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母の飼い主 1

48母の飼い主 28:2013/10/28(月) 01:07:58

 地べたに這いつくばった母は、土下座するように頭を低く伏せたまま、臀部だけを高々と掲げていた。その姿をうしろから捉えるビデオカメラには、つきたての餅のような臀だけでなく、陰部の割れ目までがあらわだった。
 洋治さんの命令をうけて、母は、色白のふくよかな臀を振りはじめた。

『ペースが遅いぞ。もっと勢いよくやるんだ』と洋治さんの容赦ない声が飛ぶ。
『ワン、ワン』と母は涙声でこたえた。同時に、臀振りの速度が上がった。はげしく腰をうねらせながら、まるで空中に文字でも書いているように、勢いよく上下左右に振り立てている。それにつれて、むちっとした臀肉が弾むように揺れ動いた。
 カップルは嘲笑を含んだ歓声をあげていた。
『犬がしっぽを振ってるみたいね』
『こいつ、本物の馬鹿女だ』
『ほらほら、もっと嬉しそうな顔でやんなさいよ』
『スピードが落ちてきたぞ。がんばれ、がんばれ』
『鳴き声も忘れずにね』
 みじめな犬芸に励む母を、僕とおなじ年頃の男女が好き勝手にからかい、手を打って囃したてる。
 すでに母は全身汗だくだった。それでも顔を真っ赤にして懸命に臀を振り、何度も何度も『ワンワン』と鳴き真似をくりかえした。そのさまを見て、カップルはさらに遠慮のない笑い声をあげるのだった。

 壮絶といえば壮絶で、滑稽といえばこれ以上なく滑稽で――いずれにしても、息子の僕にとっては見るに耐えない光景だった。だというのに、僕は一秒たりとも画面から目を離すことができなかった――。


 いかに母が頑張ろうと、むりな体勢のむりな動きがさほど続くはずもない。
 三分もたたないうちに完全にへたばってしまった母は、臀部を天上に突き出したまま、ズルズルとその場に崩れ落ちた。ぜえぜえという苦しげな息の音。汗ばんだ総身は血の色を薄く刷いたように朱に染まっている。
『あーあ、のびちゃった』
 若い娘がケラケラ笑いながら言うのが聞こえた。

 そのときだった。今まではほとんど動かなかったビデオカメラが倒れている母に近づきだした。ビデオを手にした洋治さんが歩いたのだ。
 カメラは母の間近に来ると、「白豚」と書かれた臀部だけを突き出した格好で、意識もなく地べたに伏している裸体を、ゆっくりと舐めるように撮影した。
 ふいに、画面の隅から節ばった男の手があらわれて、のびている母の臀をかるく叩いた。
『ほら、起きろ』
 洋治さんの声がした。
 目元にモザイクはかかっているものの、洋治さんの呼びかけで、母がぼんやりとまなこを開いたのがわかった。アップになった母の顔は汗と涙で見る影もなかった。
 それでも、母はつかれきった身体をよろよろと起こすと、洋治さんの前で「おすわり」のポーズを取った。とことん飼い慣らされた姿が哀れだった。
『さっきはよくやったぞ、冬子』
 突然、洋治さんが思いがけず優しい声色を出したので、僕はびっくりした。
 母もハッとしたように顔を上向けて、覗き込むようにカメラを――その奥の洋治さんを――見た。やがて、母の眼から新しい涙があふれだした。ふたたび節ばった手がのびて、くしゃくしゃに乱れた母の髪や、汗と涙にまみれた顔を撫でさすった。
 母は目をつむって、うっとりと洋治さんの愛撫を受けた。その満たされたような表情に、僕は今までとちがう衝撃を受けた。

 ――なんで、
 ――なんでそんな顔するんだよ、母さん!

『見てよ、あの満足そうな表情』
『ご主人さまに誉められてうれしそうだな。本当に犬みたいだ』
 カップルが口々に言う声がした。


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