力を与えてるが、この戦闘が終れば死神(天狗がいえば暴君も)を集中的に生命力を送り時間は関わるが回復させてくれるだろう。
死神「―――――――」
《………どういうつもりですか?》
天狗のその答えに死神は戸惑いながら念波を送った。
一方、繁華街に潜り込んだ5匹の悪鬼はあの状況をみて、この辺りは強い妖怪達がいると思い、人を襲うのは後にし闇夜に隠れ、状況を見てから人を襲うと少ない知恵をしぼり行動をしている。
866
:
黒蔵
:2012/02/18(土) 18:29:31 ID:3FBgi9l6
>>864-865
警官たちは二人とも骸骨の吐く息に、誰何する間もなく、くたりとその場に膝からくずおれる。
一時的な昏睡に陥ったのだ。
「虚冥さん!!」
聞き知った声を頼りに、見えない相手を探す黒蔵。
獅子王に圧された悪鬼の右手が弱っていたからこそ、そこに生じた油断。
そこを衝いて、悪鬼の左手がその爪で黒蔵の腹を貫いた。
(しまっ…!!)
獅子舞の足裁きが乱れる。
借り物の仕事用ジャケットとシャツは裂かれて血が滴り落ち、内ポケットの《生玉》と羽が、
服の裂け目からこぼれ落ちた。
落ちた《生玉》は、一度地を跳ねて《死神》の元へと転がり、天狗の足元に差し掛かる。
一方、夜雀の羽はふわりと風に乗り、それを追いかけるように黒蔵の右手が伸びる。
左手のみに支えられた獅子王は切っ先を下げてしまい、腹は鬼の左手に貫かれたまま、
焼ける様な痛みと共に生命は流れ出してゆく。
それでも黒蔵は、あの黒い羽だけは、絶対になくしたくはなかった。
「…くっ!」
伸ばした指先が、かろうじて羽を風から奪い返す。
次の瞬間、悪鬼は左手を包む生暖かい肉の収縮と圧迫とを感じることだろう。
黒蔵が痛みに耐えながら総身の力を振り絞り、鬼の首を横薙ぎにしようと、その左手の獅子王を振るうからだ。
(四十萬陀ぁっ!!)
悪鬼を睨むその両眼は、死の影を濃くしつつある表情の中にあって尚、生きる意思に煌いていた。
867
:
夜行集団
:2012/02/18(土) 23:02:23 ID:EK/9fLvc
>>865
、
>>866
「うん、別に君達に恨みはないんだけどね。
一応うちの後輩がお世話になったから、けじめくらいはつけといてもらうよ」
悪鬼を前にしながら飄々と、たじろぐ様子も逆に不遜な様子も見せずに、
ただ氷亜はへらへらと笑って中央の鬼に話しかける。
だがそんな暢気な口調ととは対照的に、悪鬼に対する報復は圧倒的であった。
殴りかかる悪鬼に向かって、氷亜はため息のように息を吐く。
すると鬼はその息がかかった部分、場合によっては全身が強烈な勢いで凍結しだした。
いくら相手が怪力であろうが、自分の体全ての操作権限を失えば意味をなさない。
「愚問的、どうもこうもない。わっちがお前の生を望んだからに決まっておる。
生と死の概念すらも超越できると盲信するその愚かさ、己は痛く気に入ったのだ」
一体何の偶然か、足元に転がって来た玉を拾い死神にかざした。生玉は天狗の望み通りに死神の回復を始める。
その回復のスピードは天狗の妖気の助力がある分、
本来持っている能力を遥かに超えて見る見るうちに死神の傷を治していく。
「当然的に、貴様に同情した訳ではないぞ?本来貴様は死を望んでいたのだからな。
だが貴様は死を選ぶことは許されない。
運が悪かったと思い、せいぜい拙が飽きるまで生き続けよ」
しかし、天狗が興味を示したのは死神だけ。
彼が天狗に暴君の救済を懇願しなければ、当然の如く暴君はそのままのろのろと死んでいくだろう。
868
:
七罪者
:2012/02/18(土) 23:53:08 ID:c1.PBF/s
>>867
>>868
殺った!!
そう黒蔵と対峙した悪鬼は自らの勝利を確信した。
―――いくら相手が厄介とはいえ所詮、人間。身体は脆い―――
だが……暴君と同じ……それは油断だ!!!
!?
―――腕が抜けない?馬鹿な…!?俺の妖気が吸われたとはいえ、ビクともしないっ……!!この人間のどこにそんな力が……!?―――
《悪鬼》は侮っていた……目の前の存在の……
ザシュッ!!………ボトッ
生きようとする命の輝きに!!
