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母の飼い主 1

1悦司:2013/10/10(木) 23:46:26
「じゃあ、そろそろ行くから」
 そう母に告げて、僕はボストンバッグを抱えた。
 母は玄関まで見送りに出た。もともと寂しげな面立ちなのだが、その日の母はいつもよ
り気持ちが沈んでいるようで、内心の陰りが表情にあらわれていた。線の細い身体が普段
にもまして細く見えた。
「気をつけてね。何度も言うけれど、ひとり暮らしだからといって、不規則な生活をした
ら駄目。食事だけはきちんと取って」
「わかってるよ」と僕は言った。「母さんだって、ひとり暮らしは初めてだろう? 息子
としては心配で、心配で。食事だけはきちんと食べなよ」
 わざと冗談めかしたような口調で言ったのだが、あいにくと母はジョークの分かる性格
ではない。ぷいっと横を向いて、「あなたといっしょにしないでちょうだい」と怒った声で答えた。
 やれやれ。
「じゃあ、行くから。ゴールデンウィークには帰れたら帰るよ」
「行ってらっしゃい…」
 玄関を出るとき、ふりかえると、母が潤んだ目で僕を見つめていた。

 僕が生まれ育ったわが家を出ることになったのは、大学に合格したからだ。
 東京にあるその大学に通うため、僕は人生初のひとり暮らしをすることになった――同時に、母も。
 僕の父は僕が中学生のとき、心臓の病で亡くなった。以来、僕と母はふたりだけで暮らしてきた。
 幸いなことに、わが家はそう貧しいほうではなかった。資産家の息子であり、開業医でもあった父は、相当の財産を僕たち母子に遺してくれた。
元来、着物好きな母は、父の没後、週に一度カルチャースクールで着付けの先生をするようになったが、それだって生活上の必要に迫られてというよりは、母の個人的な気分転換という意味合いのほうが強かったはずだ。

 そんなわけで、父を失ってからも、僕が学校から帰ると、家にはいつも母がいた。もちろん、父の死は僕にとって大きな衝撃だったが、その後の生活において、さほどまでの寂しさを味わった覚えがないのは、母の存在が大きい。

 もっとも、母にしてみれば、事情はまったく異なっていたにちがいない。
だいたい母という人は、箱入り娘のお嬢さんがそのまま妻になり、母になったというような女性で、世間の荒波に揉まれたことといえば、父の死が最初の経験であったように思われる。もちろん、これは一般の基準からしても大変な出来事であっただろう。なにしろ、まだ三十半ばにして、母は未亡人になってしまったのだから。
いくつになっても少女のようなところを残している母を、それゆえに父は深く愛していたのだと思う。母にしても、一途に父を愛し、心底頼りきっていたから、突然の死に激しいショックを受けた。もともと寂しげな顔立ちの人が、以来、いっそう寂しげに見えるようになった――と、僕はある親戚に聞かされたことがある。

 ところで、母の容貌についてもう少し書くと――なにぶん身内のことで言いにくいのだが――古典的な和風美人という形容がぴったりくる。そのため、再婚話もずいぶんあったらしい。余計なこぶ(もちろん僕のことである)がくっついていることを考慮すれば、それなりに凄いことだと思う。
 その再婚話のいずれも母は断った。父のことを忘れられなかったからだろう。それに、僕というひとり息子の存在もあった。母は亡くした夫のぶんまで、僕に愛情を注いできたのだと思う。
だからこそ、大学合格を機に上京することが決まったとき、僕の胸にあったのは、喜びの感情ばかりではなかった。
ひとりになった母がどんなに寂しい想いをするだろう――と、そのことが気がかりだったのである。

2母の飼い主 2:2013/10/11(金) 02:06:19

 東京での新生活が始まった。

 最初のうち、母からは三日おきくらいに電話があった。
「ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ」
「どうせスーパーで買ったお惣菜とか、コンビニの弁当ばかりなんでしょう」
「夜はね。昼は学食か、牛丼屋が多いな。男の学生なんてそんなものだよ」
「野菜も食べなくちゃ駄目。せめて野菜ジュースくらいは買って毎日飲みなさい」
 僕は僕で、家にひとりきりでいる母が寂しい想いをしていないか気がかりだった。電話がかかってきたときは、近況をあれこれ尋ねたりした。もっとも、母は人ごみが嫌いな女で、したがって外を出歩くこともあまりなく、世間一般の女性と比べて変化の少ない日常を送っていたから、これといった話の種があることは少なかった。
 だが、ある日、母が電話口で「きょうはひさしぶりにおどろくようなことがあったわ」と言った。さも、大ニュースがあるというふうな口調で。
「何があったの?」
「きょうはカルチャースクールがある日でしょ(前回書いたように母は着付けの先生をしていた)。それで駅前の通りを歩いていたら、洋治さんにばったり会ったのよ」


 洋治さんというのは、亡くなった父の弟である。ということはつまり、僕にとっては叔父、母にとっては義弟にあたる人である。
 この洋治さん、親戚のあいだでは評判がよくなかった。
 子どもの頃から素行がわるく、警察のやっかいになったこともある不良少年だった。資産家である父親のコネで、どうにかそこそこの大学へすべりこんだが、二年で中退。そうなると、両親もすっかり愛想を尽かして、親子の縁を切ってしまったらしい。
 以後も洋治さんはあいかわらずフラフラとした生活を送り、時には働くこともあったが、稼いだ金はあっという間にギャンブルか女遊びにつぎこんでしまう。いよいよ生活に困ると、兄、すなわち僕の父のもとへやってきて、金を無心した。

 父は子どもの頃から優等生タイプで、したがって、遊び人タイプの洋治さんとは根本的に反りが合わなかったらしい。とはいえ、なにぶん根がお人好しなので、洋治さんが無心にくるたび、渋い顔で説教をすることはするが、最後にはいつも金をくれてやった。洋治さんもそのときばかりは神妙な顔をしているのだが、しばらくたつと、またフラリと金をねだりにやってくるのだった。
『まったくあいつには迷惑ばかりかけられる』と父はよく嘆いたものである。
『ほんとうね』と夫の言うことなら何でも正しいと信じ切っていた母は、このときも深々とうなずくのだった。『もう、いい歳なのに困った人。同じ兄弟なのに、あなたとはまるで性格がちがっているのね』

 その頃の僕からすると、洋治さんは「困った人」というよりも、どこか「怖い人」だった。長髪の髪を茶色に染めたヤンキー風の外見で、体つきもガッチリしているし、服からはいつも酒と煙草の匂いがした。
 といって、べつだん洋治さんに怖い目に遭わされたという覚えはない。むしろ、時たま現れる洋治さんは、僕を見つけると、『ちょっと見ないうちに、また大きなくなったな』とか、『勉強がよく出来るらしいじゃないか。兄貴に似たんだな』とか、気軽な口調で叔父らしい言葉をかけるのだった。
 それでも――僕はこの人が何となく怖かったのである。

3母の飼い主 3:2013/10/11(金) 02:06:54

「洋治さんと会ったのは、お父さんのお葬式以来ね。長かった髪を短くしていたから、最初は誰だか分からなかったわ」と母は言った。
「あの人、いま何してるの?」
「なんでも、隣町でお店を経営しているらしいの。カウンターでお酒を飲む店……何と言うのだったかしら?」
「バー」
「そう、バーね」
「よく、店を開くお金があったね」いつも素寒貧だったくせに、と心の中で僕は付け加えた。
「なんだか、雰囲気がかわって、昔よりも落ち着いていたわよ。『お義姉さんにはあれだけお世話になりながら、すっかりご無沙汰してしまって…』なんて、ずいぶん恐縮していたわ」と母は言った。「もちろん、バーなんて商売は感心できないけど…」
 お嬢さん育ちである母は、水商売=感心できない商売という、抜きがたい偏見をもっていた。それでも、
「洋治さんは洋治さんなりに頑張っているみたいね。見直しちゃったわ」
 と言ったところをみると、その日再会した義弟の態度がよほどお気に召したらしかった。
「そのうち、店にも遊びに来てくださいと言われちゃった」
「行くの?」と僕はなぜか胸騒ぎを感じながら訊いた。
「行かないわよ。わたし、バーなんて嫌いだもの」と母は笑った。


 僕の大学生活は極めて順調に進んだ。
 同じ学部に仲良しの友だちができたし、勧誘されて入ったボランティア・サークルのメンバーともすぐに親しくなった。小遣い稼ぎにマクドナルドで人生初のアルバイトを始め、こちらのほうでも人間関係の輪が広がった。
 肝心の学業はといえば、こちらはそう楽しいというわけにはいかなかったが、それでも父譲りのまじめな性格なので、サボることなく授業に出つづけた。
 そんなわけで、僕は毎日のように友達と遊び、バイトに励み、ボランティア活動に顔を出し、コンパで酒を飲み、あくびをしながらレポートを書いて、時を過ごした。

 そのあいだにも変化はひっそりと訪れていた。
 最初は三日に一度だった母からの電話。
 それが徐々に間隔があいて、一週間に一度、やがては二週間に一度になっていったのである。
 母もようやくひとりの生活に慣れてきたのだろう――と、毎日楽しく過ごしていた僕は、都合よくそう解釈した。その頃になると、電話での会話自体、以前に比べてあっさりしたものにかわっていた。少し前までの母は、毎度のように「今度はいつこちらに帰ってくるの?」としつこく訊いてきたものだ。けれども、いつしか母はそんなことを言わなくなり、「元気にしているのなら、それでいいの。じゃあね」とごく短い時間で通話を打ち切るようにさえなっていた。

 ――今にして思う。あのとき、母の態度の微妙な変化にもっと注意をはらっていたなら、未来は別のものになっていたかもしれないと――。

 だが、当時の僕はそんなことにまるで気づいていなかった。

4名無しさん:2013/10/11(金) 04:17:28
母の人となりが、導入でしっかりと書き込まれているのが良いですね。
期待しています、頑張ってください。

5母の飼い主 4:2013/10/11(金) 17:55:13

 バイトやサークル活動で忙しく日々を送っていた僕がはじめて帰省したのは、その年の9月のことだった。

「お帰りなさい」
 ひさしぶりにわが家のドアを開けると、以前と同じように、母が笑顔で出迎えてくれた。
「思ったよりも元気そうね。安心したわ」
「まあね」
 と適当な返事をしながらも、僕はひさしぶりに見る母の姿に、何とはなしの違和感を覚えていた。しばらくして、その正体に気づいた。
「ひょっとしたら母さん、すこし太ったんじゃない?」
 そうなのだ。母は昔から痩せ型で、肩から腰にかけての線など頼りないほどだった(それゆえ、着物を着ると、日本画の美人のような趣があった)。けれども、このとき、半年ぶりに目にした母は、以前よりもふくよかになったように見えた。心なしか、肌の色艶もよくなったようだ。
「あら、やっぱり分かる?」
 母は両手で頬をおさえて、すこし羞ずかしそうな顔をした。
「このところ、食べすぎたのかしら。体重が増えちゃって、服のウエストがきつくなってしまったの」
「いいんじゃない? 母さん、痩せすぎだったから、多少太ったくらいでちょうどいいと思うよ」
 そう言いつつも、ふっくらと女性的な円みを帯び、肌が艶々とかがやいているような母を見ると、僕は何となく息苦しいような気持ちになった。
「まず荷物を部屋に置いてきて。それからお風呂へ入っていらっしゃい」
 そんな僕の戸惑いにまったく気づいたようすもなく、母は楽しげな口調でそう言った。

 その日の夕食の献立は、肉豆腐、炊き込みご飯、そしてハンバーグだった。すべて僕の好物である。
 居間のテーブルで母と差し向かいに食事をしていると、妙に懐かしい気がした。その年の春までは、毎日朝晩、こうしてふたりで食べていたのだった。
 大学生活で自由を謳歌している僕だったけれど、こうして懐かしい食卓で母とふたり、ゆったりとした時間をすごしていると、以前の暮らしが恋しいような気持ちになった。
「なあに、へんな顔をして」
 母が怪訝な表情をした。
「へんな顔ってどんな顔さ?」
「何だか気の抜けたような感じで、にやにやしていたわよ」
「ちょっと、考えごとをしてたんだ」
「ずいぶん楽しい考えごとだったみたいね」
 冗談めかした口調で言って、母は洗い物をするために席を立った。
「そういえば――」と僕は話題をかえた。「あれから洋治さんには会った?」
 母は台所で洗い物をしたまま、ふりかえらずに「え? 会ってないわよ」と答えた。
「洋治さんが住んでいるのは隣の××町だし、街で偶然ばったりなんて機会もそうそうないわ。どうしてそんなことを訊くの?」
「いや、べつに深い意味はないけど」
 へんだな。
 僕は漠然とそう感じた。四月に電話したときの母は、洋治さんに再会したことをけっこう興奮したようすで話していたのに、きょうはやけにそっけなかった。
 もっとも、そこまでの違和感を覚えたわけでもない。その証拠に、居間でくつろぎながらテレビを眺めてうち、僕はそのことをすっかり忘れてしまった。

6母の飼い主 5:2013/10/11(金) 17:59:23

 帰省していた間――それは三日間という短い期間だったが――には、ほかにもいくつか妙なことがあった。

 到着した日の翌日、僕は地元の友だちとひさしぶりに会った。昼をすぎてから家へ帰ると、母は買い物にでも出かけたのか、留守だった。
 居間でごろごろとテレビを眺めていると、やがて腹がすいてきた。
 ラーメンでもつくろう。
 そう思って台所をあさっていたら、戸棚にふしぎなものを見つけた。

 陶器製の灰皿だ。

 どうしてこんなものがあるのだろう――。
 僕は首をひねった。死んだ父は喫煙者ではなかったから、これまでにわが家で灰皿を見た覚えはなかった。
 もしや、母が煙草を吸うようになったのか――とはまったく考えなかった。お嬢様育ちの母はいろいろと偏見の多い女性なのだが、そのうちのひとつに「煙草を吸う人間=ろくな奴ではない」というものがあった。
『たとえどんなにお金持ちでも、どんなに顔がよくても、わたしは煙草を吸う男性を絶対好きになれないわ』
 いつだったか、そう言っていたことがある。それほど喫煙者に嫌悪感をもっている母が、四十近くになって今さら煙草をたしなむはずもなかった。
となると、これはお客用に用意してあるものにちがいない。

 そのとき――
 ふと僕の頭をかすめたのは叔父の顔だった。
 父が健在だった頃、たびたび金の無心に訪れてきた洋治さん。
 その服にはいつもアルコールと煙草の香りが染み付いていた――。

 いったい何を考えているんだろう。僕はいささか戸惑いながら、脳裏にうかべた想像を振りはらった。
 洋治さんがこの家に来るはずないじゃないか。
 だいいち、母は四月以来会っていないと言っていた。
 ならば、そうなのだろう。母が嘘をつかねばならない理由など、どこにもないのだから。

 灰皿の一件はやはり気になったので、夕方戻ってきた母に訊いてみた。
 母はきょとんとした表情で、
「ああ、それはね。ボランティア関係で知り合いになった障害者の方が作った灰皿なの。もちろん、うちに煙草を吸う人はいないんだけど…、お付き合いで買うことにしたのよ」
 と答えた。
「え、母さんもボランティア活動を始めたの?」
「ちょっとね…。あなたがいなくなってから、わたしも自分なりに人付き合いの幅を広げてみようと思って、市民ボランティアに参加するようになったの。ずっとひとりで家にいると、やっぱり寂しいから」
 僕の知る母といえば、家族に対してはごく愛情深いものの、どちらかといえば引っ込み思案なほうで、社交性に富むタイプではなかったから、この変化には驚かされた。
 それはさておき、灰皿の件については一応真相がわかった。だが、心の片隅には、どこかしら腑に落ちないものが残った。

7母の飼い主 6:2013/10/11(金) 18:05:38

 最後に妙な出来事があったのは、僕が東京へ戻る日の、前日の晩だった。

 明日からはまた母と離ればなれの生活だ。僕はそのことを思って、すこしばかり感傷的な気持ちだったのだが、母はといえば、どこかようすがおかしかった。心ここにあらずというのだろうか。夕食を食べながら僕と話しているときも、何か別のことに気を取られているようで、会話がうまく噛み合わなかった。
 そして夜十時をすぎたころ、突然、母の携帯が鳴った。母はあわてたようすで、携帯を手に取った。
 なんだろう、こんな時間に。
 僕は思わず聞き耳を立てたが、母は足早に別室へ行き、そこで電話を取ったので、会話の中身を聞き取ることはできなかった。

 やがて、母が戻ってきた。いくぶん沈んだような顔色で、すまなさそうにこう言った。
「ごめんなさい。ちょっと今から外へ出てくるわ」
 僕はおどろいた。
「もう十時すぎだよ。こんな時間に何の用事なの?」
「あのね、ボランティアでお友だちになった方――もう八十すぎのお婆さんなんだけど――が、突然具合わるくなったっていうの。それで、申し訳ないけど家に来てもらえないかって。その方、ひとり暮らしで、頼れる身寄りもいないの」
「けど、母さんはヘルパーでも看護師でもないじゃん。もっと専門的な人に来てもらったほうがいいんじゃないの?」
「そうなんだけど…。でも、わたしも気になるから、ようすを見に行ってくるわ」
「なら――せめて送っていくよ。こんな夜更けにひとりで行くのは危ないよ」
「ありがとう…。でも、だいじょうぶ。お婆さんの家はすぐそこだから。もしかして帰りは遅くなるかもしれないけど、あなたは気にせずに寝ていてちょうだい」
 それからすぐ、母はあわてたように出ていった。
 僕は居間で雑誌を読みながら、母の帰りを待った。

 一時間がたち、二時間がたった。
 もう午前零時をすぎて、日付はかわっている。
 母はまだ戻ってこない。
 まったく非常識な婆さんだ。
 僕は憤慨した。母も母である。お人好しもいいかげんにしたほうがいい――。

 母を待っているあいだに、僕はいつしか眠りに落ちていた。
 目を醒ましたのは、玄関のほうで扉の開く音がしたからだ。
 時計を見ると、時刻は深夜二時をすぎていた。
 僕は寝ぼけまなこで、ふらふらと玄関まで歩いた。
 母がいた。あらわれた僕を見て、なぜだかドギマギしたような顔をした。
「起こしちゃった? ごめんね、こんな遅くになっちゃって」
「いや、それは…いいんだけど」
 僕はうまくしゃべることができなかった。
 そのとき、目の前にいた母は、僕の知っている普段の母ではなかったのだ。

 母の目は潤みきっていた。最初、泣いているのかと思ったくらいだった。まるで激しい運動をした直後のように、その頬から首にかけての肌は紅潮していた。そして、匂うような色気が少しはだけた襟元から漂っていた。

 僕は思わず目を逸らした。見てはいけないものを見てしまったような気がした。
 いったい何があったんだろう――?
 しかし、問おうとする言葉はかたちにならなかった。
「もう…休んだほうがいいよ」
 やっとのことでそれだけ言った。母は弱々しい微笑をうかべて、「ありがとう。そうするわね」と言った。それから玄関に上がろうとして、ふらり、と崩折れた。
 僕は咄嗟に母の身体を支えた。そのために右手が母の乳房にふれてしまった。それは溶けてしまいそうなほどやわらかく、服ごしにでもわかるほど熱をもっていた。
「あ、ごめん」
 母はあわてて身を離した。
 僕は何も言えなかった。
 胸だけが痛いくらいに高鳴っていた。

8母の飼い主 7:2013/10/11(金) 22:56:24

 さて、翌朝のことである。

 眠れない夜をすごした僕が、ベッドから出て台所へいくと、そこではエプロンをつけた母があわただしく朝食をつくっていた。まったくいつもどおりの光景である。
「おはよう」と母はやさしい口調で言った。「昨日はごめんね。せっかく、こっちにいる最後の晩だったのに…」
「いいよ、べつに」
 僕は短くこたえて、テーブルの椅子に座り、新聞を読むふりをした。頭の中では、前夜の出来事がちらついていた。
 
 客観的に見て、母はうつくしい女性だと思う。
 切れの深い大きな目、すっきりした鼻、形のよい唇、さらりとした長い黒髪――。母が「美人」であることは、僕にとってひそかな自慢の種だった。
 とはいえ、「美人」とは思っても、母がひとりの「女」であるという、考えてみれば当然の事実を、僕は今まで認識したことはなかった。昨夜、玄関口に立った母のすがたを見るまでは。
 あのとき、母は高熱で火照ったような顔をしていた。それがいかにも妖しかった。凄艶という形容がぴったりくるほどに。
 しかし、今こうして朝の光に包まれ、いつもと何ら変わりのない母を見ていると、昨夜のことは悪い夢でも見たような気がしてくる――。


 朝食を食べおわり、支度もすませて、いざ東京へ旅立つ頃になると、僕は前夜の出来事を単なる錯覚か、気のせいであると片付けたい気分になっていた。

「じゃあ、気をつけてね。今度はいつ帰ってこられるの?」
「わからないけど、年末にはもどるよ」
「そう…。ところで、腕時計はどうしたの?」
「ああ、いけね。たぶん部屋に置きっぱなしだわ」
「仕方のない子ねえ。待ってて。探してくるから」

 母はわざとらしいため息をつくと、僕の部屋へ腕時計を探しにいった。
 僕は玄関に腰を下ろして、母を待った。
 そのときだ。
 足元の床に、何か落ちているのが目にとまった。

 拾い上げてみると、それはマッチ箱だった。
 表面に「バー『黒鴉』」と印字されている。
 僕は金槌で頭を殴られたようなショックを受けた。

 母が戻ってくる足音がした。僕はあわててマッチ箱をズボンのポケットに仕舞いこんだ――。


 東京行きの新幹線に乗りながら、僕は何度となくそのマッチ箱を眺めた。
 この『黒鴉』という店は――洋治さんが経営しているというバーだ。
 僕はそう確信していた。その証拠に、箱に記された住所は××町になっている。

 問題は――このマッチ箱がわが家の床に落ちていたということだ。
 落とした人間は母のほかに考えられない。おそらくは昨晩、母が玄関から上がろうとしてふらついたときに、どこからかこぼれ落ちたのだと思う。
 仮にそうだとしたら、母は昨夜あれほど遅い時刻に『黒鴉』へ行ったことになる。
 なぜ?
 昨日の夜十時ごろ、突然母の携帯にかかってきた電話――あれも洋治さんからだったのだろうか?

 分からないことはいくつもある。
 けれど、分かってきたこともある。

 洋治さんには四月以来会っていないという母の言葉。
 あれは――嘘だ。
 市民ボランティア云々の話や、そこで知り合った人の話も、今となっては怪しく思える。

 どうやら母に嘘をつかれたらしいという事実はもちろんショックだったが、それ以上に母と洋治さんの関係が気になっていた。

 台所の戸棚にあった灰皿のことを思い出す。
 熱に浮かされたような昨夜の母を思い出す。
 厭な想像が膨らんでいく。

 ――真実をたしかめたい。
 でも、どうしたらそれが出来るだろう?

9名無しさん:2013/10/11(金) 23:22:50
むう。なかなか緊迫感のある文章ですね。どきどき。

10名無しさん:2013/10/12(土) 05:52:17
続きを是非お願いします。

11名無しさん:2013/10/12(土) 22:21:14
楽しんで 読ませてもらっています。 がんばってください!

12母の飼い主 8:2013/10/13(日) 05:36:28

 実家から戻って一ヶ月あまりの間、僕は悶々と日々をすごした。

 四月に再会して以来、母は洋治さんに会っていないという。
 だが、あの日僕が拾った「バー『黒鴉』」のマッチ箱は、母と洋治さんの間に何らかの接触があることを裏付けていた。
 なぜ嘘をついてまで、母はそのことを僕に隠そうとしているのか?

