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866黒蔵:2012/02/18(土) 18:29:31 ID:3FBgi9l6
>>864-865
警官たちは二人とも骸骨の吐く息に、誰何する間もなく、くたりとその場に膝からくずおれる。
一時的な昏睡に陥ったのだ。

「虚冥さん!!」

聞き知った声を頼りに、見えない相手を探す黒蔵。
獅子王に圧された悪鬼の右手が弱っていたからこそ、そこに生じた油断。
そこを衝いて、悪鬼の左手がその爪で黒蔵の腹を貫いた。

(しまっ…!!)

獅子舞の足裁きが乱れる。
借り物の仕事用ジャケットとシャツは裂かれて血が滴り落ち、内ポケットの《生玉》と羽が、
服の裂け目からこぼれ落ちた。

落ちた《生玉》は、一度地を跳ねて《死神》の元へと転がり、天狗の足元に差し掛かる。
一方、夜雀の羽はふわりと風に乗り、それを追いかけるように黒蔵の右手が伸びる。
左手のみに支えられた獅子王は切っ先を下げてしまい、腹は鬼の左手に貫かれたまま、
焼ける様な痛みと共に生命は流れ出してゆく。
それでも黒蔵は、あの黒い羽だけは、絶対になくしたくはなかった。

「…くっ!」

伸ばした指先が、かろうじて羽を風から奪い返す。
次の瞬間、悪鬼は左手を包む生暖かい肉の収縮と圧迫とを感じることだろう。
黒蔵が痛みに耐えながら総身の力を振り絞り、鬼の首を横薙ぎにしようと、その左手の獅子王を振るうからだ。

(四十萬陀ぁっ!!)

悪鬼を睨むその両眼は、死の影を濃くしつつある表情の中にあって尚、生きる意思に煌いていた。


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