そう気付いた時には、悪鬼の頭は地面へと落ちていった。
そして氷亜と対峙した中央の鬼は、動こうとした時に自分の異変に気付いた。
―――身体が動かn……―――
そう気付いた時にはすでに彼は凍り付き、意識は遠退いていた。
そして、二匹の鬼は理解した。自分達がいかにヤバイのを相手してると……
―――どうする?―――
―――俺らのような小鬼じゃ、倒せない。中鬼、大鬼も一緒に現世に来てれば話は別だ。壊れる前に出れたのは俺らだけだ―――
―――他の仲間で逃げたのがいる。ソイツらに合流しよう―――
悪鬼同士しか理解できない言葉で、そう会話すると残った二匹は逃げようとする。
……だが、それを許してくれる程、目の前の雪男は甘くないだろう。
死神「――――――」
《…………ハハハハハハ。君には敵わないよ…力も器も全て……》
《僕達は妖魔より先に貴方に会いたかった……》
諦めたような、悲しんでるような、尊敬してるような、複雑な感情で念波を送る。
身体は修復されていき、動き出すと羅生門の瓦礫を持ち上げ、中からズタボロで原型がギリギリわかるくらいの鬼――牙王丸をとりだした。
死神「――――――」
《お願いします。僕より牙王丸を治してください。彼も國を怨み自分の命を捨てて母を蘇らせ國に復讐を誓った《仲間》なんです。口は悪いし自分勝手だけど……》
《治したら僕らを好きにしていいです。お願いします。貴方の軍門にも下ります》
自らの死を望み、復讐を願うモノ達でもやはり仲間の死は嫌なのだ。例え仲間が自分の死を望んでいても……
自分勝手で我が儘で、自分の命は安くみるのに、仲間の命は重く。なんという我が儘で、罪深い。
はたして目の前の天狗はその願いを聞いてくれるか……
869
:
黒蔵 ミナクチ
:2012/02/19(日) 00:47:31 ID:3FBgi9l6
>>867-868
脱力した悪鬼の左手を体内に残したまま、黒蔵はゆっくりとその場に膝をつく。
左手の獅子王を支えに、俯いたまま長い長い吐息を吐く。
その息の白さに、虚冥だけでなく氷亜もこの場に居ることを知った。
(寒いのは、怪我のせいだけじゃないんだ)
のろのろと頭を巡らせて氷亜を探そうとするも、既に視界は昏くなりつつあり、
人の身の脆さを黒蔵はまざまざと実感した。
この程度の怪我でこれほど急激な生命の減衰を感じることは、妖怪の身体の頃には無かったのだ。
〔なぜ、私を呑まない。許しは与えておいたのに〕
不意に深い声が黒蔵の心に響いた。
閉じていた目を開け、獅子王を置いて震える左手で首にかけた紐を探る。
服の下、胸元に下げられていた小さな翡翠の輪の蛇が、その頭を持ち上げて黒蔵をじっと見つめていた。
(俺が呑みたくないから。蛇神には傍に居て欲しい)
〔苦しむのですよ?〕
(うん)
ミナクチの欠片に答えて、そこで黒蔵の意識は途切れた。
倒れゆく際にその身体から、鬼の左手がずるりと抜ける。
翡翠の蛇は紐から抜け出すと、倒れた黒蔵の上を這い、その腹に開いた穴を覗き込む。
〔黒蔵、お前のその選択で私の賭けは勝ちと決まった〕
《生玉》を持った天狗と《七罪者》に、後の心配が無いことを確かめると
黒蔵の致死の傷を重傷にまで和らげる代償として、翡翠の蛇は長さの半ばから砕け、
蛍火色の光となって虚空へと散っていく。
〔その功の報いに欠片の私がしてやれるのは、その命を繋ぎとめるところまで〕
黒蔵がしっかり握ったままの黒い羽に、消えて行きながら翡翠の蛇は少し笑ったようだった。
〔もうしばらく苦労するでしょうが、腐ることの無いように〕
蛇神の欠片は、この先のことを予想していたのだろうか。
倒れた警官たちと夜行集団へ目礼すると、最後にその頭と尾が燃え尽きるようにして消えた。
870
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 01:05:37 ID:EK/9fLvc
>>868
「当然当然、俺を上回っていく者なぞ存在する筈がないであろう?絶対的にな」
基本的に自分では到底気恥ずかしくて言えないような自画自賛を、
天狗は大笑いしながら臆面も無く言い切った。
そして死神が天狗の前で、同胞の命乞いをしている最中その天狗の目は、
またもきらきらと輝く。
「根本的に、僕はその男に対して興味は微塵も無い。
が、貴様が我が傘下に加わる際更にこのような手土産を献上するという、
貴様の吾輩に対する忠誠心は気に入った!!
貴様にはその忠誠に応じた、童からの偉大な褒美をやろう」
天狗にとっての手土産とは、きっと牙王丸も同時に軍門に下らせることを意味しているのだろう。
そんな彼なりの価値観に死神の願いは響いたのか、
天狗は意気揚々として生玉の力を暴君へも分け与え始めた。
>>869
虚冥や氷亜、そして天狗も含めた夜行集団は失態を晒した、としか言いようが無い。
なぜなら仲間の黒蔵の怪我の回復も満足にできず、
その結果としてミナクチの守護を失う事になったというのに、
その事にすら戦闘に夢中になって気づく事が出来ていなかったのだから。
「ゴメン・・・黒蔵君。弁解の余地も無いよ・・・」
今更過失に気付いた氷亜は顔から笑みを失くし、倒れこんだ黒蔵にとぼとぼと歩み寄る。
黒蔵の隣で彼はしゃがみこみ、冷気を帯びていない深いため息をついた。
それが黒蔵に超常的な力を与えるわけではなくとも、ミナクチのその輪は黒蔵にとって、
少なからずとも精神の支柱となっていた筈なのだ。
自分の愚かさにうなだれる氷亜の背後には、完全に全身を冷凍された鬼達の姿があった。
そして氷となった彼らから、まだ妖気を感じる事が出来るという事は、
氷亜の放った冷気が簡易な捕縛ようの物だという言う事を意味していた。
氷亜は黒蔵に害をなした悪鬼の処分を、どうやら黒蔵に託そうとしているらしい。
871
:
七罪者
:2012/02/19(日) 10:15:37 ID:c1.PBF/s
>>869
>>870
死神「――――――」
《ありがとうございます》
《僕達の力…貴方の為につくしていきます》
天狗の命令により、生玉は牙王丸に生命力を与えていく。
身体が徐々に回復していってるのがわかるだろう。
死神「――――――」
《牙王丸には私がよくいっておきます。天狗さまコレからもよろしくお願いします》
こうして、死にたがりの七罪者の内、《死神》と《暴君》は死ぬことなく天狗の軍門に下り、生玉も天狗の手に渡っていった。
凍り付いた悪鬼達を処分するのも黒蔵と氷亜しだいだ。
余談だが、ビルの中にいた人間たちも無事に逃げていき、ニュースではガス爆発による火災として処理され、最初に亡くなった警備員2人は爆発に巻き込まれたとして処理された。
/これにてイベントは終わりです
/蛇さん、夜行さん一週間お付き合いいただきありがとうございます!
/お疲れ様でした!