 ふつうに考えるなら、隠そうとするのはそこに後ろ暗いものがあるからだ。
 すくなくとも息子の僕には知られたくない関係――そんな関係が、母と洋治さんにあるとしたら――。

 洋治さんのことを考える。僕の叔父であり、母にとっては義弟にあたる人。
 中学一年の夏、父の葬式で顔をあわせて以来、僕はかれこれ六年ほど洋治さんを見ていない。それ以前だって、頻繁に会っていたわけでもない。洋治さんがわが家を訪れたのは数年に一度、よほど金に困って父に頼みに来る場合にかぎられていたし、その際も、僕はなるべく叔父と対面しないですむように逃げまわっていた。

 僕は洋治さんが怖かったのだ。ヤンキー風の外見に恐れをなしたということもあるが、それ以上に彼の目が苦手だった。神妙な態度で父の説教を聞いているときも、気安い調子で『よう、元気にしてたか?』と僕に話しかけてくるときも、洋治さんの目はつねにかわらず、相手のことを探るように観察し、隙あらば飛びかかって喉元を食いちぎるような獰猛さを漂わせていた。子どもなりの敏感さで僕はそれを感じ取り、背筋が粟立つような恐怖を覚えていたのである。

 あの洋治さんが、母に目をつけたとしたら――。

 ふと思い出す。あの日、深夜にようやく戻ってきた母の、潤みきった目を。崩れそうな肢体に漂わせていた、ぞくりとするような艶めかしさを。
 もしかして、あれは――。

 ――いや、そんなことはありえない。僕はあわてて脳裏に描いた想像を打ち消す。

 母のことを考える。ちょっと天然で、世間知らずなところがあって、そのぶんだけ純粋で、母性的な愛情にみちあふれている母。
 僕が地元ではなく東京の大学を受験することにあくまで反対し、初めて家を出ていった際には泣きそうな顔で見送った母。
 死んだ父のことを想いつづけ、再婚話を断りつづけてきた母。
 そんな母が、たとえ誰であれ、父以外の男性とやましい関係に陥ることなど――あるわけがない。

 だが、それならばなぜ、母は僕に嘘をつかねばならなかったのだろう――。


 疑惑は晴れることなく、堂々巡りの思考は僕の安らかな眠りを奪った。といって、母に直接、その疑惑を問いただしてみるのは、どうしてもためらわれた。

 そして――僕はようやく決意した。
 『黒鴉』へ行ってみよう。洋治さんに会ってみよう。
 それで何が変わるかはまだ分からない。けれど、とにかく動かないではいられなかった。

13母の飼い主 9:2013/10/13(日) 05:39:23

 そして次の週末、僕は『黒鴉』のドアをくぐった。

 『黒鴉』は想像していたよりも小さなバーだった。
 カウンターのほかには、テーブルがふたつだけ。奥のほうにはカラオケを歌うお客のためのステージらしきものがある。内装は極めてシンプルで、全体の色調は暗いブルーに統一されていた。

 カウンターの中に洋治さんがいた。

 かつての長髪をばっさりと切り、整髪剤で短く固めた髪型に、バーテンダーらしく白シャツと黒のベストを着込んでいる。遊び人らしい雰囲気はすっかりなくなっていたが、どこか野性的な凄みを感じさせる目は昔のままだった。
 その目で僕を見つめた洋治さんは、しかし愛想よく、
「いらっしゃい。これはまたずいぶんお若いお客さんですね」
 と錆びのある声で言った。

 想定外の事態だった。洋治さんは、僕が甥であることに気づいていないらしい。
 考えてみれば、最後に会ったのは僕がまだ十二歳の頃で、あれから六年もの月日がたっている。その間に僕は成長期を迎え、身長が三十センチも伸び、声変わりをして、さらには眼鏡をコンタクトに変えた。そもそも、子どものときに会った回数だって数えるほどなのだから、洋治さんが気づかなくても無理はない。
 店に入る前から緊張と恐れを感じていただけに、拍子抜けするような気持ちだったが、僕はそのまま何も言わずにカウンターの隅に腰掛けた。名乗らなかったのは、ほかにもお客がいたからだ。
 そのふたりの客は中年の男ふたり組で、やはりカウンターに座ってウイスキーを飲んでいた。ひとりは太っていて、もうひとりは眼鏡をかけていた。
 
「注文は何にしましょう」
 洋治さんが僕に向かって言った。
 僕はハイボールを注文した。やがて酒がくると、静かに杯を傾けているふりをして、ふたりの客と洋治さんの会話に耳をすませた。

 客のうち、眼鏡をかけたほうは、太った男に連れられて、初めて『黒鴉』を訪れたようだった。
「なかなか落ち着ける、いい店だろう?」
 太った男がじぶんの店を誇るみたいに言った。こちらは常連客なのかもしれない。
「ええ、そうですね」と眼鏡が答える。
「でもな、この店の良さはそれだけじゃない。なあ、マスター?」
 含みのあるような言葉を投げかけられた洋治さんは、首をかしげながら、
「さあ、何のことですかね」
 と言った。
「とぼけちゃって、この」と太った男はにやにやしながら言うと、眼鏡のほうを向いてウインクした。「いいか、このマスターはな、それはそれはわるい男なんだ」
「人聞きのよくないことを言わないでくださいよ」
 洋治さんが苦笑した。
「どういう意味で、わるい男なんですか?」と眼鏡が訊いた。
「おんなにとってわるい男という意味だよ」と太った男は言った。「でも、そのおかげで、我々のような寂しい男たちにはに素敵なサービスを提供してくれる」
「どうもよく意味がわかりませんね」と眼鏡は訝しげな顔をした。
「話していいかい、マスター?」
 太った男が言うと、洋治さんは「どうぞご勝手に」というふうに、肩をすくめた。

「この前――といっても三週間ほど前だが――の夜に、おれと友だちはこの店で飲んでいた。酒の席の話題なら女のことと相場は決まっているが、知ってのとおり、おれは近頃その方面にとんと縁がない。で、マスターに愚痴っていたら、突然、この人が『それじゃあ女でも呼びましょうか』と言い出したんだよ」
「へえ!」と眼鏡は驚きの声をあげた。
「『マスターの女かい?』と訊くと、『そうだ』という。それも、じぶんが呼びつければいつでも来るし、命令すれば何でもする類の女だ、と言うんだ」と太った男は下卑た笑みを浮かべながら言った。「いかにも面白いじゃないか。『それなら、さっそく呼んでみてくれよ』と頼むと、この人はすました顔で電話をかけ始めたのさ」
「へえ!」と眼鏡はまたも間抜けな声を出した。

 ふたりの客と洋治さんの会話に引き込まれながらも、僕は厭な胸騒ぎを覚えていた。
 気がつくと、腋の下が汗でびっしょり濡れていた。

14母の飼い主 10:2013/10/13(日) 05:41:04

 そんな僕の動揺にもちろん気づかず、太った男は得々と話をつづける。

「一時間もした頃かな。本当に女はあらわれた。あのときはたまげたね。なにしろ、びっくりするようないい女だった。四十近くの年増だが、綺麗で、清楚で、品があって、いかにも上流家庭の奥さんという感じなんだな」
 太った男はそこで興奮をしずめるように、一度グラスに口をつけると、また滑らかにしゃべり始めた。
「女は戸惑っているようすだった。見も知らぬおれや、おれの友だちがいるんだから、それも当然だわな。だが、マスターに何か囁かれると、女はしおしおと店の中に入ってきて、か細い声で『はじめまして。フユコと申します』と挨拶した」

 そのとき――
 僕は落雷を浴びたような衝撃に打たれた。

 母の名前は――冬子だった。

「いろいろ訊いてみると、おれが睨んだとおり、そのフユコという女はイイトコの奥さんだったが、早くに夫を亡くして未亡人生活をつづけているらしい。――まあ、男日照りだったわけだな。それをこのわるいマスターにつけこまれたってわけだ」
「あいかわらず、ひどい言い草ですな」
 洋治さんは布巾でグラスを拭きながら、悠々とした口調で応じた。
「一通り会話がすんだ頃合で、ふとマスターが女に耳打ちした。女は途端に真っ赤になった。おどおどしたようすで、哀願するみたいにマスターを見るんだが、この人は冷たい顔で見返すだけさ」
 太った男はくくっとわらった。
「それで、とうとう女も諦めたようだった。さあ、これから何が起こるのか――。おれたちが唾を呑み込んで待っていると、女は今にも泣きそうな顔で『あの…これから余興に歌をうたいます。下手な歌ですけれど、よかったらお聞きになって』と言うんだ」
「歌ですか?」と眼鏡が拍子抜けしたような声を出した。
「そう。おれも『何だ、期待させやがって』と心の中で毒づいた。内心は助平な期待でいっぱいだったのにな」と太った男は恥ずかしげもなく言った。「だが、その後でびっくりするようなことが起こった。女はそこのステージに上がると、突然、服を脱ぎ始めたんだ。あのときはたまげたね」
「へえ!」
「いかにも羞ずかしそうなようすで、女は上着を脱ぎ、ブラとパンティーも脱いで、とうとう素っ裸になった。服の上から想像していたとおり、綺麗な裸だったよ。肌が透けるように白くって、陶器みたいにつるつるでね。全体は細くてすらりとしてるのに、胸はけっこうなボリュームで、四十路近いとは思えないような、かわいい乳首の色をしていた」

「すっぽんぽんにはなったものの、女は羞ずかしさに耐えないふうで、手で身体を隠そうとする。でも、このマスターが『隠すな。お前のいやらしい身体をお客さんによく見ていただくんだ』と厳しい声で言うと、泣きそうな顔でそのとおりにするんだ。おれと友だちは、もう我慢できずに席を立って、ステージにかぶりつくように女の裸を鑑賞した」
 太った男はそのときのことを思い出したように舌なめずりした。
「やがて、マスターが曲をかけて、女は歌いだした。中森明菜でも歌うのかと思ったら、今どきのAKBとかの曲でね。それも歌うだけじゃなくて、振り付けつきなんだよ。いい歳した美形の年増女が、真っ赤な顔で尻をふったり、胸を揺らしたり、足を跳ね上げたりしながら、いかにも慣れてない、たどたどしい動作で一生懸命歌って踊るのさ。見てるこちらも可哀想になるくらいだが、それだけに興奮させられた」
「へえ…」
「後で訊いたら、AKBの歌と振り付けは、マスターの命令で以前から練習していたらしい。あの上品な奥さんが、人目を忍びながら、自宅でこっそりとアイドルの歌や踊りの練習をしているなんて、なんだか泣けてくるね」
「なんでそんなことを命じたんですか?」と眼鏡が訊いた。
 洋治さんは薄笑いをうかべた。
「わたしはサディスティックな性的嗜好の持ち主でしてね――、女に惨めなことや屈辱的なことを強制したり、羞ずかしい目に遭わせれば遭わせるほど興奮するタイプなんです」と洋治さんは平然たる口調で言った。「四十路間近の女が今どきの若いアイドルの真似して裸踊りするなんて、まさしく馬鹿みたいでしょう? それだから面白いんですよ」


 ――洋治さんの鬼畜な発言を聞きながら、僕は全身の毛穴から血が噴き出るような感覚を味わっていた。
 瞼の裏には、裸身を晒した母が惨めなダンスを披露している幻影がうかんでいた。涙まじりになりながら、それでも懸命にうたい、尻や胸をふって、男に媚びてみせる母――。
 信じられない。あの母が――少女みたいに純情なところのある母が、どうしてそんなことをできたのだろう。どんな想いが母にそこまでのことをさせたのだろう。
 
 驚愕と絶望の淵に沈む僕をひとり残して、ふたりの客と洋治さんの会話はさらにつづいた。

15悦司:2013/10/13(日) 05:42:58

 コメくださった方、ありがとう。
 需要あるかぎりですが、まだまだつづきます。
 感想・要望等あればぜひ。

16SIN:2013/10/13(日) 16:45:33
これからの展開凄く楽しみです。お母さんの変化に期待してます

17名無しさん:2013/10/13(日) 23:50:11
楽しんで 読ませてもらっています。 がんばってください!

18名無しさん:2013/10/14(月) 14:34:22
楽しんで読んでいます。
執筆がんばってください
母親が、着付けの先生という設定なので良かったら着物姿の緊縛プレイを・・・
着衣緊縛って燃えませんか?

19母の飼い主 11:2013/10/15(火) 02:32:58

「で、それからどうしたんですか? つづきを教えてくださいよ」
 眼鏡の男が興味津々といった口調で訊く。

 太った男はもったいぶった態度で「わかったわかった」と言い、先をつづけた。
「女がようやく一曲うたいおわると、おれと友だちはやんやと拍手喝采して、グッタリとした女をカウンター席まで引っ張ってきた。いい忘れたが、その夜の客はおれたちだけでね」
「つくづく流行らない店ですね」と洋治さんが他人ごとのようにつぶやく。
「いやいや、すばらしい店だよ、マスター。それにあの夜は、女が来た時点で店じまいの看板を出したんだろう?」
「まあ、さすがに誰がやって来るか分からない状況はこちらも心配ですからね」と洋治さんは苦笑した。「もしかしたら、警察関係のお客が偶然ぶらりと来店するかもしれないし。そんなとき、素っ裸の冬子がカウンターに座っていて、両側の男性客からイタズラされてたんじゃ、言い訳のしようがない」
「イタズラしたんですか!」と眼鏡。
「しないでいられるかい。なにしろ、あんなに扇情的な裸踊りを見たあとだぜ。――それになぁ、カウンターに座って間近に見ると、これがますますイイ女なのよ。顔も綺麗だが、身体もいい。スレンダーなのに出るところはちゃんと出ていて、おっぱいなんか、体つきからすると不似合いなほど大きかったもんなあ」
「それには理由があるんですよ」と洋治さんが言った。「もともと冬子は痩せ型の女でしてね。わたしの好みからすると、少々痩せすぎなくらいでした。それで、一ヶ月以内に五キロ太るように命じたんです。もしも五キロ増量できなかったら、きついお仕置きをするという約束でね」
「まるで家畜扱いだなあ!」と眼鏡の男があきれた。
「まあ、そうですね」と洋治さんはあっさり言い放った。「冬子のやつ、必死になって食事量を増やしたらしい。で、ようやく目標値をクリアしたわけですが、そのぶん増えた肉が胸や尻のほうにいったようですな。面白いので、いまはさらに十キロ太るように命じてます」
「十キロ! そりゃまた厳しいな。せっかく綺麗な奥さんなのに、デブになっちまうんじゃないか」
「あんまり見苦しくなるようなら、今度は減量させますよ」と洋治さんはこともなげに言った。

 ほとんど呆然自失といった感じで三人の会話を聞きながら、僕は思い出していた。
 帰省した初日――僕はしばらく見ないうちに母の肉づきがよくなったことに気づき、おどろいたのだった。そう指摘すると、母は羞ずかしそうな顔をして、「このところ、食べすぎたのかしら」などと言っていた――。
 何のことはない。母は洋治さんに言われて、むりに体重を増やしていたのだ。
 母が痩せているのは昔からで、それは体質もあるが、母本来の美意識の問題でもある。ようするに、太って醜くなるのが厭だったのだ。それなのに、洋治さんの命令ひとつで、じぶんの体型まで変えてしまうとは――。

 母は――それほどまでに洋治さんに溺れきっているのだろうか。

 いや、そうとばかりはいえない。ひょっとしたら、母は洋治さんに何かの弱みを握られているのではないだろうか。僕はその可能性にはじめて思い当たった。
 弱みを握られた上で泣く泣く命令に従っているとすれば、僕の知っている母からは想像もできない行動の数々にも説明がつく――。

 そうした推測は、洋治さんへの怒りを燃え立たせたが、一方で、僕の心をふしぎと落ち着かせた。なぜなら、もしも推測が正しいとすれば、母は洋治さんを愛していないことになる。いや、それどころか、じぶんに屈辱的な命令を強いる彼を嫌悪し、憎んでいるはず――。そのように想像することが、僕の気持ちを安心へと導いたのだった。

 僕は何としても信じたくなかったのだ、母が洋治さんを心底愛しており、それゆえ、どんな仕打ちでも甘んじて受け入れている、などということを。母が愛しているのは亡き父と、それから僕だけなのだと――そう思い込んでいたかったのだ。

20悦司:2013/10/15(火) 02:35:44

 コメントありがとう。
 18さん、着物緊縛プレイはいいですね。検討してみます。

21名無しさん:2013/10/15(火) 07:05:19
いいですねえ。
個人的には複数に責められるよりも一人の男に
じっくり飼いならされる展開が好みです。
体重をコントロールされているというのはぐっときますね。
続きを期待しています。

22母の飼い主 12:2013/10/16(水) 01:48:54

「何かお飲みになりますか?」

 不意にそう呼びかけられて、物思いに沈んでいた僕は、顔を上げた。
 洋治さんが目の前にいた。表情や物腰はあくまで穏やかだが、子どもの頃の僕がおそれていたあの目つき――奥底に獰猛な獣を潜ませている目つきはあいかわらずで、それが僕を動揺させた。
「ハ、ハイボールをもう一杯」
 注文しながら、思わず声が裏返ってしまう。じぶんに対する嫌悪感で、頬がかっと熱くなった。
 洋治さんは慣れた手つきで酒をつくり、「どうぞ」と言って僕に差し出した。僕は無言でそれを受け取り、胸を焦がす憎しみを押し殺しながら、それとなく彼を観察した。


 よく見ると、死んだ父にも似ていないことはない。眉の太さや、鼻梁の高い鼻などは、さすが兄弟といってよいくらい近しいものがある。だが、幼少時から死ぬまで「優等生」の道を踏み外したことのない父に比べて、洋治さんには隠そうとしても隠しきれぬ野性的な匂い――いうなれば不良性があった。

 そういえば、かつて父が『あれで洋治のやつは女性にモテるんだよ』とぼやいていたことがある。
『子どもの頃からそうだった。あいつばかりモテるんで、僕なんか、ひそかにひがんでいたくらいさ』
『洋治さんの何が良くて、女のひとはついていくのかしら』と母はいぶかしげな顔をした。
『不良っぽいところじゃないかな。女性にとって、悪い男というのはそれなりに魅力があるんだろう』
『わたしは不良もワルも好きじゃないわ』と母はきっぱり言った。それから、父を見つめてニッコリとした。『真面目で堅実な男性のほうがずっと、ずっと素敵よ』――


 僕の思念が過去に飛んでいるあいだに洋治さんはふたりの客のもとへ戻り、ふたたび淫猥な会話が再開された。

「結局、どこまで話したんだっけ。――ああ、カウンター席で、おれと友だちが女を挟んで座ったところまでか」と太った男は舌なめずりをするように話しはじめた。「間近で見る女の身体がじつに見事なものだったんで、おれたちはマスターの目を気にしながらも――だってマスターの女だもんな――、辛抱たまらず女の身体をさわりはじめた。形のいいおっぱいや、すべすべした尻を、ふたりがかりで弄りまわしたわけよ。女はうつむいて、されるがままになっているし、マスターも平然とした顔で何も言わない。おれは調子にのって、女にキスしようとした。そうしたら、突然、女が顔色をかえて『いやっ』と叫んだんだ」
「そりゃあ厭でしょうよ」と眼鏡が茶化すように言った。
「だって、いままでは好き放題に身体をさわらせていたんだぜ――で、おれが『キスはいやなの?』と訊くと、女は青い顔でうなずく。そのあいだにも、ちらちらとマスターのようすを窺っている。そこで友だちが愉快そうにわらいながら、おれに言った。『女心だよ。おっぱいやお尻を撫でまわされるのは我慢できても、唇は好きな男にしか許したくないんだ。ねえ奥さん、そうでしょう?』とな。すると、女は真っ赤になって両手で顔を覆ってしまった」
「まるで、おぼこ娘みたいに純情な反応ですね」と眼鏡。
「本当にな。あのときは思わずマスターに嫉妬したよ。あれほど綺麗で上品で純情な奥さんをモノにして、ペットみたいに扱っているばかりか、奥さんのほうはこの人に心底惚れているんだから」
 洋治さんはにやりとわらったが、何も言わなかった。


 嘘だ――と僕は心のうちで反駁した。
 母が洋治さんを愛しているはずはない。母は――弱みを握られ、脅されて、仕方なく洋治さんに従っているだけなのだ――。


「マスターの手前もあるし、いやがるキスをむりにするほど、おれだって鬼畜じゃない。ところが、そのときふと、今まで黙っていたマスターが『お客様にサービスしてさしあげろという命令を忘れたのか』ときつい声を上げたんだ。途端に、女は可哀想なくらいオロオロしたよ。おれもさすがに同情して、『まあ、いいじゃないか、マスター。おれは何とも思っていないよ』とフォローした」
「助平なくせに、妙なところでいい人になりますね」と眼鏡。
「ぬかせ。――で、そうしたらマスターが『では、お仕置き代わりに余興をやらせましょうか』と言い出して、女を立たせ、その耳元に囁いた。女はさっきマスターの機嫌を損ねたことで哀れなほど動揺していたが、新たに何事か耳打ちされて、最初は『ああっ…』と悲痛な声をもらした。でも、『できないのか?』とマスターが怖い声を出すと、女はか細い声で『やります』と言った」

23母の飼い主 12:2013/10/16(水) 02:18:01

「そこの、カウンターに近いところにテーブルがあるだろ。女はあれの上に裸の尻をのせて、おれと友だちのほうを向いた。マスターがその横に立って耳打ちすると、女の顔が恥ずかしそうに歪んだ」と太った男は好色な笑みをうかべながら言った。「さて、こんどは何が始まるのかとおれはワクワクしたよ。やがて、女は顔面蒼白になりながら、『あの…これから冬子のオナニーをお見せいたします。恥ずかしくてみっともない、年増女のオナニーですが、どうぞご覧になって…』と絞り出すような声で言うんだ」
「ほう…」と眼鏡。
「女はぶるぶる震える両脚をようやく持ち上げると、テーブルの上で左右に開き、股のあいだの柔らかそうな毛叢におずおずと手をのばして、あそこをくつろげて見せた。間髪おかず、マスターにまた何か囁かれて、女は潤んだ瞳でおれと友だちを見た。そうして、『冬子のおまんこ、どうですか?』と消え入りそうな声で言った」
 そう言うと、太った男はグラスの酒をごくりと呑み干した。
「お調子者の友だちは、『綺麗なピンク色だよ。歳のわりに型崩れもしていない』とか『いかにも使い心地のよさそうなおまんこだ』とか、さっそくとばかりに誉め言葉を並べ立てた。おれはといえば、もう頭に血が上ってしまって、女のその部分を馬鹿みたいに眺めていたよ。実際、娘みたいに綺麗なあそこだった」
「ふーむ!」と眼鏡の男は相棒の興奮が乗り移ったような声を出した。
「女は羞恥に耐えながら友だちのえげつない批評を聞いていたが、そうしているうち、おれは女のあそこがじんわりと湿り出したのに気がついた。おれが『濡れてきたよ』と言うと、女は『ああ…』とうめいて左右に首をふったが、それでもマスターの言いつけどおり、両手はあそこを広げたままなんだ。なんとまあ、よく調教されてるもんだと感心したよ。マスターは悠然と煙草を吹かしながら、『皆さんに見られるのが、よほどうれしいんでしょう。もっとよく見てやってください』と言っていたな」
 そこで思い出したように、太った男はあたらしい酒を注文すると、また話をつづけた。
「マスターに言われるまでもない。おれたちは食い入るように女の特出しショーを眺めた。ふと、友だちが『奥さんのこのおまんこは今まで何人の男を咥えこんだんだい?』と訊いた。女はポッと頬を赤らめ、尻をもじもじと動かしながら、『ふたりです…亡くなった主人と…洋治さんだけ』とこたえた――ちなみに洋治さんというのは、このマスターの名前だよ」と太った男は言った。

「『へえ、少ないんだな。それで綺麗なんだ』と友だちが感心すると、横からマスターが『子どももひとり産んでるんですがね』と口を出した」
「子持ちの母親だったんですか」と眼鏡が言った。
「そう。なんでも、今年大学生になった息子がいるらしい。いまは東京でひとり暮らしをしているそうだが、その日は帰省中で実家にもどっているという。だというのに、恋しいマスターに電話で呼び出されると、女はその息子を家にひとり残し、一目散にこの店に飛んできた――ってわけさ。あげく、見知らぬ客の男たちの前で、素っ裸で余興をやらされるはめになったがね」
「息子こそ、いい面の皮ですね」と眼鏡が呆れたように言った。洋治さんは肩をすくめて薄笑いした。


