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母の飼い主 1
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:
母の飼い主 48
:2014/01/12(日) 06:49:48
『犬なんだから、おしっこは外でしなさい』
当然の事実を告げるような口調でそう言って、マホは窓を開け放した。母はちらりとマホの顔を窺ったが、それ以上ためらわず、『ワン!』と一声鳴くやいなや、窓から庭へ飛び出していった。母が外へ出ると同時に、家屋の外壁に取り付けられたライトが灯って、庭全体を照らし出した。
庭はかなりの広さだった。屋敷の傍らには犬小屋がひとつあり、ゴールデン・レトリバーらしい大型犬が顔を出していた。びっくりしたような顔で、人間の女が芝生を這っていく光景を見つめている。
十一月の夜だというのに全裸で戸外へ出された母は、しかし寒さを感じる余裕もないようだった。庭の端に植えてある欅のそばへたどりつくと、母はふりかえって『ワン!』と鳴いた。
『そこでいいわ』とマホが笑いながら言った。
よたよたと片足を上げた母は、欅に向かって犬のするようなポーズで放尿をはじめた。一日中許されなかったそれは激しい勢いで迸り、しゃーっと音を立てて木の幹を濡らした。
『女の小便するとこ初めて見た。すげー勢いなんだな』
『ちょっと! 一緒にしないでよ。あんなの女のすることじゃないわよ(笑)』
『完全にぶっ壊れちゃったみたいだな』
母の排泄は長かった。ようやく放水を終えて、一二度ブルブルッと下半身をふるわせた母は、なんだか魂の抜けたような、あるいは子供に還ったような、奇妙にあどけない表情をしていた。ふつうの女性なら耐えられるはずもない恥辱を受けつづけた果てに、さっき誰かの言ったとおり、母の心はすっかり壊れてしまったのだろうか――。「もうやめてくれ! 母を返してくれ!」と僕はその日何度となく心のなかで叫んだ言葉をくりかえした。
そのとき、ぼんやりしている母のもとへ近寄っていく影が見えた。この家の飼い犬とおぼしきゴールデン・レトリバーだった。間近にやってきたその犬に気づいて、ふと正気を取り戻したのか、母は怯えたような表情になった。それから救いを求めるように、マホに向かって『ワン!』と鳴いた。
『だいじょうぶよ、おとなしい犬だから』と平気な顔でマホは言った。『乱暴しちゃだめよ、ムック。その子はお前のお友達で、冬子っていうの』
ムックと呼ばれた犬は興味深そうに母の周りをうろうろしていたが、やがて、四つん這いの母のうしろに来ると、くんくんと匂いを嗅いだ。そしていきなり、むっちりした臀の狭間をぺろりと舐めあげた。
『ヒーイッ』と母が悲鳴をあげた。
『おおげさな声をあげないの。たかが犬同士の挨拶じゃない』と可笑しそうにマホが言った。
大学生たちがドッと笑った。
『ムックも相手が犬だと思ってるのかしら』
『そうかも。鼻は真っ黒でヒゲも書いてあるしな(笑)』
『うわぁ、アソコをぺろぺろ舐められてる』とカーディガンの女の子が目を丸くして言った。
その言葉どおり、ムックはいまや母の秘部に狙いを定めていた。獣の舌でおんなを舐め回される気味わるさに、母はガクガクふるえながら呻いていたが、いくらも経たないうちに様子がかわってきた。蒼褪めていた頬はいつしか薔薇色に染まり、半開きの唇からは熱い吐息がこぼれだした。
犬がペロリと淫裂を舐めあげるたび、『アーンッ』と呻いて切なげに肢体をうねらせる母――。その貌からは先刻までの嫌悪感が嘘のように消え、かわりに深い喜悦の表情があらわれていた。
『見ろよ、あのウットリした顔』
『まったく救いようのない変態だわね』
犬の愛撫に反応している母を見て、大学生たちは心底呆れたように嘲笑した。
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