872
:
黒蔵
:2012/02/19(日) 16:29:05 ID:3FBgi9l6
>>870-871
「氷亜さん?」
近寄ってきた気配に、黒蔵は目を開けた。
「お店で借りた服、駄目にしちゃった」
死から免れはしたものの、今だ重傷で横たわったままの黒蔵は、浅い呼吸の中で
クラブからの借り物の衣装の件を詫びた。
「お店にも迷惑かけるね」
黒蔵の仕事に穴が開くのだから、その分のしわ寄せは他のメンバーに行くのだろう。
もしかしたら、それだけでは済まないかもしれない。
(虚冥さん、怒るだろうなぁ…)
「あっちは天狗さんが勝ったんだ」
二人の《七罪者》と天狗、《生玉》の様子を見て取った黒蔵は安心した。
凍りついた鬼達からの妖気は相変わらず感じ取れないままであるが、《暴君》が天狗の軍門に下る
ということはその配下の悪鬼達もまた、夜行集団の傘下に加わるのかもしれない。
「……人が来る。氷亜さん、これお店で預かっておいてくれる?」
傍らの獅子王を指して氷亜に託す。これを現場に置いておくわけには行かない。
既に遠くからは、緊急車両のサイレンが聞こえ始めていた。
《生玉》の力でも《七罪者》二人に加え、黒蔵までも回復させるには少しばかり時間が足りないだろう。
「もう行って。氷亜さんまで警察に事情を聞かれることになるのはまずい」
これから人目も増えるだろう。氷亜の容姿はどうしても目立つのだ。
(お店のことだけは、黙っていよう)
この件がガス爆発として処理されることは、この時点での黒蔵はまだ知らない。
人間に何か聞かれたら、ホストクラブについては当たり障りの無い返答で済ませるつもりでいた。
氷亜に後を頼み、喋り疲れた黒蔵は目を瞑る。
このまま人間達に運ばれて、回復すれば色々事情を聞かれることになるだろう。
今回、《生玉》が天狗のものとなったことで、夷磨璃の回復手段としての《生玉》を交換条件にして
巴津火と取引するという手段を、黒蔵は失ったのだった。
873
:
夜行集団
:2012/02/19(日) 19:23:55 ID:EK/9fLvc
>>871
「上々的、忠誠の挨拶にしては面白みが足らんがな。
これより貴様らは常にわしのため、骨を粉にし身を砕き全生命を賭し私に貢献せよ」
最後に高笑いをしたかと思うと天狗は目の前の二人を、
特に暴君に関してはかなりかさばるであろう事も全く意に介さず、
抱きよせて洗濯物を干すかのように天狗の両肩に掛けた。
「ここの後始末もろもろは貴様らに任せたぞ氷亜、虚冥よ。
基本的に僕は後始末を好まない」
そして大きく黒い羽を広げてから、振り返り同胞の二人に命令を下す。
快活にまた一笑いしてから天狗は羽ばたき始め、あっという間に空の中に姿を隠した。
>>872
やはりミナクチのお陰で、黒蔵は今現在急を要する様な容体ではないらしい。
少し安心して息をついた氷亜であったが、黒蔵の弱り切った声で放った言葉に苦笑して首を横に振る。
「それは君が気に負うようなことじゃないよ。
誰がどう言おうと強者が弱者を保護する僕達の掟に、僕達が全く及んでいなかったんだから」
それでも、それ故に黒蔵が今思っているであろう怪訝をせめて払拭するために、
氷亜は優しげに笑い自腹を切る事にした。
そんな時黒蔵は指でどこかを指し示し、氷亜はそれに従って彼の指先にある物を見つめた。
要件を把握した氷亜であったがその時には既に虚冥が、
部下の中でも屈強な霊に命令を下し黒蔵の獅子王の回収を済ませてあった。
「分かった、先輩がいが無くて本当に申し訳ないんだけど、
お言葉に甘えて逃げさせてもらう事にするよ。
出来る限り拘束を早く解けるように働きかけるから、ほんの少しだけ待っててね」
治療を行なえる術師や妖怪は夜行集団にも在籍しているし、
しようと思えば、黒蔵の怪我の治療も不可能ではないのであるがそれ以上に、
ビルの一件が起こる前に黒蔵はあまりにも騒ぎすぎていたため彼も姿を消してしまえば、
余計に黒蔵への懸念が増えてしまう事を恐れ、氷亜は渋々ながらもこの場を後にする。
完全凍結させた悪鬼たちも霊達に回収させ、彼らの取捨選択はまたの機会にする事になった。
874
:
インコレツジ(忌黄烈迅)
:2012/10/04(木) 21:35:23 ID:znuO.6vI
畏れる者は無い。
未だ、ヒトいうものを理解しえない。
食べれば、解かるカな?
一口、女の首を喰らい込んだ。
居てはならぬ。生きてはなら――。
俺様は人間を、シっている...?
記憶にあるのだ。ならば、もっと喰えば思い出すだろうか。
首より下も、噛み砕き咀嚼する
ああ、ここは、生きていけないから、だから人間を止めて、妖怪になろうと――?
875
:
テレビ
:2012/10/04(木) 21:38:43 ID:znuO.6vI
それは、山のふもとで起きた事件。
「人の血だけが落ちていた。防犯カメラには、突然血潮を上げるOL風の女性と、なぎ倒されるかのように倒れた木々が映っていた」
等と警官や報道関係者は語る。遺体は見つかっていない。
山の地滑りや一部崩落かと思われている。
「そういえば、この山は猿が大きめで自生しているそうだね
でも、山から下りてくることは、滅多にないとか」
インタビューに地元の老爺はこう、答えたのだ。
さて、この事件、放置してよいのか?
876
:
七郎
:2012/10/06(土) 22:00:03 ID:???