 僕は――手にしていたグラスを痛いほど握りしめた。

24母の飼い主 14:2013/10/16(水) 02:20:28

「それはそうと、女の亭主が亡くなったのは六年前らしい。それからマスターと知り合うまで、このおまんこはずっと未使用だったのかい、と意地わるく尋ねると、女は真っ赤になりながら『時どき、ひとりで慰めていました』と正直に告白したよ」と太った男は愉快そうに言った。「『あんたのような上品な奥さんでも、やっぱりオナニーはするんだね』とからかうと、女はますます赤くなって、身体を縮こませるようにしていたっけ。そこでマスターが『では、そろそろベテランの技を披露させましょうか』と言い出して、女はおずおずとあそこに指を這わせ始めた」
 太った男はあくまで饒舌に、淫猥な夜の思い出を語るのをやめなかった。
「女のその部分はもうさっきから濡れ始めていたが、細い手指がふれると、まるでべつの生き物みたいにぴくぴくと蠢いた。女は時折ちいさなあえぎ声をもらしながら、かたく目をつむって自慰をはじめた。でも、マスターが『黙っていたんじゃつまらん。何かしゃべりながらやれ。それに、お客さんがせっかく見てくれているんだ。きちんと目を開けて、笑顔でオナッてみせろ』と怒ったものだから、女はあわてて涙の滲んだ目を開くと、おれたちの顔を見つめながら指を動かして、『冬子のオナニー姿、どうですか?』とか、『いまはクリトリスをいじっています』とか、『おまんこさわっているところを見られて、とっても恥ずかしいです』とか、むりに笑顔をうかべて言うんだ」
「うわあ…」
「人前でオナニーを強制され、しかもそれを実況までさせられて、女もずいぶん錯乱しているようだった。調子づいた友だちが『冬子はオナニーが大好きなんだねえ』と言うと、額に珠の汗をうかべながら『はい、大好きです』とこたえるし、『おまんこ気持ちいいんだ?』と訊くと、『冬子のおまんこ、とっても気持ちいいです』と人形のような素直さでこたえるんだ。さっきまではいくら裸を晒していようが、身についた上品な雰囲気を失わなかっただけに、この錯乱ぶりにはおれも興奮させられたよ」と太った男はため息をついた「で、おれもかさにかかって『大学生の子どもがいる母親とは思えない乱れぶりだね』と意地悪くからかった。すると、女は切なそうに身をくねらせて、『ああ、恥ずかしいです…ごめんなさい、ごめんなさい』と涙を流しながら言うのさ」
「息子に謝っていたんですかね?」と眼鏡。
「だろうな。でも、それでいて、あそこを弄る指の動きは止めないんだから、なんというか凄まじい女の性のようなものを感じたね。そのようすを見ているうち、ますます嗜虐的な気持ちになったおれが『冬子はほんとうに淫乱で恥ずかしい母親だな。じぶんでもそう思うだろう?』と嬲ると、女はいっそう苦しげな顔で『ああ…思います…冬子は淫乱で、恥ずかしい母親です…』とうめいて、いっそう狂ったように啜り泣いた。かと思うと、不意に『ああダメ…冬子逝きます…逝ってしまいます…』と叫んで、そのまま全身を激しく痙攣させたんだ」そして太った男は言わずもがなのことを付け加えた。「逝ったのさ」


 太った男の語る内容は、僕にはすでにこの世のものとは思えなかった。
 砂の城のようにあらゆる知覚がぼやけていく。そのなかで、ただ母の幻影だけが――狂気したように謝罪の言葉を繰り返して絶頂を迎える、その瞬間の母の幻影だけが、妖しい映画のように僕の脳裏に映し出されていた。

25悦司:2013/10/16(水) 02:26:26

↑13回目を12回目と誤表記してしまいました。
それと、ストーリーの進展が遅くて申し訳ない。

>>21さん
>個人的には複数に責められるよりも一人の男に
じっくり飼いならされる展開が好みです。

私も同じです(笑)

26名無しさん:2013/10/16(水) 13:08:52
実に良いです。
わくわくしながら続きを待っています。

夫の墓や遺影の前でのプレイ……とかどうでしょうか。

27名無しさん:2013/10/17(木) 21:19:08
排泄管理もしたいですね

28母の飼い主 15:2013/10/18(金) 02:34:06

「へえ、本当に美人じゃないですか!」
「だから、そう言ったろ」

 そんな眼鏡の男と太った男の会話で、僕の心はようやく現実へと引き戻された。

 太った男がスマートフォンの画面を、眼鏡の男に見せている。

 あれは何だ――?

 もはや僕は何食わぬ顔を装うこともわすれていた。食い入るようにふたりの客のほうを見つめていると、太った男がそんな僕に気づいた。
「あんたも見たいのかい、お若いの? ――なぁに、あんたがさっきからおれたちの話に、こっそり耳を傾けていたのは知ってるよ。もっとも、小さな店のことだから、いやでも聴こえるだろうが」
「小さな店でわるうござんしたねえ」と洋治さんがわらう。
「言葉の弾みだよ、マスター。それはそうと、あそこの若い人に秘蔵写真を見せてもいいかな?」
「どうぞ、お好きに」と言って、洋治さんは肩をすくめた。

 好色な表情をうかべながら手招きしている太った男のもとへ、僕は操られてでもいるかのように足を運んだ。
 男のスマートフォンに映し出されていたのは――まぎれもなく母だった。


 写真の母はテーブルの上に仰向けに横たわっていた。衣服は何ひとつ身につけていない。完全に生まれたままの姿だった。
 僕が小学校に上がったくらいから、母といっしょに風呂に入ることもなくなったし、以来、その裸身を見る機会など勿論なかった。だから、そのときスマフォの画面で目にしたそれは、僕にとって、ほとんど初めて見る母のヌードだった。


 写真の背景は薄暗く、仰向けに寝た母の裸身だけが、仄白く浮かび上がっているように見えた。その肌は透けるように白い。まるで生まれてからいちども陽の光に当たったことがないようだ。肩や腰のラインは細く、しなやかなのに、もちもちとした乳房のふくらみは意外なほど豊かに熟れていた。
 母の視線はうつろで、じぶんの恥ずかしい姿を写真に撮られていることも意識にないようだった。半開きの唇から白い歯がこぼれており、頬のあたりは全力疾走した後のように紅潮している。全身が弛緩しているようだったが、すらりとした手は両方とも股間の前へ伸びていて、指先が黒々とした恥毛にふれていた。


「オナニーの直後に写したものだよ」と太った男が僕の耳元で囁くように言った。「ずいぶん激しく逝ったものだから、しばらくは半失神状態でね。いくら呼びかけても、ぴくぴくと痙攣するばかりで反応がなかった。そのあいだに、こちらの寛大なマスター殿にお願いして、写真を撮らせてもらったというわけだ」

 僕は一語も発することができなかった。
 口の中がカラカラに乾き切っていた。

 オルガスムの余韻にうち震えながら、しどけなく横たわる母の裸身――それは、息子として、本来ならけっして目にするはずもなく、また、けっして見てはならない種類のものだった。――

29母の飼い主 16:2013/10/18(金) 03:09:03

「いい女だろう? もっとも、あんたのような若い人からすれば、いくら美人でも年増には興味ないかもしれないが」
 太った男は、太鼓腹を揺すりながら大声で笑った。
 そのあいだにも、眼鏡の男はまじまじとスマフォの画面を眺めている。
「いやーエロいですねえ。この奥さん、顔は清楚だけど、胸はたっぷりあるし、色白の肌が妙にいやらしいな」と眼鏡は咳き込むような早口で感想を述べた。「でも、あそこの毛はけっこう濃いですね。下の毛が濃い女は情が深い、って聞きますが」
「そんなことは知らんが、この女に毛が生えているのも、じつはこれで見納めなんだよ」と言って、太った男はニヤリとした。「このすぐ後、マスターの提案で、おれと友だちのふたりがかりであそこを剃ったからな」
「へえ! なんでまた?」と眼鏡。
「お客さんをほったらかしにして、長々と寝ぼけていた罰ですよ」と洋治さんが表情ひとつ変えずにこたえた。
「そのときの写真もあるぞ、ほら」と太った男がスマフォの画面を次々と切り替えていった。

 二枚目の写真では、母の意識は正常にもどっているようで、羞恥に耐えかねるように両手で顔を覆っていた。
 それもそのはずだ。母はあいかわらずテーブルに裸の臀を載せたまま、両脚を大きく割り開かされており、剥き出しになった秘部の茂みには、シェービングクリームがたっぷりと塗りつけられていた。

 三枚目の写真になると、さらに酷いポーズを取らされていた。
 母は仰向けのまま、頭のほうに持ち上げた両脚の足首を、みずからの手で握らされていた。いわゆる「まんぐり返し」の格好である。さっきのように手で顔を隠すこともできず、母は眉を八の字にたわめて、切なそうな表情で撮影者のほうを見ていた。
 その顔のすぐ下には、今まさにカミソリを当てられている真っ最中の、母のおんながあった。漆黒の毛叢は白い泡まみれだが、上半分はすでに剃られ、女体のもっとも恥ずかしい部分を剥き出しにさせられている。

「いやぁ…これは生々しい写真だな」と眼鏡の男が吐息まじりに言った。「この奥さん、剃られているときはどんな反応だったんですか?」
「顔は引きつって、今にも泣き出しそうなんだが、なにしろ、さっきオナニーで達したばかりだからな。あそこのまわりが敏感になっていたんだろう。カミソリを当てるたびに、『あっ、あっ』と色っぽい声を出すわ、身体をびくびく動かすわで大変だったよ。最後はもうシェービングクリームもいらないくらいに濡れていたな」と言って、太った男は舌でぺろりと上唇を舐めた。「全部剃り上げた後、友だちが『ずいぶんヒイヒイ鳴いていたじゃないか。いやらしい奥さんにはお仕置きだよ』と言って、つんと勃起したクリトリスを摘み上げると、もうそれだけで全身をガクガクさせながら、あっけなく昇天したよ」
「へえ…」

30母の飼い主 17:2013/10/18(金) 03:12:24

「しばらくして正気づいた奥さんに、鏡でつるつるになったあそこを見せると、恥ずかしさで声も出ないようすだった。でも、マスターが『三十九歳にもなって、小さな女の子みたいに可愛くしてもらったな。うれしいだろう?』と言うと、涙ながらにうなずくんだ。そして、おれと友だちに向かって、『恥ずかしいお毛々の処理をしていただいて、本当にありがとうございました。可愛くなれて、冬子、とてもうれしゅうございます』と頭を下げて礼を言うのさ」
「躾が行き届いてますねえ」
「すると、マスターが笑いながら、『そんなに毛無しのおまんこが気に入ったのなら、これからはずっとパイパンでいるんだな。といっても、毎回、お客様の手を煩わすわけにもいかない。明日からは毎朝毎晩じぶんの手で剃るようにするんだ。いいな? このさき一度でも、あそこに無精ひげを生やしているところを見つけたら、そのときは罰として、素っ裸で街中を走らせるからな』と言うんだ。まったく、ひどい男だろう?」と太った男は眼鏡に向かってウインクした。
 洋治さんはそしらぬ顔で棚の酒を整理している。
「奥さんの返事はどうだったんですか?」と眼鏡。
「イエスに決まっているさ。愛しい愛しい男の言葉なんだから。まあ、半べそかいてはいたがな。それでも、『冬子はこのさきもずっとパイパンですごします。朝と晩にはかならず手入れをします。けっして無精はいたしません』と健気にこたえていたよ。――まったく憎い男だねえ、このマスターは」
「すごいな。よっぽど惚れぬいているんですね」

 嘘だ嘘だ嘘だ――
 心の中でそう叫びながら、僕はぎりっと唇を噛みしめた。
 そんな僕の葛藤に気づいたようすもなく、男はこちらを見てニヤリとわらうと、「これはその夜の最後、マスターに頼んで、女と記念撮影させてもらったところだよ」と言って、ふたたびスマフォの画面を見せた。


 画面の中の母は、すでに陰部の茂みをすべて剃り上げられ、女の羞恥の源泉をあからさまに晒されていた。無毛の丘に、童女のような割れ目――。それは、母の女らしく成熟した乳房や、豊かな臀部とはあまりにも不釣り合いだった。
 母の躯に加えられていた加虐はそれだけではない。
 なめらかな下腹から無毛の恥丘にかけて、雪のような色白の肌に、マジックペンで黒い文字が書かれていた。

《冬子三十九歳のおまんこ
すぐ濡れるので恥ずかしいです
これから一生 パイパンです ↓》

 下向きの矢印は、むろんのこと、恥毛をすべて剃り取られた母の秘部を指していた。
 惨めな落書きを施された母は、太った男と、濃い髭を生やした見知らぬ男(こちらが「友だち」なのだろう)のあいだに立っていた。男ふたりは見るからに好色そうな、やに下がった表情をして、それぞれ片手で母の乳房を嬲っている。
 珠のような乳房をさわられながら、母もまた笑顔をうかべていた。けれど、その形のよい唇は引きつり、黒目がちのうつくしい瞳には、隠しきれない涙が滲んでいた――。


 それはあまりにも淫猥で、滑稽なほど惨めで――どこからどう見ても男たちの玩具と化した女の姿だった。
 僕は完全に打ちのめされた。

31悦司:2013/10/18(金) 03:20:20
次回以降、ようやく場面が切り替わる予定。

>>26さん
>夫の墓や遺影の前でのプレイ……とかどうでしょうか。

 これはいずれ登場します。お楽しみに。

>>27さん
>排泄管理もしたいですね

いいアイディアだなあ。検討してみます。

執筆の方もそろそろくたびれてきましたが、感想やアイディアをもらえると、やる気が出ます。ありがとう。

32名無しさん:2013/10/19(土) 00:30:10
場面が切り替わるのは、時間軸が冬子が堕とされる日々まで
戻るのでしょうか。それとも?
いずれにせよ期待しています。頑張ってください。

33名無しさん:2013/10/19(土) 02:00:34
子宮に強化ゴム風船を入れて膨らませて強制臨月もいいね。

34母の飼い主 18:2013/10/20(日) 14:30:47

「どうだい? いい写真だろ?」
 太った男が得意げに言う。

 僕は――この男を殴りとばしてやろうと拳を握りしめた。
 だが、すんでのところで、洋治さんが、
「これはよく撮れていますね。あとで私の携帯に送信してくれませんか」
 と言ったことで、出鼻をくじかれた。

「いいけど、どうするんだい?」と太った男が訊く。
「ウェブ上に写真や動画を投稿できる、画像掲示板ってあるでしょう。最近、その画像掲示板に冬子の調教記録を載せているんですよ」
「へえ! それはすごいな。ついにネット公開まで始めたわけか」
「もちろん、顔にモザイクくらいはかけていますがね」
「おれもぜひ拝見させてもらいたいね。サイト名をおしえてくれないかい?」
「わたしも知りたいです」と眼鏡の男までが横から割り込む。
「いいですよ」
 そして、洋治さんは△△掲示板というサイトの名を挙げた。
「――ここです。わたしはblack crowというハンドルネームで投稿していますよ」
「black crow――黒鴉か、なるほど」と太った男がうなずく。

 母の痴態がインターネット上にまでばらまかれている――
 その事実に僕は新たなショックを受けた。

 思わず洋治さんの顔を睨みつける。この男はいったいどこまで母を辱めるつもりなのだろう――
 だが、そんな僕の憎悪のこもった視線を、洋治さんは涼しい顔で受け止めると、
「新しい飲み物をおつくりしましょうか? それとも、お帰りになられます?」
 と言った。彼の態度はさっきまでと変わりなく、穏やかで、平静そのものだ。にもかかわらず、底の見えない深淵のようなまなざしは、僕の胸に黒雲のような恐怖をわきおこした。
 ――この眼だ、子どもの頃から僕が恐れていたのは…。
 気がつくと、幾筋もの汗が背中を伝っている。まるで蛇に睨まれた蛙だった。
 もはやこれ以上洋治さんに見つめられることに耐えられなかった。僕は、懐から出した金をカウンターに叩きつけるようにして、釣り銭も受けとらず、足早に『黒鴉』の店内を飛び出した。――


 その夜、僕は一睡もできなかった。一晩中、××町の見知らぬ通りをさまよいあるいた。季節はすでに十月半ばで、吹きすさぶ秋の風はずいぶん冷たくなっていたが、それも気にならないほど僕は混乱していた。

 あてもなくさまよう僕の脳裏には、スマフォの写真で見た母の痴態が次々と映し出された。
 あれは――1ヶ月ほど前の、僕が東京へ戻る前夜に写されたものにちがいない。あの日、深夜遅くに帰宅した母は明らかにようすが変だった。むりもない。あの夜の母は、洋治さんばかりでなく見知らぬ男ふたりの目に裸身を晒し、歌に踊りにオナニーまで強制され、恥毛さえも剃り上げられて、あげくはその姿を撮影されていたのだから――。
 洋治さんが憎かった。あの太った男のことを思うと、胸がむかついて吐きそうになった。なのに結局、僕は彼らに怒りの言葉ひとつ、ぶつけることもできなかった。僕はじぶんの臆病さを心底から嫌悪した。
 僕の感情をかき乱すことは、もうひとつあった。
 太った男の話によると、母がみずからの意思で、愛する洋治さんの卑猥な命令に従っている――という。
 そんなことがあってたまるか、と頭では思う。だが、『黒鴉』で見聞きした衝撃的な内容は、僕を完全にノックアウトし、心に大きな穴を穿っていた。その空虚な穴に「ひょっとしたら…」という弱気な想いが忍び入ってくるのを、僕は止めることができなかった。
 ひょっとしたら母は本当に洋治さんを愛してしまったのかもしれない――。

35母の飼い主 19:2013/10/20(日) 14:33:35

 翌日、僕は東京へ戻った。
 自宅のあるアパートへたどりつくと、布団の中にもぐりこんで、泥のような眠りに落ちた。トラックに踏み潰された空き缶のように、身も心も疲れきっていた。

 それからしばらくの間、僕はベッドから離れることができなかった。『黒鴉』から飛び出した夜、寒風吹きすさぶ中を一晩歩き回ったのが仇になって、風邪を引いてしまったらしい。高熱と悪寒にうなされる日々が一週間もつづいた。

 ようやく風邪が治っても、僕の心はあいかわらず虚脱したままだった。大学の授業もバイトもさぼり、アパートに引きこもっていた。携帯電話の電源も切った。何人かの友だちが訪ねてきたけれど、玄関のドアを開けることもせず、具合がわるいからと言って、帰ってもらった。
 僕は孤独の中に閉じこもった。

 十月がおわり、十一月になっても、僕の虚脱状態は治らなかった。
 そんなある日――僕は夢を見た。


 その夢の中で、僕はおさない子どもにもどっており、母の手に引かれて、見知らぬ街の人ごみをあるいていた。
 途中、誰かにぶつかり、そのせいで母の手を離してしまった。人ごみにまぎれ、僕はあっさりと母の姿を見失ってしまう。心細くて、心細くて、僕は「おかあさーん」と叫びながら、大声で泣きはじめた。
 不意に、温かく優しい体温に、背中を包まれた。ふりかえると、母がほっとしたような笑顔をうかべ、うしろから僕を抱きしめていた。「ごめんね、ひとりにしちゃって…」。そう囁いて僕の身体をぎゅっと抱く、母の目にもまた涙が光っていた。
 これは――昔、本当にあったことだ。

 どうして今まで忘れていたんだろう――?


 僕は目を醒ました。
 ぼんやりと周囲を見回す。そこはいつもと変わりない、そして最近とみに薄汚れてきたアパートの自室だ。時計の針は深夜三時を指している。
 『黒鴉』を訪れた夜以来、僕はたびたび悪夢にうなされてきた。洋治さんやあの太った男が、よってたかって母を嬲っている夢――。しかも、夢の中の母は、男たちに玩弄されながら、飼い主に媚びる犬のような表情をうかべ、うれしげに尻を振ってみせるのだった――。
 だが、さっきのノスタルジックな夢は、そんな悪夢とはまったく違っていた。僕の胸にぽっかりと空いた穴へ、温かく優しいものを注ぎこんでくれるような夢だった。
 夢で見た母の笑顔を思い出す。そうだ、あれが本当の母なのだと僕は思った。誰よりもきれいで、純粋で、家族への慈愛にみちた母さん――。
 僕はむくりと起き上がった。
 『黒鴉』で出会った男は、洋治さんの愛人になった母が、みずから望んで淫猥な命令に従っているかのように話していた。だが、それはやはり真実ではない。母はそんな女性ではない。母が父以外の男を愛することなどありえない。だとしたら、かつて推測したように、母は洋治さんに弱みを握られ、むりやり従属させられているにちがいない――。
 僕はあらためてそう確信した。

 母を救わなければ――

 ずっと電源を切りっぱなしだった携帯を、ひさしぶりに取り出す。まずは母に連絡してみようと考えたのだ。けれど、いまが夜中の三時であることに気づき、思いとどまる。明日の朝一番に電話しよう、と僕は思った。

 カレンダーを見る。『黒鴉』を訪れた夜から、すでに三週間以上たっていた。
 母はあれからどうしていただろう。

 そのとき、ふと僕の脳裏をよぎるものがあった。
 あの夜、洋治さんが口にした台詞――。

 ――『ウェブ上に写真や動画を投稿できる、画像掲示板ってあるでしょう。最近、その画像掲示板に冬子の調教記録を載せているんですよ』

 僕はノートパソコンを開いた。
 △△掲示板を検索する。やがて見つかったそれは、アダルト系の人気サイトで、海外サーバーを利用しているらしく、無修正の動画像を投稿できることが売りのようだった。

 僕はためらった。ここにはきっと、『大鴉』で見たよりも酷いものがある。それは確信に近い予感だった。
 だが、このまま目を塞ぐことは――できそうになかった。

 夢で見た母の優しい笑顔を思い出しながら、僕はそのサイトに入室した。

36母の飼い主 20:2013/10/20(日) 14:38:25

 洋治さんとおぼしき人物の投稿は、すぐに見つかった。

《 スレッドタイトル:未亡人ペットvol.3
  スレッドオーナー:black crow 》

 ――これだ。
 スレッドの開始日は20●●年11月1日になっている。今からちょうど一週間前だ。Vol.3ということは、vol.1とvol.2もあったはずだが、現在では消されているようだった。
 僕は震える指先でマウスを動かし、その「未亡人ペットvol.3」というタイトルをクリックした。


 トップ画像があらわれる。
 予想通り――母の写真だった。
 僕も見覚えのある、白のブラウスを着た母が、どこかのカフェでお茶を飲んでいる。目にはモザイクが入っているけれど、口元はしっかり写っていた。
 カメラのほうを向いた母の顔は、どこか緊張したような風情を漂わせている。それもそのはずだ。普段着姿の母の首には、黒革の細い首輪がはめられていた。首輪の中心には鈴と金属製のプレートが付いている。プレートには「SEX PET」と文字が刻んであった。
 よく見ると、母は下着をつけていないようだった。ブラウスの薄い生地ごしに、乳房のふくらみと、その頂点にある桃色の突起が透けていた――。

 画像の隣には、black crowのコメントが並んでいる。

《 未亡人ペット冬子の調教記録を晒しています。皆さんの応援でとうとう3スレ目になりました。
  初見の方のために、以下簡単な紹介を…。

ペット名:冬子
年齢:39歳
職業:着付け教室の講師
プロフィール:6年前に夫を亡くして以来、独り身を通してきた未亡人。
        大学生になった息子をひとりもつ。
        今年の春から、かつて軽蔑していた義弟(私)のペット
        としてハードな調教を受ける日々。
        元・人妻のわりにフェラチオも未経験のうぶな女だったが、
        今では私に犯してもらわなければ生きていけないと、涙すら
        流して哀願するような雌犬に成り下がる 》


 なんてことだ――。
 洋治さんは、母の痴態を写した写真ばかりでなく、実名と具体的なプロフィールまで晒している! 見る人が見れば、ここに晒されているのは母だと一発で分かってしまうだろう。
 僕は目の前が真っ暗になった。


 Black crowのコメントの後には、閲覧者の感想が続々と並んでいる。すでにこのサイトでも人気の高いスレッドになっているらしく、レスの人数も相当多かった。

『いよっ、待ってました! 義弟のチンポ欲しさにどんなプレイでも受けいれる、未亡人ペットの痴態をまた見せてください』
『動画! 動画!』
『トップ画像は夏ごろの写真でしょうか? 前スレで拝見した写真よりも、冬子がほっそりしているように見えます。たしか、10月末までに10キロ太らせる計画でしたよね…今はどうなっているんでしょう?』


