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母の飼い主 1

14母の飼い主 10:2013/10/13(日) 05:41:04

 そんな僕の動揺にもちろん気づかず、太った男は得々と話をつづける。

「一時間もした頃かな。本当に女はあらわれた。あのときはたまげたね。なにしろ、びっくりするようないい女だった。四十近くの年増だが、綺麗で、清楚で、品があって、いかにも上流家庭の奥さんという感じなんだな」
 太った男はそこで興奮をしずめるように、一度グラスに口をつけると、また滑らかにしゃべり始めた。
「女は戸惑っているようすだった。見も知らぬおれや、おれの友だちがいるんだから、それも当然だわな。だが、マスターに何か囁かれると、女はしおしおと店の中に入ってきて、か細い声で『はじめまして。フユコと申します』と挨拶した」

 そのとき――
 僕は落雷を浴びたような衝撃に打たれた。

 母の名前は――冬子だった。

「いろいろ訊いてみると、おれが睨んだとおり、そのフユコという女はイイトコの奥さんだったが、早くに夫を亡くして未亡人生活をつづけているらしい。――まあ、男日照りだったわけだな。それをこのわるいマスターにつけこまれたってわけだ」
「あいかわらず、ひどい言い草ですな」
 洋治さんは布巾でグラスを拭きながら、悠々とした口調で応じた。
「一通り会話がすんだ頃合で、ふとマスターが女に耳打ちした。女は途端に真っ赤になった。おどおどしたようすで、哀願するみたいにマスターを見るんだが、この人は冷たい顔で見返すだけさ」
 太った男はくくっとわらった。
「それで、とうとう女も諦めたようだった。さあ、これから何が起こるのか――。おれたちが唾を呑み込んで待っていると、女は今にも泣きそうな顔で『あの…これから余興に歌をうたいます。下手な歌ですけれど、よかったらお聞きになって』と言うんだ」
「歌ですか?」と眼鏡が拍子抜けしたような声を出した。
「そう。おれも『何だ、期待させやがって』と心の中で毒づいた。内心は助平な期待でいっぱいだったのにな」と太った男は恥ずかしげもなく言った。「だが、その後でびっくりするようなことが起こった。女はそこのステージに上がると、突然、服を脱ぎ始めたんだ。あのときはたまげたね」
「へえ!」
「いかにも羞ずかしそうなようすで、女は上着を脱ぎ、ブラとパンティーも脱いで、とうとう素っ裸になった。服の上から想像していたとおり、綺麗な裸だったよ。肌が透けるように白くって、陶器みたいにつるつるでね。全体は細くてすらりとしてるのに、胸はけっこうなボリュームで、四十路近いとは思えないような、かわいい乳首の色をしていた」

「すっぽんぽんにはなったものの、女は羞ずかしさに耐えないふうで、手で身体を隠そうとする。でも、このマスターが『隠すな。お前のいやらしい身体をお客さんによく見ていただくんだ』と厳しい声で言うと、泣きそうな顔でそのとおりにするんだ。おれと友だちは、もう我慢できずに席を立って、ステージにかぶりつくように女の裸を鑑賞した」
 太った男はそのときのことを思い出したように舌なめずりした。
「やがて、マスターが曲をかけて、女は歌いだした。中森明菜でも歌うのかと思ったら、今どきのAKBとかの曲でね。それも歌うだけじゃなくて、振り付けつきなんだよ。いい歳した美形の年増女が、真っ赤な顔で尻をふったり、胸を揺らしたり、足を跳ね上げたりしながら、いかにも慣れてない、たどたどしい動作で一生懸命歌って踊るのさ。見てるこちらも可哀想になるくらいだが、それだけに興奮させられた」
「へえ…」
「後で訊いたら、AKBの歌と振り付けは、マスターの命令で以前から練習していたらしい。あの上品な奥さんが、人目を忍びながら、自宅でこっそりとアイドルの歌や踊りの練習をしているなんて、なんだか泣けてくるね」
「なんでそんなことを命じたんですか?」と眼鏡が訊いた。
 洋治さんは薄笑いをうかべた。
「わたしはサディスティックな性的嗜好の持ち主でしてね――、女に惨めなことや屈辱的なことを強制したり、羞ずかしい目に遭わせれば遭わせるほど興奮するタイプなんです」と洋治さんは平然たる口調で言った。「四十路間近の女が今どきの若いアイドルの真似して裸踊りするなんて、まさしく馬鹿みたいでしょう? それだから面白いんですよ」


 ――洋治さんの鬼畜な発言を聞きながら、僕は全身の毛穴から血が噴き出るような感覚を味わっていた。
 瞼の裏には、裸身を晒した母が惨めなダンスを披露している幻影がうかんでいた。涙まじりになりながら、それでも懸命にうたい、尻や胸をふって、男に媚びてみせる母――。
 信じられない。あの母が――少女みたいに純情なところのある母が、どうしてそんなことをできたのだろう。どんな想いが母にそこまでのことをさせたのだろう。
 
 驚愕と絶望の淵に沈む僕をひとり残して、ふたりの客と洋治さんの会話はさらにつづいた。


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