>>875
木々の間から一匹の小動物が顔を覗かせる。白く胴が長い狐だ。
「十夜……どこ行っちまったんだよ……」
その狐は何やら心配そうな顔をする。どうやら、彼は弟分の人間、十夜を探しているようだ。
「ここいらには入るなってあれほど言ったのによ……」
七郎ももちろん件の事件の事は知っている。そして、この事件の犯人が人間ではなく、自分では適うはずがない存在かもしれないことも当然分かっていた。
だから、焦っていたのだ……
877
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:14:39 ID:5tjm1s6k
町はずれの民家。
切れかけた街灯が点滅するその隣に一軒家はあった。
かつては全ての妖怪を不幸にしようとした組織、
そして現在は、ただ1つの意地の為に3人の子を”幸せ”にするための組織。
新生・紫狂の本拠地であった。
ニュースを見る青い着物の少女、雨邑。
「・・・」
女性の死亡、謎の多すぎる現場。
これは十中八九妖怪の仕業だ。
「どう思うのだ、宛誄?」
問いかけるは赤い着物の少年にして3兄弟の長男、安木。
宛誄と呼ばれた黒い着物の少年はやれやれと肩を竦める。
「妖怪の仕業だろうね、今時こんなに派手に人を襲う奴が居るなんて考えにくいけど」
そんな3兄弟を諌めるように、この中で一人だけ大人びた乙女がピシャリと言った。
「だめだよ、みんな! また首を突っ込もうとしてるでしょ?」
安木が食い下がる。
「いけませんか、入江姉さん」
「いけません! また・・・また誰かが死んじゃうような事になったら・・・!」
「しかし! 己達はこのような妖怪を放っては置けません!!」
「駄目! この妖怪があなた達よりずっと強い奴かもしれないんだよ!? お願い、お願いだから・・・」
「もうどこにも行かないで・・・」
878
:
名無しさん
:2012/10/06(土) 22:16:32 ID:5tjm1s6k
涙目になる入江に安木はたじろぐ。
雨邑、宛誄もこれには首を縦に振らざるを得なかった。
以前、雨邑が殺されたあの頃。
宛誄は復讐鬼と化し、安木は修羅の道を共に歩み・・・。
そんな状況に入江は心が壊れかけた。
今のこの温かい家族を、もう2度と壊したくない。
それが今の紫狂の共通認識だった。
「やれやれ、みんな情けないね。一回死んだくらいでこんなに憶病になるなんてさ」
「・・・居たのですか、波洵姉さん」
「うん、ずっと。空気に変化してたんだよ、気付かなかった?」
そこに現れたのはかつての最悪の妖怪の実の娘にして、その生き写しの姿をした妖怪。
あらゆるものに化ける能力を持った天魔・波洵。
波洵は黒のドレスをはためかせ、ショートカットの髪を撫でる。
「やれやれ仕方がないね。この妖怪の調査、私が行ってあげよう」
「波洵ちゃん」
入江は反論しようとするが、波洵はニヤッと笑う。
「なぁに、心配いらないさ。私は粉々になっても死なないし、何より私が死んでも誰もトチ狂うほど悲しんだりしないだろ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「誰か反論しろよ!!」
波洵、ノリツッコミ。
ぶっちゃけ事実なのが悲しい。
「じゃ、じゃあ波洵ちゃん・・・お願いしていいかな?」
「ふん、まぁ瞬殺してきてやるよ」
「まぁ波洵姉さんより強い妖怪ってのも中々居ないだろうしな・・・」
こうして、この事件の調査。
新生紫狂からは波洵が出ることになった
879
:
山猿青介
:2012/10/08(月) 15:43:11 ID:znuO.6vI
近代においては異常といってよかった。
明治に入ってから、妖怪退治の実力は急速に衰えていった。
人間の神を信仰する社の数が、政治によって激減したからだ
だが、今は近代化された組織として、妖怪退治屋が幅を利かせている。
近代化とは、銃器による退魔や、世界各地に設置した聖的拠点を同時起動する妖気弱体化などである。
とにかく、世界規模であり、科学的なのだ。
お頭のやったことは頭が冷えてなさすぎると言っていい。
何が原因で暴走したかは、よく分かる。
お頭は元々の人間の想念なのだ。それが人の血肉を得て、平然としていていられる筈も無かった。
人間だけは、喰ろうてはならなかった。
880
:
山猿青介・インコレツジ
:2012/10/08(月) 15:44:06 ID:znuO.6vI
2人の猿は、対峙する。未来と、己の疑念を代価に。
「ワからぬ、のだ。俺は、何故。俺様とは、何者であるか」
「それを知るのは、冥途だぜ
この山の危機に、繋がる。それだけは、阻止する」
大規模浄化。それが行われれば、弱小のこの猿山など、もつまい。
青介は右手に握った妖気円剣を振り降ろす。インコレツジの周囲に、今までインコレツジが支配していた、猿の亡霊達が集まった。
「アまい。単純に、1人1人の戦闘に対する適性を顧みれば
お前らは、ただ10、12程度の砲撃で、滅する」
「人間に敵対して殺されるなんざ、ごめんでね
妖怪全員で、アンタ、インコレツジ……元お頭を殺しちまいます、できなくても。
できなくても、結果は一緒だ。お前ら、俺に続けぇええ!」
881
:
さぁ、舞台へ上がるのです
:2012/10/08(月) 15:45:05 ID:znuO.6vI
妖怪同士の戦いは、おおよそそのルーツで決まる妖力か、その者の特異能力の相性で決まる。
単なる打撃能力しか持たない、猿。青介も、数十年修練して手に入れたのが輪の形をした刃を持つ妖気の剣を能力とする以外に、特に何も持たない。
勝負は、一瞬だった。
瞬く間に掃滅され、青介と、青介の背後にいた25匹。それだけが、生き残った。
「お前ら、ここは、俺で食い止める
全員、この山から逃げちまえ。どっか、妖気が食えるところ探して、生き続けろ
お頭ァに勝とうとか
無理だわ」
そして、ここで場面は止まる。
ここに、主役達が集う時まで、場面は止まる。
幕を引かれるまで、いささかの猶予を・・・。
882
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/10(水) 22:50:20 ID:SmXQZqJk
>>881
(……なんだ?縄張り争いか?それにしちゃ、あまりに一方的すぎる……もしかして、あいつが例の事件の犯人か…?)