 僕がいちばん引っかかったのは最後のレスだった。10キロ太らせる…そういえば、『黒鴉』を訪れた夜、洋治さんがそんなことを言っていた――

 その洋治さん――black crowは、スレ立てから1時間後に再び登場していた。

37母の飼い主 21:2013/10/20(日) 14:41:04

《 さっそくの応援や感想レスありがとうございます。

  >前スレで拝見した写真よりも、冬子がほっそりしているように見えます。
  >たしか、10月末までに10キロ太らせる計画でしたよね

  その通り。もっと細かくいうと、すでに5キロ太らせた状態から、さらに10キロの追加増量を命じたわけですね。
 結論からいうと、冬子はこの命令を守りました。次の写真をご覧ください。二枚一組で左側は今年5月に撮影したもの、右側は10月最終日の昨日撮ったものです 》

 つづいて、新たな画像が投稿されていた。


 それは二枚の写真が隣り合わせに配置されたものだった。どちらの写真も同一の室内で撮られたものらしく、背景の装飾がまったく同じだった。写っているのは母だけだ。

 左側の写真で、母はベッドの前に立っていた。衣服は何も身につけていない。ヌードを晒しながら、母はモザイクごしにも分かるような、はにかんだ顔で、胸や秘部を両方の手で隠そうとしている。眩しいほどに色白の肢体は、風が吹いたら折れてしまいそうなほど細く、まるで十代の娘のようだった。隠そうとして隠しきれていない、股間のこんもりした茂みが、白壁に蝙蝠という形容そのままに、健康的な色気を発散している。

 右側の写真も、構図自体は同じものだった。全裸の母がベッドの前に立っている。恥ずかしそうな顔をしているのも同様である。ただし、今度は気をつけの姿勢で両手を横に置いたまま、裸身を隠そうとはしていない。
 違っているのは、それだけではなかった。
 左の写真で、頼りないほどほっそりしていた母の身体――それが右の写真になると、明らかに体型が変化していた。乳房や臀部にはむっちりと脂肪がつき、太腿や腰まわりの厚みも増して、いかにも熟れきった女体になっているのだ。だというのに、股間を柔らかく覆っていた毛叢は、右の写真になると、きれいさっぱり剃り上げられ、童女のような無毛の割れ目が剥き出しになっていた。
 身体つきは以前と比べて格段に熟れているのに、おんなの部分だけは年端のいかない少女のよう――。熟と幼のちぐはぐな取り合わせが、かえって淫靡さを醸し出しているような――そんな母の裸身だった。


 僕は信じられないものを見ているような気持ちだった。
 若い頃からの痩せ型で、日本画の美人のようだった母が、わずかな期間にここまで変わってしまうなんて――


『いやー見事に太って熟女の身体になりましたね。合計15キロですか。最初はこんな綺麗な奥さんを太らせるなんてもったいない!と思いましたが、これはこれでエロくて素晴らしい。肌はあいかわらず真っ白ですね』
『見比べると、おっぱいもずいぶん肉がついて巨乳になったのが分かりますね。これは飼い主さんに揉まれたせいもあるのかな(笑) 今は何カップになりましたか?』
『熟した身体にパイパンおまんこ。卑猥ですねえ。冬子はじぶんの体型の変化について、何と言っているんですか?』

 写真の投稿後には、興奮した閲覧者の声がずらずらと寄せられていた。
 画面をスクロールしていくと、やがて、Black crowの新しいコメントが登場した。

《 レス感謝です。
  もともと冬子は、じぶんが痩せているのをひそかに誇っていたようで、最初の5キロもそうですが、とりわけ10キロの追加増量を命じたときは、ほとんどパニックになっていましたね。ペットの分際で「それだけは勘弁してください」と懇願するのを、むりやり強制しました。食事の量だけでなく回数も増やさせて、どうにか期限内の体重増に成功させました。
  結果、40キロそこそこだった体重が、今では60キロ近くにまで太りました(ちなみにカップはCからFになりました)。立派なデブですね(笑) おかげで、近所の人や着付け教室の生徒から好奇の目で見られているらしく、おかげで冬子はすっかり人の目が怖くなってしまったようです。美人とほめられていい気になっていたのも、もはや昔のことになりました。
 いちど「白豚みたいな身体になったな」と言うと、冬子は本気で傷ついたようで、めそめそ泣いていました。面白いので、それからずっと白豚と呼んでます(笑) 》

38悦司:2013/10/20(日) 14:44:10
感想、アイディアありがとうございます。

…だいぶ疲れてきた。

39名無しさん:2013/10/21(月) 00:36:04
ありがとうございます。どきどきする展開に感謝しております。
無理なさらずに、マイペースでお願いします。
もう一度感謝です。

40名無しさん:2013/10/21(月) 21:19:47
疲れない程度で結構ですよ。
こう言っては失礼ですが、読者の数が何千といるわけではありません。
ニッチの愛好家の集まりです。ゆっくりお書きください。
楽しみにしています。

41愛読者:2013/10/25(金) 19:18:27
楽しみに拝読させていただいてます。

着付けの先生ならば生け花も嗜むと思われますが
出来れば冬子さんを性花器にしての生け花など面白いのではないかと思います。

あまり無理をなさらない程度に頑張ってください。

42母の飼い主 22:2013/10/28(月) 00:40:54

『白豚ですかぁ、命令した張本人のくせにblack crowさんは酷い人ですねw でも、ムチムチした身体が本当に美味しそう。あのスレンダーな美人奥さんがこんな熟女の魅力たっぷりの体型になるなんて信じられません』
『エロ豚冬子のFカップおっぱいで、パイズリしてもらいたい♪』
『私はblack crowさんのスレに初めて来たのですが、なかなか鬼畜な調教をされているみたいですね。体重までコントロールしているとは…。トップ画のコメントを見ると、昔の冬子は飼い主様を「軽蔑していた」とありますけど、それなのにどうして、これほど従順な奴隷に躾けることができたのでしょう。初心者の私に、おふたりの経緯を教えてもらえるとうれしいです』


 閲覧者の感想でスレッドが活況を呈する中、black crowが現れたのは2日後の11月3日だった。


《 いつもありがとうございます。
  さて、初見の方から私とペットがこういう関係に至った経緯について質問を頂きましたので、お答えします(すでにご存知の方には繰り返しになりますが、お許しください)。
  トップ画のコメにも書いたように、冬子は死んだ私の兄の妻です。
  一方、義弟である私は、若い頃からの不品行が祟って、身内からも白い目で見られるような男でした。
  兄も白い目を向けていた一人で、私に対するときはいつも「厄介者の弟に迷惑をかけられる兄」という顔でした(まあ、実際そのとおりで、兄には借金をしてばかりだったんですが)。そのようなわけで、兄嫁たる冬子も私を嫌っていたわけです。
  その兄貴も6年前に死にました。以来、冬子はひとり息子を溺愛することで、寂しい未亡人暮らしを紛らわしてきたのです。
 しかし、その息子も今春から東京の大学に進学しました。おかげで冬子も初めてのひとり暮らしを余儀なくされました。もともと社交の範囲が非常に狭く、家族だけに愛情を注ぐタイプの女だっただけに、息子がいなくなったのは相当こたえたようです。
 私が冬子と偶然再会したのは、そんな折です。かつてはならず者の義弟相手につんとした態度を崩さなかった兄嫁ですが、このときは私の風体も以前と比べて真面目になっていましたし、なによりも冬子自身の寂しさがピークに達していた時期でした。街でバッタリ会って立ち話をするうち、私は、兄嫁がじぶんとの再会を喜ぶ態度を見せたことにおどろきました。 》

《 私の兄は幼少の頃から優等生タイプで、不良少年だった私とはまるで反りが合いませんでした。兄は私を軽蔑していましたが、私のほうも、兄を面白みのない奴だと思って内心軽蔑していました。そんな兄貴を心から愛しているらしい冬子も同様で、初対面から美人だとは思っていましたが、女としては魅力を覚えませんでした。
  ところが、6年ぶりに再会して、昔はつんと澄ましていた兄嫁の態度の変化を見たとき、私は、じぶんの中に昏い欲望が湧きおこるのを感じました。死んだ兄貴が掌中の珠のように大事にしていたこの女を、じぶんのものにして思うさまに汚してやりたい――。そんな激しい欲望を感じたのです。
 箱入りの環境で育ったため、ろくに人を疑うことも知らず、そのうえ今が寂しい真っ盛りである兄嫁に、私という人間を信用させるのは簡単でした(孤独な状態にある人間は男女かぎらず隙だらけなものですね)。
 誠実な態度を装い、口車を弄して、冬子の私に対する信用を信頼に、信頼を男女間の愛情に変えさせるのにも、そう時間はかかりませんでした。兄弟だけあって、すくなくとも外見上は私と兄が似ていたのも、プラスに働いたのかもしれません 》

43母の飼い主 23:2013/10/28(月) 00:44:44

《 とはいえ、最後の一線を超えることには、冬子もずいぶんとためらいを見せました。亡夫へのいまだ冷めやらぬ愛も要因のひとつですが、兄嫁と義弟の間柄であったふたりが男女関係を持つことに対する禁忌の念、また、その事実がもしも周囲の噂になったら…という怖れがあったようです。「そうなったら、息子にも顔向けできません」と泣きそうな顔でよく申しておりました。
  もちろん、そんなことでへこたれる私ではありません。反対に、私は、兄嫁が急速に育っていく私への愛情と、不貞を犯す恐怖との狭間で苦しんでいるようすを観察し、ひそかに楽しんでさえいました。それでいながら、逢瀬のたびに恋する男の顔をつくって、「どうしても君が欲しいんだよ」とか「ぼくを愛しているなら、なぜ受け入れてくれないんだ」とか、熱烈にかきくどくのでした。女はたいていそうですが、とりわけ冬子のように情が濃く、しかも色事の経験値が少ないタイプには、こうした熱烈な言葉、ストレートに感情に訴えかける言葉がいちばん効き目がありますね 》

《 そのように説得をくりかえした結果、とうとう肉体関係を持つことを承知させました。その夜、冬子はホテルの部屋に入る前から、思いつめたような暗い顔をしていました。いざベッドに入っても、最初は人形のように緊張して身動きひとつしませんでしたが、私がじっくりと指や舌で責めていくと、やがて身体が反応しはじめ、冬子の顔には狼狽に似た表情が浮かびました。
  死んだ兄貴とのお上品なセックスしか知らず、性的には極めてウブだった冬子ですが、6年間の孤閨と女の性欲が増してくる39歳という年齢は、冬子自身にさえ想像もできなかった反応を引き出したのでした。
  結局、その夜だけで冬子は8回も絶頂を極めました。呆然自失といったようすの冬子に「兄貴とのセックスでこれだけ逝ったことはあるか?」と訊くと、ぼんやりと首を振り、その後でふいに泣き崩れました。古臭い貞操観念に囚われていた冬子には、義弟の愛撫に正体をなくして燃え盛ったことが、いまさらのように罪深く思われたのでしょうか。その後ろめたさが、かえって冬子の精神を、私という男に深く深く結びつけたようでした。
 私のほうはといえば、その夜の逢瀬以降、甘い言葉を囁くのはすっかり打ち切りにして、サディストの本性をあらわにしていきました。冬子が夢にも思わなかったような荒々しいやり方で犯したり、私の前でオナニーをするよう命じたり、はては露出プレイやアナル調教まで強要するようになりました。 》

《 愛人の唐突な変化に、冬子は最初ずいぶん戸惑ったようすで、しばしば大粒の涙を零すこともありました。けれど、もはやその頃になると、冬子は身も心も私から離れられなくなっていました。
 捨てられたくない一心で、冬子は私のセックスペットになることを誓いました。以来、たとえ尻が熟れた桃になるまでベルトで叩きのめしても、べそをかいたり悲鳴を上げたりしながら文句ひとつ言いません。見知らぬ男たちの前で屈辱的な裸踊りをするように命じても、顔を真っ赤にして泣きながら命令に従うのです。
 ごくたまに、私が「よくできたな」とか「可愛いぞ、冬子」とか誉めてやると、うれしそうなようすで頬を真っ赤に染め、飼い犬が主人に媚びるように尻をもじつかせます。褒美だと言って、髪をやさしく撫でたりキスをしてやったりすると、それだけで冬子のあそこは漏らしたようにぐっしょりです 》

《 すっかり飼いならされて、今ではほとんど言いなり状態の冬子ですが、プレイ中に亡くなった夫や大学生の息子のことを持ち出して、「ほら、天国の兄貴が目を丸くしてるぞ」とか「母親がこんなに助平だと知ったら、息子はどんな気持ちだろうな」とか言っていじめると、パニックを起こして狂ったようになります。亡夫への罪悪感や息子に知られる恐怖感はいまだに強いようです。
  ほかにも、今回体重15キロ増を命じたときなど、さすがに「それだけは勘弁してください」と涙顔で抵抗して、なかなか首を縦にふりませんでした。最終的に命令を受け入れたのは、「やらなければ今まで撮影した写真を息子に送りつけるぞ」という脅し文句が効いたからです。今後も、夫や息子の存在を利用しながら調教を進めていき、さらに変態的で恥知らずなプレイを強制していく所存です(笑) 》

44母の飼い主 24:2013/10/28(月) 00:49:20

 black crow=洋治さんによって、母がずるずると汚辱の淵へ引きずり込まれていくさま――。母を堕とした張本人によって物語られる、そのいきさつを読みながら、僕は胸のむかつくような吐き気を感じた。

 もっとも、語られた内容のすべてを信じたわけではない。母は「捨てられたくない一心」で洋治さんの玩具になったとあるが、こんなことは嘘に決まっている。母は洋治さんに弱みを握られ、脅されて、無理やり従わされているにすぎない――。
 ショックだったのは、どうやら脅迫の種として、息子である僕の存在が利用されているらしいことだ。考えてみれば十分にありうることである。ひょっとしたら、関係の始まった当初からそうだったのかもしれない。
 あるとき、隙をつかれた母は、洋治さんに犯されてしまう。挙句、そのときのようすを写真にまで撮られてしまった。さらには「息子に写真を見せるぞ」と脅されて、母は泣く泣く洋治さんの奴隷になった――。
 真相はまだ分からない。だが、いずれにせよ、僕の洋治さんへの憎しみは募るばかりだった。

 その洋治さん――black crowの投稿は、以降も途切れることなく続いていた。

《 さて、私たちのいきさつをお話するのに長らくスレを消費してしまいましたが、ここらで最近の画像を…。
  今回の写真はつい昨日撮影したものです 》

 そんなコメントともに、新しい画像が2枚投稿されていた。


 1枚目の写真には、ベージュのコートを着て黒ストッキングを履いた母が立っている。場所は野外だ。どこか山道の途中らしく、背景には秋らしく紅葉した木々も見える。傾斜はゆるやかで道幅もそれなりにあるが、あまり人の気配のなさそうな場所だった。
 母はカメラのほうを見て微笑んでいる。コートを着ていても、以前にくらべてポッチャリしたことは分かるが、それ以外にとりわけ変わったところはない。ただし、よくよく見ると、その首元にはやはり「SEX PET」の首輪がつけられていた。

 2枚目も背景はほとんど同じだった。
 ただし、今度の写真の母は、コートの前を両手で開いていた。コートの下はまったくの全裸だった。豊満に実った乳房や臍の凹みが艶かしい腹、あいかわらずツルツルに処理された恥丘まで晒しながら、母はうつむいている。
 おまけに、ふっくらとした下腹には、
「冬子は愛玩用未亡人です」
 と黒のマジックペンで落書きが施されていた。よく見ると、その文字の周囲には「バスト90」「ウエスト71」「ヒップ88」と母のスリーサイズらしき数値まで書かれている。体型を気にする女性にとって、これは裸を晒すのと同じくらいの恥辱であるはずだった。
 どこまでも母を辱めようとする洋治さんの陰湿さ――。僕は全身が総毛立つような気持ちがした。


『スリーサイズを公開しての野外調教、いいですねえ。それにしても、冬子がFカップになったというのは以前書かれていましたが、90センチもあったんですね。まあ、ウエストもそれだけ太くなっているようですが(笑)』
『この後、コートまで剥ぎ取られてしまうんでしょうか…次なる展開が楽しみです。羞恥にのたうちまわる未亡人ペットが早く見たいです!』
『私にも愛玩用未亡人を使わせてくださいw』

45母の飼い主 25:2013/10/28(月) 00:54:32

 閲覧者のレスで賑わう中、声援にこたえるかのようにblack crowの書き込みが登場する。

《 たくさんのレスをありがとうございます。肥えた分の肉が胸についたようで、バスト90センチの大台にのりました。8月に測らせたときは78センチでしたから、3カ月で12センチも大きくなったわけですね。
  せっかく巨乳に育ったので、冬子にはいっそう胸をサイズアップするよう申し付けています。現在の目標は95センチですね。一カ月でクリアできなければ、仕置きとして体重をさらに5キロ増やさせるぞと脅しています。何としてもこれ以上太りたくない冬子は、自宅で毎日1時間も乳房をマッサージしたり、好きでもない牛乳を大量に飲んだりと、必死になっています(そんなことで効果があるかは分かりませんが(笑) 》

《 さて、前回の野外画像ですが、とある展望公園で撮影したものです。
  寂れた公園なので、展望台へ至る坂道にはすれちがう人もありませんでしたが、頂上にたどりつくと、大学生と思われる若いカップルが一組おりました。人気のない場所で昼間からいちゃついていたようです。私たちがあらわれると、あわてたように寄り添っていた身体を離しました。
  隣の冬子もまた、カップルの姿を見て緊張したようでした。私は内心ほくそ笑みながら、『若い人たちがいるな。せっかくだから、お前の身体を見せてやれ』と囁きました。
  冬子は早くも泣きそうな顔で弱々しく首を振りました。同性である若い彼女の目をとりわけ気にしているようでした。だが、そんなことで許す私ではありません。
  思い切り臀を叩いてやると、冬子はようやくのことで外套に手をかけました。ブルブル震えながらコートを脱ぎ始めると、こちらに気づいたカップルのふたりともが目を丸くしました。
 昼間の野外で素っ裸を晒しながら、怯えた猫のように縮こまっている冬子を、無理やり引きずるようにして、私はカップルの近くへ行きました 》

《 『こんにちは。いいお天気ですね』と私が気楽に声をかけると、カップルの男のほうはポカンとした顔で『そ、そうですね』とこたえました。彼女のほうはといえば、震えながらうつむいている冬子を、好奇心いっぱいの目で見つめています。
  『この人、どうして裸なんですか?』と彼女が言いました。物怖じしない性格の娘でした。『身体に落書きまでされちゃって…』
  『あなたのような若いお嬢さんにこんなことを言うのも何ですが、これはSMプレイというやつですよ』と私は言いました。『こいつは真正のマゾでね。いじめられていないと生きていけない女なんですよ。人前でいやらしい真似をして、蔑みの目で見られたり、罵倒されたりするのが三度の飯より好きなんです――そうだな、冬子』
 そう言って、私がまたも臀を引っぱたくと、冬子は穴があったら入りたいという風情で、
  『は、はい…冬子は恥ずかしいマゾ女です。どうぞ、お蔑みになって…』
  と言いました。
  冬子の口上を訊くと、カップルは顔を見合わせて『すげえ、本物の変態なんだな』『わたし、はじめて見た〜』と興奮したように話しました。じぶんの息子と同年代の男女から、好奇と侮蔑の入り混じるまなざしを露骨に向けられて、冬子は満面を朱に染めながらうなだれておりました 》

46母の飼い主 26:2013/10/28(月) 00:57:50

《 カップルはすっかり興味を覚えたらしく、冬子に次々と質問を浴びせました。
  『冬子って名前なんだ。身体に未亡人って書いてあるけど、これホント?』
  『はい、本当です』
  『ふーん。歳はいくつなの?』
  『三十九歳です。もうすぐ四十になります』
  『わたしのママと同じだ。なんかショック〜』と彼女のほうが蔑むように笑いました。『三十九歳ねえ…。そんないい歳して変態なんだ?』
  『はい…変態です。ごめんなさい…』
  『これ、おばさんのスリーサイズだろ』と彼氏のほうが冬子の躰に書かれた数字を指差して言いました。『おっぱい90センチだってさ。すげえじゃん。○○よりずっとでかいな』
  ○○という名前の彼女は、彼氏の言葉にむっとしたようすで『でも、わたしはウエスト71もないもんね。お尻だってこんなに大きくないし』と言いました。
  若者たちから遠慮なく躰を品評される辛さに、冬子は赤らんだり蒼ざめたりしながら、ようやく耐えているようすでした。

  さて、この後ですが、顔を映さないという条件でカップルのふたりに撮影許可をもらい、動画を撮りました。これがそのときの動画です 》


 そんな言葉とともに、動画のストリーミング画面が表示されていた。
 抗いがたい何者かに操られてでもいるかのように、僕は冷えきった指先でマウスを動かし、画面をクリックした。


 動画が再生される――
 母の姿が映し出された。

 目元にはモザイク処理がされている。けれど、そのモザイクはずいぶん薄くて、切なげな瞳の表情までよく分かるくらいだった。母は――「SEX PET」というプレートのついた首輪をのぞくと――、一糸もまとわぬ姿だった。先ほどの写真で見たとおり、雪をあざむくような色白の裸身には侮辱的な落書きの数々が施されている。
 動画は高台にある公園の一角で撮影したものらしかった。背後には古ぼけた展望台らしきものがある。見るからに寂れているとはいえ、いつ人が通るかも分からない野外、しかも白昼の太陽の下で、母は丸裸を晒されていた。晩秋の空気の冷たさのためか、それとも内心の不安や羞恥のためか、うなだれた母の肢体はひっきりなしにふるえていた。
『ぼーっと突っ立ていないで、動画を見てくださっている皆さまにご挨拶しないか!』
 ビデオカメラを手に構えているらしい男の声がした。まぎれもなく洋治さんの声だ。
 きつく叱責された母は、いかにもあたふたしたようすで口を開いた。
『み、皆さま、いつも冬子の恥ずかしい姿をご覧いただき、本当にありがとうございます。ただいま冬子は、こうしてお外で生まれたままの姿になって、年増のみっともない躰をお若い方にお見せしています』
『どうだ、見てもらえてうれしいか?』
 と洋治さんの声が飛んだ。
『は、はい。マゾの冬子は、お若い方に裸を見ていただけて、とても感激しています。ありがとうございます』
 母はそう言うと、前方斜め右に向かって深々と頭を下げた。画面に映ってはいないが、そこに例のカップルがいるらしい。いかにも若そうな男女の笑い声が響いてきた。
『すごーい。本当にビデオで撮影されちゃってる。これ、ネットに流すんでしょ? よくそんな恥ずかしいことができるわねえ…』と女の声。
『なあ。よく見ると、このおばさん、乳首勃ってね?』と今度は男の声がした。
『ホントだぁ。いやらしい』
『マゾって凄いな。俺たちにハダカ見られて興奮してるんだよ。ご丁寧にあそこの毛までツルツルにしてるし』
 カップルのあからさまな会話にできれば耳を塞ぎたいようすで、けれども母はじっと耐えていた。
 しかし、洋治さんが『そろそろ、こいつの裸も見飽きたことでしょうから、次は冬子に芸でもさせましょう』と言い出すと、母は『あぁ…』といかにも哀れっぽく呻いた。

47母の飼い主 27:2013/10/28(月) 01:01:52

『えーどんな芸だろう?』と若い娘の弾んだ声がする。

『なあに、たいした芸はできませんがね。そうだな、では犬芸をご披露しましょうか』
『犬芸って何ですか?』と今度は彼氏のほうが訊く。
『犬の真似をするだけですよ』とこたえる洋治さんの声には笑いが混じっていた。『わかってるな?、冬子。なら、さっさとその場に這うんだ!』
 洋治さんに厳しく叱責された母は、なよなよとした動作で土の地面に両膝をつけると、そのまま身体を前に屈めて四つん這いになった。
 秋の日差しに雪白の肌が照り輝いていた。なまめかしい裸に首輪ひとつをつけて、四つ足で這っている母――。
 およそ現実とは思えない光景だった。
 僕の頭はくらくらした。