無残にも散っていった猿達を木々の間からこっそりと見る七郎。
(なんにせよ、関わらない方が良さそうだな。俺一人でどうにかなる相手でもないだろうし……早急に十夜を見つけねぇとな……あいつから十夜を守りながら戦うなんて危険すぎる……)
そう判断した七郎は、その場から立ち去ろうとした。
しかし――
「七郎?」
聞こえてきたのは少年の声。七郎が探していた十夜だ。
「良かった!もう出れないかと思ったよ!」
若干、目に涙を浮かべながら七郎に近づく十夜。
『十夜!?馬鹿っ!今、大声出すな!』
そう言っても、もう遅い。十夜はすでに周囲に聞こえるような声を出してしまった。
「え?ど、どうして?まさか……」
十夜が辺りを見渡そうとする。
883
:
波洵
:2012/10/13(土) 21:24:37 ID:Fk4/3PMc
>>881
>>882
「ふぅん、死屍累々って感じだね」
黒いドレスを揺らし、波洵は悠々と猿の屍が山と積もった舞台に舞出でた。
こめかみに指を当て、瞳を閉じるが。
しばしの後に忌々しそうに舌打ちをする。
「くそっ、やっぱりまだ〝貪欲″は使えないか・・・!」
波洵を天魔足らしめた妖術・貪欲。
周囲の者の魂をスキャンし、その長所たる部分を解析し、その長所を形作る回路に変化することで。
相手の長所、能力をそのまま手に入れるという反則じみた力だった。
これにより波洵は実質最強の妖怪となっていたのだ。
しかしとある一戦にて。
波洵は粉々に砕かれ、敗北した。
再生することはできたものの、波洵はこの貪欲という力を失った。
「忌々しいね、貪欲が使えたらここの状況も一発でわかるのにさ」
貪欲は魂をスキャンする、これを応用すれば相手の心を読むという使い方もできるのだ。
波洵は徹底的に弱体化した自分を恨みながら、猿の死体を蹴飛ばし八ツ当たりをする。
「仕方ない、地道に妖気を探るか・・・。
ん、割とおっきめの妖気が1つと、小さい妖気が1つか・・・小さい妖気?」
波洵はその方向を振り向くと、呑気にも声を上げた少年を目に止めた。
「ちっ、人間のガキか! 妖怪のお友達、もしくは使役者ってところか?
しかし馬鹿が! 人間の臭いを振りまいてそんな大きな声を出したら・・・」
大きな妖気が動くのを波洵は感じ取った。
「ほぅら、バレた」
大きな妖気の方角を睨み、手を刃のような金属に変化させる。
「仕方ない、ついでだ。討伐ついでに護衛もしてやるよ!」
884
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/14(日) 19:01:18 ID:znuO.6vI
>>882
>>883
「援軍、ノツもりか
ハッ、情けのない。青介、キ様……俺サまを倒して、この山ァ護る云ったな?ありゃあ、嘘か」
「嘘だ。もう、守るべきもんが8割型死んだしな
けど、逃げる猿に、正義漢、それと迷子もいる。負けられる道理が無ぇ」
「イうわ。去ね、みすぼらしく死ね
我が名は忌黄烈迅。このヨにテ生きられぬ無念の、総体
死せるべきでなく、生かされることもなかった……お前らのように生まれた時から守られた青猿共には、決して解らぬ、この惨めさは」
「……」
「覚悟セぇ!妖気を出し屍となり、人の世にナ染むこともなかった我らの」
インコレツジの声が、一段階、高く、数秒ごとに高く、甲高くなっていく――
まるで、気の狂った、女のように。
「業深き殺戮、食い散らかしたる怨念をッ」
インコレツジが右腕を振り下ろすと、背中の砲筒と同じものが、空中に四門現れた。
「真情を識りえた、我が『無念』という生命の記憶。身の滅びとともに、理解しろ
そして、我が暴食の妨げなる貴様ら4人、皆喰らいつくして、クれる」
鉄の砲弾。花火やミサイルのように破裂することもなく、ただ産まれ出され、落ちた場所に置き去りにされる鉄球。
それは、インコレツジが抱えた闇をルーツに持つ、妖気の武具だった。
8発。まずはそれだけの数、青介、七郎、十夜、波洵に出鱈目な速さで放たれた。
885
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/14(日) 22:17:20 ID:SmXQZqJk
>>884
「う、うわあああああ!?」
辺りを見渡した十夜の視界に入って来たのはインコレツジが放った鉄球だった。
鉄球は十夜の目の前に迫るが――
『あぶねぇ!!』
白髪の男性――瞬時に人化した七郎により突き飛ばされ、十夜は鉄球から一時だが逃れられた。
『ぐはぁっ!!』
しかし、変わりに十夜の居た位置に来た七郎に鉄球が直撃する。七郎はそのまま吹き飛ばされ、近くの木に激突する。
『いきなり……攻撃かよ……くそ……』
放たれた鉄球は8発。1人に2発ずつだとすると、十夜の分も合わせ残り3発の鉄球が七郎に迫ることになる。
1発でこのダメージ――おそらく骨はいくつか折れているだろう――あと3発も食らえば、ほぼ確実に死ぬと思われる。
『十夜!!逃げろっ!早く山から出るんだ!!』
「で、でも…」
『いいから逃げろ!!』
十夜は七郎のことが心配なようで、すぐに逃げ出さなかった。だが、さすがに怖くなったのか七郎に強く言われた後、十夜は泣きながら逃げ出していく。
>>883
『なぁ、アンタが何者だか知らねぇが頼みがある。』
十夜が逃げ出した直後、七郎は波洵に話しかける。
『さっきの人間の子供が無事に山から出れる位まで、あの猿を移動できないように足止めしてくれ。どのみち戦うつもりなんだろ?』
口元から血を垂らしながら、辛そうな口調で話す。
886
:
波山とか
:2012/10/16(火) 21:57:23 ID:cpTCnr7.
>>884
「ぐぅあ!!」
十夜に気を取られていたのか、突如放たれた砲弾に波洵は対処が遅れた。
1発目、とっさにガードした腕の骨が砕かれ、体に衝撃が走る。
2発目、仰け反った波洵の身体の中心に直撃し、波洵を後ろまで吹き飛ばして木にめり込ませる。
土煙の中、波洵の姿が浮かび上がる。
両の腕はグシャグシャに砕かれ、内臓もやられているようでペッと口に含んだ血を吐きだした。
「くっそが・・・。こんなか弱い女の子に向けてよくもこんな暴力的なことができるね」
>>885
波洵はじっとりと湿った目で七朗を睨む。
「それでも男かよ、こんな女の子に守ってくれだなんて」
しかし波洵は立ち上がる。
変化する波洵・・・〝攻撃を食らう前の自分″へと。
「ま、引き受けたけどさ」
十夜の前に歩み出る波洵。
既に攻撃を受けた傷は跡形もなく、波洵はせせら笑うようにインコレツジを見下す。
「この世に生きることが許されなかった存在だって?
くだらねーな、どいつもこいつも・・・どうしてそんなに自分が生まれた意味に拘るんだ」
波洵は指さし、堂々と宣言する。
「そんなに惨めな存在だったら、今から私に虫けらみたいに殺されても文句は無いよね?」
887
:
インコレツジ(忌黄烈迅)、山猿青介
:2012/10/19(金) 18:04:09 ID:znuO.6vI
>>885
>>886
「惨めという言葉ですら、我を形容するに値せぬ
我は、もはや異常な存在として、ある種、生きること自体が悪で、その生への渇望は・・・憎しみに溢れていた」
「四肢の一つが欠けていたとしよう。それは、生まれが名門であれば、その家の血を忌まれ、それ以上の出世が望めなくなる――【だから私は殺されたのです。生まれて三日のことでした】」
状況の仮定が終わると、子供の声が木霊する。
その辺りに落下したままの鉄球から、声が出ているようだ。
「易を読むことができたとしよう。しかし、その時代の終わりに占いは忌まれた
職につこうにも、村人によって手配所と噂は回り、結果、何も悪事を働かずに政府の獄に入れられた
罪無き汚名を被るまいと――【そう、だから私は自ら死を択び、目玉に橋を突き抜いた】」
今度は声変わりした男の声。
「海は綺麗だった。その島では金が採れたとしよう
その価値を我々は知らなかった。ある日、一人の漁師を保護し、国へ返してやった
すると翌日、大軍が来た――【我々は、税を払っていた国主率いる正規軍に、皆殺しにされた】」
子供、女、男、老人。今度は何百という声色が、きちんと調和をもって、一つの鉄球から流れた。
「そんな我々、一万少しの怨念が
惨めか。虫けらか」
「強者は、今ここで去ね
冥土で、敗れ血潮に塗れる苦しさを知れ
そして、思うとおりに生きられた幸福を、冥土で噛み締めろ
お前の絶望だけが、我々の癒しだ」
それは。きっと、異物の妬みだ、社会秩序に組み込まれなかった者が抱く、社会に融和できた者への、羨望だ。
「お頭ァ、そりゃ、妖怪にもなりゃすあな
けど、お頭。アンタのせいで、ここに転がってる猿の屍は、社会から弾き出されたんだぜ
そこから身を守るには、アンタが死ぬしかない
アンタは過去で、逃げた人間の子供と25匹の猿は・・・これからを社会で生きていくしかない、未来そのものなんだわ」
自分を語り始めてから、獣の本能が徐々に曖昧になっていく
その段階を踏むたびに、近接戦闘能力は低下する。
砲台。インコレツジは、今鉄球へと近づいていて、その戦闘能力は砲台へとシフトしているようだ。
なら、攻略の鍵は、5門による砲撃の突破だろうか?
888
:
七郎
:2012/10/19(金) 20:47:44 ID:SmXQZqJk
>>886
「性別なんざ関係ねぇ…だろ……つーか…それ言ったら俺は小動物だ」
辛そうに息切れしながら話す。
「感謝するぜ。……それにしても便利な能力だな。
攻撃食らった時は俺はもう駄目だと思ったが、アンタが味方なら俺も生きてこの山から出られる…かもな……」
傷が無くなった波洵を見て言う七郎。
同時に、もし波洵が敵だったらヤバかっただろうなと思った。
>>887
「いったい何が起こってんだ……?なんでこんなところにこんなに怨念が……?
考えたって分かることじゃねぇか……それより、十夜が心配だ。あいつは、こういった念とかに人一倍敏感だ……もし、この声が聞こえていたら……」
(ちくしょう……怪我さえなけりゃこの場から逃げて十夜を追いかけられるってのによ……)
今の七郎に出来ることは少ない。僅かな力を振り絞り炎で攻撃するか、ボロボロの身体で逃走を試みるか――
だったら早く敵を倒せるように、炎でサポートをする方を七郎は選ぶだろう。
「やってやるよ!過去だか未来だか知らねぇが、俺は現在(いま)を生きたいんでね!!」
七郎は、両腕に炎を灯し立ち上がる。
889
:
名無しさん
:2012/10/19(金) 21:27:25 ID:jvPZh9Bc
>>887
>>888
「へぇ、小動物か。その割には上手く変化したじゃん。私ほどじゃないけどね。
まぁいいや。私が味方に付いたからには、こんな小物いくら相手にしたって問題ないね!」
波洵はインコレツジに向き直り、さて、と一呼吸おいて語りかける。
「強者? それは少し違うかもね。現に私は負けたことの方が多い。
私は天魔雄神・第六天魔王他化自在天の波洵。誰でもあって誰でもない。
その気になればそのくだらねぇ、無念を背負う死者の誰にでもなれたんだぜ?
まぁ、今は無理だけどさ」
波洵はクツクツクツと笑うと、一呼吸おいて大声で捲し立てる。
せっかく語ることで収まりかけたインコレツジの攻撃本能を挑発する。
「無念? 恨み? アホくさ。生きることが許されなかったから、
今度こそマトモに生きてみたい、とかいうならまだわかるけどさ。
せっかく掴んだ2度目の命を復讐なんかに使うなんて馬鹿みたい!」
波洵の服を突き破り、肩から生えるのは蜘蛛のような、蟹のような。
長く甲殻に覆われた4本の脚。
その4本は波洵の身体を持ち上げ、波洵は高みから見下すようにインコレツジを一瞥し、中指を立てて言い放つ。
「お前等は結局私達にどうして欲しいんだ。どうやれば満足するんだ。
全ての者に理解されたいのか? 生きとし生ける者全てに死んで欲しいのか?