『まずは定番の芸からだ。ほら、おすわり』
 洋治さんが言うと、母は両手を地面につけたまま、おずおずと臀だけを落として「おすわり」のポーズをした。両脚はM字に開いているので、鮮紅色の秘肉をわずかにのぞかせる股間の割れ目が丸見えになった。
『うわー、マジでやってる…』
『ああしてると、本物の犬みたいね』
『見ろよ、歳のわりにけっこう綺麗なあそこしてるぜ』
『ばか、何言ってんの』
 そんな感想を漏らすカップルの声には、軽蔑と興奮が入り混じっていた。
 母は懸命に「おすわり」ポーズを保っていたが、その両脚はガクガクと震えっぱなしで、内心の恥辱感の凄まじさを物語っているようだった。――当然だ。こんな人間以下の扱いをされて、平静でいられる者など、いるはずがない――。
 だが、そんな母の葛藤を、洋治さんはもちろん一顧だにしなかった。
『次はチンチンだな。ほら、やれ』
 命じられて、母はモザイクごしでも分かる哀しげな顔を上向けた。かるく握りしめた両手を胸元まで持っていき、招き猫のようなポーズを取る。それにつれて背筋を伸ばすと、見た目にも柔らかそうな乳房がぷるんと揺れ動いた。
『それで完成のつもりか? お前はほんとうに馬鹿犬だな』と洋治さんは呆れたような声を出した。『チンチンのときは舌を出せと教えただろうが。それに、芸を見ていただくときには、笑顔を忘れるなとも言ったはずだ』
 母は慌てて舌を出したが、すぐに洋治さんから『もっと出せ!』と叱られた。ほとんど目一杯に舌を露出させながら、母は目元だけをむりやりに緩ませて、何とか笑顔をつくろうとした。その眼から涙がポロポロこぼれ出すのが分かった。それでも、「チンチン」のポーズをしたまま、母は必死に笑おうとしていた。
『何これおかしー』
『もう人間じゃないね、このおばさん』
 カップルはそんな母のようすに大笑いしていた。

『よし、チンチンはそのくらいでいい。次は伏せだな。ケツのほうをこちらに向けて、やってみせろ』
 みじめなだけでなく体力的にもきついポーズからようやく解放された母に、一息つく間も与えず、洋治さんの次なる指示が飛んだ。
 母はよたよたと身体を半回転させて、臀をビデオカメラのほうに向けた。まるまるとしたその臀には、左の尻っぺたに「白」、右の尻っぺたには「豚」と書かれていた。
『犬なのに白豚だって…』
 若い彼女のクスリと笑う声がする。
 母は両肘と両膝を地べたにつけて、「伏せ」の姿勢を取った。
『いまいち面白みに欠けるな』と洋治さんが冷ややかに感想を述べた。『こんどは頭を低くしてケツだけ高く上げろ――よし、それでいい。じゃあ、次はそのままの格好で、おれが「もういい」と言うまでデカ尻を振ってみせるんだ。いいな? あと、さっきから返事が聞こえないぞ。一体どういう了見だ?』
『は、はい、すみません』途端に母はオドオドとして謝った。『あの、冬子、精一杯がんばってお尻を振ります…どうぞ、存分にお笑いになってください』
『よくできました、と誉めてやりたいところだが――』と言った洋治さんの声は、かすかに笑いをこらえているような気配があった。『犬が人間の言葉をしゃべってどうする。返事はワンで十分だ』
『は、はい…ワンワン』
 言われたとおり犬の鳴き真似でこたえる母に、カップルがまた爆笑した。
『はじめるぞ。ほら、ケツを振れ』と洋治さんが命じた。

48母の飼い主 28:2013/10/28(月) 01:07:58

 地べたに這いつくばった母は、土下座するように頭を低く伏せたまま、臀部だけを高々と掲げていた。その姿をうしろから捉えるビデオカメラには、つきたての餅のような臀だけでなく、陰部の割れ目までがあらわだった。
 洋治さんの命令をうけて、母は、色白のふくよかな臀を振りはじめた。

『ペースが遅いぞ。もっと勢いよくやるんだ』と洋治さんの容赦ない声が飛ぶ。
『ワン、ワン』と母は涙声でこたえた。同時に、臀振りの速度が上がった。はげしく腰をうねらせながら、まるで空中に文字でも書いているように、勢いよく上下左右に振り立てている。それにつれて、むちっとした臀肉が弾むように揺れ動いた。
 カップルは嘲笑を含んだ歓声をあげていた。
『犬がしっぽを振ってるみたいね』
『こいつ、本物の馬鹿女だ』
『ほらほら、もっと嬉しそうな顔でやんなさいよ』
『スピードが落ちてきたぞ。がんばれ、がんばれ』
『鳴き声も忘れずにね』
 みじめな犬芸に励む母を、僕とおなじ年頃の男女が好き勝手にからかい、手を打って囃したてる。
 すでに母は全身汗だくだった。それでも顔を真っ赤にして懸命に臀を振り、何度も何度も『ワンワン』と鳴き真似をくりかえした。そのさまを見て、カップルはさらに遠慮のない笑い声をあげるのだった。

 壮絶といえば壮絶で、滑稽といえばこれ以上なく滑稽で――いずれにしても、息子の僕にとっては見るに耐えない光景だった。だというのに、僕は一秒たりとも画面から目を離すことができなかった――。


 いかに母が頑張ろうと、むりな体勢のむりな動きがさほど続くはずもない。
 三分もたたないうちに完全にへたばってしまった母は、臀部を天上に突き出したまま、ズルズルとその場に崩れ落ちた。ぜえぜえという苦しげな息の音。汗ばんだ総身は血の色を薄く刷いたように朱に染まっている。
『あーあ、のびちゃった』
 若い娘がケラケラ笑いながら言うのが聞こえた。

 そのときだった。今まではほとんど動かなかったビデオカメラが倒れている母に近づきだした。ビデオを手にした洋治さんが歩いたのだ。
 カメラは母の間近に来ると、「白豚」と書かれた臀部だけを突き出した格好で、意識もなく地べたに伏している裸体を、ゆっくりと舐めるように撮影した。
 ふいに、画面の隅から節ばった男の手があらわれて、のびている母の臀をかるく叩いた。
『ほら、起きろ』
 洋治さんの声がした。
 目元にモザイクはかかっているものの、洋治さんの呼びかけで、母がぼんやりとまなこを開いたのがわかった。アップになった母の顔は汗と涙で見る影もなかった。
 それでも、母はつかれきった身体をよろよろと起こすと、洋治さんの前で「おすわり」のポーズを取った。とことん飼い慣らされた姿が哀れだった。
『さっきはよくやったぞ、冬子』
 突然、洋治さんが思いがけず優しい声色を出したので、僕はびっくりした。
 母もハッとしたように顔を上向けて、覗き込むようにカメラを――その奥の洋治さんを――見た。やがて、母の眼から新しい涙があふれだした。ふたたび節ばった手がのびて、くしゃくしゃに乱れた母の髪や、汗と涙にまみれた顔を撫でさすった。
 母は目をつむって、うっとりと洋治さんの愛撫を受けた。その満たされたような表情に、僕は今までとちがう衝撃を受けた。

 ――なんで、
 ――なんでそんな顔するんだよ、母さん!

『見てよ、あの満足そうな表情』
『ご主人さまに誉められてうれしそうだな。本当に犬みたいだ』
 カップルが口々に言う声がした。

49母の飼い主 29:2013/10/28(月) 01:12:50

 髪や顔を撫でおえると、洋治さんのごつごつした手は母の唇に向かった。母は何のためらいも見せずその指先を咥えると、じぶんのつけた汚れを舌で舐めとるかのように、一心にしゃぶりはじめた。
『今日は若いカップルさんの前でたっぷり恥をかいたな。つらかったか?』
 先程と同じように優しげな洋治さんの声が響く。
 しゃぶっていた指先から唇を離すと、母は『ワン』と小さく鳴き、媚びるようになよなよと身体をくねらせた。
『最後のケツ振りはなかなかの見ものだったぞ。こんど《黒鴉》の店でも披露させるとするか』
『ワン…』
『なんだ、イヤなのか?』洋治さんの笑い声にはいつもの嘲弄するような響きはなかった。『イヤでもやらせるぞ。なにしろ、お前は私のペットだからな』
 そう言うと、洋治さんは手を伸ばして母の頭をまた撫でた。そして言った。
『冬子は私の可愛いペットだ』
 母は「おすわり」したまま、放心したように洋治さんを見上げた。
『その顔はどうした? 不服なのか?』
 からかうような洋治さんの問いかけ。
 母はあわてたように首を横に振った。そして次の瞬間、母は前屈みになって洋治さんの足元に顔を寄せた。
 あたかも飼い主に甘えかかる犬のように、母は、みずからの頬を洋治さんの革靴にこすりつけた。そうしながら、白い満月のような臀を左右に大きく振っている。
 全身を使って母は媚びていた。その姿はまったく一匹の獣といってよかった。
『可愛いぞ、冬子』と洋治さんはもう一度言った。『私に飼われてうれしいか?』
『ワンワン』
『私の命令ならどんなみっともない真似でもできるな?』
『ワン』と鳴きながら母はいっそう臀を揺すった。
『よし。ならもう一回カップルさんの前で恥をかいてこい』と言った声はいつもの冷酷な響きに返っていた。
 洋治さんはどこからか青いボールを取り出すと、母の眼前にかざした。ソフトボールくらいの大きさの玉だった。
『どうすればいいのか分かるな?』
『ワン』と母は素直にこたえたが、その顔にはちらりと哀しみの気配がうかんだようだった。それでも母は、洋治さんの手からボールを咥えとると、四つん這いの犬歩きで、カップルのほうへ進んでいった。
 そのとき、はじめてビデオの視界に若いふたりの姿が入った。映されたのは顔から下ばかりだったが、派手な服装を見るかぎり、いかにも今時のちゃらついた若者という感じだった。
 カップルの前にたどりつくと、母は青いボールを咥えたまま、誘うように臀を振ってみせた。
『なんですかーこれ?』と彼女のほうが笑いながら訊いた。
『そのボールを投げてやってください。こいつがどこまでも拾いにいきますから』と洋治さんがこたえた。
『へー、おもしろそう』
 彼氏のほうが母の口からボールを取ると、十メートルほど向こうに放り投げた。
 母は『ワンワン』と鳴きながら、四つ足でボールを追いかけていく。それにつれて、豊かな胸乳が上下に弾むように動き、透けるように白い太腿や、しっとりと息づいた腰まわりの肉が小波のように揺れた。
 そのさまを見て、観客のカップルは腹を抱えて笑っていた。洋治さんがこの場につくりだした加虐の雰囲気に、若い彼らは完全に呑まれていた。

50母の飼い主 30:2013/10/28(月) 01:19:34

 ようやくのことでボールを地面から咥えとると、母は息を切らしながら、四つ足で這い戻ってきた。差し出されたボールを受け取りながら、若い娘は笑いすぎて苦しそうな声で『よしよし』と言って、母の髪をやんわりと撫でた。
 男のほうはすっかり調子づいて、彼女の手前も繕わず、母の汗ばんで桜色に染まった背中や、なまめかしく盛り上がった双臀を撫でまわしていた。母は一切の抵抗を示さなかったばかりか、男の指が秘めやかな箇所に伸びてくると、両脚をわずかに広げ、臀部をもちあげるようにして、男がそこを弄びやすいような姿勢すら取った。
『もうビッショリだ』
『まあ、いやらしい犬ね。あそこをさわられながら、鼻の穴をヒクヒクさせてるわ』
 お仕置きと言わんばかりに、彼女の手が熟れきった乳房の尖がりを摘むと、母は『ンン…』と哀れっぽく呻いて、肢体をもぞもぞ動かした。
『いやらしい身体を弄ってもらってそんなにうれしいの?』と娘が意地悪く言った。加虐の空気にあてられた彼女はすっかりサディスティンの口調を身につけていた。
『ワンワン』
『子持ちの母親のくせに、どこまでも恥知らずね』
『クゥン…』と鳴いて母は目を伏せた。カップルは大笑いした。
『なあに、それ? 冬子は本当に馬鹿犬ねえ。じぶんでもそう思うでしょ?』
『ワン』
『セックスのことしか頭にないのよね?』
『ワン』
『いつでもサカリのついた牝犬なんだよな?』と今度は彼氏が訊く。
『ワン』
『はしたない犬には罰を与えなきゃね』と言って、彼女はボールを遠くへ放り投げた。そして、母の白い臀をぱちんと平手打ちした。『さあ、取ってきなさい』
 よたよたと裸の母が駆けていく。もちろん、四つ足で這ったまま――。
 
 そんな光景が幾度もくりかえされた。とうから限界に近づいていた母の体力は、ボールを拾いにいくたびに消耗された。息は荒く、動作は鈍くなり、顔色は蒼褪めていった。けれども洋治さんは何も言わず、ひたすら冷徹にビデオカメラを構えていた。
 そして五回目にボールが投げられたとき、母は口でそれを拾おうとして、頭からその場に崩れ落ちた。もうピクリとも動けなかった。そこで動画がおわった。

51悦司:2013/10/28(月) 01:45:47
励まし・応援等ありがとうございます。
性花器はいいですねえ。

52名無しさん:2013/10/28(月) 09:55:52
すごい展開にドキドキ高揚感でいっぱいです。
悦司さんの文章力に脱帽です。
マイペースで冬子を調教し、より一層淫らな女に堕してくださいませ。
ありがとうございます。

53名無しさん:2013/10/28(月) 21:12:26
ゴム風船で子宮をふくらませて強制臨月もいいね

54名無しさん:2013/10/28(月) 22:07:45
素晴らしいですね。ボリュームと内容に圧倒されました。
失礼ながら作者さんの嗜好は私のそれとかなり通ずるものがあります。
女というのは哀しく惨めなほど美しいものですね…
続きを楽しみにしています。

55愛読者:2013/11/05(火) 11:38:45
悦司さん、無理せずマイペースで頑張ってください。

56悦司:2013/11/05(火) 18:06:48
いつも感想等いただきまして、ありがとうございます。
冬子の犬芸はちょっとマニアックすぎるかなと思いつつ、いきおいで書いてみました。
この先も、かなり過激かつ陰湿な展開がつづく予定…。 
それにしても、私は書き始めると文章に凝りたくなるタイプなので、結果的に描写がやたらと長くなってしまいますね。

とはいえ現在、仕事のほうが忙しくて執筆作業が滞っていますが、そのうち投稿再開できると思います。
しばしお待ちを…。

57名無しさん:2013/11/05(火) 21:28:28
陰湿な感じが素敵です

58名無しさん:2013/11/05(火) 23:11:11
悦司さん、ありがとう
マイペースでお願いします
マニアック大歓迎です

59名無しさん:2013/11/13(水) 02:26:51
体型の変化いいですね!

60どんぐり:2013/11/13(水) 21:24:57
あっというまに大ファンになってしまいました。体型の変化に激モエです。
髪型とか化粧とかファッションとかどんどん下品になっていくのはどうですか?

61母の飼い主 31:2013/11/14(木) 16:34:40

 野外動画の反響は凄まじかった。

『みじめな犬芸最高www 年下の男女に見られながら生き恥を晒すことができて、マゾの冬子には最高の刺激だったことでしょう』
『むちむちの裸で犬歩きする未亡人、たまらなくエロかったです。かつての良妻賢母も、色ボケするとここまで恥知らずになれるもんなんですねww 死んだ亭主や大学生の息子が可哀想♪』
『後半は完全に犬になりきっていましたね。あの品のいい奥様がとうとうここまで来たかという感じ…。私も相当のSですけど、愛するご主人様の命令でチンチンや尻振りに励む冬子の姿には、多少の哀れみすら覚えました。健気なペットですね。それにしても、飴と鞭を使い分けるスレ主の調教手腕には脱帽です』
 なかにはこんなコメントもあった。
『ここまできたら、次は本物の牡犬(ジャーマン・シェパードなどの大型犬)をつれてきて、冬子と「再婚」させてはいかがでしょう? もちろん、冬子には妻の務めとして、牡犬との「夫婦の営み」を最低毎日一回は義務づけてください♪』

 母の信じられないような痴態に淫欲をかきたてられた閲覧者の感想、あるいは今後の展開に対する妄想・要望で、スレッドは次々と埋められていた。
 black crowこと洋治さんのレスもあった。

《 野外動画、多くの方に楽しんでもらえたようで幸いです。
  冬子について「健気なペット」と誉めてくださった方もいましたが、なーに、私に言わせればただの馬鹿女ですね(笑)玩具としてはわるくないので、賞味期限が切れないうちは、せいぜい使ってやることにします。
  ところで、野外動画に登場してもらったカップルですが、じつはあの後、連絡先を交換しました。彼氏さんも彼女さんも初対面ながらノリノリで撮影に協力してくれましたし、今後も冬子の調教を進めていく上で、彼らとつながりをもっておくのもわるくないと考えたからです。ひとり息子と同じ年頃の大学生で、しかも片方は女性なんて、冬子にとってこれほど嬲られて屈辱を感じる相手はいないですからね。
  おふたりにとっても今回の体験は刺激的だったらしく、「こんどは自分の友だちにも冬子の犬芸を見せてやりたい」とはりきっています。近々、彼ら主催の飲み会に冬子を参加させて、卑猥な余興を披露させる計画が進行中です。冬子にそう伝えると、早くも真っ青な顔をしておりました(笑)
  そんな冬子ですが、今回の野外調教を通して、ますます隷属の度合いが深まったようです。今は冬子の自宅にて、さらに卑劣で陰湿なプレイを強制しています 》

 自宅――――。
 僕はじぶんが生まれ育った家を思いうかべた。
 かつては家族三人で、父の死後は母と僕のふたりで、慎ましく暮らしてきたあの家。そんな懐かしい我が家にも、洋治さんはズカズカと上がり込み、好き放題に母を汚しているのだ――。
 僕はじぶんが完全に悪夢の世界に落ち込んでしまったのを感じた。
 いちばんの悪夢は、洋治さんの魔手に絡め取られた母が、身体ばかりか精神まで虜とされているように見えることだ。あの野外動画を見た今は、いやでもそう認めざるをえなかった。
 飴と鞭。
 閲覧者のひとりが書いていた。きっとそうなのだろう。洋治さんは残酷な顔と甘い顔を使い分けることで、世間知らずな母の素朴な心を染め変えていき、どれだけいたぶられても飼い主から離れられない犬のような、屈辱的なプレイにも諾々と従う女へと変貌させてしまったのだ。それはいわゆる「洗脳」のプロセスと同じものであるはずだった。

 僕は唇をぎりっと噛み締めた。洋治さんに対する憎しみが胃の腑を突き上げる。
 けれども、まだ手遅れではない。
 僕はかならず母を救ってみせる――。

62母の飼い主 32:2013/11/14(木) 16:36:25

 しかし――
 そんな僕の意気込みをくじくように、次なるblack crowの投稿が昨日――11月7日にされていた。

《 いつもありがとうございます。
  さて、少し間が空いてしまいましたが、未亡人ペットの調教模様を報告します。
  先日も書いたように、現在は冬子の自宅での調教をメインにしています。
  じつは少し前まで、自宅――とりわけ死んだ亭主の仏壇がある寝室での調教は、ペットが何よりいやがるものでした。亡夫や息子に対する罪悪感がいまだ根強い冬子にとって、それはキリスト教徒が神を冒涜するのにも似た行為だったのでしょう。私が半ばむりやり寝室でのプレイを強制すると、冬子は決まって泣き叫び、ひどいパニック状態になって、さすがの私でも手のつけようがなくなるのでした。
  けれど、そんな冬子もこのところのハードな調教を経て、私のセックスペットとしての自覚がいっそう深まったようです。これを機会に、今後は、夫の遺影のある寝室だろうが、あるいは墓の前だろうが、私がひとたび命じればどんな場所でも素っ裸になり、牝としての姿をさらすよう、冬子に誓わせました。
  誓いの言葉を述べている間、冬子は蒼白な顔に重苦しい憂いの色をうかべていましたが、やがてその場に崩れ伏すと、私の足にすがりついて『ここまでする冬子を哀れにお思いになって…。捨てないで…』と涙ながらに訴えてきました。
 『捨てられたくなかったら、私の機嫌を損なわないように全力で励むんだな』と冷たく突き放してやると、冬子は床に額をこすりつけながら『励みます…××さんのためなら、冬子、どんな恥でもよろこんでかきます…だから捨てないで…かわいがって』と懇願をくりかえすのでした。
  どこまでも馬鹿女ですね(笑)
  その日はさっそく、死んだ旦那――私にとっては兄貴ですが――の仏壇がある寝室で、たっぷりと嬲ってやることにしました。今回の投稿はそのとき撮った動画です。なお、いつも動画を撮る際には、冬子には私のことを「ご主人様」と呼ぶように躾ているのですが、今回はよほど感極まったのか、「××さん」と私の名前を喋る場面が数箇所あります。その部分にはピー音で修正を入れました。 》

 そして新たな動画が投稿されていた――。


 画面が再生される。
 母の姿が映し出された。
 着物を着ている。といっても、外着ではなくて、ふだんの母が家で着用している地味な藍色の室内着だった。
 着物姿の母は敷かれた布団のうえに正座していた。ビデオカメラはその姿を斜め上から捉えている。驚いたことに、今回の動画にはモザイクがかけられておらず、母の涼やかな目元までくっきりと映し出されていた――。

『ほら、ビデオが回っているぞ。ご挨拶しろ』
 洋治さんの声がした。
『はい』と答えて、母はおずおずとカメラのほうを見上げた。画面ごしに直接目が合ったようで、僕はドキリと胸が高鳴るのを覚えた。
『…あの、皆さま、いつも冬子のみっともない身体をご鑑賞いただき、本当にありがとうございます。今日はこれから夫の仏壇があります自宅の寝室で、ご主人様にいじめていただきます…。みだらで恥知らずな未亡人の、あさましく乱れる姿を、どうぞ、ご存分にお笑いになってくださいまし…』

 母が絞り出すように口上を述べ終わると、ビデオカメラはゆっくりと見回すように、撮影場所である室内のようすを収めていった。たしかにそこは我が家の寝室だった。見覚えのある障子、箪笥、そして父の遺影が置かれた仏壇――。
 やがてカメラ(を手にした洋治さん)は仏壇に近づいていき、くるりと向きを変えると、そこに設置された台座に固定された。つづいて、こわばった表情の母が仏壇の前にいざり寄る。カメラは遺影と向き合う母の姿を、斜め正面から捉える格好になった。

63母の飼い主 33:2013/11/14(木) 16:38:39

 ふいに、黒のYシャツに同じく黒のジーンズを履いた男が画面にあらわれた。仮面舞踏会でかぶるような目元を隠すマスクをつけている。もちろん、僕にはその男が洋治さん本人であることがすぐ分かった。

 極度の羞恥と罪悪感のために、母はとめどなく震えていた。洋治さんがそんな母の細い肩をゆっくりと引き寄せる。母はちらりと視線を動かして、父の遺影におびえたようなまなざしを向けた。
 ものも言わず、洋治さんは母の唇にみずからの唇を押しつけた。瞬間、母は『ンッ…』とか細い声をもらし、切なそうに眉根をたわめて、男のむさぼるような口づけを受けた。
 数秒も経たないうち、今まで暗く蒼褪めていた母の貌が、みるみるうちに桜色に染まっていった。それはほとんど信じられないような変化だった。いつしか母は、なかば無意識のように両手を回して洋治さんの身体を抱きしめ、侵入してくる男の舌に、夢中になって舌を絡めていた。時どき鼻孔から噴きこぼれる子犬の鳴くような声が、母の激しい興奮を物語っていた。どういうわけか、時折、鈴の音色のようなチリンチリンという物音が断続的に聞こえていた。
 たっぷり数分間もの間、熱烈なディープキスを交わした後、洋治さんはようやく顔を離した。母は唇の端からよだれの糸を垂らしながら、呆けたような表情で洋治さんを見つめている。
『なんだ、その色ボケした面は。お前はほんとうにキスに弱いな』
 洋治さんが笑いながら言うと、母は『ああ…』とか細い声で啼いた。
『もうアソコをぐしょぐしょに濡らしているんだろう?』
 母は両手で顔を覆いながら、こくんとうなずく。
『冬子はもう濡らしています…ごめんなさい…』
『謝るのは俺じゃなくて、兄貴にだろうが』と洋治さんは鼻で笑った。『ほら、兄貴の遺影に向かってきちんと謝ってみせろ』
 母は辛そうな表情でかぶりを振っていたが、洋治さんに何事か囁かれて、おずおずと仏壇のほうに視線を向けた。
『あなた……ごめんなさい。あなたの妻の冬子は…キスだけで興奮してしまう、恥ずかしい女です…。今もあなたのご兄弟の××さん(ここで初めて修正音が入った)にキスしていただいて…うれしくて…しあわせで……冬子、おまんこをぐっしょり濡らしてしまいました…。はしたない不貞妻でごめんなさい…』
『どんな男でもキスされたらこんなに感じるのか?』と洋治さんが意地悪く訊いた。
『ちがいます…あの…』と珍しく反駁しながら母はなぜか顔を赤らめた。『お慕いしている方の…キスだからです…』
『お慕いしている、とは、また古風な言葉を使う女だな』と洋治さんは笑いながら言った。『ようするに、私を愛しているということか?』
『は、はい…愛しています…心の底から…』と母は鼻頭を兎のように赤く染めながら切れ切れに言った。『冬子は××さんの女です…』
『非道い女だな。旦那の前だぞ』
『ああ……ごめんなさい』
『それにお前は、私の女なんてたいそうなもんじゃない。ただのセックスペットだ。そこのところを忘れるな』
『申し訳ございません…』
 母はガックリとうなだれた。
『おら、さっさと着物を脱いで、淫乱妻の躯を亭主に見せてやれ』
 命じられて、母はよろよろと立ち上がると、帯紐をしゅるりと外した。