それとも同情して欲しいのか、供養して欲しいのか?
「違うだろバーカ」
「お前らがやりたいのは結局意味の無い八つ当たりだろ、ただ暴れまわって殺しまくりたいんだろ?
そんな下らねーことに付き合ってやるほど、私達生きてる奴等は暇でもお人好しでもないんだよ!」
波洵の両の手は蠍の尾のような鞭となる。
もはやその姿は異形と化した波洵、それでも高らかに宣言する。
「死んでる奴が泣き言ぬかすな、黙って死んでろ!!」
ここまで唯我独尊、同情の欠片も見せないとなるともはや清々しい。
波洵は情け容赦なく、先端に穂先の付いた鞭を伸ばし、インコレツジを貫こうとした。
890
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/20(土) 20:24:46 ID:znuO.6vI
>>888
>>889
インコレツジは、ぼんやりとした頭で、右腕を鞭槍へ伸ばした。
インコレツジは、信じられないという表情で、波洵の穂先が刺さったてのひらを眺める。
「ここでも」
「この時代でさえ」
「我々は否定されることしか
社会の枠組みに組み込まれることさえ
その願望の一つさえ
許されずに、また死を選ばされる」
「虫けら。人と呼ぶべき人間が、人とすら認められぬ我々に
理の外にある、余計な存在だ、と」
「我々が生き、その骨灰が埋まりし場所には、新たな生命が、芽吹けば……いいのにな」
幾千の人間の声が重なった雄叫びを天に上げてから、その歪んでしまった心根を露呈する。
「生きるとは。生きるということは
社会に認められる以外に、もう一つある
我々が、我々が、我々を否定する、ヒテイする、生き物全て――死に絶えた時ぞ」
確信を得た妄執は、既に世界の真理の如く思考を突き動かし
そして眼前にそびえる、敵、敵、敵。
自分を認めてくれなかった敵。
「許さない」
「我々は我々を認めるため、自然と同化して、身(てつ)を放ち人を殺す怨念となる」
怨念自体が自然へ帰ろうとしている。
「我々の往くべきだった生命の大道を築く」
七郎へ、二発。
波洵に、三発。
インコレツジは、鉄鉱石を最終的な魂の形態とする。行き着くのは鉄でも、それを解き放つ爆発力はルーツにない。
修行し身につけた妖術の一つ、砲撃。
唯一苦手とする動作。火薬の用意に、二秒かかった。
その隙を、七郎・波洵が活かしきれるかどうか。
近接戦闘能力が皆無の、大猿(インコレツジ)という鉄(くろがね)の外装を叩き壊せるのか。
一方で、山猿青介は、地面に窪みを掘って隠れていた。
自分はいわば保険である、と青介は考えていた。
あの五発が身の上を通り過ぎたら、この剣でインコレツジの首を撥ね上げる。
再発射までの間隔を、ずっと見てきた青介だから狙える。
だが、波洵を見ていれば、たぶん大丈夫だという気もした。
七郎は、きっと耐え切るとも思った。だから、二人の心配はしない。
大怪我をしても、この妖怪の世を守ってくれると、思いたいから……いや、思わせてしまうだけの強さと覚悟を、二人は示していた。
891
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/20(土) 21:47:59 ID:SmXQZqJk
>>889
『は、はは……想像以上にヤバい奴だったみてぇだな……天魔雄神って、おいおい……
今の俺にとっちゃありがたい存在だけどよ……』
波洵の正体に驚愕する七郎。それと同時に若干の畏怖の念を抱く。
>>890
『また鉄球か!?』
今の七郎には鉄球を避ける体力は無い。つまり、七郎が取る行動は一つ。
『耐えてくれよ、俺の身体!狐炎螺旋!!』
鉄球の進行を止めるべく、掌から螺旋状の炎を放った。
しかし――
『ぐはぁっ!!』
炎と鉄では相性が悪かった。鉄球を止めきれず、再び吹き飛ばされる七郎。
激しく地面に叩きつけられる。そこに2発目の鉄球が迫る。これを食らってしまえば、確実に致命傷になる。
(くっ……ここで終わりなのか……?)
目を瞑る七郎。そこに――
「七郎っ!!憑依だよ!憑依!」
現れたのは十夜だった。
『十夜!?なんで戻って来たんだよ!?』
「話しは後!早く憑依を!!」
『くっ!仕方ねぇ!!』
このままでは、自分だけでなく十夜も危ない。七郎はやむを得ず憑依をすることにした。
そして、辺りが光に包まれた。その後、七郎の居た場所には七郎の姿は無くなり、変わりに髪が白く変化した十夜が立っていた。
「行こうっ!七郎!」
『無茶はするなよ!隙を見て逃げ出すんだ!』
憑依十夜は腕に炎を灯す。まずは目の前の鉄球をどうにかするつもりだ。
「『狐炎鉄槌!!』」
二人の声が重なり、腕の炎が大きくなる。そして、そのまま鉄球を――殴った!
鉄球は勢いを失い、その場に落下する。
892
:
名無しさん
:2012/10/20(土) 22:07:18 ID:Glf.uH9o
>>891
「ふふーん、もっと怖れろ、敬え。この波洵ちゃんを」
得意気に胸を反らせる波洵。
やはり畏れられることは妖怪にとって気分が良いらしい。
>>890
「あーーーーっ、もう! ゴチャゴチャゴチャゴチャと!
何が言いたいのかさっぱりわからねぇ! 私にはもう心を読む力がないんだからもっとわかりやすくしゃべれよ!!」
インコレツジの言い回しは、短気な波洵が理解するには回りくどすぎた。
再び砲門がエイムされてるのをチラリと見据えると、さも愉快そうに笑った。
「そー何度も食らってやるかっての!」
4本の脚が一瞬で縮み、直後に跳躍。
その瞬間は大きな砲門を構えるインコレツジよりも幾分か早かった。
「こんなつまんねー技ばっかりなんて脳がないね! この能無し!!」
跳躍した真下にはインコレツジ。
波洵は長い鞭のような腕をらせん状に融合させ、一本の長い槍を作り出す。
「とっとと死ねっ!!」
風を切る長い突撃槍が今まさにインコレツジを貫かんとした。
あと波洵、護衛の事すっかり忘れてる。
893
:
インコレツジ(忌黄烈迅)・山猿青介
:2012/10/21(日) 13:10:26 ID:znuO.6vI
>>892
>>891
槍は、忌黄烈迅の頭蓋を貫いた。
「自然へ還るとき が 、 来た ようだ」
幾重にも重なった声色で、インコレツジが呟く。
「山猿青介。此処(ここ)という場所は、無念が募りやすい
また我々を見つけたら、今度はちゃんと、二度目の生を送れるように
赤子の猿の時から、躾てやってくれまいか・・・」
山猿青介は微動だにせず、凛然と地面の窪みから立ち上がった。
インコレツジの姿が薄れ、光粉となって消えていく。
鉄屑が辺りに散らばる音と共に、インコレツジは存在を消した。
――
<エピローグ>
――
山猿青介は、十夜と波洵に向き直る。
「すみません。助かりました
ここに無念が募ったら、俺は」
青介は息がつまった。
「俺が、そういう役割の振られた猿の赤子に、ちゃんと、その時その時、とどめ刺します」
それは、社会で生きることが許されなかった者への、焼き直しにほかならない。
しかし、心底にある歪みきった感情を目の当たりにして、生かしておくことも、青介にはできなかった。
――
<イベント終結>
――
「狐さまのほう、怪我平気ですか?
ここの頭として、一応、ちゃんと最後まで義務は果たさないといけないですね
妖気の溜まり場が山と山の間にあって、そこなら怪我も早く癒えると思うので、これから案内しますね」
青介が、義侠染みた声で言った。
「波洵さまは、痛いところ、まあ、無いと思うんですが。ありましたかい?」
894
:
七郎『』&十夜「」
:2012/10/21(日) 21:53:24 ID:SmXQZqJk
>>892
,
>>893
『終わったか……』
「ねぇ、七郎……あの妖怪っていったい……」
『さあな、俺はなんにも聞いちゃいねぇからわかんねぇよ。』
七郎はあえてインコレツジのことを十夜に話さなかった。
その後、静かに憑依を解き、元の狐と黒髪の少年に戻った。そして、青介の方を向き
『礼なら俺には言わなくていい。俺は十夜と自分の身を守る以外、何もしてねぇよ。
って言ってもこんな怪我でしかも十夜にまで助けられて守れたって言えるのかは疑問だけどよ……』
苦笑いしながらそう答える七郎。
『つーか、俺が十夜に礼を言わなくちゃだな。』
「いいよそんなの。それより、七郎が無事で良かったよ……」
十夜は目に涙を浮かべながら嬉しそうにする。
『ああ、それはアイツが居てくれたからだよ。アイツがいなかったら、多分俺は今ごろお陀仏だっただろうよ。』
そう言って七郎は、波洵の方を見る。
「あなたが七郎を助けてくれたんですね!ありがとうございます!」
『俺も言う。マジで助かったぜ。ありがとよ。』
と、十夜は波洵に頭を下げた。
『で、怪我の具合か?まぁ……そうとう酷いな。治せるんだったら早いとこ治しちまいたい。また、あの厄介なのが現れてもおかしくないからな。連れて行ってくれ。』
早いとこ怪我を治したい七郎は、青介に答えた。
『十夜は先に帰ってろ。妖怪にとっちゃ有益な妖気でも、お前みたいな人間には危険だろうからな。』
「う、うん。」
七郎が話した後、十夜が頷く。そして、七郎は再び波洵の方を向く。
『あ、あと、何から何まで世話になっちまうが十夜が山から出るまで護衛頼めるか?いや、もう大丈夫だと思うんだけどよ。念のためな。』
895
:
波洵
:2012/10/23(火) 16:02:24 ID:IsFf8T.o
>>893
長い突撃槍が頭蓋を貫いたのを見届けると、
波洵はそれを勢いよく引き抜き、元の人のような腕に戻した。
「おや、あっけないね。この程度なのかい、お前等の無念とやらは?」
拍子抜けしたようにせせら笑う波洵。
最後まで欠片も同情はしない、代わりに完全に拒絶もしない。
彼女はもっと悪逆で、エゴイスティックな精神によって産み落とされたから・・・。
「私に踏み潰される程度の無念だったらどーってことは無いから、
次は綺麗さっぱり忘れて生まれて来いよ。どーせ次があっても今のままじゃ大したことはできないぜ?」
波洵は消えゆく光の粒子に、満面の笑みで中指を立てた。
――
しばしの後、あくび半分に青助の訴えを聞く波洵。
どこかうんざりしたような顔で言い捨てる。
「あの程度の妖怪で大袈裟だっつーの。
未練だのなんだの知らないけど、間引きだとかそんなことしなくても良いだろうが。
・・・またあーいうくだらねーのが生まれても、一応見届けてやれよ。
成長して、生き抜いて、それでもあんなロクデナシになったなら、私に知らせなよ。また踏み潰してやるからさ」
最後に波洵はニヤッと笑った。
――
お礼を言う七郎に波洵は少し頬を赤くして、胸を反らせる。
「そーだろ、助かっただろー。
もっと褒めろ、讃えろ、敬え、この波洵ちゃんを」
青助の提案に波洵は即答する。
「いらねーよ、そんなもん。
あんなくだらねー奴相手に怪我するわけないだろ?」
空元気である。
波洵の変化による治癒は、怪我のダメージの先延ばしに他ならない。
消耗した分はじっくり時間をかけて回復するしかないのだ。
「おっけー、また任されたぜ。それじゃいくぞおガキ様」
十夜の護衛を快諾する波洵。
大変不安の残る護衛である。
こうして万から成る一匹の妖怪の呼んだ騒動は終わりを告げた。
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