 果物の皮を剥くように、色白の豊満な裸身があらわれる。むっちりと脂の乗った腰つき、重たげに揺れる乳房は牝牛のそれを思わせるボリュウムで、華奢だった頃の母――それはわずか数ヶ月前のことなのだが――を知っている者からすれば、信じられないくらいに「おんな」を発散させていた。
 驚いたことに、母の熟れた乳房の先端部分、そこだけ少女のような薄桃色の乳首には銀細工のようなものが付けられていた。よく見ると、それは胡桃ほどのサイズの鈴で、乳首を貫通したピアスによって留められていた。さきほどのチリンチリンという物音はこれが原因だったらしい。
 さらにもうひとつ、乳首の鈴とはべつに、母は妙なものを身につけていた。下半身のひそやかな場所を隠す下着である。母が身につけているのはどうみても女児用のそれで、正面の▽部分には子猫のアニメキャラクターを象った刺繍が付いていた。たっぷりとした腰まわりをしているだけ、その女児用パンツはサイズが小さすぎ、今にもはちきれそうだった。

64母の飼い主 34:2013/11/14(木) 16:41:27

『なかなか愉快な格好をしているじゃないか』と洋治さんが嘲るように言うと、母は恥ずかしげにもじもじと動いた。

『ほら、動画を見ている皆さんや、あの世の亭主に説明してみろ。その乳首に付けた鈴は何のためのものなんだ?』
『はい…この鈴は、冬子がどんなときもペットとしての身分を忘れないように、ご主人様に付けていただいたものです……外出しているときもチリンと鳴るたびに、とっても恥ずかしいです』と母は時おり声を詰まらせながら言った。『それに…冬子はいま90センチのお乳を95センチまでサイズアップするように命じられています…。この鈴は見た目よりも重いので、「鈴の重みでお乳が引っ張られて大きくなるぞ」とご主人様が仰られて…』
『どうだ、効果はありそうか?』
『あの…お乳が、た、垂れてきました…』と母が情けない声で言ったので、洋治さんは大笑いした。
『デカ乳のタレ乳か。ますます年増らしい身体つきになれてよかったじゃないか』
『恥ずかしい……』
『一ヶ月で95センチにできなければ、さらに5キロ太る約束だったな』
『ああ…それだけは……』と母は目を潤ませた。
『それが嫌なら胸をでかくするためにせいぜい努力するんだな』と洋治さんは冷たく言い放った。『ところで、その下着はどうした?』
『これは…このあいだ新しく買ったものです…。冬子はしものお毛々を剃っているので、年増のくせに子供みたいな、恥ずかしいあそこをしています…。下着もそれにふさわしく子供っぽいものにするように、ご主人様がお申し付けになりましたので……持っていた下着は全部捨ててしまい、このようなものを身につけることにしております…』
『買う前には店先で一枚一枚試着したんだったな?』
『…はい…店員の方にお願いして…』と母はくすんと鼻を鳴らした。
『まったく、あのときの店員の呆れ顔といったらなかったな』と洋治さんは声を立てて笑った。
『ああ、恥ずかしい…』
『しかし、思ったよりもずっと似合っているじゃないか。お前も四十路間近になって、こんな可愛らしいパンツを履けてうれしいだろう?』
 母は身をよじらせながら、真っ赤な顔で『うれしゅうございます…』と小さく答えた。
『ふふん。さあて、せっかくだがその下着を脱いで、子供みたいなあそこを晒してみせろ』
 洋治さんに命じられて、母はその滑稽な女児用パンツをそろりと脱いでいった。円熟した体にはいかにも不釣り合いな、つるつるの恥丘と無垢な割れ目がさらけだされる。
『死んだ兄貴はお前のパイパン姿など見たこともないだろう。よく見せてやれ』
 洋治さんに真っ白な臀をぴしゃりと叩かれ母は、仏壇の前に臀部を落として、震えのやまない両脚をM字に広げてみせた。
『両方の手であそこを開いて、奥のほうまで見てもらえ』
『ああ……あなた、ごめんなさい』ほとんど無意識のように謝罪の言葉をつぶやきながら、母は言われるまま剃り上げた股間を遺影の前に晒してみせた。その耳元で洋治さんが何かを囁く。母は潤みきった目で遺影を見つめながら、青褪めた唇を開いた。
『ねぇあなた…冬子のおまんこ、どうですか…?』
『辛気臭いツラをするな。せっかく兄貴に見てもらうんだ。もっとうれしそうに笑顔でやれ。遺影から目を離すなよ』
『はい…』
 母は切れ長の二重に涙をいっぱい溜めながら、むりやりに笑顔をうかべた。
『あなた見て…こんな風につるつるになったところ、あなたはご覧になったことないでしょう…? ご主人様のお好みに合わせて、毎日朝と晩にここのお毛々を剃ってるの…。冬子は毛深いからたいへんなの…。ねぇ、剃り残しがないか、あなたもじっくりお確かめになって…』
 みずからの手指で割れ目をくつろげ、奥に秘された鮮紅色のおんなをのぞかせながら、母はそんなふうに亡き夫へ――僕の父へ――強制された言葉を語りかけた。その間にも母の優しい肩はぶるぶると震え、じぶんの吐く背徳的な言葉の重みで今にも潰れてしまいそうな風情だった。だというのに、母は洋治さんに命じられたとおり、必死に笑みをつくったまま、その視線を父の遺影から決して外そうとはしないのだった。
 母の白い胸にくくりつけられた鈴が、チリン、と場違いな涼しい音色を立てた。

65悦司:2013/11/14(木) 16:47:31

ちょっとだけ続きを。あいかわらず忙しくて執筆時間が取れません。
でも感想やアイディアなどを頂けるとやる気が出ます。これからもよろしくお願いします。

66名無しさん:2013/11/14(木) 21:43:31
陰湿な感じがいいです。ゴム風船で強制臨月もいいですね。

67愛読者:2013/11/15(金) 17:21:49
仏壇の前でいよいよ性花器に生け花か・・・
と思わせるような展開ですね。

続きを期待してお待ちしていますが無理をなさらずにマイペースで宜しくお願いします。

68愛読者:2013/11/20(水) 13:29:39
気長に待ってますから続きよろしくです。

69母の飼い主 35:2013/12/03(火) 13:40:46

『どうだ、死んだ亭主にパイパンまんこを披露できてうれしいか?』
『はい…うれしゅうございます…』
 震える声でそう答える母。その間も、みずからの手で股間の秘めやかな箇所を割り開いたままだった。無毛の丘にぱっくりと開かれた母の陰部はしっとりと息づき、まるでべつの生き物のように見えた。

『ふふん。それはそうと――』と洋治さんは急に話を変えた。『お前はいつもどこで毛を剃ってるんだ?』
『お風呂場でございます』
『そうか。なら、今後はこの仏壇の前でやるようにしろ。毎日朝晩、みっともない格好でしもの毛を剃っているところを、死んだ亭主に見てもらうんだ。わかったな?』と洋治さんはニヤニヤしながら言った。『剃毛しおわったら、その場でかならずオナニーしろ。あの世の旦那への供養と思って、イクまでやるんだぞ』
 母は哀れな目で何か言いたそうに唇を開きかけたが、結局言葉を発することができずにうつむいてしまった。
『なんだ? 不満そうだな』と洋治さんは意地悪そうに言った。途端に母は蒼くなって『そ、そのようなことは…』と言い訳しかけたが、洋治さんは耳を貸す素振りも見せず、全然別のことを言い出した。
『そうそう。お前、今日中にペットショップへ行って、室内犬用のトイレを買ってこい』と洋治さんは言った。『よくあるだろ? 砂の上に用を足すやつだ』
『あの、それは…どうしてですの?』とおずおずとした口調で尋ねる母。
『どうしてって、分かりきってるだろう。馬鹿犬の躾のためだよ』と洋治さんはあっさり言い放った。『たとえ自分の家だとしても、ペットの分際で人間様のトイレを使うなど、もってのほかだからな。これからは催したら犬用のトイレですませろ。いいな?』
『ああ、そんな…』
『言い忘れたが、その犬用トイレも仏壇の前に置いておくんだぞ。これからは大きい方も小さいほうも、死んだ亭主に見てもらいながらやれ。亭主とはいえ、女房の排泄する姿なんて見たことがないだろ? あの世の兄貴を喜ばせるつもりで、毎日盛大にひり出してみせろ』
 返事をすることもできず、がっくりとうなだれてしまった母を、洋治さんは意地の悪い目つきで見やった。
『不服なら庭でやらせてもいいんだぞ。毎日、隣近所の人間に見られながら、糞や小便を垂れてみせるか』
『い、いえ、不服など…ございません』と母は慌てて答えた。
『なら旦那にもきちんと報告しろ』
 母は膝をそろえて正座しなおすと、濡れたまなざしを仏壇に向けた。その耳元で、マスクをした洋治さんが囁きかける。やがて洋治さんに促され、母はおどおどと唇を開いた。
『あ、あなた…冬子はこれから毎朝晩、あなたの前で恥ずかしいところのお毛々を処理することになりました。剃った後は毎回はしたないオナニーをご披露しますから、よかったらあなたもお楽しみになってね…。それと、ご主人様のご命令で、これから冬子はおトイレもあなたの前ですませることになったの。恥ずかしいけれど、冬子がおしっこや大きいほうをするところを、どうぞご覧になってくださいね…』
 言葉を詰まらせながらようやくのことで言い終えると、母は両手で顔を覆って泣き崩れた。
『たいした夫婦愛だな。天国の兄貴も涙を流してよろこんでいることだろうよ』
『うう……』

70母の飼い主 36:2013/12/03(火) 13:42:25

『ほら、こっちを向け』
 洋治さんは泣いている母の顎をつかんで、じぶんのほうを向かせた。それから、ズボンのチャックを下ろすと、勃起したものを母の顔に突きつけた。
『しゃぶれ』と洋治さんは命じた。
 母は潤んだまなざしをちらりと仏壇に向けたが、すぐに観念したようすで口を開き、赤黒い怒張を咥えた。
 みずからの朱唇でしごくようにしながら、グロテスクな怒張の先端から雁首、裏筋、玉袋に至るまで、母は従順に舌を這わせていく。
 やがて母の頬に赤みが差し、うつくしい富士額には汗の珠が光りはじめた。時折、鼻孔から噴きこぼれる息の音がはげしくなっていく。
『どうだ、チンポは旨いか?』と洋治さんがからかいの言葉を投げる。
『お、おいひいでふ…』とペニスを頬張ったまま返事する母。
『旦那にもこんなふうに口でしてやったことはあるのか?』
『ありまふぇん…』
『哀れな旦那だな。じぶんの女房にフェラチオもしてもらえないとは』
『うう…ごめんなふぁい…』
『そら、こんどは乳房を使ってみせろ』
 夢中で口を使っていた母は、そう言われてようやく肉棒から唇をはなした。唇の端からよだれの糸がすーっと垂れるのも気づかないようすで、母はみずからの豊満な双乳に手を添えると、その柔らかな肉でペニスを挟み込んだ。
 母はペニスを包み込んだ乳房を両手でもちあげながら、ゆっくりと擦り合わせ始めた。もっちりした巨乳が形を変えながら怒張をしごき、その度、乳首に取り付けられた鈴がちりんちりんと鳴る。そうしながら母は時折、膨れ上がった肉棒に頬をすりよせると、その先端にチュッチュッと愛しげに口づけした。男の足元に跪き、『ハッ…ハッ…』と切なげな吐息を漏らしながら、一心不乱に淫技を駆使している母――。そのすがたはまさしく性の奴隷そのものに見えた。
『おら、デカパイになったおかげで、こんなこともできるようになりました――と亭主に言ってみろ』
『あ、あなた見て…冬子、お乳が大きくなったおかげで、こんなこともできますぅ!』
 叫ぶように言った母の目尻は吊りあがって、いつの間にか相が変わっていた。そのまなざしは自身が奉仕している肉棒を、食い入るように見つめている。
『なんだ、パイズリしているうちにまたサカってきたのか?』と洋治さんが嘲るように言う。
『あぁ…冬子、発情してます…』と母は熟れた乳房でペニスをしごきながら答えた。『いやらしい女でごめんなさい…』
『亭主の遺影の前だというのに呆れた淫乱女だな』と洋治さんは言った。『そんなに私のチンポが好きなのか?』
『は、はい…××さんのおちんちん、太くて固くて…逞しゅうございます』母は媚びるように巨きな臀をもじつかせながら、眼前の怒張にうっとりとキスをした。『冬子は××さんのおちんちんの虜です…』
『旦那よりもいいんだよな?』
『…はい…あなたごめんなさい…』
『助平な牝犬のくせに今さら貞淑ぶるな。亭主に謝るそばから、あそこを濡らしてるんだろうが』
『ぬ、濡らしてますぅ…』と母は眉を八の字にたわめた情けない顔で言った。
 洋治さんは大声でわらった。
『本当にお前は馬鹿犬だな』
 そう言うと、洋治さんは膝下の母に手を伸ばし、奇妙に優しげな仕草で髪を撫でた。母は奉仕の手を止めて、おずおずと洋治さんを見上げた。
『だが、馬鹿な犬ほど可愛いということもある』
『あぁ……』
 母の目がじわりと潤んだ。

71母の飼い主 37:2013/12/03(火) 13:44:06

『これからも私のペットでいたいか?』と洋治さんが穏やかな口調で訊く。
『は、はい…』と母は声を詰まらせながら答えた。『冬子は××さんのペットでいとうございます…いつまでも…』
『人間以下の扱いをされてもか?』
『××さんになら…どのような扱いをされても…』
『耐えられるというのか?』
『耐えられます…冬子、きっと耐えます…』と言いながら、母は思いつめたまなざしで洋治さんを見つめた。『おうちでもお外でも、冬子はよろこんで恥をさらします…知らない方の前で恥ずかしい芸もご披露します…どんなご命令でも精一杯努めますから…どうかお傍において…馬鹿犬の冬子を躾てくださいまし…』
『どんな命令でも、か』洋治さんは薄くわらった。『それでは私の命令があれば、どんな男にも抱かれるんだな?』
『ああ、それは…』
『いやなのか?』
『い、いえ…』と母は鼻をすすりながら答えた。『××さんのご命令があれば…冬子、どんな方にも身を任せます…一生懸命お尻を振って…ご満足いただけるまでご奉仕いたします…』
『いいぞ、冬子』と洋治さんは言って、啜り泣いている母の頭をぽんぽんと叩いた。『それでこそ私のペットだ』
『うれしゅう…ございます』
『褒美にお前の欲しいものを恵んでやる。じぶんでまたがれ』
 洋治さんはその場に仰向けになった。その股間からは野太い怒張が天を突くように伸びている。
『ああ…』と感極まったような吐息を漏らしながら、母はそろそろと洋治さんの下半身に馬乗りになった。もはや亡き夫の手前も繕わず、その白い手で肉棒をつかむと、おのれの秘芯へと導き入れていく。
 結合の瞬間、母は『ひーっ』と魂消るような声で啼いた。
『なんだ、もう逝ったような声を出しやがって』と洋治さんに笑われて、母は両手で顔を覆って恥じらった。
『そら、さぼってないでケツを振れ』
 洋治さんが母の臀をぴしゃりと平手打ちする。母は『は、はいっ』と叫んで、腰を使いはじめた。
 頬を紅潮させた母がはげしく腰をうねらせる度、つきたての餅のように白くて丸い臀部の肉が揺れる。それにつれて、ミルクが詰まっているような豊乳がぷるんぷるんと弾み、先端の鈴がいかにも場違いな涼しい音色を立てた。
 かつての折れそうな肢体からは想像もできぬほど、短期間で熟女らしく肉づいた総身に汗を光らせて、必死に奉仕する母――。余裕の顔でその奉仕を受けながら、手を伸ばして母の巨乳をなぶっていた洋治さんが、ふいにニヤリとわらった。
『こうしてブクブク肥えた身体を眺めると、お前は犬というよりも豚に見えるな。やはり白豚だ』
『ああ…またそのようなことを仰って…』騎乗位の尻振りをつづけながら、母は哀れっぽい顔をした。
『馬鹿犬よりも白豚と呼ばれるほうがいやなのか?』と洋治さんはわらった。『おかしなやつだな』
『だって…』と言いかけて母は口をつぐんだ。
『なんだ?』
『だって…歳をとっても女なんです…』と母は涙ぐみながら言った。『お慕いしている方に豚呼ばわりされたら…女なら誰だって…』
『つらいというのか? ペットの分際で文句の多いやつだな』と洋治さんが意地悪く言った。
『ああ…ごめんなさい…』母は悄然とうなだれた。『豚でけっこうです…冬子はみっともなく太った白豚です』
『よくわかってるじゃないか』と洋治さんが揶揄した。
『あぁ…みじめです…』
『男にまたがってチンポを貪りながら、何言ってやがる』と洋治さんはわらった。『それよりもどうだ、旦那の前で咥えこむチンポの味は? きちんと旦那に報告してみせろ』
 そう言って洋治さんはまた母の臀をぴしゃりとぶった。
『あんっ…わかりました…』
 母は仏壇のほうに顔を向けた。そのあいだも腰のうねりは止めず、男根への奉仕をつづけている。
『あなた…ご覧になってる? いま冬子はご褒美で××さんのおちんちんを頂いているの…とっても気持ちよくて冬子しあわせ…』
 そんな台詞を口にしながら、母の意識はもはや夫への罪悪感から遠くはなれて、こみ上げてくる昂ぶりに染められているようだった。いつしか総身は茹だったように色づき、じっとりと汗ばんでいる。『も、もう逝きそうです…』

72母の飼い主 38:2013/12/03(火) 13:45:36

『まだ許さん。次はケツの穴だ』
 絶頂まであとわずかのところだった母は一瞬、許しを乞うような目になったが、洋治さんに臀をぶたれて、よろよろと腰を浮かせた。そして、あいかわらずの勁さで反り返っている男根をやさしく握りしめると、母はそれをおんなの割れ目ではなく、うしろの菊門に導いた。おどろいたことに、母の尻穴は何の抵抗も見せず、すっぽりと肉棒を受け入れた。

『ふふん、ずいぶんスムーズに受け入れるようになったな』
『はい』と答えたものの、やはり苦しいのか、母は眉間に皺を寄せて荒い息をついていた。
『何してる? 白豚らしくさっきみたいに尻を振ってみせろ』
『はい…』
 目尻に涙を滲ませながらうなずいて、母はうしろの穴で剛棒を咥えたまま、巨きな臀を揺さぶり始めた。
『どうだ、ケツでするのは気持ちいいか』
『き、きもちいい…です』目を白黒させながら母は答えた。
『旦那にも聞かせてやれ』
『あぁ…あなた見て…冬子、お尻の穴でこんなこともできるようになりました…』
 熱病に罹った人のように朦朧とつぶやく母。その股間では、先程までペニスが挿入されていた無毛の割れ目が、今も閉じる力を失ったようにぱっくりと口を開き、内側のピンク色の秘肉が濡れそぼっているのまで見えた。
 ふいに洋治さんの手が伸びて、その秘肉の上部にあるクリトリスをぎゅっと摘んだ。瞬間、『ひいーっ』という叫び声とともに、母の躰がぶるぶるとふるえた。
『アナルとクリを同時に刺激してもらえるなんて、助平な白豚には最高の贅沢だろうが』と洋治さんはせせらわらった。『このまま摘んでいてやるから、もっと腰を使ってみせろ』
『ああ…きがくるいそうです…』と言いながら、母は凍えたようにかちかちと歯を鳴らしていた。それでも、母は命じられたとおりに腰のうねりをつよめ、その度、クリトリスを刺激されて悲鳴じみた声を上げた。
『あっ、あっ、あっ――もう逝っちゃいますぅ!』
『ようし、ストップ。次は口だ』と言って、洋治さんはクリトリスから手を離した。
 母は唇の端からよだれの糸を垂らしながら、呆然と洋治さんを見つめた。
『どうした? 口だというのが聞こえなかったのか?』
『い、いえ…』
 またもや絶頂の直前で急停止させられた母は哀願するように洋治さんを見たが、臀を思い切り平手打ちされて、よろよろとその場に這いつくばった。そして、一瞬前までじぶんの尻穴に入っていたものを頬張った。
 しばらく口での奉仕をさせられたのち、母はもういちど騎乗位での性交を命じられて、洋治さんにまたがった。こんどもまたオルガスムに達する直前、うしろの穴での交わりに切り替えることを強要され、母は泣く泣くそれに従った。
 同じことが何度もくり返された。母は性器、肛門、口と三つの穴にペニスを受け入れながら、いちども絶頂に達することを許されなかった。気も狂いそうな性の昂ぶりとそれを満たされないもどかしさ――。三度目に尻穴での奉仕を命じられたとき、母はとうとう子供のようにワッと泣き出した。
『何をしてる。次はケツだと言ってるだろうが』と洋治さんが非情な声で言う。
『お許しを…どうかお情けを…』と母は泣きじゃくりながらうわ言のようにくり返した。

73母の飼い主 39:2013/12/03(火) 13:47:47
『堪え性のない女だな。そんなに逝きたいのか、え?』
『は、はい…』母の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。乱れた前髪が汗で額に貼りついている。『どうか…どうかお情けを…』
『あとで仕置をするからな。じゃあ、そこで四つん這いに這え』
 ようやくお許しを得た母は、ふらつきながら畳に手足をつき、むっちりと熟れた臀だけを高く掲げた。
『どこからどう見ても白豚という感じだな』と洋治さんはあざ笑うように言った。『そんなにチンポを挿れてほしいのか?』
『お、お願いしますぅ!』と叫びながら、母はいかにも我慢できないというように臀を振りたてた。
『どっちの穴に挿れてほしいんだ? 前か、後ろか』
『あぁ…前に欲しゅうございます』
『そんな言い方じゃ挿れてやる気になれんな。豚なら豚らしくみじめに懇願をしてみろ』
『豚ですぅ! 冬子はどうしようもなく恥知らずな白豚ですぅ!』と母は泣き喚いた。『うぅ…どうか白豚冬子のさもしいおまんこにご主人様のお情けを…お願いしますぅ!』
『仕方ないな。おら、もっとケツを突き出せ』
 散々焦らした後で、洋治さんはようやく、四つん這いになった母の秘部にうしろから剛棒を挿入した。結合の瞬間、『ああん…』とうめき声をあげながら、母は砂漠で何日も迷った人がようやく水のある場所に辿りついたような、深い安堵と歓喜の表情をうかべた。
『あぁ…うれしゅうございます…冬子しあわせ…』
『現金なやつだな。ついさっきまで泣き喚いてチンポ乞いをしていたくせに』と洋治さんはわらった。『旦那の前だというのに、本当にどこまでも色ボケした牝だな、お前は』
『はあぁ…そうです…冬子は牝なんです…』
『死んだ亭主のことなど、もうどうでもいいんだろうが?』
『あんっ…そうです…もう冬子はおちんちんのことしか頭にありませぇん…んあぁ!』
『恥知らずの淫乱豚め。これでもくらえ』
 そう言うと洋治さんは、馬に鞭をくれるように母の真っ白な臀を叩いた。それにつれて、熟した女の脂がたっぷり載った腹まわりの肉が波打つ。巨きな乳房がぶらぶらと揺れて、鈴がまた軽やかな音を立てた。
 洋治さんが抜き差しを早めると、途端に母は眉を切なげにたわめ、悦楽と苦悶がないまぜになったような吐息を漏らし始めた。すぐにそれは悲鳴じみた叫びに変わった。
『ああぁぁっ…ご、ご主人様…冬子もう逝きますぅ!』
『そら逝け、白豚。みっともない逝き顔を晒してみせろ』
『ヒーイッ! 逝くぅ!!』
 そんな甲高い絶叫とともに、いまや完全に相の変わった母は、桜色に染まった全身から汗の珠を振り飛ばしつつ、悦楽の絶頂へと駆け上がっていった。
 一瞬後、母は前のめりにガクリと崩れ落ちた。完全に意識が飛んでしまったようで、目はうつろに宙を彷徨い、唇の端からは泡を噴いている。汗ばんだ総身が発作を起こしたようにビクンビクンと跳ねていた。
 そこでようやくビデオが終わった。

74悦司:2013/12/03(火) 13:49:04

もはや需要なかもですが、とりあえず続き。
愛読者さん、性花器はまた次回意向に登場する予定…です。

75愛読者:2013/12/03(火) 17:41:20
いえいえ、お待ちしていましたよ。

性花器も楽しみにお待ちしています。

76名無しさん:2013/12/05(木) 11:06:29
更新を楽しみに毎日確認しています。期待にわくわくです。

77sage:2013/12/09(月) 18:36:39
悦司さん、ありがとうございます。
下半身を固くしてお待ちしております・

78名無しさん:2013/12/12(木) 19:12:23
悦司さん、間もなくXmasですが風邪など引かれてないですか?
お体ご自愛されて続き宜しくお願いします。

79名無しさん:2014/01/04(土) 03:13:57
そろそろ投下お願いします。

80名無しさん:2014/01/05(日) 22:27:41
熟女の子供パンツいいですね。
カップルの集まりでの晒しものも楽しみにしています。

81悦司:2014/01/06(月) 00:48:07
ありがとうございます。もうちょいお待ちを…

82名無しさん:2014/01/07(火) 12:47:41
悦司さん あけましておめでとうございます。
書き込み ありがとう。
お待ちしておりますm(__)m

83母の飼い主 40:2014/01/12(日) 06:35:24

 動画の後にはいつものごとく閲覧者の感想コメントが並んでいた。

『顔出し調教動画、堪能しました。こんな虫も殺さぬような顔の美人が、チンポを恵んでもらうためなら、死んだ亭主の仏前でも痴態をさらす馬鹿女だとは世も末ですね(笑) 大学生の息子がこの牝母の本性を知ったらどうするんだろう』
『主さんに白豚と呼ばれるのが辛い…と女心を覗かせていたわりに、仏壇の前で三穴責められてヒィヒィよがり泣いてる冬子の姿はまさに豚でしたねwww 今度は家畜らしく鼻輪を付けさせて、野外を引き回すのはどうですかwww』
『あの清楚だった未亡人が、主さんの鬼畜調教でどんどん堕ちていく姿に興奮します。ここまできたら、次は息子の前で変態プレイを強制するしかないですね♪』

 顔も名前もわからない連中が、好き勝手に書き込む母への罵倒、欲望、妄想(あろうことか、その淫靡な妄想には息子の僕までが引っ張りだされていた!)の数々――。そんな汚穢にみちた言葉の羅列を目で追いながら、僕の心は呆然と痺れきっていた。
 脳内にはさきほどの動画で見た情景が、延々とフラッシュバックしていた。洋治さんの言いなりになって、あれほど愛した父の仏前ですら淫猥なプレイに溺れてみせる母――。それはどこからどう見ても、ひとりの男に身も心も捧げ切った女の姿だった。
 母は――ここまで堕ちてしまったのか。
 黒々とした絶望が胸を浸していく。どのようにしても母を救うと決意したばかりだったが、パソコン画面ごしに次々と見せつけられる現実のものすごさに、僕の心は打ちのめされずにはいられなかった。
 そんなふうに暗澹たる心持ちで見るともなしに掲示板をスクロールしていたら、やがてblack crowの新しいコメントがあらわれた。

《 いつもながら沢山のご感想、ありがとうございます。
  あれから冬子は私の命令どおり、亡き亭主の仏前で日課の剃毛とオナニー、排泄をすませているようです。最低の供養ですね(笑) こんな馬鹿女を妻にしたことを、兄貴もあの世で悔やんでいることでしょう。
  さて、ご感想にて「今度は息子の前でプレイしてはどうか」という提案を頂戴しましたが、調教の次のステップとしては当然ありでしょうね。亭主の仏前でのプレイすら受け入れた馬鹿女も、私が「息子に今まで撮った画像や動画を見せてやろうか」「次は息子の前で牝貌を晒させるぞ」などと脅すと、「いやー!」と物凄い悲鳴を上げて取り乱します。ペットの分際でありながら、“母親”としての感情はいまだに強いようです。もちろん、今後の調教でそんなクダラナイ感情は全部捨てさせるつもりですが、いまはさしあたり息子ネタをちらつかせながら、怯えるペットの姿を楽しんでいます 》

 black crowこと洋治さんの悪辣極まりない言葉に胸を悪くしながらも、「息子には知られたくない」という必死な思いを抱いていることに、母がまだ“母”である証をたしかに読み取って、僕は何ともいえない心境になった。
 そんな僕をさらに追い落とすように、black crowの新たなる投稿がなされていた。

84母の飼い主 41:2014/01/12(日) 06:37:39

《 さて、今回はつい昨日撮ったばかりの動画を投稿しようと思います。
 先日の野外調教時、私たちと知り合いになった大学生のカップルのことはご記憶でしょうか? 前にお話ししたと思いますが、あのカップルさん――ややこしいので名前の掲載許可をもらいました。彼女のほうはマホさん、彼氏のほうはケンジくんといいます――が冬子の珍芸をやたらと気に入ってくれまして、「友だちにも見せてやりたい」とのことだったので、彼らの仲間うちでのパーティーで冬子に余興を披露させる計画を勧めておりました。今回の動画は昨日行われたそのパーティーの模様です。
 パーティーといってもごく内輪の飲み会で、参加者はマホさんとケンジくんを含めて大学生8人(女の子5人と男の子3人)。会場はマホさんの実家らしいのですが、このときは両親が旅行に出かけていたので、けっこう好き放題に使っていたようです。
 その日、私は諸事情あって同行せず、会場には冬子だけを行かせました(そのため、今回のビデオ撮影はケンジくんが担当してくれています)。これまでも見知らぬ他人の前で珍芸を披露してきた冬子ですが、今回は観客が大人数(それもじぶんの息子とおなじ年頃の大学生たち)のうえ、私もいないというので、羞恥や不安の念はいつにも増して大きかったようです。
 当日の冬子はひっきりなしに震えて、歯の根も合わないようすでした。出かける前に私が「今日はたっぷりと笑い者になってくるんだぞ。大年増の分際で若い人たちのパーティーの盛り上げ役に抜擢してもらったんだ。中途半端な芸を披露して、みなさんを白けさせるようなことがあったら絶対に許さんからな」と厳しく声をかけると、冬子は「みなさんに笑っていただけるよう、冬子、しっかり恥をかいてきます」と言いながら、早くもべそをかいていました(笑)
 では、説明はこのくらいして、あとは動画本編をご覧ください 》

 動画が再生される――。

 広くゆったりとしたリビングだった。見るからに裕福な家庭の居間らしいその部屋で、若い男女が好き勝手に群れ騒いでいた。
 ある者はソファに寝転び、ある者は床に腰を落ち着けながら、酒杯やビール缶を片手にはしゃいでいる(彼らの顔はモザイクで処理されていたが、服装や雰囲気はいかにも大学生らしかった――それもあまり真面目ではない種類の)。ビデオカメラ――今回は洋治さんでなく、例の「彼氏」ことケンジが撮影しているということだが――のほうに向かい、おどけたようすでピースサインをしている者もいる。
 いかにも親しい仲間うちでの宴会らしい放恣な空気が満ちていた。彼らは口々にこんな会話を交わしていた。
『余興って何なん?』
『すっごい笑えるやつらしいよ』
『ド変態の中年女が出てくるって聞いたぞ。マホやケンジの知り合いなんだって』
『何だよそれ(笑) 意味わかんねえ』
『わたし、変態って初めて見るぅ』
『おいおいケンジのやつ、マジで撮影してんじゃん』
『あ、マホが来たよ』と臙脂色のカーディガンを着た女の子がふいに言った。
 ビデオカメラがくるりと向きを変えて、部屋に入ってきたマホの姿をとらえる。彼女は犬用の赤いリード紐を握っていた。その後を母が四つん這いでついてきた。
 母は生まれたまんまの素裸だった。淡雪のような肌をさらしながら這ってきた母は、例の赤い首輪だけを身につけており、その首輪につけられたリードをマホが引いていた。あたかも飼い犬と散歩につきあう主人のように。

85母の飼い主 42:2014/01/12(日) 06:40:27
 会場は一瞬水を打ったように静まり返った。当然だろう。それはあまりにも異様な光景だった。
 やがて、マホが得意げに口を開いた。
『ほら、なにグズグズしてるの。早くみんなに挨拶しなさい』
 じぶんより二十ほども年下の小娘に叱られ、母はあわててその場に這いつくばった。
『はじめまして…みなさま。あの、わたし、冬子と申します。もうすぐ四十になる年増の未亡人で、どうしようもなく恥知らずな変態女でございます。本日は、ご主人様のお友達のマホ様とケンジ様のご好意でこのような場に呼んでいただいたばかりか、余興を披露する機会まで与えていただき、ペットの身に余る光栄でございます…。みなさまにお楽しみいただけますよう、冬子、精一杯がんばりますので、どうか馬鹿女のみっともない姿を思う存分お笑いくださいませ…』
 リビングの明るい照明が、恥辱の極みにふるえる豊熟した女体を照らしていた。顔も名前も知らない大学生たちの前で、ただひとり素裸をさらした母は、時折鼻を詰まらせながら惨めな口上を言いおえた。
 口上がすむころには、観客の男女たちもこの場の異様な情景に慣れてきたようだった。いつしか堰を切ったように、彼らはがやがやと喋り始めた。
『やべーマジでド変態が出てきた』
『けっこう美人じゃん』
『バッカみたい』
『このおばさんの身体、すっごいムチムチしてるな』
『いやらしいわね』
『見てよ、お腹のあたりがだらしなくない?』
『おっぱいデカ! 先っぽに飾りまで付けてるし』と言ったのはウールの白いセーターを着た女の子だったが、彼女の言うとおり、母の巨きな乳房にはハート型のアクセサリがついていた。前回の動画の鈴と同じく、そのアクセサリは乳首を貫通したピアスにくくりつけられているらしかった。
『ね、私の言ったこと、本当だったでしょう? 本物の変態女と知り合いになったって』友達連中の反応に気をよくしたのか、マホはにんまりと笑みをうかべた。それから母に向かって言った。『ほら、立ちなさい。もっとみんなに裸をよく見てもらうのよ。そのほうがうれしいんでしょ? マゾの露出狂なんだから』
 床に額をつけたまま浴びせられる無遠慮な言葉に耐えていた母は、マホに命じられて土下座の姿勢から身を起こすと、おずおずと立ち上がって直立不動の姿勢をとった。こぼれおちそうなほど豊かな胸乳や、どっしりとした腰まわり、そして、見るからに熟れた女体のなかでただ一箇所だけその印象をうらぎる無毛の恥丘までがあらわになる。『おいおい、あそこの毛まで剃ってんぞ』と誰かのささやき声がした。
 母は羞恥に引きつった顔でうつむいていたが、『ちゃんと顔も上げなさい』とマホに叱られて、おどおどと大勢の視線の前に顔をさらした。
『なーに、その情けない表情。みんなに失礼じゃない。もっと笑って、ペットらしく愛嬌をふりまかなかきゃ』
 どこまでも容赦のないマホは、完璧にサディスティンを演じきっていた(というよりも、それが彼女本来の性向なのだろう)。母はまたも健気に『はい…』とこたえて、蒼白な顔に引きつった笑顔をうかべた。
『すげーな。本当に何でも言うこと聞くんだ』
『このおばさん、もう四十近いんでしょ? プライドないのかしら』と眼鏡をかけた女の子――このメンバーの中では一番真面目そうな子だった――が辛辣な口調で言った。
『ほら、プライドはないのかって訊かれてるわよ』とマホが意地悪く言いながら、母の頬を左手の人差し指でつついた。
『ご…ございません。冬子はセックスペットですから…ご命令にしたがうのが何よりのよろこびなんです…』
 母は無理に笑顔をつくったままで答えたが、その瞳はしっとりと潤んでいた。

86母の飼い主 43:2014/01/12(日) 06:41:56
『お利口さんねえ』よしよしと母の髪を撫でながら、マホはおかしくてたまらないといったふうにわらった。『さてと…みんな、ほかに質問はある?』
 髪を派手に赤く染めた青年が『はいはーい、俺訊きたい』とおどけたようすで手を挙げた。
『おばさん、おっぱいデカイけどサイズはいくつなの?』
『はい…きゅ、90センチでございます…カップはFです』と母が恥ずかしそうにこたえると、若者たちから『おっきいー』という歓声があがった。
『たしか、ご主人さまにはあと5センチ大きくするように言われてるのよね』とマホが口を挟んだ。『できなかったらどうするんだっけ?』
『命令を守れなかった罰で…あと5キロ太ります…』と母は泣きそうな声で言った。
『何それ、おっかしー』
 臙脂のカーディガンを着た女の子がクスリとわらって呟いた。
『おばさんって、いまは体重何キロなんですかー? 見た感じ、けっこうボリュームあるみたいだけど』と白セーターの女の子が小馬鹿にするような口調で尋ねた。みんながドッとわらった。
『ご、58キロです…』とこたえる母は耳まで赤くなっていた。
『でも、これで冬子も数ヶ月前までは40キロそこそこだったらしいのよ』とマホが訳知り顔で言った。『愛するご主人さまの命令で、15キロも太ったんだって』
『よくやるわねえ』
『本当にプライドがないのね。最低』
 年下の女の子たちの呆れ顔や、浴びせられる辛辣な言葉に、母は消え入りそうな風情で小さくなっていた。
 何を言われても、罵られても、あくまで従順な母のようすが嗜虐的な気持ちにさせるのか、大学生たちのテンションはいよいよ高まり、それにつれて猥雑な空気が場に満ちていった。
 ふいにマホがぱんぱんと両手を叩いた。
『じゃあ、これくらいで質問タイムは終了ね。次はお待ちかねのショータイムよ。心の準備はいいわね、冬子』
 母はつらそうに眉根をたわめながら、『は、はい…』とか細い返事をかえした。
『ふふふ。じゃ、お得意の犬芸をやってもらいましょうか』
 マホの言葉に反応して、いかにも優男といった感じの青年が『なんだよ、犬芸って』と尋ねた。マホは顎をしゃくって母に質問の答えを促した。
『は、はい…あの、犬のまねをする芸のことです。お手をしたり、おすわりをしたり…』
『それ、おもしろいわけ?』とショートカットの女の子が冷笑した。
『まあ、実際に見てのお楽しみってところね。はじめるわよ、冬子』とマホが言って、母の首輪からリードを外した。そして、開始の合図代わりに母の臀を平手でパアンと打った。『まずはその場にお座りしなさい』
 命じられた母はおずおずと腰をかがめると、両手と臀部をフローリングの床にぺたりとつけて《お座り》の姿勢をとった。両脚はM字に開かれており、陰毛のない恥丘の中心を走る深い切れ込みが割れて、ピンク色の秘めやかな部分までが衆目にさらされた。
『うわーホントにやってるし』
『アソコ丸見えじゃん』
 大学生たちが口々に騒ぎ立てる中、《お座り》をした母は観客の視線から逃れるようにうつむいて、小刻みに肢体をふるわせていた。しかし、マホが『何やってんのよ。顔をあげなさい。それに返事がきこえなかったわよ』と怒った声をだすと、怯えたようすで顔を上げた。それから小さな声で『ワン』と鳴いた。
 四十女の滑稽極まる姿に、大学生たちは大笑いした。
『ほうら、みんなに笑われてるわよ。よかったわねえ、冬子』とマホが揶揄するように言った。
 羞恥と屈辱で総身を朱に染めながらも、母は『ワンワン』と返事がわりの鳴きまねをした。
『頭おかしいんじゃないの、この人』白セーターの女の子が苦しそうに腹を抱えながら呟いた。
『次はお手ね。ほら冬子、お手しなさい』
 そう言って、マホは《おすわり》している母の鼻先に右の手のひらをつきだした。母は『ワン』とこたえつつ、かるくにぎりしめた右手をもちあげ、マホの手のひらにそっと重ねた。
『よくできました。じゃあ、おかわり』
『ワン』
 母はぎこちない動作で右手をもどすと、こんどは左手をもちあげて《おかわり》をした。それにつれて、豊満な乳房がぷるんと揺れ動いた。

87母の飼い主 44:2014/01/12(日) 06:43:20
『次は伏せをしなさい』とマホが命じた。
『ワン』とこたえた母は、いちど四つん這いの姿勢になってから、全身をぴったりと床につけて《伏せ》の姿勢になった。できるかぎり縮こまった身体のなかでボリュームたっぷりの熟れ臀だけが、所在なさそうにもこもこと蠢いていた。
『でっけーケツ』と赤毛の青年がつぶやいた。
 マホが『ふふ、でかいケツって言われてるわよ、冬子』と楽しそうな口調で言うと、母は《伏せ》をしたまま、『クゥン…』と哀れっぽい鳴き声を出した。若者たちが弾けたように笑った。
『まったく馬鹿犬ねえ、冬子は。みんな呆れてるわよ』
『クゥン…』
『お詫びのかわりにチンチンしなさい。愛嬌たっぷりにやるのよ。もちろん笑顔でね』
『ワン』
 母は《伏せ》の姿勢からもぞもぞと上半身を起こした。腰を落としたまま、爪先立ちになって両脚をひらくと、まるめた両手を招き猫のように持ち上げた。それだけでも十分すぎるほど滑稽な格好だが、最後に母は無理やり貼りつけたような笑みをうかべ、犬のように舌を出してハッハッと息を切らしてみせた。
 息子の僕にとって、それはあまりにも正視に耐えない、とことん堕ちきった母の姿だった。
 だが、赤の他人である大学生たちにその芸は大ウケだった。これまでにもまして大きな爆笑と嘲笑が巻き起こった。
『わらいすぎて腹いてー』
『恥知らずってこういうことを言うのね』
『バーカ(笑)』
 蔑みと罵りの言葉を次々浴びせられるなか、母は強ばったつくり笑いを浮かべたまま、あいかわらず《チンチン》のポーズを保っていた。信じがたいほどの恥辱に加えて、爪先立ちの姿勢が相当きついのだろう、母の額にはふつふつと汗の珠が浮き、肢体は絶え間なくふるえていた。
『ねえマホ、記念に写メ撮っていい?』と一番大笑いしていたカーディガンの女の子が言い出した。
『もちろん、いいわよ。ねえ冬子?』
 半べそになりながら必死で笑みをつくっていた母は一瞬、許しを乞うような目でマホを見た。だが、『あら、何か文句でもあるの?』とマホから冷たくあしらわれると、しょんぼりとしたようすで首を横に振った。
『ふふ、そうよねえ。恥ずかしい姿を撮ってもらえるなんて、マゾ犬の冬子には最高のご褒美だもの。でしょ?』
『ワンワン』と母は鳴いたが、舌を出しているため不明瞭な発音にしかならなかった。代わりに、その目尻から涙の雫がすーっと流れおちた。しかし、そんなことは誰も気にとめなかった。
 カーディガンの子につづき、他の男女たちも『わたしも写メ撮りたーい』『俺も撮る撮る』と言い出した。携帯のカメラのシャッターが次々と切られた。
 全員の撮影がすむころになると、母はいまにも倒れる寸前だった。ようやくマホの許しが出ると、とたんにがっくりと崩れ落ちて、床に尻餅をついた。茹だったような顔は汗と涙にまみれていた。
『みっともない顔ねえ』とマホはおかしそうにわらった。『ほら、こっち向いて四つん這いになりなさい。もっと犬っぽくしてあげるから』
 母は疲れきったようすだったが、命じられて、おずおずと四つん這いになった。そんな母の正面にかがみこんだマホは、服のポケットからマジックペンを取り出すと、おもむろに母の鼻の頭を塗りはじめた。母は目を白黒させているばかりだった。
 やがて、鼻頭を黒く塗られ、頬に三本ひげを書かれた何とも珍妙な顔が、若者たちの眼前に公開された。
『どうかしら?』とマホがわらいながら訊く。
『そうねえ。もとの顔よりはマシになったんじゃない』とショートカットの子が辛辣なジョークを言い、みんなを笑わせた。

88母の飼い主 45:2014/01/12(日) 06:44:45
『マシになったって。よかったわねえ、冬子』と言って、マホは母の頭をぽんぽんと叩いた。
 珍妙な落書きを施された母は哀しげにうなだれつつ、小さな声で『ワン…』とこたえた。
『あーら? なんだか不満そうねえ』マホは冷ややかな目でじろりと母を見た。『せっかく誉めてもらったのにそんな態度を取るようじゃ、ご主人さまに報告の必要ありかも。冬子が反抗的だったせいでパーティーがぶち壊しになったってね』
 意地悪く「ご主人さま」の名前を出されて、母はとたんに狼狽した。ふいに『ワンワン!』と大きな声で鳴くと、犬が尻尾でよろこびをあらわすように臀部を大きく揺すりはじめた。そうして盛んに尻を振りつつ、母は必死のようすで卑屈な笑みをうかべ、ちらちらとマホの顔色を窺った。
『何よこれ、尻尾を振ってるつもりなの?』
 大学生たちは大笑いした。
『なんだか急に素直になったわね』とマホはわらって言った。『やればできるじゃない。冬子は犬なんだから、みんなに誉めてもらったらそんなふうにお尻を振ってよろこぶのよ。いいわね?』
『ワンワン!』
 従順さをアピールするように、母は熟れた白桃のような尻をいっそう振り立てた。笑い声がまた大きくなった。
『みっともない格好ねえ』
『毛が無いからアソコも丸見えじゃん』
『それにしてもほんとにデカいな、こいつのケツ』
『なんていうか、下品なお尻って感じね』
 口々に囃したてる大学生たちはもはや酒ではなく、この場の嗜虐的な雰囲気に酔っているようだった。マホは『下品なお尻ってなんか面白いわね』と嗤って、ポケットから先程のマジックペンを取り出した。そして、つるんとしたゆで卵のような臀部の左の尻っぺたに『下』、右の尻っぺたには『品』という文字を、でかでかと書きつけた。
『いいねーケッサク』
『似合ってるじゃん』
 哄笑とともにそんな野次が飛ぶ。
『ほうら、みんなが誉めてくれてるわよ。冬子もうれしいでしょ?』とマホが言う。
『ワン!』
 母は「下品」と書きつけられた臀部をいきおいよく振り立てた。年少の男女からとことん笑い者にされながらも、抵抗するどころか全身で媚びてみせる熟女の姿は、どうしようもなく滑稽で、みじめで、またも若者たちの爆笑を巻き起こした。

『わたしばっかりじゃなくて、みんなも冬子で遊んでみたいでしょ? なんでもするから、好きなように命令してみてよ』とマホがすっかり飼い主然とした口調で言った。
 そこで、マホと撮影役のケンジを除く6人が命令をはじめた。母はあらためて《おすわり》や《お手》、《チンチン》などを幾度となく披露することになった。なかには『三回まわってワンをしなさい』という新しい種類のものもあった。すっかり面白がったカーディガンの女の子が『じゃあこんどは左に7回、右に12回まわってからワンって言うのよ』と命じたときなど、母は巨きな胸を揺らしながら這い回るうち、途中ですっかり混乱してしまった。
『頭のわるい犬ね。じぶんが何度まわったのかも忘れたの』とショートカットの女の子がわざとらしく呆れ声を出すと、赤毛の青年が『馬鹿犬にはお仕置きしなきゃ』と言って、おろおろしている母の熟れ臀を思いきり平手打ちした。
『あうっ!』
 母は眉根を寄せて呻いたが、赤毛の青年が『犬ならこういうときはキャンだろ? お前はホントに馬鹿だな』と言ってさらに臀を打ちすえると、髪を振り乱しながら『キャンキャン!』と甲高い声で何度も叫んだ。その何とも情けないようすが、なおさら加虐心を誘う結果となり、調子づいた他のメンバーまでが尻叩きに参加し始めた。
『大きくて叩きがいのありそうなお尻だわ』と言って、白セーターの女の子が母の臀部を幾度もぶつ。
『キャンキャン!』
『ほれほれ、もっと鳴けよ』
 優男風の青年がはしゃいだようすで熟女の尻たぼを打つ。弾けるような音とともに、『キャーン!』と一際大きな声をあげて母は鳴いた。

89母の飼い主 46:2014/01/12(日) 06:46:10
 そうして何度もぶたれているうち、ふくよかな母の臀はみるみる朱に染まり、やがて熟れたトマトのようになった。腫れあがった臀に浮かぶ「下品」の二文字がいっそう滑稽だった。最初は無抵抗で打たれるままだった母もついには痛みに耐えかね、両手をうしろにまわして尻を庇いつつ、べそかき顔で『クゥンクゥン』と鼻を鳴らした。大学生たちがドッとわらった。
『何よ、もうギブアップって言いたいの?』
『クゥン…』
『あらら、お尻がまっかっかね。お猿さんみたいで可愛いわよ』とマホがわらって言った。『それじゃあ可愛いお尻にしてもらったお礼に、こんどはお得意のボール芸を見せてあげなさい』
 そうしてマホは懐からテニスボール大の白い玉を取り出すと、キッチンのほうに向かってそれを放り投げた。息つく暇さえ与えられなかった母は、それでも懸命に四つ足で這って、よたよたとそのボールを追いかけた。それにつれて、母乳の詰まっていそうな豊乳やむっちりと脂肪のついた腹まわりがたぷたぷと揺れ弾む。
 息を切らしながら、母はようやくのことでボールを咥え取ると、豊満な裸身を弾ませながら這い戻ってきた。
『よしよし、よくできたわね』
 ボールを受け取ったマホに頭を撫でられると、母はぜいぜい息を切らしながらも『ワンワン』と鳴いて、さも嬉しげに臀を揺すってみせた。プライドも羞恥心もすべて捨て去り、年下の小娘にひたすら媚びる姿は、まさしく本物の犬のようだった。
『こいつ、すっかり犬になりきってら』
『笑えるわね』
『わたしもボール投げたーい』
『俺も俺もー』
『ほらほら、みんなが遊んでくれるそうよ。うれしいわねえ冬子』
『ワン!』熟尻を振って母がこたえる。
 若者たちは次から次へとボールを放り投げ、母はリビングやキッチンを這い回って必死にそれを追いかけた。
『そうら取ってこい、馬鹿犬』
『アハハ、見てよあの格好。おっかしー』
『遅いわねえ。あと30秒で戻ってこないとお仕置きよ』
 豊満な身体をあえがせ、恥毛のない股間を丸出しにしながら這い回る熟女の姿に、大学生たちの笑いはいつまでも収まらなかった。からかいや罵倒を山ほど浴びせられるなか、母はひとり一心不乱にボールを追いかけて、全身汗だくになった。
 戻ってくるのが少しでも遅れると、「お仕置き」と称してまた臀を叩かれた。にもかかわらず時折、「よくできたわねえ」と誉められたり、髪を撫でられたりすると、母は嬉しそうに鼻を鳴らし、熟れ臀をフリフリして媚びてみせるのだった。そんな一片のプライドもない姿が、また馬鹿にされ、笑いの種になった。
 そうしてみじめなボール芸を披露しているうち、やがて母のようすに変化がおこった。眉間に皺を寄せ、瞳には狼狽の色をうかべて、下半身をもじつかせるようになったのだ。体力の消耗とはべつの原因が母を苛んでいるようだった。
『どうしたの冬子?』と母の変調にいち早く気づいたマホが声をかけた。
『ワゥン…』
 母は恥ずかしげにちいさく鳴いた。その間もずっと下半身をもじもじさせている
『どうしたのよ?』
『たぶんトイレね』とマホが肩をすくめて言った。『おしっこがしたいのよ。そうでしょ冬子?』
『ワンワン』
『きょうはご主人さまの命令で朝からいちどもトイレに行けてないのよね』
『クゥン…』
 母はいかにも悄気た表情になった。
『そんなことまで命令されてるの?』
『おっかしー』
 女の子たちがケラケラとわらった。
『パーティーがすむまで我慢しなさいな。ま、いつ終わるかはわかんないけど』
 マホが意地悪く突き放すと、母はいまにも泣きそうな顔で『クゥンクゥン』と鼻を鳴らし、その場に這いつくばって額を床に擦りつけた。

90母の飼い主 47:2014/01/12(日) 06:47:32
『堪え性のない犬ねえ。それじゃあ、何か面白い芸をやってみせなさい。もちろん、今まで披露したのは駄目よ。それ以外の芸でみんなを楽しませることができたら、お情けでトイレに行かせてあげるわ』
 無理な注文をされて、母は途方にくれたようすだった。だが、迫りくる尿意に急かされ、とにかく何かしようと思ったのか、ふいに『ワンワン!』と鳴き声をあげつつ、四つん這いの格好で不器用に飛び跳ね始めた。むっちりと脂の載った熟身が跳ね動くたび、Fカップの豊乳が上下に弾んで、たぷんたぷんと派手な音を立てた。
『なーにアレ、暴れ馬の真似でもしてるの?』
『見てよあのオッパイ、ちぎれそう』
『おーい、もっと頑張って飛び跳ねてみろよ』
 嗤われはしたものの許される気配は一向になく、いよいよ追い込まれた母はその場でブリッジしたり、臀を振りながら菊穴を広げてみせたり、ついにはじぶんの乳首を破廉恥にしゃぶってみせたりと、およそ思いつくかぎりの涙ぐましい努力をした。だが、何をやっても馬鹿にされ、嘲笑されるだけで、排泄の許可はいっこうに出なかった。
 もはや我慢の限界なのか、母はひっきりなしにブルブル震え、脂汗で全身びっしょりと濡れていた。そんな状態で、母は涙目になって『クゥンクゥン』と悲痛な哀訴をくりかえしていたが、ふと戸棚の花瓶に目をやると、錯乱したように這い寄っていき、その花瓶に挿さっていた紫の造花の束をいきなり口で咥えとった。
 それから母は床に仰向けにひっくり返ると、開いた両脚を上半身のほうにぐいっと引きつけた。いわゆるマングリ返しの格好だ。恥ずかしいふたつの穴をさらけだした母は、造花の束を手にすると、それをじぶんの秘めやかな部分――無毛のそこはパックリと開いて鮮紅色の膣奥を覗かせていた――に持っていき、一輪ずつそこへ挿していった。
 母は着物の講師をしているが、若い頃から花道もたしなんでおり、家庭でも折にふれて花を生けていた。楚々とした風情で生け花をしていた母――美しかったあの頃の母を覚えている僕にとって、こんなふうに散々取り乱したあげく、みずからの性器に花を挿し始めた母の姿はあまりにも見るに耐えないものだった。
 大学生たちは大ウケだった。
『わははは、こいつバカすぎー』
『人間生け花ってところね。ひどい格好だこと』
『ちょっと俺、写メ撮るわ』
『ちょっと見て! お尻の穴にまで花を挿してる』
 みずからの秘芯だけでなく、菊座にまで花を生けてみせた母は、涙と汗でぐしょぐしょになった顔に笑みをつくると、『ワン!』と一声高く鳴いてみせた。さらに大きな爆笑が巻き起こった。
『あー可笑しい』と目尻の涙をぬぐいながら、マホはわらいすぎて苦しそうな表情で呟いた。『何をするかと思ったら…まったく最低の芸ねえ、冬子』
『ワン』
『ちょっと待って、わたしも写メ撮りたいから…ほら、笑いなさい。はいチーズ』
『ワン』
『うれしそうな顔ねえ。いい写真が撮れたわ。あとであなたの携帯に転送するから、家族やお友達にも送ってあげなさいな。「今まで隠していたけど、じつは冬子、こんな一発芸ができます」って書いたメールに添えてね。わかった?』
『ワンワン』
『素直な犬になったわねえ。えらいわ。これからもパーティーするたびに呼んであげるから、じぶんで新しい芸を考えて毎日家で練習しとくのよ。いつ呼び出されても披露できるようにね』
『ワン!』
『いいお返事よ。じゃあ、お情けでトイレへ行かせてあげるわ。最低の芸だったけど、ずいぶん笑わせてもらったしね。ほら、起きなさい』
 ようやく排泄の許可を与えられた母は、急いで秘芯や菊座の花を抜き取ると、ふらつきながら身を起こした。そして、マホの後ろを四つん這いでついていったが、女主人の向かった先はトイレではなく、庭に面したリビングの窓だった。

91母の飼い主 48:2014/01/12(日) 06:49:48
『犬なんだから、おしっこは外でしなさい』
 当然の事実を告げるような口調でそう言って、マホは窓を開け放した。母はちらりとマホの顔を窺ったが、それ以上ためらわず、『ワン!』と一声鳴くやいなや、窓から庭へ飛び出していった。母が外へ出ると同時に、家屋の外壁に取り付けられたライトが灯って、庭全体を照らし出した。
 庭はかなりの広さだった。屋敷の傍らには犬小屋がひとつあり、ゴールデン・レトリバーらしい大型犬が顔を出していた。びっくりしたような顔で、人間の女が芝生を這っていく光景を見つめている。
 十一月の夜だというのに全裸で戸外へ出された母は、しかし寒さを感じる余裕もないようだった。庭の端に植えてある欅のそばへたどりつくと、母はふりかえって『ワン!』と鳴いた。
『そこでいいわ』とマホが笑いながら言った。
 よたよたと片足を上げた母は、欅に向かって犬のするようなポーズで放尿をはじめた。一日中許されなかったそれは激しい勢いで迸り、しゃーっと音を立てて木の幹を濡らした。
『女の小便するとこ初めて見た。すげー勢いなんだな』
『ちょっと! 一緒にしないでよ。あんなの女のすることじゃないわよ(笑)』
『完全にぶっ壊れちゃったみたいだな』
 母の排泄は長かった。ようやく放水を終えて、一二度ブルブルッと下半身をふるわせた母は、なんだか魂の抜けたような、あるいは子供に還ったような、奇妙にあどけない表情をしていた。ふつうの女性なら耐えられるはずもない恥辱を受けつづけた果てに、さっき誰かの言ったとおり、母の心はすっかり壊れてしまったのだろうか――。「もうやめてくれ! 母を返してくれ!」と僕はその日何度となく心のなかで叫んだ言葉をくりかえした。
 そのとき、ぼんやりしている母のもとへ近寄っていく影が見えた。この家の飼い犬とおぼしきゴールデン・レトリバーだった。間近にやってきたその犬に気づいて、ふと正気を取り戻したのか、母は怯えたような表情になった。それから救いを求めるように、マホに向かって『ワン!』と鳴いた。
『だいじょうぶよ、おとなしい犬だから』と平気な顔でマホは言った。『乱暴しちゃだめよ、ムック。その子はお前のお友達で、冬子っていうの』
 ムックと呼ばれた犬は興味深そうに母の周りをうろうろしていたが、やがて、四つん這いの母のうしろに来ると、くんくんと匂いを嗅いだ。そしていきなり、むっちりした臀の狭間をぺろりと舐めあげた。
『ヒーイッ』と母が悲鳴をあげた。
『おおげさな声をあげないの。たかが犬同士の挨拶じゃない』と可笑しそうにマホが言った。
 大学生たちがドッと笑った。
『ムックも相手が犬だと思ってるのかしら』
『そうかも。鼻は真っ黒でヒゲも書いてあるしな(笑)』
『うわぁ、アソコをぺろぺろ舐められてる』とカーディガンの女の子が目を丸くして言った。
 その言葉どおり、ムックはいまや母の秘部に狙いを定めていた。獣の舌でおんなを舐め回される気味わるさに、母はガクガクふるえながら呻いていたが、いくらも経たないうちに様子がかわってきた。蒼褪めていた頬はいつしか薔薇色に染まり、半開きの唇からは熱い吐息がこぼれだした。
 犬がペロリと淫裂を舐めあげるたび、『アーンッ』と呻いて切なげに肢体をうねらせる母――。その貌からは先刻までの嫌悪感が嘘のように消え、かわりに深い喜悦の表情があらわれていた。
『見ろよ、あのウットリした顔』
『まったく救いようのない変態だわね』
 犬の愛撫に反応している母を見て、大学生たちは心底呆れたように嘲笑した。

92母の飼い主 49:2014/01/12(日) 06:51:44
『気持ちよさそうねえ冬子』とマホがくすくす笑いながら声をかけた。
『ワゥン…』
 眉尻の下がりきった情けない表情で母が鳴いた。
『最近はご主人さまもあまり抱いてくださらないから、毎日ひとりでオナニーばかりしてるんでしょう? 寂しいアソコを慰めてもらえてよかったわねえ。ムックに感謝しなきゃね』
『クゥン…』
『ムックも冬子のこと気に入っているみたいよ。ムックは男の子だから、やっぱり牝犬が好きなのねえ』とマホは面白そうに言った。『ほら、感謝の印にキスしてあげなさい。愛情込めてたっぷりとするのよ』
 母はおどおどしたようすでマホを見つめていたが、『グズグズしないの!』と叱咤され、涙目になりながら身体の向きをかえた。向かい合ったムックにおそるおそる顔を寄せていくと、牡犬のほうは躊躇なく舌を出して、母の貌をぺろぺろ舐めはじめた。『んん…っ』と母が苦しげな声をあげた。
『ほらほら、冬子もベロを出さなきゃ。じぶんからムックを舐めてあげるの』とマホが楽しそうな口調で命じる。
 唾液でぐしゃぐしゃに汚された母は、べそをかきながらも懸命に舌を伸ばして、ハッハッと息を切らしている犬の鼻をそうっと舐めた。途端、追いかけるようにムックの赤黒い舌が母のちいさな舌をとらえた。
『ウウッ』と呻いて母は両目をぎゅっと瞑ったが、それでも逃れようとはせず、じぶんの舌をゴールデン・レトリバーのそれに絡めていった。夜の庭にぴちゃ、ぴちゃという淫靡な音が響いた。
『うわっ、マジで犬とベロチューしてるぜ、あいつ』
『変態もここまでくるとビョーキね』
 仲間たちがざわつくなか、マホはひとり平然として『そのくらいでいいわ。二匹とも戻ってきなさい』と言った。
 ムックがぱっと主人のもとへ駆け出すと、母もすこし遅れて追いかけ出した。もっとも、こちらのほうは俊敏な動作とはいかず、巨きな臀をよたよた揺らしながらの不器用な犬這いだった。
 黄色の毛並みをした大型犬と、淡雪のような肌の熟女犬は、女主人の前に二匹ならんできちんと《おすわり》の姿勢を取った。
『二匹が仲良くなって私もうれしいわ。ムックは初めて女の子のお友達ができて興奮してるみたいね』とマホが面白そうに言った。『もっと仲良くなるために、一緒にボール遊びでもしましょうか。どっちが先に取ってくるか競争よ』
 マホは先程の白いボールを取り出すと、『ほら、取ってきなさい』と言って、庭の隅のほうへ放り投げた。即座に立ち上がったムックは、ボール目がけて風のように走り出した。母もあわててムックの後を追ったが、人間の四つ足で本物の犬に敵うはずもない。ようやく数メートル進んだ頃にはもう、牡犬のほうはボールを咥えて駆け戻ってくるところだった。
『よしよし、ムックはお利口さんねえ』と言ってマホは愛犬の頭を満足げに撫でた。それから意地悪な目で母を見た。『何してるのよ冬子。これじゃ競争にもならないわ』
『クゥン…』母はうなだれた。
『次はもっと一生懸命走りなさい。鳴き声も忘れないでね。ほら、いくわよ!』

 ボールは何度となく投げられ、そのたび母は『ワンワン!』と声を張り上げながら必死に走り回った。だが、一度としてボールに追いつくことはできず、観客の大学生たちにひたすら囃したてられ、熟れ臀をみっともなく揺らして這い回る不様な姿を嗤われるばかりだった。
『ほら、がんばれがんばれ』
『あーあ、またムックに取られちゃった』
『なーにしてんだ馬鹿犬』
『デブだから動きが鈍いのよ、きっと』
 すでに一時間以上みじめな芸を演じさせられ、母の体力はほとんど尽きかけていた。七回目にボールが投げられたとき、母は芝生の上を数歩這い進んだところで、前のめりに倒れ込んでしまった。ぜいぜいと苦しげにあえぐ熟女の躰は全身汗ばみ、涙と犬の唾液でよごれた顔には乱れた髪と芝生の草が貼りついて、見るも無残なありさまを呈していた。

93母の飼い主 50:2014/01/12(日) 06:54:58
『あーあ、ノビちゃった』
『だらしないわねえ』
 うつ伏せに倒れている母のもとへ、またもムックが近づいてきた。ふしぎそうな表情で鼻先を近づけ、白い太腿の辺りをぺろりと舐める。それでも母はぴくりともしなかった。
『体力のない犬ねえ。もうギブアップなの?』とからかうような口調でマホが声をかけた。
『クゥン…』絞り出すように弱々しい声をあげる母。
『しょうがないわねえ』
 マホは肩をすくめると、白セーターの女の子に向かって『わるいけど、冷蔵庫にバターが入ってるから、鍋で溶かしてきてくれない? ひと箱全部使っていいから』と妙なことを言った。
『何する気なんだ?』と優男風の青年が訊く。
『冬子にご褒美をあげるのよ。馬鹿犬なりに今日はがんばったしね』とマホは笑ってこたえた。
 やがて、白セーターの子が湯気のたつ鍋を抱えてきた。それを受けとったマホは、あいかわらず芝生に倒れている母のもとへ歩いていった。
『ほーら起きて。《服従》のポーズをしなさい』
『ワゥン…』
 消え入りそうな声で鳴いた母は、よろよろしながら仰向けになると、犬がお腹を見せて服従するときのポーズを取った。
『いい子ね』と言ってマホは白い歯を見せた。『今夜はみんなの前でたっぷりと恥をかいたわねえ。写真もいっぱい撮られちゃって』
『クゥン…』母は恥じらうように鼻を鳴らした。
『みんな、大ウケだったわよ。みっともない姿を見てもらって、あんなに笑ってもらえるなんて、冬子はしあわせな犬ねえ。じぶんでもそう思うでしょう?』
『ワンワン』母は仰向けのまま媚びるように臀をもじつかせた。
『あはは、冬子はほんとに馬鹿犬ねえ。でも素直で可愛い犬だわ』靴先で母の乳房をもてあそびながら、マホは楽しそうに言った。『これからもわたしの命令に従って、いつでもどこでも恥をかくのよ。いいわね?』
『ワン!』母はいっそうはげしく熟尻を揺すぶった。洋治さんばかりでなく、マホという年下の小娘に心まですっかり飼い慣らされてしまったようだった。
『いいお返事だこと。ご褒美をあげるわ。ジッとしてなさい』
 そう言うと、マホは手にした鍋を傾けた。溶けたバターが母の身体に滴り落ちる。
『キャンキャン!』
『そんなに熱くないでしょ。我慢なさい』
 童女のような母の恥丘から剥き出しの秘裂にかけて、マホはたっぷりとバターを注いでいった。主人の傍らに控えているムックは目を輝かせながらその光景を見ていた。今にも飛びかかりたそうなようすだった。

94母の飼い主 51:2014/01/12(日) 06:55:47
『とりあえずこんなものね』と言ってマホは鍋を水平にもどした。それから飼い犬に向かって言った。『ほらムック、いいわよ。たっぷりと舐めて冬子を気持ちよくさせてあげなさい』
 その命令が出るやいなや、ムックは母の股間にむしゃぶりついていった。鼻先をくっつけて、そこに付着したバターを勢いよく舐め回し始める。それにつれて秘部を刺激された母が『ヒーッ!』とはげしく身悶えしながら叫んだ。
 大学生たちの笑い声が弾けた。
『いわゆるバター犬ってやつだな』
『アハハ、すげー感じてんじゃん』
『よっぽど犬の舌が好きみたいね』
『まだまだこんなものじゃないわよ』マホは笑ってそう言うと、狂ったように身をうねらせている母の股間へ再びバターを垂らした。母のよがり声がいっそう大きくなった。
 やがて母はびくんびくんと肢体を蠢かせて呆気なく崩壊の瞬間を迎えた。それでもムックの舌の愛撫はやまなかった。『アーッ!』と絶叫しながら母は続けざまのアクメにのたうちまわった。オルガスムの最中にまた次のオルガスムにおそわれ、痙攣のやまないうちに新たな極みへ追いやられる――そんなことをくりかえすうち、母の叫び声には苦痛の響きが濃くなり、ついには絶え間ない悲鳴にかわった。
『アーッ! アーッ!』
『悦んでくれてうれしいわ。そろそろオッパイのほうにもご褒美をあげるわね』マホはそう言って、こんどは激しく喘いでいる母のたわわな双乳にバターを落とした。ムックはさっそく母の胸元へ飛びついて、たぷたぷと揺れる乳房に分厚くざらざらした舌を這わせた。『ヒイーッ!』とわめきながら母は手足をばたばたさせて悶えた。
 秘所や乳房だけでなく、ふっくらした臍回りから真っ白な太腿、足裏や腋下、首筋にまで、マホは容赦なくバターを垂らしていった。かつて僕の父ひとりの専有物だった身体は、いまやありとあらゆる場所を犬の舌に蹂躙され、母は狂ったように身をくねらせては、つんざくような啼き声をあげて幾度となく絶頂に達した。
『アーーーッ!!』
 一際大きな悲鳴とともに、母の身体がガクガクと痙攣した。そして失神したように動かなくなった。
『おいおい、大丈夫かよ』
『死んだんじゃね?』
 さすがに心配そうなようすで大学生たちが言った。
『まさか』とマホは鼻でわらったが、そこでようやくムックに『ストップよ』と声をかけた。
 体中の関節が外れてしまったように、母は力なく芝生に横たわっていた。むっちりと熟れた裸身は汗と犬の唾液にまみれ、ところどころに草や土が貼りついている。
『起きなさい冬子。いつまで寝てるの』
 ぺちぺちと頬を叩かれ、母はやっとのことで薄目を開くと、放心したような瞳をマホに向けた。鼻頭を黒く塗りつぶされ、三本ヒゲを書かれた珍妙な顔には、とめどなくこぼした涙の跡が光っている。半開きの唇はいまもわなわなと震えていた。
『ずいぶん派手によがっていたわねえ』からかうように言って、マホは母の乱れた髪を優しく撫でた。『犬にされるのってそんなに気持ちいいの?』
 母は何か言おうとしたが、唇を金魚のようにぱくぱくさせただけで、言葉は出てこなかった。
『声も出せなくなるくらいによかったみたいね』マホはくすくすと笑った。それから恐ろしいことを言い出した。『でもねえ、今のはただの前戯よ。本番はこれからでしょう? ムックをご覧なさい、はやく冬子に挿れたくてウズウズしているわ』

95悦司:2014/01/12(日) 07:01:09

つづきです。
本物の犬が絡むので苦手な方もいるかも。

96ファン:2014/01/12(日) 13:08:37
最高です!
母親と犬の交尾まで突き進んで下さい
畜生のDNAで母体を汚染してやって下さい

97名無しさん:2014/01/20(月) 16:56:29
投下御礼 ありがとうございます。
お礼遅くなりました。今後の展開にドキドキしています。

98名無しさん:2014/01/26(日) 16:52:51
続き楽しみです。
息子の前でボディコンに幼児パンツ・・・とか辱めてほしいです。

99名無しさん:2014/02/23(日) 22:14:52
いつも素晴らしい虐めっぷりにノックダウンですw
どきどきしながらずっと続編楽しみにしています。
お忙しいでしょうが気長に待っていますのでよろしくお願いします。

100名無しさん:2014/03/16(日) 21:25:55
つづき待ってます


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